(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20241209BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G06F3/12 344
G06F3/12 303
G06F3/12 325
G06F3/12 356
G06F3/12 358
G06F3/12 373
H04N1/00 127Z
(21)【出願番号】P 2021030369
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 幸安
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-071507(JP,A)
【文献】特開2018-176752(JP,A)
【文献】特開2020-131669(JP,A)
【文献】特開2009-234244(JP,A)
【文献】特開2020-140396(JP,A)
【文献】特開2015-170115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/09- 3/12
B41J 29/00- 29/70
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータで動作可能であり第1の形式の印刷データを生成可能な印刷制御ソフトウェアのプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記コンピュータで動作するOS標準印刷ソフトウェアから、原稿データとユーザによる印刷設定とを含む、前記第1の形式とは異なる第2の形式の印刷データを取得する取得手段と、
前記印刷設定が所定の条件を満たす場合、前記原稿データのサイズの変換を行うように前記印刷データを変換する変換手段と、
前記変換手段で変換された前記印刷データを前記第1の形式の印刷データとして生成して印刷装置に送信する送信手段と、
として機能させ
、
前記変換手段は、前記印刷設定に含まれるユーザに応じて、前記原稿データのサイズを拡大する変換を行うか否かを決定することを特徴とするプログラム。
【請求項2】
前記所定の条件は、前記印刷設定に含まれる用紙サイズに対応付けられた所定のサイズの設定が前記印刷装置で設定可能であることを含むことを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記コンピュータを、
前記ユーザごとに、前記印刷装置で変換を行うか否かを設定したユーザ設定情報を取得する第二取得手段としてさらに機能させ、
前記変換手段は、前記ユーザ設定情報に基づいてユーザごとに前記印刷データのサイズを拡大する変換を行うか否かを決定することを特徴とする請求項
1または2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記ユーザ設定情報は、前記印刷装置でユーザが原稿データを拡大する処理を行ったか否かを示す履歴に基づく情報であることを特徴とする請求項
3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記コンピュータを、
前記印刷設定が所定の条件を満たす場合に、前記印刷データの変換を前記変換手段が行う第1モード、または、前記印刷設定が所定の条件を満たした場合であっても、前記印刷データを前記変換手段が変換しない第2モードを設定可能な設定手段としてさらに機能させ、
前記変換手段は、前記設定手段で設定されたモードに応じて動作することを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項6】
コンピュータで動作可能であり第1の形式の印刷データを生成可能な印刷制御ソフトウェアのプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記コンピュータで動作するOS標準印刷ソフトウェアから、原稿データとユーザによる印刷設定とを含む、前記第1の形式とは異なる第2の形式の印刷データを取得する取得手段と、
前記印刷設定が所定の条件を満たす場合、前記原稿データのサイズの変換を行うように前記印刷データを変換する変換手段と、
前記変換手段で変換された前記印刷データを前記第1の形式の印刷データとして生成して印刷装置に送信する送信手段と、
前記印刷設定が所定の条件を満たす場合に、前記印刷データの変換を前記変換手段が行う第1モード、または、前記印刷設定が所定の条件を満たした場合であっても、前記印刷データを前記変換手段が変換しない第2モードを設定可能な設定手段と、
として機能させ、
前記変換手段は、前記設定手段で設定されたモードに応じて動作することを特徴とするプログラム。
【請求項7】
前記設定手段は、前記印刷制御ソフトウェアのインストール時、前記印刷制御ソフトウェアの起動時、または印刷実行時の少なくとも一つにおいて前記モードを設定することが可能である請求項
5または6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記コンピュータを、
前記ユーザごとに、前記印刷装置で変換を行うか否かを設定したユーザ設定情報を取得する第二取得手段としてさらに機能させ、
前記印刷設定に含まれるユーザが、前記印刷データの変換を行うユーザであるかを前記ユーザ設定情報に基づいて判定できない場合、前記設定手段は、前記モードを設定する画面をディスプレイに表示させることを特徴とする請求項
5乃至7のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項9】
前記コンピュータを、
前記設定手段による設定が許可されていない場合において、前記印刷装置に装着されている用紙サイズを取得できるかを判定する第二判定手段としてさらに機能させ、
前記用紙サイズを取得できる場合、前記変換手段は、前記取得した用紙サイズに応じて前記印刷データを変換するかを決定することを特徴とする請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記変換手段は、前記用紙サイズが所定のサイズであった場合に、前記原稿データのサイズを拡大する変換を行うことを特徴とする請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記変換手段は、前記用紙サイズが所定のサイズとは異なるサイズであった場合に、前記変換をしないことを特徴とする請求項9に記載のプログラム。
【請求項12】
前記用紙サイズを取得できない場合、前記変換手段は、前記印刷制御ソフトウェアのインストール時に設定したモードに応じて前記印刷データを変換するかを決定することを特徴とする請求項9に記載のプログラム。
【請求項13】
印刷設定で指定された用紙種類に対応する前記印刷装置における余白の設定の情報を取得する第二取得手段としてさらに機能させ、
前記変換手段は、前記印刷設定で指定された余白が、前記第二取得手段で取得した余白に満たない場合、前記原稿データを縮小する変換を行うことを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項14】
コンピュータで動作可能であり第1の形式の印刷データを生成可能な印刷制御ソフトウェアのプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記コンピュータで動作するOS標準印刷ソフトウェアから、原稿データとユーザによる印刷設定とを含む、前記第1の形式とは異なる第2の形式の印刷データを取得する取得手段と、
前記印刷設定が所定の条件を満たす場合、前記原稿データのサイズの変換を行うように前記印刷データを変換する変換手段と、
前記変換手段で変換された前記印刷データを前記第1の形式の印刷データとして生成して印刷装置に送信する送信手段と、
印刷設定で指定された用紙種類に対応する前記印刷装置における余白の設定の情報を取得する第二取得手段と、
として機能させ、
前記変換手段は、前記印刷設定で指定された余白が、前記第二取得手段で取得した余白に満たない場合、前記原稿データを縮小する変換を行うことを特徴とするプログラム。
【請求項15】
第1の形式の印刷データを生成可能であり、印刷装置と通信可能である情報処理装置であって、
コンピュータで動作するOS標準印刷ソフトウェアから、原稿データとユーザによる印刷設定を含む、前記第1の形式とは異なる第2の形式の印刷データを取得する取得手段と、
前記印刷設定が所定の条件を満たす場合、前記原稿データのサイズの変換を行うように前記印刷データを変換する変換手段と、
前記変換手段で変換された前記印刷データを前記第1の形式の印刷データとして生成して印刷装置に送信する送信手段と、
を備え
、
前記変換手段は、前記印刷設定に含まれるユーザに応じて、前記原稿データのサイズを拡大する変換を行うか否かを決定することを特徴とする情報処理装置。
【請求項16】
第1の形式の印刷データを生成可能であり、印刷装置と通信可能である情報処理装置であって、
コンピュータで動作するOS標準印刷ソフトウェアから、原稿データとユーザによる印刷設定とを含む、前記第1の形式とは異なる第2の形式の印刷データを取得する取得手段と、
前記印刷設定が所定の条件を満たす場合、前記原稿データのサイズの変換を行うように前記印刷データを変換する変換手段と、
前記変換手段で変換された前記印刷データを前記第1の形式の印刷データとして生成して印刷装置に送信する送信手段と、
前記印刷設定が所定の条件を満たす場合に、前記印刷データの変換を前記変換手段が行う第1モード、または、前記印刷設定が所定の条件を満たした場合であっても、前記印刷データを前記変換手段が変換しない第2モードを設定可能な設定手段と、
を備え、
前記変換手段は、前記設定手段で設定されたモードに応じて動作することを特徴とする情報処理装置。
【請求項17】
第1の形式の印刷データを生成可能であり、印刷装置と通信可能である情報処理装置であって、
コンピュータで動作するOS標準印刷ソフトウェアから、原稿データとユーザによる印刷設定とを含む、前記第1の形式とは異なる第2の形式の印刷データを取得する取得手段と、
前記印刷設定が所定の条件を満たす場合、前記原稿データのサイズの変換を行うように前記印刷データを変換する変換手段と、
前記変換手段で変換された前記印刷データを前記第1の形式の印刷データとして生成して印刷装置に送信する送信手段と、
印刷設定で指定された用紙種類に対応する前記印刷装置における余白の設定の情報を取得する第二取得手段と、
を備え、
前記変換手段は、前記印刷設定で指定された余白が、前記第二取得手段で取得した余白に満たない場合、前記原稿データを縮小する変換を行うことを特徴とする情報処理装置。
【請求項18】
第1の形式の印刷データを生成可能であ
り、印刷装置と通信可能である情報処理装置の制御方法であって、
コンピュータで動作するOS標準印刷ソフトウェアから、原稿データとユーザによる印刷設定を含む、前記第1の形式とは異なる第2の形式の印刷データを取得する取得ステップと、
前記印刷設定が所定の条件を満たす場合、前記原稿データのサイズの変換を行うように前記印刷データを変換する変換ステップと、
前記変換ステップで変換された前記印刷データを前記第1の形式の印刷データとして生成して印刷装置に送信する送信ステップと、
を備え、
前記変換ステップは、前記印刷設定に含まれるユーザに応じて、前記原稿データのサイズを拡大する変換を行うか否かを決定することを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項19】
第1の形式の印刷データを生成可能であり、印刷装置と通信可能である情報処理装置の制御方法であって、
コンピュータで動作するOS標準印刷ソフトウェアから、原稿データとユーザによる印刷設定とを含む、前記第1の形式とは異なる第2の形式の印刷データを取得する取得ステップと、
前記印刷設定が所定の条件を満たす場合、前記原稿データのサイズの変換を行うように前記印刷データを変換する変換ステップと、
前記変換ステップで変換された前記印刷データを前記第1の形式の印刷データとして生成して印刷装置に送信する送信ステップと、
前記印刷設定が所定の条件を満たす場合に、前記印刷データの変換を前記変換ステップが行う第1モード、または、前記印刷設定が所定の条件を満たした場合であっても、前記印刷データを前記変換ステップが変換しない第2モードを設定可能な設定ステップと、
を備え、
前記変換ステップは、前記設定ステップで設定されたモードに応じて動作することを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項20】
第1の形式の印刷データを生成可能であり、印刷装置と通信可能である情報処理装置の制御方法であって、
コンピュータで動作するOS標準印刷ソフトウェアから、原稿データとユーザによる印刷設定とを含む、前記第1の形式とは異なる第2の形式の印刷データを取得する取得ステップと、
前記印刷設定が所定の条件を満たす場合、前記原稿データのサイズの変換を行うように前記印刷データを変換する変換ステップと、
前記変換ステップで変換された前記印刷データを前記第1の形式の印刷データとして生成して印刷装置に送信する送信ステップと、
印刷設定で指定された用紙種類に対応する前記印刷装置における余白の設定の情報を取得する第二取得ステップと、
を備え、
前記変換ステップは、前記印刷設定で指定された余白が、前記第二取得ステップで取得した余白に満たない場合、前記原稿データを縮小する変換を行うことを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ジョブに含まれる原稿データを変換する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタベンダーが提供する固有プリンタドライバの印刷機能として、プリンタ本体に設定されている用紙サイズを検出して検出したサイズに従って印刷データを変換する技術(特許文献1参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようにプリンタベンダーの提供する固有プリンタドライバを必要とせずに、オペレーティングシステム(OS)が標準的な印刷機能(OS標準印刷機能)を提供する技術がある。この場合、OS標準印刷機能に対応していないプリンタに対しては、印刷変換ユーティリティを用いることで、OS標準印刷機能に則った印刷標準プロトコルをプリンタ固有のプロトコルに変換することが可能となる。
【0005】
しかし、OS標準印刷機能の環境下においては、従来の固有プリンタドライバで独自の名称で表示されていた、プリンタの仕様に合わせて独自に定義した用紙サイズ、または、上下左右の余白が無い用紙サイズが、異なる名称で表示される可能性がある。これにより、所望の印刷結果を得ることができない場合がある。
【0006】
本発明は、OS標準印刷機能に対応していないプリンタで印刷する場合に所望の印刷結果を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータで動作可能であり第1の形式の印刷
データを生成可能な印刷制御ソフトウェアのプログラムであって、前記コンピュータを、
前記コンピュータで動作するOS標準印刷ソフトウェアから、原稿データとユーザによる
印刷設定を含む、前記第1の形式とは異なる第2の形式の印刷データを取得する取得手段
と、前記印刷設定が所定の条件を満たす場合、前記原稿データのサイズの変換を行うよう
に前記印刷データを変換する変換手段と、前記変換手段で変換された前記印刷データを前
記第1の形式の印刷データとして生成して印刷装置に送信する送信手段と、として機能さ
せ、前記変換手段は、前記印刷設定に含まれるユーザに応じて、前記原稿データのサイズを拡大する変換を行うか否かを決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、OS標準印刷機能に対応していないプリンタで印刷する場合に所望の印刷結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の印刷システムの全体構成を示す図である。
【
図2】プリンタでサポートする用紙サイズ情報を示す図である。
【
図3】プリンタドライバの環境下における印刷設定画面を示す図である
【
図4】OS標準印刷機能の環境下における印刷設定画面を示す図である。
【
図5】プリンタドライバにおけるA2のフチなしサイズの印刷結果を示した図である。
【
図6】印刷変換ユーティリティでの印刷データ変換処理フローを示す図である。
【
図7】標準印刷プロトコルであるIPPの印刷ジョブを示す図である。
【
図8】ユーザに応じたデータ変換方法情報を示す図である。
【
図9】印刷変換ユーティリティの表示部が表示する印刷確認画面を示す図である。
【
図10】印刷設定に応じたデータ変換方法情報を示す図である。
【
図11】印刷変換ユーティリティでの余白サイズ変換処理フローを示す図である。
【
図12】印刷変換ユーティリティの表示部が表示するインストール設定画面を示す図である。
【
図13】印刷変換ユーティリティの表示部が表示するプリンタ環境設定画面を示す図である。
【
図14】印刷変換ユーティリティでの印刷データ変換方法決定処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。尚、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0011】
<実施形態1>
印刷データ生成に必要な標準的な機能(OS標準印刷機能)に対応していない(サポートしていない)プリンタでは、OS標準印刷機能を用いることができない。つまり、OS標準印刷機能に対応していないプリンタは、OS標準印刷機能にて規定されている所定の形式(以下、「標準形式」とも称する)の印刷データを解釈することができない。このため、本実施形態では、OS標準印刷機能を備えていないプリンタを、OS標準印刷機能に対応したプリンタに見せかけて、OS標準印刷機能を用いた印刷指示を可能とするための印刷変換ユーティリティと呼ばれる印刷制御ソフトウェアが用いられる。印刷変換ユーティリティは、OSがインストールされているパーソナルコンピュータ(PC)にインストールされて用いられる。尚、印刷変換ユーティリティは、OSがインストールされているPCとは別個のコンピュータに備えられていてもよい。
【0012】
印刷変換ユーティリティは、OSからの能力情報の問い合わせに対し、OS標準印刷機能に対応していないプリンタの能力を代理で応答する。また、印刷変換ユーティリティは、標準形式の印刷データ(第2の形式の印刷データ)をプリンタがサポートする形式(例えば、プリンタベンダー固有の形式)の印刷データ(第1の形式の印刷データ)に変換して送信する。印刷データは、印刷コマンドともいう。印刷変換ユーティリティをPCに組み込むと、印刷変換ユーティリティがプリンタ固有のプロトコルによるプリンタとのやり取り(通信)をOS標準印刷機能に則ったやり取りに変換するようになる。このため、OS標準印刷機能に対応していないプリンタであってもOS標準印刷機能を使ってPCから印刷指示できるようになる。本実施形態は、このような印刷変換ユーティリティを用いる形態である。
【0013】
[システム構成]
図1は、本実施形態に係る印刷システムのハードウェア構成およびソフトウェア構成を示すブロック図である。
図1(a)は印刷システムのハードウェア構成を示す図であり、
図1(b)は印刷システムのソフトウェア構成を示す図である。まず、
図1(a)について説明する。本実施形態では、ホストコンピュータであるPC100とプリンタ110とが、LAN(Local Area Network)等の通信バス30(ネットワーク)を介して通信可能な印刷システムの例を示す。ここではネットワークとしてLANを想定しているが、WAN(Wide Area Network)であっても構わない。また、ネットワークの接続形態として有線無線を問わず、これらが混在していても構わない。また、PC100とプリンタ110の接続形態としてUSB(Universal Serial Bus)であっても構わない。尚、
図1(a)では、プリンタは1つのみ図示したが、通信バス30を介して任意の数のプリンタが接続可能である。本実施形態では、
図1(b)に示すように、プリンタ110とプリンタ130を用いる例を説明する。
【0014】
PC100は情報処理装置の一例である。PC100には、オペレーティングシステム(以下、OSと呼ぶ)がインストールされている。OSは、後述するOS標準印刷ソフトウェアであるOS印刷システムを備えている。
【0015】
PC100は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)であり、インタフェース(I/F)部17と、CPU11、ROM12、RAM13、ディスプレイ14、入力部15、および外部記憶装置16を有する。本実施形態のPC100は、デスクトップ型PCに限らず、ノート型PC、タブレット型PC、またはスマートフォン等の携帯型端末でもよい。
【0016】
PC100は、プリンタ110へ、プリンタ110を制御するための指示、印刷データ、または設定コマンド等を送信する。CPU11は、PC100の各部を制御する中央演算装置であり、OSなどの制御プログラムを実行する。ROM12は記憶されたOSによりそのシステム動作を制御する。RAM13は、CPU11による作業領域が展開されるランダムアクセスメモリである。外部記憶装置16は、アプリケーションなどの各種制御プログラムを格納している。
【0017】
入力部15は、PC100を操作するためのキーボードおよびマウス等の入力デバイスである。ディスプレイ14は、入力部15から入力された情報を確認するための表示、或いは、OSやアプリケーションのユーザインタフェース画面の表示、メッセージの表示などを行う表示デバイスである。I/F部17は、プリンタ110とのデータの送受信を行う通信モジュールである。
【0018】
印刷装置であるプリンタ110は、例えばインクジェットプリンタである。プリンタ110は、I/F部27と、CPU21、ROM22、RAM23、表示部24、入力部25、およびプリントエンジン26を有する。CPU21は以下の各部を制御する中央演算処理装置である。ROM22は読み出し専用メモリであり、プリントエンジン26を制御するプログラムを格納している。RAM23は随時書き込み読み出しメモリであり、プリントエンジン24の動作に必要なプログラム、PC100から受信した設定値などを一時記憶する。入力部25は、プリンタ110を操作するためのボタン等である。表示部24は、入力部25から入力された情報を確認するための表示、或いは、プリンタ110のステータスメッセージの表示などを行う表示デバイスである。
【0019】
プリントエンジン26は、PC100から送られたプリントデータに基づいて記録媒体にプリントする。I/F部27は、PC100からプリントデータを受信する通信モジュールであり、プリンタ110からPC100にプリンタ110の現在のステータス情報を送信する機能などを有する。ここでいうステータス情報とは、I/F部27を介して接続されているPC100からの要求に応じて、プリンタ110が返却することのできる、プリンタ110の状態を表すステータスデータである。ステータスデータとは、「印刷中」「待機状態」などのプリンタ110の動作の状態や、「用紙切れ」「カバーが開いている」「インク残量無し」などのプリンタ110のエラーの状態を知らせるための情報である。プリンタ130の構成もプリンタ110と同様であるので、説明は省略する。本実施形態では、プリンタ110は、OS標準印刷機能に対応するプリンタであり、プリンタ130はOS標準印刷機能に対応していないプリンタである。
【0020】
次に、
図1(b)について説明する。まず、PC100のソフトウェア構成について説明する。PC100は、アプリケーション101、OS印刷システム102、ネットワーク(NW)通信制御部104、および印刷変換ユーティリティ106を備える。OS印刷システム102は、OS標準印刷制御部103を備える。印刷変換ユーティリティ106は、仮想プリンタ105、ベンダードライバ107、記憶部108、表示部109、および印刷制御部150を備える。仮想プリンタ105はNW通信制御部105aを有する。ベンダードライバ107は、仮想プリンタ105が受信したOS標準印刷機能に則った形式の印刷データをベンダー固有の形式の印刷データに変換する。印刷制御部150は、印刷に関わる設定画面の表示制御または印刷データの生成等を行う。印刷変換ユーティリティ106はOS標準印刷に対応していないプリンタでOS標準印刷機能を使用できるようにするために用いられるソフトウェアであり、必要に応じてPC100にインストールする。アプリケーション101は、PC100の基本ソフトウェアであるOS上で動作可能なソフトウェアである。アプリケーション101は、例えば、文書作成用のワープロソフトや画像編集ソフト、またはウェブブラウザなどの描画アプリケーションが挙げられる。アプリケーション101により生成可能な描画データは、例えば、PDF(Portable Document Format)形式のデータである。
【0021】
OS印刷システム102は、印刷制御を行うOSの要素であり、アプリケーション101からの印刷要求をジョブとして順次処理する。OS印刷システム102が備えるOS標準印刷制御部103は、OS標準印刷機能を備えるソフトウェアである。OS標準印刷制御部103は、アプリケーション101が生成した描画データをスプール処理し、所定の形式(標準形式という)の印刷データを生成する。さらに、OS標準印刷制御部103は、生成した標準形式の印刷データを、プリンタ110へ送信するために、NW通信制御部104へ標準形式の印刷データを出力する処理を行う。尚、本実施形態のOS標準印刷制御部103は、NW通信制御部104を介し、標準印刷プロトコルであるIPP(Internet Printing Protocol)を用いて、プリンタ110と通信する。また、OS標準印刷制御部103は、NW通信制御部104を介し、プリンタ110がOS標準印刷機能をサポートしているかを判定するため、プリンタ110の能力情報を取得する。
【0022】
以下、印刷指示の際の流れを説明する。アプリケーション101は、描画データの生成後、ユーザ指示に基づき、OS印刷システム102に対して印刷要求を行う。印刷要求は印刷ジョブとしてOS印刷システム102のプリントキューに投入される。尚、印刷要求が行われる場合、印刷設定については、OS標準印刷機能103が提供する設定画面によりユーザからの設定指示を受け付けることができる。
【0023】
印刷要求が行われると、印刷設定に関する情報と、アプリケーション101により生成された描画データ(原稿データ)と、を含む印刷ジョブ(印刷データ)がアプリケーション101からOS印刷システム102に渡される。印刷設定に関する情報には、用紙サイズや給紙方法、またはどのプリントキューを用いて印刷を行うか、などの情報が含まれる。
【0024】
尚、印刷変換ユーティリティ106を介して印刷指示するためには、アプリケーション101からの印刷要求を受けるためのOS印刷システム102用と、印刷変換ユーティリティ106用との両方のプリントキューをあらかじめ登録しておく必要がある。印刷変換ユーティリティ106用のプリントキューは、仮想プリンタ105へ送信された印刷データが投入されるためのキューである。尚、設定登録時にはまず、印刷変換ユーティリティ106用のプリントキューの登録が行なわれることにより、印刷変換ユーティリティ106は仮想プリンタ105を起動する。その後、印刷変換ユーティリティ106は、仮想プリンタ105を指定してOS印刷システム102用にプリントキューを自動的に登録させる。
【0025】
OS印刷システム102のOS標準印刷制御部103は、印刷ジョブを受けると、OS標準印刷機能に則った所定の形式の印刷データ(第2の形式の印刷データ)を生成する。
【0026】
OS標準印刷機能103に対応するプリンタ110はOS標準印刷機能に則った形式の印刷データを解釈することが可能なプリンタである。OS印刷システム102はNW通信制御部104を介して生成した印刷データをプリンタ110のようなOS標準印刷に対応したプリンタに送信する。
【0027】
一方、OS標準印刷に対応していないプリンタ130は、OS標準印刷機能103に則った形式の印刷データを解釈できない。このため、ユーザは、印刷変換ユーティリティ106を使うことでプリンタ130を用いて印刷することができる。OS標準印刷機能に非対応のプリンタ130の印刷ジョブ(出力先プリンタとして仮想プリンタ105が指定された印刷ジョブ)であれば、OS印刷システム102は生成した印刷データを印刷変換ユーティリティ106が起動した仮想プリンタ105に送信する。そして、印刷変換ユーティリティ106は、仮想プリンタ105が受信したOS標準印刷機能103に則った形式の印刷データをベンダードライバ107によりベンダー固有の形式の印刷データに変換する。即ち、印刷変換ユーティリティ106は、第2の形式の印刷データから、プリンタ130が解釈可能な第1の形式の印刷データを生成する。生成した印刷データは、NW通信制御部を介してOS標準印刷機能に対応していないプリンタ130に送信する。本実施形態では、PC100において仮想プリンタ105が起動していることを想定している。
【0028】
プリンタ110、およびプリンタ130は、NW通信制御部111、印刷制御部112、および印刷部113を備える。印刷制御部112は、およびNW通信制御部111を介してPC100から印刷データを受信し、印刷データに基づき印刷部113を制御して印刷を実行する。
【0029】
印刷変換ユーティリティ106に含まれる記憶部108は、仮想プリンタとして登録しているプリンタがサポートしている用紙関連情報を保持する。用紙関連情報は、
図2で後述する。これらは、あらかじめ印刷変換ユーティリティ106の記憶部108に保持していてもよいし、プリンタと通信して用紙関連情報を取得し、保持してもよい。
【0030】
印刷変換ユーティリティ106が有する表示部109は、「用紙切れ」「カバーが開いている」「インク残量無し」等の仮想プリンタ105のステータス情報や「印刷中」「待機中」等の印刷ジョブのステータス情報をPC100のディスプレイ14に表示する。
【0031】
次に、PC120のソフトウェア構成について説明する。PC120は、アプリケーション121、OS印刷システム122、ベンダードライバ124、およびNW通信制御部125を備える。OS印刷システム122は、OS標準印刷制御部123を備える。ベンダードライバ124は、プリンタ130固有のプリンタドライバであり、プリンタ130を使用するために必要に応じてPC120にインストールする。アプリケーション121は、アプリケーション101と同様にPC120の基本ソフトウェアであるOS上で動作するソフトウェアである。
【0032】
PC120では、ベンダードライバ124をインストールしているため、プリンタ130が解釈可能なベンダー固有の形式の印刷データをベンダードライバ124が生成し、プリンタ130で印刷を実行することができる。
【0033】
上記にて説明したPC100における印刷指示の際の流れと同様に、OS印刷システム122はアプリケーション121からの印刷要求をジョブとして順次処理する。アプリケーション121は、描画データの生成後、ユーザ指示に基づき、OS印刷システム122に対して印刷要求を行う。印刷要求は印刷ジョブとしてOS印刷システム122に投入される。尚、印刷要求が行われる場合、印刷設定については、ベンダードライバ124が提供する設定画面によりユーザからの設定指示を受け付けることができる。印刷要求が行われると、印刷設定に関する情報と、アプリケーション121により生成された描画データと、を含む印刷ジョブがアプリケーション121からOS印刷システム122を介してベンダードライバ124に渡される。印刷設定に関する情報には、用紙サイズや給紙方法、または、どのプリントキューにおいて印刷を行うか、などの情報が含まれる。
【0034】
ベンダードライバ124は、印刷ジョブを受けると、ベンダー固有の形式の印刷データを生成する。ベンダードライバ124に対応するプリンタ130はベンダー固有の形式の印刷データを解釈することが可能であり、ベンダードライバ124はNW通信制御部125を介して生成した印刷データをOS標準印刷に対応してないプリンタ130に送信する。
【0035】
図2は、プリンタ130でサポートする用紙サイズに関する情報を含む用紙関連情報のリストを示す図である。
図2では、例として、A2、A2 Oversize、A2 Borderless、A3、A3 Oversize、A3 Borderlessおよび、A4の7つのサポート用紙サイズを記載している。
図2のOversizeはオーバーサイズ、Borderlessはフチなしサイズにそれぞれ対応する。なお、プリンタには動作に必要な余白が設定されているため、通常印刷の場合、成果物(印刷結果)の四隅にはその分だけ印刷がされていない余白が現れる。そこで、オーバーサイズ印刷とフチなし印刷はどちらも結果的に余白が成果物に表れないように印刷させる機能である。
【0036】
まずオーバーサイズ印刷とは、印刷原稿サイズはそのままで、印刷原稿の4辺のフチに予め余白(プリンタの動作に必要な余白)を追加し、印刷原稿サイズよりも余白の分だけ大きなサイズの用紙に印刷する印刷方法である。ユーザは印刷後に周囲の余白を切り落とすことにより、結果的に原稿が印刷用紙いっぱいに印刷された成果物を得ることができる。一方、フチなし印刷は、オーバーサイズ印刷とは異なり、印刷の際、用紙のフチに余白ができないように、用紙サイズよりも大きいサイズの印刷原稿を出力することにより、用紙からはみ出したサイズで印刷させる。これにより、結果的に指定したサイズの用紙いっぱいに印刷された成果物を得ることができる印刷機能のことである。このためフチなし印刷結果はもともとの原稿から、4辺が見切れた状態で出力されることになる。用紙関連情報には、プリンタ130で対応している用紙サイズの名称200、用紙幅サイズ201、用紙高さサイズ202、上端余白サイズ203、左端余白サイズ204、右端余白サイズ205、および下端余白サイズ206が含まれる。用紙幅サイズ201、用紙高さサイズ202、上端余白サイズ203、左端余白サイズ204、右端余白サイズ205、および下端余白サイズ206は、1/100mmの単位で表される。
【0037】
後述でも説明するがOS標準印刷機能でフチなし印刷を実行すると、印刷結果がユーザの意図と反する結果となることがある。例えばフチなし印刷を意図して印刷したのにオーバーサイズ印刷で出力されてしまった、というようなことがある。したがって、本実施形態において、用紙関連情報は、OS標準印刷機能でフチなし印刷をする際に、ユーザが意図した印刷結果を得られるように用紙サイズを変換するために用いられる。
【0038】
図3は、ベンダードライバ124が提供する印刷設定画面300を示す模式図である。印刷設定画面300は、
図3に示すように、印刷を実行させるプリンタを選択するためのプリンタ選択アイテム301、用紙サイズ選択アイテム302、両面印刷選択アイテム303、部数選択アイテム304、および用紙の種類選択アイテム305を含む。また、印刷設定画面300は、給紙方法選択アイテム306、印刷プレビュー領域307、キャンセルボタン308、および印刷ボタン309を含む。用紙サイズ選択アイテム302を選択すると、用紙サイズ選択リスト310が表示される。用紙サイズ選択リスト310には、
図2のA2およびA2 Oversizeのように用紙幅サイズ201および用紙高さサイズ202が等しい用紙サイズが1つのサイズとして表示される。用紙サイズ選択リスト310のA2を選択すると、余白サイズ選択リスト311が表示される。即ち、余白サイズ選択リスト311のA2およびA2オーバーサイズは、
図2のA2およびA2 Oversizeのように用紙幅サイズ201および用紙高さサイズ202が等しく、かつ4辺の余白サイズ203~206が異なるサイズ同士ということである。
【0039】
図3では、ユーザがA2のフチなしサイズに印刷する場合の印刷設定を示している。ベンダードライバ124における印刷設定画面300では、プリンタ130で対応している用紙サイズの名称200が用紙サイズ選択アイテム302および用紙サイズ選択リスト310および余白サイズ選択リスト311に表示される。印刷プレビュー領域307には、ユーザが用紙サイズ選択アイテム302で選択した用紙の各サイズ201~206に応じた印刷結果を表す印刷プレビュー画像が表示される。そして、印刷プレビューを確認したユーザにより印刷ボタン309が指定されることにより、印刷要求が行われる。
【0040】
図4は、OS標準印刷機能103により提供される印刷設定画面400を示す模式図である。印刷設定画面400は、印刷を実行させるプリンタを選択するためのプリンタ選択アイテム401、用紙サイズ選択アイテム402、両面印刷選択アイテム403、部数選択アイテム404、および用紙の種類選択アイテム405を含む。また、印刷設定画面400は、給紙方法選択アイテム406、印刷プレビュー領域407、キャンセルボタン408、および印刷ボタン409を含む。用紙サイズ選択アイテム402を選択すると、用紙サイズ選択リスト410が表示される。用紙サイズ選択リスト410には、
図2のA2およびA2 Oversizeのように用紙幅サイズ201および用紙高さサイズ202が等しい用紙サイズが1つのサイズとして表示される。用紙サイズ選択リスト410のA2を選択すると、余白サイズ選択リスト411が表示される。即ち、余白サイズ選択リスト411のA2およびA2フチなしは、
図2のA2およびA2 Oversizeのように、用紙幅サイズ201および用紙高さサイズ202が等しく、かつ4辺の余白サイズ203~206が異なるサイズ同士ということである。
【0041】
図4では、ユーザがA2のフチなしサイズに印刷する場合の印刷設定を示している。OS標準印刷機能103における印刷設定画面400では、プリンタ130で対応している用紙サイズの201~206のサイズに応じた名称が用紙サイズ選択アイテム402および用紙サイズ選択リスト410および余白サイズ選択リスト411に表示される。例えば、
図2のA2 Oversizeのように余白サイズ203~206が0であるサイズは、「フチなし」という名称で表示される。また、
図2のA2 Borderlessのように、用紙幅サイズ201および用紙高さサイズ202がA2サイズと異なるためOS標準印刷機能103で定義されていないサイズは、「426×600mm」というカスタムサイズの名称で表示される。上記以外でも、OS標準印刷機能では、個々のプリンタの仕様は考慮できないため、定型サイズ以外の用紙サイズはカスタムサイズとして表示され、上下左右の余白が無い用紙サイズはフチなしサイズとして表示される。
【0042】
ここで、
図3および
図4より、ユーザがA2のフチなしサイズを選択しているつもりでも、ベンダードライバ124とOS標準印刷機能103とでそれぞれ別のサイズが選択されてしまうことがわかる。そして、その結果、ユーザが所望する印刷結果が得られないことがある。以下、図を用いて具体的に説明する。
【0043】
図5は、ベンダードライバ124でA2のフチなしサイズを印刷する場合の原稿データと印刷結果を示した図である。前述したように、ベンダードライバ124で用いている「フチなし印刷」とは、印刷の際、用紙からはみ出したサイズで印刷させる印刷機能のことである。このためフチなし印刷結果はもともとの原稿から、4辺が見切れた状態で出力されることになる。よって、ベンダードライバ124の「フチなし印刷」を実施しようとするユーザは、見切れることを踏まえて、原稿データを生成する。
図5では、原稿データ500はA2サイズ(420×594mm)よりも大きいA2のフチなしサイズである426×600mmのデータである。このような原稿データを用いて定型サイズであるA2サイズの用紙に対して等倍印刷を行うことで、原稿データ500の上下左右4辺がはみ出して印刷され、フチなし印刷結果502を得ることができる。フチなし印刷結果502は上下左右4辺をはみ出して印刷することで得られる。このためユーザは、A2の定型サイズと同等の大きさであるフチなし印刷領域501に対して上下左右4辺に印刷されないデータを加えることを想定して原稿500を作成するように意識付けがされている。
【0044】
ユーザが
図5に示す原稿データ500を使用し、ベンダードライバ124で印刷設定画面300のようにA2のフチなしサイズを選択して印刷実行した場合には、
図5に示すフチなし印刷結果502を得ることができる。また、はみ出し領域503はA2の定型サイズの用紙の範囲外に印刷されるため、A2の定型サイズの用紙には印刷されない。
【0045】
これに対し、ユーザが
図5に示す原稿データ500を使用し、OS標準印刷機能103の印刷設定画面400のようにA2のフチなしサイズを選択して印刷実行した場合には、
図5に示すフチなし印刷結果502を得ることができない。前述したように、OS標準印刷機能103の印刷設定画面400におけるA2のフチなしサイズは、ベンダードライバ124の印刷設定画面300におけるA2オーバーサイズに対応する。このためユーザがA2サイズ(420×594mm)よりも大きいA2のフチなしサイズ(426×600mm)のデータを生成しても、OS標準印刷機能103では、原稿データ500がA2サイズ(420×594mm)に縮小された印刷データが生成される。そして、そのA2サイズ(420×594mm)のまま印刷変換ユーティリティ106に送られる。以降で説明するような処理を行わない場合、印刷変換ユーティリティ106は、OS印刷システム102から送られた印刷データを用いてプリンタ130に印刷指示をすることになる。この結果、ユーザがベンダードライバ124の「フチなし印刷」を意識して印刷を指示しているにも関わらず、4辺をはみ出して印刷がされず、A2の定型サイズに縮小されて印刷されてしまう。
【0046】
このように、OS標準印刷機能103を使用する環境下では、ベンダードライバ124使用時に表示されていた用紙サイズを選択すると印刷結果がベンダードライバ124使用時と同じにならない。よって、所望の印刷結果が得らない。尚、フチなし印刷を行うユーザが全員原稿データ500のような上下左右4辺が印刷されないデータを使用する場合には、印刷変換ユーティリティ106で426×600mmのサイズに一律で拡大する処理を行えばよい。しかし、ユーザによっては、オーバーサイズのように原稿データの上下左右4辺をすべて印刷すべきデータとして使用することもある。このため、拡大処理を行うか等倍処理を行うかを切り分けて処理をすることが求められる。また、印刷変換ユーティリティ106では、アプリケーションがOS印刷システム102に指定した原稿データのサイズを取得することはできず、OS標準印刷機能103で設定したサイズの原稿データしか取得することができない。このため、OS印刷システム102では、原稿データが等倍のままか、縮小されたものかを判別することができない。
【0047】
そこで、本実施形態では、OS標準印刷機能を使用し、OS標準印刷機能に対応していないプリンタで印刷を行う場合に、印刷を実行するユーザに応じて所望の印刷結果を得るために、原稿データのサイズを変換し、印刷装置へ出力する処理を行う。以下、本実施形態の制御について詳細に説明する。尚、以降では、ベンダードライバ124でいうところの「フチなし印刷」を、OS標準印刷機能での「フチなし印刷」と区別する趣旨で、「はみ出しフチなし印刷」ということもある。
【0048】
図6は、OS標準印刷機能を用いてフチなし印刷を行う場合に、印刷変換ユーティリティ106が実行する原稿サイズ変換処理のフローチャートを示す図である。より詳細には、印刷変換ユーティリティ106の印刷制御部150が、NW通信制御部を介してプリンタに送信する印刷データを生成する処理フローを示す。以降、印刷変換ユーティリティ106を、各処理の主体として説明するが、実際には、対応するプログラムをCPU11が実行することで、対応する機能が実現されることになる。
【0049】
尚、
図6の処理フローは、印刷設定画面400において、ユーザにより印刷ボタン409が選択され、印刷ジョブを印刷変換ユーティリティ106が取得することで開始される。尚、ユーザにより、印刷設定画面400において使用するプリンタがプリンタ選択アイテム401で選択されることにより、OS印刷システム102は、選択されたプリンタに印刷データを送信する。例えば、プリンタ選択アイテム401においてプリンタ110が選択されていた場合は、直接プリンタ110に印刷データを送信し、OS標準印刷機能に対応していないプリンタ130が選択されていた場合は、仮想プリンタ105に印刷データを送信する。本実施形態では、印刷変換ユーティリティ106の処理フローについて、
図6のフローチャートを用いて説明する。尚、各処理の説明における記号「S」は、当該フローチャートにおけるステップであることを意味する(以下、本明細書において同様である)。
【0050】
S600では、印刷変換ユーティリティ106は、OS印刷システム102から印刷ジョブを取得して、S601に進む。印刷ジョブには、後述する
図7に示す各種のデータの他、原稿データが含まれる。尚、原稿データのもともとのサイズを特定することはできないが、印刷変換ユーティリティ106はA2、A3等の定型サイズで原稿データを受信する。ここで、印刷変換ユーティリティ106がOS印刷システム102から取得する印刷ジョブを
図7に示す。
図7は、標準印刷プロトコルであるIPPの印刷ジョブの一部を示す図である。印刷ジョブ700は、送信元PCのアドレス情報701、印刷実行プリンタ702、印刷実行ユーザ名703、用紙サイズ704、給紙方法711、および用紙の種類712を含む。また、用紙サイズ704は、横方向サイズ705、縦方向サイズ706、下端余白サイズ707、左端余白サイズ708、右端余白サイズ709および上端余白サイズ710を含む。
図7では、例として、印刷設定画面400においてユーザにより選択された印刷設定で印刷を実行したときの印刷ジョブを示している。
【0051】
S601では、印刷変換ユーティリティ106は、S600で取得した印刷ジョブ700から用紙サイズ704を取得してS602に進む。S602では、印刷変換ユーティリティ106は、記憶部108から
図2に示すプリンタの用紙サイズに関する情報を含む用紙関連情報を取得する。本来ならば、ユーザがOS標準印刷機能でフチなし印刷を選択した場合はオーバーサイズ印刷が行われる。しかし、前述したようにベンダードライバ124が提供する印刷設定画面に慣れているユーザの中には、はみ出しフチなし印刷が実行されると想定してフチなし印刷を選択するユーザがいる場合がある。その場合、印刷結果がユーザの想定する結果と相違してしまう。一方で、そもそも印刷対象のプリンタで、このような印刷結果が相違するような設定(即ち、ベンダードライバ124のフチなし印刷設定またはオーバーサイズ設定)が、用意されていないプリンタもある。そのような場合には、前述したような問題は生じない。したがって、S602では、ユーザによって選択されたプリンタの用紙関連情報を取得している。
【0052】
S603では、印刷変換ユーティリティ106は、印刷ジョブが含む用紙サイズ704と、用紙関連情報が含む設定した用紙サイズ704に対応付けられたフチなしサイズの存在とに応じて、印刷データの変換の条件を満たしているか判定する。
図2の用紙関連情報は、
図2に示しているように定型サイズと、その定型サイズに対応付けられた非定型サイズとが含まれている。例えば定型サイズ「A2」では、そのA2サイズの他に、「A2 Oversize」「A2 Borderless」が、A2サイズの非定型サイズとして対応付けられている。S603では、まず印刷ジョブに含まれる用紙サイズ704と、
図2の用紙関連情報とを比較して、一致している定型サイズを特定する。そして、その特定した定型サイズに対応付けられた非定型サイズがあるかを判定する。定型サイズに対応付けられた非定型サイズがある場合、上述したように、ユーザの意図しない印刷が行われる可能性があるので、印刷データの変換の条件を満たしていると判定する。このように、印刷データの変換の条件を満たす印刷設定である場合、S604に進む。そうでない場合、S607に進む。例えば、印刷装置がA3のはみ出しフチなし印刷をするための用紙(303×426mm)を装着できない場合にはA2定型サイズと同じサイズのオーバーサイズ印刷には対応できるがA3フチなし印刷には対応できない。その場合は用紙関連情報にA3 Borderlessを登録させず、存在させないことで、印刷データ変換の対象となる印刷設定ではないと判定する。用紙サイズに対応するフチなしサイズが存在する場合には、ユーザが印刷設定で選択した用紙サイズが原稿データ変換対象であると判定し、S604に進む。
【0053】
S604では、データ変換対象である印刷設定に対して、どのようにデータ変換を行うか決定するために、印刷を実行したユーザの情報とユーザとに応じてあらかじめ決められたデータ変換方法を取得する。印刷を実行したユーザの情報は、S600で取得した印刷ジョブ700に含まれる印刷実行プリンタ702と印刷実行ユーザ名703から得られる。
図7の例では、「UserA」が「Printer1」で印刷を実行する指示をしたことを判定する。
【0054】
図8は、印刷変換ユーティリティ106を使用するユーザがOS標準印刷機能におけるフチなし印刷する場合の印刷変換ユーティリティ106におけるデータ変換方法を示す図である。以下、
図8が示すリストをデータ変換方法リスト800という。データ変換方法リスト800は、あらかじめ印刷変換ユーティリティ106の記憶部108に保持していてもよいし、プリンタと通信して取得し、保持してもよい。
図8は、ユーザに応じて印刷履歴などを基に予め決められた、データ変換方法を取得するためのユーザ設定情報である。
【0055】
データ変換方法リスト800は、印刷変換ユーティリティ106に登録されている登録ユーザ801、印刷変換ユーティリティ106に登録されていない未登録ユーザ802、および、印刷変換ユーティリティ106に登録されている登録プリンタ803を含む。
図8では、例として、登録ユーザ801においてUserA、UserB、およびUserCが登録され、登録プリンタ803にはPrinter1、Printer2、およびPrinter3が登録されているときのデータ変換方法リストを示している。
図8のExpansionは、はみ出しフチなし印刷を行うことを示しており、定型サイズの原稿を拡大処理して印刷を実行する。Equalはオーバーサイズ印刷を行うことを示しており、定型サイズの原稿に対し等倍のまま印刷を実行する。このようなユーザ設定情報は、例えばユーザ自身が予め設定したものであってもよいし、使用するプリンタの印刷履歴に基づいて自動的に設定されたものでもよい。例えば、過去に、はみ出しフチなし印刷を実行しているユーザであれば、OS標準印刷機能を用いて、OS標準印刷機能のフチなし印刷ではなく、はみ出しフチなし印刷を実施している可能性が高い。そして、原稿データでも、定型サイズよりも大きい原稿データを用意して、OS印刷システム102に印刷指示をしている可能性が高い。OS印刷システム102では、前述したように原稿データが縮小され、縮小された原稿データが印刷変換ユーティリティ106に渡されていることになる。よって、印刷変換ユーティリティ106では、原稿データを、はみ出しフチなし印刷を実行できるように拡大する処理が行われる。本実施形態では、このような処理の切り替えに、ユーザ設定情報が用いられる。
【0056】
以上説明したように、S604では、印刷ジョブ700に含まれる印刷実行ユーザおよび印刷実行プリンタとデータ変換方法リスト800を取得して、S605に進む。
【0057】
S605では、印刷実行ユーザが原稿データ変換対象のユーザであるか判定する。S604で取得したデータ変換方法リスト800で印刷実行ユーザが印刷実行プリンタに対してExpansionとなっている場合は、拡大処理を行うデータ変換対象のユーザとなる。ここでは、印刷実行するUserAがPrinter1で印刷を実行しているため、原稿データ変換を行うユーザであると判定し、S606に進む。尚、データ変換方法リスト800から、印刷実行したユーザが印刷実行するプリンタに対してEqualとなっている場合は等倍処理を行うため、原稿データ変換を行うユーザではないと判定し、S607の印刷実行に進む。
【0058】
S606では、S600で取得した印刷データに対して、S601で取得した「Borderless」サイズに原稿データを変換する処理を行い、S607の印刷実行に進む。
【0059】
S607では、印刷変換ユーティリティ106は、NW通信制御部(NW通信制御部105aおよびNW通信制御部104)を介してプリンタに印刷データを送信して処理を終了する。尚、送信される印刷データは、前述したように第1の形式の印刷データとして生成されたデータである。
【0060】
これにより、ユーザは標準印刷を使用した場合にも、ベンダードライバ124のフチなしやオーバーサイズで使用していた原稿データでフチなし印刷を行うことが可能となるため、所望の印刷結果を得ることができる。即ちOS標準印刷機能において定型サイズで受信した原稿データに対し、ユーザに応じて拡大処理(はみ出しフチなし印刷)または等倍処理(オーバーサイズ印刷)がなされるため、ユーザで注意せずとも所望の印刷結果を得ることができる。
【0061】
図9は、印刷変換ユーティリティ106の表示部109が表示する印刷確認画面を示す図である。S605において、
図8のデータ変換方法リスト800を用いず、印刷変換ユーティリティ106の表示部109が
図9に示すような印刷確認画面を表示することでも、ユーザにとってデータ変換処理を確認しやすくすることができる。
図9に示す印刷確認画面900には、ドライバモードボタン901およびOS標準印刷モードボタン902を備える。ユーザはいずれかのボタンを選択することでモードが設定可能であり、上記ボタンの選択状態に応じた印刷結果プレビュー903を表示する。フチなし印刷時に拡大処理を行う場合はドライバモードボタン901が選択され、フチなし印刷時に等倍処理を行う場合はOS標準印刷モードボタンが選択される。尚、ボタンは、2つのモードの違いがわかるものならばどのような名称でもよい。また、原稿データを拡大するか、または、等倍で出力するか、がわかるような表示形態としてもよい。
【0062】
また、ユーザに応じて印刷確認画面900はどちらかのモードのボタンが選択された状態で表示される。その際、さらにユーザの操作によって選択するボタンを変更することも可能である。上記を変更した場合は、選択したボタンに応じて印刷変換ユーティリティ106が原稿データの拡大処理または等倍処理を行い、印刷結果プレビュー903に印刷結果のイメージを表示する。
【0063】
以下、
図8のデータ変換方法リスト800ではなく、
図9の印刷確認画面900を用いた場合の
図6のフローを説明する。尚、S600~S604、およびS606~S607は前述したフローと同様であるため省略する。S605において、ドライバモードボタン901が選択された状態でOKボタン905を押すと、印刷時に原稿データの拡大処理を行うためS606に進む。また、S605において、OS標準印刷モードボタン902が選択された状態でOKボタン905を押すと、印刷時に原稿データのサイズの変換は不要のためS607の印刷実行に進み、その後処理を終了する。尚、非表示チェックボックス904をオンにした状態でOKボタン905を押すことで、S605において印刷確認画面900を表示しないように記憶部108に保存される。
【0064】
尚、上述の説明では、ユーザにより「A2フチなしサイズ」が選択された場合を例に説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、S601において、印刷ジョブ700から横方向サイズ705、縦方向サイズ706を取得し、対応するフチなし情報を
図2のリストから判定することで、用紙サイズの選択が「A3フチなしサイズ」の場合にも本実施形態を適用することができる。用紙サイズに「A3フチなしサイズ」を選択して印刷を実行した場合、印刷ジョブ700に含まれる横方向サイズ705は「29700」、縦方向サイズ706は「42000」となる。これらのサイズ情報から、記憶部108に保存されている
図2のリストの「A3 Oversize」の項目を参照し、さらに対応するフチなし情報として「A3 Borderless」が存在することから、原稿データ変換対象の設定であることを判定する。
【0065】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、OS標準印刷機能に対応していないプリンタで印刷する場合に所望の印刷結果を得ることができる。具体的には、印刷変換ユーティリティ106が、ユーザが選択した印刷サイズに対応するフチなし情報に基づき、印刷を実行するユーザとプリンタとに応じたデータ変換処理を行う。これにより、選択すべき用紙サイズが分かりづらくなる、といった印刷時の煩雑さを解消することができる。また、選択した用紙サイズが同じでもユーザによって所望の印刷結果にならない、といった事態を防ぐことができる。尚、上記ではA2の場合を例に説明したが、A3など他のサイズの場合も同様である。
【0066】
また、本実施形態において、データ変換方法リスト800に「Expansion」として登録されているユーザにおいて、
図4の411に表示されている「A2フチなし」および410に表示されている「426×600mm」は、同じ印刷結果となる。データ変換方法リスト800に「Expansion」として登録されているユーザにとって、411の「A2フチなし」および410の「426×600mm」はどちらもベンダードライバ124でいうはみ出しフチなし印刷となるからである。したがって、上記のようにデータ変換方法リスト800に「Expansion」として登録されているユーザにおいて410の「426×600mm」は表示させなくともよい。410の「426×600mm」を表示させないことで、わかりにくさを解消できる。なお、OS印刷システム102がサポートする用紙サイズの情報は、OS印刷システム102用のプリントキューを生成する際に通知される。よって、410の「426×600mm」を表示させないようにするには、OS印刷システム102用のプリントキューを生成する前に、対象のユーザが選択した変換方法(この場合は「Expansion」)を取得しておく必要がある。
【0067】
<実施形態2>
次に、実施形態2を説明する。実施形態1では、印刷変換ユーティリティ106は、印刷対象プリンタで設定可能な項目に、ユーザが選択した用紙サイズに対応するフチなしサイズがある場合、印刷実行したユーザとプリンタとに応じて拡大処理や等倍処理を実行した。一方、プリンタに応じて、特定の給紙方法や特定の用紙種類で印刷する場合に通常の余白サイズよりも大きな余白を必要とすることがある。実施形態2では、印刷変換ユーティリティ106は、給紙方法や用紙種類の印刷設定に応じて余白サイズを変更することで原稿データを縮小する変換処理を印刷データに対して行う。
【0068】
以下の説明では実施形態1と共通する説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、以下では、実施形態1と異なる点として、印刷変換ユーティリティ106の処理フローについて、説明する。
【0069】
図10は、印刷変換ユーティリティ106を使用するユーザが指定した用紙サイズに対する印刷変換ユーティリティ106における余白サイズの変換方法を示す図である。余白サイズ変換方法リスト1000は、あらかじめ印刷変換ユーティリティ106の記憶部108に保持していてもよいし、プリンタと通信して余白サイズ変換方法を取得し、保持してもよい。余白サイズ変換方法リスト1000は、印刷設定1001、その他の印刷設定1002、および、印刷変換ユーティリティ106に登録されている登録プリンタ1003により構成される。
【0070】
図10では、例として、印刷設定1001にはPhotoPaper、Trayの2種類の印刷設定に関してプリンタがそれぞれ余白サイズを必要とするため、余白サイズ変換方法リスト1000の印刷設定1001には2行に分けて示している。また、登録プリンタ1003にはPrinter1、Printer2、およびPrinter3が登録されているときの余白サイズ変換方法リストを示している。
図10のmargin:600は、
図2における用紙サイズの上下左右の余白サイズが600であることを意味し、margin:300は、
図2における用紙サイズの上下左右の余白サイズが300であることを意味する。ここでは例として上下左右の余白サイズをすべて均一にしているが、上下左右の余白サイズにそれぞれ値を指定してもよい。また、用紙サイズに応じて異なる余白サイズを指定してもよい。
【0071】
図11は、印刷変換ユーティリティ106が実行する処理のフローチャートを示す。より詳細には、印刷変換ユーティリティ106の印刷制御部150が、NW通信制御部を介してプリンタに送信する印刷データを生成する処理フローを示す。以降、印刷変換ユーティリティ106を、各処理の主体として説明するが、実際には、対応するプログラムをCPU11が実行することで、対応する機能が実現されることになる。
【0072】
尚、
図11の処理フローは、印刷設定画面400において、ユーザにより印刷ボタン409が選択され、印刷データを印刷変換ユーティリティ106が取得することで開始される。
図11におけるS1100~S1101およびS1107は、実施形態1の
図6に記載のS600~S601およびS607と同様であるので、説明を省略する。S1100において印刷変換ユーティリティ106は、印刷ジョブ700を取得し、S1101で印刷ジョブ700から用紙サイズ704を取得してS1102に進む。
【0073】
S1102では、印刷変換ユーティリティ106は、記憶部108から
図2に示すプリンタの用紙関連情報を取得する。上記リストから、S1101で取得した用紙サイズ704に対応する上下左右の余白サイズに関する情報を取得して、S1103に進む。例えば、印刷設定画面400においてユーザにより選択された用紙サイズが「A2」サイズの場合、印刷ジョブ700に含まれる横方向サイズ705は「42000」、縦方向サイズ706は「59400」となる。さらに、印刷ジョブ700に含まれる下端余白サイズ707、左端余白サイズ708、右端余白サイズ709および上端余白サイズ710はそれぞれ「300」となる。
【0074】
S1103では、印刷変換ユーティリティ106は、S1101で取得した印刷データの設定が変換対象かどうか判定する。即ち、S1102で取得した用紙関連情報に含まれる、印刷データに対応する箇所の余白サイズの情報に従って、印刷データの設定が変換対象かどうか判定する。用紙サイズに対応する上下左右の余白サイズが0の場合は、オーバーサイズ印刷またははみ出しフチなし印刷の場合であり、そのような印刷の場合は印刷結果に余白を必要としない。したがって、ユーザが印刷設定で選択した用紙サイズは余白サイズ変換対象となる印刷設定ではないと判定し、S1107の印刷実行に進む。用紙サイズに対応する上下左右の余白サイズが0以外の場合には、ユーザが印刷設定で選択した用紙サイズが余白サイズ変換対象であると判定し、S1104に進む。
【0075】
S1104では、印刷変換ユーティリティ106は、データ変換対象である印刷設定に対して、給紙方法または用紙種類の印刷設定に応じた原稿データ変換方法を決定するために、
図10に示す余白サイズ変換方法リスト1000を取得してS1105に進む。S1105では、印刷変換ユーティリティ106は、取得した余白サイズ変換方法リスト1000を基に、印刷設定が余白サイズ変換を行う印刷設定であるか判定する。上記判定のために、印刷変換ユーティリティ106は、印刷ジョブ700から給紙方法711および用紙の種類712を取得する。
【0076】
例として、印刷設定画面400における用紙サイズ402にA2サイズを設定し、用紙の種類405に写真用紙、給紙方法406に手差しをそれぞれ設定して印刷を実行した場合について説明する。上記設定を行って印刷を実行した場合、印刷ジョブ700に含まれる用紙サイズ704の情報から、
図2のリストの「A2」サイズであると判定する。また、印刷ジョブ700に含まれる給紙方法705は、給紙方法406の設定により「tray」となり、印刷ジョブ700に含まれる用紙の種類706は、用紙の種類405の設定により「PhotoPaper」となる。
【0077】
ここで、
図10の余白サイズ変換方法リスト1000に含まれる印刷設定1001から、上下左右の余白サイズが600であることを取得する。印刷ジョブ700に含まれる上下左右の余白サイズは300であり、取得した余白サイズ変換方法リスト1000における上下左右の余白サイズ600と異なることから、余白サイズ変換を行う印刷設定であると判定し、S1106に進む。印刷ジョブ700に含まれる給紙方法705および用紙の種類706が印刷設定1001のいずれにも該当しない場合、その他の印刷設定1002の上下左右の余白サイズを取得する。その場合は上記余白サイズが印刷ジョブ700に含まれる上下左右の余白サイズと同じことから、余白サイズ変換を行う印刷設定ではないと判定し、S1107の印刷実行に進む。
【0078】
S1106では、S1100で取得した印刷データに対して、S1105で取得した用紙サイズの上下左右の余白サイズに印刷データを変換する処理を行い、S1107の印刷実行に進み、その後処理を終了する。
【0079】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、ユーザによる給紙方法または用紙種類等の印刷設定に応じて、ユーザによる手間をかけずとも、適切な余白サイズになるように原稿データの変換がされるため、所望の印刷結果を得ることができる。
【0080】
<実施形態3>
次に、実施形態3を説明する。実施形態1では、印刷変換ユーティリティ106に登録されているユーザが、印刷変換ユーティリティ106に登録されているプリンタを使用する場合における原稿データ変換方法を、記憶部108に保存されているデータ変換方法リストから取得していた。一方で、プリンタに応じて、定型サイズより大きな原稿サイズを使用して上下左右4辺をはみ出してフチなし印刷を行うものや、上下左右4辺にはみ出してフチなし印刷を行えないため定型サイズと同じ原稿サイズを使用しなければならないものがある。また、ユーザに応じて都度データ変換の方法を変更することが必要となる場合がある。実施形態3では、登録ユーザや登録プリンタから、各場面に応じて原稿データの変換方法を変更する処理を行う。
【0081】
以下の説明では実施形態1と共通する説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、以下では、実施形態1と異なる点として、印刷実行前のデータ変換方法リスト800の生成処理、および印刷変換ユーティリティ106の処理フローにおけるデータ変換方法判定処理S605について、説明する。
【0082】
図12は、印刷変換ユーティリティ106が仮想プリンタ105を起動時に表示するインストール設定画面を示した図である。ユーザがOS標準印刷機能に対応していないプリンタをOS標準印刷機能103で使用する場合であっても、ユーザは印刷変換ユーティリティ106の表示部109が表示する設定画面でこのOS標準印刷機能に対応していないプリンタを選択可能である。印刷変換ユーティリティ106は仮想プリンタ105を起動し、表示部にインストール設定画面を表示する。インストール設定画面1200は、ドライバモードボタン1201およびOS標準印刷モードボタン1202を備え、ユーザはどちらか片方のボタンのみ選択が可能である。ドライバモードボタン1201を選択した状態でOKボタン1203を押すと、フチなし印刷設定の際に拡大処理を行うプリンタであると判定し、データ変換方法リスト800の登録プリンタ803にExpansionの情報を保存する。OS標準印刷モードボタン1202を選択した状態でOKボタン1203を押すと、フチなし印刷設定の際に等倍処理を行うプリンタであると判定し、データ変換方法リスト800の登録プリンタ803にEqualの情報を保存する。例として、
図12のインストール設定画面1200において、ドライバモードボタン1201を選択した状態が表示されているが、プリンタにセットされている用紙サイズまたはユーザの過去の印刷情報から初期状態で選択されているモードを判定してもよい。
【0083】
また、NW通信制御部を介してプリンタ本体にセットされている用紙サイズが取得できる場合は、取得した用紙サイズが定型サイズであるか否かを判定することでデータ変換方法リスト800の生成処理を行ってもよい。定型サイズである場合は、定型サイズより大きな原稿データの上下左右4辺をはみ出して印刷することでフチなし印刷を行うと判定し、データ変換方法リスト800の登録プリンタ803にExpansionの情報を保存する。定型サイズでない場合は、定型サイズの原稿データを定型サイズより大きな用紙サイズに対して印刷することでオーバーサイズ印刷を行うと判定し、データ変換方法リスト800の登録プリンタ803にEqualの情報を保存する。また、ユーザの過去の印刷情報がOS印刷システム102もしくはNW通信制御部を介してプリンタ本体から取得できる場合は、取得した印刷情報に応じて拡大処理を行うか等倍処理を行うかを判定してもよい。
【0084】
図13は、印刷変換ユーティリティ106が仮想プリンタ105を起動した後にプリンタに対する設定を行う環境設定画面を示した図である。環境設定画面1300は、ドライバモードボタン1301およびOS標準印刷モードボタン1302を備え、ユーザはどちらか片方のボタンのみ選択が可能である。ドライバモードボタン1301を選択した状態でOKボタン1307を押すと、フチなし印刷設定の際に拡大処理を行うプリンタであると判定し、データ変換方法リスト800の登録プリンタ803にExpansionの情報を保存する。OS標準印刷モードボタン1302を選択した状態でOKボタン1307を押すと、フチなし印刷設定の際に等倍処理を行うプリンタであると判定し、データ変換方法リスト800の登録プリンタ803にEqualの情報を保存する。また、環境設定画面1300に含まれるユーザ情報1303は、印刷変換ユーティリティ106が起動した仮想プリンタ105を使用するユーザを示す。ユーザ追加ボタン1305を押すことでユーザを追加することができ、ユーザ情報1303に含まれるユーザを選択した状態でユーザ削除ボタン1306を押すことで選択したユーザを削除することができる。ユーザ情報1303に登録されているそれぞれのユーザに対し、データ変換処理選択アイテム1304を設定することでユーザに応じたデータ変換処理方法を決定することができる。ここでは例として、
図13の環境設定画面1300において、UserAおよびUserBにドライバモードを設定し、UserCにOS標準印刷モードを設定している。上記設定を行うことで、
図8のデータ変換方法リスト800に示すようなそれぞれのユーザに対するデータ変換方法を設定することができる。
【0085】
図14は、印刷変換ユーティリティ106が実行するデータ変換方法判定処理のフローチャートを示す。より詳細には、印刷変換ユーティリティ106が、S605においてデータ変換方法を決定する処理フローを示す。以降、印刷変換ユーティリティ106を、各処理の主体として説明するが、実際には、対応するプログラムをCPU11が実行することで、対応する機能が実現されることになる。尚、
図14の処理フローは、S605においてデータ変換方法を決定する処理が実行されることで開始される。
【0086】
S1401では、印刷変換ユーティリティ106は、S600で取得した印刷データからユーザ情報を取得してS1402に進む。S1402では、印刷変換ユーティリティ106は、データ変換方法リスト800を参照してユーザ情報に対するデータ変換方法が存在するか判定する。データ変換方法が存在する場合はS1410に進み、データ変換方法リスト800にユーザ情報が存在しない、またはデータ変換方法が存在しない場合は、S1403に進む。
【0087】
S1403では、印刷変換ユーティリティ106は、印刷実行時にユーザに原稿データ変換方法を選択させる設定かどうか判定する。即ち、印刷変換ユーティリティ106は記憶部108を参照し、印刷確認画面900を表示する設定が許可されているか判定する。S1403で、印刷確認画面900を表示する設定が許可されている場合は、S1404に進む。S1404では、印刷変換ユーティリティ106は、印刷確認画面900を表示してユーザがOKボタン905を押すことで、S1405に進む。S1405では、印刷変換ユーティリティ106は、印刷確認画面900でユーザにより設定された変換方法を取得し、S1410に進む。S1403で、印刷確認画面900を表示する設定が許可されていない場合は、S1406に進み印刷確認画面900を表示する。S1406では、印刷変換ユーティリティ106は、プリンタ本体から用紙サイズの情報を取得可能か判定し、取得できる場合はS1407に進み、取得できない場合はS1409に進む。
【0088】
S1407では、印刷変換ユーティリティ106は、プリンタに装着されている用紙サイズを取得してS1408に進む。S1408では印刷変換ユーティリティ106は、取得した用紙サイズから変換方法を取得する。変換方法は、用紙サイズが定型サイズであればフチなしサイズの原稿で4辺をはみ出した印刷(即ちはみ出しフチなし印刷)を行うと判定するため拡大処理を変換方法として取得してS1410に進む。用紙サイズが定型サイズでなければ定型サイズよりも大きな用紙に印刷(即ちオーバーサイズ印刷)を行うと判定するため等倍処理を変換方法として取得してS1410に進む。S1409では、印刷変換ユーティリティ106は、インストール設定画面1100で行った設定を記憶部108から取得し、S1410に進む。S1410では、印刷変換ユーティリティ106は、データ変換方法を決定し、S1411に進み処理を終了する。
【0089】
これにより、データ変換方法リストに持つ変換処理を登録ユーザや登録プリンタに応じて都度変更することが可能となり、柔軟にユーザが所望とする印刷設定を行うことができるようになるため、利便性が向上する。
【0090】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、印刷変換ユーティリティ106は、印刷実行時のユーザへの確認やプリンタ本体の用紙設定、インストール時の設定に応じて原稿データの変換方法を変更することが可能となるため、利便性が向上する。
【0091】
<その他の実施形態>
実施形態1~3における印刷システムは、PCとプリンタとが特定の双方向インタフェースで接続された構成をとっているが、この例に限られない。つまり、PCとプリンタの機能が一体となった装置一体型の印刷システムであってもよい。
【0092】
また、本発明は上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0093】
100 PC
106 印刷変換ユーティリティ
110 プリンタ