(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】プリンタ及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20241209BHJP
G07G 1/06 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
B41J29/38 104
G07G1/06 F
(21)【出願番号】P 2021043684
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】井上 義昌
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 洋之
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-201746(JP,A)
【文献】特開2017-226130(JP,A)
【文献】特開2009-172891(JP,A)
【文献】特開2020-049708(JP,A)
【文献】特開2001-150767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0198333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
G07G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字データに基づく画像を記録媒体に印字する印字ヘッドと、
カットコマンドに基づいて前記記録媒体をカットするカッタと、
第1のモードにお
いて、アイドル状態への移行に関するイベントに基づいてアイドル状態
に移行した後、前記アイドル状態の継続時間が所定時間を超えたことを検知する検知部と、
前記検知部
が前記アイドル状態の継続時間が所定時間を超えたこと
を検知
し、前記アイドル状態への移行に関するイベント
がカットコマンドに基づくイベントである場合、前記第1のモードから前記第1のモードよりも消費電力の低い第2のモードへ動作モード
を移行するモード制御部と、
を備えるプリンタ。
【請求項2】
前記モード制御部は、前記移行に関するイベントが前記カットコマンドに基づくイベントではないことに応答して、前記動作モードを前記第1のモードに維持する、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記モード制御部は、印字に関連する構成要素への給電を制御することにより前記動作モードを前記第1のモードから前記第2のモードへ移行する、請求項
1に記載のプリンタ。
【請求項4】
プリンタと決済処理端末とを備える情報処理システムにおいて、
前記プリンタは、
前記決済処理端末からの印字データに基づく画像をレシート用紙に印字する印字ヘッドと、
前記決済処理端末からのカットコマンドに基づいて前記レシート用紙をカットするカッタと、
第1のモードにお
いて、アイドル状態への移行に関するイベントに基づいてアイドル状態
に移行した後、前記アイドル状態の継続時間が所定時間を超えたことを検知する検知部と、
前記検知部
が前記アイドル状態の継続時間が所定時間を超えたこと
を検知
し、前記アイドル状態への移行に関するイベント
がカットコマンドに基づくイベントである場合、前記第1のモードから前記第1のモードよりも消費電力の低い第2のモードへの動作モード
を移行するモード制御部と、
を備える、
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プリンタ及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
POS(Point Of Sales)端末、決済処理端末、自動精算機等の金銭授受に係る多くの決済処理装置は、レシートに印刷する印字データとカットコマンドをプリンタに送信してレシートを発行する。その際、決済処理装置からのデータ通信が中断され、一定時間経過するとプリンタはスリープモードに移行する。しかしながら、プリンタがカットコマンドを受信する前に、プリンタがスリープモードに移行すると、その後受信した印字データに基づきレシートに印字する場合、レシートへの印字位置が詰まることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、通常モードからスリープモードへの動作モードの移行を制御する技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において、プリンタは、印字ヘッドと、カッタと、検知部と、モード制御部とを備える。印字ヘッドは、印字データに基づく画像を記録媒体に印字する。カッタは、カットコマンドに基づいて記録媒体をカットする。検知部は、第1のモードにおけるアイドル状態の継続時間が所定時間を超えたことを検知する。モード制御部は、検知部によるアイドル状態の継続時間が所定時間を超えたことの検知に応答して、アイドル状態への移行に関するイベントに応じて、第1のモードから第1のモードよりも消費電力の低い第2のモードへの動作モードの移行制御を変更する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る情報処理システムを例示するブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るプリンタの構成例の概略を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るプリンタの要部を示す模式図である。
【
図4】
図4は、参考例に係るプリンタにより印字されるレシート用紙の一例を概略的に示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るプリンタにより印字されるレシート用紙の一例を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るプリンタのプロセッサによる処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、情報処理システムSを例示するブロック図である。
情報処理システムSは、プリンタ10及び決済処理端末30を含む。プリンタ10及び決済処理端末30は、ネットワークを介して、有線又は無線により互いに通信自在に接続する。例えば、ネットワークは、LAN(Local Area Network)などであるが、これに限定されない。
【0008】
プリンタ10は、レシート、伝票等を印刷するための電子機器である。例えば、プリンタ10は、サーマルプリンタ、インクジェットプリンタ等である。サーマルプリンタを例にしてプリンタ10を説明する。プリンタ10は、プリンタインタフェース308を介して決済処理端末30から印字データを受信する。印字データは、店舗の店舗名、店舗のロゴ等の店舗を識別可能に示す店舗識別データ、客の買上商品の品名、金額、合計金額等を示す会計データ等のうち一部のデータを含む。プリンタ10の構成例については後述する。
図1では、インタフェースは、「I/F」と記載されている。
【0009】
決済処理端末30は、買上商品の決済を可能とする電子機器である。決済処理端末30は、プロセッサ301、メインメモリ302、補助記憶デバイス303、時計部304、通信ユニット305、タッチパネル306、リーダ・ライタ307、プリンタインタフェース308、及びスキャナ309を含む。プロセッサ301は、メインメモリ302、補助記憶デバイス303、時計部304、通信ユニット305、タッチパネル306、リーダ・ライタ307、プリンタインタフェース308、及びスキャナ309と電気的に、及び通信可能に接続される。
【0010】
プロセッサ301は、決済処理端末30の中枢部分に相当する。例えば、プロセッサ301は、CPU(Central Processing Unit)であるが、これに限定されない。プロセッサ301は、種々の回路で構成されていてもよい。プロセッサ301は、メインメモリ302及び補助記憶デバイス303に予め記憶されているプログラムをメインメモリ302に展開する。プログラムは、決済処理端末30のプロセッサ301に後述する各部を実現又は実行させるプログラムである。プロセッサ301は、メインメモリ302に展開されるプログラムを実行することで、種々の動作を実行する。
【0011】
メインメモリ302は、決済処理端末30の主記憶部分に相当する。メインメモリ302は、不揮発性のメモリ領域と揮発性のメモリ領域とを含む。メインメモリ302は、不揮発性のメモリ領域ではオペレーティングシステム又はプログラムを記憶する。メインメモリ302は、揮発性のメモリ領域を、プロセッサ301によってデータが適宜書き換えられるワークエリアとして使用する。例えば、メインメモリ302は、不揮発性のメモリ領域としてROM(Read Only Memory)を含む。例えば、メインメモリ302は、揮発性のメモリ領域としてRAM(Random Access Memory)を含む。メインメモリ302は、プログラムを記憶する。
【0012】
補助記憶デバイス303は、決済処理端末30の補助記憶部分に相当する。補助記憶デバイス303は、EEPROM(登録商標)(Electric Erasable Programmable Read-Only Memory)、HDD(Hard Disc Drive)又はSSD(Solid State Drive)等である。補助記憶デバイス303は、上述のプログラム、プロセッサ301が各種の処理を行う上で使用するデータ及びプロセッサ301での処理によって生成されるデータを記憶する。
【0013】
時計部304は、決済処理端末30の時刻情報源として機能する。プロセッサ301は、時計部304によって計時される時刻情報を基に、現在の日付及び時間を計時する。
【0014】
通信ユニット305は、有線又は無線のネットワークを介して登録端末を接続し、この登録端末から送られてくる会計データを受信する。
【0015】
タッチパネル306は、決済処理端末30の入力デバイス及び表示デバイスとして機能する。表示デバイスは、プロセッサ301の制御により種々の画面を表示可能なデバイスである。店員用のデバイスと客用のデバイスとが別々に設けられる場合がある。例えば、表示デバイスは、液晶ディスプレイ、EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。入力デバイスは、決済処理端末30へのデータ入力インタフェースとして機能するデバイスである。例えば、入力デバイスは、キーボード、タッチパネル等である。
【0016】
リーダ・ライタ307は、支払媒体の一種であるカード又はIC(integrated circuit)チップ等の記録媒体に記録されたデータを読み取るとともに、当該記録媒体へデータを書き込む。カードは、クレジットカード、デビットカード、電子マネーカード、プリペイドカードなどの決済用カードの他に、メンバーズカード及びポイントカードなどの決済処理に関わる情報を記録する各種のカードを含む。ICチップは、上記の各種のカードの他、スマートフォンなどの情報端末に備えられる場合もある。
【0017】
プリンタインタフェース308は、決済処理端末30とプリンタ10を接続する。プリンタインタフェース308は、プロセッサ301で生成された印字データをプリンタ10へと出力する。「出力」するは、「送信」するの意味を含む。
【0018】
スキャナ309は、読取窓に翳された買上商品のバーコード等をスキャンして読み取る。スキャナ309は、買上商品に付されたバーコードシンボルが読取窓に翳される毎に、そのバーコードを読み取る。ここで、バーコードは、二次元データコードと読み替えてもよい。スキャナ309は、レーザ光の走査によりコードシンボルを読み取るタイプであってもよい。スキャナ309は、カメラ等の撮像デバイスで撮像した画像からコードシンボルを読み取るタイプであってもよい。
【0019】
なお、決済処理端末30のハードウェア構成は、上述の構成に限定されるものではない。決済処理端末30は、適宜、上述の構成要素の省略及び変更並びに新たな構成要素の追加を可能とする。
【0020】
上述のプロセッサ301に実装される各部について説明する。
プロセッサ301は、生成部321及び発行制御部322を実装する。プロセッサ301に実装される各部は、各機能ということもできる。プロセッサ301に実装される各部は、プロセッサ301及びメインメモリ302を含む制御部に実装されるということもできる。
【0021】
生成部321は、印字データを生成する。例えば、生成部321は、一取引の開始に基づいて店舗識別データを含む印字データを生成する。一取引は、決済に基づく買上商品の受け渡しである。店舗識別データは、一取引の最初の印字データの一例である。生成部321は、スキャナ309を用いた一取引中の買上商品の登録毎に、各買上商品の会計データを含む印字データを生成する。各買上商品の会計データは、一取引の途中の印字データの一例である。生成部321は、一取引の終了に基づいて、合計金額の会計データを含む印字データを生成する。一取引の終了は、一取引の決済処理の終了を含む。合計金額の会計データは、一取引の最後の印字データの一例である。
【0022】
発行制御部322は、生成部321により印字データが生成されたことに応答して、印字データを、プリンタインタフェース308を介してプリンタ10に出力する。例えば、発行制御部322は、生成部321により店舗識別データを含む印字データが生成されたことに応答して、店舗識別データを含む印字データをプリンタ10に出力する。発行制御部322は、生成部321により会計データを含む印字データが生成されたことに応答して、会計データを含む印字データをプリンタ10に出力する。発行制御部322は、プリンタインタフェース308を介して、レシート用紙のカットを指示するカットコマンドをプリンタ10に出力する。例えば、発行制御部322は、一取引の終了に基づいて、一取引の最後の印字データをプリンタ10に出力した後に、カットコマンドをプリンタ10に出力する。発行制御部322は、印字データに基づく画像が印字されたレシートの発行を制御する。以下の説明において、「応答して」は、「基づいて」と読み替えてもよい。
【0023】
プリンタ10の構成例について説明する。
図2は、実施形態に係るプリンタ10の構成例の概略を示すブロック図である。
プリンタ10は、給紙ローラ12、プラテンローラ13、印字ヘッド14、カッタ15、センサ18、プロセッサ101、メインメモリ102、タイマ103、通信インタフェース104、搬送モータ105、ヘッドドライバ106、カッタモータ107、入力ポート108、及び電源回路109を含む。プロセッサ101は、メインメモリ102、タイマ103、通信インタフェース104、搬送モータ105、ヘッドドライバ106、カッタモータ107及び入力ポート108と電気的に、及び通信可能に接続される。給紙ローラ12、プラテンローラ13、印字ヘッド14、カッタ15、及びセンサ18の構成例については後述する。
図2では、インタフェースは、「I/F」と記載されている。
【0024】
プロセッサ101は、プリンタ10の中枢部分に相当する。プロセッサ101は、上述のプロセッサ301と同様のハードウェア構成である。プロセッサ101は、メインメモリ102に予め記憶されているプログラムをメインメモリ102に展開する。プログラムは、プリンタ10のプロセッサ101に後述する各部を実現又は実行させるプログラムである。プロセッサ101は、メインメモリ102に展開されるプログラムを実行することで、種々の動作を実行する。
【0025】
メインメモリ102は、プリンタ10の主記憶部分に相当する。メインメモリ102は、上述のメインメモリ302と同様のハードウェア構成である。メインメモリ102は、プログラムを記憶する。
【0026】
タイマ103は、予め設定された時間を計時する。タイマ103は、設定時間を計時するとタイムアウトする。設定時間は任意である。タイマ103は、プロセッサ101の制御により計時した時間をリセットする。
【0027】
通信インタフェース104は、所定の通信プロトコルに従い、ネットワークを介して、プリンタ10を他の電子機器と通信可能に接続する種々のインタフェースを含む。通信インタフェース104は、プリンタ10と決済処理端末30を接続し、決済処理端末30との間でデータ通信を行う。
【0028】
搬送モータ105は、給紙ローラ12とプラテンローラ13とを駆動する。給紙ローラ12とプラテンローラ13とは、搬送モータ105の駆動により所定の方向に回転して、ロール状に巻回された帯状のレシート用紙をレシート発行口へと搬送する。レシート用紙は、記録媒体の一例である。搬送モータ105は、印字に関連する構成要素の一例である。
【0029】
ヘッドドライバ106は、印字ヘッド14を駆動する駆動回路である。印字ヘッド14は、ヘッドドライバ106の駆動により決済処理端末30からの印字データに基づく画像をレシート用紙に印字する。印字ヘッド14は、サーマルヘッドともいう。ヘッドドライバ106は、印字に関連する構成要素の一例である。
【0030】
カッタモータ107は、カッタ15の可動刃を駆動する。カッタモータ107は、可動刃をパーシャルカット駆動とフルカット駆動との2段階の駆動が可能である。カッタモータ107がパーシャルカット駆動した場合、カッタ15は、レシート用紙の一部を切り残すパーシャルカットを行う。カッタモータ107がフルカット駆動した場合、カッタ15は、レシート用紙を完全に切り離すフルカットを行う。
【0031】
入力ポート108は、センサ18から出力されるオン信号又はオフ信号を入力する。CPU101は、入力ポート108に入力されている信号に基づいて、センサ18がレシート用紙を検知しているか否かを判定する。
【0032】
電源回路109は、商用電源から供給される交流電力を直流電力に変換し、プロセッサ101、メインメモリ102、タイマ103、通信インタフェース104、搬送モータ105、ヘッドドライバ106、カッタモータ107、及び入力ポート108等に給電する。給電は、電力供給と読み替えてもよい。電源回路109は、プロセッサ101により制御され得る。
【0033】
なお、プリンタ10のハードウェア構成は、上述の構成に限定されるものではない。プリンタ10は、適宜、上述の構成要素の省略及び変更並びに新たな構成要素の追加を可能とする。
【0034】
上述のプロセッサ101に実装される各部について説明する。
プロセッサ101は、検知部121、判定部122、及びモード制御部123を実装する。プロセッサ101に実装される各部は、各機能ということもできる。プロセッサ101に実装される各部は、プロセッサ101及びメインメモリ102を含む制御部に実装されるということもできる。
【0035】
検知部121は、タイマ103を用いて、プリンタ10の通常モードにおけるアイドル状態の継続時間を検知する。検知部121は、アイドル状態の継続時間が所定時間を超えたことを検知する。アイドル状態の継続時間は、プリンタ10が動作状態からアイドル状態へ移行したタイミングからアイドル状態を継続する時間である。動作状態、及びアイドル状態については後述する。通常モードは、プリンタ10の動作モードの一つである。通常モードは第1のモードの一例である。プリンタ10の動作モードについては後述する。所定時間は、例えば数秒又は数十秒である。所定時間は、予め設定されてもよく、プリンタ10のユーザ等により適宜更新されてもよい。
【0036】
判定部122は、アイドル状態への移行に関するイベントを判定する。アイドル状態への移行に関するイベントは、プリンタ10が動作状態からアイドル状態へ移行する要因となるイベントである。例えば、アイドル状態への移行に関するイベントは、決済処理端末30からのカットコマンドに基づくカットイベント、及び決済処理端末30からの通信の中断等を含む。カットイベントは、カットコマンドに基づくカッタ15によるレシート用紙のカットを含む。「カット」の表記は、パーシャルカット、又はフルカットの何れかに読み替えてもよい。通信の中断は、プリンタ10が決済処理端末30から一取引の最初の印字データを取得した後にカットコマンドを取得しないことを含む。例えば、通信の中断は、一取引中の買上商品の登録の間隔が長くなることに伴い発生する。一取引中の買上商品の登録の間隔が長くなるにつれて、決済処理端末30からプリンタ10への買上商品の会計データを含む印字データの送信間隔も長くなる。判定部122は、アイドル状態への移行に関するイベントが決済処理端末30からのカットコマンドに基づくカットイベントであるか否かを判定する。カットイベントは、カットコマンドに基づくイベントに対応する。
【0037】
モード制御部123は、アイドル状態への移行に関するイベントに応じて、通常モードからスリープモードへの動作モードの移行制御を変更する。モード制御部123は、移行に関するイベントがカットイベントであることに応答して、プリンタ10の動作モードを通常モードからスリープモードへ移行する。モード制御部123は、移行に関するイベントがカットイベントではないことに応答して、プリンタ10の動作モードを通常モードに維持する。スリープモードは第2のモードの一例である。
【0038】
プリンタ10の有する動作モードについて説明する。
プリンタ10は、少なくとも通常モード、及びスリープモードを有する。
通常モードは、電源回路109からプロセッサ101、メインメモリ102、タイマ103、通信インタフェース104、搬送モータ105、ヘッドドライバ106、カッタモータ107、及び入力ポート108等への給電を維持するモードである。スリープモードは、通常モードよりもプリンタ10で消費する電力を減らすモードである。スリープモードは、通常モードよりも消費電力の低いモードである。スリープモードは、省電力モードともいう。
【0039】
通常モードは、印字状態、カット状態、及びアイドル状態等を含む。印字状態は、決済処理端末30からの印字データに基づく画像をレシート用紙に印字する処理を実行する状態である。印字状態は、プリンタ10が動作中の動作状態の一例である。カット状態は、決済処理端末30からのカットコマンドに基づきレシート用紙20をカットする処理を実行する状態である。カット状態は、動作状態の一例である。アイドル状態は、決済処理端末30からの印字データ及びカットコマンドに基づく処理を実行可能な状態である。アイドル状態は、待機状態ともいう。
【0040】
スリープモードは、電源回路109から搬送モータ105、ヘッドドライバ106、カッタモータ107、及び入力ポート108等への給電を停止し、プロセッサ101、メインメモリ102、タイマ103、及び通信インタフェース104等への給電を維持するモードである。スリーブモードにおいて給電を停止する対象及び給電を維持する対象は、これらに限定されない。プリンタ10の一部分への給電を維持するのは、プリンタ10と決済処理端末30との間の通信に関する機能をスリープモードであっても維持するためである。
【0041】
プリンタ10の要部について説明する。
図3は、実施形態に係るプリンタ10の要部を示す模式図である。
プリンタ10は、レシート用紙20を収容可能な筐体11を備えている。そしてプリンタ10は、この筐体11内に、給紙ローラ12と、プラテンローラ13と、印字ヘッド14と、カッタ15とを配置している。また、プリンタ10は、筐体11の一側面にレシート発行口16を設けている。そして、筐体11に収容されたレシート用紙20の先端がレシート発行口16から排出されるように、プリンタ10は、用紙搬送路を形成している。
【0042】
給紙ローラ12は、用紙搬送路の最上流、すなわちロール状に巻回されたレシート用紙20に最も近い側に配置されている。給紙ローラ12は、ロール状から繰り出されたレシート用紙20の先端を一対のローラで挟み込み、その回転力によって下流側へと搬送する。
【0043】
プラテンローラ13は、給紙ローラ12よりも下流側に配置されている。プラテンローラ13は、給紙ローラ12から送り出されたレシート用紙20をその回転によりさらに下流側へと搬送する。
【0044】
印字ヘッド14は、用紙搬送路を間に挟んでプラテンローラ13と対向する位置に配置されている。印字ヘッド14は、プラテンローラ13上を搬送されるレシート用紙20に感熱方式で印字データを印字する。
【0045】
カッタ15は、用紙搬送路の最下流、すなわちレシート発行口16よりも手前に配置されている。カッタ15は、用紙搬送路を間に挟んで上方に設けられた固定刃151と、下方に設けられた可動刃152とからなる。カッタ15は、可動刃152が上昇して固定刃151との間にレシート用紙20を押し込むことにより、レシート発行口16から排出されたレシート用紙20をレシート発行口16の手前で切断する。このとき、可動刃152の移動量に応じて、パーシャルカット又はフルカットを行う。カッタ15は、決済処理端末30からのカットコマンドに基づいてレシート用紙20をカットする。
【0046】
なお、カッタ15によってフルカットされたレシート用紙20の先端側の紙片Pは、重力によりレシート発行口16から落下する。そこでプリンタ10は、レシート発行口16の下方に、紙片Pを収容するためのボックス17を取り付けている。また、プリンタ10は、レシート発行口16から排出されたレシート用紙20の有無を検知するセンサ18をレシート発行口16の近傍に設けている。センサ18は、例えば光学式センサであり、レシート用紙20を検知している間はオン信号を出力し、レシート用紙20を検知しなくなるとオフ信号を出力する。
【0047】
プリンタにより印字されるレシート用紙の例について説明する。
図4は、参考例に係るプリンタにより印字されるレシート用紙の一例を概略的に示す図である。
【0048】
プリンタは、決済処理端末30からの印字データに基づく画像をレシート用紙に印字する。レシート用紙は、決済処理端末30及びプリンタが設置される店舗の店舗名、客の買上商品の品名、金額、及び合計金額等を含む。この例では、プリンタは、「002」で示される画像に対応する会計データを含む印字データを決済処理端末30から受信した後、アイドル状態の継続時間が設定された所定時間を超え、スリープモードに移行した場合を想定する。プリンタは、スリープモードに移行し、電源回路から搬送モータ、ヘッドドライバ、カッタモータ、及び入力ポート等への給電が停止される。これにより、プリンタのモータの相制御が初期化される。プリンタは、この状態で「003」で示される画像に対応する会計データを含む印字データを決済処理端末30から受信する。プリンタは、印字データの受信に応答して、通常モードに移行し、印字データに基づく画像をレシート用紙20に印字する。そのため、
図4に示すように、参考例のプリンタにおいては、スリープモードから通常モードに移行した直後の「003」で示される印字データに基づく画像の印字位置が詰まる現象が生じる。
【0049】
図5は、実施形態に係るプリンタ10により印字されるレシート用紙20の一例を概略的に示す図である。
【0050】
プリンタ10は、決済処理端末30からの印字データに基づく画像をレシート用紙20に印字する。レシート用紙20は、決済処理端末30及びプリンタ10が設置される店舗の店舗名、客の買上商品の品名、金額、及び合計金額等を含む。この例では、プリンタ10は、「002」で示される画像に対応する会計データを含む印字データを決済処理端末30から受信した後、アイドル状態に移行し、検知部121によりアイドル状態の継続時間が設定された所定時間を超えたことが検知された場合を想定する。判定部122は、アイドル状態への移行に関するイベントが決済処理端末30からのカットコマンドに基づくカットイベントであるか否かを判定する。この例では、アイドル状態への移行に関するイベントは、「002」で示される画像に対応する会計データを含む印字データに基づく画像の印字をした後、決済処理端末30からの通信が中断されたことである。この場合のアイドル状態への移行に関するイベントは、決済処理端末30からカットコマンドを受信していない状態での決済処理端末30からの通信の中断である。モード制御部123は、判定部122により判定されたアイドル状態への移行に関するイベントがカットコマンドに基づくイベントではないことに応答して、プリンタ10の動作モードを通常モードに維持する。プリンタ10は、通常モードにおける電源回路109からの給電状態を維持する。そのため、プリンタ10のモータの相制御は初期化されない。
【0051】
プリンタ10は、この状態で「003」で示される画像に対応する会計データを含む印字データを決済処理端末30から受信する。プリンタ10は、印字データの受信に応答して、印字データに基づく画像をレシート用紙20に印字する。この例では、
図5に示すように、プリンタ10は、アイドル状態の継続時間が設定された所定時間を超えた状態で「003」で示される印字データを受信した場合でも、「003」で示される印字データに基づく画像を適切な印字位置で印字できる。プリンタ10においては、参考例のプリンタのような、スリープモードから通常モードに移行した直後の印字データに基づく画像の印字位置が詰まる現象が生じない。
【0052】
プリンタ10のプロセッサ101による処理の手順について説明する。
図6は、実施形態に係るプリンタ10のプロセッサ101による処理を例示するフローチャートである。
なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてよい。また、以下で説明する処理手順について、実施形態に応じて、適宜、動作の省略、置換、及び追加が可能である。
プリンタ10は、通常モードであるものとする。
【0053】
検知部121は、プリンタ10の通常モードにおけるアイドル状態の継続時間を検知する(ACT1)。ACT1では、例えば、検知部121は、アイドル状態の継続時間が所定時間を超えたことを検知する。検知部121により、アイドル状態の継続時間が所定時間を超えたことが検知された場合(ACT1:YES)、処理はACT1からACT2へ遷移する。検知部121により、アイドル状態の継続時間が所定時間を超えたことが検知されない場合(ACT1:NO)、ACT1を繰り返す。
【0054】
判定部122は、検知部121によるアイドル状態の継続時間が所定時間を超えたことの検知に応答して、アイドル状態への移行に関するイベントを判定する(ACT2)。ACT2では、例えば、判定部122は、アイドル状態への移行に関するイベントが決済処理端末30からのカットコマンドに基づくカットイベントであるか否かを判定する。例えば、プロセッサ101は、決済処理端末30からの印字データ及びカットコマンド等のデータをメインメモリ102に記憶させる。プロセッサ101は、決済処理端末30からカットコマンドを取得した場合、メインメモリ102において、カットコマンドを示すフラグを立てる。例えば、プロセッサ101が一取引の印字データの取得を開始した後にカットコマンドを取得した場合のフラグを「1」とする。プロセッサ101が一取引の印字データの取得を開始した後にカットコマンドを取得していない場合のフラグを「0」とする。判定部122は、カットコマンドを示すフラグに基づいて、アイドル状態への移行に関するイベントがカットコマンドに基づくイベントであるか否かを判定する。判定部122は、カットコマンドを示すフラグが「1」であることに基づいて、アイドル状態への移行に関するイベントがカットコマンドに基づくカットイベントであると判定する。一方、判定部122は、カットコマンドを示すフラグが「0」であることに基づいて、アイドル状態への移行に関するイベントがカットコマンドに基づくカットイベントではないと判定する。アイドル状態への移行に関するイベントがカットイベントではないことは、アイドル状態への移行に関するイベントが決済処理端末30からの通信の中断であることを含む。
【0055】
判定部122により、アイドル状態への移行に関するイベントがカットイベントであると判定された場合(ACT2:YES)、処理はACT2からACT4へ遷移する。判定部122により、アイドル状態への移行に関するイベントがカットイベントではないと判定された場合(ACT2:NO)、処理はACT2からACT3へ遷移する。モード制御部123は、判定部122により判定されたアイドル状態への移行に関するイベントに応じて、通常モードからスリープモードへの動作モードの移行制御を変更する。
【0056】
モード制御部123は、判定部122により判定されたアイドル状態への移行に関するイベントがカットコマンドに基づくイベントではないことに応答して、プリンタ10の動作モードを通常モードに維持する(ACT3)。ACT3では、例えば、モード制御部123は、電源回路109を制御し、電源回路109からプロセッサ101、メインメモリ102、タイマ103、通信インタフェース104、搬送モータ105、ヘッドドライバ106、カッタモータ107、及び入力ポート108等への給電を維持する。モード制御部123は、プリンタ10を通常モードのアイドル状態に維持する。処理は、ACT1へ戻る。なお、プロセッサ101は、決済処理端末30から一取引の途中の印字データを取得した場合、印字データに基づく画像をレシート用紙20に印字する。プロセッサ101は、決済処理端末30からカットコマンドを取得した場合、レシート用紙20をカットする。
【0057】
モード制御部123は、判定部122により判定されたアイドル状態への移行に関するイベントがカットコマンドに基づくイベントであることに応答して、プリンタ10の動作モードを通常モードからスリープモードへ移行する(ACT4)。ACT4では、例えば、モード制御部123は、少なくとも印字に関連する構成要素への給電を制御することによりプリンタ10の動作モードを通常モードからスリープモードへ移行する。具体的には、モード制御部123は、電源回路109を制御し、搬送モータ105、ヘッドドライバ106、カッタモータ107、及び入力ポート108等への給電を停止する。モード制御部123は、プロセッサ101、メインメモリ102、タイマ103、及び通信インタフェース104等への給電を維持する。モード制御部123は、上述のように給電を制御することにより、プリンタ10の動作モードを通常モードからスリープモードへ移行する。なお、プロセッサ101は、決済処理端末30から一取引の最初の印字データを取得した場合、メインメモリ102において、カットコマンドを示すフラグを「0」にリセットする。
【0058】
この例によれば、モード制御部123は、検知部121によるアイドル状態の継続時間が所定時間を超えたことの検知に応答して、アイドル状態への移行に関するイベントに応じて、通常モードからスリープモードへの動作モードの移行制御を変更することができる。これにより、アイドル状態の継続時間が所定時間を超えても、モード制御部123は、プリンタ10の動作モードを適切なモードに制御することができる。そのため、モード制御部123は、適切なタイミングで、通常モードからスリープモードへの動作モードの移行を制御することができる。
【0059】
モード制御部123は、アイドル状態への移行に関するイベントがカットイベントではない場合、プリンタ10の動作モードを通常モードに維持することができる。これにより、アイドル状態の継続時間が所定時間を超えても、モード制御部123は、プリンタ10の動作モードをスリープモードに移行せず、電源回路109からの給電を維持することができる。そのため、例えば、プリンタ10は、モータの相制御の状態を維持することができる。プリンタ10は、決済処理端末30から一取引の途中の印字データを受信した際に、搬送モータ105によるレシート用紙20の搬送を適切に行うことができる。プリンタ10は、レシート用紙20の適切な印字位置において画像を印字することができる。
【0060】
また、モード制御部123は、アイドル状態への移行に関するイベントがカットイベントである場合、プリンタ10の動作モードをスリープモードに移行することができる。これにより、カットイベントの後、アイドル状態の継続時間が所定時間を超える場合には、モード制御部123は、プリンタ10の動作モードをスリープモードに移行することができる。モード制御部123は、電源回路109からの給電を一部停止し、消費電力を削減することができる。
【0061】
以上のように、プリンタ10は、アイドル状態へ移行する直前のイベントに応じて、適切にスリープモードへの移行を制御することができる。そのため、プリンタ10は、消費電力を削減しつつ、スリープモードにおいて一取引の途中の印字データを受信したと仮定した場合の印字位置の詰まりを回避できるような動作モードの移行を実現することができる。
【0062】
プログラムは、電子機器に記憶された状態で譲渡されてよいし、電子機器に記憶されていない状態で譲渡されてもよい。後者の場合は、プログラムは、ネットワークを介して譲渡されてよいし、記録媒体に記録された状態で譲渡されてもよい。記録媒体は、非一時的な有形の媒体である。記録媒体は、電子機器可読媒体である。記録媒体は、CD-ROM、メモリカード等のプログラムを記憶可能かつ電子機器で読取可能な媒体であればよく、その形態は問わない。
【0063】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
10…プリンタ、11…筐体、12…給紙ローラ、13…プラテンローラ、14…印字ヘッド、15…カッタ、16…レシート発行口、17…ボックス、18…センサ、20…レシート用紙、30…決済処理端末、101…プロセッサ、102…メインメモリ、103…タイマ、104…通信インタフェース、105…搬送モータ、106…ヘッドドライバ、107…カッタモータ、108…入力ポート、109…電源回路、121…検知部、122…判定部、123…モード制御部、151…固定刃、152…可動刃、301…プロセッサ、302…メインメモリ、303…補助記憶デバイス、304…時計部、305…通信ユニット、306…タッチパネル、307…リーダ・ライタ、308…プリンタインタフェース、309…スキャナ、321…生成部、322…発行制御部、P…紙片、S…情報処理システム。