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特許7600029流出防止柵の施工方法及び流出防止柵の支柱仮固定具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】流出防止柵の施工方法及び流出防止柵の支柱仮固定具
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/04 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
E02B3/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021081530
(22)【出願日】2021-05-13
(65)【公開番号】P2022175274
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】日鉄神鋼建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸裕
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6785089(JP,B2)
【文献】特開2000-273833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
漂流物が港湾の岸壁上から海上へ流出するのを防止する流出防止柵を前記港湾の岸壁に施工する方法であって、
複数の鋼管杭を所定間隔で前記岸壁の地盤に埋設する鋼管杭埋設工程と、
前記岸壁の地盤に埋設された前記複数の鋼管杭の内側に複数の支柱の基部をそれぞれ挿入する支柱挿入工程と、
前記複数の鋼管杭の内側に各々の前記基部が挿入された前記複数の支柱を上下方向に延びる姿勢でその複数の支柱に対応する複数の支柱仮固定具により前記複数の鋼管杭のそれぞれに対して仮固定する工程であって、当該工程における前記複数の支柱の仮固定は前記複数の鋼管杭のそれぞれに対する前記複数の支柱の固定が解除可能な形態で当該複数の支柱を前記複数の鋼管杭のそれぞれに対して固定するものである支柱仮固定工程と、
前記複数の鋼管杭に対してそれぞれ仮固定された前記複数の支柱のうちの隣り合う支柱同士をそれらの間に配置したビームで連結するビーム連結工程と、
前記複数の支柱仮固定具による前記複数の支柱の仮固定を解除し、その複数の支柱のそれぞれの高さ位置を、前記隣り合う支柱同士を連結する前記ビームの姿勢が予め設定された設定高さ位置で水平に延びる姿勢となる高さ位置に調整する支柱高さ位置調整工程と、
前記支柱高さ位置調整工程の後、前記複数の鋼管杭の内側にそれぞれコンクリートを打設して前記複数の支柱の基部をそれらが挿入された前記複数の鋼管杭の対応するものに対して当該コンクリートにより固定する支柱本固定工程と、を備える、流出防止柵の施工方法。
【請求項2】
前記複数の支柱仮固定具として、前記支柱の軸方向に対して直交する方向において前記支柱の両側に分かれて配置される第1仮固定具及び第2仮固定具と、前記第1仮固定具と前記第2仮固定具とがそれらの間に配置された前記支柱を挟み込むように当該第1仮固定具と当該第2仮固定具とを締結可能な挟込用締結部材と、前記第1仮固定具を前記鋼管杭に締結する第1固定用締結部材と、前記第2仮固定具を前記鋼管杭に締結する第2固定用締結部材とをそれぞれ有する複数の支柱仮固定具を用意する支柱仮固定具用意工程をさらに備え、
前記支柱仮固定工程では、前記複数の支柱のそれぞれをその軸方向に直交する方向における両側から前記第1仮固定具と前記第2仮固定具とで挟み込むように前記第1仮固定具と前記第2仮固定具とを前記挟込用締結部材によって締結することにより前記複数の支柱のそれぞれに前記支柱仮固定具を固定するとともに、前記第2仮固定具に対して接離する方向への前記第1仮固定具の変位は許容しつつ上下方向への前記第1仮固定具の変位は拘束する形態で前記第1仮固定具を前記第1固定用締結部材によって前記鋼管杭に締結し、さらに、前記第1仮固定具に対して接離する方向への前記第2仮固定具の変位は許容しつつ上下方向への前記第2仮固定具の変位は拘束する形態で前記第2仮固定具を前記第2固定用締結部材によって前記鋼管杭に締結し、
前記支柱高さ位置調整工程では、前記挟込用締結部材による前記第1仮固定具と前記第2仮固定具との締結を緩めて前記第1仮固定具と前記第2仮固定具とを互いに離れる向きに変位させることにより前記支柱の仮固定を解除した後、前記支柱の高さ位置を前記ビームの姿勢が前記設定高さ位置で水平に延びる姿勢となる高さ位置に調整し、その後、前記挟込用締結部材により前記第1仮固定具と前記第2仮固定具とを締結しなおして前記支柱の高さ位置を固定する、請求項1に記載の流出防止柵の施工方法。
【請求項3】
前記支柱仮固定工程では、前記支柱の基部に前記支柱仮固定具を固定するとともにその支柱仮固定具を前記鋼管杭の内側に収容した状態で前記支柱の基部を当該支柱仮固定具により前記鋼管杭に仮固定し、
前記支柱本固定工程では、前記支柱の基部及びその基部に固定された前記支柱仮固定具を前記コンクリート中に埋め込む、請求項1又は2に記載の流出防止柵の施工方法。
【請求項4】
請求項2に記載の流出防止柵の施工方法において前記鋼管杭に対する前記支柱の仮固定に用いられる支柱仮固定具であって、
前記支柱の軸方向に対して直交する方向において前記支柱の両側に分かれて配置される第1仮固定具及び第2仮固定具と、
前記第1仮固定具と前記第2仮固定具とがそれらの間に配置された前記支柱を挟み込むように当該第1仮固定具と当該第2仮固定具とを締結可能な挟込用締結部材と、
前記第2仮固定具に対して接離する方向への前記第1仮固定具の変位は許容しつつ上下方向への前記第1仮固定具の変位は拘束する形態で前記第1仮固定具を前記鋼管杭に締結可能な第1固定用締結部材と、
前記第1仮固定具に対して接離する方向への前記第2仮固定具の変位は許容しつつ上下方向への前記第2仮固定具の変位は拘束する形態で前記第2仮固定具を前記鋼管杭に締結可能な第2固定用締結部材と、を備える、支柱仮固定具。
【請求項5】
前記第1仮固定具は、前記支柱に対してその軸方向に直交する方向における一方側から嵌合可能な第1仮固定具嵌合部と、前記支柱の軸方向に沿う方向及び前記支柱に対する前記第1仮固定具嵌合部の嵌合方向の両方に対して直交する方向における前記第1仮固定具嵌合部の一方の端部から突出し、前記挟込用締結部材により前記第2固定具と締結される第1仮固定具一端側被締結部と、前記第1仮固定具嵌合部のうち前記第1仮固定具一端側被締結部と反対側の端部から突出し、前記挟込用締結部材により前記第2仮固定具と締結される第1仮固定具他端側被締結部と、前記第1仮固定具一端側被締結部から延出し、前記第1固定用締結部材によって前記鋼管杭に対して締結可能に構成された第1仮固定具被固定部と、を有し、
前記第2仮固定具は、前記支柱に対して前記第1仮固定具嵌合部と反対側から嵌合可能な第2仮固定具嵌合部と、前記支柱の軸方向に沿う方向及び前記支柱に対する前記第2仮固定具嵌合部の嵌合方向の両方に対して直交する方向における前記第2仮固定具嵌合部の一方の端部から突出して前記第1仮固定具他端側被締結部と対向するように配置され、前記挟込用締結部材により前記第1仮固定具他端側被締結部と締結される第2仮固定具一端側被締結部と、前記第2仮固定具嵌合部のうち前記第2仮固定具一端側被締結部と反対側の端部から突出して前記第1仮固定具一端側被締結部と対向するように配置され、前記挟込用締結部材により前記第1仮固定具一端側被締結部と締結される第2仮固定具他端側被締結部と、前記第2仮固定具一端側被締結部から延出し、前記第2固定用締結部材によって前記鋼管杭に対して締結可能に構成された第2仮固定具被固定部と、を有し、
前記第1仮固定具被固定部は、当該第1仮固定具被固定部を貫通する貫通孔であって前記第1仮固定具嵌合部が前記支柱に嵌合したときにその貫通方向が前記支柱の軸方向に沿う方向になる第1被固定部貫通孔を有し、
前記第2仮固定具被固定部は、当該第2仮固定具被固定部を貫通する貫通孔であって前記第2仮固定具嵌合部が前記支柱に嵌合したときにその貫通方向が前記支柱の軸方向に沿う方向になる第2被固定部貫通孔を有し、
前記第1固定用締結部材は、前記支柱の軸方向に沿う方向に延びる姿勢で前記第1被固定部貫通孔に挿通されて前記第1仮固定具被固定部を前記鋼管杭に対して締結する第1固定用ボルトを有し、
前記第2固定用締結部材は、前記支柱の軸方向に沿う方向に延びる姿勢で前記第2被固定部貫通孔に挿通されて前記第2仮固定具被固定部を前記鋼管杭に対して締結する第2固定用ボルトを有する、請求項4に記載の支柱仮固定具。
【請求項6】
前記第1仮固定具は、前記第2仮固定具との間で前記支柱を挟み込むときに前記支柱の外周面に対向する面である第1仮固定具対向面と、その第1仮固定具対向面から突出して当該第1仮固定具と前記第2仮固定具とが前記支柱を挟み込むときに前記支柱の外周面に押圧される第1仮固定具押圧突起部と、を有し、
前記第2仮固定具は、前記第1仮固定具との間で前記支柱を挟み込むときに前記支柱の外周面に対向する面である第2仮固定具対向面と、その第2仮固定具対向面から突出して当該第2仮固定具と前記第1仮固定具とが前記支柱を挟み込むときに前記支柱の外周面に押圧される第2仮固定具押圧突起部と、を有する、請求項4又は5に記載の支柱仮固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾の岸壁上から波にさらわれて漂流する漂流物が海上へ流出するのを防止する流出防止柵の施工方法、及び、その施工方法において流出防止柵の支柱を仮固定するために用いられる支柱仮固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
高潮や津波の発生時には、港湾の岸壁を乗り越えた波により、岸壁上に置かれたコンテナや車両等がさらわれて漂流する場合がある。このため、そのような漂流物を捕捉して当該漂流物が海上へ流出するのを防止する流出防止柵が港湾の岸壁に設置される。下記特許文献1には、このような流出防止柵の一例としての津波バリアが開示されている。
【0003】
下記特許文献1に開示された津波バリアは、所定間隔で並ぶように地面に設置された複数の支柱構造体と、その複数の支柱構造体の隣り合うもの同士の間に張られるスクリーンと、を有する。
【0004】
各支柱構造体は、地中に埋設された杭型の基礎構造物と、その基礎構造物に固定された支柱基礎部と、その支柱基礎部に固定されて地面から上方へ延びる支柱本体部と、を有する。
【0005】
前記基礎構造物は、上下方向に延びる姿勢で地中に埋め込まれた鋼製の管状部材と、その管状部材の内側に充填された中詰材と、を有する。前記中詰材は、前記管状部材の上端部付近の内側の空間に充填されたモルタルを含む。
【0006】
前記支柱基礎部は、上下方向に延びる姿勢で前記基礎構造物の管状部材の内側に挿入されて前記モルタルによって固定された管状部材と、当該支柱基礎部の管状部材の上端部に接合されて前記基礎構造物の管状部材の上端よりも上側に配置された連結部材と、を有する。当該支柱基礎部の連結部材は、当該支柱基礎部の管状部材の上端部の外縁からその全周にわたって外方へ突出するフランジ部を有する。
【0007】
前記支柱本体部は、上下方向に延びる管状部材と、その管状部材の下端部に接合された連結部材とを有する。当該支柱本体部の連結部材は、当該支柱本体部の下端部の外縁からその全周にわたって外方へ突出するフランジ部を有する。このフランジ部が前記支柱基礎部の連結部材のフランジ部上に重ねられた状態でその支柱基礎部のフランジ部に対してボルト及びナットにより締結され、それによって、支柱本体部が支柱基礎部に固定されて立設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6785089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、港湾の岸壁において漂流物の流出を防止する流出防止柵には、その支柱間の位置で当該流出防止柵に衝突した漂流物が当該流出防止柵を乗り越えるのを確実に防止できるようにするために、隣り合う支柱同士を連結するビームが、当該流出防止柵が設置される港湾において想定される最大浸水深に基づいて予め設定された設定高さ位置で水平に延びるように配置されることが求められる。
【0010】
しかしながら、港湾の岸壁には起伏がある場合が一般的であることから、その岸壁に所定間隔で埋め込んだ複数の鋼管杭に複数の支柱の基部をそれぞれ固定することにより立設した複数の支柱の高さ位置に前記起伏が反映されて、その複数の支柱の中にはビームを前記設定高さ位置に配置するために必要な高さ位置からずれて立設されるものが生じたり、各支柱の高さ位置が揃わなかったりする場合があり、その結果、ビームの高さ位置が前記設定高さ位置からずれたり、ビームの姿勢が水平からずれて斜めになったりする場合がある。このため、複数の支柱を一旦立設した後、それらの支柱間に連結されるビームが前記設定高さ位置で水平に延びる姿勢を取るように支柱の高さ位置を調整できることが望まれるが、前記特許文献1に開示された津波バリアの支柱構造体のような基礎構造物と支柱基礎部による支柱本体部の固定構造が採用される場合には、一旦立設した後の各支柱の高さ位置を調整することは困難である。
【0011】
本発明の目的は、港湾の岸壁に複数の支柱を所定間隔で一旦立設した後、その複数の支柱の隣り合うもの同士を連結するビームが設定高さ位置で水平に延びる姿勢を取るように各支柱の高さ位置を容易に調整することが可能な流出防止柵の施工方法、及び、その施工方法において用いられる支柱仮固定具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により提供される流出防止柵の施工方法は、漂流物が港湾の岸壁上から海上へ流出するのを防止する流出防止柵を前記港湾の岸壁に施工する方法である。この流出防止柵の施工方法は、複数の鋼管杭を所定間隔で前記岸壁の地盤に埋設する鋼管杭埋設工程と、前記岸壁の地盤に埋設された前記複数の鋼管杭の内側に複数の支柱の基部をそれぞれ挿入する支柱挿入工程と、前記複数の鋼管杭の内側に各々の前記基部が挿入された前記複数の支柱を上下方向に延びる姿勢でその複数の支柱に対応する複数の支柱仮固定具により前記複数の鋼管杭のそれぞれに対して仮固定する工程であって、当該工程における前記複数の支柱の仮固定は前記複数の鋼管杭のそれぞれに対する前記複数の支柱の固定が解除可能な形態で当該複数の支柱を前記複数の鋼管杭のそれぞれに対して固定するものである支柱仮固定工程と、前記複数の鋼管杭に対してそれぞれ仮固定された前記複数の支柱のうちの隣り合う支柱同士をそれらの間に配置したビームで連結するビーム連結工程と、前記複数の支柱仮固定具による前記複数の支柱の仮固定を解除し、その複数の支柱のそれぞれの高さ位置を、前記隣り合う支柱同士を連結する前記ビームの姿勢が予め設定された設定高さ位置で水平に延びる姿勢となる高さ位置に調整する支柱高さ位置調整工程と、前記支柱高さ位置調整工程の後、前記複数の鋼管杭の内側にそれぞれコンクリートを打設して前記複数の支柱の基部をそれらが挿入された前記複数の鋼管杭の対応するものに対して当該コンクリートにより固定する支柱本固定工程と、を備える。
【0013】
この流出防止柵の施工方法では、港湾の岸壁の地盤に所定間隔で埋設された複数の鋼管杭に対して複数の支柱をそれぞれ複数の支柱仮固定具の対応するもので仮固定することにより複数の支柱を所定間隔で立設した後、複数の支柱仮固定具による複数の支柱の仮固定を解除するという簡単な作業で各支柱の高さ位置を調整できるようになるので、港湾の岸壁に複数の支柱を所定間隔で一旦立設した後、その複数の支柱の隣り合うもの同士を連結するビームが設定高さ位置で水平に延びる姿勢を取るように各支柱の高さ位置を容易に調整することができる。
【0014】
前記流出防止柵の施工方法は、前記複数の支柱仮固定具として、前記支柱の軸方向に対して直交する方向において前記支柱の両側に分かれて配置される第1仮固定具及び第2仮固定具と、前記第1仮固定具と前記第2仮固定具とがそれらの間に配置された前記支柱を挟み込むように当該第1仮固定具と当該第2仮固定具とを締結可能な挟込用締結部材と、前記第1仮固定具を前記鋼管杭に締結する第1固定用締結部材と、前記第2仮固定具を前記鋼管杭に締結する第2固定用締結部材とをそれぞれ有する複数の支柱仮固定具を用意する支柱仮固定具用意工程をさらに備え、前記支柱仮固定工程では、前記複数の支柱のそれぞれをその軸方向に直交する方向における両側から前記第1仮固定具と前記第2仮固定具とで挟み込むように前記第1仮固定具と前記第2仮固定具とを前記挟込用締結部材によって締結することにより前記複数の支柱のそれぞれに前記支柱仮固定具を固定するとともに、前記第2仮固定具に対して接離する方向への前記第1仮固定具の変位は許容しつつ上下方向への前記第1仮固定具の変位は拘束する形態で前記第1仮固定具を前記第1固定用締結部材によって前記鋼管杭に締結し、さらに、前記第1仮固定具に対して接離する方向への前記第2仮固定具の変位は許容しつつ上下方向への前記第2仮固定具の変位は拘束する形態で前記第2仮固定具を前記第2固定用締結部材によって前記鋼管杭に締結し、前記支柱高さ位置調整工程では、前記挟込用締結部材による前記第1仮固定具と前記第2仮固定具との締結を緩めて前記第1仮固定具と前記第2仮固定具とを互いに離れる向きに変位させることにより前記支柱の仮固定を解除した後、前記支柱の高さ位置を前記ビームの姿勢が前記設定高さ位置で水平に延びる姿勢となる高さ位置に調整し、その後、前記挟込用締結部材により前記第1仮固定具と前記第2仮固定具とを締結しなおして前記支柱の高さ位置を固定することが好ましい。
【0015】
こうすれば、支柱高さ位置調整工程において、挟込用締結部材による支柱仮固定具の第1仮固定具と第2仮固定具との締結を緩めてその第1仮固定具と第2仮固定具とを互いに離れる向きに変位させるという簡単な作業だけで鋼管杭に対する支柱の仮固定を解除して支柱の高さ位置を調整できるようになる。
【0016】
前記支柱仮固定工程では、前記支柱の基部に前記支柱仮固定具を固定するとともにその支柱仮固定具を前記鋼管杭の内側に収容した状態で前記支柱の基部を当該支柱仮固定具により前記鋼管杭に仮固定し、前記支柱本固定工程では、前記支柱の基部及びその基部に固定された前記支柱仮固定具を前記コンクリート中に埋め込むことが好ましい。
【0017】
こうすれば、支柱の基部はコンクリートに加えて支柱仮固定具によっても鋼管杭に本固定されるため、支柱の基部をより強固に鋼管杭に固定できる。しかも、この場合、支柱仮固定具は鋼管杭の内側に収容された状態でコンクリートによって覆われるため、支柱仮固定具が海水に触れて当該支柱仮固定具の腐食が進行することも防止できる。
【0018】
また、本発明により提供される流出防止柵の支柱仮固定具は、前記の流出防止柵の施工方法において前記鋼管杭に対する前記支柱の仮固定に用いられる支柱仮固定具である。この支柱仮固定具は、前記支柱の軸方向に対して直交する方向において前記支柱の両側に分かれて配置される第1仮固定具及び第2仮固定具と、前記第1仮固定具と前記第2仮固定具とがそれらの間に配置された前記支柱を挟み込むように当該第1仮固定具と当該第2仮固定具とを締結可能な挟込用締結部材と、前記第2仮固定具に対して接離する方向への前記第1仮固定具の変位は許容しつつ上下方向への前記第1仮固定具の変位は拘束する形態で前記第1仮固定具を前記鋼管杭に締結可能な第1固定用締結部材と、前記第1仮固定具に対して接離する方向への前記第2仮固定具の変位は許容しつつ上下方向への前記第2仮固定具の変位は拘束する形態で前記第2仮固定具を前記鋼管杭に締結可能な第2固定用締結部材と、を備える。
【0019】
この支柱仮固定具によれば、前記流出防止柵の施工方法における支柱高さ位置調整工程において、挟込用締結部材による第1仮固定具と第2仮固定具との締結を緩めてその第1仮固定具と第2仮固定具とを互いに離れる向きに変位させるという簡単な作業で支柱の仮固定を解除して支柱の高さ位置が調整できるようになる。
【0020】
前記第1仮固定具は、前記支柱に対してその軸方向に直交する方向における一方側から嵌合可能な第1仮固定具嵌合部と、前記支柱の軸方向に沿う方向及び前記支柱に対する前記第1仮固定具嵌合部の嵌合方向の両方に対して直交する方向における前記第1仮固定具嵌合部の一方の端部から突出し、前記挟込用締結部材により前記第2固定具と締結される第1仮固定具一端側被締結部と、前記第1仮固定具嵌合部のうち前記第1仮固定具一端側被締結部と反対側の端部から突出し、前記挟込用締結部材により前記第2仮固定具と締結される第1仮固定具他端側被締結部と、前記第1仮固定具一端側被締結部から延出し、前記第1固定用締結部材によって前記鋼管杭に対して締結可能に構成された第1仮固定具被固定部と、を有し、前記第2仮固定具は、前記支柱に対して前記第1仮固定具嵌合部と反対側から嵌合可能な第2仮固定具嵌合部と、前記支柱の軸方向に沿う方向及び前記支柱に対する前記第2仮固定具嵌合部の嵌合方向の両方に対して直交する方向における前記第2仮固定具嵌合部の一方の端部から突出して前記第1仮固定具他端側被締結部と対向するように配置され、前記挟込用締結部材により前記第1仮固定具他端側被締結部と締結される第2仮固定具一端側被締結部と、前記第2仮固定具嵌合部のうち前記第2仮固定具一端側被締結部と反対側の端部から突出して前記第1仮固定具一端側被締結部と対向するように配置され、前記挟込用締結部材により前記第1仮固定具一端側被締結部と締結される第2仮固定具他端側被締結部と、前記第2仮固定具一端側被締結部から延出し、前記第2固定用締結部材によって前記鋼管杭に対して締結可能に構成された第2仮固定具被固定部と、を有し、前記第1仮固定具被固定部は、当該第1仮固定具被固定部を貫通する貫通孔であって前記第1仮固定具嵌合部が前記支柱に嵌合したときにその貫通方向が前記支柱の軸方向に沿う方向になる第1被固定部貫通孔を有し、前記第2仮固定具被固定部は、当該第2仮固定具被固定部を貫通する貫通孔であって前記第2仮固定具嵌合部が前記支柱に嵌合したときにその貫通方向が前記支柱の軸方向に沿う方向になる第2被固定部貫通孔を有し、前記第1固定用締結部材は、前記支柱の軸方向に沿う方向に延びる姿勢で前記第1被固定部貫通孔に挿通されて前記第1仮固定具被固定部を前記鋼管杭に対して締結する第1固定用ボルトを有し、前記第2固定用締結部材は、前記支柱の軸方向に沿う方向に延びる姿勢で前記第2被固定部貫通孔に挿通されて前記第2仮固定具被固定部を前記鋼管杭に対して締結する第2固定用ボルトを有することが好ましい。
【0021】
この構成によれば、前記挟込用締結部材による第1仮固定具一端側被締結部と第2仮固定具他端側被締結部との締結及び第1仮固定具他端側被締結部と第2仮固定具一端側被締結部との締結を緩めれば、支柱の軸方向に直交する方向においてその支柱に対して一方側に配置される第1仮固定具を第1固定用ボルトを中心として回動させるとともにその支柱を挟んで第1仮固定具と反対側に配置される第2仮固定具を第2固定用ボルトを中心として回動させることによって第1仮固定具と第2仮固定具とを互いに接離する方向へ変位させることが可能な構造が実現される。
【0022】
前記第1仮固定具は、前記第2仮固定具との間で前記支柱を挟み込むときに前記支柱の外周面に対向する面である第1仮固定具対向面と、その第1仮固定具対向面から突出して当該第1仮固定具と前記第2仮固定具とが前記支柱を挟み込むときに前記支柱の外周面に押圧される第1仮固定具押圧突起部と、を有し、前記第2仮固定具は、前記第1仮固定具との間で前記支柱を挟み込むときに前記支柱の外周面に対向する面である第2仮固定具対向面と、その第2仮固定具対向面から突出して当該第2仮固定具と前記第1仮固定具とが前記支柱を挟み込むときに前記支柱の外周面に押圧される第2仮固定具押圧突起部と、を有することが好ましい。
【0023】
この構成によれば、支柱を第1仮固定具と第2仮固定具とで挟み込んで支柱仮固定具を支柱に固定するときに、第1仮固定具押圧突起部と第2仮固定具押圧突起部とがそれらに集中した高い押圧力で支柱の外周面に押圧される。このため、支柱仮固定具を支柱に対してより強固に固定することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、港湾の岸壁に複数の支柱を所定間隔で一旦立設した後、その複数の支柱の隣り合うもの同士を連結するビームが設定高さ位置で水平に延びる姿勢を取るように各支柱の高さ位置を容易に調整することが可能な流出防止柵の施工方法、及び、その施工方法において用いられる支柱仮固定具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態による施工方法で施工される流出防止柵の正面図である。
図2】本発明の一実施形態による流出防止柵の鋼管杭とその鋼管杭に基部が挿入された支柱とその支柱の基部を鋼管杭に仮固定する支柱仮固定具とを杭本体の上部を部分的に破断させた状態で示す図である。
図3図2に示した鋼管杭と支柱と支柱仮固定具とを杭本体の上部を部分的に破断させた状態で図2の右方から見た図である。
図4図2中のIV-IV線に沿った断面図である。
図5】本発明の一実施形態による流出防止柵の鋼管杭をその杭本体の上部を部分的に破断させた状態で示す図である。
図6】本発明の一実施形態による流出防止柵の鋼管杭をその軸方向に沿って上方から見た図である。
図7】支柱とそれに固定された支柱仮固定具を図4に対応する断面で示す図である。
図8】支柱とそれに固定される支柱仮固定具を分解した状態で示す図である。
図9】支柱仮固定具の第1仮固定具を図8中の矢印IX方向から見た図である。
図10】本発明の一実施形態による支柱の正面図である。
図11】本発明の一実施形態による流出防止柵の施工方法を説明するための図であって支柱仮固定具を支柱の基部に取り付けた状態を示す図である。
図12図11に示された支柱の基部及び支柱仮固定具を図11の左方から見た図である。
図13】本発明の一実施形態による流出防止柵の施工方法における支柱高さ位置調整工程において支柱仮固定具による支柱の仮固定を解除した状態を図4に対応する断面で示す図である。
図14】前記支柱高さ位置調整工程を図2に対応する状態で示す図である。
図15】本発明の一変形例による流出防止柵の施工方法において鋼管杭の受部に取り付ける前の支柱仮固定具を示す図である。
図16】前記一変形例による流出防止柵の施工方法において支柱仮固定具を鋼管杭の杭本体の内側に配置してその鋼管杭の受部に固定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
本発明の一実施形態による流出防止柵(図1参照)の施工方法は、高潮の発生時などに港湾の岸壁100上から波にさらわれて漂流する漂流物(図略)を捕捉して当該漂流物が岸壁100上から海上へ流出するのを防止する流出防止柵1を港湾の岸壁100に施工する方法である。この施工方法によって施工される流出防止柵1は、複数の鋼管杭2と、複数の支柱4と、複数のビーム6と、複数の支柱仮固定具8と、複数の支柱固定コンクリート10と、を備える。
【0028】
複数の鋼管杭2は、岸壁100の海側の縁に沿って所定間隔で岸壁100の地盤に埋設され、後述のようにその内側に挿入される支柱4の支柱本体16の基部16aを支えるものである。各鋼管杭2(図2図6参照)は、杭本体12と、4つの受部13と、を有する。
【0029】
杭本体12は、円筒状の鋼管からなる。この杭本体12は、鉛直方向に延びる姿勢でその上端が岸壁100の上面の位置と一致するように岸壁100の地盤に埋設される。
【0030】
各受部13は、後述のようにその上に載置された支柱仮固定具8を下から受けて支えるものである。各受部13は、L形の金具からなり、杭本体12の内壁面からその杭本体12の径方向内側へ突出するように当該杭本体12の内壁面に取り付けられている。4つの受部13は、杭本体12の周方向に等間隔で配置されている。当該4つの受部13のうちの2つの受部13は、杭本体12の径方向において互いに対向する位置に配置され、残りの2つの受部13は、杭本体12の径方向で且つ前記2つの受部13が互いに対向する方向と直交する方向において互いに対向する位置に配置されている。後述のように支柱仮固定具8が受部13に固定されるときには、当該4つの受部13のうち杭本体12の径方向において互いに対向する任意の2つの受部13が選択され、その選択された2つの受部13上に支柱仮固定具8が載置されて固定されるようになっている。各受部13は、縦板部14と、載置部15と、を有する。
【0031】
載置部15は、支柱仮固定具8がその上に載置される部分である。当該載置部15は、平板状をなしていて鋼管杭2が岸壁100の地盤に埋設された状態で略水平に配置される。当該載置部15は、杭本体12の内壁面に固定されている。当該載置部15は、当該載置部15を上下方向に貫通する貫通孔15a(図6参照)を有する。この貫通孔15aは、長孔である。
【0032】
縦板部14は、杭本体12の軸方向及び載置部15の杭本体12の内壁面からの突出方向の両方に対して垂直な方向における載置部15の一端部から下方へ延びる板状の部分であり、杭本体12の内壁面に固定されている。この縦板部14により、載置部15が下から支えられている。
【0033】
複数の支柱4(図1参照)は、それぞれ、複数の鋼管杭2の対応するものに固定されて岸壁100の海側の縁に沿って所定の設置間隔で立設される。複数の支柱4のうち流出防止柵1の両端に配置される2本の支柱4は、それぞれ、支柱本体16と、1つのブラケット18と、を有し、それらの両端の2本の支柱4の間に配置される各支柱4は、支柱本体16と、2つのブラケット18と、を有する。
【0034】
複数の支柱4の各支柱本体16は、鋼管杭2の杭本体内径よりも小さい外径を有する円筒状の鋼管によって構成される。各支柱本体16は、その延び方向(軸方向)における一端付近の部分が岸壁100の地盤に埋設された対応する鋼管杭2の杭本体12の内側に挿入された状態で固定され、それによって岸壁100の上面から上方へ略鉛直方向に延びるように立設される。当該各支柱本体16は、対応する鋼管杭2の杭本体12の内側に挿入された状態で固定される基部16aと、前記のように当該支柱本体16が立設された状態で当該支柱本体16の上端に位置する頂部16bと、を有する。
【0035】
基部16aは、図2及び図3に示すように、鋼管杭2の杭本体12の内側にその杭本体12の内壁面と当該基部16aの外周面との間に隙間がある状態で挿入される。その状態で、当該基部16aは、杭本体12の内側に打設された支柱固定コンクリート10(図1参照)によって固定される。支柱本体16は、当該基部16aが内側に挿入される杭本体12と同心となるように配置される。
【0036】
前記ブラケット18は、ビーム6の端部が連結されてその端部を支持する部分である。流出防止柵1の両端に配置される2本の支柱4のブラケット18は、その支柱4の支柱本体16の頂部16bからその支柱本体16の軸方向に垂直な方向において一方側へ突出するように当該頂部16bに取り付けられている。また、流出防止柵1の両端の2本の支柱4の間に配置される各支柱4の2つのブラケット18は、その支柱4の支柱本体16の頂部16bからその支柱本体16の軸方向に垂直な方向において両側へ突出するように当該頂部16bに取り付けられている。
【0037】
前記複数のビーム6(図1参照)は、それぞれ、支柱本体16よりも細い鋼管からなる。当該複数のビーム6は、それぞれ、前記複数の支柱4のうちの隣り合う支柱4同士の間にその支柱4の並び方向に延びるように配置され、その各ビーム6の両端部がそれぞれ対応する支柱4のブラケット18に連結される。これにより、互いに隣り合う支柱4がそれらの間に配置されたビーム6を介して連結される。
【0038】
前記複数の支柱仮固定具8は、それぞれ、前記複数の支柱4の基部16aが前記複数の鋼管杭2の対応するものの前記杭本体12の内側に挿入された状態で支柱固定コンクリート10によって固定される前に、その各支柱4を鋼管杭2に対して仮固定するものである。各支柱仮固定具8は、第1仮固定具21と、第2仮固定具22と、4つの挟込用締結部材23と、第1固定用締結部材24(図4参照)と、第2固定用締結部材25と、を有する。
【0039】
第1仮固定具21と第2仮固定具22は、支柱4の支柱本体16の基部16aに固定される金属製のバンド金具である。この第1仮固定具21と第2仮固定具22は、図7及び図8に示すように、支柱4の支柱本体16の基部16aの軸方向に対して直交する方向においてその基部16aの両側に分かれて配置されて当該基部16aをその両側から挟み込むように互いに締結され、それによって当該基部16aに固定される。また、第1仮固定具21は、鋼管杭2の4つの受部13のうちの任意の受部13上に載置されてその受部13に締結され、第2仮固定具22は、第1仮固定具21が載置されて締結された受部13に対して杭本体12の径方向において対向配置された別の受部13上に載置されてその受部13に締結される。
【0040】
第1仮固定具21は、図8に示すように、第1仮固定具嵌合部26と、第1仮固定具押圧突起部26aと、第1仮固定具一端側被締結部27と、第1仮固定具他端側被締結部28と、第1仮固定具被固定部29と、を有する。
【0041】
第1仮固定具嵌合部26は、支柱4の支柱本体16の基部16aの外周面に沿うように湾曲していて、基部16aに対してその軸方向に直交する方向における一方側から嵌合可能に構成されている。第1仮固定具嵌合部26は、第1仮固定具21と第2仮固定具22との間で支柱4の基部16aを挟み込むときに基部16aの外周面に対向する面である第1仮固定具対向面26bを有する。この第1仮固定具対向面26bは、第1仮固定具嵌合部26の湾曲の内側を向く曲面である。
【0042】
第1仮固定具押圧突起部26aは、第1仮固定具対向面26bから突出し、第1仮固定具21が第2仮固定具22との間で支柱4の基部16aを挟み込むときにその基部16aの外周面に押圧される突起部である。この第1仮固定具押圧突起部26aは、第1仮固定具対向面26bの中央に設けられている。
【0043】
第1仮固定具一端側被締結部27は、第1仮固定具嵌合部26のうち支柱4の基部16aの外周面に沿う方向における一方の端部から突出する平板状の部分であり、第2仮固定具22の後述の第2仮固定具他端側被締結部34と向き合うように配置されてその第2仮固定具他端側被締結部34と締結される部分である。当該第1仮固定具一端側被締結部27は、当該第1仮固定具一端側被締結部27と後述の第2仮固定具他端側被締結部34とが向き合う方向、換言すれば第1仮固定具21と第2仮固定具22とが支柱4の基部16aを挟み込む方向において当該第1仮固定具一端側被締結部27を貫通する2つの貫通孔27a(図9参照)を有する。
【0044】
第1仮固定具他端側被締結部28は、第1仮固定具嵌合部26のうち前記第1仮固定具一端側被締結部27と反対側の端部から突出する平板状の部分であり、第2仮固定具22の後述の第2仮固定具一端側被締結部33と向き合うように配置されてその第2仮固定具一端側被締結部33と締結される部分である。当該第1仮固定具他端側被締結部28は、当該第1仮固定具他端側被締結部28をその板厚方向に貫通する2つの貫通孔28a(図9参照)を有する。
【0045】
第1仮固定具被固定部29は、支柱仮固定具8が支柱4の基部16aに固定されるとともにその支柱4の基部16aが鋼管杭2の杭本体12の内側に挿入された状態でその鋼管杭2の4つの受部13から選択される任意の1つの受部13の載置部15上に載置可能となるように第1仮固定具一端側被締結部27から延出し、その載置された受部13の載置部15に対して第1固定用締結部材24により締結可能に構成されている。第1仮固定具被固定部29は、第1仮固定具一端側被締結部27の下端からその第1仮固定具一端側被締結部27に対して垂直に後述の第2仮固定具他端側被締結部34へ向かって延出する平板状をなしている。
【0046】
当該第1仮固定具被固定部29は、当該第1仮固定具被固定部29を上下方向に貫通する貫通孔29a(図8参照)を有する。この貫通孔29aは、長孔であり、第1仮固定具被固定部29が鋼管杭2の受部13の載置部15上に載置された状態でその載置部15の貫通孔15aの長手方向に対して当該貫通孔29aの長手方向が直交するように配置される。
【0047】
第2仮固定具22は、図8に示すように、第2仮固定具嵌合部32と、第2仮固定具押圧突起部32aと、第2仮固定具一端側被締結部33と、第2仮固定具他端側被締結部34と、第2仮固定具被固定部35と、を有する。
【0048】
第2仮固定具嵌合部32は、支柱4の支柱本体16の基部16aの外周面に沿うように湾曲していてその基部16aに対して前記第1仮固定具嵌合部26と反対側から嵌合可能に構成されている。第2仮固定具嵌合部32は、第1仮固定具21と第2仮固定具22との間で支柱4の基部16aを挟み込むときに基部16aの外周面に対向する面である第2仮固定具対向面32bを有する。この第2仮固定具対向面32bは、第2仮固定具嵌合部32の湾曲の内側を向く曲面である。
【0049】
第2仮固定具押圧突起部32aは、第2仮固定具対向面32bから突出し、第2仮固定具22が第1仮固定具21との間で支柱4の基部16aを挟み込むときにその基部16aの外周面に押圧される突起部である。この第2仮固定具押圧突起部32aは、第2仮固定具対向面32bの中央に設けられている。
【0050】
第2仮固定具一端側被締結部33は、第2仮固定具嵌合部32のうち支柱4の基部16aの外周面に沿う方向において前記第1仮固定具他端側被締結部28側に位置する一方の端部から突出する平板状の部分であり、前記第1仮固定具他端側被締結部28と向き合うように配置されてその第1仮固定具他端側被締結部28と締結される部分である。当該第2仮固定具一端側被締結部33は、当該第2仮固定具一端側被締結部33と前記第1仮固定具他端側被締結部28とが向き合う方向、換言すれば第1仮固定具21と第2仮固定具22とが支柱4の基部16aを挟み込む方向において当該第2仮固定具一端側被締結部33を貫通する2つの貫通孔33aを有する。
【0051】
第2仮固定具他端側被締結部34は、第2仮固定具嵌合部32のうち前記第2仮固定具一端側被締結部33と反対側の端部から突出する平板状の部分であり、前記第1仮固定具一端側被締結部27と向き合うように配置されてその第1仮固定具一端側被締結部27と締結される部分である。当該第2仮固定具他端側被締結部34は、当該第2仮固定具他端側被締結部34と前記第1仮固定具一端側被締結部27とが向き合う方向、換言すれば第1仮固定具21と第2仮固定具22とが支柱4の基部16aを挟み込む方向において当該第2仮固定具他端側被締結部34を貫通する2つの貫通孔34aを有する。
【0052】
第2仮固定具被固定部35は、支柱仮固定具8が支柱4の基部16aに固定されるとともにその支柱4の基部16aが鋼管杭2の杭本体12の内側に挿入された状態で、その鋼管杭2の4つの受部13のうち前記第1仮固定具被固定部29が載置されて締結される受部13に対して杭本体12の径方向において対向する別の受部13の載置部15上に載置可能となるように第2仮固定具一端側被締結部33から延出し、その載置された受部13の載置部15に対して第2固定用締結部材25により締結可能に構成されている。第2仮固定具被固定部35は、第2仮固定具一端側被締結部33の下端からその第2仮固定具一端側被締結部33に対して垂直に前記第1仮固定具他端側被締結部28へ向かって延出する平板状をなしている。
【0053】
当該第2仮固定具被固定部35は、当該第2仮固定具被固定部35を上下方向に貫通する貫通孔35aを有する。この貫通孔35aは、長孔であり、第2仮固定具被固定部35が鋼管杭2の受部13の載置部15上に載置された状態でその載置部15の貫通孔15aの長手方向に対して当該貫通孔35aの長手方向が直交するように配置される。
【0054】
前記4つの挟込用締結部材23(図2図4参照)は、第1仮固定具21と第2仮固定具22とでそれらの間に配置される支柱4の基部16aを挟み込むようにその第1仮固定具21と第2仮固定具22とを締結するものである。当該4つの挟込用締結部材23のうちの2つの挟込用締結部材23は、第1仮固定具一端側被締結部27と第2仮固定具他端側被締結部34とを締結する第1挟込用締結部材40であり、残りの2つの挟込用締結部材23は、第1仮固定具他端側被締結部28と第2仮固定具一端側被締結部33とを締結する第2挟込用締結部材41である。
【0055】
2つの第1挟込用締結部材40は、それぞれ、第1挟込用ボルト42と、第1挟込用ナット43と、2つのワッシャ44,45(図8参照)と、を有する。2つの第1挟込用締結部材40の第1挟込用ボルト42は、それぞれ、第1仮固定具21と第2仮固定具22とによる支柱4の基部16aの挟み込み方向に延びる姿勢で、第1仮固定具一端側被締結部27の2つの貫通孔27aに挿通されるとともにその挿通された貫通孔27aに対向する第2仮固定具他端側被締結部34の貫通孔34aに挿通される。その2つの第1挟込用ボルト42にそれぞれ対応する第1挟込用ナット43が螺合されて締め付けられることによって第1仮固定具一端側被締結部27と第2仮固定具他端側被締結部34とが締結されるようになっている。この各第1挟込用ボルト42のボルト頭と第1仮固定具一端側被締結部27との間にはワッシャ44が介装され、各第1挟込用ボルト42に螺合された第1挟込用ナット43と第2仮固定具他端側被締結部34との間にはワッシャ45が介装される。
【0056】
また、2つの第2挟込用締結部材41は、それぞれ、第2挟込用ボルト46と、第2挟込用ナット47と、2つのワッシャ48,49と、を有する。2つの第2挟込用締結部材41の第2挟込用ボルト46は、それぞれ、第1仮固定具21と第2仮固定具22とによる支柱4の基部16aの挟み込み方向に延びる姿勢で、第1仮固定具他端側被締結部28の2つの貫通孔28aに挿通されるとともにその挿通された貫通孔28aに対向する第2仮固定具一端側被締結部33の貫通孔33aに挿通される。その2つの第2挟込用ボルト46にそれぞれ対応する第2挟込用ナット47が螺合されて締め付けられることによって第1仮固定具他端側被締結部28と第2仮固定具一端側被締結部33とが締結されるようになっている。この各第2挟込用ボルト46のボルト頭と第1仮固定具他端側被締結部28との間にはワッシャ48が介装され、各第2挟込用ボルト46に螺合された第2挟込用ナット47と第2仮固定具一端側被締結部33との間にはワッシャ49が介装される。
【0057】
前記第1固定用締結部材24(図4参照)は、第2仮固定具22と締結された第1仮固定具21の第1仮固定具被固定部29が鋼管杭2の任意の受部13の載置部15上に載置されたときに、第2仮固定具22に対して接離する方向への第1仮固定具21の変位は許容しつつ載置部15から上方への第1仮固定具被固定部29の変位は拘束するように第1仮固定具被固定部29をそれが載置された載置部15に締結可能なものである。具体的には、第1固定用締結部材24は、第1仮固定具21が当該第1固定用締結部材24を中心として第2仮固定具22に対して接離するように回動することは許容しつつ載置部15から上方への第1仮固定具被固定部29の変位は拘束するように第1仮固定具被固定部29をそれが載置された載置部15に締結することが可能となっている。
【0058】
第1固定用締結部材24は、第1固定用ボルト51と、第1固定用ナット52と、2つのワッシャ(図略)と、を有する。第1固定用ボルト51は、第1仮固定具被固定部29の貫通孔29aとその第1仮固定具被固定部29が載置された載置部15の貫通孔15aとに上下方向に延びる姿勢で挿通されるとともに、当該第1固定用ボルト51のボルト頭が載置部15の下方に位置するように配置される。その第1固定用ボルト51に対して第1固定用ナット52が第1仮固定具被固定部29の上方の位置で螺合されて締め付けられることによって、第1仮固定具被固定部29が載置部15に締結されるようになっている。第1固定用ボルト51のボルト頭と載置部15との間には前記2つのワッシャのうちの1つのワッシャが介装され、第1固定用ボルト51に螺合された第1固定用ナット52と第1仮固定具被固定部29との間にはもう1つのワッシャが介装される。そして、以上のような第1固定用ボルト51と第1固定用ナット52による締結によって載置部15から上方への第1仮固定具被固定部29の変位は拘束される一方、その締結力(第1固定用ナット52の締め付け力)を調節することで、第1仮固定具21が第2仮固定具22に対して接離する方向へその第1仮固定具21に力を加えたときにその方向への第1仮固定具21の第1固定用ボルト51を中心とした回動が許容されるようにすることが可能となっている。
【0059】
前記第2固定用締結部材25(図2及び図4参照)は、第1仮固定具21と締結された第2仮固定具22の第2仮固定具被固定部35が、前記第1仮固定具被固定部29が載置された受部13に対して杭本体12の径方向において対向する別の受部13の載置部15上に載置されたときに、第1仮固定具21に対して接離する方向への第2仮固定具22の変位は許容しつつ載置部15から上方への第2仮固定具被固定部35の変位は拘束するように第2仮固定具被固定部35をそれが載置された載置部15に締結可能なものである。具体的には、第2固定用締結部材25は、第2仮固定具22が当該第2固定用締結部材25を中心として第1仮固定具21に対して接離するように回動することは許容しつつ載置部15から上方への第2仮固定具被固定部35の変位は拘束するように第2仮固定具被固定部35をそれが載置された載置部15に締結することが可能となっている。
【0060】
第2固定用締結部材25は、第2固定用ボルト55と、第2固定用ナット56と、2つのワッシャ(図略)と、を有する。第2固定用ボルト55は、第2仮固定具被固定部35の貫通孔35aとその第2仮固定具被固定部35が載置された載置部15の貫通孔15aとに上下方向に延びる姿勢で挿通されるとともに、当該第2固定用ボルト55のボルト頭が載置部15の下方に位置するように配置される。その第2固定用ボルト55に対して第2固定用ナット56が第2仮固定具被固定部35の上方の位置で螺合されて締め付けられることによって、第2仮固定具被固定部35が載置部15に締結されるようになっている。第2固定用ボルト55のボルト頭と載置部15との間には前記2つのワッシャのうちの1つのワッシャが介装され、第2固定用ボルト55に螺合された第2固定用ナット56と第2仮固定具被固定部35との間にはもう1つのワッシャが介装される。そして、以上のような第2固定用ボルト55と第2固定用ナット56による締結によって載置部15から上方への第2仮固定具被固定部35の変位は拘束される一方、その締結力(第2固定用ナット56の締め付け力)を調節することで、第2仮固定具22が第1仮固定具21に対して接離する方向へその第2仮固定具22に力を加えたときにその方向への第2仮固定具22の第2固定用ボルト55を中心とした回動が許容されるようにすることが可能となっている。
【0061】
複数の支柱固定コンクリート10(図1参照)は、それぞれ、複数の鋼管杭2の杭本体12の内側においてその杭本体12の内側に挿入された支柱4の基部16aを固定するものである。支柱固定コンクリート10は、杭本体12の内壁面と支柱4の基部16aの外周面との間の間隙に充填される。この支柱固定コンクリート10中に支柱4の基部16aに加えてその基部16aに固定された支柱仮固定具8も埋め込まれる。
【0062】
次に、以上のような構成を有する流出防止柵1を港湾の岸壁100に施工するための本実施形態による施工方法について説明する。
【0063】
本実施形態による流出防止柵1の施工方法は、前記のような支柱仮固定具8を用意する支柱仮固定具用意工程と、鋼管杭埋設工程と、支柱挿入工程と、支柱仮固定工程と、ビーム連結工程と、支柱高さ位置調整工程と、支柱本固定工程と、を有する。
【0064】
具体的に、鋼管杭埋設工程では、前記複数の鋼管杭2(図1参照)を所定間隔で港湾の岸壁100の地盤に埋設する。この際、各鋼管杭2をその軸方向(延び方向)が鉛直方向に一致するとともにその上端が岸壁100の上面の位置と一致するように地盤中に埋設する。
【0065】
この鋼管杭埋設工程を行った後、埋設された複数の鋼管杭2の杭本体12の内側に複数の支柱4の基部16aをそれぞれ挿入する支柱挿入工程と、その複数の鋼管杭2の杭本体12の内側に各々の基部16aが挿入されて上下方向に延びる複数の支柱4を複数の鋼管杭2のそれぞれに対して支柱仮固定具8により仮固定する支柱仮固定工程とを行う。
【0066】
具体的には、まず、支柱4の基部16aのうち支柱仮固定具8が取り付けられる目安の位置である取付目安位置103を示すマーキング104(図10参照)を、その基部16aに線を引いたり、テープを貼り付けたりすることで設ける。このマーキング104によって示される前記取付目安位置103は、予め設定された支柱4の支柱本体16の埋込長Lと、鋼管杭2が岸壁100の地盤に埋設されるときにその岸壁100の上面の位置102と一致する当該鋼管杭2の上端から載置部15の上面までの鋼管杭2の軸方向に沿う方向における距離Dとに基づいて決定される。具体的に、前記埋込長Lは、鋼管杭2の杭本体12の内側に挿入する支柱4の基部16aの軸方向における長さに相当し、支柱4の支柱本体16のうち杭本体12の内側で支柱固定コンクリート10に埋め込むべき部分の長さである。この埋込長Lから前記距離Dを減じることによって算出した距離の分だけ支柱本体16の下端から頂部16b側へ離れた位置を前記取付目安位置103とする。
【0067】
次に、マーキング104によって示された取付目安位置103に支柱仮固定具8の第1及び第2仮固定具被固定部29,35の下面の位置が一致するように支柱仮固定具8を支柱4の基部16aに取り付ける(図11及び図12参照)。この際、支柱4の基部16aをその軸方向に直交する方向における両側から第1仮固定具21と第2仮固定具22とで挟み込むように当該第1仮固定具21と当該第2仮固定具22とを第1挟込用締結部材40と第2挟込用締結部材41によって締結することにより支柱4の基部16aに支柱仮固定具8を固定する。
【0068】
具体的には、まず、支柱4の基部16aに対してその軸方向に直交する方向における両側から第1仮固定具嵌合部26と第2仮固定具嵌合部32とを嵌合させる(図7及び図8参照)。このとき、第1及び第2仮固定具被固定部29,35の下面の位置を前記取付目安位置103に一致させる(図12参照)。その状態で、第1仮固定具一端側被締結部27の2つの貫通孔27aと第2仮固定具他端側被締結部34の2つの貫通孔34aとのうち互いに対向するものに2つの第1挟込用締結部材40の第1挟込用ボルト42をそれぞれ挿通するとともに、その各第1挟込用ボルト42に第1挟込用ナット43を螺合させて締め付けることにより、第1仮固定具一端側被締結部27と第2仮固定具他端側被締結部34とを第1挟込用締結部材40によって締結する。このとき、各第1挟込用ボルト42のボルト頭と第1仮固定具一端側被締結部27との間にはワッシャ44を介装するとともに、各第1挟込用ナット43と第2仮固定具他端側被締結部34との間にもワッシャ45を介装する。また、第1仮固定具他端側被締結部28の2つの貫通孔28aと第2仮固定具一端側被締結部33の2つの貫通孔33aとのうち互いに対向するものに2つの第2挟込用締結部材41の第2挟込用ボルト46をそれぞれ挿通するとともに、その各第2挟込用ボルト46に第2挟込用ナット47を螺合させて締め付けることにより、第1仮固定具他端側被締結部28と第2仮固定具一端側被締結部33とを第2挟込用締結部材41によって締結する。このとき、各第2挟込用ボルト46のボルト頭と第1仮固定具他端側被締結部28との間にはワッシャ48を介装するとともに、各第2挟込用ナット47と第2仮固定具一端側被締結部33との間にもワッシャ49を介装する。
【0069】
次に、以上のようにして支柱仮固定具8が固定された各支柱4の基部16aを岸壁100の地盤に埋設された鋼管杭2の杭本体12の内側へその上方から挿入し、その鋼管杭2の杭本体12の径方向において互いに対向する2つの受部13の載置部15上にそれぞれ支柱仮固定具8の第1仮固定具被固定部29と第2仮固定具被固定部35とを載置する。そして、第1仮固定具被固定部29をそれが載置された受部13の載置部15に対して第1固定用締結部材24によって締結するとともに、第2仮固定具被固定部35をそれが載置された受部13の載置部15に対して第2固定用締結部材25によって締結する。
【0070】
具体的には、第1仮固定具被固定部29の貫通孔29aとその第1仮固定具被固定部29が載置された載置部15の貫通孔15aとに第1固定用ボルト51を挿通するとともに、その第1固定用ボルト51に第1固定用ナット52を螺合させて締め付けることにより、第1仮固定具被固定部29をそれが載置された受部13の載置部15に対して締結する。また、第2仮固定具被固定部35の貫通孔35aとその第2仮固定具被固定部35が載置された載置部15の貫通孔15aとに第2固定用ボルト55を挿通するとともに、その第2固定用ボルト55に第2固定用ナット56を螺合させて締め付けることにより、第2仮固定具被固定部35をそれが載置された受部13の載置部15に対して締結する。
【0071】
この締結の際、長孔である第1仮固定具被固定部29の貫通孔29aの長手方向とその貫通孔29aに対して直交する方向に延びる長孔である載置部15の貫通孔15aの長手方向とに第1固定用ボルト51の位置がその両貫通孔29a,15a内で変更可能であるとともに、長孔である第2仮固定具被固定部35の貫通孔35aの長手方向とその貫通孔35aに対して直交する方向に延びる長孔である載置部15の貫通孔15aの長手方向とに第2固定用ボルト55の位置がその両貫通孔35a,15a内で変更可能であることにより、鋼管杭2に対する支柱仮固定具8及びそれが固定された支柱4の基部16aの水平方向の位置を調節することが可能である。このため、この締結の際、支柱4の基部16aが鋼管杭2の杭本体12と同心となるように鋼管杭2に対する支柱4の基部16aの水平方向における相対位置を調整する。
【0072】
また、この締結の際、第1固定用締結部材24による締結力(第1固定用ナット52の締め付け力)が、第1仮固定具被固定部29が載置された載置部15から上方への当該第1仮固定具被固定部29の変位は阻止する一方、第1仮固定具21が第2仮固定具22に対して接離する方向へその第1仮固定具21に力を加えればその方向への当該第1仮固定具21の第1固定用ボルト51を中心とした回動は許容される適度な締結力となるように第1固定用ナット52を締め付ける。また、同様に、第2固定用締結部材25による締結力(第2固定用ナット56の締め付け力)が、第2仮固定具被固定部35が載置された載置部15から上方への当該第2仮固定具被固定部35の変位は阻止する一方、第2仮固定具22が第1仮固定具21に対して接離する方向へその第2仮固定具22に力を加えればその方向への当該第2仮固定具22の第2固定用ボルト55を中心とした回動は許容される適度な締結力となるように第2固定用ナット56を締め付ける。
【0073】
次に、複数の鋼管杭2に対してそれぞれ仮固定された複数の支柱4のうちの隣り合う支柱4同士をそれらの間に配置したビーム6(図1参照)で連結するビーム連結工程を行う。このビーム連結工程では、各支柱4のブラケット18に対して対応するビーム6の端部を図略のボルト及びナットにより連結する。
【0074】
その後、隣り合う支柱4同士を連結するビーム6が予め設定された設定高さ位置で水平に延びる姿勢を取るように支柱4の高さ方向の位置を調整する支柱高さ位置調整工程を行う。前記設定高さ位置は、流出防止柵が設置される港湾において想定される最大浸水深に基づいて予め設定された高さ位置である。具体的には、流出防止柵1が流出を防止する対象となる各種の漂流物が最大浸水深となった海に浮かんだときのそれらの漂流物の重心の高さ位置よりも上の所定の高さ位置に設定される。換言すれば、流出防止柵1に衝突することが想定される各種の漂流物の中で、最大浸水深となった海に浮かんだときにその重心の高さ位置が最も高くなるものが選択され、その選択された漂流物が最大浸水深となった海に浮かんだときの当該漂流物の重心の高さ位置よりも上の所定の高さ位置に前記設定高さ位置が設定される。このような設定高さ位置にビーム6の高さ位置が設定されることによって、そのビーム6に対して漂流物が衝突したときにその漂流物が転倒するようにビーム6を乗り越えて海上へ流出してしまうのが抑制可能となる。
【0075】
当該支柱高さ位置調整工程では、図13に示すように、第1仮固定具一端側被締結部27と第2仮固定具他端側被締結部34とを締結している第1挟込用ナット43を緩めて第1挟込用ボルト42の先端側へ移動させ、第2仮固定具他端側被締結部34を第1仮固定具一端側被締結部27から離れる向きに僅かに変位させることにより第2仮固定具22を第1固定用ボルト51を中心として第1仮固定具21から離れる向きに僅かに回動させる。また、第1仮固定具他端側被締結部28と第2仮固定具一端側被締結部33とを締結している第2挟込用ナット47を緩めて第2挟込用ボルト46の先端側へ移動させ、第1仮固定具他端側被締結部28を第2仮固定具一端側被締結部33から離れる向きに僅かに変位させることにより第1仮固定具21を第2固定用ボルト55を中心として第2仮固定具22から離れる向きに僅かに回動させる。これにより、第1仮固定具嵌合部26と第2仮固定具嵌合部32とによる支柱4の基部16aの挟み込み力が低下して支柱4の仮固定が解除され、支柱4の基部16aを支柱本体16の軸方向に沿って支柱仮固定具8に対して上下に変位させることが可能となる(図14参照)。このように支柱4の仮固定を解除した後、支柱4の高さ位置を、その支柱4に連結されたビーム6が設定高さ位置で水平に延びる姿勢を取る高さ位置に調整する。そして、各支柱4の高さ位置を調整した後、第1挟込用ナット43を締め直すとともに第2挟込用ナット47を締め直して第1及び第2挟込用締結部材40,41により第1仮固定具21と第2仮固定具22とを締結し直して支柱4の高さ位置を固定する。
【0076】
そして、支柱高さ位置調整工程の後、複数の鋼管杭2の杭本体12の内側にそれぞれ支柱固定コンクリート10(図1参照)を打設して、複数の支柱4の基部16aをそれらが挿入された複数の鋼管杭2の対応するものに対してその支柱固定コンクリート10により固定する支柱本固定工程を行う。この支柱本固定工程では、支柱4の基部16a及びその基部16aに固定された支柱仮固定具8を支柱固定コンクリート10中に埋め込む。
【0077】
以上のようにして、本実施形態による流出防止柵1が施工される。
【0078】
本実施形態では、港湾の岸壁100の地盤に所定間隔で埋設された複数の鋼管杭2に複数の支柱4の基部16aをそれぞれ支柱仮固定具8で仮固定することにより複数の支柱4を所定間隔で立設した後、第1挟込用締結部材40と第2挟込用締結部材41による支柱仮固定具8の第1仮固定具21と第2仮固定具22との締結を緩めてその第1仮固定具21と第2仮固定具22とを互いに離れる向きに回動させるという簡単な作業で支柱4の仮固定を解除して支柱4の高さ位置を調整できるようにする。このため、港湾の岸壁100に複数の支柱4を所定間隔で一旦立設した後、その複数の支柱4の隣り合うもの同士を連結するビーム6が設定高さ位置で水平に延びる姿勢を取るように各支柱4の高さ位置を容易に調整することができる。
【0079】
また、本実施形態では、複数の鋼管杭2のそれぞれの杭本体12の内側に支柱仮固定具8を収容した状態でその杭本体12の内側に挿入された支柱4の基部16aを鋼管杭2に仮固定し、前記支柱本固定工程において、支柱4の基部16a及びその基部16aに固定された支柱仮固定具8を支柱固定コンクリート10中に埋め込む。これにより、各鋼管杭2の杭本体12の内側で支柱4の基部16aを支柱固定コンクリート10に加えて支柱仮固定具8によっても固定することができるため、支柱4の基部16aをより強固に鋼管杭2に固定できる。しかも、支柱仮固定具8は支柱固定コンクリート10で覆われるため、支柱仮固定具8が海水に触れて当該支柱仮固定具8の腐食が進行するのを防ぐことができる。
【0080】
また、本実施形態では、第1仮固定具21は、第1仮固定具対向面26bから突出して当該第1仮固定具21と第2仮固定具22とが支柱4の基部16aを挟み込むときにその支柱4の基部16aの外周面に押圧される第1仮固定具押圧突起部26aを有し、第2仮固定具22は、第2仮固定具対向面32bから突出して当該第2仮固定具22と第1仮固定具21とが支柱4の基部16aを挟み込むときにその支柱4の基部16aの外周面に押圧される第2仮固定具押圧突起部32aを有する。このため、支柱4の基部16aをその軸方向に直交する方向における両側から第1仮固定具21と第2仮固定具22とで挟み込んで支柱仮固定具8を支柱4の基部16aに固定するときに、第1仮固定具押圧突起部26aと第2仮固定具押圧突起部32aとがそれらに集中した高い押圧力で支柱4の基部16aの外周面に押圧される。このため、支柱仮固定具8を支柱4の基部16aに対してより強固に固定することができる。
【0081】
(変形例)
本発明による流出防止柵の施工方法は、前記のようなものに必ずしも限定されない。例えば、本発明による流出防止柵の施工方法に以下のような構成を採用可能である。
【0082】
本発明による施工方法では、支柱の基部に取り付けていない支柱仮固定具を各鋼管杭の杭本体の内側に挿入してその支柱仮固定具を鋼管杭に固定し、その後、各鋼管杭の杭本体の内側に各支柱の基部を挿入してその基部に支柱仮固定具を固定してもよい。
【0083】
具体的に、このような本発明の一変形例による施工方法では、前記実施形態による施工方法と同様に、複数の支柱4の基部16aに取付目安位置103を示すマーキング104を施しておくとともに、鋼管杭埋設工程により港湾の岸壁100の地盤に複数の鋼管杭2を埋設する。その後、図15に示すように第1仮固定具21と第2仮固定具22とを第1挟込用締結部材40及び第2挟込用締結部材41で繋げた状態にした複数の支柱仮固定具8を岸壁100の地盤に埋設された複数の鋼管杭2の杭本体12の内側にそれぞれ挿入し、その各支柱仮固定具8の第1仮固定具被固定部29と第2仮固定具被固定部35とを対応する受部13の載置部15上に載置する。このとき、各支柱仮固定具8は、第1仮固定具嵌合部26と第2仮固定具嵌合部32との間に支柱4の基部16aを余裕を持って挿入可能なスペースが確保されるように第1挟込用ナット43及び第2挟込用ナット47を緩めた状態にしておく。
【0084】
そして、図16に示すように、第1仮固定具被固定部29と第2仮固定具被固定部35とを、それらがそれぞれ載置された受部13の載置部15に対して締結する。この締結は、前記実施形態で行った第1及び第2仮固定具被固定部29,35の対応する受部13の載置部15への締結と同様に行う。これにより、各鋼管杭2の杭本体12の内側でその各鋼管杭2に支柱仮固定具8が固定される。
【0085】
その後、各鋼管杭2の杭本体12の内側に各支柱4の基部16aを挿入するとともに、その基部16aを杭本体12の内側で固定された支柱仮固定具8の第1仮固定具嵌合部26と第2仮固定具嵌合部32との間に挿入する。そして、各支柱4をその基部16aに施されたマーキング104により示される取付目安位置103に第1仮固定具被固定部29の下面及び第2仮固定具被固定部35の下面の位置が一致する高さ位置に配置し、その各支柱4の基部16aを第1仮固定具21と第2仮固定具22とが挟み込むように、第1挟込用締結部材40の第1挟込用ナット43を締め付けて第1仮固定具一端側被締結部27と第2仮固定具他端側被締結部34とを締結するとともに第2挟込用締結部材41の第2挟込用ナット47を締め付けて第1仮固定具他端側被締結部28と第2仮固定具一端側被締結部33とを締結する。それによって、第1仮固定具嵌合部26と第2仮固定具嵌合部32とで基部16aを挟み付けて各支柱4を仮固定する。
【0086】
その後、前記実施形態と同様に、支柱高さ位置調整工程で各支柱4の高さ位置を調整した後、支柱本固定工程で各鋼管杭2の杭本体12の内側に支柱固定コンクリート10を打設して各支柱4の基部16aを固定するとともにその基部16aに固定された支柱仮固定具8を支柱固定コンクリート10中に埋め込む。
【0087】
また、本発明による施工方法では、支柱のうち杭本体の内側に挿入される基部よりも上側の部分に対して支柱仮固定具を固定し、また、その支柱仮固定具を鋼管杭の杭本体の上端よりも上側に配置された受部の載置部に載置して締結することによって、支柱を鋼管杭に対して仮固定してもよい。この場合、鋼管杭の杭本体の内側にコンクリートを打設してその杭本体の内側に挿入された支柱の基部を当該コンクリートによって固定した後、支柱仮固定具を支柱及び鋼管杭から取り外して除去してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 流出防止柵
2 鋼管杭
4 支柱
6 ビーム
8 支柱仮固定具
10 支柱固定コンクリート
16a 基部
21 第1仮固定具
22 第2仮固定具
23 挟込用締結部材
24 第1固定用締結部材
25 第2固定用締結部材
26 第1仮固定具嵌合部
26a 第1仮固定具押圧突起部
26b 第1仮固定具対向面
27 第1仮固定具一端側被締結部
28 第1仮固定具他端側被締結部
29 第1仮固定具被固定部
32 第2仮固定具嵌合部
32a 第2仮固定具押圧突起部
32b 第2仮固定具対向面
33 第2仮固定具一端側被締結部
34 第2仮固定具他端側被締結部
35 第2仮固定具被固定部
40 第1挟込用締結部材
41 第2挟込用締結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16