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特許7600070マーク検出装置、露光装置および物品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】マーク検出装置、露光装置および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20241209BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241209BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20241209BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20241209BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F7/20 521
H01L21/68 F
G02B7/00 E
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021167573
(22)【出願日】2021-10-12
(65)【公開番号】P2023057858
(43)【公開日】2023-04-24
【審査請求日】2024-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 亮
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-068192(JP,A)
【文献】特開2000-347425(JP,A)
【文献】特表2009-533702(JP,A)
【文献】特開2021-009230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 9/00
G03F 7/20
G02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーク検出系を支持する支持部材と、
前記支持部材に対する前記マーク検出系に含まれるスコープの位置を変更する駆動機構と、
前記支持部材に対する前記スコープの位置を固定する固定動作をそれぞれ行う複数の固定機構と、
予め設定された順序で前記複数の固定機構に前記固定動作を行わせる制御部と、
を備えることを特徴とするマーク検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の固定機構によって前記支持部材に対して前記スコープを固定する際に、前記複数の固定機構に予め設定された時間差で前記固定動作を開始させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のマーク検出装置。
【請求項3】
前記複数の固定機構は、前記スコープの互いに異なる位置に対して、前記スコープを固定するための力を作用させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマーク検出装置。
【請求項4】
前記複数の固定機構の各々は、可動部材を含み、前記可動部材を前記スコープに押し付けることによって前記スコープを固定するための力を前記スコープに作用させる、
ことを特徴とする請求項3に記載のマーク検出装置。
【請求項5】
前記複数の固定機構の各々は、真空圧によって前記スコープを吸引する、
ことを特徴とする請求項4に記載のマーク検出装置。
【請求項6】
前記可動部材は、真空パッドを含み、前記複数の固定機構の各々は、前記可動部材を支持するバネを含む、
ことを特徴とする請求項5に記載のマーク検出装置。
【請求項7】
前記可動部材を前記スコープに押し付ける方向における前記バネの剛性は、前記方向に直交する方向における前記バネの剛性より低い、
ことを特徴とする請求項6に記載のマーク検出装置。
【請求項8】
前記複数の固定機構の各々は、前記可動部材を前記スコープに押し付けるアクチュエータを含む、
ことを特徴とする請求項4に記載のマーク検出装置。
【請求項9】
前記複数の固定機構に前記順序で前記固定動作を行わせた場合の前記スコープの固定に伴う前記スコープの位置ずれは、前記複数の固定機構に同時に前記固定動作を行わせた場合の前記スコープの固定に伴う前記スコープの位置ずれより小さい、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のマーク検出装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記複数の固定機構に前記順序で前記固定動作を行わせた場合の前記スコープの固定に伴う前記スコープの位置ずれが許容範囲に収まるように前記順序を決定する、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のマーク検出装置。
【請求項11】
前記順序は、前記スコープの位置決めのための前記スコープの移動量、移動方向、目標位置、移動速度、移動加速度の少なくとも1つに応じた順序として決定されている、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のマーク検出装置。
【請求項12】
前記駆動機構が前記スコープを位置決めするための動作における前記スコープの最後の駆動の方向は、予め定められた方向である、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のマーク検出装置。
【請求項13】
複数のマーク検出系を備え、
前記複数のマーク検出系の各々について、前記スコープ、前記駆動機構および前記複数の固定機構を含み、
前記複数のマーク検出系の各々について、前記順序が定められている、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のマーク検出装置。
【請求項14】
前記スコープをガイドするように平行に配置された2つのガイドを更に備え、
前記複数の固定機構は、前記2つのガイドの間に配置された2つの固定機構を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のマーク検出装置。
【請求項15】
水平面に対する正射影において、前記2つの固定機構の間に前記スコープの重心が位置する、
ことを特徴とする請求項14に記載のマーク検出装置。
【請求項16】
前記2つの固定機構は、前記スコープに押し付けられる水平面を有する、
ことを特徴とする請求項14又は15に記載のマーク検出装置。
【請求項17】
前記複数の固定機構は、前記2つの固定機構とは異なる高さに配置された固定機構を含む、
ことを特徴とする請求項14乃至16のいずれか1項に記載のマーク検出装置。
【請求項18】
マーク検出系を支持する支持部材と、
前記支持部材に対する前記マーク検出系に含まれるスコープの位置を変更する駆動機構と、
前記支持部材に対する前記スコープの位置を固定する固定動作をそれぞれ行う複数の固定機構と、
互いに異なるタイミング、かつ、予め設定された順序で前記複数の固定機構に前記固定動作を行わせる制御部と、
を備えることを特徴とするマーク検出装置。
【請求項19】
マーク検出系を支持する支持部材と、
前記支持部材に対する前記マーク検出系に含まれるスコープの位置を変更する駆動機構と、
前記支持部材に対する前記スコープの位置を固定する固定動作をそれぞれ行う複数の固定機構と、
前記複数の固定機構のうち予め設定された1つの固定機構に前記固定動作を開始させた後に、前記複数の固定機構のうち他の固定機構に前記固定動作を開始させる制御部と、
をことを特徴とするマーク検出装置。
【請求項20】
基板を露光する露光装置であって、
前記基板のマークを検出するように構成された請求項1乃至19のいずれか1項に記載のマーク検出装置を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項21】
請求項20に記載の露光装置を用いて基板を露光する露光工程と、
前記露光工程を経た前記基板を現像する現像工程と、
前記現像工程を経た前記基板を処理して物品を得る処理工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーク検出装置、露光装置および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の高集積化および微細化により、基板上に形成されるパターンの線幅は非常に小さいものとなってきている。これに伴って、基板上にレジストパターンを形成するリソグラフィ工程では、更なる微細化が望まれている。ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置およびステップ・アンド・スキャン方式の露光装置では、投影光学系を介して露光光を基板上の所望の位置に結像させて、基板を載せたステージを相対移動させることにより、基板上に所望のパターンを形成する。このため、パターンの微細化の要求を満たすためには、基板と露光光の相対位置を高い精度で位置合わせすることが重要である。従来、パターン形成に先立って、基板上のショット領域付近に形成されているアライメントマークの位置を計測し、ショット領域の配列を求めて位置合わせをする方法(グローバル・アライメント)が実施されている。
【0003】
特許文献1には、複数のマーク検出系を移動可能に支持する支持装置が備える力発生装置によって、検出系との間に鉛直方向に関して互いに逆向きの力を発生させることでクリアランスを維持しながら検出系を移動する方法について記載されている。特許文献1によれば、摩擦力の影響を受けずに検出系を移動させることができるため、検出系を高精度に位置決めできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5534262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マークを検出するスコープを目標位置に高精度で位置決めできたとしても、スコープを目標位置に静止させておくためにスコープを固定しようとすると、その固定のための動作によってスコープの位置が変化しうる。
【0006】
本発明は、スコープを固定する際のスコープの位置の再現性を向上させるために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの側面は、マーク検出装置に係り、前記マーク検出装置は、マーク検出系を支持する支持部材と、前記支持部材に対する前記マーク検出系に含まれるスコープの位置を変更する駆動機構と、前記支持部材に対する前記スコープの位置を固定する固定動作をそれぞれ行う複数の固定機構と、予め設定された順序で前記複数の固定機構に前記固定動作を行わせる制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スコープを固定する際のスコープの位置の再現性を向上させるために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の露光装置の構成を示す模式図。
図2】第1実施形態のマーク検出装置の構成例を示す模式図。
図3】比較例のマーク検出系の構成を示す模式図。
図4】第1実施形態におけるマーク検出系を示す模式図。
図5】真空パッドあるいは可動部材の構成例を示し模式。
図6】一実施形態の露光装置の動作を例示すフローチャート。
図7】第2実施形態のマーク検出系を示すも模式図。
図8】第3実施形態のマーク検出系を示すも模式図。
図9】第4実施形態のマーク検出系を示すも模式図。
図10】3つのマーク検出系を備えるマーク検出装置を例示する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、マーク検出装置100が組み込まれた露光装置EXPの構成を示すブロック図である。露光装置EXPは、照明装置ILと、原版31を保持し位置決めする原版ステージRSと、投影光学系2と、基板3を保持し位置決めする基板ステージWSと、マーク検出装置100と、制御部1100と備えうる。基板ステージWS上には、基準プレート39が配置されうる。制御部1100は、プロセッサおよびメモリを有し、照明装置IL、原版ステージRS、基板ステージWS、マーク検出装置100を制御しうる。制御部1100は、マーク検出装置100から出力される信号を処理して基板3のマークの位置を検出する処理を実行しうる。
【0012】
照明装置ILは、基板3に転写するためのパターンを有する原版31を照明する。照明装置ILは、光源部800と、照明光学系801とを含みうる。照明光学系801は、原版31を均一に照明する機能を有しうる。また、照明光学系801は、偏光照明機能を有しうる。
【0013】
光源部800は、例えば、レーザーを含みうる。レーザーは、例えば、波長約193nmのArFエキシマレーザーまたは波長約248nmのKrFエキシマレーザーを含みうるが、光源の種類はエキシマレーザーに限定されない。具体的には、波長約157nmのF2レーザー、または、波長20nm以下のEUV(Extreme ultraviolet)光源が使用されてもよい。
【0014】
照明光学系801は、光源部800から射出した光束を用いて被照明面、即ち原版31を照明する光学系である。照明光学系801は、例えば、光束をスリット形状に成形し、スリット形状の光束で原版31を照明しうる。照明光学系801は、レンズ、ミラー、オプティカルインテグレーター、絞り等を含みうる。これらは、例えば、コンデンサーレンズ、ハエの目レンズ、開口絞り、コンデンサーレンズ、スリット、結像光学系の順に配置されうる。
【0015】
原版31は、例えば、石英製で、その上には基板3に転写されるパターンが設けられうる。原版31は、原版ステージRSによって保持され、不図示のアクチュエータによって駆動されうる。原版31から発せられた回折光は、投影光学系2によって基板3上に投影される。原版31と基板3とは、光学的に共役の関係に配置されうる。原版31と基板3とを投影光学系2の縮小倍率比に従った速度比で走査することにより原版31のパターンを基板3に転写することができる。露光装置EXPは、更に、光斜入射系の原版検出部を備えうる。原版31は、原版検出部によってその位置が検出され、所定の位置に配置されうる。
【0016】
原版ステージRSは、不図示の原版チャックによって原版31を保持し、不図示の駆動機構によって駆動されうる。該駆動機構は、リニアモータなどで構成され、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向および各軸の回転方向に原版ステージRSを駆動することで原版31を駆動しうる。投影光学系2は、投影光学系2の物体面からの光束を投影光学系2の像面に結像させる機能を有する。換言すると、投影光学系2は、原版31のパターンからの回折光を基板3上に結像させる。投影光学系2は、例えば、複数のレンズ素子からなる光学系、複数のレンズ素子と少なくとも一枚の凹面鏡とを有する光学系(カタディオプトリック光学系)、又は、複数のレンズ素子と少なくとも一枚のキノフォームなどの回折光学素子とを有する光学系でありうる。
【0017】
基板3は、被処理体であり、フォトレジストが基板3上に塗布されている。基板3はまた、マーク検出装置100を使って位置が検出されるマークを有する被検出体としても理解されうる。基板3は、例えば、半導体基板またはガラス基板でありうる。
【0018】
基板ステージWSは、不図示の基板チャックによって基板3を保持する。基板ステージWSは、リニアモータ等によって構成される不図示の駆動機構によって駆動され、これによってX軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びそれらの各軸の回転方向に基板3を移動させうる。また、原版ステージRSの位置と基板ステージWSの位置は、例えば、6軸のレーザー干渉計81などにより監視され、制御部1100により一定の速度比率で駆動されうる。
【0019】
次に、図2(A)を参照しながらマーク検出装置100の構成例について説明する。マーク検出装置100は、X軸方向に沿って互いに異なる位置に配置された検出領域を有する複数のマーク検出系21a~21cを備えうる。マーク検出装置100はまた、複数のマーク検出系21a~21cをそれぞれ保持する検出系フレーム23に対して駆動可能な複数の駆動機構22a~22cを備えうる。これにより、マーク検出装置100は、複数の駆動機構22a~22cを用いて、複数のマーク検出系21a~21cのそれぞれの検出領域のX軸方向における位置を個別に調整することができる。マーク検出装置100は、複数のマーク検出系21a~21cのそれぞれの検出領域の相対位置を、複数の駆動機構22a~22cによって少なくともX軸方向について調整可能に構成されうる。複数のマーク検出系21a~21cの駆動方向は、X軸方向に限らず、例えば、X軸方向に加えてY軸方向および/またはZ軸方向についても駆動可能に構成されてもよい。また、複数のマーク検出系21a~21cの少なくとも1つ、例えば、マーク検出系21aについては駆動機構によって駆動されず、検出領域の位置が固定されていてもよい。また、検出領域の位置が固定されるマーク検出系は、マーク検出系21bおよび/またはマーク検出系21cであってもよい。なお、以下では、複数のマーク検出系21a、21b、21cを相互に区別することなく説明する際には、マーク検出系21と記載する。
【0020】
図2(B)は、マーク検出系21の構成例を示す図である。マーク検出系21は、スコープSCPを含む。スコープSCPは、光源61から射出された光で基板3を照明する照明系と、基板3上に設けられたマーク72の像を結像させる結像系とを含みうる。照明系は、照明光学系62、63、66、照明開口絞り64、ミラーM2、リレーレンズ67、偏光ビームスプリッタ68、λ/4板70、対物光学系71を含みうる。結像系は、対物光学系71、λ/4板70、検出開口絞り69、偏光ビームスプリッタ68、結像光学系74を含みうる。結像系は、マーク72からの反射光をセンサ75に結像させるように構成されうる。制御部1100は、レーザー干渉計81を使って測定された基板ステージWSの位置情報とマーク検出系21を使って検出された基板3のマークの信号波形とに基づいて、該マークの座標位置を求める。
【0021】
マーク検出系21において、光源61から射出された光は、照明光学系62、63を通り、基板3と共役な位置に配置された照明開口絞り64に到達する。このとき、照明開口絞り64での光束径は光源61での光束径よりも十分に小さいものとなる。照明開口絞り64を通過した光は、照明光学系66、ミラーM2、リレーレンズ67を通って偏光ビームスプリッタ68に導かれる。ここで、偏光ビームスプリッタ68においては、Y方向に平行なP偏光の光が透過され、X方向に平行なS偏光の光が反射される。このため、偏光ビームスプリッタ68を透過したP偏光の光は、検出開口絞り69を介してλ/4板70を透過して円偏光に変換され、対物光学系71を通って基板3上のマーク72をケーラー照明する。
【0022】
マーク72で反射・回折・散乱された光は、再度、対物光学系71を通った後、λ/4板70を通過して円偏光からS偏光に変換され、検出開口絞り69に到達する。ここで、マーク72で反射された光の偏光状態は、マーク72に照射された円偏光の光とは逆回りの円偏光となる。すなわち、マーク72に照射された光の偏光状態が右回りの円偏光の場合、マーク72で反射された光の偏光状態は左回りの円偏光となる。また、検出開口絞り69は、制御部1100からの命令に従って絞り量を変えることにより、マーク72からの反射光の開口数を変更することができる。検出開口絞り69を通過した光は、偏光ビームスプリッタ68で反射された後、結像光学系74を介してセンサ75に導かれる。従って、偏光ビームスプリッタ68によって基板3への照明光の光路と基板3からの反射光の光路が分離され、基板3上に設けられたマーク72の像がセンサ75上に形成される。
【0023】
続いて、図2(C)~(F)を参照しながらマーク検出装置100を用いて基板3上のマーク(の位置)を検出する方法について説明する。図2(C)は、図2(A)に示すマーク検出装置100をZ軸方向から見た図であり、図2(D)、(E)は、基板3上のマーク32の検出動作中における互いに異なる時点におけるマーク検出装置100と基板3上のマーク32の位置関係を表す。マーク検出装置100は、生産性との兼ね合いから、図2(D)、(E)に示されるように、全ショット領域の内の一部のショット領域のマーク32のみを計測対象とするように制御されうる。一例において、基板テージWSの位置を制御することにより、マーク検出装置100の複数のマーク検出系21のそれぞれの検出領域に対して基板3上の複数のマーク32を位置合わせして複数のマーク32の座標位置が検出されうる。このとき、制御部1100により、可能な限り短い時間で、検出対象である複数のマーク32を検出するように基板ステージWSの位置が制御されうる。
【0024】
例えば、マーク検出装置100の複数のマーク検出系21の内の少なくとも2つのマーク検出系21の検出領域かつ焦点深度内に、基板3上のマーク32をそれぞれ位置合わせして、同時に2つのマーク32の位置が検出されうる。例えば、図2(D)に示すように、マーク検出系21aと21bに対して、基板3上の2つのマーク32Fと32Gを位置合わせして、マークの位置の検出動作が同時に行われうる。また、図2(E)に示すように、基板3上のマーク32のレイアウトに応じて、マーク32の位置の検出に用いるマーク検出系21を変更してもよい。例えば、マーク検出系21bと21cに対して、基板3上のマーク32Lと32Mを位置合わせしてマークの位置の検出動作を行いうる。さらに、図2(F)に示すように、3つのマーク検出系21a~21cの検出領域かつ焦点深度内に、基板3上の3つのマーク32R、32S、32Tを同時に位置合わせしてマーク32R、32S、32Tの位置の検出動作を行うこともできる。これにより、1つのマーク検出系の検出領域に対して基板3上の複数のマーク32を順次に位置合わせして検出する場合に比べて、基板テージWSの駆動時間とマーク検出装置100の計測時間を短縮することが可能となる。
【0025】
制御部1100は、複数のマーク検出系21の検出領域に対するマーク32の検出結果に基づくグローバルアライメントによって基板3上の複数のショット領域34の配列に関して、シフト(移動)、マグニフィケーション、ローテーションを計算しうる。これにより、基板3上の複数のショット領域34の配列の格子配列の規則性を決定することができる。制御部1100は、その後、基準ベースラインと決定された格子配列の規則性から補正係数を求め、その結果に基づいて原版31と基板3との位置合わせを行うことができる。
【0026】
ここで、実施形態のマーク検出装置におけるマーク検出系の固定動作を説明する前に、比較例のマーク検出装置におけるマーク検出系の固定動作およびその問題点を説明する。
【0027】
図3(A)は、比較例のマーク検出系の固定方法の一例を示したものである。なお、図3(A)では、駆動可能な複数のマーク検出系のうちの1つのみが示されている。その他の駆動可能なマーク検出系も同じ構成を有しうる。検出系フレーム23に対し、マーク検出系筐体12が1つのガイド10によってX軸方向に移動可能に支持されている。固定機構11とマーク検出系筐体12との間にギャップが設けられている。固定機構11は、内部に真空吸引のための不図示の流路を有し、その流路の途中には電磁弁15を備え、電磁弁15によって真空圧の供給、遮断を行うことができる。また、不図示の駆動機構によりマーク検出系筐体12が駆動され、不図示のエンコーダによって計測された情報に基づいて、制御部1100による制御によってマーク検出系筐体12が所定位置に位置決めされる。その後、電磁弁15により固定機構11に真空圧を供給することで、固定機構11とマーク検出系筐体12を接触させることができ、摩擦力によってマーク検出系筐体12の位置が固定される。
【0028】
ここで、固定機構11とマーク検出系筐体12との関係において、部品の製造誤差や組立誤差により、真空吸引前(固定前)のギャップ量や傾きには個体差があることが多い。例えば、図3(B)のように右側の固定機構11に傾きがあり、かつ右側の固定機構11がマーク検出系筐体12に近い場合、まず、右側の固定機構11の一部がマーク検出系筐体12と接触しうる。そして、右側の固定機構11のその一部を支点として右側の固定機構11の他の部分および左側の固定機構11がマーク検出系筐体12に接触する際に、マーク検出系筐体12に対して水平方向の力が作用しうる。
【0029】
また、図3(C)のように、2つの固定機構11の間にギャップ量の差がある場合、2つの固定機構11の間に吸引力の差が生じて、マーク検出系筐体12にX軸回りの回転力が作用しうる。以上のような力がマーク検出系筐体12に作用すると、マーク検出系筐体12の位置がずれてしまうことがある。
【0030】
また、電磁弁15から2つの固定機構11までの流路の距離が製造誤差を有する場合には、真空吸引のタイミングが目標タイミングからずれる。これにより、2つの固定機構11に真空圧が供給される順序が意図された順序と逆になると、真空吸引時の挙動が変化し、位置ずれが一定でなくなる場合がある。これらのずれ要因があると、検出対象であるマーク32がマーク検出系21の検出領域の中心から外れてしまい、マーク検出系筐体12の光学系の収差による検出誤差が発生しうる。また、マーク検出系筐体12の位置が目標位置から数μmずれると、マーク32が検出領域から外れてしまい、計測エラーとなることもある。
【0031】
以下、実施形態のマーク検出装置100におけるマーク検出系21の構成を説明する。図4(A)、(B)には、実施形態における駆動可能な複数のマーク検出系21のうちの1つのマーク検出系が示されている。図4(A)は平面図、図4(B)は断面図である。なお、図4(A)において、検出系フレーム23は省略されている。マーク検出系筐体12は、前述のスコープSCPを収容する筐体であるので、以下の説明におけるマーク検出系筐体12は、スコープSCPで読み替えられうる。マーク検出系21は、支持部材としての検出系フレーム23、マーク検出系筐体12(スコープSCP)、駆動機構DM、および、複数の固定機構としての水平固定機構13a、13bを含みうる。マーク検出装置100は、マーク検出系筐体12をガイドする1又は複数のガイドを有してもよく、図4の例では、マーク検出装置100は、2つのガイド10を有する。2つのガイド10は、互いに平行に配置されうる。ガイド10は、例えば、転動体を用いた直動案内、または、静圧軸受け型の直動案内でありうる。
【0032】
2つの水平固定機構13a、13bは、検出系フレーム23によって支持されうる。2つの水平固定機構13a、13bは、水平面に対する正射影において、2つのガイド10の間に配置されうる。2つの水平固定機構13a、13bは、水平面に対する正射影において、2つの水平固定機構13a、13bの間にマーク検出系筐体12の重心が位置するように配置されうる。2つの水平固定機構13a、13bは、マーク検出系筐体12に押し付けられる水平面を有しうる。マーク検出装置100は、追加の固定機構として、2つの鉛直固定機構14a、14bを備えてもよい。2つの鉛直固定機構14a、14bは、マーク検出系筐体12に押し付けられる垂直面を有しうる。以下では、水平固定機構13a、13bおよび鉛直固定機構14a、14bを固定機構13a、13b、14a、14bとも記載する。固定機構13a、13b、14a、14bは、マーク検出系筐体12あるいはスコープSCPの互いに異なる位置に対して、スコープSCPを固定するための力を作用させる。
【0033】
2つの鉛直固定機構14a、14bは、マーク検出系筐体12をωY軸方向(Y軸周りの回転方向)について固定するための保持力を発生しうる。図4の例では、各ガイド10のX方向スパンが十分ではなく、ωY軸方向(Y軸周り)の剛性が十分ではないので、2つの鉛直固定機構14a、14bが設けられうる。しかし、ωY軸方向(Y軸周り)の剛性が要求仕様を満たす場合には、2つの鉛直固定機構14a、14bは不要である。水平固定機構13a、13bは、マーク検出系筐体12を水平方向(XY平面に平行な方向)について固定するための保持力を発生しうる。水平固定機構13a、13bはまた、マーク検出系筐体12をωZ軸方向(Z軸周りの回転方向)について固定するための保持力を発生しうる。
【0034】
鉛直固定機構14a、14bは、検出系フレーム23によって支持されうる。鉛直固定機構14a、14bは、マーク検出系筐体12を鉛直方向(Z軸方向)について固定するための保持力を発生しうる。鉛直固定機構14a、14bは、マーク検出系筐体12をωY軸方向について固定するための保持力を発生しうる。
【0035】
水平固定機構13a、13bには、それらに真空圧を個別に供給するための圧力ラインが接続されうる。鉛直固定機構14a、14bは、それらに真空圧を供給するための共通の圧力ラインが接続されうる。
【0036】
水平固定機構13a、13bに真空圧を個別に供給するための圧力ラインは、それぞれノーマルオープンタイプのエアオペレートバルブ30a、30bを介して真空ラインに連通されうる。水平固定機構13a、13bに真空圧を個別に供給するための圧力ラインは、更に、ノーマルクローズタイプのエアオペレートバルブ40a、40bを介して大気環境に連通されうる。鉛直固定機構14a、14bに真空圧を供給するための共通の圧力ラインは、ノーマルオープンタイプのエアオペレートバルブ30cを介して真空ラインに連通されうる。鉛直固定機構14a、14bに真空圧を供給するための共通の圧力ラインは、更に、ノーマルクローズタイプのエアオペレートバルブ40cを介して大気環境に連通されうる。
【0037】
エアオペレートバルブ30a、30b、30cには、制御部1100によって制御される電磁弁15a、15b、15cを介して圧縮空気が供給されうる。制御部1100が電磁弁15a、15b、15cを開状態にすると、ノーマルオープンタイプのエアオペレートバルブ30a、30b、30cが閉状態になり、ノーマルクローズタイプのエアオペレートバルブ40a、40b、40cが開状態になる。制御部1100が電磁弁15a、15b、15cを閉状態にすると、ノーマルオープンタイプのエアオペレートバルブ30a、30b、30cが開状態になり、ノーマルクローズタイプのエアオペレートバルブ40a、40b、40cが閉状態になる。
【0038】
マーク検出系筐体12が固定されるように水平固定機構13a、13b、鉛直固定機構14a、14bに固定動作を行わせるときは、制御部1100は、電磁弁15a、15b、15cを閉状態にする。これにより、ノーマルオープンタイプのエアオペレートバルブ30a、30b、30cが開状態になり、ノーマルクローズタイプのエアオペレートバルブ40a、40b、40cが閉状態になる。よって、水平固定機構13a、13b、鉛直固定機構14a、14bに真空圧が供給され、水平固定機構13a、13b、鉛直固定機構14a、14bが固定動作を行う。
【0039】
マーク検出系筐体12の固定が解除されるように水平固定機構13a、13b、鉛直固定機構14a、14bに解除動作を行わせるときは、制御部1100は、電磁弁15a、15b、15cを開状態にする。これにより、ノーマルオープンタイプのエアオペレートバルブ30a、30b、30cが閉状態になり、ノーマルクローズタイプのエアオペレートバルブ40a、40b、40cが開状態になる。よって、水平固定機構13a、13b、鉛直固定機構14a、14bに大気圧が供給され、鉛直固定機構14a、14bが解除動作を行う。
【0040】
図5(A)には、水平固定機構13a、13bおよび鉛直固定機構14a、14bをそれぞれ構成する真空チャックの構成例が示されている。図5(A)に例示された真空チャックは、マーク検出系筐体12を真空吸引する際に、マーク検出系筐体12と接触する真空パッド16と、真空パッド16を支持するバネ17とを含みうる。真空パッド16は、可動部材の一例として理解されてもよい。バネ17は可撓性を有し、真空パッド16が吸引方向に移動することを許容しうる。
【0041】
真空パッド16は、上記の真空ラインに連通する凹部が設けられうる。真空パッド16の凹部は、図5(B)に例示されるように矩形の形状を有しうる。あるいは、真空パッド16は、真空吸引時の真空パッド16の弾性変形量を低減するため、図5(C)に例示されるように、中央部に、縁部分とつながった島状部分を有しうる。島状部分は、図5(D)に例示されるように円形の形状を有してもよいし、図5(E)に例示されるように矩形の形状を有してもよいし、図5(F)に例示されるような形状を有してもよい。
【0042】
真空パッド16の凹部の面積によって真空吸引力が決定されるので、島状部分の個数および面積は、必要な真空吸引力が得られる範囲で自由に設計されうる。島状部分の形状にもよるが、島状部分の面積が大きい方が真空吸引による変形を少なくできる。また、バネ17は、真空パッド16がマーク検出系筐体12を吸引する吸引方向(真空パッド16をマーク検出系筐体12に押し付ける方向)に可堯で、吸引方向と直交する方向には剛性が高い構造を有しうる。真空吸引によりマーク検出系筐体12を高剛性で固定するためには、真空吸引できる範囲で、吸引方向についてのバネ17の剛性に対する、吸引方向に直交する方向についてのバネ17の剛性を、例えば500倍以上にすることが望ましい。換言すると、吸引方向についてのバネ17の剛性は、吸引方向に直交する方向についてのバネ17の剛性より低いことが望ましい。
【0043】
前述の固定機構13a、13b、14a、14b、および、後述の駆動モータ、ボールねじなどは、検出系フレーム23、およびマーク検出系筐体12に取り付けられたカバー28によって覆われうる。可動部を覆う部分は、1mm程度の狭い隙間が設けられ、可動部とは非接触となっている。カバー28の内部の空気を排気口29から排出することで、駆動機構などから出るパーティクルがカバー28の外部空間に排出されるのを抑制するとともに、マーク検出系21が発生する熱の一部を放出することができる。
【0044】
以下、実施形態のマーク検出装置100におけるマーク検出系21の駆動動作および固定動作を説明する。まず、制御部1100は、マーク検出系筐体12(スコープSCP)の位置を計測するエンコーダ19の出力に基づいて、マーク検出系筐体12が目標位置に位置決めされるように駆動機構DMをフィードバック制御しうる。駆動機構DMは、例えば、ACサーボモータ26と、ACサーボモータ26によって回転駆動されるボールねじ27とを含みうる。駆動機構DMは、アクチュエータとしてパルスモータを含んでもよい。駆動機構DMは、モータと運動変換機構との組魔早生ではなく、リニアモータ等の直動機構で構成されてもよい。
【0045】
制御部1100は、マーク検出系筐体12が目標位置に到達したら整定判定を行い、制御偏差が閾値以下であれば、位置決め制御を完了する。このとき、制御部1100は、位置決め動作における最後の駆動において、必ず一定の方向(予め定められた方向)にマーク検出系筐体12を駆動して位置決め動作を完了する位置決め動作を制御するとよい。これにより、マーク検出系筐体12(スコープSCP)の位置決めの再現性が高まる。この時点ではまだフィードバック制御(サーボ制御)はONのままである。
【0046】
次に、制御部1100は、マーク検出系筐体12(スコープSCP)を固定する固定シーケンスを実行する。この固定シーケンスでは、水平固定機構13a、13bを動作させるタイミングが互いに異なり、また、水平固定機構13a、13bをそれぞれ動作させる個々のタイミングは、鉛直固定機構14a、14bを動作させるタイミングと異なる。
【0047】
まず、制御部1100は、水平固定機構13aに真空圧を供給するために、電磁弁15aを動作させうる。制御部1100は、次いで、制御部1100は、水平固定機構13bに真空圧を供給するために、電磁弁15bを動作させうる。制御部1100は、電磁弁15bを動作させるタイミングに応じて、フィードバック制御を停止しうる。フィードバック制御の停止により、ACサーボモータ26の駆動が停止され、ACサーボモータ26による保持力が失われる。水平固定機構13bによる真空吸引の開始には数百msec程度の時間がかかるため、実質的には、フィードバック制御の停止が先に完了し、ACサーボモータ26による駆動力と水平固定機構13a、13bによる摩擦力による保持とは干渉しない。あるいは、フィードバック制御のゲインを徐々に下げて、真空吸引の完了時までにフィードバック制御がOFFとなるようにしてもよい。
【0048】
次に、制御部1100は、鉛直固定機構14a、14bに真空圧を供給するために電磁弁15cを動作させ、これによりマーク検出系筐体12(スコープSCP)の位置の固定動作を完了する。
【0049】
以上の例では、制御部1100は、位置決め制御を実行した後、水平固定機構13aを動作させた後に水平固定機構13bを動作させる。あるいは、制御部1100は、位置決め制御を実行した後、水平固定機構13aを動作させた後に水平固定機構13bを動作させ、その後、鉛直固定機構14a、14bを動作させうる。このような動作に代えて、制御部1100は、位置決め制御を実行した後、水平固定機構13bを動作させた後に水平固定機構13aを動作させてもよい。あるいは、制御部1100は、位置決め制御を実行した後、水平固定機構13bを動作させた後に水平固定機構13aを動作させ、その後、鉛直固定機構14a、14bを動作させてもよい。ここで、水平固定機構13a、13bを動作させる順序は、予め設定された順序とされうる。あるいは、水平固定機構13a、13bおよび鉛直固定機構14a、14bを動作させる順序は、予め設定された順序とされうる。この順序は、後述のように、固定シーケンスによるスコープSCPの位置の変動が許容範囲に収まるように、好ましくは、該変動が最小化されるように決定されるとよい。ただし、この順序が予め設定された順序であれば、複数回にわたる固定シーケンスの間における該変動の再現性が得られるので、該変動の量をオフセット値として管理し、スコープSCPの位置決めのための目標位置を該オフセット値に基づいて補正すればよい。
【0050】
水平固定機構13a、13bを動作させる順序を予め設定された順序とすることは、スコープSCPを固定する動作に伴うスコープSCPの位置の変動を高い再現性で抑制するために有利である。あるいは、水平固定機構13a、13bおよび鉛直固定機構14a、14bを動作させる順序を予め設定された順序とすることは、スコープSCPを固定する動作に伴うスコープSCPの位置の変動を高い再現性で抑制するために有利である。
【0051】
以上を要約すれば、制御部1100は、複数の固定機構によって支持部材に対してスコープSCPを固定する際に、該複数の固定機構に予め設定された順序で固定動作を行わせる。更に、好ましくは、制御部1100は、複数の固定機構によって支持部材に対してスコープSCPを固定する際に、該複数の固定機構に予め設定された時間差で固定動作を開始させる。あるいは、制御部1100は、複数の固定機構によって支持部材に対してスコープSCPを固定する際に、該複数の固定機構に、互いに異なるタイミング、かつ、予め設定された順序で定動作を行わせる。あるいは、制御部1100は、複数の固定機構によって支持部材に対してスコープSCPを固定する際に、該複数の固定機構のうち予め設定された1つの固定機構に固定動作を開始させた後に、該複数の固定機構のうち他の固定機構に固定動作を開始させる。典型的には、複数の固定機構に予め定められた順序で固定動作を行わせた場合のスコープSCPの固定に伴うスコープSCPの位置ずれは、複数の固定機構に同時に固定動作を行わせた場合のスコープSCPの固定に伴うスコープSCPの位置ずれより小さい。
【0052】
水平固定機構13a、13bの間にマーク検出系筐体12(スコープSCP)の重心Gが配置された構成は、水平固定機構13a、13bによる真空吸引を開始した時のマーク検出系筐体12の位置ずれの発生を抑制するために有利である。2つのガイド10の間にマーク検出系筐体12が配置された構成は、水平固定機構13a、13bによる真空吸引力に差がある場合においても、マーク検出系筐体12のωX軸方向の回転を抑制するために有利である。鉛直固定機構14a、14bは、Y軸方向およびωZ軸方向に力を発生させうる。しかし、ガイド10および水平固定機構13a、13bによるY方向への剛性が十分であれば、鉛直固定機構14a、14bが発生させる力による位置ずれは許容可能である。本実施形態によれば、水平固定機構13a、13bによるマーク検出系筐体12(スコープSCP)の固定動作によるマーク検出系筐体12の位置の変動を許容範囲内に抑えるために有利であり、これは、基板のマークの位置を高い精度で検出するために有利である。
【0053】
固定機構によってマーク検出系筐体12を真空吸引していない状態では、固定機構とマーク検出系筐体12との間に、例えば0~20μm程度の狭い隙間ができるようにマーク検出装置100の組立、調整が実施されうる。しかし、部品の公差および組立誤差により、その隙間の量および傾きは、様々でありうる。複数の電磁弁15a~15cを順次に動作させる場合、複数のマーク検出系21を短時間で位置決めするためには、その動作の時間差はそれほど大きくとれず、数百msec以内となる可能性がある。その場合、その隙間の量およびその傾きの差、真空ラインの長さの差、エアオペレートバルブの反応速度の差などにより、意図した順序で真空吸引がなされない可能性がある。また、意図した順序どおりでも、真空吸引による固定後の位置ずれが許容範囲を超える可能性がある。こういった場合は、固定シーケンスの実行前のエンコーダ19による計測値と固定シーケンスの実行後のエンコーダ19による計測値との差が許容範囲に収まる順序、あるいは最小になる順序が選択されうる。このような選択は、制御部1100によって実行されてもよい。即ち、制御部1100は、複数の固定機構に予め設定された順序で固定動作を行わせた場合のスコープSCPの固定に伴うスコープSCPの位置ずれが許容範囲に収まるように当該順序を決定しうる。
【0054】
上記の順序を決定するための情報は、例えば、例えば、マーク検出系の移動量、移動速度、移動加速度、移動する方向(X軸方向の+方向に進むか、-方向に進むか)、目標位置等を含んでもよい。
【0055】
移動量に関しては、移動量が大きいことで移動前と移動後とにおいて、スコープSCPの周辺部材の温度分布が異なっていた場合に、熱膨張量の変化で、上記の隙間の量および傾きが変化しうる。移動速度に関しては、速度が大きいことで、マーク検出系に接続されている管などの実装物の経路や曲がり具合などが変化して、駆動時に抵抗となりうる。あるいは、駆動後の実装物の張力でマーク検出系が引っ張られるなどして、上記の隙間の量および傾きが変化しうる。さらに、加速度に関しては、加速度が大きいことで、スコープSCPの周辺部材への反力で周辺部材が振動するため、振動の量や振幅によっては前記隙間の量や傾きが変化し続けることになる。
【0056】
移動する方向に関しては、X軸方向の+方向に進むか、-方向に進むかによって、同じ駆動指令値であっても、ボールねじ等のバックラッシュなどにより、わずかに移動位置が異なり、重心位置が変わるため、上記の隙間の量および傾きの差が変化しうる。目標位置に関しては、目標位置によってマーク検出系の重心が移動してしまい、共通のベースフレームの変形具合が変化してしまため、上記の隙間の量および傾きの差や変化して、最適な吸着順序が変わってくる。
【0057】
更に、複数のマーク検出系が備えられる場合、どのマーク検出系を移動させるかによってマーク検出装置の重心が変化し、共通のベースフレーム等の変形具合が変化するめ、各マーク検出系の前記隙間の量や傾きの差や変化して、最適な吸着順序が変化しうる。
【0058】
さらには、複数のマーク検出系を備える場合においては、マーク検出系ごとに部品公差や組立誤差を持つため、すべてのマーク検出系で各々の固定機構による固定順序を同じ順序とすることが固定後の位置ずれを最小にする順序ではないこともある。そのため、各々のマーク検出系ごとに最適な固定順序を規定することも有効である。
【0059】
また、3つのマーク検出系21を備える場合の模式図を図10に示す。これによれば、3つのマーク検出系21を支えている共通のベース板41は、ベース板41の締結点42に対して、マーク検出系21の重量が加わった箇所が撓んでいる。この撓み量はベース板41の厚みや締結点42の配置場所によって変化する。そのため、固定後の位置ずれを最小にするという観点において、複数のマーク検出系21のための固定動作の順序は、互いに異なりうる。複数のマーク検出系21の各々最適な固定動作の順序は、固定シーケンス前におけるマーク検出系21のエンコーダ19の計測値と固定シーケンス後のエンコーダ19の計測値との差が許容範囲に収まる順序、あるいは最小になる順序とされうる。このような順序の決定は、制御部1100によって行われてもよい。
【0060】
最適な固定動作の順序がスコープSCPの移動量、移動方向、目標位置等の要因で変わる場合は、制御部1100が所定の設定シーケンスを実行することによって順序を決定しもよい。また、上記の説明では、固定機構によってスコープを固定していないときは、マーク検出系筐体12と固定機構との間に隙間がある。しかし、マーク検出系筐体12に対して接触した状態、または予圧をかけた状態で組立、調整を行い、マーク検出系21を移動させる際は圧縮空気を供給することで隙間を作ってもよい。
【0061】
以下では、露光装置EXPの動作を例示的に説明する。図6(A)は、露光装置EXPによる露光処理シーケンスを示すフローチャートである。図6(A)に示された露光シーケンスは、制御部1100によって制御される。まず、S101では、基板3(例えば、ウエハ)が露光装置EXP内に搬入される。S102では、制御部1100は、基板3に対してマーク検出装置100の複数のマーク検出系21のうち少なくとも1つのマーク検出系21を駆動させるか否かを判断する。制御部1100は、例えば、ユーザーが予め登録しておいた検出対象のマークのレイアウト情報、検出対象のマークの数、直前に実施した露光レシピ、生産性または精度のいずれかを優先するかを示す設定、等の情報を基づいて、この判断を実行しうる。
【0062】
S102においてマーク検出系21の駆動が必要と判断された場合には、処理はS103に進む。S102において、制御部1100は、マーク検出装置100の複数のマーク検出系21のうち駆動すべきマーク検出系21を駆動および位置決めし、固定するようにマーク検出装置100を制御する。具体的には、制御部1100は、駆動機構DRにマーク検出系21を駆動および位置決めを実行させ、固定機構13a、13b、14a、14bにマーク検出系21を固定させる。S102において、いずれのマーク検出系21の駆動も不要と判断された場合には、処理はS104に進む。S104では、制御部1100は、不図示の面位置検出装置に、基板3上の複数個所について面位置を検出させ、基板3の表面の形状を計測する。S103においてマーク検出装置100を駆動し固定する処理は、S104の処理と並行して行ってもよい。
【0063】
S105では、制御部1100は、ステージ座標系における基準部材に形成された基準マークSMの設計上の座標位置に基づいて、マーク検出装置100の複数のマーク検出系21の光軸上に、基準マークSMが配置されるように基板ステージWSを移動させる。そして、制御部1100は、複数のマーク検出系21の光軸に対する基準マークSMの位置ずれを計測し、その位置ずれに基づいて、ステージ座標系の原点が光軸と一致するように、ステージ座標系を再設定する。その後、制御部1100は、投影光学系2の光軸とマーク検出装置100の光軸との設計上の位置関係に基づいて、基準マークSMを露光光の光軸上に位置するように、基板ステージWSを移動させる。そして、制御部1100は、不図示のTTL検出系により、投影光学系2を介して露光光の光軸に対する基準マークの位置ずれを計測する。
【0064】
S106では、制御部1100は、S105における計測結果に基づいて、マーク検出装置100の複数のマーク検出系21のそれぞれの光軸と投影光学系2の光軸との基準ベースラインを決定する。S107では、制御部1100は、マーク検出装置100を使って基板3上のマークの位置を検出して、露光装置EXPに対する基板3のXY平面の位置合わせを行う。S108では、制御部1100は、S107の計測結果に基づいて、グローバルアライメント法により、基板3上の複数のショット領域の配列に関して、シフト(移動)、マグニフィケーション(倍率)、ローテーション(回転)を計算する。そして、制御部1100は、その計算結果に基づいて各項目の補正や台形補正を行い、その格子配列の規則性を決定する。その後、制御部1100が、基準ベースラインと決定された格子配列の規則性から補正係数を求め、その結果に基づいて露光光と基板3の位置合わせを行う。
【0065】
S109では、制御部1100は、露光および基板ステージWSのY方向へのスキャンを行う。なお、露光に際しては、面位置検出装置により検出した露光ショットの面形状データに基づいてZ方向および傾き(チルト)方向へのステージ駆動によりほぼ露光スリット単位で基板3の表面の高さ方向の形状に合わせこむ動作を併せて行う。S110では、制御部1100は、露光すべきショット領域(即ち、未露光ショット領域)がないかどうかを判断し、未露光ショット領域がなくなるまで、上述の動作を繰り返す。全てのショット領域の露光が終了したら、S111で基板3を搬出し、露光処理を終了する。
【0066】
次に、図6(B)を参照しながら説明する。前述のS105の処理は、複数のマーク検出系21のXY平面上の位置ずれに対してのキャリブレーション方法である。実際には複数のマーク検出系21のそれぞれの焦点位置(Z方向)が異なっている可能性がある。一般に、焦点位置からずれた位置でマーク検出を行うと、正しい位置からの誤差が生じる。そのため、焦点位置情報も考慮して、キャリブ―レーションを行った方が検出精度の向上に有利である。その方法について図6(B)を参照しながら説明する。なお、ここでは、マーク検出系21がフォーカス駆動機構を備えていない例を説明する。フォーカス調整は、この例では、基板3の位置および姿勢を制御することによってなされる。
【0067】
S151では、制御部1100は、各マーク検出系21に基準マークSMを計測させ、各マーク検出系21の焦点位置およびXY方向の検出位置情報を取得する。S152では、制御部1100は、各マーク検出系21を使って取得した情報から、最小二乗法などを用いて、各マーク検出系21の焦点位置から最もずれの少ない基板面の傾き姿勢を計算する。
【0068】
S153では、制御部1100は、S151で計算された傾きとなるように、基板ステージWSの姿勢を制御する。S154では、制御部1100は、複数のマーク検出系21でマークを観察することで、可能な限り焦点位置に近い位置で計測ができる。これにより、マーク検出の精度を高めている。S155では、制御部1100は、マークの汚損や欠損などで計測結果に異常がないかを判別し、計測が正常に行われていればS156に進み、異常があればS153に戻り、代替のマークを使って再度計測を実施する。S156では、制御部1100は、計測値より基板面内のマーク位置の設計値からのずれ量を補正値として算出する。
【0069】
[第2実施形態]
図7を参照しながら第2実施形態を説明する。第2実施形態として言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。第2実施形態では、第1実施形態における鉛直固定機構14a、14bの代わりに、水平固定機構13cが採用される。水平固定機構13cは、マーク検出系筐体12をZ軸方向に吸引する。第2実施形態では、水平固定機構13a、13b、13cにそれぞれ接続された真空ラインに電磁弁15a、15b、15cが配置されてもよい。電磁弁15a、15b、15cは、制御部1100によって制御されうる。なお、第1実施形態のように、電磁弁を用いてエアオペレートバルブを動作させる方式が採用されてもよい。
【0070】
水平固定機構13cは、検出系フレーム23によって支持されうる。水平固定機構13cは、マーク検出系筐体12を水平方向について固定するための保持力を発生しうる。また、水平固定機構13cは、水平固定機構13a、13bとともに、マーク検出系筐体12をωZ軸方向(Z軸周りの回転方向)について固定するための保持力を発生しうる。さらに、水平固定機構13cは、水平固定機構13a、13bとともに、マーク検出系筐体12をωY軸方向(Y軸周りの回転方向)について固定するための保持力を発生しうる。図7の例では、各ガイド10のX方向スパンが十分ではなく、ωY軸方向(Y軸周り)の剛性が十分ではない。水平固定機構13cは、ωY軸方向(Y軸周り)の剛性を向上させるために有用である。ωY軸方向(Y軸周り)の剛性を向上させるために、水平固定機構13cは、水平固定機構13a、13bとは異なる高さにおいて、マーク検出系筐体12を吸引する。
【0071】
次に、第2実施形態においてマーク検出系21の位置を固定する手順について説明する。まず、制御部1100は、水平固定機構13aに真空圧を供給するために、電磁弁15aを動作させうる。次いで、制御部1100は、水平固定機構13cに真空圧を供給するために、電磁弁15cを動作させうる。制御部1100は、電磁弁15cを動作させるタイミングに応じて、フィードバック制御を停止しうる。フィードバック制御の停止により、ACサーボモータ26の駆動が停止され、ACサーボモータ26による保持力が失われる。水平固定機構13cによる真空吸引の開始には数百msec程度の時間がかかるため、実質的には、フィードバック制御の停止が先に完了し、ACサーボモータ26による駆動力と水平固定機構13a、13cによる摩擦力による保持とは干渉しない。あるいは、フィードバック制御のゲインを徐々に下げて、真空吸引の完了時までにフィードバック制御がOFFとなるようにしてもよい。
【0072】
次に、制御部1100は、水平固定機構13bに真空圧を供給するために電磁弁15bを動作させ、これによりマーク検出系筐体12(スコープSCP)の位置の固定動作を完了する。
【0073】
第2実施形態では、水平固定機構13a、13cは、XY平面への正射影において、水平固定機構13a、13cの間にマーク検出系筐体12の重心Gが位置するように配置されうる。高さ方向に関しては、水平固定機構13cの吸引面の高さが重心Gの高さ近傍であることが好ましい。このような構成は、水平固定機構13a、13cによるマーク検出系筐体12の吸引時におけるマーク検出系筐体12の位置ずれを抑制するために有利である。また、このような構成は、水平固定機構13a、13cの吸引力に差が存在する場合であっても、ωX軸方向の回転を抑えるために有利である。水平固定機構13cは、マーク検出系筐体12を水平方向について固定するように力を発生する他、水平固定機構13a、13bの高さが互いに異なるので、とは吸着する高さが異なる構成となっており、マーク検出系筐体12をωY軸方向についても固定しうる。最後に水平固定機構13bがマーク検出系筐体12を吸引することで、マーク検出系筐体12の固定に十分な保持力が得られる。ガイド10および水平固定機構13a、13cによって、マーク検出系筐体12の固定に関して、6自由度の剛性は十分に与えられうる。よって、水平固定機構13bによるマーク検出系筐体12の吸引による位置ずれは、十分に小さく抑えられうる。
【0074】
[第3実施形態]
図8を参照しながら第3実施形態を説明する。第3実施形態として言及しない事項は、第2実施形態、または、第2実施形態と通して第1実施形態に従いうる。第3実施形態は、第2実施形態において水平固定機構13a、13b、13cに真空圧を与えることによって保持力を発生する構成に代えてアクチュエータ20a、20b、20cによって保持力を発生させる構成が採用されている。アクチュエータ20a、20b、20cは、制御部1100によって制御される。
【0075】
水平固定機構13a、13bは、アクチュエータ20a、20bを介して検出系フレーム23によって支持されうる。水平固定機構13a、13bは、制御部1100によって制御されるアクチュエータ20a、20bによりZ方向に駆動され、マーク検出系筐体12に対して押し付けられる。アクチュエータ20a、20bによってそれぞれ駆動される固定機構13a、13bは、マーク検出系筐体12を水平方向およびωZ軸方向に関して固定する保持力を発生する。水平固定機構13cは、アクチュエータ20cを介して検出系フレーム23によって支持されうる。水平固定機構13cは、制御部1100によって制御されるアクチュエータ20cによりZ方向に駆動され、マーク検出系筐体12に対して押し付けられる。アクチュエータ20cによって駆動される固定機構13cは、マーク検出系筐体12を水平方向およびωZ軸方向に関して固定する保持力を発生する。水平固定機構13cは、ωY軸方向(Y軸周り)の剛性を向上させるために有用である。ωY軸方向(Y軸周り)の剛性を向上させるために、水平固定機構13cは、水平固定機構13a、13bとは異なる高さにおいて、マーク検出系筐体12に押し付けられうる。
【0076】
アクチュエータ20a、20b、20cは、制御部1100によって個別に制御されうる。アクチュエータ20a、20b、20cは、例えば、ピエゾ素子、エアシリンダ、または、電磁アクチュエータで構成されうる。第3実施形態では、真空ライン、および、真空吸引用の凹部が不要であり、これは構造の単純化に寄与しうる。
【0077】
次に、第3実施形態においてマーク検出系21の位置を固定する手順について説明する。まず、制御部1100は、水平固定機構13aをマーク検出系筐体12に押し付けるために、アクチュエータ20aを動作させうる。次いで、制御部1100は、水平固定機構13cをマーク検出系筐体12に押し付けるために、アクチュエータ20cを動作させうる。制御部1100は、アクチュエータ20cを動作させるタイミングに応じて、フィードバック制御を停止しうる。フィードバック制御の停止により、ACサーボモータ26の駆動が停止され、ACサーボモータ26による保持力が失われる。アクチュエータ20cを動作させて水平固定機構13cをマーク検出系筐体12に押し付けるために数百msec程度の時間がかかりうる。そのため、実質的には、フィードバック制御の停止が先に完了し、ACサーボモータ26による駆動力と水平固定機構13a、13cによる摩擦力による保持とは干渉しない。あるいは、フィードバック制御のゲインを徐々に下げて、真空吸引の完了時までにフィードバック制御がOFFとなるようにしてもよい。次に、制御部1100は、水平固定機構13bをマーク検出系筐体12に押し付けるために、アクチュエータ20aを動作させ、これによりマーク検出系筐体12(スコープSCP)の位置の固定動作を完了する
水平固定機構13a、13b、13cがマーク検出系筐体12に押し付けられていない状態では、水平固定機構13a、13b、13cとマーク検出系筐体12との間に、隙間ができるようにマーク検出装置100の組立、調整が実施されうる。しかし、これとは逆に、水平固定機構13a、13b、13cがマーク検出系筐体12に押し付けられていない状態に組立、調整を行ってもよい。この場合、マーク検出系21を移動させる際に、アクチュエータによって水平固定機構13a、13b、13cとマーク検出系筐体12との間に隙間を形成すればよい。
【0078】
[第4実施形態]
図9を参照しながら第4実施形態を説明する。第4実施形態は、第1実施形態の補足として提供される。第4実施形態として言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。第4実施形態では、マーク検出装置100は、第1実施形態において説明された検出系フレーム23に固定された、メインのマーク検出系筐体12aを備えうる。また、マーク検出装置100は、検出系フレーム23に固定された2つのガイド10a、10bによって支持され、それぞれ独立にX方向に移動可能な2つのサブのマーク検出系筐体12b、12cを備えうる。ガイド10a、10b、マーク検出系筐体12a、12bで共用されうる。ガイド10a、10bは、例えば、レールを含みうる。
【0079】
サブのマーク検出系筐体12bのために、2つの水平固定機構13a、13bが設けられうる。2つの水平固定機構13a、13bは、ガイド10a、10bの間に配置されうる。また、2つの水平固定機構13a、13bは、2つの水平固定機構13a、13bの間にマーク検出系筐体12bの重心が位置するように配置されうる。サブのマーク検出系筐体12cのために、2つの水平固定機構13c、13dが設けられうる。2つの水平固定機構13c、13dは、ガイド10a、10bの間に配置されうる。また、2つの水平固定機構13c、13dは、2つの水平固定機構13a、13bの間にマーク検出系筐体12cの重心が位置するように配置されうる。
【0080】
サブのマーク検出系筐体12bのために、マーク検出系筐体12bをY軸方向から吸引する各2つの鉛直固定機構14a、14bが設けられてもよい。また、サブのマーク検出系筐体12bのために、マーク検出系筐体12cをY軸方向から吸引する各2つの鉛直固定機構14c、14dが設けられてもよい。図9の例では、各ガイド10のX方向スパンが十分ではなく、ωY軸方向(Y軸周り)の剛性が十分ではない。鉛直固定機構14a、14b、14c、14dは、ωY軸方向(Y軸周り)の剛性を向上させるために有用である。
【0081】
水平固定機構13a、13bは、マーク検出系筐体12bを水平方向について固定する保持力を発生するとともに、2つの組合せによってωZ軸方向について固定する保持力を発生しうる。水平固定機構13c、13dは、マーク検出系筐体12cを水平方向について固定する保持力を発生するとともに、2つの組合せによってωZ軸方向について固定する保持力を発生しうる。鉛直固定機構14c、14dは、検出系フレーム23によって同一部材を介して支持されてよく、マーク検出系筐体12cを鉛直方向について固定する保持力と、2つの組合せによってωY軸方向について固定する保持力を発生しうる。
【0082】
水平固定機構13a、13b、13c、13dには、互いに独立した真空ラインを介して真空圧が供給されうる。鉛直固定機構14a、14b、14c、14dには、共通の真空ラインを介して真空圧が供給されうる。
【0083】
露光装置EXPは、物品を製造する物品製造方法において使用されうる。該物品製造方法は、露光装置EXPを用いて基板を露光する露光工程と、該露光工程を経た該基板を現像する現像工程と、該現像工程を経た該基板を処理して物品を得る処理工程とを含みうる。該処理工程は、例えば、該現像工程を経た該基板をエッチングする工程を含みうる。
【0084】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0085】
23:検出系フレーム(支持部材)、SCP:スコープ、DM:駆動機構、12a、12b、13a、13b:固定機構、1100:制御部
図1
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図10