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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20241209BHJP
   B41J 29/13 20060101ALI20241209BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G03G21/16 133
G03G21/16 147
B41J29/13
H05K5/03 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021077682
(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公開番号】P2022171187
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2024-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】日浦 博
(72)【発明者】
【氏名】土居 重雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 修
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-133780(JP,A)
【文献】特開2010-33022(JP,A)
【文献】特開2007-25654(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0124348(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0000114(KR,A)
【文献】西独国特許出願公開第3907875(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/00
G03G 15/00
G03G 21/16-21/18
B41J 29/00-29/70
H05K 5/00- 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
第一の開口部および第二の開口部が設けられた本体と、
前記第一の開口部を開放する第一の開位置と前記第一の開口部を閉じる第一の閉位置との間の第一の移動範囲を移動可能な第一の扉と、
前記第一の移動範囲と部分的に重なる第二の移動範囲であって前記第二の開口部を開放する第二の開位置と前記第二の開口部を閉じる第二の閉位置との間の前記第二の移動範囲を移動可能な第二の扉と、
前記第一の扉が前記第一の開位置にあり且つ前記第二の扉が前記第二の開位置にある状態から前記第二の扉が前記第二の閉位置へ移動させられることに連動して、前記第二の扉の前記第二の移動範囲の外側の退避位置へ、前記第一の扉を移動させる退避手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記第一の扉は、前記第一の扉の下部に水平に設けられた第一の回動軸線を中心に前記第一の開位置と前記第一の閉位置との間の前記第一の移動範囲を回動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第二の扉は、前記第二の扉の右部に鉛直に設けられた第二の回動軸線を中心に前記第二の開位置と前記第二の閉位置との間の前記第二の移動範囲を回動可能に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第二の扉は、前記第二の扉の左部に鉛直に設けられた第二の回動軸線を中心に前記第二の開位置と前記第二の閉位置との間の前記第二の移動範囲を回動可能に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記退避手段は、前記第一の扉に設けられた第一の当接部と、前記第二の扉に設けられた第二の当接部と、を有し、
前記第二の扉が前記第二の開位置から前記第二の閉位置へ向かって移動されるときに前記第二の当接部が前記第一の当接部に当接することによって前記第一の扉が前記退避位置へ移動されることを特徴とする請求項3又は4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第一の当接部は、前記第一の扉の上縁部の端部であり、
前記第二の当接部は、前記第二の扉の上部の内側に設けられた傾斜面であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第一の当接部は、前記第一の扉の前面部と側面部との間に設けられた傾斜面であり、
前記第二の当接部は、前記第二の扉の内側の上端部であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
トナーを収容するトナー収容容器は、前記第一の扉が前記第一の開位置にあるときに前記第一の開口部を通して前記本体に着脱可能に装着され、
前記第二の扉が前記第二の開位置にあるときに前記第二の開口部を通して前記本体の内部にアクセス可能であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記記録媒体にトナー像を形成する画像形成部と、
前記記録媒体に前記トナー像を定着させる定着搬送部と、
を備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記本体は、前記画像形成部に設けられており、
前記画像形成部と前記定着搬送部は、各々独立した筐体で構成されていることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の画像形成装置と、
前記画像形成装置を操作する操作部と、
前記画像形成装置へ前記記録媒体を給送する給送装置と、
を備える画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置は、画像形成に伴って消費されるトナー等の消耗品が補充される必要がある。また、電子写真プロセスに係る構成部材のメンテナンス作業も随時行われる必要がある。消耗品の補充やメンテナンス作業を行うために、画像形成装置の本体の内部にアクセスできるように、画像形成装置の本体に開閉扉が設けられている。ここで、電子写真方式の画像形成装置は、電子写真画像形成プロセスを用いて、記録媒体に画像を形成する。画像形成装置としては、例えば、複写機(例えば、デジタル複写機)、プリンタ(例えばカラーレーザビームプリンタ、カラーLEDプリンタ等)、MFP(複合機)及びファクシミリ装置がある。画像形成装置は、カラー画像を形成する画像形成装置に限らず、モノクロ画像を形成する画像形成装置であってもよい。
【0003】
特許文献1は、メンテナンス箇所を覆うように開閉自在に支持される第1の扉部材と、交換部品装着部を覆うと共に第1の扉部材と独立に開閉するように支持される第2の扉部材とを備える画像形成装置を開示している。第2の扉部材の内側面には、交換部品を交換部品装着部に挿入するためのガイド部が形成されている。第2の扉部材が開かれ、交換部品がガイド部に沿って挿入されることによって、交換部品が交換部品装着部に円滑に装着される。メンテナンスのために開閉される第1の扉部材と交換部品の交換のために開閉される第2の扉部材とは、第1の扉部材を開閉させる際に第2の扉部材に干渉しないように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-242677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、複数の扉が設けられた画像形成装置において、複数の扉の配置によっては、一方の扉を開閉する際に他方の扉に干渉することがある。例えば、他方の扉が開かれた状態で一方の扉を開いて作業をした後に、一方の扉より先に他方の扉を閉めようとして他方の扉が一方の扉に干渉することがある。この場合、他方の扉が一方の扉に衝突し、いずれかの扉が破損したり、いずれかの扉を保持する保持部材が破損したりするおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、第二の扉の閉動作に連動して第一の扉を退避位置へ移動させ、第一の扉および第二の扉の破損を抑制することができる画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例による記録媒体に画像を形成する画像形成装置は、
第一の開口部および第二の開口部が設けられた本体と、
前記第一の開口部を開放する第一の開位置と前記第一の開口部を閉じる第一の閉位置との間の第一の移動範囲を移動可能な第一の扉と、
前記第一の移動範囲と部分的に重なる第二の移動範囲であって前記第二の開口部を開放する第二の開位置と前記第二の開口部を閉じる第二の閉位置との間の前記第二の移動範囲を移動可能な第二の扉と、
前記第一の扉が前記第一の開位置にあり且つ前記第二の扉が前記第二の開位置にある状態から前記第二の扉が前記第二の閉位置へ移動させられることに連動して、前記第二の扉の前記第二の移動範囲の外側の退避位置へ、前記第一の扉を移動させる退避手段と、
を備える。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第二の扉の閉動作に連動して第一の扉を退避位置へ移動させ、第一の扉および第二の扉の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】画像形成システムの斜視図。
図2】画像形成システムの断面図。
図3】画像形成部の断面図。
図4】定着搬送部の断面図。
図5】画像形成部のトナーボトル交換用扉と前面扉の斜視図。
図6】トナーボトル交換用扉及びトナー飛散防止扉が開かれた画像形成部の斜視図。
図7図2の線VII-VIIに沿って取った画像形成部の断面図。
図8】トナーボトル交換用扉のヒンジ部材の斜視図。
図9】開位置にある前面扉を示す図。
図10】開位置にあるトナーボトル交換用扉及び前面扉を示す図。
図11】前面扉の閉動作に連動するトナーボトル交換用扉の退避動作の説明図。
図12】傾斜面が設けられたトナーボトル交換用扉の退避動作の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図1図11を用いて説明する。なお、本実施の形態では、図1に示すように、画像形成装置101に向かって手前側を前方向F、奥側(背側)を後方向B、左側を左方向L、右側を右方向R、上側を上方向U及び下側を下方向Dとする。ただし、以下の本実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置等は、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
(画像形成システム)
図1は、画像形成システム100の斜視図である。図2は、画像形成システム100の断面図である。画像形成システム100は、画像形成装置101、大容量給送装置107及びセンシング装置108を有する。画像形成装置101は、画像形成部102及び定着搬送部(定着部)103を有する。画像形成部102は、大容量給送装置(給送装置)107から給送された記録媒体(以下、シートという)Sにトナー像を形成する。定着搬送部103は、画像形成部102によって形成されたトナー像をシートSに定着する。画像形成部102と定着搬送部103は、各々独立した筐体で構成される。この構成により、画像形成装置101が大型であっても、筐体毎に分離した状態で梱包及び輸送を行うことが可能となる。それによって、大型の画像形成装置101の出荷から設置までの物流における作業性が改善される。
【0012】
定着搬送部103の上部には、操作者が画像形成装置101を操作するために用いる操作部104が設けられている。画像形成部102の上部には、原稿読取装置105及び自動原稿給送装置106が設けられている。自動原稿給送装置106は、積載された原稿束から原稿を一枚ずつ原稿読取装置105へ給送する。原稿読取装置105は、自動原稿給送装置106によって給送される原稿の画像又はプラテンガラス(不図示)に載置された原稿の画像を読み取る。原稿読取装置105及び自動原稿給送装置106は、オプションとして選択的に画像形成部102に接続される。
【0013】
大容量給送装置107は、シート搬送方向に関して画像形成部102の上流に配置されている。大容量給送装置107は、複数のシート収納部を有する。大容量給送装置107の代わりに、手差し給送装置(不図示)又は長尺シートを収容可能な長尺給送装置(不図示)が選択的に画像形成部102に接続されてもよい。また、大容量給送装置107の更に上流に、もう一つの大容量給送装置(不図示)、手差し給送装置(不図示)又は長尺給送装置が選択的に重連接続されてもよい。
【0014】
センシング装置108は、シート搬送方向に関して定着搬送部103の下流に配置されている。画像形成システム100は、必ずしもセンシング装置108を有する必要はなく、センシング装置108は、定着搬送部103に選択的に接続される。センシング装置108は、シートSの片面又は両面に形成された画像を読み取り、画像濃度及び画像位置のずれを検出する。センシング装置108は、検出された画像濃度及び画像位置のずれに基づいて、画像形成部102へ伝送される画像信号に対してフィードバック補正を行う。定着搬送部103又はセンシング装置108の更に下流に、インサータ、パンチャ、くるみ製本機、大容量スタッカ、折り機、フィニッシャ、トリマ等の後処理装置(不図示)が1つ又は複数組み合わせて選択的に接続される。
【0015】
以上説明したように、本実施例の画像形成装置101は、多様なオプション装置が選択的に接続されることで、多様なシートに対して多様な後処理加工を施した成果物をインライン出力することができる。これにより、高生産、高画質、高安定、高機能に優れた画像形成システム100を提供することができる。
【0016】
(画像形成部)
図3を用いて、本実施例の画像形成装置101における画像形成部102を説明する。図3(a)は、画像形成部102の断面図である。画像形成部102は、イエロー作像ステーション200Y、マゼンタ作像ステーション200M、シアン作像ステーション200C及びブラック作像ステーション200Kを有する。画像形成部102は、レーザスキャナ203Y、203M、203C、203K、トナーボトル(トナー収容容器)205Y、205M、205C、205K、トナー補給経路206Y、206M、206C、206Kを有する。なお、参照符号の添え字Y、M、C及びKは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックを示す。以下の説明において、特に必要でない場合に添え字Y、M、C及びKを省略することがある。さらに、画像形成部102は、一次転写ローラ207Y、207M、207C、207K、中間転写ベルト208、トナー回収経路210、回収トナー容器211及びシート収納部212を有する。さらにまた、画像形成部102は、レジストレーションローラ213、二次転写内ローラ214、二次転写外ローラ215、中間転写ベルトクリーナ216、定着前搬送ベルト217及び一次転写補助ローラ218を有する。二次転写内ローラ214と二次転写外ローラ215の間のニップ部は、二次転写部STを形成する。
【0017】
イエロー作像ステーション200Yは、イエロー(Y)のトナー像を形成する。マゼンタ作像ステーション200Mは、マゼンタ(M)のトナー像を形成する。シアン作像ステーション200Cは、シアン(C)のトナー像を形成する。イエロー作像ステーション200Y、マゼンタ作像ステーション200M及びシアン作像ステーション200Cは同様の構造を有する。図3(b)は、イエロー作像ステーション200Yを示す図である。図3(b)において、マゼンタ作像ステーション200M及びシアン作像ステーション200Cの構造を示す参照符号は、括弧内に示す。イエロー作像ステーション200Y(200M、200C)は、感光ドラム201Y(201M、201C)を有する。感光ドラム201Y(201M、201C)の周りには、一次帯電器202Y(202M、202C)、現像器204Y(204M、204C)及び感光ドラムクリーナ209Y(209M、209C)が設けられている。一次帯電器202Y(202M、202C)は、帯電ローラである。
【0018】
図3(c)は、ブラック作像ステーション200Kを示す図である。ブラック作像ステーション200Kは、ブラック(K)のトナー像を形成する。ブラック作像ステーション200Kは、感光ドラム201Kを有する。感光ドラム201Kの周りには、一次帯電器202K、現像器204K、転写前帯電器219及び感光ドラムクリーナ209Kが設けられている。一次帯電器202Kは、コロナ帯電器である。
【0019】
(画像形成プロセス)
イエロー作像ステーション200Y、マゼンタ作像ステーション200M、シアン作像ステーション200C及びブラック作像ステーション200Kにおける画像形成プロセスは、トナーの色を除きほぼ同様である。以下、イエロー作像ステーション200Yにおける画像形成プロセスを説明する。図3(b)を参照して、イエロー作像ステーション200Yにおける感光ドラム201Yの表面は、一次帯電器202Yによって一様に帯電される。図3(a)を参照して、レーザスキャナ203Yは、画像データに従ってレーザ光を感光ドラム201Yに出射し、感光ドラム201Yの表面上に静電潜像を形成する。現像器204Yは、イエローのトナーで静電潜像を現像し、感光ドラム201Yの表面上にイエローのトナー像を形成する。現像によって現像器204Y内のトナーが消費されると、トナーボトル205Yからトナー補給経路206Yを介して現像器204Yへイエローのトナーが適宜補給される。感光ドラム201Yの表面上のトナー像は、一次転写ローラ207Yによって所定の加圧力及び静電的負荷バイアスが付与されて、中間転写ベルト208上に転写される。転写後、感光ドラム201Y上に僅かに残ったトナーは、感光ドラムクリーナ209Yによって除去される。感光ドラムクリーナ209Yによって除去されたトナーは、トナー回収経路210を介して回収トナー容器211に回収される。
【0020】
同様に、マゼンタ作像ステーション200M、シアン作像ステーション200C及びブラック作像ステーション200Kによって、マゼンタのトナー像、シアンのトナー像及びブラックのトナー像が形成される。マゼンタのトナー像、シアンのトナー像及びブラックのトナー像は、中間転写ベルト208上に順次転写され、中間転写ベルト208上に4色のトナー像が重ね合わされる。
【0021】
一方、シートSは、画像形成部102のシート収納部212又は大容量給送装置107から一枚ずつ給送され、レジストレーションローラ213へ搬送される。シートSの先端は、停止したレジストレーションローラ213のニップ部に当接し、シートSにループが形成され、シートSの斜行が補正される。その後、レジストレーションローラ213は、中間転写ベルト208上のトナー像の先端とシートSの先端が二次転写部STで一致するように、回転を開始してシートSを二次転写部STへ搬送する。中間転写ベルト208上のトナー像は、二次転写部STによって所定の加圧力と静電的負荷バイアスが付与されてシートSに転写される。転写後、中間転写ベルト208上に僅かに残ったトナーは、中間転写ベルトクリーナ216によって除去される。中間転写ベルトクリーナ216によって除去されたトナーは、トナー回収経路210を介して回収トナー容器211に回収される。トナー像が転写されたシートSは、定着前搬送ベルト217によって定着搬送部103へ搬送される。
【0022】
(定着搬送部)
図4は、定着搬送部103の断面図である。定着搬送部103は、定着器301、冷却器302、ヒートシンク303、排出搬送パス304、排出反転部305、両面反転部306及び両面搬送パス307を有する。定着器301は、画像形成部102から搬送されるシートS上のトナー像を加熱及び加圧することによってトナー像をシートS上に定着させる。定着器301によって加熱されたシートSは、冷却器302の内部に配設されたヒートシンク303の吸熱により冷却される。シートSは、排出搬送パス304を経由してセンシング装置108へ排出される。シートSの表裏を反転して排出する場合は、排出反転部305でシートSをスイッチバックし、シートSの先端と後端を入れ替え、シートSの表裏を反転した状態で排出搬送パス304を経由してシートSを排出する。
【0023】
また、シートSの両面に画像を形成する場合は、1面目の画像が形成されたシートSを両面反転部306でスイッチバックし、シートSの先端と後端を入れ替え、シートSの表裏を反転した状態でシートSを両面搬送パス307へ搬送する。その後、シートSは、画像形成部102のシート収納部212又は大容量給送装置107から給送される後続シートと順番にレジストレーションローラ213へ搬送させる。そして、シートSの2面目に1面目と同様な画像形成プロセスで画像が形成され、シートSは、排出搬送パス304を経由して排出される。
【0024】
(白黒画像形成)
本実施例の画像形成装置101は、前述したように、イエロー作像ステーション200Y、マゼンタ作像ステーション200M、シアン作像ステーション200C及びブラック作像ステーション200Kを使用してフルカラー画像を形成する。さらに、画像形成装置101は、ブラック作像ステーション200Kのみを使用して白黒画像を形成することができる。白黒画像形成時には、一次転写ローラ207Y、207M、207C、一次転写補助ローラ218及び中間転写ベルト208を、離間機構(不図示)によって、図3(a)の破線で示す位置へ移動させる。中間転写ベルト208から離間されたイエロー作像ステーション200Y、マゼンタ作像ステーション200M及びシアン作像ステーション200Cの回転駆動は、停止される。即ち、イエロー作像ステーション200Y、マゼンタ作像ステーション200M及びシアン作像ステーション200Cにおいて、不用な回転駆動に伴う構成部品の不用な摩耗を防止して構成部品の高寿命化を図ることができる。
【0025】
ブラックの感光ドラム201Kは、イエロー、マゼンタ及びシアンの感光ドラム201Y、201M、201Cの直径より大きな直径を有しているので、イエロー、マゼンタ及びシアンの感光ドラム201Y、201M、201Cより寿命が長い。また、ブラックの一次帯電器202Kは、非接触方式のコロナ帯電器であり、イエロー、マゼンタ、シアンの一次帯電器202Y、202M、202Cの接触方式の帯電ローラより寿命が長い。ブラックのトナーボトル205Kは、イエロー、マゼンタ、シアンのトナーボトル205Y、205M、205Cの容量より大きな容量を有し、高寿命に適している。白黒画像形成を多用する場合は、高使用頻度のブラック作像ステーション200Kのメンテナンス間隔が短くなる。しかし、以上の構成により、低使用頻度のイエロー作像ステーション200Y、マゼンタ作像ステーション200M及びシアン作像ステーション200Cと比べて、ブラック作像ステーション200Kのメンテナンス間隔が短くなることを防止できる。
【0026】
また、ブラック作像ステーション200Kは、一次帯電器202Kとしてコロナ帯電器を用いた大径ドラム構成を採用している。ブラック作像ステーション200Kは、一次帯電器202Y、202M、202Cとして帯電ローラを用いた小径ドラム構成よりも、帯電幅が広く高速化に適した構成である。したがって、ブラック作像ステーション200Kは、白黒画像形成時の画像形成部102の生産性を向上させることができる。
【0027】
イエロー作像ステーション200Y、マゼンタ作像ステーション200M及びシアン作像ステーション200Cと、ブラック作像ステーション200Kとは、形状が異なり、構成部品の摩耗量に差が生じる。そのため、感光ドラム201Y、201M、201Cと感光ドラム201Kとの間でトナー帯電量に差が生じる場合がある。トナー帯電量に差が生じると、二次転写工程において、シートSへのトナー像の転写が均一に行われずに画像不良を生じる場合がある。そこで、ブラックの感光ドラム201Kには、イエロー、マゼンタ、シアンの感光ドラム201Y、201M、201Cとトナー帯電量を揃えるためのコロナ帯電器からなる転写前帯電器219が配設される。以上説明したように、本実施例の構成によれば、フルカラー画像形成のみならず白黒画像形成においても、高生産、高画質、高安定、高寿命に優れた画像形成装置101を提供することができる。
【0028】
(開閉扉)
つぎに、図1図2及び図5から図11を参照して、画像形成部102の前面側の開閉扉(トナーボトル交換用扉10及び前面扉20)の構成について説明する。図5は、画像形成部102のトナーボトル交換用扉(第一の開閉部材)10及び前面扉(第二の開閉部材)20の斜視図である。図6は、トナーボトル交換用扉10を開き、さらにトナー飛散防止扉31を開いてトナーボトル205を交換する状態の画像形成部102の斜視図である。図7は、図2の線VII-VIIに沿って取った画像形成部102の断面図である。図8は、トナーボトル交換用扉10の扉右ヒンジ部材11R及び扉左ヒンジ部材11Lの斜視図である。図9は、開位置にある前面扉20を示す図である。図10は、開位置にあるトナーボトル交換用扉10及び前面扉20を示す図である。図11は、前面扉20の閉動作に連動するトナーボトル交換用扉10の退避動作の説明図である。
【0029】
画像形成部102の本体102aの前面側には、用途別に第一の開口部81(図6)及び第二の開口部82(図9(a))が設けられている。第二の開口部82は、第一の開口部81の直下に設けられている。第一の開口部81を開閉する開閉扉であるトナーボトル交換用扉(第一の扉)10は、画像形成部102の本体102aに回動可能に設けられている。第二の開口部82を開閉する開閉扉である前面扉(第二の扉)20は、画像形成部102の本体102aに回動可能に設けられている。トナーボトル交換用扉10は、前面扉20の直上に配置されている。
【0030】
図6を参照して、第一の開口部81の内部には、トナーを収容するトナーボトル205Y、205M、205C及び205Kが装着されるトナー収容部30が設けられている。トナー収容部30には、トナーが画像形成部102内に飛散することを防止するために設けられたトナー飛散防止扉31Y、31M、31C及び31Kが開閉可能に設けられている。トナーボトル交換用扉10は、第一の開口部81を開放する第一の開位置OP1と第一の開口部81を閉じる第一の閉位置CP1(図5)との間の第一の移動範囲MR1(図7)を移動可能である。トナーボトル交換用扉10は、トナー収容部30を開閉するように開閉可能に本体102aに設けられている。トナーボトル交換用扉10は、第一の閉位置CP1にあるときに、トナー収容部30を覆う。トナーボトル交換用扉10が開かれてトナー収容部30が開放された後、操作部104からの入力指示に従ってトナー飛散防止扉31が開放されると、操作者は、トナーボトル205にアクセス可能になる。操作者は、古いトナーボトル205を第一の開口部81を通して取り外し、新しいトナーボトル205を第一の開口部81を通してトナー収容部30に着脱可能に装着することができる。これにより、操作者は、前面扉20を開くことなくトナーボトル205の交換作業を行うことができる。
【0031】
図9(a)及び図9(c)は、前面扉20を開いた状態の画像形成部102の正面図及び上面図である。図9(b)は、図9(a)の円で囲まれた部分IXBの拡大図である。前面扉20は、第二の開口部82を開放する第二の開位置OP2と第二の開口部82を閉じる第二の閉位置CP2との間の第二の移動範囲MR2を移動可能である。本実施例において、前面扉20は、図9(c)に示すように右側へ開かれる。前面扉20が第二の開位置OP2へ移動されて第二の開口部82が開放されると、画像形成部102の本体102a内の画像形成ユニット40、転写ベルトユニット50又はシート搬送ユニット60が図9(c)の矢印で示す方向に引き出し可能である。これによって、操作者は、画像形成ユニット40や転写ベルトユニット50に対する定期交換等のメンテナンスや、シート搬送ユニット60でのシートSのジャム処理等の作業を行うことができる。なお、前面扉20の開閉動作は、連繋機構(不図示)によって画像形成部102の電源(不図示)のON/OFFに連動している。前面扉20が開かれると電源(不図示)がOFFになるフェイルセイフが構成されている。一方、トナーボトル交換用扉10の開閉動作は、電源(不図示)のON/OFFに連動していないので、トナーボトル205の交換作業を画像形成部102の稼働中(画像形成中)にも行うことができる。
【0032】
(トナーボトル交換用扉)
トナーボトル交換用扉10は、画像形成部102の上部に位置するトナー収容部30に対応して横に長い長方形の開閉扉である。図5に示すように、トナーボトル交換用扉10が閉じられて第一の閉位置CP1にあるとき、トナーボトル交換用扉10の下面部10bは、第二の閉位置CP2にある前面扉20の上面部27に近接して配置される。トナーボトル交換用扉10は、水平な下面部10bの近傍で且つ前面部10cと下面部10bとの間の稜線10dの近傍で稜線10dに平行な回動軸線(第一の回動軸線)10aを中心に回動可能に画像形成部102の本体102aによって支持されている。回動軸線10aはトナーボトル交換用扉10の下端部に設けられているので、トナーボトル交換用扉10の上端部が開いたり閉じたりする。
【0033】
図8(a)に示すように、画像形成部102の右側に、本体右ヒンジ部材32Rが設けられている。トナーボトル交換用扉10の右側に、扉右ヒンジ部材11Rが設けられている。扉右ヒンジ部材11Rは、ヒンジ軸12によって本体右ヒンジ部材32Rに結合され、本体右ヒンジ部材32Rに対してヒンジ軸12を中心に回動可能である。図8(b)に示すように、画像形成部102の左側に、本体左ヒンジ部材32Lが設けられている。トナーボトル交換用扉10の左側に、扉左ヒンジ部材11Lが設けられている。扉左ヒンジ部材11Lは、ヒンジ軸33によって本体左ヒンジ部材32Lに結合され、本体左ヒンジ部材32Lに対してヒンジ軸33を中心に回動可能である。回動軸線10aは、ヒンジ軸12及びヒンジ軸33によって形成される。
【0034】
図6を参照して、画像形成部102の本体102aには、磁石34が設けられている。トナーボトル交換用扉10には、着磁板金13aが設けられている。トナーボトル交換用扉10が閉じられて第一の閉位置CP1にあるときに、トナーボトル交換用扉10の着磁板金13aが本体102aの磁石34に磁力で吸着され、トナーボトル交換用扉10が第一の閉位置CP1に維持される。トナーボトル交換用扉10の上面部10eには、操作者が手をかけることができる凹部としての把手部14が設けられている。操作者は、把手部14に手をかけ、磁石34による着磁板金13aの吸着力に抗して把手部14を前方向Fに引き寄せてトナーボトル交換用扉10を回動軸線10aの回りに回動させ、トナーボトル交換用扉10を第一の開位置OP1へ移動させる。操作者は、第一の開口部81を通してトナー収容部30にアクセスすることができる。
【0035】
着磁板金13aが磁石34の吸着力から解放されると、トナーボトル交換用扉10は、回動軸線10aを中心として自重によって下方へ回転しようとする。しかし、扉右ヒンジ部材11Rがトルクヒンジから構成されているので、一定の回転トルク(本実施例の場合はトナーボトル交換用扉10の自重回転トルク)以上のトルクがトナーボトル交換用扉10に掛かった場合にトナーボトル交換用扉10が回転する。したがって、操作者によるトナーボトル交換用扉10の開閉動作に従ってトナーボトル交換用扉10の開角度が確定する。よって、トナーボトル交換用扉10が自重で下方へ回動して衝撃音を発生したりトナーボトル交換用扉10が破損したりすることが防止される。
【0036】
図8(a)に示すように、トナーボトル交換用扉10の右側に、扉右ストッパー部15Rが設けられている。画像形成部102の右側に、ストッパー受け部35が設けられている。図8(b)に示すように、トナーボトル交換用扉10の左側に、扉左ストッパー部15Lが設けられている。トナーボトル交換用扉10が第一の開位置OP1へ回動されると、トナーボトル交換用扉10の扉右ストッパー部15Rがストッパー受け部35に当接し、扉左ストッパー部15Lが本体左ヒンジ部材32Lに当接する。これによって、トナーボトル交換用扉10の回動は、所定の開角度で停止される。
【0037】
図7を参照して、トナーボトル交換用扉10の所定の開角度を説明する。トナーボトル交換用扉10が開けられて第一の開位置OP1にあるときに、トナーボトル205Mは、トナー収容部30から矢印で示す方向に水平に抜き取られる。そのため、トナーボトル交換用扉10の上面部10eの奥側縁部16は、トナー収容部30に抜き差しされるトナーボトル205Mの下面が通過する通過平面PPより下方に位置する必要がある。そこで、上面部10eの奥側縁部16が通過平面PPより下方に位置するように、トナーボトル交換用扉10は、第一の開口部81から下方向Dへ90°の水平面HPから更にα°だけ下方向Dに開かれる必要がある。本実施例では、トナーボトル交換用扉10が第一の開位置OP1にあるときのトナーボトル交換用扉10の所定の開角度は、90°+α°に設定される。
【0038】
これにより、トナーボトル交換用扉10が開かれて第一の開位置OP1にあるときに上方に突出する奥側縁部16は、抜き差しされるトナーボトル205Mと干渉しない。なお、トナーボトル交換用扉10の裏面側には、トナー飛散防止扉31の閉め忘れ防止対策用リブ(不図示)やトナーボトル交換用扉10の開状態を検知するセンサの検知用フラグ(不図示)が設けられている。閉め忘れ防止対策用リブ(不図示)や検知用フラグ(不図示)等の突出構造も、抜き差しされるトナーボトル205Mと干渉しないように配置されている。
【0039】
しかし、トナーボトル交換用扉10が第一の開位置OP1にあるときに、トナーボトル交換用扉10の前面部10cの上縁部17が前面扉20の上面部27より下方へ距離laだけ侵入する。また、前面部10cの上縁部17は、前面扉20の回動軸線(第二の回動軸線)20aから前方向Fに距離lbだけ突出する。そのため、トナーボトル交換用扉10が第一の開位置OP1にあるときに前面扉20を開閉しようとすると、前面扉20がトナーボトル交換用扉10と干渉する。
【0040】
ここで、前面扉20とトナーボトル交換用扉10との干渉を回避するために、トナーボトル交換用扉10の回動軸線を縦方向にしてトナーボトル交換用扉10を横方向に開閉可能にすることが考えられる。しかし、本実施例においては、複数のトナーボトル205Y、205M、205C及び205Kが水平方向に並べて配置されているので、トナーボトル交換用扉10は、水平方向に長い横長形状を有する。もし、トナーボトル交換用扉10の回動軸線を縦方向にしてトナーボトル交換用扉10を横方向に開閉するように構成した場合(横開き構成)、トナーボトル交換用扉10が開かれたときにトナーボトル交換用扉10が前方向Fに大きく突出する。そのため、画像形成装置101の前方向Fに広い作業スペースを確保する必要がある。これに対して、本実施例では、トナーボトル交換用扉10がトナーボトル交換用扉10の下部に水平に設けられた回動軸線10aを中心に回動するように構成されている。したがって、トナーボトル交換用扉10が開かれたときに、トナーボトル交換用扉10の前方向Fへの突出量を小さくすることができる。
【0041】
(前面扉)
前面扉20は、トナーボトル交換用扉10の直下に設けられている。また、前面扉20は、画像形成部102の横幅にわたって設けられている。これによって、前面扉20によって閉じられる第二の開口部82をより大きくして、操作者が画像形成部102の内部にアクセスしやすいように構成されている。図5を参照して、前面扉20は、鉛直な右側面部20bの近傍で且つ前面部20cと右側面部20bとの間の稜線20dの近傍で稜線20dに平行な回動軸線20aを中心に回動可能に画像形成部102の本体102aによって支持されている。本体102aに設けられた本体ヒンジ部材18は、ヒンジ軸(不図示)によって前面扉20に設けられた扉ヒンジ部材19に結合されている。本体ヒンジ部材18と扉ヒンジ部材19を結合するヒンジ軸(不図示)は、回動軸線20aを確定する。回動軸線20aは、前面扉20の右端部に設けられているので、前面扉20の左端部が開いたり閉じたりする。前面扉20の回動軸線20aは、トナーボトル交換用扉10の回動軸線10aと交差する方向に延在している。本実施例においては、回動軸線20aは、回動軸線10aと直交する方向に延在している。
【0042】
図9(a)を参照して、画像形成部102の本体102aには、着磁板金13bが設けられている。前面扉20には、磁石22が設けられている。図5に示すように、前面扉20が閉じられて第二の閉位置CP2にあるときに、前面扉20の磁石22が本体102aの着磁板金13bに磁力で吸着され、前面扉20が第二の閉位置CP2に維持される。図9(a)を参照して、前面扉20の左側面部20eには、操作者が手をかけることができる凹部としての把手部21が設けられている。操作者が把手部21に手をかけやすいように、画像形成部102に隣接する定着搬送部103の境界部には、凹部131が設けられている。操作者は、把手部21に手をかけ、磁石22による着磁板金13bの吸着力に抗して把手部21を前方向Fに引き寄せて前面扉20を回動軸線20aの回りに回動させ、前面扉20を第二の開位置OP2へ移動させる。図9(b)に示すように、前面扉20は、右側下部の回動軸線20aの近傍に設けられたスライダー23によって規定される所定の開角度まで開かれる。操作者は、第二の開口部82を通して画像形成部102の内部にアクセスすることができる。
【0043】
図9(c)を参照して、前面扉20の所定の開角度を説明する。前面扉20は、前面扉20の裏側に設けられた構成要素の突出部位が、定期交換等のメンテナンスやシートSのジャム処理等の作業において抜き差しされるユニットの移動範囲より右側に位置するように開かれる。図9(c)において、画像形成ユニット40、転写ベルトユニット50及びシート搬送ユニット60の移動範囲は、二点鎖線で示されている。そこで、前面扉20の裏側の突出部位が移動範囲の外に位置するように、前面扉20は、第二の開口部82から右方向Rへ90°の鉛直平面VPから更にβ°だけ右方向Rに開かれる必要がある。本実施例では、前面扉20が第二の開位置OP2にあるときの前面扉20の所定の開角度は、90°+β°に設定される。
【0044】
これにより、前面扉20が閉じた状態つまり前面扉20が第二の閉位置CP2にあるときに画像形成部102の後方向Bに突出する突出部位は、前面扉20が第二の開位置OP2にあるときに抜き差しされる各ユニットと干渉しない。なお、前面扉20の裏側に設けられた突出部位は、例えば、前面扉20の左側面部20eの奥側縁部24、本体102aに設けられたファン(不図示)によって前面部20cの吸気口25から本体102aの内部へ吸引される外気を通す吸気ダクト26である。
【0045】
仮に、前面扉20の回動軸線を前面扉20の下部に水平方向にして前面扉20を上下方向に開閉するように構成した場合(縦開き構成)、前面扉20が開かれた時に前面扉20が図9(c)に示す距離L20だけ前方向Fへ突出する。前方向Fへ突出した前面扉20は、操作者にとってメンテナンス等の作業の支障になる。しかし、上述のように、前面扉20を前面部20cと右側面部20bとの間の稜線20dの近傍に鉛直に設けられた回動軸線20aを中心に回動して水平方向に開閉する構成にすることで、第二の開口部82の前方向Fに作業空間を確保することができる。前面扉20が所定の開角度(90°+β°)まで開かれて第二の開位置OP2にあるときに、前面扉20は、メンテナンス等の作業に支障をきたすことはない。例えば、操作者がシートSのジャム処理をする場合、操作者は、シート搬送ユニット60をジャム処理に必要な量だけ引き出して効率よくジャム処理を行うことができる。本実施例によれば、良好な作業性が得られる。
【0046】
(退避手段)
上述した通常の扉開閉操作においては作業に対応する開閉扉の開閉をするのみであるが、操作者によっては、複数の扉の開閉順番を手順通りに実施しないことがある。操作者は、例えば、一つの作業に対して間違えて複数の扉を開放することがある。本実施例による画像形成装置101においては、例えば、以下に説明するような状態が生じることがある。
【0047】
本実施例においては、図5に示すように、トナーボトル交換用扉10の回動軸線10aは、前面扉20の回動軸線20aと略直交する。操作者は、前面扉20を開放した後にトナーボトル交換用扉10を開放することができる。図10は、第二の開位置OP2にある前面扉20と第一の開位置OP1にあるトナーボトル交換用扉10を画像形成部102の左側から見た拡大図である。第一の開位置OP1にあるトナーボトル交換用扉10は、図7に示すように第一の閉位置CP1から所定の開角度(90+α)°で開いている。トナーボトル交換用扉10の上縁部17は、前面扉20の上面部27から下方に即ち前面扉20の第二の移動範囲MR2に距離laだけ侵入している。図10に示すように、トナーボトル交換用扉10の第一の移動範囲MR1の一部は、前面扉20の第二の移動範囲MR2に侵入している。
【0048】
前面扉20の上部には、吸気ダクト26が設けられている。上面部27の回動軸線20aの近傍で、前面扉20の上部の内側で吸気ダクト26の上部には、退避手段としての傾斜面70が設けられている。図10に示すように、傾斜面70は、高さ方向(鉛直方向)において上端部71から下端部72までの距離(高さ)lcを有する。図9(c)に示すように、傾斜面70は、水平方向において回動軸線20aから前面扉20の中央側の端部73までの距離(幅)ldを有する。図11(a)に示すように、傾斜面70は、水平面に対して角度θ°を有する。
【0049】
トナーボトル交換用扉10の上縁部17が前面扉20の第二の移動範囲MR2へ進入する距離la、回動軸線20aから上縁部17までの距離lb、傾斜面70の高さ方向の距離lc及び傾斜面70の水平方向の距離ldは、以下の関係を有する。
la<lc ・・・(式1)
lb<ld ・・・(式2)
また、本実施例において、傾斜面70の角度θは、略45°に設定されている。
【0050】
図11を参照して、トナーボトル交換用扉10が第一の開位置OP1にあり前面扉20が第二の開位置OP2にある場合に、前面扉20の閉動作に連動してトナーボトル交換用扉10が退避する動作を説明する。図11(a)、図11(b)及び図11(c)は、トナーボトル交換用扉10の上縁部17と前面扉20の傾斜面70を正面からみた拡大図である。図11(a)は、図10に示すようにトナーボトル交換用扉10が第一の開位置OP1にあって前面扉20が第二の開位置OP2にある状態を示す図である。前面扉20は、第二の開位置OP2から第二の閉位置CP2へ向かって左方向Lに移動される。
【0051】
上述の式1及び式2の関係により、最初にトナーボトル交換用扉10の最下方に位置する上縁部17の右端部(第一の当接部)17aが図11(b)に示すように傾斜面(第二の当接部)70に接触する。傾斜面70が上縁部17の右端部17aに当接して前面扉20が更に左方向Lに移動されると、傾斜面70は、トナーボトル交換用扉10を上方向Uに押し上げる(図11(b))。トナーボトル交換用扉10は、傾斜面70によって押し上げられて回動軸線10aを回動中心として第一の開位置OP1から第一の閉位置CP1へ向かって回動される。
【0052】
前面扉20が更に閉じられると、トナーボトル交換用扉10の上縁部17の右端部17aは、図11(c)に示すように傾斜面70を上って傾斜面70の上端部71まで押し上げられ、トナーボトル交換用扉10は、退避位置RPに至る。トナーボトル交換用扉10が退避位置RPにあるときに、トナーボトル交換用扉10は、前面扉20が第二の閉位置CP2へ向かって移動することを許容する。傾斜面70の上端部71は前面扉20の上面部27と略同じ高さに設定されているので、前面扉20の上面部27がトナーボトル交換用扉10を退避位置RPに維持しつつ、前面扉20は、第二の閉位置CP2へ向かって閉じられる。前面扉20が第二の閉位置CP2まで閉じられた後に、トナーボトル交換用扉10が第一の閉位置CP1まで閉じられて作業が終了する。
【0053】
本実施例のトナーボトル交換用扉10は、下部に扉右ヒンジ部材11R及び扉左ヒンジ部材11Lが設けられた下ヒンジ扉である。前面扉20は、右部に扉ヒンジ部材19が設けられた右ヒンジ扉である。トナーボトル交換用扉10は、前面扉20の直上に配置されている。トナーボトル交換用扉10の第一の移動範囲MR1は、前面扉20の第二の移動範囲MR2と一部重複している。トナーボトル交換用扉10が第一の開位置OP1にあるときに、トナーボトル交換用扉10の上縁部17は、前面扉20の第二の移動範囲MR2に侵入する。しかし、本実施例によれば、前面扉20が閉じられるときに、退避手段としての傾斜面70がトナーボトル交換用扉10に当接してトナーボトル交換用扉10を退避位置RPへ退避させる。これにより、前面扉20がトナーボトル交換用扉10に衝突して前面扉20又はトナーボトル交換用扉10が破損したり開閉扉保持手段としての本体右ヒンジ部材32R、本体左ヒンジ部材32L及び本体ヒンジ部材18が破損したりすることが防止される。したがって、消耗品の補充やメンテナンス作業を安全に行うことができる。
【0054】
本実施例の画像形成システム100は、画像形成装置101に大容量給送装置107及びセンシング装置108が連結されている。しかし、画像形成システム100は、これに限定したものではなく、画像形成装置101は、本実施例と異なる機能を有する装置に連結されていてもよい。また、画像形成装置101が単独で用いられてもよい。
【0055】
本実施例の前面扉20は、右部に扉ヒンジ部材19が設けられ、鉛直な回動軸線20aを中心に回動し、左端部が開閉するように構成されている。しかし、前面扉20は、これに限定されるものではなく、前面扉20の左部に扉ヒンジ部材が設けられ、右端部が開閉するように構成されてもよい。
【0056】
本実施例では、トナーボトル交換用扉10の上面部10eに把手部14が設けられている。しかし、トナーボトル交換用扉10の把手部14の位置はこれに限定されるものではなく、トナーボトル交換用扉10の右側面部、左側面部又はその両方に設けられていてもよい。
【0057】
また、本実施例では、傾斜面70の角度θが45°に設定され、前面扉20を閉める力とトナーボトル交換用扉10を上昇させる力がほぼ同じになるように設定されている。しかし、傾斜面70の角度θは、これに限定されるものではなく、傾斜面70の角度θが30°~60°の範囲内であれば同様の効果を奏する。
【0058】
また、本実施例では、退避手段としての傾斜面70は、前面扉20に設けられている。しかし、退避手段は、これに限定されるものではなく、トナーボトル交換用扉10に設けられていてもよい。図12を参照して、退避手段が設けられたトナーボトル交換用扉110を説明する。図12は、退避手段としての傾斜面17bが設けられたトナーボトル交換用扉110の退避動作の説明図である。トナーボトル交換用扉110は、傾斜面17bを有することを除いて前述のトナーボトル交換用扉10と同様の構造を有する。また、前面扉120は、傾斜面70が設けられていないことを除いて前述の前面扉20と同様の構造を有する。同様の構造には同様の参照符号を付して説明を省略する。トナーボトル交換用扉110の右側面部10fと前面部10cとの間に傾斜面17bが設けられている。傾斜面17bは、トナーボトル交換用扉110の上面部10eに向かって見て前面部10cに平行な平面FPに対して角度φ°を有する。
【0059】
図12(a)は、トナーボトル交換用扉110が第一の開位置OP1にあって前面扉120が第二の開位置OP2にある状態を示す図である。前面扉120は、第二の開位置OP2から第二の閉位置CP2へ向かって左方向Lに移動される。最初に前面扉120の内側の上端部(第二の当接部)71aが図12(b)に示すようにトナーボトル交換用扉110の傾斜面(第一の当接部)17bに接触する。上端部71aが傾斜面17bに当接して前面扉120が更に左方向Lに移動されると、上端部71aは、トナーボトル交換用扉110を上方向Uに押し上げる(図12(b))。トナーボトル交換用扉110は、上端部71aによって押し上げられて回動軸線10aを回動中心として第一の開位置OP1から第一の閉位置CP1へ向かって回動される。
【0060】
前面扉120が更に閉じられると、トナーボトル交換用扉110の傾斜面17bが図12(c)に示すように前面扉120の上端部71aによって押し上げられ、トナーボトル交換用扉110は、退避位置RPに至る。トナーボトル交換用扉110が退避位置RPにあるときに、トナーボトル交換用扉110は、前面扉120が第二の閉位置CP2へ向かって移動することを許容する。トナーボトル交換用扉110の上縁部17が前面扉120の上面部27に乗り上げてトナーボトル交換用扉110が退避位置RPに維持されつつ、前面扉120は、第二の閉位置CP2へ向かって閉じられる。前面扉120が第二の閉位置CP2まで閉じられた後に、トナーボトル交換用扉110が第一の閉位置CP1まで閉じられて作業が終了する。
【符号の説明】
【0061】
10・・・トナーボトル交換用扉
17b・・・傾斜面
20・・・前面扉
70・・・傾斜面
81・・・第一の開口部
82・・・第二の開口部
101・・・画像形成装置
102a・・・本体
CP1・・・第一の閉位置
CP2・・・第二の閉位置
MR1・・・第一の移動範囲
MR2・・・第二の移動範囲
OP1・・・第一の開位置
OP2・・・第二の開位置
RP・・・退避位置
S・・・シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12