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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20241209BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021188362
(22)【出願日】2021-11-19
(65)【公開番号】P2023075451
(43)【公開日】2023-05-31
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中橋 佳昭
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-236866(JP,A)
【文献】特開2016-061591(JP,A)
【文献】特開2017-090171(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0033463(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111542116(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111741535(CN,A)
【文献】特開2019-144120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
G08B 23/00 - 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船内の乗員を管理する管理システムであって、
前記乗員に装着され、前記乗員を識別する無線信号を周期的に発信する発信機と、
前記船内に設置され、前記無線信号を受信するための複数の受信機と、
前記船内の複数の位置の各々について、当該位置と、当該位置から発せられ、前記複数の受信機によって受信された信号の電波強度分布とを対応付けた分布情報を記憶するデータベースと、
前記データベースから、前記複数の受信機によって受信された前記無線信号の電波強度分布に最も近い電波強度分布を示す前記分布情報を特定し、特定された前記分布情報によって示される位置に基づいて、前記無線信号によって識別される前記乗員の所在を推定する推定部と、
前記乗員によって携帯される端末装置と、
前記データベースへ新たな分布情報を追加するデータベース更新部と、を備え、
前記複数の位置の個数は、前記複数の受信機の個数よりも多く、
前記端末装置は、
前記乗員の現在位置の入力を受け付けるユーザインターフェイス部と、
前記ユーザインターフェイス部が受け付けた現在位置を前記データベース更新部に送信する通信部と、を含み、
前記データベース更新部は、前記端末装置から受信した現在位置と、前記端末装置を携帯する前記乗員に装着された前記発信機から発信され、前記複数の受信機によって受信された前記無線信号の電波強度分布とを対応付けた情報を前記新たな分布情報として前記データベースに追加する、管理システム。
【請求項2】
前記ユーザインターフェイス部は、
ディスプレイを有し、
前記ディスプレイに前記船内のマップを表示し、
前記推定部によって推定された前記乗員の最新の所在を前記マップ上に表示し、
前記最新の所在と前記現在位置とが異なる場合に前記現在位置の入力を促し、
前記マップ上において前記現在位置の入力を受け付ける、請求項に記載の管理システム。
【請求項3】
船内の乗員を管理する管理システムであって、
前記乗員に装着され、前記乗員を識別する無線信号を周期的に発信する発信機と、
前記船内に設置され、前記無線信号を受信するための複数の受信機と、
前記船内の複数の位置の各々について、当該位置と、当該位置から発せられ、前記複数の受信機によって受信された信号の電波強度分布とを対応付けた分布情報を記憶するデータベースと、
前記データベースから、前記複数の受信機によって受信された前記無線信号の電波強度分布に最も近い電波強度分布を示す前記分布情報を特定し、特定された前記分布情報によって示される位置に基づいて、前記無線信号によって識別される前記乗員の所在を推定する推定部と、
前記船内の環境を示す環境情報を取得する取得部と、を備え、
前記複数の位置の個数は、前記複数の受信機の個数よりも多く、

前記データベースは、さらに、前記分布情報と対応付けて、前記分布情報によって示される前記電波強度分布が計測されたときの前記環境情報を蓄積し、
前記推定部は、
前記データベースから、前記複数の受信機が前記無線信号を受信したときの前記環境情報に対応する前記分布情報を抽出し、
抽出された前記分布情報を用いて前記乗員の所在を推定する、管理システム。
【請求項4】
前記環境情報は、前記船内の扉の開閉状態および湿度の少なくとも一方を示す、請求項に記載の管理システム。
【請求項5】
前記推定部によって推定された前記乗員の最新の所在が前記船の端部であり、かつ、前記最新の所在が推定された後に前記乗員を識別する前記無線信号を前記複数の受信機のいずれも受信しないことに応じて、前記乗員が前記船の外に落下した可能性があることを示す警報を発する通知部をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船の乗員を管理する管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-008492号公報(特許文献1)には、船内の乗員の所在を管理する管理システムが開示されている。この管理システムは、船内の乗員に装着され、Bluetooth(登録商標) Low Energy規格におけるアドバタイズパケットを送信する装置と、船内に配置された複数の受信機と、を備える。管理システムは、複数の受信機のうちアドバタイズパケットを受信した受信機の位置に基づいて、乗員の所在を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-008492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の管理システムは、アドバタイズパケットの受信強度が最も強い受信機の位置に基づいて、乗員の所在が推定される。ある受信機が他のいずれの受信機よりも強い受信強度で受信可能なアドバタイズパケットの発信位置の領域は比較的広い。そのため、特許文献1に記載の管理システムでは、推定される乗員の所在の精度が低い。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、船内の乗員の所在を精度良く管理することができる管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る船内の乗員を管理する管理システムは、乗員に装着され、乗員を識別する無線信号を周期的に発信する発信機と、船内に設置され、無線信号を受信するための複数の受信機と、データベースと、推定部と、を備える、データベースは、船内の複数の位置の各々について、当該位置と、当該位置から発せられ、複数の受信機によって受信された信号の電波強度分布とを対応付けた分布情報を記憶する。推定部は、データベースから、複数の受信機によって受信された無線信号の電波強度分布に最も近い電波強度分布を示す分布情報を特定し、特定された分布情報によって示される位置に基づいて、無線信号によって識別される乗員の所在を推定する。複数の位置の個数は、複数の受信機の個数よりも多い。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、船内の乗員の所在を精度良く管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】管理システムが適用される船を模式的に示す図である。
図2】実施の形態1に係る管理システムの構成を示す図である。
図3】実施の形態1に係る発信機の構成を示す図である。
図4】管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】実施の形態1に係る管理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図6】区画ごとに生成される初期設定用テーブルの一例を示す図である。
図7】実施の形態1に係るデータベースの一例を示す図である。
図8】管理テーブルの一例を示す図である。
図9】発信機におけるアドバタイズパケット送信処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】受信機におけるアドバタイズパケット受信処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】管理装置における計測データ受信処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12】管理装置における管理テーブルの更新処置の流れの一例を示すフローチャートである。
図13】管理装置における通知処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図14】実施の形態2に係る管理システムの構成を示す図である。
図15】端末装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図16】端末装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図17】実施の形態2に係る管理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図18】ユーザインターフェイス部によって提供される画面の一例を示す図である。
図19】実施の形態3に係る管理システムの構成を示す図である。
図20】実施の形態3に係るデータベースの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的には繰り返さないものとする。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0010】
[実施の形態1]
<管理システムの全体構成>
図1は、管理システムが適用される船を模式的に示す図である。図1に示されるように、船200は、壁202によって囲まれた複数の部屋を有する。各部屋には、扉203が設けられる。
【0011】
図2は、実施の形態1に係る管理システムの構成を示す図である。図2に示されるように、実施の形態1に係る管理システム1は、発信機10と、複数の受信機20と、管理装置30と、通信ケーブル60と、を備える。
【0012】
発信機10は、乗員100に装着される。発信機10は、乗員100を識別する無線信号を周期的に発信する。例えば、発信機10は、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)規格におけるアドバタイズパケット(アドバタイジングパケットともいう)を電波300によって無線送信する。以下、発信機10から送信される無線信号がアドバタイズパケットである例について説明する。ただし、発信機10から送信される無線信号は、アドバタイズパケットに限定されない。
【0013】
受信機20-1,20-2,・・・の各々は、船200(図1参照)内の固定位置に設置され、発信機10からのアドバタイズパケットを受信する。受信機20-1,20-2,・・・には、受信機IDがそれぞれ割り振られている。以下では、受信機20-1,20-2,・・・を特に区別しない場合、受信機20-1,20-2,・・・の各々を「受信機20」という。
【0014】
受信機20は、発信機10から送信されるアドバタイズパケットを受信すると、アドバタイズパケットの電波強度を計測し、計測した電波強度と受信時刻と受信機IDとアドバタイズパケットによって示される情報とを示す計測データを管理装置30に出力する。
【0015】
管理装置30は、受信機20から受けた計測データに基づいて、乗員100を管理する。具体的には、管理装置30は、乗員100の所在を推定し、乗員100の所在を管理する。
【0016】
通信ケーブル60は、受信機20と管理装置30とを通信可能に接続する。なお、通信ケーブル60には、他の装置(例えば消火装置)が接続されていてもよい。
【0017】
<発信機の構成>
図3は、実施の形態1に係る発信機の構成を示す図である。図3に示す例の発信機10は腕時計型である。ただし、発信機10の形状は、腕時計型に限定されない。たとえば、発信機10は、衣服の一部に埋め込まれるタイプであってもよいし、皮膚に貼り付けられるタイプであってもよい。
【0018】
図3に示されるように、発信機10は、生体センサ11と、通信部12とを備える。生体センサ11は、発信機10が装着された乗員100の生体情報(たとえば脈拍、心拍、体温など)を出力する。生体センサ11は、たとえば脈拍、心拍、体温などの値を計測し、計測した値を生体情報として出力してもよいし、計測した値に基づいて乗員100の状態を評価し、評価結果を生体情報として出力してもよい。
【0019】
通信部12は、BLE規格のアドバタイズパケットを生成し、生成したアドバタイズパケットを所定の送信周期で無線送信する。所定の送信周期は、BLE規格で定められており、20ms~10.24sの範囲で0.625msの整数倍である。通信部12は、たとえば約0.5sごとにアドバタイズパケットを送信する。通信部12は、予め定められた送信強度(送信電力)でアドバタイズパケットを送信する。
【0020】
アドバタイズパケットは、発信機10を識別する発信機IDを含む。発信機10は、乗員100に常時装着される。そのため、発信機IDは、発信機10を装着している乗員100を識別する情報と言える。
【0021】
さらに、アドバタイズパケットは、BLEデバイスの供給者が独自のフォーマットを規定して利用することができる情報要素「Manufacturer Specific Data」を含む。通信部12は、生体センサ11から出力された最新の生体情報をManufacturer Specific Dataに含める。Manufacturer Specific Dataのデータ長さは、予め定められている。そのため、生体センサ11は、Manufacturer Specific Dataのデータ長さに収まる生体情報を出力する。
【0022】
<管理装置のハードウェア構成>
図4は、管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図4に示されるように、管理装置30は、CPU(Central Processing Unit)301と、ROM(Read Only Memory)302と、RAM(Random Access Memory)303と、ネットワークインターフェイス304と、ディスプレイ305と、記憶装置306と、入力装置307とを含む。
【0023】
CPU301は、乗員100(図2参照)を管理するための管理プログラム310などの各種プログラムを実行する。CPU301は、管理プログラム310の実行指示を受け付けたことに基づいて、記憶装置306に格納された管理プログラム310をRAM303上に展開する。RAM303は、ワーキングメモリとして機能し、管理プログラム310の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0024】
ネットワークインターフェイス304には、通信ケーブル60(図2参照)が接続されている。ネットワークインターフェイス304は、通信ケーブル60を介して、受信機20との間でデータの送受信を行う。
【0025】
ディスプレイ305は、たとえば液晶ディスプレイで構成される。入力装置307は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどを含む。
【0026】
記憶装置306は、たとえば、ハードディスクおよびSSD(Solid State Drive)などの記憶装置である。記憶装置306は、管理装置30に内蔵されるものであってもよいし、管理装置30に外付けされるものであってよい。管理プログラム310は、記憶装置306に格納されるが、管理プログラム310の格納場所は記憶装置306に限らず、管理装置30の記憶領域(たとえば、キャッシュなど)、ROM302、RAM303、および外部の通信機器(たとえば、サーバ)などに格納されていてもよい。
【0027】
管理プログラム310は、単体のプログラムとして存在するものではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて存在するものであってもよい。さらに、管理プログラム310によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0028】
記憶装置306は、さらにデータベース320を記憶する。データベース320は、管理プログラム310の実行の際に利用される。
【0029】
<管理装置の機能構成>
図5図8を参照して、管理装置の機能構成について説明する。図5は、実施の形態1に係る管理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0030】
図5に示されるように、管理装置30は、記憶部31と、計測データ取得部32と、データベース作成部33と、推定部34と、管理部35と、通知部36と、を備える。記憶部31は、図4に示す記憶装置306、ROM302およびRAM303によって構成される。計測データ取得部32は、図4に示すネットワークインターフェイス304と管理プログラム310を実行するCPU301とによって実現される。データベース作成部33、推定部34および管理部35は、図4に示すCPU301が管理プログラム310を実行することによって実現される。通知部36は、図4に示すネットワークインターフェイス304とディスプレイ305と管理プログラム310を実行するCPU301とによって実現される。
【0031】
(計測データ取得部)
計測データ取得部32は、複数の受信機20の各々から計測データを取得する。上述したように、計測データは、電波強度と受信時刻と受信機IDとアドバタイズパケットによって示される情報とを示す。アドバタイズパケットによって示される情報には、発信機IDおよび生体情報が含まれる。計測データ取得部32は、取得した計測データを計測データ群311の一部として記憶部31に格納する。
【0032】
上述したように、発信機10は、所定の送信周期(例えば0.5s)でアドバタイズパケットを送信する。そのため、計測データ取得部32は、送信周期(例えば0.5s)ごとに各受信機20から計測データを取得する。
【0033】
(データベース作成部)
データベース作成部33は、管理装置30の初期設定を行なう。データベース作成部33は、乗員100の所在を推定する処理の前に動作する。
【0034】
管理装置30の初期設定は、1人以上の乗員100の協力のもとに実施される。1人以上の乗員100の各々は、1以上の発信機10を装着した状態で、船200内の複数の位置を順に移動する。当該複数の位置の個数は、船200内に設置される受信機20の個数よりも多い。
【0035】
例えば、2人の乗員100は、両腕の各々に発信機10を装着した状態で、船200内を移動する。なお、乗員100は、初期設定のときだけ両腕に発信機10を装着し、初期設定以外のときには片腕にのみ発信機10を装着する。
【0036】
図1に示されるように、船200内の各階は、複数の区画201(例えば一辺が1mの正方形の区画)に区分けされる。各区画201の中心位置は、XYZ座標で表される。X座標およびY座標は、船内の水平方向に沿った位置を示す。例えば、X座標は船尾方向を正とし、Y座標は右舷方向を正とし、Z座標は高さ(つまり階)方向を正とする。2人の乗員100は、複数の区画201のうちの1つの区画201の中心位置に発信機10の送信周期以上の第1の時間以上(例えば5分間以上)滞在した後、別の区画201に移動し、当該別の区画201で第1の時間以上滞在する。2人の乗員100は、この動作を繰り返し実施することにより、複数の区画201の全ての中心位置の各々において、第1の時間以上ずつ滞在する。
【0037】
2人の乗員100は、複数の区画201の各々について、当該区画201の中心位置のXYZ座標と、当該区画201の中心位置に到着した時刻(以下、「到着時刻」と称する。)と、を記録する。2人の乗員100の各々は、両腕に装着している2つの発信機10の発信機IDと記録したXYZ座標と記録した到着時刻とを示す入力情報を管理装置30の入力装置307に入力する。
【0038】
両腕に発信機10を装着した2人の乗員100が初期設定に協力した場合、入力装置307は、各区画201について、4つの入力情報の入力を受け付ける。具体的には、2人の乗員100のうちの一方の乗員「A」は、左腕に装着した発信機10の発信機IDを示す入力情報と、右腕に装着した発信機10の発信機IDを示す入力情報と、を入力する。2人の乗員100のうちの他方の乗員「B」も、左腕に装着した発信機10の発信機IDを示す入力情報と、右腕に装着した発信機10の発信機IDを示す入力情報と、を入力する。
【0039】
データベース作成部33は、入力装置307に入力された入力情報に基づいて、初期設定を行なう。
【0040】
データベース作成部33は、各区画201について、入力装置307に入力された複数の入力情報の中から当該区画201の中心位置のXYZ座標を示す少なくとも1つの入力情報を抽出する。両腕に発信機10を装着した2人の乗員100が初期設定に協力した場合、データベース作成部33は、各区画201について4つの入力情報を抽出する。
【0041】
データベース作成部33は、抽出した入力情報ごとに、計測データ群311の中から、当該入力情報によって示される到着時刻から5分間の間の受信時刻を示し、かつ、当該入力情報によって示される発信機IDを示す計測データを抽出する。データベース作成部33は、各区画201について、抽出された計測データに基づいて、当該区画201の初期設定用テーブル312を生成する。
【0042】
データベース作成部33は、受信機20の個数nと、各区画201についての入力情報の個数(すなわち発信機10の個数)mとの積n×mの個数のレコードを含む初期設定用テーブル312を作成する。言い換えると、データベース作成部33は、1つの受信機20と1つの発信機10との組み合わせごとのレコードを含む初期設定用テーブル312を作成する。
【0043】
図6は、区画ごとに生成される初期設定用テーブルの一例を示す図である。図6には、区画201-1について生成された初期設定用テーブル312が示される。図6に示されるように、初期設定用テーブル312の各レコード312aは、発信機IDが記述されるフィールド312bと、受信機IDが記述されるフィールド312cと、電波強度の計測を開始した時刻(計測開始時刻)が記述されるフィールド312dと、送信周期が記述されるフィールド312eと、5分間に計測された電波強度の値が記述されるフィールド312fとを有する。
【0044】
データベース作成部33は、各レコード312aについて、当該レコード312aに対応する受信機20の受信機IDをフィールド312bに記述し、当該レコードに対応する発信機10の発信機IDをフィールド312cに記述する。なお、発信機IDの代わりに、発信機10の装着場所を示す情報(例えば、乗員100の氏名と、右腕および左腕のうち発信機10が装着されている腕を識別する情報など)がフィールド312cに記述されてもよい。
【0045】
また、データベース作成部33は、各レコード312aについて、抽出された計測データの中から、当該レコードに対応する受信機20の受信機IDを示し、かつ、当該レコードに対応する発信機10の発信機IDを示す計測データを特定する。データベース作成部33は、特定した計測データによって示される電波強度をフィールド312fに記述する。
【0046】
なお、乗員100が位置する区画201と受信機20との距離が長い場合、受信機20は、当該乗員100に装着された発信機10からのアドバタイズパケットを受信できない。そのため、抽出された計測データの中から計測データを特定できないレコード312aが存在しうる。データベース作成部33は、抽出された計測データの中から計測データを特定できないレコード312aについて、フィールド312fに「0」を記述する。
【0047】
データベース作成部33は、初期設定用テーブル312に対応する区画201の中心位置のXYZ座標を示し、かつ、フィールド312cに記述された発信機IDを示す入力情報によって示される到着時刻を、フィールド312dに記述する。データベース作成部33は、所定の送信周期(例えば0.5s)をフィールド312eに記述する。
【0048】
データベース作成部33は、区画201ごとに作成した初期設定用テーブル312を用いた統計処理を行なうことにより、データベース320を作成する。
【0049】
図7は、実施の形態1に係るデータベースの一例を示す図である。図7に示されるように、データベース320は、区画201ごとのデータ領域321を有する。データ領域321は、区画201を識別する識別情報が記述されるフィールド320aと、区画201の中心位置のXYZ座標が記述されるフィールド320bと、を含む。さらに、データ領域321は、受信機20の個数nと同じ個数のレコード322を含む。各レコード322は、受信機IDが記述されるフィールド320cと、初期設定用テーブル312を用いた統計処理によって得られる受信電波強度の統計値が記述される1以上のフィールド320dと、を含む。
【0050】
データベース作成部33は、各区画201について、当該区画201に対応する初期設定用テーブル312に基づいて、当該区画201に対応するデータ領域321の各フィールドにデータを記述する。具体的には、データベース作成部33は、区画201の識別情報をフィールド320aに記述し、区画201の中心位置のXYZ座標をフィールド320bに記述する。データベース作成部33は、各受信機20について、初期設定用テーブル312(図6参照)の中から当該受信機20の受信機IDが記述されたレコード312aを読み出す。データベース作成部33は、読み出したレコード312aのフィールド312f(図6参照)に記述された電波強度に対して統計処理を行なう。図6に示すように、例えば、フィールド312fに記述された電波受信強度について、最大値、最小値、乗員100の発信機10ごとの平均値(例えば、A左平均とは乗員「A」の左腕につけた発信機10から発せられる電波の受信強度の平均値であり、例えば、A右平均とは乗員「A」の右腕につけた発信機10から発せられる電波の受信強度の平均値である。B左平均およびB右平均も同様である)、全ての乗員100の平均値(単純平均)、及び規格化平均などを算出する。規格化平均とは個々の発信機10の出力電波強度の差異を考慮し、あらかじめ定められた基準の発信機10の電波を受信した場合に換算した値(規格化平均電波強度)である。具体的には基準の発信機10の出力電波強度をP0とし、乗員「A」の左腕につけた発信機10の出力電波強度をPal、乗員「A」の右腕につけた発信機10の出力電波強度をPar、乗員「B」の左腕につけた発信機10の出力電波強度をPbl、及び乗員「B」の右腕につけた発信機10の出力電波強度をPbrとする。この場合、受信機20のA左平均がEal、A右平均がEar、B左平均がEblそしてB左平均がEbrとすると、規格化平均電波強度は以下となる。
規格化平均電波強度
=(Eal/Pal+Ear/Par+Ebl/Pbl+Ebr/Pbr)・P0/4
データベース作成部33は、各受信機20の受信機IDをフィールド320cに記述し、当該受信機20に対応するレコード312aに記述された電波強度から算出された各種の統計値をフィールド320dに記述する。
【0051】
各データ領域321に含まれる複数のレコード322は、複数の受信機20によって受信された無線信号の電波強度分布を示す。従って、各データ領域321は、対応する区画201の中心位置と、当該中心位置から発せられ、複数の受信機20によって受信されたアドバタイズパケットの電波強度分布とを対応付けた分布情報を示す。データベース320は、船200内の複数の区画201の中心位置の各々について、当該分布情報を示すデータ領域321を含む。
【0052】
(推定部)
推定部34は、初期設定の終了後に動作を開始する。推定部34は、計測データ取得部32によって取得された計測データとデータベース320とを用いて、乗員100の所在を推定する。推定部34は、データベース320から、複数の受信機20によって受信されたアドバタイズパケットの電波強度分布に最も近い電波強度分布を示すデータ領域321を特定し、特定されたデータ領域321によって示される中心位置に基づいて、乗員100の所在を推定する。典型的には、推定部34は、特定されたデータ領域321によって示される中心位置を乗員100の所在として推定する。
【0053】
具体的には、推定部34は、計測データ群311の中から、現在から送信周期だけ遡った期間内の受信時刻を示す計測データを抽出する。推定部34は、各乗員100について、抽出された計測データのうち、当該乗員100が装着している発信機10の発信機IDを示す計測データを特定する。特定された計測データは、当該乗員100が装着している発信機10から送信されたアドバタイズパケットを受信できた1以上の受信機20から送信されたものである。そのため、1以上の計測データが特定され得る。
【0054】
推定部34は、特定された計測データによって示される電波強度分布と、データベース320に含まれる複数のデータ領域321(図7参照)の各々によって示される電波強度分布との類似度を算出する。
【0055】
例えば、推定部34は、各計測データについて、当該計測データによって示される電波強度と、当該計測データによって示される受信機IDが記述されたフィールド320cに対応するフィールド320dに記述された統計値との差を算出する。例えば、各計測データについて、当該計測データによって示される電波強度と、フィールド320dに記された単純平均値との差を算出する。あるいは、当該計測データによって示される電波強度を前述の規格化電場強度と同様な方法で規格化し、個々の発信機10の出力電波強度の影響を考慮して、当該計測データによって示される規格化された電波強度と、フィールド320dに記された規格化平均電波強度との差を算出する。なお、上述したように、特定された計測データは、当該乗員100が装着している発信機10から送信されたアドバタイズパケットを受信できた1以上の受信機20から送信されたものである。そのため、アドバタイズパケットを受信できなかった受信機20に対応する計測データが特定されない。従って、推定部34は、特定されたいずれの計測データによっても示されない受信機IDを有する受信機20について、電波強度「0」とフィールド320dに記述された統計値との差を算出する。このようにして、推定部34は、全ての受信機20について当該差を算出する。
【0056】
推定部34は、複数のデータ領域321(図7参照)の各々について、算出された差の合計値を類似度として算出する。この場合、類似度の値が小さいほど、類似している傾向が上位となる。なお、類似度の算出方法は、これに限定されない。
【0057】
推定部34は、このようにして算出された類似度が最も小さい電波強度分布を示すデータ領域321を特定し、特定されたデータ領域321によって示される中心位置を乗員100の所在として推定する。なお、データ領域321の類似度が所定の範囲にない場合は、所謂三点測量の手法により、電波強度の強い3ケ所の受信機20の計測データから求められる中心位置を、乗員100の所在として推定するようにしてもよい。
【0058】
(管理部)
管理部35は、各乗員100の所在および生体情報を管理する。管理部35は、記憶部31が記憶する管理テーブル313を更新する。
【0059】
図8は、管理テーブルの一例を示す図である。図8に示されるように、管理テーブル313は、乗員100ごとのレコード313aを含む。各レコード313aは、乗員IDが記述されるフィールド313bと、乗員100に装着された発信機10の発信機IDが記述されるフィールド313cと、乗員100の最新の生体情報が記述されるフィールド313dと、乗員100の最新の所在が記述されるフィールド313eと、乗員100に装着された発信機10からのアドバタイズパケットの最新受信時刻が記述される313fと、を有する。
【0060】
管理部35は、計測データ取得部32によって取得された最新の計測データによって示される発信機ID、生体情報および受信時刻に基づいて、当該発信機IDが記述されたフィールド313cに対応するフィールド313d,313fに記述される内容を更新する。
【0061】
管理部35は、推定部34によって推定された各乗員100の最新の所在に基づいて、フィールド313eに記述される内容を更新する。フィールド313eには、船200内の位置を示すXYZ座標が記述される。
【0062】
(通知部)
通知部36は、管理テーブル313を常時監視し、各種の情報を通知する。例えば、通知部36は、各種の情報が示される画面をディスプレイ305に表示する。
【0063】
通知部36は、マップを含む画面をディスプレイ305に表示し、当該マップ上の各乗員100の最新の所在に対応する位置に当該乗員100を識別するマークを表示してもよい。これにより、画面を見た管理者は、各乗員100の所在を容易に認識できる。
【0064】
また、通知部36は、管理テーブル313の各レコード313aのフィールド313fに記述されている最新受信時刻を常時監視する。通知部36は、最新受信時刻と現時刻との時間差が規定時間(第2の時間)を超える最新受信時刻を含むレコード313aを抽出する。規定時間は、発信機10による無線信号の発信周期よりも長い時間に設定されている。最新受信時刻と現時刻との時間差が規定時間を超えることは、いずれの受信機20もアドバタイズパケットを規定時間受信していないことを意味する。
【0065】
通知部36は、抽出したレコード313aのフィールド313eに記述された所在が船200の端部であるか否かを判断する。通知部36は、船200の端部の範囲を予め記憶している。通知部36は、フィールド313eに記述されているXYZ座標が当該範囲内であるときに、フィールド313eに記述された所在が船200の端部であると判断する。
【0066】
推定された最新の乗員100の所在が船200の端部であり、かつ、いずれの受信機20も当該乗員100の発信機10から無線信号を規定時間受信していない場合、当該乗員100が船200の外に落下した可能性がある。そこで、通知部36は、フィールド313eに記述された所在が船200の端部である場合、フィールド313bに記述された乗員IDを有する乗員100が船200の外に落下した可能性があることを示す警報を発する。例えば、通知部36は、ディスプレイ305に当該警報を表示してもよいし、船200内に設置された1以上のスピーカーから落下の可能性を示す音声を出力してもよい。
【0067】
また、通知部36は、船200のある部屋で火災が発生した場合、管理テーブル313を用いて、当該部屋に乗員100が存在するか否かを確認し、消火装置を制御する制御装置に確認結果を通知してもよい。これにより、制御装置は、部屋に乗員100がいるか否かに応じて消火方法を選択し、選択した消火方法に従って消火装置を制御できる。
【0068】
<管理システムの処理の流れ>
(管理テーブルの更新処理の流れ)
図9図12を参照して、発信機10、受信機20及び管理装置30における各種処理の流れを説明する。図9は、発信機10におけるアドバタイズパケット送信処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、発信機10は、現時刻が送信時刻であるか否かを判断する(ステップS01)。発信機10によるアドバタイズパケットの送信周期が予め定められているため、前回の送信時刻から送信周期だけ経過した時刻が次の送信時刻となる。現時刻が送信時刻でない場合(ステップS01でNO)、アドバタイズパケット送信処理はステップS01に戻る。
【0069】
現時刻が送信時刻である場合(ステップS01でYES)、発信機10は、生体センサ11から出力された最新の生体情報を含むアドバタイズパケットを生成し、生成したアドバタイズパケットを送信する(ステップS02)。ステップS01からステップS02の処理は繰り返し実行される。これにより、発信機10は、所定の送信周期でアドバタイズパケットを送信することができる。
【0070】
図10は、受信機20におけるアドバタイズパケット受信処理の流れの一例を示すフローチャートである。ステップS11において、受信機20は、アドバタイズパケットを受信したが否かを判定する。受信しない場合(ステップS11でNO)、アドバタイズパケット受信処理はステップS11に戻る。受信機20が何れかの発信機10からアドバタイズパケットを受信した場合(ステップS11でYES)、アドバタイズパケット受信処理はステップS12に移行する。ステップS12において、受信機20は、受信したアドバタイズパケットに対応する計測データを管理装置30に転送する。計測データは、アドバタイズパケットによって示される生体情報および発信機IDと、電波強度と、受信時刻と、受信機IDと、を示す。
【0071】
図11は、管理装置30における計測データ受信処理の流れの一例を示すフローチャートである。ステップS21において、管理装置30は、受信機20からの計測データを受信したが否かを判定する。受信しない場合(ステップS21でNO)、計測データ受信処理はステップS21に戻る。管理装置30が、いずれかの受信機20から計測データを受信した場合(ステップS21でYES)、計測データ受信処理はステップS22に移行する。ステップS22において、管理装置30は、受信した計測データを計測データ群311の一部として保管する。ステップS21からステップS22の処理は繰り返し実行される。
【0072】
図12は、管理装置30における管理テーブルの更新処置の流れの一例を示すフローチャートである。管理装置30のCPU301は、所在の推定対象となる乗員100(以下、「対象乗員」と称する。)を選択する(ステップS31)。次にステップS32において、CPU301は、対象乗員に装着された発信機10の発信機IDを示し、かつ、現在から送信周期だけ遡った期間内の受信時刻を示す計測データを解析して、受信機20ごとの電波強度分布を特定する。発信機10の出力強度の差異を低減するため、前述の規格化平均と同様に基準の発信機10の電波出力に換算して、受信機20ごとの電波強度分布を特定する。
【0073】
次に、CPU301は、データベース320から、特定した電波強度分布に最も近い電波強度分布を示すデータ領域321を特定する。あるいは、データ領域321で特定できない場合は、電波強度の大きい順の3つの受信機20の計測テータから発信機10の中心位置を推定するようにしてもよい(ステップS33)。
【0074】
次に、CPU301は、特定されたデータ領域321によって示される中心位置、あるいは推定された中心位置に基づいて、対象乗員の所在を推定する(ステップS34)。CPU301は、推定結果に基づいて、管理テーブル313を更新する(ステップS35)。具体的には、管理テーブル313の生体情報、所在および最新受信時刻が更新される。
【0075】
次に、CPU301は、未選択の乗員100が存在するか否かを判断する(ステップS36)。未選択の乗員100が存在する場合(ステップS36でYES)、管理テーブル313の更新処理はステップS4に戻る。これにより、全ての乗員100の所在が推定される。未選択の乗員100が存在しない場合(ステップS36でNO)、管理テーブルの更新処理は、終了する。
【0076】
ステップS31~S36の更新処理は、繰り返し実施される。図9から図12の処理により、乗員100の所在は、送信周期ごとあるいは数周期毎に更新される。
【0077】
(通知処理の流れ)
図13は、管理装置における通知処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、管理装置30のCPU301は、管理テーブル313の各レコード313aの最新受信時刻と現時刻との時間差が規定時間を超えるか否かを判断する(ステップS41)。ステップS41でNOの場合、通知処理はステップS41に戻る。
【0078】
ステップS41でYESの場合、CPU301は、最新受信時刻と現時刻との時間差が規定時間を超えるレコード313aを管理テーブル313から抽出し、抽出したレコード313aに記述された乗員IDを特定する(ステップS42)。
【0079】
次に、CPU301は、抽出したレコード313aに記述された所在(つまり、乗員100の最新の所在)が船200の端部であるか否かを判断する(ステップS43)。
【0080】
乗員100の最新の所在が船200の端部である場合(ステップS43でYES)、CPU301は、抽出したレコード313aに記述された乗員IDの乗員100が船200から落下した可能性があることを通知する(ステップS44)。
【0081】
乗員100の最新の所在が船200の端部でない場合(ステップS43でNO)、CPU301は、抽出したレコード313aに記述された乗員IDの乗員100の所在が不明であることを通知する(ステップS45)。
【0082】
ステップS44,S45の後、通知処理は終了する。なお、ステップS41~S45の通知処理は、繰り返し実行される。
【0083】
<変形例>
上記の説明では、図12に示す更新処理は、アドバタイズパケットの送信周期のP倍(Pは、1以上)ごとに実施されてもよい。この場合、ステップS32において、CPU301は、対象乗員に装着された発信機10の発信機IDを示し、かつ、現在から送信周期のP倍だけ遡った期間内の受信時刻を示す複数の計測データを解析する。解析対象の複数の計測データには、同一の受信機IDを示すP個の計測データが含まれる。
【0084】
CPU301は、当該P個の計測データによって示される電波強度から複数の統計値(例えば最大値、最小値、平均値など)を算出することにより、受信機20ごとの電波強度分布を特定してもよい。CPU301は、当該複数の統計値を用いて、データベース320の各データ領域321によって示される電波強度分布との類似度を算出すればよい。例えば、複数の統計値が最大値、最小値および平均値を含む場合、CPU301は、P個の計測データから算出された最大値、最小値および平均値と、各データ領域321のフィールド320dに記述された最大値、最小値および平均値とのそれぞれの差を算出し、これらの差の合計値を類似度として算出してもよい。
【0085】
あるいは、CPU301は、P個の送信周期の各々について、当該送信周期内の受信時刻を示す複数の計測データを解析することにより電波強度分布を特定する。そして、CPU301は、データベース320から、特定した電波強度分布に最も近い電波強度分布を示すデータ領域321によって示される中心位置を特定する。このようにして、CPU301は、P個の送信周期の各々について中心位置を特定する。CPU301は、特定したP個の中心位置のうち最も多い中心位置を、乗員100の所在として推定すればよい。
【0086】
上記の説明では、管理装置30がデータベース320および推定部34を備えるものとした。しかしながら、データベース320と推定部34とは、互いに異なる2つの装置にそれぞれ備えられてもよい。
【0087】
上記の説明では、データベース320は、電波強度分布を示すデータとして、テーブル形式のデータ領域321を有するものとした。しかしながら、データベース320は、テーブル形式のデータ領域321の代わりに、電波強度分布を示す画像データを記憶していてもよい。画像データは、複数の受信機20の各々が配置された位置のXYZ座標の画素値として電波強度を示す。
【0088】
<利点>
以上のように、管理システム1は、船200内の乗員100を管理する。管理システム1は、発信機10と、複数の受信機20と、データベース320と、推定部34と、を備える。発信機10は、乗員100に装着され、乗員100を識別する無線信号(例えばアドバタイズパケット)を周期的に発信する。複数の受信機20は、船200内に設置され、無線信号を受信する。データベース320は、船200内の複数の区画201の中心位置の各々について、当該中心位置と、当該中心位置から発せられ、複数の受信機20によって受信された信号の電波強度分布とを対応付けたデータ領域321を含む。推定部34は、データベース320から、複数の受信機20によって受信された無線信号の電波強度分布に最も近い電波強度分布を示すデータ領域321を特定し、特定されたデータ領域321によって示される中心位置に基づいて、当該無線信号によって識別される乗員100の所在を推定する。複数の区画201の個数は、複数の受信機20の個数よりも多い。
【0089】
特許文献1に記載の技術では、アドバタイズパケットの受信強度が最も強い受信機の位置に基づいて、乗員の所在が推定される。そのため、推定される乗員の所在の精度は、受信機20の間隔に応じて定まる。これに対し、本実施の形態では、管理システム1は、電波強度分布を用いることにより、推定される乗員100の所在の精度は、複数の区画201の中心位置の間隔に応じて定まる。複数の区画201の個数は、複数の受信機20の個数よりも多い。そのため、特許文献1に記載の技術と比べて、船200内の乗員100の所在を精度良く管理することができる。
【0090】
また、管理システム1は、通知部36をさらに備える。通知部36は、推定部34によって推定された乗員100の最新の所在が船200の端部であり、かつ、最新の所在が推定された後に乗員100を識別する無線信号を複数の受信機20のいずれも受信しないことに応じて、乗員100が船200の外に落下した可能性があることを示す警報を発する。
【0091】
これにより、乗員100が船200の外に落下した場合に、管理者は、即座に当該乗員100を助けることができる。
【0092】
[実施の形態2]
図14図18を参照して、実施の形態2に係る管理システムについて説明する。実施の形態2に係る管理システムは、データベース320へデータを随時追加する。
【0093】
実施の形態1では、初期設定において、乗員100は、船200の複数の区画201(例えば一辺が1mの正方形の区画)の中心位置に順に移動する。そのため、データベース320は、当該複数の区画201と同数のデータ領域321を有する。従って、乗員100の所在の推定精度は、当該複数の区画201の間隔に依存する。乗員100の所在の推定精度を上げるために、複数の区画201の間隔を狭くすることが考えられる。この場合、初期設定に要する時間が長くなる。
【0094】
また、受信機20によって受信されるアドバタイズパケットの電波強度は、船200の環境によって変動しうる。例えば、船200の各部屋の扉203(図1参照)の開閉状態によって、電波強度が変動しうる。また、湿度によっても電波強度が変動しうる。そのため、初期設定のときの環境と、乗員100の所在を推定するときの環境とが異なる場合、推定精度が低下する可能性がある。
【0095】
この点を鑑みて、乗員100の所在の推定精度の低下を抑制するために、実施の形態2では、様々な位置における電波強度分布を示すデータ領域321がデータベース320に随時追加される。
【0096】
図14は、実施の形態2に係る管理システムの構成を示す図である。図14に示されるように、実施の形態2に係る管理システム1Aは、実施の形態1に係る管理システム1と比較して、管理装置30の代わりに管理装置30Aを備え、かつ、端末装置50をさらに備える点で相違する。
【0097】
端末装置50は、少なくとも1人以上の乗員100によって携帯される。端末装置50は、例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、ノートパソコンなどを含む。
【0098】
図15は、端末装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図15に示されるように、端末装置50は、CPU501と、ROM502と、RAM503と、ネットワークインターフェイス504と、ディスプレイ505と、入力装置506と、記憶装置507と、を含む。
【0099】
CPU501は、データベース320へのデータ追加処理を支援する。CPU501は、アプリケーション510の実行指示を受け付けたことに基づいて、記憶装置507に格納されたアプリケーション510をRAM503上に展開する。RAM503は、ワーキングメモリとして機能し、アプリケーション510の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0100】
ネットワークインターフェイス304は、ネットワークを介して、管理装置30Aとの間でデータの送受信を行う。
【0101】
ディスプレイ505は、たとえば液晶ディスプレイで構成される。入力装置506は、例えば、タッチパネル、キーボード、マウスなどを含む。
【0102】
記憶装置507は、たとえば、ハードディスクおよびSSDなどの記憶装置である。記憶装置507は、データベース320へのデータ追加処理を行なうためのアプリケーション510を記憶している。アプリケーション510は、記憶装置507に格納されるが、アプリケーション510の格納場所は記憶装置507に限らず、管理装置30Aの記憶領域(たとえば、キャッシュなど)、ROM502、RAM503、および外部の通信機器(たとえば、サーバ)などに格納されていてもよい。
【0103】
アプリケーション510は、単体のプログラムとして存在するものではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて存在するものであってもよい。さらに、アプリケーション510によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0104】
図16は、端末装置の機能構成の一例を示すブロック図である。図16に示されるように、端末装置50は、ユーザインターフェイス部51(図中、「UI部」と表記)と、通信部52と、を備える。ユーザインターフェイス部51は、図15に示すディスプレイ505、入力装置506、およびアプリケーション510を実行するCPU501によって実現される。通信部52は、ネットワークインターフェイス504とアプリケーション510を実行するCPU501とによって実現される。
【0105】
図17は、実施の形態2に係る管理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。図17に示されるように、管理装置30Aは、実施の形態1に係る管理装置30と比較して、データベース更新部37をさらに備える点で相違する。なお、管理装置30Aは、実施の形態1に係る管理装置30と同様に、図4に示すハードウェア構成を備える。データベース更新部37は、図4に示すCPU301が管理プログラム310を実行することにより実現される。
【0106】
以下に、端末装置50が備えるユーザインターフェイス部51および通信部52と、管理装置30Aが備えるデータベース更新部37との機能について説明する。
【0107】
ユーザインターフェイス部51は、データベース320へのデータ追加処理を支援するための画面を提供し、画面への入力を受け付ける。通信部52は、管理装置30Aとの間でデータ通信を行なう。
【0108】
図18は、ユーザインターフェイス部によって提供される画面の一例を示す図である。図18に示される画面70は、端末装置50のディスプレイ505に表示される。図18に示されるように、画面70は、船200内のマップ71と、ボタン72,73と、マーク74,75と、を含む。
【0109】
通信部52は、管理装置30Aのデータベース320から、端末装置50を携帯する乗員100について推定された最新の所在を取得する。ユーザインターフェイス部51は、マップ71において、取得された最新の所在に対応する位置にマーク74を配置する。これにより、乗員100は、推定された所在をマップ71上で確認できる。
【0110】
ユーザインターフェイス部51は、「現在位置と推定された所在とが異なる場合、現在地位置をクリックして、「登録」ボタンをクリックしてください。」とのメッセージを画面70に含める。当該メッセージを確認した乗員100は、推定された所在と現在位置とが異なる場合に、マップ71上において現在位置をクリックする。これにより、ユーザインターフェイス部51は、乗員100の現在位置の入力を受け付け、マップ71上において入力された現在位置にマーク75を表示する。
【0111】
ボタン72がクリックされたことに応じて、通信部52は、ユーザインターフェイス部51が受け付けた現在位置をデータベース更新部37に送信する。現在位置は、船200内のXYZ座標で示される。
【0112】
データベース更新部37は、端末装置50から受信した現在位置と、端末装置50を携帯する乗員100に装着された発信機10から発信され、複数の受信機20によって受信されたアドバタイズパケットの電波強度分布とを対応付けた新たなデータ領域321をデータベース320に追加する。
【0113】
具体的には、データベース更新部37は、端末装置50が現在位置を受信すると、データベース320に新たなデータ領域321を追加する。そして、データベース更新部37は、追加したデータ領域321において、受信した現在位置を識別する情報をフィールド320aに記述し、受信した現在位置を示すXYZ座標をフィールド320bに記述する。
【0114】
さらに、データベース更新部37は、計測データ群311から、過去所定時間(第3の時間)内の受信時刻を示し、かつ、端末装置50を携帯する乗員100に装着された発信機10の発信機IDを示す計測データを抽出する。所定時間(第3の時間)は、図18に示す画面70への入力に要する時間を考慮して予め定められ、例えば30sである。データベース更新部37は、抽出された計測データによって示される電波強度に対して統計処理を行ない、統計処理の結果をフィールド320dに記述する。
【0115】
ボタン73がクリックされた場合、ユーザインターフェイス部51は、画面70を閉じる。
【0116】
本実施の形態によれば、データベース320に新たなデータ領域321が随時追加される。その結果、乗員100の所在の推定精度の低下が抑制される。
【0117】
[実施の形態3]
実施の形態3は、実施の形態2を更に変形した形態である。受信機20によって受信されるアドバタイズパケットの電波強度は、船200の環境によって変動しうる。例えば、船200の各部屋の扉203(図1参照)の開閉状態によって、電波強度が変動しうる。また、湿度によっても電波強度が変動しうる。そのため、初期設定のときの環境と、乗員100の所在を推定するときの環境とが異なる場合、推定精度が低下する可能性がある。そのため、実施の形態3に係る管理システムは、環境の変動も考慮して、乗員100の所在を推定する。
【0118】
図19は、実施の形態3に係る管理システムの構成を示す図である。図19に示されるように、実施の形態3に係る管理システム1Bは、実施の形態2に係る管理システム1Aと比較して、管理装置30Aの代わりに管理装置30Bを備え、かつ、センサ204,205をさらに備える点で相違する。
【0119】
センサ204,205は、船200内の環境を示す環境情報を取得する取得部として動作する。
【0120】
複数のセンサ204の各々は、対応する扉203の開閉状態を検知する。例えば、センサ204-1,204-2,204-3は、扉203-1,203-2,203-3の開閉状態をそれぞれ検知する。すなわち、センサ204は、環境情報として扉203の開閉状態を示す情報を取得する。
【0121】
センサ205は、船200内の湿度を計測する。すなわち、センサ205は、環境情報として湿度を示す情報を取得する。
【0122】
センサ204,205は、周期的に環境情報を取得し、取得した環境情報と取得時刻とを対応付けて記憶する。
【0123】
管理装置30Bは、図17に示す管理装置30Aと同様の機能構成を有する。ただし、管理装置30Bの記憶部31には、データベース320の代わりに、図20に示すデータベース320Bが格納される。
【0124】
図20は、実施の形態3に係るデータベースの一例を示す図である。図20に示されるように、データベース320Bは、環境情報が記述されるフィールド320eを含む。データベース320Bは、同一のXYZ座標について、環境情報が異なる複数のデータ領域321を含む。
【0125】
計測データ取得部32は、各受信機20から計測データを取得すると、計測データを取得した時刻における環境情報をセンサ204,205から取得し、取得した環境情報を計測データに付加する。
【0126】
データベース作成部33およびデータベース更新部37は、計測データによって示される電波強度の統計処理の結果をデータベース320Bのデータ領域321に記述する際に、当該計測データに付加された環境情報をフィールド320eに記述する。
【0127】
推定部34は、データベース320Bから、複数の受信機20がアドバタイズパケットを受信したときの環境情報に対応するデータ領域321を抽出し、抽出されたデータ領域321を用いて乗員100の所在を推定する。
【0128】
具体的には、推定部34は、現在から送信周期だけ遡った期間における環境情報をセンサ204,205から取得する。当該期間において環境情報が変動する場合、最も頻度の高い環境情報が特定される。推定部34は、特定した環境情報に対応するデータ領域321を用いて、乗員100の所在を推定すればよい。
【0129】
なお、管理システム1Bは、センサ204およびセンサ205のうちの一方のみを備えていてもよい。
【0130】
実施の形態3によれば、環境情報を考慮することにより、乗員100の所在をより精度良く推定することができる。
【0131】
今回開示された実施の形態がすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0132】
1,1A,1B 管理システム、10 発信機、11 生体センサ、12,52 通信部、20 受信機、30,30A,30B 管理装置、31 記憶部、32 計測データ取得部、33 データベース作成部、34 推定部、35 管理部、36 通知部、37 データベース更新部、50 端末装置、51 ユーザインターフェイス部、60 通信ケーブル、70 画面、71 マップ、72,73 ボタン、74,75 マーク、100 乗員、200 船、201 区画、202 壁、203 扉、204,205 センサ、300 電波、301,501 CPU、302,502 ROM、303,503 RAM、304,504 ネットワークインターフェイス、305,505 ディスプレイ、306,507 記憶装置、307,506 入力装置、310 管理プログラム、311 計測データ群、312 初期設定用テーブル、312a,313a,322 レコード、312b~312f,313b~313f,320a~320e フィールド、313 管理テーブル、320,320B データベース、321 データ領域、510 アプリケーション。
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