(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】水処理状況監視システム及び水処理状況監視方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/30 20060101AFI20241209BHJP
B01D 21/00 20060101ALI20241209BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20241209BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241209BHJP
【FI】
B01D21/30 A
B01D21/00 G
G01N21/17 A
G06T7/00 350B
(21)【出願番号】P 2021139904
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三宮 豊
(72)【発明者】
【氏名】渡部 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】圓佛 伊智朗
(72)【発明者】
【氏名】横井 浩人
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 宏充
(72)【発明者】
【氏名】山野井 一郎
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-134284(JP,A)
【文献】国際公開第2021/140957(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0339572(US,A1)
【文献】特開2020-025943(JP,A)
【文献】特開2020-065964(JP,A)
【文献】特開平07-319509(JP,A)
【文献】特開2019-136664(JP,A)
【文献】特開2014-065030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00 - 21/01
B01D 21/02 - 21/34
G01N 21/00 - 21/01
G01N 21/17 - 21/61
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
G05B 23/00 - 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を複数の処理場所に順に運んで、前記被処理水に含まれる濁質を除去するための凝集沈殿処理を含む処理を行うことにより、前記被処理水を浄化した処理水を生成する施設に適用される水処理状況監視システムであって、
前記被処理水を撮像可能な互いに異なる複数の場所に設置され、前記被処理水を撮像することにより、各場所から撮像した前記被処理水の画像を含む各場所毎の前記被処理水の画像データを取得する複数の撮像装置と、
前記被処理水に関する、被処理水濁度を含む被処理水水質パラメータを測定し、前記被処理水水質パラメータを含む被処理水データを取得する被処理水計測装置と、
前記処理水の処理水濁度を測定し、前記処理水濁度を含む処理水データを取得する処理水計測装置と、
前記撮像装置、前記被処理水計測装置及び前記処理水計測装置から、前記画像データ、前記被処理水データ及び前記処理水データを取得する情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記被処理水の前記画像データを含む学習用入力データ及び前記処理水データを、学習用データとして用いて、機械学習によって、前記被処理水の前記画像を含む入力データから前記被処理水の前記濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力する凝集良否判定モデルを、複数作成するように構成され、
前記情報処理装置は、
前記被処理水濁度に基づいて、
複数の前記凝集良否判定モデルの少なくとも一つを選択し、複数の前記撮像装置の少なくとも一つから前記被処理水の前記画像を、判定用画像として取得し、選択した前記凝集良否判定モデルを用いて、前記判定用画像を含む判定用入力データから前記判定用画像に映る前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報を計算する、
ように構成された、
水処理状況監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理状況監視システムにおいて、
前記情報処理装置は、一つの前記凝集良否判定モデルを一つの前記撮像装置によって撮像された前記画像データから作成する、
ように構成された、
水処理状況監視システム。
【請求項3】
請求項1に記載の水処理状況監視システムにおいて、
前記情報処理装置は、一つの前記凝集良否判定モデルを複数の前記撮像装置によって撮像された前記画像データから作成する、
ように構成された、
水処理状況監視システム。
【請求項4】
被処理水を複数の処理場所に順に運んで、前記被処理水に含まれる濁質を除去するための凝集沈殿処理を含む処理を行うことにより、前記被処理水を浄化した処理水を生成する施設に適用される水処理状況監視システムであって、
前記被処理水を撮像可能な互いに異なる複数の場所に設置され、前記被処理水を撮像することにより、各場所から撮像した前記被処理水の画像を含む各場所毎の前記被処理水の画像データを取得する複数の撮像装置と、
前記被処理水に関する、被処理水濁度を含む被処理水水質パラメータを測定し、前記被処理水水質パラメータを含む被処理水データを取得する被処理水計測装置と、
前記処理水の処理水濁度を測定し、前記処理水濁度を含む処理水データを取得する処理水計測装置と、
前記撮像装置、前記被処理水計測装置及び前記処理水計測装置から、前記画像データ、前記被処理水データ及び前記処理水データを取得する情報処理装置と、
前記情報処理装置に接続された操作装置
を備え、
前記情報処理装置は、
前記被処理水の前記画像データを含む学習用入力データ及び前記処理水データを、学習用データとして用いて、機械学習によって、前記被処理水の前記画像を含む入力データから前記被処理水の前記濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力する凝集良否判定モデルを、複数作成するように構成され、
前記情報処理装置は、前記操作装置に対する操作に基づいて、複数の前記凝集良否判定モデルの少なくとも一つを選択
し、
複数の前記撮像装置の少なくとも一つから前記被処理水の前記画像を、判定用画像として取得し、選択した前記凝集良否判定モデルを用いて、前記判定用画像を含む判定用入力データから前記判定用画像に映る前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報を計算する、
ように構成された、
水処理状況監視システム。
【請求項5】
請求項
1に記載の水処理状況監視システムにおいて、
前記情報処理装置は、前記被処理水濁度と閾値濁度とを比較し比較結果に基づいて、複数の前記凝集良否判定モデルの中から何れか一つを選択する、
ように構成された、
水処理状況監視システム。
【請求項6】
請求項
5に記載の水処理状況監視システムにおいて、
前記情報処理装置は、前記画像データ、前記被処理水データ及び前記処理水データを含むデータセットを記憶する記憶部を有し、
前記情報処理装置は、前記記憶部に記憶した前記データセットの一部を前記学習用データとして用いて、複数の前記凝集良否判定モデルを作成し、前記データセットの一部を除いた他部の少なくとも一部を用いて、作成した複数の前記凝集良否判定モデルが出力する前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報の、前記被処理水濁度に応じた精度を評価することによって、前記閾値濁度を算出する、
ように構成された、
水処理状況監視システム。
【請求項7】
被処理水を複数の処理場所に順に運んで、前記被処理水に含まれる濁質を除去するための凝集沈殿処理を含む処理を行うことにより、前記被処理水を浄化した処理水を生成する施設に適用される水処理状況監視システムであって、
前記被処理水を撮像可能な互いに異なる複数の場所に設置され、前記被処理水を撮像することにより、各場所から撮像した前記被処理水の画像を含む各場所毎の前記被処理水の画像データを取得する複数の撮像装置と、
前記被処理水に関する、被処理水濁度を含む被処理水水質パラメータを測定し、前記被処理水水質パラメータを含む被処理水データを取得する被処理水計測装置と、
前記処理水の処理水濁度を測定し、前記処理水濁度を含む処理水データを取得する処理水計測装置と、
前記撮像装置、前記被処理水計測装置及び前記処理水計測装置から、前記画像データ、前記被処理水データ及び前記処理水データを取得する情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記被処理水の前記画像データを含む学習用入力データ及び前記処理水データを、学習用データとして用いて、機械学習によって、前記被処理水の前記画像を含む入力データから前記被処理水の前記濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力する凝集良否判定モデルを、複数作成するように構成され、
前記情報処理装置は、
複数の前記凝集良否判定モデルの少なくとも一つを選択し、複数の前記撮像装置の少なくとも一つから前記被処理水の前記画像を、判定用画像として取得し、選択した前記凝集良否判定モデルを用いて、前記判定用画像を含む判定用入力データから前記判定用画像に映る前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報を計算する、
ように構成され、
前記情報処理装置は、前記判定用画像に映る前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報として、前記処理水の予測濁度を計算する、
ように構成された、
水処理状況監視システム。
【請求項8】
被処理水を複数の処理場所に順に運んで、前記被処理水に含まれる濁質を除去するための凝集沈殿処理を含む処理を行うことにより、前記被処理水を浄化した処理水を生成する施設に適用される水処理状況監視システムであって、
前記被処理水を撮像可能な互いに異なる複数の場所に設置され、前記被処理水を撮像することにより、各場所から撮像した前記被処理水の画像を含む各場所毎の前記被処理水の画像データを取得する複数の撮像装置と、
前記被処理水に関する、被処理水濁度を含む被処理水水質パラメータを測定し、前記被処理水水質パラメータを含む被処理水データを取得する被処理水計測装置と、
前記処理水の処理水濁度を測定し、前記処理水濁度を含む処理水データを取得する処理水計測装置と、
前記撮像装置、前記被処理水計測装置及び前記処理水計測装置から、前記画像データ、前記被処理水データ及び前記処理水データを取得する情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記被処理水の前記画像データを含む学習用入力データ及び前記処理水データを、学習用データとして用いて、機械学習によって、前記被処理水の前記画像を含む入力データから前記被処理水の前記濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力する凝集良否判定モデルを、複数作成するように構成され、
前記情報処理装置は、
複数の前記凝集良否判定モデルの少なくとも一つを選択し、複数の前記撮像装置の少なくとも一つから前記被処理水の前記画像を、判定用画像として取得し、選択した前記凝集良否判定モデルを用いて、前記判定用画像を含む判定用入力データから前記判定用画像に映る前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報を計算する、
ように構成され、
前記情報処理装置は、前記判定用画像に映る前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報として、良及び否の何れかの判定結果を計算する、
ように構成された、
水処理状況監視システム。
【請求項9】
被処理水を複数の処理場所に順に運んで、前記被処理水に含まれる濁質を除去するための凝集沈殿処理を含む処理を行うことにより、前記被処理水を浄化した処理水を生成する施設に適用される水処理状況監視システムであって、
前記被処理水を撮像可能な互いに異なる複数の場所に設置され、前記被処理水を撮像することにより、各場所から撮像した前記被処理水の画像を含む各場所毎の前記被処理水の画像データを取得する複数の撮像装置と、
前記被処理水に関する、被処理水濁度を含む被処理水水質パラメータを測定し、前記被処理水水質パラメータを含む被処理水データを取得する被処理水計測装置と、
前記処理水の処理水濁度を測定し、前記処理水濁度を含む処理水データを取得する処理水計測装置と、
前記撮像装置、前記被処理水計測装置及び前記処理水計測装置から、前記画像データ、前記被処理水データ及び前記処理水データを取得する情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記被処理水の前記画像データを含む学習用入力データ及び前記処理水データを、学習用データとして用いて、機械学習によって、前記被処理水の前記画像を含む入力データから前記被処理水の前記濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力する凝集良否判定モデルを、複数作成するように構成され、
前記情報処理装置は、
複数の前記凝集良否判定モデルの少なくとも一つを選択し、複数の前記撮像装置の少なくとも一つから前記被処理水の前記画像を、判定用画像として取得し、選択した前記凝集良否判定モデルを用いて、前記判定用画像を含む判定用入力データから前記判定用画像に映る前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報を計算する、
ように構成され、
前記学習用入力データは、前記被処理水の前記画像データのみを含み、
前記判定用入力データは、前記判定用画像のみを含む、
水処理状況監視システム。
【請求項10】
被処理水を複数の処理場所に順に運んで、前記被処理水に含まれる濁質を除去するための凝集沈殿処理を含む処理を行うことにより、前記被処理水を浄化した処理水を生成する施設に適用される水処理状況監視システムであって、
前記被処理水を撮像可能な互いに異なる複数の場所に設置され、前記被処理水を撮像することにより、各場所から撮像した前記被処理水の画像を含む各場所毎の前記被処理水の画像データを取得する複数の撮像装置と、
前記被処理水に関する、被処理水濁度を含む被処理水水質パラメータを測定し、前記被処理水水質パラメータを含む被処理水データを取得する被処理水計測装置と、
前記処理水の処理水濁度を測定し、前記処理水濁度を含む処理水データを取得する処理水計測装置と、
前記撮像装置、前記被処理水計測装置及び前記処理水計測装置から、前記画像データ、前記被処理水データ及び前記処理水データを取得する情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記被処理水の前記画像データを含む学習用入力データ及び前記処理水データを、学習用データとして用いて、機械学習によって、前記被処理水の前記画像を含む入力データから前記被処理水の前記濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力する凝集良否判定モデルを、複数作成するように構成され、
前記情報処理装置は、
複数の前記凝集良否判定モデルの少なくとも一つを選択し、複数の前記撮像装置の少なくとも一つから前記被処理水の前記画像を、判定用画像として取得し、選択した前記凝集良否判定モデルを用いて、前記判定用画像を含む判定用入力データから前記判定用画像に映る前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報を計算する、
ように構成され、
前記情報処理装置は、前記被処理水計測装置から前記被処理水水質パラメータを判定用被処理水水質パラメータとして取得し、
前記学習用入力データは、前記被処理水データを更に含み、
前記判定用入力データは、前記判定用被処理水水質パラメータを更に含む、
水処理状況監視システム。
【請求項11】
被処理水を複数の処理場所に順に運んで、前記被処理水に含まれる濁質を除去するための凝集沈殿処理を含む処理を行うことにより、前記被処理水を浄化した処理水を生成する施設に適用される水処理状況監視システムであって、
前記被処理水を撮像可能な互いに異なる複数の場所に設置され、前記被処理水を撮像することにより、各場所から撮像した前記被処理水の画像を含む各場所毎の前記被処理水の画像データを取得する複数の撮像装置と、
前記被処理水に関する、被処理水濁度を含む被処理水水質パラメータを測定し、前記被処理水水質パラメータを含む被処理水データを取得する被処理水計測装置と、
前記処理水の処理水濁度を測定し、前記処理水濁度を含む処理水データを取得する処理水計測装置と、
前記撮像装置、前記被処理水計測装置及び前記処理水計測装置から、前記画像データ、前記被処理水データ及び前記処理水データを取得する情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記被処理水の前記画像データを含む学習用入力データ及び前記処理水データを、学習用データとして用いて、機械学習によって、前記被処理水の前記画像を含む入力データから前記被処理水の前記濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力する凝集良否判定モデルを、複数作成するように構成され、
前記情報処理装置は、
複数の前記凝集良否判定モデルの少なくとも一つを選択し、複数の前記撮像装置の少なくとも一つから前記被処理水の前記画像を、判定用画像として取得し、選択した前記凝集良否判定モデルを用いて、前記判定用画像を含む判定用入力データから前記判定用画像に映る前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報を計算する、
ように構成され、
前記情報処理装置は、前記被処理水の前記画像データの各画像の前記濁質の塊であるフロックに関する情報であるフロック情報を含む学習用フロックデータを取得し、前記判定用画像から前記濁質の塊であるフロックに関する情報である判定用フロック情報を取得するように構成され、
前記学習用入力データは、前記学習用フロックデータを更に含み、
前記判定用入力データは、前記判定用フロック情報を更に含む、
水処理状況監視システム。
【請求項12】
被処理水を複数の処理場所に順に運んで、前記被処理水に含まれる濁質を除去するための凝集沈殿処理を含む処理を行うことにより、前記被処理水を浄化した処理水を生成する施設に適用される水処理状況監視システムであって、
前記被処理水を撮像可能な互いに異なる複数の場所に設置され、前記被処理水を撮像することにより、各場所から撮像した前記被処理水の画像を含む各場所毎の前記被処理水の画像データを取得する複数の撮像装置と、
前記被処理水に関する、被処理水濁度を含む被処理水水質パラメータを測定し、前記被処理水水質パラメータを含む被処理水データを取得する被処理水計測装置と、
前記処理水の処理水濁度を測定し、前記処理水濁度を含む処理水データを取得する処理水計測装置と、
前記撮像装置、前記被処理水計測装置及び前記処理水計測装置から、前記画像データ、前記被処理水データ及び前記処理水データを取得する情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記被処理水の前記画像データを含む学習用入力データ及び前記処理水データを、学習用データとして用いて、機械学習によって、前記被処理水の前記画像を含む入力データから前記被処理水の前記濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力する凝集良否判定モデルを、複数作成するように構成され、
前記情報処理装置は、
複数の前記凝集良否判定モデルの少なくとも一つを選択し、複数の前記撮像装置の少なくとも一つから前記被処理水の前記画像を、判定用画像として取得し、選択した前記凝集良否判定モデルを用いて、前記判定用画像を含む判定用入力データから前記判定用画像に映る前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報を計算する、
ように構成され、
前記情報処理装置は、
前記被処理水水質パラメータに基づいて、前記被処理水データが前記濁質の塊であるフロックの成長を促進させる条件に該当するか否かを判定し、
前記被処理水水質パラメータが前記フロックの成長を促進させる条件に該当する場合、前記被処理水水質パラメータが前記フロックの成長を促進させる条件に該当しない場合に比べて、上流側の場所で撮像された前記画像データを用いて作成した前記凝集良否判定モデルを選択する、
ように構成された、
水処理状況監視システム。
【請求項13】
被処理水を複数の処理場所に順に運んで、前記被処理水に含まれる濁質を除去するための凝集沈殿処理を含む処理を行うことにより、前記被処理水を浄化した処理水を生成する施設に適用される水処理状況監視システムであって、
互いに異なる複数の場所に存在する前記被処理水を採水する複数の採水装置と、
複数の前記採水装置によって採水された、複数の場所に存在していた前記被処理水のそれぞれを撮像することにより、前記各場所に存在していた前記被処理水の画像である採水画像を含む各場所毎の前記被処理水の採水画像データを取得する複数の撮像装置と、
前記被処理水に関する、被処理水濁度を含む被処理水水質パラメータを測定し、前記被処理水水質パラメータを含む被処理水データを取得する被処理水計測装置と、
前記処理水の処理水濁度を測定し、前記処理水濁度を含む処理水データを取得する処理水計測装置と、
前記撮像装置、前記被処理水計測装置及び前記処理水計測装置から、前記採水画像データ、前記被処理水データ及び前記処理水データを取得する情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記被処理水の前記採水画像データを含む学習用入力データ及び前記処理水データを、学習用データとして用いて、機械学習によって、前記被処理水の前記採水画像を含む入力データから前記被処理水の前記濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力する凝集良否判定モデルを、各場所毎の前記被処理水の前記採水画像データのそれぞれについて作成するように構成され、
前記情報処理装置は、
各場所に対応する前記被処理水の前記採水画像データのそれぞれについて作成された、複数の前記凝集良否判定モデルの少なくとも一つを
前記被処理水濁度に基づいて選択し、前記撮像装置から前記被処理水の前記採水画像を判定用画像として取得し、選択した前記凝集良否判定モデルを用いて、前記判定用画像を含む判定用入力データから前記判定用画像に映る前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報を計算する、
ように構成された、
水処理状況監視システム。
【請求項14】
被処理水を複数の処理場所に順に運んで、前記被処理水に含まれる濁質を除去するための凝集沈殿処理を含む処理を行うことにより、前記被処理水を浄化した処理水を生成する施設に適用される水処理状況監視方法であって、
前記被処理水を撮像可能な互いに異なる複数の場所に設置された複数の撮像装置によって、前記被処理水を撮像することにより、各場所から撮像した前記被処理水の画像を含む各場所毎の前記被処理水の画像データを取得することと、
被処理水計測装置によって、前記被処理水に関する、被処理水濁度を含む被処理水水質パラメータを測定し、前記被処理水水質パラメータを含む被処理水データを取得することと、
処理水計測装置によって、前記処理水の処理水濁度を測定し、前記処理水濁度を含む処理水データを取得することと、
情報処理装置によって、前記撮像装置、前記被処理水計測装置及び前記処理水計測装置から、前記画像データ、前記被処理水データ及び前記処理水データを取得することと、
を含み、
前記情報処理装置によって、
前記被処理水の前記画像データを含む学習用入力データ及び前記処理水データを、学習用データとして用いて、機械学習によって、前記被処理水の前記画像を含む入力データから前記被処理水の前記濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力する凝集良否判定モデルを、複数作成し、
前記被処理水濁度に基づいて、複数の前記凝集良否判定モデルの少なくとも一つを選択し、複数の前記撮像装置の少なくとも一つから前記被処理水の前記画像を、判定用画像として取得し、選択した前記凝集良否判定モデルを用いて、前記判定用画像を含む判定用入力データから前記判定用画像に映る前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報を計算する、
水処理状況監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理状況監視システム及び水処理状況監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水プラント及びその他プラントの排水処理システムは、被処理水(「原水」とも称呼される。)の水質に応じて様々な水処理技術を用いることで、処理水の目標水質を達成している。水処理技術の中で水中の固形物(濁り(「濁質」とも称呼される。))を除去する凝集処理は、適切な薬剤注入管理が必要である。しかし、被処理水の水質が変動する等したときの薬剤注入量は、熟練の運転員(熟練者)の経験に依存する場合がある。
【0003】
熟練者は、経験に基づき、濁質の凝集状態を確認するためのジャーテストの結果、監視制御データ、濁質の凝集状態の現場での目視、濁質の凝集により形成されるフロックの画像の監視室での確認等から適切な薬剤注入量を決定することができる。一方で、熟練者が目視で観察している濁質の凝集状態等は、監視制御システム(監視制御データ)には、記録されない。このため、熟練者の経験が暗黙知となってしまうので、薬剤注入管理に必要な知識等が、熟練者以外の他人に継承されにくい課題があった。
【0004】
今後、非熟練者でも、濁質の凝集状態を見極め、濁質の凝集不良を早期に判断できる機能が必要である。そこで、センシング技術によりフロックの画像データを取得し、機械学習や人工知能を用いて、濁質の凝集良否を判断する技術の開発が進められている。
【0005】
特許文献1は、以下に述べる情報処理装置(以下、「従来装置」とも称呼される場合がある。)を開示する。従来装置は、上水処理を施す原水に既知量の凝集剤が添加されて撹拌されたときから400秒分の画像データの各々に、将来形成されるフロックが上水処理に悪影響を及ぼすか否かのカテゴリーを関連付けた教師データについて深層学習を行う。
【0006】
その後、従来装置は、画像データ(判別対象画像データ)が入力されたとき、深層学習の学習結果及び判別対象画像データから判別対象画像データに対応する原水中に将来形成されるフロックが上水処理に悪影響を及ぼすか否かを判別する。なお、判別対象画像データは、上水処理を施す原水に既知量の凝集剤が添加されて撹拌されたときから300秒以内の画像データであって将来形成されるフロックが上水処理に悪影響を及ぼすか否かのカテゴリーを関連付けていない画像データである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
被処理水を処理して浄化することにより、目標水質の処理水を得る施設において、非熟練者であっても、画像に映る被処理水の濁質の凝集状態の良否を簡単に判別できるようにするための技術が求められている。本発明は上記課題を解決するためになされた。即ち、本発明の目的の一つは、非熟練者であっても画像に映る被処理水の濁質の凝集状態の良否を簡単に判別可能な情報を計算できる水処理状況監視システム及び水処理状況監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の水処理状況監視システムは、被処理水を複数の処理場所に順に運んで、前記被処理水に含まれる濁質を除去するための凝集沈殿処理を含む処理を行うことにより、前記被処理水を浄化した処理水を生成する施設に適用される。本発明の水処理状況監視システムは、前記被処理水を撮像可能な互いに異なる複数の場所に設置され、前記被処理水を撮像することにより、各場所から撮像した前記被処理水の画像を含む各場所毎の前記被処理水の画像データを取得する複数の撮像装置と、前記被処理水に関する、被処理水濁度を含む被処理水水質パラメータを測定し、前記被処理水水質パラメータを含む被処理水データを取得する被処理水計測装置と、前記処理水の処理水濁度を測定し、前記処理水濁度を含む処理水データを取得する処理水計測装置と、前記撮像装置、前記被処理水計測装置及び前記処理水計測装置から、前記画像データ、前記被処理水データ及び前記処理水データを取得する情報処理装置と、を備える。前記情報処理装置は、前記被処理水の前記画像データを含む学習用入力データ及び前記処理水データを、学習用データとして用いて、機械学習によって、前記被処理水の前記画像を含む入力データから前記被処理水の前記濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力する凝集良否判定モデルを、複数作成するように構成され、前記情報処理装置は、複数の前記凝集良否判定モデルの少なくとも一つを選択し、複数の前記撮像装置の少なくとも一つから前記被処理水の前記画像を、判定用画像として取得し、選択した前記凝集良否判定モデルを用いて、前記判定用画像を含む判定用入力データから前記判定用画像に映る前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報を計算する、ように構成されている。
【0010】
本発明の水処理状況監視システムは、被処理水を複数の処理場所に順に運んで、前記被処理水に含まれる濁質を除去するための凝集沈殿処理を含む処理を行うことにより、前記被処理水を浄化した処理水を生成する施設に適用される。本発明の水処理状況監視システムは、互いに異なる複数の場所に存在する前記被処理水を採水する複数の採水装置と、複数の前記採水装置によって採水された、複数の場所に存在していた前記被処理水のそれぞれを撮像することにより、前記各場所に存在していた前記被処理水の画像である採水画像を含む各場所毎の前記被処理水の採水画像データを取得する複数の撮像装置と、前記被処理水に関する、被処理水濁度を含む被処理水水質パラメータを測定し、前記被処理水水質パラメータを含む被処理水データを取得する被処理水計測装置と、記処理水の処理水濁度を測定し、前記処理水濁度を含む処理水データを取得する処理水計測装置と、前記撮像装置、前記被処理水計測装置及び前記処理水計測装置から、前記採水画像データ、前記被処理水データ及び前記処理水データを取得する情報処理装置と、を備える。前記情報処理装置は、前記被処理水の前記採水画像データを含む学習用入力データ及び前記処理水データを、学習用データとして用いて、機械学習によって、前記被処理水の前記採水画像を含む入力データから前記被処理水の前記濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力する凝集良否判定モデルを、各場所毎の前記被処理水の前記採水画像データのそれぞれについて作成するように構成され、前記情報処理装置は、各場所に対応する前記被処理水の前記採水画像データのそれぞれについて作成された、複数の前記凝集良否判定モデルの少なくとも一つを選択し、前記撮像装置から前記被処理水の前記採水画像を判定用画像として取得し、選択した前記凝集良否判定モデルを用いて、前記判定用画像を含む判定用入力データから前記判定用画像に映る前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報を計算する、ように構成されている。
【0011】
本発明の水処理状況監視方法は、被処理水を複数の処理場所に順に運んで、前記被処理水に含まれる濁質を除去するための凝集沈殿処理を含む処理を行うことにより、前記被処理水を浄化した処理水を生成する施設に適用される水処理状況監視方法であって、前記被処理水を撮像可能な互いに異なる複数の場所に設置された複数の撮像装置によって、前記被処理水を撮像することにより、各場所から撮像した前記被処理水の画像を含む各場所毎の前記被処理水の画像データを取得することと、被処理水計測装置によって、前記被処理水に関する、被処理水濁度を含む被処理水水質パラメータを測定し、前記被処理水水質パラメータを含む被処理水データを取得することと、処理水計測装置によって、前記処理水の処理水濁度を測定し、前記処理水濁度を含む処理水データを取得することと、情報処理装置によって、前記撮像装置、前記被処理水計測装置及び前記処理水計測装置から、前記画像データ、前記被処理水データ及び前記処理水データを取得することと、を含み、前記情報処理装置によって、前記被処理水の前記画像データを含む学習用入力データ及び前記処理水データを、学習用データとして用いて、機械学習によって、前記被処理水の前記画像を含む入力データから前記被処理水の前記濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力する凝集良否判定モデルを、複数作成し、複数の前記凝集良否判定モデルの少なくとも一つを選択し、複数の前記撮像装置の少なくとも一つから前記被処理水の前記画像を、判定用画像として取得し、選択した前記凝集良否判定モデルを用いて、前記判定用画像を含む判定用入力データから前記判定用画像に映る前記被処理水の前記濁質の前記凝集状態の良否を示す情報を計算する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、非熟練者であっても画像に映る被処理水の濁質の凝集状態の良否を簡単に判別可能な情報を計算できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は浄水場に本発明の第1実施形態に係る水処理状況監視システムを適用した例を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は水処理状況監視システムに含まれる情報処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は試験例の試験条件及び被処理水の処理結果を説明するための表である。
【
図4】
図4はフロック面積積算値の経時変化を説明するためのグラフである。
【
図5】
図5はモデル生成手段が実行する処理フローを示すフローチャートである。
【
図6】
図6はモデル生成手段が実行する処理フローを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は凝集良否判定手段が実行する処理フローを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は凝集良否判定手段が実行する処理フローを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は第1変形例のモデル生成手段が実行する処理フローを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は第1変形例のモデル生成手段が実行する処理フローを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は凝集良否判定モデルの評価結果の例を説明するためのグラフである。
【
図12】
図12は第1変形例の凝集良否判定手段が実行する処理フローを示すフローチャートである。
【
図13】
図13は浄水場に本発明の第2実施形態に係る水処理状況監視システムを適用した例を示す概略構成図である。
【
図14】
図14は本発明の第3実施形態に係る水処理状況監視システムのモデル生成手段が実行する処理フローを示すフローチャートである。
【
図15】
図15は第3実施形態に係る水処理状況監視システムのモデル生成手段が実行する処理フローを示すフローチャートである。
【
図16】
図16は本発明の第4実施形態に係る水処理状況監視システムのモデル生成手段が実行する処理フローを示すフローチャートである。
【
図17】
図17は第4実施形態に係る水処理状況監視システムの凝集良否判定手段が実行する処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<<背景技術の詳細>>
まず、本発明の理解を容易にするため、背景技術の詳細について説明する。上下水プラント、化学プラント、電力プラント及びゴミ処理場等のプラントの維持管理業務は、運転員の目視と経験を頼りにして管理している場面がある。プラントが24時間連続操業しているとき、運転員を常時滞在させることで対応していることが現状多い。しかし、日本の生産年齢人口(15歳~64歳)は減少傾向にあるため、将来人手不足が発生したときのサステナブル(持続可能)な解決策を今から考える必要がある。
【0015】
近年、コンピュータ計算能力及び通信インフラ環境の向上に伴い、大量のデータを容易に取り扱うことが可能となった。これにより、運転員の五感を代替するセンシング技術(IoT技術)の進化及び普及が進んでいる。また、機械学習や人工知能の解析アルゴリズム(AI技術)の進化により、これまでヒトの判断が必要で機械化及び自動化が難しいとされてきた業務でも、AI技術の利活用に関する検討が活発になっている。例えば、人手不足が発生してもプラントの維持管理業務を継続するため、運転員の視覚の代わりにカメラを設置し、撮像(撮影)した画像や映像を処理して設備や製品の外観の変化を診断するソリューション等が提供されている。
【0016】
[背景技術]で既述したように、上下水プラント及びその他プラントの排水処理システムは、被処理水の水質に応じて様々な水処理技術を用いることで、処理水の目標水質を達成している。水処理技術のうちの凝集処理は、適切な薬剤注入管理が必要である。しかし、被処理水の水質が変動する等したときの薬剤注入量は、熟練の運転員の経験に依存する場合がある。熟練者は、経験に基づいて、濁質の凝集状態を確認するためのジャーテストの結果、プラントを監視する監視制御システムの監視制御データ、濁質の凝集状態の現場での目視、フロック画像の監視室での確認等から適切な薬剤注入量を決定することができる。
【0017】
一方で、熟練者が目視で観察している濁質の凝集状態等は、監視制御システム(監視制御データ)には、記録されない。このため、熟練者の経験が暗黙知となってしまうので、薬剤注入管理に必要な知識等が、熟練者以外の他人に継承されにくい課題があった。
【0018】
今後、非熟練者であっても、濁質の凝集状態を見極めることができるようにするためには、監視制御システム(監視システム)に、凝集不良を早期に判断できる機能が必要である。そこで、センシング技術により、フロックの画像データを取得し、機械学習や人工知能を用いて、濁質の凝集状態の良否(以下、「濁質の凝集良否」又は単に「凝集良否」とも称呼される。)を判断する技術の開発が進められている。
【0019】
例えば、上述の特許文献1の技術は、カメラを急速混和池及びフロック形成池に設置し、急速混和地では凝集核が形成される様子(経時変化)を示す画像データ(所定期間に撮像された画像データ)を取得し、フロック形成池ではフロックが形成される初期の様子を示す画像データ(所定期間に撮像された画像データ)を取得し、取得したこれらの画像データを教師データとして深層学習により学習した結果に基づいて、画像データから将来形成されるフロックが良質なフロックであるか否かを判別する。
【0020】
しかし、凝集核やフロックが形成される様子(経時変化)を撮像すること(凝集核やフロックが形成される様子を所定期間の画像データ(400秒分又は300秒分の画像データ)に映しだすこと)は、試験用の小型装置やバッチ式装置では可能であるものの、実際の上下水プラントでは、適切な場所にカメラを設置しないと困難である。このため、特許文献1の技術では、上下水プラントの仕様によっては適切にフロックの良否を判別できない可能性がある。
【0021】
これに対して、本発明の特徴の一つは、連続式の実プラントを想定して、凝集良否の差異が判断しやすい、被処理水の濁質の凝集状態を撮像可能な場所で、ある時刻で撮像した被処理水中の濁質の凝集状態を映した画像(以下、「凝集画像」と称呼される場合がある。)を、被処理水の水質に応じて取得し、その画像を入力として、凝集画像に映る被処理水の濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力するモデルを使用し、取得した凝集画像から凝集状態の良否を示す情報を計算する。
【0022】
これにより、本発明は、凝集画像から非熟練者であっても濁質の凝集状態の良否を簡単に判別可能な情報を、計算できる。更に、本発明によって、非熟練者であっても、濁質の凝集状態の良否を簡単に判別可能な情報によって、濁質の凝集不良を早期に判断することができる。
【0023】
<<実施形態>>
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0024】
<<第1実施形態>>
<構成>
本発明の第1実施形態に係る水処理状況監視システム(以下、「第1監視システム」と称呼される場合がある。)について説明する。
図1はプラント施設の一例である浄水場100に第1監視システムを適用した例を示す概略構成図である。
【0025】
浄水場100は、河川水、ダム水及び地下水を浄水処理し、処理水を工場や一般家庭等へ送水する施設であり、複数の施設で構成される。本例において、浄水場100は、
図1に示すように、着水井110、混和槽120、フロック形成槽130、沈殿槽140及びろ過槽150等を含む。被処理水Wa1は、河川、ダム等から、着水井110、混和槽120、フロック形成槽130、沈殿槽140及びろ過槽150の順に運ばれ、浄化及び消毒等が行われることにより、被処理水Wa1から濁りが除去されると共に被処理水Wa1が殺菌(消毒)される。浄化及び消毒後の被処理水Wa1は、「処理水Wa2」と称呼される。処理水Wa2は、水道水として、各家庭、工場等に供給される。
【0026】
第1監視システムは、浄水場100に適用され、第1水質計210a及び第2水質計210bと、第1撮像装置220a及び第2撮像装置220bと、情報処理装置230と、を含む。これらは、有線又は無線によって互いに通信可能に接続されている。なお、以降の説明において、「第1水質計210a」及び「第2水質計210b」は、特に区別する必要がない場合、「水質計210」と称呼される。「第1水質計210a」は、便宜上、「被処理水計測装置」とも称呼される場合がある。「第2水質計210b」は、便宜上、「処理水計測装置」とも称呼される場合がある。「第1撮像装置220a」及び「第2撮像装置220b」は、特に区別する必要がない場合、「撮像装置220」と称呼される。
【0027】
水質計210は、水処理に関わる水質項目を計測する複数のセンサを含むセンサ群である。複数のセンサは、例えば、水の濁り(濁度)を計測する濁度計、水温を計測する水温計、pHを計測するpH計、アルカリ度を計測するアルカリ度計、水中の有機物を計測するTOC計、紫外線吸光度計、及び、水質ではないが処理量を計測する水量計等である。
【0028】
第1水質計210aは、浄水場100の被処理水Wa1を計測可能な位置に設置されている。本例において、第1水質計210aは、着水井110の被処理水Wa1を計測可能な位置に設置されている。第2水質計210bは、処理水Wa2を計測可能な位置に設置されている。
【0029】
第1水質計210aは、所定の時間間隔毎に、被処理水Wa1を計測して計測値(各センサの計測値)を情報処理装置230に送信する。なお、被処理水Wa1についての各センサの計測値は、便宜上、「被処理水水質パラメータ」とも称呼される場合がある。第2水質計210bは、所定の時間間隔毎に、処理水Wa2を計測して計測値(各センサの計測値)を情報処理装置230に送信する。
【0030】
第1撮像装置220a及び第2撮像装置220bのそれぞれは、薬剤を注入してから凝集核形成及びフロックを成長させる過程において被処理水Wa1の濁質の凝集状態を撮像できる位置に設置される。第1撮像装置220a及び第2撮像装置220bのそれぞれは、動画又は一定の時間間隔で画像を記録できる仕組みを有する撮像装置であればよい。本例において、第1撮像装置220a及び第2撮像装置220bのそれぞれは、動画を撮像するカメラである。本例において、第1撮像装置220aは、フロック形成槽130の入り口の被処理水Wa1を撮像可能な位置に設置される。第2撮像装置220bは、フロック形成槽130の出口の被処理水Wa1を撮像可能な位置に設置される。なお、第1撮像装置220a及び第2撮像装置220bの設置位置は、これに限定されず、例えば、第1撮像装置220aが混和槽120の被処理水Wa1を撮像可能な位置に設置されてもよい。
【0031】
撮像装置220は、撮像装置220が直接水中に投入された状態で被処理水Wa1を撮像してもよく、水上を撮像してもよく、透明な壁面越しに被処理水Wa1を撮像してもよい。即ち、撮像装置220が被処理水Wa1を撮像方法は、濁質の凝集状態を撮像可能(撮像可能)であれば、特に限定されるものではない。
【0032】
撮像装置220は、図示しない画像抽出手段により、所定の時間間隔毎に画像(静止画像)を切り出し、情報処理装置230に送信する。画像を切り出す時間間隔としては、水質計210の計測時間間隔と合わせる(同じにする)のが望ましい。なお、画像抽出手段は、撮像装置220が備えていてもよく、情報処理装置230が備えていてもよい。情報処理装置230が画像抽出手段を備える場合、画像抽出手段は撮像装置220から受信した動画を上述したように処理する。
【0033】
情報処理装置230は、情報格納手段231と、モデル生成手段232と、凝集良否判定手段233と、凝集良否出力手段234と、を含む。
【0034】
情報格納手段231は、第1水質計210aから送信された計測値(例えば、濁度、水温、pH、アルカリ度等)に、計測値の計測時点の時刻情報を付加して、複数の計測値(複数の「各計測値のセット」)を時系列データ(以下、「被処理水データ」と称呼される。)として、保持(記憶、格納)する。情報格納手段231は、第2水質計210bから送信された計測値(例えば、濁度、水温、PH、アルカリ度等)に、計測値の計測時点の時刻情報を付加して、計測値(複数の「各計測値のセット」)を時系列データ(以下、「処理水データ」と称呼される。)として、保持(記憶、格納)する。
【0035】
情報格納手段231は、第1撮像装置220aから送信された所定の時間間隔毎の画像(以下、「第1画像」とも称呼される。)に、第1画像の撮像時点の時刻情報を付加して、所定の時間間隔毎の複数の第1画像を時系列データ(以下、「第1画像データ」と称呼される。)として、保持(記憶、格納)する。情報格納手段231は、第2撮像装置220bから送信された所定の時間間隔毎の画像(以下、「第2画像」とも称呼される。)に、第2画像の撮像時点の時刻情報を付加して、所定の時間間隔毎の複数の第2画像を時系列データ(以下、「第2画像データ」と称呼される。)として、保持(記憶、格納)する。なお、情報格納手段231は、更に、各画像に、画像の撮像場所を示す情報を更に付加するようにしてもよい。
【0036】
情報格納手段231は、時刻情報に基づいて、被処理水データと、処理水データと、第1画像データと、第2画像データとを互いに関連付けて保持(記憶、格納)する。例えば、情報格納手段231は、同時刻(同じ時間範囲)に第1水質計210aにより取得された被処理水データ、第2水質計210bにより取得された処理水データ及び第1撮像装置220a及び第2撮像装置220bにより取得された画像データを、時刻をキーとして結合し(関連付けて)、これらをデータセットとして保持(記憶、格納)する。
【0037】
なお、例えば、それぞれのデータが、ある被処理水Wa1を浄水場100で処理した場合のその被処理水Wa1の処理経過に対応するデータとなるように、関連付けてもよい。この場合、例えば、情報格納手段231は、時刻情報に基づいて、ある時刻t1の被処理水Wa1の計測値と、時刻t1+taの第1画像と、時刻t1+tbの第2画像と、時刻t1+tcの処理水の計測値と、を互いに関連付けることが好ましい。taは、被処理水Wa1が第1水質計210aの設置位置から第1撮像装置220aに運ばれるまでの間の時間に対応し、tbは、被処理水Wa1が第1水質計210aの設置位置から第2撮像装置220bの設置位置に運ばれるまでの間の時間に対応し、tcは、被処理水Wa1が第1水質計210aの設置位置から第2水質計210bの設置位置に運ばれるまでの間の時間に対応する。なお、典型的な被処理水Wa1の水質は、短期間で変動しないので、上記のように、同時刻で各データ(各画像、各計測値)を関連付けてもよく、この場合においても被処理水Wa1の処理経過に対応するデータを取得することができる。
【0038】
モデル生成手段232は、情報格納手段231に格納したデータを用いて、被処理水Wa1の画像に映る濁質の凝集良否の判定に関するモデル(画像に映る被処理水Wa1の濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力するモデル)を生成(作成)する。より具体的に述べると、モデル生成手段232は、互いに関連付けられた被処理水データと、処理水データと、第1画像データと、を含むデータセットを用いて、第1凝集良否判定モデルを生成する。モデル生成手段232は、互いに関連付けられた被処理水データと、処理水データと、第2画像データと、を含むデータセットを用いて、第2凝集良否判定モデルを生成する。モデル生成手段232は、生成した第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデルを保持(記憶)する。
【0039】
凝集良否判定手段233は、モデル生成手段232によって生成された第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデルの何れかを用いて、ある時刻(例えば、現時刻)の被処理水Wa1の濁質の凝集状態を示す画像(第1画像又は第2画像)を含む入力データから被処理水Wa1の濁質の凝集状態の良否を示す情報を計算する。凝集良否判定手段233は、図示しない操作装置に対するユーザの操作に基づいて、濁質の凝集状態の良否を示す情報の計算に使用するモデルを、第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデルの何れかに選択(設定)できるようになっている。
【0040】
凝集良否出力手段234は、凝集良否判定手段233によって計算された情報を出力する。
【0041】
図2は情報処理装置230のハードウェア構成の一例を示す概略構成図である。
図2に示すように、情報処理装置230は、CPU241、ROM242、RAM243、データの読み出し及び書き出し可能な不揮発性の記憶装置(HDD)244、ネットワークインタフェース245及び入出力インタフェース246等を含む。これらは、バス247を介して互いに通信可能に接続されている。なお、情報処理装置230は、複数の情報処理装置で構成されてもよい。
【0042】
CPU241はROM242及び/又はHDD244に格納された図示しない各種プログラムをRAM243にロードし、RAM243にロードされたプログラムを実行することによって、各種機能を実現する。RAM243には、上述したようにCPU241が実行する各種プログラムがロードされ、CPU241が各種プログラムを実行する際に使用するデータが一時的に記憶される。ROM242及び/又はHDD244は、不揮発性の記憶媒体であり、各種プログラムが記憶されている。ネットワークインタフェース245は、情報処理装置230がネットワークに接続されるためのインタフェースである。入出力インタフェース246は、キーボード、マウス等の操作装置及びディスプレイに接続されるためのインタフェースである。
【0043】
情報格納手段231は、HDD244、ネットワークインタフェース245及び/又は入出力インタフェース246で構成される。モデル生成手段232は、情報処理装置230のCPU241により実行されるROM242及び/又はHDD244に格納されたプログラム及びHDD244で構成される。凝集良否判定手段233は、情報処理装置230のCPU241により実行されるROM242及び/又はHDD244に格納されたプログラムで構成される。凝集良否出力手段234は、ネットワークインタフェース245及び/又は入出力インタフェース246で構成される。
【0044】
情報処理装置230には、監視制御装置310が接続されている。監視制御装置310は、薬剤ポンプ320に接続されている。監視制御装置310は、薬剤ポンプ320を制御することにより、混和槽120の被処理水Wa1に注入する凝集剤の注入量を制御できるように構成されている。なお、監視制御装置310及び薬剤ポンプ320は、第1監視システムに含まれていてもよい。監視制御装置310の機能が情報処理装置230に含まれていてもよい。
【0045】
<試験例>
浄水場100において、被処理水Wa1から濁りを除去するプロセスは、「凝集沈殿処理」と称呼される。一般的な浄水場100における凝集沈殿処理は、施設に流入してきた被処理水Wa1に例えばポリ塩化アルミニウムや硫酸バンド等の凝集剤と呼ばれる薬剤を注入する。薬剤を注入する目的の一つは、水中で懸濁している不溶解性物質(濁質)を除去することである。濁質は水中でマイナスに荷電しているが、薬剤を添加することで電気的中和が可能となる。また、薬剤を注入する別の目的は、薬剤同士の架橋作用により、中和した濁質同士が衝突したときに、濁質が凝集しやすくすることである。
【0046】
混和槽120(急速混和池)では、被処理水Wa1に薬剤が注入され、急速撹拌により濁質同士を衝突させることで、被処理水Wa1中に凝集核が形成される。次に、フロック形成槽130(フロック形成池)では、フロックを破壊しない強度で緩速撹拌することで、フロックを成長させる。そして沈殿槽140(沈殿池)では、成長したフロックを沈澱及び除去する。
【0047】
フロックの凝集メカニズムの因子としていくつか例を挙げる。薬剤の注入量が増加すると架橋作用が強くなるため、フロックの成長が早くなり、濁質の凝集状態は良好となり、処理水の濁度(以下、「処理水濁度」とも称呼される。)を低下できる。ただし、薬剤の注入量が過剰になると濁質がプラスに荷電してしまい、濁質の凝集状態は不良となり、処理水濁度が増加してしまう可能性がある。
【0048】
撹拌強度が増加すると濁質同士の衝突頻度を増やすことができるため、攪拌強度が増加するほどフロック成長が早くなる。ただし、撹拌強度が強すぎると成長したフロックが破壊される要因となる。
【0049】
水中の濁りの量(被処理水の濁度(以下、「被処理水濁度」とも称呼される。))は増加するほど、濁質(あるいは凝集核、フロック)の衝突頻度を増やすことができるため、フロックの成長が早くなる。
【0050】
以上のようにフロックの成長は、薬剤の注入量、撹拌強度等のプラントの操作条件と水質条件により影響を受ける。
【0051】
熟練者は、現場での目視や監視室の濁質の凝集状態を映す画面をみて、経験に基づいて、通常よりフロックの大きさが小さいこと等が確認できれば、凝集不良と判断し、適切な浄水処理をするための対策を講じることになる。
【0052】
しかし、上述したように、日本の生産年齢人口(15~64歳)は減少傾向にあるため、将来人手不足が発生したときのサステナブル(持続可能)な解決策を今から考える必要がある。
【0053】
これに対して、第1監視システムの情報処理装置230は、非熟練者であっても、画像(画面)に映るフロック(濁質)の凝集状態の良否が、判断できるように、凝集画像から被処理水Wa1の濁質の凝集状態の良否を示す情報を計算可能なモデルを生成する。即ち、第1監視システムの情報処理装置230は、ある時刻の画像を含むデータを入力データとし、凝集状態の変化(ある時刻の画像に現れる凝集状態の差)を検知し、入力データから被処理水Wa1の濁質の凝集状態の良否を示す情報を計算可能なモデルを生成する。そして、第1監視システムは、モデルを使用して、凝集画像から処理水Wa1の濁質の凝集状態の良否を示す情報(本例において、処理水濁度の予測値(「予測処理水濁度」とも称呼される場合がある。))を計算する。なお、予測処理水濁度は、その大きさが小さくなるほど被処理水Wa1の凝集状態が良好(良)であり、その大きさが大きくなるほど被処理水Wa1の凝集状態が悪い(否である)ことを示す。処理水濁度と相関関係を有する凝集状態の変化を画像により検知できるか確認するため、凝集画像取得試験を行った。
図3は、凝集画像取得試験の試験条件と被処理水の処理結果(処理水濁度)を示す。凝集画像取得試験は、直方体形状の透明水槽内に撹拌機とカメラで凝集状態を撮像するときの背景となる黒板(背景板)を水槽内壁から15mmの位置に設置し、背景板を撮像するように水槽外壁側にカメラを設置した。また、光源は水槽上部にある。被処理水は、水道水に模擬濁質としてカオリン試薬を添加することで調整した。このときの各試験条件の水質は
図3に示すとおりで、25度、81度、85度の濁度に調整した被処理水に注入する薬剤の量を変えることで凝集条件を変更した。カメラによる撮像を開始したのち、予め設定した薬剤注入量の凝集剤を添加し、急速撹拌3分、緩速撹拌10分、静置10分を実行した。そして、水槽の上澄み水を採水し、処理水濁度を計測した。ここで、急速混和池(混和槽120)のプロセスに相当する急速撹拌は撹拌強度が148.2s
-1、フロック形成池(フロック形成槽130)のプロセスにおける緩速撹拌は撹拌強度が64.0s
-1の条件としている。また、静置10分が完了したのち、カメラによる撮像を終了した。カメラは試験中、水槽内壁と背景板の間を通過するフロックを撮像した。
【0054】
撮像した映像から画像を切り出し、画像処理を行い画像内のフロックの面積値(ピクセル単位)を算出した。本試験例では、凝集画像は撮像した映像から0.5秒単位で切り出した。また、画像処理はグレースケール化、二値化及び物体認識(フロック検出)を行った。1枚の画像のみから算出した場合、結果にバラつきが生じる可能性があるため、緩速撹拌開始(0分)から0.5秒単位で切り出した凝集画像からフロックの面積値を算出したのち、10秒間分積算してフロック面積積算値としている。フロック面積積算値の算出間隔は30秒(0分、0.5分、1分、・・・)ごととした。
【0055】
図4は、フロック面積積算値の経時変化である。フロック面積積算値は処理時間の経過に伴い増加した。これはフロックの成長によるものである。Run1及びRun2はRun3及びRun4と比較してフロック面積積算値が小さかった。これは被処理水濁度が約25度と、Run3及びRun4の約80度より少ないため、生成されるフロック量が少ないからである。また、Run1及びRun2はRun3及びRun4と比較してフロック面積積算値の増加が緩やかである。
【0056】
これは前述したフロックの凝集メカニズムによるもので、被処理水濁度は増加するほど、濁質(あるいは凝集核、フロック)の衝突頻度を増やすことができるため、フロックの成長が早くなるためである。以上より、被処理水濁度がRun3及びRun4と比較して小さいRun1及びRun2は、相対的にフロックの成長が遅く、フロック面積値の増加が緩やかとなった。更に、Run1及びRun2では、凝集剤注入量が高いほど、フロック面積積算値の増加が早い時間から開始される。これは凝集剤同士の架橋作用もあり、濁質(あるいは凝集核、フロック)の衝突したときの凝集確率が向上するためである。
【0057】
Run2とRun4を比較すると、最終的な処理水濁度は同程度であるが、フロック面積積算値の推移と最大値は異なる。
【0058】
以上のことから、濁質の凝集状態の良否を画像から判断するときは水質、特に被処理水濁度を考慮する必要がある。
【0059】
具体的にいえば、Run1及びRun2の被処理水の画像から凝集良否を判断する(凝集状態の良否を示す情報(予測処理水濁度)を計算する)とき、フロック面積積算値の差分が生ずる処理時間の画像を使用するのがよい。Run1及びRun2の場合は1分から7分、特に3~5分あたりがよいと考える。また、Run3及びRun4の場合は、緩速撹拌開始直後に差分が現れているため、0分の被処理水の画像を使用しても凝集良否の判断(凝集状態の良否を示す情報(予測処理水濁度)を計算すること)が可能である。
【0060】
以上から、特定の時間(時刻)の画像から、処理水濁度と相関関係を有する濁質の凝集状態の変化(画像に現れる濁質の凝集状態の差)が検知できることがわかる。更に、被処理水の水質(特に被処理水濁度)に応じて画像に現れる濁質の凝集の形成挙動(フロックの形成挙動)に差が生じることがわかる。被処理水の水質に応じて、処理水濁度と相関関係を有する凝集画像に現れる濁質の凝集状態の差が大きく(又は小さく)現れる経過時間が異なることがわかる。従って、被処理水の水質に基づいて、適切な特定の経過時間(時刻)の画像(即ち、被処理水の画像を取得するのに適切な処理経過時間に対応する場所で撮像した画像)を入力データとして用いれば、処理水濁度と相関関係を有する画像に現れる濁質の凝集状態の差が大きく現れるので、更に精度よく、被処理水の濁質の凝集状態の良否を判別できる(凝集状態の良否を示す情報を計算する)ことがわかる。なお、処理水濁度と相関関係を有する被処理水の水質を示すパラメータも、入力データとして用いれば、更に精度よく、被処理水の濁質の凝集状態の良否を判別できる(凝集状態の良否を示す情報を計算する)ことができる。
【0061】
<作動の概要>
情報処理装置230は、既述したように、第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデルを生成する。情報処理装置230は、被処理水Wa1の濁質の凝集状態の良否を示す情報(本例において、処理水Wa2の処理水濁度の予測値(予測処理水濁度))を計算する場合において、第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデルの何れか一つを、濁質の凝集状態の良否を示す情報の計算に使用するモデルとして選択する。例えば、情報処理装置230には、図示しない操作装置が接続され、ユーザによる操作装置に対する操作に基づいて、第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデルの何れか一つを、濁質の凝集状態の良否を示す情報の計算に使用するモデルとして、選択する。
【0062】
情報処理装置230は、選択した第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデルの何れか一つを用いて、被処理水Wa1中の濁質の凝集状態の良否を示す情報を計算する。例えば、予め測定した被処理水Wa1の被処理水濁度に応じて、ユーザが図示しない操作装置を介して、適宜、最適な凝集良否判定モデルを選択することにより、情報処理装置230は、被処理水Wa1の水質(被処理水濁度)に応じた最適な凝集良否判定モデルを用いて、被処理水Wa1中の濁質の凝集状態の良否を示す情報を計算する。これにより、情報処理装置230は、適宜、最適な凝集良否判定モデルを用いて、被処理水Wa1中の濁質の凝集状態の良否を簡単に判別可能な情報を計算できる。
【0063】
<具体的作動>
図5はモデル生成手段232が実行する処理フローを示すフローチャートである。モデル生成手段232は、
図5に示すフローチャートを実行する。従って、モデル生成手段232は、
図5のステップ500から処理を開始して、以下に述べるステップ505乃至ステップ520の処理を順に実行する。その後、モデル生成手段232は、ステップ595に進んで本処理フローを一旦終了する。
【0064】
ステップ505:モデル生成手段232は、情報格納手段231から、互いに関連付けられた第1画像データ、被処理水データ及び処理水データのデータセットを取得する。本例において、被処理水データは、例えば、被処理水濁度、水温、pH、アルカリ度、TOC(全有機炭素、Total Organic Carbon)、凝集剤注入濃度を含む。
【0065】
ステップ510:モデル生成手段232は、第1画像データの各第1画像を画像処理する。具体的に述べると、モデル生成手段232は、第1画像データの各第1画像をグレースケール化した後、輝度補正する。
【0066】
ステップ515:モデル生成手段232は、被処理水データ(被処理水データの各計測値)を正規化処理する。
【0067】
ステップ520:モデル生成手段232は、処理済み第1画像データ及び処理済み被処理水データと、処理水データとを学習用データとして用いて、深層学習によって、第1画像(画像処理後の第1画像)と、被処理水データの各計測値(正規化処理後の各計測値)と、を入力として、予測処理水濁度を出力とする学習済みモデル(第1凝集良否判定モデル)を、生成する。モデル生成手段232は、生成した第1凝集良否判定モデルを保持(記憶)する。
【0068】
なお、深層学習では、例えば、時刻をキーとして互いに関連付けられた、画像処理後の第1画像と被処理水データの各計測値(正規化処理後の各計測値)とを入力として、第1画像及び各計測値と関連付けられた処理水データの処理水濁度を正解の値として、1回の学習が実行される。この学習を、学習用のデータセットの時刻に基づいて関連付けられた、各第1画像、被処理水データの各計測値、処理水データの処理水濁度のそれぞれについて行う。即ち、多数回の反復学習が実行される。
【0069】
深層学習において、第1画像の入力に対しては、公知のCNNを用いて最終的な出力の前までの第1出力ニューロンに出力し、各計測値の入力に対して、公知のNNを用いて最終的な出力の前までの第2出力ニューロンに出力する。最終段階で、第1出力ニューロン及び第2出力ニューロンからの出力が、結合層に入力された後に関数によって、最終的な予測値(予測処理水濁度)を出力する。予測値と正解の値との誤差を関数によって評価し、関数が最小となるように学習が行われる。
【0070】
図6はモデル生成手段232が実行する処理フローを示すフローチャートである。モデル生成手段232は、
図6に示すフローチャートを実行する。従って、モデル生成手段232は、
図6のステップ600から処理を開始して、以下に述べるステップ605乃至ステップ620の処理を順に実行する。その後、モデル生成手段232は、ステップ695に進んで本処理フローを一旦終了する。
【0071】
ステップ605:モデル生成手段232は、情報格納手段231から、互いに関連付けられた第2画像データ、被処理水データ及び処理水データのデータセットを取得する。
【0072】
ステップ610:モデル生成手段232は、第2画像データの各第2画像を画像処理する。具体的に述べると、モデル生成手段232は、第2画像データの各第2画像をグレースケール化した後、輝度補正する。
【0073】
ステップ615:モデル生成手段232は、被処理水データ(被処理水データの各計測値)を正規化処理する。
【0074】
ステップ620:モデル生成手段232は、処理済み第2画像データ及び処理済み被処理水データと、処理水データとを学習用データとして用いて、上記と同様の深層学習によって、第2画像(画像処理後の第2画像)と、被処理水データの各計測値(正規化処理後の各計測値)と、を入力として、予測処理水濁度を出力とする学習済みモデル(第2凝集良否判定モデル)を、生成する。モデル生成手段232は、生成した第2凝集良否判定モデルを保持(記憶)する。
【0075】
図7は凝集良否判定手段233が実行する処理フローを示すフローチャートである。この処理フローは、第1凝集良否判定モデルが濁質の凝集状態の良否を示す情報の計算に使用するモデルに選択された場合に、凝集良否判定手段233が実行する処理フローである。凝集良否判定手段233は、第1凝集良否判定モデルが選択された場合、
図7に示すフローチャートを実行する。従って、凝集良否判定手段233は、
図7のステップ700から処理を開始して、以下に述べるステップ705乃至ステップ720の処理を順に実行する。その後、凝集良否判定手段233は、ステップ795に進んで本処理フローを一旦終了する。
【0076】
ステップ705:凝集良否判定手段233は、現時刻の第1画像を第1撮像装置220aから取得し、被処理水データ(現時刻の各計測値)を第1水質計210aから取得する。
【0077】
ステップ710:凝集良否判定手段233は、第1画像を画像処理する。具体的に述べると、凝集良否判定手段233は、第1画像をグレースケール化した後、輝度補正する。
【0078】
ステップ715:凝集良否判定手段233は、被処理水データ(現時刻の各計測値)を正規化処理する。
【0079】
ステップ720:凝集良否判定手段233は、モデル生成手段232から第1凝集良否判定モデルを取得し、画像処理を行った第1画像及び正規化処理した被処理水データを第1凝集良否判定モデルに入力し、第1凝集良否判定モデルの出力である処理水濁度の予測値(予測処理水濁度)を計算し、取得する。
【0080】
図8は凝集良否判定手段233が実行する処理フローを示すフローチャートである。この処理フローは、第2凝集良否判定モデルが濁質の凝集状態の良否を示す情報の計算に使用するモデルに選択された場合に、凝集良否判定手段233が実行する処理フローである。なお、この処理フローは、
図7において、第1画像を第2画像に代え、第1凝集良否判定モデルを第2凝集良否判定モデルに代えたこと以外、
図7と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0081】
<効果>
以上説明した通り、第1監視システムは、適宜、最適な凝集良否判定モデルを用いて、画像に映る被処理水Wa1中の濁質の凝集状態の良否を示す情報(予測処理水濁度)を計算できる。第1監視システムでは、これまで熟練者の暗黙知であった視覚に頼る濁質の凝集状態に関する知識を形式知化することで、経験がない運転員(非熟練者)であっても、この第1監視システムを使用することで、簡単且つ早期に画像に映る濁質の凝集状態の良否の判定が可能となる。更に、これまでは水質の変動時には凝集剤注入量を多くする安全側で運転することが多かったが、第1監視システムにより、画像に映る被処理水Wa1の濁質の凝集状態の良否を迅速に判定し最適な凝集剤注入量で運転することで、凝集剤注入量を少なくすることができ、余分な凝集剤のコストを減らすことができるので、省コスト化が可能となる。
【0082】
<<第1変形例>>
第1監視システムの第1変形例について説明する。1変形例は、情報格納手段231に格納されたデータの一部を用いて、第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデルを生成する。第1変形例は、情報格納手段231に格納された残りのデータの少なくとも一部(本例において、全部)を用いて、第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデルの何れを用いた方が処理水濁度の予測値(予測処理水濁度)の誤差が少なくなるかを判定するための閾値濁度を求める。第1変形例は、被処理水Wa1の濁度と閾値濁度を比較し、比較結果に基づいて、第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデルのうちの何れか一つのモデルを選択する。第1変形例は、選択したモデルを用いて、処理水Wa2の予測処理水濁度を計算する。以上の点以外、第1監視システムと同様である。
【0083】
以下、この相違点を中心として説明する。
【0084】
<具体的作動>
図9は第1変形例のモデル生成手段232が実行する処理フローを示すフローチャートである。モデル生成手段232は、
図9に示すフローチャートを実行する。従って、モデル生成手段232は、
図9のステップ900から処理を開始して、以下に述べるステップ905乃至ステップ935の処理を順に実行する。
【0085】
ステップ905:モデル生成手段232は、情報格納手段231から、互いに関連付けられた、第1画像データ、第2画像データ、被処理水データ及び処理水データのデータセットを、取得する。この際、モデル生成手段232は、情報格納手段231に格納されている全データセットの一部(本例において、70%)のデータセットを取得する。モデル生成手段232は、取得したデータセットを使用して、以下に述べるステップ910乃至ステップ930の処理を実行する。
【0086】
ステップ910:モデル生成手段232は、第1画像データの各第1画像を画像処理する。具体的に述べると、モデル生成手段232は、第1画像データの各第1画像をグレースケール化した後、輝度補正する。
【0087】
ステップ915:モデル生成手段232は、被処理水データ(被処理水データの各計測値)を正規化処理する。
【0088】
ステップ920:モデル生成手段232は、処理済み第1画像データ及び処理済み被処理水データと、処理水データとを学習用データとして用いて、深層学習によって、第1画像(画像処理後の第1画像)と、被処理水データの各計測値(正規化処理後の各計測値)と、を入力として、予測処理水濁度を出力とする学習済みモデル(第1凝集良否判定モデル)を、生成する。モデル生成手段232は、生成した第1凝集良否判定モデルを保持(記憶)する。
【0089】
ステップ925:モデル生成手段232は、第2画像データの各第2画像を画像処理する。具体的に述べると、モデル生成手段232は、第2画像データの各第2画像をグレースケール化した後、輝度補正する。
【0090】
ステップ930:モデル生成手段232は、処理済み第2画像データ及び処理済み被処理水データと、処理水データとを学習用データとして用いて、深層学習によって、第2画像(画像処理後の第2画像)と、被処理水データの各計測値(正規化処理後の各計測値)と、を入力として、予測処理水濁度を出力とする学習済みモデル(第2凝集良否判定モデル)を、生成する。モデル生成手段232は、生成した第2凝集良否判定モデルを保持(記憶)する。
【0091】
ステップ935:モデル生成手段232は、
図10にフローチャートにより示した評価処理を実行する。
【0092】
図10は第1変形例のモデル生成手段232が実行する処理フローを示すフローチャートである。モデル生成手段232は、
図9のステップ935に進むと、
図10のステップ1000から処理を開始して、以下に述べるステップ1005乃至ステップ1035の処理を順に実行する。
【0093】
ステップ1005:モデル生成手段232は、情報格納手段231から、互いに関連付けられた、第1画像データ、第2画像データ、被処理水データ及び処理水データのデータセットを、取得する。この際、モデル生成手段232は、情報格納手段231に格納された全データセットのうちの残りの全部(本例において、30%)のデータセットを取得する。モデル生成手段232は、取得したデータセットを使用して、以下に述べるステップ1010乃至ステップ1035の処理を順に実行する。
【0094】
ステップ1010:モデル生成手段232は、第1画像データの各第1画像を画像処理する。具体的に述べると、モデル生成手段232は、第1画像データの各第1画像をグレースケール化した後、輝度補正する。
【0095】
ステップ1015:モデル生成手段232は、被処理水データ(被処理水データの各計測値)を正規化処理する。
【0096】
ステップ1020:モデル生成手段232は、画像処理後の第1画像データ、正規化処理後の被処理水データ、及び、第1凝集良否判定モデルを用いて、処理水濁度の予測値(予測処理水濁度)を算出する。モデル生成手段232は、処理水濁度の予測値(予測処理水濁度)と、処理水データの処理水濁度とを用いて、予測値の誤差(=|予測処理水濁度-処理水データの処理水濁度(実績値)|を算出する。
【0097】
ステップ1025:モデル生成手段232は、第2画像データを画像処理する。具体的に述べると、モデル生成手段232は、第2画像データの各第2画像をグレースケール化した後、輝度補正する。
【0098】
ステップ1030:モデル生成手段232は、画像処理後の第2画像データ、正規化処理後の被処理水データ、及び、第2凝集良否判定モデルを用いて、処理水濁度の予測値(予測処理水濁度)を算出する。モデル生成手段232は、処理水濁度の予測値(予測処理水濁度)と、処理水データの処理水濁度とを用いて、予測値の誤差(=|予測処理水濁度-処理水データの処理水濁度(実績値)|を算出する。
【0099】
ステップ1035:モデル生成手段232は、被処理水データの被処理水濁度、ステップ1020で算出した予測値の誤差、及び、ステップ1030で算出した予測値の誤差に基づき、閾値濁度を算出する。例えば、閾値濁度は、
図11に示すグラフを作成した場合における、線a1と線a2との交点P10の濁度である。線a1は、被処理水データの被処理水濁度、及び、ステップ1020で算出した予測値の誤差に基づいて、プロットした線であり、被処理水データの被処理水濁度と、第1凝集良否モデルを用いた場合の予測値の平均誤差との関係を示す。線a2は、被処理水データの被処理水濁度、及び、ステップ1030で算出した予測値の誤差に基づいて、プロットした線であり、被処理水データの被処理水濁度と、第2凝集良否モデルを用いた場合の予測値の平均誤差との関係を示す。
【0100】
図11のグラフによれば、被処理水Wa1の被処理水濁度が、閾値濁度より大きい場合、第1凝集良否判定モデルを用いた方が、第2凝集良否判定モデルを用いた場合に比べて、平均誤差が小さいので処理水濁度の予測値(予測処理水濁度)の精度が高いことがわかる。被処理水Wa1の被処理水濁度が、閾値濁度以下である場合、第2凝集良否判定モデルを用いた方が、第1凝集良否判定モデルを用いた場合に比べて、平均誤差が小さいので、予測値(予測処理水濁度)の精度が高いことがわかる。
【0101】
その後、モデル生成手段232は、ステップ1095に進んで本処理フローを一旦終了した後、ステップ995に進んで、
図9の処理フローを一旦終了する。
【0102】
図12は第1変形例の凝集良否判定手段233が実行する処理フローを示すフローチャートである。凝集良否判定手段233は、
図12に示すフローチャートを実行する。従って、凝集良否判定手段233は、
図12のステップ1200から処理を開始してステップ1205に進み、現時刻の被処理水データ(現時刻の各計測値)を第1水質計210aから取得する。
【0103】
その後、凝集良否判定手段233は、ステップ1210に進み、被処理水データの被処理水濁度が閾値濁度より大きいか否かを判定する。
【0104】
被処理水濁度が閾値濁度より大きい場合、凝集良否判定手段233は、ステップ1210にて「Yes」と判定して以下に述べるステップ1215乃至ステップ1230の処理を順に実行した後、ステップ1295に進んで本処理フローを一旦終了する。
【0105】
ステップ1215:凝集良否判定手段233は、現時刻の第1画像を第1撮像装置220aから取得する。
【0106】
ステップ1220:凝集良否判定手段233は、第1画像を画像処理する。具体的に述べると、凝集良否判定手段233は、第1画像をグレースケール化した後、輝度補正する。
【0107】
ステップ1225:凝集良否判定手段233は、被処理水データ(現時刻の各計測値)を正規化処理する。
【0108】
ステップ1230:凝集良否判定手段233は、モデル生成手段232から第1凝集良否判定モデルを取得し、画像処理を行った第1画像及び正規化処理した被処理水データを第1凝集良否判定モデルに入力し、第1凝集良否判定モデルの出力である処理水濁度の予測値(予測処理水濁度)を計算し、取得する。
【0109】
被処理水濁度が閾値濁度以下である場合、凝集良否判定手段233は、ステップ1210にて「No」と判定して以下に述べるステップ1235乃至ステップ1250の処理を順に実行した後、ステップ1295に進んで本処理フローを一旦終了する。
【0110】
ステップ1235:凝集良否判定手段233は、現時刻の第2画像を第2撮像装置220bから取得する。
【0111】
ステップ1240:凝集良否判定手段233は、第2画像を画像処理する。具体的に述べると、凝集良否判定手段233は、第2画像をグレースケール化した後、輝度補正する。
【0112】
ステップ1245:凝集良否判定手段233は、被処理水データ(現時刻の各計測値)を正規化処理する。
【0113】
ステップ1250:凝集良否判定手段233は、モデル生成手段232から第2凝集良否判定モデルを取得し、画像処理を行った第2画像及び正規化処理した被処理水データを第2凝集良否判定モデルに入力し、第2凝集良否判定モデルの出力である処理水濁度の予測値(予測処理水濁度)を計算し、取得する。
【0114】
<効果>
第1変形例は、被処理水データの被処理水濁度に応じて、最適な凝集良否判定モデルを選択して、選択した最適な凝集良否判定モデルを使用して、より精度の高い濁質の凝集状態の良否を示す情報(予測処理水濁度)を計算できる。なお、第1変形例の特徴は、後述の第2実施形態及び第3実施形態にも適用してもよい。
【0115】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態に係る水処理状況監視システム(以下、「第2監視システム」とも称呼される場合がある。)について説明する。
【0116】
図13は、浄水場100に第2監視システムを適用した例を示す概略構成図である。
図13に示すように、第2監視システムは、第1採水ポンプ1310aと、第2採水ポンプ1310bと、第1バルブ1320aと、第2バルブ1320bと、フローセル1330と、配管1340と、バルブ制御装置1350とを、含む。第2監視システムでは、第1監視システムの第2撮像装置220bが省略され、第1撮像装置220aがフローセル1330を撮像可能な位置に設置されている。以上の点以外、
図1に示した第1監視システムの構成と同様である。
【0117】
第1採水ポンプ1310aは、フロック形成槽130の入り口に対して設置され、フロック形成槽130の入り口の被処理水Wa1を採水する。採水された被処理水Wa1は、配管1340を通りフローセル1330に流入する。なお、第1採水ポンプ1110aは、混和槽120に対して設置され、混和槽120の被処理水Wa1を採水するようにしてもよい。
【0118】
第2採水ポンプ1310bは、フロック形成槽130の出口に対して設置され、フロック形成槽130の出口の被処理水Wa1を採水する。採水された被処理水Wa1は、配管1340を通りフローセル1330に流入する。
【0119】
フローセル1330は、採水された被処理水Wa1を通過させる透明な容器である。
【0120】
第1バルブ1320aは、電磁バルブであり、第1採水ポンプ1310aと配管1340の分岐部Pt1との間の配管1340に設置される。第1バルブ1320aは、第1バルブ1320aに対する通電が制御されることにより、被処理水Wa1が通流する開状態及び被処理水Wa1の通流を遮断する閉状態の何れかに設定される。
【0121】
第2バルブ1320bは、電磁バルブであり、第2採水ポンプ1310bと配管1340の分岐部Pt1との間の配管1340に設置される。第2バルブ1320bは、第2バルブ1320bに対する通電が制御されることにより、被処理水Wa1が通流する開状態及び被処理水Wa1の通流を遮断する閉状態の何れかに設定される。
【0122】
バルブ制御装置1350は、第1バルブ1320aを開状態及び閉状態の何れかに設定するように制御し、第2バルブ1320bを開状態及び閉状態の何れかに設定するように制御する。バルブ制御装置1350は、第1バルブ1320a及び第2バルブ1320bのそれぞれの開閉状態を制御することにより、第1採水ポンプ1310aによって採水された被処理水Wa1と、第2採水ポンプ1310bによって採水された被処理水Wa1とが、所定時間が経過する毎に、交互にフローセル1330に流入するように、フローセル1330に流入する被処理水Wa1を制御する。即ち、バルブ制御装置1350は、所定時間だけ第1採水ポンプ1310aによって採水された被処理水Wa1がフローセル1330に流入し、所定時間だけ第2採水ポンプ1310bによって採水された被処理水Wa1がフローセル1330に流入することを繰り返すように、フローセル1330に流入する被処理水Wa1を制御する。更に、バルブ制御装置1350は、第1バルブ1320a及び第2バルブ1320bの制御信号の時系列データを情報処理装置230に送信する。
【0123】
第1撮像装置220aは、フローセル1330の内部を通過する被処理水Wa1を撮像する。第1撮像装置220aは、図示しない画像抽出手段により、所定の時間間隔毎に画像を切り出し、情報処理装置230に送信する。
【0124】
情報処理装置230は、第1撮像装置220aから受信した画像と、電磁バルブの制御信号の時系列データとに基づいて、画像が第1採水ポンプによって採水された被処理水Wa1に関する画像(以下、「第1採水画像」と称呼される。)であるか、第2採水ポンプによって採水された被処理水Wa1に関する画像(以下、「第2採水画像」と称呼される。)であるかを区別する。
【0125】
情報格納手段231は、第1監視システムと同様、時刻情報に基づいて、被処理水データと、処理水データと、所定の時間間隔毎の複数の第1採水画像を含む第1採水画像データと、所定の時間間隔毎の複数の第2採水画像を含む第2採水画像データとを互いに関連付けて保持(記憶、格納)する。
【0126】
<作動の概要>
第2監視システムのモデル生成手段232は、第1監視システムと同様、情報格納手段231に格納したデータを用いて、凝集良否の判定に関するモデル(画像に映る被処理水Wa1の濁質の凝集状態の良否を示す情報を出力するモデル)を生成する。
【0127】
モデル生成手段232は、第1画像データに代えて第1採水画像データを用い、第2画像データに代えて第2採水画像データを用いること以外、第1監視システムと同様にして、第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデルを生成する。
【0128】
凝集良否判定手段233は、モデル生成手段232によって生成された第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデルの何れかを用いて、現時刻の被処理水Wa1中の濁質の凝集状態を示す画像(第1採水画像又は第2採水画像)を含む入力データから被処理水Wa1の濁質の凝集状態の良否を示す情報を計算する。凝集良否判定手段233は、図示しない操作装置に対するユーザの操作入力に基づいて、第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデルの何れかを用いるか設定できるようになっている。
【0129】
<具体的作動>
モデル生成手段232は、
図5の処理フローにおいて、第1画像データを第1採水画像データに代えたこと以外、
図5の処理フローと同様の処理フローを実行する。モデル生成手段232は、
図6の処理フローにおいて、第2画像データを第2採水画像データに代えたこと以外、
図6の処理フローと同様の処理フローを実行する。凝集良否判定手段233は、
図7の処理フローにおいて、第1画像を第1採水画像に代えたこと以外、
図7の処理フローと同様の処理フローを実行する。凝集良否判定手段233は、
図8の処理フローにおいて、第2画像を第2採水画像に代えたこと以外、
図8の処理フローと同様の処理フローを実行する。なお、これらの処理フローは、
図5乃至
図8の処理フローと上記点以外同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0130】
<効果>
以上説明したように、第2監視システムは、1台の第1撮像装置220aで、浄水場において被処理水Wa1の処理経過が異なる2つの場所(複数の場所)に存在していた被処理水Wa1の濁質の凝集状態を撮像することができる。更に、第2監視システムでは、フローセル1330の設置場所をある程度自由に選ぶことができるので、フローセル1330を例えば、屋内等の安定環境に配置することが可能となる。従って、第2監視システムは、第1監視システムに比べて、第1撮像装置220aが撮像したい被処理水Wa1の場所及び撮像条件の自由度を向上できる。
【0131】
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態に係る水処理状況監視システム(以下、「第3監視システム」とも称呼される場合がある。)について説明する。第3監視システムは、以下の点のみにおいて、第1監視システムと相違する。
【0132】
第3監視システムでは、モデル生成手段232が、画像データからフロックに関する情報(以下、「フロック情報」と称呼される。)を抽出し、フロック情報も用いて、凝集良否判定モデルを生成する。フロック情報は、例えば、画像中のフロック数、フロックの大きさ(粒径、面積等)、非フロック部分の輝度等である。
【0133】
以下この相違点を中心として説明する。
【0134】
<具体的作動>
第3監視システムのモデル生成手段232は、
図5に示した処理フローに代えて、
図14に示した処理フローを実行する。従って、モデル生成手段232は、以下に述べるステップ1405乃至ステップ1430の処理を順に実行した後、ステップ1495に進んで本処理フローを終了する。
【0135】
ステップ1405:モデル生成手段232は、情報格納手段231から、互いに関連付けられた第1画像データ、被処理水データ及び処理水データのデータセットを取得する。
【0136】
ステップ1410:モデル生成手段232は、第1画像データの各第1画像を画像処理する。具体的に述べると、モデル生成手段232は、第1画像データの各第1画像をグレースケール化した後、輝度補正する。
【0137】
ステップ1415:モデル生成手段232は、第1画像データの各第1画像を二値化する。
【0138】
ステップ1420:モデル生成手段232は、二値化した第1画像データの各第1画像からフロックを抽出し、各第1画像のフロック情報を取得する。
【0139】
ステップ1425:モデル生成手段232は、各第1画像のフロック情報及び被処理水データを正規化処理する。
【0140】
ステップ1430:モデル生成手段232は、処理済み第1画像データ及び処理済みの被処理水データと、処理済みのフロック情報と、処理水データとを学習用データとして用いて、深層学習によって、第1画像(画像処理後の第1画像)と、被処理水データの各計測値(正規化処理後の各計測値)と、フロック情報(正規化処理後のフロック情報)を入力として、予測処理水濁度を出力とする学習済みモデル(第1凝集良否判定モデル)を、生成する。モデル生成手段232は、生成した第1凝集良否判定モデルを保持(記憶)する。
【0141】
第3監視システムのモデル生成手段232は、
図6に示した処理フローに代えて、
図15に示した処理フローを実行する。従って、モデル生成手段232は、以下に述べるステップ1505乃至ステップ1530の処理を順に実行した後、ステップ1595に進んで本処理フローを終了する。
【0142】
ステップ1505:モデル生成手段232は、情報格納手段231から、互いに関連付けられた第2画像データ、被処理水データ及び処理水データのデータセットを取得する。
【0143】
ステップ1510:モデル生成手段232は、第2画像データの各第2画像を画像処理する。具体的に述べると、モデル生成手段は、第2画像データの各第2画像をグレースケール化した後、輝度補正する。
【0144】
ステップ1515:モデル生成手段232は、第2画像データの各第2画像を二値化する。
【0145】
ステップ1520:モデル生成手段232は、二値化した第2画像データの各第2画像からフロックを抽出し、各第2画像のフロック情報を取得する。
【0146】
ステップ1525:モデル生成手段232は、各第2画像のフロック情報及び被処理水データを正規化処理する。
【0147】
ステップ1530:モデル生成手段232は、処理済み第2画像データ及び処理済み被処理水データと、処理済みのフロック情報と、処理水データとを学習用データとして用いて、深層学習によって、第2画像(画像処理後の第2画像)と、被処理水データの各計測値(正規化処理後の各計測値)と、フロック情報(正規化処理後のフロック情報)を入力として、予測処理水濁度を出力とする学習済みモデル(第2凝集良否判定モデル)を、生成する。モデル生成手段232は、生成した第2凝集良否判定モデルを保持(記憶)する。
【0148】
凝集良否判定手段233は、
図7の処理フローにおいて以下の点のみが相違する処理フローを実行する。なお、この処理フローは、第1監視システムと同様、第1凝集良否判定モデルが濁質の凝集状態の良否を示す情報の計算に使用するモデルに選択された場合に、凝集良否判定手段233が実行する処理フローである。
・ステップ710とステップ715との間に、以下のステップA1及びステップB1が追加される。
【0149】
ステップA1:凝集良否判定手段233は、第1画像を二値化する。
【0150】
ステップB1:凝集良否判定手段233は、二値化した第1画像からフロックを抽出し、第1画像のフロック情報を取得する。
・ステップ715に代えて、以下のステップC1が実行され、ステップ720に代えて、以下のステップD1が実行される。
【0151】
ステップC1:凝集良否判定手段233は、被処理水データ(現時刻の各計測値)及びフロック情報を正規化処理する。
【0152】
ステップD1:凝集良否判定手段233は、モデル生成手段232から第1凝集良否判定モデルを取得し、画像処理を行った第1画像、正規化処理後の被処理水データ(正規化処理後の各計測値)及びフロック情報(正規化処理後のフロック情報)を第1凝集良否判定モデルに入力し、第1凝集良否判定モデルの出力である処理水濁度の予測値(予測処理水濁度)を計算し、取得する。
【0153】
凝集良否判定手段233は、
図8の処理フローにおいて以下の点のみが相違する処理フローを実行する。
・ステップ810とステップ815との間に、以下のステップA2及びステップB2が追加される。なお、この処理フローは、第2監視システムと同様、第2凝集良否判定モデルが濁質の凝集状態の良否を示す情報の計算に使用するモデルに選択された場合に、凝集良否判定手段233が実行する処理フローである。
【0154】
ステップA2:凝集良否判定手段233は、第2画像を二値化する。
【0155】
ステップB2:凝集良否判定手段233は、二値化した第2画像からフロックを抽出し、第2画像のフロック情報を取得する。
・ステップ815に代えて、以下のステップC2が実行され、ステップ820に代えて、以下のステップD2が実行される。
【0156】
ステップC2:凝集良否判定手段233は、被処理水データ(現時刻の各計測値)及びフロック情報を正規化処理する。
【0157】
ステップD2:凝集良否判定手段233は、モデル生成手段232から第2凝集良否判定モデルを取得し、画像処理を行った第2画像、正規化処理後の被処理水データ(正規化処理後の各計測値)及びフロック情報(正規化処理後のフロック情報)を第2凝集良否判定モデルに入力し、第2凝集良否判定モデルの出力である処理水濁度の予測値(予測処理水濁度)を計算し、取得する。
【0158】
<効果>
以上説明したように、第3監視システムは、被処理水Wa1の濁質の凝集状態の良否に影響を与えるフロック情報も用いて、第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデルを生成し、生成した凝集良否判定モデル(第1凝集良否判定モデル又は第2凝集良否判定モデル)を用いて、画像に映る被処理水Wa1の濁質の凝集状態の良否を示す情報をより精度よく計算できる。
【0159】
<<第4実施形態>>
本発明の第4実施形態に係る水処理状況監視システム(以下、「第4監視システム」とも称呼される場合がある。)について説明する。第4監視システムは、以下の点のみにおいて、第1監視システムと相違する。
【0160】
第4監視システムは、第1画像データ及び第2画像データを用いて、一つの凝集良否判定モデルを生成する。
【0161】
以下この相違点を中心として説明する。
【0162】
<具体的作動>
第4監視システムのモデル生成手段232は、
図16に示した処理フローを実行する。従って、モデル生成手段232は、
図16のステップ600から処理を開始し、以下に述べるステップ1605乃至ステップ1625の処理を順に実行した後、ステップ1695に進んで本処理フローを終了する。
【0163】
ステップ1605:モデル生成手段232は、情報格納手段231から、互いに関連付けられた第1画像データ、第2画像データ、被処理水データ及び処理水データのデータセットを取得する。
【0164】
ステップ1610:モデル生成手段232は、第1画像データの各第1画像を画像処理する。具体的に述べると、モデル生成手段232は、第1画像データの各第1画像をグレースケール化した後、輝度補正する。
【0165】
ステップ1615:モデル生成手段232は、第2画像データの各第2画像を画像処理する。具体的に述べると、モデル生成手段232は、第2画像データの各第2画像をグレースケール化した後、輝度補正する。
【0166】
ステップ1620:モデル生成手段232は、被処理水データ(被処理水データの各計測値)を正規化処理する。
【0167】
ステップ1625:モデル生成手段232は、処理済み第1画像データ、処理済み第2画像データ、処理済み被処理水データ及び処理水データを学習用データとして用いて、深層学習によって、第1画像(画像処理後の第1画像)及び第2画像(画像処理後の第2画像データ)と、被処理水データの各計測値(正規化処理後の各計測値)と、を入力として、予測処理水濁度を出力とする学習済みモデル(凝集良否判定モデル)を、生成する。モデル生成手段232は、生成した凝集良否判定モデルを保持(記憶)する。
【0168】
図17は凝集良否判定手段233が実行する処理フローを示すフローチャートである。凝集良否判定手段233は、
図17に示すフローチャートを実行する。従って、凝集良否判定手段233は、
図17のステップ1700から処理を開始して、以下に述べるステップ1705乃至ステップ1720の処理を順に実行する。その後、凝集良否判定手段233は、ステップ1795に進んで本処理フローを一旦終了する。
【0169】
ステップ1705:凝集良否判定手段233は、現時刻の第1画像を第1撮像装置220aから取得し、現時刻の第2画像を第2撮像装置220bから取得し、被処理水データ(現時刻の各計測値)を第1水質計210aから取得する。
【0170】
ステップ1710:凝集良否判定手段233は、第1画像を画像処理する。具体的に述べると、凝集良否判定手段233は、第1画像をグレースケール化した後、輝度補正する。
【0171】
ステップ1715:凝集良否判定手段233は、第2画像を画像処理する。具体的に述べると、凝集良否判定手段233は、第2画像をグレースケール化した後、輝度補正する。
【0172】
ステップ1720:凝集良否判定手段233は、被処理水データ(現時刻の各計測値)を正規化処理する。
【0173】
ステップ1725:凝集良否判定手段233は、モデル生成手段232から凝集良否判定モデルを取得し、画像処理を行った第1画像及び正規化処理した被処理水データを第1凝集良否判定モデルに入力し、第1凝集良否判定モデルの出力である処理水濁度の予測値(予測処理水濁度)を計算し、取得する。
【0174】
<効果>
以上説明したように、第4監視システムは、凝集核やフロックが形成される様子(経時変化)が反映される、それぞれ別の場所に存在する被処理水Wa1を撮像した第1画像データ及び第2画像データを用いて、一つの凝集良否判定モデルを生成し、生成した凝集良否判定モデルを用いて、濁質の凝集状態の良否を示す情報を計算する。これにより、第4監視システムは、画像に映る被処理水Wa1の濁質の凝集状態の良否を示す情報を精度よく計算できる。更に、第4監視システムは、第1監視システムよりもモデル選択に関するパラメータが削減できてシステムの簡素化が可能となる。
【0175】
以上説明した、上記各実施形態及び第1変形例によれば、例えば、熟練者が存在しない途上国において、適切に水処理を行うことを可能とすることで、その地に暮らす人の衛生向上を図ることができ、適切な薬剤の仕様による環境保全を通じて、サステナブルな社会の実現にも寄与することができる。
【0176】
<<他の変形例>>
本発明は上記各実施形態及び第1変形例に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。上記各実施形態及び第1変形例は、本発明の範囲内において、互いに組み合わせることができる。
【0177】
例えば、第1実施形態及び第4実施形態を組み合わせてもよい。この場合、例えば、モデル生成手段232は、複数の凝集良否判定モデル(本例において、第1凝集良否判定モデル、第2凝集良否判定モデル及び凝集良否モデルの3つ)を生成する。凝集良否判定手段233は、モデル生成手段232によって生成された複数の凝集良否判定モデル(本例において、第1凝集良否判定モデル、第2凝集良否判定モデル及び凝集良否判定モデル)の何れかを用いて、被処理水Wa1の濁質の凝集状態を示す画像を含む入力データから被処理水Wa1の濁質の凝集状態の良否を示す情報を計算する。
【0178】
例えば、上記各実施形態及び第1変形例において、モデル生成手段232は、被処理水Wa1中の濁質の凝集良否の判定に関するモデルとして、深層学習によって、学習済みモデルを生成したが、凝集良否の判定に関するモデルは凝集良否を示すことが可能ならば、経験式、統計的モデル等を生成してもよい。
【0179】
例えば、上記各実施形態及び第1変形例において、被処理水Wa1の画像の撮像条件は、被処理水Wa1中の濁質の凝集状態を撮像できれば特に限定されない。ただし、光源が日光のみで昼夜で明るさが大きく異なる場合、撮像装置220の撮像場所を照らす光源が設置された方が好ましい。更に、明るさの変化を記録し、被処理水Wa1の画像の前処理(輝度補正)に使用することも、濁質の凝集状態の良否の判定精度を向上することになるため、撮像場所の明るさの変化を記録するための照度計等を設置してもよい。
【0180】
上記1実施形態乃至上記第3実施形態、及び、第1変形例のそれぞれにおいて、例えば、被処理水Wa1の水質が比較的変動しにくく、一定である場合は、あらかじめ浄水場内で、濁質の凝集状態に差が生じやすい処理時間(あるいは場所)を調査しておき、濁質の凝集状態に差が生じやすい被処理水Wa1を撮像可能な場所(第2実施形態の場合、採水可能な場所)に、撮像装置220(第2実施形態の場合、採水ポンプ)を設置することが好ましい。
【0181】
上記第1実施形態乃至第3実施形態、及び、第1変形例のそれぞれにおいて、例えば、被処理水Wa1の水質が変動する場合、被処理水Wa1の水質に応じて(被処理水データに基づいて)、情報処理装置230が凝集良否の判定に使用する画像(入力データ)及び凝集良否判定モデルを適宜、手動又は自動で切り替えてもよい。
【0182】
この場合において、例えば、情報処理装置230が、被処理水データに基づいて、被処理水データがフロックの成長を促進させる条件に該当するか否かを判定し、判定結果に基づいて、被処理水データがフロックの成長を促進させる条件に該当する場合、被処理水Wa1がフロックの成長を促進させる条件に該当しない場合に比べて、上流側の場所に設置された撮像装置によって撮像された画像データを用いて生成した凝集良否判定モデルを選択し、選択した凝集良否判定モデルを用いて、被処理水Wa1の画像を含む入力データから予測処理水濁度を出力するようにしてもよい。
【0183】
例えば、被処理水Wa1の被処理水濁度が約80度の場合、被処理水データがフロックの成長を促進させる条件に該当し、上流側(例えば、緩速攪拌の処理時間0分)に相当する被処理水Wa1を撮像可能な位置に設置された撮像装置220によって撮像された画像を用いて凝集良否判定モデルを生成し、生成した凝集良否判定モデルを用いて、当該画像から予測処理水濁度を出力するようにしてもよい。
【0184】
例えば、被処理水Wa1の被処理水濁度が約35度の場合、被処理水データがフロックの成長を促進させる条件に該当せず、下流側(例えば、緩速攪拌の処理時間4分)に相当する被処理水Wa1を撮像可能な位置に設置された撮像装置220によって撮像された画像を使用し凝集良否判定モデルを生成し、生成した凝集良否判定モデルを用いて、当該画像から予測処理水濁度を出力するようにしてもよい。
【0185】
上記各実施形態及び第1変形例において、互いに異なる場所に3台以上の撮像装置220を設置し、それぞれによって撮像された画像データを用いて、複数の凝集良否判定モデルを生成してもよい。この場合において、上記各第1実施形態乃至第3実施形態及び第1変形例のように凝集良否判定モデルが2つである場合と同様に、複数の凝集良否判定モデルの中から一つの凝集良否判定モデルを選択し、選択した凝集良否判定モデルを用いて、被処理水Wa1の画像から予測処理水濁度を出力するようにしてもよい。
【0186】
上記4実施形態において、互いに異なる場所に3台以上の撮像装置220を設置し、情報処理装置230は、それぞれの撮像装置220によって撮像された画像データを用いて、一つの凝集良否判定モデルを生成してもよい。
【0187】
上記各実施形態及び第1変形例において、情報処理装置230は、凝集良否判定モデルからの出力として、濁質の凝集状態の良を示す情報及び否を示す情報の何れかを出力するようにして、2値分類を行うようにしてもよい。
【0188】
上記各実施形態及び第1変形例において、情報処理装置230は、凝集良否判定モデルから出力される予測処理水濁度と所定の処理水閾値濁度(例えば、1度)を比較することによって、濁質の凝集状態が良及び否の何れかであるか否かを判定し、判定結果を出力するようにしてもよい。
【0189】
上記各実施形態及び第1変形例において、上記情報処理装置230は、予測処理水濁度に応じて、薬剤ポンプからの凝集剤の注入量を、監視制御装置を介して、調整するようにしてもよい。例えば、情報処理装置230は、凝集状態が悪い(否である)場合、凝集剤注入量を調整することにより、凝集状態を適切にして、処理水Wa2の処理水濁度がきれいになるように調整するようにしてもよい。
【0190】
上記各実施形態及び第1変形例において、情報処理装置230は、画像データのみを用いて、凝集良否モデルを生成してもよい。
【0191】
上記各実施形態及び第1変形例は、浄水場100に適用したが、浄水場100以外の水を浄化処理する他のプラントに適用してもよい。
【0192】
上記第1実施形態において、情報処理装置230は、濁質の凝集状態の良否を示す情報の計算に使用するモデルとして、少なくとも2つ(この例において、第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデルの2つ)を選択し、少なくとも2つの凝集良否判定モデル(この例において第1凝集良否判定モデル及び第2凝集良否判定モデル)のそれぞれから出力した予測処理水濁度にあらかじめ被処理水濁度に応じて設定した重みをかけて、足し合わせることで最終的な予測処理水濁度を算出してもよい。
【0193】
上記各実施形態及び第1変形例において、情報処理装置230は、凝集良否判定手段233により判断された結果を、情報処理装置230に接続されたモニター等に出力するようにしてもよい。この場合、例えば、情報処理装置230は、警報を発報する装置に接続され、情報処理装置230は、予測処理水濁度が閾値(1度)を超えるようなら、警報装置の警報を発報させるようにしてもよい。
【0194】
撮像装置220が1台でもそれが水処理のフローに沿って移動可能(レール式、ドローン等)な場合、1台で複数個所を撮像可能となる。このとき、画像データとともに撮像場所を特定できる情報もまとめて記録することで、本発明を実現可能である。撮像場所を特定できる情報としては例えば、撮像装置220にGPS(Global Positioning System)機能も追加し、GPSの情報を取得する方法がある。
【0195】
上記各実施形態及び第1変形例において、情報処理装置230は、入力データとしてのある時刻の画像及び/又は被処理水データ(各計測値)等を、ある時間範囲の画像及び/又は被水処理水データ等に代えた凝集良否判定モデルを生成してもよい。
【0196】
上記各実施形態及び第1変形例において、被処理水を複数の処理場所に運ばず1か所で逐次的に処理する場合、1台で処理状況の推移(処理時間の異なる複数箇所)を撮像可能となる。この場合、モデル生成手段232は処理時間の異なる複数箇所ごとに凝集良否判定モデルを生成してもよい。
【符号の説明】
【0197】
100…浄水場、210a…第1水質計、210b…第2水質計、220a…第1撮像装置、220b…第2撮像装置、230…情報処理装置、231…情報格納手段、232…モデル生成手段、233…凝集良否判定手段、234…凝集良否出力手段