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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】磁気ヘッド及び磁気記録装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/31 20060101AFI20241209BHJP
   G11B 5/09 20060101ALI20241209BHJP
   G11B 5/02 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G11B5/31 A
G11B5/31 D
G11B5/09 301
G11B5/02 R
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021089833
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182326
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕治
(72)【発明者】
【氏名】成田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】高岸 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 知幸
(72)【発明者】
【氏名】永澤 鶴美
【審査官】松元 伸次
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-119027(JP,A)
【文献】特開2021-077435(JP,A)
【文献】特開2018-133119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B5/00-5/024
5/09
5/31-5/325
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を備え、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第2磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第2磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、
を含み、
前記第1磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素を含み、
前記第2磁性層は、(Fe100-xCo100-y(10atm%≦x≦50atm%、10atm%≦y≦90atm%)を含み、第2元素Eは、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第1磁性層は、前記第2元素を含まない、または、前記第1磁性層における前記第2元素の濃度は、前記第2磁性層における前記第2元素の濃度よりも低く、
前記組成比xは、25atm%以上35atm%以下である、磁気ヘッド。
【請求項2】
前記組成比yは、10atm%以上30atm%以下である、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
前記第1磁極から前記第2磁極への第1方向に沿う前記第1磁性層の第1厚さは、前記第1方向に沿う前記第2磁性層の第2厚さの0.25倍以上4倍以下である、請求項1または2に記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
前記第1厚さは、前記第2厚さの0.33倍以上である、請求項3に記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
前記第3非磁性層は、前記第1磁極及び前記第1磁性層と接した、請求項またはに記載の磁気ヘッド。
【請求項6】
前記第2非磁性層は、前記第2磁性層及び前記第2磁極と接した、請求項のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項7】
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を備え、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第2磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第2磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、
を含み、
前記第1磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素を含み、
前記第2磁性層は、(Fe100-xCo100-y(10atm%≦x≦50atm%、10atm%≦y≦90atm%)を含み、第2元素Eは、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第1磁性層は、前記第2元素を含まない、または、前記第1磁性層における前記第2元素の濃度は、前記第2磁性層における前記第2元素の濃度よりも低く、
前記第1磁極から前記第2磁極への第1方向に沿う前記第1磁性層の第1厚さは、前記第1方向に沿う前記第2磁性層の第2厚さの0.25倍以上4倍以下であり、
前記第2非磁性層は、前記第2磁性層及び前記第2磁極と接した、磁気ヘッド。
【請求項8】
前記第1厚さ及び前記第2厚さの和は、15nm以上である、請求項~7のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項9】
前記積層体は、第3磁性層をさらに含み、
前記第3磁性層は、前記第2磁性層と前記第2非磁性層との間に設けられ、
前記第3磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素を含み、
前記第3磁性層は、前記第2元素を含まない、または、前記第3磁性層における前記第2元素の濃度は、前記第2磁性層における前記第2元素の濃度よりも低い、請求項~8のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項10】
コイルをさらに備え、
前記コイルに流れる記録電流に応じて、前記第1磁極及び前記第2磁極の少なくともいずれかから生じる記録磁界が変化し、
前記積層体の電気抵抗は、前記記録電流が第1電流のときに第1抵抗であり、
前記電気抵抗は、前記記録電流が第2電流のときに第2抵抗であり、
前記電気抵抗は、前記記録電流が第3電流のときに第3抵抗であり、
前記第1電流の絶対値は、前記第2電流の絶対値よりも小さく、前記第3電流の絶対値よりも小さく、
前記第2電流の向きは、前記第3電流の向きと逆であり、
前記第1抵抗は、前記第2抵抗よりも低く、前記第3抵抗よりも低い、請求項~9のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項11】
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を含み、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、
前記第1磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第3磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、
を含み、
前記第1磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含み、
前記第2磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含み、
前記第3磁性層は、(Fe100-xCo100-y(10atm%≦x≦50atm%、10atm%≦y≦90atm%)を含み、第2元素Eは、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第1磁性層及び前記第2磁性層は、前記第2元素を含まない、または、前記第1磁性層及び前記第2磁性層における前記第2元素の濃度は、前記第3磁性層における前記第2元素の濃度よりも低く、
前記第1非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第2非磁性層は、Ta、Pt、W、Mo、Ir、Ru、Tb、Rh、Cr及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第3非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、磁気ヘッド。
【請求項12】
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を含み、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、
前記第1磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第3磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、
を含み、
前記第1磁性層は、(Fe100-xCo100-y(10atm%≦x≦50atm%、10atm%≦y≦90atm%)を含み、第2元素Eは、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第2磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含み、前記第2磁性層は、前記第2元素を含まない、または、前記第2磁性層における前記第2元素の濃度は、前記第1磁性層における前記第2元素の濃度よりも低く、
前記第3磁性層は、(Fe100-xCo100-yEX(10atm%≦x≦50atm%、10atm%≦y≦90atm%)を含み、第4元素EXは、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第2磁性層は、前記第4元素を含まない、または、前記第2磁性層における前記第4元素の濃度は、前記第3磁性層における前記第4元素の濃度よりも低く、
前記第1非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第2非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第3非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、磁気ヘッド。
【請求項13】
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を備え、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、
前記第1磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられCuを含む第1非磁性層と、
前記第3磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第1磁極と前記第3磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、
を含み、
前記第2磁性層は、第1磁性領域及び第2磁性領域を含み、前記第2磁性領域は、前記第2非磁性層と前記第1磁性領域との間にあり、
前記第1磁性領域は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素を含み、
前記第2磁性領域は、(Fe100-xCo100-y(10atm%≦x≦50atm%、10atm%≦y≦90atm%)を含み、第2元素Eは、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第1磁性領域は、前記第2元素を含まない、または、前記第1磁性領域における前記第2元素の濃度は、前記第2磁性領域における前記第2元素の濃度よりも低い、磁気ヘッド。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
電気回路と、
を備え、
前記電気回路は、前記積層体に電流を供給可能であり、
前記電流は、前記第1磁性層から前記第2磁性層への向きを有する、磁気記録装置。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
磁気記録媒体と、
を備え、
前記磁気記録媒体に前記磁気ヘッドにより情報が記録される、磁気記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気ヘッド及び磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ヘッドを用いて、HDD(Hard Disk Drive)などの磁気記録媒体に情報が記録される。磁気ヘッド及び磁気記録装置において、記録密度の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-277586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、記録密度の向上が可能な磁気ヘッド及び磁気記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、磁気ヘッドは、第1磁極と、第2磁極と、前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、を含む。前記積層体は、第1磁性層と、前記第1磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第2磁性層と、前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、前記第2磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第2非磁性層と、前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、を含む。前記第1磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素を含む。前記第2磁性層は、(Fe100-xCo100-y(10atm%≦x≦50atm%、10atm%≦y≦90atm%)を含む。第2元素Eは、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。前記第1磁性層は、前記第2元素を含まない、または、前記第1磁性層における前記第2元素の濃度は、前記第2磁性層における前記第2元素の濃度よりも低い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1(a)及び図1(b)は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的断面図である。
図3図3は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図5図5は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的平面図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
図8図8は、第1実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
図9図9(a)及び図9(b)は、磁気ヘッドに含まれる磁性層の特性を例示するグラフ図である。
図10図10は、磁気ヘッドに含まれる磁性層の特性を例示するグラフ図である。
図11図11は、磁気ヘッドに含まれる磁性層の特性を例示するグラフ図である。
図12図12は、第2実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図13図13(a)及び図13(b)は、実施形態に係る磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
図14図14(a)~図14(c)は、第2実施形態に係る磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
図15図15は、磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
図16図16は、第2実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図17図17は、第2実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図18図18は、第3実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図19図19は、磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
図20図20は、第3実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図21図21は、磁気ヘッドに含まれる磁性層の特性を例示するグラフ図である。
図22図22は、磁気ヘッドに含まれる磁性層の特性を例示するグラフ図である。
図23図23は、第4実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図24図24は、実験試料を例示する模式的断面図である。
図25図25は、実験結果を例示するグラフ図である。
図26図26(a)~図26(c)は、第4実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
図27図27は、第4実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図28図28は、第4実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図29図29は、第5実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図30図30は、第5実施形態に係る磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
図31図31は、磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
図32図32(a)~図32(c)は、第5実施形態に係る磁気記録装置の特性を例示する模式的断面図である。
図33図33は、第6実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図34図34は、実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図35図35は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図36図36は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図37図37は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図38図38(a)及び図38(b)は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1(a)及び図1(b)は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
図1(a)は、断面図である。図1(b)は、図1(a)の矢印AR1から見た平面図である。
図2は、第1実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的断面図である。
図2に示すように、実施形態に係る磁気記録装置210は、磁気ヘッド110と、電気回路20Dと、を含む。磁気記録装置210は、磁気記録媒体80を含んでも良い。磁気記録装置210において、少なくとも記録動作が行われる。記録動作において、磁気ヘッド110を用いて磁気記録媒体80に情報が記録される。
【0009】
磁気ヘッド110は、記録部60を含む。後述するように、磁気ヘッド110は、再生部を含んでも良い。記録部60は、第1磁極31と、第2磁極32と、積層体20と、を含む。積層体20は、第1磁極31と第2磁極32との間に設けられる。
【0010】
例えば、第1磁極31及び第2磁極32は、磁気回路を形成する。第1磁極31は、例えば、主磁極である。第2磁極32は、例えば、トレーリングシールドである。第1磁極31がトレーリングシールドで、第2磁極32が主磁極でも良い。
【0011】
磁気記録媒体80から磁気ヘッド110への方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。Z軸方向は、例えばハイト方向に対応する。X軸方向は、例えば、ダウントラック方向に対応する。Y軸方向は、例えば、クロストラック方向に対応する。ダウントラック方向に沿って、磁気記録媒体80と磁気ヘッド110とが相対的に移動する。磁気記録媒体80の所望の位置に、磁気ヘッド110から生じる磁界(記録磁界)が印加される。磁気記録媒体80の所望の位置の磁化が、記録磁界に応じた方向に制御される。これにより、磁気記録媒体80に情報が記録される。
【0012】
第1磁極31から第2磁極32への方向を第1方向D1とする。第1方向D1は、実質的にX軸方向に沿う。実施形態において、第1方向D1は、X軸方向に対して、小さい角度で傾斜しても良い。
【0013】
図2に示すように、コイル30cが設けられる。この例では、コイル30cの一部は、第1磁極31と第2磁極32との間にある。この例では、シールド33が設けられている。X軸方向において、シールド33と第2磁極32との間に第1磁極31がある。コイル30cの別の一部が、シールド33と第1磁極31との間にある。これらの複数の要素の間に、絶縁部30iが設けられる。シールド33は、例えば、リーディングシールドである。磁気ヘッド110は、サイドシールド(図示しない)を含んでも良い。
【0014】
図2に示すように、記録回路30Dから、コイル30cに記録電流Iwが供給される。第1磁極31から、記録電流Iwに応じた記録磁界が磁気記録媒体80に印加される。
【0015】
図2に示すように、第1磁極31は、媒体対向面30Fを含む。媒体対向面30Fは、例えば、ABS(Air Bearing Surface)である。媒体対向面30Fは、例えば、磁気記録媒体80に対向する。媒体対向面30Fは、例えば、X-Y平面に沿う。
【0016】
図2に示すように、電気回路20Dが、積層体20に電気的に接続される。この例では、積層体20は、第1磁極31及び第2磁極32と電気的に接続される。磁気ヘッド110に、第1端子T1及び第2端子T2が設けられる。第1端子T1は、第1配線W1及び第1磁極31を介して積層体20と電気的に接続される。第2端子T2は、第2配線W2及び第2磁極32を介して積層体20と電気的に接続される。電気回路20Dから、例えば、電流(例えば、直流電流)が積層体20に供給される。
【0017】
図1(a)及び図1(b)に示すように、積層体20は、第1磁性層21、第2磁性層22、第1非磁性層41、第2非磁性層42及び第3非磁性層43を含む。図1(a)及び図1(b)においては、絶縁部30iは省略されている。
【0018】
第2磁性層22は、第1磁性層21と第2磁極32との間に設けられる。第1非磁性層41は、第1磁性層21と第2磁性層22との間に設けられる。第2非磁性層42は、第2磁性層22と第2磁極32との間に設けられる。第3非磁性層43は、第1磁極31と第1磁性層21との間に設けられる。
【0019】
例えば、第3非磁性層43は、第1磁極31及び第1磁性層21と接して良い。第1非磁性層41は、第1磁性層21及び第2磁性層22と接して良い。第2非磁性層42は、第2磁性層22及び第2磁極32と接して良い。
【0020】
第1非磁性層41、第2非磁性層42及び第3非磁性層43の少なくともいずれかは、第3元素を含む。第3元素は、例えば、Cu、Au、Cr、V、Al及びAgよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。このような材料を含む非磁性層において、例えば、高いスピン透過率が得られる。例えば、高い発振強度が得られる。
【0021】
第2非磁性層42及び第3非磁性層43の少なくともいずれかは、第4元素を含んでも良い。第4元素は、例えば、Ru、Ir、Ta、Rh、Pd、Pt及びWよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。このような材料を含む非磁性層において、例えば、低いスピン透過率が得られる。例えば、安定した発振が得やすくなる。第2非磁性層42及び第3非磁性層43の少なくともいずれかは、上記の第3元素及び第4元素を含んでも良い。
【0022】
第1実施形態において、第1磁性層21は、第1元素を含む。第1元素は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む。
【0023】
第2磁性層22は、第1元素及び第2元素を含む。第2元素は、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1磁性層21は、第2元素を含まない。または、第1磁性層21における第2元素の濃度は、第2磁性層22における第2元素の濃度よりも低い。
【0024】
例えば、第2磁性層22における上記の第2元素の濃度は、10原子%以上80原子%以下である。このような材料を含む第2磁性層22は、例えば、負のスピン分極を有する。一方、例えば、第1磁性層21は、正のスピン分極を有する。
【0025】
図1(b)に示すように、このような積層体20に電流icが供給される。電流icは、例えば、上記の電気回路20Dから供給される。図1(b)に示すように、電流icは、第1磁性層21から第2磁性層22への向きを有する。図1(b)に示すように、電流icに伴う電子流jeは、第2磁性層22から第1磁性層21への向きを有する。
【0026】
例えば、しきい値以上の電流icが積層体20を流れることで、積層体20に含まれる磁性層の磁化が発振する。積層体20は、例えばSTO(Spin-Torque Oscillator)として機能する。発振に伴い、積層体20から交流磁界(例えば高周波磁界)が発生する。積層体20で発生した交流磁界が磁気記録媒体80に印加され、磁気記録媒体80への書き込みがアシストされる。例えば、MAMR(Microwave Assisted Magnetic Recording)が実施可能である。
【0027】
磁気ヘッド110においては、第1磁性層21及び第2磁性層22は、例えば、発振層として機能する。例えば、第2磁性層22からの負の透過のスピントルクが第1磁性層21に作用する。例えば、第1磁性層21で反射したスピントルクが第2磁性層22に作用する。例えば、第1磁性層21の磁化、及び、第2磁性層22の磁化は、相互に作用しつつ回転する。
【0028】
図1(b)に示すように、第1方向(第1磁極31から第2磁極32への方向)に沿う第1磁性層21の厚さを第1厚さt1とする。第1方向に沿う第2磁性層22の厚さを第2厚さt2とする。第1実施形態において、例えば、第1厚さt1は、第2厚さt2と同様でよい。これにより、後述するように、発振が得やすくなる。
【0029】
第1方向に沿う第1非磁性層41の厚さを厚さt41とする。第1方向に沿う第2非磁性層42の厚さを厚さt42とする。第1方向に沿う第3非磁性層43の厚さを厚さt43とする。これらの厚さは、例えば、0.5nm以上6nm以下である。これらの厚さが0.5nm以上であることにより、安定した発振が容易になる。これらの厚さが6nm以下であることにより、例えば、スピン透過率が高くなりやすい。例えば、高い発振強度が得易い。
【0030】
以下、積層体20における発振の挙動についてのシミュレーション結果の例について説明する。シミュレーションのモデルにおいて、図1(b)に示す構成が設けられる。すなわち、第1磁極31、第2磁極32、第1磁性層21、第2磁性層22、及び、第1~第3非磁性層41~43が設けられる。図1(b)に例示する電流ic(しきい値以上の電流)が供給されたときの磁化の発振特性がシミュレーションされる。シミュレーションのモデルにおいて、第1磁性層21の物性値として、Fe70Co30合金の物性値が用いられる。第2磁性層22の物性値として、Fe70Cr30合金の物性値が用いられる。第1非磁性層41及び第3非磁性層43の物性値としてCuの物性値が用いられる。第2非磁性層42の物性値としてTaの物性値が用いられる。厚さt41~t43は、2nmである。
【0031】
図3は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図3に例示するシミュレーションにおいて、第1磁性層21の第1厚さt1と、第2磁性層22の第2厚さt2の和を19nmに一定にした状態で、第1厚さt1の第2厚さt2に対する比が変更される。図3の横軸は、厚さ比RR1である。厚さ比RR1は、第1厚さt1の第2厚さt2に対する比(すなわち、t1/t2)である。縦軸は、発振強度OSである。発振強度OSは、第1磁性層21の磁化の振動の振幅と第1厚さt1との積と、第2磁性層22の磁化の振動の振幅と第2厚さt2との積と、の和である。発振強度OSが高い場合に、例えば、MAMRによる記録密度が向上し易い。
【0032】
図3に示すように、厚さ比RR1が1に近いときに、高い発振強度OSが得られる。例えば、厚さ比RR1が0.25以上4以下において、安定した発振が得られる。厚さ比RR1は、0.33以上でも良い。より高い発振強度OSが得られる。厚さ比RR1は、3以下でも良い。より高い発振強度OSが得られる。
【0033】
第1実施形態においては、第1厚さt1は、第2厚さt2の0.25倍以上4倍以下であることが好ましい。これにより、高い発振強度OSが得られる。安定した発振が得られる。第1厚さt1は、第2厚さt2の0.33倍以上3倍以下でも良い。より高い発振強度OSが得られる。より安定した発振が得られる。第1実施形態によれば、安定したMAMRが実施できる。記録密度の向上が可能な磁気ヘッドを提供できる。
【0034】
図4(a)及び図4(b)は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図4(a)の横軸は、第1厚さt1である。図4(a)において、第2厚さt2は、15nmである。図4(b)の横軸は、第2厚さt2である。図4(b)において、第1厚さt1は、15nmである。図4(a)及び図4(b)において、積層体20に供給される電流icは、2.5×10A/cmである。図4(a)及び図4(b)の縦軸は、発振強度OSである。
【0035】
図4(a)に示すように、第1厚さt1は、5nm以上であることが好ましい。これにより、高い発振強度OSが得られる。第1厚さt1は、例えば、20nm以下で良い。例えば、第1磁極31と第2磁極32との間の距離(例えば、記録ギャップ)を短くできる。例えば、高い記録密度が得やすい。
【0036】
図4(b)に示すように、第2厚さt2は、5nm以上であることが好ましい。これにより、高い発振強度OSが得られる。第2厚さt2は、20nm以下で良い。例えば、記録ギャップを短くできる。例えば、高い記録密度が得やすい。
【0037】
図5は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図5の横軸は、第1厚さt1と第2厚さt2の和tsである。縦軸は、発振強度OSである。
【0038】
図5に示すように、第1厚さt1及び第2厚さt2の和tsは、15nm以上であることが好ましい。これにより、高い発振強度OSが得られる。和tsは、40nm以下で良い。例えば、記録ギャップを短くできる。例えば、高い記録密度が得やすい。
【0039】
図6(a)及び図6(b)は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的平面図である。
図6(a)に示すように、第1実施形態に係る磁気ヘッド111は、第1磁極31と、第2磁極32と、積層体20と、を含む。磁気ヘッド111においても、積層体20は、第1磁性層21、第2磁性層22、第1非磁性層41、第2非磁性層42及び第3非磁性層43を含む。磁気ヘッド111においては、第1磁性層21及び第2磁性層22の少なくともいずれかは、複数の領域を含む。磁気ヘッド111におけるこれ以外の構成は、磁気ヘッド110における構成と同様で良い。
【0040】
例えば、第1磁性層21は、第1磁性領域21a及び第2磁性領域21bを含む。第2磁性領域21bは、第1磁性領域21aと第1非磁性層41との間にある。例えば、第1磁性領域21aの飽和磁化は、第2磁性領域21bの飽和磁化よりも大きい。これにより、例えば、安定した発振を得ることが容易になる。
【0041】
例えば、第1磁性領域21aの飽和磁化は、第2磁性領域21bの飽和磁化の1.2倍以上である。これにより、安定した発振が得易い。第1磁性領域21aの飽和磁化は、第2磁性領域21bの飽和磁化の3倍以下でも良い。これにより、安定した発振が得易い。
【0042】
例えば、第1磁性領域21aにおけるFeの濃度は、第2磁性領域21bにおけるFeの濃度よりも高い。例えば、第1磁性領域21aの飽和磁化は、第2磁性領域21bの飽和磁化よりも大きくなり易い。例えば、第1磁性領域21aにおけるNiの濃度は、第2磁性領域21bにおけるNiの濃度よりも低い。これにより、例えば、第1磁性領域21aの飽和磁化は、第2磁性領域21bの飽和磁化よりも大きくなり易い。第1磁性領域21a及び第2磁性領域21bの境界は、明確でも不明確でも良い。
【0043】
例えば、第2磁性層22は、第3磁性領域22c及び第4磁性領域22dを含む。第4磁性領域22dは、第3磁性領域22cと第1非磁性層41との間にある。例えば、第3磁性領域22cの飽和磁化は、第4磁性領域22dの飽和磁化よりも大きい。これにより、例えば、安定した発振を得ることが容易になる。
【0044】
例えば、第3磁性領域22cの飽和磁化は、第4磁性領域22dの飽和磁化の1.2倍以上である。これにより、安定した発振を得易い。第3磁性領域22cの飽和磁化は、第4磁性領域22dの飽和磁化の3倍以下でも良い。これにより、安定した発振を得易い。
【0045】
例えば、第3磁性領域22cにおけるFeの濃度は、第4磁性領域22dにおけるFe濃度よりも高い。これにより、例えば、第3磁性領域22cの飽和磁化は、第4磁性領域22dの飽和磁化よりも大きくなり易い。例えば、第3磁性領域22cにおける第2元素の濃度は、第4磁性領域22dにおける第2元素の濃度よりも低い。これにより、例えば、第3磁性領域22cの飽和磁化は、第4磁性領域22dの飽和磁化よりも大きくなり易い。第3磁性領域22c及び第4磁性領域22dの境界は、明確でも不明確でも良い。
【0046】
図6(b)に示すように、第1実施形態に係る磁気ヘッド112は、第1磁極31と、第2磁極32と、積層体20と、を含む。磁気ヘッド112においては、積層体20は、第1磁性層21、第2磁性層22、第1非磁性層41、第2非磁性層42及び第3非磁性層43に加えて、第3磁性層23を含む。磁気ヘッド112におけるこれ以外の構成は、磁気ヘッド110または磁気ヘッド111における構成と同様で良い。
【0047】
第3磁性層23は、第2磁性層22と第2非磁性層42との間に設けられる。第3磁性層23は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素を含む。第3磁性層23は、第2元素を含まない。または、第3磁性層23における第2元素の濃度は、第2磁性層22における第2元素の濃度よりも低い。既に説明したように、第2元素は、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0048】
例えば、第3磁性層23の飽和磁化は、第2磁性層22の飽和磁化よりも高い。これにより、例えば、安定した発振を得ることが容易になる。第3磁性層23と第1磁性層21との間の境界は、明確でも不明確でも良い。第3磁性層23は、第2磁性層22と連続して良い。
【0049】
磁気ヘッド112において、第1磁性層21の第1厚さt1は、例えば、第1方向(第1磁極31から第2磁極32への方向)に沿う第3磁性層23の第3厚さt3と第2磁性層22の第2厚さt2との和の0.8倍以上1.25倍以下である。例えば、高い発振強度OSが得られる。安定した発振が得られる。
【0050】
図7(a)及び図7(b)は、第1実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
図7(a)及び図7(b)の横軸は、コイル30cに流れる記録電流Iwである。コイル30cに流れる記録電流Iwに応じて、第1磁極31及び第2磁極32の少なくともいずれかから生じる記録磁界が変化する。記録磁界が積層体20に印加される。したがって、横軸は、積層体20に印加される磁界に対応する。図7(a)及び図7(b)の縦軸は、積層体20の電気抵抗Rxである。
【0051】
図7(a)において、積層体20に供給される電流icは、発振のしきい値電流Ithよりも小さい。図7(a)の例では、電流icは、例えば、1.0×10A/cmである。図7(b)において、積層体20に供給される電流icは、しきい値電流Ithよりも大きい。図7(b)の例では、電流icは、1.0×10A/cmである。図7(b)における電流icは、図7(a)における電流icの100倍である。図7(a)は、非発振状態における特性に対応する。図7(b)は、発振状態における特性に対応する。これらの図は、電気抵抗Rxの時間的な平均値の特性を例示している。積層体20が発振している場合、電気抵抗Rxは発振に伴って変化する。電気抵抗Rxとして時間的な平均の抵抗が採用される。時間的な平均により、例えば、ノイズなどの影響も抑制できる。
【0052】
図7(a)に示すように、電流icがしきい値電流Ithよりも十分に小さい場合、記録電流Iw(すなわち磁界)の絶対値が増大すると、電気抵抗Rxは上昇する。記録電流Iwの絶対値が十分に大きいと、電気抵抗Rxは、飽和する。例えば、電気抵抗Rxが飽和するときの記録電流Iwは、例えば、50mAである。このときの磁界は、約15000Oeである。
【0053】
第1実施形態に係る磁気記録装置ヘッドにおいては、例えば、図7(a)に例示した特性が生じる。図7(a)に示すように、積層体20の電気抵抗Rxは、記録電流Iwが第1電流I1のときに第1抵抗Rx1である。電気抵抗Rxは、記録電流Iwが第2電流I2のときに第2抵抗Rx2である。電気抵抗Rxは、記録電流Iwが第3電流I3のときに第3抵抗Rx3である。第1電流I1の絶対値は、第2電流I2の絶対値よりも小さく、第3電流I3の絶対値よりも小さい。第2電流I2の向きは、第3電流I3の向きと逆である。第1抵抗Rx1は、第2抵抗Rx2よりも低く、第3抵抗Rx3よりも低い。例えば、谷型の電流-抵抗特性が生じる。第1電流I1は実質的に0で良い。
【0054】
図7(b)に示すように、電流icがしきい値電流Ithよりも大きく、発振が生じている場合、電気抵抗Rxは、山及び谷の特性を示す。この場合も、第2電流I2及び第3電流I3の絶対値が十分に大きい場合、谷型の特性と見なせる。例えば、第2電流I2及び第3電流I3の絶対値は、電流icがしきい値電流Ithよりも十分に小さい場合において電気抵抗Rxが飽和するときの値として良い。この場合も、第1抵抗Rx1は、第2抵抗Rx2よりも低く、第3抵抗Rx3よりも低い。これに対して、一般的なSTOにおいては、山型の特性が生じる。第1実施形態における谷型の特性は、第1実施形態に係る構成による特異的な特性と考えられる。
【0055】
このような特異的な特性は、第1磁性層21が正の分極を持ち、第2磁性層22が負の分極を持つことに関係している可能性がある。このような組み合わせにおいて、記録電流Iwの絶対値が大きい場合(すなわち、磁界の絶対値が大きい場合)、第1磁性層21及び第2磁性層22の磁化の向きが互いに平行に近くなり、抵抗が増大していると考えられる。一般的なSTOにおいては、いずれの磁性層も正の分極を持つ。磁化の向きが互いに平行に近くなる場合に抵抗が減少する。
【0056】
図8は、第1実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
図8の横軸は時間tmである。縦軸は、磁化Mz(規格化値)である。図8には、第1磁性層21の磁化Mz1と、第2磁性層22の磁化Mz2と、に関する例が示されている。図8に示すように、磁化Mz1及び磁化Mz2は、逆位相(例えば、逆向きを保った状態)で回転する。
【0057】
第1実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成1)
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を備え、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第2磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第2磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、
を含み、
前記第1磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素を含み、
前記第2磁性層は、前記第1元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素と、を含み、
前記第1磁性層は、前記第2元素を含まない、または、前記第1磁性層における前記第2元素の濃度は、前記第2磁性層における前記第2元素の濃度よりも低く、
前記第1磁極から前記第2磁極への第1方向に沿う前記第1磁性層の第1厚さは、前記第1方向に沿う前記第2磁性層の第2厚さの0.25倍以上4倍以下である、磁気ヘッド。
【0058】
(構成2)
前記第1厚さは、前記第2厚さの0.33倍以上である、構成1記載の磁気ヘッド。
【0059】
(構成3)
前記第3非磁性層は、前記第1磁極及び前記第1磁性層と接した、構成1または2に記載の磁気ヘッド。
【0060】
(構成4)
前記第1非磁性層は、前記第1磁性層及び前記第2磁性層と接した、構成1~3のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0061】
(構成5)
前記第2非磁性層は、前記第2磁性層及び前記第2磁極と接した、構成1~4のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0062】
(構成6)
前記第1非磁性層、前記第2非磁性層及び前記第3非磁性層の少なくともいずれかは、Cu、Au、Cu、V、Al及びAgよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第3元素を含む、構成1記載の磁気ヘッド。
【0063】
(構成7)
前記第2厚さは、5nm以上である、構成1~6のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0064】
(構成8)
前記第1厚さは、5nm以上である、構成1~7のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0065】
(構成9)
前記第1厚さ及び前記第2厚さの和は、15nm以上である、構成1~8のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0066】
(構成10)
前記第1磁性層は、第1磁性領域及び第2磁性領域を含み、
前記第2磁性領域は、前記第1磁性領域と前記第1非磁性層との間にあり、
前記第1磁性領域の飽和磁化は、前記第2磁性領域の飽和磁化よりも大きい、構成1~9のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0067】
(構成11)
前記第1磁性層は、第1磁性領域及び第2磁性領域を含み、
前記第2磁性領域は、前記第1磁性領域と前記第1非磁性層との間にあり、
前記第1磁性領域におけるFeの濃度は、前記第2磁性領域におけるFeの濃度よりも高い、構成1~9のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0068】
(構成12)
前記第2磁性層は、第3磁性領域及び第4磁性領域を含み、
前記第4磁性領域は、前記第3磁性領域と前記第1非磁性層との間にあり、
前記第3磁性領域の飽和磁化は、前記第4磁性領域の飽和磁化よりも大きい、構成1~11のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0069】
(構成13)
前記第2磁性層は、第3磁性領域及び第4磁性領域を含み、
前記第4磁性領域は、前記第3磁性領域と前記第1非磁性層との間にあり、
前記第3磁性領域におけるFeの濃度は、前記第4磁性領域におけるFeの濃度よりも高い、構成1~12のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0070】
(構成14)
前記積層体は、第3磁性層をさらに含み、
前記第3磁性層は、前記第2磁性層と前記第2非磁性層との間に設けられ、
前記第3磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素を含み、
前記第3磁性層は、前記第2元素を含まない、または、前記第3磁性層における前記第2元素の濃度は、前記第2磁性層における前記第2元素の濃度よりも低い、構成1~13のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0071】
(構成15)
前記第2磁性層における前記第2元素の濃度は、10原子%以上80原子%以下である、構成1~14のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0072】
(構成16)
前記第1磁性層から前記第2磁性層への向きに電流が前記積層体に供給される、構成1~15のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0073】
(構成17)
前記電流が前記積層体に供給されたときに、前記積層体から交流磁界が生じる、構成16記載の磁気ヘッド。
【0074】
(構成18)
コイルをさらに備え、
前記コイルに流れる記録電流に応じて、前記第1磁極及び前記第2磁極の少なくともいずれかから生じる記録磁界が変化し、
前記積層体の電気抵抗は、前記記録電流が第1電流のときに第1抵抗であり、
前記電気抵抗は、前記記録電流が第2電流のときに第2抵抗であり、
前記電気抵抗は、前記記録電流が第3電流のときに第3抵抗であり、
前記第1電流の絶対値は、前記第2電流の絶対値よりも小さく、前記第3電流の絶対値よりも小さく、
前記第2電流の向きは、前記第3電流の向きと逆であり、
前記第1抵抗は、前記第2抵抗よりも低く、前記第3抵抗よりも低い、構成1~17のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0075】
(構成19)
構成1~16のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
電気回路と、
を備え、
前記電気回路は、前記積層体に電流を供給可能であり、
前記電流は、前記第1磁性層から前記第2磁性層への向きを有する、磁気記録装置。
【0076】
(構成20)
前記電気回路が、前記積層体に電流を供給したときに、
前記積層体から交流磁界が生じる、構成19記載の磁気記録装置。
【0077】
第1実施形態において、第2磁性層2は、(Fe100-xCo100-y(10atm%≦x≦50atm%、10atm%≦y≦90atm%)を含む。第2元素Eは、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。組成比x及び組成比yは、原子パーセント(atm%)である。第1磁性層2は、第2元素Eを含まない。または、第1磁性層21における第2元素Eの濃度は、第2磁性層22における第2元素Eの濃度よりも低い。このような材料により、第2磁性層22において、例えば、高い飽和磁束密度と、負で絶対値が大きいスピン分極と、が得やすい。
【0078】
図9(a)及び図9(b)は、磁気ヘッドに含まれる磁性層の特性を例示するグラフ図である。
図9(a)は、磁性層が第2元素を含まないときの特性を例示している。この例において、磁性層は、Fe100-xCoを含む。図9(a)の横軸は、組成比x(Coの濃度)である。縦軸は、飽和磁束密度Bm1である。図9(a)に示すように、組成比xが10tm%以上50atm%以下において、高い飽和磁束密度Bm1が得られる。組成比xが75atm以下において、磁性層はBCC構造を有する。組成比xが75atmを超えると、磁性層はfcc構造を有する。
【0079】
図9(b)は、磁性層における第2元素の組成比を変えたときの特性を例示している。図9(b)の横軸は、組成比yである。この例では、第2元素Eは、Crである。縦軸は、飽和磁束密度Bm1である。図9(b)に示すように、組成比yが高いと、飽和磁束密度Bm1が得られる。磁性層がFe50Co50、またはFe90Co10を含む場合は、実質的に同等の特性が得られる。磁性層がFe70Co30を含む場合、他の組成のときと比べて、同じ組成比yにおいて高い飽和磁束密度Bm1が得られる。磁性層が第2元素を含む場合において、組成比xは、10atm%以上50atm%以下であることが好ましい。
【0080】
図10は、磁気ヘッドに含まれる磁性層の特性を例示するグラフ図である。
図10は、CoのFeに対する組成比が固定されたときに組成比yを変更したときの磁性層のスピン分極の変化を例示している。図10の横軸は、第2元素Eの組成比yである。縦軸は、スピン分極Ps1(スピン分極の値)である。図10に示すように、第2元素Eの組成比yが3atm%以上において、負のスピン分極Ps1が得られる。組成比yが高いと、負のスピン分極Ps1の絶対値が大きくなる。組成比yが10%以上において、絶対値が大きい負のスピン分極Ps1が得られる。例えば、組成比yは、10atm%以上30atm%以下でも良い。
【0081】
図9(b)及び図10から分かるように、実施形態において、Coの組成比xは、10atm%以上50atm%以下であり、第2元素Eの組成比yは、10atm%以上であることが好ましい。第2元素Eの組成比yは、90atm%以下であることが好ましい。これにより、高い飽和磁束密度Bm1が得られる。実施形態において、第2元素Eの組成比yは、10atm%以上50atm%以下でも良い。
【0082】
図11は、磁気ヘッドに含まれる磁性層の特性を例示するグラフ図である。
図11は、第2磁性層22の組成を変更したときの発振強度OSを例示している。この例において、組成比yは20atm%であり、Coの組成比xが変更される。第2元素Eは、Crである。図11の横軸は、組成比xである。縦軸は、発振強度OSである。図11から分かるように、組成比xが10atm%以上50atm%以下において、高い発振強度OSが得られる。この条件において、例えば、MAMRによる記録密度が向上し易い。組成比xは、25atm%以上35atm%以下であることがより好ましい。高い発振強度OSが安定して得易い。
【0083】
このように、第2磁性層22(例えば負のスピン分極を有する磁性層)が上記の組成を有することが好ましい。これにより、例えば高い飽和磁束密度Bm1と、絶対値が大きい負のスピン分極Ps1と、が得やすい。例えば、安定した発振が得易い。
【0084】
第1実施形態において、第2磁性層22の第2厚さt2は、5nm以上15nm以下であることが好ましい。第1実施形態において、第1非磁性層41の厚さt41、及び、第2非磁性層42の厚さt42のそれぞれは、0.5nm以上6nm以下であることが好ましい。
【0085】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
第2実施形態に係る磁気記録装置210も、磁気ヘッド110Aと、電気回路20Dと、を含む。磁気記録装置210は、磁気記録媒体80を含んでも良い。磁気記録装置210において、例えば、少なくとも記録動作が行われる。記録動作において、磁気ヘッド110Aを用いて磁気記録媒体80に情報が記録される。
【0086】
この例においても、電気回路20D(図2参照)が、積層体20に電気的に接続される。この例では、積層体20は、第1磁極31及び第2磁極32と電気的に接続される。磁気ヘッド110Aに、第1端子T1及び第2端子T2が設けられる。第1端子T1は、第1配線W1及び第1磁極31を介して積層体20と電気的に接続される。第2端子T2は、第2配線W2及び第2磁極32を介して積層体20と電気的に接続される。電気回路20Dから、例えば、電流(例えば、直流電流)が積層体20に供給される。
【0087】
図12に示すように、積層体20は、第1磁性層21、第2磁性層22、第3磁性層23、第1非磁性層41、第2非磁性層42及び第3非磁性層43を含む。この例では、第4非磁性層44が設けられている。
【0088】
第2磁性層22は、第1磁極31と第1磁性層21との間に設けられる。第3磁性層23は、第1磁極31と第2磁性層22との間に設けられる。第1非磁性層41は、第1磁性層21と第2磁極32との間に設けられる。第2非磁性層42は、第2磁性層22と第1磁性層21との間に設けられる。第3非磁性層43は、第3磁性層23と第2磁性層22との間に設けられる。第4非磁性層44が設けされる場合において、第4非磁性層44は、第1磁極31と第3磁性層23との間に設けられる。
【0089】
第1磁性層21は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む。第2磁性層22は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む。例えば、第1磁性層21及び第2磁性層22は、正のスピン分極を有する。
【0090】
第3磁性層23は、第1元素及び第2元素を含む。第1元素は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む。第2元素は、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2元素は、例えば、添加元素である。第3磁性層23における第2元素の比率(例えば濃度)は、例えば、1原子%以上80原子%以下である。例えば、第3磁性層23は、負のスピン分極を有する。
【0091】
第1磁性層21及び第2磁性層22は、上記の第2元素を実質的に含まない。または、第1磁性層21及び第2磁性層22における第2元素の濃度は、第3磁性層23における第2元素の濃度よりも低い。
【0092】
第1非磁性層41は、例えば、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1非磁性層41は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0093】
第2非磁性層42は、例えば、Ta、Pt、W、Mo、Ir、Ru、Tb、Rh、Cr及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2非磁性層42は、例えば、偏極したスピンを減衰させる層として機能する。
【0094】
第3非磁性層43は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第3非磁性層43は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0095】
第4非磁性層44は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第4非磁性層44は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0096】
図12に示すように、例えば、電気回路20Dから積層体20に供給される電流jc1は、第2磁極32から第1磁極31への向きを有する。電流jc1は、第1磁性層21から第2磁性層22への向きを有する。電子流je1は、第1磁極31から第2磁極32への向きを有する。
【0097】
例えば、積層体20に電流jc1が供給されないときは、第1磁性層21の磁化の向きは、第1磁極31の磁化の向き及び第2磁極32の磁化の向きと実質的に同じである。第1磁極31から出た磁界(記録磁界)の一部は、磁気記録媒体80に向かう。一方、第1磁極31から出た磁界(記録磁界)の別の一部は、磁気記録媒体80に向かうことなく、積層体20を通過して、第2磁極32に入る。このため、第1磁極31から出た記録磁界のうちで磁気記録媒体80に向かう割合は、少ない。
【0098】
積層体20に電流jc1が供給されると、第1磁性層21の磁化の向きは、第1磁極31の磁化の向き及び第2磁極32の磁化の向きに対して反転する。これにより、第1磁極31から出た磁界(記録磁界)は、積層体20に向かい難くなる。このため、第1磁極31から出た記録磁界のうちで磁気記録媒体80に向かう割合が、積層体20に電流jc1が供給されない場合に比べて高くなる。第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。
【0099】
この現象は、第1磁極31と第2磁極32との間の距離(記録ギャップ)が短くなると、より顕著になる。このような積層体20を用いることで、記録ギャップが小さくなった場合でも良好な記録が実施できる。第2実施形態によれば、良好な記録ができる記録ギャップを小さくできる。第2実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0100】
一方、複数の磁性層を含む積層体から発生した高周波磁界を磁気記録媒体80に印加して、磁気記録媒体80の磁気特性を局部的に制御して記録を行うMAMR(Microwave Assisted Magnetic Recording)がある。MAMRにおいては、磁性層の磁化の発振により高周波磁界が発生する。
【0101】
これに対して、第2実施形態においては、第1磁性層21の磁化が第1磁極31の磁化及び第2磁極32の磁化に対して反転する。MAMRとは異なる動作により、第1磁極31から出た磁界が磁気記録媒体80に効率的に印加される。
【0102】
以下、第2実施形態に係る磁気ヘッド110Aの特性の例について説明する。
【0103】
図13(a)及び図13(b)は、実施形態に係る磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
これらの図は、実施形態に係る積層体20に流れる電流jc1の大きさと、積層体20の電気抵抗との関係を模式的に示している。これらの図の横軸は、電流jc1の大きさである。図13(a)の縦軸は、積層体20の電気抵抗Rz1である。
【0104】
図13(a)に示すように、電流jc1が大きくなると、電気抵抗Rz1は大きくなる。図13(a)に示すように、電流jc1の大きさを、第1電流範囲ir1、第2電流範囲ir2及び第3電流範囲ir3に分けることができる。第3電流範囲ir3は、第1電流範囲ir1と第2電流範囲ir2との間にある。
【0105】
第1電流範囲ir1及び第2電流範囲ir2においては、電気抵抗Rz1は、電流jc1の大きさに対して二次関数に従って変化する。これは、電流jc1が大きくなることに応じて積層体20の温度が上昇することに起因すると考えられる。
【0106】
第3電流範囲ir3における電気抵抗Rz1の変化は、温度の上昇の影響とは異なる。第3電流範囲ir3における電気抵抗Rz1の変化は、磁性層の磁化の反転率に基づく磁気抵抗効果によると考えられる。
【0107】
図13(b)において、図13(a)における二次関数の変化(温度の影響)を除去して、電流jc1の大きさと、電気抵抗Rz2と、の関係が示されている。図13(b)に示すように、二次関数の影響を除去した場合に、第1電流範囲ir1において、電気抵抗Rz2は実質的に一定である。または、第1電流範囲ir1において、第3電流範囲ir3に比べて、電気抵抗Rz2は、緩やかに変化する。第3電流範囲ir3において、電気抵抗Rz2が変化する。第2電流範囲ir2において、電気抵抗Rz2は実質的に一定である。または、第2電流範囲ir2において、第3電流範囲ir3に比べて、電気抵抗Rz2は、緩やかに変化する。
【0108】
例えば、図13(b)に示すように、積層体20に流れる電流jc1が第1電流i1のときの積層体20の電気抵抗Rz2は、第1抵抗R1である。第1電流i1は、第1電流範囲ir1にある。
【0109】
図13(b)に示すように、積層体20に流れる電流jc1が第2電流i2のときに、積層体20の電気抵抗Rz2は、第2抵抗R2である。第2電流i2は、第1電流i1よりも大きい。第2電流i2は、第2電流範囲ir2にある。第2抵抗R2は、第1抵抗R1よりも高い。
【0110】
第1電流i1と第2電流i2との間の第3電流i3において、積層体20の電気抵抗Rz2は、第3抵抗R3である。第3電流i3は、第3電流範囲ir3にある。
【0111】
例えば、電流jc1が第1電流i1または第2電流i2のときは、電気抵抗Rz2は、実質的に発振しない。例えば、電流jc1が第3電流i3のときに、電気抵抗Rz2は、発振する。第1電流i1、第2電流i2及び第3電流i3は、第1磁性層21から第2磁性層22への向きを有する。
【0112】
図14(a)~図14(c)は、第2実施形態に係る磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
これらの図は、電気抵抗Rz2の信号の一部をFFT(Fast Fourier Transform)処理した信号を例示している。電気抵抗Rz2の信号は、時間的に変化する成分(高周波成分)と、時間的に実質的に変化しない成分(時間的な平均値の成分)と、を含む。FFT処理においては、電気抵抗Rz2の、時間的に変化する成分が処理される。これらの図の横軸は、周波数ffである。縦軸は、信号の強度Intである。図14(a)は電流jc1が第1電流i1であるときに対応する。図14(b)は電流jc1が第3電流i3であるときに対応する。図14(c)は電流jc1が第2電流i2であるときに対応する。
【0113】
図14(b)に示すように、電流jc1が第3電流i3であるとき、1つの周波数fp1にて、ピークp1が観測される。このピークは、積層体20において、高周波の発振が生じていることに対応する。
【0114】
図14(a)及び図14(c)に示すように、電流jc1が第1電流i1または第2電流i2であるときは、ピークp1が明確に観測されない。これらの電流においては、MAMRに有効な磁化発振は、実質的に生じない。
【0115】
このように、積層体20に流れる電流jc1が第1電流i1と第2電流i2との間の第3電流i3のときに、積層体20の電気抵抗Rz2は発振する。
【0116】
第2実施形態においては、このような特性を有する積層体20を用いて記録動作が行われる。
【0117】
第2実施形態において、磁気ヘッド110Aを用いて磁気記録媒体80に情報を記録する記録動作において、電気回路20Dは、上記の第2電流i2を積層体20に供給することが可能である。上記のような第2電流i2を供給しつつ、記録回路30Dから記録電流Iwをコイルに供給する記録動作を行うことで、第2電流i2を供給しないで記録動作を行う場合に比べて、第1磁極31から磁気記録媒体80に向かう記録磁界の量を増やすことができる。良好な記録ができる記録ギャップを小さくできる。実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0118】
以下、磁気記録装置の特性の例について説明する。
図15は、磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
図15は、第1条件CH1、第2条件CH2及び第3条件CH3の積層体20を含む磁気ヘッドの特性のシミュレーション結果を例示している。第1条件CH1においては、上記の磁気ヘッド110Aの構成が適用される。すなわち、第2非磁性層42は、Taであり、第2非磁性層42は、例えば、偏極したスピンを減衰させる。
【0119】
第2条件CH2においては、第2非磁性層42は、Cuであり、第2非磁性層42は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる。第2条件CH2におけるこれ以外の構成は、第1条件CH1における構成と同様である。
【0120】
第3条件CH3においては、第2非磁性層42が設けられず、第1磁性層21及び第2磁性層22が互いに接する。第3条件CH3におけるこれ以外の構成は、第1条件CH1における構成と同様である。
【0121】
図15の横軸は、時間tmである。第1時刻tm1において、記録電流Iwの極性が反転する。図15の縦軸は、磁化の反転量に対応するパラメータP1である。第1条件CH1、第2条件CH2及び第3条件CH3においては、パラメータP1は、第1磁極31と第2磁極32との間に存在するの磁化の反転量に対応する。
【0122】
図15には、第1磁極31の磁化の向きの特性PMも例示されている。特性PMに関して、パラメータP1は、第1磁極31の磁化の向きに対応する。図15の例では、第1時刻tm1(時間tmが0.60nsのとき)において、記録電流Iwの極性が反転する。時間tmが0.62nsのときに、第1磁極31の磁化の向きが変化し始める。時間tmが0.67nsのときに、第1磁極31の磁化の向きの変化が、実質的に終了する。
【0123】
図15に示すように、第2条件CH2においては、パラメータP1の絶対値が小さい。第2条件CH2においては、第1磁極31と第2磁極32との間に存在する磁化は、第1磁極31の磁化に対して、明確に反転していない。
【0124】
図15に示すように、第1条件CH1及び第3条件CH3においては、第1磁極31と第2磁極32との間に存在する磁化は、第1磁極31の磁化に対して、実質的に反転していることが分かる。第1条件CH1におけるパラメータP1の変化は、第3条件CH3におけるパラメータP1の変化よりも早い。第1条件CH1においては、高速の磁化反転が得られる。第1条件CH1においては、第1磁性層21の磁化が速く変化するため、第1磁極31の磁化の変化に対して高い追従性が得られる。第1条件CH1においては、例えば、実用的な使用条件において、BER(Bit Error Rate)を効果的に低減できる。
【0125】
第2実施形態においては、BERを効果的に低減して、良好な記録ができる記録ギャップを小さくできる。第2実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0126】
第2実施形態においては、高い周波数で高速の記録動作時に高い記録能力を得ることができる。記録密度をより効果的に向上できる。
【0127】
図16は、第2実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図16は、磁気ヘッド110Aを例示している。
【0128】
図16に示すように、第1磁性層21は、厚さt21を有する。第2磁性層22は、厚さt22を有する。第3磁性層23は、厚さt23を有する。第1非磁性層41は、厚さt41を有する。第2非磁性層42は、厚さt42を有する。第3非磁性層43は、厚さt43を有する。第4非磁性層44は、厚さt44を有する。これらの厚さは、第1方向D1に沿う長さである。既に説明したように、第1方向D1は、X軸方向に対して傾斜しても良い。
【0129】
磁気ヘッド110Aにおいて、第1磁性層21の厚さt21は、例えば、2nm以上10nm以下である。厚さt21が2nm以上であることで、例えば、磁気記録媒体80に向かう磁界を効果的に増大することができる。厚さt21が8nm以下であることで、例えば、効率的な磁化反転を得易くなる。
【0130】
磁気ヘッド110Aにおいて、第2磁性層22の厚さt22は、例えば、2nm以上4nm以下である。厚さt22が2nm以上であると、高速動作時に、より高いゲインを得易くなる。厚さt22が4nm以下であることで、安定した動作が得易くなる。
【0131】
磁気ヘッド110Aにおいて、第3磁性層23の厚さt23は、例えば、2nm以上5nm以下である。厚さt23が2nm以上であると、例えば、第3磁性層23を通過する電子がスピンし易くなる。厚さt23が5nm以下であることで、例えば、第3磁性層23の磁化が安定し易くなる。
【0132】
磁気ヘッド110Aにおいて、第1非磁性層41の厚さt41は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt41がこの範囲にあると、例えば、第2磁極32によりスピン偏極された電子が第1磁性層21に到達し易くなる。
【0133】
磁気ヘッド110Aにおいて、第2非磁性層42の厚さt42は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt42がこの範囲にあることで、例えば、より高いゲインを得易くなる。
【0134】
磁気ヘッド110Aにおいて、第3非磁性層43の厚さt43は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt43がこの範囲にあることで、例えば、第2磁性層22の磁化と第3磁性層23の磁化とが相互に安定化し易くなる。
【0135】
磁気ヘッド110Aにおいて、第4非磁性層44の厚さt44は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt44がこの範囲にあることで、例えば、第3磁性層23の磁化が安定し易くなる。
【0136】
第2実施形態において、例えば、第1非磁性層41は、第1磁性層21及び第2磁極32と接する。例えば、第2非磁性層42は、第2磁性層22及び第1磁性層21と接する。例えば、第3非磁性層43は、第3磁性層23及び第2磁性層22と接する。例えば、第4非磁性層44は、第1磁極31及び第3磁性層23と接する。
【0137】
図17は、第2実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図17に示すように、第2実施形態に係る磁気ヘッド111Aにおいては、第4非磁性層44が設けられない。磁気ヘッド111Aにおいては、第1磁極31は、第3磁性層23と接する。磁気ヘッド111Aにおけるこれ以外の構成は、磁気ヘッド110Aの構成と同様でよい。
【0138】
磁気ヘッド111Aにおいても、高速の磁化反転が得られる。BERを効果的に低減して、良好な記録ができる記録ギャップを小さくできる。第2実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0139】
磁気ヘッド110A及び磁気ヘッド111Aにおいて、第3非磁性層43は、Crを含むことが好ましい。これにより、例えば、第2磁性層22の磁化を安定化することがより容易になる。
【0140】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態の例について説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様の部分の説明は、適宜省略される。
【0141】
図18は、第3実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図18に示すように、第3実施形態に係る磁気記録装置210は、磁気ヘッド120Aと、磁気記録媒体80と、電気回路20Dと、を含む。磁気ヘッド120Aにおいても、積層体20は、第1磁性層21、第2磁性層22、第3磁性層23、第1非磁性層41、第2非磁性層42及び第3非磁性層43を含む。この例では、第4非磁性層44が設けられている。磁気ヘッド120Aにおいても、第2磁性層22は、第1磁極31と第1磁性層21との間に設けられる。第3磁性層23は、第1磁極31と第2磁性層22との間に設けられる。第1非磁性層41は、第1磁性層21と第2磁極32との間に設けられる。第2非磁性層42は、第2磁性層22と第1磁性層21との間に設けられる。第3非磁性層43は、第3磁性層23と第2磁性層22との間に設けられる。第4非磁性層44が設けされる場合において、第4非磁性層44は、第1磁極31と第3磁性層23との間に設けられる。
【0142】
磁気ヘッド120Aにおいて、第1磁性層21は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素と、を含む。第1磁性層21は、例えば、負の分極を有する。第1磁性層21における第2元素の濃度は、例えば、1原子%以上80原子%以下である。
【0143】
磁気ヘッド120Aにおいて、第2磁性層22は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む。第2磁性層22は、上記の第2元素を実質的に含まない。または、第2磁性層22における第2元素の濃度は、第1磁性層21における第2元素の濃度よりも低い。第2磁性層22は、例えば、正の分極を有する。
【0144】
磁気ヘッド120Aにおいて、第3磁性層23は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第3元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第4元素と、を含む。第3磁性層23は、例えば、負の分極を有する。第3磁性層23における第4元素の濃度は、例えば、1原子%以上80原子%以下である。第2磁性層22は、上記の第4元素を実質的に含まない。または、第2磁性層22における第4元素の濃度は、第3磁性層23における第4元素の濃度よりも低い。
【0145】
磁気ヘッド120Aにおいて、例えば、第1非磁性層41は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。磁気ヘッド120Aにおいて、第1非磁性層41は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0146】
磁気ヘッド120Aにおいて、例えば、第2非磁性層42は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。磁気ヘッド120Aにおいて、第2非磁性層42は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0147】
磁気ヘッド120Aにおいて、例えば、第3非磁性層43は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。磁気ヘッド120Aにおいて、第3非磁性層43は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0148】
磁気ヘッド120Aにおいて、第1磁極31と第3磁性層23との間に第4非磁性層44が設けられても良い。第4非磁性層44は、例えば、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。磁気ヘッド120Aにおいて、第4非磁性層44は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0149】
例えば、第1非磁性層41は、第1磁性層21及び第2磁極32と接しても良い。第2非磁性層42は、第2磁性層22及び第1磁性層21と接しても良い。第3非磁性層43は、第3磁性層23及び第2磁性層22と接しても良い。第4非磁性層44は、第1磁極31及び第3磁性層23と接しても良い。
【0150】
磁気ヘッド120Aにおいても、図13(a)及び図13(b)に関して説明した動作が実施されても良い。磁気ヘッド120Aにおいても、図13(b)に示すように、積層体20に流れる電流jc1が第1電流i1のときの積層体20の電気抵抗Rz2は、第1抵抗R1である。第1電流i1は、第1電流範囲ir1にある。
【0151】
磁気ヘッド120Aにおいても、図13(b)に示すように、積層体20に流れる電流jc1が第2電流i2のときに、積層体20の電気抵抗Rz2は、第2抵抗R2である。第2電流i2は、第1電流i1よりも大きい。第2電流i2は、第2電流範囲ir2にある。第2抵抗R2は、第1抵抗R1よりも高い。
【0152】
第1電流i1と第2電流i2との間の第3電流i3において、積層体20の電気抵抗Rz2は、第3抵抗R3である。第3電流i3は、第3電流範囲ir3にある。
【0153】
磁気ヘッド120Aにおいても、例えば、電流jc1が第1電流i1または第2電流i2のときは、電気抵抗Rz2は、実質的に発振しない。例えば、電流jc1が第3電流i3のときに、電気抵抗Rz2は、発振する。第1電流i1、第2電流i2及び第3電流i3は、第1磁性層21から第2磁性層22への向きを有する。
【0154】
第3実施形態において、磁気ヘッド120Aを用いて磁気記録媒体80に情報を記録する記録動作において、電気回路20Dは、上記の第2電流i2を積層体20に供給することが可能である。上記のような第2電流i2を供給しつつ、記録回路30Dから記録電流Iwをコイルに供給する記録動作を行うことで、第2電流i2を供給しないで記録動作を行う場合に比べて、第1磁極31から磁気記録媒体80に向かう記録磁界の量を増やすことができる。良好な記録ができる記録ギャップを小さくできる。第3実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0155】
以下、磁気記録装置の特性の例について説明する。
図19は、磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
図19は、第4条件CH4、第5条件CH5及び第6条件CH6の積層体20を含む磁気ヘッドの特性のシミュレーション結果を例示している。第4条件CH4においては、上記の磁気ヘッド120Aの構成が適用される。すなわち、第2非磁性層42は、Cuであり、第2非磁性層42は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる。
【0156】
第5条件CH5においては、第2非磁性層42は、Taであり、第2非磁性層42は、例えば、偏極したスピンを減衰させる。第5条件CH5におけるこれ以外の構成は、第4条件CH4における構成と同様である。
【0157】
第6条件CH6においては、第2非磁性層42が設けられず、第1磁性層21及び第2磁性層22が互いに接する。第6条件CH6におけるこれ以外の構成は、第4条件CH4における構成と同様である。
【0158】
図19の横軸は、時間tmである。第1時刻tm1(図15参照:時間tmが0.60nsのとき)において、記録電流Iwの極性が反転する。図19の縦軸は、磁化の反転量に対応するパラメータP1である。第4条件CH4、第5条件CH5及び第6条件CH6において、パラメータP1は、第1磁極31と第2磁極32との間に存在する磁化の反転量に対応する。
【0159】
図19には、第1磁極31の磁化の向きの特性PMも例示されている。特性PMに関して、パラメータP1は、第1磁極31の磁化の向きに対応する。図19の例では、第1時刻tm1(時間tmが0.60nsのとき)において、記録電流Iwの極性が反転する。時間tmが0.62nsのときに、第1磁極31の磁化の向きが変化し始める。時間tmが0.67nsのときに、第1磁極31の磁化の向きの変化が、実質的に終了する。
【0160】
図19に示すように、第4条件CH4においては、第5条件CH5及び第6条件CH6と比べて、時間tmが0.7ns以降において、パラメータP1が大きい。第4条件CH4においては、第1磁極31と第2磁極32との間に存在する磁化は、第1磁極31の磁化に対して、実質的に反転する。第4条件CH4においては、高速に反転する磁化体積が大きい磁性体を反転できる。第4条件CH4においては、特に、磁気記録におけるOW(Over Write)特性を改善できる。
【0161】
第3実施形態においては、上記の磁気ヘッド120Aの構成が適用される。これにより、例えば比較的高い記録周波数においても記録能力が効果的に改善され、記録特性が改善される。第2実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0162】
磁気ヘッド120Aにおいて、第1~第3磁性層21~23は、厚さt21~t23をそれぞれ有する(図16参照)。磁気ヘッド120Aにおいて、第1~第4非磁性層41~44は、厚さt41~t44を有する(図16参照)。
【0163】
磁気ヘッド120Aにおいて、第1磁性層21の厚さt21は、例えば、2nm以上10nm以下である。厚さt21が2nm以上であることで、例えば、磁気記録媒体80に向かう磁界を効果的に増大することができる。厚さt21が8nm以下であることで、例えば、効率的な磁化反転を得易くなる。
【0164】
磁気ヘッド120Aにおいて、第2磁性層22の厚さt22は、例えば、2nm以上4nm以下である。厚さt22が2nm以上であると、高速動作時に、より高いゲインを得易くなる。厚さt22が4nm以下であることで、安定した動作が得易くなる。
【0165】
磁気ヘッド120Aにおいて、第3磁性層23の厚さt23は、例えば、2nm以上5nm以下である。厚さt23が2nm以上であると、例えば、第3磁性層23を通過する電子がスピン分極し易くなる。厚さt23が5nm以下であることで、例えば、第3磁性層23の磁化が安定し易くなる。
【0166】
磁気ヘッド120Aにおいて、第1非磁性層41の厚さt41は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt41がこの範囲にあると、例えば、効果的にスピンを伝搬することができる。
【0167】
磁気ヘッド120Aにおいて、第2非磁性層42の厚さt42は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt42がこの範囲にあると、例えば、効果的にスピンを伝搬することができる。
【0168】
磁気ヘッド120Aにおいて、第3非磁性層43の厚さt43は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt43がこの範囲にあると、例えば、効果的にスピンを伝搬することができる。
【0169】
磁気ヘッド120Aにおいて、第4非磁性層44の厚さt44は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt44がこの範囲にあると、例えば、効果的にスピンを伝搬することができる。
【0170】
図20は、第3実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図20に示すように、第3実施形態に係る磁気ヘッド121Aにおいては、第4非磁性層44が設けられない。磁気ヘッド121Aにおいては、第1磁極31は、第3磁性層23と接する。磁気ヘッド121Aにおけるこれ以外の構成は、磁気ヘッド120Aの構成と同様でよい。
【0171】
磁気ヘッド121Aにおいても、第1磁極31と第2磁極32との間に存在する磁化は、第1磁極31の磁化に対して反転する。高速に反転する磁化体積が大きい磁性体を反転できる。第2実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0172】
磁気ヘッド120A及び磁気ヘッド121Aにおいて、第2非磁性層42及び第3非磁性層43は、Crを含むことが好ましい。これにより、例えば、伝搬するスピン量を改善することがより容易になる。
【0173】
第2実施形態及び第3実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成A1)
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を含み、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、
前記第1磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第3磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、
を含み、
前記第1磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含み、
前記第2磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含み、
前記第3磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素と、を含み、前記第1磁性層及び前記第2磁性層は、前記第2元素を含まない、または、前記第1磁性層及び前記第2磁性層における前記第2元素の濃度は、前記第3磁性層における前記第2元素の濃度よりも低く、
前記第1非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第2非磁性層は、Ta、Pt、W、Mo、Ir、Ru、Tb、Rh、Cr及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第3非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、磁気ヘッド。
【0174】
(構成A2)
前記第3非磁性層は、Crを含む、構成A1記載の磁気ヘッド。
【0175】
(構成A3)
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を含み、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、
前記第1磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第3磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、
を含み、
前記第1磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素と、を含み、
前記第2磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含み、前記第2磁性層は、前記第2元素を含まない、または、前記第2磁性層における前記第2元素の濃度は、前記第1磁性層における前記第2元素の濃度よりも低く、
前記第3磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第3元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第4元素と、を含み、前記第2磁性層は、前記第4元素を含まない、または、前記第2磁性層における前記第4元素の濃度は、前記第3磁性層における前記第4元素の濃度よりも低く、
前記第1非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第2非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第3非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、磁気ヘッド。
【0176】
(構成A4)
前記第2非磁性層及び前記第3非磁性層は、Crを含む、構成A3記載の磁気ヘッド。
【0177】
(構成A5)
前記第1非磁性層は、前記第1磁性層及び前記第2磁極と接し、
前記第2非磁性層は、前記第2磁性層及び前記第1磁性層と接し、
前記第3非磁性層は、前記第3磁性層及び前記第2磁性層と接した、構成A1~A4のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0178】
(構成A6)
前記第1磁極は、前記第3磁性層と接した、構成A1~A5のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0179】
(構成A7)
前記積層体は、第4非磁性層をさらに含み、
前記第4非磁性層は、前記第1磁極と前記第3磁性層との間に設けられ、
前記第4非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成A1~A6のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0180】
(構成A8)
前記第4非磁性層は、前記第1磁極及び前記第3磁性層と接した、構成A7記載の磁気ヘッド。
【0181】
(構成A9)
前記第4非磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成A7またはA8に記載の磁気ヘッド。
【0182】
(構成A10)
前記第2電流は、前記第1磁性層から前記第2磁性層への向きを有する、構成A1~A9のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0183】
(構成A11)
前記第1非磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成A1~A10のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0184】
(構成A12)
前記第2非磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成A1~A11のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0185】
(構成A13)
前記第3非磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成A1~A12のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0186】
(構成A14)
前記第1磁性層の厚さは、2nm以上8nm以下である、構成A1~A13のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0187】
(構成A15)
前記第2磁性層の厚さは、2nm以上5nm以下である、構成A1~A14のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0188】
(構成A16)
前記第3磁性層の厚さは、2nm以上5nm以下である、構成A1~A15のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0189】
(構成A17)
構成A1~A16のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
磁気記録媒体と、
電気回路と、
備え、
前記積層体に流れる電流が第1電流のときの前記積層体の電気抵抗は、第1抵抗であり、
前記積層体に流れる前記電流が前記第1電流よりも大きい第2電流のときに、前記積層体の前記電気抵抗は、前記第1抵抗よりも高い第2抵抗であり、
前記積層体に流れる前記電流が前記第1電流と前記第2電流との間の第3電流のときに、前記積層体の前記電気抵抗は発振し、
前記磁気ヘッドを用いて前記磁気記録媒体に情報を記録する記録動作において、前記電気回路は、前記第2電流を前記積層体に供給することが可能である、磁気記録装置。
【0190】
図21は、磁気ヘッドに含まれる磁性層の特性を例示するグラフ図である。
図21は、磁気ヘッド110Aの構成において、第3磁性層23の組成を変更したときの磁化の反転量に対応するパラメータP1である。この例において、組成比yは20atm%であり、Coの組成比xが変更される。第2元素Eは、Crである。図21の横軸は、組成比xである。縦軸は、パラメータP1である。この例では、パラメータP1は、記録電流Iwの極性が反転して0.1ns後の値である。図21において、パラメータP1が正で大きい場合は磁化反転が高速であることに対応する。図21において、パラメータP1が正で大きいときに、高い記録密度が得られる。図21から分かるように、組成比xが10atm%以上50atm%以下において、大きいパラメータP1が得られる。この条件において、例えば、高速に磁化が反転でき、高い効率の記録が実施できる。これにより記録密度が向上し易い。組成比xは、25atm%以上35atm%以下であることがより好ましい。高速の以下の反転が安定して得易い。
【0191】
第2実施形態に係る磁気ヘッド(磁気ヘッド110A及び111A)において、第3磁性層23(例えば負のスピン分極を有する磁性層)は、(Fe100-xCo100-y(10atm%≦x≦50atm%、10atm%≦y≦90atm%)を含む。第2元素Eは、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。組成比x及び組成比yは、原子パーセント(atm%)である。これにより、例えば、高い飽和磁束密度と、負で絶対値が大きいスピン分極と、が得やすい。効率的な磁化の反転が得られる。記録密度の向上が可能である。
【0192】
図22は、磁気ヘッドに含まれる磁性層の特性を例示するグラフ図である。
図22は、磁気ヘッド120Aの構成において、第1磁性層21及び第3磁性層23の組成を変更したときの磁化の反転量に対応するパラメータP1である。この例において、組成比yは20atm%であり、Coの組成比xが変更される。第2元素Eは、Crである。この例では、第1磁性層21における組成比x及び組成比yは、第3磁性層23における組成比x及び組成比yとそれぞれ同じである。図22の横軸は、組成比xである。縦軸は、パラメータP1である。図22において、パラメータP1は、記録電流Iwの極性が反転して0.1ns後の値である。図22から分かるように、組成比xが10atm%以上50atm%以下において、大きいパラメータP1が得られる。この条件において、例えば、高速に磁化が反転でき、高い効率の記録が実施できる。これにより記録密度が向上し易い。組成比xは、25atm%以上35atm%以下であることがより好ましい。高速の以下の反転が安定して得易い。
【0193】
第3実施形態に係る磁気ヘッド(磁気ヘッド120A及び121A)おいて、第1磁性層21及び第3磁性層23(例えば負のスピン分極を有する磁性層)は、上記の(Fe100-xCo100-y(10atm%≦x≦50atm%、10atm%≦y≦90atm%)を含むことが好ましい。これにより、例えば、高い飽和磁束密度と、負で絶対値が大きいスピン分極と、が得やすい。効率的な磁化の反転が得られる。記録密度の向上が可能である。第3磁性層23の組成比は、第1磁性層21の組成比と異なっても良い。例えば、第3磁性層23は、(Fe100-x1Co 100-y1EXy1(10atm%≦x1≦50atm%、10atm%≦y1≦90atm%)を含み、第4元素EXは、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0194】
(第4実施形態)
図23は、第4実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
第4実施形態に係る磁気記録装置210も、磁気ヘッド110Bと、電気回路20Dと、を含む。磁気記録装置210は、磁気記録媒体80を含んでも良い。磁気記録装置210において、例えば、少なくとも記録動作が行われる。記録動作において、磁気ヘッド110Bを用いて磁気記録媒体80に情報が記録される。
【0195】
この例においても、電気回路20D(図2参照)が、積層体20Sに電気的に接続される。この例では、積層体20Sは、第1磁極31及び第2磁極32と電気的に接続される。磁気ヘッド110Bに、第1端子T1及び第2端子T2が設けられる。第1端子T1は、第1配線W1及び第1磁極31を介して積層体20Sと電気的に接続される。第2端子T2は、第2配線W2及び第2磁極32を介して積層体20Sと電気的に接続される。電気回路20Dから、例えば、電流Is(例えば、直流電流)が積層体20Sに供給される。
【0196】
図23に示すように、積層体20Sは、第1磁性層21、第2磁性層22、第3磁性層23、第1非磁性層41、第2非磁性層42及び第3非磁性層43を含む。
【0197】
第1磁性層21は、第1磁極31と第2磁極32との間にある。第2磁性層22は、第1磁極31と第1磁性層21との間に設けられる。第3磁性層23は、第1磁極31と第2磁性層22との間に設けられる。
【0198】
第1非磁性層41は、第2磁性層22と第1磁性層21との間に設けられる。第1非磁性層41は、Cuを含む。第1非磁性層41は、例えばCu層である。
【0199】
第2非磁性層42は、第3磁性層23と第2磁性層22との間に設けられる。第3非磁性層43は、第1磁極31と第3磁性層23との間に設けられる。
【0200】
この例では、第1磁性層21は、第2磁極32と接する。第1非磁性層41は、第2磁性層22及び第1磁性層21と接する。第2非磁性層42は、第3磁性層23及び第2磁性層22と接する。第3非磁性層43は、第1磁極31及び第3磁性層23と接する。
【0201】
第2磁性層22は、第1磁性領域22a及び第2磁性領域22bを含む。第2磁性領域22bは、第2非磁性層42と第1磁性領域22aとの間にある。第1磁性領域22aは、第1非磁性層41側の領域である。第2磁性領域22bは、第2非磁性層42側の領域である。例えば、第1磁性領域22aは、第1非磁性層41と接する。例えば、第2磁性領域22bは、第2非磁性層42と接する。
【0202】
第1磁性領域22aは、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素を含む。第2磁性領域22bは、第1元素及び第2元素を含む。第2元素は、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2磁性領域22bがこのような材料を含む場合、例えば、第2磁性領域22bは、負のスピン分極を有する。第1磁性領域22aは、第2元素を含まない。または、第1磁性領域22aにおける第2元素の濃度は、第2磁性領域22bにおける第2元素の濃度よりも低い。第1磁性領域22aがこのような材料を含む場合、第1磁性領域22aは、正のスピン分極を有する。
【0203】
1つの例において、第1磁性領域22aにおける第2元素の濃度は、実質的に0原子%である。例えば、第1磁性領域22aにおける第2元素の濃度は、0原子%以上20原子%未満でも良い。例えば、第2磁性領域22bにおける第2元素の濃度は、20原子%以上50%以下である。
【0204】
既に説明したように、電気回路20Dから、電流Isが積層体20Sに供給される(図2参照)。図23に示すように、積層体20Sを流れる電流jc1(電流Is)は、第1磁性層21から第3磁性層23への向きを有する。電子流je1は、第3磁性層23から第1磁性層21への向きを有する。
【0205】
例えば、積層体20Sに電流jc1が供給されないときは、第1磁性層21、第2磁性層22及び第3磁性層23の磁化の向きは、第1磁極31の磁化の向き及び第2磁極32の磁化の向きと実質的に同じである。第1磁極31から出た磁界(記録磁界)の一部は、磁気記録媒体80に向かう。一方、第1磁極31から出た磁界(記録磁界)の別の一部は、磁気記録媒体80に向かうことなく、積層体20Sを通過して、第2磁極32に入る。このため、第1磁極31から出た記録磁界のうちで磁気記録媒体80に向かう部分の割合は、少ない。
【0206】
積層体20Sに電流jc1が供給されると、例えば、積層体20Sの少なくとも一部(例えば第2磁性層22及び第3磁性層23の少なくとも一部)の磁化の向きは、第1磁極31の磁化の向き及び第2磁極32の磁化の向きに対して反転する。これにより、第1磁極31から出た磁界(記録磁界)は、積層体20Sに向かい難くなる。このため、第1磁極31から出た記録磁界のうちで磁気記録媒体80に向かう部分の割合が、積層体20Sに電流jc1が供給されない場合に比べて高くなる。第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。
【0207】
この現象は、第1磁極31と第2磁極32との間の距離(記録ギャップ)が短くなると、より顕著になる。このような積層体20Sを用いることで、記録ギャップが小さくなった場合でも良好な記録が実施できる。第4実施形態によれば、良好な記録ができる記録ギャップを小さくできる。第4実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0208】
一方、複数の磁性層を含む積層体から発生した高周波磁界を磁気記録媒体80に印加して、磁気記録媒体80の磁気特性を局部的に制御して記録を行うMAMR(Microwave Assisted Magnetic Recording)がある。MAMRにおいては、磁性層の磁化の発振により高周波磁界が発生する。
【0209】
これに対して、第4実施形態においては、例えば、積層体20Sの少なくとも一部の磁化が第1磁極31の磁化及び第2磁極32の磁化に対して反転する。MAMRとは異なる動作により、第1磁極31から出た磁界が磁気記録媒体80に効率的に印加される。
【0210】
第4実施形態においては、第2磁性層22は、第1磁性領域22a及び第2磁性領域22bを含む。このような構成により、より安定して、第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。
【0211】
以下、第2磁性層22が第1磁性領域22a及び第2磁性領域22bを含まない場合についての実験結果の例について説明する。
【0212】
図24は、実験試料を例示する模式的断面図である。
図25は、実験結果を例示するグラフ図である。
図24に示すように、実験試料は、第1磁性層21、第2磁性層22及び第1非磁性層41を含む。第1非磁性層41は、第1磁性層21と第2磁性層22との間にある。第1磁性層21は、FeCo層である。第1非磁性層41は、Cu層である。第1試料においては、第2磁性層22は、FeCrを含む。第2試料においては、第2磁性層22は、FeCoを含む。第1試料においては、第2磁性層22は、負のスピン分極を有する。第2試料においては、第2磁性層22は、正のスピン分極を有する。
【0213】
このような試料に、磁界を印加しつつ、第1端子TM1から第2端子TM2への向きを有する電流が供給される。磁界は、第2磁性層22から第1磁性層21への向きを有する。第1磁性層21の磁化の変動と、磁界の強度と、の関係が調べられる。
【0214】
図25の横軸は、磁界の強度H1である。図25の縦軸は、第1磁性層21の磁界が変動し始める電流密度CDである。図25に示すように、第1試料SP1においては、第1磁性層21の磁界が変動し始める電流密度CDが低い。第2試料SP2においては、第1磁性層21の磁界が変動し始める電流密度CDが高い。第1試料SP1においては、第1磁性層21の磁化が不安定であると考えられる。
【0215】
第1試料SP1においては、負の分極を有する第2磁性層22からの透過スピントランスファトルク(STT)が第1磁性層21に作用することで、第1磁性層21の磁化が不安定になると考えられる。
【0216】
第4実施形態においては、第2磁性層22に第1磁性領域22a及び第2磁性領域22bが設けられる。第1磁性領域22aは、例えば、正のスピン分極を有する。このため、STTが第1磁性層21に作用することが抑制され、第1磁性層21の磁化は安定する。第1磁性層21の磁化が安定することで、第1磁性層21からのSTTにより、例えば、第2磁性層22及び第3磁性層23の磁化が安定して反転できると考えられる。これにより、第4実施形態においては、より安定して、第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。記録密度の向上が可能な磁気ヘッドが提供できる。
【0217】
以下、磁化の反転の例について説明する。
図26(a)~図26(c)は、第4実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
これらの図において、第1磁極31及び第2磁極32の磁化は、第1磁極31から第2磁極32への向きを有する。
【0218】
図26(a)に示すように、電流jc1が積層体20Sに供給されないときは、第1磁性層21の磁化21M、第2磁性層22の磁化22M、及び、第3磁性層23の磁化は、第1磁極31及び第2磁極32の磁化の向き(第1磁極31から第2磁極32への向き)と同じである。電子流je1の向きは、第2磁極32から第1磁極31への向きである。
【0219】
図26(b)に示すように、しきい値以上の電流jc1が積層体20Sに供給されると、第1磁性領域22aからの正透過のスピントランスファトルクS1が第1磁性層21に作用し、第1磁性層21の磁化21Mは、安定化する。
【0220】
図26(c)に示すように、第1磁性層21からの正反射のスピントランスファトルクS2により、第2磁性層22の磁化22Mが反転する。反転した磁化21Mからの負反射のスピントランスファトルクS3により、第3磁性層23の磁化23Mが反転する。このように、例えば、第2磁性層22の磁化22M、及び、第3磁性層23の磁化23Mが、第1磁極31及び第2磁極32の磁化に対して、安定して反転する。これにより、第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。記録密度の向上が可能な磁気ヘッドが提供できる。記録性能が向上する。
【0221】
第4実施形態において、第1磁性層21は、例えば、Fe及びCoを含む。第1磁性層21は、例えば、正のスピン分極を有する。
【0222】
磁気ヘッド110Bにおいて、第3磁性層23は、例えば、上記の第1元素及び上記の第2元素を含む。第3磁性層23は、例えば、負のスピン分極を有する。後述するように、第3磁性層23は、正のスピン分極を有しても良い。
【0223】
既に説明したように、第1非磁性層41は、Cuを含む。これにより、スピントランスファトルクが効率良く伝達できる。
【0224】
第2非磁性層42は、例えば、Cuを含む。第2非磁性層42は、Cuと、上記の第2元素と、を含んでも良い。
【0225】
図23の例においては、第3非磁性層43は、例えば、Ta、Ru及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0226】
図23に示すように、磁気ヘッド110Bにおいて、第1磁性層21は、厚さt21を有する。第1磁性領域22aは、厚さt22aを有する。第2磁性領域22bは、厚さt22bを有する。第3磁性層23は、厚さt23を有する。磁気ヘッド110Bにおいて、第1~第3非磁性層41~43は、厚さt41~t43を有する(図23参照)。
【0227】
磁気ヘッド110Bにおいて、第1磁性領域22aの厚さt22aは、例えば、0.5nm以上10nm以下であることが好ましい。厚さt22aは、0.5nm以上であることで、例えば、STTが効果的に低減できる。厚さt22aが10nm以下であることで、例えば、反転電流が過度に大きくなることが抑制され、例えば、高い信頼性が得られる。厚さt22aは、0.3nm以下でも良い。これにより、磁化の反転による記録能力が効果的に向上する。
【0228】
第2磁性領域22bの厚さt22bは、例えば、2nm以上7nm以下であることが好まし。厚さt22bが2nm以上であることで、例えば、大きなスピントランスファトルクが得られ、第2磁性領域22bの作用により第3磁性層23の磁化23Mを効果的に反転できる。厚さt22bが7nm以下であることで、例えば、第2磁性領域22bの硬度が過度に高くなることが抑制できる。これにより、積層体20Sの加工が容易になる。
【0229】
第2磁性層22の厚さ(例えば、厚さt22aと厚さt22bとの和)は、例えば、3nm以上10nm以下であることが好ましい。
【0230】
第1磁性層21の厚さt21は、例えば、1nm以上3nm以下であることが好ましい。厚さt21が1nm以上であることで、例えば、第1磁性層21の磁化21Mが安定になる。厚さt21が3nm以下であることで、例えば、ギャップ長(第1磁極31と第2磁極32との間の距離)が過度に大きくなることが抑制できる。例えば、高い記録密度が得易い。
【0231】
第3磁性層23の厚さt23は、例えば、1nm以上5nm以下であることが好ましい。厚さt23が1nm以上であることで、例えば、第3磁性層23の磁化の極端な低下を抑制することができる。厚さt23が5nm以下であることで、例えば、第3磁性層23の磁化23Mの反転が容易になる。
【0232】
第1非磁性層41の厚さt41は、例えば、1nm以上5nm以下であることが好ましい。厚さt41が1nm以上であることで、例えば、第1磁性層21と第2磁性層22との間の磁気的な分離が安定になる。厚さt41が5nm以下であることで、例えば、積層体20Sの加工が容易になる。
【0233】
第2非磁性層42の厚さt42は、例えば、1nm以上5nm以下であることが好ましい。厚さt42が1nm以上であることで、例えば、第2磁性層22と第3磁性層23との間の磁気的な分離が安定になる。厚さt42が5nm以下であることで、例えば、積層体20Sの加工が容易になる。
【0234】
図23の例において、第3非磁性層43の厚さt43は、例えば、1nm以上5nm以下であることが好ましい。厚さt43が1nm以上であることで、例えば、第3非磁性層43のX軸方向の両側の磁気的な分離が容易になる。厚さt43が5nm以下であることで、例えば、STTの伝達が容易になる。
【0235】
図27は、第4実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図27に示すように、第4実施形態に係る磁気ヘッド111Bにおいては、積層体20Sは、第1~第3磁性層21~23、及び、第1~第3非磁性層41~43に加えて、第4磁性層24を含む。磁気ヘッド111Bにおいては、第3磁性層23は、正のスピン分極を有する。上記を除いて、磁気ヘッド111Bの構成は、磁気ヘッド110Bの構成と同様で良い。
【0236】
第4磁性層24は、第1磁極31と第3非磁性層43との間にある。第4磁性層24は、例えば、第1元素及び第2元素を含む。例えば、第4磁性層24における第2元素の濃度は、20原子%以上50%以下である。例えば、第3磁性層23は、上記の第1元素を含む。第3磁性層23は、例えば、FeCo層である。第3磁性層23は、上記の第2元素を含まない。または、第3磁性層23における第2元素の濃度は、第2磁性領域22bにおける第2元素の濃度よりも低い。1つの例において、第4磁性層24は、第1磁極31と接して、第1磁極31と磁気結合する。例えば、第1磁極31と第4磁性層24との間に、第1磁極31と第4磁性層24とが磁気的に結合するような層が設けられても良い。
【0237】
このような磁気ヘッド111Bにおいても、第1磁性層21の磁化21Mが安定になる。例えば、第2磁性層22の磁化、及び、第3磁性層23の磁化23Mが安定して反転できる。第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。記録密度の向上が可能な磁気ヘッドが提供できる。
【0238】
図27の例において、第3非磁性層43は、例えば、Cuを含む。第3非磁性層43は、第2元素をさらに含んでも良い。第3非磁性層43の厚さt43は、例えば、1nm以上5nm以下であることが好ましい。
【0239】
図27の例において、第4磁性層24の厚さt24は、例えば、2nm以上5nm以下が好ましい。厚さt24が2nm以上であることで、例えば、第4磁性層24において、負の分極が安定して得られる。厚さt24が5nm以下であることで、例えば、ギャップ長が過度に大きくなることが抑制できる。記録磁界の急峻性の低下が抑制できる。例えば、高い記録密度が得易い。
【0240】
図28は、第4実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図28に示すように、第4実施形態に係る磁気ヘッド112Bにおいても、積層体20Sは、第1~第3磁性層21~23、及び、第1~第3非磁性層41~43に加えて、第4磁性層24及び第4非磁性層44を含む。磁気ヘッド112Bにおいては、第3磁性層23は、負のスピン分極を有する。上記を除いて、磁気ヘッド112Bの構成は、磁気ヘッド110Bの構成と同様で良い。
【0241】
第4磁性層24は、第1磁極31と第3非磁性層43との間にある。第4磁性層24は、例えば、第1元素及び第2元素を含む。第4磁性層24における第2元素の濃度は、20原子%以上50%以下である。例えば、第3磁性層23は、第1元素及び第2元素を含む。例えば、第3磁性層23における第2元素の濃度は、20原子%以上50%以下である。
【0242】
第4非磁性層44は、第1磁極31と第4磁性層24との間にある。第4非磁性層44は、Ta、Ru及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0243】
このような磁気ヘッド112Bにおいても、第1磁性層21の磁化21Mが安定になる。例えば、第2磁性層22の磁化、及び、第3磁性層23の磁化23Mが安定して反転できる。第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。記録密度の向上が可能な磁気ヘッドが提供できる。
【0244】
図28の例において、第4磁性層24の厚さt24は、例えば、1nm以上5nm以下が好ましい。厚さt24が1nm以上であることで、例えば、磁極31と第4磁性層24との間の磁気結合を安定して抑制できる。例えば、磁極31及び第4磁性層24との間のSTTの授受を安定して抑制できる。厚さt24が5nm以下であることで、例えば、ギャップ長が過度に大きくなることが抑制できる。記録磁界の急峻性の低下が抑制できる。例えば、高い記録密度が得易い。
【0245】
第4実施形態においても、例えば、図13(a)及び図13(b)に関して説明した特性が得られる。電流jc1が大きくなると、電気抵抗Rz1は大きくなる。電流jc1の大きさを、第1電流範囲ir1、第2電流範囲ir2及び第3電流範囲ir3に分けることができる。第3電流範囲ir3は、第1電流範囲ir1と第2電流範囲ir2との間にある。
【0246】
第1電流範囲ir1及び第2電流範囲ir2においては、電気抵抗Rz1は、電流jc1の大きさに対して二次関数に従って変化する。これは、電流jc1が大きくなることに応じて積層体20Sの温度が上昇することに起因すると考えられる。
【0247】
第3電流範囲ir3における電気抵抗Rz1の変化は、温度の上昇の影響とは異なる。第3電流範囲ir3における電気抵抗Rz1の変化は、磁性層の磁化の反転率に基づく磁気抵抗効果によると考えられる。
【0248】
例えば、電気抵抗に関して二次関数の影響を除去した場合に、第1電流範囲ir1において、電気抵抗Rz2は実質的に一定である。または、第1電流範囲ir1において、第3電流範囲ir3に比べて、電気抵抗Rz2は、緩やかに変化する。第3電流範囲ir3において、電気抵抗Rz2が変化する。第2電流範囲ir2において、電気抵抗Rz2は実質的に一定である。または、第2電流範囲ir2において、第3電流範囲ir3に比べて、電気抵抗Rz2は、緩やかに変化する。
【0249】
例えば、積層体20Sに流れる電流jc1が第1電流i1のときの積層体20Sの電気抵抗Rz2は、第1抵抗R1である。第1電流i1は、第1電流範囲ir1にある。
【0250】
積層体20Sに流れる電流jc1が第2電流i2のときに、積層体20Sの電気抵抗Rz2は、第2抵抗R2である。第2電流i2は、第1電流i1よりも大きい。第2電流i2は、第2電流範囲ir2にある。第2抵抗R2は、第1抵抗R1よりも高い。
【0251】
第1電流i1と第2電流i2との間の第3電流i3において、積層体20Sの電気抵抗Rz2は、第3抵抗R3である。第3電流i3は、第3電流範囲ir3にある。
【0252】
例えば、電流jc1が第1電流i1または第2電流i2のときは、電気抵抗Rz2は、実質的に発振しない。例えば、電流jc1が第3電流i3のときに、電気抵抗Rz2は、発振する。第1電流i1、第2電流i2及び第3電流i3は、第1磁性層21から第3磁性層23への向きを有する。
【0253】
第4実施形態においても、例えば、図14(a)~図14(c)に関して説明した特性が得られる。電流jc1が第3電流i3であるとき、1つの周波数fp1にて、ピークp1が観測される。このピークは、積層体20Sにおいて、高周波の発振が生じていることに対応する。
【0254】
電流jc1が第1電流i1または第2電流i2であるときは、ピークp1が明確に観測されない。これらの電流においては、MAMRに有効な磁化発振は、実質的に生じない。
【0255】
このように、積層体20Sに流れる電流jc1が第1電流i1と第2電流i2との間の第3電流i3のときに、積層体20Sの電気抵抗Rz2は発振する。
【0256】
第4実施形態においては、このような特性を有する積層体20Sを用いて記録動作が行われる。
【0257】
第4実施形態に係る磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体80に情報を記録する記録動作において、電気回路20Dは、上記の第2電流i2を積層体20Sに供給することが可能である。上記のような第2電流i2を供給しつつ、記録回路30Dから記録電流Iwをコイルに供給する記録動作を行うことで、第2電流i2を供給しないで記録動作を行う場合に比べて、第1磁極31から磁気記録媒体80に向かう記録磁界の量を増やすことができる。良好な記録ができる記録ギャップを小さくできる。第4実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置を提供できる。
【0258】
磁気記録装置210は、第4実施形態に係る磁気ヘッド(例えば磁気ヘッド110B)と、積層体20Sに電流jc1(または電流Is)を供給可能な電気回路20Dと、を含む。電流jc1は、第1磁性層21から第3磁性層23への向きを有する。記録動作において、電気回路20Dは、上記の第2電流i2を積層体20Sに供給することが可能である。第1磁極31から出た記録磁界が効果的に磁気記録媒体80に印加される。記録密度の向上が可能な磁気ヘッドが提供できる。
【0259】
第4実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成B1)
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を備え、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、
前記第1磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられCuを含む第1非磁性層と、
前記第3磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第1磁極と前記第3磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、
を含み、
前記第2磁性層は、第1磁性領域及び第2磁性領域を含み、前記第2磁性領域は、前記第2非磁性層と前記第1磁性領域との間にあり、
前記第1磁性領域は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素を含み、
前記第2磁性領域は、前記第1元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素と、を含み、
前記第1磁性領域は、前記第2元素を含まない、または、前記第1磁性領域における前記第2元素の濃度は、前記第2磁性領域における前記第2元素の濃度よりも低い、磁気ヘッド。
【0260】
(構成B2)
前記第1磁性領域における前記第2元素の濃度は、0原子%以上20原子%未満であり、
前記第2磁性領域における前記第2元素の濃度は、20原子%以上50%以下である、構成B1記載の磁気ヘッド。
【0261】
(構成B3)
前記第1磁性層は、Fe及びCoを含む、構成B1またはB2に記載の磁気ヘッド。
【0262】
(構成B4)
前記第2非磁性層は、Cuを含む、構成B1~B3のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0263】
(構成B5)
前記第2非磁性層は、前記第2元素を含む、構成B4記載の磁気ヘッド。
【0264】
(構成B6)
前記第3非磁性層は、Cuを含む、構成B1~B5のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0265】
(構成B7)
前記第3磁性層は、前記第1元素及び前記第2元素を含む、構成B1~B6のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0266】
(構成B8)
前記積層体は、第4磁性層をさらに含み、
前記第4磁性層は、前記第1磁極と前記第3非磁性層との間にあり、
前記第3磁性層は、前記第1元素を含み、
前記第3磁性層は、前記第2元素を含まない、または、前記第3磁性層における前記第2元素の濃度は、前記第2磁性領域における前記第2元素の濃度よりも低い、構成B1~B6のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0267】
(構成B9)
前記積層体は、第4磁性層をさらに含み、
前記第4磁性層は、前記第1磁極と前記第3非磁性層との間にあり、
前記第4磁性層は、前記第1元素及び前記第2元素を含み、
前記第3磁性層は、前記第1元素及び前記第2元素を含む、構成B1~B6のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0268】
(構成B10)
前記第1磁性領域は、前記第1非磁性層と接し、
前記第2磁性領域は、前記第2非磁性層と接した、構成B1~B9のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0269】
(構成B11)
前記第1磁性領域の厚さは、0.5nm以上10nm以下である、構成B1~B10のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0270】
(構成B12)
前記第2磁性領域の厚さは、1nm以上7nm以下である、構成B1~B11のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0271】
(構成B13)
前記第1磁性層の厚さは、1nm以上3nm以下である、構成B1~B12のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0272】
(構成B14)
前記第3磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成B1~B13のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0273】
(構成B15)
前記第1非磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成B1~B14のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0274】
(構成B16)
前記第2非磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成B1~B15のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0275】
(構成B17)
前記第3非磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成B1~B16のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0276】
(構成B18)
前記積層体を流れる電流は、前記第1磁性層から前記第3磁性層への向きを有する、構成B1~B17のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0277】
(構成B19)
構成B1~B17のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
前記積層体に電流を供給可能な電気回路と、
備え、
前記電流は、前記第1磁性層から前記第3磁性層への向きを有する、磁気記録装置。
【0278】
(構成B20)
磁気記録媒体をさらに備え、
前記積層体に流れる前記電流が第1電流のときの前記積層体の電気抵抗は、第1抵抗であり、
前記積層体に流れる前記電流が前記第1電流よりも大きい第2電流のときに、前記積層体の前記電気抵抗は、前記第1抵抗よりも高い第2抵抗であり、
前記積層体に流れる前記電流が前記第1電流と前記第2電流との間の第3電流のときに、前記積層体の前記電気抵抗は発振し、
前記磁気ヘッドを用いて前記磁気記録媒体に情報を記録する記録動作において、前記電気回路は、前記第2電流を前記積層体に供給することが可能である、構成B19記載の磁気記録装置。
【0279】
第4実施形態に係る磁気ヘッド(磁気ヘッド110B、111B及び112B)おいて、第2磁性領域22b(例えば負のスピン分極を有する磁性領域)及び第3磁性層23(例えば負のスピン分極を有する磁性層)は、(Fe100-xCo100-y(10atm%≦x≦50atm%、10atm%≦y≦90atm%)を含む。第2元素Eは、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。組成比x及び組成比yは、原子パーセント(atm%)である。これにより、例えば、高い飽和磁束密度と、負で絶対値が大きいスピン分極と、が得やすい。効率的な磁化の反転が得られる。記録密度の向上が可能である。
【0280】
(第5実施形態)
図29は、第5実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図29に示すように、第5実施形態に係る磁気記録装置210の磁気ヘッド111Cにおいては、積層体20は、第1磁性層21、第2磁性層22、第1非磁性層41、第2非磁性層42及び第3非磁性層43に加えて、第3磁性層23及び第4非磁性層44をさらに含む。磁気ヘッド111Cにおけるこれ以外の構成は、第2実施形態または第3実施形態に係る磁気ヘッドの構成と同様である。以下、磁気ヘッド111Cの例について説明する。
【0281】
図29に示すように、第3磁性層23は、第1非磁性層41と第1磁性層21との間に設けられる。第4非磁性層44は、第3磁性層23と第1磁性層21との間に設けられる。第3磁性層23は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素と、を含む。第3磁性層23は、例えば、負の分極を有する。
【0282】
第1磁性層21及び第2磁性層22は、例えば、Fe、Co及びNiの少なくともいずれかを含む。例えば、正の分極を有する磁性材料を含む。例えば、第1磁性層21及び第2磁性層22は、第2元素を含まない。または、第1磁性層21及び第2磁性層22に含まれる第2元素の濃度は、第3磁性層23に含まれる第2元素の濃度よりも低い。
【0283】
磁気ヘッド111Cにおいて、例えば、第1非磁性層41は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1非磁性層41は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0284】
磁気ヘッド111Cにおいて、例えば、第2非磁性層42は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2非磁性層42は、例えば、偏極したスピンを伝搬させる層として機能する。
【0285】
磁気ヘッド111Cにおいて、例えば、第3非磁性層43は、Ta、Pt、W、Mo、Ir、Ru、Tb、Rh、Cr及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第3非磁性層43は、例えば、偏極したスピンを減衰させる層として機能する。
【0286】
磁気ヘッド111Cにおいて、例えば、第4非磁性層は、Ta、Pt、W、Mo、Ir、Ru、Tb、Rh、Cr及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第4非磁性層44は、例えば、偏極したスピンを減衰させる層として機能する。
【0287】
このような構成を磁気ヘッド111Cにおいて、より高いゲインが得られる。
【0288】
例えば、磁気ヘッド111Cの構成において第3磁性層23が設けられない第1参考例がある。第1参考例において、積層体20は、第1磁性層21、第2磁性層22、第1非磁性層41、第2非磁性層42及び第3非磁性層43を含む。第2磁性層22は、第1磁極31と第1磁性層21との間に設けられる。第1非磁性層41は、第2磁性層22と第1磁性層21との間に設けられる。第2非磁性層42は、第1磁性層21と第2磁極32との間に設けられる。第3非磁性層43は、第1磁極31と第2磁性層22との間に設けられる。第2非磁性層42は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第3非磁性層43は、Ta、Pt、W、Mo、Ir、Ru、Tb、Rh、Cr及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1非磁性層41は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0289】
図30は、第5実施形態に係る磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
図30は、第5実施形態に係る磁気ヘッド111Cにおける特性のシミュレーション結果を例示している。第2電流i2を積層体20に供給しつつ記録電流Iwを反転したときの第1磁性層21、第2磁性層22及び第3磁性層23を合計した磁化の応答をシミュレーションした結果を例示している。図30において、横軸は、時間tmである。第1時刻tm1及び第2時刻tm2において、記録電流Iwの極性は反転する。図30において、縦軸は、磁化の反転量に対応するパラメータP1である。パラメータP1が負であるときに、積層体20に電流を供給しないときを基準にしたゲインが上昇する。
【0290】
図30に示すように、磁気ヘッド111Cにおいて、記録磁界の極性が反転する時刻(第1時刻tm1または第2時刻tm2)の直後において、パラメータP1は負であり、時間が経過すると正になる。磁気ヘッド111Cにおいては、記録磁界の周波数が高く、極性反転後の時間tmが短い場合において、ゲインの上昇が得られる。
【0291】
図30に示すように、磁気ヘッド111Cにおいては、パラメータP1の絶対値の最大値が得られる時間tmは、0.45nsである。一方、上記の第1参考例においては、パラメータP1の絶対値の最大値が得られる時間tmは、0.4nsである。第1磁極31における磁化は、記録磁界の極性が反転する時刻(第1時刻tm1または第2時刻tm2)から少し後の時刻で反転する。磁気ヘッド111Cにおける第1磁性層21の磁化の反転時刻が、第1磁極31における磁化の反転時刻と、より合致する。これにより、よりゲインが得られる。
【0292】
第1磁性層21が設けられ、第2磁性層22及び第3非磁性層43が設けられない第2参考例が考えられる。第2参考例においては、第1非磁性層41は、第1磁極31と接する。
【0293】
図31は、磁気記録装置の特性を例示する模式図である。
図31は、第1参考例の磁気ヘッド118、第2参考例の磁気ヘッド119、及び、磁気ヘッド111Cに関して、記録磁界の周波数と、ゲインと、の関係を例示している。図31の横軸は、記録磁界の周波数fwである。周波数fwは、記録電流Iwの周波数に対応する。図31の縦軸は、積層体20に電流を供給しないときを基準にした、ゲインGn0である。
【0294】
図31に示すように、磁気ヘッド111Cにおいては、第1参考例の磁気ヘッド118と比べて、低い周波数fwでも高いゲインGn0が得られる。第5実施形態においても、高い周波数で高速の記録動作時に高い記録能力を得ることができる。記録密度をより効果的に向上できる。
【0295】
図32(a)~図32(c)は、第5実施形態に係る磁気記録装置の特性を例示する模式的断面図である。
これらの図は、磁気ヘッド111Cにおける磁化の向きの変化の例を示している。これらの図に示すように、例えば、第3磁性層23の磁化23Mは、第2磁性層22の磁化22Mと連動する。
【0296】
(第6実施形態)
図33は、第6実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的断面図である。
図33に示すように、第6実施形態に係る磁気記録装置210の磁気ヘッド121Cにおいては、積層体20は、第1磁性層21、第2磁性層22、第1非磁性層41、第2非磁性層42及び第3非磁性層43に加えて、第3磁性層23及び第4非磁性層44をさらに含む。
【0297】
磁気ヘッド121Cにおいて、第3磁性層23は、第1非磁性層41と第1磁性層21との間に設けられる。第4非磁性層44は、第3磁性層23と第1磁性層21との間に設けられる。第3磁性層23は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素と、を含む。
【0298】
第1非磁性層41は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2非磁性層42は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第3非磁性層43は、Ta、Pt、W、Mo、Ir、Ru、Tb、Rh、Cr及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第4非磁性層44は、Ta、Pt、W、Mo、Ir、Ru、Tb、Rh、Cr及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0299】
このような構成を有する磁気ヘッド121Cにおいても、より高いゲインが得られる。
【0300】
磁気ヘッド111C及び磁気ヘッド121Cにおいて、第3磁性層23の厚さは、例えば、1nm以上5nm以下である。第4非磁性層44の厚さは、例えば、1nm以上5nm以下である。これらの厚さは、第1方向D1に沿う長さである。既に説明したように、第1方向D1は、X軸方向に対して傾斜しても良い。
【0301】
第5実施形態および第6実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気記録装置が提供できる。
【0302】
第5実施形態および第6実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成C1)
磁気ヘッドと、
磁気記録媒体と、
電気回路と、
を備え、
前記磁気ヘッドは、
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を含み、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第1磁極と前記第2磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、
を含み、
前記第2非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第3非磁性層は、Ta、Pt、W、Mo、Ir、Ru、Tb、Rh、Cr及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記積層体に流れる電流が第1電流のときの前記積層体の電気抵抗は、第1抵抗であり、
前記積層体に流れる前記電流が前記第1電流よりも大きい第2電流のときに、前記積層体の前記電気抵抗は、前記第1抵抗よりも高い第2抵抗であり、
前記積層体に流れる前記電流が前記第1電流と前記第2電流との間の第3電流のときに、前記積層体の前記電気抵抗は発振し、
前記磁気ヘッドを用いて前記磁気記録媒体に情報を記録する記録動作において、前記電気回路は、前記第2電流を前記積層体に供給することが可能である、磁気記録装置。
【0303】
(構成C2)
磁気ヘッドと、
磁気記録媒体と、
電気回路と、
を備え、
前記磁気ヘッドは、
第1磁極と、
第2磁極と、
前記第1磁極と前記第2磁極との間に設けられた積層体と、
を含み、
前記積層体は、
第1磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第2磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、
前記第1磁極と前記第1磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
前記第2磁性層と前記第2磁極との間に設けられた第3非磁性層と、
を含み、
前記第2非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第3非磁性層は、Ta、Pt、W、Mo、Ir、Ru、Tb、Rh、Cr及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記積層体に流れる電流が第1電流のときの前記積層体の電気抵抗は、第1抵抗であり、
前記積層体に流れる前記電流が前記第1電流よりも大きい第2電流のときに、前記積層体の前記電気抵抗は、前記第1抵抗よりも高い第2抵抗であり、
前記積層体に流れる前記電流が前記第1電流と前記第2電流との間の第3電流のときに、前記積層体の前記電気抵抗は発振し、
前記磁気ヘッドを用いて前記磁気記録媒体に情報を記録する記録動作において、前記電気回路は、前記第2電流を前記積層体に供給することが可能である、磁気記録装置。
【0304】
(構成C3)
前記第1非磁性層は、第1材料または第2材料を含み、
前記第1材料は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第2材料は、Ta、Pt、W、Mo、Ir、Ru、Tb、Rh及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成C1またはC2に記載の磁気記録装置。
【0305】
(構成C4)
前記積層体は、
前記第1非磁性層と前記第1磁性層との間に設けられた第3磁性層と、
前記第3磁性層と前記第1磁性層との間に設けられた第4非磁性層と、
をさらに含み、
前記第3磁性層は、Fe、Co及びNiの少なくとも1つを含む第1元素と、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素と、を含み、
前記第1非磁性層は、Cu、Ag、Au、Al及びCrよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第4非磁性層は、Ta、Pt、W、Mo、Ir、Ru、Tb、Rh、Cr及びPdよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成C1またはC2に記載の磁気記録装置。
【0306】
(構成C5)
前記第2電流は、前記第1磁性層から前記第2磁性層への向きを有する、構成C1~C4のいずれか1つに記載の磁気記録装置。
【0307】
(構成C6)
前記第2非磁性層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成C1~C5のいずれか1つに記載の磁気記録装置。
【0308】
(構成C7)
前記第3非磁性層の厚さは、2nm以上6nm以下である、構成C1~C6のいずれか1つに記載の磁気記録装置。
【0309】
(構成C8)
前記第1磁性層及び前記第2磁性層は、Fe及びCoの少なくともいずれかを含む、構成C1~C7のいずれか1つに記載の磁気記録装置。
【0310】
(構成C9)
前記第1磁性層の厚さは、2nm以上8nm以下である、構成C1~C8のいずれか1つに記載の磁気記録装置。
【0311】
(構成C10)
前記第2磁性層の厚さは、2nm以上4nm以下である、構成C1~C9のいずれか1つに記載の磁気記録装置。
【0312】
(構成C11)
前記情報に対応する記録電流が第1周波数であるときの前記記録動作において、前記電気回路が前記第2電流を前記積層体に供給しないときの、前記磁気記録媒体に記録される信号の強度は、第1強度であり、
前記記録電流が前記第1周波数であるときの前記記録動作において、前記電気回路が前記第2電流を前記積層体に供給したときの、前記磁気記録媒体に記録される信号の強度は、第2強度であり、
前記情報に対応する記録電流が前記第1周波数よりも高い第2周波数であるときの前記記録動作において、前記電気回路が前記第2電流を前記積層体に供給しないときの、前記磁気記録媒体に記録される信号の強度は、第3強度であり、
前記記録電流が前記第2周波数であるときの前記記録動作において、前記電気回路が前記第2電流を前記積層体に供給したときの、前記磁気記録媒体に記録される信号の強度は、第4強度であり、
前記第3強度に対する前記第4強度の第2比は、前記第1強度に対する前記第2強度の第1比よりも高い、構成C1~C10のいずれか1つに記載の磁気記録装置。
【0313】
第5実施形態及び第6実施形態に係る磁気ヘッド(磁気ヘッド111C及び121C)において、第3磁性層23(例えば負のスピン分極を有する磁性層)は、(Fe100-xCo100-y(10atm%≦x≦50atm%、10atm%≦y≦90atm%)を含む。第2元素Eは、Cr、V、Mn、Ti及びScよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。組成比x及び組成比yは、原子パーセント(atm%)である。これにより、例えば、高い飽和磁束密度と、負で絶対値が大きいスピン分極と、が得やすい。効率的な磁化の反転が得られる。記録密度の向上が可能である。
【0314】
第1~第6実施形態において、第1磁極31は、X軸方向に沿って並ぶ複数の磁性領域を含んでも良い。第2磁極32は、X軸方向に沿って並ぶ複数の磁性領域を含んでも良い。複数の磁性領域の間の境界は、明確でも不明確でも良い。例えば、複数の磁性領域は、連続している。
【0315】
以下、第1~第6実施形態に係る磁気記録装置210に含まれる磁気ヘッド及び磁気記録媒体80の例について説明する。
図34は、実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図34に示すように、実施形態に係る磁気ヘッド(例えば、磁気ヘッド110)において、第1磁極31から第2磁極32への第1方向D1は、X軸方向に対して傾斜しても良い。第1方向D1は、積層体20の積層方向に対応する。X軸方向は、媒体対向面30Fに沿う。第1方向D1と媒体対向面30Fとの間の角度を角度θ1とする。角度θ1は、例えば、15度以上30度以下である。角度θ1は、0度でも良い。
【0316】
第1方向D1が、X軸方向に対して傾斜する場合、層の厚さは、第1方向D1に沿う長さに対応する。第1方向D1がX軸方向に対して傾斜する構成は、実施形態係る任意の磁気ヘッドに適用されて良い。例えば、第1磁極31と積層体20との界面、及び、積層体20と第2磁極32との界面は、X軸方向に対して傾斜しても良い。
【0317】
図35は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図35に示すように、実施形態に係る磁気ヘッド(例えば、磁気ヘッド110)は、磁気記録媒体80と共に用いられる。この例では、磁気ヘッド110は、記録部60及び再生部70を含む。磁気ヘッド110の記録部60により、磁気記録媒体80に情報が記録される。再生部70により、磁気記録媒体80に記録された情報が再生される。
【0318】
磁気記録媒体80は、例えば、媒体基板82と、媒体基板82の上に設けられた磁気記録層81と、を含む。磁気記録層81の磁化83が記録部60により制御される。例えば、垂直磁気記録が行われる。
【0319】
再生部70は、例えば、第1再生磁気シールド72a、第2再生磁気シールド72b、及び磁気再生素子71を含む。磁気再生素子71は、第1再生磁気シールド72aと第2再生磁気シールド72bとの間に設けられる。磁気再生素子71は、磁気記録層81の磁化83に応じた信号を出力可能である。
【0320】
図35に示すように、磁気記録媒体80は、媒体移動方向85の方向に、磁気ヘッド110に対して相対的に移動する。磁気ヘッド110により、任意の位置において、磁気記録層81の磁化83に対応する情報が制御される。磁気ヘッド110により、任意の位置において、磁気記録層81の磁化83に対応する情報が再生される。
【0321】
図36は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図36は、ヘッドスライダを例示している。
磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ159に設けられる。ヘッドスライダ159は、例えばAl/TiCなどを含む。ヘッドスライダ159は、磁気記録媒体の上を、浮上または接触しながら、磁気記録媒体に対して相対的に運動する。
【0322】
ヘッドスライダ159は、例えば、空気流入側159A及び空気流出側159Bを含む。磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ159の空気流出側159Bの側面などに設けられる。これにより、磁気ヘッド110は、磁気記録媒体の上を浮上または接触しながら磁気記録媒体に対して相対的に運動する。
【0323】
図37は、実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図37に示すように、実施形態に係る磁気記録装置150においては、ロータリーアクチュエータが用いられる。記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ180Mに装着される。記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ180Mにより矢印ARの方向に回転する。スピンドルモータ180Mは、駆動装置制御部からの制御信号に応答する。本実施形態に係る磁気記録装置150は、複数の記録用媒体ディスク180を備えても良い。磁気記録装置150は、記録媒体181を含んでも良い。記録媒体181は、例えば、SSD(Solid State Drive)である。記録媒体181には、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリが用いられる。例えば、磁気記録装置150は、ハイブリッドHDD(Hard Disk Drive)でも良い。
【0324】
ヘッドスライダ159は、記録用媒体ディスク180に記録する情報の、記録及び再生を行う。ヘッドスライダ159は、薄膜状のサスペンション154の先端に設けられる。ヘッドスライダ159の先端付近に、実施形態に係る磁気ヘッドが設けられる。
【0325】
記録用媒体ディスク180が回転すると、サスペンション154による押し付け圧力と、ヘッドスライダ159の媒体対向面(ABS)で発生する圧力と、がバランスする。ヘッドスライダ159の媒体対向面と、記録用媒体ディスク180の表面と、の間の距離が、所定の浮上量となる。実施形態において、ヘッドスライダ159は、記録用媒体ディスク180と接触しても良い。例えば、接触走行型が適用されても良い。
【0326】
サスペンション154は、アーム155(例えばアクチュエータアーム)の一端に接続されている。アーム155は、例えば、ボビン部などを有する。ボビン部は、駆動コイルを保持する。アーム155の他端には、ボイスコイルモータ156が設けられる。ボイスコイルモータ156は、リニアモータの一種である。ボイスコイルモータ156は、例えば、駆動コイル及び磁気回路を含む。駆動コイルは、アーム155のボビン部に巻かれる。磁気回路は、永久磁石及び対向ヨークを含む。永久磁石と対向ヨークとの間に、駆動コイルが設けられる。サスペンション154は、一端と他端とを有する。磁気ヘッドは、サスペンション154の一端に設けられる。アーム155は、サスペンション154の他端に接続される。
【0327】
アーム155は、ボールベアリングによって保持される。ボールベアリングは、軸受部157の上下の2箇所に設けられる。アーム155は、ボイスコイルモータ156により回転及びスライドが可能である。磁気ヘッドは、記録用媒体ディスク180の任意の位置に移動可能である。
【0328】
図38(a)及び図38(b)は、実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図38(a)は、磁気記録装置の一部の構成を例示しており、ヘッドスタックアセンブリ160の拡大斜視図である。図38(b)は、ヘッドスタックアセンブリ160の一部となる磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ:HGA)158を例示する斜視図である。
【0329】
図38(a)に示すように、ヘッドスタックアセンブリ160は、軸受部157と、ヘッドジンバルアセンブリ158と、支持フレーム161と、を含む。ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延びる。支持フレーム161は、軸受部157から延びる。支持フレーム161の延びる方向は、ヘッドジンバルアセンブリ158の延びる方向とは逆である。支持フレーム161は、ボイスコイルモータ156のコイル162を支持する。
【0330】
図38(b)に示すように、ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延びたアーム155と、アーム155から延びたサスペンション154と、を有している。
【0331】
サスペンション154の先端には、ヘッドスライダ159が設けられる。ヘッドスライダ159に、実施形態に係る磁気ヘッドが設けられる。
【0332】
実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ)158は、実施形態に係る磁気ヘッドと、磁気ヘッドが設けられたヘッドスライダ159と、サスペンション154と、アーム155と、を含む。ヘッドスライダ159は、サスペンション154の一端に設けられる。アーム155は、サスペンション154の他端と接続される。
【0333】
サスペンション154は、例えば、信号の記録及び再生用のリード線(図示しない)を有する。サスペンション154は、例えば、浮上量調整のためのヒーター用のリード線(図示しない)を有しても良い。サスペンション154は、例えばスピントランスファトルク発振子用などのためのリード線(図示しない)を有しても良い。これらのリード線と、磁気ヘッドに設けられた複数の電極と、が電気的に接続される。
【0334】
磁気記録装置150において、信号処理部190が設けられる。信号処理部190は、磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の記録及び再生を行う。信号処理部190は、信号処理部190の入出力線は、例えば、ヘッドジンバルアセンブリ158の電極パッドに接続され、磁気ヘッドと電気的に接続される。
【0335】
実施形態に係る磁気記録装置150は、磁気記録媒体と、実施形態に係る磁気ヘッドと、可動部と、位置制御部と、信号処理部と、を含む。可動部は、磁気記録媒体と磁気ヘッドとを離間させ、または、接触させた状態で相対的に移動可能とする。位置制御部は、磁気ヘッドを磁気記録媒体の所定記録位置に位置合わせする。信号処理部は、磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体への信号の記録及び再生を行う。
【0336】
例えば、上記の磁気記録媒体として、記録用媒体ディスク180が用いられる。上記の可動部は、例えば、ヘッドスライダ159を含む。上記の位置制御部は、例えば、ヘッドジンバルアセンブリ158を含む。
【0337】
実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気ヘッド及び磁気記録装置が提供できる。
【0338】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0339】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気ヘッドに含まれる、磁極、積層体、磁性層、非磁性層、及び配線などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0340】
各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0341】
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気ヘッド及び磁気記録装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気ヘッド及び磁気記録装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0342】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0343】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0344】
20…積層体、 20D…電気回路、 21…第1磁性層、 21a、21b…第1、第2磁性領域、 22…第2磁性層、 22c、22d…第3、第4磁性領域、 23…第3磁性層、 30D…記録回路、 30F…媒体対向面、 30c…コイル、 30i…絶縁部、 31、32…第1、第2磁極、 33…シールド、 41~43…第1~第3非磁性層、 60…記録部、 70…再生部、 71…磁気再生素子、 72a、72b…第1、第2再生磁気シールド、 80…磁気記録媒体、 81…磁気記録層、 82…媒体基板、 83…磁化、 85…媒体移動方向、 θ1…角度、 110、111、112…磁気ヘッド、 150…磁気記録装置、 154…サスペンション、 155…アーム、 156…ボイスコイルモータ、 157…軸受部、 158…ヘッドジンバルアセンブリ、 159…ヘッドスライダ、 159A…空気流入側、 159B…空気流出側、 160…ヘッドスタックアセンブリ、 161…支持フレーム、 162…コイル、 180…記録用媒体ディスク、 180M…スピンドルモータ、 181…記録媒体、 190…信号処理部、 210…磁気記録装置、 AR、AR1…矢印、 D1…第1方向、 I1~I3…第1~第3電流、 Ith…しきい値電流、 Iw…記録電流、 Mz、Mz1、Mz2…磁化、 OS…発振強度、RR1…厚さ比、 Rx…電気抵抗、 Rx1~Rx3…第1~第3抵抗、 T1、T2…第1、第2端子、 W1、W2…第1、第2配線、 ic、jc1…電流、 je、je1…電子流、 t1~t3…第1~第3厚さ、 t41~t43…厚さ、 tm…時間、 tm1、tm2…第1、第2時刻、 ts…和
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
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図38