(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】センサおよびシステム
(51)【国際特許分類】
G01K 7/02 20210101AFI20241209BHJP
G01K 7/13 20060101ALI20241209BHJP
G01B 7/16 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G01K7/02 A
G01K7/13
G01B7/16 R
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020202243
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-10-05
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519372032
【氏名又は名称】アレイマ チューブ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シェーブロム, グスタフ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, グオリャン
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-1676(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0101022(US,A1)
【文献】実開昭59-40829(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
G01B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ(100、300)であって、
金属物体(101、301)と、
前記金属物体の表面の少なくとも一部上に形成される薄膜積層体(102、302)であり、
電気絶縁膜(103、303)と、
前記電気絶縁膜上の金属膜であり、前記金属膜に第1の電気導体(104、304)が画定され、前記金属膜が前記金属物体とは異なる金属合金から構成され、前記第1の電気導体が前記電気絶縁膜を用いて前記金属物体から電気絶縁され、前記第1の電気導体が、
第1の端部(106、306)において導線を介して第1の端子(W0)に接続される接続点(108、308)と、
第2の端部(107、307)において前記金属膜に画定されるセンサ構造(110、310)であり
、前記金属物体まで前記電気絶縁膜を貫通し、そのため熱電対が形成される、前記金属膜の接点(105、305)を備えるセンサ構造と、を備える、金属膜と、を備える薄膜積層体と、
導線を介して前記金属物体の接続点(109、309)に接続される金属物体端子(W1)であり、前記第1の電気導体の前記接続点(108、308)および前記金属物体の前記接続点(109、309)が、互いに隣接しかつ互いと等温関係にあるように構成される、金属物体端子と、
前記金属膜に画定される第2の電気導体(311)であり、前記第1の端部(306)において接続点(312)を備える第2の電気導体と、
を備え
、
センサ領域(310)が、第1の端部(314)と第2の端部(313)との間に、歪み感応部を更に備え、前記センサ領域(310)が、前記金属物体(301)の加えられた機械的歪みに応じて抵抗を変化させるように構成され、前記歪み感応部の前記第1の端部(314)が前記第1の電気導体(304)に接続され、前記歪み感応部の前記第2の端部(313)が前記第2の電気導体(311)に接続され、かつ
前記接点(305)が、前記歪み感応部の温度を感知するように構成されることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記接点(305)が前記歪み感応部に形成されることを特徴とする、請求項
1に記載のセンサ(100、300)。
【請求項3】
前記金属物体が金属管または金属ストリップであることを特徴とする、請求項1
又は2に記載のセンサ(100、300)。
【請求項4】
前記電気絶縁膜が金属酸化物または金属窒化物であることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載のセンサ(100、300)。
【請求項5】
金属物体の歪みおよび温度を感知するためのセンサシステム(500)であって、
請求項1から
4のいずれか一項に記載のセンサ(300)と、
前記第1の電気導体および前記金属物体の前記接続点(308、309)の等温度を検出するために構成される冷接点温度検出器(501)と、
前記第1の端子(W0)におよび前記金属物体端子(W1)に接続され、かつ前記接点の温度を測定するように構成される温度回路(502)であり、前記接続点(308、309)の冷接点温度を補償するために前記冷接点温度検出器に更に接続される温度回路と、
歪み感応部の抵抗の変化に基づいて歪みを求めるために前記第1の端子(W0)におよび第2の端子(W2)に接続される歪み回路(503)と、
前記温度回路(502)におよび前記歪み回路(503)に接続される計算回路(504)であり、前記金属物体上の機械的歪みおよび前記金属物体の温度誘起歪みによって生じる歪みを求めるように構成される計算回路と、を備えることを特徴とするセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサの分野に関し、より詳細には金属基板上の薄膜センサの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
温度測定の技術内に、2つの主要な種類の温度センサがある。第1の種類の温度センサは、表形式データまたは数学モデルを用いて材料の抵抗の変化が温度に関連付けられる抵抗型である。第2の種類の温度センサは熱電対であり、ゼーベック効果により2つの異種金属間の接点に生成される小電圧を感知することを伴う。この小電圧は次いで表形式データまたは数式と共に使用されて測定温度を導出する。第1の種類の典型的なセンサがPT-100センサであり、セラミック基板上に配置される白金線である。第2の種類の一例がK型の熱電対であり、温度センサとしてクロメル線とアルメル線との間の溶接接点を使用し、ここに非常に精密な電圧計が接続され、次いで測定電圧が使用されて、表形式データか数学モデルかを用いて感知温度を求める。
【0003】
両種類のセンサが、信号調節エレクトロニクスへの接続のために少なくとも2つの導線を使用する。これにより、特に幾つかのセンサが使用される場合、多数の導線が配線されて接続されるようになる。
【0004】
歪みゲージ測定では、歪みゲージへの温度効果を緩和するために、ブリッジ構成が使用されることが多い。実際には、この解決策は、被検体の歪みを感知するように構成される第1の歪みゲージを使用し、第2の歪みゲージが第1の歪みゲージと同じ温度を経験するが歪みはないように、第2の歪みゲージが配置される。このように、第1および第2の歪みゲージがブリッジの第1の枝路に配置されれば、ブリッジは温度補償されるようになる。第2の歪みゲージに歪みがないように第2の歪みゲージを被検体上に配置することが不可能であれば、第1の歪みゲージによって測定される歪みは、センサの熱膨張によって生じる歪みおよび温度変化による抵抗変化によって生じる歪みを減算することによって補償されなければならない。歪みゲージの温度を精密に知ることによって、これらの歪みの寄与が計算および減算され得る。このように、歪みゲージの温度を精密に測定することができることが非常に重要であるが、実際これが非常に困難であり得るのは、歪みゲージが非常に小さいことが多く、そして歪みゲージの感知線の近くに温度センサを配置することが非常に困難であるからである。したがって、歪みセンサに組み込むのが可能である温度センサに大きな関心がある。
【0005】
したがって、センサを接続するために使用される導線数を削減することが大きな関心である。
【0006】
少数の接続線で歪みセンサに組み込まれるのが可能である温度センサにも大きな関心がある。少なくとも上で開示された問題を排除または緩和する解決策を提供することが本開示の一態様である。
【0007】
改善されたセンサを提供することが本開示の更なる態様である。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、したがって、必要とする接続線がより少数のセンサを提供する。追加的に、本開示は、歪みセンサに組み込まれ得る接続線が少数のセンサも提供する。
【0009】
本開示は、したがって、センサであって、金属物体と、金属物体の表面の少なくとも一部上に形成される薄膜積層体であり、電気絶縁膜と、電気絶縁膜上の金属膜であり、金属膜に第1の電気導体が画定され、金属膜が金属物体とは異なる金属合金から構成され、第1の電気導体が電気絶縁膜を用いて金属物体から電気絶縁され、第1の電気導体が、第1の端部において導線を介して第1の端子に接続される接続点と、第2の端部において金属膜に画定されるセンサ構造であり、金属物体まで電気絶縁膜を貫通し、そのため熱電対が形成される、金属膜の接点を備えるセンサ構造と、を備える、金属膜と、を備える薄膜積層体と、導線を介して金属物体の接続点に接続される金属物体端子であり、第1の電気導体の接続点および金属物体の接続点が、互いに隣接しかつ互いと等温関係にあるように構成される、金属物体端子と、を備えることを特徴とするセンサに関する。
【0010】
上にまたは以下に定められるセンサは、金属膜に画定される第2の電気導体であり、第1の端部において接続点を備える第2の電気導体を更に備え得、センサ領域が、第1の端部と第2の端部との間に、歪み感応部を更に備え、センサ領域が、金属物体の加えられた機械的歪みに応じて抵抗を変化させるように構成され、歪み感応部の第1の端部が第1の電気導体に接続され、歪み感応部の第2の端部が第2の電気導体に接続され、かつ接点が、歪み感応部の温度を感知するように構成される。
【0011】
上にまたは以下に定められるセンサの接点は歪み感応部に形成されてもよい。
【0012】
本明細書に述べられる金属物体は金属管または金属ストリップでもよい。
【0013】
本明細書に述べられる金属膜は、例えば金属または金属合金から選択され得るが、ニッケルクロム合金に限定されない。
【0014】
句「金属膜が金属物体とは異なる金属合金から構成される」により、作用する熱電対センサを統合するために合金の組成が異ならなければならないので、金属物体または金属膜が構成される金属または金属合金が、中に含有される全ての合金元素の同一範囲を有してはならないことが意味される。
【0015】
本発明によれば、熱電対センサを形成するために1つの金属材料だけが必要とされる。これは、物体自体が金属であり、そのため熱電対を形成するために1つの追加の金属材料だけが必要とされるからである。
【0016】
本明細書に述べられる電気絶縁膜は金属酸化物または金属窒化物から選択されてもよい。これは、金属物体と同様の熱容量を持つ電気絶縁膜の選択を可能にすることになり、これにより金属物体の表面と電気絶縁膜との間の最小温度差を見込むことになる。
【0017】
本開示は、金属物体の歪みおよび温度を感知するためのセンサシステムであって、本明細書に開示される実施形態に係るセンサと、第1の電気導体および金属物体の接続点の等温度を検出するために構成される冷接点温度検出器と、第1の端子におよび金属物体端子に接続され、かつ接点の温度を測定するように構成される温度回路であり、接続点の冷接点温度を補償するために冷接点温度検出器に更に接続される温度回路と、歪み感応部の抵抗の変化に基づいて歪みを求めるために第1の端子におよび第2の端子に接続される歪み回路と、温度回路におよび歪み回路に接続される計算回路であり、金属物体上の機械的歪みおよび金属物体の温度誘起歪みによって生じる歪みを求めるように構成される計算回路と、を備えることを特徴とするセンサシステムにも関する。
【0018】
以下に、本開示に係る実施形態が図面を参照しつつ記載される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の1つの実施形態に係るセンサの3次元図である。
【
図2】
図1に開示される実施形態に係るセンサの横断面を開示する、
図1の線A-A’に沿った横断面図である。
【
図3】本開示の1つの実施形態に係るセンサの3次元図である。
【
図4】
図3に開示される実施形態に係るセンサの横断面を開示する、
図3の線A-A’に沿った横断面図である。
【
図5】本開示の1つの実施形態に係るシステムの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、金属物体101と、金属物体の表面の少なくとも一部上に形成される薄膜積層体102であり、電気絶縁膜103と、電気絶縁膜上の金属膜であり、金属膜に第1の電気導体104が画定され、金属膜が金属物体とは異なる金属合金から構成され、第1の電気導体104が電気絶縁膜103を用いて金属物体101から電気絶縁され、第1の電気導体104が、第1の端部106において導線を介して第1の端子W0に接続される接続点108と、第2の端部107において金属膜に画定されるセンサ構造110であり、金属物体まで電気絶縁膜を貫通し、そのため熱電対が形成される、金属膜の接点105を備えるセンサ構造と、を備える、金属膜と、を備える薄膜積層体と、導線を介して金属物体の接続点109に接続される金属物体端子W1であり、第1の電気導体の接続点108および金属物体の接続点109が、互いに隣接しかつ互いと等温関係にあるように構成される、金属物体端子と、を備える、全体的に100で示される、センサを図示する。接点が管の内部に近いので、接点105は、非常に正確な方式で管内部のプロセス温度を測定することができることになり、このように接点は、管壁の厚さによって左右される熱勾配によってのみ影響されることになり、電気絶縁層の熱伝導率によっては影響されない。
【0021】
第1の電気導体の接続点108および金属物体の接続点109は、それらの等温関係により同じ温度を有する。これは、接続点の温度が測定されれば、接点105の温度を計算するために測定温度から接続点の温度を減算することにより冷接点補償が行われ得ることを意味する。等温関係を達成するために、接続点をできるだけ互いの近くに配置することに加えて、ある程度の絶縁が必要となり得る。
【0022】
図2は、センサ構造110の
図1における線A-A’に沿った横断面図を開示する。
図2は、薄膜積層体102が形成される金属物体101を図示する。薄膜積層体は、好ましくは金属酸化物または金属窒化物である電気絶縁膜103を備える。電気絶縁膜103上には金属膜104が形成され、そして接点105で金属膜は電気絶縁膜を貫通して金属物体に接触する。金属膜はニッケルクロム合金であり得る。このように、金属物体と金属膜との間に熱電対が形成される。熱電対に対するコネクタは第1の電気導体および金属物体によって形成される。
【0023】
図1において、金属物体は、薄膜積層体102が例えば熱溶射、蒸着またはスパッタリングを用いて直接形成される金属管である。これは、薄膜積層体が接着剤を使用せずに金属物体に付着することになることを意味する。薄膜積層体の付着を促進するために、金属物体の表面は粗化されなければならないかもしれない。この粗化は、例えばサンドブラスタまたは研削を用いて行われてもよい。
【0024】
図3は、センサ300の実施形態を開示する。センサは、金属物体301と、金属物体の表面の少なくとも一部上に形成される薄膜積層体302であり、電気絶縁膜303と、電気絶縁膜上の金属膜であり、金属膜に第1の電気導体304が画定され、金属膜が金属物体とは異なる金属合金から構成され、第1の電気導体が電気絶縁膜を用いて金属物体から電気絶縁され、第1の電気導体が、第1の端部306において導線を介して第1の端子W0に接続される接続点308と、第2の端部307において金属膜に画定されるセンサ構造310であり、金属物体まで電気絶縁膜を貫通し、そのため熱電対が形成される、金属膜の接点305を備えるセンサ構造と、を備える、金属膜と、を備える薄膜積層体と、導線を介して金属物体の接続点309に接続される金属物体端子W1であり、第1の電気導体の接続点308および金属物体の接続点309が、互いに隣接しかつ互いと等温関係にあるように構成される、金属物体端子と、を備える。
【0025】
図3に開示されるセンサ300は、センサが、金属膜に画定される第2の電気導体311であり、第1の端部306において接続点312を備える第2の電気導体も備えるという点で、かつセンサ領域310が、第1の端部314と第2の端部313との間に、歪み感応部を更に備え、センサ領域310が、金属物体301の加えられた機械的歪みに応じて抵抗を変化させるように構成され、歪み感応部の第1の端部314が第1の電気導体304に接続され、歪み感応部の第2の端部313が第2の電気導体311に接続され、かつ接点305が、歪み感応部の温度を感知するように構成されるという点で、
図1を参照しつつ開示される実施形態と異なる。
【0026】
図4は、センサ構造310の
図3における線A-A’に沿った横断面図を開示する。
図4の横断面図はセンサ構造310を図示し、センサ構造は金属膜に画定される第1の歪み感応導体401を備える。第1の歪み感応導体401は第1の端部314に接続される。センサ構造310は、第2の端部313に接続される第2の歪み感応導体402を更に備える。センサ構造は、第1および第2の歪み感応導体401、402に接続される第3の歪み感応導体403を更に備える。第3の歪み感応導体403は、金属膜によっても画定され、かつ金属膜と金属物体との間の接点305において電気絶縁膜を貫通する。この接点305はレーザエッチングによって形成されてもよい。接点305は、このように歪み感応部に形成される。
【0027】
金属物体は金属管または金属ストリップである。
【0028】
金属膜はニッケルクロム合金から選択されてもよい。
【0029】
電気絶縁膜は金属酸化物または金属窒化物から選択されてもよい。
【0030】
図5は、金属物体の歪みおよび温度を感知するための、全体的に500で示される、センサシステムを開示する。センサシステムは、本明細書に上で開示された実施形態に係るセンサ300と、第1の電気導体および金属物体の接続点308、309の等温度を検出するために構成される冷接点温度検出器501とを備える。センサシステムは、第1の端子W0におよび金属物体端子W1に接続され、かつ接点の温度を測定するように構成される温度回路502を更に備える。温度回路は、接続点308、309の冷接点温度を補償するために冷接点温度検出器に更に接続される。センサシステムは、歪み感応部の抵抗の変化に基づいて歪みを求めるために第1の端子W0におよび第2の端子W2に接続される歪み回路503と、温度回路502におよび歪み回路503に接続される計算回路504とを更に備える。計算回路は、金属物体上の機械的歪みおよび金属物体の温度誘起歪みによって生じる歪みを求めるように構成される。