IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヴァレオジャパンの特許一覧

<>
  • 特許-把持検出装置 図1
  • 特許-把持検出装置 図2
  • 特許-把持検出装置 図3
  • 特許-把持検出装置 図4
  • 特許-把持検出装置 図5
  • 特許-把持検出装置 図6
  • 特許-把持検出装置 図7
  • 特許-把持検出装置 図8
  • 特許-把持検出装置 図9
  • 特許-把持検出装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】把持検出装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20241209BHJP
   B60R 16/027 20060101ALI20241209BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
B62D1/06
B60R16/027 T
H05B3/00 330Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021137899
(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公開番号】P2023032036
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】依田 直也
(72)【発明者】
【氏名】田本 安充
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-518505(JP,A)
【文献】特開2018-206776(JP,A)
【文献】実公昭51-017555(JP,Y1)
【文献】特開2015-180571(JP,A)
【文献】特開昭62-287313(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0102024(US,A1)
【文献】特許第6145569(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/04
B60R 16/027
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングホイールに設けられたヒータと前記ヒータに電力を供給する電源とからなる直列回路と、
前記ヒータに接続し、静電容量の変化を検出するための第1の交流信号を前記ヒータに出力する静電容量センサ回路と、
前記静電容量の変化から、前記車両の乗員による前記ステアリングホイールの把持を検出する検出部と、
前記直列回路に設けられ、前記電源と前記ヒータとの接続状態を切り替えるスイッチと、
前記スイッチの動作を制御する制御信号を出力し、前記静電容量センサ回路が前記第1の交流信号を出力する際に、前記電源と前記ヒータの接続を遮断するスイッチ制御部と、を備える把持検出装置において、
前記スイッチ制御部は、前記スイッチの前記接続状態を切り替える動作を遅延させる遅延回路を備え
前記静電容量センサ回路は、
前記ヒータの一端に接続し、前記第1の交流信号を前記ヒータに出力する第1の接続部と、
前記直列回路の前記第1の接続部と前記電源との間に接続し、前記第1の交流信号と同電圧および同電位の第2の交流信号を前記直列回路に出力する第2の接続部と、を有し、
前記スイッチは、前記直列回路における前記第2の接続部の両側に設けられた第1のスイッチと第2のスイッチを備えることを特徴とする、把持検出装置。
【請求項2】
前記スイッチは、ゲートに入力される前記制御信号の電圧に応じて動作するFETを用いて構成され、
前記遅延回路は、前記スイッチの前記接続状態を切り替える際に、PWM信号を出力するPWM信号発生器と、前記PWM信号を平滑化し、前記制御信号として前記スイッチに出力する平滑回路とを有することを特徴とする、請求項1に記載の把持検出装置。
【請求項3】
前記スイッチは、ゲートに入力される前記制御信号の電圧に応じて動作するFETを用いて構成され、
前記遅延回路は、任意の電圧の前記制御信号を出力するDAコンバータを有することを特徴とする、請求項1に記載の把持検出装置。
【請求項4】
前記ヒータに並列に接続され、前記電源からのノイズをバイパスさせて、前記ヒータへのノイズの流入を抑制する容量素子を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の把持検出装置。
【請求項5】
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのいずれかに前記遅延回路が接続されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の把持検出装置。
【請求項6】
前記静電容量センサ回路は、
前記ヒータの他端に接続し、前記第1の交流信号を前記ヒータに出力する第3の接続部と、
前記直列回路の前記第3の接続部とグランドとの間に接続し、前記第1の交流信号と同電圧および同電位の第2の交流信号を出力する第4の接続部と、を有し、
前記スイッチは、前記直列回路における前記第4の接続部の両側に設けられた第3のスイッチと第4のスイッチを備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の把持検出装置。
【請求項7】
前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチ、前記第3のスイッチおよび前記第4のスイッチのいずれか一つに、前記遅延回路が接続されることを特徴とする、請求項に記載の把持検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のステアリングホイールに設けられたヒータに交流信号を送出して、乗員がステアリングホイールを把持しているかを検出する把持検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6145569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図10は、従来の把持検出装置100の構成を示す図である。
図10に示すように、ヒータ200Aは、直列回路110によって、ヒータ200Aに電力を供給する直流電源120に接続されている。
把持検出装置100は、ヒータ200Aの一端に接続された静電容量センサ回路300を備える。
静電容量センサ回路300は、静電容量センサ310を備える。静電容量センサ310は、ヒータ200Aに、ヒータ200Aの静電容量の変化を検出するための交流信号を出力する。乗員がステアリングホイールを把持すると、ヒータ200Aの静電容量は変化する。把持検出装置100は、ヒータ200Aの静電容量の変化から、ステアリングホイールの把持を検出する。
【0005】
把持検出装置100は、直列回路110に設けられたFET等で構成されるスイッチ510、520と、スイッチ510、520のオンとオフを制御するスイッチ制御部700を備える。静電容量センサ310からヒータ200Aに交流信号を出力する際には、スイッチ制御部700はスイッチ510、520をオフして直流電源120からヒータ200Aへの電力供給を遮断する。
把持検出は周期的に行われるため、把持検出の検出周期に合わせてスイッチ510、520のオンとオフが切り替えられ、ヒータ200Aは間欠的に動作する。ヒータ200Aが間欠的に動作すると、ヒータ200Aに流れる電流が急激に変化することになり、電磁ノイズが発生しやすくなる。
【0006】
車両におけるEMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)の観点から、ヒータにおける電磁ノイズの発生の低減が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
車両のステアリングホイールに設けられたヒータと前記ヒータに電力を供給する電源とからなる直列回路と、
前記ヒータに接続し、静電容量の変化を検出するための第1の交流信号を前記ヒータに出力する静電容量センサ回路と、
前記静電容量の変化から、前記車両の乗員による前記ステアリングホイールの把持を検出する検出部と、
前記直列回路に設けられ、前記電源と前記ヒータとの接続状態を切り替えるスイッチと、
前記スイッチの動作を制御する制御信号を出力し、前記静電容量センサ回路が前記第1の交流信号を出力する際に、前記電源と前記ヒータの接続を遮断するスイッチ制御部と、を備える把持検出装置において、
前記スイッチ制御部は、前記スイッチの前記接続状態を切り替える動作を遅延させる遅延回路を備え
前記静電容量センサ回路は、
前記ヒータの一端に接続し、前記第1の交流信号を前記ヒータに出力する第1の接続部と、
前記直列回路の前記第1の接続部と前記電源との間に接続し、前記第1の交流信号と同電圧および同電位の第2の交流信号を前記直列回路に出力する第2の接続部と、を有し、
前記スイッチは、前記直列回路における前記第2の接続部の両側に設けられた第1のスイッチと第2のスイッチを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒータにおける電磁ノイズの発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る把持検出装置を含む車室内の概略図である。
図2】把持検出装置の構成を示す図である。
図3】制御部の構成を示す図である。
図4】(A)は、PWM信号発生器が出力する制御信号の電圧を示す図であり、(B)は、平滑回路が出力する制御信号の電圧を示す図であり、(C)は、ヒータ線に流れる電流を示す図である。
図5】実施形態に係る把持検出装置の動作を示す図である。
図6】(A)は、スイッチ52、53、54のゲート電圧を示す図であり、(B)は、スイッチ51のゲート電圧を示す図である。
図7】実施形態におけるヒータ線に流れる電流の変化を示す図である。
図8】比較例におけるヒータ線に流れる電流の変化を示す図である。
図9】変形例に係る把持検出装置の制御部の構成を示す図である。
図10】従来の把持検出装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る把持検出装置1を含む車室VR内の概略図である。図1では、ヒータ線200を簡略化してクロスハッチングで示している。
図1に示すように、車両の車室VRには、乗員DPが車両の走行方向を操作するためのステアリングホイールSWが設けられている。ステアリングホイールSWには、電流が流れることにより発熱するヒータ線200(ヒータ)が全周に亘り設けられている。詳細な説明は省略するが、ヒータ線200は、たとえば、ステアリングホイールSWを覆う被覆部材の内側で、ステアリングホイールSWの外周側から巻き掛けられている。
【0011】
図1に示すように、乗員DPは車両の走行方向を操作する際にステアリングホイールSWを把持する。乗員DPがステアリングホイールSWを把持すると、乗員DPの手が、ステアリングホイールSWに設けられたヒータ線200に近接する。ヒータ線200に後述の交流信号S1を出力することにより、ヒータ線200に電流が流れて電界が生じるが、この電界に乗員DPの手が近づくことで、ヒータ線200に流れる静電容量が変化する。
実施形態の把持検出装置1は、ヒータ線200の静電容量の変化を周期的に検出し、検出した静電容量の変化が、乗員DPがステアリングホイールSWを把持していることを示すものであるかを判定する。
すなわち、本明細書において、「把持検出装置1が乗員DPによるステアリングホイールSWの把持を検出する」ということは、「把持検出装置1によって、乗員DPがステアリングホイールSWを把持していることを示す静電容量変化値が検出される」ことと同義である。
【0012】
図2は、把持検出装置1の構成を示す図である。
図2に示すように、把持検出装置1は、直列回路10と、静電容量センサ回路30と、スイッチ51~54と、制御部70と、を備える。
直列回路10は、ヒータ線200と、ヒータ線200に電力を供給する直流電源11とからなる回路である。直列回路10は、ヒータ線200の一端200aを直流電源11に接続する接続線210と、ヒータ線200の他端200bをグランド13に接続する接続線220と、を有する。接続線210は、ヒータ線200を、スイッチ51、52を介して直流電源11に接続する。接続線220は、ヒータ線200を、スイッチ53、54を介してグランド13に接続する。接続線210には、ヒータ線200の過熱を防止するためのサーモスタット250が接続されている。一定の温度以上になると、サーモスタット250が作動して、直流電源11からヒータ線200への電力の供給が遮断される。
【0013】
静電容量センサ回路30は、接続線210、220を介してヒータ線200に接続する。静電容量センサ回路30は、ステアリングホイールSWの把持を検出するための交流信号S1(第1の交流信号)を、接続線210、220を介してヒータ線200に出力する。
静電容量センサ回路30は、静電容量センサ31と、信号線32、33と、信号線34、35と、を有する。信号線32(第1の接続部)は、静電容量センサ31を、インダクタンス素子I1と、抵抗素子R1および容量素子C1からなる並列回路とを介して、接続点P1において接続線210に接続する。信号線33(第3の接続部)は、静電容量センサ31を、インダクタンス素子I1と、抵抗素子R1および容量素子C1からなる並列回路とを介して、接続点P2において接続線220に接続する。
信号線34(第2の接続部)は、静電容量センサ31を、直列回路10における、スイッチ51のソース電極(S)と、スイッチ52のドレイン電極(D)の間に接続する。信号線35(第4の接続部)は、静電容量センサ31を、直列回路10における、スイッチ53のソース電極(S)と、スイッチ54のドレイン電極(D)の間に接続する。
静電容量センサ31は、信号線32、33を介してヒータ線200に交流信号S1を出力すると共に、交流信号S1の出力によってヒータ線200に流れる電流値に基づいて、ヒータ線200の静電容量値を検出するセンサである。信号線32、33に接続された抵抗素子R1、容量素子C1およびインダクタンス素子I1は、それぞれ交流信号S1の電磁ノイズを除去するために設けられている。静電容量センサ31が、一対の信号線32、33のそれぞれを介してヒータ線200の静電容量値を検出することで、検出精度を高めることができる。静電容量センサ31は、交流信号S1をヒータ線200に出力する際に、交流信号S1と同電圧および同電位の交流信号S2(第2の交流信号)を、信号線34、35を介して直列回路10に出力する。交流信号S2の作用については後述する。
【0014】
図2に示すように、把持検出装置1は、直列回路10に接続された4つのスイッチ51、52、53、54を備えている。スイッチ51、52、53、54は、直流電源11とヒータ線200との電気的な接続状態、すなわち、直流電源11とヒータ線200の電気的な接続および遮断を切り替えるものである。
スイッチ51(第1のスイッチ)とスイッチ52(第2のスイッチ)は、直列回路10における信号線34の接続点P3の両側に接続する。スイッチ51は、直列回路10の、直流電源11と信号線34との間に接続する。スイッチ52は、直列回路10の、信号線34と信号線32との間に接続する。
スイッチ53(第3のスイッチ)とスイッチ54(第4のスイッチ)は、直列回路10における信号線35の接続点P4の両側に接続する。スイッチ53は、直列回路10の、信号線33と信号線35との間に接続する。スイッチ54は、直列回路10の、信号線35とグランド13との間に接続する。
【0015】
スイッチ51~54は、たとえば、FET(Field effect transistor:電界効果トランジスタ)から構成することができる。図2の例では、FETとして、Nチャネル型MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)を用いている。Nチャネル型MOSFETは、ゲート電極(G)に電圧を印加することで、ソース電極(S)とドレイン電極(D)の間に電流が流れてオンするトランジスタである。Nチャネル型MOSFETは、ゲート電極(G)に印加される電圧(ゲート電圧)がHighレベルになるとオンし、Lowレベルになるとオフする。Nチャネル型MOSFETを用いる場合は、ドレイン電極(D)を直流電源11側に配置し、ソース電極(S)をグランド13側に配置する。
なお、スイッチ51~54として、Nチャネル型MOSFETに代えて、Pチャネル型MOSFETを用いても良い。Pチャネル型MOSFETは、ゲート電極(G)に印加される電圧(ゲート電圧)がLowレベルになるとオンし、Highレベルになるとオフするトランジスタである。Pチャネル型MOSFETを用いる場合は、Nチャネル型MOSFETとは反対に、ソース電極(S)を直流電源11側に配置し、ドレイン電極(D)をグランド13側に配置する。
【0016】
スイッチ51~54がオンすることで、直流電源11とヒータ線200が接続して、直流電源11からヒータ線200に電力が供給される。スイッチ51~54がオフすることで、直流電源11とヒータ線200の接続が遮断され、ヒータ線200への電力の供給が遮断される。
【0017】
把持検出装置1は、さらに、ヒータ線200に対して並列に接続された容量素子C2を備えている。
具体的には、容量素子C2は、ヒータ線200の一端200a側に接続する接続線210と、ヒータ線200の他端200b側に接続する接続線220とに接続されている。より具体的には、容量素子C2は、接続線210と信号線32との接続点P1と、接続線220と信号線33との接続点P2に跨がって接続されている。詳細は後記するが、容量素子C2は、ヒータ線200から発生する電磁ノイズを低減するために設けられている。
【0018】
図2に示す制御部70は、静電容量センサ31とスイッチ51、52、53、54の動作を制御し、かつ静電容量センサ31の検出結果を処理するものである。なお、図2では図面をわかりやすくするため、スイッチ52~54のゲート電極(G)と制御部70とを接続する信号線の図示を省略している。
【0019】
図3は、制御部70の構成を示す図である。
図3に示すように、制御部70は、センサ制御部71と、スイッチ制御部72と、把持検出部73(検出部)と、を備える。
制御部70は、たとえば、MCU(Micro Control Unit)等の、マイクロプロセッサおよびメモリ等を搭載した集積回路から構成することができる。なお、センサ制御部71、スイッチ制御部72および把持検出部73は、それぞれ個別のMCU(Micro Control Unit)から構成しても良い。
【0020】
センサ制御部71は、静電容量センサ31の動作を制御する。
静電容量センサ31は、センサ制御部71の指示に応じて、予め設定された検出周期で交流信号S1を信号線32、33に出力する。静電容量センサ31は、交流信号S1を出力した際のヒータ線200の静電容量値を検出する。
言い換えると、静電容量センサ31は、ステアリングホイールSWが把持されているか否かを確認できる静電容量の変化を検出するために、検出周期毎に交流信号S1を出力して、ヒータ線200の静電容量値を検出する。
【0021】
静電容量センサ31は、交流信号S1を出力する際に、交流信号S1と同電位かつ同電圧の交流信号S2を、信号線34、35に出力する。
【0022】
スイッチ制御部72は、スイッチ51、52、53、54の動作を制御する。
スイッチ制御部72は、スイッチ51~54のオンおよびオフを制御するための制御信号を出力する。制御信号は、静電容量センサ31の検出周期に応じて、スイッチ制御部72から出力される。
スイッチ制御部72は、静電容量センサ31が交流信号S1を出力する際に、スイッチ51~54をオンからオフに切り替える。スイッチ制御部72は、静電容量センサ31からの交流信号S1の出力が終了すると、スイッチ51~54をオフからオンに切り替える。すなわち、スイッチ制御部72は、ステアリングホイールSWの把持を検出する間、直流電源11とヒータ線200の接続を遮断して、ヒータ線200の動作を一時的に停止させる。
【0023】
前記したように、FETで構成されるスイッチ51~54は、ゲート電極(G)に電圧が印加されることでオンするスイッチである。スイッチ制御部72は、電圧のレベルを変化させた制御信号をスイッチ51、52、53、54のそれぞれのゲート電極(G)に出力することで、スイッチ51~54のオンおよびオフを切り替える。
【0024】
スイッチ制御部72は、スイッチ51に接続されたPWM(Pulse Width Modulation)信号発生器74と、スイッチ52~54に接続されたGPIO(General-purpose input/output)75と、を備える。
PWM信号発生器74は、信号線91を介してスイッチ51のゲート電極(G)に接続されている。信号線91には、抵抗素子R3と容量素子C3が接続されている。抵抗素子R3と容量素子C3は、平滑回路を構成する。
PWM信号発生器74は、信号線91に制御信号を出力する。信号線91に入力された制御信号は、平滑回路(抵抗素子R3および容量素子C3)で平滑化されて、スイッチ51のゲート電極(G)に入力される。
出力端子であるGPIO75は、信号線92、93、94を介して、スイッチ52、53、54のそれぞれのゲート電極(G)に接続されている。GPIO75は、信号線92、93、94を介して、スイッチ52~54のそれぞれに制御信号を出力する。
【0025】
スイッチ51に接続されたPWM信号発生器74と、抵抗素子R3および容量素子C3からなる平滑回路とは、スイッチ51のオン動作およびオフ動作を遅延させる遅延回路を構成する。なお、「オン動作」はスイッチがオフからオンに切り替わる動作を意味し、「オフ動作」は、スイッチがオンからオフに切り替わる動作を意味する。
図4の(A)は、PWM信号発生器74が出力する制御信号の電圧を示す図である。図4の(B)は、平滑回路が出力する制御信号の電圧を示す図であると共に、スイッチ51のゲート電極(G)に入力される電圧(ゲート電圧)を示す図である。図4の(C)は、ヒータ線200を流れる電流を示す図である。
PWM信号発生器74は、制御信号としてPWM信号を出力する。PWM信号は、パルス信号のパルス幅を変調させた信号である。パルス信号は、電圧がHighレベルとなる期間(Highパルス幅Tp)とLowレベルとなる期間(Lowパルス幅Tq)を周期的に繰り返す信号である。PWM信号発生器74は、1つのパルス周期Tにおけるデューティ比Dの設定を変化させることで、PWM信号を生成する。デューティ比Dは、1つのパルス周期TにおけるHighパルス幅Tpの割合を意味する(D=Tp/T)。
【0026】
図4の(A)に示すように、PWM信号発生器74は、ヒータ線200を動作させる際には、デューティ比Dを100%に設定する。これによって、PWM信号発生器74は、デューティ比Dが100%である間、電圧がHighレベルの制御信号(オン信号)を出力する。図4の(B)に示すように、オン信号の入力によってスイッチ51のゲート電圧がHighレベルとなり、スイッチ51はオンされる。
図4の(A)に示すように、PWM信号発生器74は、ヒータ線200の動作を停止させる際には、デューティ比Dを0%に設定する。これによって、PWM信号発生器74は、デューティ比Dが0%である間、電圧がLowレベルの制御信号(オフ信号)を出力する。図4の(B)に示すように、オフ信号の入力によって、スイッチ51のゲート電圧がLowレベルとなり、スイッチ51はオフされる。
【0027】
図4の(A)に示すように、PWM信号発生器74は、スイッチ51をオンからオフに切り替える際(期間D1)と、オンからオンに切り替える際(期間D2)には、PWM信号のデューティ比Dを徐々に変化させる。
期間D1において、PWM信号発生器74は、デューティ比Dを100%から徐々に下げて最終的には0%にする。これによって、期間D1では、Highレベルの制御信号(オン信号)から、Highパルス幅TpとLowパルス幅Tqが交互に繰り返されるPWM信号に移行する。期間D1では、PWM信号のHighパルス幅Tpは徐々に短くなる一方、Lowパルス幅Tqが徐々に長くなっていき、最終的にはLowレベルの制御信号(オフ信号)に移行する。期間D1では、デューティ比Dが徐々に下がることで、PWM信号の平均電圧が徐々に低くなっていく。ここで、平均電圧は、PWM信号の1つのパルス周期Tにおける平均電圧を意味する。
【0028】
期間D2において、PWM信号発生器74は、デューティ比Dを0%から徐々に上げて最終的に100%にする。これによって、期間D2では、Lowレベルの制御信号(オフ信号)から、Highパルス幅TpとLowパルス幅Tqが交互に繰り返されるPWM信号に移行する。期間D2では、PWM信号のHighパルス幅Tpは徐々に長くなる一方、Lowパルス幅Tqが徐々に短くなっていき、最終的にはHighレベルの制御信号(オン信号)に移行する。期間D2では、デューティ比Dが徐々に上がることで、PWM信号の平均電圧が徐々に高くなっていく。
なお、図4はあくまで模式図であり、ヒータ線200を動作させる期間、ヒータ線200の動作を停止させる期間および期間D1、D2の長さは適宜変更可能である。
【0029】
このように、スイッチ51のオンとオフを切り替える期間D1および期間D2において、PWM信号の平均電圧が徐々に変化する状態となる。ただし、PWM信号の実際の電圧の波形は、図4の(A)に示すようにHighレベルとLowレベルの間で単純に切り替わるものである。
PWM信号発生器74から出力されたPWM信号は、平滑回路(抵抗素子R3および容量素子C3)で平滑化されてから、スイッチ51のゲート電極(G)に入力される。
平滑回路は、容量素子C3が充放電を行うことで、急峻な電圧の立ち上がりおよび立ち下りを鈍らせ、電圧の波形を平滑化するものである。図4の(B)に示すように、平滑回路は、電圧がHighレベルとLowレベルの間で急峻に切り替わるPWM信号を平滑化して、電圧が緩やかに変化する制御信号として出力する。
平均電圧が徐々に低くなる期間D1のPWM信号は、平滑化されることによって、電圧がHighレベルからLowレベルに緩やかに減少する制御信号となる。この制御信号が入力されるスイッチ51のゲート電圧も、Highレベル-からLowレベルに緩やかに減少する。
平均電圧が徐々に高くなる期間D2のPWM信号は、平滑化されることによって、電圧がLowレベルからHighレベルに緩やかに増加する制御信号となる。この制御信号が入力されるスイッチ51のゲート電圧も、LowレベルからHighレベルに緩やかに増加する。
このように、スイッチ51のゲート電極(G)には、PWM信号を平滑化した制御信号が入力される。これによって、スイッチ51のゲート電圧が緩やかに変動するため、スイッチ51ではオン/オフの切り替えが、ゆっくり行われる。
【0030】
一方、出力端子であるGPIO75は、制御信号の電圧を単純にHighレベルとLowレベルの間で切り替えて出力する。
GPIO75は、ヒータ線200を動作させる際には、Highレベルの制御信号(オン信号)を出力してスイッチ52~54をオンさせる。
GPIO75は、ヒータ線200を停止させる際には、Lowレベルの制御信号(オフ信号)を出力してスイッチ52~54をオフさせる。
GPIO75は、スイッチ52~54をオンからオフに切り替える際には、制御信号をオン信号からオフ信号に切り替える。GPIO75は、スイッチ52~54をオフからオンに切り替える際は、制御信号をオフ信号からオン信号に切り替える。
そのため、スイッチ52~54のゲート電圧は、オンとオフの切り替えの際に、HighレベルとLowレベルの間で急峻に変動するため、スイッチ52~54はスイッチ51と比較して速やかに動作する。
【0031】
図3に示すように、把持検出部73は、静電容量センサ31が検出したヒータ線200の静電容量値から、静電容量の変化(静電容量変化値)を検出する。この検出した静電容量変化値からステアリングホイールSWの把持の有無が特定可能となる。
ヒータ線200に交流信号S1を出力した際に静電容量センサ31によって検出される静電容量値は、乗員DPがステアリングホイールSWを把持している場合と、ステアリングホイールSWを把持していない場合で、異なる値となる。検出される静電容量値は、ステアリングホイールSWが把持されている場合のほうが、ステアリングホイールSWが把持されていない場合よりも高い値となる。
【0032】
一例として、ステアリングホイールSWが把持されていない場合の静電容量値を基準値Asとする。把持検出部73は、この基準値Asと、実際に検出された静電容量値Aとの差分Δ(A-As)を、静電容量の変化(静電容量変化値)として検出する。把持検出部73が、検出した静電容量変化値Δ(A-As)を、閾値Thと比較することで、乗員DPがステアリングホイールSWを把持しているか否かを判定できる。ここで、閾値Thは、基準値Asからの静電容量値Aの変化量が、ステアリングホイールSWが把持されていると判断できる値であることを示すものである。把持検出部73は、静電容量変化値Δ(A-As)を閾値Thと比較して、閾値Thよりも大きい場合(Δ(A-As)>Th)に、乗員DPがステアリングホイールSWを把持していると判定することができる。
また、別の例として、把持検出部73は、静電容量センサ31が検出した静電容量値Aそのものを静電容量変化値として用い、閾値Th’と比較しても良い。この場合、閾値Th’は、ステアリングホイールSWが把持されていると判断できる静電容量値を示すものである。把持検出部73は、静電容量値Aが閾値Th’よりも大きい場合(A>Th’)に、乗員DPがステアリングホイールSWを把持していると判定することができる。
なお、ここで挙げた基準値As、閾値Th、Th’は、実験やシミュレーションを通じて予め設定してメモリに記憶させても良く、静電容量センサ31が検出する静電容量値Aから設定して環境の変化等に応じて随時更新しても良い。
また、ここで説明したステアリングホイールSWの把持を検出する方法はあくまで一例に過ぎず、他の手法によりステアリングホイールSWの把持を判定しても良い。
【0033】
前記したように、本実施形態では、静電容量センサ31は、信号線32と信号線33の各々から、ヒータ線200に交流信号S1を出力できる仕様となっている。すなわち、静電容量センサ31は、ヒータ線200の一端200a側と他端200b側に交流信号S1を出力できる。
把持検出部73は、信号線32から交流信号S1を出力したときのヒータ線200の静電容量変化値と、信号線33から交流信号S1を出力したときのヒータ線200の静電容量変化値が、閾値を超えているか否かを判定することができる。
把持検出部73は、少なくとも一方の静電容量変化値が閾値を超えている場合に、ステアリングホイールSWの把持を特定するためのフラグをセットするようにしても良い。フラグがセットされるとは、乗員DPがステアリングホイールSWを把持していることを意味する。
【0034】
把持検出部73は、把持検出装置1の外部に設けられた報知部270に接続されている。報知部270は、たとえば、車室VRに設けられたディスプレイ、インジケータ、スピーカ等とすることができる。報知部270は、たとえば、把持検出部73でステアリングホイールSWの把持が検出されなかった場合に、乗員DPに把持を促すメッセージを出力することができる。メッセージは文字または画像としても良く、音声としても良い。
【0035】
次に、実施形態に係る把持検出装置1の動作および作用を説明する。
図5は、実施形態に係る把持検出装置1の動作を示す図である。図5は、ステアリングホイールSWの把持を検出する際の、把持検出装置1の動作を示している。
図6の(A)は、スイッチ52、53、54のゲート電極(G)の電圧(ゲート電圧)を示す図であり、図6の(B)は、スイッチ51のゲート電極(G)のゲート電圧を示す図である。図6は、スイッチ51~54をオンからオフに切り替える際のゲート電圧の変化を示している。
【0036】
図5に示すように、静電容量センサ31が交流信号S1を出力する際に、スイッチ51~54はオフされる。直列回路10のスイッチ51~54のすべてがオフされることによって、直流電源11からヒータ線200への電力供給が遮断される。
【0037】
具体的には、図6の(A)に示すように、スイッチ52~54は、スイッチ制御部72のGPIO75から出力される制御信号によって、ゲート電圧が速やかにHighレベルからLowレベルに減少してオフされる。
すなわち、スイッチ52~54では、ゲート電圧がHighレベルからLowレベルに下がるまでの時間T1が短く、スイッチ52~54のオフ動作が速やかに行われる。
【0038】
一方、前記したように、PWM信号発生器74から出力されたPWM信号は、平滑回路(抵抗素子R3および容量素子C3)により平滑化され、電圧が緩やかに減少する制御信号としてスイッチ51に入力される(図4の(A)および図4の(B)の期間D1参照)。そのため、図6の(B)に示すように、スイッチ51では、ゲート電圧のレベルがHighレベルからLowレベルに下がるまでの時間T2が、時間T1よりも長くなる(T1<T2)。すなわち、スイッチ51のオフ動作の速度が遅延し、スイッチ51のオフ動作は、スイッチ52~54よりもゆっくり行われる。
図4の(C)に示すように、ヒータ線200に流れる電流は、遅延したスイッチ51のオフ動作に合わせてゆっくりと減少する。すなわち、スイッチ51のオフ動作が遅延することによって、ヒータ線200は急激な電流の変化が抑制される。
図示は省略するが、スイッチ51がオフからオンに切り替わる際も同様である。PWM信号発生器74から出力されたPWM信号は、平滑回路(抵抗素子R3および容量素子C3)により平滑化され、電圧が緩やかに増加する制御信号としてスイッチ51に入力される(図4の(A)および図4の(B)の期間D2参照)。そのため、スイッチ51のゲート電圧がLowレベルからHighレベルに上がるまでの時間が、スイッチ52~54のゲート電圧がLowレベルからHighレベルに上がるまでの時間よりも長くなる。これによって、スイッチ51のオン動作の速度は遅延し、スイッチ51のオン動作は、スイッチ52~54のオン動作よりもゆっくり行われる。図4の(C)に示すように、ヒータ線200に流れる電流は、遅延したスイッチ51のオン動作に合わせてゆっくりと増加する。
【0039】
このように、PWM信号発生器74と、抵抗素子R3および容量素子C3からなる平滑回路により構成された遅延回路は、スイッチ51に入力される制御信号の電圧を緩やかに変化させる。これにより、スイッチ51のオン/オフの切り替えが遅延する結果、直流電源11とヒータ線200との接続状態の切り替えが、ゆっくりと行われることになる。
【0040】
図7は、実施形態におけるヒータ線200に流れる電流の変化を示す図である。
図8は、比較例におけるヒータ線200に流れる電流の変化を示す図である。
図8の比較例は、把持検出装置1に遅延回路を設けなかった場合を示す例である。
比較例では、スイッチ制御部72にPWM信号発生器74が設けられていない。さらに、スイッチ制御部72とスイッチ51を接続する信号線91(図3参照)に、抵抗素子R3および容量素子C3が設けられていない。比較例では、GPIO75が、スイッチ51~54の全てに制御信号を出力する。すなわち、スイッチ51~54には、単純に電圧がHighレベルとLowレベルの間で切り替わる制御信号が入力されるため、全てのスイッチ51~54は速やかに動作する。
【0041】
図7に示すように、スイッチ51~54のオフ動作の開始に伴って、ヒータ線200に流れる電流も減少していき、スイッチ51~54の全てのオフ動作が完了すると、直流電源11からヒータ線200への電流の流れは遮断される。
ここで、前記したように、実施形態では、遅延回路(PWM信号発生器74と、抵抗素子R3および容量素子C3からなる平滑回路)により、スイッチ51のオフ動作の速度が遅延する。スイッチ51の動作速度が遅延する分、ヒータ線200に流れる電流もゆっくりと減少する。図示は省略するが、スイッチ51のオン動作の際も、スイッチ51の動作速度が遅延する分、ヒータ線200に流れる電流はゆっくりと増加する。
【0042】
一方、図8に示す比較例では、スイッチ51には遅延回路が設けられていないため、スイッチ51の直流電源11とヒータ線200の接続状態の切り替え動作の速度は遅延しない。すべてのスイッチ51~54が速やかにオンからオフに切り替わることで、図8に示すように、ヒータ線200に流れる電流は急激に減少する。図示は省略するが、比較例では、スイッチ51~54がオフからオンに切り替わる際も同様に、ヒータ線200に流れる電流は急激に増加する。
【0043】
ステアリングホイールSWの把持の検出は周期的に行われるため、比較例ではヒータ線200の電流は急激な減少と増加を繰り返すことになる。このようにヒータ線200の電流が激しく変化することで、ヒータ線200から電磁ノイズが発生しやすくなる。具体的には、電流の急激な変化によって直流電源11で電源ノイズが発生し、この電源ノイズがヒータ線200に流入することで、ヒータ線200から電磁ノイズが発生しやすくなる。車両におけるEMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)の観点から、ヒータ線200からの電磁ノイズの発生を低減することが求められている。
【0044】
実施形態では、遅延回路(PWM信号発生器74と、抵抗素子R3および容量素子C3からなる平滑回路)によって、スイッチ51の動作速度が遅延することで、直流電源11とヒータ線200の接続状態(接続および遮断)がゆっくりと切り替えられ、ヒータ線200に流れる電流の変化も緩やかになる。これによって、ヒータ線200での電磁ノイズの発生が低減される。
【0045】
図5に示すように、スイッチ51~54がオフされると、静電容量センサ31は信号線32から交流信号S1を出力する。交流信号S1は、信号線32および接続線210を介してヒータ線200の一端200aに入力される。静電容量センサ31は、ヒータ線200に流れる電流値の変化から、ヒータ線200の静電容量値を検出する。静電容量センサ31は、続いて、信号線33から交流信号S1を出力する。交流信号S1は、信号線33および接続線220を介してヒータ線200の他端200bに入力される。静電容量センサ31は、ヒータ線200に流れる電流値の変化から、ヒータ線200の静電容量値を検出する。なお、信号線32、33に交流信号S1を出力する順序は逆にしても良い。
【0046】
静電容量センサ31は、信号線32、33から交流信号S1を出力すると共に、信号線34、35から、交流信号S1と同電圧かつ同電位の交流信号S2を出力する。ここで、スイッチ51~54を省いて見たとき、信号線34の直列回路10との接続点P3は、信号線32の直列回路10との接続点P1と、直流電源11との間に位置する。信号線35の直列回路10との接続点P4は、信号線33の直列回路10との接続点P2と、グランド13との間に位置する。交流信号S1を出力する際、スイッチ51~54はオフとなっているが、FETで構成されたスイッチ51~54はダイオードを含んでおり、かつFETからも僅かながら漏れ電流が発生する。そのため、FETのダイオードまたは漏れ電流を介して、直流電源11またはグランド13側からの電磁ノイズが交流信号S1に対して流入する可能性がある。
【0047】
そこで、実施形態では、静電容量センサ31が、交流信号S1と同電圧かつ同電位の交流信号S2を、直列回路10の、交流信号S1が入力される接続点P1と直流電源11の間と、交流信号S1が入力される接続点P2とグランド13との間に、それぞれ出力する。交流信号S2が入力された直列回路10は、交流信号S1が入力された静電容量センサ回路30やヒータ線200の電圧に近くなる。直列回路10と静電容量センサ回路30やヒータ線200の電位差が低減されることで、FETのダイオードまたは漏れ電流を介して、直流電源11またはグランド13側からの電磁ノイズが、交流信号S1に対して流入するのを抑制することができる。
また、実施形態は、直列回路10における信号線34の両側にスイッチ51、52を設け、信号線35の両側にスイッチ53、54を設けている。これにより、FETのダイオードまたは漏れ電流を介して、直流電源11またはグランド13側の双方からの電磁ノイズが、交流信号S1に対して流入するのを抑制することができる。
【0048】
さらに、図5に示すように、ヒータ線200には並列に容量素子C2が接続されている。これにより、図中黒塗りの矢印で示すように、直流電源11で発生する電源ノイズは、容量素子C2をバイパスしてグランド13に流れるため、電源ノイズがヒータ線200に流入してヒータ線200から電磁ノイズが発生することを低減することができる。
【0049】
静電容量センサ31が交流信号S1を出力してヒータ線200の静電容量値を検出した後、スイッチ51~54はオフからオンに切り替えられる。スイッチ51~54のすべてがオンとなることで、直流電源11からヒータ線200への電力供給が開始される。この際も、実施形態では遅延回路(PWM信号発生器74と、抵抗素子R3および容量素子C3からなる平滑回路)によってスイッチ51のオン動作の速度が遅延するため、ヒータ線200に流れる電流はゆっくりと増加し(図4の(C)参照)、ヒータ線200における電磁ノイズの発生が低減される。
【0050】
以上の通り、実施形態に係る把持検出装置1は、以下の構成を有している。
(1)把持検出装置1は、車両のステアリングホイールSWに設けられたヒータ線200(ヒータ)の静電容量値から検出される静電容量変化値(静電容量の変化)が、車両の乗員DPがステアリングホイールSWを把持していることを示す静電容量変化値であるか否かを判定する。すなわち、把持検出装置1は、ヒータ線200の静電容量変化値から、車両の乗員DPによるステアリングホイールSWの把持を検出するものである。
把持検出装置1は、直列回路10と、静電容量センサ回路30と、把持検出部73(検出部)と、スイッチ51~54と、スイッチ制御部72と、を備える。
直列回路10は、ヒータ線200と、ヒータ線200に電力を供給する直流電源11(電源)とからなる。
静電容量センサ回路30は、接続線210、220を介してヒータ線200に接続している。静電容量センサ回路30は、静電容量変化値(静電容量の変化)を検出するための交流信号S1(第1の交流信号)をヒータ線200に出力する。
把持検出部73は、静電容量センサ回路30が検出した静電容量値から静電容量変化値を検出する。把持検出部73は、ヒータ線200の静電容量変化値が、車両の乗員DPがステアリングホイールSWを把持していることを示す静電容量変化値であるか否かを判定する。すなわち、把持検出部73は、静電容量変化値から、車両の乗員DPによるステアリングホイールSWの把持を検出する。
スイッチ51~54は、直列回路10に設けられている。スイッチ51~54は、直流電源11とヒータ線200との接続状態(接続および遮断)を切り替える。
スイッチ制御部72は、スイッチ51~54の動作を制御する制御信号を出力する。スイッチ51に対しては、PWM信号発生器74が制御信号を出力し、スイッチ52~54に対しては、GPIO75が制御信号を出力する。スイッチ制御部72は、静電容量センサ回路30が交流信号S1を出力する際に、直流電源11とヒータ線200の接続を遮断する。
スイッチ制御部72は、スイッチ51の接続状態(接続および遮断)を切り替える動作を遅延させる遅延回路(PWM信号発生器74と、抵抗素子R3および容量素子C3からなる平滑回路)を備える。
【0051】
このような構成により、ヒータ線200から発生する電磁ノイズを低減することができる。
具体的には、ステアリングホイールSWの把持を検出するために静電容量センサ31が交流信号S1を出力する際には、スイッチ51~54をオンからオフに切り替え、交流信号S1の出力後には再びオフからオンに切り替える。ここで、全てのスイッチ51~54が速やかに動作すると、ヒータ線200に流れる電流が急激に変化する。交流信号S1の出力が周期的に行われる場合、ヒータ線200の急激な電流の変化が繰り返されることになるため、ヒータ線200から電磁ノイズが発生しやすくなる。
実施形態では、遅延回路によりスイッチ51の動作速度を遅らせることで、ヒータ線200の電流の変化が緩やかになり、ヒータ線200からの電磁ノイズの発生を低減することができる。これによって、車両におけるEMCの要求に応じた把持検出装置1を提供することができる。
【0052】
(2)スイッチ51~54は、ゲート電極(G)に印加される制御信号の電圧に応じて動作するFETを用いて構成される。
遅延回路は、PWM信号発生器74と、平滑回路である抵抗素子R3および容量素子C3とを有する。PWM信号発生器74は、スイッチ51の接続状態(接続および遮断)を切り替える際に、PWM信号を出力する。抵抗素子R3および容量素子C3からなる平滑回路は、PWM信号発生器74が出力したPWM信号を平滑化し、平滑化した信号を制御信号としてスイッチ51に出力する。
【0053】
たとえば、Nチャネル型MOSFETで構成されるスイッチ51~54は、ゲート電極(G)に印加される電圧(ゲート電圧)が、Highレベルになることでオンし、Lowレベルになるとオフする。実施形態では、スイッチ51の接続状態(接続および遮断)を切り替える際に、PWM信号発生器74がPWM信号のデューティ比Dを徐々に変化させることで、PWM信号の平均電圧を徐々に変化させることができる。平滑回路(抵抗素子R3および容量素子C3)は、PWM信号を平滑化し、電圧が緩やかに変化する制御信号としてスイッチ51のゲート電極(G)に出力することができる。これによって、制御信号が入力されたスイッチ51のゲート電圧は緩やかに変化するため、スイッチ51のオン動作とオフ動作の速度を遅らせることができる。スイッチ51がゆっくりとオン/オフ動作することで、ヒータ線200の電流の変化も緩やかになり、ヒータ線200からの電磁ノイズの発生を低減することができる。
【0054】
(3)把持検出装置1は、ヒータ線200に並列に接続された容量素子C2を備える。容量素子C2は、直流電源11からの電源ノイズ(ノイズ)をバイパスさせてグランド13に流すため、ヒータ線200への電源ノイズの流入を抑制する。これによって、ヒータ線200からの電磁ノイズの発生を低減することができる。
【0055】
(4)静電容量センサ回路30は、信号線32(第1の接続部)と、信号線34(第2の接続部)と、を有する。
信号線32はヒータ線200の一端200aに、接続線210を介して接続している。信号線32は、交流信号S1をヒータ線200に出力する。
信号線34は、直列回路10の信号線32と直流電源11との間に接続している。信号線34は、交流信号S1と同電圧および同電位の交流信号S2(第2の交流信号)を直列回路10に出力する。
スイッチは、スイッチ51(第1のスイッチ)とスイッチ52(第2のスイッチ)を備える。スイッチ51とスイッチ52は、直列回路10における信号線34との接続点P3の両側に設けられている。
【0056】
このように構成することで、交流信号S2が入力された直列回路10の電圧が、交流信号S1が入力された静電容量センサ回路30やヒータ線200の電圧と近くなる。これによって、FETで構成されたスイッチ51、52のダイオードまたは漏れ電流を介して、直流電源11またはグランド13からの電磁ノイズが、交流信号S1に対して流入するのを抑制することができる。また、信号線34の両側にスイッチ51、52を設けることで、FETのダイオードまたは漏れ電流を介して、直流電源11またはグランド13の双方からの電磁ノイズが、交流信号S1に対して流入するのを抑制することができる。
【0057】
(5)スイッチ51(第1のスイッチ)とスイッチ52(第2のスイッチ)のいずれかに、遅延回路(PWM信号発生器74と、抵抗素子R3および容量素子C3からなる平滑回路)が接続される。
直列回路10に複数のスイッチを設けた場合でも、いずれかのスイッチの動作を遅らせれば、ヒータ線200の電流の急激な変化が低減できる。いずれかのスイッチのみに遅延回路を設けることで、設置コストが低減できる。
なお、実施形態では、遅延回路をスイッチ51に接続する例を説明したが、遅延回路はスイッチ52に接続しても良い。
【0058】
(6)静電容量センサ回路30は、信号線33(第3の接続部)と、信号線35(第4の接続部)と、を有する。
信号線33は、ヒータ線200の他端200bに接続している。信号線33は、交流信号S1をヒータ線200に出力する。
信号線35は、直列回路10の信号線33とグランド13との間に接続している。信号線35は、交流信号S1と同電圧および同電位の交流信号S2を直列回路10に出力する。
スイッチは、スイッチ53(第3のスイッチ)とスイッチ54(第4のスイッチ)を備える。スイッチ53とスイッチ54は、直列回路10における信号線35との接続点P4の両側に設けられている。
【0059】
このように構成すると、静電容量センサ31は、ヒータ線200の一端200aに接続された信号線32と、ヒータ線200の他端200bに接続された信号線33の各々から、ヒータ線200に交流信号S1を出力できるようになり、それぞれから静電容量値を検出することができる。
把持検出部73が、ヒータ線200の両端側から検出した静電容量変化値のそれぞれに対して、ステアリングホイールSWの把持を示す静電容量変化値であるか否かを判定することで、把持検出の精度を高めることができる。
また、信号線35を設けて直列回路10に交流信号S2を出力することで、交流信号S2が入力された直列回路10の電圧が、交流信号S1が入力された静電容量センサ回路30やヒータ線200の電圧と近くなる。これによって、FETで構成されたスイッチ53、54のダイオードまたは漏れ電流を介して、直流電源11またはグランド13からの電磁ノイズが、交流信号S1に対して流入するのを抑制することができる。また、信号線35の両側にスイッチ53、54を設けることで、FETのダイオードまたは漏れ電流を介して、直流電源11またはグランド13の双方からの電磁ノイズが、交流信号S1に対して流入するのを抑制することができる。
【0060】
(7)スイッチ51、スイッチ52、スイッチ53およびスイッチ54のいずれか一つに、遅延回路(PWM信号発生器74と、抵抗素子R3および容量素子C3からなる平滑回路)が接続される。
直列回路10に複数のスイッチを設けた場合でも、いずれかのスイッチの動作を遅らせれば、ヒータ線200の電流の急激な変化が低減できる。いずれかのスイッチのみに遅延回路を設けることで、設置コストを低減することができる。
実施形態では、遅延回路をスイッチ51に接続する例を説明したが、スイッチ53またはスイッチ54に接続しても良い。
【0061】
実施形態では、把持検出装置1の検出精度を高めるために、静電容量センサ31が一対の信号線32、33を介してヒータ線200の両端(一端200a、他端200b)に交流信号S1を出力する例を説明したが、これに限定されない。静電容量センサ31は、ヒータ線200の一端200aまたは他端200bのいずれかのみに交流信号S1を出力するようにしても良い。
【0062】
<変形例>
図9は、変形例に係る把持検出装置1Aの制御部70Aの構成を示す図である。
変形例の把持検出装置1Aの全体的な構成は図2と同じであるため、図示は省略する。また、実施形態の把持検出装置1と同じ構成については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
図9に示すように、変形例における制御部70Aのスイッチ制御部72Aは、PWM信号発生器74(図3参照)に代えて、任意の電圧を出力することができるDA(Digital Analog)コンバータ76を備えている。DAコンバータ76は、信号線91を介してスイッチ51のゲート電極(G)に接続され、スイッチ51に制御信号を出力する。変形例では、DAコンバータ76がスイッチ51の動作を遅延させる遅延回路を構成する。
なお、スイッチ52~54は、実施形態と同様にGPIO75に接続されており、実施形態と同様に動作する。
【0063】
変形例では、DAコンバータ76が出力する制御信号の電圧が、交流信号S1の出力周期(検出周期)に合わせて変化するように、予めプログラムとして設定され制御部70Aのメモリに格納されている。
DAコンバータ76は、ヒータ線200を動作させる際には、電圧がHighレベルの制御信号(オン信号)を出力し、ヒータ線200の動作を停止させる際には、電圧がLowレベルの制御信号(オフ信号)を出力する。DAコンバータ76は、スイッチ51をオンからオフに切り替える際には、制御信号の電圧をHighレベルからLowレベルに緩やかに減少させる。DAコンバータ76は、スイッチ51をオフからオンに切り替える際には、制御信号の電圧をLowレベルからHighレベルに緩やかに増加させる(図4の(B)同様)。これによって、制御信号が入力されたスイッチ51のゲート電圧は緩やかに変化するため、スイッチ51のオン動作およびオフ動作の速度は、実施形態と同様に遅延する。
【0064】
スイッチ51のオン動作およびオフ動作の速度が遅延することによって、実施形態と同様に、ヒータ線200に流れる電流の変化が緩やかになるため、ヒータ線200から発生する電磁ノイズを低減することができる。
【0065】
以上の通り、変形例に係る把持検出装置1Aは、以下の構成を有する。
(8)変形例における把持検出装置1Aにおいて、遅延回路は任意の電圧の制御信号を出力するDAコンバータ76を有する。
DAコンバータ76は任意の電圧の信号を出力することができるため、スイッチ51の接続状態を切り替える際に、制御信号の電圧を緩やかに変化させることで、スイッチ51の動作速度を遅延させることができる。これによって、実施形態と同様に、ヒータ線200における電磁ノイズの発生を低減することができる。さらに、実施形態のようにPWM信号を平滑化させる平滑回路(抵抗素子R3および容量素子C3)(図3参照)が不要なため、遅延回路を簡易な構成とすることができる。
なお、図9の例では、遅延回路であるDAコンバータ76をスイッチ51に接続したが、これに限定されず、スイッチ52~54のいずれかに接続しても良い。
【0066】
前記した実施形態および変形例では、交流信号S1を出力する際に、スイッチ51~54のオンまたはオフの動作を開始するタイミングには、特に時間差を設けなかったが、スイッチ51~54が時間差で動作を開始するようにしても良い。その場合、スイッチ51~54の中で、最後にオフし、かつ最初にオンするスイッチに、遅延回路を接続することで、ヒータ線200の急激な電流の変化を抑制することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態および変形例を説明したが、本発明は、これらのものに限定されるものではなく、発明の技術的な思想の範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
1、1A :把持検出装置
10 :直列回路
11 :直流電源(電源)
13 :グランド
30 :静電容量センサ回路
31 :静電容量センサ
32 :信号線(第1の接続部)
33 :信号線(第3の接続部)
34 :信号線(第2の接続部)
35 :信号線(第4の接続部)
51 :スイッチ(第1のスイッチ)
52 :スイッチ(第2のスイッチ)
53 :スイッチ(第3のスイッチ)
54 :スイッチ(第4のスイッチ)
70、70A :制御部
71 :センサ制御部
72、72A :スイッチ制御部
73 :把持検出部
74 :PWM信号発生器
75 :GPIO
76 :DAコンバータ
R1、R3 :抵抗素子
C1、C2、C3:容量素子
I1 :インダクタンス素子
91、92、93、94:信号線
200 :ヒータ線(ヒータ)
210、220 :接続線
250 :サーモスタット
270 :報知部
VR :車室
DP: :乗員
SW :ステアリングホイール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10