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特許7600060冷間圧延計画策定システム及び冷間圧延計画策定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】冷間圧延計画策定システム及び冷間圧延計画策定方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/00 20060101AFI20241209BHJP
   B21B 1/22 20060101ALI20241209BHJP
   B21B 1/28 20060101ALI20241209BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20241209BHJP
   G06Q 10/06 20230101ALI20241209BHJP
【FI】
B21B37/00 221Z
B21B1/22 J
B21B1/28
G05B19/418 Z
G06Q10/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021148892
(22)【出願日】2021-09-13
(65)【公開番号】P2023041489
(43)【公開日】2023-03-24
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】正木 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】曹 哲
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-009312(JP,A)
【文献】特開2003-345416(JP,A)
【文献】特開2014-115956(JP,A)
【文献】特開2017-211834(JP,A)
【文献】特開2000-225545(JP,A)
【文献】特開平09-201608(JP,A)
【文献】特開2006-293549(JP,A)
【文献】特開2006-338110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル材から連続冷間圧延工程によって製造する鋼板製品の仕様を示す情報を複数含む鋼板仕様データを取得し、前記鋼板仕様データに基づいて、前記鋼板仕様データに含まれる複数の前記鋼板製品の仕様に対応する複数の前記コイル材を、連続冷間圧延工程によって処理する順序を策定する情報処理装置と、表示装置及び入力装置が接続された端末とを含む冷間圧延計画策定システムであって、
前記情報処理装置は、
制約条件を生成するための特定の情報が入力可能な制約条件テンプレートであって、前記制約条件テンプレートに基づいて生成される前記制約条件の固有のパラメータである固有パラメータが、前記特定の情報として、入力可能に構成された前記制約条件テンプレートが複数記憶された記憶部を含み、
前記記憶部には、複数の前記制約条件テンプレートの所定の組合せが推奨制約条件組合せテンプレートとして記憶され、
前記制約条件テンプレートは、前記制約条件テンプレートに基づいて生成される前記制約条件を計算条件に含めるか否かを示すフラグ情報が、更に入力可能に構成され、
前記制約条件テンプレートは、前記制約条件テンプレートに基づいて生成される前記制約条件に対応し、前記制約条件を遵守する優先度が、更に入力可能に構成され、
前記情報処理装置は、前記推奨制約条件組合せテンプレートを前記端末に提供し、
前記端末は、前記推奨制約条件組合せテンプレートに情報を入力するための制約条件設定画面を前記表示装置に表示し、前記入力装置を介した前記制約条件設定画面の操作に基づいて、前記特定の情報、前記フラグ情報及び前記優先度を前記制約条件テンプレートに入力し、
前記情報処理装置は、前記特定の情報が入力された複数の前記制約条件テンプレートに基づいて、複数の前記制約条件を生成し、複数の前記制約条件を計算条件に含め、前記計算条件下で、最適化計算を実行することにより、前記鋼板仕様データに含まれる複数の前記鋼板製品の仕様に対応する複数の前記コイル材を、前記連続冷間圧延工程によって処理する順序を策定し、
前記フラグ情報が入力された前記制約条件テンプレートに基づいて、前記制約条件テンプレートに基づいて生成される前記制約条件を、前記計算条件に含めるか否かを設定し、
前記優先度が入力された前記制約条件テンプレートに基づいて、複数の前記制約条件のそれぞれに対応する前記優先度を前記計算条件に含める、
ように構成された、
冷間圧延計画策定システム。
【請求項2】
請求項に記載の冷間圧延計画策定システムにおいて、
複数の前記制約条件は、前記連続冷間圧延工程の溶接工程に関する前記制約条件である溶接工程制約条件を含む、
冷間圧延計画策定システム。
【請求項3】
請求項に記載の冷間圧延計画策定システムにおいて、
前記溶接工程制約条件は、先行の前記コイル材と後行の前記コイル材との厚さの差について前記制約条件である厚さ制約条件を含み、
前記厚さ制約条件に対応する前記制約条件テンプレートは、前記固有パラメータとして、先行の前記コイル材と後行の前記コイル材との前記厚さの差に対応するパラメータが入力されるように構成された、
冷間圧延計画策定システム。
【請求項4】
請求項に記載の冷間圧延計画策定システムにおいて、
前記溶接工程制約条件は、先行の前記コイル材と後行の前記コイル材との幅の差についての前記制約条件である幅制約条件を含み、
前記幅制約条件に対応する前記制約条件テンプレートは、前記固有パラメータとして、先行の前記コイル材と後行の前記コイル材との前記幅の差に対応するパラメータが入力されるように構成された、
冷間圧延計画策定システム。
【請求項5】
請求項に記載の冷間圧延計画策定システムにおいて、
前記溶接工程制約条件は、先行の前記コイル材の鋼種と後行の前記コイル材の鋼種との組合せの推奨度に関する前記制約条件である推奨度制約条件であり、
前記推奨度制約条件に対応する前記制約条件テンプレートは、前記固有パラメータとして、先行の前記コイル材の鋼種と後行の前記コイル材の鋼種との組合せの前記推奨度が入力されるように構成された、
冷間圧延計画策定システム。
【請求項6】
請求項1に記載の冷間圧延計画策定システムにおいて、
前記情報処理装置は、
製造実行システムから生産管理情報を取得し、前記生産管理情報から前記鋼板仕様データを取得する、
ように構成された、
冷間圧延計画策定システム。
【請求項7】
コイル材から連続冷間圧延工程によって製造する鋼板製品の仕様を示す情報を複数含む鋼板仕様データを取得し、前記鋼板仕様データに基づいて、前記鋼板仕様データに含まれる複数の前記鋼板製品の仕様に対応する複数の前記コイル材を、連続冷間圧延工程によって処理する順序を策定する情報処理装置と、表示装置及び入力装置が接続された端末とを用いた冷間圧延計画策定方法であって、
前記情報処理装置は、
制約条件を生成するための特定の情報が入力される制約条件テンプレートであって、前記制約条件テンプレートに基づいて生成される前記制約条件の固有のパラメータである固有パラメータが、前記特定の情報として、入力可能に構成された前記制約条件テンプレートが複数記憶された記憶部を含み、
前記記憶部には、複数の前記制約条件テンプレートの所定の組合せが推奨制約条件組合せテンプレートとして記憶され、
前記制約条件テンプレートは、前記制約条件テンプレートに基づいて生成される前記制約条件を計算条件に含めるか否かを示すフラグ情報が、更に入力可能に構成され、
前記制約条件テンプレートは、前記制約条件テンプレートに基づいて生成される前記制約条件に対応し、前記制約条件を遵守する優先度が、更に入力可能に構成され、
前記情報処理装置によって、前記推奨制約条件組合せテンプレートを前記端末に提供し、
前記端末によって、前記推奨制約条件組合せテンプレートに情報を入力するための制約条件設定画面を前記表示装置に表示し、前記入力装置を介した前記制約条件設定画面の操作に基づいて、前記特定の情報、前記フラグ情報及び前記優先度を前記制約条件テンプレートに入力し、
前記情報処理装置によって、
前記特定の情報が入力された複数の前記制約条件テンプレートに基づいて、複数の前記制約条件を生成し、複数の前記制約条件を計算条件に含め、前記計算条件下で、最適化計算を実行することにより、前記鋼板仕様データに含まれる複数の前記鋼板製品の仕様に対応する複数の前記コイル材を、前記連続冷間圧延工程によって処理する順序を策定し、
前記フラグ情報が入力された前記制約条件テンプレートに基づいて、前記制約条件テンプレートに基づいて生成される前記制約条件を、前記計算条件に含めるか否かを設定し、
前記優先度が入力された前記制約条件テンプレートに基づいて、複数の前記制約条件のそれぞれに対応する前記優先度を前記計算条件に含める、
冷間圧延計画策定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間圧延計画策定システム及び冷間圧延計画策定方法に関する。詳しくは、本発明は、熱間圧延で生成された鋼板を更に薄く加工する連続冷間圧延工程への鋼板の投入順序の計画を策定する冷間圧延計画策定システム及び冷間圧延計画策定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業界では、PL-TCM(Pickling Line - Tandem Cold Mill:連続酸洗タンデム冷間圧延機)が使用されている。PL-TCMは、複数のコイル材から払い出された帯鋼(鋼板)に対して、溶接処理、酸洗処理、トリミング処理及び圧延処理を順次行う。
【0003】
溶接処理では、処理順が前後する先行コイル材と後行コイル材とが、溶接によって、先行コイル材の払い出しが終了する毎に接合される。従って、PL-TCMは、24時間連続稼働で、複数のコイル材のそれぞれから様々な鋼種の圧延製品を効率的に生産し続けることができる。
【0004】
しかし、PL-TCMでは、先行コイル材の幅、厚さ等と後行コイル材の幅、厚さ等との組合せが不適切な場合には、圧延などに起因して、PL-TCM内で帯鋼の破断が発生する場合がある。この場合、破断した材料をPL-TCMから取り除き、PL-TCMが稼働可能な状態になるまで生産ラインが止まってしまうので、生産効率が低下してしまう可能性がある。
【0005】
従って、複数のコイル材の圧延の順番(即ち、PL-TCMへの投入の順番)は、ユーザの経験に基づく制約条件の下、制約条件を満たすように、計画を立てた方が好ましい。ユーザの経験に基づく制約条件の例としては、特許文献1に開示の例などが知られている。生産計画を策定可能な技術として、特許文献2に開示の例(「MLCP」とも称呼されている。)などが知られている。この特許文献2の開示例は、複数の制約条件を考慮した熟練者の生産計画を再現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3248476号公報
【文献】国際公開第2018/220885号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PL-TCMを使用した連続冷間圧延では、上述した生産設備の特性を踏まえて、いつ(どの順番で)どの製品を生産するかを決定する生産計画を日々策定している。しかし、計画策定作業には、様々な考慮が必要となるので、PL-TCMを操作する現場で最終的な調整を行っており、煩雑な運用となっている。更に、煩雑な運用に起因し、考慮不足の生産順による無駄なトリマー調整、ロール交換及び渡り材使用が発生したり、緊急追加オーダを現場で対応することで無理な溶接になり板破断トラブルが発生したりすることもある。そのため、計画の質を落とさずに短時間で修正するには、熟練者の経験に基づく判断が求められる。
【0008】
ところで、特許文献2に開示の例も含め、計画業務のシステム化を行う際には、制約条件を明確化しシステム要件として整理する必要がある。しかし、システム構築の都度、一から要件(計画業務のシステム化(計画の策定)に必要な条件)を、制約条件としてシステムに組み込んでいくと、システムの導入までに長い時間がかかってしまう。更に、熟練者から要件のヒアリングを行う場合、ノウハウが明文化されていない場合が多く、その場合、より時間がかかってしまう傾向がある。更に、ユーザが異なる毎に、ノウハウも違ってくるので、制約条件は一律に決まるものでなく、計画の策定に必要な制約条件をシステムに組み込むために、それぞれのユーザにヒアリングしなければならず非常に手間がかかってしまう。
【0009】
本発明は上述した課題を対処するためになされた。即ち、本発明の目的の一つは、冷間圧延計画の策定に必要な制約条件の設定を簡単且つ短時間で行うことができる冷間圧延計画策定システム及び冷間圧延計画策定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の冷間圧延計画策定システムは、コイル材から連続冷間圧延工程によって製造する鋼板製品の仕様を示す情報を複数含む鋼板仕様データを取得し、前記鋼板仕様データに基づいて、前記鋼板仕様データに含まれる複数の前記鋼板製品の仕様に対応する複数の前記コイル材を、連続冷間圧延工程によって処理する順序を策定する情報処理装置を含む冷間圧延計画策定システムであって、前記情報処理装置は、制約条件を生成するための特定の情報が入力される制約条件テンプレートが複数記憶された記憶部を含み、前記特定の情報が入力された複数の前記制約条件テンプレートに基づいて、複数の前記制約条件を生成し、複数の前記制約条件を計算条件に含め、前記計算条件下で、最適化計算を実行することにより、前記鋼板仕様データに含まれる複数の前記鋼板製品の仕様に対応する複数の前記コイル材を、前記連続冷間圧延工程によって処理する順序を策定する、ように構成されている。
【0011】
本発明の冷間圧延計画策定方法は、コイル材から連続冷間圧延工程によって製造する鋼板製品の仕様を示す情報を複数含む鋼板仕様データを取得し、前記鋼板仕様データに基づいて、前記鋼板仕様データに含まれる複数の前記鋼板製品の仕様に対応する複数の前記コイル材を、連続冷間圧延工程によって処理する順序を策定する情報処理装置を用いた冷間圧延計画策定方法であって、前記情報処理装置は、制約条件を生成するための特定の情報が入力される制約条件テンプレートが複数記憶された記憶部を含み、前記情報処理装置によって、前記特定の情報が入力された複数の前記制約条件テンプレートに基づいて、複数の前記制約条件を生成し、複数の前記制約条件を計算条件に含め、前記計算条件下で、最適化計算を実行することにより、前記鋼板仕様データに含まれる複数の前記鋼板製品の仕様に対応する複数の前記コイル材を、前記連続冷間圧延工程によって処理する順序を策定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、冷間圧延計画の策定に必要な制約条件の設定を簡単且つ短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の実施形態に係る冷間圧延計画策定システムが対象とする冷間圧延工程を説明するための図である。
図2図2は本発明の実施形態に係る冷間圧延計画策定システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図3図3は冷間圧延計画策定システムのハードウェア構成の一例を示す概略構成図である。
図4図4は冷間圧延計画策定システムの連続冷間圧延計画の策定処理の手順を示すシーケンス図である。
図5図5は鋼板仕様データを説明するための図である。
図6図6は制約条件設定画面の一例を示す図である。
図7図7は鋼種組合せ設定画面の一例を示す図である。
図8図8は制約条件テンプレートを用いて作成したデータの一例を説明するための図である。
図9図9は制約条件テンプレートを用いて作成したデータの一例を説明するための図である。
図10A図10Aは投入順序を策定する前の、対象の複数のコイル材の投入順序に対応する対象の複数のコイル材の板幅、板厚及び鋼種の並びを示す図である。
図10B図10Bは、対象の複数のコイル材の投入順序を手作業で策定した場合の、対象の複数のコイル材の投入順序に対応する対象の複数のコイル材の板幅、板厚及び鋼種を示す図である。
図10C図10Cは対象の複数のコイル材の投入順序を計画最適化演算部204によって策定した場合の、対象の複数のコイル材の投入順序に対応する対象の複数のコイル材の板幅、板厚及び鋼種を示す。
図11図11はテーブルで表された演算結果データの一例を説明するための図である。
図12図12は演算結果データを画像で表示した一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る冷間圧延計画策定システム200(図2を参照。)について図面を参照して説明する。以下、冷間圧延計画策定システム200は、「計画策定システム200」と称呼される。なお、以下の説明では、「テーブル」、「レコード」等の表現にて各種情報を説明することがあるが、各種情報は、これら以外のデータ構造で表現されてもよい。
【0015】
<連続冷間圧延工程>
まず本発明の理解を容易にするため、計画策定システム200が対象とする連続冷間圧延工程(より厳密には、連続酸洗冷間圧延工程)について簡単に説明する。図1は本発明の実施形態に係る計画策定システム200が対象とする連続冷間圧延工程を説明するための図である。
【0016】
連続冷間圧延工程は、処理順が前後する先行コイル材と後行コイル材とを、先行コイル材の払い出しが終了する毎に、溶接によって接合することで、複数のコイル材を連続的に圧延し続けることできる。従って、連続冷間圧延工程は、様々な鋼種の鋼板製品の連続生産を行うことができる。連続冷間圧延工程は、24時間連続稼働することができるので、鋼板製品の生産性の向上が可能となる。連続冷間圧延工程は、公知であるので、以下、簡単に説明する。
【0017】
連続冷間圧延工程では、まず、コイル材(コイル状に巻回された帯鋼)が、図示しないアンコイラにより払い出され、PL-TCM(連続酸洗タンデム冷間圧延機)100に投入される。PL-TCM100において、以下に述べる溶接工程101、酸洗工程102、トリミング工程103及び圧延工程104が順に実行される。
【0018】
溶接工程101は、先行コイル材の払い出しが終了する毎に、図示しない溶接機によって、後行コイル材の巻き始端を、先行コイル材の巻き終端に溶接することにより接合する。
【0019】
酸洗工程102は、コイル材から払い出された帯鋼(鋼板)を図示しない酸洗設備によって、酸洗することにより、帯鋼の表面の酸化被膜や錆を除去する。トリミング工程103は、図示しないトリマーによって、帯鋼をトリミングすることにより、帯鋼の形状を整える。圧延工程104は、図示しないタンデム圧延機によって、帯鋼を目標の厚さに圧延する。その後、目標の厚さに圧延された帯鋼が、図示しない巻取り機によって巻き取られる。以上により、複数のコイル材から様々な目標の厚さに圧延された様々な鋼種の鋼板製品が連続的に生産される。
【0020】
<構成>
図2は計画策定システム200の構成の一例を示す機能ブロック図である。計画策定システム200は、冷間圧延計画を策定するためのシステムである。冷間圧延計画は、複数の鋼板製品(圧延製品)に関して、いつ(どの順番で)どの製品を生産するかを決定する生産計画のことをいう。換言すると、冷間圧延計画は、鋼板製品の材料となる複数のコイル材をPL-TCMへ投入する順の計画を策定することをいう。計画策定システム200は、鋼板製品の材料となる複数のコイル材をPL-TCM100へ投入する順番の計画を自動的に策定する。
【0021】
計画策定システム200は、対象入力部201と、制約条件保存部202と、制約条件設定入力部203と、計画最適化演算部204と、計画出力部205と、を含む。
【0022】
対象入力部201は、策定に必要な対象となる鋼板製品の仕様を表す鋼板仕様データを取得し、取得した鋼板仕様データを計画最適化演算部204に入力する。例えば、対象入力部201は、鋼板製品の仕様に対応するCSV形式のファイルを取り込むことにより、鋼板仕様データを取得する。なお、対象入力部201は、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)などの他システムからファイル形式以外のインタフェースで、鋼板仕様データを取り込むことにより、鋼板仕様データを取得してもよい。なお、鋼板仕様データについては、後に詳述する。
【0023】
制約条件保存部202は、複数の制約条件テンプレートを保持(記憶、保存)している。制約条件保存部202は、便宜上、「記憶部」とも称呼される。制約条件テンプレートは、冷間圧延計画を策定するときの、最適化計算に使用する制約条件を生成するために使用される。
【0024】
更に、制約条件保存部202は、複数の制約条件テンプレートの中から推奨される複数の所定の制約条件テンプレートの組み合わせを、推奨制約条件組合せテンプレートとして、1又は複数保持(記憶、保存)している。
【0025】
制約条件テンプレートは、情報が入力(追加、変更、削除等)されるように構成される。制約条件テンプレートは、対応する制約条件を識別するための識別情報(例えば、名称)を含む。なお、識別情報は名称以外の識別情報(例えば、識別番号)であってもよい。制約条件テンプレートは、対応する制約条件の固有パラメータが入力されるように構成される。制約条件テンプレートは、対応する制約条件を、最適化計算を実行するときの計算条件に含めるか否かを示す情報が入力されるように構成される。制約条件テンプレートは、最適化計算のときに対応する制約条件が遵守される優先度が入力されるように構成される。
【0026】
制約条件設定入力部203は、制約条件テンプレートに対して、情報を入力(追加、変更等)する。例えば、制約条件設定入力部203は、制約条件テンプレートの固有パラメータに対応する情報を制約条件テンプレートに追加する。例えば、制約条件設定入力部203は、対応する制約条件を、最適化計算を実行するときの計算条件に含めるか否かを示す情報(例えば、設定フラグ)を制約条件テンプレートに入力する(設定する。)。
【0027】
設定フラグは、その値が「1」である場合、制約条件テンプレートに対応する制約条件を、最適化計算を実行するときの計算条件に含めることを示す。設定フラグは、その値が「0」である場合、制約条件テンプレートに対応する制約条件を、最適化計算を実行するときの計算条件に含めないことを示す。なお、以下、制約条件テンプレートに対応する制約条件を、最適化計算を実行するときの計算条件に含めることは、「制約条件(設定フラグ)がONである(に設定される。)。」とも称呼される。なお、制約条件テンプレートに対応する制約条件を、最適化計算を実行するときの計算条件に含めないことは、「制約条件(設定フラグ)がOFFである(に設定される。)。」とも称呼される。
【0028】
例えば、制約条件設定入力部203は、最適化計算のときに対応する制約条件が遵守される優先度を示す情報(例えば、優先度が大きくなる程大きくなる数値(例えば、0から1までのうちの任意の数値))を制約条件テンプレートに入力する(設定する。)。
【0029】
計画最適化演算部204は、情報が入力された制約条件テンプレートに基づいて、制約条件を含む計算条件を生成し、複数のコイル材のPL-TCMに対する投入順序を策定する。
【0030】
例えば、計画最適化演算部204は、固有パラメータが入力された制約条件テンプレートに基づいて制約条件を生成し、設定フラグがONである制約条件及びその制約条件に対応する優先度を計算条件に含める。更に、計画最適化演算部204は、最適化計算に必要な評価指標等の情報を計算条件に含めることにより、計算条件を設定する。計画最適化演算部204は、設定した計算条件下で、最適化計算を行うことにより、鋼板仕様データに含まれる複数の鋼板の仕様に対応する複数のコイル材のPL-TCMへの投入順序を演算する。
【0031】
なお、計画最適化演算部204は、これらの演算を行うための処理を実行するために必要なプログラムを有している。計画最適化演算部204は、プログラムを実行することにより、鋼板仕様データ、情報が入力された制約条件テンプレート等の情報に基づいて設定した計算条件下で、対象の複数のコイル材の処理順序を最適化する最適化問題を解くことによって、対象の複数のコイル材を、PL-TCMへ投入する順番を演算する。
【0032】
計画出力部205は、計画最適化演算部204によって演算された結果を出力する。
【0033】
計画策定システム200は、例えばコンピュータ(情報処理装置)等で構成可能である。なお、計画策定システム200は、必ずしも一つのハードウェアで構成される必要はなく、複数のハードウェアで構成されてもよい。その場合、例えば、複数のハードウェアのそれぞれは、ネットワークを介して互いにデータを送受信できるようになっていてもよい。例えば、複数のハードウェア間でファイル交換を行うことにより、複数のハードウェアのそれぞれは、ネットワークを介して互いにデータを送受信できるようになっていてもよい。複数のハードウェア間のデータの送受信(通信)には、第5世代移動通信システム(5G(5th Generation))が使用されてもよい。
【0034】
図3は計画策定システム200のハードウェア構成の一例を示す概略構成図である。図3に示すように、計画策定システム200は、サーバ装置210と、端末220とを含む。サーバ装置210と端末220とは、ネットワークNW1を介して接続されている。
【0035】
サーバ装置210は、CPU211、ROM212、RAM213、データの読み出し及び書き出し可能な不揮発性の記憶装置(HDD)214、ネットワークインタフェース215及び入出力インタフェース216等を含む。これらは、バス217を介して互いに通信可能に接続されている。サーバ装置210は、便宜上、「情報処理装置」とも称呼される。
【0036】
CPU211は、ROM212及び/又はHDD214に格納された図示しない各種プログラムをRAM213にロードし、RAM213にロードされたプログラムを実行することによって、各種機能を実現する。RAM213には、上述したようにCPU211が実行する各種プログラムがロードされ、CPU211が各種プログラムを実行する際に使用するデータが一時的に記憶される。ROM212及び/又はHDD214は不揮発性の記憶媒体であり、ROM212及び/又はHDD214には各種プログラムが記憶されている。ネットワークインタフェース215は、計画策定システム200がネットワークNW1に接続されるためのインタフェースである。入出力インタフェース216は、キーボード及びディスプレイ等に接続されるためのインタフェースである。
【0037】
端末220は、CPU221、ROM222、RAM223、データの読み出し及び書き出し可能な不揮発性の記憶装置(HDD)224、ネットワークインタフェース225及び入出力インタフェース226等を含む。これらは、バス227を介して互いに通信可能に接続されている。更に、端末220には、表示装置230及び入力装置240が接続されている。端末220は、表示装置230及び入力装置240を含んでいてもよい。
【0038】
CPU221は、ROM222及び/又はHDD224に格納された図示しない各種プログラムをRAM223にロードし、RAM223にロードされたプログラムを実行することによって、各種機能を実現する。RAM223には、上述したようにCPU221が実行する各種プログラムがロードされ、CPU221が各種プログラムを実行する際に使用するデータが一時的に記憶される。ROM222及び/又はHDD224は不揮発性の記憶媒体であり、ROM222及び/又はHDD224には各種プログラムが記憶されている。ネットワークインタフェース225は、計画策定システム200がネットワークNW1に接続されるためのインタフェースである。入出力インタフェース226は、表示装置230及び入力装置240等に接続されるためのインタフェースである。
【0039】
対象入力部201は、サーバ装置210のCPU211で実行されるROM212及び/又はHDD214に格納された各種プログラム、並びに、入出力インタフェース216及び/又はネットワークインタフェース215で構成される。制約条件保存部202は、サーバ装置210のHDD214で構成される。
【0040】
例えば、制約条件設定入力部203は、端末220のCPU221で実行されるROM222及び/又はHDD224に格納された各種プログラム、並びに、入出力インタフェース226及び/又はネットワークインタフェース225、入出力インタフェース226に接続された表示装置230及び入力装置240で構成される。
【0041】
例えば、計画最適化演算部204は、サーバ装置210のCPU211で実行されるROM212及び/又はHDD214に格納された各種プログラムで構成される。
【0042】
例えば、計画出力部205は、端末のCPU211で実行されるROM212及び/又はHDD214に格納された各種プログラム、並びに、入出力インタフェース216及び/又はネットワークインタフェース215、入出力インタフェース216に接続された表示装置230で構成される。
【0043】
<概要>
計画業務のシステム化を行う際には、制約条件を明確化しシステム要件として整理する必要がある。しかし、システム構築の都度、一から要件を制約条件としてシステムに組み込んでいくと、システムの導入までに長期間を要する。熟練者から要件のヒアリングを行う場合ノウハウが明文化されていない場合が多く、より時間がかかる傾向がある。
【0044】
中でも、連続冷間圧延計画を自動的に策定するシステムを構築する場合、各工程において、以下に述べる点を考慮する必要があり、制約条件を設定するのに多大な時間及びコストがかかってしまう。
【0045】
即ち、冷間圧延は、熱間圧延と異なり入力鋼板(即ち、コイル材から払い出された帯鋼(鋼板))を溶接してつなげたものを処理することが特徴的である。そのため、熱間圧延にも共通的な圧延工程104への鋼板の入力順序において、鋼板の幅や厚さについて考慮する必要があるだけでなく、冷間圧延では、溶接工程101についても考慮する必要がある。
【0046】
溶接工程101では連続して入力される鋼板を溶接するが、入力する鋼板の厚さ、幅、鋼種は必ずしも同じではない。溶接箇所は他の箇所と比べて強度が低いため、溶接する2つの鋼板の厚さ及び幅の少なくとも一つの差が、ある一定の値を超えると破断の可能性が高くなるため、適切に溶接するためには連続する鋼板の厚さ、幅及び鋼種の差異を考慮する必要がある。更に、鋼種に関して、溶接して問題ない鋼種の組合せが設備によって決まっている。更に、冷間圧延工程への鋼板の入力順序は、圧延工程の制約条件だけでなく上述の溶接工程の制約条件も考慮して計画する必要がある。同じパラメータ(例えば、板厚差等)であっても圧延工程よりも溶接工程の制約条件の方が厳しい場合があり、その際は溶接工程の制約条件に基づき最適化計算する必要がある。溶接工程101に限らず、酸洗工程102やトリミング工程103においても、それぞれ別の制約条件を設定する必要がある場合も生じ得る。
【0047】
このように、連続冷間圧延計画を自動的に策定するシステムを構築する場合、多数の要素を考慮して、制約条件を設定しなければならないので、適切な制約条件を設定することは容易ではない。更に、連続冷間圧延計画を自動的に策定するシステムを構築する場合、適切な制約条件を設定するのに多大な時間及びコストがかかってしまう。
【0048】
これに対して、計画策定システム200は、対象入力部201が取得した鋼板仕様データと、制約条件とに基づいて、制約条件付きの最適化計算を行うことにより、鋼板仕様データに含まれる複数の鋼板仕様に対応する複数のコイル材の冷間圧延工程への投入順序(圧延順序)を自動的に策定する。このときの制約条件を簡単且つ短時間で生成するために、計画策定システム200は、複数の制約条件テンプレートを保持(記憶、保存)している。
【0049】
例えば、計画策定システム200は、制約条件テンプレートをユーザが使用する端末220に提供する。ユーザは、端末220を介して、制約条件テンプレートに情報を入力することにより、簡単に適切な制約条件を生成することができる。更に、ユーザは、制約条件テンプレートを用いて生成された制約条件を最適化計算に使用するか否かを、端末220を介して、設定することができる。更に、ユーザは、制約条件テンプレートを用いて生成された制約条件を遵守する優先度を、端末220を介して、設定することができる。これにより、計画策定システム200は、適切な制約条件を短時間で簡単に設定(生成する)ことができる。よって、計画策定システム200は、適切な制約条件(適切な制約条件を含む計算条件)を設定するのに多大な時間及びコストがかかってしまう可能性を低下できる。
【0050】
<具体的作動>
以下、計画策定システム200の具体的作動について説明する。図4は、計画策定システム200の冷間圧延計画の策定処理の手順の一例を示すシーケンス図である。図4に示すように、計画策定システム200は、以下のS301乃至S310の処理を順に行うことにより、冷間圧延計画の策定処理を実行する。
【0051】
S301:対象入力部201は、例えば、図5に示す鋼板仕様データに対応するCSV形式のファイルを取り込むことにより、鋼板仕様データを取得する。図5において、鋼板仕様データは、テーブルTB1で表されている。
【0052】
テーブルTB1は、情報(値)を格納する列(カラム)として、No.501、入力鋼板長502、入力鋼板幅503、入力鋼板厚504、出力目標鋼板幅505、出力目標鋼板厚506、鋼種507及び納期508等を含む。
【0053】
テーブルTB1には、1つの鋼板製品の仕様の各列に対応する情報が互いに対応付けられて一つの行単位の情報(レコード)として格納されている。No.501には、各鋼板製品の仕様に割り当てられる識別番号であり、番号が「1」から順に割り当てられる。入力鋼板長502には、鋼板製品の製造に使用されるコイル材(入力鋼板)の板長が格納されている。入力鋼板幅503には、鋼板製品の製造に使用されるコイル材の板幅(幅)が格納されている。入力鋼板厚504には、鋼板製品の製造に使用されるコイル材の板厚(厚さ)が格納されている。出力目標鋼板幅505には、鋼板製品の板幅(圧延後の鋼板製品の板幅の目標値)が格納されている。出力目標鋼板厚506には、鋼板製品の板厚(圧延後の鋼板製品の板厚の目標値)が格納されている。鋼種507には、コイル材の鋼種を示す鋼種識別情報が格納されている。納期508には、鋼板製品の納期が格納されている。
【0054】
S302:対象入力部201は、鋼板仕様データを計画最適化演算部204に送信する。
【0055】
S303:計画最適化演算部204は、鋼板仕様データを受信する。計画最適化演算部204は、最適化計算で使用する制約条件を含む計算条件を設定するために、情報が入力された制約条件テンプレート(情報が入力された状態の制約条件テンプレート)を制約条件設定入力部203に要求する。
【0056】
S304:制約条件設定入力部203は、制約条件保存部202に、鋼板仕様データに対応する推奨制約条件組合せテンプレートを要求する。なお、制約条件設定入力部203は、ユーザの操作に基づいて、複数の制約条件テンプレートを選択し、選択した複数の制約条件テンプレートを要求するようにしてもよい。
【0057】
S305:制約条件保存部202は、鋼板仕様データに対応する推奨制約条件組合せテンプレートを特定し、特定した推奨制約条件組合せテンプレートを含む情報を制約条件設定入力部203に送信する。なお、ユーザの操作に基づいて選択した複数の制約条件テンプレートが要求された場合、制約条件保存部202は、要求された複数の制約条件テンプレートを特定し、要求された複数の制約条件テンプレートを含み、後述の制約条件設定画面600を表示するために必要な情報を、制約条件設定入力部203に送信する。
【0058】
S306:制約条件設定入力部203は、推奨制約条件組合せテンプレートを含む情報に基づいて、GUI(Graphical User Interface)を構成するGUI画面としての制約条件設定画面600を例えば表示装置230に表示する。図6は制約条件設定画面600の一例を示す。
【0059】
図6に示すように、制約条件設定画面600は、制約条件の名称が表示される第1列601と、各制約条件をON及びOFFの何れかに設定するための第1チェックボックスCB1が表示される第2列602と、優先度を0~1までの範囲内の数値によって指定するために、第1入力ボックスIB1が表示される第3列603と、各制約条件(制約条件テンプレート)に対応する固有パラメータを設定するための第2入力ボックスIB11と、鋼種組合せ設定画面ボタンBt1とが表示される第4列604と、雛形保存ボタン605と、雛形呼出ボタン606と、を含む。
【0060】
なお、ユーザは、制約条件設定入力部203を構成するマウス、キーボード等の入力装置240を介して、GUIを操作する(GUIに情報を入力する。)。制約条件設定入力部203は、GUIに入力される情報に基づいて、制約条件テンプレートに情報を入力する。
【0061】
第2列602に表示される第1チェックボックスCB1は、対応する制約条件テンプレートに基づいて生成される制約条件をON及びOFFの何れかに設定するために、ユーザによって操作される。即ち、第1チェックボックスCB1のチェックマーク(レ点)が表示されていない状態において、ユーザが第1チェックボックスCB1を操作すると、制約条件設定入力部203は、その第1チェックボックスCB1に対応する制約条件テンプレ―トの設定フラグの値を「1」にすると共に、第1チェックボックスCB1上にチェックマーク(レ点)を表示する。
【0062】
第1チェックボックスCB1のチェックマーク(レ点)が表示されている状態において、ユーザが第1チェックボックスCB1を操作すると、制約条件設定入力部203は、その第1チェックボックスCB1に対応する制約条件テンプレートの設定フラグの値を「0」にする。)と共に、第1チェックボックスCB1上に表示されたチェックマーク(レ点)を非表示にする。
【0063】
第3列603に表示される第1入力ボックスIB1は、対応する制約条件テンプレートの最適化計算における優先度を設定するために、ユーザによって操作される。即ち、ユーザが第1入力ボックスIB1に対して0~1の範囲内の任意の数値を入力すると、制約条件設定入力部203は、第1入力ボックスIB1に対応する制約条件テンプレートから生成される制約条件の最適化計算における優先度を、第1入力ボックスIB1に入力された値に設定する。
【0064】
第4列604の2行目に表示されている第2入力ボックスIB11は、対応する制約条件テンプレートの固有パラメータである先行板(先行コイル材)と後行板(後行コイル材)との板幅差の制限値を設定するために、ユーザによって操作される。即ち、ユーザが、第2入力ボックスIB11に対して、数値を入力すると、制約条件設定入力部203は、第2入力ボックスIB11に対応する制約条件テンプレートの固有パラメータである先行板と後行板との板幅差の制限値を、第2入力ボックスIB11に入力された値にする。
【0065】
第4列604の3行目に表示される第2入力ボックスIB11は、対応する制約条件テンプレートの固有パラメータである先行板と後行板との板厚差の制限値を設定するために、ユーザによって操作される。即ち、ユーザが、第2入力ボックスIB11に対して、数値を入力すると、制約条件設定入力部203は、第2入力ボックスIB11に対応する制約条件テンプレートの固有パラメータである先行板と後行板との板厚差の制限値を、第2入力ボックスIB11に入力された値にする。
【0066】
第4列604の4行目に表示される鋼種組合せ設定画面ボタンBt1は、別のGUI画面である鋼種組合せ設定画面700(後述の図7を参照。)を表示させるため(制約条件設定画面から図7に示す鋼種組合せ設定画面700に移行させるため)に、ユーザよって操作される。即ち、ユーザが、鋼種組合せ設定画面ボタンBt1を操作すると、制約条件設定入力部203は、制約条件設定画面600に代えて、鋼種組合せ設定画面700を表示する。
【0067】
雛形保存ボタン605は、制約条件設定画面600を介して制約条件テンプレートに入力された内容を、保存するために、ユーザによって操作される。雛形保存ボタン605がユーザによって操作されると、制約条件設定入力部203は、固有パラメータ、優先度及び設定フラグが入力された状態の推奨制約条件組合せテンプレートを制約条件保存部202に保存する。雛形呼出ボタン606は、保存された内容を含む推奨制約条件組合せテンプレートを、再表示するために、ユーザによって操作される。雛形呼出ボタン606がユーザによって操作されると、制約条件設定入力部203は、保存された内容を含む推奨制約条件組合せテンプレートを制約条件保存部202から呼び出して、制約条件設定画面600を表示する。
【0068】
図7は、鋼種組合せ設定画面の一例を示す。図7に示すように、鋼種組合せ設定画面700は、鋼種識別名称を入力するための第3入力ボックスIB21が表示された第1列701と、先行板の鋼種識別番号が表示される第2列702と、鋼種識別番号1の鋼種の後行板と各鋼種識別番号の鋼種の先行板との組合せの推奨度を入力するための第4入力ボックスIB31が表示された第3列703と、鋼種識別番号2の鋼種の後行板と各鋼種識別番号の鋼種の先行板との組合せの推奨度を入力するための第5入力ボックスIB41が表示された第4列704と、鋼種識別番号3の鋼種の後行板と各鋼種識別番号の鋼種の先行板との組合せの推奨度を入力するための第6入力ボックスIB51が表示された第5列705と、鋼種識別番号4の鋼種の後行板と各鋼種識別番号の鋼種の先行板との組合せの推奨度を入力するための第7入力ボックスIB61が表示された第6列706と、戻るボタン707と、を含む。
【0069】
第1列701に表示される第3入力ボックスIB21のそれぞれは、鋼種組合せの推奨度を設定したい鋼種の識別名称(鋼種識別名称)を入力するために、ユーザによって操作される。第3列703に表示される第4入力ボックスIB31のそれぞれは、識別番号1の鋼種の後行板と各識別番号の鋼種の先行板との組合せの推奨度を入力するために、ユーザによって操作される。第4列704に表示される第5入力ボックスIB41のそれぞれは、識別番号2の鋼種の後行板と各識別番号の鋼種の先行板との組合せの推奨度を入力するために、ユーザによって操作される。第5列705に表示される4つの第6入力ボックスIB51のそれぞれは、識別番号3の鋼種の後行板と各識別番号の鋼種の先行板との組合せの推奨度を入力するために、ユーザによって操作される。第6列706に表示される4つの第7入力ボックスIB61のそれぞれは、識別番号4の鋼種の後行板と各識別番号の鋼種の先行板との組合せの推奨度を入力するために、ユーザによって操作される。戻るボタン707は、鋼種組合せ設定画面700から制約条件設定画面600に戻るために、ユーザによって操作される。
【0070】
ユーザが、第3乃至第7入力ボックスIB21乃至IB61の全てに対して、数値(推奨度)を入力すると、制約条件設定入力部203は、制約条件である先行板の鋼種と後行板の鋼種との組合せの推奨度を、第3乃至第7入力ボックスIB21乃至IB61の全てのそれぞれに対して入力された値に設定する。これにより、制約条件設定入力部203は、制約条件テンプレートの固有パラメータとして、先行板の鋼種と後行板の鋼種との組合せの推奨度を生成する。制約条件設定入力部203は、制約条件設定テンプレートに生成した先行板の鋼種と後行板の鋼種との組合せの推奨度を入力(設定)する。
【0071】
以上説明したように、制約条件設定入力部203は、GUI画面に入力された情報に基づき、制約条件テンプレートに情報を設定(入力)する。図8及び図9は、テーブルTB2で表された、情報が入力された制約条件テンプレートの一例を説明するための図である。なお、制約条件No.801の「3」に対応する情報(固有パラメータ)は、図9のテーブルTB2に関連付けられた図9のテーブルTB3により表されている。
【0072】
図8に示すように、テーブルTB2は、情報(値)を格納する列(カラム)として、制約条件No.801、設定フラグ802、優先度803、第1固有パラメータ804及び第2固有パラメータ805等を含む。
【0073】
テーブルTB2には、一つの制約条件に関する各列に対応する情報が互いに対応付けられて一つの行単位の情報(レコード)として格納されている。
【0074】
制約条件No.801には、制約条件の識別番号が格納されている。設定フラグ(ON/OFFフラグ)802には、制約条件の設定状態を表す設定フラグの値が格納されている。優先度803には、制約条件の優先度が格納されている。第1固有パラメータ804には、各制約条件に対応する固有のパラメータが格納されている。第2固有パラメータ805には、第1固有パラメータ804に格納された固有のパラメータとは異なる各制約条件に対応する固有パラメータが存在する場合に、その固有のパラメータが格納される。なお、図8では、第2固有パラメータ805に対応するパラメータが存在しない場合の例が表示されている。
【0075】
図9に示すように、テーブルTB3は、情報(値)を格納する列(カラム)として、鋼種No.901、鋼種識別名称902、鋼種識別番号「1」903、鋼種識別番号「2」904、鋼種識別番号「3」及び鋼種識別番号「4」を含む。
【0076】
テーブルTB3には、先行板としての一つの鋼種識別番号に関する各列に対応する情報が互いに対応付けられて一つの行単位の情報(レコード)として格納されている。
【0077】
鋼種No.901には、鋼種識別番号が格納されている。鋼種識別名称902には、鋼種識別名称が格納されている。鋼種識別番号「1」903には、先行板としての鋼種識別名称の鋼種と、後行板としての鋼種識別番号「1」に対応する鋼種との組合せの推奨度が格納されている。鋼種識別番号「2」904には、先行板としての鋼種識別名称の鋼種と、後行板としての鋼種識別番号「2」に対応する鋼種との組合せの推奨度が格納されている。鋼種識別番号「3」905には、先行板としての鋼種識別名称の鋼種と、後行板としての鋼種識別番号「3」に対応する鋼種との組合せの推奨度が格納されている。鋼種識別番号「4」906には、先行板としての鋼種識別名称の鋼種と、後行板としての鋼種識別番号「3」に対応する鋼種との組合せの推奨度が格納されている。
【0078】
S307:制約条件設定入力部203は、情報が入力された制約条件テンプレートを計画最適化演算部204に送信する。
【0079】
S308:計画最適化演算部204は、S302にて受信した鋼板仕様データ、及び、情報が入力された制約条件テンプレートに基づいて、演算に使用する制約条件を含む計算条件を設定し、設定した計算条件の下で、最適化計算を行うために適宜設定された評価指標に基づき、コイル材の投入順序を最適化するための最適化計算(計画最適化演算)を実行する。これにより、計画最適化演算部204は、設定した制約条件に基づいて対象(対象の複数のコイル材)のPL-TCM100への投入順序を策定する。計画最適化演算部204は、策定結果を表す演算結果データを生成する。ここで、計画最適化の演算をした結果及び演算結果データの一例について、図10A乃至図10Cを用いて説明する。図10Aは、投入順序を策定する前の、対象の複数のコイル材の投入順序に対応する板幅、対象の複数のコイル材の板厚及び鋼種の並びを示す。図10Bは、対象の複数のコイル材の投入順序を手作業で策定した場合の、対象の複数のコイル材の投入順序に対応する板幅、対象の複数のコイル材の板厚及び鋼種を示す。図10Cは、対象の複数のコイル材の投入順序を計画最適化演算部204によって策定した場合の、対象の複数のコイル材の投入順序に対応する板幅、対象の複数のコイル材の板厚及び鋼種を示す。
【0080】
この例では、圧延工程や溶接工程の制約条件に関わる3つのパラメータを示しているが、図10Bでは、板幅及び板厚は整理できているものの、鋼種の並びが溶接工程に適した並びにできているとは言えない。更に、手作業で投入順序を策定しているため、時間がかかってしまう。図10Cは、本例の最適化演算をした結果の対象の複数のコイル材の投入順序に対応する板幅、板厚及び鋼種の並び順である。図10Cの例では、溶接工程における最適化のために、特に鋼種に制約条件の優先度が割り振られているため、それが作用した(反映された)投入順序の計画が策定されている。図10Cでは、板幅及び板厚が整理され、鋼種も適した並びに整理されている。更に、計画最適化演算部204によって投入順序を策定しているため、短時間で投入順序を策定できる。
【0081】
図11は、テーブルTB4で表された演算結果データの一例を説明するための図である。図11に示すように、テーブルTB4は、情報(値)を格納する列(カラム)として、入力順序1001、No.501、入力鋼板長502、入力鋼板幅503、入力鋼板厚504、出力目標鋼板幅505、出力目標鋼板厚506、鋼種507及び納期508を含む。
【0082】
テーブルTB4には、入力順序と、入力順序に対応する鋼板仕様に関する各列に対応する情報が互いに対応付けられて一つの行単位の情報(レコード)として格納されている。
【0083】
入力順序1001には、冷間圧延工程に投入する順番を示す番号が格納されている。No.501、入力鋼板長502、入力鋼板幅503、入力鋼板厚504、出力目標鋼板幅505、出力目標鋼板厚506、鋼種507及び納期508に格納される情報は、既述の鋼板仕様データと同様である。
【0084】
S309:計画最適化演算部204は、演算結果データを計画出力部205に送信する。
【0085】
S310:計画出力部205は、演算結果データ(策定結果)を出力する。
【0086】
例えば、計画出力部205は、図11に示すテーブルTB4で表された演算結果データをCSVファイル形式で、例えば、冷間圧延計画策定システム200の端末220に出力する。
【0087】
計画出力部205は、演算結果データに基づいて作成した図12に示す4つの第1棒線グラフGr1乃至第4棒線グラフGr4を並べて画面GM1に出力してもよい。画面GM1は、第1棒線グラフGr1、第2棒線グラフGr2、第3棒線グラフGr3及び第4棒線グラフGr4を含む。第1棒線グラフGr1は、対象の複数のコイル材の入力順序を横軸とし、コイル材の出力目標鋼板幅を縦軸として、対象の複数のコイル材の入力順序に応じたコイル材の出力目標鋼板幅の推移を表している。第2棒線グラフGr2は、対象の複数のコイル材の入力順序を横軸とし、コイル材の出力目標鋼板厚を縦軸として、対象の複数のコイル材の入力順序に応じたコイル材の出力目標鋼板厚の推移を表している。第3棒線グラフGr3は、対象の複数のコイル材の入力順序を横軸とし、コイル材の出力目標鋼板幅を縦軸として、対象の複数のコイル材の入力順序に応じた出力目標鋼板幅の推移を表している。第4棒線グラフGr4は、対象の複数のコイル材の入力順序を横軸とし、コイル材の出力目標鋼板厚を縦軸として、対象の複数のコイル材の入力順序に応じたコイル材の入力鋼板厚の推移を表している。例えば、熟練者のようなユーザが、一つの画面に出力された第1乃至第4棒線グラフを見ることにより、策定した計画の妥当性を視覚的に確認できる。
【0088】
<効果>
以上説明したように、本発明の実施形態に係る冷間圧延計画策定システムは、冷間圧延計画の策定に必要な制約条件の設定を簡単且つ短時間で行うことができる。即ち、本発明の実施形態に係る冷間圧延計画策定システムは、制約条件テンプレートを用いることによって、複雑な冷間圧延計画策定システムの制約条件を簡単且つ短時間で生成することができる。更に、本発明の実施形態に係る冷間圧延計画策定システムによれば、熟練者でなくても、制約条件を簡単且つ短時間で生成することができる。よって、本発明の実施形態に係る冷間圧延計画策定システムは、制約条件の設定について属人性を排除することが可能になり、社会的課題となっている人手不足(熟練者不足)を解消することができる。
【0089】
<<変形例>>
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、その要旨の範囲内で様々な変形例を採用することができる。
【0090】
例えば、上記実施形態において、対象入力部201は、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)などの他システムから、鋼板仕様データを取得するようにしてもよい。
【0091】
例えば、上記実施形態において、制約条件設定入力部203は、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)などの他システムに設けられてもよい。この場合、MESなどの他システム側に、図6及び図7で示したような設定画面に類するグラフィカルユーザインタフェースを表示する表示部が設けられてもよい。
【0092】
上記実施形態において、鋼種組合せの推奨度の設定は、鋼種組合せ設定画面に対する数値入力によって実行されているが、過去のユーザ(例えば、熟練者)の計画実績を示すデータを取り込み、計画で採用されている先行コイル材と後行コイル材との鋼種組合せを分析し、分析結果に基づいて、最適な推奨度を自動的に設定するようにしてもよい。
【0093】
上記実施形態において、鋼種組合せ設定画面の入力ボックスに代えて、チェックボックスを表示するようにしてもよい。この場合、ユーザによるチェックボックスに対する操作に基づいて、先行板と後行板との鋼種の組合せが可能であるか否かが設定されるようにしてもよい。上記実施形態において、コイル材払い出し装置が、策定したコイル材の投入順序に従って、自動的にコイル材を順次払い出すように、コイル材払い出し装置が、制御されるようにしてもよい。
【0094】
上記実施形態において、チェックボックスに代えて、ラジオボタン、プルダウン等のON/OFF設定ツールを表示し、ユーザによるラジオボタン、プルダウン等に対する操作に基づいて、制約条件のON及びOFFの設定が実行されるようにしてもよい。
【0095】
上記実施形態において、入力ボックスに代えて、プルダウン、スライダ等の数値入力ツールを表示し、ユーザによるプルダウン、スライダ等に対する操作に基づいて、数値が入力されるようにしてもよい。上記実施形態において、設定フラグに代えて、優先度によって(優先度を「0」及び「0より大きい数値」の何れかに設定することによって)、制約条件をON及びOFFの何れかに設定してもよい。
【符号の説明】
【0096】
100…PL-TCM、200…冷間圧延計画策定システム、201…対象入力部、202…制約条件保存部、203…制約条件設定入力部、204…計画最適化演算部、205…計画出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12