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  • 特許-防振ブッシュ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】防振ブッシュ
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/38 20060101AFI20241209BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
F16F1/38 Z
F16F15/08 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021129070
(22)【出願日】2021-08-05
(65)【公開番号】P2023023489
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2024-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-329236(JP,A)
【文献】特開平06-129462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00-6/00
F16F 15/00-15/36
F16F 9/00-9/58
B60G 17/019
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内筒、および他方に連結されるとともに、前記内筒を径方向の外側から囲繞する外筒と、
前記内筒および前記外筒を弾性的に連結する本体ゴムと、
を備える防振ブッシュであって、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面との間に、周方向に間隔をあけて設けられた複数の中間部材を備え、
前記外筒および前記中間部材は、導電性材料で形成され、
前記外筒および前記中間部材に接合された導線と、
前記導線を介して前記外筒と前記中間部材との間に交流電圧を印加し、かつ前記外筒と前記中間部材との間を流れる電流に基づいて、前記防振ブッシュに加えられた入力荷重を算出する計測部と、を備えている、防振ブッシュ。
【請求項2】
前記計測部は、前記外筒と前記中間部材との間を流れる電流に基づいて、前記外筒と前記中間部材との間の静電容量を算出し、この静電容量に基づいて前記入力荷重を算出する、請求項1に記載の防振ブッシュ。
【請求項3】
前記中間部材は、円弧状に形成されるとともに、前記内筒の外周面と、前記外筒の内周面と、の間における径方向の中央部より径方向の外側に、前記外筒と同軸に配設されている、請求項2に記載の防振ブッシュ。
【請求項4】
前記中間部材は、前記内筒を径方向に挟む両側に設けられ、これら一対の前記中間部材に前記導線が各別に接合されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の防振ブッシュ。
【請求項5】
前記中間部材は、前記内筒および前記外筒それぞれの中心軸線に沿う軸方向に間隔をあけて複数設けられるとともに、これらの中間部材に前記導線が各別に接合されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の防振ブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振ブッシュに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内筒、および他方に連結されるとともに、内筒を径方向の外側から囲繞する外筒と、内筒および外筒を弾性的に連結する本体ゴムと、を備えた防振ブッシュとして、例えば下記特許文献1に示されるように、入力荷重を得るためのデータを測定するセンサが外筒に埋設された構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-270832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の防振ブッシュでは、外筒にセンサが埋設されているので、コストおよびかさ張りを抑えることが困難であるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、コストおよびかさ張りを抑えつつ、入力荷重を得ることができる防振ブッシュを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の防振ブッシュは、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内筒、および他方に連結されるとともに、前記内筒を径方向の外側から囲繞する外筒と、前記内筒および前記外筒を弾性的に連結する本体ゴムと、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面との間に、周方向に間隔をあけて設けられた複数の中間部材と、を備え、前記外筒および前記中間部材は、導電性材料で形成され、前記外筒および前記中間部材に接合された導線と、前記導線を介して前記外筒と前記中間部材との間に交流電圧を印加し、かつ前記外筒と前記中間部材との間を流れる電流に基づいて、この防振ブッシュに加えられた入力荷重を算出する計測部と、を備えている。
【0007】
この発明によれば、外筒および中間部材に接合された導線を介して外筒と中間部材との間に交流電圧を印加し、かつ外筒と中間部材との間を流れる電流に基づいて、この防振ブッシュに加えられた入力荷重を算出する計測部を備えている。
これにより、外筒および中間部材にセンサを取り付ける等しなくても、外筒および中間部材に導線を直に接合すれば足りるため、構造の複雑化を抑えつつ入力荷重を得ることが可能になり、防振ブッシュのコストおよびかさ張りを抑えることができる。
【0008】
前記計測部は、前記外筒と前記中間部材との間を流れる電流に基づいて、前記外筒と前記中間部材との間の静電容量を算出し、この静電容量に基づいて前記入力荷重を算出してもよい。
【0009】
計測部が、外筒と中間部材との間の静電容量に基づいて防振ブッシュに加えられた入力荷重を算出するので、例えば本体ゴムの材質等に依存せず、防振ブッシュに加えられた入力荷重を容易に得ることができる。
【0010】
前記中間部材は、円弧状に形成されるとともに、前記内筒の外周面と、前記外筒の内周面と、の間における径方向の中央部より径方向の外側に、前記外筒と同軸に配設されてもよい。
【0011】
中間部材が、内筒の外周面と、外筒の内周面と、の間における径方向の中央部より径方向の外側に設けられているので、円弧状に形成された中間部材の外周面の面積を広く確保することができる。これにより、外筒および中間部材の相対変位に伴い、外筒と中間部材との間の静電容量を大きく変動させることが可能になり、防振ブッシュに加えられた入力荷重を精度よく算出することができる。
【0012】
前記中間部材は、前記内筒を径方向に挟む両側に設けられ、これら一対の前記中間部材に前記導線が各別に接合されてもよい。
【0013】
外筒と一対の中間部材との間を各別に流れる電流に基づいて、この防振ブッシュに加えられた入力荷重を算出するので、防振ブッシュに加えられた径方向の入力荷重を精度よく算出することができる。
【0014】
前記中間部材は、前記内筒および前記外筒それぞれの中心軸線に沿う軸方向に間隔をあけて複数設けられるとともに、これらの中間部材に前記導線が各別に接合されてもよい。
【0015】
中間部材が、軸方向に間隔をあけて複数設けられるとともに、これらの中間部材に導線が各別に接合されているので、内筒および外筒が、それぞれの中心軸線を互いに交差させるように相対変位するこじり方向の入力荷重を精度よく算出することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、コストおよびかさ張りを抑えつつ、入力荷重を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態として示した防振ブッシュの平面図である。
図2図1のII-II線矢視断面図である。
図3】第2実施形態として示した防振ブッシュの平面図である。
図4図3のIV-IV線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、防振ブッシュの第1実施形態を、図1および図2を参照しながら説明する。
防振ブッシュ1は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内筒11、および他方に連結されるとともに、内筒11を径方向の外側から囲繞する外筒12と、内筒11および外筒12を弾性的に連結する本体ゴム13と、内筒11の外周面と外筒12の内周面との間に、周方向に間隔をあけて設けられた複数の中間部材14と、を備えている。
【0019】
防振ブッシュ1は、例えば自動車用のサスペンションブッシュやエンジンマウント、あるいは工場に設置される産業機械のマウント等として用いられる。
防振ブッシュ1を、例えば自動車用のサスペンションブッシュとして用いる場合、内筒11を、サスペンションメンバーのブラケット(図示せず)等により、軸方向の両側から挟み込んだ状態で、内筒11内に挿入したボルト等の締結部材(図示せず)を用いて、内筒11をブラケットに固定し、外筒12を、例えばリンク部材の取付けホルダ(図示せず)等の内側に圧入することで、外筒12をホルダに固定する。
【0020】
以下、内筒11の中心軸線Oに沿う方向を軸方向という。また、防振ブッシュ1を軸方向から見た平面視において、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0021】
内筒11、外筒12、中間部材14、および本体ゴム13それぞれの軸方向の中央部は互いに一致している。防振ブッシュ1は、軸方向、および径方向のうちの一方向に沿う縦断面視で、軸方向の中央部を通る直線Lに対して対称形状を呈する。
外筒12は、例えば金属材料、および導電性高分子材料等の導電性材料で形成されている。外筒12は、中心軸線Oと同軸に配設されている。
内筒11の軸方向の両端部は、外筒12の軸方向の両端部より軸方向の外側に位置している。
本体ゴム13は、中間部材14の外周面と外筒12の内周面とを連結し、かつ中間部材14の内周面と内筒11の外周面とを連結している。
【0022】
中間部材14は、外筒12と同様に導電性材料で形成されている。中間部材14の軸方向の両端部は、本体ゴム13から軸方向の外側に突出している。中間部材14の軸方向の両端部は、外筒12の軸方向の両端部より軸方向の内側に位置している。中間部材14は、内筒11を径方向に挟む両側に各別に設けられている。これらの中間部材14は、互いに同じ大きさで、同じ形状に形成されている。中間部材14は、中心軸線Oを中心とする円弧状に形成されている。
【0023】
中間部材14は、内筒11の外周面と、外筒12の内周面と、の間における径方向の中央部より径方向の外側に設けられている。中間部材14の外周面と外筒12の内周面との間の径方向の距離は、中間部材14の内周面と内筒11の外周面との間の径方向の距離より小さくなっている。
【0024】
そして、本実施形態では、防振ブッシュ1は、導線15および計測部16を備えている。
導線15は、外筒12および中間部材14に、例えば、溶接、若しくはろう付け等により直接、接合されている。導線15は、内筒11を径方向に挟む両側に各別に設けられた一対の中間部材14に各別に接合されている。
計測部16は、発振部17、検知部18および演算部19を備えている。計測部16は、導線15を介して外筒12と中間部材14との間に交流電圧を印加し、かつ外筒12と中間部材14との間を流れる電流に基づいて、この防振ブッシュ1に加えられた入力荷重を算出する。
【0025】
本実施形態では、計測部16は、外筒12と中間部材14との間を流れる電流に基づいて、外筒12と中間部材14との間の静電容量を算出し、この静電容量に基づいて前記入力荷重を算出する。外筒12の内周面と中間部材14の外周面との間の径方向の距離が小さくなると、静電容量は増大し、前記距離が大きくなると、静電容量は減少する。
【0026】
発振部17は、導線15を介して外筒12と中間部材14との間に交流電圧を印加する。
検知部18は、外筒12と中間部材14との間を流れる電流を検知し、この電流に基づいて、外筒12と中間部材14との間の静電容量を算出する。
演算部19は、検知部18で算出された静電容量、並びに、予め記憶されていた、静電容量と、外筒12の内周面と中間部材14の外周面との間の径方向の距離と、の関係式、に基づいて、前記距離を算出し、得られた前記距離と、予め記憶されていた、荷重入力前の前記距離と、の差、つまり外筒12および中間部材14の相対変位量を算出し、この差、および予め記憶されていた本体ゴム13のヤング率等に基づいて、この防振ブッシュ1に加えられた入力荷重を算出する。
【0027】
なお、演算部19は、検知部18で算出された静電容量と、予め記憶されていた、荷重入力前の静電容量と、の差を算出し、この差、並びに、予め記憶されていた、静電容量の差と、外筒12および中間部材14の相対変位量と、の関係式、に基づいて、前記相対変位量を算出し、得られた前記相対変位量、および予め記憶されていた本体ゴム13のヤング率等に基づいて、この防振ブッシュ1に加えられた入力荷重を算出してもよい。
【0028】
以上説明したように、本実施形態による防振ブッシュ1によれば、計測部16を備えているので、外筒12および中間部材14にセンサを取り付ける等しなくても、外筒12および中間部材14に導線15を直に接合すれば足りるため、構造の複雑化を抑えつつ入力荷重を得ることが可能になり、防振ブッシュ1のコストおよびかさ張りを抑えることができる。
【0029】
計測部16が、外筒12と中間部材14との間の静電容量に基づいて防振ブッシュ1に加えられた入力荷重を算出するので、例えば本体ゴム13の材質等に依存せず、防振ブッシュ1に加えられた入力荷重を容易に得ることができる。
【0030】
中間部材14が、内筒11の外周面と、外筒12の内周面と、の間における径方向の中央部より径方向の外側に設けられているので、円弧状に形成された中間部材14の外周面の面積を広く確保することができる。これにより、外筒12および中間部材14の相対変位に伴い、外筒12と中間部材14との間の静電容量を大きく変動させることが可能になり、防振ブッシュ1に加えられた入力荷重を精度よく算出することができる。
【0031】
外筒12と一対の中間部材14との間を各別に流れる電流に基づいて、この防振ブッシュ1に加えられた入力荷重を算出するので、防振ブッシュ1に加えられた径方向の入力荷重を精度よく算出することができる。
【0032】
次に、第2実施形態に係る防振ブッシュ2を、図3および図4を参照しながら説明する。
なお、第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0033】
本実施形態では、一対の中間部材14が、中心軸線Oを中心に90°離れた位置に各別に設けられている。これらの4つ全ての中間部材14に導線15が各別に接合されている。これにより、軸方向から見て互いに直交する2方向の入力荷重を精度よく算出することができる。
さらに、中間部材14が、軸方向に間隔をあけて複数設けられるとともに、これらの中間部材14にも導線15が各別に接合されている。
【0034】
図示の例では、複数の中間部材14は、互いに同じ大きさで、同じ形状に形成されている。軸方向で互いに隣り合う中間部材14の周方向の位置は、互いに一致している。径方向で互いに対向する中間部材14の軸方向の位置は、互いに一致している。防振ブッシュ2は、軸方向、および径方向のうちの一方向に沿う縦断面視で、軸方向の中央部を通る直線Lに対して対称形状を呈する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態による防振ブッシュ2によれば、中間部材14が、軸方向に間隔をあけて複数設けられるとともに、これらの中間部材14に導線15が各別に接合されているので、内筒11および外筒12が、それぞれの中心軸線を互いに交差させるように相対変位するこじり方向の入力荷重を精度よく算出することができる。
【0036】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0037】
例えば、前記実施形態では、計測部16として、外筒12と中間部材14との間を流れる電流に基づいて、外筒12と中間部材14との間の静電容量を算出し、この静電容量に基づいて、防振ブッシュ1に加えられた入力荷重を算出したが、これに限らず、前述した電流に基づいて、外筒12と中間部材14との間の電気抵抗を算出し、この電気抵抗に基づいて、前記入力荷重を算出してもよい。
【0038】
導線15は、内筒11を径方向に挟む両側に各別に設けられた一対の中間部材14のうちのいずれか一方にのみ接合されてもよい。
前記第2実施形態において、導線15は、軸方向に間隔をあけて設けられた複数の中間部材14のうちの1つにのみ接合されてもよい。
中間部材14は、内筒11の外周面と、外筒12の内周面と、の間における径方向の中央部、若しくはこの位置より径方向の内側に設けられてもよい。
【0039】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1、2 防振ブッシュ
11 内筒
12 外筒
13 本体ゴム
14 中間部材
15 導線
16 計測部
O 中心軸線
図1
図2
図3
図4