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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】極低温流体移送用の真空断熱二重配管
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/065 20060101AFI20241209BHJP
   F16L 59/22 20060101ALI20241209BHJP
   F16L 43/00 20060101ALI20241209BHJP
   F16L 27/12 20060101ALI20241209BHJP
   F16L 9/18 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
F16L59/065
F16L59/22
F16L43/00
F16L27/12 B
F16L9/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021199512
(22)【出願日】2021-12-08
(65)【公開番号】P2023085049
(43)【公開日】2023-06-20
【審査請求日】2024-10-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508173901
【氏名又は名称】TBグローバルテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】河合 務
(72)【発明者】
【氏名】吉原 由真
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-024285(JP,A)
【文献】特開2008-121746(JP,A)
【文献】実公平05-032717(JP,Y2)
【文献】中国特許出願公開第112682620(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/065
F16L 59/22
F16L 43/00
F16L 27/12
F16L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管と、この内管の外周に真空層を介して設けられる外管とを備え、両端部にエルボ部が設けられた直管部を有する極低温流体移送用の真空断熱二重配管であって、前記内管は、前記直管部に位置する内管直管部にベローズ部が設けられ、さらに、前記エルボ部に位置する内管エルボ部に夫々、突出部が設けられ、また、前記外管は、前記エルボ部に位置する外管エルボ部に前記突出部を収容する収容部が設けられ、さらに、この収容部に前記突出部と当接する受部が設けられ、また、前記各突出部及び前記各受部は、前記内管の管中心線上に設けられ、且つ、前記各突出部は、前記管中心線に沿って外方に向かって突設され、また、前記各受部は、ネジ体に構成され、前記収容部の外側から螺挿され該収容部内への突出量を自在に調整できるように構成され、さらに、前記突出部前記受部とは断熱部材を介して当接するように構成されていることを特徴とする極低温流体移送用の真空断熱二重配管。
【請求項2】
請求項1記載の極低温流体移送用の真空断熱二重配管において、前記突出部は、前記受部に対して可動可能に当接するように構成されていることを特徴とする極低温流体移送用の真空断熱二重配管。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の極低温流体移送用の真空断熱二重配管において、前記内管は、前記内管直管部の外面に複数の芯出し部が設けられ、この芯出し部は、断熱部材で構成され、前記内管直管部の周方向に間隔をおいて前記外管の外管直管部の内面と当接するように設けられていることを特徴とする極低温流体移送用の真空断熱二重配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温流体移送用の真空断熱二重配管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液化水素等の極低温流体を移送するための配管として、外部からの入熱量低減及び外面付近での液化空気の発生防止を目的として真空断熱二重配管が用いられている。
【0003】
この極低温流体移送用の真空断熱二重配管においては、極低温流体の移送時、極低温流体が流通する内管は極低温流体の影響を受け極低温になり収縮作用が生じ、外管は極低温流体の影響を受けず外気温と同程度の温度(ほぼ常温)であるため、内管のような収縮作用は生じない。
【0004】
このように、極低温流体移送用の真空断熱二重配管では、極低温流体の移送時に内管と外管との間に収縮差が生じてしまうことから、図5に示すように、従来、この内管31と外管32との間に生じる収縮差を吸収するためのべローズ34が内管31に設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、内管31に設けられたベローズ34は、内管31を流通する極低温流体の内圧による荷重を受けることができないため、図5に示すように、内圧荷重Fが内管31のエルボ部36(コーナ部)に作用し、この作用がエルボ部36から距離L離れた位置にある接続部41にモーメントF・Lとして作用し、接続部41に大きな応力が発生し破損するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような従来例の問題を解消するものであり、内圧荷重による内管と外管との接続部へのモーメントの作用を可及的に低減し、応力の発生による接続部の破損を防止する機能を備えた極低温流体移送用の真空断熱二重配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
管1と、この内管1の外周に真空層3を介して設けられる外管2とを備え、両端部にエルボ部6が設けられた直管部5を有する極低温流体移送用の真空断熱二重配管であって、前記内管1は、前記直管部5に位置する内管直管部5aにベローズ部4が設けられ、さらに、前記エルボ部6に位置する内管エルボ部6aに夫々、突出部7が設けられ、また、前記外管2は、前記エルボ部6に位置する外管エルボ部6bに前記突出部7を収容する収容部10が設けられ、さらに、この収容部10に前記突出部7と当接する受部8が設けられ、また、前記各突出部7及び前記各受部8は、前記内管1の管中心線a上に設けられ、且つ、前記各突出部7は、前記管中心線aに沿って外方に向かって突設され、また、前記各受部8は、ネジ体に構成され、前記収容部10の外側から螺挿され該収容部10内への突出量を自在に調整できるように構成され、さらに、前記突出部7前記受部8とは断熱部材9を介して当接するように構成されていることを特徴とする極低温流体移送用の真空断熱二重配管に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の極低温流体移送用の真空断熱二重配管において、前記突出部7は、前記受部8に対して可動可能に当接するように構成されていることを特徴とする極低温流体移送用の真空断熱二重配管に係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の極低温流体移送用の真空断熱二重配管において、前記内管1は、前記内管直管部5aの外面に複数の芯出し部12が設けられ、この芯出し部12は、断熱部材で構成され、前記内管直管部5aの周方向に間隔をおいて前記外管2の外管直管部5bの内面と当接するように設けられていることを特徴とする極低温流体移送用の真空断熱二重配管に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成したから、内圧荷重による内管と外管との接続部へのモーメントの作用を可及的に低減し、応力の発生による接続部の破損を防止する機能を備えた極低温流体移送用の真空断熱二重配管となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施例の要部(各管部及びスイベルジョイント)を示す正面図である。
図2】本実施例のインボードアーム(管部の構造)を示す説明正断面図である。
図3】本実施例の突出部と受部の当接状態を示す説明正断面図である。
図4】本実施例のインボードアーム(管部の構造)を示す説明側断面図である。
図5】従来例を示す説明正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0014】
本発明は、内管1の内管エルボ部6aに突出部7が設けられ、また、前記内管エルボ部6aの外側に設けられる外管2の外管エルボ部6bに前記突出部7と当接する受部8が設けられているから、内管1で生じた内圧荷重が前記内管エルボ部6aに作用した場合、この内圧荷重を外管2で引張荷重として受け止めるため、内管1は不動状態となり、したがって、従来例(図5参照)のように、モーメントが作用することがない。
【0015】
よって、エルボ部6から所定距離離れた位置にある接続部11へのモーメントの作用が可及的に低減され、応力の発生による接続部11の破損が防止されることとなる。
【0016】
また、本発明は、突出部7と受部8とが断熱部材9を介して当接するから、この突出部7と受部8との当接を介して内管1と外管2との間に熱伝導が生じず、外部からの入熱により極低温流体が蒸発したり、外管2の低温化により外表面付近に液化空気が発生したりすることが可及的に防止される。
【実施例
【0017】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0018】
本実施例は、本発明の極低温流体移送用の真空断熱二重配管を、海上(船舶)と陸上や桟橋等との間で液化水素等の極低温流体を荷役するための極低温流体用ローディングアーム20(流体荷役装置)に適用した場合である。
【0019】
なお、本発明の極低温流体移送用の真空断熱二重配管は、前記用途に限定されるものではない。
【0020】
本実施例の極低温流体用ローディングアーム20は、図1に示すように、直管部5の両端部若しくはいずれか一方の端部にエルボ部6を有するベースライザ21、インボードアーム22及びアウトボードアーム23の各管部を備え、各管部はスイベルジョイント24を介して相互に回動自在に連結されている構成である。
【0021】
また、ベースライザ21、インボードアーム22及びアウトボードアーム23の各管部には、極低温流体の移送に適した真空断熱二重配管が用いられている。
【0022】
以下、本実施例の管部について、インボードアーム22を例に挙げ、詳述する。
【0023】
本実施例のインボードアーム22は、図1に示すように、直管部5の両側にエルボ部6が設けられ、各エルボ部6の先にスイベルジョイント24が設けられた構成であり、また、図2に示すように、内管1と、この内管1の外周に設けられる外管2とからなり、内管1と外管2とは、夫々の端部において、つづら折り状に形成された接続部11を介して接続(連結)され、さらに、内管1と外管2との間の空間部が真空層3になっている真空断熱二重配管に構成されている。
【0024】
具体的には、内管1は、インボードアーム22の直管部5に位置する内管直管部5aのほぼ中央位置にベローズ部4が設けられ、また、インボードアーム22の各エルボ部6に位置する内管直管部5aの両端部に設けられた内管エルボ部6aの夫々に、後述する外管2の受部8と当接する突出部7が設けられている。
【0025】
この突出部7は、中空円筒状に形成され、さらに、先端部に断熱部材9(本実施例では繊維強化プラスチック(FRP)部材を採用)が設けられ、内管1の管中心線a上に、この管中心線a方向にして外方(外管2側)に向かって突設されている。
【0026】
具体的には、本実施例の突出部7は、受部8とは非連結であり、図3に示すように、受部8に対して可動可能に当接するように構成されている。
【0027】
また、本実施例の内管1は、内管直管部5aのほぼ中央位置に、この内管1を外管2に対して中心位置に位置決めする芯出し部12が設けられている。
【0028】
この芯出し部12は、断熱部材(本実施例では繊維強化プラスチック(FRP)部材を採用)で構成され、図4に示すように、内管1の外面に周方向90°の間隔で(内管1の上下左右の4方向に)、外管2の内面と当接するように設けられている。
【0029】
また、外管2は、インボードアーム22の各エルボ部6に位置する外管直管部5bの両端部に設けられた外管エルボ部6bの夫々に、前述した内管1の突出部7と当接する受部8が設けられている。
【0030】
具体的には、本実施例の受部8は、外管2の各外管エルボ部6bに設けられた内管1の突出部7を収容する収容部10に設けられている。
【0031】
より具体的には、受部8は、図3に示すように、ネジ体に構成され、収容部10に外側から収容部10内に突出するように螺挿されている。
【0032】
すなわち、本実施例の受部8は、外管2の外側からねじ込み操作により収容部10に設けられる構成であり、さらに、ねじ込み量により内方への突出量を調整できるように構成されている。
【0033】
また、本実施例では、受部8を突出部7に当接するまでねじ込み操作し、突出部7に当接したらねじ込み操作を止め、溶接により受部8を収容部10に固定している。なお、固定手段は溶接に限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、ベースライザ21及びアウトボードアーム23については、上述したインボードアーム22と同様の真空断熱二重配管構造となっているため、説明を省略する。
【0034】
以上のように構成される本実施例の管部(極低温流体移送用の真空断熱二重配管)の作用効果について以下に説明する。
【0035】
本実施例の各管部(ベースライザ21、インボードアーム22及びアウトボードアーム23)は、内管1の内管エルボ部6aに突出部7が設けられ、また、内管エルボ部6aの外側に設けられる外管2の外管エルボ部6bに突出部7と当接する受部8が設けられているから、内管1で生じた内圧荷重が内管エルボ部6aに作用した場合、この内圧荷重を外管2で受け止めるため、内管1は不動状態となり、したがって、従来例(図5参照)のように、モーメントが作用することがない。
【0036】
しかも、本実施例は、内管1の突出部7と外管2の受部8とが共に、内管1の管中心線a上に設けられているから、内管1の内管エルボ部6aに作用した内圧荷重を、単純な引張荷重として外管2で受け止めることができる。
【0037】
よって、内管1と外管2とを接続している接続部11へのモーメントの作用が可及的に低減され、応力の発生による接続部11の破損が可及的に防止することができる。
【0038】
また、本実施例の突出部7及び受部8においては、突出部7の先端部に断熱部材9(FRP)が設けられ、この断熱部材9を介して突出部7と受部8とが当接するように構成されているから、この突出部7と受部8との当接において、内管1と外管2との間に熱伝導が生じず、外部からの入熱により極低温流体が蒸発したり、外管2の低温化により外表面付近に液化空気が発生したりすることが可及的に防止されることとなる。
【0039】
さらに、本実施例の突出部7及び受部8においては、上記突出部7と受部8とが非連結で当接し、外管2の受部8に対して内管1の突出部7が可動可能に構成されているから、内管1の管中心線aと交差(直交)する方向への移動作用が生じた場合でも、この移動作用に応じて突出部7が移動することで、突出部7と受部8との当接部に負荷が生じず、突出部7及び受部8の破損が防止されることとなる。
【0040】
また、本実施例の突出部7及び受部8においては、受部8がネジ体に構成され、外部から螺挿し突出部7に当接させる構成になっているから、簡易構成にして、容易に且つ確実に突出部7と受部8とを当接状態に設けることが可能となる。
【0041】
以上、本実施例の極低温流体用ローディングアーム20は、各管部に上述のような作用効果を発揮する真空断熱二重配管が用いられているから、管径が大口径化(例えば内管1:16インチ、外管2:20インチ)となり、内管1の内管エルボ部6aに大きな内圧荷重が作用しても、接続部11へのモーメントの作用が抑制され、この接続部11の破損が可及的に低減される実用性に優れた極低温流体用ローディングアーム20となる。
【0042】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0043】
1 内管
2 外管
3 真空層
4 ベローズ部
5 直管部
5a 内管直管部
5b 外管直管部
6 エルボ部
6a 内管エルボ部
6b 外管エルボ部
7 突出部
8 受部
9 断熱部材
10 収容部
12 芯出し部
a 管中心線
図1
図2
図3
図4
図5