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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】通信システム、通信装置、通信方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/65 20180101AFI20241209BHJP
【FI】
G06F8/65
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021186490
(22)【出願日】2021-11-16
(65)【公開番号】P2023073800
(43)【公開日】2023-05-26
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白根 一登
(72)【発明者】
【氏名】山田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】木原 一
【審査官】児玉 崇晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-076567(JP,A)
【文献】特開2017-146802(JP,A)
【文献】特開2007-011728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0232229(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/60
G06F 8/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続され、ファームウェアを保存するサーバと、
産業機器それぞれに接続される複数の通信装置と、
を備え、
前記通信装置は、
プロセッサと、
記録装置と、
有線もしくは無線によって接続される産業機器との通信に用いる第1インタフェースと、
無線での広域通信に用いる第2インタフェースと、
を備え、
前記記録装置は、
接続される産業機器の第1ファームウェア、および、接続される産業機器に対応した処理の実行に用いる通信装置の第2ファームウェアを保存し、
前記プロセッサは、
前記第2ファームウェアを読み出して実行する機能と、
前記第2インタフェースを介して、前記サーバから前記第1ファームウェアを受信する機能と、
前記第1インタフェースを介して、前記第1ファームウェアを接続される産業機器に送信する機能と、を実現し、
前記サーバは、ファームウェアを前記サーバへ送信可能な操作端末からユーザIDの入力を受け付け、入力された前記ユーザIDに関連付けられた産業機器の第1ファームウェアを前記サーバへ送信可能な画面を出力する、
とを特徴とする通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の通信システムであって、
前記通信装置は、
前記第1ファームウェアをダウンロードする契機が発生しているかについてチェックし、契機が発生している場合に前記第1ファームウェアを前記サーバからダウンロードし、ダウンロードした前記第1ファームウェアを前記記録装置に記録する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の通信システムであって、
前記サーバは、
前記通信装置が接続されている産業機器の前記第1ファームウェアを、前記通信装置のIDに関連付けて保持し、
前記通信装置のIDに対応する前記第1ファームウェアを前記通信装置に送信する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の通信システムであって、
前記サーバは、
産業機器それぞれに接続される通信装置からアクセスされるファームウェアのダウンロード用のドメインを1つ保持する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項5】
ネットワークに接続され、ファームウェアを保存するサーバと、
産業機器それぞれに接続される複数の通信装置と
前記サーバへファームウェアを送信可能な操作端末と、
備え、
前記通信装置は、
プロセッサと、
記録装置と、
有線もしくは無線によって接続される産業機器との通信に用いる第1インタフェースと、
無線での広域通信に用いる第2インタフェースと、
を備え、
前記記録装置は、
接続される産業機器の第1ファームウェア、および、接続される産業機器に対応した処理の実行に用いる通信装置の第2ファームウェアを保存し、
前記プロセッサは、
前記第2ファームウェアを読み出して実行する機能と、
前記第2インタフェースを介して、前記サーバから前記第1ファームウェアを受信する機能と、
前記第1インタフェースを介して、前記第1ファームウェアを接続される産業機器に送信する機能と、を実現し、
前記操作端末は、
ユーザIDを入力する画面を出力し、
入力された前記ユーザIDに関連付けられた産業機器の第1ファームウェアを送信可能な画面を出力する、
とを特徴とする通信システム。
【請求項6】
ネットワークに接続され、ファームウェアを保存するサーバと、産業機器それぞれに接続される複数の通信装置と、を用いて行う通信方法であって、
接続される産業機器に対応した処理の実行に用いる通信装置の第2ファームウェアを、それぞれの通信装置に記録させるステップと、
任意の通信装置が、接続される産業機器の第1ファームウェアを前記サーバから受信するステップと、
前記第1ファームウェアを受信した通信装置が、接続される産業機器に前記第1ファームウェアを送信するステップと
前記サーバが、ファームウェアを前記サーバへ送信可能な操作端末からユーザIDの入力を受け付け、入力された前記ユーザIDに関連付けられた産業機器の第1ファームウェアを前記サーバへ送信可能な画面を出力するステップと、を備える、
ことを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、通信装置、および、通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報処理技術の発達に伴い、様々な産業用途に用いられる機器(産業機器)にも高度なソフトウェアが組み込まれ、このようなソフトウェアによって機器の動作が制御されるようになってきている。このように機器に組み込まれるソフトウェアは、特にファームウェアとも呼ばれることがある。
【0003】
ファームウェアが高度、複雑になるにつれ、潜在的に不具合を作りこんでしまったり、設計時には意図していなかった方法で使用されたりといった可能性が高まってきている。その一方で、機器の機能の一部はファームウェアによって実現されていることから、ファームウェアを書き換えることによって、出荷後の機器の機能改善ができることにも注目されている。
【0004】
さらに近年では、産業機器に通信機能を付加し、様々なデータを送受信させることによって、利便性を向上させる事例も多く見られるようになっている。このような産業機器の中には、この通信機能を利用してファームウェアの一部または全部をダウンロードし、自身のファームウェアを書き換える機能を有するものもある。
【0005】
産業機器に付加される通信機能としては有線と無線があるが、一般に有線の通信機能を付加する方が無線の通信機能を付加するよりも低コストである。そのため産業機器については、有線の通信機能を標準とし、無線の通信機能が必要な際には別途無線通信端末を取り付けることによって、無線通信を実現する場合が多く見られる。このような用途で用いられる無線通信端末は、有線の通信によって産業機器と通信する機能と、無線の通信によって無線ネットワークに接続する機能とを備えている。
【0006】
前述した、通信機能を利用して自身のファームウェアを書き換える機能は、例えばその機器のメーカなどがネットワーク上に、ファームウェアの一部又は全部のデータを保存する機能とダウンロードさせる機能を備えたサーバを用意し、機器はそのサーバから該当するデータをダウンロードして自身のファームウェアを書き換える、という形で実現される。したがって上記の方法でファームウェアの書き換え機能を実現する場合、ネットワーク上にしかるべき機能を備えたサーバを用意する必要がある。ところがこのようなサーバを運営するためには、サーバのハードウェアを用意してしかるべきソフトウェアをインストールし、正しく設定を行うといった初期作業に加え、定期的にサーバの状態をチェックし、必要に応じてソフトウェアの更新を行い、再起動をするなどといった維持作業が必要になる。したがってこれらに伴う初期コストやランニングコストが発生する。
【0007】
これらのコストは、サーバに接続する機器の数とは比例しないと考えられる。一般には機器の数が多いほどコストは増加するが、その増加の程度は機器の増加に比べれば緩やかである。すなわち、サーバに接続する機器の台数が多いほど、サーバにかかるコストを機器の台数で割った値、つまり機器1台あたりのサーバにかかるコストは小さくなり、逆に、サーバに接続する機器の台数が少ないほど、このコストは大きくなる。
【0008】
このため、多くの販売台数が見込まれる機器であれば、上記のようなネットワークとサーバを用いたファームウェアの書き換え機能を相対的に低コストで実現できるが、販売台数が少ない機器の場合、このようなファームウェア書き換え機能の実現がコスト面の制約により難しい。このため、ファームウェア書き換え機能を搭載すればより大きな価値を生み出せるにも関わらず、そのような機能の搭載ができない機器が多数存在してしまっている、という課題があった。
【0009】
なお、下記の特許文献1~4に開示する発明が知られている。特許文献1は、該特許文献1の図1等に示すように、通信網109Cに、通信事業者サーバ107、配信サーバ117、管理サーバ115、ユーザシステム111(ユーザサーバでもよい)、及びエンドユーザクライアント113が接続され、産業機器103A(産業機器103B)に通信モジュール101A(通信モジュール101B)が接続され、通信網109A及び109Bに通信網109Cが接続されるシステムを開示する。
【0010】
特許文献2は、該特許文献2の図1等に示すように、インターネット100を介してインターネット上に公開されているインターネット配信サーバ71と顧客のイントラネット環境110がそれぞれ接続されて構成されるファームウェア配信システムを開示する。
【0011】
特許文献3は、該特許文献3の図1等に示すように、サーバ2と車両1のTCU11とは、公衆無線システムを用いて相互に通信ができ、ファームウェアを無線通信により更新するファームウェア更新システムを開示する。
【0012】
特許文献4は、新規の拠点LANを追加してもファイアウォール越しにVPN構築の自動設定を行うことができるネットワーク間接続装置の自動設定システムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第6746826号公報
【文献】特開2013-145504号公報
【文献】特開2020-30607号公報
【文献】特開2004-328688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記で説明した課題の観点から、本発明は、サーバ機能の集約化を図り、構築や維持のコストを低減することができる通信システム、通信装置、および、通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、下記の通信システムが提供される。通信システムは、ネットワークに接続され、ファームウェアを保存するサーバと、産業機器それぞれに接続される複数の通信装置と、を備える。通信装置は、プロセッサと、記録装置と、有線もしくは無線によって接続される産業機器との通信に用いる第1インタフェースと、無線での広域通信に用いる第2インタフェースと、を備える。記録装置は、接続される産業機器の第1ファームウェア、および、接続される産業機器に対応した処理の実行に用いる通信装置の第2ファームウェアを保存する。プロセッサは、第2ファームウェアを読み出して実行する機能と、第2インタフェースを介して、サーバから第1ファームウェアを受信する機能と、第1インタフェースを介して、第1ファームウェアを接続される産業機器に送信する機能と、を実現する。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、下記の態様の通信装置が提供される。この通信装置は、産業機器に接続される。通信装置は、プロセッサと、記録装置と、有線もしくは無線によって接続される産業機器との通信に用いる第1インタフェースと、無線での広域通信に用いる第2インタフェースと、を備える。記録装置は、接続される産業機器の第1ファームウェア、および、通信装置の第2ファームウェアを保存することができる。プロセッサは、第2ファームウェアを読み出して実行する機能と、第2インタフェースを介して、第1ファームウェアを保持するサーバから第1ファームウェアを受信する機能と、第1インタフェースを介して、第1ファームウェアを接続される産業機器に送信する機能と、を実現する。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、下記の態様の通信方法が提供される。この通信方法は、ネットワークに接続され、ファームウェアを保存するサーバと、産業機器それぞれに接続される複数の通信装置と、を用いて行う方法である。この方法は、接続される産業機器に対応した処理の実行に用いる通信装置の第2ファームウェアを、それぞれの通信装置に記録させるステップと、任意の通信装置が、接続される産業機器の第1ファームウェアをサーバから受信するステップと、第1ファームウェアを受信した通信装置が、接続される産業機器に第1ファームウェアを送信するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、サーバ機能の集約化を図り、構築や維持のコストを低減することができる通信システム、通信装置、および、通信方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態で説明するシステムの一例を示す図。
図2】無線通信端末を用いずに専用サーバに接続している構成の一例を示す図。
図3】産業機器のファームウェアが書き換えられるまでの手順の一例を示すフローチャート。
図4】無線通信端末がファームウェア保持サーバからデータをダウンロードして保存するまでの手順の一例を示すフローチャート。
図5】産業機器が無線通信端末からデータをダウンロードして自身のファームウェアを書き換えるまでの手順の一例を示すフローチャート。
図6】無線端末装置を用いず、産業機器の種類ごとに専用サーバを用意する構成の一例を示す図。
図7】無線通信端末を用いる場合であって、ファームウェア保持サーバを1つ用意する構成の一例を示す図。
図8】無線通信端末を用いて実施するシステムの一例を示す図。
図9】ファームウェア保持サーバが保持するデータの一例を示す図。
図10図8に示すシステムにおける無線通信端末の動作の一例を示すフローチャート。
図11図8に示すシステムにおいて産業機器(空気圧縮機)がファームウェアを取得する際の動作の一例を示すフローチャート。
図12図8に示すシステムにおいて産業機器(ポンプ)がファームウェアを取得する際の動作の一例を示すフローチャート。
図13】無線通信端末を用いて実施するシステムの一例を示す図。
図14】ファームウェア保持サーバにおける各機器のファームウェアの保存の一例について示す図。
図15】ユーザがファームウェア送信に用いる画面の一例を説明するための図。
図16】ファームウェア保持サーバが保持するデータの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を参照しながら、本実施形態のシステムの一例について説明する。図1は、本実施形態で説明するシステムの一例を示す。図1は、無線通信端末101の構成と、この無線通信端末101が広域ネットワーク107を経由してファームウェア保持サーバ108と接続している様子とを示している。
【0021】
図1において、無線通信端末101(通信装置)は、広域通信部102、処理部103、局所通信部104、記録部105を備えている。産業機器106は、インタフェース(不図示)を備え、通信機能を有する。そして、無線通信端末101は、局所通信部104を介して、産業機器106に接続されている。また、産業機器106は、自身が備える通信機能を用いてデータをダウンロードして取得し、そのデータ用いて自身のファームウェアの一部もしくは全部を書き換える機能を有する構成とされている。
【0022】
広域通信部102は、インタフェース(第2インタフェース)を備え、広域ネットワーク107と接続し、さらにこの広域ネットワーク107を介してファームウェア保持サーバ108(サーバ)と無線通信する機能を有する。従って、通信システム1は、広域通信部102を介して、ファームウェア保持サーバ108と無線通信を行うことができる。
【0023】
処理部103は、プロセッサを備え、所定の処理を行う。プロセッサは、一例として、CPU(Central Processing Unit)とすることができるが、他の半導体デバイスであってもよい。また、無線通信端末101においてRAM(Random Access Memory)が適宜に設けられ、プロセッサは、RAMに適宜のデータを読み出して処理を行ってもよい。
【0024】
局所通信部104は、通信に用いるインタフェース(第1インタフェース)を備える。従って、通信システム1は、局所通信部104を介して産業機器106と通信することができる。なお、有線通信であっても無線通信であってもよく、局所通信部104には、適宜のインタフェースが構成されればよい。
【0025】
記録部105は、データやプログラムを記録することができる適宜の記録装置により構成することができる。記録装置は、一例として、ROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)とすることができる。
【0026】
ここで、図2を参照しながら、無線通信端末101を用いない例について説明する。図2は、無線通信端末101を用いずに専用サーバ201に接続している場合を示す図である。
【0027】
図2に示すように、産業機器106は、自身が備える通信機能を用いて専用サーバ201と接続し、産業機器106は、専用サーバ201からダウンロードしたデータを用いて自身のファームウェアの一部もしくは全部を書き換えることができる。産業機器106は、あらかじめ定められた所定の契機によって専用サーバ201からデータのダウンロードを行い、そのデータを用いて自身のファームウェアの一部もしくは全部を書き換えることができる。
【0028】
この契機は、一例として、産業機器106が専用サーバ201に対して定期的に問い合わせを行い、専用サーバ201がダウンロードの実行を指示するときである。あるいは、この契機は、例えば、専用サーバ201が産業機器106に対してあらかじめ定められた手順による通信を行ったときである。このような契機で、専用サーバ201からのデータのダウンロード、および、ファームウェアの書き換えが行われる。
【0029】
産業機器106がデータをダウンロードする際には、そのデータをどこからダウンロードするか、を指定する必要がある。この指定は、例えば産業機器106の出荷時にファームウェアに書き込まれている場合がある。あるいは、前述したように専用サーバ201がダウンロードの実行を指示するときに、その指示の一部としてどこからダウンロードするかを指定する場合もある。
【0030】
このような特徴を備える産業機器106に対して、本実施形態では、無線通信端末101が専用サーバ201と同様の動作をするように無線通信端末101のファームウェアが作成され、このファームウェア(第2ファームウェア)が記録部105に保存される。
【0031】
なお、この記録部105への保存は、例えば無線通信端末101がそのメーカの工場で製造される際に行われても良いし、何らかの方法でメーカからの出荷後に行われても良い。メーカからの出荷後にファームウェアの保存をする場合には、広域通信部102や局所通信部104の機能が使用されてもよいし、無線通信端末101が備える図示された以外の構成や機能が使用されてもよい。
【0032】
その一方で、無線通信端末101は、ファームウェア保持サーバ108から、産業機器106のファームウェア(第1ファームウェア)をダウンロードし、記録部105に保存する。この時の手順は、産業機器106が専用サーバ201からファームウェアをダウンロードする手順と異なっていても良い。
【0033】
以上のような構成にすることで、産業機器106は、無線通信端末101がファームウェア保持サーバ108からダウンロードして記録部105に保存しているデータを、無線通信端末101からダウンロードすることで、自身のファームウェアを書き換えることができるようになる。次に、産業機器106のファームウェアが書き換えられるまでの典型的な手順を図3のフローチャートを用いて説明する。
【0034】
ステップ301は、無線通信端末101がファームウェア保持サーバ108からデータをダウンロードする契機をチェックするステップである。この契機が満たされていれば(契機が発生していれば)、ステップ302に進む。ステップ302は、産業機器106のファームウェアを取得するステップであり、無線通信端末101は、ファームウェア保持サーバ108からデータをダウンロードし、そのデータを記録部105に保存する。その一方で、この契機が満たされていなければ(すなわち、契機が発生していなければ)、ステップ301に戻り、無線通信端末101は、契機が満たされるまでチェックを続ける。
【0035】
ステップ303は、産業機器106が無線通信端末101からデータをダウンロードする契機をチェックするステップである。この契機が満たされていれば(契機が発生していれば)、ステップ304に進む。ステップ304は、産業機器106がファームウェアを取得するステップである。産業機器106は、無線通信端末101からデータをダウンロードし、そのデータを用いて自身のファームウェアを書き換える。この契機が満たされていなければ(すなわち、契機が発生していなければ)、ステップ303に戻り、産業機器106は、契機が満たされるまでチェックを続ける。
【0036】
図3では、無線通信端末101の動作と産業機器106の動作をひとつのフローチャートにまとめて示したが、無線通信端末101と産業機器106の動作をそれぞれ別に表すと図4および図5のようになる。図4は無線通信端末101の動作、図5は産業機器106の動作をそれぞれ表したフローチャートである。このような動作をする無線通信端末101と産業機器106とを組み合わせると、図3に示した動作で産業機器106のファームウェアの書き換えが行われる。
【0037】
単独の産業機器106に対するファームウェアの書き換えを行う際の構成と手順の例は以上の通りである。そして、以上で述べた構成を複数の互いに異なる動作をする産業機器に対して同時に適用することができる。このことについて以下に述べる。
【0038】
ここで、本実施形態の無線通信端末101を用いずに、産業機器106にファームウェアをダウンロードして書き換える機能を付加する場合、図2に示したように、産業機器106の動作に適合した専用サーバ201を用意する必要があると考えられる。しかしながら、産業機器106がファームウェアをダウンロードする具体的な動作は、その産業機器106の特性などにもよって様々なバリエーションが考えられる。これに対応するため、産業機器106の動作に合わせて専用サーバ201もその動作を設計しなければならず、これにより、産業機器106の種類ごとに専用サーバ201の用意が必要になると考えられる。
【0039】
一般に、サーバの維持管理には定期的なコストが発生する。このコストはサーバに接続する機器の数が多いほど一般に増大するが、単純な比例関係ではなく、通常、サーバに接続する機器の増加に対してコストの増大は緩やかである。従って、サーバに接続する機器の台数が多いほど、機器1台あたりのサーバにかかるコストは小さくなり、逆に、サーバに接続する機器の台数が少ないほど、このコストは大きくなる。
【0040】
前述したように、産業機器106がデータをダウンロードする具体的な動作には様々なバリエーションがある。その一方で、無線通信端末101がファームウェア保持サーバ108からデータをダウンロードする動作は、全て統一することが可能である。そして、産業機器106は無線通信端末101からデータをダウンロードするが、このときの産業機器106ごとの動作のバリエーションには、記録部105に記録されており無線通信端末101の動作を規定する無線通信端末自体のファームウェアのバリエーションによって対応する。このようにすれば、全ての無線通信端末101とファームウェア保持サーバ108の通信手順は統一されているので、ファームウェア保持サーバ108はただ1つ用意すればよい。従って、維持管理のためにコストが発生するサーバも1つに統一することができるため、無線通信端末101の1台あたり、ひいては産業機器106の1台あたりのコストが低減される。
【0041】
以上のことについて、図を用いてより具体的に示す。図6は、無線端末装置101を用いず、産業機器の種類ごとに専用サーバを用意する方法である。図2に示したものと同様、産業機器106は専用サーバ201からファームウェアをダウンロードすることができる。図に符号はつけていないが、産業機器106と同様の動作をする複数の産業機器が、専用サーバ201からファームウェアをダウンロードすることができる。
【0042】
その一方で、産業機器106とは異なる手順でデータのダウンロードを行う産業機器602は、専用サーバ201とは異なる専用サーバ601からデータをダウンロードし、自身のファームウェアを更新することができる。さらに、産業機器(106、602)のいずれとも異なる手順でデータのダウンロードを行う産業機器604は、専用サーバ(201、601)と異なる専用サーバ603からデータをダウンロードし、自身のファームウェアを更新することができる。いずれも符号をつけていないが、専用サーバ(601、603)からは、産業機器(602、604)と同様の動作をする産業機器がデータをダウンロードし、自身のファームウェアを書き換えることができる。
【0043】
以上の説明のように、無線端末装置101を用いない図6の構成でも産業機器がデータをダウンロードしてファームウェアを更新する機能は実現できるが、産業機器の種類ごとに専用サーバを用意し、維持管理をしなければならないため、大きなコストが発生する。特に、専用サーバを維持管理するコストに対してそのサーバに接続する産業機器の数が少ない場合には、このような機能を付加することがコスト面で現実的でなくなってしまうことがありうる。
【0044】
これに対して図7は、無線通信端末101を用いて構成したシステムを示している。異なる種類の産業機器(106、602、604)それぞれは、自身が備える通信機能を利用してダウンロードしたデータを用い、自身のファームウェアを更新することができる。ここで、それぞれの機器には無線通信端末101が接続されている。これらの無線通信端末101は、自身に接続されている産業機器がデータをダウンロードする手順に適合するように(つまり、接続される産業機器に対応した処理を行うように)、そのファームウェア(第2ファームウェア)が構成されている。
【0045】
産業機器106に接続されている無線通信端末101は、産業機器106に適合するファームウェアをファームウェア保持サーバ108からダウンロードし、記録部105に記録する。その一方で、産業機器(602、604)にそれぞれ接続されている無線通信端末101は、それぞれ産業機器(602、604)に適合するファームウェアをファームウェア保持サーバ108からダウンロードし、それぞれ記録部105に記録する。図中では符号を付していないが、産業機器(106、602、604)以外の産業機器が接続されている無線通信端末101も、それぞれが接続されている産業機器に適合するファームウェアをファームウェア保持サーバ108からダウンロードし、記録部105に記録している。
【0046】
図7に示したそれぞれの産業機器は、図5に示したフローチャートの通り、無線通信端末101からデータをダウンロードし、自身のファームウェアを更新することができる。このとき、産業機器(106、602、604)は、それぞれが接続されている無線通信端末101のファームウェアが適切に構成されていることから、専用サーバ(201、601、603)に接続している場合と同様の手順によってデータをダウンロードすることができる。
【0047】
このように、無線通信端末101を使用すると、図7に示したように、従来複数の専用サーバが必要であった産業機器のファームウェア更新を、1つのファームウェア保持サーバ108で実現することができるようになる。これにより、産業機器1台あたりに必要となるサーバの維持管理コストを削減し、より多くの産業機器がファームウェアの更新機能を備えることができるようになる。
【0048】
以下では、実施する具体的な例について説明する。例えば、工場などの生産現場におけるインフラとしてはさまざまな例が挙げられるが、ここでは圧縮空気と工業用水を利用する例について説明する。圧縮空気はエアシリンダーなどを駆動する動力源として用いられるほか、チリや屑などを吹き飛ばして清掃する用途などにも使われる。一方、工業用水は冷却、洗浄などといった用途に用いられる。
【0049】
圧縮空気を生産現場に供給するのは、空気圧縮機である。一方、工業用水はポンプによって生産現場に供給される。
【0050】
空気圧縮機は一般にモータによって駆動される。このモータの回転数を制御することによって、空気圧縮機が吐き出す圧縮空気の量を調整することができる。生産現場が必要とする圧縮空気の量は状況によって刻々と変化するため、空気圧縮機を駆動するモータの回転数も適切に変化させなければならない。その一方で、モータの回転数を大きく頻繁に変化させると、その消費する電力は大きくなることが知られている。従って、空気圧縮機を駆動するモータの回転数は、生産現場からの要求に応えつつ、必要以上に大きな変化が起きないように制御されることが望ましい。
【0051】
このような制御は、空気圧縮機に組込まれたファームウェアによって行われる。通常、空気圧縮機のファームウェアは、多くの生産現場において適切に動作するように、制御アルゴリズムやパラメータが組み込まれている。
【0052】
しかし、実際に空気圧縮機の稼働を始めると、空気圧縮機自体や生産現場に設置された機器などの稼働履歴などからより適切なアルゴリズムやパラメータを求めることができる場合がある。そのようなアルゴリズムやパラメータを適用できれば、空気圧縮機の消費電力を軽減し、より効率よく運用を行うことができるようになる。
【0053】
また、生産現場のレイアウト変更や改善などに伴って、最適なアルゴリズムやパラメータが変動する場合もある。そのような場合も、変更後の環境に合わせたアルゴリズムやパラメータを適用できれば、より効率のよい運用が実現できる。
【0054】
ポンプもまた同様に、モータによって駆動されるのが一般的であり、このモータの回転数を制御することによって、ポンプが吐き出す水の流量や圧力を調整することができる。この流量や圧力も圧縮空気の場合と同様に、生産現場からの要求に応えつつ、必要以上に大きな変化が起きないように制御されることが望ましい。
【0055】
ポンプの制御も、組み込まれたファームウェアによって行われるのは空気圧縮機と同様である。その制御のアルゴリズムやパラメータも、通常はあらかじめファームウェアに組み込まれているが、やはりポンプ自体や周辺機器の稼働履歴などからより適切なアルゴリズムやパラメータを求め、それを適用することができれば、より効率の良い運用を行うことができる。
【0056】
以上のことを踏まえ、図8に示すようなシステムを考える。このシステムは、無線通信端末101、ファームウェア保持サーバ108、空気圧縮機(801、802)、ポンプ(803、804)、空気配管805、圧縮空気利用機器806、空気圧縮機ファームウェア生成システム807、水配管808、水利用機器809、ポンプファームウェア生成システム810、を備える。また、このシステムの例では、ファームウェア保持サーバ108が、広域ネットワーク107を介して、無線通信端末101、空気圧縮機ファームウェア生成システム807、ポンプファームウェア生成システム810に接続される。
【0057】
図8において、空気圧縮機(801、802)は、通信機能と、その通信機能を利用してデータをダウンロードし、自身のファームウェアを書き換える機能と、稼働履歴を送信する機能と、を備えている。また、ポンプ(803、804)も、通信機能と、データをダウンロードして自身のファームウェアを書き換える機能と、稼働履歴を送信する機能と、を備えている。図8における無線通信端末101は、ファームウェア保持サーバ108からデータをダウンロードして記録部105に記録し、自身に接続されている産業機器である空気圧縮機(801、802)、ポンプ(803、804)にデータを送信する機能を備えている。
【0058】
圧縮空気利用機器806は、空気圧縮機801が生成した圧縮空気を空気配管805を通じて受け取り、実際の生産活動に関連する動作を行う。合わせて圧縮空気利用機器806は通信機能を備えており、これを用いて自身の稼働履歴を送信することができる。
【0059】
空気圧縮機ファームウェア生成システム807は通信機能を備えており、空気圧縮機801および圧縮空気利用機器806からそれぞれの稼働履歴を受信することができる。空気圧縮機ファームウェア生成システム807は受信した稼働履歴をもとに、空気圧縮機801のファームウェアを生成する。さらに、空気圧縮機ファームウェア生成システム807は広域ネットワーク107を通じて、生成した空気圧縮機のファームウェアをファームウェア保持サーバ108に送信することができる。
【0060】
水利用機器809は、ポンプ804が吐出した水を水配管808を通じて受け取り、実際の生産活動に関連する動作を行う。圧縮空気利用機器806と同様、水利用機器809も通信機能を備えており、自身の稼働履歴を送信することができる。
【0061】
ポンプファームウェア生成システム810も空気圧縮機ファームウェア生成システム807と同様に通信機能を備えており、ポンプ804および水利用機器809から稼働履歴を受信し、これらを元にポンプ804のファームウェアを生成し、これを広域ネットワーク107を通じてファームウェア保持サーバ108に送信することができる。
【0062】
図の簡略化のため図8では省略したが、空気圧縮機802およびポンプ803もそれぞれ圧縮空気利用機器や水利用機器に配管を通じて圧縮空気や水を供給する。これらの圧縮空気利用機器や水利用機器は、空気圧縮機801あるいはポンプ804に配管を通じて接続されている圧縮空気利用機器806や水利用機器809と同一であっても良いし、異なる機器であってもよい。また、これらの圧縮空気利用機器や水利用機器の稼働履歴、および空気圧縮機802やポンプ803の稼働履歴は、空気圧縮機ファームウェア生成システム807やポンプファームウェア生成システム810に送信される。空気圧縮機ファームウェア生成システム807とポンプファームウェア生成システム810は、空気圧縮機802やポンプ803のファームウェアも作成し、広域ネットワーク107を通じてファームウェア保持サーバ108に送信する。
【0063】
ファームウェア保持サーバ108は、各機器のファームウェアをファイルとして保持する。ファームウェア保持サーバ108は、図9に示すような、無線通信端末101のIDと、その無線通信端末101が接続されている産業機器のファームウェアのファイル名を関連付けるデータベースを持っている。これにより、ファームウェア保持サーバ108は、個別の無線通信端末101に対して適切なファームウェアを送信することができる。
【0064】
図8に示すシステムにおける無線通信端末101の動作をフローチャートとして図10に示す。図10のフローチャートは、図4におけるステップ301において無線通信端末101がデータをダウンロードする契機をステップ1001として、ファームウェア保持サーバ108に自身のIDを送信し、自身に接続されている機器のファームウェアを保持していると回答が得られること、を具体化している。もしファームウェア保持サーバ108から該当するファームウェアを保持していると回答があったならば、ステップ1002において、無線通信端末101はそのファームウェアをダウンロードし、記録部105に記録する。
【0065】
次に、空気圧縮機(801、802)の動作の一例を、図11のフローチャートに示す。空気圧縮機(801、802)は、起動後のステップ1101で無線通信端末101に対し、自身のファームウェアを保持しているか問い合わせる。そして、その回答によって動作を分岐させる。もし無線通信端末101から、自身のファームウェアを保持していると回答があった場合には、空気圧縮機(801、802)は、無線通信端末101からデータをダウンロードし、自身のファームウェアを書き換えて再起動する。その一方で、無線通信端末101から、ファームウェアを保持していないと回答があった場合、空気圧縮機(801、802)は、ステップ1103においてモータの回転数の制御を行う。その後ステップ1104において、その制御の結果を稼働履歴として空気圧縮機ファームウェア生成システム807に送信する。以降はステップ1103におけるモータの回転数の制御と、ステップ1104における稼働履歴の送信を繰り返す。
【0066】
ポンプ(803、804)の動作の一例を図12のフローチャートに示す。フローチャートを構成するステップは図11に示した空気圧縮機(801、802)の動作と同様であるが、各ステップを実行する順序が異なる。すなわち、ポンプ(803、804)は、起動後にまずモータの回転数の制御を行うステップ1103を実行し、その結果を稼働履歴としてポンプファームウェア生成システム810に送信するステップ1201を実行する。その後、無線通信端末101に対して自身のファームウェアを保持しているか問い合わせて回答を得るステップ1101を実行する。無線通信端末101から、自身のファームウェアを保持しているとの回答が得られた場合、ポンプ(803、804)は、ステップ1102を実行する。すなわち、ポンプ(803、804)は、無線通信端末101からデータをダウンロードし、自身のファームウェアを書き換えて再起動する。その一方で、ファームウェアを保持していないとの回答を得た場合、ステップ1103に戻り、再びモータの回転数の制御と稼働履歴の送信を行う。
【0067】
ここで示したように、空気圧縮機(801、802)と、ポンプ(803、804)の動作が異なっていても、図8に示すシステムは成立する。また、図には示していないが、空気圧縮機(801、802)とポンプ(803、804)それぞれについて、無線通信端末101と通信する際の内容は異なっていても良い。例えば、自身が接続されている無線通信端末101に対して自身のファームウェアを保持しているかどうか問い合わせるために用いる電文は、空気圧縮機(801、802)とポンプ(803、804)の間で異なっていてもよい。ここで、無線通信端末101は、空気圧縮機(801、802)あるいはポンプ(803、804)と組み合わせて設置される際、もしくはその以前に、組み合わせられる機器と正しく通信を行うためのファームウェアを記録する。
【0068】
ここで述べた例では、ファームウェア生成システムとして、空気圧縮機ファームウェア生成システム807とポンプファームウェア生成システム810を考え、これらが広域ネットワーク107に接続されているものとした。しかしながら、実際には空気圧縮機やポンプのファームウェアが生成される機会は限られているので、空気圧縮機ファームウェア生成システム807やポンプファームウェア生成システム810が常時広域ネットワーク107に接続されている必要はない。あるいは、空気圧縮機ファームウェア生成システム807やポンプファームウェア生成システム810を直接広域ネットワーク107には接続せず、生成したファームウェアが広域ネットワーク107に接続されている別の機器にコピーされ、その機器からファームウェア保持サーバ108にデータが送信されてもよい。また、空気圧縮機やポンプのファームウェアを生成するためには、この例のように空気圧縮機やポンプ、機器の稼働履歴を用いる他に、別の情報を用いる方法を採っても良い。
【0069】
以上のように、この例では、複数種類の産業機器を用いる生産現場において、ファームウェアの更新を1つのサーバで実現できることを示した。この例では説明を簡単にするため1つの生産現場を対象にして述べたが、実際には、この広域ネットワーク107やファームウェア保持サーバ108は複数の生産現場にまたがって利用することができる。これらの生産現場は必ずしもひとつの企業に属している必要はなく、複数の企業にまたがっていてもよい。さらには、この例では空気圧縮機とポンプを取り上げたが、それ以外の産業機器、例えばプレス機や射出成型機、切削加工機などといった機器も混在させることができる。これらの機器は一般には異なるメーカによって製造されるが、ファームウェア保持サーバ108はそれら全ての機器のファームウェアを保持することができる。従って、これらの機器のメーカが独自にサーバを用意して維持管理する必要がない。これにより、これらの機器に低コストでファームウェア更新の機能を付与することができる。
【0070】
次に、図13を用いて別の具体的な例について説明する。図13のシステムは、無線通信端末101、ファームウェア保持サーバ108、表示器つき洗浄機(1301、1303)、監視カメラ(1305、1306)、洗浄機メーカの操作端末1307、監視カメラメーカの操作端末1308を備える。表示器つき洗浄機(1301、1303)は、それぞれ表示器(1302、1304)を備えている。また、このシステムの例では、ファームウェア保持サーバ108が、広域ネットワーク107を介して、無線通信端末101、洗浄機メーカの操作端末1307、監視カメラメーカの操作端末1308に接続される。
【0071】
表示器つき洗浄機(1301、1303)は、水流や自動ブラシなどを使って対象を自動的に洗浄する装置である。表示器つき洗浄機(1301、1303)の洗浄の対象は1種類ではなく、表示器つき洗浄機(1301、1303)は、対象に合わせた洗浄方法、例えば水流の強さやブラシの回転数、洗浄時間などを選択することができる。ここで、表示器(1302、1304)はタッチパネルであり、情報を表示するとともにユーザによる操作を受け付けることができ、洗浄の対象が何であるかについては、表示器つき洗浄機(1301、1303)のユーザが、表示器(1302、1304)を使って指示することができる。ただし、タッチパネル以外の入力装置が設けられ、この入力装置を用いてユーザが情報を入力してもよい。
【0072】
監視カメラ(1305、1306)は、適宜の記録装置を備え、撮影している映像を自身が持つ記録装置に記録しておくことができるカメラである。なお、図13では、図の簡単のため、表示器つき洗浄機および監視カメラの詳細な構成要素については記載を省略した。
【0073】
表示器つき洗浄機(1301、1303)による対象に合わせた洗浄の方法は、表示器つき洗浄機(1301、1303)のファームウェアによって実現される。従って、表示器つき洗浄機(1301、1303)のファームウェアを書き換えることによって、例えば新しい洗浄対象を追加したり、既存の対象に対する洗浄の方法を改良したりすることができる。
【0074】
その一方で、監視カメラ(1305、1306)が撮影した映像を処理して記録装置に記録するまでの動作は、監視カメラ(1305、1306)のファームウェアによって実現されている。従って、例えば監視カメラ(1305、1306)のファームウェアを書き換えることによって、監視カメラ(1305、1306)は、より高精細な映像を記録できるようになったり、あるいはより長時間の映像を記録できるようになったりする。
【0075】
また、いずれの機器も、ファームウェアに何らかの不具合を作りこんでしまうことによって、本来意図していない動作をしてしまう場合がある。このような場合、その不具合を修正したファームウェアで書き換えることにより、不具合を解消することができる。
【0076】
図中には示していないが、この例では、表示器つき洗浄機(1301、1303)のメーカと監視カメラ(1305、1306)のメーカとは異なっているものとする。従って、表示器つき洗浄機(1301、1303)のファームウェアと監視カメラ(1305、1306)のファームウェアはそれぞれ異なるメーカによって作成される。それぞれのメーカが作成したファームウェアは、洗浄機メーカの操作端末1307、監視カメラメーカの操作端末1308によって、広域ネットワーク107を通じてファームウェア保持サーバ108に送信される。そして、ファームウェア保持サーバ108は、送信されたファームウェアを保持する。
【0077】
図13では、洗浄機メーカの操作端末1307と監視カメラメーカの操作端末1308は広域ネットワーク107に接続されるように描かれているが、この接続は最低限、ファームウェアをファームウェア保持サーバ108へ送信する時のみ行われればよく、常時維持されている必要はない。
【0078】
この例におけるファームウェア保持サーバ108は、図14に示すような、無線通信端末のID、接続されている機器のメーカ、接続されている機器の種類、接続されている産業機器のファームウェアのファイル名、を関連付けるデータベースを保持している。なお、図14に示すデータベースには、図13に記載されていない機器の情報も含まれている。
【0079】
図14において、無線通信端末のIDは、各個別の無線通信端末101を識別する情報である。接続されている機器のメーカは、各無線通信端末101に接続されている機器のメーカを表しており、ここではWasher_makerとCamera_makerの2社があるものとする。接続されている機器の種類は、各無線通信端末101に接続されている機器の種類を表す。多くの場合、これはその機器の型式で表すことができる。ここでは、Washer_maker社がWasher_AおよびWasher_Bという洗浄機を、Camera_maker社がCamera_01およびCamera_02という監視カメラを、それぞれ販売しているとする。接続されている産業機器のファームウェアのファイル名は、ファームウェア保持サーバ108が保持している、当該機器のファームウェアのファイル名を表す。
【0080】
このデータベースにより、ファームウェア保持サーバ108は、どの無線通信端末101に対してどのファイルを転送すべきかを識別することができる。さらに、以下に述べるように、ファームウェア保持サーバ108は、図14に示したデータベースを用いて、洗浄機メーカの操作端末1307、監視カメラメーカの操作端末1308からの操作を適切に制限することができる。
【0081】
一般に、ある産業機器のファームウェアを作成することができるのは、その機器のメーカ自身や、メーカから許諾を受けた者に限られており、それ以外の者がファームウェアを作成したり配布したりすることは、メーカとしては認めない場合が多い。従って、ファームウェア保持サーバ108に対してある産業機器のファームウェアを送信することができる者は、適切に限定されることが望ましい。
【0082】
また、産業機器のメーカは通常、複数機種の産業機器を製造、販売しており、機種によって適用するファームウェアが異なる。そのため、ファームウェア保持サーバ108に対して産業機器のファームウェアを送信する場合には、そのファームウェアをある機種の機器全てに対して適用できるようにしておくことが望ましい。
【0083】
以上を踏まえ、洗浄機メーカの操作端末1307もしくは監視カメラメーカの操作端末1308によってファームウェア保持サーバ108へファームウェアを送信する際の画面の遷移を図15に示す。
【0084】
この例における洗浄機メーカの操作端末1307および監視カメラメーカの操作端末1308は、いずれも画面と入力装置を備えた一般的なパソコンとすることができ、ブラウザソフトウェアが利用できるものとする。操作端末を操作するユーザはファームウェア保持サーバ108が提供するWebページにブラウザを用いてアクセスし、そのWebページ上で所定の操作を行うことによってファームウェアを送信する。図15に示しているのは、このWebページの画面の遷移である。
【0085】
図15において、洗浄機メーカの操作端末1307もしくは監視カメラメーカの操作端末1308からファームウェア保持サーバ108へブラウザを用いてアクセスすると、まずログイン画面1501が表示される。ログイン画面にはID入力欄1502とパスワード入力欄1503があり、操作者はあらかじめファームウェア保持サーバ108に登録しておいたIDとパスワードを入力する。
【0086】
図16は、この例におけるファームウェア保持サーバ108が保持している、ユーザID、パスワード、社名を関連付けるデータベースである。実際には、パスワードは暗号化されるなど、必要なセキュリティ上の保護策が施された状態で記録されている。
【0087】
図15のログイン画面1501でIDおよびパスワードが入力されると、ファームウェア保持サーバ108は入力された内容を図16のデータベースと照合し、該当するIDとパスワードが存在するかどうかを確認する。該当するIDとパスワードが存在しない場合、ログイン失敗となり、再びログイン画面1501が表示される。一方、該当するIDとパスワードが存在する場合、ログイン成功となり、機種ごとのファームウェアアップロード画面1504が表示される。
【0088】
機種ごとのファームウェアアップロード画面1504には産業機器の機種の一覧と各々の機種の産業機器に接続されている無線通信端末のIDの一覧が表示される。さらに、産業機器の機種ごとにファイルを選択するボタン1505が表示される。また、アップロードを実行するボタン1506が表示される。なお、この画面に表示される無線通信端末のIDを個別に選択すると、個別のファームウェアアップロード画面1507に遷移する。
【0089】
ここで、機種ごとのファームウェアアップロード画面1504に表示される情報は、ログイン画面1501で入力したIDに関連づけられている社名に従って決定される。すなわち、IDには図16に示したデータベースで社名が関連付けられており、社名には図14で示したデータベースで無線通信端末のIDと接続されている機器の種類が関連付けられている。これにより、機種ごとのファームウェアアップロード画面1504に表示される機種と無線通信端末のIDは、ログインに使用したIDに関連づけられた社名に関連付けられた機種と無線通信端末のIDに限ることができる。これにより、操作端末からファームウェア保持サーバ108へファームウェアを送信する操作を限定することができる。すなわち、図15に示した画面を操作し、最終的に図13のシステムを使ってファームウェアを送信できる対象は、ログインに使用したIDに関連付けられる機器だけに限られる。
【0090】
機種ごとのファームウェアアップロード画面1504で、ファイルを選択するボタン1505をユーザが押すと、ダイアログが表示され、送信するファイルをユーザが選択できる。なお、このダイアログは図15には示されていない。送信するファイルを選択した状態でアップロードを実行するボタン1506をユーザが押すと、選択されたファイルがファームウェア保持サーバ108に対して送信される。
【0091】
ファイルの送信が完了すると、アップロード完了画面1508が表示される。この画面で終了ボタン1509をユーザが押すと、ブラウザが閉じ、操作が終了する。その一方で、ファームウェア保持サーバ108は、送信されたファームウェアをファイルとして保存する。さらに、このファイルのファイル名によって、図14に示したデータベースの、該当する接続されている機器の種類に関連付けられた、接続されている産業機器のファームウェアのファイル名を上書きする。
【0092】
その一方で、機種ごとのファームウェアアップロート画面1504では、個別の無線通信端末のIDをユーザが選択することができる。個別の無線通信端末のIDを選択すると、個別のファームウェアアップロード画面1507に遷移する。
【0093】
個別のファームウェアアップロード画面1507における操作は、機種ごとのファームウェアアップロード画面1504に類似している。すなわち、ファイルを選択するボタン1505をユーザが押すと、ダイアログが表示され、ユーザは送信するファイルを選択できる。なお、このダイアログは図15には示されていない。送信するファイルを選択した状態でアップロードを実行するボタン1506をユーザが押すと、選択されたファイルがファームウェア保持サーバ108に対して送信される。ファイルの送信が完了すると、アップロード完了画面1508が表示され、この画面で終了ボタン1509を押すと、ブラウザが閉じ、操作が終了する。ファームウェア保存サーバ108が送信されたファームウェアをファイルとして保存することについても、機種ごとのファームウェアアップロード画面1504が操作された場合と同様である。
【0094】
その一方で、機種ごとのファームウェアアップロード画面1504の場合と異なり、個別のファームウェアアップロード画面1507の操作によってファームウェアがアップロードされた場合、図14に示したデータベースは、該当する無線通信端末のIDに関連付けられた、接続されている産業機器のファームウェアのファイル名だけが上書きされる。
【0095】
無線通信端末101がファームウェア保持サーバ108からデータをダウンロードし、表示器つき洗浄機(1301、1303)、監視カメラ(1305、1306)に送信する動作は、上記において述べたものと同様であるため、ここでは重複して説明しない。
【0096】
この例で述べたような方法を用いれば、産業機器のファームウェアの書き換えに無線通信端末101を用いる場合に、互いにメーカが異なる産業機器のファームウェアをファームウェア保持サーバ108に保持させ、かつ、それらのメーカがファームウェア保持サーバ108にファームウェアを送信する際に、操作してはいけない機器を操作してしまうという事態を防止することができる。これにより、多数の産業機器のファームウェアをひとつのサーバで保持し、ファームウェアを書き換えるシステムを構築することができるので、機器1台あたりのサーバの維持管理コストを低減し、より安易にファームウェアの書き換え機能を実現することができる。
【0097】
以上実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではな
く、様々な変形例が含まれる。例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加
、削除、置換をすることが可能である。
【0098】
ファームウェア保持サーバ108は、ファームウェア生成システムから取得したファームウェアを適宜に保持することができる。ファームウェア保持サーバ108は、例えば、既存のファームウェアを生成されたファームウェアで更新し、生成されたファームウェアを保持してもよい。また、ファームウェア保持サーバ108は、無線通信端末101のIDなどの情報に関連付けて生成されたファームウェアを保持してもよい。
【0099】
ファームウェア保持サーバ108に、ファームウェアのダウンロード用のドメインが1つだけ設定されるシステムとされてもよい。そして、各無線通信端末101は、このドメインにアクセスしてファームウェアをダウンロードすることができる。このように、ドメインを1つだけ維持するということで、構築や維持のコスト低減を図ってもよい。
【0100】
無線通信には、無線通信用アンテナ等が適宜に用いられてもよい。有線通信には、LANケーブル等が適宜に用いられてもよい。
【0101】
表示器つき洗浄機(1301、1303)は、一例として、自動車を対象とした自動洗車機とすることができる。
【符号の説明】
【0102】
101 無線通信端末
102 広域通信部
103 処理部
104 局所通信部
105 記録部
108 ファームウェア保持サーバ
807 空気圧縮機ファームウェア生成システム
810 ポンプファームウェア生成システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16