(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/16 20060101AFI20241209BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20241209BHJP
H02K 1/276 20220101ALI20241209BHJP
【FI】
H02K1/16 C
H02K1/22 A
H02K1/276
(21)【出願番号】P 2021159490
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】矢▲崎▼ 学
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-311738(JP,A)
【文献】特開2006-006015(JP,A)
【文献】特開2015-050863(JP,A)
【文献】特開2015-061466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/16
H02K 1/22
H02K 1/276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環形状をなすヨーク部と、前記ヨーク部の内周縁から該ヨーク部の径方向内側に突出した複数個のティース部とを有し、前記複数個のティース部において互いに隣接するティース部同士の間にスロットが形成された
ステータコアを有するステータと、
前記ステータの内側に配置され、前記複数個のティース部に面するロータと、
を備える回転電機であって、
前記ロータは、極数が16極~32極である永久磁石を保持するロータコアと、前記ロータコアと一体的に回転する回転シャフトとを有し、
前記ステータは、前記スロットに設けられた電磁コイルを有し、
前記複数個のティース部の各々は、前記ヨーク部の内周縁から該ヨーク部の径方向内方に突出する棹部と、前記棹部よりも前記ロータに近接し且つ該棹部に比べて幅広な鍔部と、前記棹部と前記鍔部との間に介在し、前記棹部から前記鍔部に向かうにつれて幅広となる拡開部とを有し、
前記電磁コイルの前記ロータを向く内周端の位置が、前記スロット内で前記棹部の内周端から前記ヨーク部に向かってオフセットされ、
前記鍔部の前記内周端から、前記電磁コイルの前記内周端までの距離であるオフセット量が、前記複数個のティース部の各々の全長の5%~11%であ
り、
前記棹部と前記拡開部との交差角度が108°~130°であり、
前記鍔部の内周端から外周端に至るまでの距離が0.2mm~2.0mmであり、
前記ステータの外径が230mm~450mmの範囲内であり、
前記ステータコアは、前記ヨーク部と前記ティース部とを一体的に有する電磁鋼板の積層体である回転電機。
【請求項2】
請求項1記載の回転電機において、前記ステータの軸方向に前記ステータ及び前記ロータを見たとき、1
極の磁極に対する前記スロットの平均個数が6個である回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の回転電機において、前記ロータコアに、前記回転シャフトが配置される第1挿入孔と、前記第1挿入孔の径方向外側に形成された複数個の貫通孔と、前記複数個の貫通孔の径方向外側に形成され且つ前記永久磁石が挿入される複数個の第2挿入孔とが形成され、
且つ前記ロータコアは、前記複数個の貫通孔と前記第1挿入孔との間に位置する内円環部と、前記複数個の貫通孔の径方向外側に位置し且つ前記複数個の第2挿入孔が形成された外円環部と、前記内円環部と前記外円環部とを連結する複数個の連結部とを有する、回転電機。
【請求項4】
請求項3記載の回転電機において、前記ロータコアは、複数個の電磁鋼板の積層体であり、前記複数個の電磁鋼板の各々に、前記第1挿入孔、前記複数個の貫通孔及び前記複数個の第2挿入孔が形成され、且つ前記複数個の電磁鋼板の各々が前記内円環部、前記外円環部及び前記連結部を有する回転電機。
【請求項5】
請求項4記載の回転電機において、前記複数個の電磁鋼板は、第1の態様又は第2の態様で積層されており、
前記第1の態様は、前記複数個の電磁鋼板において互いに隣接する一方の電磁鋼板の前記複数個の連結部と、前記複数個の電磁鋼板において互いに隣接する他方の電磁鋼板の前記複数個の連結部とが、前記ロータの軸方向に前記ロータを見たときに重ならない位置となるように積層される態様であり、
前記第2の態様は、各々が前記複数個の電磁鋼板を有する複数の板群が前記軸方向に積層され、且つ前記複数の板群において互いに隣接する一方の板群の前記複数個の連結部と、前記複数の板群において互いに隣接する他方の板群の前記複数個の連結部とが、前記ロータを前記軸方向に見たときに重ならない位置となるように積層される態様である回転電機。
【請求項6】
請求項
3~5のいずれか1項に記載の回転電機において、
前記複数個の第2挿入孔のうち前記外円環部の周方向において互いに隣接する2個の組み合わせを1個の孔群とするとき、前記外円環部は、複数個の孔群を有し、
前記複数個の孔群のうち前記外円環部の周方向において互いに隣接する2個の離間距離は、1個の孔群を形成する前記2個の第2挿入孔の離間距離よりも大きい回転電機。
【請求項7】
請求項6記載の回転電機において、前記複数個の電磁鋼板を積層方向から見たとき、前記複数個の第2挿入孔の各々は長方形形状であり、前記複数個の孔群のうち1個に保持される2個の前記永久磁石では、互いに同一の磁極が前記ティース部を向く回転電機。
【請求項8】
請求項6又は7記載の回転電機において、前記複数個の電磁鋼板を積層方向から見たとき、前記複数個の孔群のうち1個における前記2個の第2挿入孔同士の間と、前記1個の孔群に隣接する別の1個における前記2個の第2挿入孔同士の間との離間角度が、360°を前記複数個の孔群の個数で割った値である回転電機。
【請求項9】
請求項3~8のいずれか1項に記載の回転電機において、1個の前記電磁鋼板における前記連結部の個数は10個~30個である回転電機。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の回転電機において、前記スロットの個数は、96個~192個である回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータとロータとを備える回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は、ステータとロータとを備える。ステータは、複数個のティース部を有する。隣接するティース部同士の間には、スロットが形成される。スロットには、電磁コイルが設けられる。その一方で、ロータは永久磁石を有する。
【0003】
回転電機は、例えば、モータとして機能する。この場合、電磁コイルに通電がなされる。通電に伴い、電磁コイルが磁気を帯びて交番磁界が形成される。この交番磁界と、永久磁石による磁界とが互いに反発する。又は、前記2個の磁界同士が互いに引き合う。以上の反発及び引き合いにより、ロータが回転する。
【0004】
モータは、例えば、回転体に回転駆動力を付与する。回転体が飛翔体のプロペラである場合、モータには、飛翔体の離陸時又はホバリング時等に低回転で高トルクを継続して出力できる性能が求められる。この性能を得るために、モータを大型にすることが考えられる。しかしながら、この場合、モータの重量が大きくなる。従って、飛翔体も大型となり且つ重量が大きくなる。
【0005】
そこで、モータが大型となることを回避しながら、高トルクを得ることが試みられている。例えば、特許文献1には、永久磁石に面するティース部のアーク角度を規定した構造が提案されている。なお、特許文献1には、16個の永久磁石と、18個のティース部とを有するモータが例示されている。この場合、1個の永久磁石のN極又はS極に対面するティース部の個数は、略1個である。
【0006】
特許文献2及び特許文献3にも、モータにおいて高トルクを得るための構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-80381号公報
【文献】特開2007-151332号公報
【文献】特開2007-209197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
飛翔体等の一層の小型化又は一層の軽量化を図るため、モータを一層小型化することが要請されている。しかしながら、小型のモータでは、高トルクを得ることが容易ではない。
【0009】
小型であっても高トルクを得るために、永久磁石の個数を多くすることが考えられる。しかしながら、この場合、永久磁石からの磁束量が大きくなる。ステータがこの磁束量を十分に受容できない場合、いわゆる漏れ磁束が生じる。漏れ磁束は、ステータ(特に電磁コイル)の発熱の一因となる。また、回転電機を発電機として機能させる場合には、発電量を低下させる可能性がある。このように、漏れ磁束は様々な不都合を招く。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、円環形状をなすヨーク部と、前記ヨーク部の内周縁から該ヨーク部の径方向内側に突出した複数個のティース部とを有し、前記複数個のティース部において互いに隣接するティース部同士の間にスロットが形成されたステータと、
前記ステータの内側に配置され、前記複数個のティース部に面するロータと、
を備える回転電機であって、
前記ロータは、極数が16極~32極である永久磁石を保持するロータコアと、前記ロータコアと一体的に回転する回転シャフトとを有し、
前記ステータは、前記スロットに設けられた電磁コイルを有し、
前記複数個のティース部の各々は、前記ヨーク部の内周縁から該ヨーク部の径方向内方に突出する棹部と、前記棹部よりも前記ロータに近接し且つ該棹部に比べて幅広な鍔部と、前記棹部と前記鍔部との間に介在し、前記棹部から前記鍔部に向かうにつれて幅広となる拡開部とを有し、
前記電磁コイルの前記ロータを向く内周端の位置が、前記スロット内で前記棹部の内周端から前記ヨーク部に向かってオフセットされ、
前記鍔部の前記内周端から、前記電磁コイルの前記内周端までの距離であるオフセット量が、前記複数個のティース部の各々の全長の5%~11%である回転電機が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、ティース部に設ける電磁コイルの内周端の位置を、棹部の内周端からヨーク部に向かって所定の量でオフセットしている。このオフセットにより、永久磁石と電磁コイルとの離間距離が大きくなる。その結果、漏れ磁束が低減する。従って、極数が16極~32極と大きい場合であっても、ステータが永久磁石の磁束を十分に受容することができる。このため、例えば、回転シャフトが低速で回転する場合においても十分に大きな回転トルクが得られる。
【0013】
しかも、漏れ磁束が低減することに伴って、電磁コイルの鎖交磁束又は渦電流等が低減する。このため、ステータ(特に電磁コイル)発熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る回転電機の要部概略水平断面図である。
【
図3】
図3は、ロータコアの全体概略平面図である。
【
図4】
図4は、ロータコアを形成する1個の電磁鋼板の全体概略平面図である。
【
図5】
図5は、ロータコアの要部分解斜視図である。
【
図6】
図6は、別のロータコアの要部分解斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の別の実施形態に係る回転電機の要部概略水平断面図である。
【
図9】
図9は、本発明のまた別の実施形態に係る回転電機の要部概略水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施形態に係る回転電機10の要部概略水平断面図である。回転電機10は、略円環形状をなすステータ12と、ステータ12の内方に配置されるロータ14とを備える。回転電機10は、例えば、U相、V相、W相を有する3相モータである。
【0016】
先ず、ステータ12につき説明する。ステータ12は、ステータコア20を有する。ステータコア20は、例えば、電磁鋼板等の磁性体が積層された積層体である。
【0017】
ステータコア20は、ヨーク部24と、複数個のティース部26とを有する。本実施形態では、回転電機10の外径(回転シャフト50の中心Oからヨーク部24の外周縁までの距離Xの2倍)は、230mm~450mmの範囲内である。この外径は、飛翔体のプロペラを回転させる一般的なモータの外径に比べて小さい。すなわち、回転電機10は、小型である。
【0018】
ヨーク部24は、円環形状をなす。ティース部26は、ヨーク部24の内周縁から、該ヨーク部24の径方向に沿って内方に突出する。
【0019】
隣接するティース部26同士の間には、スロット28が形成される。回転電機10が3相モータである場合、スロット28の個数は、典型的には3の倍数である。
図1に示した例では、ティース部26及びスロット28の個数はいずれも96個である。なお、極数(後述)は16極である。従って、回転電機10は、いわゆる16極96スロットとして構成されている。スロット28には、電磁コイル30が設けられる。電磁コイル30は、例えば、銅からなる線材である。線材がティース部26に巻回されることで、電磁コイル30が得られる。
【0020】
図2は、
図1の要部拡大図である。1個のティース部26は、棹部32と、鍔部34と、拡開部36とを有する。棹部32は、ステータコア20の径方向に沿って放射状に延在する。鍔部34は、ティース部26の内周先端に設けられる。拡開部36は、棹部32と鍔部34との間に介在する。
【0021】
棹部32は、第1平行辺40a及び第2平行辺40bを有する。第1平行辺40aと第2平行辺40bとの離間距離W1は、棹部32の幅寸法と言い換えられる。幅方向は、ステータコア20の径方向に対して略直交する。
【0022】
拡開部36は、棹部32から鍔部34に向かうに従って漸次的に幅広となる。換言すれば、拡開部36は、棹部32に向かってテーパー状に形成される。拡開部36は、第1傾斜辺42a及び第2傾斜辺42bを有する。第1傾斜辺42aは、棹部32の第1平行辺40aに対して交差角度θ1で交差する。第2傾斜辺42bも同様に、第2平行辺40bに対して交差角度θ2で交差する。本実施形態において、交差角度θ1及び交差角度θ2は、108°~130°の範囲内である。一層好ましい交差角度θ1及び交差角度θ2は、120°~125°の範囲内である。交差角度θ1及び交差角度θ2をこのような範囲とすることにより、ステータ12における銅損及び鉄損の合計が小さくなる。交差角度θ1と交差角度θ2とは、同一であることが好ましい。ただし、交差角度θ1と交差角度θ2とは、異なっていてもよい。
【0023】
第1平行辺40aと第1傾斜辺42aとの交点をP1とする。第2平行辺40bと第2傾斜辺42bとの交点をP2とする。交点P1から交点P2に向かって引いた直線を、第1仮想直線LN1とする。第1仮想直線LN1は、棹部32の内周端を表す。同時に、第1仮想直線LN1は、拡開部36の外周端を表す。
【0024】
第1傾斜辺42aには、鍔部34の第1径方向辺44aが連なる。第2傾斜辺42bには、鍔部34の第2径方向辺44bが連なる。第1径方向辺44a及び第2径方向辺44bは略直線形状であり、且つ互いに平行に延在する。以下、第1径方向辺44aと第2径方向辺44bとの離間距離をW2とする。離間距離W2は、鍔部34の幅である。鍔部34の幅W2は、棹部32の幅W1よりも大きい。
【0025】
隣接する鍔部34同士の離間間隔をGとする。電磁コイル30を形成する線材の直径をDMとする。幅W2は、例えば、離間間隔Gが直径DMよりも大きくなる範囲である。この場合、鍔部34での磁束飽和が低減する。その結果、棹部32が多くの磁束を受容できる。このため、回転シャフト50の回転トルクの向上を図ることができる。また、ステータコア20の素材(電磁鋼板等)として、飽和磁束密度が小さい磁性体を選定することが可能となる。このため、コスト低減を図ることもできる。
【0026】
第1傾斜辺42aと第1径方向辺44aとの交点を、P3とする。交点P3は、第1径方向辺44aの外周端(第1傾斜辺42aの内周端)である。第2傾斜辺42bと第2径方向辺44bとの交点を、P4とする。交点P4は、第2径方向辺44bの外周端(第2傾斜辺42bの内周端)である。交点P3から交点P4に引いた直線を、第2仮想直線LN2とする。第2仮想直線LN2は、拡開部36の内周端を表し、且つ鍔部34の外周端を表す。
【0027】
第1径方向辺44aの内周端から第2径方向辺44bの内周端に引いた直線を、第3仮想直線LN3とする。第3仮想直線LN3は、鍔部34の内周端である。第3仮想直線LN3と第2仮想直線LN2との離間距離を、T1とする。離間距離T1は、鍔部34の内周端から鍔部34の外周端までの距離を表す。以下、離間距離T1を、鍔部34の厚みと定義する。
【0028】
鍔部34の厚みT1の好ましい範囲は、0.2mm~2.0mmである。厚みT1の一層好ましい範囲は、0.3mm~1.1mmである。厚みT1をこのような範囲にした場合、ステータ12における銅損及び鉄損の合計が小さくなる。
【0029】
棹部32の外周端は、ヨーク部24の内周縁に連結された箇所である。棹部32の外周端から鍔部34の内周端までの距離は、ティース部26の全長LO(
図2参照)として定義される。典型例では、全長LOは40mm~45mmの範囲内である。また、典型例では、全長LOを100%とするとき、棹部32の全長は96%以上である。この場合、鍔部34の内周端から棹部32の内周端までの距離は、ティース部26の全長LOの4%以下である。
【0030】
本実施形態では、電磁コイル30は、銅等の金属導体からなる。上記したように、線材がティース部26に巻回されることによって、電磁コイル30が形成される。本実施形態では、分布巻が行われている。
図1では、いわゆる2回巻の場合を例示している。
【0031】
図2に示すように、回転シャフト50の軸方向に垂直な方向の断面において、電磁コイル30の内周端はスロット28内に位置する。電磁コイル30の内周端は、鍔部34の内周端と棹部32の外周端との間に位置する。従って、電磁コイル30の内周端は、ヨーク部24(ステータコア20の外周)に向かってオフセットされている。
図2において、電磁コイル30の内周端は、拡開部36の外周端(棹部32の内周端)と、棹部32の外周端との間に位置する。鍔部34の内周端から電磁コイル30の内周端までの距離は、オフセット量OFとして定義される。オフセット量OFの好ましい範囲は、ティース部26の全長LOの5%~11%である。例えば、全長LOが40mmであるとき、好適なオフセット量OFは2mm~4.4mmである。オフセット量OFの一層好ましい範囲は、ティース部26の全長LOの5.6%~10.3%である。
【0032】
オフセット量OFがティース部26の全長LOの5%未満であると、電磁コイル30の巻回量が多くなる。このため、電磁コイル30の体積が大きくなる。その結果、ロータ14の永久磁石54から受ける磁束の量が多くなる。従って、電磁コイル30の発熱量が高くなる懸念がある。また、銅損が大きくなる。オフセット量OFが11%を超えると、銅損が小さくなる。しかしながら、棹部32の露出面積が大きくなるので鉄損が大きくなる。その結果、発熱量が高くなる。また、電磁コイル30の巻回量が少なくなるので、該電磁コイル30の体積が小さくなる。従って、回転電機10の、モータとしての出力が低下する。
【0033】
ティース部26の全長LOが40mm~45mmであるとき、第1仮想直線LN1から電磁コイル30の内周端までの具体的な距離は、典型的には1~3mmである。上記したように、第1仮想直線LN1は、棹部32の内周端であり且つ拡開部36の外周端である。
【0034】
ロータ14につき説明する。
図1に示すように、ロータ14は、ティース部26の内方に配置される。
【0035】
ロータ14は、回転シャフト50と、ロータコア52と、複数個(
図1の例では32個)の永久磁石54とを有する。ロータコア52は、回転シャフト50と一体的に回転する。永久磁石54は、ロータコア52に保持されている。従って、回転シャフト50が回転したとき、永久磁石54は、ロータコア52の外周縁に沿って移動する。
【0036】
図3に示すように、ロータコア52は、複数個の電磁鋼板60を有する。ロータコア52は、複数個の電磁鋼板60が積層されることで形成される。すなわち、ロータコア52は、複数個の電磁鋼板60の積層体である。
【0037】
図4に示すように、1個の電磁鋼板60は、薄肉の円環形状体である。電磁鋼板60は、内周に位置する内円環部62と、外周に位置する外円環部64とを有する。内円環部62及び外円環部64は略円環形状であり、且つ同心円である。内円環部62と外円環部64とは、複数個(
図4の例では、10個)の連結部66を介して連結される。このように、連結部66は、内円環部62の外周縁と、外円環部64の内周縁とを連結する。
【0038】
内円環部62には、円形状の第1挿入孔70が形成される。
図1に示される回転シャフト50は、第1挿入孔70に通される。回転シャフト50の中心Oは、第1挿入孔70の中心に一致する。
【0039】
中心Oから内円環部62の内周縁までの距離をRin(
図3参照)とするとき、Rinの2倍は、ロータコア52の内径である。中心Oから外円環部64の外周縁までの距離をRoutとするとき、Routの2倍は、ロータコア52の外径である。以下、ロータコア52の内径を「ロータ内径」と表記し、且つロータコア52の外径を「ロータ外径」と表記する。ロータ外径は、ロータ内径よりも大きい。
【0040】
ロータ外径は、ロータ内径の1.5倍~3.5倍であることが好ましい。すなわち、ロータ内径とロータ外径との比が1:1.5~1:3.5の範囲内であることが好ましい。この場合、Rin:Rout=1:1.5~3.5が成り立つ。
【0041】
隣接する連結部66同士の間には、貫通孔72が形成される。外円環部64には、複数個の第2挿入孔74(
図4の例では32個)が形成される。1個の第2挿入孔74は、長方形をなす。2個の第2挿入孔74は互いに近接し、1組となっている。以下、1組の第2挿入孔74(互いに近接する2個の第2挿入孔74)を、「孔群76」と表記する。隣接する孔群76同士の離間距離は、1個の孔群76中の第2挿入孔74同士の離間距離よりも大きい。
1個の孔群76中の第2挿入孔74同士の間と、この孔群76に隣接する孔群76
中の第2挿入孔74同士
の間との離間角度(位相差)αは、この場合、22.5°である。
【0042】
第2挿入孔74には、永久磁石54が挿入される。第2挿入孔74の個数が32個であるので、永久磁石54の個数も32個である。1組の孔群76には、同一の磁極が外周を向くようにして、2個の永久磁石54が挿入される。
図3においては、永久磁石54のN極を、メッシュを付して表している。これに対し、S極にはメッシュを付していない。以降の図面においても同様である。
【0043】
図3から理解されるように、任意の1組の孔群76では、2個の永久磁石54におけるN極が外周を向く。この場合、該孔群76に隣接する孔群76では、2個の永久磁石54におけるS極が外周を向く。以下の説明において、単に「N極」又は「S極」と表記するときは、外周を向く磁極を示す。ステータ12では、2個のN極と、別の2個のN極との間に、2個のS極が介在する。
【0044】
以下、1組の孔群76に収容された2個の永久磁石54の、外周を向く同一磁極を1極と数える。すなわち、1組の孔群76において隣接する2個のN極は1極である。同様に、別の1組の孔群76において隣接する2個のS極も1極である。本実施形態では、16組の孔群76が形成されている。従って、磁極の個数は16個である。このように、回転電機10は、16極の3相モータである。本明細書では、このようにして求められる磁極の個数を「極数」と定義する。
【0045】
1個の連結部66は、内円環部62の外周縁から外円環部64の内周縁にわたって延在する。連結部66の延在方向は、電磁鋼板60の直径に対して傾斜する方向である。図示例(
図4)において、連結部66の個数は10個である。従って、隣接する連結部66同士の交差角度βは36°である。
【0046】
ただし、連結部66の個数は10個に限定されない。従って、交差角度βも36°に限定されない。連結部66の好ましい個数は、10個~30個である。交差角度βの好ましい範囲は、12°~36°である。交差角度βがこのような範囲内であると、連結部66が十分な剛性を示す。従って、連結部66が、外円環部64及び永久磁石54の総重量を受けて曲がることが回避される。
【0047】
特に、永久磁石54の個数(又は極数)が多くなるほど、連結部66の個数を多くすることが好ましい。例えば、極数が32極であるときには、連結部66の個数を30個とすると好適である。この場合、隣接する連結部66同士の交差角度βは12°である。極数が24極であるときには、連結部66の個数を18個とすると好適である。この場合、隣接する連結部66同士の交差角度βは20°である。
【0048】
図5は、ロータコア52の要部分解斜視図である。この
図5では、4個の電磁鋼板60を示している。理解を容易にするために、
図5における最下の電磁鋼板60を第1電磁鋼板601とする。第1電磁鋼板601の孔群76を第1孔群761とし、且つ第1電磁鋼板601の連結部66を第1連結部661とする。第1電磁鋼板601の直上に積層される電磁鋼板60を第2電磁鋼板602とする。第2電磁鋼板602の孔群76を第2孔群762とし、且つ第2電磁鋼板602の連結部66を第2連結部662とする。第2電磁鋼板602の直上に積層される電磁鋼板60を第3電磁鋼板603とする。第3電磁鋼板603の孔群76を第3孔群763とし、且つ第3電磁鋼板603の連結部66を第3連結部663とする。第3電磁鋼板603の直上に積層される電磁鋼板60を第4電磁鋼板604とする。第4電磁鋼板604の孔群76を第4孔群764とし、且つ第4電磁鋼板604の連結部66を第4連結部664とする。
【0049】
第2電磁鋼板602は、第1電磁鋼板601に対して45°回転された状態で、第1電磁鋼板601に積層される。この場合、第1連結部661と第2連結部662との間に9°の位相差が生じる。且つ、第1孔群761と第2孔群762とが重なり合う。換言すれば、第1孔群761と第2孔群762とが互いに連なる。
【0050】
第3電磁鋼板603は、第2電磁鋼板602に対して45°回転され、且つ第1電磁鋼板601に対して90°回転された状態で、第2電磁鋼板602に積層される。この場合、第2連結部662と第3連結部663との間に9°の位相差が生じ、且つ第1連結部661と第3連結部663との間に18°の位相差が生じる。また、第3孔群763が、第1孔群761及び第2孔群762に連なる。
【0051】
第4電磁鋼板604は、第3電磁鋼板603に対して45°回転され、第2電磁鋼板602に対して90°回転され、且つ第1電磁鋼板601に対して135°回転された状態で、第3電磁鋼板603に積層される。この場合、第3連結部663と第4連結部664との間に9°の位相差が生じ、第2連結部662と第4連結部664との間に18°の位相差が生じ、且つ第1連結部661と第4連結部664との間に27°の位相差が生じる。また、第4孔群764が、第1孔群761、第2孔群762及び第3孔群763に連なる。
【0052】
第1~第4電磁鋼板601~604の組み合わせを、1組の板群80とする。1組の板群80には、別の1組の板群80が積層される。従って、1組の板群80中の第4電磁鋼板604の直上には、別の1組の板群80中の第1電磁鋼板601が積層される。ロータ14の軸方向にロータ14を見たとき、下方の板群80中の第1電磁鋼板601における第1孔群761及び第1連結部661の位置は、上方の板群80中の第1電磁鋼板601における第1孔群761及び第1連結部661の位置に対応する(互いに重なり合う)。
【0053】
ロータ14の軸方向にロータ14を見たとき、第1孔群761、第2孔群762、第3孔群763及び第4孔群764は全て連なっている。永久磁石54は、電磁鋼板60の積層方向に沿って、全ての孔群76に通される。また、第1~第4電磁鋼板601~604の内円環部62同士が全て重なる。
【0054】
これに対し、ロータ14の軸方向にロータ14を見たとき、隣接する第1連結部661同士の間に、第2連結部662、第3連結部663及び第4連結部664が介在する。第1連結部661と第2連結部662との間には、クリアランスが形成される。第2連結部662と第3連結部663との間にも、クリアランスが形成される。第3連結部663と第4連結部664との間にも、クリアランスが形成される。第4連結部664と第1連結部661との間にも、クリアランスが形成される。従って、隣接する第1連結部661同士の間の貫通孔72が、第2連結部662、第3連結部663及び第4連結部664で閉塞されることはない。
【0055】
従って、ロータコア52においては、電磁鋼板60の積層方向に沿って貫通孔72の一部が互いに重なる。このように貫通孔72が連なることに基づき、ロータコア52に、
図3に示すように、電磁鋼板60の積層方向に沿った流通路82(貫通孔72)が形成されている。
【0056】
図6に示すように、複数個の電磁鋼板60を、全ての連結部66同士が重なる位相で積層して1群の板群81を設けてもよい。この場合、板群81の直上に別の板群81を積層するとき、下方の板群81の連結部66と、上方の板群81の連結部66とが重ならない位相とする。例えば、下方の板群81の連結部66と、上方の板群81の連結部66との間に9°の位相差を設ける。次に積層する板群81も、該板群81の連結部66が、既に積層された2個の板群81の連結部66に重ならない位相(9°の位相差)とする。次に積層する板群81も、該板群81の連結部66が、既に積層された3個の板群81の連結部66に重ならない位相(9°の位相差)とする。以上の積層を、繰り返してもよい。いずれの場合においても、ロータ14の軸方向にロータ14を見たとき、
図3に示す形状となる。すなわち、ロータコア52が得られる。
【0057】
1組の孔群76に設けられた2個の永久磁石54は、上記したようにN極又はS極のいずれかである。すなわち、1組の孔群76における永久磁石54の極数は1極である。2個の永久磁石54は、鍔部34を介して棹部32に対面する。本実施形態では、極数が16極であり、且つティース部26の個数が96個である。従って、1極(本実施形態では、1組の孔群76に設けられた2個の永久磁石54)の磁極に対するティース部26の平均個数は、6個である。
【0058】
ティース部26の個数が96個であるので、スロット28の個数も96個である。従って、1極の磁極に対するスロット28の平均個数も6個である(
図7参照)。このように、1極の磁極に対するティース部26又はスロット28の平均個数は、計算によって求められる。
【0059】
図7では、1
極の
磁極(1組の孔群76に設けられた2個の永久磁石54)が6個のスロット28に対面した瞬間を示している。この場合、下方のS極にティース部26の約半分が対面し、且つ上方のS極に別のティース部26の約半分が対面する。その他、5個のティース部26の全体が2個のS極に対面している。従って、この場合においても、2個のS極に対面するティース部26の平均個数は6個である。
【0060】
なお、ロータ14が
図7から若干回転したとき、1組の孔群76に設けられた2個の永久磁石54の間に、6個のティース部26の全体が対面する。また、下方のS極にスロット28の約半分が対面し、且つ上方のS極に別のスロット28の約半分が対面する。その他、5個のスロット28の全体が2個のS極に対面する。従って、この場合においても、2個のS極に対面するスロット28の平均個数は6個である。
【0061】
ロータ14は、回転シャフト50を有する。この回転シャフト50は、図示しない支持部材に対し、回転可能に支持されている。回転シャフト50には、不図示のベアリングが設けられる。該ベアリングは、回転シャフト50と前記支持部材との間に介在する。
【0062】
回転シャフト50の先端には、図示しない回転体が取り付けられる。回転シャフト50と回転体とを、ギア等を介して連結してもよい。いずれの場合においても、電磁コイル30に通電が行われて回転シャフト50が回転することに伴い、回転体が回転する。回転体は、例えば、プロペラ等である。
【0063】
本実施形態に係る回転電機10は、基本的には以上のように構成される。次に、この回転電機10の作用効果につき説明する。
【0064】
上記したように、複数個の電磁鋼板60が積層されることでロータコア52が形成される。個々の電磁鋼板60には、貫通孔72が形成されている。このため、個々の電磁鋼板60は軽量である。従って、ロータコア52が軽量となる。このため、回転電機10も軽量となる。
【0065】
また、上記したように、本実施形態では、回転電機10の外径は最大で450mmである。すなわち、回転電機10は比較的小型である。このように、本実施形態によれば、回転電機10の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0066】
回転電機10は、例えば、飛翔体のプロペラの回転駆動源として用いられる。この場合、回転電機10は、3相モータとして用いられる。
【0067】
回転電機10を3相モータとして駆動させるために、電磁コイル30に通電を行う。通電に伴い、電磁コイル30が交番磁界を形成する。交番磁界は、永久磁石54の磁界に対して反発し合うか、又は引き寄せ合う。これに伴い、回転シャフト50とロータコア52とが一体的に回転する。従って、永久磁石54は、ロータコア52の外縁に沿って円を描くように移動する。
【0068】
回転シャフト50の回転速度が小さいときに高トルクを得るためには、直径が大きなベアリングを用いる必要がある。ロータ内径は、直径が大きなベアリングを支持することが可能な大きさに定められる。ここで、ロータ内径とロータ外径との比が1:1.5~1:3.5の範囲内であると、電磁鋼板60の直径(ロータ14の直径)が大きくなることが抑制される。従って、この場合、ロータ14は、小型でありながら、直径が大きなベアリングを支持することができる。
【0069】
ロータコア52の個々の電磁鋼板60は、連結部66を有する。隣接する連結部66同士の交差角度βは、12°~36°の範囲内である。これにより、連結部66が適切な個数に定められる。従って、外円環部64が内円環部62に連結部66を介して十分に支持される。これにより、ロータコア52によって多数個の永久磁石54を保持することが可能となる。すなわち、極数を大きくすることができる。従って、回転シャフト50の回転トルクを大きくすることができる。
【0070】
図1の例においては、磁極の極数は16極であり、且つスロット28の個数は96個である。従って、1極の磁極(1組の孔群76に挿入された2個の永久磁石54)に対面するスロット28の個数は6個である。このように、本実施形態では、1極の磁極に対面するスロット28の個数が適切に定められる。これにより、回転電機10の直径が比較的小さいにも拘わらず、回転シャフト50の回転トルクが大きくなる。すなわち、回転電機10は、小型且つ軽量な3相モータであるにも拘わらず、プロペラ等の回転体に大きな回転駆動力を付与することができる。
【0071】
しかも、この場合、漏れ磁束が低減する。その結果、電磁コイル30の鎖交磁束が低減する。従って、電磁コイル30の渦電流が低減して該電磁コイル30の発熱が抑制される。
【0072】
さらに、ティース部26において、棹部32と拡開部36の交差角度θ1、θ2が108°~130°の範囲内である。鍔部34の厚みT1が0.2mm~2.0mmの範囲内である。電磁コイル30のティース部26に対するオフセット量OFが5~11%の範囲内である。交差角度θ、厚みT1及びオフセット量OFをこのような範囲内とすることにより、ステータ12における鉄損と銅損との合計を小さくすることができる。従って、ステータ12の発熱が抑制される。
【0073】
また、オフセット量OFが適切に設定されることにより、漏れ磁束が小さくなる。これにより、例えば、ティース部26又は電磁コイル30等が局所的に温度上昇を起こすことが回避される。従って、この温度上昇に起因してステータコア20の素材(電磁鋼板60等)又は電磁コイル30の素材(銅等)が劣化することが抑制される。
【0074】
以上のように、本実施形態によれば、回転電機10の小型化及び軽量化を図りながら、回転シャフト50の回転トルクを向上させることができる。従って、回転電機10をモータとしたときには、高トルクを継続して出力することができる。しかも、上記したように、回転電機10においては発熱が抑制される。
【0075】
回転電機10に対しては、冷却媒体(例えば、冷却風)が供給される。冷却媒体の一部は、ステータコア20とロータコア52との間を通過する。冷却媒体の別の一部は、ロータコア52に形成された流通路82(貫通孔72)を通過する。以上のようにして、回転電機10が冷却される。
【0076】
ロータコア52では、1個の電磁鋼板60と、直上に積層された電磁鋼板60との間に位相差が設けられている。従って、積層された2個の電磁鋼板60では、貫通孔72同士の間にも位相差が生じている。このため、ロータコア52において、1個の流通路82に冷却媒体が集中又は滞留することが回避される。換言すれば、冷却媒体が複数個の流通孔に略均等に分配され、その後、分配された冷却媒体が個々の流通孔を容易に流通する。従って、回転電機10の全体が効率よく且つ略均等に冷却される。
【0077】
ロータコア52が回転する最中には、該ロータコア52に応力が作用する。ここで、積層された2個の電磁鋼板60では、連結部66同士の間にも位相差が生じている。このため、位相差が生じた連結部66同士に応力が分散される。従って、任意の連結部66に応力が集中することが回避される。このような理由から、連結部66の耐久性が向上する。
【0078】
以上説明したように、本実施形態は、円環形状をなすヨーク部(24)と、前記ヨーク部の内周縁から該ヨーク部の径方向内側に突出した複数個のティース部(26)とを有し、前記複数個のティース部において互いに隣接するティース部同士の間にスロット(28)が形成されたステータ(12)と、
前記ステータの内側に配置され、前記複数個のティース部に面するロータ(14)と、
を備える回転電機(10)であって、
前記ロータは、極数が16極~32極である永久磁石(54)を保持するロータコア(52)と、前記ロータコアと一体的に回転する回転シャフト(50)とを有し、
前記ステータは、前記スロットに設けられた電磁コイルを有し、
前記複数個のティース部の各々は、前記ヨーク部の内周縁から該ヨーク部の径方向内方に突出する棹部(32)と、前記棹部よりも前記ロータに近接し且つ該棹部に比べて幅広な鍔部(34)と、前記棹部と前記鍔部との間に介在し、前記棹部から前記鍔部に向かうにつれて幅広となる拡開部(36)とを有し、
前記電磁コイルの前記ロータを向く内周端の位置が、前記スロット内で前記棹部の内周端から前記ヨーク部に向かってオフセットされ、
前記鍔部の前記内周端から、前記電磁コイルの前記内周端までの距離であるオフセット量(OF)が、前記複数個のティース部の各々の全長の5%~11%である回転電機を開示する。
【0079】
このように、本実施形態では、ステータのスロットに設けられる電磁コイルが、ティース部の内周端からヨーク部に向かってオフセットされる。この状態において、電磁コイルのオフセット量が所定の範囲内に定められる。オフセット量をこのように規定することにより、極数が大きい(永久磁石の個数が多い)場合であっても、漏れ磁束が低減する。従って、特に鍔部が永久磁石の磁束を十分に受容することができる。その結果、電磁コイルの鎖交磁束及び渦電流が低減する。以上のような理由から、ステータ(特に電磁コイル)の発熱を抑制することができる。
【0080】
また、極数が大きい場合であってもティース部(特に鍔部)が永久磁石の磁束を十分に受容することが可能であるので、極数を16極~32極と大きくすることができる。これにより、例えば、回転シャフトが低速で回転する場合においても十分に大きな回転トルクが得られる。
【0081】
本実施形態は、前記ステータの軸方向に前記ステータ及び前記ロータを見たとき、1極の磁極に対する前記スロットの平均個数が6個である回転電機を開示する。
【0082】
この場合、1極の磁極に対面するスロット及びティース部の平均個数が適切に定められる。これにより、回転電機の直径が比較的小さい場合であっても、回転シャフトの回転トルクが大きくなる。従って、回転電機を3相モータとして用いた場合、小型且つ軽量であるにも拘わらず、回転シャフトに設けられた回転体に対して大きな回転駆動力を付与することができる。すなわち、回転電機は、高トルクを継続して出力することが可能である。
【0083】
しかも、この場合、漏れ磁束が低減する。その結果、電磁コイルの鎖交磁束が低減する。従って、電磁コイルの渦電流が低減して該電磁コイルの発熱が抑制される。
【0084】
加えて、極数と、スロットの個数とを上記のように定めている。この場合、回転電機の直径が過度に大きくなることを回避しながら、回転シャフトに大きな回転トルクを得ることができる。従って、小型でありながら高出力のモータを得ることが可能である。
【0085】
本実施形態は、前記ロータコアに、前記回転シャフトが配置される第1挿入孔(70)と、前記第1挿入孔の径方向外側に形成された複数個の貫通孔(72)と、前記複数個の貫通孔の径方向外側に形成され且つ前記永久磁石が挿入される複数個の第2挿入孔(74)とが形成され、
且つ前記ロータコアは、前記複数個の貫通孔と前記第1挿入孔との間に位置する内円環部(62)と、前記複数個の貫通孔の径方向外側に位置し且つ前記複数個の第2挿入孔が形成された外円環部(64)と、前記内円環部と前記外円環部とを連結する複数個の連結部(66)とを有する、回転電機を開示する。
【0086】
隣接する連結部同士の間は、貫通孔である。すなわち、ロータコアには複数個の貫通孔が形成されている。ロータコアは、貫通孔が形成されたことに基づいて軽量である。従って、回転電機の軽量化を図ることができる。
【0087】
本実施形態は、前記ロータコアは、複数個の電磁鋼板(60)の積層体であり、前記複数個の電磁鋼板の各々に、前記第1挿入孔、前記複数個の貫通孔及び前記複数個の第2挿入孔が形成され、且つ前記複数個の電磁鋼板の各々が前記内円環部、前記外円環部及び前記連結部を有する回転電機を開示する。
【0088】
厚みの大きな単一部材のロータコアを得るには、例えば、円柱体形状のワークに対して穿孔加工を施すことにより、第1挿入孔、貫通孔及び第2挿入孔を形成する必要がある。しかしながら、厚みの大きなワークに対して穿孔加工を施すことは容易ではない。これに対し、上記した形状の電磁鋼板を積層してロータコアを得る場合、電磁鋼板を積層するのみで、第1挿入孔、貫通孔及び第2挿入孔が形成される。
【0089】
個々の電磁鋼板は、例えば、薄肉な円板形状のワークに対して打ち抜き加工を行い、第1挿入孔、貫通孔及び第2挿入孔を形成することで得られる。薄肉な円板形状のワークに対する打ち抜き加工は、厚みの大きなワークに対する穿孔加工よりも容易に実施することができる。従って、ロータコアを容易に作製することが可能である。
【0090】
本実施形態は、前記複数個の電磁鋼板が第1の態様又は第2の態様で積層された回転電機を開示する。
【0091】
第1の態様は、前記複数個の電磁鋼板において互いに隣接する一方の電磁鋼板(601)の前記複数個の連結部(661)と、前記複数個の電磁鋼板において互いに隣接する他方の電磁鋼板(602)の前記複数個の連結部(662)とが、前記ロータの軸方向に前記ロータを見たときに重ならない位置となるように積層される態様である。
【0092】
第2の態様は、各々が前記複数個の電磁鋼板を有する複数の板群(81)が前記軸方向に積層され、且つ前記複数の板群において互いに隣接する一方の板群の前記複数個の連結部(661)と、前記複数の板群において互いに隣接する他方の板群の前記複数個の連結部(662)とが、前記ロータを前記軸方向に見たときに重ならない位置となるように積層される態様である。
【0093】
上下に積層される2個(又は2群の板群)の電磁鋼板において連結部同士が重なっていないので、任意の位相の連結部に応力が集中することが回避される。すなわち、位相が相違する連結部の各々に対し、応力が適切に分散される。このため、連結部の耐久性が向上する。
【0094】
本実施形態は、前記ステータの外径が230~450mmの範囲内である回転電機を開示する。なお、「ステータの外径」は、「回転シャフトの中心からステータコアの外縁までの距離の2倍」と同義である。従って、「ステータの外径」は「回転電機の外径」と言い換えられる。
【0095】
このような外径の回転電機は、比較的小型である。すなわち、回転電機は、小型でありながら、高トルクを継続して出力することが可能である。
【0096】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【0097】
上述の実施形態では、16極96スロットの回転電機10を例示している。しかしながら、極数又はスロット28の個数は、特にこれに限定されない。例えば、
図8に示すように、24極144スロットの回転電機90であってもよい。又は、
図9に示すように、32極192スロットの回転電機100であってもよい。いずれの場合も、1極に対するスロット28の個数は6個である。なお、
図8及び
図9では電磁コイル30を省略している。
【0098】
極数及びスロット28の個数が多くなるほど、ロータ14の回転中心(回転シャフト50の中心O)からステータコア20の外周縁までの距離Xが大きくなる傾向がある。距離Xの2倍が回転電機10の外径であるから、この場合、外径が大きくなる。しかしながら、各部位の寸法又は交差角度等を
図1に例示した回転電機10と同様の数値範囲とすることにより、回転電機90、100の外径を最大でも450mmとすることが可能となる。従って、回転電機90、100においても、小型化及び軽量化を図ることができる。
【0099】
しかも、各部位の寸法又は交差角度等を
図1に例示した回転電機10と同様の数値範囲とすることにより、回転シャフト50の回転トルクを向上させることができる。従って、回転電機90、100によれば、高トルクを継続して出力することが可能である。すなわち、回転電機90、100においても、回転電機10の作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0100】
線材をティース部26に巻回することに代替し、特開2020-39207号公報の
図1に示される金属導体を用いてもよい。この金属導体は、2本の脚部を有する。所定個数の金属導体の脚部をスロット28に挿入することにより、電磁コイルが形成される。
【0101】
回転電機10、90、100を発電機として機能させてもよい。この場合、電磁コイル30に対して外部電源から交流電流を付与する。
【符号の説明】
【0102】
10、90、100…回転電機 12…ステータ
14…ロータ 20…ステータコア
24…ヨーク部 26…ティース部
28…スロット 30…電磁コイル
32…棹部 34…鍔部
36…拡開部 40a…第1平行辺
40b…第2平行辺 42a…第1傾斜辺
42b…第2傾斜辺 44a…第1径方向辺
44b…第2径方向辺 50…回転シャフト
52…ロータコア 54…永久磁石
60、601~604…電磁鋼板 62…内円環部
64…外円環部 66、661~664…連結部
70…第1挿入孔 72…貫通孔
74…第2挿入孔 76、761~764…孔群
80、81…板群 82…流通路
LN1…第1仮想直線 LN2…第2仮想直線
LN3…第3仮想直線 LO…ティース部の全長
OF…オフセット量 α…位相差
β、θ1、θ2…交差角度