(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】圧縮検知装置
(51)【国際特許分類】
G01L 1/24 20060101AFI20241209BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20241209BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G01L1/24 A
G01L5/00 A
E01D21/00 Z
(21)【出願番号】P 2021159876
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】玉野 慶吾
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 直樹
(72)【発明者】
【氏名】平 陽兵
(72)【発明者】
【氏名】大窪 一正
(72)【発明者】
【氏名】岩本 拓也
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-176965(JP,A)
【文献】特開2002-267575(JP,A)
【文献】特開平11-351983(JP,A)
【文献】特開平10-197297(JP,A)
【文献】特開2020-073775(JP,A)
【文献】特開2012-136747(JP,A)
【文献】特開2003-274546(JP,A)
【文献】特開2012-098182(JP,A)
【文献】特開2002-223510(JP,A)
【文献】特開2016-188850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/24
G01L 1/00
G01L 5/00
G01B 11/16
E01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートに埋設される圧縮検知装置であって、
前記コンクリートより高い剛性を有し、一方向に沿って積層される複数の剛性材料と、
前記一方向に沿って並ぶ2つの前記剛性材料の間に配置される検知材料と、
前記剛性材料に対する前記一方向への圧縮力による前記検知材料の不可逆的な変形を検知する検知装置と、
を備える圧縮検知装置。
【請求項2】
前記検知材料は、2つの前記剛性材料の間に介在し、前記剛性材料に所定値以上の前記圧縮力が付与されたときに破断するダボを含む、
請求項1に記載の圧縮検知装置。
【請求項3】
前記検知装置は、複数の前記剛性材料、及び前記検知材料に接触する光ファイバケーブルを含む、
請求項1又は2に記載の圧縮検知装置。
【請求項4】
前記光ファイバケーブルは、複数の前記剛性材料、及び前記検知材料に螺旋状に巻き付けられる、
請求項3に記載の圧縮検知装置。
【請求項5】
コンクリートに埋設されており、前記コンクリートに対する圧縮力を検知する線状の検知装置を備えた請求項1~4のいずれか一項に記載の圧縮検知装置を交換する交換方法であって、
前記コンクリートには、前記検知装置が収納された収納部材が埋設されており、
前記コンクリートを削って形成した穴から前記圧縮検知装置を露出する工程と、
前記圧縮検知装置から延びる前記検知装置を切断して前記穴から前記圧縮検知装置を取り出す工程と、
前記収納部材から前記穴に前記検知装置を引き出す工程と、
前記穴に新規の前記圧縮検知装置を配置する工程と、
新規の前記圧縮検知装置の前記検知装置に、引き出した前記検知装置を接続する工程と、
前記穴にコンクリートを充填する工程と、
を備える交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンクリートに作用する圧縮力を検知する圧縮検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第6145344号公報には、FBGセンサ(Fiber Bragg Grating Sensor)を用いて構造物における衝撃を検知する衝撃検知方法及び検知装置が記載されている。この検知装置は、構造物に貼り付けられるFBGセンサ、光ファイバアンプ、光サーキュレータ及びカプラを備える。カプラには、ひずみ計測用光学フィルタと、温度計測用光学フィルタと、光電変換器とが接続されている。構造物にひずみが生じると、FBGセンサからの反射光が光ファイバアンプ及びカプラを介して光源変換器に入力され、光源変換器によって構造物への衝撃力の印加履歴が取得される。
【0003】
特許第4187250号公報には、光ファイバによる構造物の診断方法及びシステムが記載されている。このシステムは、構造物の対象部材に光ファイバが取り付けられて、光ファイバによって対象部材の初期歪みが計測される。光ファイバは、対象部材の特定部位の歪み履歴を連続的に監視し、初期歪み及び歪み履歴から構造物の健全度を診断する。
【0004】
特開2013-250120号公報には、構造物の損傷検出方法が記載されている。損傷検出方法では、一対の橋脚の間に配置された橋桁の下面に損傷検出装置が貼り付けられる。損傷検出装置は、橋桁の被検面に固定される第1の基部及び第2の基部と、第1の基部及び第2の基部の間に配設される検出用部材とを備える。検出用部材として、光学式の歪み検出手段が内蔵された光ファイバが用いられる。
【0005】
特開2001-59796号公報には、石油タンクの強度予知装置が記載されている。強度予知装置は、石油タンクの側板が立設された基台と、石油タンクの側板に敷設された光ファイバと、歪み計測器と、監視装置とを備える。歪み計測器は、光ファイバを介して石油タンクへの外力に伴う歪みを計測する。監視装置は、歪み計測器によって計測された歪み量に基づいて亀裂の発生有無を監視する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6145344号公報
【文献】特許第4187250号公報
【文献】特開2013-250120号公報
【文献】特開2001-59796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、コンクリート構造物において、地震等に伴って生じるコンクリート構造物への圧縮力を事後的に把握するのが難しいという問題がある。前述したように、光ファイバケーブルを用いてコンクリート構造物の歪みを検知する方法は知られている。しかしながら、光ファイバケーブルによって検知される歪みは、パルス光を入射した瞬間における歪みであり、コンクリートが受けた圧縮力の過去の履歴又は最大応答を把握することはできない。すなわち、地震等によるコンクリート構造物の挙動に対して、過去に受けた最大の圧縮力を事後的に把握できないという現状がある。
【0008】
本開示は、コンクリート構造物が過去に受けた最大の圧縮力を事後的に把握することができる圧縮検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る圧縮検知装置は、コンクリートに埋設される圧縮検知装置であって、コンクリートより高い剛性を有し、一方向に沿って積層される複数の剛性材料と、一方向に沿って並ぶ2つの剛性材料の間に配置される検知材料と、剛性材料に対する一方向への圧縮力による検知材料の不可逆的な変形を検知する検知装置と、を備える。
【0010】
この圧縮検知装置は、コンクリートより高い剛性を有する複数の剛性材料と、一方向に沿って並ぶ2つの剛性材料の間に介在する検知材料と、圧縮力に伴って不可逆的に変形する検知材料の当該変形を検知する検知装置とを備える。検知材料は、剛性材料が所定値以上の圧縮力を受けたときに不可逆的に変形する。具体的には、コンクリートより高い剛性を有する複数の剛性材料が圧縮力を受けても、当該圧縮力が所定値以上でない場合には検知材料は変形しない。一方、検知材料は、当該圧縮力が所定値以上である場合には不可逆的に変形する。この検知材料の不可逆的な変形を検知装置が検知することにより、受けた圧縮力が所定値以上であったか否かを把握することができる。すなわち、検知装置が検知材料の不可逆的な変形を検知したときはコンクリートが受けた最大圧縮力が所定値以上であり、検知装置が検知材料の不可逆的な変形を検知していないときは最大圧縮力が所定値以上でないことを事後的に把握できる。従って、コンクリートが、過去に所定値以上の圧縮力を受けたかどうかを事後的に把握することができる。
【0011】
検知材料は、2つの剛性材料の間に介在し、剛性材料に所定値以上の圧縮力が付与されたときに破断するダボを含んでもよい。この場合、ダボの破断の有無を検知装置が検知することにより、コンクリートが受けた圧縮力が所定値以上であったか否かを容易に把握することができる。なお、本開示では、破断するダボに限定されず、変形が残留する機構であってもよい。
【0012】
検知装置は、複数の剛性材料、及び検知材料に接触する光ファイバケーブルを含んでもよい。この場合、検知材料の不可逆的な変形を光ファイバケーブルによって高精度に検知できる。光ファイバケーブルでは、光ファイバケーブルが接触する箇所に沿って歪みを連続的に又は分布的に検知可能であるため、例えば複数の検知材料にまたがって光ファイバケーブルが設けられる場合、どの検知材料が変形したかを検知できる。すなわち、光ファイバケーブルは、複数の検知材料に対する変形の有無を検知できるので、過去から受けている圧縮力の履歴をより高精度に把握できる。複数の検知材料は、不可逆的な変形をする所定値がそれぞれ段階的に異なる値に設定されていてもよい。この場合、どの検知材料までが変形したかを検知することにより、コンクリートが過去に受けた最大の圧縮力を事後的に把握することができる。
【0013】
光ファイバケーブルは、複数の剛性材料、及び検知材料に螺旋状に巻き付けられてもよい。この場合、検知材料の変形を検知する光ファイバケーブルが螺旋状に巻き付けられることにより、一方向における光ファイバケーブルの計測点を増やすことができる。従って、光ファイバケーブルによる検知材料の変形をより高精度に検知することができる。
【0014】
本開示に係る圧縮検知装置の交換方法は、コンクリートに埋設されており、コンクリートに対する圧縮力を検知する線状の検知装置を備えた前述の圧縮検知装置を交換する交換方法である。コンクリートには、検知装置が収納された収納部材が埋設されており、コンクリートを削って形成した穴から圧縮検知装置を露出する工程と、圧縮検知装置から延びる検知装置を切断して穴から圧縮検知装置を取り出す工程と、収納部材から穴に検知装置を引き出す工程と、穴に新規の圧縮検知装置を配置する工程と、新規の圧縮検知装置の検知装置に、引き出した検知装置を接続する工程と、穴にコンクリートを充填する工程と、を備える。
【0015】
この圧縮検知装置の交換方法では、圧縮検知装置と、線状の検知装置を収納する収納部材とがコンクリートに埋設されており、コンクリートを削って形成した穴から圧縮検知装置が取り出される。コンクリートを削って形成された穴から圧縮検知装置が露出し、露出した圧縮検知装置は線状の検知装置が切断されて当該穴から取り出される。収納部材に収納されている線状の検知装置は当該穴に引き出され、引き出された検知装置には新規の圧縮検知装置の検知装置が接続される。この状態で当該穴に新規の圧縮検知装置が設置された後に、当該穴にはコンクリートが充填される。従って、当該穴に対する圧縮検知装置の着脱を容易に行うことができる。また、この交換方法では、前述した圧縮検知装置が用いられるため、過去から受けている圧縮力の履歴を高精度に把握することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、コンクリート構造物が過去に受けた最大の圧縮力を事後的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る圧縮検知装置が用いられるコンクリート構造物を示す断面図である。
【
図2】
図1のコンクリート構造物の縦断面図である。
【
図3】実施形態に係る圧縮検知装置を示す縦断面図である。
【
図4】(a)及び(b)は、
図3の圧縮検知装置の挙動を説明するための縦断面図である。
【
図5】実施形態に係る圧縮検知装置の検知装置が通される孔を説明するための縦断面図及び平面図である。
【
図6】(a)は、
図5の孔に挿通された光ファイバケーブルを示す縦断面図である。(b)は、(a)の光ファイバケーブルの挙動を説明するための縦断面図である。
【
図7】(a)、(b)及び(c)は、変形例に係る光ファイバケーブルの配置方法を説明するための縦断面図である。
【
図8】変形例に係る圧縮検知装置を示す縦断面図である。
【
図9】(a)、(b)及び(c)は、実施形態に係る圧縮検知装置の交換方法の工程を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る圧縮検知装置、及び圧縮検知装置の交換方法の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
図1は、実施形態に係る圧縮検知装置1が埋め込まれるコンクリート構造物Sを模式的に示す断面図である。
図1に示されるように、圧縮検知装置1は、コンクリート構造物Sに埋設された状態でコンクリート構造物Sに作用する圧縮力F(
図3参照)を検知する。一例として、コンクリート構造物Sは、橋脚の基部の一部である。コンクリート構造物Sは、例えば、複数の構造用鉄筋S1と、コンクリートS2とを有する。一例として、構造用鉄筋S1は、鉛直方向D1に延びる複数の軸方向鉄筋S11と、水平方向D2に延びる帯鉄筋S12とを含んでいる。
【0020】
軸方向鉄筋S11及び帯鉄筋S12は格子状に配置されている。2本の帯鉄筋S12の間隔W1は、例えば、200mmであり、2本の帯鉄筋S12の表面間距離W2は165mm以上且つ175mm以下である。圧縮検知装置1は、2本の軸方向鉄筋S11及び2本の帯鉄筋S12によって画成される矩形状領域に埋設される。従って、構造用鉄筋S1が無い位置に圧縮検知装置1が埋設されるので、構造用鉄筋S1に干渉することなくコンクリートS2に対して容易に圧縮検知装置1を着脱できる。
【0021】
圧縮検知装置1は、本体部10と、本体部10から延び出す線状の検知装置20とを備える。本実施形態において、検知装置20は、光ファイバケーブル21と、光ファイバケーブル21の端部に設けられた計測器22とを有する。本体部10から延び出す光ファイバケーブル21は、例えば、構造用鉄筋S1(一例として軸方向鉄筋S11)に沿うように配置される。
【0022】
計測器22は、例えば、光ファイバケーブル21を用いてレイリー散乱光を用いた計測によって検知材料12(
図3参照)の不可逆的な変形を歪みとして計測する。しかしながら、計測器22は、光ファイバケーブル21を用いて、ブリルアン計測によって歪みを計測してもよい。計測器22が光ファイバケーブル21に計測光K1を入力すると、光ファイバケーブル21において後方散乱光K2が生じる。後方散乱光K2のスペクトル(周波数ごとの強度)は、歪みによって変化する。後方散乱光K2の強度は計測光K1の強度よりも小さい。レイリー散乱光を用いた計測では、後方散乱光K2のスペクトルの変化を計測することによって、光ファイバケーブル21に生じた歪みを検出する。レイリー散乱光は、ブリルアン散乱光よりも強度が大きいため、レイリー散乱光を用いた計測は、精度が高い上に、比較的、光のロスに強いという利点がある。光ファイバケーブル21では、例えば、1μの歪みといった精度で検知材料12の不可逆的な変形の検知が可能である。
【0023】
図2は、コンクリート構造物S及び圧縮検知装置1を示す縦断面図である。
図1及び
図2に示されるように、例えば、コンクリートS2には、検知装置20(光ファイバケーブル21)を収納する収納部材30が埋設される。一例として、コンクリートS2には複数の収納部材30が埋設されている。
【0024】
収納部材30において、例えば、光ファイバケーブル21は螺旋状に巻かれている。一例として、収納部材30は光ファイバケーブル21が螺旋状に巻き付けられるリールを有する。このように巻かれた光ファイバケーブル21を収納部材30が収納することにより、長い光ファイバケーブル21を効率よく収納可能である。例えば、収納部材30からは、ケーシングチューブ31が延び出しており、ケーシングチューブ31の内部において光ファイバケーブル21が移動自在となっている。
【0025】
例えば、複数の収納部材30のうちの1つは計測器22と本体部10の間に介在する。この場合、本体部10から延び出す光ファイバケーブル21には収納部材30から延び出す光ファイバケーブル21が接続されており、収納部材30から本体部10とは反対側に延び出す光ファイバケーブル21が計測器22に接続されている。
【0026】
例えば、2つの収納部材30のうちの一方が計測器22側に配置され、2つの収納部材30のうちの他方が計測器22とは反対側に配置されている。本体部10からは一対の光ファイバケーブル21が延び出している。一対の光ファイバケーブル21の一方が計測器22側の収納部材30に接続され、一対の光ファイバケーブル21の他方が計測器22とは反対側の収納部材30に接続されている。
【0027】
図3は、圧縮検知装置1の本体部10を拡大して示す圧縮検知装置1の縦断面図である。
図3に示されるように、本体部10は、複数の剛性材料11と、2つの剛性材料11の間に配置される検知材料12とを備える。本実施形態に係る本体部10は、更に、2つの剛性材料11の間に介在する不陸調整材13と、複数の剛性材料11を囲む管状のスポンジである軟性材料14と、軟性材料14を囲む管状部材15とを備える。
【0028】
圧縮検知装置1(本体部10)は、例えば、円柱状を呈する。例えば、圧縮検知装置1の軸線Lに沿って延びるように光ファイバケーブル21が複数の剛性材料11を貫通している。圧縮検知装置1の高さH1(一方向A1への長さ)は、例えば、100mm以上且つ160mm以下(一例として120mm)である。高さH1が160mm以下であることにより、2本の軸方向鉄筋S11及び2本の帯鉄筋S12によって画成される矩形状領域により確実に圧縮検知装置1を埋設できる。
【0029】
圧縮検知装置1の直径Rは、例えば、40mm以上且つ100mm以下(一例として50mm)である。剛性材料11の高さ(一方向A1への長さ)は、例えば、10mm以上且つ20mm以下である。但し、剛性材料11の高さの下限は、光ファイバケーブル21の空間分解能によって定められてもよい。不陸調整材13の厚さ(一方向A1への長さ)は、例えば、数mm(一例として5mm)である。
【0030】
例えば、剛性材料11は、軟性材料14及び管状部材15よりも一方向A1の端部側に突出している。これにより、剛性材料11に圧縮力Fを作用させやすくすることができる。剛性材料11は、コンクリートS2よりも高い剛性を有する剛な材料である。剛性材料11は、例えば、鋼材によって構成されている。一例として、剛性材料11の材料は鉄である。しかしながら、剛性材料11の材料は、鉄に限られず、例えば、コンクリートS2より強度が高い繊維補強コンクリートであってもよい。
【0031】
複数の剛性材料11は一方向A1に沿って積層される。一方向A1は、例えば、鉛直方向D1に一致する方向である。この場合、圧縮検知装置1によって鉛直方向D1への圧縮力Fを検知可能である。しかしながら、一方向A1は、鉛直方向D1以外の方向であってもよく、任意の方向とすることが可能である。
【0032】
例えば、複数の剛性材料11は、一方向A1の端部に位置する一対の第1剛性材料11Aと、一対の第1剛性材料11Aの間に位置する第2剛性材料11Bとを含んでいる。
図3では、一方向A1に沿って並ぶ2つの第1剛性材料11Aと、2つの第1剛性材料11Aの間に位置する3つの第2剛性材料11Bとを備える例を示している。第1剛性材料11A及び第2剛性材料11Bは、例えば、円柱状を呈する。
【0033】
第1剛性材料11Aは、一方向A1への圧縮力Fを受ける受圧面11bと、受圧面11bの反対側を向く傾斜面11cと、外周面11dとを有する。受圧面11b及び傾斜面11cは、例えば、平坦状とされている。傾斜面11cは、受圧面11bに対して傾斜している。受圧面11bに対する傾斜面11cの傾斜角度θ1は、例えば、20°以上且つ30°以下である。しかしながら、傾斜角度θ1は、受圧面11bが受ける圧縮力Fの分力に基づいて計算される設計値であり、上記の角度に限定されない。
【0034】
第2剛性材料11Bは、第1傾斜面11fと、第1傾斜面11fとは反対側を向く第2傾斜面11gと、外周面11hとを有する。第1傾斜面11f及び第2傾斜面11gは、例えば、平坦状とされている。第1傾斜面11f及び第2傾斜面11gのそれぞれは、第2剛性材料11Bの軸線Lに直交する平面に対して傾斜している。
【0035】
第1傾斜面11fの傾斜の向きと、第2傾斜面11gの傾斜の向きとは互いに異なっている。例えば、剛性材料11の径方向A2に進むにつれて第1傾斜面11fは一方向A1の一方側(例えば斜め上方)に傾いており、剛性材料11の径方向A2に進むにつれて第2傾斜面11gは一方向A1の他方側(例えば斜め下方)に傾いている。
【0036】
軸線Lに直交する平面に対する第1傾斜面11fの傾斜角度θ2、及び軸線Lに直交する平面に対する第2傾斜面11gの傾斜角度θ3は、傾斜角度θ1と同一である。これにより、一対の第1剛性材料11Aの間に第2剛性材料11Bが積層されたときに、各第1剛性材料11Aの受圧面11bが軸線Lに直交する平面に対して平行に延在する。
【0037】
以上のように第1剛性材料11A及び第2剛性材料11Bのそれぞれが傾斜面(傾斜面11c、第1傾斜面11f、第2傾斜面11g)を有することにより、受圧面11bに圧縮力Fが作用したときに第1剛性材料11A及び第2剛性材料11Bは圧縮検知装置1の径方向A2に位置ずれする(
図4(a)及び
図4(b)参照)。不陸調整材13は、傾斜面11cと第1傾斜面11fとの間、第1傾斜面11fと第2傾斜面11gとの間、及び第2傾斜面11gと傾斜面11cとの間のそれぞれに設けられる。
【0038】
不陸調整材13は、例えば、セメントペーストによって構成されている。不陸調整材13が設けられることにより、たとえ傾斜面11c、第1傾斜面11f又は第2傾斜面11gに微小な凹凸があった場合でも、受圧面11bへの圧縮力Fに伴う剛性材料11の径方向A2への位置ずれをスムーズにすることができる。但し、傾斜面11c、第1傾斜面11f及び第2傾斜面11gの平滑性が確保されている場合等には不陸調整材13を省略することも可能である。
【0039】
検知材料12は、例えば、第1検知材料12Aと、第2検知材料12Bと、第3検知材料12Cと、第4検知材料12Dとを含んでいる。第1検知材料12A、第2検知材料12B、第3検知材料12C及び第4検知材料12Dは、この順で一方向A1に沿って並んでいる。
【0040】
第1検知材料12Aは、例えば、一方向A1の一端の第1剛性材料11Aと第2剛性材料11Bとの間に介在し、第2検知材料12Bは、一方向A1の一方側の第2剛性材料11Bと中央の第2剛性材料11Bとの間に介在する。第3検知材料12Cは、例えば、中央の第2剛性材料11Bと一方向A1の他方側の第2剛性材料11Bとの間に介在し、第4検知材料12Dは、一方向A1の他方側の第2剛性材料11Bと一方向A1の他方側の第1剛性材料11Aとの間に介在する。
【0041】
第1検知材料12A、第2検知材料12B、第3検知材料12C及び第4検知材料12Dのそれぞれは、受圧面11bに所定値以上の圧縮力Fが作用したときに破断するダボ12b,12c,12dによって構成されている。ダボ12b、ダボ12c及びダボ12dは、例えば、鋼製である。しかしながら、ダボ12b、ダボ12c及びダボ12dは、鋼以外の材料によって構成されていてもよく、せん断力が既知の材料で構成されていればよい。「せん断力が既知の材料」とは、せん断力に対する強度が既知の材料、又は、せん断力に対する変形が既知の材料を示している。
【0042】
ダボ12b、ダボ12c及びダボ12dのそれぞれは、例えば、予め剛性材料11に形成された穴に挿入されている。第1検知材料12Aのダボ12bが破断するときの圧縮力F、第2検知材料12Bのダボ12dが破断するときの圧縮力F、第3検知材料12Cのダボ12cが破断するときに圧縮力F、及び第4検知材料12Dのダボ12cが破断するときの圧縮力Fは、互いに異なっている。
【0043】
一例として、第1検知材料12Aは2つのダボ12bで構成されており、第2検知材料12Bは2つのダボ12dで構成されており、第3検知材料12Cは2つのダボ12cで構成されており、第4検知材料12Dは4つのダボ12cで構成されている。例えば、ダボ12bの太さ、ダボ12cの太さ、及びダボ12dの太さは、互いに異なっている。一例として、ダボ12bが最も太く、ダボ12cが2番目に太く、ダボ12dが最も細い。
【0044】
第1検知材料12A、第2検知材料12B、第3検知材料12C及び第4検知材料12Dは、互いに異なるせん断強度を有する。ダボ12b、ダボ12c及びダボ12dは、互いにせん断強度が異なる材料(例えば80N/mm2、105N/mm2、120N/mm2)によって構成されている。ダボ12b、ダボ12c及びダボ12dとして、互いにせん断強度が異なる材料が用いられてもよい。
【0045】
以上、第1検知材料12A、第2検知材料12B、第3検知材料12C及び第4検知材料12Dにおけるダボ12b,12c,12dの配置態様が互いに異なることにより、第1検知材料12A、第2検知材料12B、第3検知材料12C及び第4検知材料12Dの強度を互いに異ならせることができる。但し、第1検知材料12A、第2検知材料12B、第3検知材料12C及び第4検知材料12Dにおけるダボ12b,12c,12dの配置態様(例えば太さ及び本数)は、前述した例に限られず適宜変更可能である。
【0046】
例えば、第4検知材料12Dの耐力が最も高く、第1検知材料12Aの耐力が2番目に高く、第3検知材料12Cの耐力が3番目に高く、第2検知材料12Bの耐力が最も小さい。この場合、受圧面11bに圧縮力Fが作用すると、
図3、
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、第2検知材料12B(2本のダボ12d)が最初に破断する。次に、受圧面11bに作用する圧縮力Fの大きさによって第3検知材料12C、第1検知材料12A、第4検知材料12Dがこの順で破断する。
【0047】
以上のように第1検知材料12A、第2検知材料12B、第3検知材料12C及び第4検知材料12Dは、受圧面11bに圧縮力Fが作用すると不可逆的に変形(例えば破断)する。この不可逆的な変形を検知装置20(光ファイバケーブル21)が検知することにより、コンクリート構造物Sにどの程度の圧縮力Fが作用したかを事後的に把握することが可能である。
【0048】
図4(a)は第2検知材料12Bのみが不可逆的な変形をしている例を示しており、
図4(b)は第2検知材料12B及び第3検知材料12Cが不可逆的な変形をしている例を示している。
図4(b)は、
図4(a)の場合よりも大きな圧縮力Fを受けて
図4(a)の場合よりも多くの検知材料12が不可逆的に変形している。このように、受圧面11bが受けた圧縮力Fの大きさによって検知材料12が変形する程度が変わるので、検知材料12が変形する程度を検知することによって過去にどの程度の圧縮力Fをコンクリート構造物Sが受けたかを事後的に把握できる。
【0049】
すなわち、第1検知材料12A、第2検知材料12B、第3検知材料12C及び第4検知材料12Dのうち、どの検知材料12が不可逆的な変形をしたかを検知装置20が検知することにより、コンクリート構造物Sが過去に受けた最大の圧縮力Fを事後的に把握できる。なお、上記の例では、検知材料12が第1検知材料12A、第2検知材料12B、第3検知材料12C及び第4検知材料12Dを含んでいる(4層である)例について説明した。しかしながら、検知材料12の層の数、及び剛性材料11の数は、2層、3層、又は5層以上であってもよく適宜変更可能である。
【0050】
第1検知材料12A、第2検知材料12B、第3検知材料12C及び第4検知材料12Dが不可逆的に変形すると、剛性材料11が径方向A2にずれて一部の剛性材料11が軟性材料14を圧縮する。軟性材料14は、例えば、剛性材料11の進入に伴って自在に変形可能なスポンジによって構成されている。管状部材15は、例えば、塩化ビニル、鋼又はアクリルによって構成されている。管状部材15は、一方向A1への圧縮検知装置1の挙動を阻害しにくい弾性係数が小さい材料によって構成されていることが好ましい。但し、管状部材15の材料は特に限定されない。
【0051】
図5、
図6(a)及び
図6(b)は、圧縮検知装置1における光ファイバケーブル21の配置態様の例を説明するための図である。例えば、第1剛性材料11A及び第2剛性材料11Bのそれぞれは、光ファイバケーブル21が挿通される孔11jを有する。孔11jは、一方向A1に沿って延びる延在部11kと、剛性材料11の傾斜面(傾斜面11c,第1傾斜面11f,第2傾斜面11g)に開口すると共に当該傾斜面に向かって拡径する拡径部11mとを有する。
【0052】
光ファイバケーブル21は、例えば、ケーシングチューブ23に収容された状態で孔11jに挿通される。ケーシングチューブ23は、柔軟に変形可能な材料によって構成されており、例えば、蛇腹状を呈する。また、複数の剛性材料11において一方向A1に並ぶ一対の傾斜面において一対の拡径部11mが互いに対向している。よって、一対の拡径部11mが互いに対向する領域において光ファイバケーブル21(ケーシングチューブ23)を緩やかに変形させることができるので、光ファイバケーブル21の断線の可能性を低減させることができる。
【0053】
以上、圧縮検知装置1の軸線Lに沿って光ファイバケーブル21が配置される例について説明した。しかしながら、光ファイバケーブル21の配置態様は上記の例に限られない。
図7(a)、
図7(b)及び
図7(c)は、光ファイバケーブル21の配置態様の変形例を示す図である。
【0054】
図7(a)に示されるように、光ファイバケーブル21は複数の剛性材料11の表面に沿うように複数の剛性材料11に取り付けられてもよい。この場合、例えば、第1剛性材料11Aの外周面11d、及び第2剛性材料11Bの外周面11hに沿うように光ファイバケーブル21が一方向A1に沿って直線状に配置される。
【0055】
図7(b)に示されるように、複数本の光ファイバケーブル21が圧縮検知装置1に取り付けられてもよい。光ファイバケーブル21が、複数の剛性材料11の表面に沿うように配置される第1光ファイバケーブル21b、及び複数の剛性材料11の内部に配置される第2光ファイバケーブル21cを含んでいてもよい。
図7(b)では、1本の第1光ファイバケーブル21bと2本の第2光ファイバケーブル21cが設けられた例を示している。
【0056】
図7(c)に示されるように、光ファイバケーブル21が複数の剛性材料11に螺旋状に巻き付けられてもよい。この場合、光ファイバケーブル21が螺旋状に複数の剛性材料11に巻き付けられることにより、一方向A1における光ファイバケーブル21による計測点を増やすことができる。
【0057】
次に、
図8を参照しながら変形例に係る圧縮検知装置41について説明する。圧縮検知装置41の構成の一部は、前述した圧縮検知装置1の構成の一部と同一であるため、以下では圧縮検知装置1の構成と同一の説明については同一の符号を付して適宜省略する。
図8に示されるように、圧縮検知装置41は、検知材料42の構成が前述した検知材料12の構成とは異なっている。また、光ファイバケーブル21は複数の剛性材料11に螺旋状に巻き付けられている。
【0058】
圧縮検知装置41はダボ12b,12c、12d及び不陸調整材13を有しておらず、圧縮検知装置41では不陸調整材13に代えて損傷検知材43が設けられる。損傷検知材43の圧縮強度は、剛性材料11の圧縮強度よりも小さい。損傷検知材43は、例えば、第1損傷検知材43b、第2損傷検知材43c、第3損傷検知材43d及び第4損傷検知材43fを含んでいる。
【0059】
第1損傷検知材43bの圧縮強度、第2損傷検知材43cの圧縮強度、第3損傷検知材43dの圧縮強度、及び第4損傷検知材43fの圧縮強度は、互いに異なっている。一例として、第1損傷検知材43bの圧縮強度が最も小さく、第2損傷検知材43cの圧縮強度が2番目に小さく、第3損傷検知材43dの圧縮強度が3番目に小さく、第4損傷検知材43fの圧縮強度が最も大きい。この場合、受圧面11bへの圧縮力Fに伴って、第1損傷検知材43bが最も損傷しやすく(ひび割れしやすく)、第2損傷検知材43cが2番目に損傷しやすく、第3損傷検知材43dが3番目に損傷しやすく、第4損傷検知材43fが最も損傷しにくい。
【0060】
以上のように、第1損傷検知材43b、第2損傷検知材43c、第3損傷検知材43d及び第4損傷検知材43fは、受圧面11bに圧縮力Fが作用すると不可逆的に変形する(ひび割れが生じる)。この不可逆的な変形を検知装置20が検知することによってコンクリート構造物Sにどの程度の圧縮力Fが作用したかを事後的に把握できる。
【0061】
また、損傷検知材43に代えて、複数種類の塑性材料が2つの剛性材料11の間に積層されてもよく、複数種類の塑性材料の塑性化の強度が互いに異なっていてもよい。この場合、検知装置20が当該塑性材料の残存変状の有無を検知することにより、過去の圧縮力Fの最大応答を検知することができる。また、2つの剛性材料11の間(傾斜面)における摩擦係数を制御して当該傾斜面がずれる(滑り始める)タイミングが制御されてもよい。
【0062】
次に、本実施形態に係る圧縮検知装置の交換方法について
図9(a)、
図9(b)及び
図9(c)を参照しながら説明する。以下では、既存の圧縮検知装置1を新規の圧縮検知装置1に交換する方法の例について説明する。既存の圧縮検知装置1の交換のタイミングとしては、例えば、既存の圧縮検知装置1のダボ12b,12c,12dが破断して新規の圧縮検知装置1の設置が必要になった場合等が挙げられる。
【0063】
まず、
図9(a)に示されるように、コンクリートS2を削って穴S4を形成し既存の圧縮検知装置1を穴S4に露出させる(圧縮検知装置を露出する工程)。例えば、2本の軸方向鉄筋S11及び2本の帯鉄筋S12によって画成された矩形状領域(
図1参照)のコンクリートS2をコアドリルで斫ってコンクリートS2に埋設されていた圧縮検知装置1を露出させる。
【0064】
続いて、
図9(b)に示されるように、既存の圧縮検知装置1から延びる検知装置20(光ファイバケーブル21)を切断して穴S4から既存の圧縮検知装置1を取り出す(圧縮検知装置を取り出す工程)。その後、収納部材30から穴S4に検知装置20を引き出す(検知装置を引き出す工程)。このとき、収納部材30からケーシングチューブ31の内部に延び出している検知装置20を穴S4に引っ張り込む。
【0065】
そして、
図9(c)に示されるように、新規の圧縮検知装置1を穴S4に配置する(圧縮検知装置を配置する工程)。このとき、例えば圧縮検知装置1の一方向A1(複数の剛性材料11の積層方向)が鉛直方向と一致するように穴S4に圧縮検知装置1を配置し、圧縮検知装置1から上下方向のそれぞれに光ファイバケーブル21を引き出しておく。
【0066】
続いて、新規の圧縮検知装置1の検知装置20に、収納部材30から穴S4に引き出した検知装置20を接続する(検知装置を接続する工程)。その後、穴S4にコンクリートS2を充填する(コンクリートを充填する工程)。そして、充填したコンクリートS2が硬化した後に交換方法の一連の工程が完了する。
【0067】
次に、本実施形態に係る圧縮検知装置1及び交換方法から得られる作用効果について詳細に説明する。
図3及び
図8に例示されるように、圧縮検知装置1は、コンクリートS2より高い剛性を有する複数の剛性材料11と、一方向A1に沿って並ぶ2つの剛性材料11の間に介在する検知材料12,42と、圧縮力Fに伴って不可逆的に変形する検知材料12,42の当該変形を検知する検知装置20とを備える。
【0068】
検知材料12,42は、所定値以上の圧縮力Fを受けたときに不可逆的に変形する。よって、コンクリートS2より高い剛性を有する複数の剛性材料11が圧縮力Fを受けても、圧縮力Fが所定値以上でない場合には検知材料12,42は変形しない。一方、検知材料12,42は、圧縮力Fが所定値以上である場合には不可逆的に変形する。この検知材料12,42の不可逆的な変形を検知装置20が検知することにより、これまでコンクリートS2が受けた圧縮力Fが所定値以上であったか否かを把握することができる。
【0069】
すなわち、検知装置20が検知材料12,42の不可逆的な変形を検知したときはコンクリートS2が受けた最大の圧縮力Fが所定値以上であり、検知装置20が検知材料12,42の不可逆的な変形を検知していないときは当該最大の圧縮力Fが所定値以上ではないと把握できる。従って、コンクリートS2が受けた圧縮力Fの過去の履歴又は最大応答を事後的に把握することができる。
【0070】
検知装置20は、複数の剛性材料11、及び検知材料12,42に接触する光ファイバケーブル21を含んでもよい。この場合、検知材料12,42の不可逆的な変形を光ファイバケーブル21によって高精度に検知できる。光ファイバケーブル21では、光ファイバケーブル21が接触する箇所に沿って歪みを検知可能であるため、例えば複数の検知材料12,42にまたがって光ファイバケーブル21が設けられる場合にどの検知材料12,42が変形したかを検知することができる。すなわち、光ファイバケーブル21は、複数の検知材料12,42に対する変形の有無を検知できるので、過去から受けている圧縮力Fの履歴をより高精度に把握できる。
【0071】
検知材料12は、2つの剛性材料11の間に介在し、剛性材料11に所定値以上の圧縮力Fが付与されたときに破断するダボ12b,12c,12dを含んでもよい。この場合、ダボ12b,12c,12dの破断の有無を検知装置20が検知することにより、コンクリートS2が受けた圧縮力Fが所定値以上であったか否かを容易に把握することができる。
【0072】
光ファイバケーブル21は、複数の剛性材料11、及び検知材料12,42に螺旋状に巻き付けられてもよい。この場合、検知材料12,42の変形を検知する光ファイバケーブル21が螺旋状に巻き付けられることにより、一方向A1における光ファイバケーブル21の計測点を増やすことができる。従って、光ファイバケーブル21による検知材料12,42の変形の検知をより高精度に行うことができる。
【0073】
本実施形態に係る圧縮検知装置1の交換方法では、
図9(a)~
図9(c)に示されるように、圧縮検知装置1と、線状の検知装置20(光ファイバケーブル21)を収納する収納部材30とがコンクリートS2に埋設されており、コンクリートS2を削って形成した穴S4から圧縮検知装置1が取り出される。コンクリートS2を削って形成された穴S4から圧縮検知装置1が露出し、露出した圧縮検知装置1は線状の検知装置20が切断されて穴S4から取り出される。収納部材30に収納されている線状の検知装置20は穴S4に引き出され、引き出された検知装置20には新規の圧縮検知装置1の検知装置20が接続される。この状態で穴S4に新規の圧縮検知装置1が設置された後に、穴S4にはコンクリートS2が充填される。従って、穴S4に対する圧縮検知装置1の着脱を容易に行うことができる。また、この交換方法では、前述した圧縮検知装置1が用いられるため、過去から受けている圧縮力の履歴を高精度に把握することができる。
【0074】
以上、本開示に係る圧縮検知装置及び交換方法の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る圧縮検知装置及び交換方法は、前述の実施形態又は種々の例に限られず特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更可能である。すなわち、圧縮検知装置の各部の構成、形状、大きさ、材料、数及び配置態様、並びに、交換方法の工程の内容及び順序は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0075】
例えば、前述の実施形態では、光ファイバケーブル21を有する検知装置20について説明した。しかしながら、検知装置は、光ファイバケーブル21を有しないものであってもよい。例えば、検知装置は、光ファイバケーブル21に代えて電熱線を備えていてもよい。例えば、複数の剛性材料11に複数の電熱線を配置して、切れた電熱線の状態から圧縮力Fを推定する圧縮検知装置であってもよい。
【0076】
また、前述の実施形態では、複数の剛性材料11が傾斜面11cを有する第1剛性材料11Aと、第1傾斜面11f及び第2傾斜面11gを有する第2剛性材料11Bとを含む例について説明した。しかしながら、複数の剛性材料11は傾斜面を有しないものであってもよく、剛性材料の形状等については適宜変更可能である。検知材料についても同様である。
【0077】
また、前述の実施形態では、橋脚の基部に設けられるコンクリート構造物Sに圧縮検知装置1が埋設される例について説明した。しかしながら、圧縮検知装置は、橋脚の基部以外のコンクリート構造物に対しても適用可能である。すなわち、本開示に係る圧縮検知装置は、種々のコンクリート構造物に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1,41…圧縮検知装置、10…本体部、11…剛性材料、11A…第1剛性材料、11B…第2剛性材料、11b…受圧面、11c…傾斜面、11d…外周面、11f…第1傾斜面、11g…第2傾斜面、11h…外周面、11j…孔、11k…延在部、11m…拡径部、12,42…検知材料、12A…第1検知材料、12B…第2検知材料、12C…第3検知材料、12D…第4検知材料、12b,12c,12d…ダボ、13…不陸調整材、14…軟性材料、15…管状部材、20…検知装置、21…光ファイバケーブル、21b…第1光ファイバケーブル、21c…第2光ファイバケーブル、22…計測器、23…ケーシングチューブ、30…収納部材、31…ケーシングチューブ、43…損傷検知材、43b…第1損傷検知材、43c…第2損傷検知材、43d…第3損傷検知材、43f…第4損傷検知材、A1…一方向、A2…径方向、D1…鉛直方向、D2…水平方向、F…圧縮力、H1…高さ、L…軸線、S…コンクリート構造物、S1…構造用鉄筋、S2…コンクリート、S4…穴、S11…軸方向鉄筋、S12…帯鉄筋、W1…間隔。