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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】芳香提供システムおよび芳香提供方法
(51)【国際特許分類】
   G10L 15/10 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
G10L15/10 500Z
G10L15/10 200W
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021066290
(22)【出願日】2021-04-09
(65)【公開番号】P2022161453
(43)【公開日】2022-10-21
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】岩本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 学
(72)【発明者】
【氏名】坂本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】松田 脩平
(72)【発明者】
【氏名】村本 政忠
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-86625(JP,A)
【文献】特開2009-31065(JP,A)
【文献】特開2019-79085(JP,A)
【文献】特開2001-349739(JP,A)
【文献】特開2006-82634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0196576(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 15/00-15/34
G01C 21/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された芳香提供機構によって、車両に搭乗するユーザに香りを提供するシステムであって、
上記ユーザの発話音声を検出するユーザ状態検出部と、
上記ユーザ状態検出部により検出された発話音声に基づいて、上記ユーザが関心を示している対象物を特定する関心対象特定部と、
上記関心対象特定部により特定された上記対象物に関連する香りを上記芳香提供機構によって発生させる香り発生部とを備え
上記関心対象特定部は、
上記ユーザ状態検出部により検出された発話音声を音声認識し、音声認識の結果を自然言語解析してキーワードを抽出するキーワード抽出部と、
上記キーワード抽出部により抽出された事物に関するキーワードと、上記キーワード抽出部により抽出された感情に関連するキーワードとに基づいて、上記事物に関するユーザの関心を推定する関心推定部と、
上記関心推定部により上記ユーザが上記事物に対して関心を有していると推定された場合に、上記事物を、上記ユーザが関心を示している対象物として特定する対象物特定部とを備えた
ことを特徴とする芳香提供システム。
【請求項2】
車両に搭載された芳香提供機構によって、車両に搭乗するユーザに香りを提供するシステムであって、
上記ユーザの発話音声を検出するユーザ状態検出部と、
上記ユーザ状態検出部により検出された発話音声に基づいて、上記ユーザが関心を示している対象物を特定する関心対象特定部と、
上記関心対象特定部により特定された上記対象物に関連する香りを上記芳香提供機構によって発生させる香り発生部とを備え、
上記関心対象特定部は、
上記ユーザ状態検出部により検出された発話音声を音声認識し、音声認識の結果を自然言語解析して事物に関するキーワードを抽出するキーワード抽出部と、
上記ユーザ状態検出部により検出された発話音声の韻律的特徴を解析して上記事物に関するユーザの関心を推定する関心推定部と、
上記関心推定部により上記ユーザが上記事物に対して関心を有していると推定された場合に、上記事物を、上記ユーザが関心を示している対象物として特定する対象物特定部とを備えた
ことを特徴とする芳香提供システム。
【請求項3】
上記関心推定部は、上記ユーザ状態検出部により検出された発話音声の韻律的特徴を解析して上記事物に関するユーザの関心を更に推定し、
上記対象物特定部は、上記キーワード抽出部により抽出された感情に関連するキーワードに基づいて上記ユーザが上記事物に対して関心を有していると推定され、かつ、上記発話音声の韻律的特徴に基づいて上記ユーザが上記事物に対して関心を有していると推定された場合に、上記事物を、上記ユーザが関心を示している対象物として特定する
ことを特徴とする請求項に記載の芳香提供システム。
【請求項4】
車両に搭載された芳香提供機構によって、車両に搭乗するユーザに香りを提供するシステムであって、
上記ユーザの視線を検出するユーザ状態検出部と、
上記ユーザ状態検出部により検出された上記ユーザの視線に基づいて、上記車両の外部にある事物のうち上記ユーザが見ていると推定される事物を上記ユーザが関心を示している対象物として特定する関心対象特定部と、
上記関心対象特定部により特定された上記対象物に関連する香りを上記芳香提供機構によって発生させる香り発生部とを備え、
上記関心対象特定部は、
上記車両の現在位置および現在方位を検出する現在位置・方位検出部と、
複数の事物の存在位置を示す情報を含む地図データを取得する地図データ取得部と、
上記現在位置・方位検出部により検出された上記車両の現在位置および現在方位と、上記ユーザ状態検出部により検出された上記ユーザの視線とに基づいて、上記地図データ取得部により取得された地図データ上で上記ユーザの視線方向にあり、かつ上記車両の現在位置から所定距離以内にある事物を抽出し、当該抽出した事物を、上記ユーザが関心を示している対象物として特定する対象物特定部とを備えた
ことを特徴とする芳香提供システム。
【請求項5】
車両に搭載された芳香提供機構によって、車両に搭乗するユーザに香りを提供するシステムであって、
上記ユーザの視線を検出するユーザ状態検出部と、
上記ユーザ状態検出部により検出された上記ユーザの視線に基づいて、上記車両の外部にある事物のうち上記ユーザが見ていると推定される事物を上記ユーザが関心を示している対象物として特定する関心対象特定部と、
上記関心対象特定部により特定された上記対象物に関連する香りを上記芳香提供機構によって発生させる香り発生部とを備え、
上記関心対象特定部は、
上記車両の外部を撮影することによって得られる撮影画像を解析することにより、上記車両の外部にある事物を認識するとともに、当該事物の上記車両からの相対方向を認識する画像解析部と、
上記画像解析部により解析された上記事物の相対方向および上記ユーザ状態検出部により検出された上記ユーザの視線に基づいて、上記ユーザの視線方向にあり、かつ上記車両から最も近い位置に写っている事物を、上記ユーザが関心を示している対象物として特定する対象物特定部とを備えた
ことを特徴とする芳香提供システム。
【請求項6】
車両に搭載された芳香提供機構によって、車両に搭乗するユーザに香りを提供する方法であって、
コンピュータのユーザ状態検出部が、上記ユーザの発話音声を検出する第1のステップと、
上記コンピュータの関心対象特定部が、上記ユーザ状態検出部により検出された発話音声に基づいて、上記ユーザが関心を示している対象物を特定する第2のステップと、
上記コンピュータの香り発生部が、上記関心対象特定部により特定された上記対象物に関連する香りを上記芳香提供機構によって発生させる第3のステップとを有し、
上記第2のステップにおいて上記関心対象特定部は、
上記ユーザ状態検出部により検出された発話音声を音声認識し、音声認識の結果を自然言語解析してキーワードを抽出するキーワード抽出処理と、
上記キーワード抽出処理により抽出された事物に関するキーワードと、上記キーワード抽出処理により抽出された感情に関連するキーワードとに基づいて、上記事物に関するユーザの関心を推定する関心推定処理と、
上記関心推定処理により上記ユーザが上記事物に対して関心を有していると推定された場合に、上記事物を、上記ユーザが関心を示している対象物として特定する対象物特定処理とを実行する
ことを特徴とする芳香提供方法。
【請求項7】
車両に搭載された芳香提供機構によって、車両に搭乗するユーザに香りを提供する方法であって、
コンピュータのユーザ状態検出部が、上記ユーザの発話音声を検出する第1のステップと、
上記コンピュータの関心対象特定部が、上記ユーザ状態検出部により検出された発話音声に基づいて、上記ユーザが関心を示している対象物を特定する第2のステップと、
上記コンピュータの香り発生部が、上記関心対象特定部により特定された上記対象物に関連する香りを上記芳香提供機構によって発生させる第3のステップとを有し、
上記第2のステップにおいて上記関心対象特定部は、
上記ユーザ状態検出部により検出された発話音声を音声認識し、音声認識の結果を自然言語解析して事物に関するキーワードを抽出するキーワード抽出処理と、
上記ユーザ状態検出部により検出された発話音声の韻律的特徴を解析して上記事物に関するユーザの関心を推定する関心推定処理と、
上記関心推定処理により上記ユーザが上記事物に対して関心を有していると推定された場合に、上記事物を、上記ユーザが関心を示している対象物として特定する対象物特定処理とを実行する
ことを特徴とする芳香提供方法。
【請求項8】
車両に搭載された芳香提供機構によって、車両に搭乗するユーザに香りを提供する方法であって、
コンピュータのユーザ状態検出部が、上記ユーザの視線を検出する第1のステップと、
上記コンピュータの関心対象特定部が、上記ユーザ状態検出部により検出された上記ユーザの視線に基づいて、上記車両の外部にある事物のうち上記ユーザが見ていると推定される事物を上記ユーザが関心を示している対象物として特定する第2のステップと、
上記コンピュータの香り発生部が、上記関心対象特定部により特定された上記対象物に関連する香りを上記芳香提供機構によって発生させる第3のステップとを有し、
上記第2のステップにおいて上記関心対象特定部は、
上記車両の現在位置および現在方位を検出する現在位置・方位検出部処理と、
複数の事物の存在位置を示す情報を含む地図データを取得する地図データ取得処理と、
上記現在位置・方位検出処理により検出された上記車両の現在位置および現在方位と、上記ユーザ状態検出部により検出された上記ユーザの視線とに基づいて、上記地図データ取得処理により取得された地図データ上で上記ユーザの視線方向にあり、かつ上記車両の現在位置から所定距離以内にある事物を抽出し、当該抽出した事物を、上記ユーザが関心を示している対象物として特定する対象物特定処理とを実行する
ことを特徴とする芳香提供方法。
【請求項9】
車両に搭載された芳香提供機構によって、車両に搭乗するユーザに香りを提供する方法であって、
コンピュータのユーザ状態検出部が、上記ユーザの視線を検出する第1のステップと、
上記コンピュータの関心対象特定部が、上記ユーザ状態検出部により検出された上記ユーザの視線に基づいて、上記車両の外部にある事物のうち上記ユーザが見ていると推定される事物を上記ユーザが関心を示している対象物として特定する第2のステップと、
上記コンピュータの香り発生部が、上記関心対象特定部により特定された上記対象物に関連する香りを上記芳香提供機構によって発生させる第3のステップとを有し、
上記第2のステップにおいて上記関心対象特定部は、
上記車両の外部を撮影することによって得られる撮影画像を解析することにより、上記車両の外部にある事物を認識するとともに、当該事物の上記車両からの相対方向を認識する画像解析処理と、
上記画像解析処理により解析された上記事物の相対方向および上記ユーザ状態検出部により検出された上記ユーザの視線に基づいて、上記ユーザの視線方向にあり、かつ上記車両から最も近い位置に写っている事物を、上記ユーザが関心を示している対象物として特定する対象物特定処理とを実行する
ことを特徴とする芳香提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香提供システムおよび芳香提供方法に関し、特に、車両に搭乗するユーザに香りを提供する芳香提供システムおよび芳香提供方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された芳香提供機構によって、車両の車室内に香りを提供するシステムにおいて、車両の現在位置を検出し、現在位置に対応する香りを提供するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のシステムでは、ナビゲーション装置の表示画面内に目的地または通過地点が入った場合、場所-香りの対応関係テーブルを参照し、その目的地または通過地点を示す場所ジャンルに対応して設定されている香り番号に該当する香りを香り放出装置から放出させる。
【0003】
また、ユーザの会話を認識し、その会話に関連する香りを提供するようにしたシステムも知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のシステムでは、案内メニューに従って利用者に案内サービスを提供するサービスロボットにおいて、利用者から発せられた音声に反応して、発話に含まれているキーワードに対応する香源を複数の香源から選択し、嗅覚ディスプレイを駆動して目的とする香りを発生させて利用者に提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-349739号公報
【文献】特開2019-005883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2のシステムは、単に現在位置や発話に含まれるキーワードに対応する香りを提供するだけであり、ユーザの意に反した香りが提供されることがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、車両に搭乗するユーザに香りを提供するシステムについて、よりユーザの意に沿った香りを提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明では、車両に搭乗するユーザの音声および視線の少なくとも一方を含むユーザ状態を検出し、当該検出したユーザ状態に基づいて、ユーザが関心を示している対象物を特定し、当該特定した対象物に関連する香りを芳香提供機構によって発生させるようにしている。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した本発明によれば、ユーザ状態から推定される関心対象物に関連する香りが提供されるので、提供される香りがユーザの関心にマッチしたものとなる可能性が高くなり、よりユーザの意に沿った香りを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態による芳香提供システムの機能構成例を示すブロック図である。
図2】関連情報記憶部に記憶される関連情報の一例を示す図である。
図3】第1の実施形態によるユーザ状態検出部および関心対象特定部の詳細な機能構成例を示すブロック図である。
図4】第2の実施形態によるユーザ状態検出部および関心対象特定部の詳細な機能構成例を示すブロック図である。
図5】第3の実施形態によるユーザ状態検出部および関心対象特定部の詳細な機能構成例を示すブロック図である。
図6】第4の実施形態によるユーザ状態検出部および関心対象特定部の詳細な機能構成例を示すブロック図である。
図7】第4の実施形態で用いるカメラの撮影範囲を示す図である。
図8】第5の実施形態によるユーザ状態検出部および関心対象特定部の詳細な機能構成例を示すブロック図である。
図9】本実施形態による芳香提供システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による芳香提供システムの機能構成例を示すブロック図である。本実施形態の芳香提供システムは、車両に搭載された芳香提供装置20が備える芳香提供機構21によって、車両に搭乗するユーザに香りを提供するシステムであり、車両に搭載された車載装置10および芳香提供装置20を備えている。車載装置10は、機能構成として、ユーザ状態検出部1、関心対象特定部2および香り発生部3を備えている。また、車載装置10は、記憶媒体として、関連情報記憶部4を備えている。
【0011】
上記各機能ブロック1~3は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック1~3は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0012】
ユーザ状態検出部1は、ユーザの音声および視線の少なくとも一方を含むユーザ状態を検出する。音声に関して、ユーザ状態検出部1は、ユーザの発話音声を検出する。また、視線に関して、ユーザ状態検出部1は、ユーザが車外に向けている視線を検出する。ユーザ状態検出部1の詳細については後述する。
【0013】
関心対象特定部2は、ユーザ状態検出部1により検出されたユーザ状態に基づいて、ユーザが関心を示している対象物(以下、関心対象物ということがある)を特定する。すなわち、関心対象特定部2は、ユーザ状態検出部1により検出されたユーザの発話音声および車外に向けた視線の少なくとも一方に基づいて、ユーザが関心を示している対象物を特定する。関心対象特定部2の詳細についても後述する。
【0014】
香り発生部3は、関心対象特定部2により特定された関心対象物に関連する香りを芳香提供装置20の芳香提供機構21によって発生させる。芳香提供装置20は、いわゆるディフューザであり、車内の所定の位置に固定的にまたは一時的に設けられる。例えば、芳香提供装置20は、噴霧液を貯留する容器を複数セット可能に構成されており、セットされた複数の容器のうち、1つの容器に貯留された噴霧液を選択的にミスト化し、ミストとして噴霧する芳香提供機構21を備えている。なお、噴霧液に基づくミストを噴霧することは、特許請求の範囲の「車両のユーザに香りを提供すること」に相当する。
【0015】
なお、芳香提供装置20がミストを噴霧する方法は、液体を超音波によって振動させることによってミストを発生し噴霧する方法や、微細な噴霧孔が形成されたミストノズルによってミストを発生し噴霧する方法、筐体内に空気を導入してベンチュリ効果によって噴霧液を吸い上げ、ミスト化して噴霧する方法等、どのような方法であってもよい。また、芳香提供装置20は、据え置き型の装置である必要はなく、持ち運び可能なモバイル型の装置であって、車内に持ち込まれて使用されるものであってもよい。
【0016】
香り発生部3は、関連情報記憶部4に記憶されている関連情報に基づいて、関心対象特定部2により特定された関心対象物に関連する香りを選択し、当該選択した香りに対応する噴霧液を貯留する容器を選択して芳香提供機構21を駆動する。図2は、関連情報記憶部4に記憶される関連情報の一例を示す図である。図2(a)は、種々の事物と、それらが属するカテゴリとの対応関係を示した第1の関連情報の例を示したものである。図2(b)は、当該カテゴリと香りの種類との対応関係を示した第2の関連情報の例を示したものである。
【0017】
香り発生部3は、図2(a)に示す第1の関連情報に基づいて、関心対象特定部2により特定された関心対象物が属するカテゴリを特定する。例えば、関心対象特定部2により特定された関心対象物が「桜」である場合、香り発生部3は、当該桜が属する「花」というカテゴリを特定する。次いで、香り発生部3は、図2(b)に示す第2の関連情報に基づいて、第1の関連情報に基づいて特定されたカテゴリに対応する香りの種類を特定する。例えば、特定されたカテゴリが「花」である場合、香り発生部3は、当該「花」のカテゴリに対応するフローラル系の香りを特定する。そして、香り発生部3は、フローラル系の香りに対応する噴霧液を貯留する容器を選択して芳香提供機構21を駆動する。
【0018】
なお、図2に示す関連情報は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、図2(a)において、「花」、「海」、・・・をそれぞれ更に細分化した複数のカテゴリを設定するようにしてもよい。同様に、図2(b)において、「フォレスト系」、「海系」、・・・をそれぞれ更に細分化した複数の香りの種類を設定するようにしてもよい。また、図2(b)ではカテゴリと香りの種類とを1:1に対応付ける例を示しているが、図2(a)と同様に、n:1(n≧2)の対応関係を示した情報としてもよい。
【0019】
以下に、ユーザ状態検出部1および関心対象特定部2の詳細を説明する。
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態によるユーザ状態検出部1および関心対象特定部2の詳細な機能構成例を示すブロック図である。図3に示すように、第1の実施形態によるユーザ状態検出部1は、マイク101で集音される音声を処理する発話音声検出部102を備えている。また、第1の実施形態による関心対象特定部2は、キーワード抽出部201、関心推定部202、対象物特定部203および感情キーワード記憶部204を備えている。
【0020】
マイク101は、車内の所定の位置に設置され、車内の音声を集音する。発話音声検出部102は、マイク101により集音された音声からユーザの発話音声を検出する。例えば、発話音声検出部102は、マイク101により集音された音声をA/D変換し、公知の方法によってロードノイズやオーディオ音などの環境音を除外した上で、ユーザが発話した内容に該当する発声区間の音声を発話音声として検出する。
【0021】
関心対象特定部2のキーワード抽出部201は、発話音声検出部102により検出されたユーザの発話音声を音声認識し、音声認識の結果を自然言語解析してキーワードを抽出する。キーワード抽出部201は、音声認識辞書を有し、発話音声検出部102により検出された発話音声の音声データと音声認識辞書とを照合して音声認識処理を行った後、その結果得られるテキストデータを用いて自然言語解析処理を行うことにより、キーワードを抽出する。
【0022】
ここで、キーワード抽出部201は、公知の形態素解析を行うことにより、ユーザの発話音声に対応するテキストデータを複数の形態素に分解し、複数の形態素のそれぞれをキーワードとして抽出する。特定の品詞の形態素をキーワードとして抽出するようにしてもよい。特定の品詞は、例えば、名詞、動詞、形容詞、副詞である。
【0023】
関心推定部202は、キーワード抽出部201により抽出された事物に関するキーワードと、キーワード抽出部201により抽出された感情に関連するキーワードと基づいて、事物に関するユーザの関心を推定する。例えば、関心推定部202は、キーワード抽出部201により抽出されたキーワードのうち、名詞のキーワードを事物に関するキーワードとして認識する。また、関心推定部202は、キーワード抽出部201により抽出されたキーワードのうち、感情キーワード記憶部204にあらかじめ登録されているキーワードを感情に関連するキーワードとして認識する。
【0024】
感情キーワード記憶部204には、人が事物に関心を示しているときに発することが経験則的に分かっているまたは予想されるキーワードがあらかじめ登録されている。例えば、「ほら」、「みて」、「なんだろう」、「すごい」、「うわー」、「やばい」、「きれい」、「気持ちいい」などの単語が感情キーワードとして感情キーワード記憶部204に登録されている。関心推定部202は、キーワード抽出部201により抽出された複数のキーワードの中に感情キーワードが含まれている場合に、キーワード抽出部201により抽出された複数のキーワードの中に名詞のキーワードとして含まれている事物に対して関心を持っているとい推定する。
【0025】
例えば、関心推定部202は、「みて、桜が咲いているわ」という発話内容からキーワード抽出部201により抽出された「桜」という事物のキーワードと、「みて」という感情キーワードとに基づいて、ユーザが桜に対して関心を持っていると推定する。また、関心推定部202は、「なにかしら、きれいな花」という発話内容からキーワード抽出部201により抽出された「花」という事物のキーワードと、「なにかしら」という感情キーワードとに基づいて、ユーザが花に対して関心を持っていると推定する。
【0026】
ここで、関心推定部202は、キーワード抽出部201により抽出されたキーワードと、感情キーワード記憶部204に登録されている感情キーワードとの完全一致判定を行うようにしてもよいし、類似判定を行うようにしてもよい。類似判定は、例えば類語辞書を用いて行うことが可能である。すなわち、キーワード抽出部201により抽出されたキーワードが、感情キーワード記憶部204に登録されているキーワードに対する類語として類語辞書に登録されている場合に、当該抽出されたキーワードを感情キーワードとして認識する。
【0027】
対象物特定部203は、関心推定部202によりユーザが事物に対して関心を有していると推定された場合に、当該推定された事物を、ユーザが関心を示している対象物として特定する。そして、特定した関心対象物を示す単語データを香り発生部3に供給する。
【0028】
このように、第1の実施形態によれば、ユーザの発話内容からユーザの関心対象物を推定し、当該関心対象物に対応する香りをユーザに提供することができる。発話内容の中に感情キーワードが含まれていない場合は、芳香提供機構21が駆動されることはなく、ユーザに香りは提示されない。そのため、何気ない発話内容をもとにユーザの意に反する香りが提示されることはなく、ユーザが事物に関心を持っていると推定される場合にのみ、その事物に関する香りをユーザに提示することができる。
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態によるユーザ状態検出部1および関心対象特定部2Aの詳細な機能構成例を示すブロック図である。なお、この図4において、図3に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。図4に示すように、第2の実施形態では、関心対象特定部2に代えて関心対象特定部2Aを用いる。第2の実施形態による関心対象特定部2Aは、キーワード抽出部211、関心推定部212および対象物特定部213を備えている。
【0029】
関心対象特定部2のキーワード抽出部211は、発話音声検出部102により検出されたユーザの発話音声を音声認識し、音声認識の結果を自然言語解析して事物に関するキーワードを抽出する。キーワード抽出部211は、音声認識辞書を有し、発話音声検出部102により抽出された発話音声の音声データと音声認識辞書とを照合して音声認識処理を行った後、その結果得られるテキストデータを用いて自然言語解析処理を行うことにより、テキストデータに含まれる複数の形態素のうち、名詞の形態素を事物に関するキーワードとして抽出する。
【0030】
関心推定部212は、発話音声検出部102により検出された発話音声の韻律的特徴を解析して、キーワード抽出部211により抽出された事物に関するユーザの関心を推定する。発話音声の韻律的特徴とは、発話音声の強弱または音量、長短、高低、抑揚、アクセントなどの特徴をいう。例えば、関心推定部202は、キーワード抽出部211により抽出された事物に関するキーワードの部分で音量が大きくなる、発音が強くなる、音程が高くなる、速度が速くなるなどの特徴がみられた場合に、当該事物に対してユーザが関心を持っていると推定する。あるいは、関心推定部202は、発話音声検出部102により検出される複数の発話音声のうち、他に比べて音量が大きくなった発話音声からキーワード抽出部211により抽出された事物に対してユーザが関心を持っていると推定するようにしてもよい。
【0031】
別の例として、発話音声の強弱、音量、長短、高低、抑揚およびアクセントの少なくとも1つに関する特徴を学習した推定モデルを用いて、発話音声検出部102により検出された発話音声からユーザの事物に対する関心の有無を推定するようにしてもよい。推定モデルは、例えば、発話音声の強弱、音量、長短、高低、抑揚およびアクセントの少なくとも1つに関する韻律情報が入力されたときに、ユーザの事物に対する関心の有無を示す評価値を出力するように機械学習された分類器である。
【0032】
例えば、人が事物に関心を持っているときに発せられた発話音声の音声データを解析して得られた韻律情報と、人が事物に関心を持っていないときに発せられた発話音声の音声データを解析して得られた韻律情報とをあらかじめ学習データとして複数用意し、それぞれに対して関心の有無に関する正解ラベルを与えた上で、推定モデルの機械学習を行うことにより、発話音声の韻律情報からユーザの事物に対する関心の有無を推定する推定モデルを生成することが可能である。
【0033】
なお、推定モデルの中に、発話音声の音声データから韻律情報を特徴量として抽出する演算層を含ませることにより、発話音声の音声データが入力されたときに、ユーザの事物に対する関心の有無を示す評価値を出力するように機械学習された推定モデルを生成することも可能である。この場合は、人が事物に関心を持っているときに発せられた発話音声の音声データと、人が事物に関心を持っていないときに発せられた発話音声の音声データとをあらかじめ学習データとして複数用意し、それぞれに対して関心の有無に関する正解ラベルを与えた上で、推定モデルの機械学習を行う。
【0034】
対象物特定部213は、関心推定部212によりユーザが事物(キーワード抽出部211により名詞のキーワードとして抽出された事物)に対して関心を有していると推定された場合に、当該推定された事物を、ユーザが関心を示している対象物として特定する。
【0035】
このように、第2の実施形態によれば、ユーザの発話内容に含まれるキーワードおよび発話音声の韻律的特徴からユーザの関心対象物を推定し、当該関心対象物に対応する香りをユーザに提供することができる。韻律的特徴からユーザが事物に対して関心を有していることが推定されない場合は、芳香提供機構21が駆動されることはなく、ユーザに香りは提示されない。そのため、何気ない発話内容をもとにユーザの意に反する香りが提示されることはなく、ユーザが事物に関心を持っていると推定される場合にのみ、その事物に関する香りをユーザに提示することができる。
【0036】
なお、ここではユーザの発話内容から事物に関するキーワードのみを抽出しているが、第1の実施形態と同様に感情キーワードも抽出し、感情キーワードが含まれていて、かつ、韻律的特徴をもとにユーザの関心が有ることも推定される場合に、発話内容からキーワードとして抽出された事物をユーザの関心対象物として特定するようにしてもよい。このようにすれば、関心対象物の推定の確度を上げることができる。
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態によるユーザ状態検出部1Bおよび関心対象特定部2Bの詳細な機能構成例を示すブロック図である。図5に示すように、第3の実施形態では、ユーザ状態検出部1および関心対象特定部2に代えてユーザ状態検出部1Bおよび関心対象特定部2Bを用いる。第3の実施形態によるユーザ状態検出部1Bは、カメラ111により撮影される画像を処理する視線検出部112を備えている。また、第3の実施形態による関心対象特定部2Bは、現在位置・方位検出部221、地図データ取得部222および対象物特定部223を備えている。
【0037】
カメラ111は、車内の所定の位置に設置され、車両に搭乗しているユーザの顔を撮影する。例えば、カメラ111は、車内の全域または前部座席の領域を撮影可能な位置に設置され、車内の全座席または前部座席に着座しているユーザの顔を撮影する。あるいは、カメラ111を座席ごとに設置して、各座席に着座しているユーザの顔をそれぞれ撮影してもよい。
【0038】
視線検出部112は、カメラ111により撮影された撮影画像に基づいて瞳孔または虹彩の位置を解析することにより、ユーザの視線を検出する。例えば、視線検出部112は、車両の前方(進行方向)を基準方向として、当該基準方向に対するユーザの視線の相対方向を検出する。ここで検出する視線方向は、水平面上の左右方向の角度である。水平面を基準とした上下方向の角度は必ずしも検出しなくてもよい。
【0039】
ここで、カメラ111の設置位置の情報(車両の前方である基準方向からどの方向にどの程度ずれた位置にカメラ111が設置されているかを特定可能な情報)と、各座席に座るユーザの顔の想定位置を示す情報とをあらかじめ登録しておくことにより、ユーザの視線が基準方向に向けられているときの虹彩の向きを特定することができる。視線検出部112は、このような虹彩の向きと基準方向との関係性を利用して、ユーザの視線がどの方向に向けられているのかを検出することが可能である。
【0040】
なお、ユーザが頭を大きく動かした場合、ユーザの目が撮影画像に含まれなくなることがある。この場合、視線検出部112は、ユーザの頭の向きを検出し、当該頭の向きを視線の方向として検出する(頭の向きを視線の方向とみなす)ようにしてもよい。
【0041】
関心対象特定部2Bは、ユーザ状態検出部1Bの視線検出部112により検出されたユーザの視線に基づいて、車両の外部にある事物のうちユーザが見ていると推定される事物をユーザの関心対象物として特定する。第3の実施形態では、車両の外部にある事物のうちユーザが見ていると推定される事物を、現在位置・方位検出部221、地図データ取得部222および対象物特定部223によって特定する。
【0042】
現在位置・方位検出部221は、車両の現在位置および現在方位を検出する。現在位置・方位検出部221は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機を備え、複数のGPS衛星から送られてくる電波をGPSアンテナで受信して、3次元測位処理あるいは2次元測位処理を行って車両の絶対位置および絶対方位を計算する。
【0043】
また、現在位置・方位検出部221は、ジャイロセンサ、加速度センサや磁気方位センサを用いた自立航法センサを備えたものであってもよい。自立航法センサは、所定走行距離毎に1個のパルスを出力して車両の移動距離を検出する距離センサと、車両の回転角度(移動方位)を検出する振動ジャイロ等の角速度センサ(相対方位センサ)とを含む。自立航法センサは、これらの距離センサおよび角速度センサによって車両の相対位置および相対方位を検出する。そして、位置計算用CPUは、自立航法センサから出力される自車の相対的な位置および方位のデータに基づいて、絶対的な自車位置および車両方位を計算する。
【0044】
地図データ取得部222は、地図データ記憶部50から地図データを取得する。地図データ記憶部50は、車両が搭載しているものであってもよいし、通信ネットワークを介して接続されるサーバ装置が備えるものであってもよい。地図データは、例えばナビゲーション装置が経路探索や経路案内に使用するものと同じでよく、地図表示に必要な各種の描画データと、マップマッチングや経路探索、経路案内等の各種の処理に必要な道路データと、施設データとが含まれている。描画データや施設データは、海や山、川などの自然物のほか、公園や観光スポット、建築物、店舗、各地点の名物などの人工物を含めて、複数の事物に関するデータがその存在位置を示す情報と共に記録されている。
【0045】
対象物特定部223は、現在位置・方位検出部221により検出された車両の現在位置および現在方位と、ユーザ状態検出部1Bの視線検出部112により検出されたユーザの視線とに基づいて、地図データ取得部222により取得された地図データ上でユーザの視線方向にある事物を抽出し、当該抽出した事物を、ユーザが関心を示している対象物として特定する。
【0046】
すなわち、対象物特定部223は、現在位置・方位検出部221により検出された車両の現在位置および現在方位と、ユーザ状態検出部1Bの視線検出部112により検出されたユーザの視線とに基づいて、基準方向である車両の現在方位(絶対方位)に対するユーザの視線の相対方位(視線方向)を特定することが可能であり、現在位置から視線方向の先にある事物を地図データから特定することが可能である。なお、対象物特定部223は、ユーザの視線が届く範囲を考慮して、車両の現在位置から所定距離以内にある事物をユーザの関心対象物として特定する。
【0047】
なお、ユーザの視線方向で、かつ車両の現在位置から所定距離以内の位置にある複数の事物を地図データから抽出可能な場合があり得る。この場合、対象物特定部223は、例えば、車両の現在位置から最も近い位置にある事物をユーザの関心対象物として特定する。あるいは、複数の施設が所定密度以上で存在するエリアを走行中の場合は車両の現在位置から最も近い位置にある事物をユーザの関心対象物として特定する一方、複数の施設が所定密度未満で存在するエリアを走行中の場合は車両の現在位置から最も遠い位置にある事物をユーザの関心対象物として特定するようにしてもよい。
【0048】
このように、第3の実施形態によれば、ユーザの視線からユーザの関心対象物を推定し、当該関心対象物に対応する香りをユーザに提供することができる。
(第4の実施形態)
図6は、第4の実施形態によるユーザ状態検出部1Bおよび関心対象特定部2Cの詳細な機能構成例を示すブロック図である。なお、この図6において、図5に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。図6に示すように、第4の実施形態では、関心対象特定部2Bに代えて関心対象特定部2Cを用いる。第4の実施形態による関心対象特定部2Cは、カメラ231により撮影される画像を処理する画像解析部232および対象物特定部233を備えている。
【0049】
第4の実施形態においても第3の実施形態と同様に、関心対象特定部2Cは、ユーザ状態検出部1Bの視線検出部112により検出されたユーザの視線に基づいて、車両の外部にある事物のうちユーザが見ていると推定される事物をユーザの関心対象物として特定する。ただし、第4の実施形態では、車両の外部にある事物のうちユーザが見ていると推定される事物を、画像解析部232および対象物特定部233によって特定する。
【0050】
カメラ231は、車内または車外の所定の位置に設置され、車両の外部を撮影する。例えば、図7に示すように、車両の前方の所定範囲を撮影するフロントカメラ231F、車両の右方の所定範囲を撮影する右サイドカメラ231R、車両の左方の所定範囲を撮影する左サイドカメラ231L、車両の後方の所定範囲を撮影するリアカメラ231Bにより、車両周囲の全方向を撮影する。以下、カメラ231と書くときは、これら各方向のカメラ231F,231R,231L,231Bを含むものとする。
【0051】
画像解析部232は、カメラ231が車両の外部を撮影することによって得られる撮影画像を解析することにより、車両の外部にある事物を認識するとともに、当該事物の車両からの相対方向を認識する。ここで認識する事物は、海や山、川などの自然物のほか、公園や観光スポット、建築物、店舗などの人工物であるが、全ての事物を認識する必要はなく、図2(a)に示した第1の関連情報に記録されている事物を認識すればよい。画像認識は、例えば、あらかじめデータベースに登録したパターン画像とのパターンマッチングにより行うことが可能である。あるいは、画像の特徴を機械学習した分類モデルを用いて、撮影画像に含まれる事物を認識するようにしてもよい。
【0052】
事物の車両からの相対方向は、各方向のカメラ231F,231R,231L,231Bのどの撮影画像に写っている事物であるかという情報と、その撮影画像内における事物の位置を示す情報とから認識することが可能である。例えば、フロントカメラ231Fで撮影された画像の左右方向中央の位置に写っている事物の車両からの相対方向は、車両の進行方向(基準方向)と同じであることを認識することができる。また、フロントカメラ231Fで撮影された画像の中央から右方向または左方向にずれた位置に写っている事物の車両からの相対方向は、フロントカメラ231Fの視野角と撮影画像内における事物の存在位置との関係性から特定することが可能である。他の方向のカメラ231R,231L,231Bで撮影された画像から事物の相対方向を認識する場合も同様である。
【0053】
なお、撮影画像の中から、第1の関連情報に記録されている複数の事物が認識される場合があり得る。この場合、画像解析部232は、例えば、車両から最も近い位置に写っている事物をユーザの関心対象物として特定する。あるいは、複数の施設が所定密度以上で存在するエリアを走行中の場合は車両から最も近い位置に写っている事物を認識する一方、複数の施設が所定密度未満で存在するエリアを走行中の場合は車両から最も遠い位置に写っている事物を認識するようにしてもよい。
【0054】
対象物特定部233は、画像解析部232により解析された事物の相対方向およびユーザ状態検出部1Bの視線検出部112により検出されたユーザの視線に基づいて、ユーザの視線方向にある事物をユーザの関心対象物として特定する。すなわち、対象物特定部233は、画像解析部232により複数の方向において認識された複数の事物の中から、視線検出部112により検出されたユーザの視線方向に存在する事物をユーザの関心対象物として特定する。
【0055】
このように、第4の実施形態においても、ユーザの視線からユーザの関心対象物を推定し、当該関心対象物に対応する香りをユーザに提供することができる。
(第5の実施形態)
図8は、第5の実施形態によるユーザ状態検出部1Dおよび関心対象特定部2Dの詳細な機能構成例を示すブロック図である。図8において、図4および図5に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。第5の実施形態による芳香提供システムは、ユーザの発話音声と視線の両方を用いてユーザの関心対象物を特定するようにしたものである。
【0056】
図8に示すように、第5の実施形態では、ユーザ状態検出部1Dは、図4に示した発話音声検出部102および図5に示した視線検出部112を備えており、ユーザの発話音声を検出するとともに、ユーザの視線を検出する。また、第5の実施形態では、関心対象特定部2Dは、図4に示したキーワード抽出部211を備えるとともに、図5に示した現在位置・方位検出部221および地図データ取得部222を備えている。また、関心対象特定部2Dは、図5に示した対象物特定部223に代えて対象物特定部243を備えている。
【0057】
上述したように、キーワード抽出部211は、ユーザ状態検出部1Dの発話音声検出部102により検出された発話音声を音声認識し、音声認識の結果を自然言語解析することにより、事物に関するキーワードを抽出する。
【0058】
対象物特定部243は、図5に示した対象物特定部223と同様に、ユーザ状態検出部1Bの視線検出部112により検出されたユーザの視線と、現在位置・方位検出部221により検出された車両の現在位置および現在方位と、地図データ取得部222により取得された地図データとに基づいて、ユーザが見ていると推定される事物を特定する機能(地図データ上でユーザの視線方向にある事物を抽出する機能)を有する。図5に示す第3の実施形態では、こうして抽出した事物をユーザの関心対象物として特定したが、第5の実施形態はここが第3の実施形態と異なる。
【0059】
すなわち、第5の実施形態において、対象物特定部243は、視線検出部112により検出されるユーザの視線に基づいてユーザが見ていると推定された事物と、キーワード抽出部211により発話音声から名詞のキーワードとして抽出された事物とが一致する場合に、当該事物をユーザの関心対象物として特定する。このように、ユーザの発話音声と視線の両方を用いてユーザの関心対象物を特定することにより、関心対象物の推定の確度を上げることができる。
【0060】
なお、ここでは、ユーザが見ていると推定される事物を特定する機能として、図5の現在位置・方位検出部221、地図データ取得部222および対象物特定部223と同様の機能を用いる例について説明したが、これに代えて、図6の画像解析部232および対象物特定部233と同様の機能を用いるようにしてもよい。
【0061】
また、ここでは、キーワード抽出部211により抽出されたユーザの視線に基づいてユーザが見ていると推定された事物と、キーワード抽出部211により発話音声から名詞のキーワードとして抽出された事物とが一致する場合に、当該事物をユーザの関心対象物として特定する例について説明したが、関心推定部212を更に設けてもよい。すなわち、キーワード抽出部211により発話音声から名詞のキーワードとして抽出された事物であって、かつ関心推定部212によりユーザが関心を持っていると推定された事物が、ユーザの視線に基づいてユーザが見ていると推定された事物と一致する場合に、当該事物をユーザの関心対象物として特定するようにしてもよい。また、キーワード抽出部211および関心推定部212に代えてキーワード抽出部201および関心推定部202を用いるようにしてもよい。
【0062】
図9は、以上のように構成した本実施形態による芳香提供システムの動作例を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、例えばユーザが芳香提供システムの機能を起動したときに開始する。なお、ここでは第1の実施形態として示したユーザ状態検出部1、関心対象特定部2および香り発生部3の動作例を示すが、第2の実施形態~第5の実施形態においても、図9のフローチャートに示す基本的な動作は同様である。
【0063】
まず、ユーザ状態検出部1はユーザ状態を検出する(ステップS1)。次に、関心対象特定部2は、ユーザ状態検出部1により検出されたユーザ状態に基づいて、ユーザが関心を示している対象物を特定する(ステップS2)。ここで、関心対象特定部2は、ユーザの関心対象物を特定できたか否かを判定し(ステップS3)、特定できた場合はその関心対象物を香り発生部3に通知する。一方、関心対象物を特定できなかった場合、処理はステップS1に戻る。
【0064】
なお、第1の実施形態において、関心対象物を特定できない場合とは、例えば、ユーザの発話音声の中に、感情キーワード記憶部204に記憶されている感情キーワードが含まれていない場合である。あるいは、ユーザの発話音声の中に感情キーワードが含まれている場合であっても、発話音声の中から名詞のキーワードとして抽出した事物が、図2(a)に示す第1の関連情報に含まれていない場合も、関心対象物を特定できない場合となる。
【0065】
関心対象特定部2がユーザの関心対象物を特定できた場合、香り発生部3は、その関心対象物の通知を受けて、当該関心対象物に関連する香りを芳香提供機構21の駆動によって発生させる(ステップS4)。そして、図9に示すフローチャートの処理を終了する。なお、このフローチャートでは、1つの香りを発生させた時点で処理を終了する例について説明しているが、ステップS4の処理を行った後もステップS1の処理に戻り、芳香提供システムの機能がオフとされるまでステップS1~S4の処理を繰り返し行うようにしてもよい。
【0066】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、車両に搭乗するユーザの音声および視線の少なくとも一方を含むユーザ状態を検出し、当該検出したユーザ状態に基づいて、ユーザが関心を示している対象物を特定し、当該特定した対象物に関連する香りを発生させるようにしている。このように構成した本実施形態によれば、ユーザ状態から推定される関心対象物に関連する香りが提供されるので、提供される香りがユーザの関心にマッチしたものとなる可能性が高くなり、よりユーザの意に沿った香りを提供することができる。
【0067】
なお、上記実施形態では、車載装置10がユーザ状態検出部1,1Bおよび関心対象特定部2,2A,2B,2C,2Dを備え、関連する処理を全て車載装置10にて行う例を示したが、その一部または全部の処理を、車載装置10に対して通信ネットワークを介して接続されるサーバ装置と連携して行うようにしてもよい。
【0068】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0069】
1,1B ユーザ状態検出部
2,2A,2B,2C,2D 関心対象特定部
3 香り発生部
21 芳香提供機構
102 発話音声検出部
112 視線検出部
201,211 キーワード抽出部
202,212 関心推定部
203,213,223,233,243 対象物特定部
221 現在位置・方位検出部
222 地図データ取得部
232 画像解析部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9