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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】位置測位装置、および位置測位方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/47 20100101AFI20241209BHJP
   G01S 19/22 20100101ALI20241209BHJP
   G01S 19/28 20100101ALI20241209BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20241209BHJP
   B61L 25/02 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G01S19/47
G01S19/22
G01S19/28
G01C21/28
B61L25/02 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021046427
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022145143
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 達哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 広幸
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 直人
(72)【発明者】
【氏名】行木 英明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 紀康
(72)【発明者】
【氏名】服部 陽平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博章
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-189157(JP,A)
【文献】特開2019-221081(JP,A)
【文献】特開2004-184121(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0324300(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00-19/55
G01C 21/26-21/36
B61L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置を計測する位置測位装置であって、
人工衛星から送信され、前記車両の位置を計測するための第1情報の受信に関する第1制御を行う衛星受信制御部と、
センサから送信され、前記車両の位置を計測するための第2情報の受信に関する第2制御を行う自立計測制御部と、
前記第1情報および前記第2情報の受信状況に応じて、前記第1制御および前記第2制御の少なくとも何れを行うかを判別する判別部と、
を備え
前記衛星受信制御部は、
前記車両に対する前記人工衛星の仰角の範囲を設定し、
設定した前記仰角の範囲において、前記車両に対する前記人工衛星のなす方位角の範囲を設定し、
前記仰角の範囲と、前記方位角の範囲とに含まれる領域を、複数の領域に区画し、
前記複数の領域に配置された、1または複数の前記人工衛星から、前記複数の領域内でそれぞれ距離が近いもしくは重なっている前記人工衛星に該当しないような前記第1制御に用いる前記人工衛星を選択する、
位置測位装置。
【請求項2】
前記衛星受信制御部は、
前記複数の領域を所定の優先順位に基づいて選択する、
請求項1に記載の位置測位装置。
【請求項3】
前記判別部は、前記車両の所定時間内における移動量に対応する第1ベクトルと、前記車両の速度に基づいた前記車両の所定時間内における移動量に対応する第2ベクトルと、前記第1ベクトルと前記第2ベクトルとに基づいた推定距離誤差と、を算出し、前記推定距離誤差を用いて、前記第1制御および前記第2制御の少なくとも何れを行うかを判別する、
請求項1または2に記載の位置測位装置。
【請求項4】
前記判別部は、3軸方向の前記車両の位置の計測精度に関する推定位置誤差を算出し、前記推定位置誤差に基づいて前記第1制御および前記第2制御の少なくとも何れを行うかを判別する、
請求項1~3の何れか1項に記載の位置測位装置。
【請求項5】
前記判別部は、前記推定位置誤差の変化量を算出し、前記変化量に基づいて、前記第1制御および前記第2制御の少なくとも何れを行うかを判別する、
請求項4に記載の位置測位装置。
【請求項6】
前記車両の通過する通過領域と特定位置を含む地図情報を記憶する地図情報記憶部をさらに備え、
前記判別部は、前記車両の状態と、前記通過領域と、前記特定位置とに基づいて、前記第1制御および前記第2制御の少なくとも何れを行うかを判別する、請求項1~5の何れか1項に記載の位置測位装置。
【請求項7】
前記判別部は、前記車両が停止した停止状態、または前記車両が走行している走行状態の何れであるかを判別する、
請求項1~6の何れか1項に記載の位置測位装置。
【請求項8】
車両の位置を計測する位置測位方法であって、
人工衛星から送信され、前記車両の位置を計測するための第1情報の受信に関する第1制御を行う衛星受信工程と、
センサから送信され、前記車両の位置を計測するための第2情報の受信に関する第2制御を行う自立計測工程と、
前記第1情報および前記第2情報の受信状況に応じて、前記第1制御および前記第2制御の少なくとも何れを行うかを判別する判別工程と、
を備え、
前記衛星受信工程は、
前記車両に対する前記人工衛星の仰角の範囲を設定し、
設定した前記仰角の範囲において、前記車両に対する前記人工衛星のなす方位角の範囲を設定し、
前記仰角の範囲と、前記方位角の範囲とに含まれる領域を、複数の領域に区画し、
前記複数の領域に配置された、1または複数の前記人工衛星から、前記複数の領域内でそれぞれ距離が近いもしくは重なっている前記人工衛星に該当しないような前記第1制御に用いる前記人工衛星を選択する工程を含む、
位置測位方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、位置測位装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星から送信された電波信号を用いた衛星受信制御により鉄道車両の位置の計測が行われているが、鉄道沿線の環境によってはマルチパス等の問題から最大±10mまで計測精度が悪化する。この影響により、衛星受信制御では自動運転による鉄道車両の位置の計測方法としては計測精度が低くなる場合がある。また、トンネル、橋上駅舎等の高架下や地下区間等においては、衛星の送信する電波が届かず衛星受信制御が不可能な領域においても鉄道車両の走行位置を把握できないおそれがある。
【0003】
このため、衛星受信制御の実行中に、例えば鉄道車両に設けられた速度センサや加速度センサ等により鉄道車両の位置を計測する、自立計測制御に切り替えたいという要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-005373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題を解決するため、本発明は、計測精度を向上させることが可能である、位置測位装置、および位置測位方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る位置測位装置は、衛星受信制御部と、自立計測制御部と、判別部と、を備える。衛星受信制御部は、人工衛星から送信され、車両の位置を計測するための第1情報の受信に関する第1制御を行う。自立計測制御部は、センサから送信され、車両の位置を計測するための第2情報の受信に関する第2制御を行う。判別部は、第1情報および第2情報の受信状況に応じて、衛星受信制御および自立計測制御の少なくとも何れを行うかを判別する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係る位置測位装置の概要を示すブロック図である。
図2図2は、受信演算処理装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、測位信号演算部の処理を示すフローチャートである。
図4図4は、自立計測演算部の処理を示すフローチャートである。
図5図5は、鉄道車両の位置を計測する状況を示す概念図である。
図6図6は、状態判別部の処理を示すフローチャート(その1)である。
図7図7は、状態判別部の処理を示すフローチャート(その2)である。
図8図8は、衛星受信制御部の仰角を制御する処理を示すフローチャートである。
図9図9は、衛星受信制御部の電波信号の受信感度を制御する処理を示すフローチャートである。
図10図10は、切替判別部の処理を示すフローチャートである。
図11図11は、衛星受信制御部の人工衛星を選択する状況の説明図である。
図12図12は、衛星受信制御部の仰角を制御する状況の説明図である。
図13図13は、衛星受信制御部の領域内に配置された人工衛星を選択する状況を示す説明図である。
図14図14は、領域の優先順位に基づいて、衛星受信制御部22が人工衛星12を選択する状況を示す説明図である。
図15図15は、衛星受信制御の実行中において、自立計測制御を実行するか否かの判断を行う状況を示すフローチャートである。
図16図16は、衛星測位制御における測位点の誤差を示す概念図である。
図17図17は、衛星受信制御部22における、衛星選択の処理を示すフローチャートである。
図18図18は、衛星受信制御における推定距離誤差を示す概念図である。
図19図19は、衛星受信制御の処理の流れを示すフローチャート(その1)である。
図20図20は、衛星受信制御の処理の流れを示すフローチャート(その2)である。
図21図21は、地図連動制御の実行状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態に係る位置測位装置、および位置測位方法を詳細に説明する。
【0009】
図1は、第1実施形態に係る位置測位装置10の概要を示すブロック図である。位置測位装置10は、鉄道車両11に搭載され、人工衛星12から送信された電波信号SXに基づき鉄道車両11の位置を計測することが可能である。この位置測位装置10は、受信アンテナ装置13と、外部機器14と、受信演算処理装置15と、を備える。なお、本実施形態では、電波信号SX1~SXnおよび人工衛星12-1~12-nをn=4で図示するが、これに限定されない。例えば、nは5以上の自然数でもよい。
【0010】
受信アンテナ装置13は、電波信号SXを受信可能なアンテナ装置である。電波信号SXは、鉄道車両11の位置を計測するための情報を含む信号である。外部機器14は、測位結果に基づき、鉄道車両11の走行制御を行う機器であり、例えば、列車統合管理装置(TCMS)、自動運転向け運転士支援制御装置、車上モニタ等である。受信演算処理装置15は、受信アンテナ装置13の出力した電波信号SXに基づいて鉄道車両11の位置を特定するための演算処理行い、演算結果を外部機器14に出力する。
【0011】
図2は、受信演算処理装置15の構成を示すブロック図である。受信演算処理装置15は、測位信号演算部21と、衛星受信制御部22と、自立計測演算部23と、状態判別部24と、車両位置補正部25と、切替判別部26と、記憶装置27と、通信接続装置28と、地図DB29と、を有する。また、図2には、3軸センサ部CSUが更に図示されている。3軸センサ部CSUは、例えば3軸加速度センサ、3軸ジャイロセンサ、及び3軸地磁気センサを含む3軸センサである。
【0012】
測位信号演算部21は、受信アンテナ装置13の受信した電波信号SXに基づいて、鉄道車両11の位置座標を演算し、衛星測位データ群DGを出力する。衛星測位データ群DGには、鉄道車両11の位置座標、時刻、電波信号SXに含まれる衛生軌道情報(例えば衛星アルマナック情報、及び衛星エフェメリス情報)及び電波信号SXの受信信号の強度などが含まれる。
【0013】
衛星受信制御部22は、人工衛星12が送信する電波信号SXを用いた、衛星受信制御を行い、鉄道車両11の位置の計測を行う。
【0014】
具体的には、衛星受信制御部22は、鉄道車両11の進行方向DRおよび位置座標(x、y、z)を基準として、人工衛星12のz方向の位置より仰角を算出する。
【0015】
また、衛星受信制御部22は、鉄道車両11の進行方向DRおよび位置座標(x、y、z)を基準として、人工衛星12のxy方向の位置より方位角を算出する。なお、衛星受信制御部22は、衛星アルマナック情報に基づいて仰角および方位角を算出してもよい。
【0016】
また、衛星受信制御部22は、PDOP(受信した信号から推定した位置精度の変化率)の値を演算する。DOP(Dilution of Precision)は、衛星の配置状態を指標化したものであり、対象の位置の計測精度との相関関係が高い。例えば、値が小さいほど鉄道車両11の位置を計測する精度が高い傾向を示す。DOPには、衛星の水平方向の幾何学的配置を指標化したHDOP(Horizontal DOP)、衛星の鉛直方向の幾何学的配置を指標化したVDOP(Vertical DOP)、それらを合成したPDOP(Position DOP)等がある。本実施形態では、通常PDOPの値を用いる。
【0017】
さらに、衛星受信制御部22は、PACC3Dの値を演算する。PACCは、鉄道車両11の位置の計測精度と、人工衛星12の送信する電波信号SXの信号強度を示す指標である。例えば、値が小さいほど鉄道車両11の位置を計測する精度が高く、電波信号SXの信号強度が高い傾向を示す。PACCには、鉄道車両の水平方向の位置精度を指標化したPACCH、鉄道車両の鉛直方向の位置精度を指標化したPACCV、鉄道車両の3軸(xyz)方向の位置精度を指標化したPACC3D等がある。本実施形態では、通常PACC3Dの値を用いる。
【0018】
自立計測演算部23は、3軸センサ部CSUの出力に基づいて自立測位データ群DSを出力する。自立測位データ群DSには、時刻、速度、加速度、角度および走行ベクトルなどが含まれる。すなわち、自立計測演算部23は、これらを一般的な演算方法を用いて演算することにより、鉄道車両11の位置を計測する自立計測制御を実行する。例えば、3軸方向の走行ベクトルは、3軸加速度センサの出力に基づき、3軸方向の加速度を時間積算することで演算される。また、速度は、例えば3軸方向の走行ベクトルの絶対値として演算可能である。言いかえると、自立計測演算部23は、センサから送信され、鉄道車両11の位置を計測するための情報を含む電波信号SXの受信に関する自立計測制御を行う。
【0019】
また自立計測演算部23は、衛星測位データ群DGに基づく鉄道車両11の位置座標を自立測位データ群DSの情報を用いて補正演算し、鉄道車両11の位置情報を出力する。すなわち、自立計測演算部23は、基準位置からの鉄道車両11の位置座標の時系列な変化を、自立測位データ群DSの情報を用いて演算する。
【0020】
自立計測演算部23は、3軸方向の速度、加速度及び角度を演算し、これらの情報を含む自立測位データ群DSを出力し、時刻とともに記憶装置27に記憶する。この際に、自立計測演算部23は、自立測位データ群DSに基づき、鉄道車両11の位置座標を演算し、時刻とともに記憶装置27に記憶する。
【0021】
状態判別部24は、例えば衛星測位データ群DG、自立測位データ群DSに基づいて、鉄道車両11の状態(例えば鉄道車両11が走行している状態であるか、停止している状態であるか、あるいか故障している状態であるか等)を判別する。
【0022】
車両位置補正部25は、基準位置からの鉄道車両11の位置座標の時系列な変化を、少なくとも衛星測位データ群DGに含まれる情報、または自立測位データ群DSに含まれる情報を用いて演算する。この基準位置とは、過去に測位または自立演算をした位置の、平均位置である。例えば、基準位置は、同一の地上子を通過した際の測位位置の過去10回分の平均値である。
【0023】
切替判別部26は、人工衛星から送信され車両の位置を計測する情報、およびセンサから送信され車両の位置を計測する情報の受信状況に応じて、衛星受信制御および自立計測制御の少なくとも何れを行うか否かを判別する。
【0024】
また、切替判別部26は、衛星受信制御部22が衛星受信制御により計測した位置座標および自立計測演算部23の自立計測制御により出力した位置座標のいずれを鉄道車両11の位置座標とするか判別する。
【0025】
例えば、切替判別部26は、電波信号SXが遮断され、鉄道車両11が人工衛星12を捕捉できない環境下に存在するか否かを判別する。人工衛星12を捕捉できない環境下で衛星受信制御部22が衛星受信制御が不可能であると判別した場合に、自立計測演算部23は自立計測制御を実行して、人工衛星12の位置を計測する。
【0026】
記憶装置27は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フ
ラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される
。記憶装置27は、各種の情報を記憶する。通信接続装置28は、記憶装置27と、外部機器14との間を通信する。
【0027】
図DB29は、例えば地図上において、トンネルや駅舎、橋など人工衛星12の送信する電波信号SXの受信状況が悪化する特定のエリアおよびの当該エリアの入口、出口などを示した地図情報を格納する。そして、例えば衛星受信制御部22または自立計測演算部23は、地図DB29に格納された当該地図情報を参照しながら衛星受信制御または自立計測制御を並行して行う制御である、地図連動制御を行う。なお、衛星受信制御部22および自立計測演算部23は、それぞれ衛星受信制御および自立計測制御を実行しながら、地図連動制御を実行してもよい。
【0028】
図3は、測位信号演算部21の処理フローチャートである。測位信号演算部21は、受信アンテナ装置13を介して電波信号SX1~SX4を受信する(ステップS11)。
【0029】
次に、測位信号演算部21は、電波信号SX1~SX4から時刻信号を抽出し、時刻情報に関するデータを取得する(ステップS12)。続いて、測位信号演算部21は、衛星軌道情報(例えば、衛星アルマナック情報、及び衛星エフェメリス情報)、及び得られた時刻信号に基づいて緯度情報及び経度情報を含む位置情報に関するデータを取得する(ステップS13)。
【0030】
ここで、位置情報の取得方法の詳細を説明する。測位信号演算部21は、例えば人工衛星12-1~12-4からの軌道情報を用いて鉄道車両11の位置座標(x、y、z)を算出する。すなわち、人工衛星12-1~12-4の位置と、その瞬間における人工衛星12-1~12-4と受信演算処理装置15との距離をセットとした情報により、鉄道車両11の位置座標(x、y、z)を算出する。この場合、人工衛星の位置と、その瞬間における人工衛星と受信演算処理装置15との距離の情報のセットは、3以上あれば、座標(x、y、z)を算出可能である。これに、時刻の正確さを保証するため4つ目の衛星が一般に必要となる。
【0031】
より詳細には、測位信号演算部21は、衛生軌道情報(例えば、衛星アルマナック情報、及び衛星エフェメリス情報)、及び得られた時刻信号に基づいて、下記の式により鉄道車両11の位置座標(x、y、z)を算出する。
【0032】
【数1】
【0033】
上記式において、(x、y、z)は、求めたい位置の座標値のパラメータであり、(xn、yn、zn)は電波信号SXを送信する人工衛星12の位置の座標値のパラメータである。また、tは、測位した時刻のパラメータであり、tnは、人工衛星12電波信号SXを送信した時刻のパラメータである。なお、測位信号演算部21は、地上の基地局などを経由して、電波信号SXを受信してもよい。測位信号演算部21は、この4パラメータを最小二乗法などにより、検知したい位置情報を算出する。
【0034】
続いて、測位信号演算部21は、鉄道車両11の位置を計測する人工衛星12に関するデータを取得する(ステップS14)。例えば、測位信号演算部21は、所定の演算に基づいて、測定に用いられる人工衛星12の数を取得する。
【0035】
さらに、測位信号演算部21は、その他のデータを取得する。測位信号演算部21は、これらの情報を含む衛星測位データ群DGを出力し、記憶装置27に記憶する。
【0036】
図4は、自立計測演算部23の処理を示すフローチャートである。自立計測演算部23は、3軸センサ部CSUから3軸加速度センサのデータを取得し(ステップS21)、3軸ジャイロセンサのデータを取得し(ステップS22)、そして3軸地磁気センサのデータを取得する(ステップS23)。なお、3軸地磁気センサのデータは必ずしも取得する必要はなく、3軸加速度センサと3軸ジャイロセンサの2種類のデータのみとしてもよい。
【0037】
次に自立計測演算部23は、各々のセンサのデータを0.1秒分取得したか否かを判別する。0.1秒分取得していないと判別した場合(ステップS24のNо)、ステップS21に戻り処理を繰り返す。0.1秒分取得したと判別した場合(ステップS24のYes)、各々のセンサのデータの平均値を算出して(ステップS25)、処理を終了する。
【0038】
図5は、鉄道車両11の位置を計測する状況を示す概念図である。例えば、鉄道車両11が線路上の〇印で示される箇所に位置する、と自立計測演算部23が演算する場合、状態判別部24は、自立計測制御のみで鉄道車両11の位置を計測可能であると判別する。一方、鉄道車両11が線路上の×印で示される箇所に位置する、と自立計測演算部23が演算する場合、切替判別部24は、自立計測制御に替えて、または自立計測制御と並行して、衛星受信制御を行い、鉄道車両11の位置を計測する必要があると判別する。
【0039】
図6は、状態判別部の処理を示すフローチャート(その1)である。状態判別部24は、測位信号演算部21が人工衛星12から受信した電波信号SXに基づいて、鉄道車両11の速度を計算したか否かを判定する(ステップS31)。測位信号演算部21が速度を計算していないと判定した場合(ステップS31のNo)、状態判別部24は人工衛星12からの電波信号SXの受信が不可であると判定し(ステップS32)、ステップS36へ進む。測位信号演算部21が速度を計算した(ステップS31のYes)と判定した場合、状態判別部24は、鉄道車両11の速度が閾値よりも小さいか否かを判定する(ステップS33)。速度が閾値よりも小さい場合(ステップS33のYes)、状態判別部24は、鉄道車両11が停止していると判定して(ステップS34)、ステップS36へ進む。速度が閾値よりも小さくない場合(ステップ33のYes)、状態判別部24は、鉄道車両11が停止していると判定して(ステップS35)、ステップS36へ進む。
【0040】
次に状態判別部24は、自立計測演算部23が加速度を計算したか否かを判定する(ステップS36)。加速度を計算していないと判定した場合(ステップS36のNo)、状態判別部24は加速度センサの使用が不可であると判定し(ステップS37)、ステップS41へ進む。加速度を計算したと判定した場合(ステップ36のYes)、状態判別部24は、鉄道車両11の加速度が閾値よりも小さいか否かを判定する(ステップS38)。加速度が閾値よりも小さい場合(ステップ38のYes)、状態判別部24は、鉄道車両11が停止していると判定して(ステップS39)、ステップS41へ進む。加速度が閾値よりも小さくない場合(ステップS38のNo)、状態判別部24は、鉄道車両11が走行していると判定して(ステップS40)、ステップ41へ進む。
【0041】
続いて状態判別部24は、自立計測演算部23が角度を計算したか否かを判定する(ステップS41)。角度を計算していないと判定した場合(ステップ41のNo)、状態判別部24は角度センサの使用が不可であると判定し(ステップS42)、ステップS51へ進む。角度を計算したと判定した場合(ステップ41のYes)、状態判別部24は、鉄道車両11の角度が閾値よりも小さいか否かを判定する(ステップS43)。角度が閾値よりも小さいと判定した場合(ステップ43のYes)、状態判別部24は、鉄道車両11が停止していると判定して(ステップS44)、ステップ51へ進む。角度が閾値よりも小さくない場合(ステップ43のNo)、状態判別部24は、鉄道車両11が走行していると判定して(ステップS45)、ステップS51へ進む(図7のAに続く)。
【0042】
図7は状態判別部の処理を示すフローチャート(その2)である。状態判別部24は、速度、加速度、角度の少なくとも一つが計算されなかったか否かを判別する(ステップS51)。速度、加速度、角度の少なくとも一つが計算されなかったと判定した場合(ステップS51のYes)、状態判別部24は、鉄道車両11が故障していると判定して(ステップS52)、処理を終了する。
【0043】
速度、加速度、角度の少なくとも一つが計算されたと判定した場合(ステップS51のNo)、状態判別部24は、少なくとも一回停止判定したか否かを判定する(ステップS53)。すなわち、状態判別部24は、車両が停止した停止状態、または車両が走行している走行状態の何れであるかを判別する。少なくとも一回停止判定したと判定した場合(ステップS53のYes)、状態判別部24は、状態判別部24は鉄道車両11が停止していると判定する(ステップS54)。その後、状態判別部24は、100ms前の鉄道車両11の位置を取得し(ステップS55)、その後停止している旨のデータを出力し(ステップS56)、処理を終了する。
【0044】
少なくとも一回停止判定していないと判定した場合(ステップS53のNo)、状態判別部24は、鉄道車両11が走行していると判定し(ステップS57)、ステップS61およびステップS71に進む(図8のBおよび図9のCに続く)。
【0045】
図8は、衛星受信制御部22の仰角を制御する処理を示すフローチャートである。状態判別部24は、衛星受信制御部22がPDOPを計算したか否かを判別する(ステップS61)。衛星受信制御部22がPDOPを計算していないと判定した場合(ステップS61のNo)、衛星受信制御部22は、仰角(角度)のリセット値を出力して、終了する。
【0046】
衛星受信制御部22がPDOP(位置精度低下率)を計算したと判定した場合(ステップS61のYes)、状態判別部24は、PDOPが最小値および最大値の範囲内であるか否かを判定する(ステップS63)。PDOPが最小値と最大値の範囲内であると判定した場合(ステップS63のYes)、仰角のリセット値を出力して、終了する。
【0047】
PDOPが最小値と最大値の範囲内でないと判定した場合(ステップS63のNo)、状態判別部24は、PDOPが最大値より大きいか否かを判定する(ステップS65)。PDOPが最大値より大きくないと判定した場合(ステップS65のNo)、衛星受信制御部22は、PDOPの最小値を出力して(ステップS66)、処理を終了する。PDOPが最大値より大きいと判定した場合(ステップS65のYes)、衛星受信制御部22は、仰角を演算する(ステップS67)。そして、衛星受信制御部22は、仰角を出力して(ステップS68)、処理を終了する。
【0048】
図9は、衛星受信制御部22の電波信号SXの受信感度を制御する処理を示すフローチャートである。状態判別部24は、衛星受信制御部22がPACC3Dを計算したか否かを判別する(ステップS71)。衛星受信制御部22がPACC3Dを計算していないと判定した場合(ステップS71のNo)、衛星受信制御部22は、受信感度のリセット値を出力して、終了する。
【0049】
衛星受信制御部22がPACC3Dを計算したと判定した場合(ステップS71のYes)、状態判別部24は、PACC3Dが所定の最小値および最大値の範囲内であるか否かを判定する(ステップS73)。PACC3Dが所定の最小値および最大値の範囲内でないと判定した場合(ステップS73のNo)、衛星受信制御部22は、受信感度のリセット値を出力して、終了する。
【0050】
PACC3Dが所定の最小値および最大値の範囲内であると判定した場合(ステップS73のYes)、状態判別部24は、PACC3Dが所定の最大値より大きいか否かを判定する(ステップS75)。PACC3Dが所定最大値より大きくないと判定した場合(ステップS75のNo)、衛星受信制御部22は、PACC3Dの最小値を出力して(ステップS76)、処理を終了する。PACC3Dが最大値より大きいと判定した場合(ステップS75のYes)、衛星受信制御部22は、受信感度を演算する(ステップS77)。そして、衛星受信制御部22は、受信感度を出力して(ステップS78)、処理を終了する。
【0051】
図10は、切替判別部26の処理を示すフローチャートである。切替判別部26は、衛星受信制御部22が衛星受信制御を開始又は継続する状況であるか否かを判別する(ステップS81)。衛星受信制御を開始又は継続する状況であると判別した場合(ステップS81のYes)、衛星受信制御部22は、衛星受信制御を開始し(ステップS82)、ステップS83に進む。
【0052】
衛星受信制御を開始又は継続する状況でないと判別した場合(ステップS81のNо)、またはステップS82の処理の後において、切替判別部26は、自立計測演算部23が自立計測制御を開始又は継続する状況であるか否かを判定する(ステップS83)。自立計測演算部23が自立計測制御を開始又は継続する状況でないと判定した場合(ステップS83のNо)、切替判別部26は処理を終了する。自立計測制御を開始又は継続する状況であると判定した場合(ステップS83のYes)、自立計測演算部23は自立計測制御を開始する(ステップS84)。
【0053】
その後、切替判別部26は、衛星受信制御部22が衛星受信制御を終了する状況であるか否かを判定する(ステップS85)。衛星受信制御を終了する状況であると判定した場合(ステップS85のYes)、衛星受信制御部22は衛星受信制御を終了する(ステップS86)。
【0054】
切替判別部26は、自立計測演算部23が自立計測制御を終了する状況であるか否かを判定する(ステップS87)。自立計測制御を終了する状況であると判定した場合(ステップS87のYes)、自立計測演算部23は、自立計測制御を終了し(ステップS88)、切替判別部26は処理を終了する。自立計測制御を終了しない状況であると判定した場合(ステップS87のNо)、切替判別部26は処理を終了する。
【0055】
図11は、衛星受信制御部22の人工衛星を選択する状況の説明図である。図11(a)は、衛星軌道情報のイメージ図である。図11(a)において円の中心に鉄道車両11のアンテナ13が配置されている。図11(a)中、○印は人工衛星12の現在位置、人工衛星12の現在位置を通る曲線は人工衛星12の衛星軌道情報を表している。
【0056】
図11(a)のような状況において、実際に鉄道車両11のアンテナ13において受信
可能な範囲は、アンテナ13の配置位置及び鉄道車両11の走行位置により異なるものと
なり、例えば、図11(b)に示すように、衛星受信制御部22は、受信有効エリアAE
及び受信無効エリアANを設定し、鉄道車両11の進行方向DRに基づいて、進行方向D
Rに対して、時計回り方向及び反時計回り方向にそれぞれ例えば135度となるように方位角が設定される。
【0057】
さらに、衛星受信制御部22は、設定した方位角に対応する受信有効エリアAEに対し、図11(c)に示すように、鉄道車両11の進行方向DRに対して、時計回り方向及び反時計回り方向にそれぞれ90度となるように人工衛星12を選択するための人工衛星位置を判定するための衛星配置判定エリアADを設定して、次回に選択すべき人工衛星を特定する処理を継続的に行う。
【0058】
図12は、衛星受信制御部22の仰角を制御する状況の説明図である。衛星受信制御部22は、図12(a)に示すように、上述した人工衛星選択処理によって選択した、鉄道車両11の位置の計測において有効な人工衛星12Eを全て含むとともに、鉄道車両11の位置の計測において無効な人工衛星12N(=人工衛星12N21及び人工衛星12N22)を含まないように仰角ELを制御する。
【0059】
この結果、有効な仰角の範囲AELは、図12(b)に示すようになるため、衛星受信制御部22は、さらに図11(c)に示すように、鉄道車両11の受信有効エリアAEを特定する処理を行う。この結果、鉄道車両11の位置の計測精度を所望の値以上に維持することが可能となる。
【0060】
すなわち、衛星受信制御部22は、車両に対する前記人工衛星の仰角の範囲を設定し、設定した仰角の範囲において、車両に対する人工衛星なす方位角の範囲を設定し、仰角の範囲と、方位角の範囲とに含まれる領域を、複数の領域に区画する。
【0061】
この場合において、衛星受信制御部22は、鉄道車両11の進行方向DRを方位角から一定時間(例えば、1秒間)について定期的に取得し、平均化した方位角を進行方向角として取得する。この進行方向角に存在する人工衛星12を衛星軌道情報から選定するようにしてもよい。
【0062】
さらに、進行方向DRの方位角がカーブや経路変更等により、大きく変わった場合(例えば、10°)は、衛星受信制御部22は、随時進行方向角を取得して、人工衛星12を衛星軌道情報から選定するようにしてもよい。これらにより、衛星受信制御部22は、鉄道車両11の位置を検知する精度を向上させることができる電波信号SXのみを選定することが可能になる。
【0063】
図13は、衛星受信制御部22の領域内に配置された人工衛星12を選択する状況を示す説明図である。有効な仰角の範囲AELに含まれ、かつ太線で囲われた領域である領域eには、五つの人工衛星12が配置されている。衛星受信制御部22は、この5つの人工衛星12のうち、例えば領域e内部の人工衛星12の配置状況に応じて、2つの有効な人工衛星12Eと、3つの位置計測に使用しない人工衛星12Lとに、選別する。すなわち、衛星受信制御部22は、複数の領域に配置された、1または複数の人工衛星12から、衛星受信制御に用いる人工衛星12を選択する。
【0064】
この時、衛星受信制御部22は、有効な人工衛星12Eについては、領域e内で配置が均等になるように、5つの人工衛星12のうち2つを有効な人工衛星12Eとして選択する。また例えば、衛星受信制御部22は、領域e内でそれぞれ距離が近いもしくは重なっているような人工衛星12を位置計測に使用しない人工衛星12Lとして選択する。衛星受信制御部22は、他の領域においても同様の処理を人工衛星12の配置状況に応じて行う。なお、衛星受信制御部22は、人工衛星12に静止衛星が含まれる場合、静止衛星を優先的に選択してもよい。
【0065】
図14は、領域の優先順位に基づいて、衛星受信制御部22人工衛星12を選択する状況を示す説明図である。衛星受信制御部22は、仰角、方位角、受信感度をもとに、各々の当該領域に優先順位(例えば、図14に示すような1~24までの順位)を設定する。例えば、衛星受信制御部22は、優先順位の高い領域に配置された人工衛星12を優先して選択する。すなわち、衛星受信制御部22は、複数の領域を所定の優先順位に基づいて選択する。衛星受信制御部22は、当該領域に静止衛星が含まれる場合、静止衛星の含まれる領域を優先的に選択してもよい。なお、図13図14において、仰角は15°あるいは30°刻み、方位角は30°または45°を基本とするが、ここに示す角度に限られない。
【0066】
図15は、衛星受信制御の実行中において、自立計測制御を実行するか否かの判断を行う状況を示すフローチャートである。まず衛星受信制御部22は、現在の鉄道車両11の位置の計測に使用した衛星の数を取得する。次に状態判別部24は、満足した条件の数が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS92)。閾値以上でないと判定した場合(ステップS92のNo)、状態判別部24は、衛星受信制御部22が所定の時間前(例えば100ms前)に衛星受信制御を行っていたか否かを判定する(ステップS93)。
【0067】
所定の時間前に衛星受信制御を行っていたと判別した場合(ステップS93のYes)、図10のDに進み、切替判別部26は、処理を継続する。所定の時間前に衛星受信制御を行っていないと判定した場合(ステップS93のNo)、図10のEに進み、切替判別部26は、処理を継続する。
【0068】
ステップS92において、閾値以上であると判定した場合(ステップS92のYes)、状態判別部24は、2回連続で閾値以上であるか否かを判定する(ステップS94)。2回連続で閾値以上であると判定した場合(ステップS94のYes)、図10のFに進み、切替判別部26は、処理を継続する。2回連続で閾値以上でないと判定した場合(ステップS94のNo)、図10のDに進み、切替判別部26は、処理を継続する。
【0069】
図16は、衛星測位制御における測位点の誤差を示す概念図である。図16において、鉄道車両11の重心(重心近傍)を通り、かつ鉄道車両11の進行方向DRに沿って延びる中心軸と、鉄道車両11の重心を通り、かつ中心軸に垂直な垂線上の点である中心点を中心とした円弧上に位置する□印との間の範囲を、許容誤差範囲として示す。そして、図16において、〇印は許容誤差範囲の範囲内に位置し、×印は許容誤差範囲外に位置する。
【0070】
例えば、衛星測位制御の実行中において、所定の閾値以上の回数、計測点が許容誤差範囲内に含まれていると状態判別部24が判別した場合、切替判別部26は、衛星受信制御部22に対し、衛星測位制御を行う状況であると判別し、衛星測位制御部22は、衛星測位制御を継続する。衛星測位制御の実行中において、所定の閾値以上の回数、測位点が許容誤差範囲内に含まれていないと状態判別部24が判別した場合、切替判別部26は、自立計測制御を行う状況であると判別し、自立計測演算部23は、自立計測制御を開始する。
【0071】
図17は、衛星受信制御部22における、衛星選択の処理を示すフローチャートである。衛星受信制御部22は、目標とする仰角の制御値および受信感度の制御値を取得する((ステップS101)。次に衛星受信制御部22は、各人工衛星12の方位と、仰角と、受信感度とを取得する(ステップS102)。そして、衛星受信制御部22は、領域内のすべての人工衛星12の数をカウントする(ステップS103)。その後、衛星受信制御部22は、分割された領域ごとに、閾値以上の受信感度の人工衛星12の数をカウントする(ステップS104)。
【0072】
ここで、衛星受信制御部22は、領域内の人工衛星の配置に偏心が生じているか否かを判定する(ステップS105)。偏心が生じていない場合、(ステップS105のNo)、ステップS101に戻り処理を繰り返す。偏心が生じている場合、(ステップS105のYes)、衛星受信制御部22は、全ての人工衛星12の受信感度を取得する(ステップS106)。
【0073】
次に衛星受信制御部22は、仰角ごとに、閾値以上の受信感度の衛星の数を取得する(ステップS107)。次に衛星受信制御部22は、閾値以上の受信感度の人工衛星12の仰角を取得する(ステップS108)。次に衛星受信制御部22は、取得した仰角から最低仰角を計算し(ステップS109)、この値を仰角制御値とする(ステップS110)。
【0074】
衛星受信制御部22は、分割されたそれぞれの領域内に2基以上の人工衛星12がある場合、受信状況(受信感度)の最も良い人工衛星12を1基選択する(ステップS111)。衛星受信制御部22は、このうち、受信感度のばらつきが閾値以上の有効な人工衛星12Eを選択する(ステップS112)。そして、衛星受信制御部22は、当該有効な人工衛星12Eのうち、位置情報の計算に使用する人工衛星12を選択する(ステップS113)。
【0075】
図18は、衛星受信制御における推定距離誤差を示す概念図である。図18に示されるように、ベクトルL0は計測速度に計測周期Tを乗じて得られた、鉄道車両の移動距離を示すベクトルである。一方、ベクトルL1は、単位時間当たりの鉄道車両11の実際の移動距離を示すベクトルである。ベクトルL1とベクトルL0との差の絶対値は、推定距離誤差と称される。切替判別部26は、ベクトルL0と、ベクトルL1と、推定距離誤差と、を算出する。
【0076】
図19は、衛星受信制御の処理の流れを示すフローチャート(その1)である。状態判別部24は、測位信号演算部21が、例えば1秒分の電波信号SXを取得したか否かを判定する(ステップS121)。1秒分の電波信号SXを取得していないと判定した場合(ステップS121のNо)、処理を繰り返す。1秒分の電波信号SXを取得したと判定した場合(ステップS121のYes)、現在の座標と0.1秒前の座標とから、ベクトル長さを算出する(ステップS122)。
【0077】
次に衛星受信制御部22は、衛星測位データ群DGから鉄道車両11の速度を取得する(ステップS123)。そして衛星受信制御部22は、鉄道車両11の速度と計測間隔(例えば0.1秒)から鉄道車両11の移動距離に相当するベクトルの長さを算出し(ステップS124)、両ベクトルの差を算出する(ステップS125)。当該ベクトルの差は、推定距離誤差に相当する。
【0078】
ここで、状態判別部24は、推定距離誤差が所定の閾値より大きいか否かを判定する(ステップS126)。すなわち、状態判別部24は、推定距離誤差を用いて、衛星受信制制御および自立計測制御の少なくとも何れを行うか否かを判別する。推定距離誤差が閾値よりも大きくない場合(ステップS126のNо)、ステップS121に戻り処理を繰り返す。差が閾値よりも大きい場合(ステップS126のYes)、衛星受信制御部22は、推定位置誤差を取得する(ステップS127)。
【0079】
ここで、状態判別部24は、推定位置誤差が所定の閾値より大きいか否かを判定する(ステップS128)。すなわち、状態判別部24は、3軸方向の車両の位置の計測精度に関する推定位置誤差を算出し、推定位置誤差に基づいて衛星受信制制御および自立計測制御の少なくとも何れを行うか否かを判別する。閾値よりも大きくない場合(ステップS128のNo)、ステップS121に戻り処理を繰り返す。閾値よりも大きい場合(ステップS128のYes)、衛星受信制御部22は、推定位置誤差の平均値を取得する(ステップS129)。
【0080】
そして、衛星受信制御部22は、推定位置誤差の平均値を用いて、推定位置誤差の変化率を算出する(ステップS130)。続いて状態判別部24は、推定位置誤差の平均値が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS131)。すなわち、状態判別部24は、推定位置誤差の変化量を算出し、当該変化量に基づいて、衛星受信制制御および自立計測制御の少なくとも何れを行うか否かを判別する。閾値よりも大きくない場合(ステップS131のNo)、ステップS121に戻り処理を繰り返す。閾値よりも大きい場合(ステップS131のYes)、図10のEに進み、切替判別部24は、処理を継続する。
【0081】
図20は、衛星受信制御の処理の流れを示すフローチャート(その2)である。状態判別部24は、測位信号演算部21が、例えば電波信号SXを0.02秒分取得したか否かを判定する(ステップS141)。0.02秒分取得していないと判定した場合(ステップS141のNo)、処理を繰り返す。0.02秒分取得したと判定した場合(ステップS141のYes)、衛星受信制御部22は、現在の座標と0.02秒前の座標とからベクトル内積を算出する(ステップS142)。
【0082】
次に衛星受信制御部22は、鉄道車両11の進行方向DRの方位角を取得する(ステップS143)。そして、衛星受信制御部22は、現在と50Hz前の方位角から、鉄道車両11が現在進行している線路の種別(直線、曲線など)を算出し(ステップS144)、その結果をもとに鉄道車両11の速度を算出する(ステップS145)。続いて衛星受信制御部22は、鉄道車両11の速度と線路の種別とから、記憶装置27に記憶された所定の閾値を選択する(ステップS146)。そして、鉄道車両11の進行方向DRの方位角と当該ベクトル内積の差と、所定の閾値を比較する(ステップS147)。
【0083】
ここで、状態判別部24は、所定の閾値に基づき、両者の差が著しく大きいか否かを判定する(ステップS148)。両者の差が著しく大きくないと判定した場合(ステップS148のNo)、ステップS141に戻り、処理を繰り返す。両者の差が著しく大きいと判定した場合(ステップSのYes)、衛星受信制御部22は、その旨をカウントする(ステップS149)。
【0084】
そして、状態判別部24は、例えば5回連続で誤差が著しく大きいと判定したか否かを判定する(ステップS150)。5回連続で両者の差が著しく大きいと判定しない場合(ステップS150)、ステップS141に戻り処理を繰り返す。5回連続で両者の差が著しく大きいと判定した場合(ステップS150のYes)、図10のEに進み、切替判別部24は、処理を継続する。
【0085】
図21は、地図連動制御の実行状況を示す説明図である。図21において、実際の線路R1と、地図上の線路R2とが設けられている。そして、実際の線路R1の上に示された二つの〇印の間の空間、および地図上の線路R2の上に示された2つの△印の間の空間は、例えばトンネルや駅舎などの衛星受信制御が不可能である領域を示す。2つの△印は、地図DB29に記憶されている。地図上の線路R2において、2つの△印のそれぞれの前後100mに□印が位置している。2つの□印も同様に、地図DB29に記憶されている。すなわち、地図DB29は、車両の通過する通過領域と特定位置を含む地図情報を記憶する。
【0086】
例えば、衛星受信制御部22は、鉄道車両11が実際の線路R1における〇印の前後100m地点を走行していると計測した場合、地図上においては対応する□印の位置を鉄道車両が走行していると判断する。
【0087】
ここで、切替判別部26は、鉄道車両11の走行状態(走行速度、加速度等)、地図DB29における△印や□印の位置、通過領域(衛星受信制御が可能な領域か否か)等に基づいて、衛星受信制御および自立計測制御の少なくとも何れを行うかを判別する。そして、切替判別部26の判別結果に基づいて、衛星受信制御部22は衛星受信制御を、自立計測演算部23は自立計測制御を、それぞれあるいは同時に行う地図連動制御が行われる。
【0088】
以上説明された実施形態の位置測位装置10は、衛星受信制御部22と、自立計測演算部23と、切替判別部26と、を備える。衛星受信制御部22は、人工衛星12から送信され、鉄道車両11の位置を計測するための情報の受信に関する衛星受信制御を行う。自立計測演算部23は、センサから送信され、鉄道車両11の位置を計測するための情報の受信に関する自立計測制御を行う。切替判別部26は、上記情報の受信状況に応じて、衛星受信制御および自立計測制御の少なくとも何れを行うかを判別する。これにより、例えば位置測位装置10は、鉄道車両11の走行中に衛星受信制御から自立計測制御に切り替えること、あるいは衛星受信制御と自立計測制御とを同時に実行することが可能となり、マルチパス等の問題の解消を図ることができる。また、トンネル、橋上駅舎等の高架下や地下区間等において、鉄道車両11の走行位置の計測精度を向上させることができる。
【0089】
衛星受信制御部22は、鉄道車両11に対する人工衛星12の仰角の範囲を設定する。衛星受信制御部22は、設定した仰角の範囲において、鉄道車両11に対する人工衛星12のなす方位角の範囲を設定する。そして、衛星受信制御部22は、仰角の範囲と、方位角の範囲とに含まれる領域を、複数の領域に区画し、複数の領域に配置された、1または複数の人工衛星12から、衛星受信制御に用いる人工衛星12を選択する。これにより、衛星受信制御部22は、仰角、方位角、電波信号SXの受信状況に応じて、任意の人工衛星12を選択できるようになり、鉄道車両11の位置の計測精度をより一層向上させることができる。また、同じ領域内において複数の人工衛星12が存在する場合、当該領域内に1つあるいは2つ存在するように人工衛星12を選択することにより、当該領域内における人工衛星12の配置の偏りを低減するとともに、人工衛星12の配置を均等にすることができる。
【0090】
衛星受信制御部22は、鉄道車両11に対する人工衛星12の仰角の範囲を設定し、設定した仰角の範囲において、鉄道車両11に対する人工衛星12のなす方位角の範囲を設定し、仰角の範囲と、方位角の範囲とに含まれる領域を、複数の領域に区画し、複数の領域を所定の優先順位に基づいて選択する。これにより、衛星受信制御部22は、電波信号SXの受信状況が良く、優先順位の高い人工衛星12を選択することができ、鉄道車両11の位置の計測精度をより一層向上させることができる。
【0091】
状態判別部24は、ベクトルL0と、ベクトルL1と、推定距離誤差と、を算出する。ベクトルL0は鉄道車両11の速度に基づいた鉄道車両11の所定時間内における移動量に対応する。ベクトルL1は、鉄道車両11の所定時間内における移動量に対応する。推定距離誤差は、ベクトルL0とベクトルL1とに基づく。状態判別部24は、推定距離誤差を用いて、衛星受信制制御および自立計測制御の少なくとも何れを行うか否かを判別する。また、状態判別部24は、3軸方向の鉄道車両11の位置の計測精度に関する推定位置誤差を算出し、推定位置誤差に基づいて衛星受信制制御および自立計測制御の少なくとも何れを行うかを判別する。さらに、状態判別部24は、推定位置誤差の変化量を算出し、当該変化量に基づいて、衛星受信制制御および自立計測制御の少なくとも何れを行うかを判別する。これにより、状態判別部24は、衛星受信制御と自立計測制御とを切り替えるための判断指標をより多く得ることができ、例えば切替判別部26は、より緻密に衛星受信制御と自立計測制御とを切り替えることができる。
【0092】
位置測位装置10は、鉄道車両11の通過する通過領域と特定位置を含む地図情報(地図上の線路R2やトンネルや高架下等、またそれらの入口と出口の地点、当該入口と出口の各々の前後の所定の地点等の情報)を記憶する地図DB29をさらに備える。切替判別部26は、鉄道車両11の状態と、通過領域と、特定位置とに基づいて、衛星受信制御および自立計測制御の少なくとも何れを行うかを判別する。これにより、例えば鉄道車両11がトンネルや高架下等の電波信号SXの受信状況が悪い領域へ侵入する前の所定の地点から、切替判別部26は、衛星受信制御から自立計測制御に切り替えるか否かの判別を開始することで、切り替えるタイミングの最適化を図ることができる。また、地図DB29を参照することにより、切替判別部26は、当該切り替えに伴うタイムラグを無くすことができ、衛星受信制御部22および自立計測演算部23の鉄道車両11の計測精度を向上させることができる。
【0093】
状態判別部24は、鉄道車両11が停止した停止状態、または鉄道車両11が走行している走行状態の何れであるかを判別する。これにより、状態判別部24は、鉄道車両11の停止状態において、鉄道車両11の位置の計測結果が揺動することを抑制する。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0095】
10 位置測位装置、13 受信アンテナ装置、14 外部機器、15 受信演算処理装置、21 測位信号演算部、22 衛星受信制御部、23 自立計測演算部、24 状態判別部、25 車両位置補正部、26 切替判別部、27 記憶装置、28 通信接続装置、29 地図DB、CSU 3軸センサ部、DG 衛星測位データ群、DS 自立測位データ群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21