(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/00 20060101AFI20241209BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20241209BHJP
G03B 27/50 20060101ALI20241209BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241209BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
B41J29/00 A
H04N1/00 519
G03B27/50 A
B41J2/01 301
B41J2/01 303
B41J2/175 503
(21)【出願番号】P 2020218726
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森永 和幸
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-079678(JP,A)
【文献】特開2013-166328(JP,A)
【文献】特開2016-022726(JP,A)
【文献】特開2015-079040(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0151762(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00
H04N 1/00
G03B 27/50
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送パスを第1方向に搬送された記録媒体に画像を記録する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを搭載して前記記録ヘッドのメンテナンスをするホームポジションから前記第1方向と交差する第2方向に往復移動するキャリッジと、前記キャリッジに追従して移動する可撓部材と、前記記録
ヘッドが使用する記録材を収容するための
第1タンクとを有する記録装置部と、
前記記録装置部の上方に載置され、原稿画像を読み取り可能なセンサユニットと、前記センサユニットを原稿に対して
前記第2方向に移動させるための駆動手段とを有する読取装置部とを備える記録装置であって、
前記読取装置部は、前記第2方向において前記搬送パスに対して前記ホームポジションと反対側において、前記読取装置部の底面から前記記録装置部の側に突出し
て前記駆動手段を収容する収容領域を有し、
前記可撓部材は、前記収容領域の鉛直方向の下方で、前記第1方向において前記収容領域と少なくとも一部が重複し、
前記収容領域の一部は、
前記第2方向において前記第1タンクの一部と重複しかつ前記
第1タンクの一部の前記鉛直方向の上方にあることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記収容領域の前記鉛直方向の下方には前記可撓部材の貼り付きを規制するための規制部材が配されていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第2方向において前記キャリッジが前記
第1タンクの側にあるときに、前記収容領域は、前記第2方向において前記キャリッジと重複することを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記
第1タンクの下面は、前記記録
ヘッドの下面より前記鉛直方向の下方にあることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記
第1タンクの上位側面は前記収容領域と前記第1方向において対向し、前記
第1タンクの下位側面は、前記第1方向において前記収容領域と重複することを特徴とする請求項3または4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記収容領域を形成する収容部を備え、
前記収容部の前記鉛直方向の下方には、前記可撓部材が前記キャリッジに連結する連結部が配され、前記可撓部材は、前記連結部から前記収容領域に向けて前記第2方向に延在し前記鉛直方向にUターンする経路を有することを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記記録装置部は、前記収容部を収容する受容部を有することを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記可撓部材は、前記記録ヘッドに記録材を供給するためのチューブであることを特徴とする
請求項1ないし7の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記読取装置部は、前記駆動手段に連結する駆動プーリと、前記駆動プーリに対し前記センサユニットが移動する方向に離れて配置された従動プーリと、前記駆動プーリと前記従動プーリに掛け回され前記センサユニットが取り付けられたベルトとを更に有し、
前記収容領域は、前記従動プーリよりも前記駆動プーリに近い位置に配されていることを特徴とする
請求項1から8の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記第2方向において前記搬送パスに対して前記第1タンクと反対側に配され、前記記録ヘッドが使用する記録材を収容するための第2タンクを備えることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記読取装置部の上に、前記読取装置部に原稿を搬送するための搬送手段が更に載置されていることを特徴とする
請求項1から10のいずれか1項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取機能と画像記録機能とを有する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットベッド方式の読取部をシリアルプリント方式の記録部の鉛直方向上方に重ね、読取機能と記録機能の双方を備えた複合機(画像読取記録装置)が提供されている。このような画像読取記録装置においては、装置全体の高さを低減することが、従来課題となっている。
【0003】
特許文献1には、読取ヘッドを走査させるためのモータの占有体積が、読取部の中で特に大きいことに着眼し、このモータを、読取部の他の構成要素に対し、読取ヘッドの走査方向と鉛直方向の双方に交差する方向にずらして配置させた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、装置内を移動しながら記録動作を行う記録キャリッジは、上記モータや記録部の他の機構よりも低い位置に配されている。即ち、上記モータや他の機構のために必要な領域と、記録キャリッジが走査するための領域は高さ方向に分離され、装置全体の高さは然程低減されていない状態にあった。
【0006】
そのために本発明は、搬送パスを第1方向に搬送された記録媒体に画像を記録する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを搭載して前記記録ヘッドのメンテナンスをするホームポジションから前記第1方向と交差する第2方向に往復移動するキャリッジと、前記キャリッジに追従して移動する可撓部材と、前記記録ヘッドが使用する記録材を収容するための第1タンクとを有する記録装置部と、前記記録装置部の上方に載置され、原稿画像を読み取り可能なセンサユニットと、前記センサユニットを原稿に対して前記第2方向に移動させるための駆動手段とを有する読取装置部とを備える記録装置であって、前記読取装置部は、前記第2方向において前記搬送パスに対して前記ホームポジションと反対側で前記読取装置部の底面から前記記録装置部の側に突出して前記駆動手段を収容する収容領域を有し、前記可撓部材は、前記収容領域の鉛直方向の下方で、前記第1方向において前記収容領域と少なくとも一部が重複し、前記収容領域の一部は、前記第2方向において前記第1タンクの一部と重複しかつ前記第1タンクの一部の前記鉛直方向の上方にあることを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために本発明は、画像を記録可能な記録手段を搭載し第1方向に搬送された記録媒体に対して、前記第1方向と交差する第2方向に往復に移動するキャリッジと、前記キャリッジに追従して移動する可撓部材と、前記記録手段が使用する記録材を収容するためのタンクとを有する記録装置部と、前記記録装置部の上方に載置され、原稿画像を読み取り可能なセンサユニットと、前記センサユニットを原稿に対して移動させるための駆動手段とを有する読取装置部とを備える記録装置であって、前記駆動手段は、前記読取装置部の底面から前記記録装置部の側に突出した収容領域を専有し、前記可撓部材は、前記収容領域の鉛直方向の下方で、前記第1方向において前記収容領域と少なくとも一部が重複し、前記収容領域の一部は、前記タンクの一部の前記鉛直方向の上方にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、読取機能と記録機能の双方を備えた画像読取記録装置において、装置の高さを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態で使用する画像読取記録装置の外観斜視図
【
図2】記録装置部の上面を開放した状態を示す斜視図及び断面図
【
図5】スキャナ部に対しADFを開放した状態を示す図
【
図6】センサユニットの走査機構を説明するための上面図
【
図8】画像読取記録装置における、各種機構の位置関係を説明するための図
【
図9】記録読取装置における制御の構成を説明するためのブロック図
【
図10】第2実施形態で使用する画像読取記録装置の外観斜視図
【
図11】第2実施形態におけるセンサユニットの走査機構を説明するための上面図
【
図12】第2実施形態で使用する画像読取記録装置の側断面図
【
図13】第2実施形態で使用する画像読取記録装置の正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態で使用する画像読取記録装置1の外観斜視図である。図中、X方向は画像読取記録装置1の幅方向、Y方向は画像読取記録装置1の奥行方向、Z方向は鉛直方向の上方向を示す。本実施形態の画像読取記録装置1は、XY平面において略同等の領域を有する記録装置部2と読取装置部3とがZ方向に重ねられて構成される。
【0011】
記録装置部2の正面には、記録装置部2で記録するための用紙等を収容可能な給紙カセット6が上下に配されている。ユーザは、給紙カセット6を手前(+Y方向)に引き出すことにより、用紙を補給することができる。2つの給紙カセット6には、同じサイズの用紙をセットしてよいし、異なるサイズの用紙をセットしてもよい。一方、記録装置部2の背面には、厚手の用紙や他の記録媒体を手差しで給送するためのASF(オートシートフィーダ)7が設けられている。給紙カセット6から給送された場合でも、ASF7から給送された場合でも、画像が記録された後の記録媒体は排出口9より排出される。
【0012】
読取装置部3は、実際に読み取り処理を行うスキャナ部30と、スキャナ部30に原稿を搬送可能なADF(オートドキュメントフィーダ)31とを有する。ADF31には、ユーザが原稿を載置するための原稿トレイ311が折り畳み可能に設けられ、
図1は原稿トレイ311が折り畳まれた状態を示している。原稿トレイ311には複数枚の原稿を載置することができる。読取装置部3の正面には、ユーザが画像読取記録装置1の状態を確認したり、画像読取記録装置1への指示を入力したりするための操作部109が設けられている。
【0013】
本実施形態の画像読取記録装置1において、読取装置部3は記録装置部2に対し開閉可能な構成になっている。
【0014】
図2(a)及び(b)は、記録装置部2の上面を開放した状態を示す斜視図及び断面図である。記録装置部2と読取装置部3とは、ヒンジ5を介して接続され、読取装置部3は、記録装置部2に対しヒンジ5を中心に回動可能である。ユーザが読取装置部3を持ち上げて回動させることにより、記録装置部2の開口21と蓋23が露出される。ユーザは、このように記録装置部2の上面が開放された状態で、記録装置部2に対するインクの補充やメンテナンス処理を行うことができる。
【0015】
図2(a)に示すように、給紙カセット6の左右両側には、記録装置部2で使用するインク(記録材)を収容可能なインクタンク22が配されている。本実施形態において、左側のインクタンク22Aにはブラックインクが収容され、右側のインクタンク22Bにはシアン、マゼンタ及びイエローのカラーインクが個別に収容される。ユーザは、対応する蓋23A又は23Bを開放することにより、それぞれのインクタンク22にインクを補充することができる。
図2(b)に示すように、記録装置部2の内部には、記録ヘッド81(
図4参照)を搭載し、±X方向に移動可能なキャリッジ82が配されている。
【0016】
図3(a)及び(b)は、画像読取記録装置1の側断面図である。ここでは、記録装置部2に対し読取装置部3を閉じている状態を示している。
図3(a)は、+X方向側から見た断面図であり、記録装置部2における用紙の搬送経路を詳しく示している。図中、記録ヘッド81及びキャリッジ82は省略し、記録ヘッド81及びキャリッジ82が移動して、用紙に画像が記録される領域全体を記録部8として示している。記録部8には、記録ヘッド81、キャリッジ82及び記録ヘッド81にインクを供給するためのインクチューブ24等が移動する領域全体が含まれる。
【0017】
記録動作を行うとき、給送カセット6に収容される用紙P1は、第1搬送パス61を通過して、記録部8に給送される。また、ASF7に搭載された用紙P2は、第2搬送パス71を通過して、記録部8に給送される。これら第1搬送パス61及び第2搬送パス71の上方には、装置全体を制御するための制御基板11が配されている。制御基板11は、X方向に延在するシャーシ26に固定されており、不図示のケーブルを介して画像読取記録装置1に設置された各種電気部品と接続される。
【0018】
図3(b)は、キャリッジ82が左端部(-X方向側)にある状態の、-X方向側から見た側断面図を示す。キャリッジ82は、シャーシ26に対し、制御基板11とは反対の側に配され、X方向に延在するシャーシ26に案内支持されながら、キャリッジモータ208を駆動源として±X方向に往復移動可能となっている。キャリッジ82は、不図示のフレキシブルケーブルを介して制御基板11と接続されており、制御基板11から受信した記録データを記録ヘッド81に送信する。キャリッジ82が両端部(±X方向端部)にある状態において、キャリッジ82の前方(+Y方向側)の一部には、インクタンク22A又は22Bが配されている。なお、インクタンク22Aまたは22Bの下面は、記録部8の下面より鉛直方向下にある。この結果、インクの収容量を大きくすることができる。
【0019】
キャリッジ82が移動する最中、キャリッジ82に搭載された記録ヘッド81は、制御基板11から受信した記録データに従ってインクを吐出する。これにより、記録部8にある用紙に1バンド分の画像が記録される。そして、このような記録走査が行われるたびに搬送モータ212(
図9参照)が駆動され、1バンド分に対応する距離だけ用紙が+Y方向に搬送される。このような記録走査と搬送動作を交互に繰り返すことにより、用紙上には段階的に画像が記録されていく。
【0020】
記録装置部2とスキャナ部30は共にほぼ箱型の形状を有し、記録装置部2の上面とスキャナ部30の底面は当接して積み重ねられている。記録装置部2の上面とスキャナ部30の底面はほぼ平面であるが、キャリッジ82とブラック用のインクタンク22Aが対向する領域には、下方に突出する収容部32と受容部25が形成されている。即ち、スキャナ部30の底面には、スキャンモータ91を収容するための収容部32が、下方に突出するように形成され、記録装置部2の上面には、収容部32を受容するための受容部25が下方に凹むように形成されている。収容部32及び受容部25の配置については、後に詳しく説明する。
【0021】
図4(a)及び(b)は、画像読取記録装置1の正面断面図である。
図4(a)は、キャリッジ82が走査可能領域Wの右端にある状態、同図(b)はキャリッジ82が走査可能領域Wの左端にある状態を示している。図中、右端部にはホームポジションであり、記録動作が行われないときにキャリッジ82が待機したりメンテナンスを行ったりする位置である。ホームポジションには、記録ヘッド81をメンテナンスするための各種部材が設けられている。一方、キャリッジ82が左端にあるとき、キャリッジ82の一部と収容部32がX方向およびZ方向において重複している。しかし、Y方向において、収容部32はキャリッジ82の上部とタンク22Aの上部とそれぞれ重複していない。
【0022】
記録装置部2の上位には、スキャナ部30が設けられ、スキャナ部30の更に上位にはADF31が設けられている。ここでは、原稿トレイ311が広げられた状態すなわちADF31に対して原稿をセット可能な状態を示している。ADF31において、分離部312は、原稿トレイ311に載置された複数の原稿から1枚を分離するための機構である。原稿搬送経路313は、分離部312によって分離された原稿を、スキャナ部30の読み取り可能な位置まで誘導する経路である。
【0023】
図5は、スキャナ部30に対しADF31を開放した状態を示す図である。本実施系形態の読取装置部3は、フラットベッド方式で原稿を読み取ることも可能であり、この場合、ユーザは、ADF31を持ち上げて、スキャナ部30とADF31との間に原稿を載置する。ADF31は、ヒンジ33を介してスキャナ部30に対して回動可能となっている。
【0024】
スキャナ部30の上面には、原稿台ガラス341とADFガラス342とが配され、これらは原稿台保持部材34によって保持されている。ADF31の下面には、原稿カバー37が配されている。原稿カバー37には、原稿台ガラス341上に載置された原稿を原稿台ガラス341に押し付けるための、シート材とスポンジからなる原稿圧着シート371が取り付けられている。なお、原稿圧着シート371の脇であって、ADFガラス342と対向する位置には、原稿搬送経路313の一部が露出している。ユーザが、原稿台ガラス341に原稿を設置してADF31を閉じ、更に操作部109から原稿読取動作を指示することにより、原稿読取処理が開始される。
【0025】
再度
図4(a)及び(b)を参照する。スキャナ部30において、原稿台ガラス341と及びADFガラス342の下方には、原稿台ガラス341やADFガラス346を介して原稿を読み取るためのセンサユニット36と、センサユニット36の移動空間361が配されている。また、移動空間361の更に下方の左側には、センサユニット36を移動空間361内で±X方向に移動させるためのスキャンモータ91と、スキャンモータ91を収容する収容部32が配されている。
【0026】
以上の構成の下、フラッドベッド方式で読取処理を行う場合、センサユニット36は、X方向に所定の速度で移動しながら、原稿台ガラス341上に載置された原稿の画像を、原稿台ガラス341を介して読み取る。一方、ADF方式で読取処理を行う場合、センサユニット36はADFガラス342の直下に移動及び停止し、ADF31によって所定の速度で搬送される原稿の画像を、ADFガラス342を介して読み取る。
【0027】
図6は、センサユニット36の走査機構を説明するための上面図である。センサユニット36には、原稿画像を読み取るための複数のイメージセンサ100がY方向に配列されている。センサユニット36のY方向の両端部は、スキャナ部30のケース301の内壁に当接し支持されている。また、ケース301内には、X方向に延在しセンサユニット36の中央部分を案内支持するためのガイドレール39が設けられている。
【0028】
ケース301内の±X方向両端には、スキャンモータ91を駆動源とする駆動プーリ90と従動プーリ38とが配されている。プーリ90、38の周囲には、ベルト35が掛け回され、ベルト35の一部には、センサユニット36が取り付けられている。以上の構成の下、スキャンモータ91を正方向又は逆方向に回転させることにより、センサユニット36を+X方向又は-X方向に移動させることができる。この際、センサユニット36のY方向の中央部はガイドレール39に沿って案内され、両端はケース301の内壁に沿って案内される。
【0029】
スキャンモータ91は、モータホルダ92に横置きの姿勢で固定されている。詳しくは、スキャンモータ91のシャフトが、原稿台ガラス341やADFガラス342と平行に延びるように、スキャンモータ91はモータホルダ92に固定されている。スキャンモータ91側のシャフトには、ウォームギアや傘歯車形態のモータギア911が取り付けられ、モータギア911は駆動プーリ90と一体的に形成された駆動プーリギア901に噛合される。即ち、スキャンモータ91の駆動力は、モータギア911及び駆動プーリギア901を介して駆動プーリ90に伝達される。スキャンモータ91のボディを挟んだもう一方の側のシャフトにはコードホイール912が取り付けられ、コードホイール912に対向する位置にエンコーダ93が配されている。エンコーダ93がコードホイール912のスリットを検知した信号は、不図示のケーブルを介して制御基板11に送信される。以上、スキャンモータ91、モータホルダ92、モータギア911、コードホイール912及びエンコーダ93は、収容部32の収容領域に収容されている。
【0030】
従動プーリ38は、プーリホルダ382に保持されている。X方向に移動可能に設置されたプーリホルダ382は、バネ381によって+X方向に付勢される。これにより、駆動プーリ90と従動プーリ38に掛け回されたベルトには適切な張力が作用し、弛みなく張架される。以上の構成の下、制御基板11に配された制御部200(
図9参照)が、エンコーダ93から受信した検出信号に基づいて、スキャンモータ91を駆動することにより、X方向におけるセンサユニット36の移動を制御することが可能となる。
【0031】
図中領域Aは、フラットベッド方式で原稿を読み取る際にセンサユニット36が移動する領域を示す。また位置Pは、ADF方式で原稿を読み取る際にセンサユニット36が停止する位置を示す。
【0032】
図7は、センサユニット36に配されたイメージセンサ100の構成を示す図である。イメージセンサ100は、発光部となるLED101と、ロッドレンズアレイ102と、撮像素子となるイメージセンサ103とを備える。LED101は、レッド、グリーン及びブルーの3色の光を所定の周期で切り替えて点灯する。ロッドレンズアレイ102は、LED101で発光され原稿台ガラス341又はADFガラス342に載置された原稿表面で反射された光を透過させ、イメージセンサ103で結像させる。イメージセンサ103は、CCDセンサ、CMOSセンサなどが採用可能であり、ロッドレンズアレイ102を透過した光の強度を検知する。イメージセンサ103が、LED101より発光され原稿で反射されたレッド、グリーン及びブルーの光を順次検知することにより、原稿の画像をカラーで読み取ることができる。イメージセンサ100の検出値は、不図示のフラットケーブルを介して制御基板11(
図3参照)に転送される。
【0033】
図8(a)及び(b)は、画像読取記録装置1における、センサユニット36と、スキャンモータ91と、キャリッジ82と、キャリッジ82に追従して移動するインクチューブ24と、インクタンク22との位置関係を説明するための図である。
図8(a)は、キャリッジ82がホームポジション側(+X側)にある状態、同図(b)は、キャリッジ82がスキャンモータ側(-X側)にある状態を示す。ここでは、説明の都合上、スキャナ部30と記録装置部2の間に介在するケースを省略して示している。
【0034】
インクタンク22に収容されるインクは、インクチューブ24を介して、キャリッジ82に搭載された記録ヘッド81に供給される。インクチューブ24Aは、ブラックインクを収容するインクタンク22Aとキャリッジ82に取り付けられた連結部821とを、中央のバルブユニット27を経由して接続する。また、3本のインクチューブ24Bは、3色のカラーインクをそれぞれ収容するインクタンク22Bと連結部821とを、バルブユニット27を経由して接続する。バルブユニット27から連結部821までの区間において、4本のインクチューブ24は結束され、Y方向におけるキャリッジ82とインクタンク22との間を、キャリッジ82の往復移動に伴って±X方向に移動する。
【0035】
キャリッジ82が
図8(b)のようにホームポジションとは反対の-X方向側にあるとき、キャリッジ82は、スキャンモータ91と近い位置にある。このため、本実施形態では、スキャンモータ91を収容する収容部32を、記録装置部2の上位に位置するキャリッジ82やインクタンク22Aに干渉しないように、レイアウトしている。また、インクチューブ24は、可撓性であるため収容部32の下面を下げることを可能にしている。
【0036】
図9は、本実施形態の画像読取記録装置1における制御の構成を説明するためのブロック図である。制御部200は、制御基板11に配され、プログラムやパラメータを保持するROMや、ワークメモリとして使用可能なRAMを有し、装置全体を制御する。
【0037】
スキャンモータドライバ94は、スキャンモータ91を駆動してセンサユニット36を移動させる。エンコーダ93は、コードホイール912を検知した信号を、制御部200に送信する。ADFモータドライバ204は、ADFモータ203を駆動してADF31に搭載された原稿を搬送する。
【0038】
アナログ処理部201は、イメージセンサ103が検知したアナログ信号に対し増幅及びサンプリング処理を行いデジタル信号に変換する。読取画像処理部202は、アナログ処理部201が生成したデジタル画像信号に対しエッジ強調や色変換などの画像処理を行う。イメージセンサ103、アナログ処理部201及び読取画像処理部202によって、原稿を読取るスキャナ機能が実現する。
【0039】
記録画像処理部206は、PC等から受信した画像データに対し変倍や量子化などの画像処理を行い、記録ヘッド81で記録可能な記録データを生成する。記録ヘッド制御部207は、記録画像処理部206で生成された記録データに従って、記録ヘッド81を駆動する。
【0040】
キャリッジモータドライバ209は、キャリッジモータ208を駆動してキャリッジ82を移動させる。搬送モータドライバ211は、搬送モータ210を駆動して給紙カセット6またはASF7に搭載された用紙を搬送する。
【0041】
メモリ205は、読取画像処理部202によって生成された画像データや、記録画像処理部206によって画像処理する前の画像データを一時的に保存する。操作部109は、ユーザが画像読取記録装置1の状態を確認したり、画像読取記録装置1への指示を入力したりするためのユーザインタフェースとして機能する。PCインタフェース(I/F)113は、外部に接続されたPCなどのホスト装置との間で情報の授受を行う。具体的には、記録装置部2で記録するべき画像データをホスト装置から受信したり、画像読取部3で読み取った画像データをホスト装置に送信したりする際に、制御部200によって使用される。
【0042】
以下、再度上記図面を参照しながら、本実施形態の画像読取記録装置1における、収容部32と、収容部32の周辺に位置する記録装置部2内部の部材やレイアウトについて詳しく説明する。
【0043】
本実施形態のスキャナ部30においては、センサユニット36、センサユニット36を走査させるための各種機構、及びセンサユニット36に接続する不図示のフラットケーブルに加え、スキャンモータ91を収容する空間が必要となる。この場合、スキャンモータ91以外の部材を収容するために必要となるZ方向の厚みは、スキャンモータ91を加えた場合に必要となる厚みに比べて十分小さい。即ち、スキャンモータ91を加えた場合に必要となる厚みに基づいてスキャナ部30全体の厚みを規定すると、画像読取記録装置1全体が必要以上に大きくなってしまう。以上の状況に鑑み、本発明者らは、スキャナ部30の全体的な厚みはスキャンモータ91以外の部材のために必要となる寸法で規定し、その上で、スキャンモータ91が専有する部分を記録装置部2の空き空間に進入するように配置することが有効と判断した。このため、本実施形態の画像読取記録装置1では、略直方体から成る読取装置部3と記録装置部2の境界平面のうち、読取装置部3の収容部32のみが、記録装置部2の領域に張り出した状態となっている。
【0044】
ここで、まず、本実施形態で使用可能なスキャンモータ91について説明する。本実施形態では、スキャンモータ91として、比較的流通量が多く、要求速度を実現できるφ20mmの小判型のタイプのものを使用する。この場合、スキャンモータ91にエンコーダ93を取り付けると、収容部高さ方向には30mm~40mm程度の空間が必要となる。
【0045】
このため、
図2(b)に示すように、収容部32は、読取装置部3の底面から30mm~40mm程度突出する凸部形状を有する。また、記録装置部2の上面には、上記収容部32を受容可能な受容部25が、上面からZm=30mm~40mm程度凹むように形成されている。一方、読取装置部3を閉じた状態では、
図3(b)に示すように、収容部32と受容部25は係合し、読取装置部3の底面と記録装置部2の上面とは互いに接触して略水平な姿勢を保っている。
【0046】
この際、受容部25の前面252(+Y方向側の面)は、インクタンク22とY方向に対向している。インクタンク22は、上位側面221と、下位側面222と、これらを連続する傾斜側面223とを有する。上位側面221と下位側面222はZ方向にほぼ平行に延在し、下位側面222は上位側面221や受容部25の前面252よりも奥行方向(-Y方向)に位置している。図では、インクタンク22と受容部25とのY方向の重複領域をYfで示している。即ち、インクタンク22は、受容部25が存在する上位領域では受容部25と干渉しない小さな奥行サイズを有し、受容部25が存在しない下位領域では受容部25との間で重複領域Yfが形成されるような大きな奥行サイズを有している。このようにすることにより、インクタンク22と受容部25との干渉を回避しつつ、限られたスペースの中で、インクタンク22のインク収容量を増大化することができる。
【0047】
一方、受容部25の後面253(-Y方向側の面)は、鉛直方向の同じ高さにおいてキャリッジ82の前方側と対向している。キャリッジ82は、後方側(-Y方向側)が高く、連結部821やインクチューブ24が配された前方側は低くなるような形状を有している。その上で、本実施形態の受容部25は、前方側の空き空間に突出するように設けられている。図では、キャリッジ82と受容部25のY方向の重複領域をYrで示している。この場合、例えばスループットの向上を目的として、キャリッジ82やキャリッジモータ208を大型化しても、キャリッジ82の前方に連結部821やインクチューブ24が配された低い領域が形成されれば、その領域に受容部25を配置することができる。
【0048】
図4(a)及び(b)に示すように、収容部32及び受容部25の下方(-Z方向)は、キャリッジ82と、記録ヘッド81にインクを供給するためのインクチューブ24が移動する空間となっている。本実施形態のインクチューブ24は、シリコンや熱可塑性プラスチック(TPE)のような柔軟で可撓性を有する素材で形成されおり、図中左側に弧を描くようにUターンしながらX方向に延在し、キャリッジ82に伴って上記空間をX方向に往復移動する。このため、キャリッジ82がホームポジション側(+X側)にある時、収容部32の下方には
図4(a)に示すように空間が形成される。一方、キャリッジ82が収容部32に近づいた時、収容部32の下方にはインクチューブ24の弧が配され、受容部25の底面は、インクチューブ24の上方への膨らみを規制する状態となる。
【0049】
本実施形態において、受容部25の裏面には、インクチューブ24の貼り付きを規制するための規制部材251が配されている。規制部材251の構成は特に限定されないが、例えば小さな半球状の突起が複数配された部材としてもよい。このようにすれば、インクチューブ24は複数の点で規制部材251と接し、面による接触に比べ接触時の負荷抵抗を軽減することができる。即ち、規制部材251を設けることにより、可撓性のチューブの移動領域をコンパクトに抑えつつ、キャリッジ82を滑らかに走査させることが可能となる。なお、本実施形態において、インクチューブ24の内径は4.0mm~5.0mm、左側に形成する弧の径は50.0mm程度とする。
【0050】
以上説明したように、本実施形態においては、読取装置部3の構成要素であるスキャンモータ91を、記録装置部2の構成要素であるインクタンク22とキャリッジ82との間に形成された隙間空間に配置する。更に、受容部25の底面には、インクチューブ24の貼り付きを抑える規制部材251を配し、規制部材251の直下にインクチューブ24の移動領域を形成する。これにより、部品コストの増大などを招くことなく、記録装置部2の構成要素と読取装置部3の構成要素とを隙間なく配置することができ、キャリッジ走査を滑らかに行いながら、従来よりも装置全体の小型化を推進することが可能となる。
【0051】
(第2の実施形態)
本実施形態の画像読取記録装置1も、基本的には第1の実施形態と同様の構成を有する。但し、本実施形態では、スキャンモータ95がセンサユニット36と共に±X方向に自走するものとする。以下、第1の実施形態と異なる構成について説明する。なお、第1の実施形態と同じ符号で示す部材は、第1の実施形態と同じ機能を有するものとする。
【0052】
図10は、本実施形態で使用する画像読取記録装置1の外観斜視図である。ここでは、記録装置部2に対し読取装置部3を開放した状態を示す。スキャンモータ95(
図11参照)がセンサユニット36と共に自走するため、スキャンモータ95を収容するための領域すなわち読取装置部3の底面から下方に突出する領域は、X方向に延在した構成となっている。本実施形態では、このような収容領域を自走領域収容部40と称す。
【0053】
一方、記録装置部2の上面には、自走領域収容部40を収容するための、上面から凹んだ自走領域受容部28が形成されている。記録装置部2の上面には、ユーザがメンテナンスを行うための開口21が設けられているため、自走領域受容部28は開口21を挟んで左右に1つずつ配された状態となる。
【0054】
図11は、本実施形態におけるセンサユニット36の走査機構を説明するための上面図である。本実施形態のスキャンモータ95には、ギアを有する駆動部96が取り付けられている。一方、ケース301内には、センサユニット36を案内支持するためのガイドレール39に加え、駆動部96のギアに係合するラック324がX方向に延在している。このため、スキャンモータ95が正方向または逆方向に回転すると、センサユニット36及びスキャンモータ95は、+X方向又は-X方向に移動する。
【0055】
図12は、本実施形態で使用する画像読取記録装置1の側断面図である。読取装置部3が閉じられた状態において、自走領域受容部28の底面は、インクチューブ24の上方への膨らみを規制する状態となる。本実施形態においても、自走領域受容部28の裏面には、インクチューブ24の貼り付きを規制するための規制部材281が配されている。
【0056】
図13(a)及び(b)は、画像読取記録装置1の正面断面図である。
図13(a)は、キャリッジ82が走査可能領域の右端にある状態、同図(b)はキャリッジ82が左端にある状態を示している。読取装置部3が閉じられた状態にあるとき、記録装置部2の開口21の上位には、自走領域収容部40の下面が位置し、キャリッジ82と共に移動するインクチューブ24は、この自走領域収容部40の下面に当接する状態となる。このため、本実施形態においては、自走領域収容部40の下面にも、自走領域受容部28の裏面と同様の規制部材282を配している。即ち、本実施形態によれば、インクチューブ24が移動する全領域に沿って規制部材281、282が配されている。その結果、インクチューブ24の移動領域をコンパクトに抑えながらも、キャリッジ82を滑らかに走査させることが可能となる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態において、読取装置部3の構成要素である自走式のスキャンモータ95とその自走領域を、記録装置部2の構成要素であるインクタンク22とキャリッジ82との間に形成された、隙間空間に収容する。更に、インクチューブ24の移動領域となる面には、インクチューブ24の貼り付きを規制する規制部材281、282を配し、これら規制部材281、282の直下にインクチューブ24の移動領域を形成する。これにより、部品コストの増大などを招くことなく、記録装置部2の構成要素と読取装置部3の構成要素とを隙間なく配置することができ、従来よりも装置全体の小型化を推進することが可能となる。
【0058】
(その他の実施形態)
以上では、ADF31とスキャナ部30とを有する読取装置(読取装置部3)を例に説明したが、読取装置において、ADF31を備えることは必須の要件ではない。読取装置としては、センサユニット36がスキャンモータ91、95によって移動するフラッドベッドスキャナの機能を有していればよい。
【0059】
また、以上では、インクチューブ24を、キャリッジ82の移動に追従する柔軟体として説明したが、上記柔軟体は、キャリッジに連結され、キャリッジと共に装置内を移動する可撓性を有する部材であれば、インクチューブ24に限定されるものではない。例えば、上記柔軟体は、キャリッジ82と制御基板11とを電気的に接続するフレキシブルケーブル、又はインクチューブ24とフレキシブルケーブルの両方であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、記録ヘッド81としてインクジェット記録ヘッドを用いたが、記録ヘッドは他の方式で画像を記録するものであってもよい。また、記録材はインクでなくてもよく、インクタンクには適切な記録材が収容されていればよい。
【0061】
いずれにしても、記録ヘッドを搭載して装置内を移動するキャリッジと、キャリッジに追従して装置内を移動する可撓部材とを備える記録装置部の上に、フラットベッド方式の読取装置部が設けられた構成であれば、上記実施形態は有効に機能する。
【符号の説明】
【0062】
1 画像読取記録装置
2 記録装置部
3 読取装置部
22 インクタンク
24 インクチューブ(可撓部材)
32 収容部
36 センサユニット
81 記録ヘッド
82 キャリッジ
91、95 スキャンモータ(駆動手段)