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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】熱膨張性微小球、その製造方法及び用途
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20241209BHJP
   B01J 13/18 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
C09K3/00 111B
B01J13/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020189047
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078397
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】太野垣 直哉
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-529316(JP,A)
【文献】国際公開第2019/101749(WO,A1)
【文献】特開2014-097019(JP,A)
【文献】特開2010-207211(JP,A)
【文献】特開2015-003951(JP,A)
【文献】特開2011-195813(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0296461(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/02-13/22
C09K 3/00-3/32
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる外殻とそれに内包され、かつ加熱することによって気化する発泡
剤とから構成される熱膨張性微小球であって、
前記熱可塑性樹脂が単量体(A)を含む重合性成分の重合体であり、
前記単量体(A)がα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンであり
前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が5~90重量%である、熱膨張性微小球。
【請求項2】
前記重合性成分がニトリル系単量体をさらに含む、請求項1に記載の熱膨張性微小球。
【請求項3】
熱可塑性樹脂からなる外殻とそれに内包され、かつ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球の製造方法であって、
水性分散媒中に、重合性成分と前記発泡剤とを分散させ、前記重合性成分を重合させる工程を含み、
前記重合性成分が、単量体(A)を含み、
前記単量体(A)がα-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトンであり
前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合が5~90重量%である、熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の熱膨張性微小球の膨張体である、樹脂中空粒子。
【請求項5】
請求項に記載の樹脂中空粒子と、前記樹脂中空粒子の外殻部の外表面に付着した微粒子とからなる、微粒子付着樹脂中空粒子。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の熱膨張性微小球、請求項に記載の樹脂中空粒子、及び請求項に記載の微粒子付着樹脂中空粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分を含む組成物。
【請求項7】
請求項に記載の組成物を成形してなる、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性微小球、その製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を外殻とし、その内部に発泡剤が封入された構造を有する熱膨張性微小球は、一般に熱膨張性微小球(熱膨張性マイクロカプセル)と呼ばれている。熱膨張性微小球は、熱処理を加えることで膨張する特長を有する微小球体である。
この熱膨張性微小球は幅広い用途に利用されており、例えば、熱膨張性微小球は基材に配合される。成形時に与えられる熱処理により、成形と同時に熱膨張性微小球は膨張し、成形物の軽量化だけではなく、成形物に意匠性やクッション性等を付与することができる。
熱膨張性微小球は膨張機能を確保するため、その外殻に使用される熱可塑性樹脂は通常、ガスバリア性を有していることが必要となる。このような熱膨張性微小球としては、例えば、塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、アクリル系共重合体等で構成された外殻を用い、発泡剤としてはイソブタンやイソペンタン等の炭化水素を主に使用したものが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第3615972号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1で開示されている熱膨張性微小球では、良好な熱膨張挙動が得られるものの比較的低温であり、成形加工時に耐熱性が不足し、効果的に膨張することができないことが確認された。
このように、耐熱性に優れ、高い膨張特性を有する熱膨張性微小球はこれまで無かった。
【0005】
本発明の目的は、耐熱性に優れ、高い膨張特性を有する熱膨張性微小球とその製造方法、及び用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、特定の重合性成分を重合して得られる熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂からなる外殻とそれに内包され、かつ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、前記熱可塑性樹脂が単量体(A)を含む重合性成分の重合体であり、前記単量体(A)がヒドロキシル基、ラクトン環、及び1個の重合性炭素-炭素二重結合を有する、熱膨張性微小球である。
【0008】
本発明の熱膨張性微小球は、前記重合性炭素-炭素二重結合を構成する炭素原子の少なくとも1個が、カルボニル基を構成する炭素原子を除いた前記ラクトン環を構成する炭素原子と同一であると、好ましい。
本発明の熱膨張性微小球は、前記ヒドロキシル基と前記ラクトン環が結合していると、好ましい。
本発明の熱膨張性微小球は、前記単量体(A)が、下記一般式(1)で示される化合物であると、好ましい。
【0009】
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~8のアルキル基である。)
【0010】
本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、熱可塑性樹脂からなる外殻とそれに内包され、かつ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球の製造方法であって、水性分散媒中に、重合性成分と前記発泡剤とを分散させ、前記重合性成分を重合させる工程を含み、前記重合性成分が、単量体(A)を含み、前記単量体(A)がヒドロキシル基、ラクトン環、及び1個の重合性炭素-炭素二重結合を有する。
【0011】
本発明の樹脂中空粒子は、上記熱膨張性微小球の膨張体である。
本発明の微粒子付着樹脂中空粒子は、上記樹脂中空粒子と、前記樹脂中空粒子の外殻部の外表面に付着した微粒子とからなるものである。
【0012】
本発明の組成物は、上記熱膨張性微小球、上記樹脂中空粒子、及び上記微粒子付着樹脂中空粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分を含む。
本発明の成形体は、上記組成物を成形してなるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱膨張性微小球は、耐熱性に優れ、高い膨張性能を有する。
本発明の樹脂中空粒子は、上記熱膨張性微小球を原料として得られるので、耐熱性に優れ、低比重である。
本発明の微粒子付着樹脂中空粒子は、上記熱膨張性微小球を原料として得られるので、耐熱性に優れ、低比重である。
本発明の組成物は、上記熱膨張性微小球、上記樹脂中空粒子及び上記微粒子付着樹中空粒子から選ばれる少なくとも1種を含んでいるため、軽量な成形体を得ることができる。
本発明の成形体は、軽量である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】熱膨張性微小球の一例を示す概略図である。
図2】微粒子付着樹脂中空粒子の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔熱膨張性微小球〕
本発明の熱膨張性微小球は、図1に示すように、熱可塑性樹脂からなる外殻(シェル)6と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤(コア)7とから構成される熱膨張性微小球である。この熱膨張性微小球はコア-シェル構造をとっており、熱膨張性微小球は微小球全体として熱膨張性(微小球全体が加熱により膨らむ性質)を示す。熱可塑性樹脂は、重合性成分を重合して得られる。
【0016】
重合性成分は、重合することによって、熱膨張性微小球の外殻を形成する熱可塑性樹脂となる成分である。重合性成分は、単量体成分を必須とし架橋剤を含むことがある成分である。単量体成分は、重合性炭素-炭素二重結合を1個有する単量体を意味し、付加重合可能な成分である。また、架橋剤は重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2個有する単量体を意味し、橋架け構造を熱可塑性樹脂に導入する成分である。
【0017】
重合性成分は、ヒドロキシル基、ラクトン環、及び一個の重合性炭素-炭素二重結合を有する単量体(A)を含む。重合性成分が単量体(A)を含むことで、得られる重合体はラクトン環とヒドロキシル基を有することができる。重合体がラクトン環を有することで、重合体は剛直性を有すると考えられる。さらに、重合体がヒドロキシル基を有することで、得られる熱可塑性樹脂はガスバリア性を有することが可能となると考えられる。これにより、得られる熱膨張性微小球は耐熱性に優れ、高い膨張特性を有すると考えられる。
【0018】
単量体(A)が有するラクトン環としては、特に限定はないが、好ましくは5~11員環構造である。単量体(A)の有するラクトン環が上記範囲の環員数の構造であると、熱膨張性微小球の製造安定性が向上する傾向がある。ラクトン環の環員数の上限は、より好ましくは8員環、さらに好ましくは7員環、特に好ましくは6員環である。
【0019】
単量体(A)においては、特に限定はないが、炭素-炭素二重結合を構成する炭素原子の少なくとも1個が、カルボニル基を構成する炭素原子を除いたラクトン環を構成する炭素原子と同一であると、好ましい。炭素-炭素二重結合を構成する炭素原子の少なくとも1個が、カルボニル基を構成する炭素原子を除いたラクトン環を構成する炭素原子と同一であると、得られる重合体鎖中にラクトン環を組み込むことができ、重合体の剛直性が向上し、重合体の自由体積が低減し、重合体の分子間相互作用による分子鎖の絡み合い密度が高くなり、熱可塑性樹脂は高い粘弾性特性を有することができるため、高い熱膨特性が得られると考えられる。
単量体(A)が有する炭素-炭素二重結合の少なくとも1個が、カルボニル基を構成する炭素原子を除いたラクトン環を構成する炭素原子と同一である場合、その態様としては、炭素-炭素二重結合を構成する炭素原子の1個が、カルボニル基を構成する炭素原子を除いたラクトン環を構成する炭素原子と同一であると、好ましい。
【0020】
単量体(A)は、特に限定はないが、単量体(A)が有するヒドロキシル基とラクトン環が結合していると、好ましい。ヒドロキシル基とラクトン環が結合していると、得られる重合体の電荷の偏り凝集エネルギー密度が高くなり、熱可塑性樹脂は高いガスバリア性を有することが可能となるため、高い熱膨特性が得られると考えられる。
単量体(A)が有するヒドロキシル基の数としては、特に限定はないが、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個、特に好ましくは1個である。
【0021】
単量体(A)は、特に限定はないが、下記一般式(1)で示される化合物であると、得られる重合体鎖の剛直性、ガスバリア性を高めることができるため、好ましい。
【0022】
【化1】
【0023】
式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~8のアルキル基である。
一般式(1)中のRが炭素数1~8のアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は、特に限定はないが、より好ましくは1~5、さらに好ましくは1~3、特に好ましくは1~2、最も好ましくは1(メチル基)である。
の態様としては、水素原子であると、得られる重合体鎖の絡み合い密度をより高めることができるため、好ましい。
【0024】
一般式(1)中のRが炭素数1~8のアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は、特に限定はないが、より好ましくは1~5、さらに好ましくは1~3、特に好ましくは1~2、最も好ましくは1(メチル基)である。
の態様としては、水素原子であると、得られる重合体鎖の絡み合い密度をより高めることができるため、好ましい。
【0025】
単量体(A)としては、例えば、スウェルチアマリン、アンドログラホリド、α-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトン等が挙げられ、これらの単量体(A)は1種又は2種以上を併用してもよい。
単量体(A)は、動物や植物等の生物由来の化合物を使用してもよい。
【0026】
重合性成分に占める単量体(A)の重量割合としては、特に限定はないが、好ましくは5重量%以上である。重合性成分に占める単量体(A)の重量割合が5重量%未満であると、本発明の効果が得られないことがある。重合性成分に占める単量体(A)の重量割合の上限は、好ましくは100重量%、より好ましくは90重量%、さらに好ましくは75重量%、特に好ましくは65重量%、最も好ましくは50重量%である。一方、単量体(A)の重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは25重量%である。
【0027】
重合性成分は単量体成分として、単量体(A)以外の単量体成分(単に、その他の単量体成分ということがある。)を含んでもよい。
その他の単量体成分としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル等のニトリル系単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸や、不飽和ジカルボン酸の無水物や、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等が挙げられる。カルボキシル基含有単量体は、一部または全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。なお、本発明では、アクリル酸又はメタクリル酸を合わせて(メタ)アクリル酸ということもあり、アクリレート又はメタクリレートを合わせて(メタ)アクリレートということもある。また、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味するものとする。これらのその他の単量体成分は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0028】
重合性成分が単量体成分として、ニトリル系単量体をさらに含んでもよい。ニトリル系単量体を含むと、熱膨張性微小球の耐溶剤性が向上するため、好ましい。
重合性成分がニトリル系単量体を含む場合、重合性成分に占めるニトリル系単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~95重量%である。ニトリル系単量体の重量割合が上記範囲内であると、熱膨張性微小球の耐溶剤性が向上する傾向がある。ニトリル系単量体の重量割合の上限は、より好ましくは90重量%、さらに好ましくは85重量%、特に好ましくは80重量%、最も好ましくは75重量%である。一方、ニトリル系単量体の重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは25重量%である。
【0029】
ニトリル系単量体は、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを含むと、膨張性能が向上するために好ましい。ニトリル系単量体がアクリロニトリルを含む場合、ニトリル系単量体に占めるアクリロニトリルの重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5重量%以上である。ニトリル系単量体に占めるアクリロニトリルの重量割合の上限は、好ましくは100重量%、より好ましくは90重量%、さらに好ましくは80重量%である。一方、ニトリル系単量体に占めるアクリロニトリルの重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、特に好ましくは20重量%である。
ニトリル系単量体がメタクリロニトリルを含む場合、ニトリル系単量体に占めるメタクリロニトリルの重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5重量%以上である。ニトリル系単量体に占めるメタクリロニトリルの重量割合の上限は、好ましくは100重量%、より好ましくは90重量%、特に好ましくは80重量%である。一方、ニトリル系単量体に占めるメタクリロニトリルの重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、特に好ましくは20重量%である。
【0030】
重合性成分が単量体成分としてカルボキシル基含有単量体をさらに含んでもよい。カルボキシル基含有単量体を含むと、熱膨張性微小球の耐熱性が向上するため、好ましい。
重合性成分がカルボキシル基含有単量体を含む場合、重合性成分に占めるカルボキシル基含有単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~90重量%である。カルボキシル基含有単量体の重量割合が5重量%以上であると耐熱性が向上する傾向があり、90重量%以下であると膨張性能が向上する傾向がある。カルボキシル基含有単量体の重量割合の上限は、より好ましくは85重量%、さらに好ましくは75重量%、特に好ましくは70重量%、最も好ましくは65重量%である。一方、カルボキシル基含有単量体の重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは25重量%である。
【0031】
重合性成分が単量体成分としてハロゲン化ビニリデン系単量体をさらに含んでもよい。ハロゲン化ビニリデン系単量体を含むと、熱膨張性微小球の外殻を構成する熱可塑性樹脂のガスバリア性が向上するため、好ましい。
重合性成分がハロゲン化ビニリデン系単量体を含む場合、重合性成分に占めるハロゲン化ビニリデン系単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~80重量%である。ハロゲン化ビニリデン系単量体の重量割合が上記範囲内であると、膨張性能が向上する傾向がある。ハロゲン化ビニリデン系単量体の重量割合の上限は、より好ましくは75重量%、さらに好ましくは70重量%、特に好ましくは65重量%、最も好ましくは60重量%である。ハロゲン化ビニリデン系単量体の重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは25重量%である。
【0032】
重合性成分は、上述のとおり、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤を用いて重合することにより、得られる熱膨張性微小球では、内包された発泡剤の熱膨張時における保持率(内包保持率)の低下が抑制され、効果的に熱膨張させることができる。
架橋剤としては、特に限定はないが、例えば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラアクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。なお
【0033】
架橋剤はなくてもよいが、その量については特に限定はなく、単量体成分100重量部に対して、好ましくは0~5.0重量部、より好ましくは0.01~3.0重量部、さらに好ましくは0.02~2.0重量部、特に好ましくは0.05~1.5重量部である。架橋剤の含有量が5.0重量部超であると、熱膨張性微小球の膨張性能が低下することがある。
【0034】
発泡剤は、加熱することで気化する成分であり、熱膨張性微小球の熱可塑性樹脂からなる外殻に内包されることによって、熱膨張性微小球は微小球全体として熱膨張性(微小球全体が加熱により膨らむ性質)を示すようになる。
【0035】
発泡剤は特に限定されないが、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ナノデカン等の直鎖状炭化水素;イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソノナン、イソデカン、イソドデカン、3-メチルウンデカン、イソトリデカン、4-メチルドデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソヘキサデカン、2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン、イソヘプタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン等の分岐状炭化水素;シクロドデカン、シクロトリデカン、ヘキシルシクロヘキサン、ヘプチルシクロヘキサン、n-オクチルシクロヘキサン、シクロペンタデカン、ノニルシクロヘキサン、デシルシクロヘキサン、ペンタデシルシクロヘキサン、ヘキサデシルシクロヘキサン、ヘプタデシルシクロヘキサン、オクタデシルシクロヘキサン等の炭化水素;石油エーテル;それらのハロゲン化物;ハイドロフルオロエーテル等の含弗素化合物;テトラアルキルシラン;加熱により熱分解してガスを生成する化合物等が挙げられる。発泡剤は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。また、これらの発泡剤は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明の熱膨張性微小球の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.5~200μmである、より好ましくは1~150μm、さらに好ましくは1.5~100μm、特に好ましくは2~75μm、最も好ましくは5~50μmである。平均粒子径が0.5μm以上であると熱膨張性微小球の膨張性能が高くなる傾向があり、平均粒子径が200μm以下であると熱膨張性微小球の膨張安定性が高くなる傾向がある。
【0037】
熱膨張性微小球の粒度分布の変動係数CVは、特に限定はないが、好ましくは50%以下、さらに好ましくは45%以下、特に好ましくは40%以下である。変動係数CVは、以下に示す計算式(1)及び(2)で算出される。
【0038】
【数1】
(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、xiはi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
【0039】
発泡剤の内包率は、熱膨張性微小球の重量に対する熱膨張性微小球に内包された発泡剤の重量の百分率で定義される。発泡剤の内包率は、特に限定はないが、好ましくは1~50重量%、より好ましくは2~45重量%、さらに好ましくは5~40重量%、特に好ましくは10~35重量%である。
【0040】
熱膨張性微小球の膨張開始温度(T)は、特に限定はないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは130℃以上、最も好ましくは150℃以上である。熱膨張性微小球の膨張開始温度が100℃未満であると、十分な耐熱性が得られないことがある。熱膨張性微小球の膨張開始温度の上限値は、好ましくは300℃である。
熱膨張性微小球の最大膨張温度(Tmax)は、特に限定はないが、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上、特に好ましくは190℃以上、最も好ましくは200℃以上である。また、最大膨張温度の上限値は、好ましくは350℃である。熱膨張性微小球の最大膨張温度が150℃未満であると十分な耐熱性が得られないことがあり、350℃超であると十分な膨張倍率が得られないことがある。
【0041】
本発明の熱膨張性微小球は耐熱性に優れ、高い膨張特性を有しているので、射出成形、押出成形、プレス成形、混練成形、カレンダー成形、ブロー成形、圧縮成形、真空成形、熱成形等の成形加工の利用に好適である。また、塩ビペースト等のペースト状物や、EVAエマルション、アクリルエマルション、溶剤型バインダー等の液状組成物に混合して使用することも可能である。
【0042】
熱膨張性微小球の体積最大膨張倍率(Rex)は、特に限定されないが、好ましくは3倍以上、より好ましくは10倍以上、さらにより好ましくは20倍以上、特に好ましくは30倍以上、さらに好ましくは50倍以上、最も好ましくは70倍以上である。一方、最大膨張倍率の上限値は、好ましくは200倍である。
【0043】
〔熱膨張性微小球の製造方法〕
本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、水性分散媒中に、ヒドロキシル基、ラクトン環、及び1個の重合性炭素-炭素二重結合を有する単量体(A)を含む重合性成分と発泡剤とを分散させ、重合性成分を重合させる工程(以下、単に重合工程ということがある)を含む。
本発明の熱膨張性微小球の製造方法において使用される単量体(A)、重合性成分、及び発泡剤は、上述のものを使用する。
【0044】
本発明の熱膨張性微小球の製造方法においては、重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させてもよい。重合開始剤を使用することで、効率的に熱膨張性微小球を製造できるため好ましい。重合開始剤は、重合性成分や発泡剤とともに油性混合物に含まれるとよい。
【0045】
重合開始剤としては、過酸化物やアゾ化合物等が挙げられる。
過酸化物としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジベンジルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール;クメンハイドロパーキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステルを挙げることができる。
【0046】
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等を挙げることができる。
重合開始剤の量は、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.05~10重量部であり、さらに好ましくは0.1~8重量部、最も好ましくは0.2~5重量部である。重合開始剤の量が上記範囲内であると、得られる熱膨張性微小球の耐熱性と膨張性能が高くなる傾向がある。
【0047】
重合工程では、水性分散媒は重合性成分および発泡剤を必須とする油性混合物を分散させる媒体であり、イオン交換水等の水を主成分とする。水性分散媒は、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、アセトン等の親水性有機性の溶媒をさらに含有してもよい。本発明における親水性とは、水に任意に混和できる状態であることを意味する。水性分散媒の使用量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、100~1000重量部の水性分散媒を使用するのが好ましい。
【0048】
水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、たとえば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらの電解質は、1種または2種以上を併用してもよい。
電解質の含有量については、特に限定はないが、水性分散媒100重量部に対して0.1~50重量部含有するのが好ましい。
【0049】
水性分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類、重クロム酸カリウム、亜硝酸アルカリ金属塩、金属(III)ハロゲン化物、ホウ酸、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有してもよい。なお、本発明における水溶性とは、水100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
【0050】
水性分散媒中に含まれる水溶性化合物の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001~1.0重量部、さらに好ましくは0.0003~0.1重量部、特に好ましくは0.001~0.05重量部である。水溶性化合物の量が少なすぎると、水溶性化合物による効果が十分に得られないことがある。また、水溶性化合物の量が多すぎると、重合速度が低下したり、原料である重合性成分の残存量が増加したりすることがある。
【0051】
水性分散媒は、電解質や水溶性化合物以外に、分散安定剤や分散安定補助剤を含んでもよい。
分散安定剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカ、アルミナゾル、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの分散安定剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
分散安定剤の量は、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.05~30重量部、さらに好ましくは0.2~20重量部である。
【0052】
分散安定補助剤としては、特に限定はないが、たとえば、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤等が挙げられる。これらの分散安定補助剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0053】
水性分散媒は、たとえば、水(イオン交換水)に、水溶性化合物とともに、必要に応じて分散安定剤及び/又は分散安定補助剤等を配合して調製される。重合時の水性分散媒のpHは、水溶性化合物、分散安定剤、分散安定補助剤の種類によって適宜決められる。具体的には、コロイダルシリカを分散安定剤として使用する場合は、好ましくは酸性領域に調整し、水酸化マグネシウムを分散安定剤として使用する場合は、好ましくはアルカリ領域に調整する。
【0054】
重合工程においては、連鎖移動剤、有機顔料、表面が疎水性処理された無機顔料や無機粒子等をさらに使用してもよく、水酸化ナトリウムや、水酸化ナトリウムおよび塩化亜鉛の存在下で重合を行ってもよい。
【0055】
重合工程では、所定粒子径の球状油滴が調製されるように、油性混合物を水性分散媒中に懸濁分散させる。
油性混合物を懸濁分散させる方法としては、例えば、ホモミキサー(例えば、プライミクス株式会社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(例えば、株式会社ノリタケカンパニーリミテド製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜乳化法、超音波分散法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された水系懸濁液を加熱することにより、懸濁重合を開始する。重合反応中は、水系懸濁液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、たとえば、単量体成分の浮上や重合後の熱膨張性微小球の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
【0056】
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30~100℃、さらに好ましくは40~90℃の範囲で制御される。反応温度を保持する時間は、0.1~20時間程度が好ましい。重合初期圧力については特に限定はないが、ゲージ圧で0~5.0MPa、さらに好ましくは0.1~3.0MPaである。
【0057】
〔中空粒子〕
本発明の樹脂中空粒子は、上述の熱膨張性微小球や上述の熱膨張性微小球の製造方法で得られる熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる粒子である。樹脂中空粒子は、軽量であり、組成物や成形体に含ませると材料物性に優れる。
本発明の樹脂中空粒子は、上述の熱膨張性微小球や上述の熱膨張性微小球の製造方法で得られる熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる粒子であり、特定の重合性成分を重合して得られる熱可塑性樹脂からなる外殻から構成されるため、基材成分と混合した際の分散性に優れる。
【0058】
本発明の樹脂中空粒子は、上述の熱膨張性微小球及び/又は熱膨張性微小球の製造方法で得られた熱膨張性微小球を加熱膨張させることによって製造できる。加熱膨張の方法については、特に限定はなく、乾式加熱膨張法、湿式加熱膨張法のいずれでもよい。
乾式加熱膨張法としては、特開2006-213930号公報に記載されている方法、特に内部噴射方法を挙げることができる。また、別の乾式加熱膨張法としては、特開2006-96963号公報に記載の方法等がある。湿式加熱膨張法としては、特開昭62-201231号公報に記載の方法等がある。
【0059】
樹脂中空粒子の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは1~1000μm、さらに好ましくは5~800μm、特に好ましくは10~500μmである。
また、樹脂中空粒子の粒度分布の変動係数CVについては、特に限定はないが、50%以下が好ましく、さらに好ましくは40%以下である。
【0060】
樹脂中空粒子の真比重は、特に限定はないが、好ましくは0.005~0.6、さらに好ましくは0.015~0.4、特に好ましくは0.020~0.3である。中空粒子の真比重が0.005以上であると十分な耐久性を有する傾向があり、0.6以下であると中空粒子を用いて組成物を調製する際、その添加量を大きくすることなく軽量な成形品が得られる傾向がある。
【0061】
本発明の微粒子付着樹脂中空粒子は、上記樹脂中空粒子と、その外殻部の外表面に付着した微粒子とからなるものである。微粒子付着樹脂中空粒子はその一例として、図2に示すように、樹脂中空粒子の外殻(2)の外表面に付着した微粒子(4や5)から構成されていてもよい。
ここでいう付着とは、単に微粒子付着中空粒子(1)の外殻(2)の外表面に微粒子充填剤(4および5)が、吸着された状態(4)であってもよく、外表面近傍の外殻を構成する熱可塑性樹脂が加熱によって融解し、微粒子付着中空粒子の外殻の外表面に微粒子がめり込み、固定された状態(5)であってもよいという意味である。
微粒子付着中空粒子は、使用時の作業性(ハンドリング)や基材への分散性を向上させることができる。
【0062】
微粒子の形状は不定形であっても球状であってもよく、例えば、球状、針状や板状等が挙げられる。
微粒子の素材は、特に限定はないが、無機物、有機物のいずれの素材であってもよい。
微粒子の平均粒子径については、用いる中空粒子本体によって適宜選択され、特に限定はないが、好ましくは0.001~30μm、さらに好ましくは0.005~25μm、特に好ましくは0.01~20μmである。
また、微粒子の平均粒子径は、微粒子付着中空粒子の平均粒子径の1/10以下であることが好ましい。ここで、微粒子の平均粒子径とは、一次粒子における平均粒子径を意味する。
【0063】
微粒子付着中空粒子は、例えば、微粒子付着熱膨張性微小球を加熱膨張させることによって得ることができる。微粒子付着中空粒子の製造方法としては、熱膨張性微小球と微粒子とを混合する工程(混合工程)と、前記混合工程で得られた混合物を外殻である熱可塑性樹脂の軟化点を超える温度に加熱して、前記熱膨張性微小球を膨張させるとともに、得られる中空粒子の外表面に微粒子を付着させる工程(付着工程)を含む製造方法が好ましい。
【0064】
微粒子付着中空粒子の真比重については、特に限定はないが、好ましくは0.01~0.6であり、さらに好ましくは0.03~0.5、特に好ましくは0.05~0.4、最も好ましくは0.07~0.35である。微粒子付着中空粒子の真比重が0.01以上であると十分な耐久性を有する傾向があり、0.6以下であると中空粒子を用いて組成物を調製する際、その添加量を大きくすることなく軽量な成形品が得られる傾向がある。
【0065】
〔組成物及び成形体〕
本発明の組成物は、本発明の熱膨張性微小球、本発明の熱膨張性微小球の製造方法で得られる熱膨張性微小球、本発明の中空粒子、本発明の微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含む。
基材成分としては、特に限定はないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンーブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等のゴム類;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66等)、変性ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂;エチレン系アイオノマー、ウレタン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、フッ素系アイオノマー等のアイオノマー樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂等のバイオプラスチック;変性シリコン系、ウレタン系、ポリサルファイド系、アクリル系、シリコン系、ポリイソブチレン系、ブチルゴム系等のシーリング材料;ウレタン系、エチレン-酢酸ビニル共重合物系、塩化ビニル系、アクリル系の塗料成分;セメントやモルタルやコージエライト等の無機物等が挙げられる。
【0066】
本発明の組成物は、これらの基材成分と熱膨張性微小球、中空粒子、微粒子付着中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物とを混合することによって調製することができる。また、基材成分と粒状物とを混合して得られた組成物を更に別の基材成分と混合して本発明の組成物とすることもできる。
基材成分100重量部に対する上記粒状物の重量割合は、好ましくは0.1~70重量部、より好ましくは0.5~65重量部、さらに好ましくは1~60重量部である。
【0067】
基材成分と粒状物とを混合する方法は、特に限定はないが、ニーダー、ロール、ミキシングロール、ミキサー、単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等により混合することが好ましい。
本発明の組成物の用途としては、例えば、成形用組成物、塗料組成物、粘土組成物、繊
維組成物、接着剤組成物、粉体組成物等を挙げることができる。
【0068】
本発明の成形体は、上述の組成物を成形して得られる。本発明の成形体としては、例えば、成形品や塗膜等の成形体等を挙げることができる。本発明の成形体では、軽量性、多孔性、吸音性、断熱性、低熱伝導性、低誘電率化、意匠性、衝撃吸収性、強度等の諸物性が向上する。
本発明の成形体は、上記組成物を成形して得られるので、軽量である。
【実施例
【0069】
以下に、本発明の熱膨張性微小球の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、断りのない限り、「%」とは「重量%」を意味し、「部」とは「重量部」を意味するものである。
以下の実施例および比較例で挙げた熱膨張性微小球について、次に示す要領で物性を測定し、さらに性能を評価した。以下では、熱膨張性微小球を簡単のために「微小球」ということがある。
【0070】
〔熱膨張性微小球の平均粒子径(D50)と粒度分布の測定〕
測定装置として、日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布計(型式9320-HRA)を使用し、体積基準測定によるD50値を平均粒子径とした。
【0071】
〔熱膨張性微小球の膨張開始温度(T)、最大変位量(Hmax)及び最大膨張温度(Tmax)の測定〕
測定装置として、DMA(DMA Q800型 TA instruments社製)を使用した。微小球0.5mgを直径5.6mm、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、微小球層の上部にアルミ蓋(直径5.6mm、厚み0.1mm)をのせて試料を準備した。その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さを測定した。加圧子により0.01Nの力を加えた状態で20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定した。正方向への変位開始温度を膨張開始温度(T)とし、最大変位量(Hmax)を示した温度を最大膨張温度(Tmax)とした。HmaxかつTmaxが高い値を示すことが耐熱性に優れ、高い膨張特性を有する事を意味する。
【0072】
〔熱膨張性微小球の体積最大膨張倍率(Rex)〕
測定装置として、DMA(DMA Q800型 TA instruments社製)を使用し上記で得られた最大変位量(Hmax)の値から下記の式により体積最大膨張倍率を算出される。
bulk:熱膨張性微小球の嵩比重0.0004(g/mm
ex={((Hmax(μm)/1000)×(5.6(mm)/2)×π)/(0.0005/dbulk)}(1/3)
【0073】
〔熱膨張性微小球の含水率(Cw1)の測定〕
測定装置として、カールフィッシャー水分計(MKA-510N型 京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。熱膨張性微小球の含水率(重量%)をCw1とした。
【0074】
〔熱膨張性微小球の発泡剤の内包率(C)の測定〕
熱膨張性微小球1.0gを直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、その重量(W(g))を測定した。アセトニトリルを30ml加え均一に分散させ、24時間室温で放置した後に、130℃で2時間減圧乾燥後の重量(W(g))を測定した。
熱膨張性微小球の発泡剤の内包率(C)は、下記の式により計算される。
(重量%)=100×{100×(W-W)/1.0-Cw1}/(100-Cw1
(式中、熱膨張性微小球の含水率Cw1は、上記方法で測定される。)
【0075】
<実施例1>
イオン交換水500部に、塩化ナトリウム130部を溶解させ、ポリビニルピロリドン1.0部、カルボキシメチル化ポリイミン・Na塩0.05部及びコロイダルシリカ(有効濃度20%)65部を添加し、pHを3.0に調整し水性分散媒を調製した。
これとは別に、α-メチレン-β-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトン24部、アクリロニトリル136部、メタクリロニトリル70部、メチルメタクリレート10部、ジメタクリル酸エチレングリコール0.95部、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート3.0部、ジラウロイルパーオキサイド0.50部、2-メチルペンタン(イソブタン)15部、2-メチルブタン(イソペンタン)55部を混合、溶解し油性混合物とした。
水性分散媒体と油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサー(プライミクス株式会社製、TKホモミキサー)により回転数10000rpmで1分間分散して、水系懸濁液を調製した。
得られた水系懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.35MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度60℃で20時間重合反応した。重合後、生成物を濾過、乾燥し、熱膨張性微小球を得た。得られた熱膨張性微小球の物性を表1に示す。
【0076】
<実施例2~6、比較例1~4>
実施例2~6は、実施例1と同様に表1に示すように変更する以外は、同様にして熱膨張性微小球を得た。
一方、比較例1~4では、単量体(A)を使用せずに表2に示すようにそれぞれ変更する以外は実施例1と同様にして熱膨張性微小球を得た。
得られたそれぞれの熱膨張性微小球の物性を実施例1と同様に測定した。結果を表1~2に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
ヒドロキシル基、ラクトン環、及び1個の重合性炭素-炭素二重結合を有する単量体(A)を使用した実施例1~6の熱膨張性粒子は、HmaxかつTmaxが高い値を示しており、耐熱性に優れ、高い膨張性能を有していることが分かる。
それに対して、単量体(A)を使用していない比較例1~4の熱膨張性微小球は、HmaxとTmaxの少なくとも一方が低く、耐熱性及び/または膨張性能に劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の熱膨張性微小球は、例えば、パテ、塗料、インク、シーリング材、モルタル、紙粘土、陶器等の軽量化材として用いることができ、また基材成分とともに用いて、射出成形、押出成形、プレス成形等の成形を行い、遮音性、断熱性、遮熱性、吸音性等に優れる成形体を製造することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 微粒子付着中空粒子
2 外殻
3 中空部
4 微粒子(吸着された状態)
5 微粒子(めり込み、固定化された状態)
6 熱可塑性樹脂からなる外殻(シェル)
7 発泡剤(コア)
図1
図2