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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】補助電気錠装置及び電気錠システム
(51)【国際特許分類】
   E05B 47/00 20060101AFI20241209BHJP
   E05B 63/14 20060101ALI20241209BHJP
   G08B 13/06 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
E05B47/00 K
E05B63/14 A
G08B13/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021063332
(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公開番号】P2022158431
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(72)【発明者】
【氏名】臼井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】峯 永治
(72)【発明者】
【氏名】池田 和代
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-062769(JP,A)
【文献】特開2004-011344(JP,A)
【文献】特開2002-180712(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110084942(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 47/00,63/14
G08B 13/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主錠により施錠可能な扉に取り付けられ、
扉の振動を検知するセンサと、
前記扉への不正開扉操作の検出により施錠指示信号を出力する錠制御部と、
解錠状態に保持され、前記錠制御部からの施錠指示信号が出力された際に電動アクチュエータにより施錠状態に移行する施錠部と、
前記扉から離隔した位置における振動を検知する第2センサを有し、
前記錠制御部は、前記センサと前記第2センサとの出力の差分により不正開扉操作の有無を判定する補助電気錠装置。
【請求項2】
前記錠制御部と施錠部とが同一のケースに収容される請求項1記載の補助電気錠装置。
【請求項3】
前記施錠部が主錠の解錠動作にのみ同期して解錠状態に移行し、施錠動作に対しては施錠状態に移行することなく解錠状態を維持する請求項1または2記載の補助電気錠装置。
【請求項4】
前記施錠部は、前記主錠を手動で施解錠操作するサムターンへの解錠操作に伴って解錠状態に移行する請求項3記載の補助電気錠装置。
【請求項5】
前記施錠部が、主錠の施解錠を電気的に制御する錠制御装置に対する該主錠への施錠操作と異なった施錠操作により施錠可能な請求項1から4のいずれかに記載の補助電気錠装置。
【請求項6】
扉に取り付けられ、利用者により施解錠操作される主錠と、
前記主錠とは別途に前記扉に取り付けられ、電動アクチュエータにより施解錠駆動される施錠部と、
前記扉の振動を検知するセンサと、
前記扉から離隔した位置における振動を検知する第2センサと、
前記センサからの出力と前記第2センサからの出力の差分を予め設定された閾値と比較して扉への不正開扉操作の有無を判定する判定部を備えた錠制御部とを有し、
前記施錠部は前記主錠の施錠操作に関わらずに解除状態に保持されるとともに、
前記錠制御部は、前記判定部が扉への不正開扉操作を検出した際に前記施錠部を施錠状態に移行させる電気錠システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助電気錠装置及び電気錠システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
防犯性能を向上させるために、主錠に加えて設置される補助錠としては特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
この従来例において、補助錠は、主錠への施解錠操作によって主錠とともに施解錠動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-020606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来例の補助錠は、主錠への制御動作に同期して施解錠動作するために、補助錠の数を増やすほど防犯性能の向上に資すると考えられるが、一斉に作動する多数の錠により通常の運用することはオーバースペックであり、これに伴って制御、機械的構造が複雑になるという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、効率よく防犯性能を高めることのできる補助電気錠装置の提供を目的とする。
【0007】
また、本発明の他の目的は、効率よく防犯性能を高めることのできる電気錠システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば上記目的は、
主錠1により施錠可能な扉2に取り付けられ、
扉2の振動を検知するセンサ3と、
前記扉2への不正開扉操作の検出により施錠指示信号を出力する錠制御部4と、
解錠状態に保持され、前記錠制御部4からの施錠指示信号が出力された際に電動アクチュエータ5により施錠状態に移行する施錠部6と、
前記扉2から離隔した位置における振動を検知する第2センサ7を有し、
前記錠制御部4は、前記センサ3と前記第2センサ7との出力の差分により不正開扉操作の有無を判定する補助電気錠装置を提供することにより達成される。
【0009】
補助電気錠装置は所定の錠制御装置9により施解錠制御される主錠1、あるいはこれに追加された副錠10により構成される電気錠システムに追加されて使用され、扉2の振動を検知するセンサ3と、錠制御部4と、施錠部6とを有する。
【0010】
センサ3には振動センサ、加速度センサ等を使用することが可能であり、センサ3からの出力は錠制御部4に出力され、錠制御部4において風等による振動なのか、あるいは扉2を不正に開こうとする不正開扉操作による振動なのかを判定し、不正開扉操作と判定した場合には、施錠部6の電動アクチュエータ5に施錠信号を出力し、施錠部6を施錠状態に移行させる。
【0011】
不正開扉操作の判定は、扉2へのバールを使用した開扉操作、あるいはシリンダ錠等への衝撃負荷による破壊行為が実際に行われた際のセンサ3の出力を実験的に求めた閾値等との比較によることが可能である。
【0012】
したがって、本発明の補助電気錠装置は、扉2への不正開扉操作が行われたときに施錠状態に移行するために、不正開扉操作に対する耐性を高めることができる。
【0013】
また、通常の運用においては、解錠状態に保持されており、不正開扉操作が検出された場合にのみ施錠状態に移行するために、通常の運用において解錠操作を行う必要がないために、構造が簡単になる上に、例えば、停電、火災等が発生した場合でも室内への閉じ込め、あるいは部屋からの締め出しを防止できる。
【0014】
さらに、電気錠は停電等に備えて機械的な解錠手段を用意しておくことが望ましく、例えば、主錠の補強手段として副錠を設定する場合には、機械的操作による操作力伝達手段が過度に複雑にならないように、互いに近接位置に配置される。
【0015】
しかし、通常の運用において解錠状態に保持され、主錠1への操作により作動する必要のない本発明の補助電気錠装置にあっては、主錠1から離れた位置、例えば、扉2の上縁部に配置することができる。このため、バール等により錠を攻撃しようとする場合、離隔した部位をさらに攻撃する必要が生じるために、不正開扉操作に対する耐性を高めることができる。
【0016】
補助電気錠装置の錠制御部4は、例えば主錠1の施解錠を電気的に制御する錠制御装置9の制御系の中に組み込むことが可能であるが、錠制御部4と施錠部6とを同一のケースに収容し、錠制御部4と施錠部6とを同一の制御系によりて制御するように構成すると、補助電気錠装置を現在使用している電気錠システムに大きな変更を加えることなく追加することができる。
【0017】
不正開扉操作の有無は扉2に取り付けられたセンサ3の出力と扉2から離隔した位置における振動を検知する第2センサ7との出力の差分により判定するので、地震等、扉2を含む構造全体の振動の影響を除去し、扉2への負荷のみを抽出することができるために、不正開扉操作の判定精度を高めることができる。
【0018】
また、不正開扉操作により施錠状態に移行した補助電気錠装置の施錠部6への解錠操作は主錠1への施解錠操作とは別系統の操作によることが可能であるが、施解錠状態の如何に関わらず、主錠1への解錠動作に同期して解錠動作をするように構成すると、不正開扉操作により施錠状態になった施錠部6の初期状態、すなわち、解錠状態への復帰操作を通常の主錠1への解錠操作をするだけで行うことができるために、使い勝手が向上する。
【0019】
さらに、主錠1の施錠操作に同期して補助電気錠装置の施錠部6が施錠状態に移行すると、その後の停電等に備えて主錠1への解錠操作に同期するための機械的操作力伝達手段を設定したり、あるいは別途の機械的解錠手段を設定する必要が発生する。
【0020】
主錠1との同期作動が一方向、すなわち、主錠1の解錠動作にのみ追随し、施錠動作には追随することなく解錠状態を維持するように構成すると、上述したように、停電等に備えた非電気的手段による機械的伝達手段を設ける必要がなくなるために、構造を簡単にすることができる。
【0021】
この場合、施錠部6が主錠1のサムターン8への解錠操作に伴って解錠状態に移行するように構成すると、サムターン8の動作監視のみで施錠部6の解錠操作が可能になるために、構造が簡単になる。
【0022】
また、施錠部6を、主錠1を制御する錠制御装置9への該主錠1への施錠操作と異なった施錠操作により施錠可能に構成すると、長期不在等の場合に補助電気錠装置の施錠部6を通常の電気錠として使用することができ、不在時の防犯性能をより高めることができる。その上、施錠操作を行うには、例えば、錠制御装置9の施錠ボタン9aへの長押し等、通常の運用において使用する操作以外の操作が必要であるために、不用意に施錠状態に移行することによる不具合を完全に防止することができる。
【0023】
さらに、上記目的は、
扉2に取り付けられ、利用者により施解錠操作される主錠1と、
前記主錠1とは別途に前記扉2に取り付けられ、電動アクチュエータ5により施解錠駆動される施錠部6と、
前記扉2の振動を検知するセンサ3と、
前記扉2から離隔した位置における振動を検知する第2センサ7と、
前記センサ3からの出力と前記第2センサ7からの出力の差分を予め設定された閾値と比較して扉2への不正開扉操作の有無を判定する判定部4aを備えた錠制御部4とを有し、
前記施錠部6は前記主錠1の施錠操作に関わらずに解除状態に保持されるとともに、
前記錠制御部4は、前記判定部4aが扉2への不正開扉操作を検出した際に前記施錠部6を施錠状態に移行させる電気錠システムを提供することにより達成される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、扉への不正開扉操作が行われた際に、施錠状態へと移行するために、不正開扉操作に対する耐性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の電気錠システムを示す全体構成図である。
図2図1の機能ブロック図である。
図3】錠制御装置の動作のフローチャートである。
図4】錠制御装置の動作のフローチャートである。
図5】本発明の他の実施の形態を示す機能ブロック図である。
図6】本発明のさらに他の実施の形態を示すブロック図である。
図7図6の変形例を示すブロック図である。
図8図7のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に本発明の補助電気錠装置20を使用した電気錠システムを示す。
【0027】
この電気錠システムは、室内の適宜箇所に設置される錠制御装置9と、室外に設置されるリーダ11と、扉2に固定される主錠1、および副錠10と、補助電気錠装置20の施錠部6とを有し、主錠1、副錠10、および補助電気錠装置20の施錠部6には各々デッドボルト12が設けられており、施錠状態においてデッドボルト12が突出して開扉操作を規制することができる。
【0028】
主錠1および副錠10は周知の電気錠装置であり、錠制御装置9に配置される施錠ボタン9a、または解錠ボタン9bを操作することによりデッドボルト12を進退動作させて開扉操作の許容、規制を行うことができる。
【0029】
さらに、本例において主錠1、副錠10の施解錠操作はリモコンキー13によるアクティブ操作とパッシブ操作、あるいはカードキー14を使用したパッシブ操作により行うことができる。
【0030】
一方、後述する錠制御装置9の錠制御部4とともに補助電気錠装置20を構成する施錠部6は、通常、解錠状態、すなわち、デッドボルト12がケース内に縮退した状態に保持されており、扉2に対するバール等による破壊操作に伴う衝撃、振動がセンサ3により検出された際に施錠状態、すなわち、デッドボルト12がケースから突出した状態に移行す
る。
【0031】
この施錠部6は、バール等により扉2の不正開扉操作を行う際に、主錠1と副錠10の近傍への攻撃により影響を受けにくいように、主錠1、副錠10から離れた位置への取り付けが望ましく、このような位置に施錠部6が取り付けられていると、バール等により主錠1、副錠10が破壊されても、改めて施錠部6近傍を攻撃する必要があるために、防犯性能がより向上する。
【0032】
施錠部6の取り付け位置は、主錠1、副錠10近傍に対する攻撃により直接影響を受けない領域であれば適宜決定することができるが、例えば、扉2の上下端部、あるいはさらに望ましくは、扉2の天井側辺縁部にデッドボルト12が天井に向けて突出する姿勢で取り付けられる。
【0033】
上記センサ3は扉2に対するバール等による攻撃を検出可能なように扉2に固定することも可能であるが、扉2への固定操作の面倒を避けるために、本実施の形態においては、施錠部6のケースに固定される。
【0034】
さらに、扉2への不正開扉操作の検出精度を高めるために、第2センサ7が配置される。第2センサ7は家屋等の扉2の設置構造部全体の振動を検知するもので、本例においては、錠制御装置9に取り付けられる。
【0035】
図2に示すように、主錠1、および副錠10は周知の電気錠であり、制御部1aの制御により動作する施解錠状態検知部1bと、電動アクチュエータ1cと、この電動アクチュエータ1cにより施解錠位置間を移動するデッドボルト12と、後述する錠制御装置9の通信部9cと通信するコントローラ通信部1dとを有する。
【0036】
コントローラ通信部1dが錠制御装置9から施錠操作信号、あるいは解錠操作信号を受信すると、制御部1aは電動アクチュエータ1cを駆動してデッドボルト12を突出、あるいは縮退位置に移動させて施解錠状態に移行し、移行後の施解錠状態は施解錠状態検知部1bで検知される。
【0037】
本例において施錠部6は、上述した主錠1と同様の電気錠であり、制御部6aの制御により動作する電動アクチュエータ5と、この電動アクチュエータ5により施解錠位置間を移動するデッドボルト12と、施解錠状態を検知する施解錠状態検知部6bと、錠制御装置9の通信部9cと通信するコントローラ通信部6cとを有し、主錠1と同様に、施解錠動作は錠制御装置9に制御される。
【0038】
また、本例において、施錠部6のケースには扉2の振動を検知するためのセンサ3が固定され、センサ3からの出力はコントローラ通信部6cから錠制御装置9に送信される。
【0039】
上記リーダ11は、室外からの主錠1、副錠10へのアクセス手段を提供し、制御部11aにより制御されて動作するコントローラ通信部11b、カード通信部11c、リモコン通信部11dを有し、ケースにはリクエストボタン11eが配置される。本例によるリーダ11は認証用媒体としてのリモコンキー13とカードキー14によるアクセスを許容するが、指紋、静脈等の生体情報、あるいは暗証番号等を認証対象とすることも可能であり、この場合、生体認証情報取得部、あるいは暗証番号入力部等の認証情報取得部が設けられる。
【0040】
リモコンキー13は、ケースに配置された施錠ボタン13a、あるいは解錠ボタン13bを操作することにより施錠操作信号、または解錠操作信号とともに、リモコンキー13
毎に設定された認証コードをリーダ11のリモコン通信部11dに無線送信する。また、リモコンキー13は上述した施解錠ボタン13a、13bへの操作によるアクティブ動作モードに加え、利用者がリーダ11のリクエストボタン11eを操作して行われるパッシブ動作モードでの動作が可能であり、パッシブ動作モードにおいて、リモコンキー13は、リクエストボタン11eへの操作によりリーダ11のリモコン通信部11dから出力されるリクエスト信号に応答して自動的に認証コードをリーダ11に無線送信する。
【0041】
カードキー14は、リーダ11のカード読取部に翳した状態でカードキー14固有の認証コードをリーダ11のカード通信部11cに無線送信し、リーダ11で取得されたリモコンキー13等からの情報は錠制御装置9に出力される。
【0042】
また、リーダ11はリモコンキー13が所定時間以上押し続けられた長押し状態、またはカードキー14をカード読取部に所定時間以上翳した長翳し状態、さらに、リクエストボタン11eの長押し状態を識別可能であり、長押し等を検出すると、その旨も錠制御装置9に出力される。
【0043】
上記錠制御装置9は、制御部9dの制御により動作する認証部9e、施解錠指示部9f、通信部9c、施解錠ボタン9a、9b、および施錠部6とともに補助電気錠装置20を構成する錠制御部4、第2センサ7を有し、錠制御部4は判定部4aと施錠信号出力部4bとモード設定部15とを備える。
【0044】
認証部9eは、上記リーダ11を経由して取得した認証コードを認証することによりリモコンキー13、あるいはカードキー14所持者の施解錠権限を確認するもので、通信部9cがリーダ11から認証コードを受信すると、認証部9eは認証コードと予め登録された認証可能信号とを比較し、一致する場合には認証成立信号を出力する。
【0045】
認証部9eが認証成立信号を出力すると、制御部9dは指定された施解錠種に従った施解錠信号を施解錠指示部9fに出力し、通信部9cから主錠1、副錠10、さらには例外的に施錠部6に施解錠操作信号を出力する。
【0046】
すなわち、認証コードがアクティブ動作するリモコンキー13から出力された場合には認証コードとともに出力された施解錠種別信号に基づいて施錠、あるいは解錠操作信号が、パッシブ動作するリモコンキー13、またはカードキー14から出力された場合には、主錠1、副錠10の施解錠状態検知部1bにより検知された施解錠状態を反転する施解錠操作信号が出力される。
【0047】
上述したように錠制御装置9の振動を検出する第2センサ7の出力は、制御部9dが施錠部6に固定したセンサ3からの出力を検知した際に取得されて判定部4aに出力され、判定部4aは、センサ3と、第2センサ7の出力から扉2で観察された振動が扉2への不正開扉操作のための攻撃によるものか否かを判定する。
【0048】
判定部4aにおける判定基準は、扉2に対するバール等による開扉操作時の振動等を実験的に求め、その境界値を閾値として設定することができ、センサ3からの出力される強度の大小、傾き等を閾値とすることができる。
【0049】
第2センサ7は、センサ3からの出力から扉2以外の振動要素、すなわち、地震等による振動要素を相殺するために取得され、判定部4aは、センサ3からの出力と第2センサ7からの出力の差分を演算し、演算値が上記閾値を上回るときに不正操作検出信号を出力する。
【0050】
上記判定部4aが不正操作検出信号を出力すると、施錠信号出力部4bは施解錠指示部9fに施錠部6を通知対象とする施錠操作信号をセットして通信部9cから出力し、コントローラ通信部6cにより施錠操作信号を受けた施錠部6が施錠状態に移行する。
【0051】
モード設定部15には、補助電気錠装置20の施錠部6を主錠1、副錠10に加えて第3の電気錠として利用するか否かの選択がフラグ情報として保存される。モード設定部15における設定モードは、通常の運用に対応する通常運用モードと、長期不在等に利用可能なセキュリティモードの2種類があり、通常運用モードにおいては、施解錠指示部9fは主錠1および副錠10を制御対象とし、セキュリティモードにおいては、制御対象を主錠1と副錠10に加え、施錠部6まで広げる。
【0052】
この結果、通常運用モードでは主錠1と副錠10のデッドボルト12が扉2の開放操作に対して抵抗するのに対し、セキュリティモードでは主錠1と副錠10に加えて施錠部6のデッドボルト12も突出状態となるために、施錠状態での扉2の開放操作に対する抵抗がより高まる。
【0053】
また、通常運用モードにおいても、判定部4aが扉2に対する不正開扉操作を判定すると、施錠部6のデッドボルト12が突出状態となり、不正開扉操作に対する抵抗が高まる。
【0054】
さらに、本例において、不正開扉操作により施錠状態に移行した施錠部6を初期状態、すなわち解錠状態に復帰させるために、施解錠指示部9fは通常運用モードにおいても、解錠指示信号を出力するに際しては、施錠部6の施解錠状態の如何を問わず全錠(主錠1、副錠10、および施錠部6の全て)に解錠指示信号を出力する。
【0055】
通常運用モードにおける施錠部6の制御は解錠操作のみで、通常運用モード時における施解錠指示部9fからの施錠操作指示は、施錠部6を制御対象から外し、主錠1と副錠10に対してのみ出力される。
【0056】
施錠部6に対する錠制御装置9を介した施錠操作は、上述したセキュリティモードに加え、利用者によるリーダ11のリクエストボタン11e、またはリモコンキーの施錠ボタン13aの長押し、あるいはカードキー14の長翳しによっても可能であり、施解錠指示部9fはリーダ11からの長押し、あるいは長翳し入力情報を取得すると、セキュリティモードと同じ動作が実行され、施錠操作に対して施錠部6も施錠状態に移行する。
【0057】
これら長押し、長翳しによる施錠部6への施錠操作は、当該操作が行われた場合にのみ有効である点において、設定がセキュリティモードである限り常時有効な上記モード設定部15による操作と異なる。
【0058】
図3、4に錠制御装置9の制御フローを示す。図3に示すように、制御が開始されると、補助電気錠装置20の施錠部6に固定されたセンサ3の出力の有無を判定し(ステップS1)、出力があった場合には第2センサ7の出力の有無を判定する(ステップS2)。
【0059】
ステップS2において第2センサ7の出力が検出された場合、判定部4aはセンサ3と第2センサ7の出力を差分を演算した後(ステップS3)、演算値に基づいて不正開扉操作の有無を判定する(ステップS4)。ステップS4で不正開扉操作と判定した場合には、錠制御部4の施錠信号出力部4bが施錠操作信号を出力し、施解錠指示部9fは施錠部6に施錠信号を出力して(ステップS5)制御を終了する。
【0060】
ステップS5の実行により、すでに施錠状態である主錠1、副錠10に加えて施錠部6
も施錠状態に移行し、結果、全錠が施錠状態となる。
【0061】
また、ステップS2で第2センサ7の出力を検出されなかった場合、すなわち、センサ3からの出力のみが検出された場合には、センサ3からの出力をもとにステップS4を実行し、不正開扉操作の有無を判定する。
【0062】
これに対し、ステップS1でセンサ3の出力がなかった場合、あるいはステップS4で不正開扉操作が検出されなかった場合には、次に施錠ボタン9aが操作されているかどうかを判定し(ステップS11)、利用者による施解錠意思を確認する。
【0063】
ステップS11でボタンの操作が検出された場合、施錠部6への施錠意思の有無を確認するために、ボタン操作が長押しであるか否かが判定され(ステップS12)、長押しの場合、ステップS5が実行され施錠部6が施錠状態に移行し、さらに、主錠1、副錠10も施解錠指示部9fからの施錠操作信号により施錠状態に移行し、結果、全錠が施錠状態となる。
【0064】
また、ステップS12において長押しが検出されなかった場合には、モード設定部15がセキュリティモードが否かが判定され(ステップS13)、セキュリティモードの場合にはステップS5が実行されて全錠が施錠状態なる。
【0065】
また、ステップS13でモード設定部15にセキュリティモードが設定されていない場合、すなわち、通常運用モードである場合には主錠1、副錠10のみに施錠信号を出力し(ステップS14)、制御を終了する。この結果、主錠1、副錠10は施錠状態となり、施錠部6は解錠状態に保持される。
【0066】
さらに、ステップS11で施錠ボタン9aが操作されなかった場合、図4に示すように、リモコンキー13からの施錠信号の受信を検出し(ステップS20)、検出された場合にはリモコンキー13の長押しがなされたか否かを判定し(ステップS21)、長押しがされなかった場合にはステップS13を実行してモードチェックが、長押しがされた場合にはステップS5が実行される。
【0067】
また、ステップS20でリモコンキー13からの施錠信号が検出されなかった場合、すなわち、リモコンキー13によるアクティブ操作が行われなかった場合、次に、リモコンキー13によるパッシブ操作の有無が判定される。リモコンキー13によるパッシブ動作の有無を検出するために、まず、リーダ11からのリクエストボタン11eの操作の有無を検出する(ステップS30)。
【0068】
ステップS30でリクエストボタン11eがON状態の場合、主錠1、副錠10、および施錠部6の施解錠状態検知部1b、6bにより施解錠状態をチェックし、全錠が解錠状態で(ステップS31)、かつリクエストボタン11eが長押しされていると(ステップS32)、長押し操作による施錠部6への施錠意思があるものとして、ステップS5が実行され、全錠が施錠状態に移行する。
【0069】
また、ステップS31で全錠が解錠状態でなかった場合、ステップS51が実行されて全錠に解錠操作信号が出力されて全錠が解錠状態となり、制御が終了し、ステップS32で長押しがされなかった場合には、ステップS13を実行してモードチェックが行われる。
【0070】
さらに、ステップS30においてリクエストボタン11eへの操作が検出されなかった場合、次にリーダ11にカードキー14が翳されているかを判定して(ステップS40)
、カードキー14によるアクセスの有無を判定する。カードキー14がリーダ11に翳されており、全錠が解除状態である場合には(ステップS41)、カードキー14が長翳しされているか否かが判定され(ステップS42)、長翳しがされていなかった場合には、長翳し操作による施錠部6への施錠意思がないものとしてステップS13のモードチェックが実行され、長翳しがあった場合には、ステップS5が実行され、全錠が施錠状態に移行する。
【0071】
また、ステップS41で全錠が解錠状態でなかった場合、ステップS51が実行されて全錠に解錠操作信号が出力され、全錠が解錠状態となる。
【0072】
さらに、ステップS40でリーダ11へのカードキー14の翳しが検出されなかった場合、錠制御装置9の解錠ボタン13bへのON操作がなかったか否かが検出され(ステップS50)、検出された場合には、ステップS51が実行されて全錠が解錠状態となり、検出されなかった場合には、リモコンキー13のアクティブ操作による解錠操作の有無を検出する(ステップS60)。
【0073】
ステップS60で解錠操作が検出されなかった場合には、制御を終了し、検出された場合、ステップS51が実行される。
【0074】
図5に本発明の他の実施の形態を示す。本例は、補助電気錠装置20の機能を同一の筐体内に収納したもので、錠制御装置9、リーダ11、主錠1、副錠10から構成される一般的な電気錠システムに大きな変更を加えることなく本発明の補助電気錠装置20を追加することができるようにしたものである。
【0075】
なお、図5以下において、特に断りのない限り、図2に示した実施の形態と実質的に同一の構成は図中に同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
本例において、錠制御装置9には上述した実施の形態に使用される第2センサ7と、通信部9cとからなる第2センサ装置16が固定され、第2センサ7が振動を検知すると通信部16aから補助電気錠装置20の通信部20aに出力される。
【0077】
補助電気錠装置20は、制御部20bに制御されて動作する錠制御部4と、施錠部6と通信部20aとセンサ3とを有しており、センサ3からの出力、あるいはセンサ3と第2センサ7の出力がある場合にはセンサ3と第2センサ7の出力の差分が判定部4aにおいて判定され、不正開扉操作と判定されると、錠制御部4の施解錠信号出力部4cは施錠操作信号を出力して電動アクチュエータ5を駆動し、デッドボルト12を突出位置(施錠位置)に移動させる。
【0078】
また、錠制御装置9から解錠操作信号が出力されて補助電気錠装置20の通信部20aに通知されると、制御部20bは施解錠信号出力部4cに解錠操作信号をセットしてデッドボルト12を解錠位置にドライブする。
【0079】
これに対し、錠制御装置9から施錠操作信号が出力された場合、制御部20bはモード設定部15を検索し、セキュリティモードである場合には施解錠信号出力部4cに施錠操作信号をセットして施錠部6を施錠状態に移行させ、通常運用モードの場合には施解錠信号出力部4cへの出力はなされず、現状が維持される。
【0080】
なお、以上において、錠制御装置9の出力を補助電気錠装置に接続する場合を示したが、図6に示すように、モード設定を行うことなく、常に通常運用モードのみで運用するように構成すると、設置済みの電気錠システムに何らの変更も加えることなく補助電気錠装
置を追加することができる。
【0081】
図7に本発明のさらに他の実施の形態を示す。本例において上述した第2センサ装置16の第2センサ7からの出力は無線通信部16bを介して補助電気錠装置20の無線通信部20cに送信される。
【0082】
また、主錠1には室内からデッドボルト12を手動で操作するために、サムターン8と、サムターン8の回転を検出するサムターン回転検出センサ17aと、無線通信部17bとから構成されるサムターン装置17が設置される。サムターン8は、施錠位置に対応する施錠回転位置と、解錠位置に対応する解錠回転位置との間を回転操作され、サムターン8を回転操作すると、サムターン回転検出センサ17aはサムターン8の回転位置を検出して無線通信部17bを経由して補助電気錠装置20の無線通信部20cに送信する。
【0083】
補助電気錠装置は制御部20bに制御されて動作する錠制御部4、施錠部6、センサ3、および無線通信部20cを備えており、無線通信部20cは、第2センサ7からの出力と、サムターン8への回転操作とを無線により受信する。
【0084】
錠制御部4は、判定部4a、施解錠信号出力部4c、およびモード設定部15を有し、施錠部6は施解錠信号出力部4cからの施解錠操作信号により施解錠動作する。
【0085】
上述した実施の形態と同様に、錠制御部4の判定部4aがセンサ3、第2センサ7の出力により扉2への不正開扉操作を検知すると、施解錠信号出力部4cは施錠指示信号を施錠部6に出力し、デッドボルト12を施錠位置に移動させる。
【0086】
また、サムターン8が施錠回転位置に回転操作された場合、すなわち、室内から施錠されてサムターン回転検出センサ17aがサムターンの施錠位置への回転操作を検出し、検出結果を無線通信部20cが受信すると、制御部20bは錠制御部4のモード設定部15の設定値を確認し、セキュリティモードである場合には施解錠信号出力部に施錠操作信号をセットし施錠部6を施錠状態に移行させる。
【0087】
これに対し、モード設定部15が通常運用モードの場合、施解錠信号出力部への出力はなされず、現状が維持される。
【0088】
さらに、サムターン装置17からサムターン8の解錠操作が通知された場合には、施解錠信号出力部4cに解錠操作信号を出力し、施錠部6を解錠状態とする。
【0089】
図8図7の実施の形態の補助電気錠装置の動作フローチャートを示す。
【0090】
まず、制御開始とともに、制御部20bはセンサ3からの出力を監視し、センサ3の出力を検出すると(ステップS1)、第2センサ7からの出力をチェックし(ステップS2)、第2センサ7からの出力が観察されると、センサ3と第2センサ7の出力の差分を演算した(ステップS3)後、不正開扉操作の存在を判定し(ステップS4)、第2センサ7からの出力が観察されなければ直接センサ3からの出力をもとに不正開扉操作の存在を判定する(ステップS4)。
【0091】
ステップS4による判定の結果、不正開扉操作と判定されると、施解錠信号出力部4cは施錠部6に施錠操作信号を出力して施錠部6を施錠状態とし(ステップS5)、制御を終了する。
【0092】
これに対し、ステップS4による判定の結果、不正開扉操作と判定されなかったり、ス
テップS1においてセンサ3からの出力がなかった場合には、サムターン装置17からの施解錠操作信号の受信の有無をチェックし、施錠操作信号である場合には(ステップS10)、モード設定部15での設定値をチェックして(ステップS11)、セキュリティーモードである場合にはステップS5を実行して施錠状態に移行し、通常運用モードである場合には、施錠状態に移行させることなく制御を終了する。
【0093】
また、ステップS10においてサムターン8の解錠操作が通知された場合には(ステップS20)、施錠部6に解錠操作信号を出力して制御を終了する(ステップS21)。
【0094】
以上のように、本実施の形態によれば、既設の主錠1に設置されるサムターン8を交換するだけで、既設の錠制御装置9等に何らの変更も加えることなく補助電気錠装置20を追加することができる。
【0095】
また、補助電気錠装置20は、バッテリ駆動にすれば、配線工事も必要がなくなり、設置工数をへらすことができる。
【符号の説明】
【0096】
1 主錠
2 扉
3 センサ
4 錠制御部
5 電動アクチュエータ
6 施錠部
7 第2センサ
8 サムターン
9 錠制御装置
20 補助電気錠装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8