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特許7599984放射線撮像装置、放射線撮像システム、放射線撮像装置の制御方法およびプログラム
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  • 特許-放射線撮像装置、放射線撮像システム、放射線撮像装置の制御方法およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】放射線撮像装置、放射線撮像システム、放射線撮像装置の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20241209BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20241209BHJP
【FI】
A61B6/00 520Z
A61B6/42 500S
A61B6/00 550M
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021021062
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123631
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅川 一昭
【審査官】井海田 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-28033(JP,A)
【文献】特開2003-190126(JP,A)
【文献】特開2011-167423(JP,A)
【文献】特開2020-54439(JP,A)
【文献】特開2015-91321(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/061762(JP,A1)
【文献】再公表特許第2005/044107(JP,A1)
【文献】再公表特許第2006/101233(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0176535(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111166364(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の入射に応じた放射線画像を取得するための複数の画素が配された検出部と、前記検出部で放射線画像を取得する際の撮像モードを含む制御信号を制御装置から受信する通信部と、制御部と、を含む放射線撮像装置であって、
前記制御部は、
前記通信部と前記制御装置との間の通信状態が正常である第1状態において、撮像指示があった場合に前記制御信号に応じた撮像モードで前記検出部を動作させ、
前記通信状態が正常でない第2状態において、撮像指示があった場合に予め設定された異常時撮像モードで前記検出部を動作させ、
前記第2状態において、放射線が照射されていない期間に、前記異常時撮像モードとは異なる撮像モードのオフセット画像データが得られるように前記検出部を動作させることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2状態において、放射線が照射されていない期間に、前記異常時撮像モードを含む少なくとも2つの撮像モードのオフセット画像データが得られるように前記検出部を動作させることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2状態において、放射線が照射されていない期間に、前記放射線撮像装置に設定されたすべての撮像モードのオフセット画像データが得られるように前記検出部を動作させることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記制御部は、オフセット画像データを取得してから経過した時間を計測するタイマを含み、
前記制御部は、前回のオフセット画像データの取得から所定の時間が経過し、かつ、放射線が照射されていないタイミングでオフセット画像データが得られるように前記検出部を動作させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記タイマは、放射線画像データを取得してから経過した時間をさらに計測し、
前記制御部は、前回のオフセット画像データの取得から所定の時間が経過し、放射線が照射されておらず、かつ、前回の放射線画像データの取得から所定の時間が経過したタイミングでオフセット画像データが得られるように前記検出部を動作させることを特徴とする請求項4に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記制御部は、放射線画像データの取得中に前記通信状態が前記第1状態と前記第2状態との間で変化した場合、当該放射線画像データを取得した後に、前記第1状態から前記第2状態へ、または、前記第2状態から前記第1状態へ遷移することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記制御部は、放射線画像データの取得中に前記通信状態が前記第1状態と前記第2状態との間で変化した場合、当該放射線画像データを取得する動作を中断し、前記第1状態から前記第2状態へ、または、前記第2状態から前記第1状態へ遷移することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の放射線撮像装置と、
前記制御信号を前記放射線撮像装置との間で通信する制御装置と、
前記放射線撮像装置に放射線を照射する放射線源と、
を備えることを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記通信部に定期的にコマンドを送信し、
前記制御部は、前記通信部が前記コマンドを受信しているか否かを判定することによって、前記通信状態が正常であるか否かを判定することを特徴とする請求項8に記載の放射線撮像システム。
【請求項10】
前記放射線撮像装置と前記放射線源とが、前記制御装置を介さずに放射線画像を撮像可能に構成されていることを特徴とする請求項8または9に記載の放射線撮像システム。
【請求項11】
前記放射線撮像システムは、前記制御装置を介さずに前記放射線撮像装置で取得した放射線画像データに基づいた放射線画像を表示する表示部をさらに含むことを特徴とする請求項8乃至10の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項12】
前記放射線撮像装置は、前記第2状態であることを示す報知信号を前記表示部に出力し、
前記表示部は、前記放射線撮像装置が前記第2状態であることを報知することを特徴とする請求項11に記載の放射線撮像システム。
【請求項13】
前記報知信号が、放射線画像データに添付されることを特徴とする請求項12に記載の放射線撮像システム。
【請求項14】
放射線の入射に応じた放射線画像を取得するための複数の画素が配された検出部と、前記検出部で放射線画像を取得する際の撮像モードを含む制御信号を制御装置との間で通信する通信部と、を含む放射線撮像装置の制御方法であって、
前記通信部と前記制御装置との間の通信状態が正常であるか否かを判定する工程と、
前記通信状態が正常な第1状態において、撮像指示があった場合に前記制御信号に応じた撮像モードで前記検出部を動作させる工程と、
前記通信状態が正常でない第2状態において、撮像指示があった場合に予め設定された異常時撮像モードで前記検出部を動作させる工程と、を含み、
前記第2状態において、放射線が照射されていない期間に、前記異常時撮像モードとは異なる撮像モードのオフセット画像データが得られるように前記検出部を動作させることを特徴とする制御方法。
【請求項15】
コンピュータに、請求項14に記載の制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像装置、放射線撮像システム、放射線撮像装置の制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療画像診断や非破壊検査において、半導体材料によって構成される平面検出器(フラットパネルディテクタ:FPD)を用いた放射線撮像装置が広く使用されている。特許文献1には、ユーザからの指示に従い、コマンド通信制御装置からのコマンド通信によって、放射線撮影装置の撮影モードの設定する放射線撮影システムが示されている。特許文献1の放射線撮影システムは、コマンド通信制御装置がダウンし、コマンド通信ができない場合であっても、ユーザの緊急撮影遷移ボタンの押下などに応じて予め設定された特定の撮影モードで動作する緊急撮影モードを備えることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-028033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射線画像を撮像した際に画素から出力される信号には、照射された放射線応じた成分だけでなく、画素の暗電流などに起因するオフセット成分が存在するため、放射線が照射されていない状態で取得したオフセット画像データを用いたオフセット補正が行われる。オフセット成分は、放射線画像を撮像する際の感度設定や蓄積時間、ビニング数などの撮像モードによってオフセット量が変化する。また、オフセット成分は、放射線撮像装置の動作に伴う温度の変化などに応じてオフセット量が変化するため、適当なタイミングでそれぞれの撮像モードに応じたオフセット画像を再取得する必要がある。特許文献1の放射線撮影システムにおいて、コマンド通信制御装置がダウン状態から復旧し、緊急撮影モードから所望の撮影モードに遷移させて撮影を行おうとした場合に、オフセット画像の再取得が必要になり、撮影開始まで時間がかかってしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、放射線撮像装置において、待機時間の抑制に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係る放射線撮像装置は、放射線の入射に応じた放射線画像を取得するための複数の画素が配された検出部と、前記検出部で放射線画像を取得する際の撮像モードを含む制御信号を制御装置から受信する通信部と、制御部と、を含む放射線撮像装置であって、前記制御部は、前記通信部と前記制御装置との間の通信状態が正常である第1状態において、撮像指示があった場合に前記制御信号に応じた撮像モードで前記検出部を動作させ、前記通信状態が正常でない第2状態において、撮像指示があった場合に予め設定された異常時撮像モードで前記検出部を動作させ、前記第2状態において、放射線が照射されていない期間に、前記異常時撮像モードとは異なる撮像モードのオフセット画像データが得られるように前記検出部を動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記手段によって、放射線撮像装置において、待機時間の抑制に有利な技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る放射線撮像装置および放射線撮像装置を用いた放射線撮像システムの構成例を示すブロック図。
図2図1の放射線撮像装置の検出部の構成例を示すブロック図。
図3図1の放射線撮像装置の動作を説明するフロー図。
図4図1の放射線撮像装置の動作を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
また、本発明における放射線には、放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギを有するビーム、例えばX線や粒子線、宇宙線なども含みうる。
【0011】
図1~4を参照して、本実施形態による放射線撮像装置の構成、および、動作について説明する。図1は、本実施形態の放射線撮像装置100の構成例を示すブロック図である。また、図1には、本実施形態の放射線撮像装置100を用いた放射線撮像システムSYSのブロック図が示されている。本実施形態の放射線撮像装置100は、例えば、医療用として使用されうる。
【0012】
放射線撮像システムSYSは、放射線撮像装置100と、制御装置400と、放射線源301と、を備える。放射線撮像装置100は、放射線の入射に応じた放射線画像を取得するための複数の画素が配された検出部200を含む。放射線源301は、放射線源制御装置300によって制御され、放射線撮像装置100に放射線を照射する。制御装置400は、放射線撮像装置100および放射線源制御装置300を制御する。制御装置400は、制御信号を放射線撮像装置100との間で通信し、放射線撮像装置100からの放射線画像データの収集や放射線画像データに基づいた放射線画像の表示を行う。また、制御装置400は、検出部200で放射線画像を取得する際の撮像モードを含む制御信号を生成するための撮像オーダの受付や撮像情報登録が可能な放射線撮像アプリケーション404を含む。放射線撮像システムSYSは、さらに、放射線撮像装置100から出力された放射線画像データを制御装置400に出力する画像制御装置500を含みうる。
【0013】
制御装置400は、例えばLAN(Local Area Network)によって構成される病院内ネットワーク600に接続されている。病院内ネットワーク600には、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)/放射線情報システム(RIS:Radiology Information System)601が接続されている。制御装置400とHIS/RIS601とは、相互に通信が可能であり、例えば、放射線画像の撮像オーダや、患者情報を含んだ撮像情報、さらに、放射線画像データの病院内でのやりとりを可能とする。
【0014】
放射線撮像装置100は、検出部200、制御部101、電源部115を含む。検出部は、検出部200に入射する放射線を検出し、検出した放射線の線量に応じた画像データを生成する。制御部101は、放射線撮像装置100に配される各構成を制御する。制御部101は、駆動制御部102、画像処理部106、オフセット制御部108、記憶部109、通信部112、タイマ113、照射タイミング制御部114を含む。駆動制御部102は、放射線の照射に応じた放射線画像データ、および、放射線画像データを補正するためのオフセット画像データが得られるように検出部200の動作を制御する。画像処理部106は、検出部200から取得した画像データに対して画像処理を行う。オフセット制御部108は、オフセット画像を更新するタイミングの制御を行う。記憶部109は、取得した画像データを記憶する。通信部112は、制御装置400との通信や放射線源制御装置300との通信を制御する。通信部112は、例えば、検出部200で放射線画像を取得する際の撮像モードを含む制御信号を制御装置400から受信する。タイマ113は、撮像時刻や経過時間などを取得する。照射タイミング制御部114は、放射線源制御装置300の放射線源301に対する放射線の照射信号に応じて、検出部200の撮像動作への遷移などの制御を行う。電源部115は、放射線撮像装置100内の各構成に電力を供給する。
【0015】
制御部101は、例えば、記憶部109に保存されているプログラムなどを読み出し、読み出されたプログラムに基づいて放射線撮像装置100全体の制御を行ってもよい。また、制御部101は、ASICなどの制御信号発生回路を含み放射線撮像装置100の制御を行ってもよい。さらに、プログラムと制御信号発生回路との両方によって放射線撮像装置100全体の制御が実現されてもよい。
【0016】
駆動制御部102は、撮像準備駆動制御103、放射線画像取得制御104、オフセット画像取得制御105を含む複数の制御モードを切り替えて検出部200を制御する。撮像準備駆動制御103は、検出部200を放射線画像の撮像が可能な状態に準備する制御である。放射線画像取得制御104は、放射線画像データが取得されるように検出部200を駆動する制御である。オフセット画像取得制御105は、オフセット画像データが取得されるように検出部200を駆動する制御である。撮像準備駆動制御103において、駆動制御部102は、検出部200に対して撮像時と同様の電圧を印加しつつ、周期的に電荷の読み出しを行わせ、検出部200に配された各画素に蓄積される暗電荷のリセットを行わせる。この際に画素から読み出された信号は、画像データとしては扱わず、記憶部109に記憶されなくてもよい。放射線画像取得制御104において、駆動制御部102は、検出部200を撮像準備駆動制御103と同様に駆動させ、検出部200に配された画素に放射線の照射に応じた電荷を蓄積させる。次いで、画素に蓄積された電荷を放射線画像データ110として読み出し記憶部109に記憶させる。駆動制御部102が、この放射線画像取得制御104を連続的に実施することによって、動画の撮像が可能である。オフセット画像取得制御105において、駆動制御部102は、撮像準備駆動制御103と同様の駆動を検出部200に行わせ、放射線を照射しない状態で読み出した画像データをオフセット画像データ111として記憶部109に記憶させる。
【0017】
放射線画像取得制御104によって検出部200から取得された放射線画像データ110は、予めオフセット画像取得制御105によって取得されたオフセット画像データ111を用いてオフセット補正される。オフセット補正の処理は、画像処理部106のオフセット補正部107で行われてもよい。オフセット補正された放射線画像データは、通信部112を介して、画像制御装置500に転送される。ここではオフセット補正の処理のみ説明しているが、画像処理部106は、例えば、欠損画素の補正や検出部200に配されたアンプのゲインばらつきを補正するゲイン補正などの他の補正処理を行ってもよい。また、これら補正処理は、放射線撮像装置100で実施されなくてもよい。例えば、取得した放射線画像データ110およびオフセット画像データ111が、補正などの処理が実施されずに画像制御装置500に転送され、画像制御装置500が、これらの補正処理を行ってもよい。また、オフセット補正に使用するオフセット画像データは、例えば、複数のオフセット画像データを取得し、平均化などによってノイズ成分の低減処理などを行った画像データを使用してもよい。
【0018】
放射線源制御装置300は、放射線源制御装置300を操作するための操作UI302を含む。操作UI302は、キーボードやマウス、曝射スイッチなどを含みうる。操作UI302を用いて、ユーザは、放射線の照射条件の設定や放射線の照射を行ってもよい。放射線源制御装置300と放射線撮像装置100との間は、専用の信号線で情報のやりとりを可能とする。放射線源制御装置300と放射線撮像装置100との間で、例えば、放射線の照射の開始や終了の通知、放射線の照射可能タイミングの通知など同期信号のやりとりが行われてもよい。これによって、放射線撮像装置100と放射線源制御装置300によって制御される放射線源301とが、制御装置400を介さずに放射線画像を撮像可能に構成される。
【0019】
制御装置400は、撮像制御部402、照射制御部403、通信部401、放射線撮像アプリケーション404、表示部406、操作UI407、電源部405を含み、放射線撮像システムSYSの各構成の制御を行う。撮像制御部402は、放射線撮像アプリケーション404を介したユーザの設定に従って、画像データを取得するタイミングの制御や検出部200で放射線画像を取得する際の撮像モードを含む撮像条件の設定など、放射線撮像装置100の制御を行う。照射制御部403は、放射線撮像アプリケーション404を介したユーザの設定に従って、放射線源制御装置300を制御することによって放射線源301から照射される放射線の照射条件などの制御を行う。通信部401は、放射線撮像装置100、放射線源制御装置300および病院内ネットワーク600との通信を制御する。放射線撮像アプリケーション404は、撮像オーダの受付や撮像情報の登録を行う。表示部406は、放射線撮像装置100で得られた放射線画像データに基づいた放射線画像や撮像を行う際の撮像モードなどの撮像条件の情報を表示する。操作UI407は、放射線撮像アプリケーション404を操作するためのキーボードやマウスなどでありうる。電源部405は、制御装置400内の各構成に電力を供給する。
【0020】
ここで、制御装置400と放射線撮像装置100との間の通信や、制御装置400と放射線源制御装置300との間の通信は、RS232CやUSB、イーサネットなどの規格を用いたケーブル接続通信であってもよい。また、制御装置400と放射線撮像装置100との間の通信や、制御装置400と放射線源制御装置300との間の通信は、専用信号線を用いた通信であってもよいし、無線通信であってもよい。また、制御装置400と放射線撮像装置100との間の通信や、制御装置400と放射線源制御装置300との間の通信は、有線通信と無線通信との組み合わせであってもよい。
【0021】
制御装置400と放射線撮像装置100との間の通信において、例えば、放射線撮像装置100から制御装置400に、画像データや放射線撮像装置100の装置状態を示す信号が送信される。また、例えば、制御装置400から放射線撮像装置100に、画像データを取得する際の撮像モードなどの条件設定の信号を含む制御信号が送信される。また、制御装置400と放射線源制御装置300との間の通信において、例えば、放射線の照射条件の設定の信号などが、制御装置400から放射線源制御装置300に送信される。また、例えば、放射線源制御装置300から制御装置400に、放射線源制御装置300の装置状態を示す信号や、放射線を照射した際の実際の照射情報などの信号が送信される。
【0022】
画像制御装置500は、放射線撮像装置100から転送された画像データに対する画像処理を行い、制御装置400に画像処理された画像データを転送する。また、制御装置400が動作していない場合に、制御装置400を介さずに放射線撮像装置100で取得した放射線画像データに基づいた放射線画像を表示するための表示部501が、画像制御装置500に接続されている。
【0023】
図2は、放射線撮像装置100の検出部200の構成例を示すブロック図である。検出部200は、放射線の入射に応じた放射線画像を取得するために、複数の行および複数の列を構成するように2次元アレイ状に配列された複数の画素207を含むセンサアレイ204を有する。センサアレイ204に配された画素207は、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)などのスイッチ素子208と、光電変換素子209とを含み、画素207(光電変換素子209)の上には、シンチレータ(不図示)が配されうる。シンチレータは、例えば、センサアレイ204において一体的に形成されうる。画素207がシンチレータと光電変換素子209とを備える場合、検出部200に入射した放射線は、シンチレータによって可視光に変換され、変換された可視光が入射した光電変換素子209において、可視光に応じた電荷が生成される。このように、画素207として、シンチレータおよび光電変換素子209によって、入射した放射線を電荷に変換する所謂、間接変換型の変換素子が用いられてもよい。また、例えば、シンチレータを設けずに、入射した放射線を直接電荷に変換する所謂、直接変換型の変換素子が、画素207に用いられてもよい。スイッチ素子208のON(導通)状態とOFF(不導通)状態との切り替えによって、光電変換素子209で生成される電荷の蓄積と電荷の読み出しとが実施され、画像データを取得することができる。
【0024】
検出部200のセンサアレイ204に配された画素207は、行ごとにドライブ回路201から共通の駆動線211を介してスイッチ素子208がON状態になる電圧を印加されることによってスイッチ素子208がON状態になる。スイッチ素子208がON状態になると、画素207に蓄積された電荷に応じた信号が、それぞれの画素207が接続された信号線210を介してサンプルホールド回路202に転送される。その後、サンプルホールド回路202に保持された画素207から出力された信号は、マルチプレクサ203を介して順次、読み出され、アンプ205によって増幅された後、A/D変換器206によってデジタル値の画像データに変換される。次いで、電荷の読み出しが終了した画素207は、ドライブ回路201から駆動線211を介してスイッチ素子208がOFF状態になる電圧を印加されることによって、電荷を蓄積する状態に戻る。このように、ドライブ回路201が、センサアレイ204上に配された画素207を行ごとに順次、走査を行い、最終的に全ての画素207から出力される信号が、デジタル値に変換される。これによって放射線画像を生成するための画像データを読み出すことができる。これらの検出部200の駆動、読出動作などの制御は、制御部101の駆動制御部102によって実施される。デジタル値に変換された画像データは、例えば、図1における記憶部109に一時的に格納されてもよい。
【0025】
次いで、本実施形態における放射線撮像装置100の動作について説明する。図3は、放射線撮像装置100において、制御部101が制御装置400との間の通信状態が正常であるか否かを確認(判定)しながら撮像を行うフロー図である。ここで、放射線撮像装置100と制御装置400との間の通信状態が正常な場合を通常状態と呼ぶ、放射線撮像装置100と制御装置400との間の通信状態が正常ではない場合を通信異常状態と呼ぶ。
【0026】
まず、S301において、放射線撮像装置100の電源が投入され、S302に遷移する。S302において、制御部101は、記憶部109に保存されているプログラムなどを読み出し、放射線撮像装置100の各構成に対する制御を開始する。S302では、例えば、記憶部109に保存されている放射線撮像装置100の設定情報、ゲイン補正データや欠損補正データなどが読み出され、撮像準備を行う初期化が実施される。初期化が完了すると、S303に遷移する。
【0027】
S303において、制御部101は、通信部112と制御装置400との間の通信状態が正常であるか否かを確認する。例えば、制御装置400が、放射線撮像装置100の通信部112に定期的にコマンドを送信する。制御部101は、通信部112がこの定期的なコマンドを受信しているか否かを確認する。
【0028】
次いで、制御部101は、S304において、通信部112と制御装置400との間の通信状態が正常であるか否かを判定する。例えば、制御装置400は、定期的(例えば、1秒間隔)にコマンドを送信し、通信部112でコマンドが受信された場合に、制御部101は、通信状態が正常であると判定する。この場合、通信状態は通常状態であると判定され、ステップはS305に遷移する。また、一定期間(例えば、3秒程度)にわたって通信部112が制御装置400から出力されるコマンドを受信しない場合、制御部101は、通信状態が正常ではない通信異常状態であると判定する。この場合、通信状態が通信異常状態であると判定され、ステップはS306に遷移する。
【0029】
S305において、制御装置400が正常に動作しているため、通信部112は、放射線撮像装置100に検出部200で放射線画像を取得する際の撮像モードを含む制御信号を制御装置400から受信する。撮像モードは、透視画像用および静止画像用の撮像モードを含む。さらに制御信号には、検出部200のゲイン、画像サイズ、ビニング数、フレームレートなど、それぞれの撮像モードに応じた設定を行うための信号が含まれる。
【0030】
撮像モードの設定が済み、放射線源制御装置300の操作UI302において曝射スイッチがユーザによって押下されるなど撮像指示があった場合に、制御部101は、制御信号に応じた撮像モードで検出部200を動作させる。駆動制御部102は、放射線画像取得制御104を実施し、例えば、透視画像用の撮像モードで検出部200を駆動する。また、照射タイミング制御部114は、放射線源制御装置300に対して、放射線の照射タイミングを指示するタイミング信号を出力する。タイミング信号に応じて、放射線源制御装置300は、放射線源301に放射線を照射させる。放射線撮像装置100で取得された放射線画像データは、画像制御装置500に転送される。画像制御装置500に転送された放射線画像データは、画像制御装置500において画像処理などが実施された後に、制御装置400に転送され、表示部406に取得された放射線画像データに基づいた透視画像が表示される。
【0031】
一方、S304において通信状態が通信異常状態であると判定された場合、S306において、制御装置400から、撮像モードを設定するための制御信号を通信部112は受信することができない。このため、制御部101は、操作UI302において曝射スイッチが押下されるなどの撮像指示があった場合に、予め設定された異常時撮像モードで検出部200を動作させる。例えば、異常時撮像モードとして、透視画像用、感度高、最大画像サイズ、フレームレート15fpsの各条件が設定される。
【0032】
放射線源制御装置300の操作UI302において曝射スイッチが押されると、駆動制御部102は、放射線画像取得制御104を実施し、異常時撮像モードで検出部200を駆動する。また、照射タイミング制御部114は、放射線源制御装置300に対して、放射線の照射タイミングを指示するタイミング信号を出力する。タイミング信号に応じて、放射線源制御装置300は、放射線源301に放射線を照射させる。放射線撮像装置100で取得された放射線画像データは、画像制御装置500に転送される。画像制御装置500に転送された放射線画像データは、画像制御装置500において画像処理などが実施され、表示部501において取得された放射線画像データに基づいた透視画像が表示される。
【0033】
この場合、放射線撮像装置100は、通信異常状態であることを示す報知信号を表示部501に画像制御装置500を介して出力してもよい。表示部501は、放射線撮像装置100が通信異常状態で動作していることをユーザに報知する。例えば、報知信号が、放射線画像データのヘッダ情報などに添付されていてもよい。画像制御装置500は、このヘッダ情報に基づいて、表示部501に透視画像を表示する否か判定してもよいし、また、制御装置400に放射線画像データを転送するか否か判定してもよい。また、例えば、通常状態において放射線画像は常に表示部406に表示される場合、放射線画像が表示部406に表示されないことによって、ユーザは、放射線撮像装置100が通信異常状態で動作していることを判断できる。
【0034】
制御部101は、通信状態が通常状態と通信異常状態との間で変化した場合、通常状態から通信異常状態へ、または、通信異常状態から通常状態へ遷移してもよい。例えば、透視画像や静止画像の撮像が完了した後に、ステップはS307に遷移し、ユーザによって電源がOFFされない場合、制御部101はS303に遷移して通信状態を確認してもよい。また、制御部101は、透視画像や静止画像の撮像中も通信状態を確認してもよい。制御部101は、放射線画像データの取得中に通信状態が通常状態と通信異常状態との間で変化した場合、撮像中の放射線画像データを取得する動作を中断し、通常状態から通信異常状態へ、または、通信異常状態から通常状態へ遷移してもよい。また、制御部101は、放射線画像データの取得中に通信状態が通常状態と通信異常状態との間で変化した場合、撮像中の放射線画像データを取得した後に、通常状態から通信異常状態へ、または、通信異常状態から通常状態へ遷移してもよい。これによって、すでに撮像が開始されている放射線画像のデータを保持できる。
【0035】
放射線画像の撮像後、ユーザによって放射線撮像装置100の電源がOFFされると、以上の放射線画像の撮像のフローは終了する。
【0036】
ここで、放射線画像データに含まれるオフセット成分は、放射線画像を撮像する際の撮像条件によってオフセット量が変化する。また、オフセット成分は、放射線撮像装置の動作に伴う温度の変化などに応じてオフセット量が変化するため、適当なタイミングでそれぞれの撮像モードに応じたオフセット画像を再取得する必要がある。放射線撮像装置100と制御装置400との間の通信状態が通常状態の場合、適宜、制御装置400は、放射線が照射されていない期間に、それぞれの撮像モードに応じたオフセット画像データが得られるように放射線撮像装置100を動作させる。
【0037】
一方、放射線撮像装置100と制御装置400との間の通信状態が通信異常状態の場合、制御装置400から制御信号の受信ができない。例えば、制御装置400が何らかの理由でダウンしてしまった場合に、通信異常状態となりうる。制御装置400との通信状態が復旧し、ユーザが適当な撮像モードを設定し撮像を行おうとしたときに、前回のオフセット画像データの取得から時間がたっていた場合、オフセット画像データの再取得が必要となる。この場合、オフセット画像データの再取得が完了し、撮像を開始するまで時間がかかる可能性がある。そこで、本実施形態において、放射線撮像装置100の制御部101は、通信異常状態において、放射線が照射されていない期間に、上述の異常時撮像モードとは異なる撮像モードのオフセット画像データが得られるように検出部200を動作させる。得られたオフセット画像データは、記憶部109に記憶される。これによって、制御装置400がダウン状態から復旧した際に、速やかに放射線画像を取得するための撮像動作を開始することが可能となり、使い勝手がよい放射線撮像装置100および放射線撮像システムSYSを実現することができる。
【0038】
図4は、オフセット画像データを更新する際のフロー図である。ここでは、オフセット制御部108が、以下ステップでオフセット画像データの更新を行うとして説明する。しかしながら、これに限られることはなく、放射線撮像装置100の各構成が適宜協働してオフセット画像データが得られればよい。以下、図1に示されるように、オフセット制御部108は制御部101に包含されるため、単に制御部101と記載する場合がある。
【0039】
まずS401において、タイマ113がオフセット画像データを取得してから経過した時間を計測する。オフセット画像データが1度も取得されていない場合、この経過時間は、最大値に設定される。
【0040】
次いで、制御部101(オフセット制御部108)は、S402において、前回のオフセット画像データの取得から所定の時間が経過しているか否かの判定を行う。タイマ113によって計測された経過時間が時間Tを超える(経過時間>T)場合、ステップはS403に遷移し、経過時間が時間T以下(経過時間≦T)の場合、ステップはS401に戻る。例えば、時間Tは、5分であってもよい。
【0041】
S403において、制御部101は、撮像中であるか否かを判定する。つまり、放射線が照射されていないか否かを確認する。放射線が照射されていない場合、ステップはS404に遷移する。一方、放射線が照射され、放射線画像の撮像中であれば、ステップはS401に戻る。撮像中でない場合、駆動制御部102は、撮像準備駆動制御103を実施している。
【0042】
次いで、S404において、駆動制御部102は、撮像準備駆動制御103からオフセット画像取得制御105に駆動を切り替えて、オフセット画像データの更新が行われる。これによって、制御部101は、前回のオフセット画像データの取得から所定の時間が経過し、かつ、放射線が照射されていないタイミングでオフセット画像データが得られるように検出部200を動作させる。
【0043】
通常状態において、放射線が照射されていない期間に、制御部101は、例えば制御装置400の制御に従って、放射線撮像装置100に設定されたすべての撮像モードのオフセット画像データが得られるように検出部200を動作させる。これによって、透視画像用および静止画像用の全ての撮像モードのオフセット画像データの更新が順次、行なわれる。
【0044】
一方、制御装置400からの制御信号が受信できない通信異常状態において、制御部101は、放射線画像データの取得は異常時撮像モードでのみ検出部200を駆動する。しかしながら、オフセット画像データの取得に関しては、異常時撮像モードとは異なる撮像モードのオフセット画像データが得られるように検出部200を動作させる。例えば、制御部101は、通信異常状態において、放射線が照射されていない期間に、放射線撮像装置100に設定されたすべての撮像モードのオフセット画像データが得られるように前記検出部を動作させてもよい。オフセット画像データの更新が完了すると、タイマ113は経過時間=0にリセットされる。
【0045】
オフセット画像データの更新は、すべての撮像モードに対して実施されることに限られることはない。例えば、制御部101は、通信異常状態において、放射線が照射されていない期間に、異常時撮像モードを含む少なくとも2つの撮像モードのオフセット画像データが得られるように検出部200を動作させてもよい。この場合、例えば、撮像に使用する頻度が高い1つ以上の撮像モードのオフセット画像データを、異常時撮像モードのオフセット画像データとは別に取得してもよい。オフセット画像データを取得する撮像モードは、工場出荷時に設定されていてもよいし、ユーザが適宜、設定してもよい。また、記憶部109が、使用頻度が高い撮像モードを記憶し、記憶された使用頻度が高い1つ以上の撮像モードのオフセット画像データが取得されてもよい。通信異常状態において、異常時撮像モードとは異なる撮像モードのオフセット画像データを少なくも1つ取得する。これによって、オフセット画像データを1つも取得しない場合と比較して、通信状態が正常に復帰したときのオフセット画像データの再取得による待機時間を短縮することができる。
【0046】
このように、放射線撮像装置100と制御装置400との間の通信状態が正常でない場合であっても、オフセット画像データの更新が行われる。これによって、放射線撮像装置100と制御装置400との間の通信状態が通信異常により通常状態から通信異常状態になった場合や、通信状態が正常に復帰し通信異常状態から通常状態になった場合でも、オフセット画像データが更新されている。このため、すぐに透視画像や静止画像の撮像を実施することが可能となる。これによって、待機時間が抑制され、使い勝手がよい放射線撮像装置100および放射線撮像システムSYSが実現する。
【0047】
また、図4に示されるオフセット画像データを取得するステップには含まれていないが、放射線画像の撮像直後にオフセット画像データの取得を行うと、オフセット画像データに残像が含まれる可能性がある。残像の影響を抑制するために、タイマ113は、放射線画像データを取得してから経過した時間をさらに計測する。また、制御部101は、前回のオフセット画像データの取得から所定の時間が経過し、放射線が照射されておらず、かつ、前回の放射線画像データの取得から所定の時間が経過したタイミングでオフセット画像データが得られるように検出部200を動作させてもよい。
【0048】
また、本実施形態は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPUなど)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【0049】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0050】
100:放射線撮像装置、101:制御部、112:通信部、200:検出部、207:画素、400:制御装置
図1
図2
図3
図4