(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】レンズ装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20241209BHJP
G03B 17/14 20210101ALI20241209BHJP
G03B 35/08 20210101ALI20241209BHJP
G03B 19/07 20210101ALI20241209BHJP
G03B 17/17 20210101ALI20241209BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20241209BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20241209BHJP
H04N 13/218 20180101ALI20241209BHJP
【FI】
G02B7/02 E
G03B17/14
G03B35/08
G03B19/07
G03B17/17
H04N23/55
H04N23/50
H04N13/218
(21)【出願番号】P 2021156696
(22)【出願日】2021-09-27
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】野田 豊人
(72)【発明者】
【氏名】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】日塔 潔
(72)【発明者】
【氏名】上原 匠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大樹
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-051282(JP,A)
【文献】特開2001-188310(JP,A)
【文献】特開2002-090921(JP,A)
【文献】国際公開第2011/132383(WO,A1)
【文献】米国特許第05963369(US,A)
【文献】特開2018-004780(JP,A)
【文献】特開平10-333200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 35/00 - 37/06
G03B 19/00 - 19/16
G03B 17/04 - 17/17
G02B 7/02 - 7/16
H04N 13/00 - 17/06
H04N 5/222 - 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 - 23/76
H04N 23/90 - 23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光学系と、
第2の光学系と、
カメラ本体に取り付けるためのレンズマウントと、
前記カメラ本体と通信を行うための回路基板と、
前記第1の光学系と前記第2の光学系と前記回路基板とが取り付けられるベース部材と、を有し、
前記第1の光学系と前記第2の光学系はそれぞれ、第1の反射面および第2の反射面を有する屈曲光学系であり、物体側から順に、第1の光軸、前記第1の反射面で反射した光の第2の光軸、および前記第2の反射面で反射した光の第3の光軸を有し、
前記レンズマウントの軸方向から見た場合、前記回路基板に配置された電気素子の少なくとも一部は、前記レンズマウントの直径よりも内側に配置されて
おり、
前記第1の光学系と前記第2の光学系と前記回路基板は、前記ベース部材と一体的に、前記レンズマウントに対して第1の光軸方向に移動可能であることを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記レンズマウントの直径は、前記レンズマウントの前記カメラ本体との嵌合径であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記第1の光学系と前記第2の光学系のそれぞれの2つの第1の光軸との間の距離方向、および第1の光軸方向のそれぞれと直交する方向から見た場合、前記回路基板は、前記2つの第1の光軸の間に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
第1の光学系と、
第2の光学系と、
カメラ本体に取り付けるためのレンズマウントと、
前記カメラ本体と通信を行うための回路基板と、
前記第1の光学系と前記第2の光学系と前記回路基板とが取り付けられるベース部材と、を有し、
前記第1の光学系と前記第2の光学系はそれぞれ、第1の反射面および第2の反射面を有する屈曲光学系であり、物体側から順に、第1の光軸、前記第1の反射面で反射した光の第2の光軸、および前記第2の反射面で反射した光の第3の光軸を有し、
前記回路基板は、前記第1の光学系と前記第2の光学系の2つの前記第1の光軸の間であって、前記第2の光軸よりも被写体側、かつ前記レンズマウントの軸上に配置されて
おり、
前記第1の光学系と前記第2の光学系と前記回路基板は、前記ベース部材と一体的に、前記レンズマウントに対して第1の光軸方向に移動可能であることを特徴とするレンズ装置。
【請求項5】
前記回路基板は、前記第3の光軸の延長線上に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記回路基板の基板面は、前記レンズマウントの軸方向と垂直であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記回路基板の基板面は、前記第1の光学系と前記第2の光学系のそれぞれの2つの第1の光軸との間の距離方向、および第1の光軸方向のそれぞれと平行であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記回路基板は、固定部を有し、
前記レンズマウントの軸方向から見た場合、前記固定部は、前記第1の光学系と前記第2の光学系のそれぞれにおいて最も被写体側に配置された第1のレンズおよび前記第1のレンズを保持する第1のレンズ保持部材のそれぞれと重ならないように配置されていることを特徴とする請求項
1乃至5のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項9】
第1のフレキシブル基板を更に有し、
前記レンズマウントには、前記カメラ本体と通信する通信部が配置され、
前記回路基板には、第1のコネクタが配置され、
前記第1のフレキシブル基板は、前記通信部と前記第1のコネクタとを電気的に接続し、前記レンズマウントの軸方向に延びていることを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項10】
前記第1の光学系と前記第2の光学系と前記回路基板とが取り付けられるベース部材を更に有し、
前記第1のフレキシブル基板は、前記ベース部材に形成された貫通穴を通っていることを特徴とする請求項
9に記載のレンズ装置。
【請求項11】
前記回路基板により制御される電子部材と、
前記電子部材と電気的に接続される第2のフレキシブル基板と、を更に有し、
前記回路基板は、前記第2のフレキシブル基板と接続される第2のコネクタを有し、
前記第2のコネクタは、前記レンズマウントの軸周りに点対称に配置されていることを特徴とする請求項
9または1
0に記載のレンズ装置。
【請求項12】
前記レンズマウントの軸方向から見た場合、前記第1のコネクタおよび前記第2のコネクタは、前記第1の光学系と前記第2の光学系のそれぞれにおいて最も被写体側に配置された第1のレンズおよび前記第1のレンズを保持する第1のレンズ保持部材と重ならないように配置されていることを特徴とする請求項1
1に記載のレンズ装置。
【請求項13】
第1の光軸方向から見た場合、または、前記第1の光学系と前記第2の光学系のそれぞれの2つの第1の光軸との間の距離方向および前記第1の光軸方向のそれぞれと直交する方向から見た場合、前記回路基板は、前記第1の光学系と前記第2の光学系のそれぞれにおいて最も被写体側に配置された第1のレンズ、または前記第2の光軸を形成する光学部材と重なる領域を有することを特徴とする請求項1乃至1
2のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項14】
前記回路基板の基板面は、長方形であることを特徴とする請求項1乃至1
3のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項15】
撮像素子と、
請求項1乃至1
4のいずれか一項に記載のレンズ装置と、を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項16】
前記撮像素子は、前記第1の光学系と前記第2の光学系により形成された視差のある2つの像を同時に撮像することを特徴とする請求項1
5に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズ装置として立体撮影用の交換レンズが知られている。例えば特許文献1および特許文献2には、二つの光学系が並列に配置され、一つの撮像素子に二つのイメージサークルが並列に結像するレンズ装置が開示されている。また特許文献2に開示されたレンズ装置には、レンズマウントの近傍において、カメラ本体との電気通信を行うためのドーナツ形状やC型形状の回路基板が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-3022号公報
【文献】特開平1-296205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたレンズ装置では、撮像センサのうち2つの像を撮像可能な範囲内において、2つの1軸光学系が配置されている。このため、特許文献2のようにレンズマウントの近傍にドーナツ形状やC型形状の回路基板を配置すると、VR鑑賞で違和感のない十分な基線長を確保することが難しい。また、ドーナツ形状やC型形状の回路基板は、配線が複雑になる等、スペース効率が良くない。
【0005】
そこで本発明は、回路基板を適切に配置してスペース効率を向上させた立体撮影用のレンズ装置および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としてのレンズ装置は、第1の光学系と、第2の光学系と、カメラ本体に取り付けるためのレンズマウントと、前記カメラ本体と通信を行うための回路基板と前記第1の光学系と前記第2の光学系と前記回路基板とが取り付けられるベース部材と、を有し、前記第1の光学系と前記第2の光学系はそれぞれ、第1の反射面および第2の反射面を有する屈曲光学系であり、物体側から順に、第1の光軸、前記第1の反射面で反射した光の第2の光軸、および前記第2の反射面で反射した光の第3の光軸を有し、前記レンズマウントの軸方向から見た場合、前記回路基板に配置された電気素子の少なくとも一部は、前記レンズマウントの直径よりも内側に配置されており、前記第1の光学系と前記第2の光学系と前記回路基板は、前記ベース部材と一体的に、前記レンズマウントに対して第1の光軸方向に移動可能である。
【0007】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回路基板を適切に配置してスペース効率を向上させた立体撮影用のレンズ装置および撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態におけるレンズ装置の断面図である。
【
図2】本実施形態におけるレンズ装置の分解斜視図である。
【
図3】本実施形態におけるレンズ装置の分解斜視図である。
【
図4】本実施形態におけるレンズ装置の正面図である。
【
図6】変形例としての
図4中のA-A断面図である。
【
図8】本実施形態における各光軸と撮像素子上のイメージサークルの配置図である。
【
図9】本実施形態における第1の光学系で撮像した場合の第2の光学系の映り込みを示す図である。
【
図10】本実施形態における撮像装置の概略構成図である。
【
図11】本実施形態におけるレンズ装置から前面外装部材やカバー部材を除いた状態を示す正面図である。
【
図12】本実施形態におけるレンズ装置の要部斜視図である。
【
図13】本実施形態におけるフレキシブル基板の通り道を示す断面図である。
【
図14】本実施形態における変形例としてのレンズ装置の正面図である。
【
図15】本実施形態における変形例としてのレンズ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
本実施形態のレンズ装置(交換レンズ)は、互いに並列に(対称に)配列された二つの光学系(第1の光学系および第2の光学系)を有し、一つの撮像素子に二つのイメージサークルが並列に結像するように構成されている。二つの光学系は、所定の距離(基線長)だけ離間して水平方向に並べられる。像側から見て、右の光学系(第1の光学系)で結像する像を右眼用の動画または静止画として記録し、左の光学系(第2の光学系)で結像する像を左眼用の動画または静止画として記録する。動画または静止画(映像)の再生の際には、既知の3DディスプレイやいわゆるVRゴーグルなどを用いて鑑賞することで、鑑賞者の右眼には右眼用の映像が映り、左眼には左眼用の映像が映る。このとき、レンズ装置の基線長によって、右眼と左眼には視差のある映像が投影されるため、鑑賞者は立体感を得ることができる。このように本実施形態のレンズ装置は、第1の光学系および第2の光学系により、視差のある二つの像を撮像素子(一つの撮像面)に結像させることが可能な立体撮影用のレンズ装置である。
【0012】
まず、
図1乃至
図3を参照して、交換レンズ(レンズ装置)200について説明する。
図1は、交換レンズ200の断面図であり、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lの概略構成を示す。
図2および
図3は、交換レンズ200の分解斜視図である。以降の説明では、右眼光学系についての記述には符号の末尾にRを付け、左眼光学系についての記述には符号の末尾にLを付ける。右眼光学系と左眼光学系の両方に共通する記述には符号の末尾にRもLも付けない。
【0013】
交換レンズ200は、右眼光学系(第1の光学系)201Rと左眼光学系(第2の光学系)201Lを有する。右眼光学系201Rと左眼光学系201Lはそれぞれ、画角180度以上で撮影することが可能である。各光学系において、被写体側(物体側)から順に、第1の光軸OA1(OA1R、OA1L)、第1の光軸と略直交する第2の光軸OA2(OA2R、OA2L)、第1の光軸と平行な第3の光軸OA3(OA3R、OA3L)が設定されている。各光学系は、各光軸に沿って、第1の光軸OA1には被写体側が凸形状の表面211Aを有する1群レンズ(第1のレンズ)211、第2の光軸OA2には2群レンズ221、第3の光軸OA3には3群レンズ231、231-2を有する。各光学系は、第1の光軸OA1の光束を折り曲げて第2の光軸OA2に導く第1のプリズム(第1の反射面)220、および第2の光軸OA2の光束を折り曲げて第3の光軸OA3に導く第2のプリズム(第2の反射面)230を有する屈曲光学系である。以降、光軸方向とは、被写体側から撮像面側に向けて延びる方向であり、第1の光軸OA1の方向(第1の光軸方向)に相当する。
【0014】
右眼光学系201Rと左眼光学系201Lはそれぞれ、レンズトップベース300にビス締めなどで固定される。レンズトップベース300は、レンズボトムベース301にビス締めなどで固定される。レンズトップベース300およびレンズボトムベース301は、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lと回路基板310とが取り付けられるベース部材を構成する。右眼光学系201Rと左眼光学系201Lと回路基板310は、ベース部材と一体的に、レンズマウント202に対して第1の光軸方向に移動可能である。レンズボトムベース301は、不図示の直進構造で回転方向の移動は規制されたまま、光軸方向に進退できるように保持される。これにより、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lは一体となって、光軸方向に進退可能になり、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lは同時にフォーカス位置を調整することができる。
【0015】
次に、
図4乃至
図7を参照して、1群レンズ211とその周辺の構造について説明する。
図4は、交換レンズ200の正面図である。
図5および
図6は、
図4中のA-A断面図であり、交換レンズ200の1群レンズ211とその周辺の構造を示す。
図7は、
図4中のB-B断面図であり、交換レンズ200の1群レンズ211とその周辺の構造を示す。
【0016】
交換レンズ200は、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lを収納する外装カバー部材203を備え、前面外装部材204で交換レンズ200の前側を、蓋をするように収納することができ、前面外装部材204は外装カバー部材203にビス締め固定される。前面外装部材204は、右眼光学系201Rの1群レンズ211Rと左眼光学系201Lの1群レンズ211Lそれぞれが入り込む開口部204Fを有する。
【0017】
前面外装部材204は、右眼光学系201Rおよび左眼光学系201Lの有効画角180度以上の有効光束を遮らない形状を有する。1群レンズ211R、211Lは、被写体側に有効光束の入射面であるレンズ表面211Aを有する。1群レンズ211のレンズ表面211Aのうち、有効入射面外径211Cよりも内側を有効入射面211Bとするとき、180度の光束は、1群レンズ211の有効入射面211Bと光軸と略直交方向に水平に伸びる。そして、180度を超える光束は、1群レンズ211の有効入射面211Bよりも撮像面側にあり、1群レンズ211から遠ざかるほど撮像面側に延びていく。従って、180度を超える光束を遮らないため、前面外装部材204の表面形状は、1群レンズ211の有効入射面211Bよりも撮像面側に配置されている。カバー部材213も同様に、有効入射面Bよりも撮像面側に配置される。
【0018】
図4および
図7を参照して、1群レンズ211とその周辺の構造について詳述する。
図4に示されるように、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lとの間の中心点Oよりも右眼光学系201R側を右眼領域20R、中心点Oよりも左眼光学系201L側を左眼領域20Lとする。このとき、
図7中の画角FOVのように、前面外装部材204の右眼領域20Rには、左眼光学系201Lの最外有効光束(
図7中の太点線部)を遮らないように、1群レンズ211Lから離れるほど撮像面側に凹となるような表面形状204Aを有する。同様に、前面外装部材204の左眼領域20Lには、右眼光学系201Rの有効光束を遮らないように、右眼光学系201Rの1群レンズ211Rから離れるほど撮像面側に凹となるような表面形状204Bを有する。ただし、右眼光学系201Rから見た左眼光学系201Lの1群レンズ211Lおよびその周辺や、左眼光学系201Lから見た右眼光学系201Rの1群レンズ211Rおよびその周辺は、互いの有効光束の一部を遮る領域を有する。
【0019】
前面外装部材204の開口部204Fを形成するため、表面形状204Aおよび表面形状204Bよりも凸となる壁形状204Cおよび204Dを有する。壁形状204Cは、右眼光学系201Rの1群レンズ211Rと略同軸の円弧形状で、右眼光学系201Rの有効光束は遮らないが、左眼光学系201Lの有効光束の一部を遮る形状となっている。同様に、壁形状204Dは、左眼光学系201Lの1群レンズ211Lと略同軸の円弧形状で、左眼光学系201Lの有効光束は遮らないが、右眼光学系201Rの有効光束の一部を遮る形状となっている。
【0020】
次に、前面外装部材204の開口部204Fに入り込む1群レンズ211R、211Lと、その周辺の構成について説明する。
図5に示されるように、1群レンズ211R、211Lを保持する1群レンズ保持部材(第1のレンズ保持部材)212が設けられている。また、1群レンズ211R、211Lの被写体側レンズ表面211Aの外周部を覆うように、1群レンズ211R、211Lが入り込む開口部213Aを備えるカバー部材213が配置される。
【0021】
1群レンズ211の有効入射面外径211Cよりも外周側には、レンズ表面211Aとの境界211Dが存在する。その境界211Dは1群レンズ211R、211Lの側面211Eとレンズ表面211Aの境界である。または、
図6に示されるように1群レンズ211R、211Lをカシメ固定しているカシメ爪形状の内径先端部であってもよい。境界211Dとは、レンズ表面211Aとそれ以外の表面、または部材との境界である。そして、カバー部材213はこの境界211Dを覆っている。すなわち、カバー部材213の開口部213Aの内径は、境界211Dの径よりも小さい。
【0022】
カバー部材213の開口部213Aの内径をΦA、境界211Dの径をΦBとするとき、片側のオーバーラップ量Xは、以下の式(1)のように表される。
【0023】
X=(ΦB-ΦA)/2 … (1)
このように、境界211Dを覆い隠すことで、外観品位の向上が見込まれる。
【0024】
カバー部材213は、1群レンズ保持部材212と光軸方向に位置決めされ、光軸と直交する方向には所定のガタYが設けられている。所定のガタYは、カバー部材213のオーバーラップ量Xよりも小さいため、ガタ分寄っても、境界211Cがカバー部材213の開口部213Aよりも内側にくることはない。
【0025】
図5および
図6に示されるように、カバー部材213に溝部213Bが内周の一部に形成されている。1群レンズ保持部材212の外周の一部には、外周側に延びる羽形状212Aが形成されている。ある位相で溝部213Bと羽形状212Aは光軸方向から見て重ならない位置にあるときに組付け、カバー部材213を回転させることで、溝部213Bに羽形状212Aが入り込む。このようにバヨネット構成とすることで、光軸方向に位置決めすることができる。このとき、カバー部材213の内周と1群保持部材212の外周には、所定のガタYが設けられる。ただし、光軸方向の位置規制構造はこの限りではない。例えば、1群レンズ保持部材212に溝形状があり、カバー部材213に羽形状があってもよい。
【0026】
このように、カバー部材213は、1群レンズ保持部材212と光軸方向に位置決めされているため、1群レンズ保持部材212と一体で光軸方向に進退可能である。そして、カバー部材213の外径は前面外装部材204の開口部204Fの内径が径篏合している。このとき、径篏合でのガタは微小で、所定のガタYよりも小さい。
【0027】
また、カバー部材213には回転規制キー213Cが備えられており、前面外装部材204には回転規制キー213Cに対応する回転規制溝204Eが備えられている。これにより、前面外装部材204が組み込まれると、前面外装部材204の回転規制溝204Eにカバー部材213の回転規制キー213Cが入り込むことにより、カバー部材213は回転規制される。その結果、前述のバヨネット構成でカバー部材213が回転して1群レンズ保持部材212から外れることを防止することができる。ここで、回転規制構造の関係は逆でもよく、カバー部材213に回転規制溝、前面外装部材204に回転規制キーの関係でもよい。
【0028】
カバー部材213は像面側に向いている面213Dを備え、1群レンズ保持部材212は面213Dに対向する被写体側に向いている面212Bを備えている。面213Dと面212Bとの間には、防滴防塵のための光軸方向シール部材214が挟み込まれるように配置される。面213Dおよび面212Bは全周であることが望ましいが、一部でもよい。光軸方向シール部材214が光軸方向で挟み込まれることにより、カバー部材213と1群レンズ保持部材212は光軸方向に付勢され、光軸方向のガタを減らすことができる。
【0029】
また、所定のガタYが保たれるように、光軸方向シール部材214は、光軸方向と直交する方向には挟み込まれないようにガタYより大きい所定のクリアランスを持って配置される。光軸方向シール部材214は、例えばゴムやスポンジなどの弾性変形可能な材質からなり、カバー部材213の1群レンジ保持部材212に対する光軸方向と直交する方向のガタYを吸収することができる。
【0030】
カバー部材213と開口部204Fとの間には、防滴防塵のための径方向シール部材215が光軸と直交方向に挟み込まれるように配置される。右眼光学系201R側の径方向シール部材215は左眼光学系201Lの有効光束を遮る位置に配置され、左眼光学系201L側の径方向シール部材215は右眼光学系201Rの有効光束を遮る位置に配置される。
【0031】
以上の構成により、画角180度以上の立体映像を撮影可能で、外観品位や防塵防滴性能を保つことができる。1群レンズ保持部材212を直接前面外装部材204の開口部204Fで篏合させない構造とすることで、1群レンズ保持部材212が製造誤差などの影響で位置ずれしてしまっても、その位置を強制されることがない。このため、光学性能や右眼光学系201Rと左眼光学系201Lとの相対誤差が前面外装部材204を組み込むことによって変化しない。
【0032】
図8は、交換レンズ200の各光軸の位置およびマウントと、カメラ本体側の撮像素子上のイメージサークル位置関係を示す図である。カメラ本体110の撮像素子111上には、右眼光学系201Rによって結像する有効画角の右眼イメージサークルICRと、左眼光学系201Lによって結像する有効画角の左眼イメージサークルICLが並列に像を結ぶ。イメージサークル同士がなるべく重ならないように、イメージサークルのサイズΦD2とイメージサークル同士の離間距離を設定することが好ましい。例えば、撮像素子111の受光範囲を中央で左右に半分に分けた領域を考え、受光範囲の右領域の略中央に右眼イメージサークルICRの中心が位置し、受光範囲の左領域の略中央に左眼イメージサークルICLの中心が位置するように設定することが好ましい。
【0033】
本実施形態の光学系は全周魚眼レンズであり、撮像面に結像される像は180度を超える画角の範囲を写した円像になり、
図8に示されるように左右にそれぞれ2つの円像が結像される。右眼光学系201Rの第1の光軸OA1Rと左眼光学系201Lの第1の光軸OA1Lとが成す距離を基線長L1と称する。基線長L1が長いほど、鑑賞時の立体感が増す。
【0034】
例えば、センサーサイズを縦24mm×横36mm、イメージサークルの直径をΦ17mm、第3の光軸同士の成す離間距離L2を18mm、第2の光軸の長さを21mmとする。第2の光軸が水平方向に延びるように各光学系を配置すると、
図1中に示される基線長L1は60mmとなり、成人の眼幅と略等しくなる。また、レンズマウント202の直径ΦD(レンズマウント202のカメラ本体110との嵌合径)は基線長L1よりも短くてよい。また第3の光軸間の距離L2は、レンズマウント202の直径ΦDよりも短い。これにより、第3の光軸における3群レンズ231、231-2をレンズマウント202の内側に配置することが可能となる。すなわち、以下の式(2)の関係を満足する。
【0035】
L1>ΦD>L2 … (2)
VRとして視聴するとき、立体感を得られる画角は120度程度と言われているが、視野が120度では違和感が残るため、180度まで画角を広げることが多い。本実施形態では有効画角が180度を超えるため、180度の範囲のイメージサークルのサイズΦD3は、以下の式(3)の関係を満足する。
【0036】
ΦD2>ΦD3 … (3)
図9は、第1の光学系で撮像した場合の、第2の光学系の映り込みを示す図である。前面外装部材204の壁形状204C(D)は、有効画角であるサイズΦD2よりも内側に撮像されるが、180度画角には撮像されず、サイズΦD3よりも外側に撮像される。従って、VRとして視聴する場合、180度画角で視聴する際には影響を与えない。例えば、右眼光学系201Rの有効画角内には、左眼領域20Lにある左眼光学系201Lの1群レンズ211Lや、カバー部材213、前面外装部材204の壁部204Dがあり、それらが
図9に示されるように実際の有効撮像範囲に映り込んでいる。1群レンズ211Lのみ180度画角のイメージサークル内(ΦD3よりも内側)に映り込んでいるが、その他のカバー部材213や壁部204Dは180度画角のイメージサークルの外側にある。
【0037】
また、壁部204Dの映り込みは、1群レンズ211Lの頂点部よりも水平方向で見た場合でも外側(
図9における左側)に撮像されている。魚眼の円像において、1群レンズ211Lの頂点部よりも水平方向で見た場合でも外側に撮像されていることの利点として、画像処理や画像編集の際における、隣のレンズの映り込みをトリミングなどしてカットする場合の利点がある。このとき、仕様上必ず映り込んでしまう1群レンズ211Lの頂点部まで水平方向でカット、例えば
図9中に示される直線Zで直線Zよりも水平方向で外側をカットしさえすれば、壁部204Dの映り込みは影響を与えることはないため、必要最小限のカットで済む。第2の光学系で撮像した場合の、第1の光学系の映り込みに関しても同様である。以上のように、壁部204Dは有効画角内ではあるが、実際のVR用途としての撮像に関してはほとんど影響を与えないように配置されている。
【0038】
図10は、立体映像を撮影可能な撮像装置100の概略構成の一例を示す図である。
図10において、撮像装置100は、カメラ本体110と交換レンズ200とを有する。交換レンズ200は、カメラ本体110に対して着脱可能である。本実施形態において、撮像装置100は、カメラ本体110と、カメラ本体110に対して着脱可能な交換レンズ(レンズ装置)200とを有する撮像システムである。ただし本実施形態は、これに限定されるものではなく、カメラ本体とレンズ装置とが一体的に構成された撮像装置にも適用可能である。
【0039】
交換レンズ200は、右眼光学系201R、左眼光学系201L、およびレンズシステム制御部209を有する。カメラ本体110は、撮像素子111、A/D変換器112、画像処理部113、表示部114、操作部115、記憶部116、本体システム制御部117、およびカメラマウント122を有する。レンズ装置200のレンズマウント202を介してカメラ本体110のカメラマウント122に装着すると、本体システム制御部117とレンズシステム制御部209とが電気的に接続される。
【0040】
被写体の像は、右眼光学系201Rを介して結像される右眼像と左眼光学系201Lを介して結像される左眼像が並んで撮像素子111に結像される。すなわち撮像素子111は、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lにより形成された視差のある2つの像を同時に撮像する。撮像素子111は、結像された被写体の像(光信号)をアナログの電気信号に変換する。A/D変換器112は、撮像素子111から出力されたアナログの電気信号をデジタルの電気信号(画像信号)に変換する。画像処理部113は、A/D変換器112から出力されたデジタルの電気信号(画像信号)に対して種々の画像処理を行う。
【0041】
表示部114は、各種の情報を表示する。表示部114は、例えば、電子ビューファインダや液晶パネルを用いることにより実現される。操作部115は、撮像装置100に対する指示をユーザが行うためのユーザインタフェースとしての機能を有する。尚、表示部114がタッチパネルを有する場合には、当該タッチパネルも操作部115の一つになる。記憶部116は、画像処理部113で画像処理が行われた画像データ等、各種のデータを記憶する。また、記憶部116は、プログラムも記憶する。記憶部116は、例えば、ROM、RAM、およびHDDを用いることにより実現される。本体システム制御部117は、撮像装置100全体を統括制御する。本体システム制御部117は、例えば、CPUを用いることにより実現される。
【0042】
交換レンズ200は、カメラ本体110と通信するためのレンズシステム制御部209を備えており、
図1および
図11に示されるように、回路基板310として交換レンズ200の内部に配置されている。右眼光学系201Rと左眼光学系201Lにはそれぞれ、
図1に示されるように絞り装置(電子部材)240が配置され、ステッピングモータなどの駆動源320(
図12(A)、(B)参照)を電子制御することで、所望の絞り径を設定可能である。
【0043】
図1および
図11に示されるように、レンズトップベース300には、絞り装置240を電子制御するための回路基板310が配置されている。
図12(A)、(B)に示されるように、回路基板310は、カメラ本体110との通信や、電子部品の制御のために、複数の電気素子310Aを備え、配線部により電気的に接続されている。また、制御対象の電子部品と通信するために、フレキシブル基板(第2のフレキシブル基板)330Aを備えている。フレキシブル基板330Aは、絞り装置240、およびステッピングモータなどの駆動源320と電気的に接続される。回路基板310には、フレキシブル基板330Aを電気的に接続するコネクタ(第2のコネクタ)310Bが設けられている。コネクタ310Bは、レンズマウント202の軸周りに点対称に配置されている。
【0044】
また、カメラ本体110と通信するために、フレキシブル基板(第1のフレキシブル基板)330Bが設けられている。フレキシブル基板330Bは、カメラ本体110との通信を行うためにレンズマウント202に配置された電気接点部(通信部)202Aと電気的に接続されている。また回路基板310には、フレキシブル基板330Bを電気的に接続するコネクタ(第1のコネクタ)310Cが配置されている。フレキシブル基板330Bは、電気接点部202Aとコネクタ310Cとを電気的に接続し、レンズマウント軸MA方向に延びている。レンズマウント軸MAの方向から見た場合、コネクタ310B、310Cは、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lのそれぞれにおいて最も被写体側に配置された1群レンズ211および1群レンズ保持部材212と重ならないように配置されている。以上の構成により、回路基板310は、レンズマウント202を通してカメラ本体110と通信可能であり、交換レンズ200の内部に設けられた絞り装置240などの電子部品を制御することができる。
【0045】
本実施形態において、回路基板310は絞り装置240を電子制御するが、例えば防振やオートフォーカスのためにレンズ駆動を行う場合など、電子駆動制御する対象があれば、回路基板310はその電子制御の役割を担うことができる。
【0046】
回路基板310は、レンズトップベース300にビス締めなどにより固定される。また、レンズトップベース300およびレンズボトムベース301は共に2眼光学系ユニットのベース部材であり、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lは、ベース部材と一体となって光軸方向に進退可能である。
【0047】
図1に示されるように、回路基板310は、右眼光学系201Rと左眼光学系201Lの2つの第1の光軸OA1R、OA1Lの間(2つの第1の光軸に挟まれた位置)であって、かつ第2の光軸OA2R、OA2Lよりも被写体側に配置されている。また回路基板310は、レンズマウント202の軸上(レンズマウント軸MA上)に配置されている。また回路基板310の基板面(電気素子310Aが配置される面)は、レンズマウント軸MAと垂直である。
【0048】
また回路基板310は、第1の光軸方向、またはレンズマウント軸MA方向から見た場合、回路基板310よりも被写体側に配置された1群レンズ211の被写体側レンズ表面211Aと重なる位置に配置されている。また回路基板310は、被写体側レンズ表面211Aよりも像面側に配置されており、径の小さいレンズの側面に挟まれる位置に配置されている。
図1では、1群レンズ211の小径部と重なっているが、1群レンズ211よりも像面側にある別のレンズによって挟まれる位置でもよい。すなわち、被写体側レンズ表面211Aよりも像面側にあるレンズ部材の側面に挟まれる位置に配置されている。また回路基板310は、第3の光軸OA3の光軸の延長線上に配置されている。また回路基板310は、第2の光軸OA2を形成する光学部材である第2プリズム230とレンズマウント軸MAの方向から見て重なる領域に配置されている。
【0049】
このような位置に回路基板310を配置することで、VRの立体視として適切な基線長である第1の光軸間距離L1を確保することで生じる2つの光学系に挟まれたスペースを有効に活用でき、スペース効率のよい配置にすることが可能となる。また、交換レンズ200の小型化にも有利である。
【0050】
また本実施形態のように、2つの光学系を1つの撮像素子に結像させる交換レンズ200の場合、第3の光軸OA3はレンズマウント202の直径の内側にあり、基線長を確保するために第2の光軸OA2により交換レンズ200の本体の外径側に出っ張る。このような構成では、従来のようにレンズマウント付近にドーナツ型やC型形状の回路基板を配置しようとすると、例えば第1プリズムの220や第2のプリズム230およびそれらを保持する保持枠やレンズボトムベース301などの内包部材に影響を及ぼし得る。その結果、設計自由度の低下や、交換レンズが大型化してしまう。例えば、レンズマウント付近に従来のようにドーナツ形状やC型形状の回路基板を配置しようとして、スペースの確保のために第2の光軸OA2をより被写体側に配置することが考えられる。しかし、第2の光軸OA2をより被写体側に配置しようとすると、光学系の全長が伸び、それに伴いレンズ自体の外径も大きくなり、交換レンズとしても大型化を招いてしまう。逆に、第2の光軸OA2をより像面側に配置することでレンズ全長の短縮やレンズ径の小径化が可能となり、交換レンズの小型化に寄与できる。
【0051】
また、回路基板310自体の効率化として、回路基板310の基板面の形状を、従来のようなドーナツ形状やC型形状ではなく、略長方形の形状とするとことで、回路基板310内の電気素子310Aの効率的な配置や配線が可能である。また、略長方形の方がドーナツ形状やC型形状よりも製造過程においても、プレスによる打ち抜きの効率もよくすることができる。プレスによる取り個数の増加により、コストダウンを図ることができる。
【0052】
図11は、交換レンズ200から前面外装部材204やカバー部材213を除いて、レンズマウント軸MA方向に被写体側から見た正面図である。回路基板310は、固定部310Dにおいて、ビス締めなどによってレンズトップベース300に固定される。固定方法はビス締めや接着でもよい。固定部310Dは、軸OA1方向の被写体側から見た場合、回路基板310よりも被写体側にあるレンズである1群レンズ211および1群レンズ保持部材212とは重ならない位置に配置されている。コネクタ310B、310Cも同様に、1群レンズ211および1群レンズ保持部材212とは重ならない位置に配置される。このような配置により、例えば、前面外装204やカバー部材213のみが組まれていない状態で回路基板310を組み込み、回路基板310の固定やフレキシブル基板との接続を行うことができる。そして、回路基板310の固定や接続が終わってから、前面外装204やカバー部材213を組み、交換レンズ200を完成させることができる。回路基板310の不良などで回路基板310の交換が必要となった場合でも、比較的速やかに回路基板310へアクセスして、回路基板310の交換を行うことができる。
【0053】
また、前述の通り、回路基板310は、レンズマウント軸MA上に配置されている。また、レンズマウント軸MAの方向から見た場合、回路基板310に配置された電気素子310Aの少なくとも一部は、レンズマウント202の直径ΦDよりも内側に配置されていることが望ましい。また、2つの第1の光軸OA1R、OA1Lとの間の距離方向(基線長L1方向)、および第1の光軸方向のそれぞれと直交する方向から見た場合、回路基板310は、2つの第1の光軸OA1R、OA1Lの間に配置されていることが望ましい。これにより、交換レンズ200を更に小型化することができる。回路基板310を取り付けるための固定部310Dも直径ΦDの内側であることが小型化には望ましい。ただし、固定方法や固定箇所によっては直径ΦDの外側の方が設計上好ましい場合もある。このため、少なくとも電気素子310Aが直径ΦDの内側に位置することで、より小型化に有利な構成とすることができる。
【0054】
図12(A)、(B)は、2つの異なる方向から見た交換レンズ200の要部斜視図である。
図12(A)、(B)は、レンズマウント202や回路基板310と、その周辺部品であるフレキシブル基板330A、330B、ベース部材のレンズトップベース300やレンズボトムベース301などのみを示す。
図13は、フレキシブル基板330Bの通り道を示す断面図である。
【0055】
フレキシブル基板330Bは、レンズマウント202の電気接点部202Aと、回路基板310のコネクタ310Cと電気的に接続され、カメラ本体110と通信可能である。フレキシブル基板330Bは、レンズマウント軸MA方向に延びている。本実施形態において、従来のようにドーナツ型形状やC型形状の回路基板が配置されていたスペースには、ベース部材としてレンズボトムベース301が配置されている。レンズボトムベース301は、光学系を光軸方向に移動させるための機構が外周近傍に構成されており、フレキシブル基板330Bをレンズマウント202から回路基板310へ接続するにあたって障壁となる。そこで本実施形態では、
図12(A)、(B)および
図13に示されるように、レンズボトムベース301に貫通穴301Aを形成し、フレキシブル基板330Bが貫通穴301Aを通るように構成されている。このような構成により、レンズマウント202から回路基板310の接続を比較的短い距離で繋ぐことができる。
【0056】
次に、
図14および
図15を参照して、本実施形態の変形例としての回路基板310の配置について説明する。
図14は、本実施形態の変形例としての回路基板310の配置を示す正面図であり、主要部をレンズマウント軸MA方向に被写体側から見た図である。
図15は、変形例としての回路基板310の配置を示す断面図であり、主要部を基線長方向および第1の光軸OA方向のそれぞれと直交する方向から見た図である。
【0057】
図14および
図15に示されるように、回路基板310の基板面(電気素子310Aを配置する面)を、基線長方向および第1の光軸OA1のそれぞれと平行になるように配置しても、省スペースに配置することができる。この場合でも、
図14に示されるように、少なくとも電気素子310Aがレンズマウント202の直径ΦDの内側に配置されていることで、小型化に有利な構成とすることができる。また、
図15に示されるように、基線長方向および第1の光軸OA方向のそれぞれと直交する方向から見た場合、回路基板310は、第1の光軸OA1(OA1R、OA1L)に挟まれる位置に配置されている。また、基線長方向および第1の光軸OA方向のそれぞれと直交する方向から見た場合、回路基板310は、1群レンズ211、および第2の光軸OA2を形成する光学部材である第2プリズム230と重なる領域に配置される。このように配置することで、よりスペース効率のよい配置にすることができる。
【0058】
本実施形態によれば、回路基板を適切に配置してスペース効率を向上させた立体撮影用のレンズ装置および撮像装置を提供することができる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
200 交換レンズ(レンズ装置)
201R 右眼光学系(第1の光学系)
201L 左眼光学系(第2の光学系)
202 レンズマウント
220 第1のプリズム(第1の反射面)
230 第2のプリズム(第2の反射面)
310 回路基板
310A 電気素子
OA1R、OA1L 第1の光軸
OA2R、OA2L 第2の光軸
OA3R、OA3L 第3の光軸