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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】装置診断システムおよび装置診断方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
G05B23/02 302Y
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021126417
(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公開番号】P2023021514
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏瀬 翔一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 健司
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-129233(JP,A)
【文献】特開2018-77823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも回転電機を含む複数の機器で構成される装置の動作を再現し、かつ前記動作に関連して生じる前記機器の状態を再現する物理モデルを構築するモデル構築部と、
前記物理モデルに基づいて定式化された方程式にパラメータを反映して演算を行う解析部と、
前記解析部の演算結果に対応するそれぞれの前記パラメータを教師データとして学習する学習部と、
それぞれの前記機器で実際に測定された物理量を実測データとして取得する物理量測定部と、
前記解析部の前記演算結果が前記実測データを再現する場合の前記パラメータである実測パラメータを前記学習部で学習した前記教師データに基づいて同定するパラメータ同定部と、
前記パラメータ同定部で同定されたそれぞれの前記実測パラメータに基づいて前記装置の異常の有無を判定する状態判定部と、
を備える、
装置診断システム。
【請求項2】
前記パラメータ同定部によって前記実測データが同定された前記パラメータを反映した場合の前記解析部の前記演算結果に基づいてそれぞれの前記機器の余寿命を算出する余寿命評価部を備える、
請求項1に記載の装置診断システム。
【請求項3】
前記状態判定部は、前記余寿命評価部で算出された前記余寿命と予め計画された運転時間との比較によって前記装置の異常の有無を判定する、
請求項2に記載の装置診断システム。
【請求項4】
前記余寿命評価部は、前記パラメータ同定部で同定された前記実測パラメータを反映した場合に前記解析部で得られるそれぞれの前記機器に関連する荷重と応力と電圧と電流と温度の少なくとも1つを求めた結果から前記余寿命を評価する、
請求項2または請求項3に記載の装置診断システム。
【請求項5】
前記状態判定部で前記装置が正常であると判定された場合に、前記実測パラメータの組み合わせと大きさから異常の進展具合を推定し、かつ前記余寿命評価部で算出した前記機器の前記余寿命から次回の点検箇所と点検時期とを推定する点検推定部を備える、
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の装置診断システム。
【請求項6】
前記状態判定部で前記装置が異常であると判定された場合に、異常の程度と原因を特定する異常特定部を備える、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の装置診断システム。
【請求項7】
前記物理量測定部によって取得された前記実測データを前記解析部の演算に対応する形式の分析用データに変換する実測データ処理部を備える、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の装置診断システム。
【請求項8】
前記学習部は、前記解析部で予め複数の前記パラメータの組み合わせに対応する演算が行われた場合のそれぞれの前記パラメータとこれら前記パラメータに対応する前記演算結果とを前記教師データとして学習する、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の装置診断システム。
【請求項9】
前記物理モデルは、
それぞれの前記機器の回転運動と並進運動の少なくとも一方に関する力学系統の挙動を表す力学モデルと、
少なくとも1つの前記機器を構成する制御部が前記装置全体の挙動を制御するための制御モデルと、
前記装置の電気系統の挙動を表す電気モデルと、
前記装置の磁気系統の挙動を表す磁気モデルと、
前記装置の熱に関する挙動を表す熱モデルと、
少なくとも1つの前記機器を構成するポンプに接続された配管を流れる流体の流量と圧力の少なくとも一方の挙動を表す流体モデルと、
それぞれの前記機器の材料特性を表す物性モデルと、
それぞれの前記機器の寸法と形状の少なくとも一方の情報を有する構造モデルと、
の少なくとも1つを含み、
前記パラメータの組み合わせによって前記装置の挙動を再現する、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の装置診断システム。
【請求項10】
前記状態判定部は、前記パラメータ同定部によって同定された前記実測パラメータと任意に設定されたパラメータ用許容範囲との比較によって前記装置の異常の有無を判定する、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の装置診断システム。
【請求項11】
前記状態判定部は、前記物理量測定部によって取得された前記実測データと任意に設定されたデータ用許容範囲との比較によって前記装置の異常の有無を判定する、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の装置診断システム。
【請求項12】
それぞれの前記機器に設けられたセンサを備え、
前記物理量測定部は、
それぞれの前記センサが検出した前記物理量と、
前記機器で過去に試験または点検を行ったときに得られた試験データまたは点検データに含まれる前記物理量と、
の少なくとも一方を前記実測データとして取得する、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の装置診断システム。
【請求項13】
前記センサは、振動、電流、電圧、磁束、温度、圧力、回転トルクの少なくとも1つを前記物理量として検出する、
請求項12に記載の装置診断システム。
【請求項14】
モデル構築部が、少なくとも回転電機を含む複数の機器で構成される装置の動作を再現し、かつ前記動作に関連して生じる前記機器の状態を再現する物理モデルを構築するステップと、
解析部が、前記物理モデルに基づいて定式化された方程式にパラメータを反映して演算を行うステップと、
学習部が、前記解析部の演算結果に対応するそれぞれの前記パラメータを教師データとして学習するステップと、
物理量測定部が、それぞれの前記機器で実際に測定された物理量を実測データとして取得するステップと、
パラメータ同定部が、前記解析部の前記演算結果が前記実測データを再現する場合の前記パラメータである実測パラメータを前記学習部で学習した前記教師データに基づいて同定するステップと、
状態判定部が、前記パラメータ同定部で同定されたそれぞれの前記実測パラメータに基づいて前記装置の異常の有無を判定するステップと、
を含む、
装置診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、装置診断技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過去の異常または寿命に関連するデータを活用し、センサから検出した測定データから電動機の異常の有無の判断または余寿命を評価する技術がある。例えば、機械学習によって測定データと実際寿命を関連づけて学習し、余寿命を予測する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6140229号公報
【文献】特許第6625280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
過去の異常または寿命に関連するデータを活用し、異常の兆候または異常の有無の判断または余寿命を評価する場合には、異常があるときに取得される異常データが必要となる。しかし、異常発生事例の少ない機器の異常データの取得は困難であり、測定データと異常原因および実際寿命を関連付けることが難しい。例えば、大型プラントなどが長期間に亘り停止につながる重要な機器、または原子力プラントなどの安全上重要な機器については、異常が発生する前に定期的な分解点検が行われ、修理または交換が行われる。そのため、異常の発生事例が極めて少なく、取得される異常データも少ない。また、1つの機器に対して様々な異常モードが発生する可能性があり、このような全ての異常モードに対応する異常データの取得が必要となる。
【0005】
特に、センサの数、センサが設置される位置には限りがあり、荷重などの評価に必要な測定データを直に取得できず、診断できない場合もある。また、電動機に対して、振動を監視し、レベルの変化および周波数特性の変化から異常兆候の有無を判断する技術が用いられている場合が多い。しかし、振動の変化は、機器の周波数特性またはセンサの据付状態に依存するため、異常の有無の判断または原因の推定が困難な場合がある。また、電動機の特定の箇所のみの診断では、この箇所以外での異常の見落としが発生するおそれがある。
【0006】
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたもので、過去に異常経験のない装置であっても、装置の実測データから異常に関する評価を行うことができる装置診断技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る装置診断システムは、少なくとも回転電機を含む複数の機器で構成される装置の動作を再現し、かつ前記動作に関連して生じる前記機器の状態を再現する物理モデルを構築するモデル構築部と、前記物理モデルに基づいて定式化された方程式にパラメータを反映して演算を行う解析部と、前記解析部の演算結果に対応するそれぞれの前記パラメータを教師データとして学習する学習部と、それぞれの前記機器で実際に測定された物理量を実測データとして取得する物理量測定部と、前記解析部の前記演算結果が前記実測データを再現する場合の前記パラメータである実測パラメータを前記学習部で学習した前記教師データに基づいて同定するパラメータ同定部と、前記パラメータ同定部で同定されたそれぞれの前記実測パラメータに基づいて前記装置の異常の有無を判定する状態判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態により、過去に異常経験のない装置であっても、装置の実測データから異常に関する評価を行うことができる装置診断技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】装置診断システムのシステム構成を示すブロック図。
図2】装置に接続された装置診断システムを示す構成図。
図3】センサから取得した物理量を分析用データに変換する態様を示す説明図。
図4】カップリング据付不良の第1例を示す説明図。
図5】カップリング据付不良の第2例を示す説明図。
図6】パラメータと演算結果に基づく学習の態様を示す説明図。
図7】疲労と時間の関係を示すグラフ。
図8】応力振幅と破断繰り返し数の関係を示すグラフ。
図9】余寿命評価の運用態様を示すグラフ。
図10】装置診断方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、装置診断システムおよび装置診断方法の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1の符号1は、本実施形態の装置診断システムである。この装置診断システム1は、所定の装置20(図2)の点検計画を最適化し、かつ異常の発生時には、その原因と異常の発生位置を提示することによって、装置20の保全活動を支援するものである。特に、過去に異常経験のない装置20に対して、実測データから異常兆候の有無、異常の度合、異常の種類、それぞれの機器21の余寿命を評価するために用いられる。
【0012】
本実施形態の装置診断システム1は、CPU、ROM、RAM、HDDなどのハードウェア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。さらに、本実施形態の装置診断方法は、各種プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。
【0013】
まず、装置診断システム1のシステム構成を図1に示すブロック図を参照して説明する。
【0014】
装置診断システム1は、複数のセンサ2と解析用コンピュータ3とを備える。解析用コンピュータ3は、入力部4と出力部5と通信部6と記憶部7とメイン制御部8とを備える。
【0015】
入力部4には、システムを使用するユーザの操作に応じて所定の情報が入力される。この入力部4には、マウスまたはキーボードなどの入力装置が含まれる。つまり、これら入力装置の操作に応じて所定の情報が入力部4に入力される。
【0016】
出力部5は、所定の情報の出力を行う。本実施形態の装置診断システム1には、解析結果の出力を行うディスプレイなどの画像の表示を行うものが含まれる。つまり、出力部5は、ディスプレイに表示される画像の制御を行う。なお、ディスプレイはコンピュータ本体と別体であっても良いし、一体であっても良い。
【0017】
なお、本実施形態の装置診断システム1は、ネットワークを介して接続される他のコンピュータが備えるディスプレイに表示される画像の制御を行っても良い。その場合には、他のコンピュータが備える出力部5が、本実施形態の解析結果の出力の制御を行っても良い。
【0018】
なお、本実施形態では、画像の表示を行うものとしてディスプレイを例示するが、その他の態様であっても良い。例えば、ヘッドマウントディスプレイまたはプロジェクタを用いて情報の表示を行っても良い。さらに、紙媒体に情報を印字するプリンタをディスプレイの替りとして用いても良い。つまり、出力部5が制御する対象として、ヘッドマウントディスプレイ、プロジェクタまたはプリンタが含まれても良い。
【0019】
通信部6は、インターネットなどの通信回線を介して他のコンピュータと通信を行う。なお、本実施形態では、装置診断システム1と他のコンピュータがインターネットを介して互いに接続されているが、その他の態様であっても良い。例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)または携帯通信網を介して互いに接続されても良い。
【0020】
記憶部7には、装置診断を行うときに必要な各種情報が記憶される。なお、この記憶部7は、所定のデータベースを備える。これらは、メモリ、HDDまたはクラウドに記憶され、検索または蓄積ができるよう整理された情報の集まりである。
【0021】
メイン制御部8は、モデル構築部9と解析部10と学習部11と物理量測定部12と実測データ処理部13とパラメータ同定部14と状態判定部15と異常特定部16と余寿命評価部17と点検推定部18とを備える。これらは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
【0022】
なお、解析用コンピュータ3の各構成は、必ずしも1つのコンピュータに設ける必要はない。例えば、ネットワークで互いに接続された複数のコンピュータを用いて1つのシステムを実現しても良い。例えば、学習部11が、解析用コンピュータ3とは別のコンピュータに設けられている構成でも良い。
【0023】
図2に示すように、本実施形態で診断の対象となる装置20は、原子力プラントなどに設けられるものを例示する。装置20は、複数の機器21で構成される。例えば、装置20は、制御盤21Aと電動機21Bと回転体21Cと負荷側の機器群21Dなどで構成される。
【0024】
ここで、制御盤21Aは、電動機21Bの挙動の制御に係る構成要素(制御部)に相当する。例えば、電動機21Bの回転速度またはトルクなどの制御を行う。
【0025】
また、回転体21Cは、電動機21Bから出力されるエネルギーを負荷側の機器群21Dに伝達する構成要素である。
【0026】
負荷側の機器群21Dは、回転体21Cから伝達されたエネルギーを消費する構成要素に相当する。なお、負荷側の機器群21Dとは、例えば、ポンプ、ファン、ギヤなどで構成されるものある。
【0027】
ここで、本実施形態の回転電機として電動機21Bを例示する。つまり、装置20は、少なくとも回転電機を含む複数の機器21で構成される。なお、回転電機は、発電機でも良い。回転電機が電動機21Bまたは発電機のいずれの場合であっても、本実施形態を適用することができる。
【0028】
例えば、回転電機に関する所定の周波数のパラメータがあるとする。この周波数は、回転電機から出力される電力の周波数、または、回転電機に供給される電力の周波数のいずれでも良い。回転電機が電動機21Bである場合は、この電動機21Bに外部から供給される交流の周波数となる。また、回転電機が発電機である場合は、この発電機から外部へ出力される交流の周波数となる。
【0029】
なお、装置診断システム1のそれぞれのセンサ2は、装置20に設置される。センサ2は、振動、電流、電圧、磁束、温度、圧力、回転トルクの少なくとも1つを物理量として検出する。このようにすれば、いずれの種類の機器21であってもセンサ2により物理量を取得することができる。
【0030】
例えば、制御盤21Aと電動機21Bと回転体21Cと負荷側の機器群21Dにセンサ2が設けられる。これらのセンサ2で取得した所定の情報が解析用コンピュータ3に入力される。なお、センサ2は、装置20に予め設置されているのみならず、点検の度に加えられるものであっても良い。また、既に設置されているセンサ2の設置場所を変更しても良い。
【0031】
これらのセンサ2は、装置20の状態に応じて変化する物理量を検出する。物理量の具体例としては、制御盤21Aおよび電動機21Bにおける電流および電圧、電動機21Bの温度、電動機21Bと回転体21Cの振動、電動機21Bの磁束、荷重、トルクなどが挙げられる。
【0032】
本実施形態において、モデル構築部9(図1)は、装置20の動作を再現し、かつ動作に関連して生じる機器21の状態を再現する物理モデルを構築する。なお、物理モデルとは、装置20に関する物理量のシミュレーションを行うことができる仮想のモデルのことである。物理モデルを用いることで、正常な動作をしている機器21のシミュレーションを行うことができるばかりか、異常な動作をしている機器21のシミュレーションを行うこともできる。
【0033】
物理モデルは、パラメータの組み合わせによって装置20の挙動を再現する。例えば、物理モデルは、力学モデルと制御モデルと電気モデルと磁気モデルと熱モデルと流体モデルと物性モデルと構造モデルとの少なくとも1つを含む。
【0034】
ここで、力学モデルは、電動機21B、回転体21C、負荷側の機器群21Dなどのそれぞれの機器21の回転運動と並進運動の少なくとも一方に関する力学系統の挙動を表す。制御モデルは、少なくとも1つの機器21を構成する制御部としての制御盤21Aが装置20全体の挙動を制御するためのものである。電気モデルは、装置20の電気系統の挙動を表す。磁気モデルは、装置20の磁気系統の挙動を表す。熱モデルは、装置20の熱に関する挙動を表す。流体モデルは、少なくとも1つの機器21を構成するポンプに接続された配管を流れる流体の流量と圧力の少なくとも一方の挙動を表す。物性モデルは、それぞれの機器21の材料特性を表す。構造モデルは、それぞれの機器21の寸法と形状の少なくとも一方の情報を有する。このようにすれば、様々なモデルに応じて装置20の挙動を精密に再現することができる。
【0035】
つまり、物理モデルは、装置20の構造または機能をモデル化し、定式化したものである。そして、これらに対応する方程式群が定式化されている。
【0036】
また、物理モデルには、装置20を構成するそれぞれの機器21の異常を示す異常モデルを含む。例えば、図4および図5に示すように、回転体21Cとしてカップリングを考える。カップリングの据付不良によって生じる回転中心からの偏心eまたは偏角dの効果がモデルとして定式化されている。さらに、偏心eまたは偏角dの大きさなど異常の程度を表すパラメータが定義されている。
【0037】
また、回転体21Cの異常モデルとして、軸受の芯ずれ、電動機21Bのロータバーまたは短絡環の折損、ロータバーの出張り、固定子内またはスロット内のコイルの出張り、回転体21Cの曲がりまたはクラック、部品の欠落、固定子巻線の短絡または焼損、電源電圧の不平衡、インバータの不正波、転がり軸受(内輪、外輪、転動体)の疵などがある。それぞれの異常に関するパラメータが定義されている。
【0038】
解析部10(図1)は、物理モデルに基づいて定式化された方程式(方程式群)にパラメータを反映して演算を行う。この演算には、有限要素法(Finite Element Method:FEM)などを用いた構造解析を含む。
【0039】
ここで、物理量測定部12(図1)は、それぞれの機器21で実際に測定された物理量を実測データとして取得する。この物理量測定部12は、センサ2(図1)が検出した物理量を時系列データして取得する。例えば、図3に示すように、それぞれの機器21から電流、磁束、加速度、角速度、変位量、圧力などを示す物理量を含む時系列データを実測データとして取得する。
【0040】
本実施形態では、物理量測定部12が、装置20の運転中にセンサ2を用いて、リアルタイムで物理量を取得する形態を例示するが、その他の態様であっても良い。例えば、定期点検に、センサ2を機器21に取り付けて物理量を取得して記録しておき、後日、その記録を物理量測定部12が取得しても良い。
【0041】
つまり、物理量測定部12は、それぞれのセンサ2が検出した物理量と、機器21で過去に試験または点検を行ったときに得られた試験データまたは点検データに含まれる物理量との少なくとも一方を実測データとして取得する。このようにすれば、現状の物理量と過去の物理量の少なくとも一方を取得すれば、装置20の異常の有無を判定することができる。
【0042】
なお、試験データまたは点検データには、機器21が故障したか否かを示す情報も含まれる。つまり、本実施形態の物理量には、機器21が過去に故障したか否かを示す情報が含まれる。また、物理量には、過去に故障した日時と箇所と状態を示す情報が含まれる。
【0043】
なお、物理量測定部12が取得するデータは、複数種類の物理量を取得する方が好ましい。例えば、振動は、機器21の支持構造特性またはセンサの据付状態の影響を受けるため、振動データのみでは異常による物理量の変化なのか否かの判断が難しい。このような場合、振動に加え電流などの物理量から総合的に判断することができる。
【0044】
また、実測データ処理部13(図1)は、物理量測定部12によって取得された実測データを解析部10の演算に対応する形式の分析用データに変換する。ここで、解析部10で実行する演算には、実測データ処理部13から出力された分析用データと同じ形式で出力するための演算も含まれる。
【0045】
例えば、図3に示すように、実測データ処理部13が振動のスペクトルデータを出力する場合には、対応する解析部10の演算結果についても同様に、振動のスペクトルデータを出力するためのフーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)の演算を行う。ここで、実測データとしての時系列データが分析用データに変換される。このようにすれば、実測データを演算に最適な形式に変換して、解析部10で演算を高速に行うことができる。
【0046】
この実測データ処理部13は、例えば、物理量測定部12が取得した振動、電流、電圧、磁束などの実測データをフーリエ変換によってスペクトルデータに変換する。また、必要に応じてフィルタ処理を行う。また、温度と圧力などの時系列データについては、必要に応じて最大値や最小値、平均値、実効値などに変換する処理を行う。これらの処理によって、実測データの特徴量の抽出と不要なノイズなどの除去を行うことができる。また、測定によって生じる誤差とばらつきに対する処理を行う。例えば、計測器の測定誤差または統計誤差があるため、これらに対する処理を行う。
【0047】
パラメータ同定部14(図1)は、解析部10の演算結果が実測データを再現する場合のパラメータである実測パラメータを学習部11で学習した教師データに基づいて同定する。本実施形態では、実測データから変換された分析用データを用いる。つまり、解析部10の演算結果が分析用データを再現するように、パラメータを学習部11で学習した教師データに基づいて同定する。言い換えると、再現の結果、導き出される分析用データが、実測データと一致するように、解析部10で物理モデルを用いた解析を行う。
【0048】
例えば、物理モデルで異常がある状態の装置20の動作を再現した場合には、その異常時のパラメータを取得することができる。このようにすれば、異常時のパラメータを実際の装置20の異常の有無の判定に用いることができる。
【0049】
また、解析部10は、パラメータ同定部14で同定したパラメータを反映して演算を実行する。例えば、装置20を構成するそれぞれの機器21に働く荷重または回転体21Cの位置などの時間変化に関する演算結果を取得する。また、演算で生じる数値誤差の評価も行う。
【0050】
また、パラメータ同定部14は、装置20の物理モデルが、実測データ処理部13から出力された分析用データを再現する最適なパラメータの組み合わせを推論し、これらを実測パラメータとして出力する。このとき、誤差とばらつきを考慮した推定が行われる。
【0051】
本実施形態の装置診断システム1は、パラメータ同定部14において、例えば、ニューラルネットワークによって生成された学習済みモデルを用いて、実測データ処理部13から出力された分析用データを再現する実測パラメータを求める。
【0052】
本実施形態のパラメータは、例えば、電動機21Bの場合、電動機21Bの寸法と形状に関するもの、コイル巻数またはスロット数などを含む。また、パラメータは、電気抵抗などの構成部品の特性を含む。また、パラメータは、装置20の運転条件または周囲環境などを含む。これらのパラメータは、装置20を構成するそれぞれの機器21の仕様に基づいて取得しても良いし、実際の試験によって取得しても良いし、シミュレーションによって取得しても良い。
【0053】
学習部11(図1)は、解析部10の演算結果に対応するそれぞれのパラメータを教師データとして学習する。この学習部11は、解析部10で予め複数のパラメータの組み合わせに対応する演算が行われた場合のそれぞれのパラメータとこれらパラメータに対応する演算結果とを教師データとして学習する。このようにすれば、学習の精度を向上させることができる。
【0054】
図6に示すように、この学習部11は、解析部10において様々なパラメータの条件の下で予め演算された結果を訓練データとして、機械学習によって学習モデルを生成する。例えば、ニューラルネットワークによる機械学習により生成された学習モデルなどがある。ここで、学習部11は、解析部10の演算で用いたパラメータと演算結果を教師データとして学習モデルを作成する。
【0055】
本実施形態の装置診断システム1は、機械学習を行うアルゴリズムを備えたコンピュータを含む。つまり、機械学習を行う人工知能(AI:Artificial Intelligence)を備えるコンピュータが含まれる。例えば、ニューラルネットワークを備える1台のコンピュータでシステムを構成しても良いし、ニューラルネットワークを備える複数台のコンピュータでシステムを構成しても良い。
【0056】
なお、装置診断システム1には、深層学習に基づいて、複数のパターンから特定のパターンを抽出する深層学習部が含まれても良い。
【0057】
本実施形態のコンピュータを用いた解析には、人工知能の学習に基づく解析技術を用いることができる。例えば、ニューラルネットワークによる機械学習により生成された学習モデル、その他の機械学習により生成された学習モデル、深層学習アルゴリズム、回帰分析などの数学的アルゴリズムを用いることができる。また、機械学習の形態には、クラスタリング、深層学習などの形態が含まれる。
【0058】
ここで、ニューラルネットワークとは、脳機能の特性をコンピュータによるシミュレーションによって表現した数学モデルである。例えば、シナプスの結合によりネットワークを形成した人工ニューロン(ノード)が、学習によってシナプスの結合強度を変化させ、問題解決能力を持つようになるモデルを示す。さらに、ニューラルネットワークは、深層学習(Deep Learning)により問題解決能力を取得する。
【0059】
例えば、ニューラルネットワークには、6層のレイヤーを有する中間層が設けられる。この中間層の各レイヤーは、300個のユニットで構成されている。また、多層のニューラルネットワークに学習用データを用いて予め学ばせておくことで、回路またはシステムの状態の変化のパターンの中にある特徴量を自動で抽出することができる。なお、多層のニューラルネットワークは、ユーザインターフェース上で、任意の中間層数、任意のユニット数、任意の学習率、任意の学習回数、任意の活性化関数を設定することができる。
【0060】
なお、学習対象となる各種情報項目に報酬関数が設定されるとともに、報酬関数に基づいて価値が最も高い情報項目が抽出される深層強化学習をニューラルネットワークに用いても良い。
【0061】
例えば、画像認識で実績のあるCNN(Convolution Neural Network)を用いる。このCNNでは、中間層が畳み込み層とプーリング層で構成される。畳み込み層は、前の層で近くにあるノードにフィルタ処理を施すことで特徴マップを取得する。プーリング層は、畳込み層から出力された特徴マップを、さらに縮小して新たな特徴マップとする。この際に特徴マップにおいて着目する領域に含まれる画素の最大値を得ることで、特徴量の位置の多少のずれも吸収することができる。
【0062】
畳み込み層は、画像の局所的な特徴を抽出し、プーリング層は、局所的な特徴をまとめる処理を行う。これらの処理では、入力画像の特徴を維持しながら画像を縮小処理する。つまり、CNNでは、画像の持つ情報量を大幅に圧縮(抽象化)することができる。そして、ニューラルネットワークに記憶された抽象化された画像イメージを用いて、入力される画像を認識し、画像の分類を行うことができる。
【0063】
なお、深層学習には、オートエンコーダ、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short-Term Memory)、GAN(Generative Adversarial Network)などの各種手法がある。これらの手法を本実施形態の深層学習に適用しても良い。
【0064】
余寿命評価部17(図1)は、パラメータ同定部14によって実測データが同定されたパラメータを反映した場合の解析部10の演算結果に基づいて、それぞれの機器21の余寿命を算出する。このようにすれば、実測データに基づいて、それぞれの機器21の余寿命を算出することができる。
【0065】
また、余寿命評価部17は、パラメータ同定部14で同定された実測パラメータを反映した場合に解析部10で得られるそれぞれの機器21に関連する荷重と応力と電圧と電流と温度の少なくとも1つを求めた結果から余寿命を評価する。このようにすれば、機器21にかかる荷重または応力を考慮した余寿命を評価することができる。
【0066】
例えば、演算によって装置20を構成するそれぞれの機器21の荷重と応力の時間変化を求め、寿命評価式と材料特性から余寿命を判断する。また、本実施形態では、荷重と応力のみならず、電圧または電流の時間変化による絶縁材料の劣化と、熱サイクル(温度の時間変化)による材料の劣化などから余寿命を判断することも可能となっている。
【0067】
寿命評価式としては、例えば、回転体21Cを支持する転がり軸受にラジアル荷重Pが働く場合の基本定格寿命L10がある。このラジアル荷重Pは、物理モデルに基づき、解析部10において次の式で算出される。
【0068】
L10=(C/P)
【0069】
ここで、Cは、基本動定格荷重であり、転がり軸受の動的負荷能力を表すものである。例えば、100万回転の基本定格寿命L10を与えるような一定荷重をいう。また、pは、転がり軸受の種類毎に替わる指数である。例えば、玉軸受の場合、p=3となる。ころ軸受の場合、p=10/3となる。
【0070】
また、解析部10で求めた変動応力に対して、例えば、材料特性から余寿命が判断するマイナー則(修正マイナー則)を用いて余寿命を評価しても良い。このとき、実働応力の応力頻度分布は、レインフロー法などを用いて求めることができる。
【0071】
図7および図8のグラフを参照してマイナー則による余寿命評価方法を説明する。なお、図8の実線のグラフG1は、疲労限度曲線(材料特性)である。図8の破線のグラフG2は、修正マイナー則により疲労限度曲線を延長した場合のものである。
【0072】
ここで、対象となる材料のS-N曲線において、一定の応力振幅の繰り返し応力σiによって破断が生じる繰り返し数をNiとする。例えば、所定の物体に対して、振幅が異なるk個の繰り返し応力σi(i=1~k)が、それぞれni(i=1~k)回に亘って繰り返されたとする。このとき、この物体に累積した疲労損傷Dは、以下の式で与えられる。ここで、Dが1に達したときを寿命と定義する。
【0073】
【数1】
【0074】
図9のグラフを参照して余寿命評価の運用方法を説明する。このグラフにおいて、縦軸が疲労損傷Dであり、横軸がサイクル数である。
【0075】
図9の破線のグラフG3で示す範囲は、装置20の運転開始時に余寿命を評価した結果を示している。この破線のグラフに示すように、シミュレーションによる荷重評価には、パラメータのばらつきと演算の誤差が考慮されているため、算出される寿命は、統計的な分布となる。このため、機器21の寿命は、故障確率から決定される。基準となる故障確率は、それぞれの機器21に対応して設定される。
【0076】
図9の実線のグラフG4で示す範囲は、所定の期間に亘って装置20を運転した後の余寿命評価結果を示している。運転中に機器21の状態が変化すると、これに応じて余寿命の評価結果が変化することになる。このような評価は、運転期間中にリアルタイムに行うことが好ましいが、運用の仕方に応じて定期的に行っても良い。
【0077】
本実施形態の状態判定部15(図1)は、パラメータ同定部14で同定されたそれぞれの実測パラメータに基づいて装置20の異常の有無を判定する。ここで、状態判定部15は、余寿命評価部17で算出された余寿命と予め計画された運転時間との比較によって装置20の異常の有無を判定する。このようにすれば、予め計画された運転期間中に装置20に異常が生じるか否かを評価することができる。例えば、それぞれの機器21の余寿命と計画されている運転時間との比較により異常の有無を評価する。
【0078】
また、状態判定部15は、パラメータ同定部14によって同定された実測パラメータと任意に設定されたパラメータ用許容範囲との比較によって装置20の異常の有無を判定する。このようにすれば、任意に設定されたパラメータ用許容範囲によって装置20の異常の有無の判定処理を容易に行うことができる。
【0079】
また、状態判定部15は、物理量測定部12によって取得された実測データと任意に設定されたデータ用許容範囲との比較によって装置20の異常の有無を判定する。このようにすれば、任意に設定されたデータ用許容範囲によって装置20の異常の有無の判定処理を容易に行うことができる。
【0080】
例えば、状態判定部15は、物理量測定部12によって取得された実測データとデータ用許容範囲とを比較することで、異常の有無を判断する。また、データ処理部から出力された分析用データと許容範囲を比較することで異常の有無を判断する。
【0081】
状態判定部15で判定に用いるパラメータ用許容範囲とデータ用許容範囲は予め設定されている。これらの許容範囲は、ユーザが予め任意に設定してもよい。また、これらの許容範囲の全ては、装置20に対して同一のものでも良いし、個々の装置20で異なっていても良い。
【0082】
また、これらの許容範囲は、実測データに基づいて設定しても良いし、装置20の挙動に関する仕様に基づいて設定しても良いし、実際の試験結果に基づいて設定しても良いし、シミュレーション結果に基づいて設定しても良いし、これらを組み合わせた結果から設定しても良い。
【0083】
異常特定部16(図1)は、状態判定部15で装置20が異常であると判定された場合に、異常の程度と原因を特定する。このようにすれば、実測データに基づいて、異常の程度と原因を特定することができる。また、実測パラメータの組み合わせと値の大きさから異常の程度を評価することができる。
【0084】
点検推定部18(図1)は、状態判定部15で装置20が正常であると判定された場合に、実測パラメータの組み合わせと大きさから異常の進展具合を推定し、かつ余寿命評価部17で算出した機器21の余寿命から次回の点検箇所と点検時期とを推定する。このようにすれば、自動的に点検箇所と点検時期をユーザに提示することができる。
【0085】
なお、メイン制御部8は、出力部5を制御することで、装置診断システム1の評価結果の出力を行う。例えば、異常特定部16と点検推定部18により導き出された結果を出力する。
【0086】
次に、本実施形態の装置診断システム1が実行する装置診断方法(処理)について図10のフローチャートを用いて説明する。なお、前述の図面を適宜参照する。以下のステップは、装置診断方法に含まれる少なくとも一部の処理であり、他のステップが装置診断方法に含まれていても良い。
【0087】
まず、ステップS1において、モデル構築部9は、少なくとも回転電機を含む複数の機器21で構成される装置20の動作を再現し、かつ動作に関連して生じる機器21の状態を再現する物理モデルを構築する。
【0088】
次のステップS2において、解析部10は、物理モデルに基づいて定式化された方程式にパラメータを反映して演算を行う。
【0089】
次のステップS3において、学習部11は、解析部10の演算結果とこれに対応するそれぞれのパラメータを教師データとして学習する。
【0090】
次のステップS4において、物理量測定部12は、それぞれの機器21で実際に測定された物理量を実測データとして取得する。
【0091】
次のステップS5において、実測データ処理部13は、物理量測定部12によって取得された実測データを解析部10の演算に対応する形式の分析用データに変換する。
【0092】
次のステップS6において、パラメータ同定部14は、解析部10の演算結果が分析用データ(実測データ)を再現する場合のパラメータである実測パラメータを、学習部11で学習した教師データに基づいて同定する。
【0093】
次のステップS7において、状態判定部15は、パラメータ同定部14で同定されたそれぞれの実測パラメータに基づいて、現時点において、装置20に異常があるか否かを判定する。ここで、異常がない場合(ステップS7でNOの場合)は、ステップS8に進む。一方、異常がある場合(ステップS7でYESの場合)は、ステップS10に進む。
【0094】
ステップS7でNOの場合に進むステップS8において、余寿命評価部17は、パラメータ同定部14によって分析用データ(実測データ)が同定されたパラメータを反映した場合の解析部10の演算結果に基づいて、それぞれの機器21の余寿命を算出する。
【0095】
次のステップS9において、点検推定部18は、実測パラメータの組み合わせと大きさから異常の進展具合を推定し、かつ余寿命評価部17で算出した機器21の余寿命から次回の点検箇所と点検時期とを推定する。なお、メイン制御部8は、出力部5を制御することで、装置診断システム1の評価結果の出力を行う。そして、装置診断方法を終了する。
【0096】
ステップS7でYESの場合に進むステップS10において、異常特定部16は、状態判定部15で装置20が異常であると判定された場合に、異常の程度と原因を特定する。なお、メイン制御部8は、出力部5を制御することで、装置診断システム1の評価結果の出力を行う。そして、装置診断方法を終了する。
【0097】
なお、前述の実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
【0098】
前述の実施形態のシステムは、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスまたはキーボードなどの入力装置と、通信インターフェースとを備える。このシステムは、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
【0099】
なお、前述の実施形態のシステムで実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記憶されて提供するようにしても良い。
【0100】
また、このシステムで実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしても良い。また、このシステムは、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワークまたは専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【0101】
以上説明した実施形態によれば、少なくとも回転電機を含む複数の機器で構成される装置の動作を再現し、かつ動作に関連して生じる機器の状態を再現する物理モデルを構築するモデル構築部を備えることにより、過去に異常経験のない装置であっても、装置の実測データから異常に関する評価を行うことができる。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態またはその変形は、発明の範囲と要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0103】
1…装置診断システム、2…センサ、3…解析用コンピュータ、4…入力部、5…出力部、6…通信部、7…記憶部、8…メイン制御部、9…モデル構築部、10…解析部、11…学習部、12…物理量測定部、13…実測データ処理部、14…パラメータ同定部、15…状態判定部、16…異常特定部、17…余寿命評価部、18…点検推定部、20…装置、21…機器、21A…制御盤、21B…電動機、21C…回転体、21D…負荷側の機器群。
図1
図2
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図10