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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241209BHJP
   B41J 2/05 20060101ALI20241209BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/05
B41J2/14 201
B41J2/01 401
B41J2/14 611
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021041251
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141103
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2024-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣部 一樹
(72)【発明者】
【氏名】仲 寛徳
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-134809(JP,A)
【文献】特開2008-254276(JP,A)
【文献】特開2006-015736(JP,A)
【文献】特開2009-292146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを加熱して吐出するための複数のヒーター、および、情報を保持するためのヒューズを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを制御する記録ヘッド制御手段と、
を有する記録装置であって、
前記記録ヘッド制御手段は、前記複数のヒーターの駆動を制御するヒーター駆動制御手段と、前記ヒューズにライトするためのライトパルスを生成するライトパルス生成手段と、
を有し、
前記ヒーター駆動制御手段によって生成されるデータと前記ライトパルスとは、同一の端子および同一の信号線を介して、前記記録ヘッド制御手段から前記記録ヘッドに送信される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドは、複数の前記ヒューズを有し、
前記記録ヘッド制御手段は、前記複数のヒューズのなかからリードまたはライトするヒューズを選択するためのヒューズ選択データを生成するヒューズ選択データ生成手段を更に有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記ヒーター駆動制御手段は、前記複数のヒーターのなかから駆動するヒーターを選択するためのヒーター選択データを生成する第1生成手段と、該第1生成手段で特定されたヒーターを駆動するためのパルスを生成する第2生成手段と、CLK信号を生成する第3生成手段と、LT信号を生成する第4生成手段と、を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッド制御手段は、HighまたはLowの一定レベルの信号を生成するGPIOと、
ヒーター制御と、ヒューズ制御とを切り替えるモード選択切替手段と、
を更に有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッド制御手段は、
ヒーター制御を行う場合、前記ヒーター駆動制御手段によって生成されるデータを、前記同一の端子および前記同一の信号線を介して、前記記録ヘッドに送信し、
ヒューズ制御を行う場合、前記ヒューズ選択データと、前記ライトパルスと、または前記GPIOによって生成された信号との何れかを、前記同一の端子および前記同一の信号線を介して、前記記録ヘッドに送信する、
ことを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッド制御手段から前記記録ヘッドに送信されるデータには、ヒーター制御とヒューズ制御との何れを行うかを示す動作モードのデータが含まれる、
ことを特徴とする、請求項1乃至5の何れか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記ライトパルス生成手段によって生成される前記ライトパルスは、High期間とLow期間とが同一のパルスであり、パルス数および周期は可変である、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置が有する記録ヘッドの制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インクジェット記録装置の記録ヘッドとして、インクを吐出するためのヒーターと、記録ヘッドの情報を保持するためのヒューズと、を有する記録ヘッドを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-15736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、ヒーターを駆動するための信号を送る信号線に加え、ヒューズを制御するための信号を送る信号線を設ける必要があり、信号線数が増加してしまう。信号線数の増加は、記録ヘッドの端子数の増加、および、記録ヘッドにおけるコンタクト面積の増加を招く結果、コストアップにつながる。
【0005】
そこで、本発明の一実施形態は、上記の課題に鑑み、信号線数を増やすことなく、ヒーター駆動制御と、ヒューズ駆動制御との両方を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、インクを加熱して吐出するための複数のヒーター、および、情報を保持するためのヒューズを有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを制御する記録ヘッド制御手段と、を有する記録装置であって、前記記録ヘッド制御手段は、前記複数のヒーターの駆動を制御するヒーター駆動制御手段と、前記ヒューズにライトするためのライトパルスを生成するライトパルス生成手段と、を有し、前記ヒーター駆動制御手段によって生成されるデータと前記ライトパルスとは、同一の端子および同一の信号線を介して、前記記録ヘッド制御手段から前記記録ヘッドに送信される、ことを特徴とする記録装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、信号線数を増やすことなく、ヒーター駆動制御と、ヒューズ駆動制御との両方を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】記録装置の外観を示す斜視図
図2】記録装置の制御構成を示すブロック図
図3】記録ヘッドの概略構成を示す図
図4】記録ヘッド制御部に含まれるヒーター制御部およびヒューズ制御部の構成を示すブロック図
図5】記録ヘッド制御部から記録ヘッドに送信される各信号の波形を示す図
図6】モードデータを保持するテーブル例を示す図
図7】制御ICの制御フローを示す図
図8】記録ヘッド内の回路構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。但し、以下で開示する構成は例示に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0010】
本明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。さらに人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0011】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0012】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0013】
またさらに、「記録素子」とは、特にことわらない限り、インク加熱用のヒーター、ピエゾ等のエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0014】
[第1実施形態]
<インクジェット記録装置の構成>
図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、記録装置とする)の外観を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、記録装置1は、インクジェット方式に従ってインクを吐出して記録を行なうインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)3が搭載されたキャリッジ2を有し、キャリッジ2を矢印A方向に往復移動させて記録を行う。記録装置1において、記録紙などの記録媒体Pが給紙機構5を介して給紙され、該給紙された記録媒体Pが記録位置まで搬送され、該記録位置にて記録ヘッド3から記録媒体Pにインクを吐出することで、記録が行なわれる。
【0016】
キャリッジ2には、記録ヘッド3のみが搭載されているのではなく、記録ヘッド3に供給するインクを貯留するためのインクカートリッジ6も装着されている。インクカートリッジ6は、キャリッジ2に対して着脱自在になっている。
【0017】
記録装置1はカラー記録が可能であり、キャリッジ2は、該カラー記録に用いるインクとして、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロ(Y)、ブラック(K)のインクが夫々収容された4つのインクカートリッジを搭載している。これら4つのインクカートリッジは夫々独立に着脱可能である。
【0018】
本実施形態の記録ヘッド3として、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式の記録ヘッドを採用している。このため、記録ヘッド3は、電気熱変換体を有する。この電気熱変換体は複数の吐出口の夫々に対応して設けられており、記録信号に応じて対応する電気熱変換体にパルス電圧を印加することによって、該電気熱変換体に対応する吐出口からインクを吐出する。
【0019】
また、キャリッジ2の移動方向に沿って、スケール7が設けられている。スケール7には一定の間隔でスリットが設けられており、キャリッジ2に搭載されたエンコーダ(不図示)がキャリッジ2の移動に応じて、該スリットを読み取ることで、エンコーダ信号を生成する。このエンコーダ信号は、キャリッジ2の移動方向のキャリッジ位置(即ち、記録ヘッドの位置)を表わす信号である。このエンコーダ信号の周期(エンコーダ信号間隔)に基づいてキャリッジの移動速度が算出され、また、該エンコーダ信号がインクを吐出する際のタイミング制御用の信号として用いられる。
【0020】
<制御構成>
図2は、図1に示した記録装置1の制御を司る制御IC200の構成を示すブロック図である。
【0021】
制御IC200に実装されているホストインタフェース111には、ホスト装置900から送信された画像データが入力される。この画像データは、各画素がレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)3チャンネルの画素値を持つビットマップ形式画像データであり、RAM116に設けられた受信バッファ116Aに記憶される。画像処理部114は、この画像データをCMYKの色成分の多値データに変換し、該多値データをRAM116に設けられた多値データバッファ116Bに記憶する。印刷データ処理部115は、多値データをドットデータ(2値データ)に変換し、該ドットデータをドットデータバッファ116Cに記憶する。
【0022】
記録ヘッド制御部121は、ドットデータバッファ116Cに記憶されている2値データを記録ヘッド3へ転送する。記録ヘッド制御部121は、データ転送を行う機能の他に、2値データを間引く機能を備えている。印刷データ処理部115での処理は、エンコーダ処理部112が出力するヒートトリガ信号と同期すること、また、記録ヘッド制御部121がエンコーダ処理部112によって出力されたブロックトリガ信号と同期することで、搬送タイミングに合わせた処理となる。
【0023】
CPU117は、ROM118に記憶されている制御プログラムに従って、記録素子の駆動制御、および、記録素子と記録媒体(例えば、用紙)との相対的な搬送制御等を行う。
【0024】
また、記録ヘッド制御部121は記録ヘッド3に実装されているヒューズ(英:FUSE)に対するリード(動作)およびライト(動作)を行う。
【0025】
尚、以下では、キャリッジに搭載され、記録媒体の幅方向に反復移動を行うシリアルタイプの記録ヘッドを例に挙げて説明するが、記録ヘッドはこれに限定されるものではなく、任意のタイプの記録ヘッドに本実施形態を適用可能である。例えば、紙幅以上の幅を持ったフルライン型の記録ヘッドに、本実施形態を適用してもよい。
【0026】
また、以下では、1つの記録ヘッドに着目して説明するが、本実施形態は、複数の記録ヘッドを有する記録装置に適用可能である。
【0027】
<記録ヘッドの構成>
図3は、図1および図2に示した記録ヘッド3の概略構成を示す図である。記録ヘッド3は、制御IC200からの信号を受信する端子として、DATA_1端子311-1と、DATA_2端子311-2と、ヒートイネーブル(以下HENB)端子312と、CLK端子313と、LT端子314と、を有する。
【0028】
尚、本実施形態では、DATA信号の2本の信号線が記録ヘッド3に接続されるため、記録ヘッド3が、2個のDATA端子(DATA_1端子311-1、DATA_2端子311-2)を有する。しかし、DATA信号の信号線数およびDATA端子数は、2に限定されず、2以上の任意の一値であってよい。
【0029】
記録ヘッド3は、インクを吐出するための複数のヒーターが配列されたヒーター列301と、記録ヘッドの情報を保持するためのヒューズ302と、を有する。ヒーター列301は、Y方向に沿って配列された768個のヒーターから成る第1ヒーター列と、Y方向に沿って配列された768個のヒーターから成る第2ヒーター列とを有し、第1ヒーター列のX方向位置と、第2ヒーター列のX方向位置とは異なる。
【0030】
また、記録ヘッド3には、不図示であるが、ヒーター列301とヒューズ302とを駆動および選択するための論理回路が実装されている。制御IC200は、DATA信号、CLK信号、LT信号、HENB信号、およびその他の信号を用いて記録ヘッド3を制御する。
【0031】
<ヒーター制御部およびヒューズ制御部の構成>
図4は、制御IC200が有する記録ヘッド制御部121におけるヒーター制御部およびヒューズ制御部の構成を示す図である。ヒーター駆動制御部403内のヒーター選択データ生成部404は、インクを吐出するために駆動するヒーターを特定し、該特定したヒーターを選択するためのヒーター選択データ416を生成する。ヒーター駆動パルス生成部405は、ヒーター選択データ生成部404で特定されたヒーターに対してヒーターを駆動する時間的長さを決定し、該時間的長さに対応するHENB信号を生成する。転送クロック生成部406は、記録ヘッドに対してDATA信号を転送するために用いられるCLK信号を生成する。転送するCLK信号の周波数および転送CLK数は、ユーザー設定により可変である。ラッチ信号生成部407は、記録ヘッドが転送されたDATA信号をラッチするためのLT信号を生成する。ヒューズ選択データ生成部402は、記録ヘッドに備えられている複数のヒューズのなかからリードまたはライトを行うヒューズ(つまり制御対象のヒューズ)を選択し、ヒューズ選択データ417を生成する。ヒューズライトパルス生成部401は、ヒューズ選択データ生成部402で選択したヒューズに対してライトを行う際のヒューズライトパルス418を生成する。ヒューズライトパルス418の生成では、パルスのHigh期間とLow期間とが同一のパルスを生成する。尚、High期間とLow期間とを合計したパルスの周期および生成するパルス数に関しては、ユーザー設定によって可変である。GPIO409は、HighまたはLowの一定レベルの信号をポート信号419として生成する。
【0032】
モード選択切替部408は、ヒーター駆動とヒューズ駆動との何れかのモードかを決定する。その後、モード選択切替部408は、DATA信号として、ヒーター選択データ416と、ヒューズ選択データ417と、ヒューズライトパルス418と、ポート信号419との何れを転送するかを決定し、当該決定に応じたモード選択信号415を生成する。
【0033】
セレクタ回路410-1、410-2は夫々、モード選択切替部408によって生成されたモード選択信号415の値に従って、ポート信号419からDATA信号として出力する信号を選択する。具体的には、ヒーター選択データ416、ヒューズ選択データ417、ヒューズライトパルス418、ポート信号419のなかから、DATA信号として出力する信号を選択する。
【0034】
記録ヘッド制御部121は、記録ヘッド3に信号を送信する端子として、DATA_1端子411-1と、DATA_2端子411-2と、HENB端子412と、CLK端子413と、LT端子414と、を有する。
【0035】
DATA_1端子411-1は、DATA_1端子311-1と接続される。DATA_2端子411-2は、DATA_2端子311-2と接続される。HENB端子412は、HENB端子312と接続される。CLK端子413は、CLK端子313と接続される。LT端子414は、LT端子314と接続される。
【0036】
<記録ヘッドに入力する信号のタイミングチャート>
図5(a)および(b)は夫々、LT信号、CLK信号、DATA-1信号、DATA-2信号、HENB信号、およびモード選択信号415の波形を示す図である。
【0037】
図5(a)は、ヒューズにデータを書き込むヒューズライト時の各信号の波形を示す。DATA-1信号とDATA-2信号とは夫々、CLK信号に同期して転送され、記録ヘッド3は、CLK信号の立ち上がりおよび立ち下がりの両エッジでデータをラッチする。図5(a)中の区間Aでは、ヒューズ選択を行う。区間Aでは、モード選択信号415は、ヒューズ選択データ417を出力するモード(ヒューズ選択データ転送モード)を選択するための信号である。また、区間AにおけるDATA-1として、モードデータ501、続いてヒューズビット選択データ502を転送する。
【0038】
ヒューズライト時のモードデータ501として、ヒューズライトを示す値0101を有するモードデータ(図6参照)を転送し、ヒューズビット選択データ502として、選択するヒューズビットに基づく選択用データを転送する。DATA-2信号としては、GPIO409で生成した一定レベル、つまりHighの信号を出力する。DATA-1信号とDATA-2信号との転送後にLT信号をLow→Highとする。このLow→Highのタイミング(図中t=t1のタイミングでDATA-2信号値がHighの場合、区間Aの次の区間である区間Bでは、ヒューズ駆動が行われる。
【0039】
詳しくは、区間Bでは、区間Aで選択したヒューズに対するライトを行う。区間Bでは、モード選択信号415は、DATA-1信号として、ヒューズライトパルス418を出力するモード(ヒューズライトモード)を選択するための信号である。DATA-1信号としてヒューズライトパルス418を出力し、区間Aで選択したヒューズに対するライトを行う。尚、区間Bで出力するヒューズライトパルス418のパルス数は約100000程度と多い。従って、区間Bは、所定期間の区間Aに比べて長く設ける必要がある。
【0040】
図5(b)は、ヒーター駆動時の各信号の波形を示す。DATA-1信号とDATA-2信号とは夫々、CLK信号に同期して転送され、記録ヘッド3は、CLK信号の立ち上がりおよび立ち下がりの両エッジでデータをラッチする。図5(b)中の区間Cでは、区間Dで駆動するヒーターを選択する。区間Cでは、モード選択信号415は、ヒーター選択データ416を出力するモード(ヒーター駆動モード)を選択するための信号である。
【0041】
ヒーター駆動時のモードデータ値は、図6に示すように0000であるから、通常、ヒーター駆動時には、このモードデータ値を持つモードデータを転送する必要がある。しかし本実施形態では、記録ヘッド3内のモードデータをラッチする回路が、LT信号の立ち上がり時にDATA-2信号がLowの場合に、モードデータ値をクリアして0000にする構成となっているため、ヒーター駆動時にモードデータを転送する必要が無い。即ち、ヒーター駆動時に転送するCLK数は、ヒューズ駆動時に転送するCLK数よりも少なくてよい。従って、図5(b)に示すように、DATA-1信号として、ヒーター選択データ503のみを転送し、DATA-2信号として、ヒーター選択データ504のみを転送すれば足りる。DATA-1信号とDATA-2信号との転送後にLT信号をLow→Highとする。このLow→Highのタイミング(図中t=t2のタイミングでDATA-2信号値がLowの場合、区間Cの次の区間である区間Dでは、ヒーター駆動が行われる。
【0042】
詳しくは、区間Dでは、区間Cで選択したヒーターに対する駆動、および、区間Dの次の区間(図示せず)で駆動するヒーターの選択を行う。具体的には、HENB信号によって、区間Cで選択したヒーターを駆動し、DATA-1信号とDATA-2信号とによって、区間Dの次の区間で駆動するヒーターの選択を行う。
【0043】
尚、図6のモードデータテーブルは一例にすぎず、各モードの値は図6に示すものに限定されない。
【0044】
<制御フロー>
図7は、何れのモードで記録ヘッド3を動作させるか、つまり、ヒーター駆動モードまたはヒューズ駆動モードで動作させるかの決定のために実行される一連の処理のフローチャートである。尚、このフローの開始トリガーとしては、記録装置1の電源ON、印刷ジョブの受信等が挙げられる。
【0045】
ステップS701において、CPU117は、制御プログラムに従って、記録ヘッド3に対する予定動作がヒューズ駆動か判定する。本ステップの判定結果が真の場合、ステップS702に進む一方、該判定結果が偽の場合、ステップS705に進む。以降、簡単のため「ステップS~」を「S~」と略記する。
【0046】
S702において、CPU117は、ヒューズに対する予定動作がリードか判定する。本ステップの判定結果が真の場合、S703に進む一方、該判定結果が偽の場合、S704に進む。
【0047】
S703において、CPU117は、記録ヘッド3の動作モードを、ヒューズリードモードにする。
【0048】
S704において、CPU117は、記録ヘッド3の動作モードを、ヒューズライトモードにする。ヒューズライトモードでの記録ヘッド3は、図5(a)に示した動作を行う。
【0049】
S705において、CPU117は、記録ヘッド3の動作モードを、ヒーター駆動モードにする。ヒーター駆動モードでの記録ヘッド3は、図5(b)に示した動作を行う。
【0050】
<記録ヘッド内の回路構成>
図8は、記録ヘッド3内の回路構成、具体的には、ヒーター選択およびヒューズ選択に関わる回路構成の概略図である。ShiftRegister回路801-1は、DATA-1をCLKの両エッジでラッチするシフトレジスタ回路であり、ShiftRegister回路801-2は、DATA-2をCLKの両エッジでラッチするシフトレジスタ回路である。ModeLatch回路803は、ShiftRegister回路801-1でラッチしたDATA-1のモードデータ部(図5の501)をラッチする回路であり、LT信号の立ち上がりでラッチする。ただし、LT信号の立ち上がりでモードデータ部をラッチする際、DATA-2の信号レベルがLowである場合は、モードデータの値をクリアして0000にする。
【0051】
DataLatch回路802-1は、ShiftRegister回路801-1でラッチしたDATA-1のモードデータ部以外をラッチする回路であり、LT信号の立ち上がりでラッチする。DataLatch回路802-2は、ShiftRegister回路801-2でラッチしたDATA-2をラッチする回路であり、LT信号の立ち上がりでラッチする。
【0052】
ヒーター選択駆動回路804は、ModeLatch回路803でラッチされたモードデータの値が0000、即ちヒーター駆動を示す場合(図6)、DataLatch回路802-1、802-2でラッチされたデータに基づき、駆動するヒーターを選択する。その後、ヒーター選択駆動回路804は、HENB信号に基づいてヒーターを駆動する。
【0053】
ヒューズ選択駆動回路805は、ModeLatch回路803でラッチされたモードデータの値が1010、即ちヒューズリードを示す場合(図6参照)、DataLatch回路802-1でラッチされたデータに基づいて、該当するヒューズを選択する。そして、ヒューズ選択駆動回路805は、選択したヒューズに対するリードを行う。
【0054】
ヒューズ選択駆動回路805は、ModeLatch回路803でラッチされたモードデータの値が0101、即ちヒューズライトを示す場合(図6参照)、DataLatch回路802-1でラッチされたデータに基づいて、該当するヒューズを選択する。そして、ヒューズ選択駆動回路805は、選択したヒューズに対するライトを行う。
【0055】
<本実施形態の効果>
以上のような構成により、信号線数を増やすことなく、ヒーター駆動制御と、ヒューズ駆動制御との両方を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0056】
1 記録装置
3 記録ヘッド
121 記録ヘッド制御部
401 ヒューズライトパルス生成部
411-1 DATA_1端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8