(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】ねじ山をチップレスで製造しまたは仕上する工具、その工具の製造方法、およびねじ山の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23G 7/02 20060101AFI20241209BHJP
B21H 3/08 20060101ALI20241209BHJP
B23C 3/02 20060101ALI20241209BHJP
B23P 15/00 20060101ALI20241209BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241209BHJP
【FI】
B23G7/02
B21H3/08
B23C3/02
B23P15/00 Z
B33Y10/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020186321
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】10 2019 130 009.6
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505455004
【氏名又は名称】エミューゲ ヴェルク リチャード グリンペル ゲーエムベーハー ウント カンパニー ケージー ファブリック ファープレーツィシオンスヴェルクツォイゲ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ヘクトル、ディートマー
(72)【発明者】
【氏名】ウブラー、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】フェンゼル、ユルゲン
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-088072(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006036434(DE,A1)
【文献】特表2015-504787(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109352099(CN,A)
【文献】特表2018-527203(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03170601(EP,A1)
【文献】国際公開第2006/117850(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014112164(DE,A1)
【文献】特開平11-019825(JP,A)
【文献】特表2012-506322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21H 3/02、08
B23G 7/02
B23P 15/00、50、52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース内またはワークピース上に、ねじ山をチップレスで製造しまたは仕上げする工具であって、
雌ねじをチップレスで製造しまたは仕上げるための、工具軸を中心に回転可能な少なくとも1つの成形部を備え、
前記成形部は、工具軸から半径方向外側に突出する複数の押圧ローブを備え、当該複数の押圧ローブの前記ワークピース表面への押圧によってねじ山が製造または仕上げされ、
前記複数の押圧ローブは、工具軸の周りに実質的にらせん状に延びる成形曲線に沿って連続的に配置され、
前記成形曲線のピッチは、製造または仕上げされる前記ねじ山のピッチと実質的に対応し、
前記成形曲線は、らせん角を有し、
少なくとも1つの押圧ローブのプロファイルは、工具軸を含む軸方向断面において、少なくとも部分的に
、丸いアーチ形また
はオジーブ形であ
り、
前記押圧ローブは少なくとも2つの押圧リッジに配置され、前記少なくとも2つの押圧リッジのうちの1つが第1押圧リッジであり、他の1つが第2押圧リッジであり、
前記第2押圧リッジは、前記第1押圧リッジよりも成形曲線に沿って長く、前記第1押圧リッジよりも掃引角が1.5~2.5倍の長さを有する、工具。
【請求項2】
1つまたは複数または全ての前記押圧ローブの前記プロファイルは、丸形、オジーブ形、押圧ローブ先端部が丸いオジーブ形、押圧ローブ先端部の領域が第1半径で側面部の領域が第2半径であるオジーブ形、脚部が延びたオジーブ形、のプロファイルのうちの1つから選択される、請求項1に記載の工具。
【請求項3】
2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ以上の押圧ローブを備え
る、請求項1または2に記載の工具。
【請求項4】
冷却チャネルを有し、この冷却チャネルは、前記成形部のシャンク側の部分に出口開口部を有する、請求項1から
3のいずれかに記載の工具。
【請求項5】
前記押圧ローブの少なくともいくつかは、前記成形曲線に沿った回転方向において押圧ローブ先端部の前方に位置する初期成形領域および/または前記成形曲線に沿った回転方向において当該押圧ローブ先端部の後方に位置する自由表面領域を有し、前記初期成形領域および/または
前記自由表面領域と、当該押圧ローブ先端部とが成す前記成形曲線に沿った形状は多角形状である、請求項1から
4のいずれかに記載の工具。
【請求項6】
前記初期成形領域は、遷移領域によって
前記押圧ローブ先端部の領域に合流し、および/または
前記押圧ローブ先端部の領域は、さらなる遷移領域によって
前記自由表面領域に合流する、請求項
5に記載の工具。
【請求項7】
前記成形部は、成形領域と、校正領域と、を備え、
前記成形領域における前記成形曲線は、1回転から3回転であり、前記校正領域における前記成形曲線は、2回転から20回転である、請求項1から
6のいずれかに記載の工具。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれかに記載の工具で、ねじ山を非切削で製造しまたは仕上げする方法であって、
前記ねじ山は、らせん角を有するねじ山ピッチを有し、前記工具軸を含む断面において少なくとも部分的に丸形またはオジーブ形である、方法。
【請求項9】
請求項1から
7のいずれかに記載の工具で、ねじ山を仕上げする方法であって、
前記ねじ山は、らせん角を有するねじ山ピッチを有し、前記工具軸を含む断面において、少なくとも部分的に丸形またはオジーブ形であり、
前記ねじ山は、切削された後に仕上げされる、方法。
【請求項10】
ワークピース内またはワークピース上にねじ山を非切削で製造しまたは仕上げるための請求項1から
7のいずれかに記載の工具の製造方法であって、その方法は、
a)ブランクを提供し、押圧ローブをフライス加工または切削加工する、
b)シャフトを提供し、付加製造プロセスで、押圧ローブを構築する、
から選択される、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ山をチップレスで製造または仕上げする工具、その工具の製造方法、およびねじ山の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじ駆動は、ねじとナットとの間にボールを挿入したねじ駆動である。ねじとナットとの間で回転すると、ボールは対応するボールねじ(またはボールねじ溝)を転がる。このようなボールねじは、従来、取り付けポイントを使用して製造された。よく知られている手順は、時間がかかる。このようなボールねじは、高精度でなければならない。高精度は、製造されたねじ山が測定されうる場合にのみ達成される。
【0003】
このようなねじ山を測定するために、スタイラス計測器は、例えば、DE19947001A1、DE102013015237A1またはDE102017103954A1から知られている。このような走査測定は、依然として光学測定よりも高い精度を有する。スタイラス計測器を使用するためには、測定される線は一定の特性を有していなければならず、特に、表面の突出した領域は、スタイラス計測器の表面への配列を妨げる可能性がある。スタイラス計測器には、プローブヘッド付きのスタイラスフィンガーがある。このスタイラスフィンガーは、測定ラインに沿ってガイドされる。雌ねじの測定線は、特にねじ軸に平行に延在する。
【0004】
従来技術によれば、切削することなくねじ山を製造または仕上げる冷間成形タブが知られている。これらの工具では、ワークピースを形成することによって切削することなくねじ山が製造され、成形ウェッジまたは成形歯としても知られるいわゆる押圧ローブは圧力によってワークピースの冷間変形を引き起こす。このような押圧ローブには側面(flanks)がある。これらの工具の利点は、表面の変形とそれに伴う硬化が、ねじ山プロファイルの領域における材料の硬度を高め、それにより、切り屑ねじ山生成を用いた場合よりも耐摩耗性の高いねじ山が生成されることである。
【0005】
特に雌ねじ製造用の公知の冷間成形タブは、シャンクと、作業領域と、を備える。シャンクは、通常、円筒形であり、ワークピースとは反対側を向いたその端部は、ねじ山成形装置のチャックに受け入れられて保持される。作業領域、特に成形部は、シャンクの反対側の冷間成形タブの側に位置する。
【0006】
成形部には、周方向に沿ってらせん状の成形曲線が設けられており、この成形曲線に沿って押圧ローブが隆起として成形される。
【0007】
DE102012100734A1から知られている冷間成形タブの場合、成形曲線に沿って連続する2つの押圧ローブの間のピッチ角は、すべての押圧ローブについて同じである。成形曲線に沿った押圧ローブの先端間の想像上の直線的な接続線は、半径方向の偏差は別として、工具軸に垂直な表面への投影において、基本的には通常のn角形(多角形)を形成し、ここでは、工具軸を中心とした成形曲線の1回転あたりにn個の押圧ローブが配置されている。各n番目の押圧ローブは、工具軸と平行な直線に沿って配置されている。直線に沿って配置されたこれらの押圧ローブは、いわゆる押圧リッジを形成する。さらに、冷間成形部は、DE102012100734A1からも知られている。
【0008】
公知のねじ山成形具では、押圧ローブは、成形曲線に対して垂直に決定されるプロファイルを有する。押圧ローブは、特に押圧ローブの上部領域において、三角形、楕円形または円筒形のプロファイルを有する。このようなプロファイルは、成形曲線のコースに垂直である。成形曲線に垂直な断面は、さらに、法線断面と呼ばれる。ねじ山ピッチを有する成形曲線の場合、これは、法線断面のプロファイルがねじ山カッターの回転軸を含む面、すなわち軸方向断面に向かってピッチ角αだけ傾いていることを意味する。回転軸を含む平面(軸断面平面)は、円筒座標系のr-z平面である。らせん角αは、θ-z平面にあり、θは座標系の角度座標である。α=0°の場合、曲線はピッチを持たず、回転軸に垂直な回転となる。α=90°は、回転軸の方向に対応する。
【0009】
このようなプロファイルは、公知のスタイラス計測器を用いて十分な制度で測定することができない。特に、押圧ローブに沿ったプロファイルは、公知の、特に多角形に形成されたねじ溝では、十分な精度で計測できない。
【発明の概要】
【0010】
本発明の1つの目的は、より高い精度を有するねじ山をチップレスで製造しまたは仕上げる工具を提供することである。本発明のさらなる目的は、スタイラス計測器を用いてより正確に計測できるねじ山の製造方法、および、そのようなねじ山を製造するためのねじ山工具の製造方法を規定することにある。
【0011】
工具に関して、目的は、ワークピース内またはワークピース上に、ねじ山、特にボールねじ非切削で製造しまたは仕上げする工具、特に冷間成形タブまたはねじ成形具であって、ねじ山、特に雌ねじを非切削で製造しまたは仕上げするための、工具軸を中心に回転可能な少なくとも1つの成形部を備える工具によって解決される。成形部は、工具軸から半径方向外側に突出するいくつかの押圧ローブを有し、当該いくつかの押圧ローブのワークピース表面への押圧によってねじ山が製造または仕上げされる。押圧ローブは、工具軸の周りに実質的にらせん状に延びる成形曲線に沿って連続的に配置される。成形曲線の勾配は、製造または仕上げされるねじ山の勾配と実質的に対応し、ここでは成形曲線はらせん角αを有する。本発明によれば、少なくとも1つの押圧ローブのプロファイルは、工具軸を含む軸方向断面において、製造されるねじ山が少なくとも部分的に丸いアーチ形またはオジーブ形(ogival)であるように設計される。ねじ山カッターの回転軸を含む断面は、軸方向断面である。ねじ山ピッチを有する成形曲線の場合、これは、法線断面のプロファイルがねじ山カッターの回転軸を含む面、すなわち軸方向断面に向かってピッチ角αだけ傾いていることを意味する。好ましくは、いくつかの押圧ローブまたはすべての押圧ローブのプロファイルは、このように設計される。丸い形状またはオジーブ形状のため、軸方向断面における表面にプローブヘッドが到達しやすくなり、測定精度が向上する。
【0012】
丸いアーチ形は、特に、半径が変化する円筒形、楕円形、または凸形であると理解される。オジーブ形は、特に、半径が一様または変化するゴシック様式のアーチ形と理解される。オジーブ形のアーチの先端は、丸みを帯びていてもよい。一実施形態では、変化する半径は、異なる半径、例えば2~5の異なる半径を有する異なる部分を有し、特に、曲率が第1半径から第2半径に変化するようにそれらの間に遷移領域を有するプロファイルであってもよい。
【0013】
一実施形態では、少なくとも第1押圧ローブのプロファイルは、工具軸を含む断面において、少なくとも部分的に、特に全体的に、丸いアーチ形またはオジーブ形である。特に、第1押圧ローブの半径方向外側の領域、好ましくは押圧ローブ先端部を含む領域は、丸形またはオジーブ形のプロファイルを有する。特に、プロファイルは、丸いアーチ形、オジーブ形、先端部が丸いオジーブ形、先端部の領域が第1半径で側面部の領域が第2半径であるオジーブ形、脚部が延びたオジーブ形のうちのいずれかである。軸方向断面において隣接する2つの押圧ローブは、溝によって分離されていてもよい。そのような溝は、軸方向断面において、特に平坦または凹状であってもよい。
【0014】
さらなる実施形態では、工具は、特に2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ以上の押圧ローブを備え、および/または、押圧ローブは、少なくとも2つの押圧リッジに配置される。このような押圧リッジは、本発明の意味では、複数の押圧ローブによって形成される。これは特に、各n番目の押圧ローブが工具軸に平行な直線に沿って、すなわち360°の角度で配置されている押圧リッジである。特に、第1押圧ローブは、押圧リッジに配置されている。いくつかの第1押圧ローブを有する押圧リッジ、特に成形部に排他的に第1押圧ローブを有する押圧リッジは、第1押圧リッジである。このように、第1押圧ローブは、軸方向断面において、特に、押圧ローブの先端部を含む領域において、丸形またはオジーブ形のプロファイルを有している。この構成では、工具軸に沿った工具のプロファイル、特に押圧ローブ先端部に沿った工具のプロファイルは、スタイラス計測器を用いて特に良好に計測できる。
【0015】
次に、幾何学的変換により、製造されるべきねじ山の形状を正確に計算するか、または、製造されるべきねじ山の形状と法線断面における要求されるプロファイルとから、軸方向断面における対応するプロファイルを計算することができる。
【0016】
任意に、成形曲線に沿った押圧リッジのうちの1つは、他の押圧リッジよりも長く、特に、最も長い押圧リッジである第2押圧リッジは、より短い、特に第1押圧リッジよりも、特に掃引角θが1.5~2.5倍の長さである。一実施形態では、最も長い押圧リッジは、したがって、間に潤滑溝のない2つの隣接する押圧リッジに実質的に対応する。
【0017】
特に、より長い第2押圧リッジは、いくつかの第2押圧ローブを有する押圧リッジ、特に、成形部に排他的に第2押圧ローブを有する押圧リッジであってもよい。特に、工具は、ちょうど1つの第2押圧リッジと、いくつかの第1押圧リッジと、を備える。第1および第2押圧リッジは、理想的には、類似または同一のプロファイルを有することが好ましい。
【0018】
一実施形態では、工具は、少なくとも1つの、特にいくつかの冷却チャネルを有し、それぞれの冷却チャネルは、成形部のシャンク側の部分に出口開口部を有する。
【0019】
さらなる実施形態では、押圧ローブ、特に第1および/または第2押圧ローブの少なくともいくつかは、初期成形領域および/または自由表面領域を有する。初期成形領域では、押圧ローブの高さが半径方向に増加し、自由表面領域では、押圧ローブの高さが半径方向に減少するので、ここにクリアランス角が存在する。初期成形領域は、成形曲線に沿った回転方向における、押圧ローブ先端部の前方に位置する。クリアランス領域は、押圧ローブ先端部の回転方向後方に位置する。
【0020】
初期成形領域および/または自由表面領域は、多角形のコースをたどることができる。成形領域は、遷移領域によって押圧ローブ先端部の領域に合流し、および/または、押圧ローブ先端部の領域は別の遷移領域によって自由表面領域に合流する。特に、初期成形領域は、5°~17°の範囲内の、特に12°の成形エッジ角を有することができる。
【0021】
一実施形態では、成形部は、成形領域と、校正領域と、を備え、成形領域における成形曲線は、特に1回転から3回転であり、校正領域における成形曲線は、特に2から20回転、好ましくは5から10回転である。さらなる構成では、校正領域は、校正領域の直径がシャンクに向かって増加するような円錐形であってもよい。
【0022】
本発明による工具でねじ山、特にボールねじ、好ましくは雌ねじを非切削で製造しまたは仕上げする本発明による方法で、ねじ山を製造でき、ねじ山は、らせん角αを有するねじ山ピッチを有し、それ自体公知のスタイラス計測器を用いた走査に適している。本発明による方法の利点は、ねじ山の精度が高く、より少ない時間の支出で製造できることである。
【0023】
一実施形態では、工具軸を含む部分で製造されるねじ山は、少なくとも部分的に丸形またはオジーブ形、特に円筒形である。
【0024】
ねじ山は、切削された後に仕上げされる。
【0025】
本発明による工具、特に冷間成形タブまたはねじ山成形具の製造のための本発明による方法は、ワークピース内またはワークピース上にねじ山、特にボールねじを非切削で製造しまたは仕上げするのに適している。その方法は、特に、ブランク(blank)を提供し、押圧ローブをフライス加工または切削加工するステップか、シャンクを提供し、付加製造プロセス、特に3Dプリントで、押圧ローブを構築するステップを備える。
【0026】
本発明はまた、実施形態の説明および添付の図面を参照して、さらなる特徴および利点に関して以下にさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明によるねじ山タップの一実施形態を示す図である。
【
図2】
図1のねじ山タップの実施例をさらに示す図である。
【
図3】
図1のねじ山タップの実施例の先端部を示す図である。
【
図4】成形曲線に沿った押圧ローブのプロファイルを示す図である。
【
図6】軸方向断面および法線断面における押圧ローブのプロファイルの重ね合わせ図である。
【
図7a】押圧ローブの異なるオジーブ形のプロファイルを示す図である。
【
図7b】押圧ローブの異なるオジーブ形のプロファイルを示す図である。
【
図7c】押圧ローブの異なるオジーブ形のプロファイルを示す図である。
【
図8a】押圧ローブの異なるオジーブ形のプロファイルを示す図である。
【
図8b】押圧ローブの異なるオジーブ形のプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1の冷間成形タブ1は、シャンク2と、成形部5と、を有する。シャンクは、少なくとも部分的に円筒形であり、成形部5とは反対側の端部は四角いプロファイルを有し、これは、ねじ山形成装置のチャックに取り付けるのに適している。冷間成形タブは、回転軸である工具軸Aを有する。
【0029】
成形部5は、工具先端に面する成形領域3と、校正領域4と、に分けられる。成形部5では、押圧リッジ9,10に押圧ローブ7が配置されている。押圧リッジ9,10は、直線状の押圧リッジである。押圧ローブ7は、らせん角度αを有するらせん状の成形曲線6上にある。押圧ローブ7は、校正領域4では、成形領域3よりも、より大きな半径方向の高さを有する。潤滑溝11は、2つの隣接する押圧リッジ9,10の間に配置されている。押圧リッジ9,10および潤滑溝11は、工具軸Aに平行に延在する。
【0030】
押圧リッジ9,10における隣接する押圧ローブ7は、直接隣接するのではなく、図示の実施形態では軸方向断面が平坦である溝14によって互いに分離されている。ここで、溝14は、成形曲線6に平行に延在する。押圧ローブ7は、工具軸に平行なプロファイル20、すなわち軸方向断面のプロファイルを有する。このプロファイル20は、プロファイル境界曲線21aによって工具軸方向に境界付けられている。隣接する押圧ローブ7の2つのプロファイル境界曲線は、ここでは合流しないが、溝14でそれぞれの端部が合流する。成形曲線6に垂直な断面、すなわち法線断面では、同じ押圧リッジは、ゼロに等しくない螺旋角度で異なるプロファイル境界曲線21bを有する。図示されていない代替の実施形態では、隣接する押圧ローブ7はまた、溝なしで隣接することができ、またはシャフト軸に向かって先細りする凹状溝によって分離されうる。最初のケースでは、それぞれのプロファイル境界曲線は、接合部または凹状溝への遷移で終了する。
【0031】
図2および特に
図3に示すように、押圧リッジ9,10は、異なる長さを有する。
図3の工具先端の図では、冷間成形タブ1は多角形であり、ここでは5つの角を有する。押圧リッジ9のそれぞれは、多角形の角を有する。押圧ローブ7aおよび7cを有する押圧リッジ9は、第1長さを有し、それぞれは1つの多角形の角を構成している。これらは、第1押圧リッジ7aおよび7cを有する第1押圧リッジ9である。押圧ローブ7bを有する押圧リッジ10は、より長い長さを有し、2つの多角形の角を含む。これは、第2押圧ローブ7bを有する第2押圧リッジ10である。各押圧ローブの多角形の角の領域は、押圧ローブの他の領域よりも工具軸Aまでの半径方向の距離が長い押圧ローブ先端部8を形成している。第2押圧ローブ7bは、押圧ローブ先端部8a,8bを有し、押圧ローブ先端部8aは、押圧ローブ先端部8bの後方の成形曲線上にある。押圧ローブ先端部8a,8bは、工具軸に対して異なる半径方向の距離を有することができる。
【0032】
初期成形領域15および自由表面領域16を有する、より短い第1押圧ローブ7aおよび/またはより長い第2押圧ローブ7bは、
図4に示されるように、特に、成形エッジ角δを有する。多角形の角に向かって遷移領域が形成されている。押圧ローブ8の頂点は、成形曲線6に沿って、かつ、垂直面に対してαだけ傾斜した平面すなわち軸方向断面において、円筒形のプロファイル、したがってここでは丸いアーチ形のプロファイルを有し、さらに遷移領域を越えてクリアランス角ξを有する自由表面領域に至るまでの、湾曲な又は滑らかな領域を有する。この例では、クリアランス角ξは、実質的に、成形エッジ角δ、特に成形エッジ角±5°に対応する。
【0033】
図5は、成形曲線6に沿って巻かれたねじ山31を有するねじ山プロファイル30を示す。法線断面N、すなわち軸断面に対してピッチ角αだけ傾斜したビューにおいて、図示されたねじ山プロファイルは、丸い円弧形のプロファイル、特に円筒形のプロファイルを有する。
【0034】
図6~8は、法線断面または軸方向断面における、押圧ローブ、特に押圧ローブ先端部のさらなるプロファイルを示す。
図6は、法線断面と軸方向断面とが重なっている押圧ローブのプロファイルの第2実施形態を示す。円弧Kは、視覚的なサポートとしてのみ役目を果たし、プロファイル境界曲線21a,21bに沿って変化する半径の認識を容易にする。プロファイル境界曲線21aは、軸方向断面にけるプロファイル境界曲線を表し、プロファイル境界曲線21bは、法線断面におけるプロファイル境界曲線を表す。プロファイル境界曲線21a,21bは両方ともオジーブ形である。2つのプロファイル境界曲線21a,21bは、それぞれの溝14に面する下部領域で異なっている。
図7aは、軸方向断面におけるオジーブ形のプロファイルを示し、
図7bは、丸い先端を有する軸方向断面におけるオジーブ形のプロファイルを示す。
図7cは、軸方向断面におけるさらなるオジーブ形のプロファイルを示しており、前に示したプロファイルから逸脱して、それぞれの溝14に面する領域の半径は半径R1であり、これはオジーブ形アーチの先端の領域で半径R2に合流し、ここではR1<R2である。
【0035】
図8a、8bは、特に押圧ローブ先端部の領域における、押圧ローブのプロファイルのさらなる実施形態を示す。
図8aでは、2つの尖ったアーチの2つの脚部は、一様な半径を有する。
図8bでは、当該2つの脚部の半径は、溝14に面した領域で増加し、脚部は接線方向に延びている。
【符号の説明】
【0036】
1 工具
2 シャンク
3 成形領域
4 校正領域
5 成形部
6 成形曲線
7 押圧ローブ
8 押圧ローブ先端部
9 第1押圧リッジ
10 第2押圧リッジ
11 潤滑溝
12 冷却チャネル出口
14 溝
15 初期成形領域
16 自由表面領域
20 プロファイル
21a 第1プロファイル境界曲線
21b 第2プロファイル境界曲線
30 ねじ山プロファイル
31 ねじ山
A 工具軸
N 法線切断平面
α らせん角
δ 成形エッジ角
ξ クリアランス角
θ 座標系の角度座標
K 円弧