(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】作業機の防音箱
(51)【国際特許分類】
F02B 77/13 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
F02B77/13 R
F02B77/13 N
(21)【出願番号】P 2021021987
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2024-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】中島 健也
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-036800(JP,A)
【文献】特開2018-131928(JP,A)
【文献】特開2000-186563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 77/13
F02B 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機の構成機器を載置する,平面視矩形の枠状に形成された基台と,前記基台上を覆う防音ケースにより構成された作業機の防音箱において,
前記基台の側壁の上端縁よりも所定の低い位置より水平方向に突出するように,前記側壁の外面に前記防音ケースの下端縁を載置する
金属製のブラケットを
断続溶接によって取り付け
て,溶接部分を除いた前記側壁の外面と前記ブラケットの間に隙間を形成すると共に,
前記基台の前記側壁のうち,前記ブラケットの取り付け位置に対し上方に位置する部分を止水板としたことを特徴とする作業機の防音箱。
【請求項2】
前記ブラケットを金属製の帯板により形成し,
該ブラケットの底面と前記基台の前記側壁の外面とによって形成された角部に対し,
前記断続溶接として断続すみ肉溶接を行うことにより前記基台の前記側壁に前記ブラケットが取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の作業機の防音箱。
【請求項3】
前記ブラケットを,断面L字状の金属製のアングル材により形成し,
前記側壁外面に,前記アングル材の一片を他片が上側となるように面接触させると共に,該アングル材の前記一片を前記側壁の外面にスポット溶接,プラグ溶接,又はスロット溶接により
前記断続溶接
を行って前記基台の前記側壁に前記ブラケットが取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の作業機の防音箱。
【請求項4】
前記基台の幅方向両端間に架設された門型形状の吊り下げ具と,前記基台の側壁に固着し,上部が前記止水板の上端縁よりも上方へ突出した固定片とを設け,
該吊り下げ具のそれぞれの下端に設けた底部を,前記ブラケットの上面に固着すると共に,
前記吊り下げ具のそれぞれの側部を,前記止水板の上端縁よりも上方に突出した前記固定片の外面に固着したことを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の作業機の防音箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,圧縮機や発電機等の作業機を収容する防音箱に関し,より詳細には,防水性に優れた作業機の防音箱の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機や発電機等の作業機は,通常,作動時の騒音が機外に漏出することを防止すると共に,運搬や設置の便を考慮して,防音箱内に構成機器を収容してパッケージ化された防音型作業機として構成される。
【0003】
このような防音型作業機の防音箱100の構成例を
図7に示す。
【0004】
図7に示す防音箱100は,平面視矩形の枠状に形成された基台110と,フロントパネル131,リヤパネル132,サイドパネル133,及びトップパネル134から成る防音ケース130によって構成されており,作業機の構成機器を載置した前述の基台110の上部を,前述の防音ケース130によって覆うことで防音型作業機が構成されていると共に,サイドパネル133の一部を開口して設けた窓135や,この窓135を開閉する扉136を設け,内部に収容された機器の保守,点検等が行えるように構成されている。
【0005】
このように防音箱100によってパッケージ化された防音型作業機は,前述したように運搬や設置がし易いことから,建設工事現場や土木工事現場等の屋外において使用される機会も多く,そのため防音箱100には,収容機器の作動音を遮断する防音性や遮音性が要求されるだけでなく,内部に収容された機器を雨水等より保護するための防水性も要求さる。
【0006】
特に,収容機器から漏出した燃料や潤滑油等を機外に漏出させることがないよう,前述の基台110内に漏油を貯留する貯油槽117を設けて基台110に防油堤としての機能を持たせた防音箱100では,貯油槽117内に雨水が溜まってしまうと,溜まった雨水が貯油槽117内の漏油と混ざり合って汚染されてしまいそのまま排水処理することができなくなるため,溜まった雨水を廃棄するための廃棄コストを発生させてしまうこととなる。
【0007】
また,貯油槽117内に雨水が溜まっていると,燃料や潤滑油等の漏出が起こった際に貯油槽117内に漏油を受け入れるキャパシティがなく漏油が貯油槽117から溢れ出して周辺環境を汚染するおそれもある。
【0008】
そのため,前述のように貯油槽117を設けて基台110に防油堤としての機能を持たせた防音箱1にあっては,この貯油槽117に対する雨水の浸入を防止し得る防水構造の採用が必要となる。
【0009】
ここで,
図7及び
図8に示した従来の防音箱100では,断面コ字状の4本のチャネル材111を,平面視で矩形の枠状となるように溶接,その他の手段で連結して前述の基台110が形成されていると共に,図示の例では,この基台110内に上向きに開口する箱型の容器である貯油槽117を収容して基台110内に前述した漏油を貯めておくことができるように構成されている。
【0010】
そして,チャネル材111のウェブ部分を基台110の側壁112と成すと共に,基台110の上端縁より外周方向に突出したチャネル材111のフランジ111a上に止水板122を立設し,前述のフランジ111aのうち,止水板122よりも機外側の部分を,防音ケース130の下端縁(フロントパネル131,リヤパネル132,サイドパネル133の下端縁)を載置,固定するためのブラケット121とすることで,防音ケース130の下端縁とブラケット121の上面間の隙間Δより浸入した雨水が,止水板122を超えて更に機内側に浸入して貯油槽117内に溜まることを防止している(特許文献1の
図5,段落[0070]~[0072]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
基台110の上端部に設けたフランジ111a上に前述した止水板122を取り付けた構成では,フランジ111a(ブラケット121)の上面と防音ケース130の下端縁間の隙間Δ(
図7,
図8参照)に雨水が浸入しても,この雨水は止水板122に阻まれてそれ以上,防音箱100の内部に入り込むことができず,貯油槽117に雨水が溜まることを防止できるようになっている。
【0013】
しかし,前述した止水板122の取り付けによって前述の隙間Δを介した雨水の浸入を防止しようとした場合,以下のような問題が生じ得る。
【0014】
図8及び
図9に示すように,前述した止水板122の取り付けは,基台110の上端縁より外向きに突出するフランジ111a上面に金属製の帯板から成る止水板122を溶接により取り付けることにより行われている。
【0015】
この溶接による取り付けは,止水板122を,一方の長辺がフランジ111aの表面に接触するようにフランジ111a上に立てておき,フランジ111a上面と止水板122とによって形成された角部Cb,Cb’〔
図9(A)参照〕のいずれか一方(図示の例では機内側の角部Cb’)に対し,
図8中に溶接ビード123の位置を示したように所定間隔の断続すみ肉溶接で行っている。
【0016】
そのため,フランジ111aの上面と止水板122は,溶接部分においてのみ接合されているだけで,その他の部分には依然として隙間δ’が存在していることから,止水板122を前述の方法で溶接しただけでは依然としてこの隙間δ’を介して防音箱100の止水板122よりも内部側に雨水が浸入してしまう〔
図9(B)参照〕。
【0017】
このような構造から,従来の防音箱100では,溶接によってフランジ111aの上面に止水板122の取り付けを行った後に,更に,フランジ111aと止水板122の突合位置にできた角部Cb,Cb’の他方(図示の例では機外側の角部Cb)に対し,シリコーン樹脂等のシール材125を充填することにより水密性を付与する構成が採用されている〔
図9(A)参照〕。
【0018】
そのため,この手段により止水板122の取り付けを行う場合,止水板122を固定するための溶接作業の他,水密性を付与するためのシール材125の充填作業が必要となり,作業工数が多く,止水板122の取り付け作業が繁雑となっている。
【0019】
しかもこの手段では,シール材125の充填不良によって隙間δ’が完全に埋まっていない状態では十分な水密性が得られずに雨水の浸入を許すこととなり,また,仮に防音箱100の出荷時にはシール材125が適切に充填されて水密性が得られていたとしても,経時によりシール材125に剥離や浮きが生じれば,防水性は失われて雨水が浸入するおそれがある。
【0020】
更に,このようにフランジ111aの上面と止水板122とで形成された機外側の角部Cbにはシール材125が充填されていることから,フランジ111a(ブラケット121)上に他部材(
図8の例ではサイドパネル133に設けた扉136の下端縁)を載置する際に,このシール材125と干渉しない位置に設ける必要がある。
【0021】
このようなシール材125の充填作業を省略すべく,止水板122を取り付ける際に行う溶接を,前述した所定間隔での断続すみ肉溶接に代えて,連続すみ肉溶接として,フランジ111aと止水板122間の隙間δ’を溶接によって埋めてしまうことも考えられる。
【0022】
しかし,連続すみ肉溶接を行う場合は,まず,フランジ111aの上面に止水板122を点付け溶接にて仮止めした後,連続すみ肉溶接にて本溶接することになるため,溶接作業の手間が大幅に増大する。
【0023】
また,所定間隔毎に断続的に溶接する断続すみ肉溶接に比較して,連続すみ肉溶接は技術的にも難しい作業となるため,この手段で止水板の取り付けを行う場合には熟練溶接工の確保が必要となる等,防音箱100の製造コストを引き上げる要因となる。
【0024】
更に止水板122の下端縁を全長に渡って連続すみ肉溶接する場合,溶接時の熱によって止水板122やフランジ111aに歪みが生じることから,溶接作業後に止水板122やフランジ111aの歪みを取る作業を更に追加する必要がある。
【0025】
そのため,止水板122を取り付ける際の溶接の手段を,断続すみ肉溶接から連続すみ肉溶接に変更することで,シール材125を充填する作業が省略できたとしても,このような溶接方法の変更は,前述したように新たに多くの問題を発生させることとなるため現実的には採用し得ない。
【0026】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,基台に設けたフランジ上面と防音ケースの下端縁間の隙間Δを介した雨水の浸入を防止し得る構成でありながら,比較的簡単な作業によって基台の上端部に前述したブラケットや止水板を設けることができる構造を備えた作業機の防音箱を提供することを第1の目的とする。
【0027】
なお,防音型作業機をクレーン等で吊り下げ可能とするために,作業機の防音箱100には
図10に示すように門型の吊り下げ具140が設けられており,この吊り下げ具140の下端部141,141のそれぞれを,基台110に設けたブラケット121(フランジ111a)にボルト止め等の手段で取り付ける構成を採用している。
【0028】
これに対し,前述したように防水性の向上を目的として基台の上端部に設けるブラケットや止水板の構造を見直す場合,この吊り下げ具140の下端部141,141の取り付け部の構造についても,防音型作業機の吊り下げに必要な強度が得られる構造に見直す必要がある。
【0029】
そこで本発明の一部については,基台の上端部に設けた前述のブラケットや止水板の構造変更を行った場合であっても,防音型作業機をクレーン等で安全に吊り下げることができる強度を備えた,吊り下げ具の下端部取り付け構造を備えた作業機の防音箱の提供を更なる第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と,発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0031】
上記目的を達成するために,本発明の作業機の防音箱1は,
作業機の構成機器を載置する,平面視矩形の枠状に形成された基台10と,前記基台10上を覆う防音ケース30により構成された作業機の防音箱1において,
前記基台10の側壁12の上端縁よりも所定の低い位置より水平方向に突出するように,前記側壁12の外面に前記防音ケースの下端縁を載置する金属製のブラケット21を断続溶接によって取り付けて,溶接部分を除いた前記側壁の外面と前記ブラケットの間に隙間を形成すると共に,
前記基台10の前記側壁12のうち,前記ブラケット21の取り付け位置に対し上方に位置する部分を,止水板22としたことを特徴とする(請求項1)。
【0032】
前記ブラケット21を金属製の帯板により形成し,
該ブラケット21の底面と前記基台10の前記側壁12の外面とによって形成された角部Caに対し,
前記断続溶接として断続すみ肉溶接を行うことにより前記基台10の前記側壁12に前記ブラケット21が取り付けられていても良い(請求項2:
図4参照)。
【0033】
また,前記ブラケット21を,断面L字状の金属製のアングル材により形成し,
前記側壁12の外面に,前記アングル材の一片を他片が上側となるよう面接触させると共に,該アングル材の前記一片を前記側壁12の外面にスポット溶接,プラグ溶接,又はスロット溶接(図示の例はプラグ溶接)
により前記断続溶接を行って前記基台10の前記側壁12に前記ブラケット21が取り付けられていても良い(請求項3:
図5参照)。
【0034】
更に,前記基台10の幅方向両端間に架設された門型形状の吊り下げ具40と,前記基台10の側壁12に固着し,上部が前記止水板22の上端縁よりも上方へ突出した固定片51,51とを設け,
該吊り下げ具40のそれぞれの下端に設けた底部42,42を,前記ブラケット21の上面にボルト止めなどの手段で固着すると共に,
前記吊り下げ具40のそれぞれの側部43,43を,前記基台10の側壁12内面に固着されて前記止水板22の上端縁よりも上方に突出した前記固定片51,51の外面にボルト止め等の手段で固着するものとしても良い(請求項4:
図1及び
図6参照)。
【発明の効果】
【0035】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の作業機の防音箱1では,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0036】
前記基台10の側壁12の所定高さ位置より水平方向に突出するように,前記側壁12の外面に前記ブラケット21を取り付けると共に,前記基台10の側壁12のうち,前記ブラケット21の取り付け位置に対し上方に位置する部分を,前記止水板22としたことで,シリコーン樹脂等からなるシール材の充填を行うことなしに,防音箱1の基台10と防音ケース30間の隙間Δを介して機内に雨水が浸入することを防止できた。
【0037】
すなわち,ブラケット21の上面と防音ケース30の下端縁間の隙間Δを介して防音箱1の内部に浸入しようとする雨水は,止水板22によりその浸入が阻まれることで防音箱1内部にまで浸入することができない。
【0038】
この止水板22は,基台10の側壁12の一部によって構成されており,繋ぎ目等なく側壁12と一体的に形成されているため,従来技術として説明した構造のように,シール材の充填等を行うことなく止水板22に水密性を持たせることができる。
【0039】
基台10の側壁12外面とブラケット21の取り付け方法は種々の手段でよく,一例として断続溶接で行うと隙間δが存在するが,ブラケット21の上面と防音ケース30の下端縁間に浸入した雨水は,この隙間δを介して基台10の側壁12外面に沿って流れ落ちることで,ブラケット21上に雨水が溜ることも防止できた。
【0040】
更に,本発明の上記構成より,ブラケット21と止水板22によって形成された角部Ca’にはシール材が充填されないため,ブラケット21上に他部材(例えばサイドパネル33の下端縁)を載置する際に,シール材との干渉を避ける必要がなくなり,設計の自由度が増した。
【0041】
前記ブラケット21を金属製の帯板によって形成し,該ブラケット21の底面と前記基台10の前記側壁12外面によって形成された角部Caに対し,断続すみ肉溶接を行う構成,又は,前記ブラケット21を断面L字状のアングル材により形成し,該アングル材の一片を前記基台の前記側壁外面に面接触させて前記側壁12の外面にスポット溶接,プラグ溶接,又はスロット溶接した構成では,ブラケット21の上面側には,溶接ビードの盛り上がりも形成されることがなく,ブラケット21上に載置する部材(例えばサイドパネル33)と溶接ビードとの干渉も回避し得る。
【0042】
なお,前述したように本発明の防音箱1ではブラケット21を基台10の側壁12外面に断続溶接等の手段で取り付けたことで,ブラケットを基台の側壁と一体的に形成していた従来構造の防音箱に比較して,ブラケット21の強度が低下する。
【0043】
その結果,クレーン等で防音箱1を吊り下げる際に使用する,門型の吊り下げ具40の下端のそれぞれを,ブラケット21に固定しただけでは吊り下げ時の荷重を支えることができない。
【0044】
これに対し,ブラケット21のみならず,前記基台10の側壁12に固着した固定片51に対しても吊り下げ具40の側部43をボルト留め等によって固着するように構成した本発明の構成では,吊り下げ具40の接合部に,クレーン等による吊り下げに耐え得る強度を与えることができた。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の防音箱の概略斜視図(トップパネルの一部,リヤパネル,及びサイドパネルの一方を取り外した状態)。
【
図3】
図1の矢示III部分の(A)は分解拡大斜視図,(B)は拡大斜視図。
【
図4】基台の上端部の構造説明図(帯板でブラケットを形成した例)。
【
図5】基台の上端部の構造説明図(アングル材でブラケットを形成した例)。
【
図10】吊り下げ具の取り付け構造の説明図(従来)。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に,添付図面を参照しながら本発明の作業機の防音箱について説明する。
【0047】
図1中の符号1は,本発明の防音箱であり,この防音箱1は,作業機を構成する機器を載置する平面視矩形の基台10と,構成機器を載置した前記基台10の上部を覆う防音ケース30によって構成されている。
【0048】
このうちの防音ケース30は,フロントパネル31,リヤパネル32,及びサイドパネル33によって側面が形成されていると共に,これらによって囲まれた空間の上部を覆うトップパネル34を備え,この防音ケース30を基台10上に載置することで,防音ケース30内に基台10上に載置された構成機器を収容する収容空間が形成されている。
【0049】
なお,
図1の防音箱1において,フロントパネル31,紙面手前側のサイドパネル33,及びトップパネル34の一部は取り外された状態にあり,これらの部材が取り付けられた状態では,
図1中に破線で示すように,全体として直方体の箱型を成すものであり,防音箱1の基本構造は
図7を参照して説明した従来の防音箱と共通である。
【0050】
前述の基台10は,4枚の板材11を溶接,その他の手段で平面視矩形の枠状に組み立てて形成したもので,本実施形態では
図2に示すように前述の板材11として,一辺が所定幅で折り曲げて成る断面L字状の板材11を使用し,折り曲げ部分が下側となるように立設した4枚の前記板材11を組み合わせることで,板材11に設けた折り曲げ部分によって基台10の下端縁より外向きに突出するフランジ13が形成されている。
【0051】
この基台10の上面は,
図1に示すように横架材14a,14bや床板15a,15bを取り付ける等して,エンジン(図示せず)や作業機本体(図示せず)等の構成機器を載置することができるように構成されている。
【0052】
また,図示の実施形態では,基台10の上面に,前述した横架材14a,14bや床板15a,15bを設けることなく開口させた部分を開口部16として設け,この開口部16を介してエンジンや作業機本体等より漏出した燃料や潤滑油等の漏油を下方に落下させることができるように構成している。
【0053】
そして,この開口部16の少なくとも下方に位置して上向きに開口する箱型の貯油槽17(
図2参照)を収容し,この貯油槽17内に漏油を受け入れることで,漏油が機外に漏出しないように構成している。
【0054】
以上のように構成された基台10の上端縁部分には,前述した防音ケース30の下端縁(フロントパネル31,リヤパネル32,及びサイドパネル33の下端縁)を載置するブラケット21が設けられていると共に,少なくとも前述の開口部16の形成位置の周縁部には,雨水の浸入を防止する止水板22が設けられている。
【0055】
本発明の防音箱1では,
図2~
図5に示すように,基台10の側壁12外面の上端寄りにおける所定高さ位置に,ブラケット21となる金属板を,該金属板の長手方向における所定間隔で,断続的に溶接して取り付けることで,基台10の上端部より外周方向に突出する前述のブラケット21を設けている。
【0056】
そして,基台10の側壁12のうち,このブラケット21の取り付け位置よりも上方に位置する部分を,機内に対する雨水の浸入を防止する前述の止水板22として構成した。
【0057】
図2~
図4に示す実施形態では,このブラケット21を金属製の帯板によって形成し,このブラケット21の長手方向を成す一辺を,基台10の側壁12外面の所定高さ位置に突合させ,この状態でブラケット21と基台10の側壁12外面とで形成された角部(Ca又はCa’)に断続すみ肉溶接にて点付け溶接を行うことにより取り付けている。
【0058】
この断続すみ肉溶接は,ブラケット21の上面側に形成された角部Ca’に対し行うものとしても良いが,好ましくは,
図4に示すように,ブラケット21の底面側に形成された角部Caに対し行い,ブラケット21の上面側には,溶接ビード23等の盛り上がりが形成されないように構成する。
【0059】
このように構成することで,ブラケット21上に対する防音ケース30の下端縁の載置,固定位置を決定する際に,溶接ビード23の盛り上がり部分との干渉回避等を考慮する必要がなく,設計の自由度を増すことができる。
【0060】
なお,
図2~
図4に示した構成では,前述のブラケット21を金属製の帯板によって形成し,これを断続すみ肉溶接によって取り付けるものとして説明したが,この構成に代えて,
図5に示すように断面L字状を成す金属製のアングル材によってブラケット21を形成するものとしても良い。
【0061】
このようにブラケット21をアングル材によって形成する場合,
図5に示すようにアングル材の一方の片を,他方の片が上側となるように基台10の側壁12外面と面接触させ,この状態で一方の片を基台10の側壁12の外面に所定間隔毎にスポット溶接,プラグ溶接,又はスロット溶接(
図5はプラグ溶接)により取り付けて,該アングル材の他方の片上に,防音ケース30の下端縁を載置できるようにするものとしても良い。
【0062】
このように,ブラケット21をアングル材によって形成すると共に,このアングル材の一方の片を介して基台10の側壁12外面に溶接したことで,この構成のブラケット21においても,防音ケース30の下端縁が載置されるブラケット21の上面側には溶接ビード23等の盛り上がりが形成されることがなく,ブラケット21上に対する他部材の載置,固定位置を決定する際に溶接ビード23の盛り上がりとの干渉回避を考慮する必要がない。
【0063】
なお,
図1~
図3中,符号24は補強用のリブであり,基台10の側壁12に溶接等の手段で取り付けると共に,このリブ24でブラケット21の底面とフランジ13の上面間を連結することにより,基台10全体の補強と,ブラケット21の取り付け強度の向上を図っている。
【0064】
以上のように構成された本発明の防音箱1では,
図4に示すように,ブラケット21と防音ケース30の下端縁間の隙間Δに雨水が入り込んだとしても,この雨水は,止水板22によってその進行が妨げられることで防音箱1の内部に対する浸入が防止される。
【0065】
従来の防音箱では,
図8及び
図9を参照して説明したようにブラケット121を基台110の側壁112と一体的に形成し,止水板122については溶接によって後付けする構造となっていたのに対し,本発明の防音箱1では,これとは逆に,止水板22を基台10の側壁12と一体的に形成し,ブラケット21を,基台10の側壁12の外面に溶接によって後付けする構成としたことで,側壁12と一体的に形成された止水板22は当初より水密性を発揮するものとなっている。
【0066】
そのため,従来の防音箱では
図9(A)を参照して説明したように止水板122を溶接した後に,更にブラケット121と止水板122によって形成される角部Cbに対しシール材125を充填する必要があったのに対し,本発明の防音箱1の構造ではブラケット21を溶接にて取り付けた後,そのままの状態で防水性を発揮し,シール材の充填を行う必要がない。
【0067】
しかも本発明の防音箱1では,ブラケット21を基台10の側壁12外面に断続溶接して取り付けているため,基台10の側壁12外面とブラケット21との間は,溶接部分を除き依然として隙間δが存在した状態となっており水密性がない。
【0068】
そのため,
図4に破線の矢印で示したように,防音ケース30の下端縁(図示の例ではサイドパネル33の下端縁)とブラケット21の上面間の隙間Δに浸入して止水板22側に向かって流れる雨水は,止水板22によって機内側への浸入が阻まれるだけでなく,ブラケット21と基台10の側壁12外面間の隙間δを介して下方に流れ落ちることで,ブラケット21上に雨水を溜めることなく排水できるように構成されている。
【0069】
このように,本発明の防音箱1では,ブラケット21を基台10の側壁12外面に対し断続的な溶接によって取り付ける構成を採用することから,
図8及び
図9を参照して説明した従来の防音箱100のように,ブラケット121を基台110の側壁112と一体的に形成した構成に比較して,ブラケット21の強度が低くなっている。
【0070】
そのため,基台10の幅方向の両端間に架設される門型の吊り下げ具40(
図1参照)を設け,この吊り下げ具40のそれぞれの下端をブラケット21にボルト止め等の手段で固着しただけでは,防音箱1の吊り下げに必要な強度を確保できない可能性がある。
【0071】
そこで,本発明の防音箱1では,
図6に示すように,この吊り下げ具40の下端のそれぞれを前述のブラケット21に固着するだけでなく,基台10の側壁12に対しても固着できるようにした。
【0072】
このような構成として,本発明の防音箱1では,基台10の上端部のうち,前述の吊り下げ具40の下端の取り付けが行われる部分の側壁12内面に,
図6に示す固定片51の下端側を溶接,その他の手段で固着して,この固定片51の上端側を止水板22の上端縁よりさらに上方に突出させている。
【0073】
そして,吊り下げ具40の下端底部42をブラケット21上にボルト止めなどの手段で固着すると共に,前記吊り下げ具40の側部43を,前述の固定片51の外面に対しボルト止め等の手段で固着して取り付けている。
【0074】
このように構成することで,ブラケットに対してのみ吊り下げ具の下端部を固定していた従来の防音箱の構成とは異なり,本発明の防音箱1では,吊り下げ具40の下端をブラケット21と基台10の側壁12に取り付けた固定片51の双方に取り付ける構成としたことで,防音箱1を吊り下げた際の荷重がブラケット21に集中することなく基台10の側壁12に対しても分散されることで,前述したように基台10の上端部に設けるブラケット21と止水板22の構造を改変した場合であっても,防音箱1の吊り下げに耐え得る強度を備えた吊り下げ具40の取り付け構造を得ることができるものとなっている。
【0075】
なお,図示の例では前述の固定片51を側壁12の内面に取り付けるものとして説明したが,側壁12に対する固定片の取り付け方法は図示の例に限定されず,例えば側壁12の上端縁(止水板22の上端縁)に取り付けるなどしても良い。
【符号の説明】
【0076】
1 防音箱
10 基台
11 板材
12 側壁(防音箱の)
13 フランジ
14a,14b 横架材
15a,15b 床板
16 開口部
17 貯油槽
21 ブラケット
22 止水板
23 溶接ビード
24 リブ
30 防音ケース
31 フロントパネル
32 リヤパネル
33 サイドパネル
34 トップパネル
40 吊り下げ具
42 底部(吊り下げ具の下端の)
43 側部(吊り下げ具の)
51 固定片
Δ 隙間(防音ケースの下端縁とブラケット上面間の)
δ 隙間(ブラケットと基台の側壁外面間の)
Ca 角部(ブラケット底面と基台の側壁外面が成す角部)
Ca’ 角部(ブラケット上面と止水板外面が成す角部)
100 防音箱
110 基台
111 チャネル材
111a フランジ
112 側壁
117 貯油槽
121 ブラケット
122 止水板
123 溶接ビード
125 シール材
130 防音ケース
131 フロントパネル
132 リヤパネル
133 サイドパネル
134 トップパネル
135 窓
136 扉
140 吊り下げ具
141 下端部(吊り下げ具の)
δ’ 隙間(フランジ上面と止水板間の)
Cb フランジ上面と止水板が成す角部(機外側)
Cb’フランジ上面と止水板が成す角部(機内側)