(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20241209BHJP
G03G 9/093 20060101ALI20241209BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G03G9/087
G03G9/093
G03G9/097 368
G03G9/087 331
(21)【出願番号】P 2020185497
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 舞
(72)【発明者】
【氏名】久島 浩史
(72)【発明者】
【氏名】磯野 直也
(72)【発明者】
【氏名】中山 憲一
(72)【発明者】
【氏名】塩足 吉彬
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-022230(JP,A)
【文献】特開2015-060141(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129448(WO,A1)
【文献】特開2006-267527(JP,A)
【文献】特開2008-058620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分を有するコア粒子、該コア粒子の表面を覆うシェル及び多価金属を有するトナー粒子を有するトナーであって、
該樹脂成分は、ポリエステル樹脂を含有し、
該シェルは、アミノ樹脂を含有し、
該シェルの厚さの平均値が、1.0nm以上30.0nmであり、
透過型電子顕微鏡を用いて撮影される該トナー粒子の断面の電子像において、
エネルギー分散型X線分析により、該シェルの厚さをd(nm)として、トナー粒子の断面の外郭から該トナー粒子の表面と垂直方向に該トナー粒子中心部に向かって0.85d~1.15dの範囲でラインスキャンを行った際に得られる多価金属の含有量P(M)が、0.0010atomic%以上2.0000atomic%以下であり、
該トナーのナノインデンテーション測定において、25℃における荷重30μNでの該トナーの表面貯蔵弾性率が、6.50GPa以上12.00GPa以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記トナーのナノインデンテーション測定において、25℃における荷重50μNでの前記トナーの表面貯蔵弾性率が、0.20GPa以上12.00GPa以下である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記アミノ樹脂が、熱硬化性樹脂である請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記アミノ樹脂が、メラミン樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂及びアニリン樹脂からなる群から選択される少なくとも一である請求項1~3のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項5】
前記多価金属が、Al、Mg及びCaからなる群から選択される少なくとも一である請求項1~4のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項6】
前記多価金属が、水酸化マグネシウム由来のMgである請求項1~
5のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項7】
前記多価金属が、硫酸アルミニウム由来のAlである請求項1~
5のいずれか1項に記
載のトナー。
【請求項8】
前記多価金属が、塩化マグネシウム由来のMgである請求項1~
5のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項9】
前記トナーは、前記トナー粒子及び外添剤を含む請求項1~
8のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項10】
前記アミノ樹脂が、メラミン樹脂である請求項1~
9のいずれか1項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真法、静電記録法、トナージェット方式記録法のような方法によって形成される静電潜像を現像してトナー画像を形成するために用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真法など静電潜像を経て画像情報を可視化する方法は、様々な分野で利用されており、さらなる高画質化、高速化に加え、複写機やプリンターの小型化、省エネルギー化、長寿命化が求められている。
中でも、複写機やプリンターは、ランニングコストを低減したいという要望が高まっている。そのため、省エネルギー性に優れ、かつカートリッジ1本で長期間印刷できる長寿命化が求められている。省エネルギー性の観点から、加熱定着時の電力低減を可能とする優れた低温定着性を有するトナーの調整に、融点やガラス転移点の低い結着樹脂や低融点の離型剤が使用されることが多い。このようなトナーを高温で保存した場合、トナー同士が融着しやすいという問題がある。
上記課題に対し、例えば、特許文献1ではシェル層に熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いたコアシェルトナーが開示されている。
しかし、静電荷潜像をトナーによって顕在化する画像形成動作に伴う一連の動作はいずれもトナーとトナー、又は、トナーと部材との接触を伴うものであり、このような接触の度にトナーは負荷を繰り返し受ける。そのためこの様に熱やストレスを受けたトナーは変形し、トナーの割れやつぶれが発生するという問題がある。
この問題に対して、例えば、特許文献2では、ナノインデンテーション法を用いて測定される変位量と表面硬度が特定の範囲に入るトナーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-045844号公報
【文献】特開2014-164274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低温定着性と現像耐久性は相反する性能であり、近年の設計思想に対する要求を両立することが難しいことが分かってきた。長寿命な現像システムという観点においては、上記トナーを用いて繰り返しの印刷を続けていると、コアシェルトナーのシェルがコア粒子から剥がれてしまうことがわかった。
シェルがコア粒子から剥がれてしまうと帯電性が乱れたり、剥がれたシェルや露出したコア粒子が現像部材や帯電部材といった画像形成に関わる部材への汚染・融着を起こしたりして、画像不良を引き起こしてしまう。そのため、耐久性という点においては未だに改善の余地がある。
本開示は、低温定着性を維持及び向上させつつもシェル剥がれが抑制されることで長期に亘って現像性が優れるトナーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、樹脂成分を有するコア粒子、該コア粒子の表面を覆うシェル及び多価金属を有するトナー粒子を有するトナーであって、
該樹脂成分は、ポリエステル樹脂を含有し、
該シェルは、アミノ樹脂を含有し、
透過型電子顕微鏡を用いて撮影される該トナー粒子の断面の電子像において、
エネルギー分散型X線分析により、該シェルの厚さをd(nm)として、トナー粒子の断面の外郭から該トナー粒子の表面と垂直方向に該トナー粒子中心部に向かって0.85d~1.15dの範囲でラインスキャンを行った際に得られる多価金属の含有量P(M)が、0.0010atomic%以上2.0000atomic%以下であり、
該トナーのナノインデンテーション測定において、25℃における荷重30μNでの該トナーの表面貯蔵弾性率が、6.50GPa以上12.00GPa以下であるトナーに関する。
【発明の効果】
【0006】
本開示により、低温定着性を維持及び向上させつつもシェル剥がれが抑制されることで長期に亘って現像性が優れるトナーが提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0008】
本開示は、樹脂成分を有するコア粒子、該コア粒子の表面を覆うシェル及び多価金属を有するトナー粒子を有するトナーであって、
該樹脂成分は、ポリエステル樹脂を含有し、
該シェルは、アミノ樹脂を含有し、
該シェルの厚さの平均値が、1.0nm以上30.0nmであり、
透過型電子顕微鏡を用いて撮影される該トナー粒子の断面の電子像において、
エネルギー分散型X線分析により、該シェルの厚さをd(nm)として、トナー粒子の断面の外郭から該トナー粒子の表面と垂直方向に該トナー粒子中心部に向かって0.85d~1.15dの範囲でラインスキャンを行った際に得られる多価金属の含有量P(M)が、0.0010atomic%以上2.0000atomic%以下であり、
該トナーのナノインデンテーション測定において、25℃における荷重30μNでの該トナーの表面貯蔵弾性率が、6.50GPa以上12.00GPa以下であることを特徴とするトナーに関する。
【0009】
上記トナーは、多価金属がコア粒子とシェルの界面及び界面近傍に存在し、コア粒子とシェルの密着性が高くなっている。そのため低温定着性を有する柔らかいコア粒子に対し、トナー表面の貯蔵弾性率が高い場合でも、コア粒子とシェルの密着性が高く、シェル剥がれを抑制できる。長寿命な現像システムにおいて、低温定着性を維持しつつも、トナーの現像性に対する高い欲求を満たすことができる。
上記トナーにこのような効果が得られる理由について、本発明者らは次のように考えている。
【0010】
長寿命な現像システムにおいて、トナーの現像性に対する高い欲求を満たすためには、トナーのナノインデンテーション測定において、25℃における荷重30μNでのトナーの表面貯蔵弾性率が、6.50GPa以上12.00GPa以下であることが必須である。トナー表面の貯蔵弾性率はトナーの極表層の貯蔵弾性率を表しており、本発明者らが検討したところ、現像耐久性と相関があることが分かってきた。
【0011】
前述したように、トナーは現像時に現像ローラーや現像ブレードなどの部材から繰り返しストレスを受けることで、トナーの割れやつぶれが発生する。また、トナーには、必要に応じて、トナー粒子表面に外添剤と呼ばれる帯電補助、流動性向上を目的とした無機又は有機微粒子が外部添加されている。
前記表面貯蔵弾性率が6.50GPa以上であることによって、外部からのストレスが
繰り返し加えられても、トナーの割れやつぶれが発生しにくい。また、外添剤が長期間にわたって効果的に働くことから現像耐久性に優れたトナーとなる。
また、前記表面貯蔵弾性率が12.00GPa以下であることによって、外添剤が適度に固着し、トナーが変形しにくく、長期間にわたって外添剤が効果的に働くことからカブリや現像スジといった画像弊害の抑制可能な現像耐久性に優れたトナーとなる。
【0012】
さらに、前記表面貯蔵弾性率は6.80GPa以上11.60GPa以下であることが好ましい。この範囲になることで、現像耐久性により優れたトナーとなる。
荷重30μNでの表面貯蔵弾性率は、トナー表面の樹脂のガラス転移温度Tg及び酸価、並びにコア粒子とシェルの界面及び界面近傍の金属イオン量により制御できる。
【0013】
トナーの現像性に対する上記欲求を満たすために、シェルはアミノ樹脂を含有する。
アミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、アニリン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン樹脂、スルホンアミド樹脂、ポリイミド樹脂、又はこれら樹脂の誘導体が挙げられる。アミノ樹脂は、好ましくは熱硬化性樹脂である。
【0014】
アミノ樹脂に用いることのできる熱硬化性モノマーの好適な例としては、メチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、メラミン、メチロール化尿素(より具体的には、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素等)、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、又はスピログアナミンが挙げられる。
より好ましくはメラミン樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂及びアニリン樹脂からなる群から選択される少なくとも一であり、さらに好ましくはメラミン樹脂である。
メラミン樹脂は、メチロールメラミン樹脂、ヘキサメチロールメラミン樹脂、メトキシメチロールメラミン樹脂が好ましい。より好ましくはヘキサメチロールメラミン樹脂である。
【0015】
熱硬化性樹脂は1種以上の熱硬化性モノマーを架橋反応させることで得られる。なお、
熱硬化性モノマーは、架橋性を有するモノマーである。例えば、同種のモノマー同士が「-CH2-」を介して3次元的につながって熱硬化性樹脂になる場合、そのモノマーは熱硬化性モノマーに相当する。
熱硬化性樹脂は耐熱性に優れ、変形しにくいため、シェルに熱硬化性樹脂を用いると外部からのストレスが加えられてもトナーが変形しにくく、カブリや現像スジといった画像弊害を抑制することができると考えられる。
特にメラミン樹脂は、トリアジン骨格にアミノ基が3つ結合されているメラミンの重縮合物であるため、より強固な3次元網目構造となると考えられる。
【0016】
また、トナーのナノインデンテーション測定において、25℃における荷重50μNでのトナーの表面貯蔵弾性率が、0.20GPa以上12.00GPa以下であることが好ましい。より好ましくは0.30GPa以上11.80GPa以下である。
荷重50μNでのナノインデンテーション測定では、荷重30μNでの測定よりも、よりトナー粒子のコアに近い部分での粘弾性を測定する。トナー粒子の50μNでの表面貯蔵弾性率が上記範囲になることで、高い現像耐久性を有しつつも、定着阻害の少ない低温定着性の優れたトナーとなる。荷重50μNでの表面貯蔵弾性率は、コア粒子の樹脂のTg、酸価及び金属イオン量により制御できる。
【0017】
シェルの厚さの平均値は、1.0nm以上30.0nm以下であることが好ましい。トナーの定着工程は、定着ローラーなどの部材から熱と圧力を加えられ、紙上に定着される。シェルの厚さが30.0nm以下であることによって、低温定着性に優れたトナーとなる。
トナーが現像時の繰り返し受けるストレスによって、トナーの割れやつぶれが発生する
。シェルの厚さが1.0nm以上であることによって、トナーの劣化を抑えたトナーとなる。シェルの厚さの平均値は、1.1nm以上29.0nm以下であることがより好ましい。
なお、シェルは必ずしもコア粒子の全面を被覆する必要はなく、コア粒子が一部露出しているような部分があってもよい。
【0018】
低温定着性を有するトナーにおいて低温定着性と高い現像耐久性を両立させるためには、コア粒子とシェルの密着性向上が重要であり、そのために多価金属が必要である。
透過型電子顕微鏡を用いて撮影されるトナー粒子の断面の電子像において、エネルギー分散型X線分析により、シェルの厚さをd(nm)として、トナー粒子の断面の外郭からトナー粒子の表面と垂直方向にトナー粒子中心部に向かって0.85d~1.15dの範囲でラインスキャンを行った際に得られる多価金属の含有量P(M)が、0.0010atomic%以上2.0000atomic%以下を満たすことが必要である。
シェルの厚さをd(nm)としたとき、トナー粒子の断面の外郭からトナー粒子の表面と垂直方向にトナー粒子中心部に向かって0.85d~1.15dの範囲は、コア粒子とシェルとの界面及び界面近傍を指している。
上記を満たすトナー粒子は多価金属によりシェルとコア粒子が非共有結合で固着されていると考えられる。P(M)が0.0010atomic%以上であることによって、コア粒子とシェルが十分に密着され、外部からの力に対して、シェル剥がれが抑制できる。
【0019】
また、P(M)が2.0000atomic%以下であることによって、適度な固着により、一定の粘性を有するため、衝撃力を散逸し、割れにくいトナーとなる。好ましくは、P(M)は、0.0012atomic%以上1.9400atomic%以下である。P(M)は、多価金属イオンの添加量により制御できる。
【0020】
また、多価金属がAl,Ca及びMgからなる群から選択される少なくとも一であることが好ましい。これらの金属のうち、1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。これらの金属は2価以上の金属であり、コアとシェルの架橋をより強くする。より好ましくはイオン半径の小さいCa、Alからなる群から選択される少なくとも一であり、さらに好ましくは3価の金属であるAlである。
イオン半径が小さいCa、Alはコアとシェルの架橋部位を強く引き寄せるため、より強い架橋となり、密着性の高いトナーとなる。さらに3価の金属であることでコアとシェルとの架橋点が増えるため、より強い架橋となり、密着性の高いトナーとなる。
【0021】
多価金属が、水酸化マグネシウム由来のMg、塩化マグネシウム由来のMg、硫酸アルミニウム由来のAlであることが好ましい。
これらのような金属塩を、乳化凝集法による凝集剤として添加する、溶解懸濁法における水系媒体に添加する、又はコア粒子を分散させた水系媒体に添加することで所望の多価金属をコア粒子とシェルとの界面及びその近傍に含ませることができる。
【0022】
コア粒子の樹脂成分は、ポリエステル樹脂を含有することが上述した相互作用によるシェル樹脂との密着性向上に必須要件である。ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合体であることが好ましい。
コア粒子の樹脂成分にポリエステル樹脂を用いることで、ポリエステル樹脂が最表面に配向する。このポリエステル樹脂が最表面に存在している状態で、2価以上の水溶性金属塩を添加すると、水系媒体中では水溶性金属塩が溶解し、2価以上の金属イオンとなる。
【0023】
ポリエステル樹脂はカルボキシ基を含有する。この2価以上の金属イオンがポリエステル樹脂のカルボキシ基に配位すると考えている。シェルにアミノ樹脂を用いると、ポリエステル樹脂のカルボキシ基に配位した金属イオンと窒素元素が非共有結合を結び、分子間
相互作用によりコア粒子とシェルの密着性の向上が可能となる。
この密着性の向上により、長期に亘る使用においてもシェル剥がれを抑制することが可能となる。シェル剥がれが抑制されることでカブリやスジといった現像弊害も長期に亘って抑制された耐久性の優れたトナーが得られる。
【0024】
コア粒子の樹脂成分は、ポリエステル樹脂を樹脂成分中50.0質量%以上含有することが好ましい。前記ポリエステル樹脂がコアの樹脂成分中50.0質量%以上であると、コアとシェルの密着性が向上し、長期に亘る使用においてもシェル剥がれが抑制される。
より好ましくは55.0質量%以上、さらに好ましくは60.0質量%以上である。上限は特に制限されないが、好ましくは98.0質量%以下であり、より好ましくは95.0質量%以下である。
【0025】
コア粒子の樹脂成分としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、スチレンアクリル樹脂などを用いることができる。
【0026】
アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,
3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0027】
多価カルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6~18のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類又はその無水物が挙げられる。
【0028】
[コア粒子の樹脂成分]
コア粒子の樹脂成分は、ポリエステル樹脂を含有していれば、他の樹脂を併用してもよい。
例えば、以下の樹脂が挙げられる。ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂。
【0029】
コア粒子の樹脂成分は、ポリエステル樹脂に加え、スチレンアクリル樹脂を含むことが好ましい。樹脂成分中のスチレンアクリル樹脂の含有量は、好ましくは2.0質量%以上50.0質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以上45.0質量%以下である。
【0030】
前記ポリエステル樹脂の酸価は、1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが摩擦帯電量の安定性の観点で好ましい。なお、該酸価は、樹脂に用いるモノマーの種類や配合量を調整することにより、上記範囲とすることができる。具体的には、樹脂製造時のアルコールモノマー成分比/酸モノマー成分比、分子量を調整することにより制御できる。
また、コア粒子の樹脂成分として、結晶性ポリエステル樹脂を用いることもできる。
【0031】
[着色剤]
トナーには着色剤を用いてもよい。
着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタ着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタ着色染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1などの油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28などの塩基性染料。
【0032】
シアン着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1~5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアン着色染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
イエロー着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロー着色染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
上記着色剤の使用量は、結着樹脂100.0質量部に対して、0.1質量部以上30.0質量部以下が好ましい。
【0033】
[ワックス]
トナーはワックスを含むことが好ましい。ワックスとしては、例えば以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリ
スタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。
さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などの脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどのアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
【0034】
これらのワックスの中でも、低温定着性を向上させるという観点で、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックスが好ましい。
該ワックスの含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、0.5質量部以上25.0質量部以下で使用されることが好ましい。
また、トナーの保存性と耐高温オフセット性の両立の観点から、示差走査熱量分析装置(DSC)で測定される昇温時の吸熱曲線において、温度30℃以上200℃以下の範囲に存在するワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が、50℃以上110℃以下であることが好ましい。
【0035】
[荷電制御剤]
トナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速くかつ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩又はスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩又はカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン。
荷電制御剤はトナー粒子に対して内添してもよいし外添してもよい。
荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0036】
トナーは、長期にわたり安定した画像が得られるという点で、磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として用いてもよい。
磁性キャリアとしては、下記のような公知のものを使用できる。表面を酸化した鉄粉、或いは、未酸化の鉄粉や、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜
鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類などの金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライト等の磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持する結着樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)。
【0037】
トナー粒子の製造方法は、どのような製造方法であっても構わない。例えば、乳化凝集法・溶解懸濁法・懸濁重合法のような、親水性媒体中で直接トナーを製造する方法が挙げられる。また、粉砕法を用いてもよく、粉砕法により得られたトナーを熱球形化してもよい。
その中でも、乳化凝集法で製造されたトナーが上記効果を得やすい。その理由は、製造工程の中でポリエステル樹脂がトナー粒子表面に出やすいためである。凝集粒子が融合することでコア粒子が形成される乳化凝集法は、シェルとの結合部位となるポリエステル樹脂のもつカルボキシ基が表面に出やすく、コアとシェルの密着性がより強くなるためである。
以下、乳化凝集法によるトナー粒子の製造方法を例示する。
【0038】
(分散液調製工程)
コア粒子としての樹脂粒子を製造するための、樹脂粒子の分散液の調整について説明する。樹脂粒子分散液は、例えば、以下のようにして調製される。
樹脂粒子における樹脂が、ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)である場合には、ビニル系単量体をイオン性界面活性剤中で乳化重合やシード重合等行うことにより、ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)の樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液が調製される。
樹脂粒子における樹脂が、ポリエステル樹脂などのビニル系樹脂以外の樹脂の場合には、イオン性界面活性剤や高分子電解質を溶解した水系媒体に該樹脂を混合する。
【0039】
その後、この溶液を融点または軟化点以上に加熱して溶解させ、ホモジナイザー等の剪断力の強力な分散機を用い、樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液が調製される。
分散の手段としては、特に制限はないが、例えば、回転剪断型ホモジナイザーやメディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどのそれ自体公知の分散装置が挙げられる。
【0040】
また、分散液を調製する方法として転相乳化法を用いても良い。転相乳化法は、結着樹脂を有機溶媒に溶解し、必要に応じて中和剤や分散安定剤を添加して、撹拌下にて、水系溶媒を滴下して、乳化粒子を得た後、樹脂分散液中の有機溶媒を除去して、乳化液を得る方法である。このとき、中和剤や分散安定剤の投入順は変更してもよい。
樹脂粒子の個数平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01~1.00μmであることが好ましい。個数平均粒径が上記範囲内にあるとトナーの粒径分布をシャープにでき、遊離粒子の発生を抑制できる。また、トナー間での樹脂粒子の偏在が減少し、トナー中の各成分の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる。
【0041】
必要に応じて、着色剤粒子分散液を調整する。着色剤粒子分散液は、少なくとも着色剤粒子を分散剤中に分散させてなるものである。着色剤粒子の個数平均粒径としては、0.5μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましい。個数平均粒径が0.5μm以下であると、可視光の乱反射を防ぐことができ、また、着色力、色再現性、OHP透過性が良好になる。また、トナー間での着色剤偏在が減少し、トナー中の着色剤分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる。
【0042】
必要に応じて、ワックス粒子分散液を調整する。ワックス粒子分散液は、少なくともワックス粒子を分散剤中に分散させてなるものである。ワックス粒子の個数平均粒径として
は、2.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。個数平均粒径が上記範囲内にあると、ワックスのトナー間の偏在が減少し、トナー中のワックスの分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる。
【0043】
着色剤粒子、樹脂粒子及びワックス粒子の組み合わせとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜自由に選択することができる。
樹脂粒子分散液及び着色剤粒子分散液、ワックス粒子分散液のほか、分散剤中に適宜選択した粒子を分散させてなる粒子分散液を更に混合してもよい。
粒子分散液に含まれる粒子としては、特に制限はなく目的に応じ適宜選択することができ、例えば、内添剤粒子、荷電制御剤粒子、無機粒子、研磨材粒子などが挙げられる。なお、これらの粒子は、樹脂粒子分散液中や着色剤粒子分散液中に分散させてもよい。
【0044】
樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液、ワックス微分散液、粒子分散液等に含まれる分散剤としては、例えば、極性界面活性剤を含有する水系媒体などが挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。極性界面活性剤の含有量としては、一概に規定することはできず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0045】
極性界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤などが挙げられる。
アニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。
カチオン界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
なお、これらの極性界面活性剤と、非極性界面活性剤とを併用することもできる。非極性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。
着色剤粒子の含有量としては、凝集粒子が形成された際の凝集粒子分散液中の樹脂成分100質量部に対して、0.1質量部~30質量部であることが好ましい。
ワックス粒子の含有量としては、凝集粒子が形成された際の凝集粒子分散液中の樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部~25質量部が好ましく、5質量部~20質量部がより好ましい。
【0047】
さらに、得られるトナーの帯電性をより詳細に制御するために、帯電制御粒子及び樹脂粒子を凝集粒子が形成された後に添加する場合もある。
なお、樹脂粒子、着色剤粒子分散液、ワックス微分散液、粒子分散液等の粒径測定は堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920を用いて行う。
【0048】
(凝集工程)
凝集粒子を形成する凝集工程は、樹脂粒子、並びに必要に応じて着色剤粒子、及びワックス粒子等を少なくとも含む水系媒体中で、樹脂粒子、着色剤粒子、及びワックス粒子等を含む凝集粒子を形成する工程である。
凝集粒子は、例えばpH調整剤、凝集剤、安定剤を水系媒体中に添加し混合し、温度、機械的動力等を適宜加えることにより該水系媒体中に形成することができる。
pH調整剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ、硝酸、クエン酸等の酸があげられる。凝集剤としては、ナトリウム、カリウム等の1価の金属塩;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属塩;鉄、アルミニウム等の3価の金属塩等;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類があげられる。
【0049】
安定剤としては、主に極性界面活性剤そのもの又はそれを含有する水系媒体などが挙げられる。例えば、各粒子分散液に含まれる極性界面活性剤がアニオン性の場合には、安定剤としてカチオン性のものを選択することができる。
凝集剤等の添加・混合は、水系媒体中に含まれる樹脂のガラス転移温度以下の温度で行うのが好ましい。この温度条件下で混合を行うと、凝集が安定した状態で進行する。混合は、例えばそれ自体公知の混合装置、ホモジナイザー、ミキサー等を用いて行うことができる。
【0050】
また、凝集工程において、凝集粒子の表面に、第2の樹脂粒子を含む樹脂粒子分散液を用いて、第2の樹脂粒子を付着させ、被覆層(シェル)を形成することによりコア凝集粒子表面にシェルが形成されたコア/シェル構造を持つ凝集粒子を得ることも可能である。
なお、この際用いる第2の樹脂粒子は、コア凝集粒子を構成する樹脂粒子と同じであってもよく、異なったものであってもよい。なお、凝集工程は、段階的に複数回に分けて繰り返し実施してもよい。
【0051】
(融合工程)
融合工程は、得られた凝集粒子を加熱して融着する工程である。融合工程に入る前に、トナー粒子間の融着を防ぐため、pH調整剤、極性界面活性剤、非極性界面活性剤等を適宜投入することができる。
加熱の温度としては、凝集粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度(樹脂の種類が2種類以上の場合は最も高いガラス転移温度を有する樹脂のガラス転移温度)以上樹脂の分解温度未満であればよい。したがって、加熱の温度は、結着樹脂粒子の樹脂の種類に応じて異なり、一概に規定することはできないが、一般的には凝集粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度以上140℃以下である。なお、加熱は、公知の加熱装置・器具を用いて行うことができる。
【0052】
融着の時間としては、加熱の温度が高ければ短い時間で足り、加熱の温度が低ければ長い時間が必要である。すなわち、融合の時間は、加熱の温度に依存するので一概に規定することはできないが、一般的には30分以上10時間以下である。
上記の各工程を経ることにより得られたトナー粒子は、公知の方法に従って固液分離し、トナー粒子を回収し、次いで、適宜の条件で洗浄、乾燥等することができる。
【0053】
(外添工程)
トナー粒子はそのままトナーとして用いてもよい。トナーへの各種特性付与を目的として、トナー粒子の表面に、外添剤を付着させてもよい。トナーは、トナー粒子及び外添剤を含むことが好ましい。
外添剤はトナー粒子に添加した時の耐久性の観点から、外添剤を付与する前のトナー粒子の平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。外添剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。
酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物;窒化ケイ素等の窒化物;炭化物炭化ケイ素等の炭化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機金属塩;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩;カーボンブラック、シリカ。これらの中でもシリカが好ましい。
【0054】
外添剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下が好ましく、0.05質量部以上5質量部以下がより好ましい。外添剤は1種類を単独で用いてもよいし、また複数種類を併用してもよい。なお、これらの外添剤は、帯電安定性の観点から、表面を疎水化処理したものを用いることが好ましい。
疎水化処理剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチレンジシラザン等のシランカップリング剤を挙げることができる。
【0055】
以下、各種物性の測定方法について説明する。
<トナーの表面粘弾性測定>
ナノインデンテーション法によるトナーの表面貯蔵弾性率の測定は、測定装置としては、TI-950Systemトライボインデンター(ハイジトロン社製)を用いる。
測定試料としては、25℃の環境下で、ジョンソン社製綿棒の先端にトナーを付着させ、1cm×1cmのシリコンウエハ上にトナーを0.1mg散布した試料を用いる。
試料を試料台に装着し、室温(25℃)において、バーコビッチ型のダイヤモンド圧子(TI-0039:角度142.3°)(ハイジトロン社製)を用いて、ナノインデンテーション条件で測定を開始する。
この際、測定開始前に、測定サンプルの焦点合わせの設定を行い、フォーカスの統一された条件下で測定を行うことが重要である。
測定サンプルの焦点合わせは、ソフト上で顕微鏡を用いて行う。このとき、対物レンズを5倍から20倍、50倍と順次焦点合わせを行う。これ以降は、50倍の対物レンズで調整を行う。
【0056】
次に、専用のAl板を用いて測定空間と荷重力の校正を行う。さらに圧子の先端と顕微鏡カメラのフォーカス位置間の位置構成を行い、圧子のZ軸合わせを行う。
その後、トナーを付着させたシリコンウエハ上に圧子先端を移動させ、測定対象となるトナーに顕微鏡の焦点を合わせる。
これらの校正を実施後、測定は以下の条件で行う。
圧子の荷重条件は30μNとし、0μNより0.5μN/sで30μNまで荷重を与える。その後、周波数(Frequency)と時間は3.0Hzで3秒、30Hzで5秒、150Hzで15秒、301.5Hzで40秒の順に振動を与え、ナノ粘弾性の測定を行う。この際、周波数の変更に伴い各周波数間に1秒の安定時間を与える。その際のデータ
プロット数は、100pts/secで200点とし、それらの平均値を算出する。
測定を開始し、横軸を周波数(Hz)、縦軸を貯蔵弾性率(GPa)及び損失弾性率(
GPa)として算出する。
上記測定をトナー30粒について実施し、平均値を採用する。
なお、測定は1粒子ごとに必ず圧子のクリーニング(圧子のXY軸合わせ)を行う。
荷重条件50μNの場合、0μNより0.5μN/sで50μNまで荷重を与えた以外は、荷重条件30μNの場合と同様に測定する。
【0057】
(トナーからのトナー粒子の単離)
トナー粒子を試料として用いる場合、以下の方法でトナーから外添剤を除いて得たトナー粒子を使用することもできる。
(1)外添剤が外添されているトナー5gをサンプル瓶に入れ、メタノールを200mL加える。必要であれば、数滴の界面活性剤を添加する。界面活性剤としては、「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を用いることができる。
(2)超音波洗浄機で5分間試料を分散させて外添剤を分離させる。
(3)吸引ろ過(10μmメンブランフィルター)してトナー粒子と外添剤を分離する。(4)上記(2)、(3)を計3回行う。
上記操作により、トナーから外添剤を除いたトナー粒子を得ることができる。
【0058】
<トナー粒子の断面金属量測定>
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、トナー粒子の断面の電子像から多価金属の含有量を以下の方法により測定する。
測定試料は、可視光硬化性包埋樹脂(D-800、日新EM社製)とトナー粒子を混合させ、25℃の環境下で、錠剤成型器を用いて、を直径7.9mm、厚さ1.0±0.3mmの円板状に加圧成型し、トナー粒子を包埋した試料を用いる。加圧成型の条件は、35MPa、60秒で実施する。このサンプルからダイヤモンド刃を備えた超ウルトラミクロトーム(EM UC7:Leica社製)を用い、切削速度0.6mm/sで、膜厚1
00nmの薄片状のサンプルを切り出す。
このサンプルを透過型電子顕微鏡(TEM)(JEM2800型:日本電子社製)を用いて加速電圧200keV、電子線プローブサイズ1mmの条件で50万倍の倍率に拡大し、トナー粒子の断面を観察する。観察するトナー粒子の重量平均粒径(D4)±10%の長径を有する断面を観察するものとする。
続いて、得られたトナー粒子の断面の構成元素を、エネルギー分散型X線分散法(EDS: NSS Thermo electron)を利用してスペクトルを収集する。ス
ペクトルの収集範囲は下記式(1)のRの範囲とする。
シェルの厚さがd(nm)のトナー粒子の断面の外郭からトナー粒子表面と垂直方向にトナー粒子中心部に向かってラインスキャンを行い、多価金属P(M)のスペクトルを収集する。
当該測定におけるシェルの厚さdは、下記「シェルの厚さの平均値の測定」と同様に測定する。測定対象のトナー粒子における4か所のシェルの厚さの平均値をd(nm)とする。
シェルとコア粒子との区別は、トナー粒子中のシェルのみが選択的に染色される四酸化オスミウムを用いて染色し、区別する。
式(1) 0.85d≦R≦1.15d
得られたスペクトルから式(1)の範囲において多価金属のピーク値P(M)が最大の値でCliff-Lorimer法で定量分析を行い、多価金属含有量P(M)atomic%を算出する。P(M)atomic%は分析時に検出される全元素を100%としたときの原子量分率である。
Cliff-Lorimer法は、エネルギー分散型X線分散法(EDS:NSS Thermo electron)を利用する。解析の条件は定性の感度5、過電圧1.5keV、酸素原子の数0とし、共存元素の影響を補正するマトリックス補正を行い、算出する。
上記測定をトナー粒子20粒の断面に対して実施し、算術平均値を採用する。
【0059】
<シェルの厚さの平均値の測定>
測定試料は、可視光硬化性包埋樹脂(D-800、日新EM社製)とトナーを混合させ、25℃の環境下で、錠剤成型器を用いて、を直径7.9mm、厚さ1.0±0.3mmの円板状に加圧成型し、トナーを包埋した試料を用いる。加圧成型の条件は、35MPa、60秒で実施する。
このサンプルからダイヤモンド刃を備えた超ウルトラミクロトーム(EM UC7:L
eica社製)を用い、切削速度0.6mm/sで、膜厚100nmの薄片状のサンプルを切り出す。得られたサンプルを、四酸化オスミウムを用いて染色する。この操作により、トナー粒子中のシェルのみが選択的に染色される。
続けて、得られた薄片試料の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)(JEM2800型:日本電子社製)を用いて加速電圧200keV、電子線プローブサイズ1mmの条件で
50万倍で撮影する。そして、画像解析ソフトウェアを用いてTEM撮影像を解析することで、シェルの厚さを測定する。
具体的には、トナー粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線がシェルと交差する4箇所の各々で、シェルの厚さを測定する。測定された4箇所の厚さの算術平均値を、そのトナー粒子のシェルの厚さとする。そして、トナー20粒に対してそれぞれシェルの厚さを測定し、測定された厚さの個数平均値を測定対象のトナーの評価値(シェルの厚さの平均値)とする。
【0060】
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1,600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
【0061】
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤として下記の希釈液を約0.3mL加える。
・希釈液:「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力が120Wである下記の超音波分散器の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
・超音波分散器:「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス(株)製)
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が15℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0062】
<樹脂の酸価の測定方法>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。樹脂の酸価はJIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/l塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作製されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量(g)である。
【0063】
<樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定>
樹脂のTgは、示差走査熱量計(DSC測定装置)を用いて測定する。
示差走査熱量計は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(商品名、TA Instruments社製)を用い、ASTM D3418-82に準じて以下のように測定する。測定サンプル(樹脂)は、3mgを精密に秤量する。それをアルミニウム製のパン中に入れ、対照用に空のアルミパンを用いる。20℃で5分間平衡を保った後、測定範囲20℃から180℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。なお、ガラス転移温度は中点法で求める。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。なお、実施例及び比較例の部数及び%は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
【0065】
<コア粒子用ポリエステル樹脂1の製造>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、表1に示す使用量のモノマーを入れた後、触媒としてジブチル錫をモノマー総量100部に対して1.5部添加した。次いで、窒素雰囲気下にて常圧で180℃まで素早く昇温した後、180℃から210℃まで10℃/時間の速度で加熱しながら水を留去して重縮合を行った。
その後、温度210℃に昇温し、減圧させながら所望の分子量となるまで反応させて、ポリエステル樹脂1を得た。
【0066】
<コア粒子用ポリエステル樹脂2~5の製造>
表1に示すような原料に変更すること以外はポリエステル樹脂1と同様の製造方法でポリエステル樹脂2~5を作成した。
Tgの単位は℃である。また、表中の略称は以下の通り。
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
TMA:トリメリット酸
BPA-PO:ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2mol付加物
BPA-EO:ビスフェノールAのエチレンオキサイド2mol付加物
【0067】
【0068】
<コア粒子用スチレン-アクリル樹脂の製造>
撹拌機、温度計、及び窒素導入管を備えた反応容器に、スチレン80.0部、n-ブチルアクリレート20.0部及びヘキサンジオールジアクリレート0.3部を添加して撹拌しながら温度80℃まで加熱した。
続いて重合開始剤としてパーブチルO(10時間半減期温度72.1℃(日本油脂製))2.0部を加え、5時間重合しコア粒子用のスチレン-アクリル樹脂を得た。
【0069】
<シェル分散液1の製造>
温度計及び攪拌羽を備えた容量1Lの3つ口フラスコにイオン交換水300部及び希塩酸を加えてpH4に調整し、30℃で保温した。このpH4の調整液に表2に示す使用量のモノマーを添加して、分散させ、シェル分散液1を得た。
【0070】
<シェル分散液2~5の製造例>
モノマー組成を表2に記載のように変更した以外は、シェル分散液1の製造例と同様にして、シェル分散液2~5を得た。
【0071】
【0072】
(ポリエステル樹脂粒子分散液の調製)
・ポリエステル樹脂1 200部
・イオン交換水 500部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくした。
その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部とイオン交換水297部の混合溶液を徐々に滴下し乳化分散することでポリエステル樹脂粒子分散液を得た。このポリエステル樹脂粒子分散液1の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-920)を用いて測定したところ、含まれるポリエステル樹脂粒子分散液の個数平均粒径は、0.25μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0073】
(スチレンアクリル樹脂粒子分散液の調製)
加圧及び減圧可能なフラスコ内にキシレン(沸点144℃)300部を投入し、撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換した後、昇温して還流させた。
この還流下で、
・スチレン 88.50部
・メタクリル酸メチル 2.50部
・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル 5.00部
・メタクリル酸 4.00部
・ジ-tert-ブチルパーオキサイド 2.00部
の混合液を添加した後、重合温度を175℃、反応時の圧力を0.100MPaにて重合を5時間行った。その後、減圧下にて脱溶剤工程を3時間行い、キシレンを除去して、粉砕することでスチレンアクリル樹脂1を得た。
ポリエステル樹脂1の代わりにスチレンアクリル樹脂1を用いて、(ポリエステル樹脂粒子分散液の調製)と同様にして、スチレンアクリル樹脂粒子分散液を得た。
【0074】
(ワックス粒子分散液の調製)
・イオン交換水 500部
・ワックス(炭化水素ワックス;吸熱ピークが最大となる温度77℃) 250部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくした。
その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5部とイオン交換水245部の混合溶液を徐々に滴下し乳化分散を行った。このワックス粒子分散液に含まれるワックス粒子の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-920)を用いて測定したところ、含まれるワックス粒子の個数平均粒径は、0.35μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0075】
(着色剤粒子分散液1の調製)
・C.I.ピグメントブルー15:3 100部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5部
・イオン交換水 400部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。この着色剤粒子分散液に含まれる着色剤粒子の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-920)を用いて測定したところ、含まれる着色剤粒子の個数平均粒径は、0.2μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0076】
(着色剤粒子分散液2の調製)
・C.I.ピグメントレッド122 100部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5部
・イオン交換水 400部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。この着色剤粒子分散液に含まれる着色剤粒子の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-920)を用いて測定したところ、含まれる着色剤粒子の個数平均粒径は、0.2μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0077】
(着色剤粒子分散液3の調製)
・C.I.ピグメントイエロー74 100部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5部
・イオン交換水 400部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。この着色剤粒子分散液に含まれる着色剤粒子の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-920)を用いて測定したところ、含まれる着色剤粒子の個数平均粒径は、0.2μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0078】
<トナー1の製造>
(コア粒子1の製造)
・ポリエステル樹脂粒子分散液 450部
・スチレンアクリル樹脂粒子分散液 50部
・着色剤粒子分散液1 50部
・ワックス粒子分散液 50部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5部
反応器(容積1リットルフラスコ、バッフル付きアンカー翼)にポリエステル樹脂粒子分散液、スチレンアクリル樹脂粒子分散液、ワックス粒子分散液及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを仕込み、均一に混合した。一方、500mLビーカーに着色剤粒子分散液1を均一に混合しておき、これを撹拌しながら反応器に徐々に添加し混合分散液を得た。得られた混合分散液を撹拌しながら硫酸アルミニウム水溶液を固形分として0.5部、滴下し凝集粒子を形成させた。
滴下終了後、窒素を用いて系内を置換し、50℃にて1時間、さらに55℃にて1時間保持した。
その後昇温して90℃にて30分保持した。その後、63℃まで降温したのち3時間保持させ、融合粒子を形成させた。このときの反応は窒素雰囲気下で行った。所定時間終了後、毎分0.5℃の降温速度にて室温になるまで冷却を行った。
冷却後、反応生成物を10L容量の加圧濾過器にて、0.4MPaの圧力下で固液分離を行い、トナーケーキを得た。その後、イオン交換水を加圧濾過器に満水になるまで加え、0.4Mpaの圧力で洗浄した。さらに同様に洗浄して、計3回洗浄した。このトナーケーキを、0.15部の非イオン性界面活性剤を溶解させたメタノール/水の50:50混合溶媒1000部に分散して、表面処理したコア粒子分散物を得た。
このコア粒子分散物を加圧濾過器に注ぎ、さらにイオン交換水を5L加えた。その後0.4MPaの圧力下で固液分離をしたのち、45℃で流動層乾燥を行い、コア粒子1を得た。
【0079】
(トナー粒子1の製造)
上記コア粒子1分散液の固形分100.0部に対し、シェル分散液1を樹脂の固形分が1.0部になるように添加した。続けて室温(約25℃)で回転速度200rpmの条件で攪拌しながら水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH8.0に調整した。その後、70℃に昇温させて2時間攪拌することでコア粒子の表面にシェル層を形成させた。
続けて、塩酸を用いてトナー粒子の分散液をpH7に調整(中和)し、トナー粒子の分散液を室温まで冷却した。その後、塩酸を加えて分散剤であるリン酸カルシウムを溶解し、濾過、水洗、乾燥して重量平均粒径(D4)6.9μmのコアシェル構造を有するトナー粒子1を得た。
【0080】
(トナー1の製造)
トナー粒子1:100.0部、乾式シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」:正帯電性疎水化処理されたシリカ粒子)1.5部を、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて3分間混合し、トナー粒子1にシリカ粒子を付着させた。その後、300メッシュ(目開き48μm)で篩い、トナー1を得た。得られたトナー1の物性を表4に示す。
【0081】
<トナー2~19及び22~29の製造>
表3に示すように変更すること以外はトナー1と同様の製造方法で2~19及び22~29を得た。なお、凝集剤としての硫酸アルミニウムを、トナー14では塩化カルシウムに、トナー15では塩化マグネシウムに、トナー22では塩化ナトリウムに変更した。物性を表4に示す。
【0082】
<トナー20の製造>
(コア粒子20の製造)
・ポリエステル樹脂1 60.0部
・コア粒子用スチレン-アクリル樹脂 40.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン) 5.0部
・エステルワックス(ベヘン酸ベヘニル:融点72℃) 15.0部
・フィッシャートロプッシュワックス(サゾール社製C105、融点:105℃)
2.0部
・メチルエチルケトン 100.0部
・酢酸エチル 100.0部
上記材料を、アトライター(三井金属社製)を用いて3時間分散し、着色剤分散液を得た。
一方、温度60℃に加温したイオン交換水300.0部に水酸化マグネシウム1.8部
を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、撹拌速度10,000rpmにて撹拌し、水系媒体を調製した。上記水系媒体へ上記着色剤分散液を投入し、温度65℃、N2雰囲気下において、TK式ホモミキサーにて撹拌速度12,000rpmで15分間撹拌し、着色剤粒子を造粒した。
その後、TK式ホモミキサーから通常のプロペラ撹拌装置に変更し、撹拌装置の撹拌速度を150rpmに維持し、内温を温度95℃に昇温して3時間保持して分散液から溶剤を除去し、コア粒子20分散液を調製した。
【0083】
(トナー粒子20の製造)
上記コア粒子20分散液の固形分100.0部に対し、シェル分散液1を樹脂の固形分
が1.0部になるように添加した。続けて室温(約25℃)で回転速度200rpmの条件で攪拌しながら水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH8.0に調整した。その後、70℃に昇温させて2時間攪拌することでコア粒子の表面にシェル層を形成させた。
続けて、塩酸を用いてトナー粒子の分散液をpH7に調整(中和)し、トナー粒子の分散液を室温まで冷却した。その後、塩酸を加えて分散剤であるリン酸カルシウムを溶解し、濾過、水洗、乾燥して重量平均粒径(D4)6.9μmのコアシェル構造を有するトナー粒子20を得た。
【0084】
(トナー20の製造)
トナー粒子20:100.0部、乾式シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」:正帯電性疎水化処理されたシリカ粒子)1.5部を、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて3分間混合し、トナー粒子20にシリカ粒子を付着させた。その後、300メッシュ(目開き48μm)で篩い、トナー20を得た。トナー20を用いて上記評価を行い、得られた物性を表4に示す。
【0085】
<トナー21の製造>
(コア粒子21の製造)
・ポリエステル樹脂1: 60.0部
・コア粒子用スチレン-アクリル樹脂 40.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン): 5.0部
・エステルワックス(ベヘン酸ベヘニル:融点72℃) 15.0部
・フィッシャートロプッシュワックス(サゾール社製C105、融点:105℃):
2.0部
上記材料を三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機社製)で前混合した後、2軸押出機(商品名:PCM-30、池貝鉄工所社製)を用いて、吐出口における溶融物温度が140℃になるように、温度を設定し、溶融混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、粉砕機(商品名:ターボミルT250、ターボ工業社製)を用いて微粉砕した。得られた微粉砕粉末はコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級して、重量平均粒径(D4)6.8μmのコア粒子21を得た。
【0086】
(トナー粒子21の製造)
温度40℃に加温したイオン交換水250.0部に、リン酸三カルシウム1.8部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、撹拌速度15,000rpmにて撹拌し、水系媒体を調製した。
上記コア粒子21分散液の固形分100.0質量部に対し、シェル分散液1を樹脂の固
形分が1.0部になるように添加した。続けて室温(約25℃)で回転速度200rpmの条件で攪拌しながら水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH8.0に調整した。その後、70℃に昇温させて2時間攪拌することでコア粒子の表面にシェル層を形成させた。
続けて、塩酸を用いてトナー粒子の分散液をpH7に調整(中和)し、トナー粒子の分散液を室温まで冷却した。その後、塩酸を加えて分散剤であるリン酸カルシウムを溶解し、濾過、水洗、乾燥して重量平均粒径(D4)6.9μmのコアシェル構造を有するトナー粒子21を得た。
【0087】
(トナー21の製造)
トナー粒子21:100.0部、乾式シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」:正帯電性疎水化処理されたシリカ粒子)1.5部を、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて3分間混合し、トナー粒子21にシリカ粒子を付着させた。その後、300メッシュ(目開き48μm)で篩い、トナー21を得た。トナー21を用いて上記評価を行い、得られた物性を表4に示す。
【0088】
【0089】
【表4】
表中、金属含有量は、多価金属の含有量P(M)(atomic%)を示す。30μN貯蔵弾性率は、「25℃における荷重30μNでのトナーの表面貯蔵弾性率」である。50μN貯蔵弾性率は、「25℃における荷重50μNでのトナーの表面貯蔵弾性率」である。シェル厚さは、シェル厚さの平均値(nm)である。
【0090】
<画像評価>
画像形成装置として、ヒューレットパッカード製のカラーレーザービームプリンター(HP LaserJet Enterprise Color M652n)を用い、プロセススピードが400mm/secとなるように改造を施した。カートリッジとして、HP 656X純正LaserJetトナーカートリッジ(シアン)を用いた。
カートリッジ内部から製品トナーを抜き取り、エアブローによって清掃した後、評価するトナーを300g充填した。上記画像形成装置及びカートリッジを用い下記評価を行った。
【0091】
〔カブリ〕
カブリは、高温高湿環境下(30℃/80%RH)で評価した。評価紙として、XEROX4200用紙(XEROX社製75g/m2)を用いた。
高温高湿環境下において、印字率1%となるE文字画像を4秒ごとに2枚出力する間欠耐久印字を20000枚実施した。
その後、ベタ白画像を出力して、白地部反射濃度最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Dr-Dsをカブリ値とした。
白地部反射濃度の測定は、反射濃度計(リフレクトメーター モデル TC-6DS 東京電色社製)を用い、フィルターには、アンバーライトフィルターを用いた。
数値が小さいほどカブリレベルが良いことを示す。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
A:0.5%未満
B:0.5%以上1.5%未満
C:1.5%以上3.0%未満
D:3.0%以上
【0092】
〔現像スジ(現像性)〕
現像スジは、トナーのつぶれや割れにより発生する0.5mm程度の縦スジであり、全面ハーフトーン画像を出力した際に観察されやすい画像不良である。
現像スジの評価は、低温低湿環境下(15℃/10%RH)で評価した。
評価紙として、XEROX4200用紙(XEROX社製75g/m2)を用いた。
低温低湿環境下において、印字率1%となるE文字画像を4秒ごとに2枚出力する間欠耐久印字を20000枚実施した。その後、全面ハーフトーン画像を出力し、スジの有無を観察した。結果を表5に示す。
(評価基準)
A:未発生
B:現像スジが1カ所以上3カ所以下発生
C:現像スジが4カ所以上6カ所以下発生
D:現像スジが7カ所以上発生、あるいは、幅0.5mm以上の現像スジが発生
【0093】
〔定着性〕
転写材にベタ画像(トナーの載り量:0.9mg/cm2)を、定着温度を変えてプリントし、下記の基準で評価した。なお、定着温度は定着ローラー表面を非接触の温度計を用いて測定した値である。転写材は、LETTERサイズの普通紙(XEROX 4200、XEROX社製、75g/m2)を用いた。
(評価基準)
A:140℃でオフセットせず
B:140℃でオフセット発生
C:150℃でオフセット発生
D:160℃でオフセット発生
【0094】
〔ブロッキング(保存性)〕
各トナー5gを50mL樹脂製カップに取り、温度55℃/湿度10%RHで3日間放置し、凝集塊の有無を調べ、下記の基準で評価した。
(評価基準)
A:凝集塊発生せず
B:軽微な凝集塊が発生、軽く指で押すと崩れる
C:凝集塊が発生、軽く指で押しても崩れない
D:完全に凝集
【0095】
〔実施例1~21〕
実施例1~21では、トナーとして、トナー1~21をそれぞれ用いて上記評価を行った。その評価結果を表5に示す。なお、以下、実施例16及び19は、それぞれ参考例16及び19とする。
【0096】
〔比較例1~8〕
比較例1~8では、トナーとしてトナー22~29をそれぞれ用いて上記評価を行った。その評価結果を表5に示す。
【0097】