(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】バンドギャップ型基準電圧発生回路
(51)【国際特許分類】
G05F 3/30 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
G05F3/30
(21)【出願番号】P 2021040181
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池内 克之
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06462526(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 3/00~ 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力端に接続された第1のノードと、
第1の電流源に接続された第2のノードと、
第2の電流源に接続された第3のノードと、
第4のノードと、
前記第1のノードにベースが接続された第1のバイポーラ接合トランジスタと、
前記第1のノードにベースが接続された第2のバイポーラ接合トランジスタと、
前記第2のノードと前記第4のノードとの間にエミッタ・コレクタ路が接続され、前記第1のバイポーラ接合トランジスタの出力電流を増幅する第3のバイポーラ接合トランジスタと、
前記第3のノードと前記第4のノードとの間にエミッタ・コレクタ路が接続され、前記第2のバイポーラ接合トランジスタの出力電流を増幅する第4のバイポーラ接合トランジスタと、
前記第1の電流源を構成する第1の抵抗と、
前記第2の電流源を構成する第2の抵抗と、
一端が前記第2のバイポーラ接合トランジスタのエミッタに接続され、他端が第4のバイポーラ接合トランジスタのベースに接続された第3の抵抗と、
一端が前記第4のノードに接続され、他端が接地される第4の抵抗と、
を具備することを特徴とするバンドギャップ型基準電圧発生回路。
【請求項2】
前記第1と第3のバイポーラ接合トランジスタは、第1のダーリントンペアを構成し、前記第2と第4のバイポーラ接合トランジスタは、第2のダーリントンペアを構成することを特徴とする請求項1に記載のバンドギャップ型基準電圧発生回路。
【請求項3】
前記第1の抵抗と前記第2の抵抗に生じた電圧降下の差分に応じた出力信号を前記第1のノードに供給する差動増幅回路と、
を備えることを特徴とする請求項1
または2に記載のバンドギャップ型基準電圧発生回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、バンドギャップ型基準電圧発生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バンドギャップ電圧(半導体の固有電圧で、シリコンの場合は約1.2V)を利用したバンドギャップ型基準電圧発生回路が知られている。従来のバンドギャップ型基準電圧発生回路を、
図6を用いて説明する。
【0003】
図6に示すバンドギャップ型基準電圧発生回路は、Brokawセルを構成するNPN型バイポーラ接合トランジスタ50と60、及び抵抗R3とR4を有する。以降、バイポーラ接合トランジスタをBJTと表記する場合が有る。NPN型BJT50のエミッタは、抵抗R3、R4の接続点N01に接続される。
【0004】
NPN型BJT50のコレクタには定電流源30が接続される。定電流源30は電流I1を供給する。NPN型BJT60のコレクタには定電流源40が接続される。定電流源40は電流I2を供給する。電流I1と電流I2は同じ値に設定される。抵抗R4は、基準電圧VREFの温度係数を調整する抵抗であり、抵抗R3との抵抗値の比の設定により基準電圧VREFの温度係数を調整する。
【0005】
NPN型BJT50とNPN型BJT60のエミッタ面積比は、1対Nに設定される。Nは、1より大きい任意の正数である。抵抗RB1は、NPN型BJT50のベース抵抗を示す。抵抗RB2は、NPN型BJT60のベース抵抗を示す。NPN型BJT50と60のエミッタ面積の比Nに応じて、抵抗RB1と抵抗RB2の抵抗値の比は1対(1/N)となる。すなわち、NPN型BJT50のベース抵抗をRBとすると、NPN型BJT60のベース抵抗は、RB/Nとなる。抵抗R3の両端に、NPN型BJT50と60のベース・エミッタ間電圧の差電圧ΔVBEが生じる。差電圧ΔVBEは、ボルツマン係数k、絶対温度T、電子の電荷q、NPN型BJT50と60のエミッタ面積の比Nを用いて、(kT/q)・lnNで示される。
【0006】
電流I1とI2を同じ値、すなわち、NPN型BJT50と60のコレクタ電流を同じ値ICに設定すると、NPN型BJT50のベース・エミッタ間電圧VBE1realとNPN型BJT60のベース・エミッタ間電圧VBE2realは、式(1)、式(2)で示される。
【0007】
【数1】
【数2】
ここで、βは、NPN型BJT50と60の電流利得を示し、両方のNPN型BJT50と60の電流利得は同じであると仮定している。V
BE1idealは、電流利得を無限大とした時のNPN型BJT50のベース・エミッタ間電圧であり、同様に、V
BE2idealは、電流利得を無限大とした時のNPN型BJT60のベース・エミッタ間電圧である。尚、電流利得を無限大とした時のベース・エミッタ間電圧は、ボルツマン係数k、絶対温度T、電子の電荷q、コレクタ電流I
C、飽和電流I
Sを用いて、(kT/q)・ln(I
C/I
S)で示される。
【0008】
抵抗R4に生じる電圧降下VR4realは、NPN型BJT50と60に流れるコレクタ電流とエミッタ電流の和の電流によって生じる為、式(3)で示される。
【0009】
【数3】
ここで、R4は、抵抗R4の抵抗値を示す。
【0010】
NPN型BJT50とNPN型BJT60のベースが共通に接続されたノードN00の基準電圧VREFは、式(4)で示される。尚、ノードN00にベース電流を供給する構成は、省略している。
【0011】
【数4】
ここで、V
REFidealは、V
BE1ideal+2・I
C・R4である。
【0012】
式(4)に示す様に、基準電圧VREFには、ベース抵抗RBに起因する電圧成分が存在することが分かる。
【0013】
ベース抵抗RBの温度係数は、Si半導体の場合、正の値となる。従って、基準電圧VREFは、正の温度係数を持つ電圧成分を含むことになる。また、ベース抵抗RBのばらつきにより、基準電圧VREFの値が変動する。発明者は、このバンドギャップ型基準電圧発生回路の基準電圧VREFの特性に着目し、ベース抵抗RBの影響を低減することが出来るバンドギャップ型基準電圧発生回路を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
一つの実施形態は、ベース抵抗の影響を低減して安定した基準電圧を出力することが出来るバンドギャップ型基準電圧発生回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一つの実施形態によれば、バンドギャップ型基準電圧発生回路は、出力端に接続された第1のノードと、第1の電流源に接続された第2のノードと、第2の電流源に接続された第3のノードと、第4のノードと、前記第1のノードにベースが接続された第1のバイポーラ接合トランジスタと、前記第1のノードにベースが接続された第2のバイポーラ接合トランジスタと、前記第2のノードと前記第4のノードとの間にエミッタ・コレクタ路が接続され、前記第1のバイポーラ接合トランジスタの出力電流を増幅する第3のバイポーラ接合トランジスタと、前記第3のノードと前記第4のノードとの間にエミッタ・コレクタ路が接続され、前記第2のバイポーラ接合トランジスタの出力電流を増幅する第4のバイポーラ接合トランジスタと、前記第1の電流源を構成する第1の抵抗と、前記第2の電流源を構成する第2の抵抗と、一端が前記第2のバイポーラ接合トランジスタのエミッタに接続され、他端が第4のバイポーラ接合トランジスタのベースに接続された第3の抵抗と、一端が前記第4のノードに接続され、他端が接地される第4の抵抗と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態のバンドギャップ型基準電圧発生回路の構成を示す図。
【
図2】第1の実施形態のバンドギャップ型基準電圧発生回路の効果を説明する為の図。
【
図3】第2の実施形態のバンドギャップ型基準電圧発生回路の構成を示す図。
【
図4】第3の実施形態のバンドギャップ型基準電圧発生回路の構成を示す図。
【
図5】第4の実施形態のバンドギャップ型基準電圧発生回路の構成を示す図。
【
図6】従来のバンドギャップ型基準電圧発生回路の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるバンドギャップ型基準電圧発生回路を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のバンドギャップ型基準電圧発生回路の構成を示す図である。本実施形態は、ノードN1乃至N4を有する。ノードN1は出力端3に接続される。ノードN2は、抵抗R1を介して、電源電圧V
DDが印加される電源ライン1に接続される。ノードN3は、抵抗R2を介して、電源ライン1に接続される。抵抗R1、R2は電流源を構成する。
【0020】
本実施形態は、ダーリントンペア10Aを有する。ダーリントンペア10Aは、ノードN1にベースが接続されたNPN型BJT11と、NPN型BJT12を有する。NPN型BJT11と12のコレクタは、ノードN2に接続される。NPN型BJT12のエミッタ・コレクタ路は、ノードN2とノードN4との間に接続される。NPN型BJT12のベースはNPN型BJT11のエミッタに接続され、NPN型BJT12はNPN型BJT11の出力電流を増幅する。NPN型BJT12のベース抵抗は、便宜上、省略している。
【0021】
本実施形態は、ダーリントンペア10Bを有する。ダーリントンペア10Bは、ノードN1にベースが接続されたNPN型BJT21と、NPN型BJT22を有する。NPN型BJT21と22のコレクタは、ノードN3に接続される。NPN型BJT21のエミッタは、抵抗R3を介してノードN4に接続される。NPN型BJT22のエミッタ・コレクタ路は、ノードN3とノードN4との間に接続される。NPN型BJT22のベースはNPN型BJT21のエミッタに接続され、NPN型BJT22はNPN型BJT21の出力電流を増幅する。NPN型BJT22のベース抵抗は、便宜上、省略している。
【0022】
本実施形態は、ノードN2と電源ライン1との間に接続される抵抗R1を有する。抵抗R1は、ダーリントンペア10Aと電源ライン1との間に接続され、電流源を構成する。同様に、抵抗R2は、ダーリントンペア10Bと電源ライン1との間に接続され電流源を構成する。抵抗R1と抵抗R2の抵抗値は同じ値に設定される。
【0023】
本実施形態は、電流源を構成する抵抗R1と抵抗R2に生じた電圧降下の差分に応じた出力信号をノードN1に供給する差動増幅回路2を有する。差動増幅回路2の反転入力端(-)には、ノードN2の電圧が供給され、非反転入力端(+)には、ノードN3の電圧が供給される。
【0024】
差動増幅回路2は、ノードN2とN3の電圧を比較し、抵抗R1と抵抗R2における電圧降下が同じになるようにノードN1の電圧を制御する。従って、抵抗R1と抵抗R2の抵抗値を同じ値に設定した場合には、ダーリントンペア10Aと10Bに供給される電流I1とI2が同じ値になる様に制御される。
【0025】
ノードN1は、出力端3に接続される。出力端3は、基準電圧VREFを出力する。
【0026】
本実施形態のバンドギャップ型基準電圧発生回路においては、Brokowaセルを構成するセルはダーリントンペア10A、10Bを有する。すなわち、ノードN1にベースが接続されたNPN型BJT11、21の出力電流を夫々増幅するNPN型BJT12、22を有する。この為、NPN型BJT11、21の電流利得をβ1、NPN型BJT12、22の電流利得をβ2とすると、ダーリントンペア10A、10Bの電流利得βは、β1・β2+β1+β2となる。
【0027】
従って、基準電圧VREFは、既述した式(4)に示すβに代えて、電流利得β1・β2+β1+β2を代入した式で示すことが出来る。すなわち、ダーリントンペア10A、10Bを備えた構成とすることで、式(4)に示す第2項の分母の値を大きくすることが出来る為、ベース抵抗RBの影響を低減することが出来る。これにより、ベース抵抗RBに起因する基準電圧VREFの温度係数の変化を抑制し、また、ベース抵抗RBの抵抗値のばらつきに起因する基準電圧VREFのばらつきを抑制することが出来る。
【0028】
図2は、第1の実施形態の効果を説明する為の図である。従来のバンドギャップ型基準電圧生成回路との比較結果を示す。
【0029】
図2の上段は、本実施形態のバンドギャップ型基準電圧発生回路が生成する基準電圧V
REFを縦軸に示し、横軸は温度を示す。-50℃から190℃まで変化させた場合のシミュレーション結果を示す。実線100は、ベース抵抗RBを130Ωに設定した場合のシミュレーション結果を示し、実線101は、ベース抵抗RBを330Ωに設定した場合のシミュレーション結果を示す。
【0030】
下段は、
図6の従来の構成のバンドギャップ型基準電圧発生回路の基準電圧V
REFを示す。同様に-50℃から190℃まで変化させた場合のシミュレーション結果を示す。実線200は、ベース抵抗RBを130Ωに設定した場合のシミュレーション結果を示し、実線201は、ベース抵抗RBを330Ωに設定した場合のシミュレーション結果を示す。
【0031】
尚、シミュレーションにおいては、ダーリントンペア10AのNPN型BJT11、12のチップ面積に対して、ダーリントンペア10BのNPN型BJT21、22のチップ面積を4倍に設定し、従来構成においては、NPN型BJT50に対してNPN型BJT60のチップ面積を8倍に設定した。すなわち、全体の素子の面積比は、本実施形態が10(=2×4+2×1)で、従来の構成が9(=8+1)とし、バンドギャップ型基準電圧発生回路を略同じチップ面積で構成してシミュレーションを行った。
【0032】
下段に示す従来の構成のバンドギャップ型基準電圧発生回路に比べ、本実施形態においては、温度特性が改善されていることが分かる。特にベース抵抗RBが高い値の場合に、改善の効果が顕著となる。基準電圧VREFの温度係数の一次近似した値を27℃における基準電圧VREFで割った値は、従来の構成においては、ベース抵抗RBを130Ωに設定したシミュレーションにおいては、-0.05ppm/℃、ベース抵抗RBを330Ωに設定したシミュレーションにおいては1.33ppm/℃であるのに対し、本実施形態においては、ベース抵抗RBを130Ωに設定したシミュレーションにおいては、-0.14ppm/℃、ベース抵抗RBを330Ωに設定したシミュレーションにおいては0.17ppm/℃であった。本実施形態によれば、ベース抵抗RBの影響が低減される為、基準電圧VREFの温度特性を改善し、ベース抵抗RBのばらつきの影響を低減して安定した基準電圧VREFを提供することが出来る。
【0033】
本実施形態によれば、基準電圧VREFにおけるベース抵抗RBの影響が低減され、温度変化に伴う変動が抑制された安定した基準電圧VREFを得ることが出来る。例えば、CMOSプロセスでバイポーラ接合型トランジスタを生成した場合には、電流利得が小さくなる傾向が有る。本実施形態によれば、電流利得を高めることが出来るバンドギャップ型基準電圧発生回路を提供することが出来る為、製造工程等で制約が有る場合でも、ベース抵抗RBの影響が低減されたバンドギャップ型基準電圧発生回路を提供することが出来る。
【0034】
尚、本実施形態によれば、基準電圧VREFは、ダーリントンペア10Aを構成するNPN型BJT11、12のベース・エミッタ間電圧と抵抗R4における電圧降下の和の値になる。従って、例えば、2V以上の基準電圧VREFを得る場合に好適する。
【0035】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態のバンドギャップ型基準電圧発生回路の構成を示す図である。既述した実施形態に対応する構成には、同一符号を付し、重複する記載は必要な場合にのみ行う。以降、同様である。
【0036】
本実施形態は、インバーテッドダーリントンペア20A、20Bを有する。インバーテッドダーリントンペア20Aは、ノードN1にベースが接続されたNPN型BJT11と、PNP型BJT13を有する。PNP型BJT13のエミッタは、ノードN2に接続される。PNP型BJT13のコレクタとNPN型BJT11のエミッタは、ノードN4に接続される。PNP型BJT13のエミッタ・コレクタ路は、ノードN2とノードN4との間に接続される。PNP型BJT13のベースはNPN型BJT11のエミッタに接続され、PNP型BJT13はNPN型BJT11の出力電流を増幅する。PNP型BJT13のベース抵抗は、便宜上、省略している。尚、インバーテッドダーリントンペアは、Sziklaiペアと呼ばれる場合が有る。
【0037】
インバーテッドダーリントンペア20Bは、ノードN1にベースが接続されたNPN型BJT21と、PNP型BJT23を有する。PNP型BJT23のエミッタは、ノードN3に接続される。NPN型BJT21のエミッタとPNP型BJT23のコレクタは、抵抗R3を介してノードN4に接続される。PNP型BJT23のエミッタ・コレクタ路は、ノードN3とノードN4との間に接続される。PNP型BJT23のベースはNPN型BJT21のコレクタに接続され、PNP型BJT23はNPN型BJT21の出力電流を増幅する。PNP型BJT23のベース抵抗は、便宜上、省略している。
【0038】
インバーテッドダーリントンペア20Aの電流利得は、NPN型BJT11の電流利得をβ1、PNP型BJT13の電流利得をβ2とすると、β1・β2+β1で示される。同様に、インバーテッドダーリントンペア20Bの電流利得は、NPN型BJT21の電流利得をβ1、PNP型BJT23の電流利得をβ2とすると、β1・β2+β1で示される。従って、基準電圧VREFは、既述した式(4)において、βにβ1・β2+β1を代入した式で示される。この為、ベース抵抗RBの影響を低減することが出来る為、基準電圧VREFの温度特性を改善し、広範囲の温度帯域において安定した基準電圧VREFを供給することが出来る。
【0039】
本実施形態によれば、インバーテッドダーリントンペア20A、20Bを有する構成とすることにより、ベース抵抗RBの影響を低減して、安定した基準電圧VREFを出力するバンドギャップ型基準電圧発生回路を提供することが出来る。尚、本実施形態によれば、基準電圧VREFは、インバーテッドダーリントンペア20Aを構成するNPN型BJT11のベース・エミッタ間電圧と抵抗R4における電圧降下の和の値となる。従って、例えば、基準電圧VREFとして、1.2Vを得る場合に好適する。ダーリントンペアを有する第1の実施形態に比べて電流利得βが多少低下する為、ベース抵抗RBの影響を低減する効果は多少低下するが、低い電圧の基準電圧VREFを得る場合に好適する。
【0040】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態のバンドギャップ型基準電圧発生回路の構成を示す図である。本実施形態は、ダーリントンペア10Aを有する。
【0041】
本実施形態は、ダーリントンペア10Cを構成するNPN型BJT21のエミッタとNPN型BJT24のベースとの間に接続された抵抗R3を有する。NPN型BJT24のエミッタ・コレクタ路は、ノードN3とノードN4との間に接続される。NPN型BJT24のベースは、抵抗R3を介してNPN型BJT21のエミッタに接続され、NPN型BJT24はNPN型BJT21の出力電流を増幅する。NPN型BJT24のベース抵抗は、便宜上、省略している。
【0042】
NPN型BJT21と24は、NPN型BJT11と12に対してN倍のエミッタ面積を有する。
【0043】
本実施形態においては、NPN型BJT11と12は、ダーリントンペア10Aを構成し、NPN型BJT12は、NPN型BJT11の出力電流を増幅する。また、NPN型BJT21と24は、ダーリントンペア10Cを構成し、NPN型BJT24は、NPN型BJT21の出力電流を増幅する。従って、既述した第1の実施形態と同様に、ダーリントンペア10A、10Cの電流利得βは、β1・β2+β1+β2となり、ベース抵抗RBの影響を低減することが出来る。また、抵抗R3と抵抗R4の比の調整によって、基準電圧VREFの温度係数を調整することが出来る。
【0044】
(第4の実施形態)
図5は、第4の実施形態のバンドギャップ型基準電圧発生回路の構成を示す図である。本実施形態は、インバーテッドダーリントンペア20Aを有する。
【0045】
本実施形態は、インバーテッドダーリントンペア20Cを構成するNPN型BJT21のエミッタとノードN4との間に接続された抵抗R3を有する。PNP型BJT25のエミッタ・コレクタ路は、ノードN3とノードN4との間に接続される。PNP型BJT25のベースは、NPN型BJT21のコレクタに接続され、PNP型BJT25はNPN型BJT21の出力電流を増幅する。PNP型BJT25のベース抵抗は、便宜上、省略している。
【0046】
PNP型BJT25とNPN型BJT21は、夫々、PNP型BJT13とNPN型BJT11に対してN倍のエミッタ面積を有する。
【0047】
本実施形態においては、NPN型BJT11とPNP型BJT13は、インバーテッドダーリントンペア20Aを構成し、PNP型BJT13は、NPN型BJT11の出力電流を増幅する。また、NPN型BJT21とPNP型BJT25は、インバーテッドダーリントンペア20Cを構成し、PNP型BJT25は、NPN型BJT21の出力電流を増幅する。従って、既述した第2の実施形態と同様に、インバーテッドダーリントンペア20A、20Cの電流利得βは、β1・β2+β1となり、ベース抵抗RBの影響を低減することが出来る。また、抵抗R3と抵抗R4の抵抗値の比の調整によって、基準電圧VREFの温度係数を調整することが出来る。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 電源ライン、2 差動増幅回路、3 出力端、10A、10B、10C ダーリントンペア、20A、20B、20C インバーテッドダーリントンペア、R1乃至R4 抵抗、N1乃至N4 ノード。