(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/06 20060101AFI20241209BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
E04H1/06
F24F5/00 K
(21)【出願番号】P 2021207822
(22)【出願日】2021-12-22
【審査請求日】2024-05-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日揮株式会社は、神奈川県川崎市川崎区殿町3丁目103番9 JSR Bioscience and informatics R&D Centerにおいて、山瀬直輝及び熊上学が発明した建物に関する発明を竣工後に公開した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502040041
【氏名又は名称】日揮株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山瀬 直輝
(72)【発明者】
【氏名】熊上 学
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-125664(JP,A)
【文献】特開平08-082023(JP,A)
【文献】特開2011-236578(JP,A)
【文献】床下エアコンを2階リビングに設置!エアボレーの電気代と快適性は?,日本,平塚市子育てライフハック,2021年07月02日,https://www.happy-lifehack.site/1961.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/06
E04H 1/02
F24F 5/00
F24F 13/00
F24F 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階を上下に連通する吹き抜けと、
冷気が階の床から上方に向けて噴出する冷却口と、を備え、
前記吹き抜けのある複数の階は、
前記冷却口を備えた第1の階と、
前記第1の階よりも下に位置し、前記冷却口を備えない第2の階と、を有
し、
前記第1の階は、複数の階からなり、
前記第1の階は、上階と、当該上階よりも下の下階を有し、
前記下階は、前記上階の床部よりも、前記吹き抜け側に突出した床部を有する、建物。
【請求項2】
複数の階を上下に連通する吹き抜けと、
冷気が階の床から上方に向けて噴出する冷却口と、を備え、
前記吹き抜けのある複数の階は、
前記冷却口を備えた第1の階と、
前記第1の階よりも下に位置し、前記冷却口を備えない第2の階と、を有
し、
前記第1の階は、複数の階からなり、
前記第1の階は、上階と、当該上階よりも下の下階を有し、
前記上階は、前記下階の床部よりも、前記吹き抜け側に突出した床部を有する、建物。
【請求項3】
前記下階は、前記上階の直下に位置する、
請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
複数の階を上下に連通する吹き抜けと、
冷気が階の床から上方に向けて噴出する冷却口と、を備え、
前記吹き抜けのある複数の階は、
前記冷却口を備えた第1の階と、
前記第1の階よりも下に位置し、前記冷却口を備えない第2の階と、を有
し、
前記吹き抜けは、各階の吹き抜け部を有し、
少なくとも一部の、互いに上下に連続する階の吹き抜け部は、水平方向の中心位置が互いにずれるように構成されている、建物。
【請求項5】
複数の階を上下に連通する吹き抜けと、
冷気が階の床から上方に向けて噴出する冷却口と、を備え、
前記吹き抜けのある複数の階は、
前記冷却口を備えた第1の階と、
前記第1の階よりも下に位置し、前記冷却口を備えない第2の階と、を有
し、
前記第1の階は、前記吹き抜けに面する床縁部に、鉛直方向に立設する隔壁を有する、建物。
【請求項6】
前記隔壁は、110cm以上180cm以下の高さを有する、
請求項5に記載の建物。
【請求項7】
複数の階を上下に連通する吹き抜けと、
冷気が階の床から上方に向けて噴出する冷却口と、を備え、
前記吹き抜けのある複数の階は、
前記冷却口を備えた第1の階と、
前記第1の階よりも下に位置し、前記冷却口を備えない第2の階と、を有
し、
前記複数の階は、エントランスホールを有するエントランス階を含み、
前記エントランス階の直上の2階と、当該2階の直上の3階は、前記第1の階であり、
前記2階は、前記3階の床部よりも、前記吹き抜け側に突出した床部を有し、
前記3階の床部に対する前記2階の床部の突出長さは、前記エントランスホールの前記吹き抜けを挟んだ反対側の床部よりも、前記エントランスホール側の床部の方が小さい、建物。
【請求項8】
複数の階を上下に連通する吹き抜けと、
冷気が階の床から上方に向けて噴出する冷却口と、を備え、
前記吹き抜けのある複数の階は、
前記冷却口を備えた第1の階と、
前記第1の階よりも下に位置し、前記冷却口を備えない第2の階と、を有
し、
前記複数の階は、エントランスホールを有するエントランス階を含み、
前記エントランス階の直上に、複数の第1の階を有し、
当該複数の第1の階は、前記エントランスホールの前記吹き抜けを挟んだ反対側において、前記エントランス階により近い階の床部が、前記吹き抜け側に突出するように階段状に形成されている、建物。
【請求項9】
前記エントランス階は、前記第2の階である、
請求項7又は8に記載の建物。
【請求項10】
前記第2の階は、最下階である、
請求項1から9のいずれか一項に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
複数階を有するビルや住宅などの建物では、各階に設けられた空調設備によって各階毎に冷房が行われるのが一般的である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-89080号公報
【文献】特表2014-519012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような建物の冷房のシステムは、建物全体における省エネが十分ではない。特に多層階で床面積が広い大空間を有する建物は、夏場冷房のためのエネルギー消費量が多くなるため、十分な省エネが求められている。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、省エネで大空間を冷房可能な建物を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る建物は、複数の階を上下に連通する吹き抜けと、冷気が階の床から上方に向けて噴出する冷却口と、を備え、吹き抜けのある複数の階は、冷却口を備えた第1の階と、第1の階よりも下に位置し、冷却口を備えない第2の階と、を有する。
【0007】
本態様によれば、吹き抜けのある第1の階に、冷気が床から上方に向けて噴出する冷却口を設けることで、第1の階の空間全体を冷却せず、人が行動する空間(床面から人の高さまでの空間)を主に冷却することができるので、省エネが図られる。そのうえで、建物が、吹き抜けと、冷却口を備えた第1の階と、第1の階よりも下に位置し、冷却口を備えない第2の階とを有するので、第1の階の冷気を吹き抜けを通じて下の第2の階に送り、その冷気で第2の階を冷却することができる。これにより、省エネで大空間を冷房可能な建物が提供される。
【0008】
上記態様において、第1の階は、複数の階からなり、第1の階は、上階と、当該上階よりも下の下階を有し、下階は、上階の床部よりも、吹き抜け側に突出した床部を有するようにしてよい。
【0009】
上記態様において、記第1の階は、複数の階からなり、第1の階は、上階と、当該上階よりも下の下階を有し、上階は、下階の床部よりも、吹き抜け側に突出した床部を有するようにしてよい。
【0010】
上記態様において、下階は、上階の直下に位置するようにしてよい。
【0011】
上記態様において、吹き抜けは、各階の吹き抜け部を有し、少なくとも一部の、互いに上下に連続する階の吹き抜け部は、水平方向の中心位置が互いにずれるように構成されていてよい。
【0012】
上記態様において、第2の階は最下階であってよい。
【0013】
上記態様において、第1の階は、吹き抜けに面する床縁部に、鉛直方向に立設する隔壁を有するようにしてよい。
【0014】
上記態様において、隔壁は、110cm以上180cm以下の高さを有していてよい。
【0015】
上記態様において、複数の階は、エントランスホールを有するエントランス階を含み、エントランス階の直上の2階と、当該2階の直上の3階は、第1の階であり、2階は、3階の床部よりも、吹き抜け側に突出した床部を有し、3階の床部に対する2階の床部の突出長さは、エントランスホールの吹き抜けを挟んだ反対側の床部よりも、エントランスホール側の床部の方が小さくしてよい。
【0016】
上記態様において、複数の階は、エントランスホールを有するエントランス階を含み、エントランス階の直上に、複数の第1の階を有し、当該複数の第1の階は、エントランスホールの吹き抜けを挟んだ反対側において、エントランス階により近い階の床部が、吹き抜け側に突出するように階段状に形成されていてよい。
【0017】
上記態様において、エントランス階は第2の階であってよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、省エネで大空間を冷房可能な建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施の形態に係る建物の構造を説明するための、建物の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態の一例について説明する。
図1は、本実施の形態に係る建物1の縦断を示す模式図である。
【0021】
建物1は、複数の階、例えば4つの階1F、2F、3F、4Fを有する。建物1は、4つの階1F乃至4Fを上下に連通する吹き抜け10を有している。吹き抜け10は、例えば建物1の水平方向の端ではない中央付近に設けられている。
【0022】
1階1Fは、エントランス階であり、建物入口となる扉30を有するエントランスホール31を有している。エントランスホール31は、吹き抜け10に対し仕切りなく連通している。
【0023】
2階2F、3階3F及び4階4Fは、冷気が階の床から上方に向けて噴出する冷却口40を備えている。なお、本実施の形態において、2階2F、3階3F及び4階4Fは、本発明における、冷却口を備えた第1の階に相当する。
【0024】
冷却口40は、各階2F乃至4Fの少なくとも吹き抜け10に開放された空間の床に多数設けられている。なお、冷却口40は、各階2F乃至4Fの吹き抜け10と仕切られた部屋の床にも設けられていてもよい。冷却口40は、例えば、多孔質床板と、多孔質のタイルカーペットにより構成されている。各階2F乃至4Fの床下には、冷房装置50が設けられている。冷却口40は、各階2F乃至4Fの冷房装置50から送られた冷気を床を通じて床の上方に噴出するように構成されている。なお、冷房装置50は、特に限定されるものではないが、例えばエアコンディショナーである。冷房装置50の数や配置は、特に限定されるものではない。
【0025】
1階1Fには、上述の冷却口40が設けられていない。なお、各階1F乃至4Fの例えば窓に近いペリメーター領域には、冷却口40とは異なる、冷気を床以外の天井等から噴出させる装置が設けられていてよい。1階1Fは、本発明における、冷却口を備えない第2の階に相当する。
【0026】
各階2F乃至4Fは、吹き抜け10に面する床の縁部に鉛直方向に立設する隔壁60、61、62を有している。隔壁60乃至62は、床面に対し例えば110cm以上180cm以下の高さを有している。
【0027】
2階2Fは、例えば第1の水平方向Xに沿って、吹き抜け10に対しエントランスホール31側に位置する前側床部70と、吹き抜け10に対しエントランスホール31の反対側に位置する奥側床部71を有している。第1の水平方向Xは、エントランスホール31から吹き抜け10に向かう動線に沿った方向である。2階2Fは、吹き抜け10の第2の水平方向Yの両側にも床部72を有している。第2の水平方向Yは、第1の水平方向Xと直角をなす方向である。上記冷却口40は、前側床部70、奥側床部71及び床部72にそれぞれ設けられている。隔壁60は、前側床部70、奥側床部71及び床部72の吹き抜け10側の先端に設けられている。
【0028】
3階3Fは、例えば第1の水平方向Xに沿って、吹き抜け10に対しエントランスホール31側に位置する前側床部80と、吹き抜け10に対しエントランスホール31の反対側に位置する奥側床部81を有している。3階3Fは、吹き抜け10の第2の水平方向Yの両側にも床部82を有している。冷却口40は、前側床部80、奥側床部81及び床部82にそれぞれ設けられている。隔壁61は、前側床部80、奥側床部81及び床部82の吹き抜け10側の先端に設けられている。
【0029】
4階4Fは、例えば第1の水平方向Xに沿って、吹き抜け10に対しエントランスホール31側に位置する前側床部90と、吹き抜け10に対しエントランスホール31の反対側に位置する奥側床部91を有している。4階4Fは、吹き抜け10の第2の水平方向Yの両側にも床部92を有している。冷却口40は、前側床部90、奥側床部91及び床部92にそれぞれ設けられている。隔壁62は、前側床部90、奥側床部91及び床部92の吹き抜け10側の先端に設けられている。4階4Fは、建物1の外光が採光される天井部93を有している。天井部93は、吹き抜け10に対応する位置(吹き抜け10の上部)に設けられている。外光が採光される天井部93は、吹き抜け10の天井の一部或いは全部であってもよい。
【0030】
3階3Fの奥側床部81は、直上の4階4Fの奥側床部91よりも吹き抜け10側に突出する突出部81aを有している。奥側床部81の突出部81aの長さL1は、5m以上である。
【0031】
2階2Fの奥側床部71は、直上の3階3Fの奥側床部81よりも吹き抜け10側に突出する突出部71aを有している。奥側床部71の突出部71aの長さL2は、5m以上である。例えば突出部81aの長さL1と突出部71aの長さL2は、同じであってもよいし、どちらかが長くてもよい。
【0032】
4階4Fの前側床部90は、直下の3階3Fの前側床部80よりも吹き抜け10側に突出する突出部90aを有している。前側床部90の突出部90aの長さL3は、5m以上である。4階4Fの前側床部90は、2階2Fの前側床部70よりも吹き抜け10側に突出している。
【0033】
2階2Fの前側床部70は、直上の3階3Fの前側床部80よりも吹き抜け10側に突出する突出部70aを有している。前側床部70の突出部70aの長さL4は、1m以上である。
【0034】
前側床部80に対する前側床部70の突出部70aの長さL4は、奥側床部81に対する奥側床部71の突出部71aの長さL2よりも小さい。すなわち、2階2Fの奥側床部71は、前側床部70よりも3階3Fの床部に対して突出している。
【0035】
4階4Fの奥側床部91、3階3Fの奥側床部81及び2階2Fの奥側床部71は、1階1Fにより近い階の床部が吹き抜け10側に突出するように階段状に形成されている。
【0036】
吹き抜け10は、各階1F乃至4Fに、吹き抜け部10a、10b、10c、10dを有する。2階2F乃至4階4Fの吹き抜け部10b乃至10dは、少なくとも第1の水平方向Xの中心が互いにずれている。なお、2階2Fの吹き抜け部10bの中心は、第1の水平方向Xの前側床部70と奥側床部71の間の中心であり、3階3Fの吹き抜け部10cの中心は、第1の水平方向Xの前側床部80と奥側床部81の間の中心であり、4階4Fの吹き抜け部10dの中心は、第1の水平方向Xの前側床部90と奥側床部91の間の中心である。
【0037】
平面視で4階4Fの床部90、91、92により囲まれた吹き抜け部10dを形成する開口領域、平面視で3階3Fの床部80、81、82により囲まれた吹き抜け部10cを形成する開口領域、及び平面視で2階2Fの床部70、71、72により囲まれた吹き抜け部10bを形成する開口領域は、互いに同じ形、同じ大きさであってもよいし、異なる形、異なる大きさであってもよい。平面視で各吹き抜け部10a乃至10dを形成する開口領域は、方形などの多角形状を有していてもよいし、円形、楕円形状を有していてもよい。
【0038】
各階1F乃至4Fの床部の吹き抜け10に露出する部分には、隣り合う上下の階を行き来するための階段100、101、102が設けられている。第1の階段100は、1階1Fの吹き抜け部10aの床部と2階2Fの奥側床部71の突出部71aを接続している。第2の階段101は、2階2Fの奥側床部の71の突出部71aと3階3Fの床部82を接続している。第3の階段102は、3階3Fの奥側床部81の突出部81aと4階4Fの床部92を接続している。
【0039】
次に、以上のように構成された建物1の冷房方法について説明する。例えば2階2F乃至4階4Fにおいて、冷房装置50から供給された冷気Aが床部の冷却口40から上方に向けて噴出する。冷気Aは、人の身長程度の高さに到達する程度の流量(圧力)で噴出する。2階2F乃至4階4Fにおいて、各階2F乃至4Fの冷気Aは、一旦隔壁60乃至62にせき止められ、隔壁60乃至62の内側の空間で溜められる。なお、1階1Fは、冷却口40がないため、床から冷気が噴出しない。
【0040】
その後、例えば4階4Fの冷気Aは、隔壁62を乗り越え、吹き抜け10に流出し、吹き抜け10を通じて下降する。4階4Fの奥側床部91の冷気Aは、直下の3階の奥側床部81の突出部81aに落下し当該突出部81aを冷却する。4階4Fの前側床部90の冷気Aは、吹き抜け10を通じて1階1Fまで下降する。この冷気Aは、3階3Fの吹き抜け部10cの第1の水平方向Xの中央付近と2階2Fの吹き抜け部10bの第1の水平方向Xの中央付近を通って落下する。
【0041】
3階3Fの冷気Aは、隔壁61を乗り越え、吹き抜け10に流出し、吹き抜け10を通じて下降する。3階3Fの奥側床部81の冷気Aは、4階4Fの奥側床部91から落下した冷気Aと共に、直下の2階の奥側床部71の突出部71aに落下し当該突出部71aを冷却する。3階3Fの前側床部80の冷気Aの一部は、直下の2階2Fの前側床部70の突出部70aに落下し当該突出部70aを冷却する。3階3Fの前側床部80の冷気Aの一部は、吹き抜け10を通じて1階1Fまで下降する。この冷気Aは、直上の4階4Fの前側床部90の突出部90aの下側の空間を通る。
【0042】
2階2Fの冷気Aは、隔壁60を乗り越え、吹き抜け10に流出し、吹き抜け10を通って落下する。2階2Fの奥側床部71の冷気Aは、3階3Fの奥側床部81から落下した冷気Aと共に、直下の1階1Fに落下し、1階1Fを冷却する。2階2Fの前側床部70の冷気Aは、3階3Fの前側床部80から落下した冷気Aと共に、直下の1階1Fに落下し、1階1Fを冷却する。1階1Fの冷気Aは、エントランスホール31などに供給される。
【0043】
本実施の形態によれば、2階2F乃至4階4Fに、冷気Aが床から上方に向けて噴出する冷却口40を設けることで、2階2F乃至4階4Fの空間全体を冷却せず、人が行動する空間(床面から人の高さまでの空間)を主に冷却することができるので、省エネが図られる。そのうえで、建物1が吹き抜け10と、冷却口40を備えた2階2F乃至4階4Fと、冷却口40を備えない1階1Fを有するので、2階2F乃至4階4Fの冷気Aを吹き抜け10を通じて下の1階1Fに送り、その冷気Aで下の1階1Fを冷却することができる。これにより、建物1の大空間を省エネで冷房することができる。
【0044】
2階2F乃至4階4Fが、冷却口40を有し、下の2階2F及び3階3Fは、上の4階4Fの奥側床部91よりも吹き抜け10側に突出した奥側床部81、71の突出部81a、71aを有する。これにより、4階4Fの冷却口40からの冷気Aが下の階の突出部81a、71aを冷却しつつ、さらに冷却口40のない1階1Fを冷却することができる。特に直下の3階3Fの突出部81aは効果的に冷却される。
【0045】
2階2F乃至4階4Fが、冷却口40を有し、4階4Fは、下の3階3F及び2階2Fの前側床部80、70よりも、吹き抜け10側に突出した前側床部90の突出部90aを有する。この場合、4階4Fの冷却口40からの冷気Aが届きにくい3階3F及び2階2Fの前側床部80、70の縁部付近も、3階3F及び2階2Fの冷却口40からの冷気Aにより適切に冷却することができる。特に直下の3階3Fの前側床部80の縁部付近は効果的に冷却される。また4階4Fの冷気Aが吹き抜け10を介して1階1Fまで直接下降しやすいので、冷却口40のない1階1Fを、効果的に冷却することができる。
【0046】
吹き抜け10は、各階1F乃至4Fの吹き抜け部10a乃至10dを有し、少なくとも、互いに上下に連続する2階2F乃至4階4Fの吹き抜け部10b乃至10dは、第1の水平方向Xの中心位置が互いにずれるように構成されている。これにより、例えば下の階2F、3Fの吹き抜け部10b、10cの中央付近を上の4階4Fの吹き抜け部10dから下降する冷気Aで冷却することができ、建物全体を均一に冷却することができる。
【0047】
冷却口40を備えない階は、最下階である1階1Fであるので、冷却口40のない1階1Fに冷気Aを適切に供給することができる。これにより、建物全体の冷却を適切に行うことができる。
【0048】
冷却口40を有する2階2F乃至4階4Fは、吹き抜け10に面する床縁部に、鉛直方向に立設する隔壁60乃至62を有するので、各階の冷却口40からの冷気Aが当該階を十分に冷却する前に吹き抜け10に流出することを抑制することができる。また、隔壁60乃至62の高さ分、高い位置から吹き抜け10に冷気Aを送ることができる。この結果、建物1を効率的に冷却することができる。
【0049】
隔壁60乃至62は、110cm以上180cm以下の高さを有するので、冷気が人の行動領域に主に溜まり、人の行動領域を集中的に冷却することができる。この結果、省エネが促進される。
【0050】
エントランスホール31側の前側床部80に対する前側床部70の突出部70aの長さL4は、エントランスホール31と反対側の奥側床部81に対する奥側床部71の突出部71aの長さL2よりも短い。このため、エントランスホール31側は2階2Fからの冷気Aに加え、3階3Fからの冷気Aが、エントランスホール31に落下しやすい構造となる。この結果、人の移動が多いエントランスホール31を効果的に冷却することができる。
【0051】
また、4階4Fの奥側床部91、3階3Fの奥側床部81、2階2Fの奥側床部71は、エントランス階である1階1Fに、より近い階の床部が吹き抜け10側に突出するように、階段状に形成されている。これにより、冷気Aが、エントランスホール31に向けてよどみなく流れるので、人の移動が多いエントランスホール31を効果的に冷却することができる。
【0052】
一般的にエントランス階は、特に夏季に、冷却のために必要なエネルギー消費量が増大する。本実施の形態では、エントランス階である1階1Fが冷却口40を有さない階であり、1階1Fの冷却を十分に行うことができるので、より省エネを促進することができる。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0054】
例えば建物1の構造は、上記実施の形態のものに限られない。建物1は、地下の階を有するものであってもよい。建物1は、4つの階を有するものでなくてもよく、2つ以上の階を有するものであればよい。建物1は、3つ以上の階、5つ以上の階を有するものであってもよい。吹き抜け10は、建物1が有するすべての階を連通するものでなくてもよく、建物1の一部の階を連通するものであってもよい。冷却口40を有する階は、2階2F乃至4階4Fに限られない。冷却口40を有する階は、単数或いは複数の階であってもよい。冷却口40を備えない階は、1階1Fに限られない。また冷却口40を備えない階は、単数或いは複数であってもよい。2階2F乃至4階4Fの床部が第1の水平方向Xに突出する構造も上記実施の形態のものに限られない。各階2F乃至4Fの床部が、他の階の床部に対し突出する方向は、第1の水平方向Xに限られず第2の水平方向Yであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、省エネで大空間を冷房可能な建物を提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 建物
10 吹き抜け
40 冷却口
1F 1階
2F 2階
3F 3階
4F 4階
X 第1の水平方向