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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】検査装置及び原子炉の検査方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/01 20060101AFI20241209BHJP
   G21C 19/02 20060101ALI20241209BHJP
   G21C 17/08 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G21C17/01
G21C19/02 020
G21C17/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021150767
(22)【出願日】2021-09-16
(65)【公開番号】P2023043256
(43)【公開日】2023-03-29
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 晴也
(72)【発明者】
【氏名】亀山 育子
(72)【発明者】
【氏名】浦口 晃平
(72)【発明者】
【氏名】今崎 一人
(72)【発明者】
【氏名】小林 徳康
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-063704(JP,A)
【文献】特開平04-231899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00-17/14,19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開蓋した圧力容器において吊り降ろされるフレームと、
前記フレームに支持されるとともに長手方向に変位するロッドと、
前記ロッドの先端に設けられ、圧力容器の炉底部を貫通するハウジングの上部開口から挿入される検出ヘッドと、を備え、
前記ハウジングは、中性子束モニタを収容するものであって、
前記フレームの下端に設けられ、前記ハウジングの上部開口に隣接する開口に係合する係合部を有する検査装置。
【請求項2】
開蓋した圧力容器において吊り降ろされるフレームと、
前記フレームに支持されるとともに長手方向に変位するロッドと、
前記ロッドの先端に設けられ、圧力容器の炉底部を貫通するハウジングの上部開口から挿入される検出ヘッドと、を備え、
前記ハウジングが、制御棒駆動機構を収容するものであって、
前記フレームの下端に設けられ、前記ハウジングの上部開口に係合する係合部を有する検査装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の検査装置において、
前記検出ヘッドは、前記ロッドに対し回転運動する検査装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の検査装置において、
前記検出ヘッドは、側周面からセンサが突出するように設けられる検査装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の検査装置において、
前記検出ヘッドは、前記ハウジングの内周面に当接しながら付勢する付勢部材が設けられる検査装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の検査装置において、
前記フレームは、前記ハウジングの上部開口に挿入する直前まで前記検出ヘッドを収容するスペースを有する検査装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の検査装置において、
前記フレームは、
スクリューを軸回転させるモータと、
螺合する前記スクリューの回転量に応じて前記ロッドを変位させるナットと、を有する検査装置。
【請求項8】
請求項7に記載の検査装置であって、前記ハウジングが中性子束モニタを収容するものである場合において、
前記ナットに固定される移動ステージと、
前記移動ステージに設けられ前記ロッドを着脱自在に把持する第1把持部と、
前記モータと構造的に一体化する前記フレームの位置に設けられ、前記第1把持部とは相互に排他的に前記ロッドを着脱自在に把持する第2把持部と、を有する検査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の検査装置において、
前記係合部は、前記フレームを水平方向にスライドさせるスライドステージを有する検査装置。
【請求項10】
請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の検査装置であって、前記ハウジングが制御棒駆動機構を収容するものである場合において、
前記係合部は、前記ハウジングの上部開口をクランプするクランプ部材を有する検査装置。
【請求項11】
請求項8又は請求項9に記載の検査装置において、
前記フレームは原子炉圧力容器の内部に配置される炉心支持板の上面まで吊り降ろされ、前記係合部は制御棒案内管用の開口に係合し、前記中性子束モニタを収容する前記ハウジングに前記検出ヘッドが挿入される検査装置。
【請求項12】
請求項10に記載の検査装置において、
前記フレームは原子炉圧力容器の内部で制御棒を移動させる前記制御棒駆動機構を収容する前記ハウジングの上部開口まで吊り降ろされ前記検出ヘッドが挿入される検査装置。
【請求項13】
請求項12に記載の検査装置において、
原子炉圧力容器の内部に配置される炉心支持板に固定することができるガイドが前記フレームの上部に設けられている検査装置。
【請求項14】
開蓋した圧力容器においてこの圧力容器内に配置された炉心支持板の上面に着座するようフレームを吊り降ろす工程と、
前記フレームの下端に設けられた係合部を、制御棒案内管用の開口に係合させる工程と、
前記フレームに支持されるロッドを長手方向に変位させる工程と、
前記ロッドの先端に設けられた検出ヘッドを、圧力容器の炉底部を貫通させて中性子束モニタを収容するハウジングの上部開口から挿入する工程と、を含む原子炉の検査方法。
【請求項15】
開蓋した圧力容器においてフレームを吊り降ろす工程と、
前記フレームの下端に設けられた係合部を、圧力容器の炉底部を貫通させて制御棒駆動機構を収容するハウジングの上部開口に係合させる工程と、
前記フレームに支持されるロッドを長手方向に変位させる工程と、
前記ロッドの先端に設けられた検出ヘッドを、前記ハウジングの前記上部開口から挿入する工程と、を含む原子炉の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、圧力容器に設けられたハウジングを遠隔で非破壊検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力容器を貫通して設置される付属物のハウジングには、例えば原子炉運転時に圧力容器と同レベルの蒸気圧力がかかる。このような圧力バウンダリとなるハウジング等は、放射能を帯びている為に、遠隔操作で表面検査や体積検査といった非破壊検査が実施され、健全性が評価される。
【0003】
圧力容器の炉底部を貫通するハウジングの溶着部の非破壊検査として、上部格子板に固定した操作ツールから探傷センサを吊降ろしてハウジングの上部開口に挿入する、といった技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2511583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した技術では、操作ツールからハウジングの上部開口まて、探傷センサは宙吊り状態で単独でアクセスすることになる。このため、移送中の探傷センサ及びこれの吊り部材は、圧力容器内の冷却水や構造物から干渉を受けやすく、ハウジングの上部開口に探傷センサを挿入させることは困難を伴い、作業性も悪かった。
【0006】
さらに、原子炉圧力容器の上部格子板に固定された操作ツールは、宙吊りにした探傷センサを円周方向および垂直方向に走査する必要がある。上部格子板と溶着部までの距離が約9mに亘ることから、このように検査位置が支持部に対して距離がある場合、吊り部材に必要な動力を伝達する装置は大規模化し取り扱いの困難性も増す課題があった。
【0007】
また、ハウジング内の検査位置は、探傷センサの吊り部材の長さ及び回転角で規定されることになる。しかし、上部格子板に固定された操作ツールとハウジングに挿入された探傷センサとの距離が上述のように長いため、ハウジング内における探傷センサの検査位置には、誤差として吊り部材の変形量が大きく寄与してしまう。
【0008】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、圧力容器に設けられたハウジングを、優れた作業性で、抑えた装置規模で、簡便な取り扱いで、優れた精度で、遠隔検査する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る検査装置において、開蓋した圧力容器において吊り降ろされるフレームと、前記フレームに支持されるとともに長手方向に変位するロッドと、前記ロッドの先端に設けられ圧力容器の炉底部を貫通するハウジングの上部開口から挿入される検出ヘッドと、を備え、前記ハウジングが、中性子束モニタを収容するものである場合は、前記フレームの下端に設けられ、前記ハウジングの上部開口に隣接する開口に係合する係合部を有し、前記ハウジングが、制御棒駆動機構を収容するものである場合は、前記フレームの下端に設けられ、前記ハウジングの上部開口に係合する係合部を有する
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態により、圧力容器に設けられたハウジングを、優れた作業性で、抑えた装置規模で、簡便な取り扱いで、優れた精度で、遠隔検査する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る検査装置が適用される原子炉の断面図。
図2】第1実施形態に係る検査装置が、ハウジングの上部開口を持つ炉心支持板に、設置された状態を示す斜視図。
図3】(A)(B)(C)第1実施形態に係る検査装置の動作説明図、(D)検査装置の移動ステージの上視図。
図4】第1実施形態においてハウジングの内周面を検査する検出ヘッドの拡大断面図。
図5】第2実施形態に係る検査装置が原子炉におけるハウジングの上部開口に設置された状態を示す断面図。
図6】(A)(B)第2実施形態に係る検査装置の動作説明図。
図7】(A)第2実施形態においてハウジングの内周面を検査する検出ヘッドの拡大断面図、(B)(C)第2実施形態においてハウジングの上部開口に設置された検査装置における係合部の拡大断面図。
図8】第1実施形態に係る原子炉の検査方法の工程を説明するフローチャート。
図9】第2実施形態に係る原子炉の検査方法の工程を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る検査装置10A(10)が適用される原子炉20の断面図である。第1実施形態では、沸騰水型原子炉(BWR)における中性子束モニタ(図示略)を収容するハウジング21aと圧力容器27の溶接部及びその熱影響部とを対象にした探傷検査を例示して説明する。
【0013】
図1に示す原子炉20は、上部蓋(図示略)、蒸気乾燥器(図示略)、気水分離器(図示略)、燃料集合体(図示略)及びその他の炉内構造物を取り除いた後に存在する、炉心シュラウド28、上部格子板25、炉心支持板26といった炉心支持構造物が開示されている。炉心シュラウド28は、ステンレス鋼の円筒で、燃料集合体が収容される内側における冷却材の上向きの流れとその外側の環状領域における冷却材の下向きの流れとを分離するものである。
【0014】
そして、炉心シュラウド28の上部には上部格子板25が固定され、その下部には炉心支持板26が固定されている。上部格子板25は、ステンレス鋼の板状のはりを互いに格子状に組み合わせたもので、燃料集合体の上部で横方向を支持している。炉心支持板26は、はりで補強したステンレス鋼の円板で、燃料集合体の底部で縦方向を燃料支持金具(図示せず)を介して支持するとともに、ハウジング21aの上部開口22aで横方向を支持している。
【0015】
原子炉20の最上階に設置されているクレーン13は、二軸のレール19で水平面の任意位置に到達できる。さらにクレーン13に取り付けられた昇降手段14は、先端に吊り下げた検査装置10のフレーム30を、鉛直方向の任意位置に到達させる。第1実施形態において検査装置10Aは、上部格子板25の格子間を通過し、炉心支持板26の上面まで吊り降ろされ、係合部35A(図3)は制御棒案内管用の開口29(図2)に係合する。そして、中性子束モニタ(図示略)を収容するハウジング21aに検出ヘッド32が挿入される。
【0016】
図2は第1実施形態に係る原子炉の検査装置10Aが、ハウジング21aの上部開口22aを持つ炉心支持板26に設置された状態を示す斜視図である。図3(A)(B)(C)は第1実施形態に係る原子炉の検査装置10Aの側面図である。図3(D)は検査装置10Aの移動ステージ36の上視図である。
【0017】
このように検査装置10A(10)は、開蓋した圧力容器27において吊り降ろされるフレーム30A(30)と、このフレーム30Aに支持されるとともに長手方向に変位するロッド31と、このロッド31の先端に設けられ圧力容器27の炉底部を貫通するハウジング21aの上部開口22aから挿入される検出ヘッド32と、フレーム30の下端に設けられハウジング21aの上部開口22aに隣接する開口29に係合する係合部35Aと、を備えている。
【0018】
さらに第1実施形態の検査装置10は、スクリュー45を軸回転させるモータ41と、螺合するスクリュー45の回転量に応じてロッド31を変位させるナット42と、ナット42に固定される移動ステージ36と、この移動ステージ36に設けられロッド31を着脱自在に把持する第1把持部11と、モータ41と構造的に一体化するフレーム30の位置に設けられ第1把持部11とは相互に排他的にロッド31を着脱自在に把持する第2把持部12と、を有している。
【0019】
係合部35は、フレーム30を水平方向にスライドさせるスライドステージ15を有している。そして、フレーム30は、ハウジング21の上部開口22に挿入する直前まで検出ヘッド32を収容する内部スペース37を有している。
【0020】
係合部35は、図2に示すように、検査対象のハウジング21aに隣接する制御棒案内管位置決め用の開口29に挿入される。そして、炉心支持板26に設けられている燃料支持金具(図示せず)を位置決めするガイドピン24が、切り欠き19に差し込まれることで、検査装置10Aの方位を決定する。
【0021】
図3に示すようにフレーム30Aには、下部基板43と上部基板44が四隅において支柱47により各々が連結され、さらに上部に天板48が設けられ、これらが構造的に一体化している。
【0022】
上部基板44に固定されたモータ41に接続して軸回転するスクリュー45は、下部基板43に設けられたスラスト軸受46に、先端が支持されている。このスクリュー45の回転量に応じて、ナット42に固定された移動ステージ36が上下方向に移動する。
【0023】
この移動ステージ36に設けられた第1把持部11と上部基板44に設けられた第2把持部12とは、相互に排他的な着脱(ホールド/リリース)制御により、少なくとも一方がロッド31を把持して落下しないようにしている。なお第2把持部12を設ける位置は、上部基板44に限定されることはなく、構造的に一体化したフレーム30の任意の位置に設けることができる。
【0024】
天板48は、検査装置10を吊り下げる昇降手段14の先端を取り付けるための取付手段(図示略)が設けられている。また、天板48は、検出ヘッド32がフレーム30Aの内部スペース37に収容されている状態で、上方向に長尺に延びているロッド31と炉内構造物との干渉を避ける役割も果たす。
【0025】
図3(A)(B)(C)に基づいて第1実施形態に係る原子炉の検査装置10Aの動作を説明する。図3(A)の状態からスライドステージ15を動作させることで、検出ヘッド32をハウジング21aの上部開口22aに対向させることができる。そして、第1把持部11がホールド設定のときは、第2把持部12がリリース設定となり、モータ41を駆動させると、図3(A)から図3(B)に示すように、移動ステージ36とともにロッド31を上下方向に変位させることができる。これによりハウジング21aの内側において、長手方向に沿って検出ヘッド32を並進運動させることができる。
【0026】
また、第2把持部12がホールド設定のときは、第1把持部11がリリース設定となり、図3(B)から図3(C)に示すように、モータ41を駆動させると、ロッド31の位置が固定されたまま、移動ステージ36のみが上下方向に変位する。このように図3(B)及び図3(C)の動作を段階的(ステップワイズ)に繰り返すことにより、スクリュー45よりも無限に長いストロークを持つロッド31を上限から下限まで自在に変位させることができる。
【0027】
図4は第1実施形態においてハウジング21aの内周面23aを検査する検出ヘッド32の拡大断面図である。このように検出ヘッド32は、図示略のモータ駆動により、ロッド31に対し回転運動する。このような、検出ヘッド32の回転運動と並進運動により、ハウジング21aの内周面23aに対し、センサ38をらせん状に走査することができる。これにより、検出ヘッド32をハウジング21aの長手方向にワンストロークだけ移動させることで内周面23aの全面を検査でき、検査時間の短縮を図ることができる。
【0028】
検出ヘッド32には、センサ38が外周面から突出するように設けられている。検出ヘッド32に収容されている状態のセンサ38を突出させる機構としては、さまざまな形態が検討されるが、エア圧やバネ弾性を利用することが有効である。このように、ハウジング21aの内周面23aに正対したとき以外は、検出ヘッド32にセンサ38を埋め込む形態にすることで、周囲の構造物と干渉し破損することを防止できる。
【0029】
また、複数のセンサ38が周方向に等間隔に配列することで、上記したらせん走査のピッチを広げることができ、検査時間の短縮をさらに図ることができる。
【0030】
センサ38としては、渦電流探傷試験用や超音波探傷試験用が検討されるが特に限定されない。これらセンサ38の探傷面には、内周面23aとの距離を一定にして、検出感度を安定化させるプローブシュー(図示略)が設けられている。また周方向に配列する複数のセンサ38の各々は、姿勢を変化させて配列することで、センサ38の検出信号のS/N比を向上させ、さらに欠陥の検出感度を向上させることができる。
【0031】
なお、周方向に配列する複数のセンサ38の間隔が十分に近接している場合は、検出ヘッド32を回転運動させなくても並進運動のみでハウジング21aの内周面23aを漏れなく検査することができる。また、ハウジング21aの上部に、人工傷が付与された校正用試験体を配置し、センサ38の校正を行うようにしてもよい。
【0032】
検出ヘッド32には、ハウジング21の内周面23aに当接しながら付勢する付勢部材33が設けられている。このような付勢部材33が機能することにより、検出ヘッド32は、ハウジング21の内周面23aより全方向から反力を受け、中心軸を互いに一致させることができる。そして、ハウジング21の内径が変化する場合も、付勢部材33の形状が変形することで、検出ヘッド32とハウジング21における中心軸の相互一致性を損なうことはない。
【0033】
図8のフローチャートに基づいて第1実施形態に係る検査装置を活用した原子炉の検査方法の工程を説明する(適宜、図1,2,3参照)。まず、複数の中からいずれか一つ検査対象となるハウジング21aを決定する(S11)。そして、開蓋した圧力容器27においてクレーン13を移動させ、この決定されたハウジング21aに対応する位置に到達させる(S12)。
【0034】
そして、フレーム30Aを炉心支持板26の上面に着座するよう吊り降ろす(S13)。フレーム30Aの下端に設けられた係合部35Aを制御棒案内管用の開口29に係合させる(S14)。さらに、スライドステージ15を動作させてフレーム30を水平方向にスライドさせ、検出ヘッド32をハウジング21aの上部開口22aに対向させる。
【0035】
そして、第1把持部11をホールド設定とし、第2把持部12がリリース設定として、モータ41を駆動し、フレーム30Aに支持されるロッド31を長手方向に変位させる(S15)。このようにして、ロッド31の先端に設けられた検出ヘッド32を、中性子束モニタを収容するハウジング21aの上部開口22aから挿入する(S16)。
【0036】
センサ38からハウジング21aの内周面23aの検出信号を取得しつつ(S17,S18;No,19;No)、ロッド31と共に移動ステージ36を下限位置まで変位させる(S19;Yes)。そこで、第2把持部12をホールド設定とし、第1把持部11をリリース設定に切り替えて(S20)、ロッド31の位置を維持したままフレーム30Aのみを上限位置に変位させる(S21)。
【0037】
そこで、再び、第1把持部11をホールド設定とし、第2把持部12がリリース設定に切り替えて(S22)、ロッド31を長手方向に再び変位させながら、センサ38による検出信号の取得を再開する(S17)。この(S17)から(S22)までのフローを、検査対象のハウジング21aの内周面23aの全面に対する検査が完了するまで繰り返す(S18;Yes)。
【0038】
そして、次の検査対象のハウジング21aが決定される(S23;No,S11)。そして、この(S11)から(S23)までのフローを、全てのハウジング21aの内周面23aの検査が終了するまで繰り返す(S23;Yes,END)。なお説明において、センサ38による検出信号は、ハウジング21aの上部から下部に向かう往路のみで取得することとしたが、下部から上部に向かう復路のみの場合やその両方から取得することもできる。
【0039】
(第2実施形態)
次に図5から図7を参照して本発明における第2実施形態について説明する。図5は第2実施形態に係る検査装置10B(10)が原子炉20におけるハウジング21bの上部開口22bに設置された状態を示す断面図である。図6(A)(B)は第2実施形態に係る検査装置10Bの側面図である。なお、図5から図7において図1から図3のそれぞれと共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0040】
第2実施形態では、沸騰水型原子炉(BWR)における制御棒駆動機構(図示略)を収容するハウジング21bと圧力容器27の溶接部及びその熱影響部とを対象にした探傷検査を例示して説明する。第2実施形態において検査装置10Bは、上部格子板25の格子間を通過し、さらに炉心支持板26における制御棒案内管用の開口29を通過する。そして検査装置10Bはハウジング21bの上部開口22bまで吊り降ろされ、検出ヘッド32をこのハウジング21bの内部に挿入する。
【0041】
検査装置10B(10)は、開蓋した圧力容器27において吊り降ろされるフレーム30B(30)と、このフレーム30に支持されるとともに長手方向に変位するロッド31と、ハウジング21bの上部開口22bから挿入される検出ヘッド32と、フレーム30の下端に設けられハウジング21bの上部開口22bに係合する係合部35B(図6(A))と、を備えている。
【0042】
図6に示すようにフレーム30Bには、スクリュー45を軸回転させるモータ41と、螺合するスクリュー45の回転量に応じてロッド31を変位させるナット42と、が設けられている。そして、フレーム30Bは、ハウジング21bの上部開口22bに挿入する直前まで検出ヘッド32を収容する内部スペース37を有している。
【0043】
図6(A)(B)に基づいて第2実施形態に係る検査装置10Bの動作を説明する。図6(A)の状態からモータ41を駆動させると、図6(A)から図6(B)に示すように、ロッド31を上下方向に変位させることができ、ハウジング21bの内側で、長手方向に沿って検出ヘッド32を並進運動させることができる。
【0044】
そして、検査装置10Bの上部には、炉心支持板26に固定することができるガイド49がフレーム30Bに設けられている。このガイド49の機能により、検査時における検査装置10Bの揺れを軽減できる。またこのガイド49をフレーム30Bの本体から分離可能な構成とすることで、オペレーティングフロア上での装置取り扱いを容易にすることができる。
【0045】
図7(A)は第2実施形態においてハウジング21bの内周面23bを検査する検出ヘッド32の拡大断面図である。図7(B)(C)は第2実施形態においてハウジング21bの上部開口22bに設置された検査装置10Bにおける係合部35B(35)の拡大断面図である。
【0046】
図7(B)(C)に示すように係合部35Bは、ハウジング21bの上部開口22bをクランプするクランプ部材16を有している。このクランプ部材16は、圧縮エア等の付勢力を得て、係合部35Bの内周面から張り出して、上部開口22b近傍のハウジング21bの外周面の一部を押圧する。
【0047】
なお、図示において、クランプ部材16は、圧縮エア等の付勢力を得て、協働して互いに直角方向に移動する二つの押圧部材17,18から構成されている。しかし、クランプ部材16の構成に限定はなく、検査装置10Bの係合部35Bとハウジング21bの上部開口22bとを着脱自在にクランプするものであれば、適宜採用される。なおこのクランプ部材16は、係合部35Bの内周方向に等間隔で三カ所以上配置すれば、検出ヘッド32とハウジング21bの中心軸を互いに一致させることができる。
【0048】
また検出ヘッド32は、モータ39の駆動により、ロッド31に対し回転運動する。このような検出ヘッド32の回転運動と並進運動により、ハウジング21bの内周面23bに対しセンサ38をらせん状に走査することができる。さらに検出ヘッド32は、側周面からセンサ38が突出するように設けられている。
【0049】
図9のフローチャートに基づいて第2実施形態に係る検査装置を採用した原子炉の検査方法の工程を説明する(適宜、図5,6,7参照)。まず、複数の中からいずれか一つ検査対象となるハウジング21bを決定する(S31)。そして、開蓋した圧力容器27においてクレーン13を移動させて、この決定されたハウジング21bに対応する位置に到達させる(S32)。そして、フレーム30Bを吊り降ろし(S33)、下端に設けられた係合部35Bを上部開口22bに係合させる(S34)。
【0050】
そして、クランプ部材16により、係合部35Bを、ハウジング21bの上部開口22bにクランプし、フレーム30Bに支持されるロッド31を長手方向に変位させる(S35)。そして、モータ41を駆動し、ロッド31の先端に設けられた検出ヘッド32を、制御棒駆動機構を収容するハウジング21bの上部開口22bから挿入する(S36)。
【0051】
センサ38からハウジング21bの内周面23bの検出信号を取得しつつ(S37,S38;No)、検出ヘッド32をハウジング21bの下限位置まで変位させる(S39;Yes)。これで、検査対象のハウジング21bの内周面23bの全面に対する検査が完了したことになる。
【0052】
そして、次の検査対象のハウジング21bが決定される(S39;No,S31)。そして、この(S31)から(S39)までのフローを、全てのハウジング21bの内周面23bの検査が終了するまで繰り返す(S39;Yes,END)。なお説明において、センサ38による検出信号は、ハウジング21bの上部から下部に向かう往路のみで取得することとしたが、下部から上部に向かう復路のみの場合やその両方から取得することもできる。
【0053】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の原子炉の検査装置によれば、ハウジングの上部開口又は隣接する開口に係合する係合部がフレームの下端に設けられることにより、圧力容器に設けられたハウジングを、優れた作業性で、抑えた装置規模で、簡便な取り扱いで、優れた精度で、遠隔検査することが可能となる。なお、上述した実施形態においては原子炉の圧力容器を例として説明したが、ハウジングが設けられた圧力容器であれば化学プラント等においても採用することが可能である。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。また沸騰水型原子炉(BWR)を例示して説明したが、これ以外の原子炉の圧力容器に設けられたハウジング等も、検査対象とすることができる。
【符号の説明】
【0055】
10(10A,10B)…検査装置、11…第1把持部、12…第2把持部、13…クレーン、14…昇降手段、15…スライドステージ、16…クランプ部材、17,18…押圧部材、19…レール、20…原子炉、21(21a,21b)…ハウジング、22(22a,22b)…上部開口、23(23a,23b)…内周面、24…ガイドピン、25…上部格子板、26…炉心支持板、27…圧力容器、28…炉心シュラウド、29…開口、30(30A,30B)…フレーム、31…ロッド、32…検出ヘッド、33…付勢部材、35(35A,35B)…係合部、36…移動ステージ、37…内部スペース、38…センサ、39…モータ、41…モータ、42…ナット、43…下部基板、44…上部基板、45…スクリュー、46…スラスト軸受、47…支柱、48…天板、49…ガイド。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9