(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】現像装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20241209BHJP
G03G 15/06 20060101ALI20241209BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20241209BHJP
G03G 9/093 20060101ALI20241209BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20241209BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G03G15/08 235
G03G15/06 101
G03G9/08
G03G9/093
G03G9/087
G03G9/097 371
(21)【出願番号】P 2020191173
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清野 友蔵
(72)【発明者】
【氏名】上倉 健太
(72)【発明者】
【氏名】土井 孝之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓歩
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-137534(JP,A)
【文献】特開2007-206378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 15/06
G03G 9/08
G03G 9/093
G03G 9/087
G03G 9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー、該トナーを担持するトナー担持体、及び該トナー担持体に当接して該トナー担持体に担持される該トナーを規制するトナー規制部材、を有する現像装置であって、
該トナー担持体は芯金を有するものであり、
インピーダンス計測によって求められる該トナーの体積抵抗率が、1.0×10
10Ω・cm以上1.0×10
14Ω・cm以下であり、
該トナー担持体は
、直径0.65mmの測定電極を用いて該芯金と該トナー担持体表面との間で測定されるインピーダンス計測において、複数の素過程が観測され、
該トナー担持体
表面の単位面積当たりの
該芯金との間の体積抵抗値Rdrが、5.0×10
5Ω/cm
2以上2.0×10
8Ω/cm
2以下であり、
該トナー担持体
表面の単位面積当たりの
該芯金との間の静電容量Cdrが、300pF/cm
2以上900pF/cm
2以下であり、
直径10mmの測定電極を用いたインピーダンス計測によって得られる該トナーの体積抵抗率及び比誘電率から、電気的検知帯法によって得られる該トナーの重量平均粒子径D4の1.5倍を厚みとした平行平板コンデンサモデルにより換算される、該トナーの単位面積当たりの静電容量をCtn(pF/cm
2)とし、該トナーの単位面積当たりの体積抵抗値をRtn(Ω/cm
2)とするとき、
以下の式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする現像装置。
1.5 ≦(Cdr/Ctn)≦4.5 ・・・(1)
1.0×10
-4 ≦(Rdr/Rtn)≦ 1.0 ・・・(2)
【請求項2】
インピーダンス計測によって求められる前記トナーの体積抵抗率が、1×10
11Ω・cm以上1×10
14Ω・cm以下である請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記トナーが、トナー粒子を有し、
該トナー粒子は、その表面に有機ケイ素重合体を有する請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記有機ケイ素重合体が、シェルを形成し、
前記トナー粒子は、トナー母粒子及び該トナー母粒子の表面の該シェルを有する請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記トナーが、前記トナー粒子の表面に多価酸金属塩を有する請求項3又は4に記載の現像装置。
【請求項6】
前記多価酸金属塩が、リン酸金属塩を含む請求項5に記載の現像装置。
【請求項7】
前記トナー担持体が、その最表面に有機ケイ素重合体を有する表面層を有する請求項1~6のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項8】
前記トナーが、トナー粒子を有し、
該トナー粒子は、その表面に有機ケイ素重合体を有し、
前記トナー担持体が、その最表面に有機ケイ素重合体を有する請求項1~7のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項9】
前記素過程の数が2つである請求項1~8のいずれか一項に記載の現像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複写機やプリンターなどの画像形成装置に関するものである。
特に、空気の絶縁耐圧電界強度以下の印加電圧下にて、電気導電性を示す導電性トナー及び該トナーを担持するトナー担持体と該トナーを規制するトナー規制部材とを有する現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた画像形成装置に利用される分野は、プリンターや複写機から商業印刷機に至るまで多岐にわたってきている。これに伴い、画像形成装置は、更なる高速化、高品質化が求められている。
従来の画像形成装置に組み込まれた現像装置は、摩擦帯電方式が適用されており、トナー帯電の立ち上がり特性に係る時定数が大きく、トナー帯電量分布がブロードとなる課題が指摘されていた。これらの課題を解決するために、導電性トナーを用いた電荷注入帯電方式の提案がなされている。
そして、電荷注入帯電方式を用いる現像装置として、下記開示がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、規制ブレードからの電荷注入とトナー担持体との接触摩擦帯電の両方でトナーを荷電する提案がなされている。
具体的には、圧力成形したトナー・ペレットの直流抵抗が1×10
7以上1×10
9以下(Ω・cm)、かつ、静電容量が1.0×10
-12以上1.5×10
-11以下(F)の電気的特性を有する導電性トナーを有する。
また、特許文献2では、電荷注入帯電方式による、導電性トナーとトナー担持体及び現像システムが開示されている。第27頁
図19に導電性トナーの電気的特性が記載されている。
該トナーは、非線形の電流‐電圧特性を示すトナーであり、電界強度8×10
3(V/cm)にて10
16(Ω・cm)の絶縁性を示し、電界強度7×10
4(V/cm)にて10
9(Ω・cm)の導電特性を示すトナーである。また、トナー担持体は、表面に10
11(Ω・cm)以上の体積抵抗率を有する高抵抗層を備える。
具体的なトナー担持体として、実施例1には、アルマイト処理されたアルミパイプ、実施例2はトナー担持体に12μm厚のPETフィルムを巻き付けてあると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-58874号公報
【文献】特開2005-331782号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】表面科学Vol.29,No.2,pp.105-113、岩本氏ら「有機半導体/絶縁体界面の電荷蓄積とキャリア輸送」2.1項「マックスウェル・ワグナー効果による界面電荷の蓄積」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された導電性トナーは、絶縁性の誘電体特性を示す高抵抗トナー担持体との組合せにおいて、トナー担持体の静電吸着力が増大し、トナー担持体の表面汚染を生じやすくなる。また、該導電性トナーと表面汚染を抑制するための導電性を示すトナー
担持体との組合せにおいては、トナーの静電エネルギー損失が大きくなり、トナーの帯電電荷量が低下することがわかった。
特許文献2に記載された導電性トナーは、非線形の電圧―電流特性を示し、絶縁性から導電性を発現するしきい値電圧が存在する。
これらの特性から、トナーの導電性を示す所望の注入電界強度が1×105(V/cm)まで必要であり、トナー担持体と規制ブレード間の印加電圧が高電圧化することがわかった。また、トナー担持体の表層が高抵抗化するため、トナー担持体の静電吸着力が増大し、トナー担持体の表面汚染を生じやすくなる。
【0007】
上述の通り、従来の電荷注入帯電方式における導電性トナーは、トナー帯電量の保持と、トナー担持体の表面汚染の防止を両立することが困難である。さらに、所定のトナー帯電量を得るために印加する印加電圧が、高電圧化する。
本開示は、電荷注入帯電方式における、導電性トナーの導電性及び電荷保持性を両立でき、電荷注入の際の印加電圧の高電圧化を抑制することができ、高品質な画像形成を達成できる現像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、トナー、該トナーを担持するトナー担持体、及び該トナー担持体に当接して該トナー担持体に担持される該トナーを規制するトナー規制部材、を有する現像装置であって、
該トナー担持体は芯金を有するものであり、
インピーダンス計測によって求められる該トナーの体積抵抗率が、1.0×1010Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下であり、
該トナー担持体は、直径0.65mmの測定電極を用いて該芯金と該トナー担持体表面との間で測定されるインピーダンス計測において、複数の素過程が観測され、
該トナー担持体表面の単位面積当たりの該芯金との間の体積抵抗値Rdrが、5.0×105Ω/cm2以上2.0×108Ω/cm2以下であり、
該トナー担持体表面の単位面積当たりの該芯金との間の静電容量Cdrが、300pF/cm2以上900pF/cm2以下であり、
直径10mmの測定電極を用いたインピーダンス計測によって得られる該トナーの体積抵抗率及び比誘電率から、電気的検知帯法によって得られる該トナーの重量平均粒子径D4の1.5倍を厚みとした平行平板コンデンサモデルにより換算される、該トナーの単位面積当たりの静電容量をCtn(pF/cm2)とし、該トナーの単位面積当たりの体積抵抗値をRtn(Ω/cm2)とするとき、
以下の式(1)及び(2)を満たす現像装置に関する。
1.5 ≦(Cdr/Ctn)≦4.5 ・・・(1)
1.0×10-4 ≦(Rdr/Rtn)≦ 1.0 ・・・(2)
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電荷注入帯電方式における、導電性トナーの導電性及び電荷保持性を両立でき、電荷注入の際の印加電圧の高電圧化を抑制することができ、高品質な画像形成を達成できる現像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】現像装置を組み込んだ、プロセスカートリッジの断面図の例
【発明を実施するための形態】
【0011】
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0012】
本発明者らは鋭意検討の結果、以下の現像装置によって、界面導電現象を制御し、高品質な画像形成を達成できる現像装置を提供できることを見出した
本開示は、トナー、該トナーを担持するトナー担持体、及び該トナー担持体に当接して該トナー担持体に担持される該トナーを規制するトナー規制部材、を有する現像装置であって、
インピーダンス計測によって求められる該トナーの体積抵抗率が、1.0×1010Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下であり、
該トナー担持体はインピーダンス計測において、複数の素過程が観測され、
該トナー担持体の単位面積当たりの体積抵抗値Rdrが、5.0×105Ω/cm2以上2.0×108Ω/cm2以下であり、
該トナー担持体の単位面積当たりの静電容量Cdrが、300pF/cm2以上900pF/cm2以下であり、
インピーダンス計測によって得られる該トナーの体積抵抗率及び比誘電率から、電気的検知帯法によって得られる該トナーの重量平均粒子径D4の1.5倍を厚みとした平行平板コンデンサモデルにより換算される、該トナーの単位面積当たりの静電容量をCtn(pF/cm2)とし、該トナーの単位面積当たりの体積抵抗値をRtn(Ω/cm2)とするとき、
以下の式(1)及び(2)を満たす現像装置に関する。
1.5 ≦(Cdr/Ctn)≦4.5 ・・・(1)
1.0×10-4 ≦(Rdr/Rtn)≦ 1.0 ・・・(2)
【0013】
上記構成で、電荷注入帯電方式における、トナー帯電量の保持及びトナー担持体の表面汚染の抑制を両立させ、かつ、電荷注入の際の印加電圧の高電圧化を抑制できたメカニズムについて、本発明者らは以下のように推定している。
まず、電荷注入帯電方式を適用可能とする導電性トナーの電気的特性を制御するパラメータについて考える。
一般的な誘電体材料の電気物性として、比誘電率、体積抵抗率又は導電率が挙げられ、該電気物性と幾何学的形状から静電容量、抵抗又はコンダクタンス(導電性)といった電気的特性が決まる。トナーの電気物性である比誘電率に関し、トナーの材料及び作製条件により該比誘電率を制御できる範囲は僅かである。このことから、トナーの静電容量Ctnは、トナーの粒子径、及び、トナーの材料組成を変更することで制御可能である。
【0014】
一方、トナーの電気物性である体積抵抗率は、例えば、金属酸化物などの材料を、導電性フィラーや電荷トラップサイトとして用い、トナー表面近傍に備えることで、広範囲に制御することができる。また、このときの比誘電率の制御量は、体積抵抗率に比べると僅かである。このことから、トナーの体積抵抗Rtnは、トナー表面近傍を制御することにより、広範囲に制御することができ、所定の導電性トナーを得ることが可能である。
しかしながら、トナーに導電性を持たせることは、静電エネルギー損失を生じることとなり、導電性と電荷保持性を両立させることは困難であった。
【0015】
そこで、本発明者らは、トナー担持体及びトナーとトナー担持体を組み合わせたときに生じる界面導電現象に着目し、下記文献を参考にした。
表面科学Vol.29,No.2,pp.105-113、岩本氏ら「有機半導体/絶縁体界面の電荷蓄積とキャリア輸送」2.1項「マックスウェル・ワグナー効果による界面電荷の蓄積」(以下、文献Aともいう)の記載によれば、「界面での電荷の蓄積は、二つの物質の緩和時間(誘電緩和)が異なるときに起きる」という基本的な法則がある。
そして、この法則に従って界面で電荷が蓄積される現象(界面分極現象)がマックスウェル・ワグナー効果である、と記されている。さらに、蓄積される電荷が界面に流れ込んでくる経路にはよらず、Si半導体のバルク内から界面に電荷が集まってくる場合も、電極から流入してくる場合にも成立する、と記されている。
【0016】
文献Aに従えば、導電性弾性層と表面層の2層構成から成るトナー担持体は、各々の抵抗と静電容量を制御することで、誘電緩和の異なる界面を形成することができる。そして、マックスウェル・ワグナー効果(界面分極現象)によって、界面に電荷が蓄積(界面分極電荷)される。また、この蓄積電荷は、可動イオンが存在する場合や、トナー担持体に電流が流れている場合でも存在することになる。
【0017】
このとき、界面に蓄積された電荷(界面分極電荷)によって、トナー担持体に印加された電界と逆方向の逆電界を生じると、トナー担持体バルク内部の電界強度が低下し、体積抵抗が高まることになる。そして、トナー担持体に流れる電流を抑制できる可能性があると考えた。
さらに、トナー担持体の体積抵抗Rdrがトナーの体積抵抗Rtnより小さい場合(上記式(2)に該当する場合)、トナーとトナー担持体を流れる電流は、トナー担持体の体積抵抗Rdrが律速条件となる。
【0018】
また、トナー担持体の表面層は、トナー担持体の導電性弾性層と表面層との界面に蓄積された電荷(界面分極電荷)に感応した電荷を誘起し、トナーと接するトナー担持体の表面電荷を増加させる。
同様に、文献Aに従えば、トナーとトナー担持体界面でも同様の界面分極現象を発現することができ、トナーの帯電量を向上できると考えられる。
【0019】
誘電緩和が異なる導電性弾性層と表面層の2層構成から成るトナー担持体の電気的特性について述べる。
トナー担持体を構成する導電性弾性層と表面層を各々のRC並列回路を直列接続した電気回路モデルとして仮定する。ここで、各層の誘電緩和が異なるということは、電気的AC特性の周波数依存性が異なることを示している。一般的に、インピーダンス分光法という解析手法を用いることにより、導電性弾性層に起因するRC並列回路モデルの素過程と表面層に起因するRC並列回路モデルの素過程に分離・同定することが可能である。
したがって、トナー担持体が、界面分極現象を発現する必要条件である、誘電緩和の異なる2層構成より成るということは、インピーダンス特性から判別される素過程の数が2つ存在することを示している。逆に、誘電緩和が近づくと、インピーダンス分光法を用いた素過程の分離・同定が困難となる。
トナー担持体は、複数の素過程が観察されることが必要である。素過程の数は好ましくは2つである。トナー担持体が複数の素過程を有することで、トナー担持体を構成する導電性弾性層と表面層との界面にて、界面分極電荷が存在していることを示す。
【0020】
また、トナーとトナー担持体の誘電緩和の違いを、電気的特性である抵抗値と静電容量を用いて表現し、上記関係式(1)及び(2)を導き出した。
ここで、トナーと該トナー担持体の電気的特性について述べる。
通常、規制部材を通過したトナーの厚みは、所定の画像濃度を得るために必要なトナー量として、トナー粒子径の1.5倍相当のトナー厚となるように調整されている。
このことから、トナーの電気的特性は、インピーダンス計測によって得られる体積抵抗率及び比誘電率と、電気的検知帯法によって得られるトナーの重量平均粒子径D4の1.5倍を厚みとした平行平板コンデンサモデルより換算する。
【0021】
そして、トナーの単位面積当たりの静電容量値をCtn(pF/cm2)、単位面積当たりの体積抵抗値をRtn(Ω/cm2)として、定義する。
また、トナーは、低電圧の印加電圧による電荷注入を可能とするため、空気の絶縁耐圧電界強度以下の印加電圧下にて、電気導電性を示す導電性トナーである。
具体的には、帯電立ち上がり特性を向上させるため、時定数が小さくなる、1×101
0Ω・cm以上1×1014Ω・cm以下の体積抵抗率を有するトナーである。
【0022】
該トナーを担持するトナー担持体のインピーダンス計測によって得られる、単位面積当たりの静電容量値をCdr(pF/cm2)、単位面積当たりの体積抵抗値をRdr(Ω/cm2)として、定義する。体積抵抗値Rdrは、5.0×105Ω/cm2以上2.0×108Ω/cm2以下である。
トナー担持体の体積抵抗値Rdrが大きい場合、電荷保持機能が向上するため、トナー担持体表面での静電吸着力が増大する。そのため、トナー担持体の表面汚染が発生しやすくなり、トナー担持体に均一な厚さのトナー層を形成することができなくなるため、規制不良などの現象を生じやすくなる可能性がある。
そのため、トナー担持体の単位面積当たりの体積抵抗値Rdrは、2.0×108Ω/cm2以下となる必要がある。
また、該トナー担持体の体積抵抗値Rdrが小さい場合、トナー担持体の静電エネルギー損失による電荷保持機能が低下するため、帯電電荷を保持できなくなる。そのため、帯電電荷を保持可能な、単位面積当たりの体積抵抗値Rdrは、5.0×105Ω/cm2以上となる必要がある。
体積抵抗値Rdrは、好ましくは1.0×107Ω/cm2以上1.8×108Ω/cm2以下である。
体積抵抗値Rdrは、導電性塗料及び表面層塗料の処方により制御できる。
また、トナー担持体の単位面積当たりの静電容量Cdrが、300pF/cm2以上900pF/cm2以下であることが必要である。Cdrが上記範囲であると、トナーの帯電立ち上がり特性を向上させることができる。
静電容量Cdrは、好ましくは350pF/cm2以上500pF/cm2以下である。静電容量Cdrは、導電性塗料及び表面層塗料の処方により制御できる。
【0023】
次に、導電性トナーを積層したトナー担持体の電気的特性(帯電立ち上がり特性)について述べる。
以下、トナー担持体に積層されたトナーが、規制部材を通過する間に電圧が印加され、注入帯電を生じる電気的モデルとして、ステップ電圧を印加した過渡応答特性(以下、ステップ応答特性と称す)を仮定する。
トナーとトナー担持体間に電圧Vinが印加された瞬間、突入電流が流れ、トナーの静電容量Ctnとトナー担持体の静電容量Cdrが充電され、トナー電圧Vtnとトナー担持体電圧Vdrが確定する。このときの、トナー電圧Vtnは
Vtn=Cdr/(Cdr+Ctn)×Vin
となり、また、トナー担持体電圧Vdrは、
Vdr=Ctn/(Cdr+Ctn)×Vin
となる。
【0024】
すなわち、電圧Vinを印加した直後のトナー電圧Vtnとトナー担持体電圧Vdrは、トナーとトナー担持体の各々の静電容量比に応じて、印加電圧Vinの分配比率が決定する。
このことから、トナー担持体の静電容量Cdrとトナーの静電容量Ctnとの比(Cdr/Ctn)を1.5以上4.5以下とすることで、印加電圧Vinに対するトナー電圧Vtnの分配比率を0.6以上0.8以下に制御することができる。この結果、トナー帯電の立ち上がり特性を向上させることができる。
【0025】
次に、電圧Vinを印加し、トナー電圧Vtnとトナー担持体Vdrの印加電圧Vinに対する分配電圧が決定した後の、トナー電圧Vtnのステップ応答特性について述べる。
トナー電圧Vtnが確定した後のステップ応答特性は、トナー電圧Vtnが減少する場
合と、変動が小さい場合、増加する場合に大別できる。
【0026】
上記、ステップ応答特性は、トナー担持体の体積抵抗値Rdrと静電容量Cdrによって決まるトナー担持体の時定数(τdr=Rdr×Cdr)、トナーの体積抵抗値Rtn、及びトナー担持体の体積抵抗値Rdrによって、決定づけられる。
基本的には、トナー電圧Vtnは、トナーの体積抵抗値Rtnとトナー担持体の体積抵抗値Rdrにより、Rtn/(Rdr+Rtn)×Vinに収束する。
【0027】
まず、トナー電圧Vtnが変化しない条件は、Cdr/(Cdr+Ctn)=Rtn/(Rdr+Rtn)の関係式が成立する場合である。該関係式を、上記関係式(1)及び(2)を用いて表すと、(Cdr/Ctn)=1/(Rdr/Rtn)が成立する条件となる。
上記、関係式から、(Cdr/Ctn)>1/(Rdr/Rtn)となると、トナー電圧Vtnが減少し、逆に、(Cdr/Ctn)<1/(Rdr/Rtn)となると、トナー電圧Vtnが増加する、ステップ応答特性を示す。
【0028】
さらに、トナー電圧Vtnが増加するステップ応答特性は、トナー担持体の時定数τdr=Rdr×Cdrに帰属する。すなわち、電子写真プロセスに於ける、トナー帯電量と該立ち上がり特性を向上させるためには、トナー担持体の時定数τdrが、トナーが規制部材を通過する時間以下となっていることが、より好ましい。
上述したように、トナーの帯電特性を維持・向上するためには、(Cdr/Ctn)≦1/(Rdr/Rtn)であることが必要条件となる。具体的な目安として、関係式(1)における(Cdr/Ctn)が1.0以上、かつ、関係式(2)における(Rdr/Rtn)が1.0以下であることが好ましい。
【0029】
上記必要条件を外れる関係式(2)における(Rdr/Rtn)が1.0を超える場合について述べる。
この領域に於いて、トナー担持体の体積抵抗値Rdrが高抵抗である場合、トナー担持体の静電吸着力が増大し、表面汚染を生じやすくなる可能性が高くなる。また、トナーの体積抵抗値Rtnが低抵抗である場合、トナーの帯電電荷量が低下する。したがって、(Rdr/Rtn)が1.0以下であることが必要であり、電荷減衰特性などを考慮すると、0.5以下であることが好ましい。
【0030】
関係式(2)における(Rdr/Rtn)が1.0×10-4未満となる場合について述べる。
この領域に於いて、トナーの体積抵抗値Rtnが高抵抗である場合、電荷注入帯電が成り立たず、摩擦帯電が支配的となり、トナーがチャージアップしやすくなる。また、トナー担持体の体積抵抗値Rdrが低抵抗である場合、トナー担持体の静電容量Cdrも低下するため、トナー帯電の立ち上がり特性が低下する。
(Rdr/Rtn)は、好ましくは1.0×10-3以上である。
【0031】
本開示は、トナーとトナー担持体における界面分極現象に基づき、電気的特性を制御し、電荷注入性と電荷保持性を両立させることを主眼としている。
このとき、関係式(1)における(Cdr/Ctn)が、1.5未満となる場合、関係式(2)の(Rdr/Rtn)との関係において、トナーとトナー担持体との誘電緩和特性を差別化することができず、界面分極現象の制御が困難となり、トナー帯電量が低下し、十分な帯電量を保持することができなくなる。
【0032】
(Cdr/Ctn)が4.5を超える場合、トナーとトナー担持体の電荷保持能力に差が生じることを意味している。このため、電荷保持能力の差が大きな界面は、鏡像効果に
よる熱電子放出、トンネル効果、空間電荷制限電流などの理由により、電荷を保持することが困難となる。結果的に、リーク電流を生じることになり、トナーの帯電量を保持することが困難となる。
(Cdr/Ctn)は、好ましくは1.7以上3.4以下である。
【0033】
以上述べたように、トナー担持体の内部界面における界面分極現象と、トナー担持体とトナーと界面における界面分極現象を制御することで、トナーの導電性と電荷保持性を両立できる。さらに、トナーとトナー担持体が導電性を有している為、電荷注入の際の印加電圧の高電圧化を抑制できる。
【0034】
続いて、以下に現像装置に用いられるトナーの構成について詳細に述べるが、トナーは下記に限定されるわけではない。
インピーダンス計測によって求められるトナーの体積抵抗率は1.0×1010Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下である。
トナーの体積抵抗率が上記範囲であることで、トナーへの電荷の注入と注入された電荷の保持を両立できる。該体積抵抗率が1.0×1010Ω・cm未満であると、関係式(1)及び(2)を満たす場合においてもトナーからの電荷の漏洩が起こりやすく、帯電量の保持が困難である。
一方で、該体積抵抗率が1.0×1014Ω・cmを超える場合にはトナーへの電荷の注入が実質的に起こらないため、本発明の効果を得ることができない。該体積抵抗率は1.0×1011Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下Ω・cmであることが好ましい。
該体積抵抗率は、トナー表面近傍やトナー内部に配置する材料の体積抵抗率を制御すること等によって制御することが可能である。中でも、トナーの体積抵抗率を制御するために必要な材料の量が少なく、トナーの定着性に与える影響が小さいことから、トナー表面近傍に配置する材料により制御することが好ましい。
【0035】
該トナーの比誘電率は1.50以上3.00以下であることが好ましい。該比誘電率が上記範囲であることで、トナーの飽和帯電量が好ましい範囲になる。該比誘電率は1.80以上2.50以下であることがより好ましい。
該比誘電率は、トナー表面やトナー内部に配置する材料の比誘電率を制御すること等によって制御することが可能である。
【0036】
該トナーの重量平均粒子径(D4)は3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましく、4.5μm以上8.0μm以下であることがより好ましい。D4が上記範囲であると、帯電量分布が制御しやすく、同時に潜像再現性に優れるために高画質な画像を得ることができる。
また、トナーの単位面積当たりの静電容量値Ctnはトナーの比誘電率とトナー層の厚みで決定されるため、トナー担持体の単位面積当たりの静電容量Cdrに合わせてトナーのD4を制御することで関係式(2)を満たしやすくなる。
【0037】
トナーは、トナー粒子を有する。トナー粒子の表面にトナー粒子よりも高い導電率を有する材料を配置することが好ましい。例えば、該材料として、金属元素を含有する化合物を含む微粒子A(以下単に、金属化合物微粒子Aともいう)が挙げられる。例えば、トナー粒子は、その表面に金属化合物微粒子Aを有することが好ましい。
トナー粒子の表面に金属化合物微粒子Aを有することで、トナーの体積抵抗率を制御しやすくなるため、関係式(2)を満たすトナーを得やすくなる。金属化合物微粒子Aを構成する金属化合物としては、特段の制限なく従来公知の金属化合物を用いることができる。
【0038】
具体的には、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化亜鉛などに代表される金属酸化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどに代表される複合酸化物、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウムなどに代表される多価酸金属塩などが挙げられる。
中でも、構造の安定性及び体積抵抗率の観点から金属酸化物又は多価酸金属塩が好ましい。加えて、適度な分極構造を有することで、電位差による誘導電荷が生じやすいこと、及び、分子中のネットワーク構造によって電荷移動がスムーズなことによって、より効率的な注入帯電が可能なことから、多価酸金属塩がより好ましい。すなわち、トナー粒子は、その表面に多価酸金属塩を有することが好ましい。トナー粒子が、その表面にシェルを有する場合は、多価酸金属塩はシェルの表面に存在することが好ましい。
【0039】
また、該金属元素としては、特段の制限なく従来公知の金属元素を用いることができる。
金属化合物微粒子Aは、3族から13族に含まれる金属元素からなる群より選択される少なくとも一の金属元素を含むことが好ましい。3族から13族の金属元素を含む金属化合物は吸水性が低くなる傾向があるため、電荷注入性及び電荷保持性の湿度依存性がより低下し、より使用環境に対する安定性を高めることができる。
【0040】
金属元素のポーリングの電気陰性度は、1.25以上1.80以下であることが好ましく、1.30以上1.70以下であることがより好ましい。金属元素の電気陰性度が上記範囲であると、金属化合物内における金属部と非金属部に適度な分極が生じ、より効率的な注入帯電が可能となる。
なお、ポーリングの電気陰性度は、「日本化学会編(2004)『化学便覧 基礎編』改訂5版、表表紙裏の表、丸善出版」に記載の値を用いた。
【0041】
該金属元素の具体例としては、チタン(第4族、電気陰性度:1.54)、ジルコニウム(第4族、1.33)、アルミニウム(第13族、1.61)、亜鉛(第12族、1.65)、インジウム(第13族、1.78)、ハフニウム(第4族、1.30)などが挙げられる。
中でも、3価以上の価数を持ちうる金属を用いることが好ましく、チタン、ジルコニウム、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一がより好ましく、チタンがさらに好ましい。
金属化合物として多価酸金属塩を用いる場合の金属元素としては、上述の金属元素を好適に用いることができる。また、多価酸としては特段の制限なく従来公知の多価酸を用いることができる。
【0042】
多価酸は無機酸を含むことが好ましい。無機酸は有機酸と比較して剛直な分子骨格を有するため、長期保管における性状の変化が小さい。よって、長期保管後も安定して注入帯電性を得ることができる。
多価酸の具体例としては、リン酸(3価)、炭酸(2価)、硫酸(2価)などの無機酸;ジカルボン酸(2価)、トリカルボン酸(3価)などの有機酸が挙げられる。
有機酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのジカルボン酸;クエン酸、アコニット酸、無水トリメリット酸などのトリカルボン酸などが挙げられる。
中でも無機酸であるリン酸、炭酸、及び硫酸からなる群から選択される少なくとも一が好ましく、リン酸がさらに好ましい。
【0043】
上記金属元素及び多価酸を組み合わせた多価酸金属塩の具体例としては、リン酸チタン化合物、リン酸ジルコニウム化合物、リン酸アルミニウム化合物、リン酸銅化合物などの
リン酸金属塩;硫酸チタン化合物、硫酸ジルコニウム化合物、硫酸アルミニウム化合物などの硫酸金属塩;炭酸チタン化合物、炭酸ジルコニウム化合物、炭酸アルミニウム化合物などの炭酸金属塩;シュウ酸チタン化合物などのシュウ酸金属塩などが挙げられる。
中でもリン酸イオンが金属間を架橋することで強度が高く、分子内にイオン結合を有することで帯電立ち上がり性にも優れていることから、多価酸金属塩はリン酸金属塩を含むことが好ましく、リン酸チタン化合物を含むことがより好ましい。
【0044】
多価酸金属塩を得るための方法には特段の制限はなく、公知の方法を用いることができる。中でも、水系媒体中で、金属源となる金属化合物と多価酸イオンを反応させて多価酸金属塩を得る方法が好ましい。
金属源としては、多価酸イオンとの反応によって多価酸金属塩を与える金属化合物であれば、特段の制限なく公知の金属化合物を用いることができる。
【0045】
具体的には、チタンラクテート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタントリエタノールアミネート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩、アルミニウムラクテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、銅ラクテートなどの金属キレート;チタンテトライソプロポキシド、チタンエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、アルミニウムトリスイソプロポキシドなどの金属アルコキシドなどが挙げられる。
中でも、反応を制御しやすく、多価酸イオンと定量的に反応することから、金属キレートが好ましい。また、水系媒体への溶解性の観点からチタンラクテートやジルコニウムラクテートなどの乳酸キレートがさらに好ましい。
多価酸イオンとしては、上述した多価酸のイオンを用いることができる。水系媒体に加える場合の形態としては、多価酸そのものを加えてもよく、水溶性の多価酸金属塩を水系媒体に加えて、水系媒体中で解離させてもよい。
トナー粒子中の多価酸金属塩の含有量は、0.01質量%以上5.00質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上3.00質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以上2.00質量%以下であることがさらに好ましい。
【0046】
またトナー粒子は、その表面に有機ケイ素重合体を有することが好ましい。すなわち、トナー粒子は、トナー母粒子及び該トナー母粒子の表面の有機ケイ素重合体を有することが好ましい。有機ケイ素重合体は、好ましくは有機ケイ素縮合体である。
トナー粒子表面に有機ケイ素重合体を有することで、後述する有機ケイ素重合体を有するトナー担持体と組み合わせることによって、トナーとトナー担持体との間の仕事関数の差を小さくすることができる。それにより、トナーとトナー担持体との間での摩擦帯電による電荷の移動を抑制することが可能となり、注入帯電によるシャープな帯電量分布を維持することが可能となる。
通常の摩擦帯電系では、トナーとトナー担持体との摩擦によってトナーを帯電させる。そのため、トナーとトナー担持体との間の仕事関数の差を大きくすることで摩擦帯電しやすくすることが一般的に行われている。一方で、注入帯電系においては、摩擦帯電と比較してシャープな帯電量分布が得られるために、摩擦帯電の影響を小さくすることが好ましい。
【0047】
トナー粒子の表面の有機ケイ素重合体は、シェルを形成することが好ましい。トナー粒子は、トナー母粒子及びトナー母粒子の表面の有機ケイ素重合体のシェルを有することが好ましい。該シェルを有することで、通常のシリカ微粒子等を有するトナーと比較して、トナー担持体への微粒子の移行をより抑制できるため、トナー担持体の性能変化を抑制することが可能となる。よって、長期にわたって良好な注入帯電性能を示す現像装置を得ることができる。
【0048】
有機ケイ素重合体としては、特段の制限なく公知の有機ケイ素重合体を用いることができる。中でも、下記式(I)で表される構造を有する有機ケイ素重合体を用いることが好ましい。
R-SiO3/2 (I)
式(I)中、Rは、(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6の)アルキル基、(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4の)アルケニル基、(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4の)アシル基、(好ましくは炭素数6~14、より好ましくは炭素数6~10の)アリール基又はメタクリロキシアルキル基を示す。
【0049】
式(I)は、有機ケイ素重合体が有機基と、ケイ素重合体部を有することを表している。このことにより、式(I)で表される構造を含む有機ケイ素重合体において、有機基がトナー母粒子との親和性を有することでトナー母粒子と強く固着し、ケイ素重合体部が金属化合物との親和性を有することで金属化合物微粒子Aと強く固着する。このように、有機ケイ素重合体が、トナー粒子と、金属化合物微粒子Aとを固着させる働きを有することで、より強固に金属化合物微粒子Aをトナー母粒子に固着させることができる。
また、式(I)は有機ケイ素重合体が架橋していることを表している。有機ケイ素重合体が架橋構造を有することで、有機ケイ素重合体の強度が増すとともに、残存するシラノール基が少なくなることで疎水性が増す。よって、さらに耐久性に優れ、高湿環境下でも安定して性能を発揮するトナーを得ることができる。
式(I)中、Rがメチル基、プロピル基、ノルマルヘキシル基などの炭素数1以上6以下のアルキル基、ビニル基、フェニル基、又はメタクリロキシプロピル基であることが好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基又はビニル基であることがより好ましい。上記構造を有する有機ケイ素重合体は、有機基の分子運動性が制御されることで硬さと柔軟性を併せ持つため、長期にわたって使用された場合においてもトナーの劣化が抑制され、優れた性能を示す。
【0050】
有機ケイ素重合体を得るための有機ケイ素化合物としては、特段の制限なく公知の有機ケイ素化合物を用いることができる。中でも、下記式(II)で表される有機ケイ素化合物からなる群より選択される少なくとも一であることが好ましい。
R-Si-Ra3 (II)
式(II)中、Raは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、又は(好ましくは炭素数1~4、より好ましくは炭素数1~3の)アルコキシ基を示す。Rは、それぞれ独立して、(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6の)アルキル基、(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4の)アルケニル基、(好ましくは炭素数6~14、より好ましくは炭素数6~10の)アリール基、(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4の)アシル基又はメタクリロキシアルキル基を示す。
【0051】
式(II)で表されるシラン化合物としては、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシランの三官能のメチルシラン化合物;エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシランなどの三官能のシラン化合物;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどの三官能のフェニルシラン化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどの三官能のビニルシラン化合物;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルジエトキシメトキシシラン、アリルエトキシジメトキシシランなどの三官能のアリルシラン化合物;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルジエトキシメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルエトキシジメトキシシランな
どの三官能のγ-メタクリロキシプロピルシラン化合物;などの三官能のシラン化合物などが挙げられる。
【0052】
式(II)中、Rはメチル基、プロピル基、ノルマルヘキシル基などの炭素数1以上6以下のアルキル基、ビニル基、フェニル基、又はメタクリロキシプロピル基であることが好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基又はビニル基であることがより好ましい。そのことによって、上記式(I)の好ましい範囲を満たす有機ケイ素重合体を得ることができる。
また、Raはアルコキシ基であると、水系媒体中で適度な反応性を有するために安定して有機ケイ素重合体を得ることが可能であり、好ましい。Raがメトキシ基又はエトキシ基であることがより好ましい。
【0053】
トナー粒子は、トナー母粒子を有することが好ましい。また、該トナー母粒子は、結着樹脂を含有することが好ましい。
トナー母粒子はそのままトナー粒子としてもよく、トナー母粒子の表面に有機ケイ素縮合体を含むシェルを形成させてトナー粒子としてもよい。また、トナー粒子はそのままトナーとしてもよく、トナー粒子の表面に微粒子などの外添剤を存在させてトナーとしてもよい。
【0054】
該結着樹脂としては、特段の制限なく公知の樹脂を用いることができる。具体的には、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。結着樹脂は、ビニル系樹脂を含むことが好ましい。
ビニル系樹脂の製造に用いることのできる重合性単量体としては、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルなどのメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸;マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸;マレイン酸無水物などの不飽和ジカルボン酸無水物;アクリロニトリルなどのニトリル系ビニル単量体;塩化ビニルなどの含ハロゲン系ビニル単量体;ニトロスチレンなどのニトロ系ビニル単量体;などが挙げられる。
【0055】
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40℃以上70℃以下であることが好ましく、40℃以上60℃以下であることがより好ましい。
【0056】
トナー母粒子は着色剤を含有してもよい。着色剤としては、特段の制限なく公知のブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各色、並びに他の色の顔料及び染料;磁性体などを用いることができる。
ブラック着色剤としては、カーボンブラックなどのブラック顔料が挙げられる。
イエロー着色剤としては、モノアゾ化合物;ジスアゾ化合物;縮合アゾ化合物;イソインドリノン化合物;ベンズイミダゾロン化合物;アントラキノン化合物;アゾ金属錯体;メチン化合物;アリルアミド化合物などのイエロー顔料及びイエロー染料が挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、111、128、155、174、180、185、C.I.ソルベントイエロー162などが挙げられる。
【0057】
マゼンタ着色剤としては、モノアゾ化合物;縮合アゾ化合物;ジケトピロロピロール化合物;アントラキノン化合物;キナクリドン化合物;塩基染料レーキ化合物;ナフトール化合物:ベンズイミダゾロン化合物;チオインジゴ化合物;ペリレン化合物などのマゼンタ顔料及びマゼンタ染料などが挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:
3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレット19などが挙げられる。
【0058】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物;塩基染料レーキ化合物などのシアン顔料及びシアン染料などが挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66などが挙げられる。
着色剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
【0059】
また、トナーは、磁性体を含有させて磁性トナーとすることも可能である。
この場合、磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。
磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどに代表される酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルなどに代表される金属又はこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムなどの金属との合金及びその混合物などが挙げられる。
【0060】
トナー母粒子は、可塑剤を含有してもよい。該可塑剤としては、特に限定されることなく、公知の可塑剤などを用いることができる。
具体的には、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチルなどの1価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、1価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;エチレングリコールジステアレート、セバシン酸ジベヘニル、ヘキサンジオールジベヘネートなどの2価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、2価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;グリセリントリベヘネートなどの3価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、3価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートなどの4価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、4価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテートなどの6価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、6価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;ポリグリセリンベヘネートなどの多価アルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、多価カルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;カルナバワックス、ライスワックスなどの天然エステルワックス。これらは単独又は併用して用いることができる。
該可塑剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して、1.0質量部以上50.0質量部以下であることが好ましく、5.0質量部以上30.0質量部以下であることがより好ましい。
【0061】
トナー母粒子は、離型剤を含有してもよい。離型剤としては、特段の制限なく公知のワックスを用いてもよい。具体的には、以下のものが挙げられる。
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムに代表される石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスに代表される天然ワックス及びそれらの誘導体などが挙げられる。
該誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。
【0062】
また、高級脂肪族アルコールなどのアルコール;ステアリン酸、パルミチン酸などの脂
肪酸又はその酸アミド、エステル、ケトン;硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックスなどが挙げられる。これらは単独又は併用して用いることができる。
これらの中でも、ポリオレフィン、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス、石油系ワックスを使用した場合には、現像性や転写性が向上する傾向があり好ましい。
なお、これらのワックスには、上記効果に影響を与えない範囲で酸化防止剤が添加されていてもよい。
【0063】
離型剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して、1.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましい。
離型剤の融点は、30℃以上120℃以下であることが好ましく、より好ましくは60℃以上100℃以下である。
上記のような熱特性を呈する離型剤を用いることにより、離型効果が効率良く発現され、より広い定着領域が確保される。
【0064】
トナー母粒子は荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては、特段の制限なく公知の荷電制御剤を用いることができる。
具体的には、負帯電制御剤として以下の、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸などの芳香族カルボン酸の金属化合物又は該芳香族カルボン酸の金属化合物を有する重合体又は共重合体;スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体;アゾ染料若しくはアゾ顔料の金属塩又は金属錯体;ホウ素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンなどが挙げられる。
【0065】
一方、正帯電制御剤として以下の、四級アンモニウム塩、四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物;グアニジン化合物;ニグロシン系化合物;イミダゾール化合物などが挙げられる。なお、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体としては、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸などのスルホン酸基含有ビニル系モノマーの単重合体又は結着樹脂の項に示したビニル系単量体と上記スルホン酸基含有ビニル系モノマーの共重合体などを用いることができる。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して、0.01質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
【0066】
トナーは、特段の制限なく公知の外添剤を含有してもよい。
具体的には、湿式製法シリカ、乾式製法シリカなどの原体シリカ微粒子又はそれら原体シリカ微粒子にシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルなどの処理剤により表面処理を施したシリカ微粒子;フッ化ビニリデン微粒子、ポリテトラフルオロエチレン微粒子などの樹脂微粒子などが挙げられる。
外添剤の含有量は、トナー粒子100.0質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
【0067】
以下、上記トナー粒子を得る方法の一例について述べるが、下記に限定されるわけではない。
有機ケイ素重合体を有するシェルをトナー母粒子の表面に形成させる場合、その形成方法には特段の制限はなく、公知の方法を用いることができる。中でも、トナー母粒子とシェルを強固に固着させることが可能であることから、トナー母粒子が分散された水系媒体中で有機ケイ素化合物を縮合し、トナー母粒子上にシェルを形成する方法が好ましい。
【0068】
上記方法について説明する。
上記方法によってトナー母粒子上にシェルを形成する場合、トナー母粒子が水系媒体に分散したトナー母粒子分散液を得る工程(工程1)、及び有機ケイ素化合物(及び/又はその加水分解物)をトナー母粒子分散液に混合し、有機ケイ素化合物をトナー母粒子分散液中で縮合反応させることでトナー母粒子上に有機ケイ素重合体を含むシェルを形成する工程(工程2)を含むことが好ましい。
【0069】
工程1において、トナー母粒子分散液を得る方法としては、水系媒体中で製造したトナー母粒子の分散液をそのまま用いる方法、及び乾燥したトナー母粒子を水系媒体に投入し、機械的に分散させる方法などが挙げられる。乾燥したトナー母粒子を水系媒体に分散させる場合、分散助剤を用いてもよい。
【0070】
分散助剤としては、公知の分散安定剤や界面活性剤などを用いることができる。
具体的には、分散安定剤として以下のものが挙げられる。リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナなどの無機分散安定剤;ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンなどの有機分散安定剤。
また、界面活性剤として、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩などのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどのノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤が挙げられる。
中でも、無機分散安定剤を含むことが好ましく、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩を含む分散安定剤を含むことがより好ましい。
【0071】
工程2において、有機ケイ素化合物はそのままトナー母粒子分散液に加えてもよく、加水分解後にトナー母粒子分散液に加えてもよい。中でも、上記縮合反応が制御しやすく、トナー母粒子分散液中に残留する有機ケイ素化合物量を減らせることから、加水分解後に加えることが好ましい。
加水分解は公知の酸及び塩基を用いてpHを調整した水系媒体中で行うことが好ましい。有機ケイ素化合物の加水分解にはpH依存性があることが知られており、上記加水分解を行う場合のpHは、有機ケイ素化合物の種類によって適宜変更することが好ましい。例えば、有機ケイ素化合物としてメチルトリエトキシシランを用いる場合、水系媒体のpHが2.0以上6.0以下であることが好ましい。
【0072】
pHを調整するための酸としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸;酢酸、クエン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸などの有機酸が挙げられる。
【0073】
pHを調整するための塩基としては、具体的には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物及びそれらの水溶液;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属の炭酸塩及びそれらの水溶液;硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウムなどのアルカリ金属の硫酸塩及びそれらの水溶液;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウムなどのアルカリ金属のリン酸塩及びそれらの水溶液;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物及びそれらの水溶液;アンモニア;トリエチルアミンなどのアミン類などが挙げられ
る。
【0074】
工程2における縮合反応はトナー母粒子分散液のpHを調整することで制御することが好ましい。有機ケイ素化合物の縮合反応はpH依存性があることが知られており、縮合反応を行う場合のpHは、有機ケイ素化合物の種類によって適宜変更することが好ましい。例えば、有機ケイ素化合物としてメチルトリエトキシシランを用いる場合、水系媒体のpHが6.0以上12.0以下であることが好ましい。
【0075】
トナー粒子の表面に金属化合物微粒子Aを存在させるための手法としては、特に限定されないが、以下の手法が例示できる。
例えば、金属化合物微粒子Aとして多価酸金属塩を用いた場合について説明する。
(1)トナー粒子が分散した水系媒体中で、金属源となる金属化合物と多価酸イオンとを反応させて多価酸金属塩を得る方法。
(2)トナー粒子が分散した水系媒体中で、トナー粒子上に多価酸金属塩微粒子を化学的に付着させる方法。
(3)乾式又は湿式で、トナー粒子上に多価酸金属塩微粒子を機械的な外力によって付着させる方法。
【0076】
中でも、トナー粒子が分散した水系媒体中で、金属源となる金属化合物と多価酸イオンとを反応させて多価酸金属塩を得る方法が好ましい。
上記方法を用いることで多価酸金属塩をトナー粒子表面に均一に分散させることが可能となる。その結果、導電パスが効率よく形成されるようになり、より少ない多価酸金属塩によって注入帯電性を示すトナーを得ることができる。
【0077】
一方、シェルが、金属化合物微粒子Aを含む場合、シェルの表面に金属化合物微粒子Aを存在させるための手法としては、特に限定されないが、以下の手法が例示できる。
例えば、金属化合物微粒子Aとして多価酸金属塩を用いた場合について説明する。
トナー粒子が分散された水系媒体中で、金属源となる金属化合物と多価酸イオンとを反応させる時に、同時に有機ケイ素化合物を水系媒体に添加し、水系媒体中で有機ケイ素化合物の縮合反応を実施する。それにより、シェルが有機ケイ素重合体及び金属化合物微粒子Aを含み、かつ、シェルの表面に金属化合物微粒子Aを存在させることができる。
【0078】
すなわち、前述の方法でトナー母粒子表面に有機ケイ素重合体を含むシェルを形成させたのち、シェルを有するトナー粒子が分散した水系媒体中で、金属化合物と多価酸イオンと反応と、有機ケイ素化合物の縮合とを同時に行うことが好ましい。
上記方法を用いることで、水系媒体中で発生した多価酸金属塩の微粒子が成長する前に、有機ケイ素重合体によってシェル表面に固定されるため、多価酸金属塩の分散性を高めることが可能である。また、多価酸金属塩がシェル表面に有機ケイ素重合体によってしっかりと固着されるため、長期にわたる使用時にも安定して注入帯電特性を発揮することが可能な、耐久性に優れたトナーを得ることができる。
上記方法に用いられる金属化合物、多価酸及び有機ケイ素化合物については、上述した金属化合物、多価酸及び有機ケイ素化合物をそれぞれ用いることができる。
【0079】
トナー母粒子の製造方法は、特に限定されることはなく、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法、粉砕法などを用いることができる。その中でも、トナーの平均円形度を好適な範囲に制御しやすいことから、懸濁重合法、溶解懸濁法及び乳化凝集法が好ましい。
一例として、懸濁重合法でトナー母粒子を得る方法を以下に述べる。
まず、結着樹脂を生成しうる重合性単量体、及び必要に応じて各種添加物を混合し、分散機を用いて、該材料を溶解又は分散させた重合性単量体組成物を調製する。
各種添加物として、着色剤、離型剤、可塑剤、荷電制御剤、重合開始剤、連鎖移動剤な
どが挙げられる。
分散機としては、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、又は超音波分散機などが挙げられる。
【0080】
次いで、重合性単量体組成物を、難水溶性の無機微粒子を含有する水系媒体中に投入し、高速撹拌機又は超音波分散機などの高速分散機を用いて、重合性単量体組成物の液滴を調製する(造粒工程)。
その後、前記液滴中の重合性単量体を重合してトナー母粒子を得る(重合工程)。
重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に混合してもよく、水系媒体中に液滴を形成させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。
また、液滴の造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。
【0081】
重合性単量体を重合して結着樹脂を得たあと、必要に応じて脱溶剤処理を行い、トナー母粒子の分散液を得るとよい。
乳化凝集法や懸濁重合法などによって結着樹脂を得る場合、重合性単量体としては、特段の制限なく従来公知の単量体を用いることができる。具体的には、結着樹脂の項に挙げたビニル系単量体が挙げられる。
【0082】
重合開始剤としては、特段の制限なく公知の重合開始剤を用いることができる。具体的には以下のものが挙げられる。
過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化-tert-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸-tert-ヒドロペルオキシド、過ギ酸-tert-ブチル、過酢酸-tert-ブチル、過安息香酸-tert-ブチル、過フェニル酢酸-tert-ブチル、過メトキシ酢酸-tert-ブチル、過N-(3-トルイル)パルミチン酸-tert-ブチルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレ-ト、t-ブチルパーオキシイソブチレ-ト、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどに代表される過酸化物系重合開始剤;2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどに代表されるアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;などが挙げられる。
【0083】
<トナー担持体(現像ローラ)>
トナー担持体としての現像ローラ23は、
図2に示すように、円柱状あるいは中空円筒状の基体23-1、及び導電性弾性層23-2を有する。また、電気特性を調整するために、導電性弾性層23-2上に、表面層23-3を有する。表面層23-3は省略することも可能である。
【0084】
基体23-1は、導電性を有し、その上に設けられる導電性弾性層を支持する機能を有する。材質としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケルなどの金属;これらの金属を含むステンレス鋼、ジュラルミン、真鍮及び青銅の如き合金等を挙げることができる。
基体の表面には、耐傷性付与を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理を
施すことができる。さらに、基体としては、樹脂製の基材の表面を金属で被覆して表面導電性としたものや、導電性樹脂組成物から製造されたものも使用可能である。
【0085】
導電性弾性層23-2は、1層構造又は2層以上の積層構造である。特に非磁性一成分接触現像系プロセスでは、現像ローラとして2層の導電性弾性層を有する電子写真用部材が好適に用いられる。
導電性弾性層は樹脂及びゴム等の弾性材料を含有する。樹脂及びゴムとしては、具体的には、例えば以下が挙げられる。ポリウレタン樹脂、ポリアミド、尿素樹脂、ポリイミド、メラミン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、ウレタンゴム。
【0086】
この中でも、シリコーンゴムが好ましい。シリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらのシロキサンの共重合体を挙げることができる。
これらの樹脂及びゴムは、必要に応じて1種単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0087】
2層の導電性弾性層の場合、導電性弾性層は上記のような弾性材料による弾性層上に、導電性の樹脂層などの導電層が形成されていることが好ましい。導電層には上記樹脂材料を用いることができる。なかでも、ポリウレタン樹脂が、トナーへの摩擦帯電性能に優れ、且つ柔軟性に優れる為にトナーとの接触機会を得られやすく、且つ耐摩耗性有するので好ましい。なお、樹脂及びゴムの材質は、導電性弾性層をフーリエ変換赤外可視分光光度計により測定することで同定することができる。
【0088】
ポリウレタン樹脂としてはエーテル系ポリウレタン樹脂、エステル系ポリウレタン樹脂、アクリル系ポリウレタン樹脂、カーボネート系ポリウレタン樹脂が挙げられる。これらの中でも、トナーとの摩擦によってトナーに負極性の電荷を付与しやすく、且つ柔軟性が得られやすい、ポリエーテルポリウレタン樹脂が好ましい。
【0089】
ポリエーテルポリウレタン樹脂は公知のポリエーテルポリオールとイソシアネート化合物との反応により得ることができる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
また、これらのポリオール成分は、必要に応じて、予め2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のようなイソシアネートにより鎖延長したプレポリマーとしてもよい。
【0090】
これらのポリオール成分と反応させるイソシアネート化合物としては特に限定されないが、例えば以下が挙げられる。エチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネートのような脂環族ポリイソシアネート;2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のような芳香族ポリイソシアネート;及びこれらの変性物や共重合物、そのブロック体。
【0091】
導電性弾性層23-2は導電性を得る為に、導電剤を含有することが好ましい。導電剤
としては、イオン導電剤やカーボンブラックのような電子導電剤が挙げられる。導電性弾性層の体積抵抗率は通常103Ω・cm以上1011Ω・cm以下の範囲であることが好ましい。
【0092】
上記カーボンブラックとしては、具体的には、「ケッチェンブラック」(商品名、ライオン(株)製)、アセチレンブラックの如き導電性カーボンブラック;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボンブラックを挙げることができる。その他、酸化処理を施したカラーインク用カーボンブラック、熱分解カーボンブラックを用いることができる。
カーボンブラックの添加量は、樹脂又はゴム100質量部に対し5質量部以上50質量部以下であることが好ましい。導電性弾性層中におけるカーボンブラックの含有量は熱重量分析装置(TGA)を用いて測定することができる。
【0093】
上記カーボンブラックの他、使用可能な導電剤としては、以下のものを挙げることができる。天然グラファイト、人造グラファイトのようなグラファイト;銅、ニッケル、鉄、アルミニウムのような金属粉;酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫のような金属酸化物粉;ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレンのような導電性高分子。これらは必要に応じて1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
導電性弾性層23-2には、その他、上記樹脂又はゴム、及び導電剤の機能を阻害しない範囲で、荷電制御剤、潤滑剤、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤等を含有させることができる。
【0094】
導電性弾性層23-2の厚さは、1μm以上5mm以下であることが好ましく、断面を光学顕微鏡で観察・測定することにより求めることができる。
電子写真用部材を現像ローラとして使用する際に表面粗度が必要な場合は、導電性弾性層中に粗さ制御用微粒子を含有させることができる。粗さ制御用微粒子の体積平均粒径は3μm以上20μm以下であることが好ましい。また、導電性弾性層中に含有される該微粒子の量は、樹脂又はゴム100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。
粗さ制御用微粒子としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の微粒子を用いることができる。
【0095】
現像ローラは、電気特性を調整するために導電性弾性層23-2上に、表面層23-3を有することが好ましい。
表面層には、好ましくは絶縁の材料が用いられ、絶縁の材料としては、ポリシロキサンが好ましく用いられる。ポリシロキサンは、原料のアルコキシシランからゾルゲル法により形成することができる。用いられるアルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシランが挙げられる。
なかでも、トナー担持体が、その最表面に有機ケイ素重合体を有する表面層を有することが好ましい。有機ケイ素重合体には上述したトナーに用いる有機ケイ素化合物や、下記シラン化合物を用いることができる。
【0096】
テトラアルコキシシランとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n-プロポキシ)シラン、テトラ(iso-プロポキシ)シラン、テトラ(n-ブトキシ)シラン、テトラ(2-ブトキシ)シラン、テトラ(t-ブトキシ)シランが挙げられる。
【0097】
トリアルコキシシランとしては、トリメトキシヒドロシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリメトキシ(n-プロピル)シラン、トリメトキシ(
iso-ポロポキシ)シラン、トリメトキシ(n-ブトキシ)シラン、トリメトキシ(2-ブトキシ)シラン、トリメトキシ(t-ブトキシ)シラン、トリメトキシ(n-ヘキシル)シラン、トリメトキシ(n-オクチル)シラン、トリメトキシ(n-デシル)シラン、トリメトキシ(n-ドデカ)シラン、トリメトキシ(n-テトラデカ)シラン、トリメトキシ(n-ペンタデカ)シラン、トリメトキシ(n-ヘキサデカ)シラン、トリメトキシ(n-オクタデ)シラン、トリメトキシシクロヘキシルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(3-グリシジルプロピル)シランなどのトリメトキシシラン類、トリエトキシヒドロシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシ(n-プロピル)シラン、トリエトキシ(iso-ポロポキシ)シラン、トリエトキシ(n-ブトキシ)シラン、トリエトキシ(2-ブトキシ)シラン、トリエトキシ(t-ブトキシ)シラン、トリエトキシ(n-ヘキシル)シラン、トリエトキシ(n-オクチル)シラン、トリエトキシ(n-デシル)シラン、トリエトキシ(n-ドデカ)シラン、トリエトキシ(n-テトラデカ)シラン、トリエトキシ(n-ペンタデカ)シラン、トリエトキシ(n-ヘキサデカ)シラン、トリエトキシ(n-オクタデ)シラン、トリエトキシシクロヘキシルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリエトキシ(3-グリシジルプロピル)シランなどのトリエトキシシラン類が挙げられる。
【0098】
ジアルコキシシランとしては、具体的には、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシ(ビス-3-グリシジルプロピル)シランなどのジメトキシシラン類、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジエトキシ(ビス-3-グリシジルプロピル)シランなどのジエトキシシラン類が挙げられる。
【0099】
アルコキシシランは、単独で用いることも、複数を混合し用いることも可能である。
アルコキシシランには、金属アルコキシドを添加することも可能である。金属アルコキシドとしては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム、ガリウム、インジウムおよびゲルマニウムのアルコキシドが用いられる。アルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、n-プロポキシド、iso-プロポキシド、n-ブトキシド、2-ブトキシド、t-ブトキシドが挙げられる。金属アルコキシドはアセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどの配位子を有していてもよい。
【0100】
ポリシロキサンや有機ケイ素重合体は、原料のアルコキシシランをあらかじめゾル化し、塗工後にゲル化することで得ることができる。ゾル化を促進するために、触媒として水、酸、塩基を加えることが可能である。必要に応じ、加熱を行うことも可能である。また、塗工性や反応性を制御するために有機溶剤を用いることが可能である。
【0101】
用いる有機溶剤としては、先述の化合物が溶解できる溶剤であれば特に限定はないが、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、セロソルブ系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒などが用いられる。アルコール系溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、1-ペンタノール、シクロヘキサノールが挙げられる。
エーテル系溶媒としては、具体的には、ジメトキシエタンが挙げられる。セロソルブ系溶媒としては、具体的には、メチルセロソルブ、エチルセロソルブが挙げられる。ケトン系溶媒としては、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルiso-ブチルケトンが挙げられる。エステル系溶媒としては、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチルなどが挙げられる。有機溶剤は、単独で用いるほか、2種以上の混合物も使用可能である。
【0102】
表面層を形成させる方法は特に限定はなく、一般的に用いられる方法を選択することが
できる。具体的には、リング塗布、浸漬塗布、スプレー塗布、ロールコーターを用いた塗布が挙げられる。
表面層の形成後は、溶剤を乾燥させるために、加熱処理することも可能である。
また、表面層を表面処理することにより、動摩擦、表面自由エネルギーなどの表面物性を調整することが可能である。具体的には、活性エネルギー線を照射する方法があり、活性エネルギー線としては、紫外線、赤外線、電子線が挙げられる。
表面層の厚さは、0.001μm~30μmであることが好ましく、0.005μm~5μmであることがより好ましい。
【0103】
絶縁の材料としては、有機樹脂を用いることも可能である。有機樹脂としては、具体的には、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド、尿素樹脂、ポリイミド、メラミン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0104】
以下に図面を参照して、現像装置について説明する。ただし、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、以下の説明で一度説明した部材についての材質、形状などは、特に改めて記載しない限り、後の説明においても初めの説明と同様のものである。
【0105】
<現像装置>
図1に現像装置を組み込んだプロセスカートリッジ10の概略構成断面図の一例を示し、以下参照しながら説明する。
現像装置20は、感光ドラム11との対向位置に開口部を有する現像容器21を備えている。この現像容器21は、現像ローラ(トナー担持体)23、剥ぎ取りローラ24、規制ブレード(トナー規制部材)25、トナー収容部26、トナー漏れ防止シート27を具備する。
現像ローラ23は、感光ドラム11に接触し、かつ、感光ドラム11に対して所定の周速比をもって、
図3中矢印Cの方向へ回転駆動している。また、現像ローラ23には、現像バイアス電源23cから所定のバイアスが印加され、感光ドラム11上の静電潜像に対し、トナーを用いて現像し、可視化させる。
【0106】
剥ぎ取りローラ24は、現像ローラ23に接触して所定の侵入量で侵入させ、現像ローラ23の回転方向と同一方向(
図3中矢印D方向)に回転する。また、剥ぎ取りローラ24には、現像バイアス電源23cから現像ローラ23に印加するバイアスと同電位のバイアスが印加されている。
剥ぎ取りローラ24は、導電性支持体である直径5mmの芯金24aと、厚さ3mmのウレタンフォームからなる表層24bとから構成される。このウレタンフォームの発砲セルは、ウレタン内部へトナーが出入りできるよう連泡となっており、ウレタンフォームを含むローラ全体の直径は13mmである。
【0107】
規制ブレード25は、その一端が現像容器21に固定され、その自由端を現像ローラ23の回転方向(
図3中矢印C方向)に対して、カウンター方向に接触配置される。
また、規制ブレード25は、トナーに電荷を付与すると共に、ブレードバイアス電源25cから所定のバイアスが印加され、現像ローラ23上のトナー量を規制して薄層化し、均一なトナー層厚を形成する。
規制ブレード25は、厚さ1mmのSUS板をL字曲げ加工した支持板金25aと支持板金にレーザー溶接で接合される厚さ100μmのSUS板からなるブレード25bと、から構成される。
【0108】
トナー漏れ防止シート27は、その一端が現像容器21に固定され、その自由端を現像ローラ23の回転方向(
図3中矢印C)に対して、ウィズ方向に接触配置される。
トナー漏れ防止シート27として、厚さ50μmのPETからなるシートを用いた。
【0109】
現像装置20に於いて、トナーは、剥ぎ取りローラ24の回転によって、剥ぎ取りローラ24と現像ローラ23との接触部に送られる。現像ローラ23に送られたトナーは、現像ローラ23の回転に伴い、規制ブレード25に送られる。規制ブレード25は、トナーに電荷を付与するとともに、現像ローラ23表面のトナー量を規制して、均一なトナー層厚を形成する。
ここで、現像ローラ23には現像バイアス-300V、規制ブレード25にはブレードバイアス-500V、が印加されている。ブレードバイアスを印加することによって、規制ブレード25はトナー量を規制して薄層化するだけでなく、トナーに電荷を付与する。規制ブレード25通過後のトナーは、現像ローラ23の回転に伴い感光ドラム11との接触部に送られ、感光ドラム11上に形成された静電潜像を形成するために用いられる。
現像後の現像ローラ23の表面に残留したトナーは、剥ぎ取りローラ24との接書部に搬送され、剥ぎ取りローラ24により現像ローラ23の表面より除去される(剥ぎ取られる)。除去されたトナーは、不図示のトナー収容部に送られ、再び剥ぎ取りローラ24へ搬送されることになる。
【0110】
続いて、以下、各種分析方法について詳細に述べる。
<トナーの比誘電率及び体積抵抗率>
平行平板コンデンサ法を用いたインピーダンス測定によって、空気とトナーの静電容量及び導電率を測定する。
装置は、4端子サンプルホルダーSH2-Z(東陽テクニカ社製)とトルクレンチアダプタSH-TRQ-AD(オプション)から構成されるトナー測定用治具、及び、材料試験システムModuLab XM MTS(ソーラトロン社製)を使用する。
また、商用電源ノイズを抑制するためのノイズカットトランスNCT-I3 1.4kVA(電研精機研究所社製)、及び、電磁波ノイズを抑制するためのシールドボックスを使用する。
トナー測定用治具は、4端子サンプルホルダーとオプションであるトルクレンチアダプタSH-TRQ-ADを用い、平行平板電極として、上部電極(Φ25mmベタ電極)SH-H25AU、液体/粉体用の下部電極(中心電極Φ10mm;ガード電極Φ26mm)SH-2610AUを使用し、最大500Vp-p、DC~1MHzの電気信号に対し、0.1Ω~1TΩの抵抗が測定可能な構成とする。
また、トナーサンプルの圧力調整を行うために、4端子サンプルホルダーに備えられた、上・下部電極間の膜厚測定に用いるマイクロメータにトルクレンチアダプタSH-TRQ-AD(東陽テクニカ社製)を取り付けてある。
加圧管理に用いるトルクドライバーとしては、トルクドライバーRTD15CN(東日製作所社製)と6.35mm角形ビットを用い、締め付けトルクを6.5cN・mに管理可能な構成とする。
【0111】
電気的AC特性の測定は、材料試験システムModuLab XM MTS(ソーラトロン社製)を用いて、インピーダンス測定を実施する。
ModuLab XM MTSは、制御モジュール XM MAT 1MHz、高電圧モジュール XM MHV100、フェムト電流モジュール XM MFA、周波数応答分析モジュール XM MRA 1MHzから構成され、制御ソフトウェアは、同社製 XM-studio MTS Ver.3.4を使用する。
トナーの測定条件は、測定のみを行うNormal Modeとし、ACレベル7Vrms、DCバイアス0V、掃引周波数1MHz~0.01Hz(12points/decade又は6points/decade)とする。
さらに、ノイズ抑制と測定時間の短縮を鑑み、掃引周波数ごとに下記の設定を追加する。
掃引周波数1MHz~10Hz 測定積分時間64サイクル
掃引周波数10Hz~1Hz 測定積分時間24サイクル
掃引周波数1Hz~0.01Hz 測定積分時間1サイクル
以上の測定条件により、電気的AC特性であるインピーダンス特性の測定を実施する。
【0112】
上記条件で測定を行うことで、平行平板コンデンサ法に基づいたトナー測定治具を使用し、Φ10mmの測定電極S、加圧トルクに応じた膜厚dに於ける空気とサンプルのインピーダンス特性が得られる。
得られた空気とサンプルのインピーダンス特性から、測定系のデータ補正処理を行い、信頼性の高い静電容量C、コンダクタンス(導電性)Gを得る。得られた静電容量C、コンダクタンス(導電性)G、及びトナー測定治具の幾何学的形状(平行平板の電極サイズSとサンプル膜厚)から、電気物性である比誘電率と導電率を求める。
【0113】
初めて、4端子サンプルホルダーSH2-Zを使用する場合、粉体測定治具に使用する4端子サンプルホルダーSH2-Zには、個体差があることから、最適な測定条件を見出すための、2つの検証を実施しておく必要がある。
一つ目の検証は、4端子サンプルホルダーの膜厚依存特性である。空気の厚さ(上部-下部電極間距離)依存性を測定し、静電容量の理論値と測定値の誤差を確認し、測定誤差が最小となる最適範囲もしくは最適値となる膜厚を把握する。
二つ目の検証は、メカニカル誤差の測定である。トナーサンプルの測定は、体積密度を一定に保つために、トルク管理をした負荷を加える。これに対して、空気の測定では、無負荷状態である。このとき、機械的な加工精度などの寸法の影響により、膜厚誤差を生じる。したがって、締め付けトルク管理値(本治具では、6.5cN・m)の負荷状態と無負荷状態のオフセット値を確認し、これをオフセット補正値とする。
【0114】
具体的なサンプルの作製及び測定手順は、次の通りである。
(1)下部電極の中心電極部に、トナーを盛り、高さ5mmの台形状となるようにトナーを成形する。
(2)トナーを盛りつけた下部電極を4端子サンプルホルダーSH2-Zに取り付け、上部電極を下降させる。
(3)このとき、上部電極を、不用意に回転しない様に、一定に保ちながら、トナー上端部まで下降させる。
(4)上部電極を左右に回転させながら、トナーが平滑となるように平滑処理を行う。
(5)マイクロメータを用いて、所定の膜厚となるように調整しながら、かつ、上部電極の回転方向を一律の一定方向に保つ。
(6)締め付けトルクを6.5cN・mに管理したトルクドライバーを用いて、加圧する。
(7)マイクロメータを用いてサンプル膜厚を測定する。
(8)上記条件で、インピーダンス測定を実施する。
(9)測定終了後、上部電極を上昇させ、下部電極を取り外す。このとき、4端子サンプルホルダーの下部電極用コンタクト端子にトナーが入らない様、十分に注意しながら下部電極を取り外し、マスキングテープで保護する。
(10)上・下部電極を洗浄する。
(11)マスキングテープを除去し、下部電極を取り付ける。
(12)工程(7)で求めた、サンプル膜厚dに対し、無負荷状態のオフセット補正を加味した、空気の厚さtとなるように調整し、かつ、上部電極の回転方向を一律の一定方向に保つ。
(13)空気のインピーダンス測定を実施する。
(14)工程(13)で測定した空気の測定データ(誘電正接;tanδ)が100Hz~0.01Hzの周波数域にて、0.002以上となる場合は、洗浄不足であるため、工程(10)の洗浄工程より、改めて作業をやり直す。
なお、測定は25℃で実施する。
【0115】
具体的なデータ処理手順は、次の通りである。
(15)測定した空気のインピーダンス特性から、理論値に対する位相特性の誤差を算出し、材料試験システムModuLab XM MTS(ソーラトロン社製)の位相補正データを得る。
(16)工程(15)で算出した位相補正データを、工程(13)で測定した空気のインピーダンス特性に適用し、位相補正処理を施した空気のインピーダンス特性を得る。
(17)位相補正された空気のインピーダンス特性のアドミッタンスYa=Ga+jωCaから、静電容量Caを算出すると共に、理論値との誤差を算出し、膜厚誤差に対する補正データαを得る。
(18)工程(8)で測定したトナーサンプルのインピーダンス特性に対し、工程(15)で得られた位相補正処理を適用する。
(19)工程(18)の位相補正処理が施された特性の複素アドミッタンスYm=Gm+jωCmに対して、工程(17)で求めた空気の静電容量Caとその補正データαを用いて計算することで、信頼性の高いトナーサンプルの比誘電率と導電率が得られる。
【0116】
具体的な、電気物性の同定手順は、次の通りである。
工程(19)で得られたトナーサンプルの比誘電率と導電率に対して、下記手順を行い、比誘電率と体積抵抗率の電気物性パラメータを同定する。
(20)周波数範囲1kHz~400kHzの範囲に於いて、誘電正接tanδが最小値を示す周波数での比誘電率を同定する。
(21)周波数0.01Hzに於ける導電率を求め、導電率の逆数を体積抵抗率と同定する。また、オーミック特性を示す場合、任意低周波数に於ける導電率の逆数を体積抵抗率として同定してもよい。
上記測定結果から、以下の式により、トナー粒子径(重量平均粒子径D4)の1.5倍を厚みとした平行平板コンデンサモデルより換算される、トナーの単位面積当たりの静電容量Ctn(pF/cm2)及び、単位面積当たりの体積抵抗値Rtn(Ω/cm2)を算出する。
Ctn=(真空の誘電率)×(測定した比誘電率)×(単位面積)/(厚み)
Rtn=(厚み)/(単位面積)/(測定した導電率)
【0117】
<トナー担持体の静電容量及び体積抵抗測定>
インピーダンス測定を用いて、トナー担持体の電気的AC特性である静電容量Cdrと体積抵抗Rdrを測定する。
トナー担持体の電気的特性評価には、通常、材料試験システムModuLab XM MTS(ソーラトロン社製)を使用し、絶縁性を示す高抵抗体の場合に、高電圧インピーダンス測定システム(東陽テクニカ社製)を併用する。トナー担持体の電気的特性評価を行うにあたり、測定電極とトナー担持体表面が接触する端部に生じるエッジキャパシタ(浮遊容量)の影響が懸念されることから、円柱型の微小電極による測定治具を考案し、使用した。
具体的には、1TΩの絶縁抵抗を有するSHVコネクタ317.580.000(RADIALL社製)に、Φ0.65mm円柱型チェック端子CH2-3(マックエイト社製)を半田付けし、トナー担持体に通電するコンタクト電極治具を作製し、使用した。
また、トナー担持体の芯金に当接するコンタクト治具として、マニュアルプローバーなどに使用されるプローブを使用した。該プローブは、位置制御用のポジショナHP80/R-M-GB型、高電圧プローブHCP40-HV1.5K型、先端半径25μmの針状
プローブPT250-25(ハイソル社製)より構成されている。これらプローバを使用した測定治具の浮遊容量は、0.1pF以下を実現している。
【0118】
電気的AC特性の測定は、材料試験システムModuLab XM MTS(ソーラトロン社製)を用いて、インピーダンス測定を実施する。
ModuLab XM MTSは、制御モジュール XM MAT 1MHz、高電圧モジュール XM MHV100、フェムト電流モジュール XM MFA、周波数応答分析モジュール XM MRA 1MHzから構成され、制御ソフトウェアは、同社製 XM-studio MTS Ver.3.4を使用する。
トナー担持体の測定条件は、測定のみを行うNormal Modeとし、ACレベル7Vrms、DCバイアス0V、掃引周波数1MHz~0.01Hz(12points/decade又は6points/decade)とする。
更に、ノイズ抑制と測定時間の短縮を鑑み、掃引周波数ごとに下記の設定を追加する。掃引周波数1MHz~10Hz 測定積分時間128サイクル
掃引周波数10Hz~1Hz 測定積分時間64サイクル
掃引周波数1Hz~0.1Hz 測定積分時間24サイクル
掃引周波数0.1Hz~0.01Hz 測定積分時間1サイクル
以上の測定条件により、電気的AC特性であるインピーダンス特性の測定を実施する。
【0119】
絶縁性を示す高抵抗体であるトナー担持体を測定する場合は、高電圧インピーダンスシステム(東陽テクニカ社製)を併用して、インピーダンス測定を実施する。
高電圧インピーダンス測定システムは、インピーダンス・アナライザ1260と誘電体インターフェース1296から成る誘電体インピーダンス測定システム126096Wに加え、DCアンプとして高電圧アンプ2220(Trek社製)、ACアンプとして高速アンプHVA800(東陽テクニカ社製)、AC/DC信号の高電圧制御を行う高電圧AC/DCインターフェース6792(東陽テクニカ社製)、高電圧信号のモニターと容量補正を行うためのリファレンス・ボックス6796(東陽テクニカ社製)から構成され、制御用ソフトウェアは、SMaRT Ver3.31を使用する。
トナー担持体の測定条件は、外部容量を用いた補正処理を行うExternal Modeとし、ACレベル7Vrms、DCバイアス0V、掃引周波数100kHz~0.0215Hz(12points/decade又は6points/decade)とする。
【0120】
さらに、測定データの再現性・精度、測定時間を鑑み、掃引周波数ごとに下記の設定を追加する。
掃引周波数100kHz10kHz 測定遅延サイクル1000 測定積分時間768サイクル
掃引周波数10kHz~1kHz 測定遅延サイクル500 測定積分時間512サイクル
掃引周波数1kHz~100Hz 測定遅延サイクル20 測定積分時間384サイクル掃引周波数100Hz~10Hz 測定遅延サイクル10 測定積分時間64サイクル
掃引周波数10Hz~1Hz 測定遅延サイクル1 測定積分時間16サイクル
掃引周波数1Hz~0.1Hz 測定遅延サイクル1 測定積分時間8サイクル
掃引周波数0.1Hz~0.0215Hz 測定遅延サイクル1 測定積分時間4サイクル
以上の測定条件より、電気的AC特性であるインピーダンス特性の測定を実施する。
【0121】
また、インピーダンス測定において、商用電源のノイズ抑制手段として、ノイズカットトランスNCT-I3 1.4kVA(電研精機研究所社製)、及び、電磁波ノイズを抑制する手段としてシールドボックスを使用する。
具体的な測定手順は、次の通りである。
(1) テフロン性のV字溝受けにトナー担持体のみを設置する
(2) コンタクト治具である針状プローブを用いて、トナー担持体の芯金と導通をとる。
(3) 測定用の円柱電極は、浮遊容量の影響がない位置に固定し、OPEN状態におけるデータを測定する。このとき、静電容量が0.1pF以上となる場合は、正しい測定が行えていない。また、測定治具もしくは測定装置に何らかの問題を生じており、改善する必要がある。
(4) Φ0.65mm円柱型電極をトナー担持体に当接させ、測定を行う。
(5) 測定中、オーミック特性を示す場合、必ずしも低周波数(0.01Hz)まで測定する必要はない。
【0122】
具体的な、データ処理手順は、次の通りである。
材料試験システムModuLabによる測定結果のみ、位相補正処理を行う。
工程(3)のOPEN状態の測定データ(位相特性)より、理論値との誤差を補正データとして算出する。
工程(4)の測定データに対して、上記の位相補正データを用いて、位相補正処理を適用する。
(6)測定又は位相補正処理が施されたインピーダンス特性の複素アドミッタンスYm=Gm+jωCmに対して、Φ0.65mm測定電極面積から1平方センチメートルの単位面積当たりの特性へ面積換算を行う。
【0123】
具体的な同定手順は、次の通りである。
<素過程数の同定法>
誘電正接tanδの周波数依存性を一次微分した、ゼロクロス検出法により、極大値の有無を同定する。極大値が認められない場合、誘電緩和の異なる界面が形成されていないため、素過程を1と判定する。また、極大値が1つ認められる場合、誘電緩和の異なる界面が形成されていると判断でき、素過程を2と判定する。
【0124】
<抵抗値の同定法>
このとき、0.1Hz以上の高周波数側に於いて、誘電正接tanδが10以上となる場合とそうでない場合について異なる同定手順を行う。
以下、誘電正接tanδが10以上となる場合について述べる。
縦軸にコンダクタンス(導電性)Gm、横軸に静電容量Cmの両対数グラフを作成する。上記Gm-Cm特性の一次微分が、-0.5以下となる測定周波数の範囲を求め、この周波数範囲のコンダクタンス(導電性)Gmの中央値を求める。求めた中央値の逆数を抵抗値として同定する。
以下、誘電正接tanδが10以上とならない場合について述べる。
誘電正接tanδの周波数依存性を一次微分した、ゼロクロス検出法により、極大値を示す周波数を求める。求めた周波数に於けるコンダクタンス(導電性)Gmの逆数を抵抗値として同定する。また、誘電正接tanδの極大値が検出されない場合、0.01Hzに於けるコンダクタンス(導電性)Gmの逆数を抵抗値として同定する。
得られた抵抗値から、面積換算してトナー担持体の単位面積当たりの体積抵抗値Rdrを算出する。
【0125】
<静電容量の同定法>
静電容量を同定するために、モジュラスという複素応答関数を用いる。モジュラスはM=jωZで定義され、インピーダンス特性Z(アドミッタンスYの逆数)より求めることができる。
モジュラスMの虚数項の周波数依存性を算出し、その極大値を示す周波数を求める。極
大値を示す周波数は、一次微分演算を用いたゼロクロス検出法にて、同定することができ、該周波数に於ける静電容量Cmをパラメータとして同定する。
以下、極大値が複数存在する場合について述べる。
縦軸にコンダクタンス(導電性)Gm、横軸に静電容量Cmの両対数グラフを作成し、Gm-Cm特性の一次微分演算を行い、一次微分演算が-1となる測定周波数の範囲を求める。このとき、上記複数の極大値を示す周波数が、一次微分演算が-1となる測定周波数に近い極大値を選択する。
さらに、複数の極大値を示す周波数が、一次微分演算が-1となる測定周波数と同じ差となる場合、高周波数側の周波数を選択する。以上、求めた極大値を示す周波数に於ける、静電容量Cmを同定する。
得られた静電容量Cmから、面積換算してトナー担持体の単位面積当たりの静電容量Ctnを算出する。
【0126】
<重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナー、トナー粒子、又はトナー母粒子(以下、トナーなど、ともいう)の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)を用いる。
測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター
Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1.0%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1,600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0127】
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに電解水溶液200.0mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに電解水溶液30.0mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetra150」(日科機バイオス(株)製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2.0mL添加する。
(4)上記(2)のビーカーを上記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分
散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)上記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナーなど10mgを少量ずつ上記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した上記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーなどを分散した上記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
【0128】
<STEM-EDSによるトナー表面の観察>
走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて、トナー最表面を含む切片を以下の方法により観察する。
まず、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナーを充分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。得られた硬化物からダイヤモンド刃を備えたミクロトーム(EM UC7:Leica社製)を用い、トナー最表面を含む厚さ50nmの薄片状のサンプルを切り出す。
このサンプルを、STEM(JEM2800型:日本電子社製)を用いて加速電圧200V、電子線プローブサイズ1mmの条件で10万倍の倍率に拡大し、トナーの最表面を観察する。
続いて、得られたトナーの最表面の構成元素を、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を利用して解析し、EDSマッピング像(256×256ピクセル(2.2nm/ピクセル)、積算回数200回)を作製する。
作製したEDSマッピング像において、トナーの表面に金属元素に由来するシグナルが観察され、STEM像において、同位置に粒子が観察される場合、該粒子を金属化合物微粒子Aとする。
【0129】
<STEM-EDSによる有機ケイ素重合体を含むシェルの確認方法>
走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて、トナーの断面を以下の方法により観察する。
まず、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナーを充分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。
得られた硬化物からダイヤモンド刃を備えたミクロトーム(EM UC7:Leica社製)を用い、厚さ50nmの薄片状のサンプルを切り出す。
このサンプルを、STEM(JEM2800型:日本電子社製)を用いて加速電圧200V、電子線プローブサイズ1mmの条件で10万倍の倍率に拡大し、トナーの断面を観察する。この際、後述するトナーの個数平均粒径(D1)の測定法に従い、同トナーを測定した際の個数平均粒径(D1)の0.9倍~1.1倍の最大径を有するトナーの断面を選択する。
続いて、得られたトナーの断面の構成元素を、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を利用して解析し、EDSマッピング像(256×256ピクセル(2.2nm/ピクセル)、積算回数200回)を作製する。
作製したEDSマッピング像において、トナー粒子の断面の輪郭に、有機ケイ素重合体の構成元素に由来するシグナルを確認する。前記シグナルが、トナー粒子の断面の輪郭の長さの80%以上にわたって観察され、後述の<有機ケイ素重合体の確認方法>によって
上記シグナルが有機ケイ素重合体に由来すると確認される場合、上記シグナルを、有機ケイ素重合体を含むシェルの像とする。
【0130】
<有機ケイ素重合体の確認方法>
トナー粒子表面の有機ケイ素重合体は、Si、及びOの元素含有量(atomic%)の比(Si/O比)を標品と比較することで確認する。
有機ケイ素重合体、及びシリカ微粒子それぞれの標品に対して、<STEM-EDSによる有機ケイ素重合体を含むシェルの確認方法>に記載の条件でEDS分析を行い、Si、及びOそれぞれの元素含有量(atomic%)を得る。
有機ケイ素重合体のSi/O比をAとし、シリカ微粒子のSi/O比をBとする。AがBに対して、有意に大きくなる測定条件を選択する。
具体的には、標品に対して、同条件で10回の測定を行い、A及びB、それぞれの相加平均値を得る。得られた平均値がA/B>1.1となる測定条件を選択する。
EDS像においてケイ素が検出される部分のSi/O比が[(A+B)/2]よりもA側にある場合に当該部分を有機ケイ素重合体と判断する。対して、Si/O比が[(A+B)/2]よりもB側にある場合には、当該部分をシリカと判断する。
有機ケイ素重合体粒子の標品として、トスパール120A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)を、シリカ微粒子の標品として、HDK V15(旭化成)を用いる。
【0131】
<多価酸金属塩の検出方法>
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて、トナー粒子表面の多価酸金属塩を以下の方法により検出する。
トナーサンプルをTOF-SIMS(TRIFTIV:アルバック・ファイ社製)を用いて以下の条件で分析する。
・一次イオン種: 金イオン (Au+)
・一次イオン電流値: 2pA
・分析面積: 300×300μm2
・画素数: 256×256pixel
・分析時間: 3min
・繰り返し周波数: 8.2kHz
・帯電中和: ON
・二次イオン極性: Positive
・二次イオン質量範囲: m/z 0.5~1850
・試料基板:インジウム
上記条件で分析を行い、金属イオンと多価酸イオンとを含む二次イオン(例えばリン酸チタンの場合はTiPO3(m/z 127)、TiP2O5(m/z 207)など)に由来するピークが検出される場合、トナー粒子表面に多価酸金属塩が存在している。
【実施例】
【0132】
本発明を以下に示す製造例及び実施例により具体的に説明する。しかし、これらは本発明をなんら限定するものではない。なお、製造例及び実施例中の「部」及び「%」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
【0133】
<トナーの製造例>
<有機ケイ素化合物液の製造例>
・イオン交換水 70.0部
・メチルトリエトキシシラン 30.0部
上記材料を200mLのビーカーに秤量し、10%塩酸でpHを3.5に調整した。その後、ウォーターバスで60℃に加熱しながら1.0時間撹拌し、有機ケイ素化合物液を
得た。
【0134】
<水系媒体の製造例>
<水系媒体1>
イオン交換水390.0部を入れた反応容器に、リン酸ナトリウム(12水和物)11.2部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12000rpmにて撹拌した。撹拌を維持しながら、イオン交換水10.0部に7.4部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を反応容器に一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、反応容器内の水系媒体に1.0モル/Lの塩酸を投入し、pHを6.0に調整し、水系媒体1を得た。
【0135】
<水系媒体2~6>
水系媒体1の製造例において、各材料の投入量を以下の表1に記載の量に変更する以外は水系媒体1の製造例と同様にして、水系媒体2~6を得た。
【0136】
【0137】
<未処理磁性体の製造>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.0当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対してケイ素元素換算で1.5質量%のケイ酸ソーダを混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液をpH9.0に維持しながら、空気を吹き込み、80℃以上90℃以下で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
次いで、このスラリー液にアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し1.0当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた。その後、スラリー液をpH8.0に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめ、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。このスラリーをろ過と洗浄を行った後、再びろ過をした。その後、解砕、乾燥を行い、未処理の磁性体を得た。
【0138】
<シラン化合物の調製>
イソブチルトリメトキシシラン20部をイオン交換水80部に対して攪拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH5.5、温度40℃に保持し、ディスパー翼を用いて0.46m/sで2時間分散させて加水分解を行い、加水分解物を含有する水溶液であるシラン化合物を得た。
【0139】
<処理磁性体の製造>
未処理の磁性体をヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)に入れ、34.5m/sで分散しながら、シラン化合物を噴霧して加えた。そのまま10分間分散させた後、シラン化合物が吸着した磁性体を取り出し、160℃で2時間静置して処理磁性体を乾燥すると共に、シラン化合物の縮合反応を進行させた。その後、目開き100μmの篩を通過させた磁性体を処理磁性体として得た。
【0140】
<重合性単量体組成物の調製>
<重合性単量体組成物1>
・スチレン 60.0部
・C.I.Pigment Red 122 8.0部
上記材料をアトライタ(日本コークス工業株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させた後にジルコニア粒子を取り除き、顔料が分散された着色剤分散液を調製した。
次いで、該着色剤分散液に下記材料を加えた。
・スチレン 15.0部
・アクリル酸n-ブチル 25.0部
・ヘキサンジオールジアクリレート 0.5部
・ポリエステル樹脂 5.0部
(テレフタル酸と、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物との縮重合物、重量平均分子量Mwが10000、酸価が8.2mgKOH/g)
・離型剤(炭化水素ワックス、融点:79℃) 9.0部
上記材料を65℃に保温し、T.K.ホモミクサーを用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物1を調製した。
【0141】
<重合性単量体組成物2>
・スチレン:75.0部
・アクリル酸n-ブチル:25.0部
・ヘキサンジオールジアクリレート:0.5部
・処理磁性体:90.0質量部
・ポリエステル樹脂:5.0部
(テレフタル酸と、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物との縮重合物、重量平均分子量Mwが10000、酸価が8.2mgKOH/g)
・離型剤(炭化水素ワックス、融点:79℃):15.0部
上記材料を65℃に保温し、T.K.ホモミクサーを用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物2を調製した。
【0142】
<トナー母粒子分散液の製造例>
<トナー母粒子分散液1>
(造粒工程)
水系媒体1の温度を70℃、撹拌装置の回転数を12500rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物1を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート8.0部を添加した。そのまま撹拌装置にて12500rpmを維持しつつ10分間造粒した。
(重合工程)
高速撹拌装置からプロペラ撹拌羽根を備えた撹拌機に変更し、200rpmで撹拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、さらに85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行った。さらに、98℃に昇温して3.0時間加熱することで残留モノマーを除去した。
その後、55℃まで降温し、撹拌を維持しながら55℃を5.0時間保持した。続いて、25℃まで降温した。イオン交換水を加えて分散液中のトナー母粒子濃度が30.0%になるように調整し、トナー母粒子1が分散したトナー母粒子分散液1を得た。トナー母粒子1の重量平均粒径(D4)は6.7μmであった。
【0143】
<トナー母粒子分散液2~7>
トナー母粒子分散液1の製造例において、水系媒体及び重合性単量体組成物の組合せを
表2に記載の物に変える以外はトナー母粒子分散液1の製造例と同様にしてトナー母粒子分散液2~7を得た。得られたトナー母粒子の重量平均粒径(D4)を表2に示す。
【0144】
【0145】
<トナー粒子の製造例>
<トナー粒子1>
トナー母粒子分散液1に1mol/Lの塩酸を加えてpHを1.5に調整して1.0時間撹拌した後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過、乾燥してトナー粒子1を得た。
トナー粒子1の重量平均粒径(D4)は6.7μmであった。
【0146】
<トナー粒子2~7>
トナー粒子1の製造例において、トナー母粒子分散液を表3に記載の物に変更する以外はトナー粒子1の製造例と同様にしてトナー粒子2~7を得た。得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)を表3に示す。
【0147】
【0148】
<トナー粒子1A>
(有機ケイ素重合体形成工程)
反応容器内に下記サンプルを秤量し、プロペラ撹拌翼を用いて混合した。
・トナー母粒子分散液1 500.0部
・有機ケイ素化合物液 40.0部
次に、1mol/LのNaOH水溶液を用いて、得られた混合液のpHを9.5に調整し、混合液の温度を50℃にした後に、プロペラ撹拌羽根を用いて混合しながら、1.0時間保持した。
【0149】
(多価酸金属塩付着工程)
・チタンラクテート44%水溶液(TC-310:マツモトファインケミカル社製)
3.2部(チタンラクテートとして1.4部相当)
・有機ケイ素化合物液 10.0部
続いて、上記サンプルを秤量し、反応容器内に混合した後、1mol/LのNaOH水
溶液を用いて、得られた混合液のpHを9.5に調整し、4.0時間保持した。温度を25℃に下げたのち、1mol/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1.0時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過することによりトナー粒子1Aを得た。
【0150】
<トナー粒子2A、3A、1B>
トナー粒子1Aの製造例において、トナー母粒子分散液、有機ケイ素化合物液及びチタンラクテート44%水溶液の量を表4に記載の物に変更する以外はトナー粒子1Aの製造例と同様にしてトナー粒子2A、3A及び1Bを得た。
【0151】
【0152】
<トナーの製造例>
<トナー1>
トナー粒子1Aをトナー1として用いた。
トナー1の断面をSTEM-EDS観察したところ、トナー粒子表面に有機ケイ素重合体を含むシェル及び多価酸金属塩微粒子が観察された。また、トナー1を飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)で分析することでリン酸チタン化合物由来のイオンが検出された。
なお、該リン酸チタン化合物は、チタンラクテートと、トナー母粒子分散液1中のリン酸ナトリウム、又はリン酸カルシウム由来のリン酸イオンとの反応物である。
トナー1の体積抵抗率は2.9×1013(Ω・cm)、比誘電率は1.9、重量平均粒径(D4)は6.7μmであった。
トナー1の物性値を表6に示す。
【0153】
<トナー4、6、13>
トナー粒子2Aをトナー4、トナー粒子3Aをトナー6、トナー粒子1Bをトナー13としてそれぞれ用いた。トナー4、6及び13の物性値を表6に示す。
【0154】
<トナー2>
・トナー粒子1 100.0部・シリカ微粒子1 2.0部
上記材料をSUPERMIXER PICCOLO SMP-2(株式会社カワタ製)に投入して、ジャケットに45℃の温水を投入して槽内を45℃に加温しながら、3000rpmで5分間混合を行った。
・シリカ微粒子2 2.0部・酸化チタン微粒子1 6.0部
続いて、上記材料をSUPERMIXER PICCOLO SMP-2(株式会社カワタ製)に投入して、ジャケットに20℃の冷水を投入して槽内を20℃に保ちながら、3000rpmで10分間混合を行った。その後、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー2を得た。各微粒子の詳細を表5に、トナー2の物性値を表6に示す。
【0155】
【0156】
<トナー3、5、7~12、14~18>
トナー2の製造例において、トナー粒子、各微粒子の組合せを表6に記載のものに変更する以外は、トナー2の製造例と同様にして、トナー3、5、7~12、14~18を得た。
なお、シリカ微粒子1を有さないトナーにおいては、45℃に加温しながら混合する工程は行わなかった。トナー3、5、7~12、14~18の物性値を表6に示す。
【0157】
【表6】
表中、2.9E+13との記載は、2.9×10
13であることを示す。
【0158】
<現像ローラの製造例>
<現像ローラDR1>
[弾性層(Dd1、Dd2)の形成]
軸芯体としてSUS製のΦ6芯金にニッケルメッキを施し、さらにプライマ-(商品名DY39-012、ダウ・東レ株式会社製)を塗布、焼付けしたものを用いた。得られた軸芯体を内径11.5mmの円筒状金型内に同心となるように設置した。
弾性層の材料として、以下の材料をトリミックスで混合した付加型シリコーンゴム組成物を温度115℃に加熱した金型内に注入した。
・一分子中にケイ素原子結合アルケニル基を2個以上有する液状ジメチルポリシロキサン(商品名:DMS-V41、Gelest社製)100部
・一分子中にケイ素原子結合水素原子を2個以上有するジメチルポリシロキサン(商品名:HMS-151、Gelest社製)5部
・白金触媒(商品名:SIP6832.2、Gelest社製)0.048部
・カーボンブラック(商品名:トーカブラック#7360SB、東海カーボン社製)
18部
・石英(商品名:Y-60、株式会社龍森製)20部
材料注入後、温度120℃にて10分間加熱成型し、室温まで冷却後金型から脱型し、導電性基材と一体となった弾性層Dd1を得た。
また、用いるカーボンブラックを12部にする以外は、上述の弾性層Dd1と同様にして、弾性層Dd2を形成した。
【0159】
[導電性塗料(DT1、DT2)の作成]
ポリオール化合物(商品名:ポリテトラメチレングリコールPTG1000SN、保土谷化学社製)100部に、イソシアネート化合物(商品名:ミリオネートMT、東ソー株式会社製)23部をメチルエチルケトン溶媒中で段階的に混合し、窒素雰囲気下80℃にて7時間反応させて、重量平均分子量Mw=11000、水酸基価20mgKOH/gのポリウレタンポリオールAを得た。
次に窒素雰囲気下、数平均分子量400のポリプロピレングリコール(商品名:サンニックスPP-400、三洋化成株式会社製)100部に対し、イソシアネート化合物(商品名:ミリオネートMR-100、東ソー株式会社製)43部を90℃で2時間加熱反応した後、メチルエチルケトンを固形分70%になるように加えた。このときの固形分当たりのNCO%は4質量%であった。その後反応物温度50℃の条件下、メチルエチルケトンオキシム(東京化成株式会社製)14部を滴下し、ブロックポリイソシアネートBを得た。
ポリウレタンポリオールAに対し、ブロックポリイソシアネートBをNCO/OH基比が1.4になるように混合した。カーボンブラック(商品名:MA11、三菱化学社製)を樹脂固形分100部に対し30部混合し、総固形分比30質量%になるようにメチルエチルケトンに溶解、混合し、サンドミルにて均一に分散し、導電性塗料(DT1)を作製した。
また、ポリウレタンポリオールAに対し、ブロックポリイソシアネートBをNCO/OH基比が1.4になるように混合した。カーボンブラック(商品名MA11、三菱化学社製)を樹脂固形分100部に対し30部、及びアートパールC400透明(根上工業社製)を樹脂固形分100部に対し20部混合した。これを、総固形分比30質量%になるようにメチルエチルケトンに溶解、混合し、サンドミルにて均一に分散し、導電性塗料(DT2)を作製した。
【0160】
[導電性弾性層(DD1~DD3)の形成]
導電性樹脂層形成用の塗料DT1を、前記弾性層Dd1上に浸漬塗工した後乾燥させ、170℃にて1.5時間加熱処理することで導電性弾性層DD1を形成した。
同様に、導電性樹脂層形成用の塗料DT1を、弾性層Dd2上に浸漬塗工し、導電性弾性層DD2を形成した。
同様に、導電性樹脂層形成用の塗料DT2を、弾性層Dd1上に浸漬塗工し、導電性弾性層DD3を形成した。
【0161】
[表面層塗料ZT1の調製]
100mLのガラス製容器に、メチルトリエトキシシラン(東京化成工業株式会社製)17.63g、エタノール46.23g、及び、イオン交換水3.90gを秤取した。撹拌して均一溶液になったところに、ビス(2,4-ペンタンジオナト)ビス(2-プロパノ
ラト)チタニウム(IV)75%イソプロピルアルコール溶液(東京化成工業株式会社製
)2.53gを加え、得られた溶液を3時間還流し、表面層形成用塗料ZT1を調製した。
【0162】
[現像ローラDR1、DR2、DR4の製造]
先に用意した導電性弾性層DD1上に、表面層形成用塗料ZT1をリング塗布(総吐出量:0.100ml、リング部のスピード:85mm/s)し、90℃にて1時間加熱処
理することで導電性弾性層上に表面層を形成し、現像ローラDR1を製造した。
導電性弾性層DD2上に、同様に表面層形成用塗料ZT1をリング塗布、加熱処理することで現像ローラDR2を製造した。
導電性弾性層DD3は、表面層を形成せず、このままDR4として評価を行った。
【0163】
[現像ローラDR3]
市販のトナーカートリッジ318(シアン)(キヤノン製)に装着された現像ローラを、そのまま現像ローラDR3として用いた。
【0164】
【表7】
表中、3.0E+07との記載は、3.0×10
7であることを示す。
【0165】
<実施例1~17、比較例1~8>
上記トナー1~18及び現像ローラDR1~DR4を用いて、表9に示す組み合わせにて評価を行った。評価結果を表8に示す。
【0166】
以下に、評価方法及び評価基準について説明する。
画像形成装置としては市販のレーザープリンターであるLBP-7600C(キヤノン
製)の改造機を用いた。
改造箇所として、外部高圧電源と接続し、帯電ブレードと帯電ローラの間に任意の電位差を設けられるようにし、プロセススピードを120mm/secとした。
また、プロセスカートリッジは、市販のトナーカートリッジ318(シアン)(キヤノン製)を用いた。カートリッジ内部からは製品トナーおよび製品現像ローラを抜き取り、エアブローによって清掃した後、評価するトナーを50g充填し、評価する現像ローラを装着した。
なお、イエロー、マゼンタ、ブラックの各ステーションにはそれぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたイエロー、マゼンタ及びブラックカートリッジを挿入して評価を行った。
【0167】
<帯電保持性の評価>
上記プロセスカートリッジ、上記レーザープリンターの改造機、及び評価用紙(GF-C081(キヤノン製)A4:81.4g/m2)を高温高湿環境(30℃/80%RH、以下、H/H環境)に48時間静置した。
帯電ブレードと帯電ローラの間の電位差を-400Vに設定し、全白画像を10枚出力した後、全黒画像を1枚出力した。現像ローラから感光ドラムへの現像中に装置を停止し、本体からプロセスカートリッジを取り出して現像前の現像ローラ上のトナーの帯電量を帯電量分布測定装置イースパートアナライザーEST-1(ホソカワミクロン社製)を用いて測定した。
その後、同様に全黒画像を1枚出力し、感光ドラムから中間転写ベルトに画像が転写された時点で装置を停止し、中間転写ベルト上のトナーの帯電量を同様に測定した。現像ローラ上の帯電量と中間転写ベルト上の帯電量の差から、以下の基準に従って帯電保持性を評価した。本評価においては、帯電量の差が小さいほど画像形成プロセスにおける帯電の
減衰が小さく、帯電保持性に優れる。
・帯電保持性
A:帯電量の差が2(μC/g)以下
B:帯電量の差が2(μC/g)を超えて5(μC/g)以下
C:帯電量の差が5(μC/g)を超えて10(μC/g)以下
D:帯電量の差が10(μC/g)を超える
【0168】
<帯電立ち上がり性の評価>
上記プロセスカートリッジ、上記レーザープリンターの改造機、及び評価用紙(GF-C081(キヤノン製)A4:81.4g/m2)を低温低湿環境(15℃/10%RH、以下、L/L環境)に48時間静置した。
帯電ブレードと帯電ローラの間の電位差を-400Vに設定し、全白画像を1枚出力した。画像形成中に装置を停止し、本体からプロセスカートリッジを取り出して現像ローラ上のトナーの帯電量を帯電量分布測定装置イースパートアナライザーEST-1(ホソカワミクロン社製)を用いて測定した。
続いて、同様の条件で全白画像を1枚出力した。画像形成中に装置を停止し、本体からプロセスカートリッジを取り出して現像ローラ上のトナーの帯電量を帯電量分布測定装置イースパートアナライザーEST-1(ホソカワミクロン社製)を用いて測定した。1回目の帯電量と2回目の帯電量の差から、以下の基準に従って帯電立ち上がり性を評価した。本評価においては、帯電量の差が小さいほど、帯電立ち上がり性に優れる。
・帯電立ち上がり性
A:帯電量の差が2(μC/g)以下
B:帯電量の差が2(μC/g)を超えて5(μC/g)以下
C:帯電量の差が5(μC/g)を超えて10(μC/g)以下
D:帯電量の差が10(μC/g)を超える
【0169】
<帯電量分布の評価>
上記プロセスカートリッジ、上記レーザープリンターの改造機、及び評価用紙(GF-C081(キヤノン製)A4:81.4g/m2)を低温低湿環境(15℃/10%RH、以下、L/L環境)に48時間静置した。
帯電ブレードと帯電ローラの間の電位差を0Vに設定し、全白画像を1枚出力した。画像形成中に装置を停止し、本体からプロセスカートリッジを取り出して現像ローラ上のトナーの帯電量分布を帯電量分布測定装置イースパートアナライザーEST-1(ホソカワミクロン社製)を用いて測定した。この時の帯電量分布が摩擦帯電による帯電量分布に相当する。
続いて、帯電ブレードと帯電ローラの間の電位差を-400Vに設定し、全白画像を1枚出力した。画像形成中に装置を停止し、本体からプロセスカートリッジを取り出して現像ローラ上のトナーの帯電量分布を帯電量分布測定装置イースパートアナライザーEST-1(ホソカワミクロン社製)を用いて測定した。この時の帯電量分布が摩擦帯電と注入帯電の重ね合わせによる帯電量分布に相当する。
電位差-400Vの場合の帯電量分布と電位差0Vの場合の、帯電量分布の半値幅を比較し、その差が大きいほど、注入帯電による帯電量分布シャープ化の効果が得られていると考えられるため、電位差-400Vの場合の半値幅が、電位差0Vの場合の半値幅を基準として、何倍になるかを基準として帯電量分布を評価した。
・帯電量分布
A:0.60倍以下
B:0.60倍を超えて0.70倍以下
C:0.70倍を超えて0.90倍以下
D:0.90倍を超える
【0170】
<耐久性の評価>
上記プロセスカートリッジ、上記レーザープリンターの改造機、及び評価用紙(GF-C081(キヤノン製)A4:81.4g/m2)を常温常湿環境(23℃/50%RH、以下、N/N環境)に48時間静置した。
帯電ブレードと帯電ローラの間の電位差を-400Vに設定し、全白画像を1枚出力した。画像形成中に装置を停止し、本体からプロセスカートリッジを取り出して現像ローラ上のトナーの帯電量を帯電量分布測定装置イースパートアナライザーEST-1(ホソカワミクロン社製)を用いて測定した。
その後、印字率2%の画像を1000枚出力した。続いて、全白画像を1枚出力した。画像形成中に装置を停止し、本体からプロセスカートリッジを取り出して現像ローラ上のトナーの帯電量を帯電量分布測定装置イースパートアナライザーEST-1(ホソカワミクロン社製)を用いて測定した。初期と1000枚出力後の帯電量の差から、以下の基準に従って、耐久性を評価した。
・耐久性
A:帯電量の変化が5(μC/g)以下
B:帯電量の変化が5(μC/g)を超えて10(μC/g)以下
C:帯電量の変化が10(μC/g)を超えて20(μC/g)以下
D:帯電量の変化が20(μC/g)を超える
【0171】
【表8】
表中、5.8.E-03との記載は、5.8×10
-3であることを示す。
【符号の説明】
【0172】
10・・・プロセスカートリッジ、11・・・感光ドラム、12・・・帯電ローラ、20・・・現像装置、21・・・現像容器、23・・・現像ローラ、24・・・剥ぎ取りローラ、25・・・規制ブレード、26・・・トナー収容部、27・・・トナー漏れ防止シート、T・・・トナー