(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】マルチフレーム人工心臓弁
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
A61F2/24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021005268
(22)【出願日】2021-01-15
(62)【分割の表示】P 2018193655の分割
【原出願日】2013-12-13
【審査請求日】2021-02-04
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-13
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム シー.ブラッチマン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エー.クローフォード
(72)【発明者】
【氏名】ローガン アール.ハガマン
(72)【発明者】
【氏名】コーディー エル.ハートマン
【合議体】
【審判長】井上 哲男
【審判官】佐々木 正章
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0218619(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の開口パターンを有し、かつ内径が略一定の円柱形状を画定する管状壁を有するリーフレットフレーム、ここで、前記リーフレットフレームは複数のリーフレットウィンドウを画定するリーフレットフレーム要素を有する、
前記リーフレットフレームの前記複数のリーフレットウィンドウから延びる複数のリーフレット、及び
開口部の開口パターンを画定する管状壁を有する外方フレーム、
を備える経カテーテル弁であって、
前記リーフレットフレーム及び前記外方フレームは、拡張状態となることができるように構成され、
前記外方フレームが前記複数のリーフレットウィンドウを画定する前記リーフレットフレーム要素の上にサポートを提供し、前記リーフレットフレームと前記外方フレームが前記拡張状態にあるときに、
前記リーフレットフレームの前記リーフレットフレーム要素と前記外方フレームのフレーム要素とが径方向に互いに重なり合うように前記リーフレットフレームが前記外方フレームに同軸で入れ子式で配置される、経カテーテル弁。
【請求項2】
前記リーフレットフレームと前記外方フレームを連結するブリッジ部をさらに含む、請求項
1に記載の経カテーテル弁であって、前記ブリッジ部が、前記外方フレームの近位端において第1の円周方向の折り畳み部を画定し、かつ、前記リーフレットフレームの遠位端において第2の円周方向の折り畳み部を画定するように、前記リーフレットフレームは、伸縮する様式において、前記外方フレーム内に入れ子式で配置される、経カテーテル弁。
【請求項3】
前記ブリッジ部が、前記外方フレーム内に伸縮自在に反転される、請求項
2に記載の経カテーテル弁。
【請求項4】
前記ブリッジ部が、フィルム材料のシリンダを含む、請求項
2又は
3に記載の経カテーテル弁。
【請求項5】
前記
フィルム材料のシリンダが、前記外方フレームの外表面、及び前記外方フレームの近位端にわたって延びる、請求項
4に記載の経カテーテル弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2012年12月19日に出願の米国仮特許出願第61/739721号の優先権を主張するものであり、その内容は参照により全て本明細書に援用される。
【0002】
本開示は概して人工弁、より具体的には合成可撓性リーフレット型人工弁装置、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
天然弁の機能及び性能を模倣しようと生体弁が開発されてきた。可撓性のリーフレットを生物組織、例えばウシの心膜から作製する。一部の弁デザインでは、生物組織をリーフレットを支える比較的堅いフレームに縫い付けることで植え込み時の寸法安定性を得る。生体弁は短期的には素晴らしい血行力学及び生体力学的性能を発揮することができるものの、不全状態の中でもとりわけ石灰化及び心臓弁膜尖の断裂を起こしやすく、再手術及び交換を必要となる。
【0004】
合成材料、例えばとりわけポリウレタンを生物組織の代替物として使用することでより耐久性及び可撓性が高いリーフレット型弁(本明細書では合成リーフレット型弁(SLV)と称する)を作製しようとの試みがなされてきた。しかしながら、合成リーフレット型弁は弁置換における有効な選択肢とはならなかった。これは何よりもデザインが最適なものではなく、耐久性の高い合成材料に欠いているため早期故障が起きるからである。
【0005】
個々のリーフレットのフレーム(生物由来及び合成)への縫い付け、また合成リーフレットに限っては射出成型及びフレームへのポリマーのディップコーティングを含め、リーフレットをフレームに連結させるのに数多くの製造技法が用いられてきた。多くの場合、得られるリーフレットはフレーム上に支持され、リーフレットをフレームに連結する取付縁及びフラップの動きを可能にする自由縁を有するフラップを構成している。
【0006】
リーフレットは流体圧力の影響下で動く。作動時、リーフレットは、上流側流体圧力が下流側流体圧力を上回ると開き、下流側流体圧力が上流側流体圧力を上回ると閉じる。リーフレットの自由縁が下流側流体圧力の影響下で合わさって弁を閉じることで、下流側の血液が弁を通って逆流するのを防止する。
【0007】
リーフレットの開閉でかかる繰り返し荷重下での弁の耐久性は、リーフレットとフレームとの間での荷重の分布に部分的に左右される。さらに、閉位置にある時、かなりの荷重がリーフレットにかかる。例えば、可撓性のリーフレットを比較的堅いフレームが支える取付縁でリーフレットの機械的破損が起こり得る。リーフレットの開閉でかかる繰り返し荷重は疲労、クリープ又は他の作用による材料破壊につながり、リーフレットの材料に部分的に左右される。取付縁での機械的破損は特に、合成リーフレットでよく見られる。
【0008】
弁リーフレットの耐久性はまた、以下に限定するものではないが、開閉サイクル中のリーフレットの曲げ特性の関数である。小さい半径での曲げ、折りじわ及び交差じわがリーフレットに高応力領域を生み出し得る。これらの高応力領域は、繰り返し荷重下、孔及び断裂の形成を引き起こし得る。
【0009】
生体弁は、外科的又は経カテーテル的な技法を用いて送達し得る。外科手術用生体弁は直視下心臓手術技法を用いて患者に植え込む。アクセス及び送達のためにある範囲の直径である必要がある経カテーテル弁とは対照的に、外科手術用弁は通常、固定の直径を有するように製造される。外科手術用弁には通常、天然組織開口部に縫着できるように弁周囲付近にソーイングカフが設けられる。ソーイングカフは当該分野で周知である。
【0010】
経カテーテル人工弁は、開心外科手術と比較すると患者の外傷を最小限に抑えるのに役立つカテーテルを介して血管を通して送達される。開心外科手術では患者の外傷が広範囲におよぶため、罹病率が高くなり、回復に時間がかかる。カテーテルを介して被植え込み部位に送達する弁では開心外科手術で生じる外傷を回避することができ、開心外科手術に耐えられないほど重症又は衰弱した患者に用い得る。
【0011】
一部の経カテーテル弁は管状の金属フレームの内側に取り付けられた可撓性リーフレットを備える。金属フレームは、展開前の圧縮時直径から展開後の機能時直径へと自己拡張又はバルーン拡張し得る。送達システムの直径は、送達カテーテルに装填した時のフレーム内に圧縮された弁リーフレットの結果的な厚さに部分的に左右される。上述した弁の耐久性問題に加えて、経カテーテル弁はまた、取扱い並びに圧縮及び拡張されることに関連する展開応力に耐えられるものでなくてはならない。
【0012】
経カテーテル弁は、例えば弁が留置後に外れたり移動したりしないように、血管内に留置した後、植え込み部位の組織開口部にしっかりと連結できなくてはならない。植え込み部位への弁の連結は通常、組織開口部に付勢係合で置かれるフレームの比較的高いフープ強度により支援される。
【0013】
外科手術により又は血管経由で送達し得る耐久性の高い人工弁が必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
記載の実施形態は、弁置換、例えば心臓弁置換のための装置、システム及び方法を対象とする。より具体的には、記載の実施形態は、多部品支持部材すなわちフレームを有する可撓性リーフレット弁装置及びシステム並びに弁装置の製造及び送達方法を対象としている。
【0015】
ある実施形態において、人工弁は、リーフレットフレームと、外方フレームと、フィルムとを備える。リーフレットフレームは、複数のリーフレットウィンドウを画定する概ね管状の形状を有する。外方フレームは概ね管状の形状を有する。リーフレットフレームは少なくとも部分的に外方フレーム内に同軸で配置される。リーフレットフレーム及び外方フレームは、少なくとも部分的にフィルムの隣接部で連結される。フィルムの隣接部の少なくとも一部はリーフレットフレームと外方フレームとの間に収容され、またこれらを連結してリーフレットフレームと外方フレームとの間での相対運動を妨げ、接触を防止する。フィルムは、各リーフレットウィンドウから延びるリーフレットを画定する。
【0016】
ある実施形態において、人工弁は、リーフレットフレームと、外方フレームと、フィルムとを備える。リーフレットフレームは、複数のリーフレットウィンドウを画定する概ね管状の形状を有する。外方フレームは概ね管状の形状を有する。リーフレットフレームは少なくとも部分的に外方フレーム内に同軸で配置される。外方フレームは、リーフレットフレームにより画定されるリーフレットウィンドウに協働的な配置で重なることでリーフレットウィンドウを構造的に支えるフレーム要素を含む。フィルムは、各リーフレットウィンドウから延びるリーフレットを画定する。
【0017】
ある実施形態において、人工弁の製造方法は:フィルムの第1層をマンドレルの周りに管状に巻くこと;概ね管状のリーフレットフレームを用意し、リーフレットフレームはリーフレットフレームリーフレット面及びリーフレットフレーム外面を有し、リーフレットフレームはウィンドウ上部を有する複数のリーフレットウィンドウを画定すること;概ね管状の外方フレームを用意し、外方フレームは外方フレームリーフレット面及び外方フレーム外面を有すること;リーフレットフレーム及び外方フレームをフィルムの第1層上にリーフレットフレームと外方フレームとを互いに離して置いてその間にブリッジ部を画定し、リーフレットフレーム内面及び外方フレーム内面はフィルムの第1層と接触すること;フィルムの第2層をリーフレットフレーム及び外方フレーム上にリーフレットフレーム外面及び外方フレーム外面と接触させて形成すること;フィルムの第1層及びフィルムの第2層を互いに、またリーフレットフレーム及び外方フレームに連結すること;フィルムの第1層及びフィルムの第2層をリーフレット自由縁が画定されるようにリーフレットウィンドウ内でウィンドウ上部を横に切断すること;離型材でリーフレットを画定しているリーフレットウィンドウ内に配置されたフィルムの一部をマスクすることで続く加工ステップ中にリーフレットがさらに結合するのを防止すること;フィルムの第3層をフィルムの第2層及びリーフレットウィンドウ上の離型材の上に管状に巻き、フィルムの第3層がリーフレットフレーム、外方フレーム及びリーフレットフレームと外方フレームとの間のブリッジ部にオーバーラップすること;フィルムの第3層及びフィルムの第2層を互いに連結すること;アセンブリをマンドレルから外すこと;リーフレットフレームを外方フレーム内に同軸で且つ少なくとも部分的に配置してリーフレットフレームと外方フレームとの間にブリッジ部が収容されるように少なくとも部分的にブリッジ部を折り畳んでオーバーラップさせること;アセンブリをマンドレルに戻すこと;ブリッジ部をそれ自身並びにリーフレットフレーム外面に隣接した第3層及び外方フレーム内面に隣接した第1層に入れ子係合で連結することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付の図面は本開示をより深く理解するために用意したものであり、本明細書に援用され且つ本明細書の一部を構成し、本明細書に記載の実施形態を図示し、また本文の内容と共に本開示で論じられる原理を説明する役割を果たす。
【
図2B】広げて平面にした
図1Aの弁の実施形態の分解組立図である。
【
図3A】開放時の配置にある
図1Aの弁の実施形態の軸線方向図すなわち上面図である。
【
図3B】閉鎖時の配置にある
図1Aの弁の実施形態の軸線方向図すなわち上面図である。
【
図4A】解剖学的構造内にある経カテーテル送達システムのある実施形態の側面図である。
【
図4B】解剖学的構造内にある外科手術用弁のある実施形態の側面図である。
【
図5A】製造中の弁のある実施形態の断面図である。
【
図6A】広げて平面にした外方フレームのある実施形態の図である。
【
図6B】広げて平面にした外方フレームのある実施形態の図である。
【
図7A】広げて平面にしたリーフレットフレームのある実施形態の図である。
【
図7B】広げて平面にしたリーフレットフレームのある実施形態の図である。
【
図8A】広げて平面にしたリーフレットフレームのある実施形態の図である。
【
図8B】広げて平面にしたリーフレットフレームのある実施形態の図である。
【
図8C】広げて平面にしたリーフレットフレームのある実施形態の図である。
【
図8D】広げて平面にしたリーフレットフレームのある実施形態の図である。
【
図8E】広げて平面にしたリーフレットフレームのある実施形態の図である。
【
図9A】ある実施形態におけるアセンブリマンドレル上にある弁コンポーネントの側面図である。
【
図9B】ある実施形態におけるアセンブリマンドレル上にある弁コンポーネントの側面図である。
【
図10A】別の実施形態における、機械的係合部材で連結された概ね管状のリーフレットフレームと概ね管状の外方フレームとを備える人工弁の側方分解組立図である。
【
図12】ある実施形態におけるアセンブリマンドレル上にあるリーフレットフレームの側面図である。
【
図13A】ある実施形態における切断マンドレル上にあるリーフレットフレームの側面図である。
【
図13B】
図13Aの切断マンドレル上にあるリーフレットフレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
当業者ならば、本開示の様々な態様を、意図する機能を果たすように構成された多くの方法及び装置で実現できることがすぐにわかる。言い換えると、他の方法及び装置を本発明に援用することで意図する機能を果たし得る。また、本明細書で言及する添付の図面は必ずしも縮尺通りに描かれてはおらず、本開示の様々な態様を説明するにあたって強調している場合もあることに留意すべきである。この点で、図面は限定的であると解釈されるべきではない。
【0020】
本明細書の実施形態を様々な原理及び考えと関連させて記述しているが、記載の実施形態を理論により拘束すべきではない。例えば、本明細書において実施形態を人工弁、より具体的には人工心臓弁と関連させて記述している。しかしながら、本開示の範囲内の実施形態は、同様の構造及び/又は機能の弁又は機構にも応用し得る。さらに、本開示の範囲内の実施形態は心臓以外の用途にも応用し得る。
【0021】
人工弁との関連で本明細書で使用の用語「リーフレット」は、差圧の影響下で開位置と閉位置との間を移動可能な一方向弁のコンポーネントである。開位置にある時、リーフレットは血液が弁を通って流れることを可能にする。閉位置にある時、リーフレットは実質的に弁を通っての逆流をブロックする。複数のリーフレットを備える実施形態において、各リーフレットは少なくとも1つの隣接するリーフレットと協働して血液の逆流をブロックする。血液における差圧は、例えば心臓の心室又は心房の収縮により引き起こされ、そのような差圧は典型的には閉じた時にリーフレットの片側で流体圧力が高まることで起きる。弁の流入側の圧力が弁の流出側の圧力より高くなるとリーフレットが開いて血液が弁を流れる。血液が弁を通って隣接する心腔又は血管に流れ込むと、流入側の圧力が流出側の圧力と等しくなる。弁の流出側の圧力が弁の流入側の血圧より高くなるとリーフレットは閉位置に戻り、概して弁を通って血液が逆流するのを防ぐ。
【0022】
本明細書で使用の用語「膜」とは、単一の組成物を含む材料のシート、例えば、以下に限定するものではないが、延伸フルオロポリマーのことである。
【0023】
本明細書で使用の用語「複合材料」とは、例えば、以下に限定するものではないが、延伸フルオロポリマーの膜とエラストマーとの組み合わせのことであり、例えば、以下に限定するものではないが、フルオロエラストマーである。エラストマーは膜の多孔質構造内に染みこませ得る、膜の片面又は両面上にコーティングし得る、あるいはこれらを組み合わせて膜上にコーティングし、また膜内にも染みこませ得る。
【0024】
本明細書で使用の用語「積層体」とは、多層の膜、複合材料又は他の材料、例えばエラストマー及びこれらの組み合わせのことである。
【0025】
本明細書で使用の用語「フィルム」とは総称的に膜、複合材料又は積層体の1種以上のことである。
【0026】
本明細書で使用の用語「生体適合性材料」とは総称的にフィルム又は生物材料、例えば、以下に限定するものではないが、ウシの心膜のことである。
【0027】
用語「リーフレットウィンドウ」はフレームによって画定される空間と定義され、リーフレットが延びている。リーフレットはフレーム要素から延び得る又はフレーム要素に隣接して、フレーム要素とは間隔を置いて延び得る。
【0028】
用語「天然弁開口部及び組織開口部」とは、人工弁を設置し得る解剖学的構造のことである。そのような解剖学的構造には、以下に限定するものではないが、心臓弁が外科手術により取り除かれた又は取り除かれていない場所が含まれる。人工弁を受け入れ得る他の解剖学的構造には、以下に限定するものではないが、静脈、動脈、導管及びシャントが含まれると理解される。本明細書では天然弁を人工弁に置き換えることに言及しているが、当然のことながら、弁開口部又は植え込み部位が、特定の目的のための弁を受け入れ得る合成又は生体導管における場所も意味し得ることがわかる。したがって、本明細書に記載の実施形態の範囲は弁置換に限定されない。
【0029】
本明細書で使用の「連結」は、直接か間接的かを問わず、また永久的であるか一時的であるかを問わず、接合、接続、取り付け、付着、貼りつけ又は接着することを意味する。
【0030】
本明細書の実施形態には、外科手術及びカテーテルを介した設置、例えば、以下に限定するものではないが、心臓弁置換に適した人工弁のための様々な装置、システム及び方法が含まれる。弁は一方向弁として作動し、弁は弁開口部を画定し、流体圧力の差に応答してこの弁開口部内へとリーフレットが開くことで血液が流れ、閉まることで弁開口部が塞がれて流れを止める。
【0031】
本明細書に記載の実施形態は、以下に限定するものではないが、機械的及び生物学的な性能上での利点に関した人工弁テクノロジーにおける進歩を遂げている。本明細書に記載の幾つかの実施形態において、人工弁は、隣接フィルムにより連結された2つのフレームを備え、リーフレットフレームは入れ子式に外方フレーム内に嵌め込まれ、リーフレットフレームと外方フレームとの間で弁に漏れが起きることはない。
【0032】
通常、可撓性リーフレット型人工心臓弁のリーフレットは直接、フレームに縫着される。代替の構成では、リーフレット材料をフレームの内側に取り付けることができるが、この配置だと、充分に接着させないと、リーフレット材料が剥離する可能性がある。別の構成ではリーフレット材料をフレームの外側に取り付けることができるが、この配置では、フレーム上でリーフレットが摩耗する問題が起きることが多い。本明細書に記載の実施形態においては、これらの問題を一対のフレームを使用し、フレームの間にリーフレット材料を収容することで回避している。本明細書に記載の実施形態においては、互いにフレームの元々の形状を保ちながら一対のフレームを圧縮及び再拡張することができるため、経カテーテル送達ができる。
【0033】
本明細書に記載の幾つかの実施形態において、人工弁は2つのフレーム、すなわちリーフレットフレームと外方フレームとを備える。リーフレットを画定するフィルムを、リーフレットフレームの内面に連結し得る。幾つかの他の実施形態において、リーフレットを画定するフィルムはリーフレットフレームと外方フレームとの間に収容され、またリーフレットフレームにより画定されるリーフレットウィンドウに広がる。したがって、リーフレットはリーフレットフレームと外方フレームとの間に収容されているため、リーフレットをリーフレットフレームの内面だけに連結した場合と比較して、リーフレットの剥離又は離層が大いに防止される。
【0034】
本明細書に記載の幾つかの実施形態において、人工弁は2つのフレーム、すなわちリーフレットフレームと外方フレームとを備える。リーフレットフレーム及び外方フレームは互いにフィルムで隔てられている。言い換えると、金属/ポリマー/金属と相互接続されており、2つのフレーム間で金属同士が接触することはない。
【0035】
本明細書に記載の幾つかの実施形態において、人工弁は2つのフレーム、すなわちリーフレットフレームと外方フレームとを備える。リーフレットフレームは外方フレーム内に嵌め込まれ、リーフレットフレームと外方フレームとが協働することで、とりわけ平板圧縮に対する比較的高い耐性が得られる。幾つかの実施形態において、リーフレットフレームにより画定されるリーフレットウィンドウに重なるフレーム要素を提供することで外方フレームはリーフレットウィンドウを構造的に支える。幾つかの実施形態において、外方フレームは、植え込んだ時にリーフレットウィンドウ内に組織が入り込まないように、リーフレットフレームにより画定されるリーフレットウィンドウに重なるフレーム要素を提供する。幾つかの実施形態において、外方フレームは、リーフレットフレームにより画定されるリーフレットウィンドウに重なり且つ経カテーテル実施形態の場合にフレームアセンブリを均一に圧縮及び拡張できるように協働するフレーム要素を提供する。
【0036】
本明細書に記載の幾つかの実施形態において、人工弁は2つのフレーム、すなわちリーフレットフレームと外方フレームとを備える。リーフレットフレームはリーフレットウィンドウを画定し、リーフレットウィンドウは部分的にリーフレットの形状を形作る。幾つかの実施形態において、リーフレットは平坦な基部を備え、リーフレットはこの基部からリーフレットの自由縁に向かって、最小限の折りじわ及びフラッタでもって曲がる。幾つかの実施形態において、リーフレットは、とりわけ1つ以上のより短い弁長さを規定する平坦な基部を備え、この平坦な基部は、丸みのある基部を有するリーフレットと比較して、実質的に基部での血液の停滞及び貯留を防止し、また洗い流しを円滑にする。
【0037】
本明細書に記載の幾つかの実施形態において、人工弁は2つのフレーム、すなわちリーフレットフレームと外方フレームとを備える。リーフレットフレームはリーフレットウィンドウを画定し、リーフレットウィンドウからリーフレットが延びている。リーフレットは、少なくとも部分的にリーフレット基部及び/又はリーフレット側部を画定するようにオーバーラップ領域を形成するフィルムの交差により画定される。
【0038】
弁
図1Aは、ある実施形態による弁100の側面図である。
図1Bもまた、長手方向軸線Xを中心として60°回転させた
図1Aの弁100の側面図である。
図1Cは、
図1Aの弁100の斜視図である。
図2Aは
図1Aの弁100の側面図であり、概ね管状の弁100の要素をよりわかりやすく図示するために、弁100を長手方向に切り開いている。
図2Bは
図2Aの実施形態の分解組立図である。
図3A、3Bはそれぞれ、開位置及び閉位置にある
図1Aの弁100の軸線方向図である。
図3Bにおいて、リーフレット140は特徴をよりわかりやすく示すために若干開けて描かれているが、完全に閉じた弁100ではリーフレット140のリーフレット自由縁142が下流側流体圧力の影響下で寄り集まって合体して弁を閉じ、下流側の血液が弁を通って逆流するのを防ぐ。
【0039】
弁100は外方フレーム120と、リーフレットフレーム130と、外方フレーム120及びリーフレットフレーム130を覆い且つ外方フレーム120をリーフレットフレーム130に連結し、またリーフレット140を構成しているフィルム160とを備える。弁100の実施形態については、圧縮及び再拡張し得る経カテーテル弁に関連してさらに論じる。弁100の実施形態は、
図4Bに示すように、ソーリングカフ170の追加により外科手術用弁にも応用可能である。弁が固定直径を有する外科手術用弁だけの実施形態に関連するリーフレットフレーム及び外方フレーム構成については、本開示の後半において他の実施形態で論じる。
【0040】
ある実施形態において、人工弁は概ね管状の形状を有するリーフレットフレーム130と、概ね管状の形状を有する外方フレーム120と、フィルム160とを備える。リーフレットフレーム130は少なくとも部分的に外方フレーム120内に同軸で配置される。外方フレーム120は、
図1A~1Bに示すように、リーフレットフレーム130により画定されるリーフレットウィンドウに重なるフレーム要素を提供することでリーフレットウィンドウを構造的に支える。リーフレットフレーム130は複数のリーフレットウィンドウを画定し、フィルム160は各リーフレットウィンドウから延びるリーフレットを画定する。
【0041】
外方フレーム
ある実施形態において、外方フレーム120は概ね管状の部材であり、網目122の概ね開放されたパターンを描いている。経カテーテル実施形態においては、外方フレーム120を異なる直径間で圧縮及び拡張することができる。外方フレーム120は外方フレーム第1端部121aと、外方フレーム第1端部121aの反対側にある外方フレーム第2端部121bとを備える。外方フレーム120は、
図5Aに示すように、外方フレーム外面126aと、外方フレーム外面126aの反対側にある外方フレーム内面126bとを備える。外方フレーム120は、ステントとして当該分野で公知の構造を備え得る。ステントは、解剖学的構造への経皮経カテーテル送達に適した小さい直径を有し得て、また解剖学的構造内へと展開した場合により大きい直径に拡張し得る管状の部材である。様々なデザイン及び材料特性を有するステントが当該分野で周知である。
【0042】
例えば、
図1A~1C、2A~2Bの実施形態に示すように、弁100は、概して1Dに示されるように、大直径時の配置にある場合に概ね菱形を有する網目122を有するステントを形作る外方フレーム120を含む。小直径に圧縮すると、概略的に
図1Eに示すように、網目122は変形して概ね細長い菱形となる。大直径に再拡張すると、網目122は再拡張して再度、概ね菱形となる。
【0043】
図6A、6Bは代替の実施形態である外方フレーム120a、120bの側面図であり、外方フレームの要素をよりわかりやすく図示するために、外方フレームを長手方向に切り開いている。当然のことながら、特定の目的に適した構成を有する数多くの外方フレーム実施形態がある。
【0044】
ステントの開放フレーム構造は繰り返し又は別の形で様々な模様を描き得て、例えば幾何学形状及び/又は一連の直線若しくは曲がりくねる正弦曲線である。幾何学形状は、実質的に均一な円周方向での圧縮及び拡張を円滑にするいずれの形状をも含み得る。外方フレーム120は、カットチューブ又は特定の目的に適した他の要素を備え得る。外方フレーム120をチューブ状又はシート状の材料にエッチング、切断、レーザー切断し又は打ち抜き、次にシートを実質的に円柱状の構造体に形成し得る。あるいは、細長い材料、例えばワイヤ、曲げられる条片又はこれらを繋いだものを曲げたり編んだりして実質的に円柱状の構造体に形成し得て、円柱の壁は、概ね均一に円周方向で小直径まで圧縮可能であり且つ大直径に拡張可能な開放フレーム構造を備える。
【0045】
ばね荷重下で自己拡張できるようにと様々なデザインのステントが弾性的に変形可能になり得ることが公知である。例えばバルーンを使用して機械的に拡張できるように様々なデザインのステントが可塑的に変形可能であることも公知である。弾性的に変形可能であるだけでなく可塑的に変形可能でもある様々なデザインのステントも公知である。本明細書に記載の外方フレーム120の実施形態は、特定のステントデザイン又は拡張モードに限定されない。
【0046】
外方フレーム120は任意の金属又はポリマー生体適合性材料を含み得る。例えば、外方フレーム120は材料、例えば、以下に限定するものではないが、ニチノール、コバルト-ニッケル合金、ステンレススチール、ポリプロピレン、アセチルホモポリマー、アセチルコポリマー、ePTFE、他の合金若しくはポリマー又は本明細書の記載通りに機能させるのに充分な物理的特性及び機械的特性を有する他の生体適合性材料を含み得る。
【0047】
実施形態において、外方フレーム120及び/又はリーフレットフレーム130を、弁100の経カテーテル展開を描いた
図4Aに示すように、植え込み部位と確実係合して弁100をその部位にしっかりと固定するように構成し得る。ある実施形態において、外方フレーム120は、組織開口部150に対して充分に並置が維持されて位置が保たれるように、小さい弾性跳ね返りを有する充分に堅いフレームを備え得る。別の実施形態においては、外方フレーム120及び/又はリーフレットフレーム130を組織開口部150より大きい直径まで拡張するように構成し得て、弁100を組織開口部150内へと拡張させることで弁100を開口部150内にしっかりと据えることができる。別の実施形態において、外方フレーム120は、植え込み部位、例えば組織開口部150に係合して弁を植え込み部位に固定するように構成された1つ以上のアンカー(図示せず)を備え得る。
【0048】
当然のことながら、弁100を植え込み部位に連結するための他の要素又は手段も考えらえる。例えば、以下に限定するものではないが、他の手段、例えば機械的手段及び接着手段を用いて弁100を人工又は生体導管に連結し得る。
【0049】
リーフレットフレーム
図1C、2Bを再度参照するが、ある実施形態において、リーフレットフレーム130は概ね管状の部材であり、フレーム要素139で連結された複数のリーフレットウィンドウ137を画定している。リーフレットフレーム130は、リーフレットフレーム第1端部138aと、リーフレットフレーム第1端部138aの反対側にあるリーフレットフレーム第2端部138bとを備える。
図5A及び
図3Aで示すように、リーフレットフレーム130は、リーフレットフレーム外面132aと、リーフレットフレーム外面132aの反対側にあるリーフレットフレーム内面132bとを備える。リーフレットフレーム第1端部138a及びリーフレットフレーム第2端部138bは概ねジグザグを描くため曲げ点136を中心とした曲げが円滑なものとなり、外方フレーム120に関しておおまかに説明したように、経カテーテル弁100実施形態の場合の送達装置上への圧縮時及びバルーンによる拡張時の異なる直径間での圧縮及び拡張が円滑なものとなる。後述するように、外科手術用弁100実施形態はジグザグ構成を有し得る又は有し得ない。これは外科手術用弁100が固定直径のものになり得て、圧縮及び再拡張が不要だからである。
【0050】
リーフレットフレーム130を、一般的な意味でステント又はフレームと称する場合もある。本明細書で使用の用語「フレーム要素」139とはリーフレットフレーム130又は外方フレーム120の任意の部位のことであり、例えば、以下に限定するものではないが、リーフレットウィンドウ137又は網目122を画定する個々の部位である。
【0051】
リーフレットフレーム130は、ある実施形態において、
図2Bに示すような既定の繰り返しパターンを描いている。リーフレットフレーム130は実質的に三角形である3つの相互接続されたリーフレットウィンドウ137を画定する。各リーフレットウィンドウ137は、ポスト131を含めた2つのリーフレットウィンドウ側部133と、リーフレットウィンドウ基部134と、リーフレットウィンドウ上部135とを含む。この実施形態において、リーフレットウィンドウ基部134は、後述する曲げ点136を構成する。1つのリーフレットウィンドウ137のリーフレットウィンドウ側部133及びリーフレットウィンドウ上部135は隣接するリーフレットウィンドウ137のリーフレットウィンドウ側部133とポスト131で相互接続されている。
【0052】
リーフレットフレーム130は、実質的に均一な円周方向での圧縮及び拡張を円滑にする様々な模様及び幾何学形状を描き得る。リーフレットフレーム130は、カットチューブ又は特定の目的に適した他の要素を備え得る。リーフレットフレーム130を、チューブ状又はシート状の材料にエッチング、切断、レーザー切断し又は打ち抜き、次にシートを実質的に円柱状の構造体に形成し得る。あるいは、細長い材料、例えばワイヤ、曲げられる条片又はこれらを繋いだものを曲げたり編んだりして実質的に円柱状の構造体に形成し得て、円柱の壁は、概ね均一に円周方向で小直径まで圧縮可能であり且つ大直径に拡張可能な開放フレーム構造を備える。
【0053】
リーフレットフレーム130は、任意の金属又はポリマー生体適合性材料を含み得る。例えば、リーフレットフレーム130はある材料、例えば、以下に限定するものではないが、ニチノール、コバルト-ニッケル合金、ステンレススチール、ポリプロピレン、アセチルホモポリマー、アセチルコポリマー、ePTFE、他の合金若しくはポリマー又は本明細書の記載通りに機能させるのに充分な物理的特性及び機械的特性を有する他の生体適合性材料を含み得る。
【0054】
より詳細に後述するように、フィルム160を3つのリーフレットウィンドウ137のそれぞれの上に配置してリーフレット140を形成する。リーフレットウィンドウ137が外科手術用及び経カテーテル弁100の実施形態の特定の目的に適した放物形、台形を含むがこれらに限定されずリーフレットウィンドウ上部135を伴う又は伴わない実質的な三角形以外の形状をとるさらなる実施形態については後述する。
【0055】
図7A、7Bは代替の実施形態であるリーフレットフレーム130a、130bの側面図であり、リーフレットフレームの要素をよりわかりやすく図示するために、リーフレットフレームを長手方向に切り開いている。リーフレットフレーム130aは、先のとがったリーフレットウィンドウ基部134aを構成する実質的に三角形のリーフレットウィンドウ137aを含む。リーフレットフレーム130bは、平坦なリーフレットウィンドウ基部134bを構成する実質的に三角形のリーフレットウィンドウ137bを含む。この平坦なリーフレットウィンドウ基部134bを用いてリーフレット基部を画定し得る。
【0056】
図8A~8Cは代替の実施形態であるリーフレットフレーム130c~130eの側面図であり、リーフレットフレームの要素をよりわかりやすく図示するためにリーフレットフレームを長手方向に切り開いている。リーフレットフレーム130cは、先のとがったリーフレットウィンドウ基部134cを構成する実質的に三角形のリーフレットウィンドウ137cを含む。リーフレットフレーム130dは、丸みのあるリーフレットウィンドウ基部134dを構成する実質的に放物形のリーフレットウィンドウ137dを含む。平坦なリーフレットウィンドウ基部134bを用いてリーフレット基部を画定し得る。リーフレットフレーム130eは、先のとがったリーフレットウィンドウ基部134eを構成するがリーフレットウィンドウ上部を有さない実質的に三角形のリーフレットウィンドウ137eを含む。
【0057】
図8Dは代替の実施形態であるリーフレットフレーム130fの側面図であり、
図11A、11Bの弁100として実質的に示される弁のリーフレットフレーム130fの要素をよりわかりやすく図示するためにリーフレットフレーム130fを長手方向に切り開いている。リーフレット140fがリーフレットウィンドウ137fのどこに位置するかが点線で表されており、リーフレットウィンドウ137fはリーフレットウィンドウ側部133f及びウィンドウ基部134fにより画定される。2つのリーフレット側部141fはリーフレット基部143fから分岐しており、リーフレット基部143fは実質的に平坦であり、
図8Dに破線で示すように、リーフレット自由縁142fがリーフレット基部143fの反対側にある。リーフレットフレーム130fはさらにポスト1121を構成しており、このポスト1121からリーフレット自由縁142fが延びている。
【0058】
図8Eは代替の実施形態であるリーフレットフレーム130gの側面図であり、リーフレットフレーム130gの要素をよりわかりやすく図示するためにリーフレットフレーム130gを長手方向に切り開いている。リーフレット140gがリーフレットウィンドウ137gのどこに位置するかが点線で表されており、リーフレットウィンドウ137gはリーフレットウィンドウ側部133g及びウィンドウ基部134gで画定される。2つのリーフレット側部141gはリーフレット基部143gから分岐しており、リーフレット基部143gは実質的に平坦であり、
図8Eに破線で示すように、リーフレット自由縁142gがリーフレット基部143gの反対側にある。リーフレットフレーム130gは複数の二等辺三角形を画定する複数のリーフレットフレーム要素を備え、複数の二等辺三角形は、二等辺四辺形を描くリーフレットウィンドウ137gを構成しているリーフレットウィンドウ基部134gで相互接続される。各リーフレットウィンドウ側部133gは1つの三角形の一辺及び隣接する三角形の一辺により画定される。
【0059】
上述したように、リーフレットウィンドウ基部を用いて、実施形態にしたがったリーフレット基部を画定し得る。同じく上述したように、リーフレット基部を、
図1A、1Bで示すように、また
図2Bの破線で示すように、リーフレットウィンドウ基部134から離れた折り畳み領域におけるフィルム160の折り畳み線146による仮想リーフレット基部143aと定義し得る。当然のことながら、特定の目的に適した構成を有する数多くの外方フレーム実施形態がある。
【0060】
経カテーテル弁100実施形態において、リーフレットフレーム130は、経皮経カテーテル装填及び送達ができる比較的小さい直径を得るために弾性的に、可塑的に又はその両方で圧縮可能である。
図2Bの実施形態において、リーフレットフレーム130は、小直径まで圧縮した場合にリーフレットフレーム130が曲がるための優先的曲げ部位となるように1つ以上の曲げ点136を備え得る。曲げ点136は、拡張状態から折り畳み状態及びその逆に移行する際に曲げ度が最大となるリーフレットフレーム130上の部位を含む。曲げ点136は、圧縮時にリーフレットフレーム130を付勢して曲げ点136で曲げる、とりわけ幾何学的、構造的変化又は材料変化を備え得る。
【0061】
リーフレットフレーム130は、例えば、以下に限定するものではないが、実施形態にしたがって、任意の弾性的に変形可能な金属又はポリマー生体適合性材料を含み得る。リーフレットフレーム130は形状記憶材料、例えばニチノール、ニッケル-チタン合金を含み得る。リーフレットフレーム130に適した他の材料には、以下に限定するものではないが、他のチタン合金、ステンレスチール、コバルト-ニッケル合金、ポリプロピレン、アセチルホモポリマー、アセチルコポリマー、他の合金若しくはポリマー又は本明細書の記載通りにリーフレットフレーム130として機能させるのに充分な物理的特性及び機械的特性を有する他の生体適合性材料が含まれる。
【0062】
ある実施形態において、リーフレットフレーム130及び外方フレーム120は、荷重下で曲がり、その荷重が取り除かれるとその最初の形状を保つ形状記憶材料を含むため、リーフレットフレーム130及び外方フレーム120は圧縮形状から既定の形状へと自己拡張できる。リーフレットフレーム130及び外方フレーム120は同一又は異なる材料を含み得る。ある実施形態において、リーフレットフレーム130及び外方フレーム120は可塑的に変形可能であり、バルーンで拡張する。別の実施形態において、外方フレーム120及びリーフレットフレーム130は自己拡張性となるように弾性的に変形可能である。
【0063】
フィルム
フィルム160は概して、実施形態に応じて生体適合性であり且つ外方フレーム120及びリーフレットフレーム130に連結するように構成された任意のシート様材料である。用語「フィルム」は、特定の目的に適した1種以上の生体適合性材料について総称的に使用されると理解される。リーフレット140はまた、フィルム160を備える。
【0064】
ある実施形態において、生体適合性材料は、生物由来ではなく特定の目的のために充分に可撓性であり且つ強靭なフィルム160、例えば生体適合性ポリマーである。ある実施形態において、フィルム160は、エラストマーと組み合わせた生体適合性ポリマーを含み、複合材と称される。
【0065】
実施形態に応じて、外方フレーム120に連結されるフィルム160がリーフレットフレーム130に連結するものと同じフィルム160ではない場合もあることもわかる。様々なタイプのフィルム160の詳細を後述する。ある実施形態において、フィルム160は概ね管状の材料から形成し得て、少なくとも部分的に外方フレーム120及びリーフレットフレーム130を覆う。フィルム160は膜、複合材料又は積層体の1つ以上を含み得る。様々なタイプのフィルム160の詳細については後述する。
【0066】
リーフレット
各リーフレットウィンドウ137には生体適合性材料、例えばフィルム160が取り付けられ、フィルム160はリーフレットウィンドウ側部133の一部に連結され、フィルム160はリーフレット140を構成している。ある実施形態において、各リーフレット140はリーフレット自由縁142及びリーフレット基部143を構成する。後述するように、複数の実施形態のリーフレット基部構成を用意し得ると考えられる。ある実施形態においては、フィルム160をリーフレットウィンドウ側部133の一部及びリーフレットウィンドウ基部134に連結し、リーフレット140はリーフレットウィンドウ側部133のその一部及びリーフレットウィンドウ基部134により画定される。別の実施形態においては、フィルム160をリーフレットウィンドウ側部133の一部に連結するが、リーフレットフレーム130のリーフレットウィンドウ基部134には連結せず、リーフレット140はリーフレットウィンドウ側部133のその一部及び後述する折り畳み領域により規定される仮想リーフレット基部143aにより画定される。
【0067】
リーフレット140の形状は部分的に、リーフレットウィンドウ137の形状及びリーフレット自由縁142により定められる。ある実施形態において後述するように、リーフレット140の形状は部分的に、後述するような仮想リーフレット基部143aを構成する折り畳み線145での折り畳みを引き起こしてリーフレット140を既定の形状にするプロセスにも左右される。リーフレット基部には高い曲げ応力がかかることから、リーフレットウィンドウ基部134により拘束されない仮想リーフレット基部143aを規定することで、リーフレット基部143とリーフレットウィンドウ基部134との界面でリーフレット140が裂ける見込みが大きく低下し得る。また、丸みのあるリーフレット基部と比較して、リーフレット基部143での血液の貯留及び停滞を軽減し得る。
【0068】
ある実施形態においては、
図3Aに示すように、実質的にリーフレットフレーム130全体が外方フレーム内面126bに隣接する。そのため、リーフレット140が完全に開いた位置にある時、弁100は
図3Aに示すように実質的に円形の弁開口部102を見せる。リーフレット140が開位置にある時、流体は弁開口部102を通って流れることができる。
【0069】
リーフレット140が開位置と閉位置との間で切り替わるため、リーフレット140は概してリーフレット基部143付近及びリーフレットウィンドウ側部133のリーフレットが連結している部分で曲がる。弁100が閉じると、
図3Bに示すように、概ね各リーフレット自由縁142の約半分が隣接するリーフレット140のリーフレット自由縁142の隣接する半分と境を接する。
図3Bの実施形態の3枚のリーフレット140は三重地点148で交わる。リーフレット140が閉位置にある時、弁開口部102は塞がれ、流体の流れを停止させる。
【0070】
図3Bを参照するが、ある実施形態において、各リーフレット140は、中心領域182と、中心領域182の両側にある2つの側方領域184とを含む。2つの中心領域側部183はリーフレット基部143からリーフレット自由縁142に向かって集束する。各側方領域184は実質的に三角形の形状を有し、各側方領域は中心領域側部183の一方、リーフレット側部141の一方及びリーフレット自由縁142により画定される。
【0071】
リーフレット140を、例えば心臓の心室又は心房の収縮により引き起こされる血液の差圧で作動するように構成し得て、そのような差圧は典型的には閉じた時に弁100の片側で流体圧力が上昇することで生じる。弁100の流入側の圧力が弁100の流出側の圧力より高くなるとリーフレット140が開いて血液が弁を流れる。血液が弁100を通って隣接する心腔又は血管に流れ込むと圧力が等しくなる。弁100の流出側の圧力が弁100の流入側の血圧より高くなると、リーフレット140は閉位置に戻り、概して弁100の流入側を通って血液が逆流するのを防ぐ。
【0072】
実施形態に応じてリーフレットフレーム130が特定の目的に適したいずれの数のリーフレットウィンドウ137ひいてはリーフレット140も備え得ることがわかる。1、2、3又はそれより多いリーフレットウィンドウ137及び対応するリーフレット140を備えるリーフレットフレーム130が考えられる。
【0073】
弁フィルム
図2Aの実施形態を広げた
図2Bの分解組立図に示すように、外方フレーム120は、リーフレットフレーム130と実質的に同一平面上に横方向に間隔をあけて隣接している。リーフレットウィンドウ137のリーフレットウィンドウ基部134は外方フレーム120の外方フレーム第1端部121aに近接して位置し、リーフレットフレーム130のリーフレットフレーム第1端部138aは外方フレーム120から離れる方向に延びる。後述するように、この配置は弁100の製造でも用いられる。この配置において、フィルム160は外方フレーム120及びリーフレットフレーム130の一部に連結され、フィルム160は外方フレーム120をリーフレットフレーム130に連結している。
【0074】
外方フレーム120とリーフレットフレーム130との間の空間に広がるフィルム160は少なくとも部分的に、
図2Bにおいて破線で示される折り畳み領域144を構成する。後述するように、ある実施形態において、折り畳み領域144はリーフレットフレーム130が入れ子式に外方フレーム120内に配置されるように設けられ、外方フレーム120は、弁100の製造方法のある実施形態において、リーフレットフレーム130の外径より大きい内径を有するため、概ね円周方向の線146に沿った折り畳み領域144内に折り畳み部が形成される。
【0075】
実施形態に応じて、フィルム160を、特定の目的に適した数多くのやり方でリーフレットフレーム130及び外方フレーム120に連結し得ると考えられる。ある実施形態においては、外方フレーム120を、第1組成を有するフィルム160のオーバーラップ層で包み得る。リーフレットフレーム130を、第2組成を有するフィルム160のオーバーラップ層で包み得る。包まれたリーフレットフレーム130、包まれた外方フレーム120及び外方フレーム120とリーフレットフレーム130との間の空間を、少なくとも部分的に折り畳み領域144を構成する第3組成を有するフィルム160のオーバーラップ層で包み得る。
【0076】
別の実施形態においては、フィルム160を、リーフレットフレーム130及び外方フレーム120の内面又は外面に連結し得る。別の実施形態においては、フィルム160をリーフレットフレーム130及び外方フレーム120の内面及び外面に連結してリーフレットフレーム130及び外方フレーム120をフィルム160の間に挟み得る。後述するように、
図3A、5A~5Bに示すように、フィルム160を少なくともリーフレットフレーム外面132a及び外方フレーム内面126bに連結することでリーフレット140をさらに支えてリーフレット140がリーフレットフレーム130から外れないようにし得る。これはフィルム160の一部が、
図5Bに示すように、リーフレットフレーム130と外方フレーム120との間に収容されるからである。
【0077】
フィルム160がどこに存在していても、フィルム160は、血液が、リーフレット140が開位置にある時の弁開口部102及びリーフレットフレーム130又は外方フレーム120の非被覆部以外を通って弁100を通って又は超えて流れることを防ぐ。このため、フィルム160は、フィルム160が覆う外方フレーム120及びリーフレットフレーム130の格子目又は網目122並びに外方フレーム120とリーフレットフレーム130との間で血流に対するバリアを形成する。
【0078】
フィルム160は、外方フレーム120及びリーフレットフレーム130の内面又は外面の1つ又は複数の場所で、例えばテーピング、熱収縮、接着及び当該分野で公知の他の方法の1つ以上を用いてしっかりと固定される又は別の形で連結される。幾つかの実施形態においては、複数の膜/複合材層、すなわち積層体を使用し、また外方フレーム120及びリーフレットフレーム130の内面及び外面の両方に連結することでフィルム160の少なくとも一部を形成し得る。
【0079】
フィルム160は、本明細書に記載の機能を果たすのに適した物理的及び機械的特性を有する任意の材料を含む。フィルム160は、上述したように、リーフレット140が含むものと同じ材料を又は異なる材料を含み得る。同様に、フィルム160の材料組成は均質又は非均質になり得る。フィルム160の異なる部位は、異なる物理的及び機械的特性をフィルム160に付与し得る異なる材料を含み得る。
【0080】
共に要素を断面で示している
図5A、5Bに示すように、リーフレットフレーム130は、複数のリーフレットウィンドウ(図示せず)を画定する概ね管状の形状を有する。外方フレーム120は、概ね管状の形状を有する。リーフレットフレーム130は少なくとも部分的に外方フレーム120内に同軸で配置される。リーフレットフレーム130及び外方フレーム120は少なくとも部分的に、フィルム160の隣接部により連結される。フィルム160の隣接部の少なくとも一部はリーフレットフレーム130と外方フレーム120との間に収容され、またその間で互いに動かないようにリーフレットフレーム130を外方フレーム120に連結している。フィルムは、各リーフレットウィンドウから延びるリーフレット140を構成する。リーフレット基部143は、フィルム160の折り畳み線145で規定される。ある実施形態においては、リーフレットフレーム130と外方フレーム120との間に収容され且つこれらを連結しているフィルム160の隣接部の少なくとも一部が、リーフレットフレーム130と外方フレーム120との接触を防止する。
【0081】
上述したように、弁100の製造方法のある実施形態において、リーフレットフレーム130は入れ子式で外方フレーム120内に配置されるため、
図5A、5Bに示すように、フィルム160が折り畳み領域144で折り畳まれる。したがって、リーフレットフレーム130は、外方フレーム120と同軸のまま外方フレーム120内に嵌め込まれる。このアセンブリをさらに加工することで、折り畳み領域144をそれ自身並びに包まれたリーフレットフレーム130及び外方フレーム120に連結し、その一方でリーフレット140を構成するフィルム160がリーフレット機能を妨げる可能性のある弁100の意図せぬ部位に付着するのを防止する。
【0082】
別の実施形態において、リーフレットフレーム130及び外方フレーム120の網目を画定しているフレーム部材を、アセンブリに構造的剛性が付与されるように、好ましくは重なり合う相補的な配置になるように揃える。
【0083】
経カテーテル弁100のある実施形態において、
図1D~1Eを参照するが、弁100を、小直径を有する折り畳み時の配置に圧縮し得る。また、拡張時の配置に拡張し得る。このため、弁100を、
図4Aに示すように、折り畳み時の配置で血管を通して送達し、組織開口部150内での展開時に拡張することができる。リーフレットフレーム130及び外方フレーム120は、折り畳み時の配置から拡張時の配置に移行する際に円周方向での均一性を取り戻すことができる。
【0084】
弁100は、特定の目的に適した送達カテーテルに装填し得る。折り畳み時の配置における弁100の直径は部分的に、外方フレーム120内のリーフレットフレーム130の厚さ及びリーフレットの厚さにより決定される。
【0085】
リーフレットフィルム
リーフレット140を形成する生体適合性材料は、任意の生物組織又は充分にコンプライアンスを順守し且つ可撓性の合成生体適合性材料、例えば生体適合性ポリマーを含み得る。ある実施形態において、リーフレット140は、エラストマーと組み合わせた複合材と称される生体適合性ポリマーを含む。一実施形態における材料は、延伸フルオロポリマー膜(微小繊維のマトリックス内に複数の空間を備える)とエラストマー材料とを含む複合材料を含む。当然のことながら、本開示の範囲内に留まりつつ複数のタイプのフルオロポリマー膜及び複数のタイプのエラストマー材料を組み合わせて積層体を形成し得る。また、当然のことながら、エラストマー材料は、本開示の範囲内に留まりつつ複数種のエラストマー、複数のタイプの非エラストマー成分、例えば無機フィラー、治療薬、放射線不透過性マーカー及び同様のものを含み得る。
【0086】
ある実施形態において、複合材料は、例えば全般的にBacinoの米国特許第7306729号明細書に記載の多孔質ePTFE膜から形成される延伸フルオロポリマー材料を含む。
【0087】
記載の延伸フルオロポリマー材料の生成に使用する延伸性フルオロポリマーは、PTFEホモポリマーを含み得る。代替の実施形態においては、PTFEのブレンド物、延伸性変性PTFE及び/又はPTFEの延伸コポリマーを使用し得る。適切なフルオロポリマー材料の非限定的な例は、例えばBrancaの米国特許第5708044号明細書、Baillieの米国特許第6541589号明細書、Sabolらの米国特許第7531611号明細書、Fordの米国特許出願第11/906877号及びXuらの米国特許出願第12/410050号明細書に記載されている。
【0088】
延伸フルオロポリマー膜は、所望のリーフレット性能を得るのに適した任意のミクロ構造を備え得る。ある実施形態において、延伸フルオロポリマーは、例えばGoreの米国特許第3953566号明細書に記載の、微小繊維で相互接続された結節点のミクロ構造を備える。微小繊維は結節点から複数の方向に放射状に延び、膜は概ね均質な構造を有する。このミクロ構造を有する膜は典型的には、2つの直交する方向で2未満、おそらくは1.5未満のマトリックス引張強度比を呈し得る。
【0089】
別の実施形態において、延伸フルオロポリマー膜は、Bacinoの米国特許第7306729号明細書で全般的に教示されるように、実質的に微小繊維だけのミクロ構造を有する。実質的に微小繊維だけを有する延伸フルオロポリマー膜は広い表面積、例えば20m2/gより広い又は25m2/gより広い表面積を有し得て、幾つかの実施形態においては少なくとも1.5x105MPa2である2つの直交する方向でのマトリックス引張強度の積及び/又は4未満、おそらくは1.5未満の2つの直交する方向でのマトリックス引張強度比を有する強度のバランスが非常に良い材料が得られる。
【0090】
延伸フルオロポリマー膜を、所望のリーフレット性能が得られる適切な厚さ及び質量を有するように形成し得る。例えば、以下に限定するものではないが、リーフレット140は、厚さ約0.1μmを有する延伸フルオロポリマー膜を備える。延伸フルオロポリマー膜は約1.15g/m2の単位面積あたり質量を有し得る。本発明のある実施形態による膜は、長手方向に約411MPa、横断方向に315MPaのマトリックス引張強度を有し得る。
【0091】
追加の材料を細孔に又は膜の材料内に又は膜層間に組み込むことでリーフレットの所望の特性を強化し得る。本明細書に記載の複合材料を、所望のリーフレット性能が得られる適切な厚さ及び質量を有するように調製し得る。実施形態における複合材料はフルオロポリマー膜を含み得て、また約1.9μmの厚さ及び約4.1g/m2の単位面積あたり質量を有し得る。
【0092】
エラストマーと組み合わされて複合材料を形成する延伸フルオロポリマー膜により、高サイクルで屈曲させる植え込み型用途、例えば心臓弁リーフレットでの様々な形での使用に必要な性能属性を備えた本開示の要素が得られる。例えば、エラストマーを添加することで、ePTFEだけの材料で観察される剛化を排除又は軽減してリーフレットの耐疲労性能を改善し得る。加えて、材料が、性能の低下に至る可能性がある永久変形、例えば縮緬じわ又は折りじわをおこす傾向を低下させ得る。一実施形態において、エラストマーは、延伸フルオロポリマー膜の多孔質構造内の細孔容積又は空間の実質的に全てを占める。別の実施形態において、エラストマーは、少なくとも1つのフルオロポリマー層の細孔の実質的に全てに存在する。細孔容積をエラストマーで満たす又は実質的に全ての細孔にエラストマーを存在させることで、複合材への異物の望ましくない混入が起き得る空間が減少する。そのような異物の例は、血液との接触により膜中に引き込まれ得るカルシウムである。心臓弁リーフレットに使用した複合材料にカルシウムが取り込まれると、例えば、開閉サイクル中に機械的損傷が起き得て、リーフレットにおける孔の形成及び血行力学の悪化につながる。
【0093】
ある実施形態において、ePTFEと組み合わせるエラストマーは、Changらの米国特許第7462675号明細書に記載されているような、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)との熱可塑性コポリマーである。上述したように、エラストマーが延伸フルオロポリマー膜内の空所又は細孔の実質的に全てを占めて複合材料を形成するようにエラストマーを延伸フルオロポリマー膜と組み合わせる。延伸フルオロポリマー膜の細孔のエラストマーでのこの充填は、様々な方法で行い得る。一実施形態において、延伸フルオロポリマー膜の細孔の充填方法は、延伸フルオロポリマー膜の細孔に部分的に又は完全に流れ込ませるのに適当な粘度及び表面張力を有する溶液を調製するのに適した溶媒にエラストマーを溶解させ、溶媒を蒸発させてフィラーを残すステップを含む。
【0094】
一実施形態において、複合材料は、3つの層、すなわちePTFEの2つの外層とその間に配置されたフルオロエラストマーの内層とを備える。追加のフルオロエラストマーが適切な場合もあり、Changの米国特許出願公開第2004/0024448号明細書に記載されている。
【0095】
別の実施形態において、延伸フルオロポリマー膜の細孔の充填方法は、フィラーを分散液を介して送達することで延伸フルオロポリマー膜の細孔を部分的に又は完全に充填するステップを含む。
【0096】
別の実施形態において、延伸フルオロポリマー膜の細孔の充填方法は、多孔質延伸フルオロポリマー膜をエラストマーのシートと、エラストマーが延伸フルオロポリマー膜の細孔に流れ込む熱及び/又は圧力条件下で接触させるステップを含む。
【0097】
別の実施形態において、延伸フルオロポリマー膜の細孔の充填方法は、まず細孔にエラストマーのプレポリマーを充填し、次に少なくとも部分的にエラストマーを硬化させることで延伸フルオロポリマー膜の細孔内でエラストマーを重合するステップを含む。
【0098】
フルオロポリマー材料又はePTFEから構成されるリーフレットは概して、エラストマーの最低重量%に達してからはエラストマーの割合が高くなるにつれて性能が向上し、その結果としてサイクル寿命が有意に延びた。一実施形態において、ePTFEと組み合わせるエラストマーは、Changらの米国特許第7462675号明細書及び当業者に公知であろう他の文献に記載されているようなテトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとの熱可塑性コポリマーである。リーフレット140での使用に適し得る他の生体適合性ポリマーには、以下に限定するものではないが、ウレタン、シリコーン(オルガノポリシロキサン)、シリコン-ウレタンのコポリマー、スチレン/イソブチレンコポリマー、ポリイソブチレン、ポリエチレン-コ-ポリ(ビニルアセテート)、ポリエステルコポリマー、ナイロンコポリマー、フッ素化炭化水素ポリマー並びにこれらそれぞれのコポリマー又は混合物の群が含まれる。
【0099】
他の考慮事項
図10A、10Bはそれぞれ、別の実施形態による、機械的係合部材1110で連結された概ね管状のリーフレットフレーム1130と、概ね管状の外方フレーム1120とを備える人工弁1000の側方分解組立図及び組立図である。リーフレットフレーム1130は外方フレーム1120に係合して連結に影響する係合部材1110を備え、リーフレットフレーム1130は外方フレーム1120内へと入れ子式で嵌め込まれる。リーフレットフレーム1130は複数のリーフレットウィンドウ137を画定し、フィルムは各リーフレットウィンドウ137から延びるリーフレットを画定する。
【0100】
ある実施形態においては、弁100を、植え込み時に左心室の脚を覆わないことで、大動脈弁置換術で起きるような心臓刺激伝導系への干渉を防止するように構成し得る。例えば、弁100は、約25mm未満又は約18mm未満の長さを有し得る。弁100はまた1未満のアスペクト比を有し得て、この比は弁100の長さと拡張時の機能時直径との関係を表す。しかしながら、弁100は、いずれの長さ、より広い意味ではいずれの所望の寸法でも構築し得る。
【0101】
経カテーテル実施形態では、折り畳んだ状態で、弁100は、拡張時輪郭の約35%未満の折り畳み時輪郭を有し得る。例えば、拡張時の直径が26mmの弁100の折り畳み時の直径は約8mm未満又は約6mm未満になり得る。直径におけるこのパーセント差は、弁100の寸法及び材料並びにその様々な用途に左右され、したがって実際のパーセント差はこの開示に限定されない。
【0102】
弁100は生物活性剤をさらに含み得る。弁100を一旦植え込んだ後に薬剤を徐放させるために、生物活性剤をフィルム160の一部又は全体にコーティングし得る。生物活性剤は、以下に限定するものではないが、血管拡張薬、抗凝固薬、抗血小板薬、抗血栓薬、例えば、以下に限定するものではないが、ヘパリンを含み得る。他の生物活性剤には以下の剤も含まれるがこれらに限定はされず、例えば、天然物、例えばビンカアルカロイド(すなわち、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン)、パクリタキセル、エピジポドフィロトキシン(すなわち、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びマイトマイシン、酵素(L-アスパラギンを全身的に代謝し、自らアスパラギンを合成することができない細胞を栄養欠乏状態にするL-アスパラギナーゼ)を含めた抗増殖/抗有糸分裂薬:抗血小板薬、例えばG(GP)IIb/IIIa阻害薬及びビトロネクチン受容体アンタゴニスト;抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド及び類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、スルホン酸アルキル-ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)及び類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン(trazene)-デカルバアジニン(decarbazinine)(DTIC);抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗薬、例えば葉酸類似体(メトトレキサート)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロクスウリジン及びシタラビン)、プリン類似体及び関連阻害薬(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2-クロロデオキシアデノシン{クラドリビン});白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン(すなわち、エストロゲン);抗凝固薬(ヘパリン、合成ヘパリン塩及び他のトロンビン阻害薬);線維素溶解薬(例えば、組織プラスミノゲンアクチベータ、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走薬;抗分泌薬(ブレベルジン(breveldin));抗消炎薬:例えば副腎皮質ステロイド(コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6α-メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン及びデキサメタゾン)、非ステロイド薬(サリチル酸誘導体、すなわちアスピリン;パラ-アミノフェノール誘導体、すなわちアセトアミノフェン;インドール及びインデン酢酸(インドメタシン、スリンダク及びエトダラク(etodalac))、ヘテロアリール酢酸(トルメチン、ジクロフェナク及びケトロラク)、アリールプロピオン酸(イブプロフェン及び誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸及びメクロフェナム酸)、エノール酸(enolic acid)(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン及びオキシフェンタトラゾン(oxyphenthatrazone)、ナブメトン、金化合物(オーラノフィン、オーロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム);免疫抑制薬:(シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);血管新生薬:血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF);アンジオテンシン受容体遮断薬;一酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド及びこれらの組み合わせ;細胞周期阻害薬、mTOR阻害薬及び増殖因子受容体シグナル伝達キナーゼ阻害薬;レテノイド(retenoid);サイクリン/CDK阻害薬;HMGコエンザイムリダクターゼ阻害薬(スタチン)並びにプロテアーゼ阻害剤である。
【0103】
経カテーテル送達システム
ある実施形態においては、
図4Aを参照するが、弁送達システム500は、上述したような折り畳み時の配置及び拡張時の配置を有する弁100と、血管内アクセスで弁100を展開するように構成された細長い可撓性のカテーテル480、例えばバルーンカテーテルとを備える。カテーテル480は、弁100を拡張する及び/又は必要に応じて正しく着座するように弁100を修正するためのバルーンを含み得る。脈管構造を通して送達するために、弁100をカテーテル480の遠位部に取り付け得る。折り畳み時の配置にある弁をカテーテル480上に保持するために、弁送達システムは、経カテーテル弁100上にぴったりフィットする着脱式シース(図示せず)をさらに備え得る。
【0104】
送達方法は、近位端及び遠位端を有する細長い可撓性カテーテルの遠位端上へと弁をその折り畳み時の配置に半径方向に圧縮し、弁を組織開口部、例えば天然大動脈弁開口部まで経大腿動脈又は経心尖ルートで送達し、弁を組織開口部内へと拡張するステップを含み得る。弁はバルーンを膨らませることで拡張し得る。
【0105】
送達方法は、近位端及び遠位端を有する細長い可撓性カテーテルの遠位部上へと弁をその折り畳み時の配置に半径方向に圧縮するステップを含み得る。弁の開口部及びカテーテルのルーメンを通るテザーに接続し得る拘束具を弁のポスト付近に取り付ける。次に、弁を天然弁開口部、例えば天然大動脈弁開口部へと、天然開口部への送達及び拡張ルートを経由して送達する。送達ルートは、経大腿動脈又は経心尖ルートを含み得る。弁はバルーンを膨らませることで拡張し得る。
【0106】
製造方法
本明細書に記載の実施形態は、本明細書に記載の弁100実施形態の製造方法にも関する。様々な実施形態を製造するために、円柱状マンドレル710を使用し得る。
図9Aを参照するが、マンドレル710は、リーフレットフレーム130及び外方フレーム120をその上に受け入れることができる構造形態を備える。
【0107】
図9A、9Bを参照するが、弁100の製造方法のある実施形態は、フィルム160の第1層、例えば本明細書に記載されるような複合材をマンドレル710の周りに管状に巻き;リーフレットフレーム130及び外方フレーム120を
図9Aに示すようにフィルム160の第1層上に置き;フィルム160の第2層をリーフレットフレーム130及び外方フレーム120上で形成し;アセンブリを熱硬化させ;リーフレットウィンドウ137内でリーフレットウィンドウ上部を横にフィルム160を切断し、離型材170でリーフレット140を構成しているリーフレットウィンドウのフィルム160の一部をマスクすることで続く加工ステップ中にリーフレット140がさらに結合するのを防止し;フィルム160の第2層をリーフレットフレーム130、外方フレーム120及びフィルム160の第1層上で管状に巻き;アセンブリを熱硬化させ、アセンブリをマンドレルから外し、リーフレットフレームを外方フレームに入れ子式で挿入し;アセンブリをマンドレル上に戻し;アセンブリを熱硬化させることでリーフレットフレーム130を外方フレーム120に嵌め込み係合で連結するステップを含む。
【0108】
図12を参照するが、マンドレル710は、リーフレットフレーム130をその上に受け入れることができる構造形態を備える。弁100の製造方法のある実施形態は、フィルム160の第1層、例えば本明細書に記載されるような複合材をマンドレル710の周りに管状に巻き;リーフレットフレーム130を
図12に示すようにフィルム160の第1層上に置き;フィルム160の第2層をリーフレットフレーム130上で形成し;アセンブリを熱硬化させ;
図13A、13Bに示すようにアセンブリを切断マンドレル712上で受け止め;リーフレットウィンドウ137内でリーフレットウィンドウ上部を横にフィルム160を切断すると
図11A、11Bの弁100が得られるステップを含む。
図11A、11Bでは、切断マンドレル712上の若干開いた状態のリーフレット140を描いている。完全に閉じた弁100では下流側の流体圧力の影響下でリーフレット140のリーフレット自由縁142が寄り集まって合体し、その結果、弁が閉じて下流側の血液が弁を通って逆流するのを防ぐことがわかる。
【実施例】
【0109】
実施例1
延伸フルオロポリマー膜及びエラストマー材料を有する複合材料から形成され、2つの折り畳み可能な金属フレーム間に接合されたポリマーリーフレットを有する心臓弁を製造した。
【0110】
リーフレットフレーム及び外方フレームを、外径23.0mm、肉厚0.65mm、
図9Aに実例としておおまかに示した形状のある長さの硬質焼入れSS316LVMチューブからレーザー加工した。リーフレットフレーム130及び外方フレーム120を電解研磨すると、各面から0.0127mmの材料が除去され、縁が丸くなった。
【0111】
次に、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)粉末(Daikin America、オレンジバーグ、ニューヨーク州)をリーフレットフレーム130及び外方フレーム120に塗布した。より具体的には、密閉混合装置、例えば標準的なキッチンタイプのブレンダでFEP粉末を撹拌して浮遊「雲状物」を作り出し、フレームをこの雲状物中に吊り下げた。均一な粉末層がフレームの全面に付着するまでフレームをFEP粉末の雲状物に曝露した。次に、320℃に設定した強制通風炉(forced air oven)内に約3分置くことで、フレームを熱処理に供した。これにより粉末は溶融し、フレーム全体に薄いコーティングとして付着する。フレームを炉から取り出し、室温まで冷却した。
【0112】
初期アセンブリ及び熱処理サイクル
リーフレットフレーム130及び外方フレーム120の内径に対応する直径を有する、直径21mmの通気孔のついた円柱状の金属製マンドレルに焼結ePTFEファイバを螺旋状に巻き付けた。タイプ1(ASTM D3368)FEPの薄いフィルムを、溶融押出及び延伸を用いて作製した。タイプ1(ASTM D3368)FEPフィルムは厚さ約40μm、幅約7.7cmであった。外方フレームの領域だけ、焼結ePTFEファイバ上でマンドレルをこのタイプ1FEPフィルムの1層で螺旋状に包んだ。
【0113】
マンドレルを半径方向に、5層のePTFE膜でFEPコーティングをマンドレルに向けて包んだ。ePTFE膜を、米国特許第7306729号明細書に記載の全般的な教示にしたがって製造した。ePTFE膜は2.3g/m2の単位面積あたり質量、101.5MPaの泡立ち点、約356nmの厚さ、長手方向に319MPa、横断方向に407MPaのマトリックス引張強度を有した。
【0114】
マンドレルを1層のタイプ1FEPフィルムで螺旋状に包んだ。
【0115】
リーフレットフレーム及び外方フレームの直径を若干広げ、包まれたマンドレル上に約10mmの空間を挟んで置いた。回転による整列は不要であった。
【0116】
リーフレットフレーム、外方フレーム及びその間の空間を、1層のタイプ1FEPフィルムで螺旋状に包んだ。
【0117】
リーフレットフレーム、外方フレーム並びに
図2Bに示すようにブリッジ部162及び折り畳み領域144となるその間の空間を、上述したものと同じFEPコーティングを有する5層のePTFE膜でコーティングをマンドレルに向けて円周方向で包んだ。
【0118】
包まれたリーフレットフレーム、外方フレーム及びその間の空間を、離型ライナと称されるポリイミド材料を染みこませた数層のePTFE膜で包んだ。
【0119】
実質的に非多孔質のePTFE膜を円柱に構成し、アセンブリ上に置いた。これを犠牲チューブと称する。焼結ePTFEファイバを使用して犠牲チューブの両端をマンドレルに対して封止した。
【0120】
マンドレルを含めたアセンブリを、空気圧を上記の犠牲チューブの外から印加可能な炉内で加熱し、その間、マンドレル内部の真空を40分間にわたって維持すると、マンドレル温度は約360℃に達した。アセンブリを炉から取り出し、依然として加圧下、真空下に置きながら室温まで冷却した。
【0121】
犠牲チューブ及び離型ライナを外した。焼結ePTFEファイバを取り除いてフレームアセンブリをマンドレルから外した。
【0122】
ポリマー材料をトリムし、リーフレットフレームのリーフレットウィンドウから取り外した。各フレームの端部を小刀で円周方向にトリムした。
【0123】
中間アセンブリ及び熱処理サイクル
未焼結の直径15mmのePTFEチューブを、直径21.5mmの通気孔のついた金属製マンドレル上に配置した。FEPコーティングを施した実質的に非多孔質の2層のePTFE膜をマンドレルに、コーティング側をマンドレル側に向けて円周方向に巻いた。包まれたマンドレルを320℃に設定された熱対流炉内に入れ、20分間にわたって加熱した。ePTFEと実質的に非多孔質のePTFE膜とが組み合わされて離型ライナとしての役割を果たした。また、マンドレル内の通気孔との間で圧力を連通するように穿孔された。
【0124】
リーフレットフレームを通気孔のついた金属製マンドレル上に配置し、通気孔をリーフレットフレームの網目にマンドレル通気孔上で形成した。
【0125】
次にリーフレット材料を用意した。ePTFEの膜を、米国特許第7306729号明細書に記載の全般的な教示にしたがって製造した。ePTFE膜は、0.452g/m2の単位面積あたり質量、約508nmの厚さ、長手方向に705MPa、横断方向に385MPaのマトリックス引張強度を有した。この膜にフルオロエラストマーを染みこませた。コポリマーは本質的に約65~70重量%のパーフルオロメチルビニルエーテルと相補的な約35~30重量%のテトラフルオロエチレンから成る。
【0126】
フルオロエラストマーを、Novec HFE7500(3M、セントポール、ミネソタ州)に濃度2.5%で溶解させた。溶液をメイヤーバーを使用してePTFE膜上に(ポリプロピレン離型フィルムで支持しながら)コーティングし、145℃に設定した熱対流炉で30秒間にわたって乾燥させた。2つのコーティングステップ後、最終的なePTFE/フルオロエラストマー又は複合材は1.75g/m2の単位面積あたり質量、29.3重量%のフルオロポリマー、約8.6KPaのドーム破裂強度及び0.81μmの厚さを有した。
【0127】
以下の試験法を用いて、ePTFE層及び多層複合材のキャラクタリゼーションを行った。厚さを、日本製のMutitoyoのスナップゲージアブソルート(直径12.7mm(0.50インチ)フート、モデルID-C112E、シリアル番号10299)を使用して測定した。密度を、Mettlerの分析天秤PM400(ニュージャージー州、米国)を使用し、重量/体積を計算することで求めた。破断力及び引張強度を、Instronのモデル番号5500R(ノーウッド、マサチューセッツ州)を使用し、ロードセル50kg、ゲージ長=25.4cm、クロスヘッド速度=25mm/分(歪み速度=100%/分)で平面ジョーを使用して測定した。別段の定めがない限り、これらの試験法を用いて続く実施例のデータを得た。
【0128】
10層の複合材リーフレット材料をリーフレットフレームの周りに複合材のエラストマー高含有側をマンドレルに向けて巻いた。好ましい実施形態において、複合材料は、組み合わされたツールアセンブリの長手方向軸線に対して概ね垂直の方向に沿って既定のマトリックス引張強度を有するように延伸される。より具体的には、既定のマトリックス引張強度は約705MPaである。
【0129】
マンドレルを、1層の実質的に非多孔質のePTFE膜で、FEPコーティングをマンドレルに向け、リーフレットフレームの基部から8mmの間隔をあけて半径方向に包んだ。ePTFE膜を、米国特許第7306729号明細書に記載の全般的な教示にしたがって製造した。ePTFE膜は、約11g/m2の単位面積あたり質量、約5.5μmの厚さ、長手方向に310Mpa、横断方向に103MPaのマトリックス引張強度を有した。
【0130】
マスクとしての役割を果たすKapton(登録商標)(EI DuPont de Nemours,Inc.、ウィルミントン、デラウェア州)ポリイミドフィルムを、FEPコーティング層を有する実質的に非多孔質なePTFE膜上に巻いた。
【0131】
外方フレームをマンドレル上に、リーフレットフレームと外方フレームとの間を10mm離して置いた。長手方向の外方フレームポストがリーフレットフレームポストと同一直線上にくるようにリーフレットフレームと外方フレームとを揃えた。
【0132】
リーフレットフレーム及び外方フレームを、前出の24層の複合材リーフレット材料で、複合材のエラストマー高含有側をマンドレルに向けて包んだ。好ましい実施形態において、複合材料は、組み合わされたツールアセンブリの長手方向軸線に対して概ね垂直の方向に沿って既定のマトリックス引張強度を有するように延伸される。より具体的には、既定のマトリックス引張強度は約705MPaである。
【0133】
最終的なリーフレットは29.3重量%のフルオロポリマーを含み、厚さは約27μmであった。各リーフレットは34層の複合材を有し、厚さ/層数の比は0.8μmであった。
【0134】
マンドレルを再度、1層の実質的に非多孔質のePTFE膜で、FEPコーティングをマンドレルに向けて、リーフレットフレームの基部から8mm離して半径方向に包んだ。
【0135】
アセンブリを、数層の犠牲離型ライナで包んだ。犠牲チューブをアセンブリ上に置き、焼結ePTFEファイバを使用して犠牲チューブの両端をマンドレルに対して封止した。
【0136】
アセンブリを、上記のチューブに構成した犠牲材料の外から空気圧を印加可能な炉内で処理し、その間、チューブ内部の真空を25分間にわたって維持すると、マンドレル温度は約330℃に達した。アセンブリを炉から取り出し、依然として加圧下、真空下に置きながら室温まで冷却した。
【0137】
犠牲チューブ及びライナをフレームアセンブリから外し、フレームアセンブリをマンドレルから外した。Kapton(登録商標)マスクを外した。
【0138】
小刀を使用して各リーフレットの自由縁及びリーフレットフレームの遠位端を円周方向にトリムした。
【0139】
最終アセンブリ及び熱処理サイクル
外方フレームを、テーパーマンドレルを使用して直径24mmまで半径方向に拡張した。
【0140】
上述したような離型ライナを、21.5mmの通気孔のついたマンドレル上に置いた。
【0141】
3つのKapton(登録商標)マスクを、30mmの先細りした延長部をつけてリーフレットウィンドウ形状に切断した。
【0142】
フレームをリーフレット材料と共にマンドレル上に置き、Kapton(登録商標)マスクの先細りした延長部をトリムした端部からリーフレットフレームの上部リング下に挿入し、マスクがリーフレットウィンドウと揃うまで軸線方向に前進させた。
【0143】
リーフレットフレームを、2層のタイプ1FEPフィルムで包んだ。
【0144】
ホットアイロンを使用してFEPフィルムをリーフレットウィンドウ領域から、FEPフィルムを外辺部から溶かして取り去ることで除去し、またFEPフィルムをマスク外側のリーフレットフレームの全ての領域において留めつけた。
【0145】
通気孔を全てのフレーム網目内及び内方及び外方フレームを繋いでいるポリマーチューブ領域に形成した。
【0146】
リーフレットフレームを所定の位置に保持しながら、隣接するチューブのブリッジ部を入れ子式にひっくり返すことで、外方フレームをリーフレットフレーム上に同軸で配置した。
【0147】
フレームアセンブリ全体を、1枚の実質的に非多孔質のePTFE膜でFEPコーティングをマンドレルに向けて円周方向で包んだ。
【0148】
アセンブリを、数層の犠牲離型ライナで包んだ。犠牲チューブをアセンブリ上に置き、焼結ePTFEファイバを使用して犠牲チューブの両端をマンドレルに対して封止した。
【0149】
アセンブリを、上記のチューブに構成した犠牲材料の外から空気圧を印加可能な炉内で処理し、その間、チューブ内部の真空を25分間にわたって維持すると、マンドレル温度は約330℃に達した。アセンブリを炉から取り出し、依然として加圧下、真空下に置きながら室温まで冷却した。
【0150】
フレームアセンブリをマンドレルから外した。
【0151】
小刀を使用してリーフレットフレームの各端部を円周方向にトリムした。
【0152】
Kaptonを、外方フレームの内側及びリーフレットから回転させながら剥離した。
【0153】
鋏を使用して、リーフレットフレームの両端をフレームの輪郭に沿ってトリムした。
【0154】
得られた弁100は、複数の細孔を有する2つ以上のフルオロポリマー層及びその2つ以上のフルオロポリマー層の実質的に全ての細孔中に存在するエラストマーの複合材料から形成されるリーフレット140を含む。各リーフレット140は
図3Bに示す閉位置(血液は実質的に弁アセンブリを流れることを阻まれる)と
図3Aに示す開位置(血液は弁アセンブリを流れることができる)との間で移動可能である。したがって、弁100のリーフレット140は閉位置と開位置とを切り替えることで概して、ヒトの患者における血流方向を調節する。
【0155】
弁リーフレットの性能のキャラクタリゼーションを、弁の両側での典型的な解剖学的圧力及び流れを測定するリアルタイム拍動再現装置で行った。流れ性能のキャラクタリゼーションを以下のプロセスで行った。
【0156】
弁アセンブリをシリコーン製環状リング(支持構造)に嵌め込み、続いてリアルタイム拍動再現装置で弁アセンブリを評価した。嵌め込みは、拍動再現装置の製造業者(ViVitro Laboratories Inc.、ヴィクトリア、ブリティッシュコロンビア州、カナダ)の指示に従って行われた。
【0157】
次に、リングに嵌め込まれた弁アセンブリをリアルタイム左心臓拍動再現システム内に置いた。この血流拍動再現システムは、VSI ViVitro Systems Inc.(ヴィクトリア、ブリティシュコロンビア州、カナダ)から供給された以下のコンポーネントを含んだ:スーパーポンプ、サーボパワー増幅器部品番号SPA 3891;スーパーポンプヘッド、部品番号SPH 5891B、シリンダ面積38.320cm2;弁ステーション/取付具;波形発生装置、TriPack、部品番号TP 2001;センサーインターフェース、部品番号VB 2004;センサー増幅コンポーネント、部品番号AM 9991;方形波電磁流量計(Carolina Medical Electronics Inc.、イーストベンド、ノースカロライナ州、米国)。
【0158】
概して、血流拍動再現システムでは定容量形ピストンポンプを使用して試験中の弁を通過する所望の流体流を発生させる。
【0159】
心臓血流拍動再現システムを調節して所望の流れ(5L/分)、平均圧力(15mmHg)及び模擬拍動数(70bpm)を作り出した。次に、試験中の弁を約5~20分間にわたって繰り返し動作させた。
【0160】
試験中、圧力及び血流のデータを測定、回収した。データには、右心室圧、肺動脈圧、流量及びポンプのピストン位置が含まれる。
【0161】
弁のキャラクタリゼーションに用いたパラメータは、開口部有効面積及び逆流率である。開口部有効面積(EOA)は以下のようにして計算することができる。EOA(cm2)=Qrms/(51.6*(ΔΡ)1/2)。Qrmsは二乗平均収縮期/拡張期流量(cm3/秒)であり、ΔPは平均収縮期/拡張期圧力低下(mmHg)である。
【0162】
弁の流体力学的性能の別の尺度は逆流率であり、弁を逆流した流体又は血液の量を1回拍出量で割った量である。
【0163】
流体力学的性能測定値はEOA=2.06cm2、逆流率=8.2%であった。
【0164】
実施例2
別の弁を実施例1に記載通りに作製した。ただし以下の点が異なる。
【0165】
初期アセンブリ及び熱処理サイクル
リーフレットフレーム及び外方フレームの直径を若干広げ、包まれたマンドレル上に16mm離して置いた。リーフレットフレーム及び外方フレームが形成されたら回転させて揃えた。
【0166】
最終アセンブリ及び熱処理サイクル
小刀を使用して機械的連結タブの上で切断した。タブを変形させて内方フレーム及び外方フレームを連結した。
【0167】
得られた弁100は、複数の細孔を有する2つ以上のフルオロポリマー層及びその2つ以上のフルオロポリマー層の実質的に全ての細孔中に存在するエラストマーの複合材料から形成されるリーフレット140を含む。各リーフレット140は
図3Bに示す閉位置(血液は実質的に弁アセンブリを流れることを阻まれる)と
図3Aに示す開位置(血液は弁アセンブリを流れることができる)との間で移動可能である。したがって、弁100のリーフレット140は閉位置と開位置とを切り替えることで概して、ヒトの患者における血流方向を調節する。
【0168】
流体力学的性能を測定した。性能値はEOA=2.3cm2、逆流率=11.8%であった。
【0169】
装置及び/又は方法の構造及び機能の詳細と共に、様々な代替案を含め、数々の特徴及び利点についてこれまで記載してきた。本開示は説明の便宜上のものにすぎないため、包括的であることを意図してはいない。当業者には、様々な改変を、特には構造、材料、要素、コンポーネント、形状、サイズ及び部品の配置に関して、本開示の原理内での組み合わせを含め、添付の請求項が表す、用語の広く一般的な意味で示される最大限度まで加え得ることが明白である。これらの様々な改変が添付の請求項の趣旨及び範囲から逸脱しない程度まで、改変はその範囲内に含まれるものとする。