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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】電界紡糸装置及び電界紡糸方法
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/04 20060101AFI20241209BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20241209BHJP
【FI】
D01D5/04
D04H1/728
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021027484
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022128984
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】貴志 壽之
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174083(JP,A)
【文献】特開2011-208340(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021757(WO,A1)
【文献】特開2013-218801(JP,A)
【文献】特開2018-135615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00-13/02
D04H 1/00-18/04
H01M 4/00- 4/62,
50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電した原料液の吐出により基材にシートを形成する電界紡糸ヘッドと、
前記シートが前記基材上に形成された帯状体を巻き取る巻取り芯を備える巻取り部と、 前記巻取り芯の軸方向の少なくとも一方側から前記巻取り芯に隣接するとともに、帯電した前記原料液とは反対の極性になる電位を与えられる第1の導電体と、
を具備する、電界紡糸装置。
【請求項2】
帯電した前記原料液とは反対の極性になる状態に、電圧を前記第1の導電体に印加する電源を備える、
請求項1に記載の電界紡糸装置。
【請求項3】
前記第1の導電体の外周縁は、前記軸方向からの投影において、前記巻取り芯の外周縁に対して外周側に全周にわたって位置する、
請求項1又は2に記載の電界紡糸装置。
【請求項4】
前記第1の導電体の外周縁は、前記軸方向からの投影において、前記巻取り芯に巻き取られた帯状体が形成する外周縁に対して外周側に全周にわたって位置する、
請求項3に記載の電界紡糸装置。
【請求項5】
前記帯状体が搬送方向に通過する搬送経路において、前記搬送方向に交差する第1の方向の少なくとも一方側から前記帯状体に隣接するとともに、帯電した前記原料液とは反対の極性になる電位を与えられる第2の導電体をさらに具備する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電界紡糸装置。
【請求項6】
帯電した前記原料液とは反対の極性になる状態に、電圧を前記第2の導電体に印加する電源を備える、
請求項5に記載の電界紡糸装置。
【請求項7】
前記搬送経路は、前記搬送方向及び前記第1の方向の両方に交差する第2の方向について、前記第2の導電体の一対の縁部の間を通過する状態で配置される、
請求項5又は6に記載の電界紡糸装置。
【請求項8】
帯電した原料液の吐出により基材にシートを形成することと、
導電体を隣接させた状態で、前記基材に前記シートが形成された帯状体を巻取り芯にロール状に巻き取ることであってと、
前記巻取り芯に前記帯状体が巻き取られている状態において、前記導電体を帯電した前記原料液とは反対の極性になる電位にすること、
を含む、電界紡糸方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電界紡糸装置及び電界紡糸方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池等の電池には、正極と負極との間を絶縁するセパレータが正極又は負極と一体に形成されるものがある。この電池の製造では、セパレータと一体に形成される電極(正極又は負極)の表面に、例えば、電界紡糸方法(エレクトロスピニング法)によって、シートを形成する。このシートが、正極と負極との間のセパレータとなる。電極にセパレータが形成された後、巻取り部が、電極にセパレータが形成された帯状体をロール状に巻き取る。
【0003】
電極の表面にセパレータを形成する際には、例えばセパレータが電極の縁部からはみ出た状態(電極の端部を覆う状態)で形成される。巻取り部がこのような帯状体を巻き取る際には、例えば、電極の縁部からはみ出たセパレータ部分の電極側への巻き込みが抑制されるとともに、歪んだ状態での帯状体の巻き取りを抑制することが、求められている。すなわち、巻取り部が帯状体を巻き取る際には、帯状体の縁部の巻き込みが抑制され、帯状体での歪みの発生が抑制されることが、求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-174083号公報
【文献】特開2013-218801号公報
【文献】特開2012-528464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、帯状体での歪みの発生を抑制することができる電界紡糸装置及び電界紡糸方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、電界紡糸装置は、電界紡糸ヘッド、巻取り部及び第1の導電体を具備する。電界紡糸ヘッドは、帯電した原料液の吐出により基材にシートを形成する。巻取り部は、シートが基材上に形成された帯状体を巻き取る巻取り芯を備える。第1の導電体は、巻取り芯の軸方向の少なくとも一方側から巻取り芯に隣接するとともに、帯電した原料液とは反対の極性になる電位を与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る電界紡糸装置を示す概略図である。
図2図2は、実施形態に係る電界紡糸装置において、巻取り部と第1の導電体との位置関係を示す概略図である。
図3図3は、実施形態の変形例に係る電界紡糸装置を示す概略図である。
図4図4は、実施形態の変形例に係る電界紡糸装置において、巻取り部と第2の導電体との位置関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る電界紡糸装置1を示す概略図である。電界紡糸装置1は、エレクトロスピニング法(電荷紡糸法及び電荷誘導紡糸法等とも称される)により、基材10に繊維膜を形成する装置である。基材10は、例えばシート状の電極である。基材10は、原料液に対して耐性を有する材料から形成される。基材10は、導電材料から形成される。基材10は、例えば、アルミニウムにより形成されてもよい。
【0010】
図1に示すように、電界紡糸装置1は、巻出し部2、電界紡糸部3、巻取り部6及び導電体(第1の導電体)7を備える。電界紡糸装置1には、搬送経路Lが形成される。基材10は、巻出し部2から巻取り部6まで、電界紡糸部3を通って、搬送経路Lに沿って搬送される。搬送経路Lにおいて、搬送経路Lに沿う搬送方向(矢印X1及び矢印X2で示す)、搬送方向と交差する(直交又は略直交する)幅方向としての第1の方向、及び、搬送方向及び第1の方向の両方に交差する(直交又は略直交する)第2の方向(矢印Z1及びZ2で示す)が規定される。搬送経路Lでは、基材10が搬送される搬送方向、すなわち、巻取り部6へ向かう方向が下流側となる。搬送経路Lでは、搬送方向と反対の方向、すなわち、巻出し部2へ向かう方向が上流側となる。図1では、矢印X1側が搬送経路の上流側となり、矢印X2側が搬送経路Lの下流側となる。
【0011】
巻出し部2は、巻出し芯21を備える。巻出し芯21は、例えば、リールである。巻出し芯21は、搬送経路Lの第1の方向に沿って延設される。巻出し芯21の中心軸c1は、搬送経路Lの第1の方向に沿う。巻出し芯21は、中心軸c1を回転中心として回転可能である。巻出し芯21には、基材10がロール状に巻かれる。巻出し部2では、電動モータ等の駆動部材(図示しない)を駆動することにより、矢印R1の方向へ巻出し芯21が回転する。これにより、巻出し芯21に巻かれた基材10が、搬送経路Lの搬送方向へ巻き出される。巻き出された基材10は、搬送経路Lに供給される。
【0012】
電界紡糸部3は、1つ以上の電界紡糸ヘッド31を備える。図1の一例では、電界紡糸部3が、6つの電界紡糸ヘッド31を備える。電界紡糸ヘッド31のそれぞれは、ヘッド本体32と、ヘッド本体から突出するノズル33と、を備える。電界紡糸ヘッド31のそれぞれでは、ヘッド本体32の内部に、例えば有機材料が溶媒に溶解された原料液を貯留できる。原料液は、ノズル33から基材10に噴出される。基材10は、電界紡糸ヘッド31に対して、原料液が噴出される側に配置される。電界紡糸ヘッド31のそれぞれには、1つのノズル33が設けられてもよく、複数のノズル33が設けられてもよい。電界紡糸装置1には、電源が設けられる。ある一例では、電源は直流電源である。電源は、電界紡糸ヘッド31に電圧を印加する。電源は、ノズル33が所定の極性に帯電する状態に電圧を印加する。所定の極性はプラスであってもよく、マイナスであってもよい。
【0013】
原料液に用いられる有機物質としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリケトン、ポリスルホン、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリフッ化ビニリデンのいずれか1つ以上が選択される。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン及びポリエチレン等が挙げられる。
【0014】
電界紡糸ヘッド31のそれぞれのノズル33と基材10との間の電圧は、原料液における溶媒及び溶質の種類、原料液の溶媒の沸点及び蒸気圧曲線、原料液の濃度及び温度、ノズル33の形状、及び基材10とノズル33との距離等に対応して、適宜設定される。ある一例では、電界紡糸ヘッド31のそれぞれのノズル33と基材10との間に印加される電圧(電位差)は、1kV~100kVの間で適宜設定される。電界紡糸ヘッド31のそれぞれのノズル33からの原料液の吐出速度は、原料液の濃度、粘度及び温度、電界紡糸ヘッド31のそれぞれのノズル33と基材10との間に印加される電圧、及び、ノズル33の形状等に対応する大きさになる。
【0015】
巻取り部6は、巻取り芯61を備える。巻取り芯61は、例えば、リールである。巻取り芯61は、搬送経路Lの第1の方向に沿って延設される。巻取り芯61の中心軸c2は、搬送経路Lの第1の方向に沿う。巻取り芯61は、中心軸c2を回転中心として回転可能である。巻取り芯61は、外周縁E1を備える。巻取り芯61の外周縁E1の延設長は、巻取り芯61の軸方向の一方側の端部における周長である。巻取り部6では、電動モータ等の駆動部材(図示しない)を駆動することにより、矢印R2の方向へ巻取り芯61が回転する。これにより、巻取り芯61には、基材10にシート11が形成された帯状体12が、ロール状に巻き取られる。なお、帯状体12が搬送経路Lを通って搬送される状態において、帯状体12の長手方向は搬送方向と一致又は略一致し、帯状体12の幅方向は搬送経路Lの第1の方向と一致又は略一致し、帯状体12の厚さ方向は搬送経路Lの第2の方向と一致又は略一致する。
【0016】
巻出し部2から巻取り部6までの搬送経路Lの延設状態は限定されない。ある一例では、搬送経路Lが水平方向に沿って延設される。別のある一例では、搬送経路Lが鉛直方向に沿って延設される。巻出し部2と巻取り部6との間に、搬送経路Lの折れ曲がり部分又は折り返し部分が1箇所以上設けられてもよい。搬送経路Lの折れ曲がり部分又は折り返し部分等において、搬送経路Lの延設方向が変更されてもよい。ある一例では、電界紡糸部3と巻取り部6との間に、搬送経路Lの折り返し部分が設けられる。別のある一例では、電界紡糸部3の内部に、搬送経路Lの折り返し部分が設けられる。
【0017】
図2は、実施形態の電界紡糸装置1における巻取り部6及び第1の導電体7の位置関係を示す概略図である。図2においても、図1と同様に、搬送経路Lにおける搬送方向、第1の方向(矢印Y1及び矢印Y2で示す)及び第2の方向が規定され、巻取り芯61の軸方向が規定される。巻取り芯61の軸方向は、搬送経路Lの第1の方向と一致又は略一致する。
【0018】
第1の導電体7は、板状に形成される。第1の導電体7は、導電材料から形成される。第1の導電体7は、巻取り芯61の軸方向の一方側から、すなわち搬送経路Lの第1の方向の一方側から、巻取り芯61に隣接する。第1の導電体7は、巻取り芯61に直接的に接触せず(すなわち、電気的に絶縁された状態にあり)、かつ、巻取り芯61に巻き取られた帯状体12にも直接的に接触しない(電気的に絶縁された状態にある)。そのため、巻取り芯61と第1の導電体7との間、及び、巻取り芯61に巻き取られた帯状体12と第1の導電体7との間には、隙間が形成される。この隙間の大きさは、適宜設定できる。ある一例では、第1の導電体7は、一対の主面を備える金属板である。この場合、第1の導電体7は、一対の主面の一方が巻取り芯61の軸方向について巻取り芯61側を向く状態で、電界紡糸装置1に配置される。巻取り芯61の軸方向について、巻取り芯61と第1の導電体7との距離は、例えば、5mm程度である。
【0019】
第1の導電体7の外周縁E2は、巻取り芯61の軸方向からの投影において、巻取り芯61の外周縁E1に対して外周側に全周にわたって位置する(図1参照)。第1の導電体7は、巻取り芯61の軸方向について、巻取り芯61に対して第1の導電体7とは反対側から視た状態において、巻取り芯61の外周縁E1に対して全周にわたって外周側に位置する部分を備える。ある一例では、巻取り芯61が円柱状又は略円柱状に形成されるとともに、第1の導電体7は円盤状又は略円盤状に形成される。また、巻取り芯61及び第1の導電体7は、互いに対して同心又は略同心となる状態で配置される。この場合、第1の導電体7の径方向の全長は、巻取り芯61の径方向の全長より大きい。また、第1の導電体7の外周縁E2の全周長は、巻取り芯の外周縁E1の全周長より長い。
【0020】
第1の導電体7の外周縁E2は、巻取り芯61の軸方向からの投影において、巻取り芯61に巻き取られた帯状体12が形成する外周縁E3に対して外周側に全周にわたって位置することが好ましい(図1参照)。帯状体12は巻取り芯61に巻き取られるため、巻取り芯61に巻き取られた帯状体12が形成する外周縁E3は、外周縁E1に対して外周側に位置する。また、帯状体12の巻取り芯61による巻き取り量に対応して、巻取り芯61の径方向についての外周縁E3の位置が、規定される。帯状体12が巻取り芯61に完全に巻き取られた状態、すなわち帯状体12の巻取り芯61による巻き取り量が最大の状態においても、第1の導電体7の外周縁E2は、巻取り芯61の軸方向からの投影において、外周縁E3に対して外周側に全周にわたって位置することが好ましい。
【0021】
第1の導電体7は、帯電した原料液とは異なる電位を与えられる。ある一例では、第1の導電体7は接地され、第1の導電体7の対地電圧は0V又は略0Vであってもよい。別のある一例では、図1等に示すように、電源81により、第1の導電体7に電圧が印加されてもよい。第1の導電体7は、シート11の原料液が帯電する極性とは反対の極性に帯電することが好ましい。ある一例では、シート11の原料液がプラスの極性に帯電する場合、第1の導電体7はマイナスの極性に帯電する。別のある一例では、シート11の原料液がマイナスの極性に帯電する場合、第1の導電体7はプラスの極性に帯電する。すなわち、第1の導電体7には、その電位が帯電した原料液の電位とは異なる電位に設定するような電位設定手段を備える。電位設定手段は、例えば第1の導電体7を接地するための接地線であり、また別の例では、第1の導電体7と第1の導電体7に電圧を印加する電源81を接続する接続ケーブルである。すなわち、電位設定手段は第1の導電体7に接続される電位設定ケーブルとして構成することができる。
【0022】
電界紡糸装置1では、矢印R1の方向へ巻出し芯21を回転させるとともに矢印R2の方向へ巻取り芯61を回転させることにより、巻出し部2から巻取り部6へ搬送経路Lを通して基材10が搬送される。電界紡糸部3では、巻出し芯21から巻き出された基材10が、巻取り部6に向かって搬送される。
【0023】
電界紡糸ヘッド31のそれぞれのヘッド本体32の内部に原料液が貯留された状態において、例えば基材10と電界紡糸ヘッド31のそれぞれのノズル33との間に電圧を印加することにより、電界紡糸ヘッド31のそれぞれのノズル33から原料液が噴出される。すなわち、ノズル33と基材10との間の電位差により、帯電した原料液が基材10に向かって噴出される。これにより、ヘッド本体32の内部に貯留された原料液が、ノズル33と同一の極性に帯電される。なお、ノズル33に印加される電圧の極性は、プラスであってもよく、マイナスであってもよい。ある一例では、電源は直流電源であり、ノズル33にプラスの電圧を印加する。このため、原料液は、プラスに帯電される。
【0024】
ノズル33から原料液が基材10に向かって噴出されることにより、巻出し部2から巻き出された基材10の表面に原料液の一部が堆積し、堆積した原料液によりシート11が形成される。図1の一例では、巻き出された基材10の両面に原料液が噴出され、基材10の両面にシート11が形成される。ただし、ある一例では、巻き出された基材10の片面にのみ原料液が噴出されてもよい。この場合、基材10の片面にのみ、シート11が形成される。このようにして、本実施形態の電界紡糸部3は、電界紡糸法により、シート11を形成する。これにより、基材10及びシート11を備える帯状体12が形成される。巻取り部6では、搬送経路Lを通った帯状体12が、巻取り芯61に巻き取られる。
【0025】
ある一例では、前述のシート11として、電池の電極群において正極と負極との間を絶縁するセパレータが形成される。この場合、電極群において正極及び負極の一方がセパレータと一体に形成され、セパレータと一体に形成される電極(正極又は負極)が、基材10となる。セパレータと一体に形成される電極の表面に、電界紡糸法等により繊維のシート11が形成される。電極(正極又は負極)と一体のセパレータがシート11として形成される場合、シート11は、電気的絶縁性を有する材料から形成される。電池の電極群では、正極及び負極のそれぞれは、集電体と、活物質を含む活物質含有層と、を備える。そして、正極及び負極のそれぞれでは、集電体の片面又は両面に、活物質含有層が担持される。
【0026】
電界紡糸装置1では、前述したように、巻取り部6の巻取り芯61は、巻出し部2の巻出し芯21から巻き出された基材10の上にシート11が形成された帯状体12を、巻き取る。この際、基材10の上に形成されたシート11が、搬送方向に沿って延設される基材10の縁部を越えて、すなわち、搬送方向に沿って延設される基材10の縁部から搬送経路Lの第1の方向について外側にはみ出た状態で、形成される。本実施形態では、第1の導電体7が、巻取り芯61の軸方向の一方側から帯状体12に隣接する。また、第1の導電体7は、シート11の原料液とは異なる電位を与えられる。そのため、第1の導電体7とシート11との間には、電位差に対応する力が働く。ある一例では、第1の導電体7には、シート11の原料液とは反対の極性となる状態に、電圧が印加される。すなわち、シート11の原料液がプラスに帯電している場合、第1の導電体7はマイナスに帯電する状態となる電圧が印加される。この場合、帯状体12と第1の導電体7との間には引力が働く。これにより、帯状体12の縁部を第1の導電体7に向かって伸ばす力が働く。その結果、帯状体12の縁部が搬送経路Lの第1の方向について内側に巻き込まれることが抑制されるため、巻取り部6の巻取り芯61に巻き取られた帯状体12に生じる歪みを抑制できる。
【0027】
電界紡糸装置1では、前述のように、第1の導電体7が、巻取り芯61の軸方向の少なくとも一方側から巻取り芯61に隣接するとともに、帯電した原料液の電位とは異なる電位を与えられる。そのため、前述のように、巻取り芯61により帯状体12が巻き取られる際に、帯状体12に生じる歪みを抑制できる。すなわち、帯状体12に生じる湾曲を抑制した状態で、巻取り部6が帯状体12を巻き取ることができる。そのため、帯状体12の巻き取り量に対応する中心軸c2の軸回りの帯状体12の周長が、帯状体12の湾曲に起因して長くなること及び/又は短くなることが抑制される。これにより、巻き取られた帯状体12を使用する際に、安定して帯状体12を巻き出すことができる。ある一例では、帯状体12は電極一体型のセパレータである。この場合、電極群を製造する際に、巻き取られた電極一体型のセパレータを再び巻き出して電極群を製造する作業を安定して行うことができる。
【0028】
電界紡糸装置1では、第1の導電体7の外周縁E2は、巻取り芯61の軸方向からの投影において、巻取り芯61の外周縁E1に対して外周側に全周にわたって位置することが好ましい。このように第1の導電体7の大きさ及び位置を調整することにより、巻取り芯61が帯状体12を巻き取る際に、第1の導電体7と帯状体12との間で電位差に対応する力を加えることができる。その結果、帯状体12が巻取り芯61により巻き取られる際に、帯状体12に生じる歪みを一層抑制することができる。
【0029】
電界紡糸装置1では、第1の導電体7の外周縁E2は、巻取り芯61の軸方向からの投影において、巻取り芯61に巻き取られた帯状体12が形成する外周縁E3に対して外周側に全周にわたって位置することが好ましい。このように第1の導電体7の大きさ及び位置を調整することにより、巻取り芯61が帯状体12を巻き取る状態において、第1の導電体7と帯状体12との間に電位差に対応する力を加えることができる。その結果、巻取り芯61により帯状体12が巻き取られる際に、帯状体12に生じる歪みをより一層抑制することができる。
【0030】
(変形例)
図3は、実施形態の変形例に係る電界紡糸装置1の概略図である。図4は、実施形態の変形例に係る電界紡糸装置1における巻取り部6及び導電体(第2の導電体)9の位置関係を示す概略図である。図3図4においても、図1と同様に、搬送経路Lにおける搬送方向、第1の方向及び第2の方向、巻出し部2の巻出し芯21の軸方向、巻取り部6の巻取り芯61の軸方向が規定される。
【0031】
本変形例の電界紡糸装置1では、帯状体12が搬送される搬送経路Lにおいて、第2の導電体9が搬送経路Lの第1の方向の一方側から帯状体12に隣接する。本変形例において、第2の導電体9は、搬送経路Lにおいて、電界紡糸部3と巻取り部6との間に配置される。第2の導電体9も、第1の導電体7と同様に帯状体12に接触しないため、第2の導電体9と帯状体12との間には隙間が形成される。第2の導電体9と帯状体12との隙間の大きさは、適宜設定できる。第2の導電体9は、例えば、金属板である。この場合、第2の導電体9は、一対の主面を備え、一対の主面の一方が搬送経路Lの第1の方向を向く状態で電界紡糸装置1に配置される。なお、第2の導電体9は、搬送経路Lにおいて、電界紡糸装置1に複数設けられてもよい。
【0032】
第2の導電体9では、搬送経路Lの第2の方向についての第2の導電体9の寸法が、帯状体12の厚さ方向についての寸法よりも大きい。第2の導電体9は、一対の縁部E4,E5を備える。一対の縁部E4,E5は、搬送経路Lの搬送方向に沿って延設される。縁部E5は、搬送経路Lの第2の方向について、縁部E4とは反対側に配置される。第2の導電体9は、搬送経路Lの第2の方向について、縁部E4が帯状体12の一方側に配置されるとともに、縁部E5が帯状体12に対して縁部E4とは反対側に配置される。搬送経路L(帯状体12)は、搬送経路Lの第2の方向について、縁部E4,E5の間を通過する。第2の導電体9では、搬送経路Lの第2の方向についての寸法は特に限定されないが、搬送方向についての寸法は、第2の導電体9と帯状体12との電位差に対応する力が互いに対して働くことにより、前述した帯状体12の縁部の巻き込みが抑制される程度の長さであることが好ましい。
【0033】
第2の導電体9は、第1の導電体7と同様に、帯電した原料液とは異なる電位を与えられる。ある一例では、第2の導電体9は接地され、第2の導電体9の対地電圧は0V又は略0Vであってもよい。別のある一例では、図3に示す電源82により、第2の導電体9に電圧が印加されてもよい。第2の導電体9は、帯電した原料液の極性とは反対の極性に帯電することが好ましい。ある一例では、シート11の原料液がプラスの極性に帯電する場合、第2の導電体9はマイナスの極性に帯電する。別のある一例では、シート11の原料液がマイナスの極性に帯電する場合、第2の導電体9はプラスの極性に帯電する。
【0034】
本変形例では、第2の導電体9が、搬送経路Lにおいて、搬送経路Lの第1の方向の一方側から帯状体12に隣接する。また、第2の導電体9は、シート11の原料液とは異なる電位を与えられる。そのため、第1の導電体7とシート11との間と同様に、第2の導電体9とシート11との間にも電位差に対応する力が働くことにより、帯状体12の縁部が搬送経路Lの第1の方向について内側に巻き込まれることが抑制される。そのため、巻取り部6に巻き取られる帯状体12に生じる歪みを抑制できる。また、本変形例においても、電界紡糸装置1は、前述の実施形態等と同様の構成を備えることから、前述の実施形態等と同様の作用及び効果を奏する。
【0035】
第2の導電体9は、搬送経路Lの第1の方向について、第1の導電体7が位置する側に設けられることが好ましい。このように配置されることにより、搬送経路Lに沿って帯状体12が搬送される際に、前述のように、帯状体12の縁部が第2の導電体9が位置する側に伸ばされる。これにより、帯状体12の縁部が搬送経路Lの第1の方向について内側に巻き込まれることが抑制された状態で、帯状体12が巻取り部6まで搬送される。そして、巻取り部6では、搬送経路Lの第1の方向について、第2の導電体9が位置する側に第1の導電体7が配置される。よって、第2の導電体9により巻き込みが抑制された状態の帯状体12の縁部が、さらに第1の導電体7によって前述のように伸ばされる。したがって、帯状体12に生じる湾曲をさらに抑制した状態で、巻取り部6が帯状体12を巻き取ることができる。
【0036】
電界紡糸装置1では、巻出し部2、電界紡糸部3及び巻取り部6の他に、搬送経路Lに剥取り部(図示しない)を備える構成としてもよい。剥取り部は、例えば、電界紡糸部3と巻取り部6との間に設けられる。この場合、剥取り部は、基材10の表面に形成されたシート11を剥ぎ取る構成であり、剥取り部でシート11の一部を剥ぎ取ることにより、シート11の一部が帯状体12から剥ぎ取られる。このような剥取り部の一例としては、電動モータ等により駆動される回転ブラシを備えるものを用いることができる。帯状体12の表面に回転ブラシを回転させた状態で当てることにより、帯状体12からシート11を剥ぎ取る。このような構成は、例えば、基材10が電極(正極又は負極)であり、原料液から形成されるシート11がセパレータである場合に用いられる。この場合、帯状体12において幅方向の一方側の端部に、帯状体12の厚さ方向の一方側から回転ブラシを当てることにより、セパレータを剥ぎ取る。これにより、帯状体12では、幅方向の一方側の端部において、電極(正極又は負極)が露出する。
【0037】
このような剥取り部が電界紡糸装置1に備えられる場合、第1の導電体7及び第2の導電体9は、搬送経路Lの第1の方向について剥取り部によってシート11が剥ぎ取られる側とは反対側に設けられることが好ましい。剥取り部は、帯状体12からシート11を剥ぎ取る。そのため、シート11が剥ぎ取られる側の帯状体12の縁部には、シート11がほとんどない。第1の導電体7及び第2の導電体9が、帯状体12の幅方向についてシート11が剥ぎ取られる側とは反対側に設けられることにより、巻取り部6による帯状体12の縁部の巻き込みが適切に抑制される。
【0038】
複数の第1の導電体7及び複数の第2の導電体9が電界紡糸装置1に備えられる場合、第1の導電体7及び第2の導電体9は、電界紡糸装置1の使用態様に応じて適宜配置することができる。複数の数の第1の導電体7及び複数の第2の導電体9の両方が、搬送経路Lの第1の方向の一方側に設けられてもよい。複数の第1の導電体7及び複数の第2の導電体9の両方が、搬送経路Lの第1の方向の両側に設けられてもよい。この例の場合、搬送経路Lの第1の方向の両外側に向かう力が、帯状体12に加わる。そのため、搬送方向に沿って形成される帯状体12の両縁部にシート11が形成されていても、巻取り部6による巻き込みが適切に抑制される。
【0039】
搬送経路Lには、巻出し部2から巻取り部6へ、基材10をガイドするガイドローラ(図示しない)が1つ設けられてもよく、複数設けられてもよい。この場合、搬送経路Lにおいて、巻出し部2と電界紡糸部3との間、及び、電界紡糸部3と巻取り部6との間の少なくとも一方に、ガイドローラが配置される。ガイドローラは、電界紡糸部3の内部に配置されてもよい。また、電界紡糸部3と巻取り部6との間において、基材10の表面に形成されたシート11の乾燥が行われてもよい。
【0040】
電界紡糸部3において、収集体(図示しない)の上に基材10が設置されてもよい。そして、前述のように電界紡糸ヘッド31のノズル33から収集体及び基材10に向かって原料液が噴出される。これにより、収集体上に設置される基材10の表面に原料液が堆積され、基材10の表面にシート11が形成される。この場合、基材10が電気的絶縁性を有する場合でも、基材10の表面に原料液のシート11を形成できる。
【0041】
電界紡糸部3では、電源から電圧が印加される部位が、電界紡糸ヘッド31への原料液の供給源、及び、供給源と電界紡糸ヘッド31との間の供給経路のいずれかに設けられていればよい。そして、電源から電圧が印加された部位と同一の極性に、原料液が帯電されればよい。これにより、帯電した原料液が、電界紡糸ヘッド31へ供給される。
【0042】
これらの少なくとも一つの実施形態の電界紡糸装置は、電界紡糸ヘッド、巻取り部及び第1の導電体を具備する。電界紡糸ヘッドは、帯電した原料液の吐出により基材にシートを形成する。巻取り部は、シートが基材上に形成された帯状体を巻き取る巻取り芯を備える。第1の導電体は、巻取り芯の軸方向の少なくとも一方側から巻取り芯に隣接するとともに、帯電した原料液とは異なる電位を与えられる。これにより、帯状体への歪みの発生を抑制できる電界紡糸装置及び電界紡糸方法を提供することができる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、付記を記載する。
[1]帯電した原料液の吐出により基材にシートを形成する電界紡糸ヘッドと、
前記シートが前記基材上に形成された帯状体を巻き取る巻取り芯を備える巻取り部と、 前記巻取り芯の軸方向の少なくとも一方側から前記巻取り芯に隣接するとともに、帯電した前記原料液とは異なる電位を与えられる第1の導電体と、
を具備する、電界紡糸装置。
[2]帯電した前記原料液とは反対の極性になる状態に、電圧を前記第1の導電体に印加する電源を備える、
[1]に記載の電界紡糸装置。
[3]前記第1の導電体の外周縁は、前記軸方向からの投影において、前記巻取り芯の外周縁に対して外周側に全周にわたって位置する、
[1]又は[2]に記載の電界紡糸装置。
[4]前記第1の導電体の外周縁は、前記軸方向からの投影において、前記巻取り芯に巻き取られた帯状体が形成する外周縁に対して外周側に全周にわたって位置する、
[3]に記載の電界紡糸装置。
[5]前記帯状体が搬送方向に通過する搬送経路において、前記搬送方向に交差する第1の方向の少なくとも一方側から前記帯状体に隣接するとともに、帯電した前記原料液とは異なる電位を与えられる第2の導電体をさらに具備する、
[1]~[4]のいずれか1つに記載の電界紡糸装置。
[6]帯電した前記原料液とは反対の極性になる状態に、電圧を前記第2の導電体に印加する電源を備える、
[5]に記載の電界紡糸装置。
[7]前記搬送経路は、前記搬送方向及び前記第1の方向の両方に交差する第2の方向について、前記第2の導電体の一対の縁部の間を通過する状態で配置される、
[5]又は[6]に記載の電界紡糸装置。
[8]帯電した原料液の吐出により基材にシートを形成することと、
導電体を隣接させた状態で、前記基材に前記シートが形成された帯状体を巻取り芯にロール状に巻き取ることであってと、
前記巻取り芯に前記帯状体が巻き取られている状態において、前記導電体を帯電した前記原料液とは異なる電位にすること、
を含む、電界紡糸方法。
【符号の説明】
【0044】
1…電界紡糸装置、31…電界紡糸ヘッド、6…巻取り部、61…巻取り芯、7…第1の導電体、81,82…電源、9…第2の導電体、10…基材、11…シート、12…帯状体、E1~E3…外周縁、E4,E5…縁部、L…搬送経路。

図1
図2
図3
図4