(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】カート
(51)【国際特許分類】
B62B 3/02 20060101AFI20241209BHJP
F16B 5/07 20060101ALI20241209BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20241209BHJP
A47B 31/04 20060101ALI20241209BHJP
A47B 91/06 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
B62B3/02 B
F16B5/07 A
F16B5/06 C
A47B31/04 B
A47B91/06
(21)【出願番号】P 2021004215
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】山本 広和
(72)【発明者】
【氏名】小林 達之介
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-101006(JP,A)
【文献】特開平06-344918(JP,A)
【文献】実開平06-051049(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/02
F16B 5/07
F16B 5/06
A47B 31/04
A47B 91/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスタと複数段の分割載置部を備える左右一対のカートユニット同士は、連結部材により前後方向に相対移動可能かつ左右に所定寸法離間可能に連結され、左右一対の前記分割載置部により複数段の物品載置部が構成されている
カートにおいて、
前記分割載置部は、前後方向の中央部に幅狭部を備え、該幅狭部には他方の分割載置部との対向方向に突出する突出片が形成され、前記カートユニット同士を折り畳む際に前記突出片が前記幅狭部に比べて対向方向に大きく突出する前後端部に当接することを特徴とするカート。
【請求項2】
前記左右のカートユニットは前記物品載置部を支持する前後一対の支柱を備え、前記左右のカートユニットにおける前記前後の支柱に前記連結部材の端部が回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のカート。
【請求項3】
前記連結部材は前記支柱の少なくとも上部と下部に連結されていることを特徴とする請求項2に記載のカート。
【請求項4】
前記支柱を管状支柱とし、上下に対向する前記分割載置部間に位置する前記管状支柱に、前記連結部材の端部が固着された管材を回動可能に嵌合したことを特徴とする請求項2または3に記載のカート。
【請求項5】
前記カートユニットの相対移動を阻止し、カートを使用状態に保持するロック手段を備えることを特徴とする請求項1ないし
4のいずれかに記載のカート。
【請求項6】
前記ロック手段は、前記カートユニットにそれぞれ一方端が軸支され、自由端にそれぞれ係合部が形成された杆材により構成され、これら杆材同士は前記カートユニットに対して斜めに交差して直線をなした状態で互いの係合部が係合することを特徴とする請求項
5に記載のカート。
【請求項7】
前記ロック手段は前記分割載置部に上下に回動可能に取付けられた線状部材よりなり、該線状部材には、下向き回動時に前記連結部材に上方から嵌合可能な凹部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のカート。
【請求項8】
前記線状部材は前記カートユニットを使用状態に相対移動させるとき前記連結部材に接触して跳ね上げられる傾斜部を有し、前記カートユニットを使用状態としたとき前記跳ね上げられた線状部材が下向き回動して前記凹部が前記連結部材に上方から嵌合することを特徴とする請求項
7に記載のカート。
【請求項9】
前記物品載置部を構成する左右一対の前記分割載置部には、載置されるトレー部材の左右方向及び前後方向の少なくともいずれか一方への移動を規制する規制部が形成されていることを特徴とする請求
項1ないし
8のいずれかに記載のカート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み及びネスティング可能なカートに関する。
【0002】
スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗においては、バックヤードに保管された商品を店内に運搬して品出しする際、例えば特許文献1に記載されているようなカートが用いられる。特許文献1のカートは折り畳みもネスティングもできないため、複数のカートを保管する保管場所のスペースが大となる。このため、都市型の小型店舗など、バックヤードを大きく確保できない場合、商品の在庫量を増やせないなど、保管場所を有効に利用することができない。
【0003】
このような問題を解決するものとして、例えば特許文献2には、平面視ほぼZ字状に形成された下部フレームと上部フレームの四隅部に取り付けられた4本の支柱に、複数段の支持棚を対向状に取り付けたネスティング可能なカートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平3-33581号公報(第2頁、第1図)
【文献】実願平3-33436号(実開平6-51049号)のCD-ROM(第6頁、第12図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されているカートにおいては、複数のカートをネスティングして保管することができるので、特許文献1のカートに比して保管場所のスペースを小さくできる。しかしながら、カート単体の左右幅はもとより、ネスティング時の左右寸法も大となり、バックヤードを大きく確保できない都市型の小型店舗などにおいて保管場所を有効に利用できないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、保管場所のスペースを最小限としうるようにしたカートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のカートは、
キャスタと複数段の分割載置部を備える左右一対のカートユニット同士は、連結部材により前後方向に相対移動可能かつ左右に所定寸法離間可能に連結され、左右一対の前記分割載置部により複数段の物品載置部が構成されているカートにおいて、
前記分割載置部は、前後方向の中央部に幅狭部を備え、該幅狭部には他方の分割載置部との対向方向に突出する突出片が形成され、前記カートユニット同士を折り畳む際に前記突出片が前記幅狭部に比べて対向方向に大きく突出する前後端部に当接することを特徴としている。
この特徴によれば、連結部材により連結された左右のカートユニットを前後方向に相対移動させて互いに近接または当接させることにより、不使用時にカートの左右幅を使用時の所定寸法よりも小さくして折り畳むことができる。従って、カートの保管場所のスペースを小さくすることができ、保管場所を有効に利用することができる。また、左右のカートユニット同士が前後方向にずれて折り畳まれるので、複数のカートを前後方向の間隔を小さくして効果的にネスティングすることができる。
【0008】
前記左右のカートユニットは前記物品載置部を支持する前後一対の支柱を備え、前記左右のカートユニットにおける前記前後の支柱に前記連結部材の端部が回動可能に連結されていることを特徴としている。
この特徴によれば、左右のカートユニットの前後一対の支柱に連結部材の端部が連結されているので、左右のカートユニット同士の連結強度が大となる。
【0009】
前記連結部材は前記支柱の少なくとも上部と下部に連結されていることを特徴としている。
この特徴によれば、左右のカートユニット同士の連結強度がより大となる。
【0010】
前記支柱を管状支柱とし、上下に対向する前記分割載置部間に位置する前記管状支柱に、前記連結部材の端部が固着された管材を回動可能に嵌合したことを特徴としている。
この特徴によれば、左右の管状支柱に連結部材の端部が固着された管材を嵌合するだけで、前後の支柱に連結部材を回動可能に容易に連結することができる。また、連結部材と一体を成す管材が管状支柱に嵌合されているので、左右のカートユニット同士の連結強度がさらに大となり、カートのぐらつきも防止される。
【0011】
前記分割載置部は、前後方向の中央部に幅狭部を備え、該幅狭部には他方の分割載置部との対向方向に突出する突出片が形成され、前記カートユニット同士を折り畳む際に前記突出片が前記幅狭部に比べて対向方向に大きく突出する前後端部に当接することを特徴としている。
この特徴によれば、不使用時にカートの左右幅を使用時の所定寸法よりも小さくして折り畳みながらも、安定して自立できるのに十分なカートユニット同士の離間距離を確保することができる。
【0012】
前記カートユニットの相対移動を阻止し、カートを使用状態に保持するロック手段を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、使用状態のカートが誤って折り畳まれることがない。
【0013】
前記ロック手段は、前記カートユニットにそれぞれ一方端が軸支され、自由端にそれぞれ係合部が形成された杆材により構成され、これら杆材同士は前記カートユニットに対して斜めに交差して直線をなした状態で互いの係合部が係合することを特徴としている。
この特徴によれば、カートの使用状態において杆材が筋交いのように機能し、別体のカートユニットを連結し構成されるカートの構造強度を補強できる。
【0014】
前記ロック手段は前記分割載置部に上下に回動可能に取付けられた線状部材よりなり、該線状部材には、下向き回動時に前記連結部材に上方から嵌合可能な凹部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、線状部材を下向きに回動させ、凹部を連結部材に上方から嵌合するだけで、カートを使用状態に簡単にロックすることができる。
【0015】
前記線状部材は前記カートユニットを使用状態に相対移動させるとき前記連結部材に接触して跳ね上げられる傾斜部を有し、前記カートユニットを使用状態としたとき前記跳ね上げられた線状部材が下向き回動して前記凹部が前記連結部材に上方から嵌合することを特徴としている。
この特徴によれば、カートユニットを相対移動させるだけで、カートを使用状態に自動的にロックすることができるので、使い勝手が向上する。
【0016】
前記物品載置部を構成する左右一対の前記分割載置部には、載置されるトレー部材の左右方向及び前後方向の少なくともいずれか一方への移動を規制する規制部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、左右一対の分割載置部にトレー部材が載置されることで、トレー部材により左右一対のカートユニット同士の相対移動が規制され、展開された使用状態のカートの構造強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1に係るカートの使用状態の斜視図である。
【
図2】同じく折り畳み途中のカートを示す斜視図である。
【
図3】左右のカートユニットの上部側の一部を示す斜視図である。
【
図4】左右のカートユニットの連結部付近の拡大縦断面図である。
【
図5】左右のカートユニットをロック手段により使用状態にロックしたときの要部の斜視図である。
【
図6】ロック手段のロックを解除して左右のカートユニットを折り畳んだ状態の要部の斜視図である。
【
図8】カートユニットが自動的にロックされるときのロック手段の作動状態を示すもので、(a)は連結部材がロック手段に接触する前の状態、(b)はロック手段が連結部材に接触して跳ね上げられる状態、(c)はロック手段の凹部が連結部材に上方から嵌合して自動的にロックされた状態をそれぞれ示す要部の斜視図である。
【
図10】4台のカートを前後方向にネスティングしたときの平面図である。
【
図11】実施例2に係るカートの連結部材と支柱との連結部付近の斜視図である。
【
図12】実施例3に係るカートの折り畳んだ状態の平面図である。
【
図13】実施例3に係るカートの使用状態の平面図である。
【
図14】実施例3に係るカートの中間状態の平面図である。
【
図15】実施例3に係るカートの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るカートを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0019】
実施例1に係るカートにつき、
図1から
図8を参照して説明する。実施例1に係るカート1は、左右一対のカートユニット2、2の上部と下部同士を、前後方向に相対移動可能かつ左右に所定寸法離間するように4本の連結部材3により連結して構成されている。
【0020】
左右のカートユニット2、2は、それぞれ下端にキャスタ4が取付けられた前後一対の金属製の管状支柱5、5と、前後の管状支柱5、5により支持された上下複数段(本実施例では8段)の合成樹脂製の分割載置部6とを備えている。カートユニット2、2における左右に対向する分割載置部6、6により、例えばトレー部材Tを載置可能な複数段の物品載置部7が構成されている(
図3、
図4参照)。
【0021】
図3及び
図4に示すように、左右の分割載置部6、6の対向部には、前後の端部を除いて下方に凹入する段差部6a、6aが内向きに形成されている。段差部6a、6aの前後の端部は、トレー部材Tの支持面積を大とするために内向きの突出寸法を大としてある。段差部6a、6aの基部に形成されている上向きの側壁部6b、6bは、物品載置部7に載置されるトレー部材Tの左右方向への移動を規制する左右方向規制部となっており、また段差部6a、6aの前後の端部に形成されている上向きの前後壁部6c、6cは、トレー部材Tの前後方向への移動を規制する前後方向規制部となっている。
【0022】
左右の分割載置部6、6における前後両端部の外側面には、管状支柱5に嵌合される円筒部6d、6dが一体的に形成されている。上下に対向する分割載置部6、6間の管状支柱5には、連結部材3の装着部を除いて合成樹脂製の間隔保持管8が嵌装され、上下の分割載置部6、6間の間隔が保たれている。連結部材3の装着部において上下に対向する分割載置部6、6間の管状支柱5には、連結部材3の両端部に固着された金属パイプよりなる管材9、9が回転自在に嵌装されている。この管材9、9も上下の分割載置部6、6間の間隔を保持する間隔保持管としての機能を有する。なお、金属パイプにより形成された連結部材3の両端部は、左右の管材9、9の上端部の対向面に溶接により固着され、管材9、9と連結部材3とは実質的に一体をなしている(
図4参照)。
【0023】
図3に示すように、最上段の左右の分割載置部6の円筒部6d、6dと間隔保持管8、8との間の管状支柱5には、ゴム製の伸縮自在な管状クッション材10、10が若干圧縮させて嵌装されている。この管状クッション材10は、寒暖差によって合成樹脂製の円筒部6dと間隔保持管8との間に生じる膨張差や収縮差を吸収して、がたつきを防止するためのものである。最上段の円筒部6dの上端部には、鍔付きのキャップ11が嵌合され、このキャップ11は、管状支柱5の上端部に圧嵌された雌ねじ部材(図示略)に上方から螺合されるボルト12により固定されている。このキャップ11により全ての間隔保持管8と管材9及び全段の分割載置部6、6が管状支柱5から抜け外れるのが防止されている。
【0024】
連結部材3と一体をなす管材9は、前後左右4本の管状支柱5の上部と下部、すなわちこの実施例では、最下段の分割載置部6と2段目の分割載置部6間の管状支柱5及び6段目の分割載置部6と7段目の分割載置部6間の管状支柱5に回転自在に嵌装されている(
図1参照)。詳しくは
図4に示されるように、管材9は上下端に取り付けられた摩擦係数の低いフランジ付き筒体である滑り軸受20を介してスムーズに回転可能な状態で管状支柱5に嵌装されている。
【0025】
図5ないし
図8に示すように、上下の連結部材3の直上において後部側の右方の管状支柱5に嵌合されている分割載置部6の後端部の内側面(左側面)には、ロック手段である金属ワイヤ製の線状部材13が取り付けられている。この線状部材13は、
図7に拡大して示すように、上方の遊端部に前後方向外向きに連設された前後一対の取付部13a、13aと、前後方向の中央部に形成され、カート1を使用状態にしたとき連結部材3に上方から嵌合可能な上向きの凹部13bと、前部側の取付部13aから凹部13bの前下端に向かって斜め上下方向に傾斜する傾斜部13cとを有している。
【0026】
分割載置部6の内側面には、線状部材13を取付けるための前後一対のL字状をなす取付金具14、14がねじ止めされている。線状部材13を内向きに弾性変形させつつ、取付部13a、13aを取付金具14、14の内向片14a、14aに遊嵌することにより、線状部材13は取付部13a、13aを中心として上下方向に回動するように支持されている。なお、線状部材13は自重により常時下向きに垂下した状態に支持される。取付金具14の内向片14aから突出する取付部13aには環状溝(図示略)が形成され、この環状溝にスナップリング15を嵌め込むことにより、取付部13aが抜け止めされている。
【0027】
図5を参照し、カート1を使用状態に展開した状態で上下の線状部材13(上部のみ図示する)を下向きに回動させ、凹部13bを連結部材3に上方から嵌合すると、上下の連結部材3の水平回動が阻止され、左右のカートユニット2、2の前後方向への相対移動がロックされる。また、
図6を参照し、線状部材13を上向きに回動させ、凹部13bを連結部材3から離脱させると、左右のカートユニット2、2の前後方向への相対移動が許容され、左右の分割載置部6、6同士を互いに近接または当接させた状態でカート1を折り畳むことができる。
【0028】
折り畳まれたカート1を使用状態まで展開すると、線状部材13により自動的にロックすることができる。すなわち、
図8(a)に示す折り畳み状態からカートユニット2、2を前後方向に相対移動させると、
図8(b)に示すように、連結部材3の水平回動運動により該連結部材3が線状部材13の傾斜部13cに接触し、線状部材13が跳ね上げられる。連結部材3が線状部材13の凹部13bと対向する位置までカートユニット2、2をさらに相対移動させると、
図8(c)に示すように、線状部材13が自重により下向きに回動して凹部13bが連結部材3に上方から嵌合する。これにより、カート1は自動的に使用状態にロックされる。
【0029】
以上説明したように、実施例1に係るカート1においては、
図9に示すように、左右一対のカートユニット2、2を前後方向に相対移動させて分割載置部6、6同士を互いに近接または当接させることにより、不使用時にカート1の左右幅を使用時の所定寸法よりも小さくして折り畳むことができる。従って、カート1の保管場所のスペースを小さくでき、保管場所を有効に利用することができる。また、カートユニット2、2同士が前後方向にずれて折り畳まれるので、
図10に示すように、複数台のカート1を前後方向の間隔を小さくして効果的にネスティングすることができる。
【0030】
また、
図10に示すように、複数台のカート1をネスティングする際には、左右の分割載置部6、6の対向部に形成された幅狭部6eの内側に、隣接するカート1の幅狭部6eを挟んだ前後端部6fを入れることで、ネスティング時に隣接するカート1同士の前後方向の相対移動が抑制される。
【0031】
連結部材3の両端部は、カートユニット2、2の前後の管状支柱5の上部と下部に連結され、しかも連結部材3と実質的に一体をなす所定長さの管材9が管状支柱5に嵌装されているので、左右のカートユニット2、2同士の連結強度が大となり、使用時においてカート1がぐらつくのが防止される。また、管材9を管状支柱5に嵌装するだけで、連結部材3を前後の管状支柱5、5に回動可能に容易に連結することができる。
【0032】
左右のカートユニット2、2の相対移動を阻止し、カート1を使用状態にロックする線状部材13(ロック手段)を有しているので、使用状態のカート1が誤って折り畳まれることがなくなる。また、カートユニット2を使用状態に展開させるだけで、カート1を使用状態に自動的にロックすることができるので、使い勝手が向上する。
【0033】
物品載置部7を構成する左右一対の分割載置部6、6には、載置されるトレー部材Tの左右方向及び前後方向への移動を規制する規制部、すなわち側壁部6bと前後壁部6cが形成されているので、物品載置部7に載置されるトレー部材Tによっても左右のカートユニット2、2の相対移動が規制され、展開された使用状態のカート1の構造強度を高めることができる。
【0034】
なお、連結部材3は左右の管材9、9に溶接により固着される例について説明したが、連結部材は左右の管材に回動可能に取り付けられていてもよく、この場合左右の管材は管状支柱5に回動不能に固着されていてもよい。
【実施例2】
【0035】
実施例2に係るカートにつき、
図11を参照して説明する。尚、前記実施例1と同じ構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。この実施例は、実施例1の連結部材3の代わりに細長い平板状の連結部材16を使用するもので、連結部材16の両端部の円形部16aに穿設された貫通孔16bを管状支柱5に嵌装するようにしたものである。管状支柱5に嵌合された円形部16aを上下2個の間隔保持管8、8により挟むことにより、連結部材16の両端部を左右の管状支柱5に直接連結することができる。このような連結部材16を用いると、実施例1のように連結部材3の端部に管材9を固着する必要がないので、溶接工程や部品点数が削減され、コスト低減が図れる。
【実施例3】
【0036】
実施例3に係るカートにつき、
図12から
図14を参照して説明する。尚、前記実施例1と同じ構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。この実施例は、実施例1のロック手段(線状部材13、取付金具14、14)の代わりにストッパ機構21を使用するものである。ストッパ機構21は、2本の杆材22A、22Bにより構成されており、杆材22A、22Bの一方端には、上下方向に貫通する軸孔23、23が形成されており、上から2段目の分割載置部6、6と管材9、9との間にて、管状支柱5に回動自在に軸支されている。詳しくは、ここでは図示しない管材9の上端に取り付けられた滑り軸受20(
図4参照。)の上方に配置されている。
【0037】
図12に示されるように、杆材22A、22Bの他方の自由端には、互いに係合し得る係合部24、25を備えている。杆材22Aの他方端の係合部24は上方に延びるピン形状をなし、杆材22Bの他方端の係合部25はピン形状の係合部24が凹所に入り込んで係合する鉤状を成している。なお、ここでは図示しないがピン形状の係合部24は正面視略T字形をなし、上端に係合部25の凹所よりも幅広の頭部を有し、係合部24と係合部25とは上下方向にその係合状態が解除されない構成となっている。
【0038】
一方の杆材22Aは、一方の分割載置部6の左右一方の管状支柱5(ここでは
図12の紙面左下側)に軸支されており、他方の杆材22Bは、他方の分割載置部60の左右一方の管状支柱5(ここでは
図12の紙面右上側)に軸支されている。
図13に示されるように、カート1を使用状態に展開した状態において、杆材22A、22B同士がカートユニット2,2に対して斜めに交差して直線をなし、係合部24、25が互いに係合するようになっている。言い換えると、カート1の使用状態において杆材22A、22Bが筋交いのように機能し、別体のカートユニット2,2を連結して構成されるカート1の構造強度を補強している。
【0039】
また、杆材22A、22Bにはその中央側に上方に突出するピン部26、27が形成されている。ピン部26は分割載置部60の幅狭部60eの内側に当接するように配置されており、
図12に示す折り畳んだ状態や、後述する
図14に示す中間状態において、杆材22A、22Bの外方への回動範囲を規定している。
【0040】
図13に示されるように、杆材22A、22Bの係合部24、25同士を係合させた使用状態において、ピン部27は分割載置部60の下面側に開口して形成され前後に延びる凹部30内に挿入配置され、この凹部30内でその移動が規制されている。この状態において、ピン部27は凹部30の内側面30aに当接した状態となり、杆材22A、22Bが分割載置部60、60に対して立つ方向の回動が規制される。言い換えると、これら杆材22A、22Bの係合部24、25同士を係合させるには、ピン部27を内側面30aに押圧させ、凹部30の内側面30aの弾性変形によって、使用状態よりも一時的に杆材22A、22Bが分割載置部60、60に対して立つ方向に回動させるようにした後、杆材22A、22Bが分割載置部60、60に対して寝る方向に向けて係合させる。このようにして、係合部24、25同士の係合状態は、凹部30の内側面30aを有する板部にピン部27が規制されて杆材22A、22Bの位置が維持されており、カート1の使用状態の形状を維持できるようになっている。
【0041】
分割載置部60、60の幅狭部60eには、対向方向に突出する突出片60h、60hがそれぞれ形成され、これら突出片60h、60hはカート1の使用状態では対向する分割載置部60の幅狭部60eと離間する寸法で形成されており、
図12に示されるカート1を折り畳んだ状態では、分割載置部60の幅狭部60eに当接するようになっており、折り畳んだ状態のカートユニット2、2同士の位置決めができるようになっている。
【0042】
また、
図14に示されるように、カート1を折り畳んだ状態から使用状態よりも更に反対側までカートユニット2、2同士を移動させると、突出片60h、60hは、分割載置部60の前後端部にて幅狭部60eに比べて対向方向に大きく突出する前後端部60f、60fに当接するようになっており、折り畳んだ状態に比べてカートユニット2、2同士の離間距離が長く、折り畳んだ状態に比べてカート1自体の自立安定性が高い形態とすることができる。このように、使用状態と折り畳んだ状態との中間に位置するような中間状態を成すことができ、簡易的にカート1の左右幅を小さくしながらも、安定して自立できる自立状態とすることができる。
【0043】
尚、上述したように、杆材22A、22Bの係合部24、25同士を係合させることで、カート1の使用状態の形状を維持できるようになっているため、ロック手段としての線状部材13と連結部材3とを省略してもよい。また、実施例3において連結部材3はカート1の使用状態において左右に対向する位置の管状支柱5、5に軸支される管材9、9間にそれぞれ架け渡されているが、これに限らず
図15に示される変形例のように、連結部材33がカート1の使用状態において斜めに対向する位置の管状支柱5、5に軸支される一対の管材9、9に架け渡される構成であってもよい。
【0044】
図15に示されるように、連結部材33の両端は杆材22A、22Bが軸支されるものとは異なる一対の管状支柱5、5に軸支されており、カート1の使用状態において、ストッパ機構21と連結部材33とが交差する構成となっている。これにより、カート1の使用状態において、連結部材33がトレー部材Tの前後方向からの出し入れを阻害しにくく、かつ使用状態の形状の耐久性を確保することができる。
【0045】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0046】
例えば、前記実施例では、カートユニット2の管状支柱5に連結部材3を連結しているが、高さの低いカートや軽量物を運搬するカート等、構造強度をそれほど要求されない場合には、左右の分割載置部6、6の前後の端部同士を連結部材3により連結してもよい。
【0047】
また、前記実施例では、連結部材3の両端を筒状ないし環状として管状支柱5に外嵌し、連結部材3を管状支柱5から離脱しないようにしているが、例えば連結部材3の端を略C字状とし、連結部材3を管状支柱5から離脱可能としてもよい。
【0048】
また、前記実施例では、連結部材3を管状支柱5の上部と下部に連結しているが、管状支柱5の中間部にも連結部材3を連結してもよい。
【0049】
さらに、前記実施例では、ロック手段としての線状部材13を、右方の分割載置部6の後端部の内側面にのみ取付けているが、右方の分割載置部6の前端部や左方の分割載置部6の前後両端部にも線状部材13を取付け、前後の連結部材3の水平回動を同時に阻止して、カート1を使用状態に確実にロックしうるようにしてもよい。
【0050】
さらに、前記実施例では、左右の分割載置部6にトレー部材Tの前後左右方向への移動を規制する側壁部6bと前後壁部6cを設けているが、それらのいずれか一方を省略してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 カート
2 カートユニット
3 連結部材
4 キャスタ
5 管状支柱
6 分割載置部
6a 段差部
6b 側壁部(規制部)
6c 前後壁部(規制部)
6d 円筒部
6e 幅狭部
6f 前後端部
7 物品載置部
8 間隔保持管
9 管材
10 管状クッション材
11 キャップ
12 ボルト
13 線状部材
13a 取付部
13b 凹部
13c 傾斜部
14 取付金具
14a 内向片
15 スナップリング
16 連結部材
16a 円形部
16b 貫通孔
20 滑り軸受
21 ストッパ機構
22A、22B 杆材
23、23 軸孔
24、25 係合部
26、27 ピン部
30 凹部
30a 内側面
33 連結部材
60 分割載置部
60e 幅狭部
60h 突出片
60f 前後端部
T トレー部材