(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】農業機械、農作業支援システム
(51)【国際特許分類】
A01B 63/111 20060101AFI20241209BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
A01B63/111
A01B69/00 303M
(21)【出願番号】P 2021214365
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森本 孝紀
(72)【発明者】
【氏名】山口 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】菊地 良太
(72)【発明者】
【氏名】海堀 空哉
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-077190(JP,A)
【文献】特開2020-103086(JP,A)
【文献】特開2020-031563(JP,A)
【文献】特開2020-137439(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0267115(US,A1)
【文献】特開2019-086907(JP,A)
【文献】特開2020-108378(JP,A)
【文献】特開2021-040497(JP,A)
【文献】特開2020-031565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 63/111
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な走行車体と、
前記走行車体の位置を検出する測位装置と、
前記走行車体に対して作業装置を昇降可能に連結する昇降装置と、
予め作成された走行ルートと前記測位装置で検出された前記走行車体の位置とに基づいて、前記走行車体を走行させて前記作業装置により圃場に対して農作業を行う自動運転を実行する自動制御部と、
前記走行車体から前記走行車体の進行方向における前記圃場の端までの距離を検出する検出装置と、を備え、
前記昇降装置は、前記自動運転の実行中に前記作業装置を、前記農作業を行う高さ方向の所定の作業位置に位置決めし、
前記自動制御部は、
前記自動運転の実行中に、前記検出装置により検出された前記距離が所定の閾値以下になると、前記走行車体の走行を停止して、前記圃場の未作業箇所の手前で、前記走行車体又は前記作業装置を停止させて、前記自動運転を
途中で終了
し、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維持する農業機械。
【請求項2】
前記自動制御部は、前記自動運転の実行中に、前記走行車体及び前記作業装置が前記走行ルートの終了位置に到達する前に、
前記距離が前記閾値以下になって
、前記自動運転を途中で終了し
たときに、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維持する請求項1に記載の農業機械。
【請求項3】
前記走行ルートには、前記走行車体を走行させながら前記作業装置により前記農作業を行う複数の作業ルートが含まれていて、
前記自動制御部は、
前記距離が前記閾値以下になって、前記自動運転を途中で終了し
たときに、当該途中終了の前に前記走行車体を走行させるために基づいていた基準のルートが、前記走行ルートの最終の前記作業ルートであれば、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維持する請求項2に記載の農業機械。
【請求項4】
前記自動制御部は、
複数の前記作業ルートと前記走行車体の位置とに基づいて、前記走行車体を前記自動運転で走行させて前記作業装置により前記圃場の中央部と当該中央部の外側で且つ前記圃場の輪郭の内側にある枕地とに対して前記農作業を行い、
前記自動運転を途中で終了したときに、前記基準のルートが前記枕地に対して前記農作業を行うための最終の前記作業ルートであれば、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維持する請求項3に記載の農業機械。
【請求項5】
前記自動制御部は、前記自動運転
を途中で終了
した後から、手動運転で前記走行車体の走行と前記作業装置による前記農作業とが再開されるまで、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維持する請求項1~4のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項6】
前記自動制御部は、前記自動運転を
途中で終了する前に行っていた前記農作業が前記圃場の整地を含
む農作業である場合
に、前記自動運転を
途中で終了し
たときに、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維
持する請求項1~5のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項7】
前記自動制御部は、前記自動運転による前記走行車体の走行
を停止したときに、当該停止位置が前記圃場の未作業箇所の手前でない場合には、前記農作業を行わない所定の非作業位置に前記作業装置を前記昇降装置により位置決めする請求項1~6のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項8】
前記作業装置の高さ方向の位置を通知する通知部を備えた請求項1~7のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項9】
前記自動制御部は、前記作業装置が前記圃場の整地を含む
前記農作業を行
う作業装置である場合、
前記昇降装置により前
記作業装置を下降させて、前
記作業装置を前記圃場の土壌に接触させて前
記農作業を行う前記作業位置に位置させ、
前記昇降装置により前
記作業装置を上昇させて、前
記作業装置を前記圃場の土壌から離間させて前
記農作業を行わない所定の非作業位置に位置させる請求項1~8のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項10】
前記自動制御部は、前記自動運転を
途中で終了する前に、前記作業装置の昇降が必要な農作業を実行していた場合
に、前記自動運転を
途中で終了し
たときに、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維
持する請求項1~5のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項11】
農業機械の位置を検出する測位装置と、
前記農業機械に対して作業装置を昇降可能に連結する昇降装置と、
予め作成された走行ルートと前記測位装置で検出された前記農業機械の位置とに基づいて、前記農業機械を走行させて前記作業装置により圃場に対して農作業を行う自動運転を実行する自動制御部と、
前記農業機械から前記農業機械の進行方向における前記圃場の端までの距離を検出する検出装置と、を備え、
前記昇降装置は、前記自動運転の実行中に前記作業装置を、前記農作業を行う高さ方向の所定の作業位置に位置決めし、
前記自動制御部は、
前記自動運転の実行中に、前記検出装置により検出された前記距離が所定の閾値以下になると、前記農業機械の走行を停止して、前記圃場の未作業箇所の手前で、前記農業機械又は前記作業装置を停止させて、前記自動運転を
途中で終了
し、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維持する農作業支援システム。
【請求項12】
前記作業装置の高さ方向の位置を通知する通知部を備えた請求項
11に記載の農作業支援システム。
【請求項13】
前記作業装置には、前記圃場の整地を含
む農作業
である耕うん作業を行う
耕うん装置が含ま
れている請求項
11又は12に記載の農作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場で走行しながら農作業を行う農業機械と、当該農業機械による農作業を支援する農作業支援システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圃場で農業機械を自動運転で走行させながら、当該農業機械に連結された作業装置で農作業を行うことを支援する技術が開示されている。特許文献1に開示された農業機械の制御部は、作業経路作成部によって作成された作業経路に沿って、農業機械の車体を自動で走行(自律走行)させ、車体に連結された作業装置(作業機)により圃場の作業領域に対して農作業を行う。また、制御部は、車体の走行中に作業装置の爪軸位置を算出し、爪軸位置が圃場の作業領域に入ると、昇降装置(昇降アクチュエータ)により作業装置を下降させて、農作業を行う作業位置に位置させ、爪軸位置が圃場の非作業領域に入ると、昇降装置により作業装置を上昇させて、農作業を行わない退避位置に位置させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圃場の中央部分では、自動運転で農業機械を走行させて作業装置により農作業を行うが、圃場の中央部分の周囲では、農業機械又は作業装置が畔などに衝突するのを回避するため、手動運転で農業機械を走行させて作業装置により農作業を行うことが一般的である。特許文献1のように、農業機械が圃場の中央部分に対して自動運転で農作業を行って、当該自動運転が終了したときに、昇降装置によって作業装置を農作業が行えない位置に移動させると、この後、農業機械が圃場の中央部分の周囲に対して手動運転で農作業を行う際には、昇降装置によって作業装置を農作業が行える位置に移動させなければならず、農業機械を手動運転して農作業を直ぐに開始することができず、作業効率が低下してしまう。また、作業装置が圃場の土壌に接触して農作業を行うタイプの装置である場合には、作業装置が土壌に対して一旦離間した後に接触すると、その形跡が土壌に残り、農作業の仕上がりが悪くなってしまう。農業機械を手動運転で一旦後進させてから前進させて、作業装置により農作業を再開すると、上記形跡は消えるが、手動運転の手順が増えて、作業効率が低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、圃場で農業機械を自動運転して作業装置により農作業を行った後に、農業機械を手動運転して作業装置により農作業を行う場合に、作業効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
本発明の一態様にかかる農業機械は、走行可能な走行車体と、前記走行車体の位置を検出する測位装置と、前記走行車体に対して作業装置を昇降可能に連結する昇降装置と、予め作成された走行ルートと前記測位装置で検出された前記走行車体の位置とに基づいて、前記走行車体を走行させて前記作業装置により圃場に対して農作業を行う自動運転を実行する自動制御部と、前記走行車体から前記走行車体の進行方向における前記圃場の端までの距離を検出する検出装置と、を備え、前記昇降装置は、前記自動運転の実行中に前記作業装置を、前記農作業を行う高さ方向の所定の作業位置に位置決めし、前記自動制御部は、前記自動運転の実行中に、前記検出装置により検出された前記距離が所定の閾値以下になると、前記走行車体の走行を停止して、前記圃場の未作業箇所の手前で、前記走行車体又は前記作業装置を停止させて、前記自動運転を途中で終了し、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維持する。
【0007】
本発明の一態様にかかる農作業支援システムは、農業機械の位置を検出する測位装置と、前記農業機械に対して前記作業装置を昇降可能に連結する昇降装置と、予め作成された走行ルートと前記測位装置で検出された前記農業機械の位置とに基づいて、前記農業機械を走行させて前記作業装置により圃場に対して農作業を行う自動運転を実行する自動制御部と、前記農業機械から前記農業機械の進行方向における前記圃場の端までの距離を検出する検出装置と、を備え、前記昇降装置は、前記自動運転の実行中に前記作業装置を、前記農作業を行う高さ方向の所定の作業位置に位置決めし、前記自動制御部は、前記自動運転の実行中に、前記検出装置により検出された前記距離が所定の閾値以下になると、前記農業機械の走行を停止して、前記圃場の未作業箇所の手前で、前記農業機械又は前記作業装置を停止させて、前記自動運転を途中で終了し、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維持する。
【0008】
本発明の一態様では、前記自動制御部は、前記自動運転の実行中に、前記走行車体及び前記作業装置が前記走行ルートの終了位置に到達する前に、前記距離が前記閾値以下になって、前記自動運転を途中で終了したときに、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維持する。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記走行ルートには、前記走行車体を走行させながら前記作業装置により前記農作業を行う複数の作業ルートが含まれていて、前記自動制御部は、前記距離が前記閾値以下になって、前記自動運転を途中で終了したときに、当該途中終了の前に前記走行車体を走行させるために基づいていた基準のルートが、前記走行ルートの最終の前記作業ルートであれば、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維持する。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記自動制御部は、複数の前記作業ルートと前記走行車体の位置とに基づいて、前記走行車体を前記自動運転で走行させて前記作業装置により前記圃場の中央部と当該中央部の外側で且つ前記圃場の輪郭の内側にある枕地とに対して前記農作業を行い、前記自動運転を途中で終了したときに、前記基準のルートが前記枕地に対して前記農作業を行うための最終の前記作業ルートであれば、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維持する。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記自動制御部は、前記自動運転を途中で終了した後から、手動運転で前記走行車体の走行と前記作業装置による前記農作業とが再開されるまで、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維持する。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記自動制御部は、前記自動運転を途中で終了する前に行っていた前記農作業が前記圃場の整地を含む農作業である場合に、前記自動運転を途中で終了したときに、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維持する。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記自動制御部は、前記自動運転による前記走行車体の走行を停止したときに、当該停止位置が前記圃場の未作業箇所の手前でない場合には、前記農作業を行わない所定の非作業位置に前記作業装置を前記昇降装置により位置決めする。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記農業機械及び前記農作業支援システムは、前記作業装置の高さ方向の位置を通知する通知部を備える。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記自動制御部は、前記作業装置が前記圃場の整地を含む前記農作業を行う作業装置である場合、前記昇降装置により前記作業装置を下降させて、前記作業装置を前記圃場の土壌に接触させて前記農作業を行う前記作業位置に位置させ、前記昇降装置により前記作業装置を上昇させて、前記作業装置を前記圃場の土壌から離間させて前記農作業を行わない所定の非作業位置に位置させる。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記自動制御部は、前記自動運転を途中で終了する前に、前記作業装置の昇降が必要な農作業を実行していた場合に、前記自動運転を途中で終了したときに、前記昇降装置による前記作業装置の前記作業位置への位置決め状態を維持する。
【0018】
さらに、本発明の一態様では、前記作業装置には、前記圃場の整地を含む農作業である耕うん作業を行う耕うん装置が含まれている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、圃場で農業機械を自動運転して作業装置により農作業を行った後に、農業機械を手動運転して作業装置により農作業を行う場合に、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図9B】走行ルートと手動運転ルートの一例を示す図である。
【
図10B】走行制御画面に表示される通知の一例を示す図である。
【
図10C】走行制御画面に表示される通知の一例を示す図である。
【
図11A】農業機械の自動運転を説明するための図である。
【
図11B】農業機械の自動運転を説明するための図である。
【
図11C】農業機械の自動運転を説明するための図である。
【
図11D】農業機械の自動運転を説明するための図である。
【
図12A】農業機械の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図13A】従来の自動運転途中終了後の作業装置と圃場の状態の一例を示す図である。
【
図13B】従来の手動運転での農作業再開後の作業装置と圃場の状態の一例を示す図である。
【
図14A】自動運転途中終了後の作業装置と圃場の状態の一例を示す図である。
【
図14B】手動運転での農作業再開後の作業装置と圃場の状態の一例を示す図である。
【
図15】自動運転完了後の作業装置と圃場の状態の一例を示す図である。
【
図16】農業機械の動作の他の例を示すフローチャートである
【
図17】農業機械の動作の他の例を示すフローチャートである
【
図18】農業機械の動作の他の例を示すフローチャートである。
【
図19A】耕うん装置の非作業位置の一例を示す図である。
【
図19B】耕うん装置の作業位置の一例を示す図である。
【
図20】散布装置の作業位置と非作業位置の一例を示す図である。
【
図21A】粗耕起装置の非作業位置の一例を示す図である。
【
図21B】粗耕起装置の作業位置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
まず、本実施形態の農業機械1について説明する。
図22は、農業機械1の側面図である。農業機械1は、トラクタから構成されている。なお、農業機械1は、トラクタに限定せず、例えば田植機又はコンバインなどの他の農業機械、或いは農作業を行うトラクタ以外の作業車両などにより構成されてもよい。
【0023】
農業機械1は、走行車体3、原動機4、変速装置5、及び走行装置7を備えている。走行装置7の前輪7Fは、タイヤ型であってもよいし、クローラ型であってもよい。また、走行装置7の後輪7Rも、タイヤ型であってもよいし、クローラ型であってもよい。原動機4は、ディーゼルエンジン或いは電動モータなどから構成されている。本実施形態では、原動機4はディーゼルエンジンにより構成されている。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切り替え可能であると共に、走行装置7の前進と後進を切り替え可能である。原動機4の駆動力が変速装置5により走行装置7に伝達されて、走行装置7が駆動することで、走行車体3が前後に走行する。なお、
図22において、左側が走行車体3の前方であり、右側が走行車体3の後方である。また、
図22に向かって、奥側が走行車体3の右方であり、手前側が走行車体3の左方である。
【0024】
走行車体3にはキャビン9が設けられている。キャビン9の内部には、運転席10が設けられている。走行車体3の後部には、3点リンク機構などで構成された昇降装置8が設けられている。昇降装置8には、農作業を行うための作業装置2を連結可能である。詳しくは、昇降装置8に設けられた連結部8g、8hに、作業装置2を連結可能である。作業装置2を連結部8g、8hに連結することで、作業装置2と走行車体3(農業機械1)とが連結されて、走行車体3が作業装置2を牽引可能になる。
【0025】
作業装置2は圃場に対して対地作業を行う。例えば作業装置2には、圃場に対して耕うん作業を行う耕うん装置(ロータリ耕うん機)、粗耕起を行う粗耕起装置(スタブルカルチ)、及び代掻きを行う代掻き装置(ドライブハロー)、肥料若しくは農薬などを散布する散布装置、種まきを行う播種装置、苗を移植する移植装置、及び収穫を行う収穫装置などが含まれている。
【0026】
次に、本実施形態の農作業支援システム100について説明する。
図1は、農作業支援システム100の構成図である。農作業支援システム100は農作業支援装置50を含んでいる。農作業支援システム100及び農作業支援装置50は、圃場で農業機械1を走行させながら作業装置2により農作業を行うことを支援する。
【0027】
農業機械1は、制御装置60、操作装置62、原動機4、変速装置5、制動装置6、操舵装置29、昇降装置8、測位装置40、警報装置63、及び検出装置64を備えている。また、農業機械1には、LAN又はCANなどの車載ネットワークN1が構築されている。制御装置60、操作装置62、測位装置40、警報装置63、及び検出装置64は、車載ネットワークN1に接続されている。農業機械1に備わるこれらの各部は、農作業支援システム100に含まれる。
【0028】
制御装置60は、CPU(又はマイクロコンピュータ)とメモリとを含んだ電気回路などから構成されている。制御装置60のメモリには、揮発性メモリと不揮発性メモリとが含まれている。制御装置60は、農業機械1の各部の動作を制御する。制御装置60には、農業機械1の走行と作業装置2の動作とを制御する自動制御部61が設けられている。操作装置62は、運転席10に着座した運転者又は農業機械1の近傍にいる作業者などのユーザ(オペレータ)が操作可能なスイッチ、レバー、ペダル、及びその他のキーなどから構成されている。操作装置62には、モードスイッチ65が含まれている。モードスイッチ65は、農業機械1のモードを切り替えるために操作される。
【0029】
原動機4(エンジン)は、制御装置60により駆動、停止、及び回転数を制御される。変速装置5は制御弁37に接続されている。制御弁37は、制御装置60から送信される制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁37には、油圧ポンプ33から吐出された作動油が供給される。制御弁37は、
図1では1つのブロックで示しているが、変速装置5に設けられた油圧クラッチ又は油圧シリンダなどの油圧機器の数に応じて適宜数設けられている。
【0030】
制動装置6は制御弁38に接続されている。制御弁38は、制御装置60から送信される制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁38には、油圧ポンプ33から吐出された作動油が供給される。自動制御部61は、制御弁38の切り替え位置及び開度を電気的に制御することにより、制動装置6を作動させて、走行車体3にブレーキをかける。
【0031】
自動制御部61は、制御弁37の切り替え位置(開度)を電気的に制御して、変速装置5の駆動を制御する。変速装置5が原動機4の駆動力を走行装置7に伝達することで、走行装置7が作動して、走行車体3を前後に走行させる。また、例えば作業装置2が対地作業を行う場合などに、変速装置5は、原動機4の駆動力を作業装置2に伝達する。これにより、作業装置2の作動力が大きくなる。
【0032】
また、自動制御部61は、車載ネットワークN1を経由して作業装置2と通信する。具体的には、作業装置2は、制御部と通信部とを備えている(図示省略)。自動制御部61は、車載ネットワークN1を経由して作業装置2に作業指令を送信する。作業装置2の制御部は、当該作業指令を通信部により受信すると、当該作業指令に基づいて作業装置2の各部の動作を制御して、農作業(対地作業)を行う。また、作業装置2の制御部は、作業状態などを示す情報又はデータを通信部により車載ネットワークN1を経由して制御装置60に送信する。自動制御部61は、作業装置2から車載ネットワークN1を経由して受信した情報又はデータに基づいて、作業装置2の作業状態などを検出する。
【0033】
なお、制御部及び通信部を備えていない作業装置2もある。この種の作業装置2では、
自動制御部61は、作業装置2と車載ネットワークN1を経由して通信を行わないが、後述するように昇降装置8により作業装置2を昇降させて、作業装置2の位置を変化させることにより、作業装置2の動作を制御し、且つ作業装置2の作業状態などを検出する。
【0034】
操舵装置29は、ハンドル(ステアリングホイール)30、操舵軸(回転軸)31、及び補助機構(パワーステアリング機構)32を有している。ハンドル30は、キャビン9(
図22)の内部に設けられている。操舵軸31は、ハンドル30の回転に伴って回転する。補助機構32は、ハンドル30による操舵を補助する。
【0035】
補助機構32には、制御弁34とステアリングシリンダ35とが含まれている。制御弁34は、制御装置60から送信される制御信号に基づいて作動する電磁弁である。詳しくは、制御弁34は、スプールなどの移動によって切り替え可能な3位置切替弁から構成されている。制御弁34には、油圧ポンプ33から吐出された作動油が供給される。制御装置60は、制御弁34の切り替え位置及び開度を電気的に制御することにより、ステアリングシリンダ35に供給する油圧を調整して、ステアリングシリンダ35を伸縮させる。ステアリングシリンダ35は、前輪7Fの向きを変えるナックルアーム39に接続されている。
【0036】
制御弁34は、操舵軸31の操舵によっても切り替え可能である。具体的には、ハンドル30を操作することで、当該操作状態に応じて操舵軸31が回転して、制御弁34の切り替え位置及び開度が切り替わる。ステアリングシリンダ35は、制御弁34の切り替え位置及び開度に応じて、走行車体3の左方又は右方に伸縮する。このステアリングシリンダ35の伸縮動作により、前輪7Fの操舵方向が変更される。なお、上述した操舵装置29は一例であり、上述した構成に限定されない。
【0037】
農業機械1の走行車体3は、ハンドル30の手動操作による手動操舵と、自動制御部61による自動操舵とが可能である。また、操作装置62に備わるアクセル部材又はブレーキペダル(共に図示省略)の手動操作に応じて、変速装置5又は制動装置6が作動することで、走行車体3は走行及び停止が可能である。さらに、自動制御部61による変速装置5と制動装置6の制御に応じて、走行車体3は、自動で走行及び停止が可能である。即ち、農業機械1では、ユーザ(運転者)が走行操作と操舵操作とを行う手動運転、自動制御部61が走行と操舵とを自動で行う自動運転、及び自動制御部61が操舵を自動で行い且つユーザが走行操作を行うオートステア制御(自動操舵制御又は半自動運転とも言う。)がそれぞれ可能である。
【0038】
図2は、昇降装置8の斜視図である。昇降装置8は、リフトアーム8a、ロアリンク8b、トップリンク8c、リフトロッド8d、リフトシリンダ8eを有している。リフトアーム8aの前端部は、変速装置5を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム8aは、リフトシリンダ8eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ8eは、油圧シリンダから構成されている。リフトシリンダ8eは、制御弁36(
図1)と接続されている。制御弁36は、制御装置60から送信される制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁36には、油圧ポンプ33から吐出された作動油が供給される。
【0039】
図2に示すロアリンク8bの前端部は、変速装置5(
図1、
図22)の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク8cの前端部は、ロアリンク8bよりも上方において、変速装置5の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド8dは、リフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。ロアリンク8b及びトップリンク8cの後端部には、作業装置2を連結可能な連結部8g、8hが設けられている。
【0040】
自動制御部61(
図1)は、制御弁36の切り替え位置又は開度を電気的に制御することにより、リフトシリンダ8eに供給する油圧を調整して、リフトシリンダ8eを伸縮させる。リフトシリンダ8eの伸縮動作により、リフトアーム8aが昇降するとともに、リフトロッド8dを介してリフトアーム8aと連結されたロアリンク8bが昇降する。これにより、作業装置2がロアリンク8bの前部(連結部8g、8hと反対側)を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。
【0041】
図1に示す測位装置40は、受信装置41と慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)42とを有している。受信装置41は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびきなどの衛星測位システム(測位衛星)から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報など)を受信する。測位装置40は、受信装置41により受信した衛星信号に基づいて、現在位置(例えば、緯度、経度)を検出する。即ち、測位装置40は、農業機械1の走行車体3の位置を検出する位置検出部である。慣性計測装置42は、加速度センサとジャイロセンサなどを有している。慣性計測装置42は、走行車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角などを検出する。警報装置63は、走行車体3に設けられたブザー、スピーカ、又は警告灯などから構成されている。警報装置63は、音又は光により走行車体3の周囲に対して警報を発する。
【0042】
検出装置64は、農業機械1及び作業装置2の各部に設置されたセンサなど(カメラが含まれていてもよい。)から構成されている。検出装置64は、センサなどからの出力信号に基づいて、農業機械1の変速装置5、制動装置6、走行装置7、昇降装置8、操舵装置29、及び操作装置62といった各部の動作状態(駆動及び停止の状態と、動作位置など)を検出する。また、検出装置64は、センサなどからの出力信号に基づいて、作業装置2の動作状態を検出する。さらに、検出装置64には、対象物検出部64aと、LiDARのようなレーザセンサと、超音波センサなどが含まれている。レーザセンサと、超音波センサなどは、走行車体3の前部、後部、及び左右側部に設置されている。対象物検出部64aは、レーザセンサ又は超音波センサからの出力信号から、農業機械1の周囲の対象物の有無と、対象物までの距離などを検出する。
【0043】
農作業支援装置50は、例えば携帯型のタブレット端末装置などから構成されている。農作業支援装置50は、例えば農業機械1のキャビン9の内部に搭載され、農業機械1に対して着脱可能である。即ち、農業機械1は農作業支援装置50を備えている。
【0044】
農作業支援装置50には、制御部51、表示操作部52、記憶部53、及び通信部54が備わっている。制御部51は、CPU(又はマイクロコンピュータ)と揮発性メモリと不揮発性メモリとから構成されている。制御部51は、農作業支援装置50の各部を制御する。制御部51には、圃場登録部51a、エリア設定部51b、ルート作成部51c、旋回変更部51d、及び通知部51gが設けられている。これら各部は、本例ではソフトウェアプログラムで構成されているが、他の例としてASICなどの半導体素子又は電気回路のようなハードウェアで構成されていてもよい。
【0045】
表示操作部52は、タッチパネルから構成されていて、各種の情報を画面に表示する。また、表示操作部52の表示画面に対して所定の操作を行うことにより、各種の入力を行うことができる。表示操作部52は、表示部であり且つ入力部である。表示操作部52に代えて、独立した表示部と操作部(入力部)とを農作業支援装置50に設けてもよい。
【0046】
記憶部53は、不揮発性メモリなどから構成されている。記憶部53には、農業機械1の走行と作業を支援する情報又はデータが読み書き可能に記憶される。通信部54は、車載ネットワークN1に接続するためのインタフェイスから構成されている。制御部51は
、通信部54により車載ネットワークN1を経由して、制御装置60、操作装置62、測位装置40、警報装置63、検出装置64、及び作業装置2と通信する。通信部54は、農業機械1の制御装置60に情報及びデータを出力する出力部である。
【0047】
圃場登録部51aは、農業機械1と作業装置2により農作業を行う圃場に関する情報を登録する。エリア設定部51bは、圃場登録部51aにより登録された圃場に、所定のエリアを設定する。ルート作成部51cは、圃場登録部51aにより登録された圃場に、農業機械1が走行する走行ルートを作成する。通知部51gは、所定の情報とデータの内容を表示操作部52に表示させることにより通知する。又は、通知部51gは、所定の情報とデータの内容を示す音声を、警報装置63のスピーカから出力することにより通知してもよい。
【0048】
次に、農作業支援システム100の各部の動作について説明する。農作業支援装置50が起動すると、制御部51は、
図3に示すホーム画面D1を表示操作部52に表示させる。このホーム画面D1のデータと以降で説明する各画面のデータは、記憶部53に記憶されている。制御部51は、必要に応じて記憶部53からデータを読み出して、当該データに基づく画面を表示操作部52に表示させる。
【0049】
ホーム画面D1には、農業機械マークX1、圃場キーB1、自動運転キーB2a、オートステアキーB2b、履歴キーB3、及び設定キーB0が表示されている。設定キーB0は、各種の設定を行うためのキーである。設定キーB0を選択(タップ操作)することで、所定の項目の設定及び登録が可能となる。当該所定の項目には、例えば農作業支援装置50が搭載される農業機械1、当該農業機械1に連結される作業装置2、農業機械1と作業装置2により行う農作業、当該農作業を実施する圃場、及び表示操作部52に関する事項が含まれている。
【0050】
履歴キーB3は、農業機械1の作業履歴を表示させるためのキーである。圃場キーB1は、農業機械1により農作業を行う圃場を登録するためのキーである。自動運転キーB2aは、農業機械1の自動走行作業モードに関する設定又は予測を行うためのキーである。オートステアキーB2bは、農業機械1の自動操舵作業モードに関する設定又は予測を行うためのキーである。
【0051】
自動走行作業モードとは、農業機械1の走行車体3を自動運転で走行させながら、作業装置2により農作業(対地作業)を行うモードのことである。農業機械1の自動運転とは、走行車体3の走行速度を自動で変更し、且つ走行車体3の操舵を自動で行うことである。自動操舵作業モードとは、走行車体3の操舵を自動で行いながら、作業装置2により農作業(対地作業)を行うモードのことである。農業機械1が自動操舵作業モードにあるときは、農業機械1の運転者が操作装置62(
図1)に含まれるアクセル部材又はブレーキ部材を操作することで、当該操作に応じて走行車体3の走行速度が変更される。即ち、自動操舵作業モードでは、走行車体3の走行速度が手動操作に基づいて変更される。
【0052】
また、農業機械1は、手動運転によっても走行可能であり、且つ当該走行時に作業装置2により対地作業を行うことが可能である。農業機械1の手動運転とは、運転者が操作装置62のアクセル部材又はブレーキ部材を操作することにより、走行車体3の走行速度を変更し、且つハンドル30(
図1)を操作することにより、走行車体3の操舵を行うことである。
【0053】
図3に示すホーム画面D1において、ユーザがホーム画面D1の自動運転キーB2aを選択すると、制御部51は、
図4に示す作業選択画面D3を表示操作部52に表示させる。作業選択画面D3には、入力操作手順を示すメッセージが表示されている。また、作業
選択画面D3には、複数の作業キーB31~B35、上矢印キーB41、下矢印キーB42、次へキーB9、及び戻るキーB8が表示されている。作業キーB31~B35は、農業機械1と当該農業機械1に連結された作業装置2とで行うことが可能な農作業を示したキーである。
図4では、5つの作業キーB31、B32、B33、B34、B35を表示しているが、農業機械1及び作業装置2で実行可能な農作業が6つ以上ある場合は、ユーザが上矢印キーB41又は下矢印キーB42を選択することで、制御部51が他の作業を示す作業キーを作業選択画面D3に表示させる。
【0054】
ユーザが作業キーB31~B35のいずれかを選択すると、制御部51は、選択された作業キーを他の作業キーとは異なる表示形態で作業選択画面D3に表示させる。
図4の例では、選択された耕うん作業キーB31だけに、黒丸印が付されている。作業キーB31、B32、B33、B34のいずれかが選択された状態で、ユーザが次へキーB9を選択すると、制御部51は、
図5Aに示す車両確認画面D4aを表示操作部52に表示させる。即ち、次へキーB9は、表示操作部52の表示画面を次の画面に切り替えるためのキーである。なお、ユーザが戻るキーB8を選択すると、制御部51は、
図3のホーム画面D1を表示操作部52に表示させる。即ち、戻るキーB8は、表示操作部52の表示画面を前の画面に戻すためのキーである。
【0055】
図5Aに示す車両確認画面D4aには、入力操作手順を示すメッセージ、農作業の種別、農業機械1のタイプ、無人機設定キーB10、有人機設定キーB11、次へキーB9、及び戻るキーB8が表示されている。農作業の種別には、作業選択画面D3で選択された農作業が示されている。農業機械1のタイプには、車両タイプと制御タイプとが含まれている。
図5Aでは、予め登録(設定)された農業機械1のタイプが車両確認画面D4aに表示されている。
【0056】
なお、ユーザは、例えばホーム画面D1(
図3)の設定キーB0を選択して、表示操作部52に対して所定の入力操作を行うことで、農業機械1のタイプを入力することができる。またその際、ユーザは所定の入力操作を行うことで、農業機械1の名称と寸法などの仕様も入力することができる。さらに、ユーザが所定の入力操作を行うことで、制御部51が、入力された農業機械1のタイプと仕様を記憶部53の所定の領域に記憶させることにより、当該タイプと仕様を登録する。後述する農業機械1の情報と作業装置2の情報も、ホーム画面D1から同様の手順で入力して、記憶部53に登録(記憶)することができる。
【0057】
ユーザは、車両確認画面D4aの無人機設定キーB10又は有人機設定キーB11を選択して、所定の入力操作を行うことで、農業機械1のタイプを変更することができる。ユーザが、車両確認画面D4aの次へキーB8を選択すると、制御部51は、車両確認画面D4aに表示されていた設定情報(農作業の種別と農業機械1のタイプ)を内部メモリに記憶させ、
図5Bに示す装置選択画面D4bを表示操作部52に表示させる。
【0058】
装置選択画面D4bには、入力操作手順を示すメッセージ、作業装置キーB36a~B36d、上矢印キーB41、下矢印キーB42、次へキーB9、及び戻るキーB8が表示されている。各作業装置キーB36a~B36dには、予め登録された作業装置2の代表的な固有情報が示されている。作業装置2の代表的な固有情報には、作業装置2の名称、作業装置2による前回作業の有無、及び作業幅が含まれている。作業幅は、作業装置2の進行方向に対して垂直な水平面内の対地作業を行うことが可能な左右方向の幅のことである。
図5Bでは、4つの作業装置キーB36a~B36dを表示しているが、農作業支援装置50に登録された作業装置2が5つ以上ある場合は、ユーザが上矢印キーB41又は下矢印キーB42を選択することで、制御部51が他の作業装置2を示す作業装置キーを装置選択画面D4bに表示させる。
【0059】
ユーザが作業装置キーB36a~B36dのいずれかを選択すると、制御部51は、選択された作業装置キーを他の作業装置キーとは異なる表示形態で装置選択画面D4bに表示させる。
図5Bの例では、選択された作業装置キーB36aだけに、黒丸印が付されている。作業装置キーB36a~B36dのいずれかが選択された状態で、ユーザが次へキーB9を選択すると、制御部51は、
図5Cに示す装置確認画面D4cを表示操作部52に表示させる。
【0060】
装置確認画面D4cには、入力操作手順を示すメッセージ、装置選択画面D4b(
図5B)で選択された作業装置2の固有情報、設定キーB37~B39、次へキーB9、及び戻るキーB8が表示されている。作業装置2の固有情報には、作業装置2の名称、作業装置2による前回作業の有無、作業装置2の寸法情報、及び作業装置2のタイプが含まれている。即ち、装置選択画面D4bで選択された作業装置2の詳細な仕様が、装置確認画面D4cで表示される。
図5B及び
図5Cでは、予め登録された作業装置2の固有情報が画面D4b、D4cに表示されている。
【0061】
図5Cに示すように、作業装置2の寸法情報には、作業装置2の全幅、作業幅、全長、及び作業位置が含まれている。作業装置2のタイプには、耕うん装置である作業装置2を回転駆動させるための副変速機(図示省略)の速度段、昇降装置8による作業装置2の昇降の有無、及び農業機械1のPTO(Power take-off)との連動の有無が含まれている。
【0062】
設定キーB37~B39は、作業装置2の寸法情報又はタイプを設定及び変更するためのキーである。詳しくは、ユーザが幅設定キーB37を選択して、所定の入力操作を行うことで、作業装置2の全幅及び作業幅の設定値を入力及び変更することができる。作業装置2の全幅とは、農業機械1の前後方向と上下方向とに対して垂直な左右方向の外形幅のことである。ユーザが長さ設定キーB38をして、所定の入力操作を行うことで、作業装置2の全長及び作業位置の設定値を入力及び変更することができる。作業装置2の全長とは、昇降装置8のロアリンク8b(
図2)に対する作業装置2の連結位置から、作業装置2の後端(農業機械1の走行車体3と反対側の端)までの長さのことである。作業装置2の作業位置とは、ロアリンク8bに対する作業装置2の連結位置から対地作業を行うことが可能な作業部材の前端位置(走行車体3側の作業可能な部分の端)までの長さのことである。
【0063】
また、ユーザがタイプ設定キーB39を選択して、所定の入力操作を行うことで、副変速機の速度段として、低速段(L(低速))又は中速段(M(中速))を入力及び変更することができる。本例では、作業装置2における農業機械1のPTOとの連動と昇降装置8による昇降とは、両方とも「有り」に固定されていて、変更不可になっている。他の例として、農業機械1のPTOとの連動と昇降装置8による昇降のそれぞれについて、「有り」と「無し」のいずれかを選択可能にしてもよい。
【0064】
装置確認画面D4cで、ユーザが次へキーB9を選択すると、制御部51は、装置確認画面D4cに表示されている設定情報を内部メモリに記憶させ、
図6に示す圃場選択画面D5を表示操作部52に表示させる。圃場選択画面D5には、登録された1つ以上の圃場マップMP2、上矢印キーB41、下矢印キーB42、次へキーB9、及び戻るキーB8が表示されている。
図6では、3つの圃場マップMP2を表示している。予め登録された圃場マップMP2が4つ以上ある場合は、ユーザが上矢印キーB41又は下矢印キーB42を選択することで、制御部51が他の圃場マップMP2を圃場選択画面D5に表示させる。
【0065】
ユーザがいずれかの圃場マップMP2を選択すると、制御部51は、選択された圃場マ
ップMP2を他の圃場マップMP2とは異なる表示形態で表示させる。
図6では、選択された圃場マップMP2だけを太線枠で囲っている。また、制御部51は、選択された圃場マップMP2で農作業を行った前回の作業日時と、当該圃場マップMP2の面積とを圃場選択画面D5に表示させる。いずれかの圃場マップMP2が選択された状態で、ユーザが次へキーB9を選択すると、制御部51が、選択された圃場マップMP2を含む圃場情報を記憶部53から読み出して、内部メモリに記憶させ、
図7に示すルート作成1画面D6を表示操作部52に表示させる。この設定時の圃場情報には、圃場マップMP2の情報として、圃場マップMP2の識別情報、輪郭、面積が含まれ、圃場マップMP2に対応する圃場の情報として、圃場の識別情報、位置、及び輪郭などが含まれている。また、当該圃場情報には、前回の作業日時が含まれている。
【0066】
図7に示すルート作成1画面D6には、選択された圃場マップMP2(圃場の輪郭H1)、農業機械マークX1、入力操作手順を示すメッセージ、作業キーB43a、B43b、B44、次へキーB9、及び戻るキーB8が表示されている。作業キーB43a、B43b、B44は、後述する農業機械1の走行ルートを作成するための設定を選択するキーである。言い換えれば、作業キーB43a、B43b、B44は、農業機械1(走行車体3)及び作業装置2により圃場に対して農作業を行うための作業条件を設定するキーである。
【0067】
より詳しくは、自動中央作業キーB43aは、後述するように圃場マップMP2に設定された中央エリアで、農業機械1の走行車体3を自動運転で走行させながら作業装置2により農作業をするか否かを選択するためのキーである。自動枕地作業キーB43bは、後述するように圃場マップMP2に設定された枕地で、農業機械1の走行車体3を自動運転で走行させながら作業装置2により農作業をするか又は農作業をしないかを選択するためのキーである。
【0068】
作業タイプキーB44は、作業装置2で行う作業状態を選択するためのキーである。本実施形態では、
図4に示した作業選択画面D3で耕うん作業が選択された場合を例に挙げているため、
図7の作業タイプキーB44は、耕うん作業のタイプが隣接作業であるか又は間接作業であるかを選択するためのキーとなっている。
図4の作業選択画面D3で他の作業が選択された場合には、
図7の作業タイプキーB44は、当該他の作業の状態を選択するためのキーとなる。
【0069】
図7では、自動中央作業キーB43aにより、圃場の中央エリアで農業機械1を自動運転で走行させながら作業装置2で農作業を行うことが選択された状態を示している。また、自動枕地作業キーB43bにより、圃場の枕地で農業機械1を自動運転で走行させながら作業装置2で農作業を行うことが選択された状態を示している。さらに、作業タイプキーB44により、耕うん作業のタイプとして隣接作業が選択された状態を示している。ユーザが次へキーB9を選択すると、制御部51は、ルート作成1画面D6に表示されている作業条件(作業キーB43a、B43b、B44による設定内容)を内部メモリに記憶させ、
図8Aに示すルート作成2画面D7を表示操作部52に表示させる。
【0070】
ルート作成2画面D7には、選択された圃場マップMP2、農業機械マークX1、入力操作手順を示すメッセージ、複数の設定項目とそれらの数値入力欄、推奨キーB12、ルート作成キーB13、軌跡予測キーB14、プラスキーB45、マイナスキーB46、次へキーB9、及び戻るキーB8が表示されている。ルート作成2画面D7の表示中に、制御部51は、測位装置40により検出された実際の走行車体3の位置を通信部54により取得し、当該走行車体3の位置に応じた圃場マップMP2上の該当箇所に農業機械マークX1を表示させてもよい。
【0071】
ルート作成2画面D7中の複数の設定項目は、走行ルートを作成するための作成条件であり、且つ農業機械1及び作業装置2により圃場に対して農作業を行うための作業条件である。当該設定項目には、予想作業距離、枕地数、自動運転枕地数、作業方向、枕地の重なり代、及び中央部の重なり代が含まれている。このうち、予想作業距離以外の項目に対して数値入力が可能である。枕地数とは、登録された圃場の輪郭H1(圃場マップMP2)の内側に当該輪郭H1に沿って一重以上設定する枕地の数のことである。自動運転枕地数とは、設定した枕地数のうち、農業機械1を自動運転で走行させながら作業装置2で農作業を行う枕地の数のことである。
【0072】
作業方向とは、圃場の枕地の内側にある中央部で走行車体3を直進で往復させながら作業装置2で作業を行う方向のことである。作業方向の数値入力欄に所定の数値(例えば「1」~「4」など)を入力することで、当該数値に対応するルート作成2画面D7の上、下、左、右の各方向が設定される。枕地の重なり代とは、枕地に対する作業装置2の作業幅の食み出し代のことである。中央部の重なり代とは、圃場の中央部で走行車体3を直進で往復させながら作業装置2で作業を行う際の作業幅同士の重なり代のことである。
【0073】
ルート作成2画面D7において、ユーザが各設定項目の数値入力欄を選択して、プラスキーB45又はマイナスキーB46を操作することで、各数値入力欄に数値を入力することができる。また、ユーザが推奨キーB12を選択することで、制御部51が、予め記憶部53に記憶された推奨値のうち、作業選択画面D3(
図4)で選択された農作業に応じた各設定項目の推奨値を読み出して、当該推奨値を対応する数値入力欄に入力(表示)する。
【0074】
ユーザが、ルート作成2画面D7の各設定項目に数値を入力した後、ルート作成キーB13を選択すると、制御部51が、当該各設定項目の数値を内部メモリに記憶させる。また、エリア設定部51b(
図1)が、
図8Bに示すように、圃場マップMP2に中央エリア(第2エリア)C1と枕地エリア(第1エリア)E1とを設定する。さらに、ルート作成部51c(
図1)が、圃場マップMP2に走行ルート(走行予定ルート)L1を作成する。
【0075】
具体的には、ルート作成キーB13(
図8B)がユーザにより選択されると、エリア設定部51bは、圃場情報、作業装置2の寸法情報、ルート作成2画面D7で入力された枕地数、又は枕地の重なり代に基づいて、
図9Aに示すように中央エリアC1と枕地エリアE1とを設定する。より詳しくは、例えばエリア設定部51bは、作業装置2の作業幅(又は作業装置2の全幅)から枕地の重なり代を減算した幅で、圃場の輪郭H1を枕地数と同じ回数で内側にオフセットすることによって形成される輪郭Hc、Hb、Haを演算する。そして、エリア設定部51bは、そのうち最も内側に形成される輪郭Haで囲まれるエリア(中央部)を、中央エリアC1として設定する。
【0076】
また、エリア設定部51bは、中央エリアC1の外側で且つ圃場の輪郭H1の内側にある枠状のエリア(外枠部)を、枕地エリアE1として設定する。また、エリア設定部51bは、枕地エリアE1において、圃場の輪郭H1と当該輪郭H1をオフセットした輪郭Hc、Hb、Haのうち、隣接する輪郭同士の間にあるエリアを、枕地E2c、E2b、E2cとして設定する。そして、エリア設定部51bは、各エリアC1、E1(枕地E2c、E2b、E2cを含む。)を示す位置などのデータを記憶部53に記憶させる。
【0077】
ルート作成部51cは、圃場情報、エリアC1、E1、農業機械1と作業装置2の寸法情報、ルート作成2画面D7で入力された作業方向、枕地の重なり代、及び中央部の重なり代に基づいて、走行ルートL1を作成する。より詳しくは、まずルート作成部51cは、作業装置2の作業幅から中央部の重なり代を減算した幅で、作業方向(
図9Aでは上下方向)と平行な中央エリアC1の一方の端部(
図9Aなどで右端部)から中央エリアC1を区切ることによって、中央エリアC1内に複数の単位作業区画を作成する。そして、各単位作業区画の幅方向(
図9Aでは左右方向)の中心線上に、走行車体3が直進する直進ルートL1aを作成する。
【0078】
次に、ルート作成部51cは、隣り合う直進ルートL1a同士をつなぐ旋回ルートL1bを枕地エリアE1に作成する。旋回ルートL1bは、隣り合う2本の直進ルートL1aのうち、一方から他方へ向かうルートである。ルート作成部51cは、旋回ルートL1bを作成する際に、農業機械1及び作業装置2を旋回させる旋回スペースを枕地エリアE1に確保する。
【0079】
図9Aでは、簡素な半円状の旋回ルートL1bを例示しているが、この形は表示操作部52の表示画面に表示し易くしたり、当該表示画面で走行ルートL1を視認し易くしたりするなどの便宜を図ったためである。実際に農業機械1の走行車体3と作業装置2が一方の直進ルートL1aに基づいて走行した後、他方の直進ルートL1aに向かって旋回する際は、走行車体3などが前進だけでなく、後進又は切り返しを行って、半円状よりも複雑な形状の軌跡を描くことがある。即ち、旋回ルートL1bは、表示操作部52への表示用のルートであって、農業機械1が旋回ルートL1bに基づいて旋回しないこともある。ルート作成部51cは、半円状以外の形状の旋回ルートL1bを作成してもよい。
【0080】
農業機械1の自動制御部61(
図1)は、直進ルートL1aに基づいて走行車体3を走行させているときに、昇降装置8(
図2)により作業装置2を下降させて、当該作業装置2により対地作業を行う。また、自動制御部61は、旋回ルートL1bに対応する箇所で走行車体3を旋回させるとき、即ち一方の直進ルートL1aから他方の直進ルートL1aへ向かって走行車体3を旋回するときに、昇降装置8により作業装置2を上昇させて、作業装置2による対地作業を停止する。
【0081】
即ち、直進ルートL1aは、農業機械1の走行車体3を自動運転で走行させながら作業装置2により対地作業を行う作業ルートである。また、直進ルートL1aが複数作成された中央エリアC1は、走行車体3を自動運転で直進させつつ往復させながら作業装置2により対地作業を行う作業エリアである。なお、作業ルートは、直進ルートL1aのような直線状のルートに限らず、曲線状のルートであってもよい。また、作業エリアには、直線状の作業ルートと曲線状の作業ルートのうち、少なくとも一方の作業ルートを1つ以上作成すればよい。
【0082】
例えば、
図7のルート作成1画面D6で、自動中央作業キーB43aにより中央エリアC1で作業することが選択され、自動枕地作業キーB43bにより枕地で作業しないことが選択され、作業タイプキーB44により隣接作業が選択される。この場合、ルート作成部51cは、直進ルートL1aと旋回ルートL1bとから構成される走行ルートL1を作成する。また、ルート作成部51cは、中央エリアC1の両側にある直進ルートL1aの端部のうち、旋回ルートL1bとつながっていない一方の直進ルートL1aの端部にスタート位置Psを設定し、他方の直進ルートL1aの端部にゴール位置Pgを設定する。そして、ルート作成部51cは、エリアC1、E1、走行ルートL1、スタート位置Ps、ゴール位置Pg、及び旋回スペースをそれぞれ示す情報を、ルート情報として内部メモリに記憶させる。
【0083】
一方、
図7のルート作成1画面D6で、自動中央作業キーB43aにより中央エリアC1で作業することが選択され、自動枕地作業キーB43bにより枕地で作業することが選択され、作業タイプキーB44により隣接作業が選択される。この場合、ルート作成部51cが、直進ルートL1aと旋回ルートL1bに加えて、
図9Aに示すように中央エリアC1の外側を周回する周回ルートL1cを枕地エリアE1に作成する。例えば
図9Aに示すように、ルート作成2画面D7で自動運転枕地数が1回に設定された場合、ルート作成部51cは、エリア設定部51bにより中央エリアC1の外側に一重以上設定された枕地E2a、E2b、E2cのうち、中央エリアC1に対して最も近い枕地E2aに、周回ルートL1cを作成する。
【0084】
周回ルートL1cは、農業機械1の走行車体3を自動運転で走行させながら作業装置2により対地作業を行う作業ルートである。周回ルートL1cには、略真っ直ぐな直進ルートL1sと、所定の曲率半径以上で湾曲した旋回ルートL1rとが複数含まれている。直進ルートL1sは、中央エリアC1の輪郭H2aの各直線部分に対応するように、枕地E2aの幅方向の中心線上に複数作成されている。
【0085】
旋回ルートL1rは、一方の直進ルートL1sから、当該一方の直進ルートL1sの延伸方向に隣接する他方の直進ルートL1sに向かうルートである。一方の直進ルートL1sと他方の直進ルートL1sとは、延伸方向が異なっているが、一方の直進ルートL1sの終端と、他方の直進ルートL1sの始端とは、旋回ルートL1rにより接続される。ルート作成部51cは、旋回ルートL1rを作成する際にも、農業機械1の走行車体3及び作業装置2を旋回させる旋回スペースを枕地エリアE1に確保する。
【0086】
図9Aでは、便宜上、簡素な円弧状の旋回ルートL1bを例示している。然るに、実際に農業機械1などが一方の直進ルートL1sから他方の直進ルートL1sに向かって旋回する際は、前進だけでなく、後進又は切り返しを行って、円弧状よりも複雑な形状の軌跡を描くことがある。即ち、旋回ルートL1rは、表示操作部52への表示用のルートであって、農業機械1が旋回ルートL1rに基づいて旋回しないこともある。ルート作成部51cは、円弧状以外の形状の旋回ルートL1rを作成してもよい。
【0087】
また、圃場の輪郭H1の形状によっては(例えば圃場の輪郭H1が歪んでいる場合)、直進ルートL1sと旋回ルートL1rとに加えて、所定の曲率半径未満で湾曲した緩いカーブ部分(曲線状のルート、図示省略)が周回ルートL1cに含まれてもよい。またこの場合、自動制御部61は、周回ルートL1cの直進ルートL1s又は緩いカーブ部分に基づいて走行車体3を自動運転で走行させているときに、作業装置2により対地作業を行ってもよい。即ち、直進ルートL1sと上記緩いカーブ部分とは、作業ルートである。
【0088】
自動制御部61は、旋回ルートL1rに対応する箇所で走行車体3を旋回させるとき、即ち一方の直進ルートL1sから他方の直進ルートL1sへ向かって走行車体3を旋回させるときに、昇降装置8により作業装置2を上昇させて、作業装置2による対地作業を停止する。また、自動制御部61は、中央エリアC1の一方の直進ルートL1aから、枕地エリアE1の一方の直進ルートL1sへ向かって走行車体3を旋回させるときにも、昇降装置8により作業装置2を上昇させて、作業装置2による対地作業を停止する。
【0089】
上記のように周回ルートL1cが作成された枕地E2aは、走行車体3が中央エリアC1の外側を周回しながら作業装置2により対地作業を行う作業エリアである。他の例として、枕地E2aの外側にある他の枕地E2b、E2cにも、ルート作成部51cが周回ルートを作成してもよい。また、周回ルートを作成する枕地の数を入力するキーを、ルート作成2画面D7に設けてもよい。
【0090】
さらに、ルート作成部51cが、複数の枕地E2a、E2b、E2cのうち、少なくとも1つの枕地に複数回周回する周回ルートを作成してもよいし、又は隣り合う一方の枕地と他方の枕地の両方を通るように周回ルートを作成してもよい。即ち、ルート作成部51cは、中央エリアC1の周囲を枕地数以上の回数で周回するような周回ルートを枕地エリ
アE1に作成してもよい。
【0091】
ルート作成部51cは、周回ルートL1cを作成した後、中央エリアC1の両端(
図9Aで左右の端)にある直進ルートL1aの両端部のうち、旋回ルートL1bとつながっていない一方の直進ルートL1aの端部(
図9Aで右端の直進ルートL1aの上端部)にスタート位置Psを設定し、他方の直進ルートL1aの端部(
図8Bで左端の直進ルートL1aの下端部)に周回ルートL1cをつなげる。また、ルート作成部51cは、直進ルートL1aとつながっていない周回ルートL1cの端部に、ゴール位置Pgを設定する。そして、ルート作成部51cは、エリアC1、E1、走行ルートL1、スタート位置Ps、ゴール位置Pg、及び旋回スペースをそれぞれ示す情報を、ルート情報として内部メモリに記憶させる。
【0092】
制御部51は、ルート作成部51cによる走行ルートL1の作成が完了すると、
図9Aに示すように、エリアC1、E1、走行ルートL1、スタート位置Ps、及びゴール位置Pgといったルート情報をルート作成2画面D7に表示させる。また、ルート作成部51cは、全ての直進ルートL1a、L1sに基づいて、走行車体3を走行させながら作業装置2により対地作業を行う予想作業距離を演算する。制御部51は、当該予想作業距離もルート作成2画面D7に表示させる。
【0093】
図9Aにおいて、枕地E2aより外側にある枕地E2b、E2cでは、農業機械1又は作業装置2が圃場から越境して畔などに衝突するのを回避するため、農業機械1を手動運転で走行させて作業装置2により農作業を行う。この場合、例えば
図9Bに1点鎖線で示すようなルートで、農業機械1を手動運転で走行させて作業装置2により農作業を行う。
図9Bに1点鎖線で示す手動運転ルートは、農業機械1の自動運転用の走行ルートL1と連続している。この手動運転ルートは、本例では表示操作部52に表示されないが、他の例として、手動運転ルートを走行ルートL1とともに表示操作部52に表示してもよい。
【0094】
図8Bに示すようにルート作成2画面D7に走行ルートL1などが表示された後、ユーザが次へキーB9を選択すると、制御部51は、
図10Aに示す走行制御画面D8を表示操作部52に表示させる。また、制御部51は、内部メモリに記憶された設定情報に基づいて自動走行データを生成し、当該自動走行データを通信部54により農業機械1の制御装置60に送信(出力)する。自動走行データには、ルート情報、農業機械1の設定情報、作業装置2の設定情報、及び自動運転作業情報などが含まれている。そのうち、ルート情報に含まれる走行ルートL1の情報には、作業ルートである直進ルートL1a、L1sの位置を示す情報が含まれ、旋回ルートL1b、L1rの位置を示す情報は含まれていなくてもよい。また、農業機械1及び作業装置2の設定情報には、農業機械1及び作業装置2の寸法情報と、農業機械1及び作業装置2により行う農作業の種別などが含まれている。
【0095】
図10Aに示す走行制御画面D8は、自動走行作業モードにおける農業機械1の走行状態及び作業装置2による作業状態を表示する画面である。なお、
図10Aでは、自動走行作業モードが開始されてからしばらくした後の農業機械1の走行状態と作業状態を、走行制御画面D8に表示している。走行制御画面D8には、圃場マップMP2、走行ルートL1、スタート位置Ps、ゴール位置Pg、農業機械マークX2、農業機械1の走行状態、設定変更キーB20、状態表示キーB21、作業軌跡キーB15、及び軌跡クリアキーB16が表示されている。
【0096】
制御部51は、測位装置40により検出された実際の走行車体3の位置を所定の周期で通信部54により取得し、当該走行車体3の位置に応じた圃場マップMP2上の該当箇所に、農業機械マークX2を随時表示させる。即ち、走行制御画面D8中の農業機械マーク
X2は、農業機械1の走行車体3の実際の位置を示している。
【0097】
例えばユーザが走行制御画面D8を見ながら、農業機械1を手動運転でスタート位置Psに移動させた後、モードスイッチ65(
図1)で自動走行作業モードに移行するための所定の操作を行う。これにより、自動制御部61(
図1)は、自動走行作業モードに移行し、農作業支援装置50から受信した自動走行データと、測位装置40により検出された走行車体3の位置とに基づいて、走行車体3を自動運転で走行させながら作業装置2により対地作業を行う。
【0098】
詳しくは、自動制御部61は、まず自動走行データに含まれるルート情報を読み込んで、エリアC1、E1、走行ルートL1(作業ルートL1a、L1s)、スタート位置Ps、及びゴール位置Pgを把握する。そして、自動制御部61は、スタート位置Psから走行ルートL1の直進ルートL1aに基づいて、走行車体3を自動運転で走行させながら作業装置2により対地作業を行う。走行車体3(農業機械1)が一方の直進ルートL1aの終端に到達すると、自動制御部61は、作業装置2による対地作業を一旦停止して、作業装置2を上昇させ、隣接する他方の直進ルートL1aの始端に向かって走行車体3を旋回させる。即ち、自動制御部61は、旋回ルートL1bに対応する箇所で、農業機械1及び作業装置2を旋回させる。この際、自動制御部61は、エリアC1、E1の位置情報、直進ルートL1aの位置情報、農業機械1及び作業装置2の寸法情報、測位装置40により検出された走行車体3の位置、及び検出装置64の検出結果などに基づいて、農業機械1及び作業装置2を旋回させる。
【0099】
そして、自動制御部61は、走行車体3が他方の直進ルートL1aの始端に到達すると、作業装置2を下降させ、他方の直進ルートL1aに基づいて走行車体3を自動運転で走行させ始めるときに、作業装置2による対地作業を再開する。これにより、走行車体3が自動運転で中央エリアC1を往復直進し、中央エリアC1に対して作業装置2により対地作業が行われる。
【0100】
その後、自動制御部61は、周回ルートL1cと走行車体3の位置とに基づいて、走行車体3を自動運転で走行させながら作業装置2により対地作業を行う。この際、自動制御部61は、直進ルートL1sに基づいて、走行車体3を自動運転で走行させながら作業装置2により対地作業を行い、旋回ルートL1rに対応する箇所で走行車体3を旋回させるときには、作業装置2を上昇させて、作業装置2による対地作業を停止する。この旋回時に、自動制御部61は、エリアC1、E1の位置情報、直進ルートL1sの位置情報、農業機械1及び作業装置2の寸法情報、測位装置40により検出された走行車体3の位置、及び検出装置64の検出結果などに基づいて、農業機械1及び作業装置2を旋回させる。それにより、走行車体3が中央エリアC1の外側を自動運転で周回し、作業装置2が中央エリアC1を囲む枕地E2a(
図9B)に対して対地作業を行う。
【0101】
図11A~
図11Dは、農業機械1の自動操舵を説明するための図である。自動走行作業モードにおいて、自動制御部61は走行車体3を自動で走行させながら、測位装置40により検出された走行車体3の位置と走行ルートL1(作業ルートL1a、L1s)との偏差を演算する。当該偏差が閾値未満である場合は(例えば
図11A)、自動制御部61は、操舵軸31(
図1)の回転角を維持する。走行車体3の位置と走行ルートL1との偏差が閾値以上であって、走行車体3が走行ルートL1に対して左側に位置している場合は(例えば
図11B)、自動制御部61は、走行車体3の操舵方向が右方向となるように、操舵軸31を回転させる。走行車体3の位置と走行ルートL1との偏差が閾値以上であって、走行車体3が走行ルートL1に対して右側に位置している場合は(例えば
図11C)、自動制御部61は、走行車体3の操舵方向が左方向となるように、操舵軸31を回転させる。
【0102】
上記の例では、走行車体3の位置と走行ルートL1との偏差に基づいて、操舵装置29の操舵角を変更しているが、他の例として、
図11Dに示す走行ルートL1に対する走行車体3の進行方向F1の角度θgに基づいて、操舵装置29の操舵角を変更してもよい。この場合、例えば自動制御部61が、走行車体3の位置の変化から走行車体3の進行方向F1を演算し、さらに走行ルートL1に対する進行方向F1の角度θgを演算する。そして、自動制御部61は、角度θgが閾値以上である場合に、走行車体3の進行方向F1が走行ルートL1の方位と一致する(即ち、θg=「0°」になる)ように操舵軸31を回転させる。
【0103】
また、他の例として、自動制御部61は、走行車体3の位置と走行ルートL1との偏差に基づいて第1操舵角を演算し、走行ルートL1と走行車体3の進行方向F1とに基づいて第2操舵角を演算してもよい。そして、自動制御部61は、第1操舵角と第2操舵角とに基づいて第3操舵角を演算し、当該第3操舵角に基づいて操舵軸31を回転させてもよい。
【0104】
また、自動制御部61は、走行ルートL1に基づいて走行車体3を自動で走行させているときに、走行車体3の位置の変化に基づいて走行車体3の実際の車速を演算する。そして、実際の車速が直進ルートL1a、旋回ルートL1b、又は周回ルートL1cに対応付けられた車速と一致するように、変速装置5、制動装置6、及び原動機4の駆動を制御する。
【0105】
上述したように、農業機械1の自動走行作業モードにおいて、自動制御部61は、走行ルートL1と走行車体3(農業機械1)の位置とに基づいて、走行車体3の走行速度を自動で変更しながら、走行車体3の操舵を自動で行う。また、自動制御部61は、作業装置2による農作業(対地作業)を自動で実行したり停止したりする。また、自動制御部61は、農業機械1を自動運転しているときに、昇降装置8により作業装置2の高さ方向の位置を制御する。農業機械1が手動運転されているときには、自動制御部61が昇降装置8により作業装置2の高さ方向の位置を制御することもあり、ユーザ(運転者)が操作装置62(
図1)に設けられたスイッチを操作することにより、作業装置2の高さ方向の位置が変えられることもある。
【0106】
図12A及び
図12Bは、農業機械1の動作の一例を示すフローチャートである。農業機械1において、自動制御部61は、農作業支援装置50の通信部54から送信された自動走行データを受信すると(
図12AのS1)、当該自動走行データに含まれる農作業の種別を確認(読み込み)する(S2)。この際、自動制御部61は、自動走行データに含まれる作業装置2の種別から、当該作業装置2が行う農作業の種別を検出してもよい。そして、自動制御部61は、確認した農作業の種別に応じて、昇降装置8により作業装置2を、農作業を行う所定の作業位置P1、P3、P5に位置決めする(S3)。
【0107】
例えば、農作業が圃場の整地を含む耕うん作業であって、
図19Aに示すように農業機械1に連結された作業装置2が耕うん装置2Aから成る場合には、自動制御部61は、昇降装置8により耕うん装置2Aを下降させて、
図19Bに示すように、耕うん装置2Aの耕うん爪2gを圃場の土壌K2に接触させて耕うん作業が行える作業位置P1に位置させる。また、耕うん装置2Aの搬送時などに、自動制御部61は、
図19Aに示すように、昇降装置8により耕うん装置2Aを上昇させて、耕うん爪2gを圃場の土壌K2から離間させて耕うん作業が行えない非作業位置P2に位置させる。
【0108】
例えば代掻き作業と畝立て作業などといった、耕うん作業以外の整地を含む農作業を行う際にも、自動制御部61は、当該農作業を行うための作業装置2(代掻き装置と畝立て
装置など)を昇降装置8により下降させて、圃場の土壌K2に接触する作業位置に位置させ、当該作業装置2を昇降装置8により上昇させて、圃場の土壌K2から離間する非作業位置に位置させる。整地を含む耕うん作業、代掻き作業、及び畝立て作業は、本発明の「第1農作業」の一例であり、当該農作業を行う耕うん装置2A、代掻き装置、及び畝立て装置は、本発明の「第1作業装置」の一例である。
【0109】
上記に対して、例えば農作業が肥料又は農薬などの散布作業であって、
図20に示すように農業機械1に連結された作業装置2が散布装置2Bから成る場合には、散布作業を行うときも、散布作業を行わないときも、自動制御部61は、昇降装置8により散布装置2Bを圃場の土壌K2から離間させた所定位置P3に位置決めする。即ち、
図20の例では、散布装置2Bが散布作業を行う作業位置P3と、散布装置2Bが散布作業を行わない非作業位置P3とは、土壌K2から同一の高さにある同一位置である。他の例として、散布装置2Bの作業位置と非作業位置とを異ならせてもよい。
【0110】
また、農作業が粗耕起作業であって、
図21Aに示すように農業機械1に連結された作業装置2が粗耕起装置2Cから成る場合には、自動制御部61は、
図21Bに示すように、昇降装置8により粗耕起装置2Cを下降させて、粗耕起装置2Cの作業爪2nを土壌K2に接触させて粗耕起作業が行える作業位置P5に位置させる。また、粗耕起装置2Cの搬送時などに、自動制御部61は、
図21Aに示すように、昇降装置8により粗耕起装置2Cを上昇させて、作業爪2nを土壌K2から離間させて粗耕起作業が行えない非作業位置P4に位置させる。
【0111】
散布作業と粗耕起作業とは、圃場の整地を含まない農作業である。これら以外の、例えば播種作業と散水作業などといった、整地を含まない農作業を行う際にも、自動制御部61は、当該農作業を行うための作業装置2(播種装置と散水装置など)を昇降装置8により圃場の土壌K2から離間した所定位置(作業位置及び非作業位置)に位置させる。整地を含まない散布作業、粗耕起作業、播種作業、及び散水作業は、本発明の「第2農作業」の一例であり、当該農作業を行う散布装置2B、粗耕起装置2C、播種装置、及び散水装置は、本発明の「第2作業装置」の一例である。
【0112】
自動制御部61は、上述したように作業装置2を作業位置P1に位置決めした(
図12AのS3)後、自動走行データに含まれる走行ルートL1(作業ルートL1a、L1s)などと、測位装置40で検出された農業機械1(走行車体3)の位置とに基づいて、スタート位置Ps(
図9Aなど)から農業機械1(走行車体3)の走行と作業装置2による農作業とを開始する(S4)。即ち、自動制御部61は、農業機械1の自動運転を開始する。これにより、
図9Aに示した例では、自動制御部61は、スタート位置Psから中央エリアC1に作成された作業ルートL1aに沿って走行しながら、作業装置2により農作業を行い、その後中央エリアC1を囲む再内周の枕地E2aに形成された作業ルートL1sに沿って走行しながら、作業装置2により農作業を行う。
【0113】
また、自動制御部61は、農業機械1の自動運転中に、農業機械1(走行車体3)から農業機械1の進行方向にある圃場の端までの距離Dxを、検出装置64により検出する(
図12AのS5、
図14A参照)。この際、検出装置64は、例えば、枕地エリアE1の輪郭と、測位装置40で検出された農業機械1(走行車体3)の位置とに基づいて、走行車体3から進行方向にある圃場の輪郭H1までの距離Dxを検出する。
【0114】
又は、検出装置64は、例えば、対象物検出部64aとレーザセンサなどにより、走行車体3の進行方向にある圃場の端を構成する畔などの対象物までの距離Dxを検出する。自動制御部61は、検出装置64により検出した距離Dxと所定の閾値Dsとを比較する。閾値Dsには、例えば自動運転中の農業機械1の走行を停止(制動装置6による制動)させてから、走行車体3が完全に停止するまでの移動距離(即ち制動距離)、又は農業機械1の進行方向において、対象物検出部64a(
図1)が対象物を検出可能な検出距離が設定されている。
【0115】
農業機械1から圃場の端までの距離Dxが閾値Dsより大きい場合(S6:NO)、自動制御部61は、農業機械1及び作業装置2がゴール位置Pg(
図9Aなど)に到達したか否かを確認する。ここで、農業機械1及び作業装置2がゴール位置Pgに到達していなければ(S7:NO)、自動制御部61は、農業機械1から圃場の端までの距離Dxを再度算出し(S5)、当該距離Dxと閾値Dsとを比較する。
【0116】
農業機械1から圃場の端までの距離Dxが閾値Ds以下である場合(S6:YES)、自動制御部61は、整地を含まない農作業(第2農作業)を実行中で
あれば(
図12BのS8:NO)、農業機械1の走行と作業装置2による農作業とを停止する(S9)。このとき、農業機械1(走行車体3)又は作業装置2が、自動運転のゴール位置Pgに到達していないので、圃場において農業機械1を自動運転して農作業を実施することを予定していた未作業箇所(圃場の自動運転の予定内の未作業箇所)の手前で停止した状態となる。そして、自動制御部61が、昇降装置8により作業装置2を非作業位置P3、P4に位置決めし(S10)、農業機械1の自動運転が途中終了(中止)した状態となる。このとき、作業装置2が散布装置2B(
図20)などである場合には、非作業位置P3と作業位置P3とが圃場の土壌K2から離間した同一の位置であるため、自動制御部61は、昇降装置8による作業装置2の非作業位置P3での位置決め状態を維持する(
図20)。
【0117】
また、作業装置2が、例えば粗耕起装置2C(
図21A及び
図21B)である場合には、粗耕起装置2Cが行う粗耕起作業は圃場の整地を含まない農作業であるため、自動制御部61は、
図12Aの処理S3において、昇降装置8により粗耕起装置2Cを下降させて、粗耕起装置2Cの作業爪2nが圃場の土壌K2に接触する作業位置P5に粗耕起装置2Cを位置決めする(
図21B)。そして、自動制御部61は、
図12Aの処理S4~S6と、
図12Bの処理S8、S9を実行した後、処理S10で、昇降装置8により粗耕起装置2Cを上昇させて、作業爪2nが土壌K2から離間する非作業位置P4に粗耕起装置を位置決めする(
図21A)。
【0118】
図12Bの処理S10の後、自動制御部61は、作業装置2が非作業位置P3、P4にある旨を通知部51gにより通知する(S11)。このとき、通知部51gは、例えば
図10Cに示すように、作業装置2が非作業位置P3、P4にある旨の通知U2を、表示操作部52により走行制御画面D8に表示させる。
【0119】
上記のように、整地を含まない第2農作業(散布作業など)を行っていた作業装置2(散布装置などの第2作業装置)が非作業位置P3に位置決めされた状態で、農業機械1の自動運転が途中終了した場合、その後ユーザが操作装置62(
図1)を操作して又は自動制御部61が自動で、昇降装置8により作業装置2を作業位置P3、P5に位置決めする。そして、圃場の自動運転の予定内の未作業箇所に対して、ユーザが操作装置62により農業機械1を手動運転して、農業機械(走行車体3)を走行させながら作業装置2により農作業を実施する(S31)。即ち、作業装置2が作業位置P3、P5に位置決めされてから、ユーザが農業機械1を手動運転して、圃場の自動運転の予定内の未作業箇所(
図9Aでは、最内周の枕地E2aの残りの箇所)に対して作業装置2により農作業を実施する。
【0120】
また、農業機械1から圃場の端までの距離Dxが閾値Ds以下になった場合(
図12AのS6:YES)、自動制御部61は、整地を含む農作業(第1農作業)を実行中であれば(
図12BのS8:YES)、農業機械1の走行と作業装置2による農作業とを停止す
る(S12)。このときも、農業機械1又は作業装置2が、圃場の自動運転の予定内の未作業箇所の手前で停止した状態となる。然るに、自動制御部61が、昇降装置8による作業装置2の作業位置P1での位置決め状態を維持し(S13)、農業機械1の自動運転が途中終了した状態となる。また、自動制御部61は、作業装置2が作業位置P1にある旨を通知部51gにより通知する(S14)。このとき、通知部51gは、例えば
図10Bに示すように、作業装置2が作業位置P1にある旨の通知U1を、表示操作部52により走行制御画面D8に表示させる。
【0121】
上記のように、整地を含む第1農作業(耕うん作業など)を行っていた作業装置2(耕うん装置などの第1作業装置)が作業位置P1に位置決めされた状態で、農業機械1の自動運転が途中終了した場合、その後ユーザが操作装置62により農業機械1を直ちに手動運転して、農業機械を走行させながら、作業装置2により圃場の自動運転の予定内の未作業箇所に対して農作業を実施する(S32)。即ち、昇降装置8により作業装置2が昇降することなく、ユーザが農業機械1を手動運転して、圃場の自動運転の予定内の未作業箇所(
図9A及び
図9Bの例では、最内周の枕地E2aの残りの部分)に対して作業装置2により農作業を実施する。
【0122】
一方、農業機械1から圃場の端までの距離Dxが閾値Ds以下になることなく(
図12AのS6:NO)、農業機械1及び作業装置2がゴール位置Pgに到達すると(S7:YES)、自動制御部61は、農業機械1の走行と作業装置2による農作業とを停止する(S16)。このとき、圃場に自動運転の予定内の未作業箇所が残っていないので、自動制御部61が、昇降装置8により作業装置2を非作業位置P2、P3、P4に位置決めし(S17)、農業機械1の自動運転が完了(全終了)した状態となる。
【0123】
そして、自動制御部61は、作業装置2が非作業位置P2、P3、P4にある旨を、通知部51gと表示操作部52により通知する(
図12BのS18)。このとき、通知部51gは、例えば
図10Cに示すように、作業装置2が非作業位置P2、P3、P4にある旨の通知U2を、表示操作部52により走行制御画面D8に表示させる。この後、圃場に自動運転の予定内の未作業箇所が残っていないため、圃場での農作業が終了する。或いは、圃場に自動運転の予定外の未作業箇所(
図9A及び
図9Bの例では、枕地E2b、E2c)がある場合は、ユーザが農業機械1及び作業装置2を手動運転して、当該自動運転の予定外の未作業箇所に対して農作業を実施してもよい。
【0124】
図13Aは、従来の農業機械1の自動運転途中終了後の作業装置2と圃場の状態の一例を示す図である。
図13Bは、従来の農業機械1の手動運転による農作業再開後の作業装置2と圃場の状態の一例を示す図である。
図14Aは、農業機械1の自動運転途中終了後の作業装置2と圃場の状態の一例を示す図である。
図14Bは、農業機械1の手動運転による農作業再開後の作業装置2と圃場の状態の一例を示す図である。
図15は、農業機械1の自動運転完了後の作業装置2と圃場の状態の一例を示す図である。
【0125】
従来、農業機械1を自動運転して、整地を含む第1農作業(耕うん作業など)を作業装置2(耕うん装置2Aなど)で行っていた場合、作業装置2が走行ルートL1のゴール位置Pgに到達するまでに、農業機械1の自動運転が途中終了したときには、
図13Aに示すように、作業装置2が昇降装置8により上昇して、圃場の土壌K2から離間する非作業位置P2に位置決めされていた。このため、自動運転を途中終了したときの作業装置2の停止位置Pmより先(前方)にある圃場の自動運転の予定内の未作業箇所J1に対して、その後ユーザが農業機械を手動運転して農作業を行う際に、昇降装置8によって作業装置2を下降させて、作業位置P1に位置決めしなければならず、農業機械1を手動運転して作業装置2により農作業を直ぐに再開することができなかった。
【0126】
また、昇降装置8により作業装置2(耕うん装置2Aなど)を圃場の土壌K2に対して一旦離間させた後に接触させてから、農業機械1を手動運転して作業装置2により農作業を再開した場合、作業装置2の土壌K2に対する接触・離間の形跡V1(
図13Bの例では窪み)が残り、農作業(耕うん作業など)の仕上がりが悪くなっていた。また、その作業装置2の形跡V1を消すには、ユーザが手動運転で農業機械1及び作業装置2を停止位置Pmから自動運転による既作業箇所J2に後進させた後、農業機械を未作業箇所J1に向けて走行させながら、作業装置2により農作業を再開しなければならず、手動運転の工程が増えていた。
【0127】
それに対して、
図12A及び
図12Bで説明した実施形態では、整地を含む第1農作業(耕うん作業など)を行う作業装置2がゴール位置Pgに到達するまでに、農業機械1の自動運転が途中終了したときには、
図14Aに示すように、作業装置2の昇降装置8による作業位置P1での位置決め状態が維持される(
図12BのS13)。
【0128】
このため、自動運転を途中終了したときの作業装置2の停止位置Pmより先(前方)にある圃場の未作業箇所J1に対して、その後ユーザが農業機械1を手動運転して作業装置2により農作業を行う際に、昇降装置8によって作業装置2を昇降させることなく、農作業を直ちに再開することができる。また、昇降装置8により作業装置2を圃場の土壌K2に対して接触させた状態が維持されるので(
図19B参照)、農業機械1を手動運転して作業装置2により農作業を再開しても、作業装置2の接触・離間の形跡V1が土壌K2に残らず、農作業(耕うん作業など)の仕上がりが悪くなることはない。さらに、手動運転で農業機械1及び作業装置2を停止位置Pmから既作業箇所J2に後進させる必要がないので、手動運転の手順が増えることもない。
【0129】
また、第1農作業(耕うん作業など)を行う作業装置2がゴール位置Pgに到達して、農業機械1の自動運転が完了したときには、例えば
図15に示すように、停止位置より先(前方)に自動運転の予定内の未作業箇所J1ではなく、農作業を行わない非作業箇所J0があるので、昇降装置8により作業装置2が上昇して非作業位置P2に位置決めされる(
図12BのS17)。このため、その後ユーザが作業装置2を上昇させるための操作を行うことなく、農業機械を手動運転して、農業機械1及び作業装置2を任意の場所に安定に移動させることができる。
【0130】
上述した実施形態では、農業機械1及び作業装置2が走行ルートL1のゴール位置Pgに到達して、農業機械1の自動運転が完了(全終了)したときに、農業機械1の走行と作業装置2による農作業を停止して(
図12BのS16)、昇降装置8により作業装置2を上昇させて非作業位置P2に位置決めする例を示した(S17)。然るに、農業機械1の自動運転が完了したときにも、例えば当該完了前に実行していた農作業の種別、又は農業機械1などの停止位置に応じて、作業装置2を作業位置又は未作業位置に位置決めしてもよい。
【0131】
図16は、農業機械1の動作の他の例を示すフローチャートである。詳しくは、
図16は、前述の
図12Aの続きのフローチャートである。
図12Aにおいて、農業機械1及び作業装置2がゴール位置Pgに到達すると(S7:YES)、自動制御部61は実行中の農作業を確認する。ここで、整地を含まない農作業(第2農作業)を実行中で
あれば(
図16のS15:NO)、自動制御部61は、農業機械1の走行と作業装置2による農作業とを停止する(S16)。そして、自動制御部61は、昇降装置8により作業装置2を非作業位置P3、P4に位置決めし(S17)、農業機械1の自動運転が完了(全終了)した状態となる。また、自動制御部61は、作業装置2が非作業位置P3、P4にある旨を、通知部51gと表示操作部52により通知する(
図12BのS18)。このとき、通知部51gは、例えば
図10Cに示すように、作業装置2が非作業位置P3、P4にある旨の通知U2を、表示操作部52により走行制御画面D8に表示させる。
【0132】
上記のように、整地を含まない第2農作業(散布作業又は粗耕起作業など)を行っていた作業装置2(散布装置2B又は粗耕起装置2Cなどの第2作業装置)が非作業位置P3、P4に位置決めされた状態で、農業機械1の自動運転が完了する。このとき、農業機械1(走行車体3)又は作業装置2が、圃場の自動運転の予定外の未作業箇所(
図9Bの例では、枕地E2b)の手前で停止した状態となる。そのため、その後ユーザが圃場の自動運転の予定外の未作業箇所(枕地E2b、E2c)に対して農作業を実施するときには、まずユーザが操作装置62(
図1)を操作して又は自動制御部61が自動で、昇降装置8により作業装置2を作業位置P3、P5に位置決めする必要がある。作業装置2が作業位置P3、P5に位置決めされた後、ユーザが操作装置62により農業機械1を手動運転して、農業機械を走行させながら作業装置2により圃場の自動運転の予定外の未作業箇所(枕地E2b、E2c)に対して農作業を実施する(S33)。
【0133】
また、農業機械1及び作業装置2がゴール位置Pgに到達したときに(
図12AのS7:YES)、自動制御部61は、整地を含む農作業(耕うん作業などの第1農作業)を実行中であれば(
図16のS15:YES)、農業機械1の走行と作業装置2による農作業とを停止する(S19)。このとき、例えば農業機械1及び作業装置2が、圃場の輪郭H1より外側に停止するなどのように、圃場の自動運転の予定外の未作業箇所(枕地E2b、E2c)の手前で停止した状態になければ(S20:NO)、自動制御部61が、昇降装置8により作業装置2を非作業位置P2に位置決めし(S17)、農業機械1の自動運転が完了した状態となる。また、自動制御部61は、作業装置2が非作業位置P2にある旨を、通知部51gにより通知する(S18)。このとき、通知部51gは、例えば
図10Cに示すように、作業装置2が非作業位置P2にある旨の通知U2を、表示操作部52により走行制御画面D8に表示させる。
【0134】
上記のように、整地を含む第1農作業(耕うん作業など)を行っていた作業装置2(耕うん装置などの第1作業装置)が非作業位置P2に位置決めされた状態で、農業機械1が自動運転の予定外の未作業箇所の手前以外で自動運転を完了する。この場合、圃場に未作業箇所が残っていないため、その後はユーザにより農業機械1の手動運転操作が行われることはなく、同一の圃場において農作業が再開されることもない(
図16のS33の実行無し)。
【0135】
また、農業機械1の走行と作業装置2による農作業とを停止したときに(S19)、農業機械1及び作業装置2が圃場の自動運転の予定外の未作業箇所(枕地E2b、E2c)の手前で停止した状態にあれば(S20:YES)、自動制御部61が、昇降装置8による作業装置2の作業位置P1での位置決め状態を維持し(S21)、農業機械1の自動運転が完了した状態となる。また、自動制御部61は、作業装置2が作業位置P1にある旨を、通知部51gにより通知する(S22)。このとき、通知部51gは、例えば
図10Bに示すように、作業装置2が作業位置P1にある旨の通知U1を、表示操作部52により走行制御画面D8に表示させる。
【0136】
上記のように、整地を含む第1農作業(耕うん作業など)を行っていた作業装置2(耕うん装置などの第1作業装置)が作業位置P1に位置決めされた状態で、農業機械1が未作業箇所の手前で自動運転を完了する。この場合、その後ユーザが圃場の自動運転の予定外の未作業箇所(枕地E2b、E2c)に対して農作業を実施するときには、操作装置62により農業機械1を直ちに手動運転して、農業機械1を走行させながら作業装置2により自動運転の予定外の未作業箇所に対して農作業を実施する(S34)。即ち、昇降装置8により作業装置2が昇降することなく、ユーザが農業機械1を手動運転して、圃場の自動運転の予定外の未作業箇所(枕地E2b、E2c)に対して作業装置2により農作業を実施する。
【0137】
上記によれば、第1農作業(耕うん作業など)を行う作業装置2がゴール位置Pgに到達して、農業機械1の自動運転が完了したときにも、作業装置2の昇降装置8による作業位置P1での位置決め状態が維持される(
図16のS21)。このため、自動運転を完了したときの作業装置2の停止位置より先(前方)にある圃場の自動運転の予定外の未作業箇所(枕地E2b、E2c)に対して、その後ユーザが農業機械1を手動運転して作業装置2により農作業を行う際に、昇降装置8によって作業装置2を昇降させることなく、当該農作業を直ちに再開することができる。また、作業装置2の土壌K2に対する接触・離間の形跡V1が残らず、農作業(耕うん作業など)の仕上がりが悪くならず、手動運転の手順が増えることもない。
【0138】
また、第1農作業(耕うん作業など)を行う作業装置2がゴール位置Pgに到達して、農業機械1の自動運転が完了したときに、停止位置より先(前方)に自動運転の予定外の未作業箇所ではなく、農作業を行わない非作業箇所があれば、昇降装置8により作業装置2が上昇して非作業位置P2に位置決めされる(
図16のS17)。このため、その後ユーザが作業装置2を上昇させるための操作を行うことなく、農業機械1を手動運転して、農業機械1及び作業装置2を任意の場所に安定に移動させることができる。
【0139】
上述した実施形態では、農業機械1の自動運転中に、検出装置64により検出された圃場の端までの距離Dxが閾値Ds以下になると(
図12AのS6:YES)、農業機械1の走行と作業装置2による農作業を停止して(
図12BのS9、S12)、整地を含む農作業の当否に応じて、昇降装置8により作業装置2を非作業位置P3、P4に移動し(S10)、又は作業装置2の作業位置P1を維持する(S13)例を示した。然るに、走行ルートL1のうち、枕地エリアE1に作成された最終の作業ルートL1s(終端にゴール位置Pgが設定された最後の直進ルートL1s)以外の作業ルートL1a、L1sに基づいて農業機械1が自動走行しているときは、当該作業ルートL1a、L1sより外側(圃場の輪郭側)に枕地E2b、E2cが確保されているため、農業機械1が畔に接近することはない。このため、例えば
図17に示すように、農業機械1が動作してもよい。
【0140】
図17は、農業機械1の動作の他の例を示すフローチャートである。
図17において、農業機械1の自動運転を開始してから(S4)、検出装置64により検出された圃場の端までの距離Dxが閾値Ds以下になったときに(S6:YES)、自動制御部61が、このとき農業機械1(走行車体3)を自動で走行させるために基づいている自動操舵の基準の作業ルートを確認してもよい。そして、当該基準の作業ルートがゴール位置Pgと接続された走行ルートL1の最終の作業ルートL1s(枕地E2aに作成された最後の直進ルートL1s)である場合に(S23:YES)、自動制御部61が、
図12B又は
図16に示す処理S8で、整地を含む農作業の当否を確認し、当該確認結果に応じて農業機械1の走行と作業装置2による農作業を停止して(S9、S12)、昇降装置8により作業装置2を非作業位置P3、P4に移動し(S10)、又は作業装置2の作業位置P1を維持(S13)してもよい。
【0141】
なお、
図17の例では、農業機械1の自動操舵の基準の作業ルートが最終の作業ルートL1sでない場合には(S23:NO)、自動制御部61が、通常とは異なる所定の方法で農業機械1の走行と操舵を制御して補助的な農作業を作業装置2により実行し、又は農業機械1を旋回させる(S24)。この後は、処理S5から以降の処理を繰り返し実行する。
【0142】
また、例えば
図18に示すように、農業機械1の自動運転中に、作業装置2の昇降が必要な農作業を実行中であるか否かに応じて、作業装置2を作業位置又は非作業位置に位置
決めしてもよい。
図18は、農業機械1の動作の他の例を示すフローチャートである。詳しくは、
図18は、前述の
図12A又は
図17の続きのフローチャートである。
【0143】
図12Aにおいて、圃場の端までの距離Dxが閾値Ds以下になった場合(S6:YES)、又は
図17において、農業機械1の操舵制御の基準にしている作業ルートが最終の作業ルートL1sである場合(S23:YES)、自動制御部61は、作業装置2の昇降が必要な農作業を実行中であるか否かを確認する。このとき、散布作業などの作業装置2の昇降が不要な農作業を実行中である場合(S25:NO)、自動制御部61は、農業機械1の走行と作業装置2による農作業とを停止して(S9)、昇降装置8により作業装置2の現在位置を維持し(S26)、農業機械1の自動運転が途中終了(中止)した状態となる。この場合、作業装置2は、作業位置と非作業位置とが同一位置P3である散布装置2B(
図20)などであるため、現在の位置P3に位置決めされた状態となる。この後、自動制御部61は、作業装置2が作業位置且つ非作業位置である位置P3にある旨を通知部51gにより通知してもよいし、又は当該通知を省略してもよい。
【0144】
対して、耕うん作業などの作業装置2の昇降が必要な農作業を実行中である場合(S25:YES)、自動制御部61は、農業機械1の走行と作業装置2による農作業とを停止して(S12)、昇降装置8による作業装置2の作業位置P1での位置決め状態を維持し(S13)、農業機械1の自動運転が途中終了した状態となる。また、自動制御部61は、作業装置2が作業位置P1にある旨を通知部51gにより通知する(S14)。
【0145】
また、
図12A及び
図17において、圃場の端までの距離Dxが閾値Ds以下になることなく(S6:NO)、農業機械1及び作業装置2がゴール位置Pgに到達した場合にも(S7:YES)、自動制御部61は、作業装置2の昇降が必要な農作業を実行中であるか否かを確認する。ここで、耕うん作業などの作業装置2の昇降が必要な農作業を実行中である場合(
図18のS27:YES)、自動制御部61は、農業機械1の走行と作業装置2による農作業とを停止する(S16)。このとき、圃場に自動運転の予定内の未作業箇所が残っていないので、自動制御部61が、昇降装置8により作業装置2を非作業位置P2、P3、P4に位置決めし(S17)、農業機械1の自動運転が完了(全終了)した状態となる。また、自動制御部61は、作業装置2が非作業位置P2、P3、P4にある旨を、通知部51gと表示操作部52により通知する(S18)。
【0146】
対して、散布作業などの作業装置2の昇降が不要な農作業を実行中である場合(S27:NO)、自動制御部61は、農業機械1の走行と作業装置2による農作業とを停止して(S28)、昇降装置8により作業装置2の現在位置を維持し(S29)、農業機械1の自動運転が完了(全終了)した状態となる。即ち、作業装置2が散布装置2Bなどであるため、作業位置且つ非作業位置である位置P3に位置決めされた状態となる。この後、自動制御部61は、作業装置2が作業位置且つ非作業位置である位置P3にある旨を通知部51gにより通知してもよいし、又は当該通知を省略してもよい。また、圃場に自動運転の予定内の未作業箇所が残っていないため、圃場での農作業が終了する。或いは、圃場に自動運転の予定外の未作業箇所(枕地E2b、E2c)がある場合は、ユーザが農業機械1及び作業装置2を手動運転して、当該自動運転の予定外の未作業箇所に対して農作業を実施してもよい。
【0147】
図12A~
図18にそれぞれ示した一連の処理を、ユーザが、例えば所望する圃場における農作業の仕上がり精度、農作業の内容(種別)、又は作業装置2の仕様(種類)に応じて、実行するか否かを適宜選択できるようにしてもよい。また、当該選択用のスイッチ若しくはボタンなどの操作キーを、農業機械1の操作装置62又は又は農作業支援装置50の表示操作部52の表示画面に設けてもよい。
【0148】
図19A~
図21Bに、作業装置2の作業位置P1、P3、P5と非作業位置P2、P3、P4を例示したが、作業装置2の作業位置と非作業位置とはそれらに限らず、例えば作業装置2の種別、作業装置2の仕様、又は農作業の種別などによって、作業位置と非作業位置とをそれぞれ1つ以上設定してもよい。また、作業装置2の位置の通知は、農業機械1の自動運転の開始時、実行中、終了時、又は作業装置2の位置が変わった時などに、表示操作部52の画面に表示してもよい。
【0149】
以上説明した本実施形態の農業機械1及び農作業支援システム100は、以下の構成を備え、効果を奏する。
【0150】
本実施形態の農業機械1は、走行可能な走行車体3と、走行車体3の位置を検出する測位装置40と、走行車体3に対して作業装置2を昇降可能に連結する昇降装置8と、予め作成された走行ルートL1と測位装置40で検出された走行車体3の位置とに基づいて、走行車体を3走行させて作業装置2により圃場に対して農作業を行う自動運転を実行する自動制御部61と、を備え、昇降装置8は、自動運転の実行中に作業装置2を、農作業を行う高さ方向の所定の作業位置P1に位置決めし、自動制御部61は、圃場の未作業箇所J1の手前で、走行車体3又は作業装置2を停止させて、自動運転を終了しても、昇降装置8による作業装置2の作業位置P1への位置決め状態を維持する。
【0151】
本実施形態の農作業支援システム100は、農業機械1の位置を検出する測位装置40と、農業機械1に対して作業装置2を昇降可能に連結する昇降装置8と、予め作成された走行ルートL1と測位装置40で検出された農業機械1の位置とに基づいて、農業機械1を走行させて作業装置2により圃場に対して農作業を行う自動運転を実行する自動制御部61と、を備え、昇降装置8は、自動運転の実行中に作業装置2を、農作業を行う高さ方向の所定の作業位置P1に位置決めし、自動制御部61は、圃場の未作業箇所の手前で、農業機械1又は作業装置2を停止させて、自動運転を終了しても、昇降装置8による作業装置2の作業位置P1への位置決め状態を維持する。
【0152】
上記構成によれば、農業機械1の自動運転を終了した場合に、農業機械1又は作業装置2の手前に未作業箇所(圃場の自動運転の予定内の未作業箇所J1又は予定外の未作業箇所)があるときは、作業装置2が作業位置P1に位置決めされたままになるので、その後ユーザが農業機械1を手動運転して作業装置2により未作業箇所に対して農作業を行う際に、昇降装置8によって作業装置2を昇降させることなく、農作業を直ちに再開することができる。また、農業機械1の自動運転を終了してから手動運転を開始するまでに、昇降装置8により作業装置2を圃場の土壌K2に対して一旦離間させてから接触させることがないので、作業装置2の離間・接触の形跡V1が土壌K2に残らず、農作業の仕上がりが悪くなるのを防ぐことができる。さらに、当該形跡V1を消すために、手動運転で農業機械1及び作業装置2を自動運転の停止位置Pmから既作業箇所J2に後進させる必要がないので、手動運転の手順が増えることも防ぐことができる。これらの結果、圃場で農業機械1を自動運転して作業装置2により農作業を行った後に、農業機械1を手動運転して作業装置2により農作業を行う場合に、当該農作業の作業効率を向上させることが可能となる。
【0153】
本実施形態では、自動制御部61は、自動運転の実行中に、走行車体3及び作業装置2が走行ルートL1のゴール位置Pgに到達する前に、走行車体3の走行を停止して、自動運転を途中で終了しても、昇降装置8による作業装置2の作業位置P1への位置決め状態を維持する。これにより、農業機械1の自動運転を途中終了(中止)した場合に、作業装置2が作業位置P1に位置決めされたままになるので、その後ユーザが農業機械1を手動運転して作業装置2により未作業箇所J1に対して農作業を行う際に、農作業を直ちに再開することができ、作業効率を向上させることが可能となる。
【0154】
また、本実施形態では、走行ルートL1には、走行車体3を走行させながら作業装置2により農作業を行う複数の作業ルートL1a、L1sが含まれていて、自動制御部61は、自動運転を途中で終了しても、当該途中終了の前に走行車体3を走行させるために基づいていた基準のルートが、走行ルートL1の最終の作業ルートL1sであれば、昇降装置8による作業装置2の作業位置P1への位置決め状態を維持する。これにより、走行ルートL1に基づく自動運転が完了するゴール位置Pgの手前で農業機械1の自動運転を途中終了した場合に、作業装置2が作業位置P1に位置決めされたままになるので、その後ユーザが農業機械1を手動運転して作業装置2により未作業箇所J1に対して農作業を行う際に、農作業を直ちに再開することができ、作業効率を向上させることが可能となる。
【0155】
また、本実施形態では、農業機械1及び農作業支援システム100は、走行車体3(農業機械1)から走行車体3の進行方向における圃場の端までの距離Dxを検出する検出装置64を備え、自動制御部61は、自動運転の実行中に、検出装置64により検出された距離Dxが所定の閾値Ds以下になると、走行車体3の走行を停止して、自動運転を途中で終了する。これにより、農業機械1の自動運転中に、農業機械1又は作業装置2が圃場から越境することを防ぐことができる。また、自動運転を途中終了したことで生じた未作業箇所J1に対して、その後ユーザが農業機械1を手動運転して農作業を直ちに再開することができ、作業効率を向上させることが可能となる。
【0156】
また、本実施形態では、自動制御部61は、自動運転の終了後から、手動運転で走行車体3の走行と作業装置2による農作業とが再開されるまで、昇降装置8による作業装置2の作業位置P1への位置決め状態を維持する。これにより、農業機械1の自動運転を終了してから、手動運転を開始するまでに、作業装置2が昇降装置8により昇降して、圃場の土壌K2に一旦離間してから接触することを確実に防いで、農作業の仕上がりを良好にすることができる。
【0157】
また、本実施形態では、自動制御部61は、自動運転を終了する前に行っていた農作業が圃場の整地を含む第1農作業である場合には、自動運転を終了しても、昇降装置8による作業装置2の作業位置P1への位置決め状態を維持し、自動運転を終了する前に行っていた農作業が圃場の整地を含まない第2農作業である場合には、自動運転を終了したときに、第2農作業を行わない所定の非作業位置P3、P4に作業装置2を昇降装置8により位置決めする。
【0158】
上記により、圃場で整地を含む第1農作業を、農業機械1を自動運転して作業装置2で行った後に、さらに農業機械1を手動運転して作業装置2により農作業を行う場合に、昇降装置8により作業装置2を移動させる必要がないので、第1農作業の作業効率を向上させ、且つ第1農作業の仕上がりを良好にすることができる。また、圃場で農業機械1を自動運転して、整地を含まない第2農作業を終了した場合に、作業装置2を非作業位置P3、P4に位置決めすることで、その後ユーザが昇降装置8により作業装置2を非作業位置P3、P4に移動させる必要がないので、農業機械1を直ちに手動運転して、次に第2農作業を行う箇所などの任意の場所に農業機械1及び作業装置2を安定に移動させることができる。
【0159】
また、本実施形態では、自動制御部61は、自動運転による走行車体3の走行が停止したときに、当該停止位置Pmが圃場の未作業箇所J1の手前でない場合には、農作業を行わない所定の非作業位置P2に作業装置2を昇降装置8により位置決めする。これにより、その後ユーザが農業機械1を直ちに手動運転して、次に農作業を行う箇所などの任意の場所に農業機械1及び作業装置2を安定に移動させることができる。
【0160】
また、本実施形態では、農業機械1及び農作業支援システム100は、作業装置2の高さ方向の位置を通知する通知部51gを備える。これにより、ユーザは作業装置2の位置を容易に認識して、農業機械1の手動運転を行って、作業装置2により農作業を適切に行ったり、農業機械1及び作業装置2を適切に移動させたりすることができる。
【0161】
また、本実施形態では、自動制御部61は、作業装置2が圃場の整地を含む第1農作業を行う第1作業装置である場合、昇降装置8により第1作業装置を下降させて、第1作業装置を圃場の土壌K2に接触させて第1農作業を行う作業位置P1に位置させ、昇降装置8により第1作業装置を上昇させて、第1作業装置を圃場の土壌K2から離間させて第1農作業を行わない所定の非作業位置P2に位置させる。
【0162】
上記により、整地を含む第1農作業を行うための農業機械1の自動運転を終了してから、当該農業機械1の手動運転を開始するまでに、昇降装置8により作業装置2を作業位置P1に位置決めした状態を維持することで、その後農業機械1を手動運転して作業装置2により第1農作業を再開する際に、昇降装置8により作業装置2を下降させる必要がなく、農作業を直ちに再開して、作業効率を向上させることができる。また、作業装置2の昇降による土壌K2への離間・接触の形跡V1が土壌K2に残らず、第1農作業の仕上がりが悪くなるのを防ぐことができる。さらに、昇降装置8で第1作業装置を上昇させて、土壌K2から離間する非作業位置P2に位置決めした状態で、農業機械1を手動運転することで、農業機械1及び第2作業装置を安定に移動させることができる。
【0163】
また、本実施形態では、作業装置2が圃場の整地を含まない第2農作業を行う第2作業装置である場合、第2作業装置は、圃場の土壌K2に対して接触若しくは離間して第2農作業を行う作業位置、又は圃場の土壌K2から離間して第2農作業を行わない所定の非作業位置に、昇降装置8により位置決めされる。これにより、昇降装置8で第2作業装置を作業位置P3、P5に位置決めして、農業機械1を自動運転又は手動運転することで、圃場の整地を含まない第2農作業を行うことができる。また、昇降装置8で第2作業装置を非作業位置P3、P4に位置決めして、農業機械1を手動運転することで、農業機械1及び第2作業装置を安定に移動させることができる。
【0164】
また、本実施形態では、自動制御部61は、自動運転を終了する前に、作業装置2の昇降が必要な農作業を実行していた場合には、自動運転を終了しても、昇降装置8による作業装置2の作業位置P1への位置決め状態を維持し、作業装置2の昇降が不要な農作業を実行していた場合には、自動運転を終了したときに、作業装置2の高さ方向の位置P3を昇降装置8により維持する。これにより、圃場で作業装置2の昇降が必要な農作業を、農業機械1を自動運転して作業装置2で行った後、さらに農業機械1を手動運転して作業装置2により農作業を行う場合に、昇降装置8により作業装置2を移動させる必要がないので、第1農作業の作業効率を向上させ、且つ第1農作業の仕上がりを良好にすることができる。また、圃場で農業機械1を自動運転して、作業装置2の昇降が不要な農作業を終了した場合にも、昇降装置8により作業装置2を移動させる必要がないので、その後ユーザが農業機械1を直ちに手動運転して、任意の場所に農業機械1及び作業装置2を移動させることができる。
【0165】
また、本実施形態では、作業装置2には、圃場の整地を含む第1農作業を行う第1作業装置が含まれ、第1農作業には、耕うん作業が含まれ、第1作業装置には、耕うん装置2Aが含まれている。これにより、農業機械1の自動運転を終了した場合に、自動制御部61が、昇降装置8により耕うん装置2Aを作業位置P1に位置決めした状態を維持することで、その後ユーザが農業機械1を手動運転して、耕うん装置2Aにより即座に耕うん作業を再開することができ、作業効率を向上させて、耕うん作業の仕上がりを良好にすることが可能となる。
【0166】
さらに、本実施形態では、作業装置2には、圃場の整地を含まない第2農作業を行う第2作業装置が含まれ、第2農作業には、散布作業と粗耕起作業が含まれ、第2作業装置には、散布装置2Bと粗耕起装置が含まれている。粗耕起作業のような第2農作業では、粗耕起装置のような第2作業装置が圃場の土壌K2に対して一旦離間してから接触して、その形跡が土壌K2に残っても、第2農作業の仕上がりに影響がない。また、散布作業のような第2農作業は、散布装置2Bのような第2作業装置が圃場の土壌K2から離間した状態で行われるので、第2作業装置の形跡が土壌K2に残らない。そのため、農業機械1の自動運転を終了した場合に、自動制御部61が、昇降装置8により第2作業装置を非作業位置P3、P4に位置決めすることで、その後ユーザが農業機械1を手動運転して任意の場所に直ちに安定に移動させることができる。
【0167】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0168】
1 農業機械
2 作業装置
2A 耕うん装置(第1作業装置)
2B 散布装置(第2作業装置)
2C 粗耕起装置(第2作業装置)
3 走行車体
8 昇降装置
40 測位装置
64 検出装置
51g 通知部
61 自動制御部
100 農作業支援システム
Dx 距離
L1 走行ルート
L1a、L1s 作業ルート
P1、P3、P5 作業位置
P2、P3、P4 非作業位置
J1 圃場の自動運転の予定内の未作業箇所