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特許7599978鮮度管理装置、鮮度管理方法及び情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】鮮度管理装置、鮮度管理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241209BHJP
【FI】
G06Q50/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021017714
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2022120668
(43)【公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】深沢 大志
(72)【発明者】
【氏名】秋山 良造
(72)【発明者】
【氏名】石川 大介
(72)【発明者】
【氏名】清水 誠也
【審査官】日比野 可奈子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-354311(JP,A)
【文献】特開2001-355957(JP,A)
【文献】特開2017-058233(JP,A)
【文献】特集 食品トレーサビリティシステムII,食品工業,株式会社光琳,2006年10月30日,第49巻第22号,第44頁ー第53頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品の流通経路における複数の段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた前記食品の鮮度に関する鮮度値を含む情報を他の電子機器から通信インタフェースを介して取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記複数の段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた前記鮮度値を含む情報に基づいて前記食品の鮮度レベルを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて異なる通知を出力する出力部と、
前記複数の段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた判定結果を前記複数の段階の流通ポイントのうち直前の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果と比較する比較部を備え、
前記出力部は、前記比較部の比較結果に応じて前記通知の出力態様を変える、
鮮度管理装置。
【請求項2】
前記鮮度値は、蛍光値に基づく値である、
請求項1に記載の鮮度管理装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記通知の出力態様に基づいて、前記複数の段階の流通ポイントのうち1以上の前段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた1以上の端末への通知の出力態様を変える、
請求項に記載の鮮度管理装置。
【請求項4】
食品の流通経路における複数の段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた前記食品の鮮度に関する鮮度値を含む情報を電子機器から通信インタフェースを介して取得することと、
取得された前記複数の段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた前記鮮度値を含む情報に基づいて前記食品の鮮度レベルを判定することと、
判定結果に基づいて異なる通知を出力することと、
前記複数の段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた判定結果を前記複数の段階の流通ポイントのうち直前の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果と比較することと、を備え、
前記出力することは、比較結果に応じて前記通知の出力態様を変えることを含む、
鮮度管理方法。
【請求項5】
コンピュータに、
食品の流通経路における複数の段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた前記食品の鮮度に関する鮮度値を含む情報を電子機器から通信インタフェースを介して取得する取得機能と、
前記取得機能により取得された前記複数の段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた前記鮮度値を含む情報に基づいて前記食品の鮮度レベルを判定する判定機能と、
前記判定機能の判定結果に基づいて異なる通知を出力する出力機能と、
前記複数の段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた判定結果を前記複数の段階の流通ポイントのうち直前の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果と比較する比較機能と、を実行させるための情報処理プログラムであって、
前記出力機能は、前記比較機能の比較結果に応じて前記通知の出力態様を変える、
情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、鮮度管理装置、鮮度管理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
市場を流通する食品等の安心安全を担保するためには、産地から販売店舗までの流通経路において鮮度を適切に保つ必要がある。そのため、食品の流通経路における産地、市場、配送センタ、店舗等の流通ポイント毎に鮮度を評価し、流通経路全体を通して食品の鮮度を適切に保つことが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2009-543076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、食品の鮮度を適切に管理することを可能にする技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において、情報処理装置は、取得部と、判定部と、出力部と、を備える。取得部は、食品の流通経路における複数の段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた食品の鮮度に関する鮮度値を含む情報を他の電子機器から通信インタフェースを介して取得する。判定部は、取得部により取得された複数の段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた鮮度値を含む情報に基づいて食品の鮮度レベルを判定する。出力部は、判定部の判定結果に基づいて異なる通知を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係る情報処理システムを例示するブロック図である。
図2図2は、実施形態に係る鮮度計測システムの構成の一例を示す図である。
図3図3は、核酸関連物質の分解過程を示す図である。
図4図4は、図2中の蛍光体ユニットの平面図である。
図5図5は、図4中の蛍光構造体を概略的に示す斜視図である。
図6図6は、図5に示す蛍光構造体の拡大断面図である。
図7図7は、凝集誘起蛍光体の消光メカニズムを説明するための図である。
図8図8は、酢酸を対象成分とした実施例で得られた画像をまとめた図である。
図9図9は、トリエチルアミンを対象成分とした実施例で得られた画像をまとめた図である。
図10図10は、真あじの保存時間と、蛍光体ユニットの蛍光強度との関係の一例を示すグラフである。
図11図11は、図2のA-A線断面図と図2中の光センサを説明するための図とを含む図である。
図12図12は、図2のA-A線断面図と図2中の光センサを説明するための図とを含む図である。
図13図13は、実施形態に係る端末による処理の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、実施形態に係る鮮度レベル判定基準の一例を示す図である。
図15図15は、実施形態に係る鮮度情報データベースを例示する図である。
図16図16は、実施形態に係る情報処理の手順を例示するフローチャートである。
図17図17は、実施形態に係る変形例の鮮度レベル判定基準の一例を示す図である。
図18図18は、実施形態に係る変形例の鮮度情報データベースを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を用いて実施形態について説明する。各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
[情報処理システム]
図1は、実施形態に係る情報処理システム100を例示するブロック図である。
情報処理システム100は、サーバ1、測定装置21~24、及び端末31~34を含む。サーバ1、測定装置21~24、及び端末31~34は、ネットワークを介して互いに通信自在に接続する。例えば、ネットワークは、インターネット、モバイルネットワーク、及びLAN(Local Area Network)等のうちの少なくとも1以上のネットワークにより実現される。測定装置21~24のそれぞれは、対応する端末31~34と、ネットワークを介して互いに通信自在に接続する。例えば、ネットワークは、LANである。ネットワークは、無線ネットワークでもよいし、有線ネットワークでもよい。なお、情報処理システム100は、サーバ1、測定装置21~24、及び端末31~34のうちの少なくとも2つの機器を含むシステムを指すこともある。この例では、情報処理システム100は、4つの測定装置21~24、及び4つの端末31~34を含むが、これに限られない。測定装置及び端末の数は、少なくとも1以上とし、任意の数であってよい。
【0009】
サーバ1は、データを収集し、収集したデータを処理する電子機器である。サーバ1は、ネットワークを介して、端末31~34と通信自在に接続する。測定装置21~24、及び端末31~34の対応する各ペアは、例えば、食品の流通経路における複数の段階の流通ポイントにおいて用いられる。食品は、例えば、魚又は肉などの生鮮食品である。食品は、その他の水産物、又は畜産物などであってもよい。複数の段階は、食品の流通経路の時間軸に沿った生産段階、処理・加工段階、流通段階、販売段階等の段階である。複数の段階の流通ポイントは、各段階における産地、市場、配送センタ、店舗等の流通ポイントである。食品又は情報は、複数の段階の流通ポイントを時間経過に沿って、産地、市場、配送センタ、店舗の順に移動する。時間経過に沿った食品又は情報の移動は、物流のトレースフォワード(追跡)方向に相当する。逆に、複数の段階の流通ポイントを時系列に遡った食品又は情報の移動は、物流のトレースバック(遡及)方向に相当する。ここでは、基準となる流通ポイントから見てトレースバック方向に遡った段階を直前の段階、又は前段階という。
【0010】
サーバ1は、端末31~34の各々から種々のデータを受け取り、端末31~34の各々にデータ処理結果を出力する。サーバ1は、情報処理装置の一例である。サーバ1の構成例については後述する。
【0011】
測定装置21~24の各々は、対応する端末31~34の各々と通信自在に接続する。測定装置21の構成例については後述する。測定装置22~24の各々は、測定装置21の構成例と同様である。
【0012】
端末31~34は、他の電子機器と通信可能な電子機器である。端末31~34の各々は、対応する測定装置21~24の各々と通信自在に接続する。例えば、端末31~34の各々は、スマートフォン、タブレット端末又はPC(personal computer)等である。端末31の構成例については後述する。端末31~34の各々は、端末31の構成例と同様である。端末31~34の各々は、例えば、各流通ポイントにおいてユーザが使用する電子機器である。ユーザは、生産者、管理者、責任者、店員又は人と読み替えてもよい。端末31~34の各々は、情報処理端末の一例である。端末31~34は、電子機器の一例である。端末31~34は、サーバ1に対する他の電子機器の一例でもある。
【0013】
サーバ1の構成例について説明する。
サーバ1は、プロセッサ11、メインメモリ12、補助記憶デバイス13及び通信インタフェース14を含む電子機器である。サーバ1を構成する各部は、互いに信号を入出力可能に接続されている。図1では、インタフェースは、「I/F」と記載されている。
【0014】
プロセッサ11は、サーバ1の中枢部分に相当する。例えば、プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)であるが、これに限定されない。プロセッサ11は、種々の回路で構成されていてもよい。プロセッサ11は、メインメモリ12又は補助記憶デバイス13に予め記憶されているプログラムをメインメモリ12に展開する。プログラムは、サーバ1のプロセッサ11に後述する各部を実現または実行させるプログラムである。プロセッサ11は、メインメモリ12に展開されるプログラムを実行することで、種々の動作を実行する。
【0015】
メインメモリ12は、サーバ1の主記憶部分に相当する。メインメモリ12は、不揮発性のメモリ領域と揮発性のメモリ領域とを含む。メインメモリ12は、不揮発性のメモリ領域ではオペレーティングシステム又はプログラムを記憶する。メインメモリ12は、揮発性のメモリ領域を、プロセッサ11によってデータが適宜書き換えられるワークエリアとして使用する。例えば、メインメモリ12は、不揮発性のメモリ領域としてROM(Read Only Memory)を含む。例えば、メインメモリ12は、揮発性のメモリ領域としてRAM(Random Access Memory)を含む。メインメモリ12は、プログラムを記憶する。
【0016】
補助記憶デバイス13は、サーバ1の補助記憶部分に相当する。補助記憶デバイス13は、EEPROM(登録商標)(Electric Erasable Programmable Read-Only Memory)、HDD(Hard Disc Drive)又はSSD(Solid State Drive)等である。補助記憶デバイス13は、上述のプログラム、プロセッサ11が各種の処理を行う上で使用するデータ及びプロセッサ11での処理によって生成されるデータを記憶する。補助記憶デバイス13は、上述のプログラムを記憶する。
【0017】
補助記憶デバイス13は、鮮度情報データベース(DB)131を記憶する。
鮮度情報DB131は、食品識別情報と、ユーザ識別情報、鮮度情報、鮮度レベル情報、及び通知態様を関連付けたデータを構成するレコードを含む。食品識別情報は、蛍光値の計測対象となる計測食品を個々に識別するために計測食品毎に割り当てられた固有の識別情報である。計測食品は、単に食品ともいう。食品識別情報は、食品IDともいう。ユーザ識別情報は、ユーザを個々に識別するためにユーザ毎に割り当てられた固有の識別情報である。ユーザ識別情報は、ユーザIDともいう。鮮度情報は、流通ポイント、日時、及び蛍光値を含む。流通ポイントは、食品の流通経路における産地、市場、配送センタ、店舗等である。日時は、後述する取得部110により各食品の鮮度情報が取得された日時である。蛍光値は、測定装置21~24の各々により取得され、端末31~34により計算された値である。蛍光値は、食品の鮮度に関する数値である。蛍光値は、蛍光値そのものであってもよく、蛍光値に基づき算出される値であってもよい。食品の鮮度は蛍光値が高いほど良く、蛍光値が低いものとする。蛍光値は、鮮度値に対応する。鮮度情報は、鮮度値を含む情報に対応する。鮮度レベル情報は、食品の鮮度レベルを示す情報である。鮮度レベルは、食品の鮮度に応じて分類される食品の可食性に基づく複数の第1のレベルのうちの何れかの第1のレベルと、食品の鮮度に応じて分類される食品の安全性に基づく複数の第2のレベルのうちの何れかの第2のレベルとを組み合わせたレベルである。食品の可食性は、食品の調理法を含む。例えば、複数の第1のレベルは、鮮度の高い順に、生食可レベル、要加熱レベル及び食用不可レベルを含む。食品の可食性に基づく第1のレベルはこれらに限定されない。複数の第1のレベルの数は3つに限定されない。複数の第2のレベルは、鮮度の高い順に、安全レベル及び要注意レベルを含む。食品の安全性に基づく第2のレベルはこれらに限定されない。複数の第2のレベルの数は2つに限定されない。複数の第1のレベルの各々は、複数の第2のレベルを含むこともあるし、複数の第2のレベルのうちの何れか1つの第2のレベルを含むこともある。複数の第2のレベルのうち最も低い鮮度に対応付けられた第2のレベル以外の1以上の第2のレベルの各々は、複数の第2のレベルを含んでいてもよい。複数の第2のレベルのうち最も低い鮮度に対応付けられた第2のレベルは、複数の第2のレベルのうちの何れか1つの第2のレベルを含んでいてもよい。例えば、生食可レベルは、安全レベル及び要注意レベルを含む。要加熱レベルは、安全レベル及び要注意レベルを含む。食用不可レベルは、要注意レベルのみを含む。例えば、鮮度レベルは、「生食可:安全」、「生食可:要注意」、「要加熱:安全」、「要加熱:要注意」、「食用不可:要注意」等である。鮮度レベルは、後述する鮮度レベル判定基準に基づき判定される。通知態様は、鮮度レベルに応じた通知の種類である。通知態様は、例えば、「生食可:保存状態OK」、「生食可:保存強化要」、「生食不可:保存強化要」、「要加熱:保存強化要」、「食用不可:保存改善要」等である。通知態様は、後述する鮮度レベル判定基準に基づき判定される。
【0018】
通信インタフェース14は、所定の通信プロトコルに従い、ネットワークを介して、サーバ1を他の電子機器と通信可能に接続する種々のインタフェースを含む。
【0019】
なお、サーバ1のハードウェア構成は、上述の構成に限定されるものではない。サーバ1は、適宜、上述の構成要素の省略及び変更並びに新たな構成要素の追加を可能とする。
【0020】
上述のプロセッサ11に実装される各部について説明する。
プロセッサ11は、取得部110、記憶制御部111、判定部112、比較部113、及び出力部114を実装する。プロセッサ11に実装される各部は、各機能ということもできる。プロセッサ11に実装される各部は、プロセッサ11及びメインメモリ12を含む制御部に実装されるということもできる。
【0021】
取得部110は、端末31~34の各々から通信インタフェース14を介して鮮度情報を取得する。例えば、取得部110は、端末31~34の各々から複数の段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた食品の鮮度に関する蛍光値を含む情報を取得する。
【0022】
記憶制御部111は、取得部110により取得された情報を食品識別情報、及びユーザ識別情報と関連付けて補助記憶デバイス13に保存する。記憶制御部111は、判定部112により判定された鮮度レベルを食品識別情報、及びユーザ識別情報と関連付けて補助記憶デバイス13に保存する。記憶制御部111は、判定部112による判定結果に応じた通知態様を食品識別情報、及びユーザ識別情報と関連付けて補助記憶デバイス13に保存する。記憶制御部111は、比較部113による比較結果に応じた通知態様を食品識別情報、及びユーザ識別情報と関連付けて補助記憶デバイス13に保存する。ここで、「取得」は、受信の意味を含む。
【0023】
判定部112は、取得部110により取得された鮮度情報に基づいて、各食品の鮮度レベルを判定する。例えば、判定部112は、取得部110により取得された複数の段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた蛍光値を含む情報に基づいて各食品の鮮度レベルを判定する。判定部112は、後述する鮮度レベル判定基準に従って鮮度レベルを判定する。
【0024】
比較部113は、複数の段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた判定結果を複数の段階の流通ポイントのうち直前の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果と比較する。例えば、比較部113は、同一の食品識別情報により特定される食品について、複数の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果を比較する。ここで、比較対象となる複数の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果は、基準となる流通ポイントに関連付けられた判定結果と基準となる流通ポイントの直前の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果である。基準となる流通ポイントは、取得部110により取得された最新の鮮度情報に関連付けられた流通ポイントである。基準となる流通ポイントは、以下において基準流通ポイントともいう。比較対象となる判定結果は、基準流通ポイントに関連付けられた判定結果と、基準流通ポイントより前段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果を含んでもよい。
【0025】
例えば、比較部113が、食品ID「0001」の魚についての判定結果を比較する場合を想定する。複数の段階の流通ポイントが、漁港、市場、配送センタ、店舗であり、店舗を基準流通ポイントとすると、直前の段階の流通ポイントは配送センタである。この場合、比較対象となる判定結果は、食品ID「0001」について、店舗に関連付けられた判定結果と配送センタに関連付けられた判定結果である。なお、食品ID「0001」について、店舗より前段階の流通ポイントである漁港、市場に関連付けられた判定結果を比較対象としてもよい。
【0026】
出力部114は、通信インタフェース14を介して、判定部112による判定結果に基づいて通知を端末31~34へ出力する。例えば、出力部114は、判定結果に基づいて異なる通知を端末31~34へ出力する。出力部114は、通信インタフェース14を介して、比較部113による比較結果に基づいて通知を端末31~34へ出力する。例えば、出力部114は、比較結果に応じて通知の出力態様を変える。出力部114は、通知の出力態様に基づいて、1以上の前段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた端末31~34の対応する端末への通知の出力態様を変える。以下の説明において、「出力」は、「送信」と読み替えてもよい。
【0027】
なお、取得部110、記憶制御部111、判定部112、比較部113、及び出力部114は、プログラムを実行することでプロセッサ11に実装されるものとして説明したが、これに限定されない。
【0028】
[鮮度計測システム]
図2は、実施形態に係る鮮度計測システムの構成の一例を示す図である。鮮度計測システムは、測定装置21、測定容器400、蛍光体ユニット500、及び端末31を含む。端末31は、処理装置310、表示装置320、及び入力装置330を含む。
【0029】
測定装置21は、蛍光体ユニット500が備える蛍光構造体520の蛍光強度を測定又は計測する。測定装置21は、一例として、制御回路210、励起光源220、光センサ230、カットフィルタ240、ADC(analog-to-digital converter)250、処理インタフェース260及び電源270を含む。図2では、インタフェースは、「I/F」と記載されている。
【0030】
制御回路210は、例えば、励起光源220を駆動する駆動回路等を含む回路基板である。また、制御回路210は、例えば、測定装置21の各部を接続する配線を含む回路基板である。また、制御回路210は、例えば、測定装置21の各部の制御に用いるIC(integrated circuit)等を含む回路基板である。また、制御回路210は、必要に応じてアンプ及びAD変換回路の少なくともいずれかを含んでもよい。AD変換回路は、光センサ230が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換する。アンプは、光センサ230が出力する信号を増幅する。
【0031】
励起光源220は、蛍光構造体520を励起させる光を放射する光源である。典型的には、励起光源220は、主に紫外線を放射する。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「光」は、可視光領域外の波長の光(電磁波)も含むものとする。以上より、励起光源220は、蛍光体に励起光を照射する照射部の一例である。
【0032】
光センサ230は、蛍光構造体520の蛍光強度を測定するためのセンサである。蛍光強度は、蛍光値に対応する。光センサ230は、蛍光構造体520が発する蛍光の波長と同一の波長の光の強度を測定可能なセンサである。光センサ230は、例えば、フォトダイオード、フォトレジスタ、フォトトランジスタ、光電管、光導電セル、光起電力セル又はカメラ等である。光センサ230がカメラである場合、当該カメラは、例えばCCD(charge-coupled device)イメージセンサ又はCMOS(complementary metal-oxide-semiconductor)イメージセンサ等のイメージセンサを備える。なお、光センサ230は、光の強度として、例えば、光強度〔W(ワット)〕、又は光度、輝度若しくは照度等の視感度に基づく信号を出力する。また、光センサ230がカメラである場合、光センサ230は、例えば、画像信号を出力する。以上より、光センサ230は、蛍光構造体520が発する蛍光強度を測定する測定部の一例である。
【0033】
カットフィルタ240は、励起光源220が放射する光の波長帯の光をカットするフィルタである。カットフィルタ240は、典型的には紫外線を含む波長領域の光をカットするUV(ultraviolet)カットフィルタである。カットフィルタ240は、紫外線をカットすることで励起光源220が放射する光が光センサ230に入射することを防ぐ。
【0034】
ADC250は、入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。なお、ADC250は、光センサ230に内蔵されていてもよい。
【0035】
処理インタフェース260は、ADC250が出力する信号を処理装置310に出力する。
【0036】
電源270は、測定装置21の各部に電力を供給する。
【0037】
測定容器400は、一例として、トレイ410及びフィルム420を含む。また、測定容器400は、食品430等を入れるために用いる。
【0038】
トレイ410は、例えば、食品430等を載せるための食品トレイである。
【0039】
フィルム420は、食品430を載せたトレイ410を包装するフィルムである。フィルム420によって包装された測定容器400は、密封状態となる。
【0040】
食品430は、鮮度計測の検査対象である。食品430は、例えば、魚又は肉等の生鮮食品である。
【0041】
食品430は、鮮度が落ちるとともに特定の化学成分(以下、対象成分という)を放出する。この対象成分の濃度を用いることで食品430の鮮度を評価することができる。対象成分は、例えば、有機酸及びアミン化合物等である。
【0042】
ここで、対象成分について詳細に説明する。生鮮食品は、腐敗や劣化時に、1種類又は複数種類の対象成分を気相中に放出し得る。対象成分には、例えば、アルデヒド類及びカルボン酸類等の酸性成分や、アルコール類や、アンモニア、アミン類等の塩基性成分や、エステル類、及びケトン類が挙げられる。アルデヒド類は、例えば、ヘキサナール、3-メチルブタナール、ノナナール、イソバレルアルデヒド等を含む。カルボン酸類は、例えば、ギ酸、酢酸、イソ吉草酸等で又はこれらの混合物を含む。アミン類は、例えば、トリメチルアミン、ジメチルアミン、1,2-エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、スペルミジン、スペルミン、ヒスタミン、トリプタミン又はこれらの混合物を含む。アルコール類は、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、3-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ブタノール又はこれらの混合物を含む。エステル類は、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等を含む。ケトン類は、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メルカプトアセトン等を含む。
【0043】
また、食品430等の生鮮食品に含まれるアデノシン三リン酸(ATP)は、図3に示すように、ATPからアデノシン二リン酸(ADP(adenosine diphosphate))に、ADPからアデノシン一リン酸(AMP(adenosine monophosphate))に、AMPからイノシン一リン酸(IMP(inosine monophosphate))に、IMPからイノシン(HxR(hypoxanthine riboside))に、HxRからヒポキサンチン(Hx(hypoxanthine))に分解していく。ATP、ADP、AMP、及びIMPは鮮度の高い食品に含まれる物質であり、HxR及びHxは、鮮度の低い食品に含まれる物質である。
【0044】
図4は、蛍光体ユニット500の平面図である。蛍光体ユニット500は、一例として、基部510、蛍光構造体520、白色標準板530及び黒色標準板540を含む。蛍光体ユニット500は、基部510、蛍光構造体520及び白色標準板530を備える。
【0045】
基部510は、蛍光構造体520、白色標準板530及び黒色標準板540が取り付けられている。基部510の材料は、耐水性、耐酸性、及び耐アルカリ性を有するものが好ましい。また、基部510自体に蛍光を発することがない物が好ましいが、蛍光を発するものでも蛍光構造体520の蛍光測定時に影響を与えなければ特に制限されるものではない。基部510は、例えば、透明なシート状の樹脂等である。
【0046】
蛍光構造体520は、食品430から発生する対象成分に反応して、蛍光強度が変わる。蛍光構造体520は、例えば、測定容器400内の気体G中の対象成分の濃度が高いほど蛍光強度が弱くなる。すなわち、蛍光構造体520は、蛍光強度が強いほど食品430の鮮度が良く、蛍光強度が弱いほど食品430の鮮度が悪いことを示す。あるいは、蛍光構造体520は、気体G中の対象成分の濃度が高いほど蛍光強度が強くなるものであってもよい。すなわち、蛍光構造体520は、蛍光強度が強いほど食品430の鮮度が悪く、蛍光強度が弱いほど食品430の鮮度が良いことを示すものであってもよい。なお、気体Gは、対象成分を含む混合気体であってもよいし、対象成分を分散質とするエアロゾルであってもよい。
蛍光構造体520は、検査対象が放出する対象成分の濃度に応じて蛍光強度が変化する蛍光体の一例である。
【0047】
以下、蛍光構造体520の一例について説明する。
【0048】
図5は、実施形態に係る蛍光構造体を概略的に示す斜視図である。図5に示す蛍光構造体520は、基材521と、図示しない蛍光体層とを含む。図6は、図5に示す蛍光構造体の拡大断面図である。図5及び図6に示す蛍光構造体520は、基材521として濾紙を用いた例である。基材521の繊維5211には、蛍光体層522が担持される。蛍光体層522は、基材521の繊維5211に固着した凝集誘起蛍光体5221を含む。
【0049】
基材521は、水を含浸可能なものであれば、その形状及び材料等に制限はない。基材521は、例えば、多孔質体又は網目構造体である。基材521の形状は、図5に示すように円形であってもよく、多角形状であってもよい。基材521の厚みは、例えば、0.1mm以上1.0mm以下である。これは、凝集誘起蛍光体から発する蛍光量が確保できれば特に限定されるものではなく、また逆に、厚すぎて基材内部での凝集誘起蛍光体と腐敗成分との反応の妨げにならない程度であればよい。
【0050】
基材521は、例えば、合成繊維、無機繊維、天然繊維又はこれらの混合物を含む。合成繊維の例は、ポリオレフィン系繊維、及びセルロース系繊維を含む。無機繊維の例は、ガラス繊維、金属繊維、アルミナ繊維、及び活性炭素繊維を含む。天然繊維の例は、木材パルプ、及び麻パルプを含む。基材521は、ガラス繊維からなる層であることが好ましい。
【0051】
蛍光体層522は、凝集誘起蛍光体5221を含み、好ましくは、凝集誘起蛍光体5221のみからなる。蛍光体層522は、基材521に担持される。蛍光体層522は、基材521の繊維5211等の表面上に薄層状に担持されることが好ましい。
【0052】
蛍光体層522の厚みは、25℃でありかつ相対湿度100%の環境中に放置することにより、その蛍光強度が十分に小さくなる厚みであることが好ましい。ここで、蛍光強度が十分に小さくなるとは、例えば、25℃でありかつ相対湿度100%の環境中に放置した場合の蛍光強度を、10℃でありかつ相対湿度20%の環境中に放置した場合の蛍光強度を100%とした相対値として算出したときに、30%以下となることをいう。
【0053】
蛍光体層522の厚みは、蛍光構造体520の蛍光強度に影響し得る。すなわち、蛍光体層522を適度に厚くすると、蛍光構造体520の蛍光強度が強まる傾向にある。一方、蛍光体層522を過剰に厚くすると、鮮度の変化に応じた蛍光強度の変化が小さくなる。蛍光体層522の厚みは、30nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。蛍光体層522の厚みは、生鮮食品の腐敗や劣化により放出される対象成分の放出量に応じて、その鮮度の変化を確認し易い範囲に調整されることが望ましい。蛍光体層522の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM(transmission electron microscopy))により確認できる。
【0054】
凝集誘起蛍光体5221は、図6に示すように粒状層としての蛍光体層522を形成していてもよく、隙間を有していない連続膜としての蛍光体層522を形成していてもよい。粒状層としての蛍光体層522において、各粒子は凝集誘起蛍光体5221の分子を複数含み、粒子内の各位置から粒子表面を結ぶ最短の直線上に位置する凝集誘起蛍光体5221の分子の数は、例えば、10以下である。
【0055】
凝集誘起蛍光体5221は、極性官能基を有することが好ましい。極性官能基を含む凝集誘起蛍光体5221は、対象成分と反応し易く、蛍光体ユニットを用いた鮮度評価の精度が高まり得る。また、水への溶解性又は分散性が高い傾向にある。極性官能基は、酸性官能基であってもよく、塩基性官能基であってもよい。酸性官能基としては、カルボキシル基及びスルホ基を挙げることができる。塩基性官能基としては、水酸基、及びアミノ基を挙げることができる。凝集誘起蛍光体5221は、酸性官能基又は塩基性官能基を、複数種類含んでいてもよい。凝集誘起蛍光体5221は、1分子中にカルボキシル基を2以上含んでいることが好ましい。
【0056】
凝集誘起蛍光体5221としては、構造式(2)に示すテトラフェニルエチレン骨格、構造式(3)に示すシロール骨格、又は、構造式(4)に示すホスホールオキシド骨格を有するものを用いることができる。なお、これらの化合物は、それぞれ、シス体であってもよく、トランス体であってもよく、シス体とトランス体との混合物であってもよい。
【0057】
【化1】
【0058】
【化2】
【0059】
【化3】
【0060】
凝集誘起蛍光体5221は、下記一般式(I)で表されるテトラフェニルエチレン誘導体を含むことが好ましい。下記一般式(I)で表される化合物は、対象成分との反応性に優れている。
【0061】
【化4】
【0062】
(式中、R、R、R、Rは、互いに独立して、-L、-(CH-L、-X-(CH-L、-Y-(CH-Z-(CH-L
(ここで、L、L、L、Lは、互いに独立して、-CO-又は-SO-を表し、M、M、M、Mは、互いに独立して、水素原子又はカチオンを表し、X、Y、Zは、互いに独立して、-O-、-NH-、又は-S-を表し、m、n、o、pは、互いに独立して、1~6の整数を表す)、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、カルバモイル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数2~6アルケニル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数2~6のアシル基、アミノ基、炭素数1~6のアルキルアミノ基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数5~10のヘテロアリール基からなる群から選択され、かつ、R、R、R、Rのうちの少なくとも2つは、互いに独立して、-L、-(CH-L、-X-(CH-L、及び-Y-(CH-Z-(CH-L(ここで、L、L、L、L、M、M、M、M、X、Y、Z、m、n、o、及びpは上記の通りである)からなる群から選択される。)
テトラフェニルエチレン誘導体の具体例としては、下記の構造式(5)、(7)、(9)、及び(10)に示す化合物をあげることができる。
【0063】
【化5】
【0064】
【化6】
【0065】
【化7】
【0066】
【化8】
【0067】
この蛍光構造体520は、例えば、以下の方法により製造する。
【0068】
先ず、有機溶媒に凝集誘起蛍光体5221を溶解させて、処理液を準備する。有機溶媒の種類は、凝集誘起蛍光体5221を溶解可能なものであればよく、蒸発温度が低いものが好ましい。有機溶媒としては、例えば、エタノール、を用いる。処理液における凝集誘起蛍光体5221の濃度は、例えば、上記構造式(7)に示す化合物を用いた場合50μM(重量モル)以上1mM(重量モル)以下とする。
【0069】
次に、基材521を処理液に浸漬して処理液を含浸させた後、処理液内から基材521を引上げ、これを乾燥させる。なお、スポイト等を用いて処理液を滴下することにより、基材521に処理液を含浸させてもよい。このようにして、蛍光構造体520を得る。蛍光構造体520は、典型的には、有機溶媒を含まない。
【0070】
白色標準板530及び黒色標準板540は、蛍光構造体520の蛍光強度測定の基準となる。
【0071】
白色標準板530は、光を拡散反射する白色の板又はシート等である。白色標準板530は、反射率が高いほど良い。理想的な白色標準板530は、反射率100%である。 黒色標準板540は、黒色の板又はシート等である。黒色標準板540は、反射率が低いほど良い。理想的な黒色標準板540は、反射率0%である。
【0072】
また、蛍光体ユニット500は、水を保持する。例えば、蛍光構造体520が水を保持する。あるいは、蛍光構造体520及び基部510が水を保持する。蛍光体ユニット500において、凝集誘起蛍光体5221の質量に対する水の質量は、例えば、0.5以上である。
【0073】
蛍光体ユニット500の製造に際しては、先ず、蛍光構造体520を水中に浸漬して水を含浸させた後、水中から引き上げる。なお、スポイト等を用いて水を滴下することにより、蛍光構造体520に水を含浸させてもよく、蛍光構造体520を水蒸気に暴露することにより水を含ませてもよい。水の種類は、蒸留水、純水、イオン交換水又はこれらの混合物を用い得る。
【0074】
水中から引き上げた蛍光構造体520を、接着剤や粘着テープ等の接合部材を用いて基部510に取り付ける。あるいは、基部510の一部に切り込みや貫通孔を設けて、この切り込み又は貫通孔に蛍光構造体520をはめ込んで固定してもよい。このようにして、蛍光体ユニット500を得る。なお、蛍光構造体520と基部510とを一体化させた後、これを水に浸漬させることにより蛍光体ユニット500を得てもよい。
【0075】
上記の通り、実施形態に係る蛍光体ユニット500は、蛍光構造体520と、基材521に担持された水とを含む。水の含有量は、蛍光体ユニット500の蛍光が微弱になる又は無蛍光となる量であればよい。すなわち、蛍光構造体520は、水を含むことにより、蛍光が微弱あるいは無蛍光となる。
【0076】
図11及び図12は、図2のA-A線断面図と光センサ230を説明するための図とを含む図である。なお、図2のA-A線断面図は、測定容器400及び蛍光体ユニット500の断面図である。また、図11及び図12は、図2のA-A線断面図を一部省略して示している。図11及び図12には、対象成分Xも示している。
【0077】
蛍光体ユニット500は、図11及び図12に示すように、蛍光構造体520が食品430のある側を向くようにフィルム420に接着する。これは、蛍光構造体520が、測定容器400内の気体Gに曝露又は接触して対象成分Xと接触する必要があるためである。また、白色標準板530及び黒色標準板540は、図11及び図12に示すように、基部510を挟んで蛍光構造体520と反対側にあることが好ましい。すなわち、白色標準板530及び黒色標準板540は、基部510を挟んで食品430と反対側にあることが好ましい。これは、白色標準板530及び黒色標準板540が気体Gに曝露することを防ぐためである。これにより、白色標準板530及び黒色標準板540が気体Gに曝露することによって変質すること及び汚れること等を防ぐ。
【0078】
なお、蛍光体ユニット500は、フィルム420に接着せず、測定容器400内に置かれた状態であってもよい。ただし、蛍光体層522が測定容器400外から見えるように蛍光体ユニット500を置くものとする。
【0079】
蛍光体ユニット500は、紫外線等の励起光を照射して、その蛍光強度(明るさ)を測定することにより、食品430の鮮度を定量化することができる。ここでは、一例として、食品430が、その鮮度の低下に伴って生じる対象成分は酸性成分であり、凝集誘起蛍光体5221は、極性官能基として酸性官能基を含んでいることとする。
【0080】
食品430が新鮮な状態にある場合、気体G中における対象成分の濃度は低い。この場合、対象成分が凝集誘起蛍光体5221の分子の配列に及ぼす影響は小さい。したがって、この場合、凝集誘起蛍光体5221は、励起光を照射しても、蛍光を高い強度で発しない。
【0081】
食品430の鮮度が低下すると、気体G中における対象成分の濃度が高まる。気体G中の対象成分の濃度が高まると、その一部は、蛍光体ユニット500が含んでいる水に溶解する。この水溶液は、凝集誘起蛍光体5221の極性官能基と同極性であるため、この水溶液における対象成分の濃度が高まると、凝集誘起蛍光体5221の水溶液に対する親和性又は溶解度が低下する。それゆえ、気体G中における対象成分の濃度が高まると、凝集誘起蛍光体5221の分子配列は、水が存在していない状態へ近づく。したがって、食品430の鮮度が低下すると、励起光を照射することによって凝集誘起蛍光体5221が発する蛍光強度は高くなると考えられる。
【0082】
蛍光体ユニット500への励起光の照射には、例えば、紫外線(UV)ランプを用いる。紫外線の波長は、凝集誘起蛍光体5221の種類により異なるが、一例によると、350nm以上530nm以下である。また、蛍光強度の測定には、上記の通り、例えば、光検出器又は撮像素子を使用する。例えば、まず、蛍光体ユニット500にUVランプを照射しながら、デジタルカメラ等を用いて蛍光画像を撮像する。
【0083】
なお、上記の通り、凝集誘起蛍光体5221として酸性官能基を有するものを用い、対象成分が酸性成分である場合、この対象成分の濃度の高まりに応じて蛍光体ユニット500の蛍光がより高くなる。
【0084】
以上説明したように、蛍光体ユニット500を使用すると、紫外線等の励起光を照射して、その蛍光強度を測定するという簡易な方法により、食品430の鮮度を定量化することができる。しかも、この鮮度の定量化は、高い精度で行うことができる。
【0085】
次に、実施形態に係る蛍光体ユニット500の他の使用方法について説明する。蛍光体ユニット500は、酸をさらに含んでもよい。なお、酸をさらに含む蛍光体ユニット500を以下蛍光体ユニット501という。蛍光体ユニット501は、酸を更に含むこと以外は、酸を更に含まない蛍光体ユニット500と同様の構造を有している。すなわち、蛍光体ユニット501は、蛍光構造体520と、基部510と、図示しない水及び酸とを含む。蛍光構造体520は、図示しない水及び酸を担持している。言い換えると、蛍光構造体520は酸性水溶液を担持している。酸としては、例えば、ギ酸、塩酸、酢酸、又はこれらの混合物を用いる。安全性の観点から、酸としては酢酸を用いることが好ましい。また、凝集誘起蛍光体5221の極性官能基は、酸性官能基であることが好ましい。ここでは、一例として、凝集誘起蛍光体5221の極性官能基は酸性官能基であるとする。
【0086】
蛍光体ユニット501は、例えば、酸を更に含まない蛍光体ユニット500を、高濃度の酸を含む蒸気に暴露することにより得られる。蛍光体ユニット501における酸の含有量は、所望の蛍光強度に応じて調整され得る。
【0087】
蛍光体ユニット501は、酸を含むため、凝集誘起蛍光体5221の分子配列は、水を含んでいない状態に近いか、あるいは、酸成分の存在により凝集誘起蛍光体5221のコンホメーションが変化していること等が考えられる。したがって、この蛍光体ユニット501は、酸を更に含まない蛍光体ユニット500と比較して強い蛍光を示す。
【0088】
この蛍光体ユニット501の蛍光強度は、塩基性の対象成分と接すると低下し、一定量以上の塩基性の対象成分と接すると無蛍光となる。 蛍光体ユニット500は、水等を含ませていない状態で流通させ、例えば、食品430とともに密閉容器に封入する現場で水等を含ませてもよい。この場合、蛍光体ユニット500は、この蛍光体ユニット500と、これに含ませるべき1以上の液体、すなわち、水、酸、又は、水と酸との組み合わせとを含んだ蛍光体ユニットキットとして流通させてもよい。水と酸との組み合わせを蛍光体ユニットキットに含める場合、水と酸とは別々の容器に収容してもよく、混合して水溶液として単一の容器に収容してもよい。
【0089】
あるいは、蛍光体ユニット500に水等を含ませてなる蛍光体ユニットを流通させ、これを食品とともに密閉容器に封入してもよい。
【0090】
以上説明した実施形態に係る蛍光構造体は、基材に固着した蛍光体層を備える。したがって、蛍光構造体に水を含浸させることにより蛍光体ユニットを調製できる。水を含む蛍光体ユニットは、気相中の水の影響を受けにくいため、有機溶媒を含む蛍光体ユニットと比較して、高い精度で食品の鮮度を評価できる。
【0091】
蛍光体ユニット500の実施例を以下に示す。
【0092】
1.酢酸を対象成分とした実施例
蛍光体ユニット500を、以下の方法で準備した。先ず、凝集誘起蛍光体5221をエタノールに溶解して、処理液を調製した。この処理液に基材521を浸漬させた後、基材521を処理液内から引き上げ、ガラス板上に設置して乾燥させた。凝集誘起蛍光体5221としては、上記構造式(5)に示す化合物を用いた。基材521としては、円形状のガラス繊維フィルタを用いた。このようにして、図5に示す蛍光構造体520を得た。蛍光構造体520において、ガラス繊維の表面上に設けられた蛍光体層522をTEMで観察したところ、その厚みは20nmであった。UVランプで紫外線を照射しながら蛍光構造体520を観察したところ、強い蛍光を発することを確認した。UVランプによって照射した紫外線の波長は365nmであった。また、この際の蛍光構造体520を、デジタルカメラを用いて撮影し、デジタル画像データを記録した。
【0093】
次に、この蛍光構造体520を、純水中に浸漬させ、次いで、純水中から引き上げて、基材521中に水を含浸させた。このようにして、蛍光体ユニット500を得た。基部510は省略した。以下、この蛍光体ユニットを蛍光体ユニット501と称する。UVランプで紫外線を照射しながら蛍光体ユニット501を観察したところ、無蛍光であることを確認した。また、この際の蛍光体ユニット501を、デジタルカメラを用いて撮影し、デジタル画像データを記録した。
【0094】
次に、2枚の蛍光体ユニット501を、それぞれ、酢酸水の蒸気を密閉した容器内及び純水の蒸気を密閉した容器内に配置し、酢酸水及び純水の蒸気に暴露させた。酢酸水としては、20μLの酢酸と200μLの水との混合液を使用した。また、どちらの密閉容器内にも、保湿のために、1gの純水を収容させた。容器はプラスチック製の密封容器で、容量が約100mL程度のものを使用。その容器の中に、直径21mmの円形の蛍光体ユニット501を酢酸水または水に直接濡れないように、間隙を持って設置した。
【0095】
1時間経過後、各容器内から蛍光体ユニット501を取り出し、UVランプで紫外線を照射しながら観察して、蛍光強度を確認した。その結果、酢酸水の蒸気を密閉した容器内に設置された蛍光体ユニット501は、蛍光構造体520と同等の蛍光強度を示した。これに対して、純水の蒸気を密閉した容器内に設置された蛍光体ユニット501は、無蛍光のままであった。また、この際の蛍光体ユニット501を、デジタルカメラを用いて撮影し、デジタル画像データを記録した。
【0096】
図8は、酢酸を対象成分とした実施例で得られた画像をまとめた表である。図8から、蛍光体ユニット501の蛍光強度は、純水の影響を受けず、酢酸水の影響のみを受けていることが分かる。したがって、蛍光体ユニット501を使用すると、酢酸を対象成分とした場合に、高い精度で鮮度を定量化することができる。
【0097】
2.トリメチルアミンを対象成分とした実施例
先ず、上記と同様の方法で、蛍光体ユニット501を製造した。この蛍光体ユニット501を酢酸水の蒸気を密閉した容器内に封入し、酢酸水の蒸気に十分な時間にわたって暴露して、蛍光体ユニット500を得た。以下、この蛍光体ユニット500を蛍光体ユニット502と称する。酢酸水としては、20μLの酢酸と200μLの水との混合液を使用した。また、保湿のために、密閉容器内には1gの純水を収容させた。UVランプで紫外線を照射しながら蛍光体ユニット502を観察したところ、強い蛍光を発することを確認した。また、この際の蛍光体ユニット502を、デジタルカメラを用いて撮影し、デジタル画像データを記録した。
【0098】
次に、2枚の蛍光体ユニット502を、それぞれ、トリメチルアミン水の蒸気を密閉した容器及び純水の蒸気を密閉した容器内に配置し、トリメチルアミン水の蒸気及び純水の蒸気に暴露した。トリメチルアミン水としては、10μLのトリメチルアミン、30μLのエタノール、及び160μLの水を含む混合液を使用した。また、どちらの密閉容器にも、保湿のために、1gの純水を収容させた。
【0099】
1時間経過後、各容器内から蛍光体ユニット502を取り出し、UVランプで紫外線を照射しながら観察して、蛍光強度を確認した。その結果、トリメチルアミン水の蒸気を密閉した容器内に設置された蛍光体ユニット502の蛍光強度は、試験前と比較して著しく低下していた。これに対して、純水の蒸気を密閉した容器内に設置された蛍光体ユニット502の蛍光強度は、試験前の蛍光強度とほぼ同等であった。また、この際の蛍光体ユニット502を、デジタルカメラを用いて撮影し、デジタル画像データを用いて記録した。
【0100】
図9は、トリエチルアミンを対象成分とした実施例で得られた画像をまとめた表である。図9から、蛍光体ユニット502の蛍光強度は、純水の影響を受けず、トリメチルアミン水の影響のみを受けていることが分かる。したがって、蛍光体ユニット502を使用すると、トリメチルアミンを対象成分とした場合に、高い精度で鮮度を定量化することができる。
【0101】
3.鮮魚を用いた実施例
先ず、食品430を入れた測定容器400を準備した。食品430としては、真あじを用いた。蛍光体ユニット500としては、上記蛍光体ユニット502を用いた。この測定容器400を、25℃の環境下で保存し、下記表1に示す保存時間ごとに蛍光体ユニット502の蛍光強度を測定した。蛍光強度は、UVランプで紫外線を照射した際に得られた画像データを基に、画像処理ソフトを用いてRGB(red, green, and blue)の階調値を算出し、その算術平均を求めることにより数値化した。この結果を、図10に示す。
【0102】
図10は、真あじの保存時間と、蛍光体ユニットの蛍光強度との関係の一例を示すグラフである。なお、試験に用いた真あじサンプルについてガスクロマトグラフィーを用いて臭気成分を確認したところ、真あじの鮮度が低下したサンプルからは、トリメチルアミンが検出された。
【0103】
図11及び図12に基づき、光センサ230についてさらに説明する。
【0104】
光センサ230は、例えば、図11に示すように水平方向Hに移動可能である。光センサ230は、移動することにより、蛍光構造体520、白色標準板530及び黒色標準板540のそれぞれの明るさを測定する。あるいは、光センサ230は、回動すること等によって測定の向きを変えられるものであってもよい。この場合、光センサ230は、測定の向きを変えることで蛍光構造体520、白色標準板530及び黒色標準板540のそれぞれの明るさを測定する。
【0105】
あるいは、測定装置21は、光センサ230-1、光センサ230-2及び光センサ230-3の3個の光センサ230を備える。光センサ230-1は、蛍光構造体520の明るさを測定する。光センサ230-2は、白色標準板530の明るさを測定する。光センサ230-3は、黒色標準板540の明るさを測定する。
【0106】
あるいは、光センサ230がカメラである場合、測定装置21は、1つの固定の光センサ230を用いて蛍光構造体520、白色標準板530及び黒色標準板540のそれぞれの明るさを測定する。
【0107】
以上のように、光センサ230は、蛍光構造体520、白色標準板530及び黒色標準板540のそれぞれの明るさを測定する。なお、蛍光構造体520の明るさは、蛍光構造体520の蛍光強度を示す。
【0108】
以下、実施形態に係る鮮度計測システムの動作を図13等に基づいて説明する。なお、以下の動作説明における処理の内容は一例であって、同様な結果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。
図13は、処理装置310による処理の一例を示すフローチャートである。処理装置310は、例えば、ROM又は補助記憶デバイス等に記憶されたプログラムに基づいてこの処理を実行する。
【0109】
処理装置310は、例えば、鮮度計測アプリの実行とともに図13に示す処理を開始する。
【0110】
処理装置310は、計測画面(不図示)を生成する(ACT11)。そして、処理装置310は、生成した画像を表示するように表示装置320に対して指示する。表示の指示を受けて表示装置320は、計測画面を表示する。
【0111】
処理装置310は、計測を開始するか否かを判定する(ACT12)。処理装置310は、計測画面において計測を開始するための操作が行われたことに応じて計測を開始すると判定する。処理装置310が計測を開始すると判定しない場合(ACT12:NO)、処理はACT12からACT13へ遷移する。
【0112】
処理装置310は、計測食品の種類が選択されたか否かを判定する(ACT13)。処理装置310は、例えば、計測画面に対する操作によって計測食品が選択されたことに応じて、計測食品の種類が選択されたと判定する。処理装置310が計測食品の種類が選択されたと判定しない場合(ACT13:NO)、処理はACT13からACT12へ戻る。かくして、処理装置310は、計測を開始すると判定するか、計測対象の食品の種類が選択されたと判定するまでACT12及びACT13を繰り返す。
【0113】
処理装置310は、ACT12及びACT13の待受状態にあるときに計測食品の種類が選択された場合(ACT13:YES)、処理はACT13からACT14へ遷移する。
【0114】
処理装置310は、選択された計測食品に対応したデータを補助記憶デバイスから取得する(ACT14)。また、処理装置310は、表示装置320を制御して、計測画面を選択された計測食品の種類に従って更新する。
【0115】
処理装置310は、蛍光強度を測定済みであるか否かを判定する(ACT15)。処理装置310は、蛍光強度を測定済みでない場合(ACT15:NO)、処理はACT15からACT12へ戻る。
【0116】
処理装置310は、ACT12及びACT13の待受状態にあるときに計測を開始すると判定する場合(ACT12:YES)、処理はACT12からACT16へ遷移する。
【0117】
処理装置310は、励起光源220を点灯させるように、測定装置21を制御する(ACT16)。この制御に基づき、測定装置21の制御回路210は、励起光源220を点灯させる。励起光源220が点灯することで、蛍光構造体520は蛍光を発する。
【0118】
処理装置310は、蛍光構造体520、白色標準板530及び黒色標準板540のそれぞれの明るさを測定するように測定装置21を制御する(ACT17)。この制御に基づき、測定装置21の制御回路210は、蛍光構造体520、白色標準板530及び黒色標準板540のそれぞれの明るさを光センサ230によって測定する。光センサ230は、測定結果を示す信号を出力する。この信号は、ADC250、及び処理インタフェース260を介して処理装置310に入力する。
【0119】
なお、光センサ230がカメラである場合、画像信号が処理装置310に入力する信号は例えば画像信号である。この場合、処理装置310は、画像から、蛍光構造体520、白色標準板530及び黒色標準板540のそれぞれについて、明度又は輝度等の階調値に基づき蛍光構造体520、白色標準板530及び黒色標準板540のそれぞれの明るさを求める。なお、光センサ230がカラータイプの撮像素子を用いたカメラである場合、処理装置310は、蛍光強度を、例えば、RGB等の各色成分の明るさの階調値の平均又は加重平均として求める。この場合、蛍光強度は階調値の平均又は加重平均を正規化した値であってもよい。
【0120】
処理装置310は、励起光源220を消灯させるように、測定装置21を制御する(ACT18)。この制御に基づき、測定装置21の制御回路210は、励起光源220を消灯させる。
【0121】
処理装置310は、蛍光構造体520、白色標準板530及び黒色標準板540のそれぞれの明るさの測定値から、蛍光構造体520の蛍光強度として蛍光強度比Ip[%]を求める(ACT19)。例えば、処理装置310は、以下の(B)式により蛍光強度比Ipを求める。蛍光強度比Ipは、蛍光強度を示す値の一例である。
Ip=(Sp-Sk)/(Sw-Sk) (B)
Sp: 蛍光体発光強度(蛍光構造体520の明るさの測定値)
Sk: 白反射強度(白色標準板530の明るさの測定値)
Sw: 黒反射強度(黒色標準板540の明るさの測定値)
【0122】
処理装置310は、蛍光強度を表示するように、表示装置320に対して指示する(ACT20)。表示の指示を受けて表示装置320は、蛍光強度を表示する。
【0123】
[鮮度レベル判定基準]
図14は、実施形態に係るサーバ1における鮮度レベル判定基準の一例を示す図である。
【0124】
鮮度レベル判定基準は、蛍光値に基づいて鮮度レベルを判定する基準である。複数の第1のレベルの各々は、鮮度に応じた蛍光値の範囲と対応付けられている。生食可レベルは、蛍光値が「75%以上100%以下」の範囲と対応付けられている。要加熱レベルは、生食可レベルよりも鮮度の低い蛍光値が「50%以上75%未満」の範囲と対応付けられている。食用不可レベルは、要加熱レベルよりも鮮度の低い蛍光値が「50%未満」の範囲と対応付けられている。複数の第2のレベルの各々は、鮮度に応じた蛍光値の範囲と対応付けられている。生食可レベルに含まれる安全レベルは、蛍光値が「80%以上100%以下」の範囲と対応付けられている。生食可レベルに含まれる要注意レベルは、安全レベルよりも鮮度の低い蛍光値が「75%以上80%未満」の範囲と対応付けられている。要加熱レベルに含まれる安全レベルは、生食可レベルに含まれる要注意レベルよりも鮮度の低い蛍光値が「60%以上75%未満」の範囲と対応付けられている。要加熱レベルに含まれる要注意レベルは、安全レベルよりも鮮度の低い蛍光値が「50%以上60%未満」の範囲と対応付けられている。食用不可レベルに含まれる要注意レベルは、要加熱レベルに含まれる要注意レベルよりも鮮度の低い蛍光値が「50%未満」の範囲と対応付けられている。鮮度レベル判定基準は、補助記憶デバイス13に保存される。鮮度レベル判定基準は、適宜更新されてもよい。
【0125】
図14に示すように、判定部112は、蛍光値に基づいて鮮度レベルを判定する。具体的には、判定部112は、蛍光値が「80%以上100%以下」である場合、鮮度レベルは「生食可:安全」と判定する。「生食可:安全」は、食品が生食可能であり、生食の鮮度として問題のないレベルを示す。判定部112は、蛍光値が「75%以上80%未満」である場合、鮮度レベルは「生食可:要注意」と判定する。「生食可:要注意」は、食品が生食可能であるが、生食の鮮度としては低く、要加熱レベルに近いレベルであることを示す。判定部112は、蛍光値が「60%以上75%未満」である場合、鮮度レベルは「要加熱:安全」と判定する。「要加熱:安全」は、食品の加熱調理が必要であり、加熱調理を前提とした鮮度として問題のないレベルを示す。判定部112は、蛍光値が「50%以上60%未満」である場合、鮮度レベルは「要加熱:要注意」と判定する。「要加熱:要注意」は、食品の加熱調理が必要であり、加熱調理を前提とした鮮度としても低く、食用不可レベルに近いレベルであることを示す。判定部112は、蛍光値が「50%未満」である場合、鮮度レベルは「食用不可:要注意」と判定する。「食用不可:要注意」は、食用に適さないレベルであることを示す。
【0126】
さらに、判定部112は、鮮度レベルに基づいて出力部114により出力される通知の通知態様を判定する。具体的には、判定部112は、鮮度レベルが「生食可:安全」である場合、通知態様は「生食可:保存状態OK」と判定する。「生食可:保存状態OK」は、食品が生食可能であり、食品の鮮度を保つための保存状態が良好であることを示す。判定部112は、鮮度レベルが「生食可:要注意」である場合、通知態様は「生食可:保存強化要」と判定する。「生食可:保存強化要」は、食品が生食可能であるが、生食の鮮度としては低いため、食品の鮮度を保つための保存を強化する必要があることを示す。判定部112は、鮮度レベルが「要加熱:安全」である場合、通知態様は「生食不可:保存強化要」と判定する。「生食不可:保存強化要」は、食品の加熱調理が必要であり、食品の生食は不可であるため、食品の鮮度を保つための保存を強化する必要があることを示す。判定部112は、鮮度レベルが「要加熱:要注意」である場合、通知態様は「要加熱:保存強化要」と判定する。「要加熱:保存強化要」は、食品の加熱調理が必要であり、加熱調理を前提とした鮮度としても低いため、食品の保存を強化する必要があることを示す。判定部112は、鮮度レベルが「食用不可:要注意」である場合、通知態様は「食用不可:保存改善要」と判定する。「食用不可:保存改善要」は、食品が食用に適さない状態であるため、食品の保存を改善する必要があることを示す。ここで、出力部114により出力される通知は、食品の鮮度レベルに関する各流通ポイントに対してのフィードバックに相当する。なお、判定部112は、計測食品の種類によっては、鮮度にかかわらず「生食可」とは判定しない。この場合、鮮度レベル判定基準は「生食可」に対応する部分を適宜更新する。
【0127】
[鮮度情報DB131の構成例]
図15は、実施形態に係る鮮度情報DB131を例示する図である。
鮮度情報DB131は、「食品ID」項目、「ユーザID」項目、「流通ポイント」項目、「日時」項目、「蛍光値」項目、「鮮度レベル情報」項目、及び「通知態様」項目を含む。「食品ID」項目は、各食品を識別する食品IDをセットする項目である。「ユーザID」項目は、各ユーザを識別するユーザIDをセットする項目である。「流通ポイント」項目は、各流通ポイントを識別する流通ポイント名をセットする項目である。流通ポイント名は、例えば、A漁港、B市場、C配送センタ、Dスーパー等である。「日時」項目は、取得部110により各流通ポイントから各食品の鮮度情報が取得された日時である。「蛍光値」項目は、各食品IDと関連付けられた食品の蛍光値をセットする項目である。「流通ポイント」項目、「日時」項目、及び「蛍光値」項目は、鮮度情報に対応する。「鮮度レベル情報」項目は、各食品IDと関連付けられた食品の鮮度レベル情報をセットする項目である。鮮度レベル情報は、判定部112により鮮度レベル判定基準に従って判定された鮮度レベルを示す情報である。「通知態様」項目は、各食品IDと関連付けられた食品についての通知態様をセットする項目である。通知態様は、判定部112により鮮度レベル判定基準に従って判定された通知態様を示す情報である。
【0128】
食品IDのそれぞれは、鮮度情報DB131により、鮮度レコードとしてユーザID、流通ポイント、日時、蛍光値、鮮度レベル情報、及び通知態様に関連付けられている。記憶制御部111は、端末31~34のそれぞれから鮮度情報を取得する毎に、鮮度情報を鮮度情報DB131に保存する。鮮度情報DB131は、鮮度情報を記憶する。記憶制御部111は、鮮度情報DB131を適宜更新する。
【0129】
[情報処理システム100による処理手順]
なお、以下のサーバ1を主体とする説明では、サーバ1をプロセッサ11と読み替えてもよい。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてよい。また、以下で説明する処理手順について、実施形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0130】
ここでは、食品ID「0001」の鮮魚について複数の段階の流通ポイントにおいて鮮度レベルを判定する場合を想定する。複数の段階の流通ポイントは、A漁港、B市場、C配送センタ、Dスーパーである。鮮魚「0001」は、流通経路の時間軸に従い、A漁港、B市場、C配送センタ、Dスーパーの段階順で流通する。この例では、A漁港、B市場、C配送センタ、Dスーパーのそれぞれにおいて、測定装置21及び端末31のペア、測定装置22及び端末32のペア、測定装置23及び端末33のペア、測定装置24及び端末34のペアのそれぞれが設置されているものとする。A漁港、B市場、C配送センタ、Dスーパーのそれぞれにおいて、ユーザは、鮮魚「0001」の蛍光値を取得する。
【0131】
サーバ1は、ユーザにより鮮魚「0001」の蛍光値が取得されたことに応答して、以下の情報処理を行う。サーバ1は、ユーザにより鮮魚「0001」の鮮度レベルを判定する指示が入力されたことに応答して、以下の情報処理を行ってもよい。「応答して」は、「基づいて」と読み替えてもよい。
【0132】
サーバ1による情報処理の手順について説明する。
図16は、実施形態に係るサーバ1による情報処理の手順を例示するフローチャートである。
取得部110は、A漁港に関連付けられた端末31から通信インタフェース14を介して鮮度情報を取得する(ACT101)。ACT101では、例えば、取得部110は、端末31から、A漁港に関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度に関する鮮度情報を取得する。例えば、取得部110は、端末31から鮮魚「0001」の蛍光値を取得する。
【0133】
判定部112は、取得部110により取得された鮮度情報に基づいて、鮮魚「0001」の鮮度レベルを判定する(ACT102)。ACT102では、例えば、判定部112は、鮮魚「0001」の蛍光値に基づいて、鮮魚「0001」の鮮度レベルを鮮度レベル判定基準に従って判定する。例えば、判定部112は、取得部110により取得された鮮魚「0001」の蛍光値が「98%」である場合、鮮度レベルを「生食可:安全」と判定する。
【0134】
出力部114は、通信インタフェース14を介して、判定部112による判定結果に基づいて通知を端末31へ出力する(ACT103)。ACT103では、例えば、出力部114は、判定部112により判定された鮮度レベルに基づいて通知を端末31へ出力する。例えば、出力部114は、判定部112より判定された鮮魚「0001」の鮮度レベルが「生食可:安全」である場合、鮮度レベル判定基準に従い、通知「生食可:保存状態OK」を端末31へ出力する。
【0135】
この例によれば、出力部114は、流通ポイントに関連付けられた鮮度情報に基づいて、判定部112による判定結果に応じた食品の鮮度管理に関する通知を当該流通ポイントの端末に出力することができる。これにより、サーバ1は、ユーザに対し食品の鮮度管理が適切であるかの確認を促すことができる。また、ユーザは、通知に基づいて食品の鮮度を適切に管理することができる。
【0136】
取得部110は、B市場に関連付けられた端末32から通信インタフェース14を介して鮮度情報を取得する(ACT104)。ACT104では、例えば、取得部110は、端末32から、B市場に関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度に関する鮮度情報を取得する。例えば、取得部110は、端末32から鮮魚「0001」の蛍光値を取得する。
【0137】
判定部112は、取得部110により取得された鮮度情報に基づいて、鮮魚「0001」の鮮度レベルを判定する(ACT105)。ACT105では、例えば、判定部112は、鮮魚「0001」の蛍光値に基づいて、鮮魚「0001」の鮮度レベルを鮮度レベル判定基準に従って判定する。例えば、判定部112は、取得部110により取得された鮮魚「0001」の蛍光値が「95%」である場合、鮮度レベルを「生食可:安全」と判定する。
【0138】
比較部113は、判定部112による基準流通ポイントに関連付けられた判定結果を直前の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果と比較する(ACT106)。この例では、基準流通ポイントはB市場であり、直前の段階の流通ポイントはA漁港である。ACT106では、例えば、比較部113は、判定部112により判定されたB市場に関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルを、A漁港に関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルと比較する。出力部114は、比較部113の比較結果に応じて通知の出力態様を変える。
【0139】
例えば、判定部112により判定されたB市場に関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルが「生食可:安全」であり、A漁港に関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルが「生食可:安全」である場合について説明する。比較部113は、B市場に関連付けられた鮮度レベルを、A漁港に関連付けられた鮮度レベルと比較し、鮮度レベルが同一であると判断する。比較部113により、基準流通ポイントに関連付けられた判定結果と直前の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果が同一であると判断された場合(ACT106:YES)、処理はACT106からACT108へ遷移する。この場合、出力部114は、通知の出力を行わない。
【0140】
例えば、判定部112により判定されたB市場に関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルが「生食可:要注意」であり、A漁港に関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルが「生食可:安全」である場合について説明する。比較部113は、B市場に関連付けられた鮮度レベルを、A漁港に関連付けられた鮮度レベルと比較し、鮮度レベルが同一でないと判断する。比較部113により、基準流通ポイントに関連付けられた判定結果と直前の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果が同一でないと判断された場合(ACT106:NO)、処理はACT106からACT107へ遷移する。この場合、出力部114は、ACT107に従い、通知の出力を行う。
【0141】
出力部114は、通信インタフェース14を介して、判定部112により判定された基準流通ポイントに関連付けられた判定結果に基づいて通知を端末へ出力する(ACT107)。ACT107では、例えば、出力部114は、基準流通ポイントに関連付けられた鮮度レベルに基づいて通知を基準流通ポイントに関連付けられた端末32へ出力する。以下の説明において、基準流通ポイントに関連付けられた鮮度レベルに基づく通知は、基準流通ポイントについての通知ともいう。また、出力部114は、基準流通ポイントについての通知を前段階の流通ポイントに関連付けられた端末31へ出力する。
【0142】
例えば、出力部114は、判定部112により判定されたB市場に関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルが「生食可:要注意」である場合、鮮度レベル判定基準に従い、通知「生食可:保存強化要」を端末32へ出力する。また、出力部114は、B市場についての通知「生食可:保存強化要」をA漁港に関連付けられた端末31へ出力する。
【0143】
この例によれば、出力部114は、流通ポイントに関連付けられた鮮度情報に基づく判定結果と、当該流通ポイントの前段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果との比較に応じて、食品の鮮度管理に関する通知を当該流通ポイントの端末に出力することができる。これにより、サーバ1は、ユーザに対し食品の鮮度管理が適切であるかの確認を促すことができる。また、出力部114は、食品の鮮度管理に関する通知を当該流通ポイントの前段階の流通ポイントの端末に出力することができる。これにより、サーバ1は、トレースバック方向の流通ポイントのユーザに対しても食品の鮮度管理が適切であるかの確認を促すことができる。そのため、複数の段階の流通ポイントのユーザは、通知に基づいて食品の鮮度を適切に管理することができる。さらに、出力部114は、前段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果が当該流通ポイントに関連付けられた判定結果と異なる場合に通知を出力することができる。これにより、サーバ1は、保存状態の変化をユーザに識別可能とし、ユーザに対し鮮度管理の改善、強化等の対応を促すことができる。また、出力部114は、前段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果が当該流通ポイントに関連付けられた判定結果と同一の場合には通知の出力を省略することができる。これにより、サーバ1は、処理過程を削減することができる。
【0144】
取得部110は、C配送センタに関連付けられた端末33から通信インタフェース14を介して鮮度情報を取得する(ACT108)。ACT108では、例えば、取得部110は、端末33から、C配送センタに関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度に関する鮮度情報を取得する。例えば、取得部110は、端末33から鮮魚「0001」の蛍光値を取得する。
【0145】
判定部112は、取得部110により取得された鮮度情報に基づいて、鮮魚「0001」の鮮度レベルを判定する(ACT109)。ACT109では、例えば、判定部112は、鮮魚「0001」の蛍光値に基づいて、鮮魚「0001」の鮮度レベルを鮮度レベル判定基準に従って判定する。例えば、判定部112は、取得部110により取得された鮮魚「0001」の蛍光値が「77%」である場合、鮮度レベルを「生食可:要注意」と判定する。
【0146】
比較部113は、判定部112による基準流通ポイントに関連付けられた判定結果を直前の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果と比較する(ACT110)。この例では、基準流通ポイントはC配送センタであり、直前の段階の流通ポイントはB市場である。ACT110では、例えば、比較部113は、判定部112により判定されたC配送センタに関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルを、B市場に関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルと比較する。出力部114は、比較部113の比較結果に応じて通知の出力態様を変える。
【0147】
例えば、判定部112により判定されたC配送センタに関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルが「生食可:安全」であり、B市場に関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルが「生食可:安全」である場合について説明する。比較部113は、C配送センタに関連付けられた鮮度レベルを、B市場に関連付けられた鮮度レベルと比較し、鮮度レベルが同一であると判断する。比較部113により、基準流通ポイントに関連付けられた判定結果と直前の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果が同一であると判断された場合(ACT110:YES)、処理はACT110からACT112へ遷移する。この場合、出力部114は、通知の出力を行わない。
【0148】
例えば、判定部112により判定されたC配送センタに関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルが「生食可:要注意」であり、B市場に関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルが「生食可:安全」である場合について説明する。比較部113は、C配送センタに関連付けられた鮮度レベルを、B市場に関連付けられた鮮度レベルと比較し、鮮度レベルが同一でないと判断する。比較部113により、基準流通ポイントに関連付けられた判定結果と直前の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果が同一でないと判断された場合(ACT110:NO)、処理はACT110からACT111へ遷移する。この場合、出力部114は、ACT111に従い、通知の出力を行う。
【0149】
出力部114は、通信インタフェース14を介して、判定部112により判定された基準流通ポイントに関連付けられた判定結果に基づいて通知を端末へ出力する(ACT111)。ACT111では、例えば、出力部114は、基準流通ポイントに関連付けられた鮮度レベルに基づいて通知を基準流通ポイントに関連付けられた端末33へ出力する。また、出力部114は、基準流通ポイントについての通知を1以上の前段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた1以上の端末へ出力する。
【0150】
例えば、出力部114は、判定部112により判定されたC配送センタに関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルが「生食可:要注意」である場合、鮮度レベル判定基準に従い、通知「生食可:保存強化要」を端末33へ出力する。また、出力部114は、C配送センタについての通知「生食可:保存強化要」をA漁港及びB市場のそれぞれに関連付けられた端末31及び端末32へ出力する。
【0151】
この例によれば、出力部114は、食品の鮮度管理に関する通知を基準流通ポイント及び複数の前段階の流通ポイントの端末に出力することができる。これにより、サーバ1は、トレースバック方向の流通ポイントのすべてのユーザに対して食品の鮮度管理が適切であるかの確認を促すことができる。そのため、複数の段階の流通ポイントのユーザは、通知に基づいて食品の鮮度を適切に管理することができる。
【0152】
取得部110は、Dスーパーに関連付けられた端末34から通信インタフェース14を介して鮮度情報を取得する(ACT112)。ACT112では、例えば、取得部110は、端末34から、Dスーパーに関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度に関する鮮度情報を取得する。例えば、取得部110は、端末34から鮮魚「0001」の蛍光値を取得する。
【0153】
判定部112は、取得部110により取得された鮮度情報に基づいて、鮮魚「0001」の鮮度レベルを判定する(ACT113)。ACT113では、例えば、判定部112は、鮮魚「0001」の蛍光値に基づいて、鮮魚「0001」の鮮度レベルを鮮度レベル判定基準に従って判定する。例えば、判定部112は、取得部110により取得された鮮魚「0001」の蛍光値が「70%」である場合、鮮度レベルを「要加熱:安全」と判定する。
【0154】
比較部113は、判定部112による基準流通ポイントに関連付けられた判定結果を直前の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果と比較する(ACT114)。この例では、基準流通ポイントはDスーパーであり、直前の段階の流通ポイントはC配送センタである。ACT114では、例えば、比較部113は、判定部112により判定されたDスーパーに関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルを、C配送センタに関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルと比較する。出力部114は、比較部113の比較結果に応じて通知の出力態様を変える。
【0155】
例えば、判定部112により判定されたDスーパーに関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルが「生食可:要注意」であり、C配送センタB市場に関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルが「生食可:要注意」である場合について説明する。比較部113は、C配送センタに関連付けられた鮮度レベルを、B市場に関連付けられた鮮度レベルと比較し、鮮度レベルが同一であると判断する。比較部113により、基準流通ポイントに関連付けられた判定結果と直前の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果が同一であると判断された場合(ACT114:YES)、処理は終了する。
【0156】
例えば、判定部112により判定されたDスーパーに関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルが「要加熱:安全」であり、C配送センタに関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルが「生食可:要注意」である場合について説明する。比較部113は、Dスーパーに関連付けられた鮮度レベルを、C配送センタに関連付けられた鮮度レベルと比較し、鮮度レベルが同一でないと判断する。比較部113により、基準流通ポイントに関連付けられた判定結果と直前の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果が同一でないと判断された場合(ACT114:NO)、処理はACT114からACT115へ遷移する。この場合、出力部114は、ACT115に従い、通知の出力を行う。
【0157】
出力部114は、通信インタフェース14を介して、判定部112により判定された基準流通ポイントに関連付けられた判定結果に基づいて通知を端末へ出力する(ACT115)。ACT115では、例えば、出力部114は、基準流通ポイントに関連付けられた鮮度レベルに基づいて通知を基準流通ポイントに関連付けられた端末34へ出力する。また、出力部114は、基準流通ポイントについての通知を1以上の前段階の流通ポイントのそれぞれに関連付けられた1以上の端末へ出力する。
【0158】
例えば、出力部114は、判定部112により判定されたDスーパーに関連付けられた鮮魚「0001」の鮮度レベルが「要加熱:安全」である場合、鮮度レベル判定基準に従い、通知「生食不可:保存強化要」を端末34へ出力する。また、出力部114は、Dスーパーについての通知「生食可:保存強化要」をA漁港、B市場、及びC配送センタのそれぞれに関連付けられた端末31、端末32、及び端末33へ出力する。
【0159】
この例によれば、出力部114は、食品の鮮度管理に関する通知を基準流通ポイント及び複数の前段階の流通ポイントの端末に出力することができる。これにより、サーバ1は、トレースバック方向の流通ポイントのすべてのユーザに対して食品の鮮度管理が適切であるかの確認を促すことができる。そのため、複数の段階の流通ポイントのユーザは、通知に基づいて食品の鮮度を適切に管理することができる。
【0160】
なお、出力部114により出力される通知は、テキストに限られず、数値、アイコン、記号、動画等の任意の表示態様であってもよい。出力部114は、通知の出力に加え、又は通知の出力に代えて判定部112により判定された鮮度レベルを出力してもよい。出力部114は、判定部112により判定された鮮度レベルが「要注意」レベルである場合、通知の出力に加え、又は通知の出力に代えてアラートを出力してもよい。アラートは、ユーザにとって所定の変化が識別可能であればよく、文字、マーク、又は色で示されてもよい。また、出力部114は、アラートを動画又は音声を用いて出力してもよい。
【0161】
なお、ACT106、ACT110、ACT114において、比較部113により、基準流通ポイントに関連付けられた判定結果と直前の段階の流通ポイントに関連付けられた判定結果が同一であると判断された場合においても、基準流通ポイントについての通知を基準流通ポイントに関連付けられた端末へ出力してもよい。
【0162】
以下、変形例について説明する。
【0163】
変形例の鮮度レベル判定基準について説明する。
図17は、実施形態に係る変形例の鮮度レベル判定基準の一例を示す図である。
【0164】
鮮度レベル判定基準は、上述の実施形態と同様に、蛍光値に基づいて鮮度レベルを判定する基準である。鮮度レベル判定基準は、補助記憶デバイス13に保存される。鮮度レベル判定基準は、適宜更新されてもよい。
【0165】
図17に示すように、判定部112は、蛍光値に基づいて鮮度レベルを判定する。判定部112による鮮度レベルの判定方法は、上述の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0166】
判定部112は、鮮度レベルに基づいて出力部114により出力される通知の通知態様を判定する。第1のレベルが複数の第2のレベルを含む場合について説明する。判定部112は、複数の第2のレベルのうち最も鮮度の低い蛍光値の範囲に対応付けられた第2のレベルについては、通知態様を「通知有」と判定する。「通知有」は、出力部114による端末への通知の出力を行うことを示す。複数の第2のレベルのうち最も鮮度の低い蛍光値の範囲に対応付けられた第2のレベルは、この第2のレベルの属する第1のレベルよりも鮮度の低い蛍光値の範囲に対応付けられた別の第1のレベルの直前のレベルである。複数の第2のレベルのうち最も鮮度の低い蛍光値の範囲に対応付けられた第2のレベル以外の第2のレベルについては、通知態様を「通知無」と判定する。「通知無」は、出力部114による端末への通知の出力を行わないことを示す。第1のレベルが安全レベル及び要注意レベルを含む場合、要注意レベルは、複数の第2のレベルのうち最も鮮度の低い蛍光値の範囲に対応付けられた第2のレベルである。安全レベルは、複数の第2のレベルのうち最も鮮度の低い蛍光値の範囲に対応付けられた第2のレベル以外の第2のレベルである。生食可レベルに含まれる要注意レベルは、要加熱レベルの直前のレベルである。要加熱レベルに含まれる要注意レベルは、食用不可レベルの直前のレベルである。第1のレベルが1つの第2のレベルのみを含む場合、判定部112は、当該第1のレベルについて通知態様を「通知有」と判定する。具体的には、判定部112は、鮮度レベルが「生食可:安全」である場合、通知態様は「通知無」と判定する。判定部112は、鮮度レベルが「生食可:要注意」である場合、通知態様は「生食可:保存強化要」と判定する。判定部112は、鮮度レベルが「要加熱:安全」である場合、通知態様は「通知無」と判定する。判定部112は、鮮度レベルが「要加熱:要注意」である場合、通知態様は「要加熱:保存強化要」と判定する。判定部112は、鮮度レベルが「食用不可:要注意」である場合、通知態様は「食用不可:保存改善要」と判定する。
【0167】
変形例の鮮度情報DB131の構成例について説明する。
図18は、実施形態に係る変形例の鮮度情報DB131を例示する図である。
鮮度情報DB131は、上述の実施形態と同様に、「食品ID」項目、「ユーザID」項目、「流通ポイント」項目、「日時」項目、「蛍光値」項目、「鮮度レベル情報」項目、及び「通知態様」項目を含む。通知態様は、判定部112により図17に示す鮮度レベル判定基準に従って判定された通知態様を示す情報である。
【0168】
食品IDのそれぞれは、鮮度情報DB131により、鮮度レコードとしてユーザID、流通ポイント、日時、蛍光値、鮮度レベル情報、及び通知態様に関連付けられている。サーバ1は、端末31~34のそれぞれから鮮度情報を取得する毎に、鮮度情報DB131を更新する。
【0169】
サーバ1による変形例の情報処理の手順について説明する。
【0170】
出力部114は、通信インタフェース14を介して、判定部112による判定結果に基づいて通知を端末へ出力する。出力部114は、判定部112による判定結果に応じて通知の出力態様を変える。例えば、出力部114は、判定部112による判定結果に対応する通知態様が「通知無」である場合、端末への通知の出力を行わない。
【0171】
この例によれば、出力部114は、鮮度レベルが「要注意」である場合にのみ通知を出力することができる。そのため、出力部114による処理を簡略化することができる。また、ユーザは、鮮度レベルが「要注意」である場合にのみ通知を受け取るため、通知に対する注意を促すことができる。
【0172】
なお、最初の流通ポイントに関連付けられた食品の鮮度レベルに基づく通知態様が「通知無」である場合は、出力部114は、上述の実施形態に基づく通知態様に従い通知を出力する。出力部114は、判定部112により判定された鮮度レベル基づいて通知を出力する。例えば、判定部112により、漁港Aに関連付けられた食品の鮮度レベルが「要加熱:安全」である場合、出力部114は、通知「生食不可:保存強化要」を端末31へ出力する。
【0173】
この例によれば、出力部114は、最初の流通ポイントについては、鮮度レベルに対応する通知態様にかかわらず通知を出力する。そのため、出力部114は、最初の流通ポイントに関連付けられた食品についての鮮度管理の強化が必要な場合においても、通知を出力することができる。かかる場合において、サーバ1は、ユーザに対して保存状態に関する注意を促すことができる。
【0174】
本実施形態は、鮮魚の流通経路を想定した例を用いて説明したが、これに限定されない。本実施形態は、例えば、精肉、青果、加工食品等の蛍光値により鮮度を判別可能な食品の流通経路に適用可能である。
【0175】
なお、流通経路における流通ポイントの数は、少なくとも一つであればよい。流通ポイントは、ユーザにより任意に選択可能である。ユーザは、流通経路の各段階において複数の流通ポイントを選択してもよい。
【0176】
なお、情報処理装置は、サーバ1を例に説明したように1つの装置で実現されてもよいし、複数の装置に機能を分散させたシステムによって実現されてもよい。
【0177】
プログラムは、電子機器に記憶された状態で譲渡されてよいし、電子機器に記憶されていない状態で譲渡されてもよい。後者の場合は、プログラムは、ネットワークを介して譲渡されてよいし、記録媒体に記録された状態で譲渡されてもよい。記録媒体は、非一時的な有形の媒体である。記録媒体は、電子機器可読媒体である。記録媒体は、CD-ROM、メモリカード等のプログラムを記憶可能かつ電子機器で読取可能な媒体であればよく、その形態は問わない。
【0178】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0179】
1…サーバ、11…プロセッサ、12…メインメモリ、13…補助記憶デバイス、14…通信インタフェース、21~24…測定装置、31~34…端末、100…情報処理システム、110…取得部、111…記憶制御部、112…判定部、113…比較部、114…出力部、131…鮮度情報データベース、210…制御回路、220…励起光源、230…光センサ、230-1…光センサ、230-2…光センサ、230-3…光センサ、240…カットフィルタ、260…処理インタフェース、270…電源、310…処理装置、320…表示装置、330…入力装置、400…測定容器、410…トレイ、420…フィルム、430…食品、500…蛍光体ユニット、501…蛍光体ユニット、502…蛍光体ユニット、510…基部、520…蛍光構造体、521…基材、5211…繊維、522…蛍光体層、5221…凝集誘起蛍光体、530…白色標準板、540…黒色標準板。
図1
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