(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】対象のグローバル感度パラメータの値を決定する方法、この値を使用する方法及び前記値を決定するためのシステム
(51)【国際特許分類】
G02C 13/00 20060101AFI20241209BHJP
G02C 7/02 20060101ALI20241209BHJP
A61B 3/103 20060101ALI20241209BHJP
A61B 3/028 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G02C13/00
G02C7/02
A61B3/103
A61B3/028
(21)【出願番号】P 2021503068
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2019069472
(87)【国際公開番号】W WO2020016398
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-02-09
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジルダ・マラン
(72)【発明者】
【氏名】マルタ・エルナンデス-カスタニェーダ
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・カリクスト
(72)【発明者】
【氏名】アデール・ロンゴ
(72)【発明者】
【氏名】シリル・ギユー
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/099135(WO,A1)
【文献】特開2004-283271(JP,A)
【文献】国際公開第2010/035726(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/015381(WO,A2)
【文献】特表2017-531827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 13/00
G02C 7/02
A61B 3/103
A61B 3/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人のグローバル感度パラメータの値を決定する方法であって、前記グローバル感度パラメータは、前記個人の少なくとも一方の眼の前に配置された少なくとも眼科用レンズの少なくとも屈折光学的特徴の変化に対する前記個人の感度に関連し、前記方法は、以下のステップ:
a)少なくとも第1の眼科用レンズの第1の屈折光学的特徴の変化に対する前記個人の前記感度に対して、前記個人の少なくとも第1の感度パラメータの単一値を決定するステップ(100)、
b)少なくとも第2の眼科用レンズの第2の屈折光学的特徴の変化に対する前記個人の前記感度に対して、前記個人の少なくとも第2の感度パラメータの単一値を決定するステップ(110)であって、前記第1及び第2の感度パラメータのそれぞれは、前記個人によって知覚され得る前記第1及び第2の屈折光学的特徴の最小の変化にそれぞれ関連する、ステップ(110)、
c)計算手段を使用して、前記第1の感度パラメータの単一値及び前記第2の感度パラメータの単一値の組み合わせに基づいて、前記グローバル感度パラメータの値を決定するステップ(120)、
を含み、
- ステップa)及びb)中に、前記個人の左眼及び右眼のそれぞれの球面感度の単一値と、前記個人の球面両眼感度の単一値と、は決定され、及び
- ステップc)において、前記決定されたグローバル感度パラメータの前記値は、前記左眼及び右眼の球面感度の前記単一値と前記球面両眼感度の前記単一値との平均値に等しいグローバル球面感度パラメータの前記値である、方法。
【請求項2】
ステップa)及びb)で決定された少なくとも前記第1及び第2の感度パラメータは、
- 前記個人の眼の少なくとも一方に関する、少なくとも前記第1又は第2の眼科用レンズの球面の前記変化に対する球面感度、
- 前記個人の眼の少なくとも一方に関する、少なくとも前記第1又は第2の眼科用レンズの円柱度数及び/又は軸の前記変化に対する円柱及び/又は軸感度、
- 前記第1及び第2の眼科用レンズの前記球面の両眼変化に対する前記個人の球面両眼感度、
- 前記第1及び第2の眼科用レンズの両眼バランスの変化に対する前記個人の両眼バランス感度、
- 前記個人の眼の少なくとも一方に関する、少なくとも前記第1又は第2の眼科用レンズの加入度の前記変化に対する加入度感度、
の少なくとも1つをそれぞれ含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)及びb)で決定された少なくとも第1及び第2の感度パラメータの前記単一値は、それぞれ異なる測定方法で決定されるか、又はそれぞれ同様の測定条件で、若しくは異なる測定条件で決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップc)において、前記組み合わせは、ステップa)及びb)中に決定された前記第1及び第2の感度パラメータの前記単一値の平均を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)及びb)中に決定された前記第1及び第2の感度パラメータの前記単一値は、
- 前記左眼及び右眼のそれぞれの円柱感度の単一値、又は
- 前記左眼及び右眼のそれぞれの軸感度の単一値、又は
- 前記左眼及び右眼のそれぞれの非点収差感度の単一値、
- 前記左眼及び右眼の一方の球面、円柱、軸及び両眼バランス感度の単一値、
のいずれかであり、及び
ステップc)において、前記決定されたグローバル感度パラメータの前記値は、それぞれ、
- 前記左眼及び右眼の前記円柱感度の前記単一値の平均値に等しいグローバル円柱感度パラメータの前記値、又は
- 前記左眼及び右眼の前記軸感度の前記単一値の平均値に等しいグローバル軸感度パラメータの前記値、又は
- 前記左眼又は右眼の前記球面、円柱、軸及び両眼バランス感度の前記単一値の平均値に等しい左眼又は右眼のグローバル感度パラメータの値、
である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)及びb)中、以下:
- 左眼及び右眼のそれぞれの球面感度の単一値、及び
- 前記左眼及び右眼のそれぞれの円柱感度の単一値、及び
- 前記左眼及び右眼のそれぞれの軸感度の単一値、及び
- 前記個人の球面両眼感度の値、及び
- 前記個人の両眼バランス感度の値、
は決定され、及び
ステップc)において、最終的なグローバル感度パラメータSoverallの値は、以下の式:
Soverall=[(SsphOD+SsphOG+Ssphbino)/3+(ScylOD+ScylOG)/2+(SaxisOD+SaxisOG)/2+Seqbino]/4
で決定され、
ここで、Soverallは最終的なグローバル感度パラメータであり、
SsphOD及びSsphOGは、左眼及び右眼のそれぞれの球面感度の単一値であり、
Ssphbinoは、前記個人の球面両眼感度の値であり、
ScylOD及びScylOGは、左眼及び右眼のそれぞれの円柱感度の単一値であり、
SaxisOD及びSaxisOGは、左眼及び右眼のそれぞれの軸感度の単一値であり、
Seqbinoは前記個人の両眼バランス感度の値である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
- アイケア施術者に通知するために前記グローバル感度パラメータの前記値を表示するステップ
を更に含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
個人の視力を改善するように適合された眼科用レンズの適合された屈折光学的特徴を決定する方法であって、以下のステップ:
- テストプロトコルであって、
- 前記個人の眼の前にテストレンズを配置する繰り返しステップ、
- 前記テストレンズを通して見ている前記個人の視力の品質を評価する繰り返しステップであって、前記テストレンズの前記屈折光学的特徴の値は、前記ステップの各繰り返し間で増分値によって増大される、繰り返しステップ、
- 前記テストプロトコルの前記ステップの2つの連続する繰り返し中、前記個人の前記眼の前に配置された少なくとも2つの連続するテストレンズを通して見ている前記個人の前記視力の品質を比較し、且つ前記比較に基づいて、前記適合された屈折光学的特徴を決定する繰り返しステップ、
- 請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法に従って個人のグローバル感度パラメータの値を決定する繰り返しステップ、
- 前記グローバル感度パラメータの前記値を考慮して、前記増分値を決定する繰り返しステップ、
を含むテストプロトコルを実行するステップ
を含む方法。
【請求項9】
所定の光学設計のリストの中から、個人の視力を改善するように適合された眼科用レンズのための適切な光学設計を選択する方法であって、前記光学設計は、前記眼科用レンズが前記個人によって着用されるときの前記個人の複数の視線方向に関連付けられている、前記所定の光学設計を有する対応するレンズの少なくとも1つの屈折光学的特徴の現在値を含み、前記方法は、以下のステップ:
- 請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法に従って個人のグローバル感度パラメータの値を決定するステップ、
- 前記個人の前記視力を改善するように適合された前記屈折光学的特徴の適合値を決定するステップ、
- 異なる視線方向について、前記対応するレンズの前記屈折光学的特徴の前記現在値と、前記屈折光学的特徴の前記適合値との間の差異を決定するステップ、
- 前記差異を前記個人の前記グローバル感度パラメータの前記値と比較するステップ、
- 前記所定の光学設計のリストの中から、前記比較を考慮して前記適切な光学設計を選択するステップ、
を含む、方法。
【請求項10】
眼科用レンズの所定の光学設計を、それを個人の視力に適合させるために修正する方法であって、前記光学設計は、前記眼科用レンズが前記個人によって着用されるときの前記個人の複数の視線方向に関連付けられている、前記所定の光学設計を有する対応するレンズの少なくとも1つの屈折光学的特徴の現在値を含み、前記方法は、以下のステップ:
- 請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法に従って個人のグローバル感度パラメータの値を決定するステップ、
- 前記個人の前記視力を改善するように適合された前記屈折光学的特徴の適合値を決定するステップ、
- いくつかの視線方向について、対応するレンズの前記屈折光学的特徴の前記現在値と、前記屈折光学的特徴の前記適合値との間の差異を決定するステップ、
- 前記差異を前記個人の前記グローバル感度パラメータの前記値と比較するステップ、
- 前記比較を考慮して、前記レンズの前記所定の光学設計を修正することにより、修正された対応するレンズのための修正された光学設計を決定するステップ、
を含む、方法。
【請求項11】
個人のグローバル感度パラメータの値を決定するためのシステムであって、前記グローバル感度パラメータは、前記個人の少なくとも一方の眼の前に配置された少なくとも眼科用レンズの少なくとも屈折光学的特徴の変化に対する前記個人の感度に関連し、前記システムは、
- 少なくとも第1の眼科用レンズの第1の屈折光学的特徴の変化に対する前記個人の前記感度に対して、前記個人の少なくとも第1の感度パラメータの単一値を決定するための手段、
- 少なくとも第2の眼科用レンズの第2の屈折光学的特徴の変化に対する前記個人の前記感度に対して、前記個人の少なくとも第2の感度パラメータの単一値を決定するための手段、
- 前記第1の感度パラメータの単一値及び前記第2の感度パラメータの単一値の組み合わせに基づいて、前記グローバル感度パラメータの値を決定するようにプログラムされた計算手段、
を含み、
前記個人の少なくとも第1の感度パラメータの前記単一値、及び、前記個人の少なくとも第2の感度パラメータの前記単一値は、前記個人の左眼及び右眼のそれぞれの球面感度の単一値と前記個人の球面両眼感度の単一値とに対応し、
決定された前記グローバル感度パラメータの前記値は、前記左眼及び右眼のそれぞれの球面感度の単一値と前記球面両眼感度の単一値との平均値に等しいグローバル球面感度パラメータの値である、システム。
【請求項12】
- 前記計算手段によって決定された前記グローバル感度パラメータの前記値を記憶するための手段、及び/又は
- 前記計算手段によって決定された前記グローバル感度パラメータの前記値を表示するための手段、
を更に含む、請求項
11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象のグローバル感度パラメータの値を決定する方法に関する。
【0002】
本発明は、対象の視力を改善するように適合された眼科用レンズの光学的特徴を決定する方法、対象のグローバル感度パラメータの値をアイケア施術者に通知する方法、対象の視力を改善するように適合された眼科用レンズの適切な光学設計を選択する方法及び前記対象のグローバル感度パラメータのこの値を考慮して、眼科用レンズの所定の光学設計を、それを対象の視力に適合させるために修正する方法にも関する。
【0003】
本発明は、この方法を実行するためのシステムにも関する。
【背景技術】
【0004】
特許文献1は、対象の一方の眼の特定の感度パラメータの単一値を決定する方法を記載している。これらの単一の特定の感度パラメータは、この眼の前に配置されたレンズの特定の光学的特徴の変化に対する対象の眼の感度に関連する。
【0005】
この単一の特定の感度パラメータは、対象によって知覚され得る特定の光学的特徴の最小の変化に関連する。
【0006】
実際には、それは、許容可能であり得るか、又は対象が、ずれがより良いかを決定できない特定の光学的特徴の値の範囲として定義され得る。
【0007】
球面、円柱又は軸、加入度などの異なる特定の光学的特徴及び対象の各眼に対して決定された特定の感度パラメータの単一値は、異なる場合がある。更に、決定された単一値は、測定の不確実性に直面し得る。
【0008】
したがって、これらの特定の感度パラメータの単一値に基づいて、この対象の視力を改善するように適合されたレンズの対応する光学的特徴の決定時の誤差に対する、又はこの対象の視力を改善するように適合された光学的特徴を有するレンズの光学収差に対する対象の感度に関する一般的な情報を推測することは、不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2018/015381号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第20160331226号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017027435号明細書
【文献】国際公開第2017/021663号パンフレット
【文献】PCT/欧州特許出願公開第2018/061207号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】FAUQUIER C.、BONNIN T.、MIEGE C.、ROLAND E.による「Influence of Combined Power Error and Astigmatism on Visual Acuity」.Ophthalmic and Visual Optics Technical Digest,(Optical Society of America,Washington,D.C.),Vol.1,p.151-154,1995.
【文献】Ralf Blendowskeによる「Unaided Visual Acuity and Blur:A Simple Model」又はJose A.Gomez-Pedreroによる「Phenomenological model of visual acuity」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の1つの目的は、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも光学的特徴の変化に対する対象の感度のグローバル評価を提供する、グローバル感度パラメータの信頼できる値を決定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
信頼できるということは、グローバル感度パラメータの値が対象の感度をより良く表すことを意味する。それらは、より再現性がある。
【0013】
上記の目的は、対象のグローバル感度パラメータの値を決定する方法を提供することによって本発明に従って達成され、前記グローバル感度パラメータは、前記対象の少なくとも一方の眼の前に配置された少なくとも眼科用レンズの少なくとも屈折光学的特徴の変化に対する前記対象の感度に関連し、方法は、以下のステップ:
a)少なくとも第1の眼科用レンズの第1の屈折光学的特徴の変化に対する対象の感度に対して、前記対象の少なくとも第1の感度パラメータの単一値を決定するステップ、
b)少なくとも第2の眼科用レンズの第2の屈折光学的特徴の変化に対する対象の感度に対して、前記対象の少なくとも第2の感度パラメータの単一値を決定するステップであって、第1及び第2の感度パラメータのそれぞれは、対象によって知覚され得る前記第1及び第2の屈折光学的特徴の最小の変化にそれぞれ関連する、ステップ、
c)計算手段を使用して、第1及び第2の感度パラメータの前記単一値の組み合わせを考慮して、グローバル感度パラメータの前記値を決定するステップ
を含む。
【0014】
そのように決定されたグローバルパラメータの値は、第1及び第2の感度パラメータの単一値よりも対象の感度を評価するうえで信頼できる。その値は、
- 同じ又は異なる環境条件における、この眼の前に配置された1つのレンズの1つ以上の光学的特徴の変化に対する一方の眼のグローバル感度、
- 同じ又は異なる環境条件における、一方の眼の前に配置された各レンズの1つ以上の光学的特徴の独立した変化に対する両方の眼のグローバル感度、
- 同じ又は異なる環境条件における、両方の眼の前に配置された2つのレンズの1つ以上の光学的特徴の変化に対する両方の眼のグローバル感度
のいずれかを反映し得る。
【0015】
最後の場合、変化は、絶対的又は相対的であり得、両方のレンズのそれぞれの対応する光学的特徴の変化又は両方のレンズの光学的特徴間の差異の変化であり得る。
【0016】
グローバル感度パラメータの値は、処理チェーン全体:屈折の決定、屈折テストプロトコル中の対象に提案するための最良の次の視覚テストの決定、必要となる矯正の処方、眼鏡店での製造及び/又は縁取り/納品までの仕上げ、対象の頭部でのフレームの調整中のトレランスとして考慮され得、最終的に更新/視覚的チェック頻度をアドバイスするために使用され得る。
【0017】
フレームを選択する際、適切なパントスコピック角度、ラップ角度などを選択することにより、グローバル感度パラメータの値も考慮し得る。
【0018】
これは、困難な課題(弱視、強優位性、不同視など)を有する患者の場合、患者に自らの特定の課題に最も適合した処方を与えるための、アイケア施術者に対する意思決定支援になる。
【0019】
本発明による方法の他の有利且つ非限定的な特徴は、以下の通りである:
- ステップa)及びb)で決定された前記少なくとも第1及び第2の感度パラメータは、
- 前記対象の少なくとも一方の眼に関する、前記少なくとも第1又は第2の眼科用レンズの球面の変化に対する球面感度、
- 対象の少なくとも一方の眼に関する、前記少なくとも第1又は第2の眼科用レンズの円柱度数及び/又は軸の変化に対する円柱及び/又は軸感度、
- 第1及び第2の眼科用レンズの球面の両眼変化に対する前記対象の球面両眼感度、
- 第1及び第2の眼科用レンズの両眼バランスの変化に対する対象の両眼バランス感度、
- 対象の少なくとも一方の眼に関する、前記少なくとも第1又は第2の眼科用レンズの加入度の変化に対する加入度感度
の少なくとも1つをそれぞれ含み、
- ステップa)及びb)で決定された少なくとも第1及び第2の感度パラメータの前記単一値は、それぞれ異なる測定方法で決定されるか、又はそれぞれ類似した若しくは異なる測定条件で決定され、
- ステップc)において、前記組み合わせは、ステップa)及びb)中に決定された第1及び第2の感度パラメータの単一値の平均を含み、
- ステップa)及びb)中に決定された第1及び第2の感度パラメータの単一値は、
- 左眼及び右眼のそれぞれの円柱感度(ScylOG、ScylOD)の単一値、又は
- 左眼及び右眼のそれぞれの軸感度(SaxisOG、SaxisOD)の単一値、又は
- 左眼及び右眼のそれぞれの非点収差感度(Sasr、SJ0、SxJ0、SJ45、SxJ45)の単一値、
- 左眼(SsphOG、ScylOG、SaxisOG、Seqbino)及び右眼(SsphOD、ScylOD、SaxisOD、Seqbino)の一方の球面、円柱、軸及び両眼バランス感度の単一値
のいずれかであり、及び
ステップc)において、決定されたグローバル感度パラメータの値は、それぞれ、
- 左眼及び右眼の円柱感度の単一値の平均値に等しいグローバル円柱感度パラメータ(Sgcyl)の値、又は
- 左眼及び右眼の軸感度の単一値の平均値に等しいグローバル軸感度パラメータ(Sgaxis)の値、又は
- 左眼又は右眼の球面、円柱、軸及び両眼バランス感度の単一値の平均値に等しい、左眼又は右眼のグローバル感度パラメータ(SgOG、SgOD)の値
であり、
- ステップa)及びb)中、対象の左眼及び右眼のそれぞれの球面感度(SsphOG、SsphOD)の単一値と、前記対象の球面両眼感度(Sphbino)の単一値とは、決定され、ステップc)において、決定されたグローバル感度パラメータの値は、左眼及び右眼の球面感度並びに球面両眼感度の単一値の平均値に等しいグローバル球面感度パラメータ(Sgsph)の値であり、
- ステップa)及びb)中、以下:
- 左眼及び右眼のそれぞれの球面感度(SsphOD、SsphOG)の単一値、及び
- 左眼及び右眼のそれぞれの円柱感度(ScylOD、ScylOG)の単一値、及び
- 左眼及び右眼のそれぞれの軸感度(SaxisOD、SaxisOG)の単一値、及び
- 前記対象の球面両眼感度(Ssphbino)の値、及び
- 前記対象の両眼バランス感度(Seqbino)の値
は、決定され、及び
ステップc)において、最終的なグローバル感度パラメータSgfinalの値は、以下の式:
Soverall=[(SsphOD+SsphOG+Ssphbino)/3+(ScylOD+ScylOG)/2+(SaxOD+SaxOG)/2+Seqbino]/4
で決定され、
- ステップc)において、前記組み合わせは、ステップa)及びb)中に決定された第1及び第2の感度パラメータの単一値の加重平均値を含み、第1及び第2の感度パラメータの値に関連付けられた重みは、
- 対象の通常の視覚的行動、及び/又は
- 対象によって着用されているレンズのタイプ、及び/又は
- 対象がレンズを用いて有することを望む活動、及び/又は
- 眼優位性データ、及び/又は
- 対象によって着用されている現在/以前のレンズの快適さの評価、及び/又は
- 光学矯正機器について以前の処方で示されたデータ
に依存し、
- 方法は、アイケア施術者に通知するためにグローバル感度パラメータのこの値を表示するステップを更に含み、
- ステップa)及びb)中、対象の両眼バランス感度の値は、決定され、ステップc)において、最終的なグローバル感度パラメータの値は、グローバル球面感度パラメータの値、グローバル円柱感度パラメータ及びグローバル軸感度パラメータの平均値並びに両眼バランス感度の値として決定され、
- ステップc)において、第1及び第2の感度パラメータの前記値の前記組み合わせは、ステップa)及びb)中に決定された第1及び第2の感度パラメータの値の加重平均値を含み、及び
- 前記重みは、対象の非利き眼に対するパラメータの値に関連付けられた重みよりも、対象の利き眼に対するパラメータの値について高いか、又は
- 対象が累進焦点レンズの対象である場合、各眼の円柱感度及び軸感度の値の前記重みは、各眼の球面感度の値に関連付けられた重みよりも高い。
【0020】
本発明は、近距離、中間距離及び/又は遠距離において対象の視力を改善するように適合された眼科用レンズの適合された光学的特徴を決定する方法にも関し、方法は、以下のステップ:
- テストプロトコルであって、
- 対象の眼の前にテストレンズを配置する繰り返しステップ、
- 前記テストレンズを通して見ている対象の視力の品質を評価する繰り返しステップであって、テストレンズの屈折光学的特徴の値は、前記ステップの各繰り返し間で増分値によって増大される、繰り返しステップ、
- テストプロトコルの前記ステップの2つの連続する繰り返し中、対象の眼の前に配置された少なくとも2つの連続するテストレンズを通して見ている対象の視力の品質を比較し、且つこの比較に基づいて、前記適合された屈折光学的特徴を決定する繰り返しステップ、
- 上述の方法に従って対象のグローバル感度パラメータの値を決定する繰り返しステップ、
- グローバル感度パラメータのこの値を考慮して、前記増分値を決定する繰り返しステップ
を含むテストプロトコルを実行するステップ
を含む。
【0021】
任意選択的に、前記増分値は、この増分値とグローバル感度パラメータの値との間の差異を最小化するように決定される。
【0022】
本発明は、所定の光学設計のリストの中から、対象の視力を改善するように適合された眼科用レンズのための適切な光学設計を選択する方法にも関し、前記光学設計は、レンズが前記対象によって着用されるときの対象の複数の視線方向に関連付けられている、前記所定の光学設計を有する対応するレンズの少なくとも1つの屈折光学的特徴の現在値を含み、方法は、以下のステップ:
- 上述の方法に従って対象のグローバル感度パラメータの値を決定するステップ、
- 対象の視力を改善するように適合された前記屈折光学的特徴の適合値を決定するステップ、
- 異なる視線方向について、対応するレンズの屈折光学的特徴の現在値と、前記屈折光学的特徴の適合値との間の差異を決定するステップ、
- この差異を対象のグローバル感度パラメータの値と比較するステップ、
- 所定の光学設計の前記リストの中から、この比較を考慮して適切な光学設計を選択するステップ
を含む。
【0023】
この方法は、
- 前記差異が対象のグローバル感度パラメータの値よりも小さい、前記所定の光学設計の領域を決定すること、
- 少なくとも1つの所定の方向でより大きいサイズの領域を有し、且つ/又は所定の形状により近い形状を有する光学設計を選択することにより、適切な光学設計を選択すること
を更に含み得る。
【0024】
本発明は、眼科用レンズのための所定の光学設計を、それを対象の視力に適合させるために修正する方法にも関し、前記光学設計は、レンズが前記対象によって着用されているときの対象の複数の視線方向に関連付けられている、前記所定の光学設計を有する対応するレンズの少なくとも1つの屈折光学的特徴の現在値を含み、方法は、以下のステップ:
- 上述の方法に従って対象のグローバル感度パラメータの値を決定するステップ、
- 対象の視力を改善するように適合された前記屈折光学的特徴の適合値を決定するステップ、
- いくつかの視線方向について、対応するレンズの屈折光学的特徴の現在値と、前記屈折光学的特徴の適合値との間の差異を決定するステップ、
- この差異を対象のグローバル感度パラメータの値と比較するステップ、
- この比較を考慮して、レンズの前記所定の光学設計を修正することにより、修正された対応するレンズのための修正された光学設計を決定するステップ
を含む。
【0025】
この方法は、
- 前記差異が対象のグローバル感度パラメータの値よりも小さい、前記所定の光学設計の領域を決定すること、
- 前記差異が対象のグローバル感度パラメータの値よりも小さい、修正された光学設計の修正された領域が、所定の光学設計における前記領域のサイズと比較して大きくなるように、且つ/又は所定の形状により近い形状を有するように、前記修正された光学設計を決定すること
を更に含み得る。
【0026】
本発明は、対象のグローバル感度パラメータの値を決定するためのシステムにも関し、前記グローバル感度パラメータは、前記対象の少なくとも一方の眼の前に配置された少なくとも眼科用レンズの少なくとも屈折光学的特徴の変化に対する前記対象の感度に関連し、システムは、
- 少なくとも第1の眼科用レンズの第1の屈折光学的特徴の変化に対する対象の感度に対して、前記対象の少なくとも第1の感度パラメータの単一値を決定するための手段、
- 少なくとも第2の眼科用レンズの第2の屈折光学的特徴の変化に対する対象の感度に対して、前記対象の少なくとも第2の感度パラメータの単一値を決定するための手段、
- 第1及び第2の感度パラメータの前記単一値の組み合わせを考慮して、グローバル感度パラメータの前記値を決定するようにプログラムされた計算手段
を含む。
【0027】
本発明は、
- 計算手段によって決定されたグローバル感度パラメータの前記値を記憶するための手段、及び/又は
- 計算手段によって決定されたグローバル感度パラメータの前記値を表示するための手段
を更に含み得る。
【0028】
以下の説明は、非限定的な例としてとらえるべき共同の図面で強化されており、本発明を理解し、それをどのように実現できるかを理解するのに役立つであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の方法の例に従ってグローバル感度パラメータを決定するためのステップを概略的に示すブロック図である。
【
図2】特定の感度パラメータの単一値を決定するために使用される光学的特徴の値に対する、対象の確実性確率関数のグラフである。
【
図3】異なるグローバル感度パラメータの値を表示する異なる方法を示す図である。
【
図4】異なるグローバル感度パラメータの値を表示する異なる方法を示す図である。
【
図5】異なるグローバル感度パラメータの値を表示する異なる方法を示す図である。
【
図6】異なるグローバル感度パラメータの値を表示する異なる方法を示す図である。
【
図7】レンズのための3つの異なる標準の所定の光学設計の概略図である。
【
図8】単焦点眼科用レンズの平均度数、サジタル度数及びタンジェンシャル度数を、標準的な所定の光学設計を有する対象の視力角度の関数として示すグラフである。
【
図9】単焦点眼科用レンズの平均度数、サジタル度数、タンジェンシャル度数を対象の視力角度の関数として示すグラフであり、球面変化に対するグローバル感度が高く、円柱変化に対するグローバル感度低い対象に対して光学設計が修正されている。
【
図10】単焦点眼科用レンズの平均度数、サジタル度数、タンジェンシャル度数を対象の視力角度の関数として示すグラフであり、円柱変化に対するグローバル感度が高く、球面変化に対するグローバル感度低い対象に対して光学設計が修正されている。
【
図11】平均度数、サジタル度数及びタンジェンシャル度数を単焦点眼科用レンズの対象の視力角度の関数として示すグラフであり、円柱変化及び球面変化に対してグローバル感度が高い対象に対して光学設計が修正されている。
【
図12】平均度数、サジタル度数及びタンジェンシャル度数を多焦点眼科用レンズの対象の垂直視力角度アルファ(垂直偏角視線角度とも呼ばれる)の関数として示すグラフであり、低い(破線及び細い実線)又は高い(点線及び太い実線)グローバル感度を有する対象に対して光学設計が修正されている。
【
図13】
図12の光学設計を有するレンズの同じ平均度数の線を示すグラフであり、低い(破線)又は高い(実線)グローバル感度を有する対象に対して光学設計が修正されている。
【
図14】
図12の光学設計を有するレンズの同じ不要な非点収差の線を示すグラフであり、低い(破線)又は高い(実線)グローバル感度を有する対象に対して光学設計が修正されている。
【
図15】J0、J45ベクトルベースでのレンズの円柱度数及び軸値の分解を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、対象の少なくとも一方の眼のグローバル感度パラメータの値を決定する方法の一実施形態に従って実行されるステップの概略ブロック図を示している。このグローバル感度パラメータは、少なくとも眼科用レンズの少なくとも光学的特徴の変化に対する前記対象の感度に関連する。
【0031】
考慮される光学的特徴は、特に、ジオプタで測定されたレンズ又は2つのレンズの屈折特徴を含む。光学的特徴は、特に、球面、円柱、非点収差、加入度、両眼バランス、両眼球面などの光学度数を含む。
【0032】
グローバル感度パラメータは、前記対象の一方の眼に関する、球面又は円柱又は軸又は加入度などのレンズの1つの特定の光学的特徴の変化、前記対象の両方の眼に関する、球面又は円柱又は軸又は加入度などのレンズの1つのみの特定の光学的特徴の変化、又は対象の両方の眼に関する、球面の両眼値、又は2つのレンズの球面の両眼バランスなどの2つのレンズの1つの特定の光学的特徴の両眼変化に対する前記対象の感度に関連し得る。
【0033】
グローバル感度パラメータは、対象の同じ眼に関する、球面、及び/又は円柱、及び/又は軸、及び/又は加入度などの単一レンズの異なる特定の光学的特徴の変化、前記対象の各眼に関する、球面、及び/又は円柱、及び/又は軸、又は加入度などの単一レンズの異なる特定の光学的特徴の変化、又は対象の両方の眼に関する、球面の両眼値、又は2つのレンズの球面の両眼バランスなどの2つのレンズの異なる特定の光学的特徴の両眼変化に対する前記対象の感度に関連し得る。
【0034】
第1及び第2の感度パラメータは、それぞれ異なる測定方法で決定され得るか、又はそれぞれ類似した若しくは異なる測定条件で決定され得る。
【0035】
一実施形態では、グローバル感度パラメータは、対象の一方の眼のみに関する、少なくとも2つの異なる光学的特徴の変化に対する前記対象の感度に関連し得るか、又は対象のそれぞれの眼を考慮して、少なくとも1つの光学的特徴の変化に対する前記対象の感度に関連し得る。
【0036】
本発明による対象のこのグローバル感度パラメータの値を決定する方法は、以下のステップ:
a)少なくとも第1の眼科用レンズの第1の屈折光学的特徴の変化に対する対象の感度に対して、前記対象の少なくとも第1の感度パラメータの単一値を決定するステップ(
図1のブロック100)、
a)少なくとも第2の眼科用レンズの第2の屈折光学的特徴の変化に対する対象の感度に対して、前記対象の少なくとも第2の感度パラメータの単一値を決定するステップ(
図1のブロック110)であって、第1及び第2の感度パラメータのそれぞれは、対象によって知覚され得る前記第1及び第2の屈折光学的特徴の最小の変化にそれぞれ関連する、ステップ、
c)計算手段を使用して、第1及び第2の感度パラメータの前記単一値の組み合わせを考慮して、グローバル感度パラメータの前記値を決定するステップ(
図1のブロック120)
を含む。
【0037】
ステップa)及びb)は、同じ又は異なる手段で実行することができる。これらのステップのそれぞれは、同じ日に又は異なる時点で実行することができる。感度パラメータの単一値の決定は、後に説明するように、測定に基づくか、又は以前に決定された値の検索に基づき得る。方法は、ステップa)及びb)で決定された値を、ステップc)を実行する計算手段に送信するステップを含み得る。
【0038】
以下では、レンズの光学的特徴は、この後に説明するように屈折光学的特徴である。
【0039】
方法は、
- 計算手段によって決定されたグローバル感度パラメータの前記値を記憶するステップ、及び/又は
- 計算手段によって決定されたグローバル感度パラメータの前記値を表示するステップ
を更に含み得る。
【0040】
ステップa)及びb)
第1及び第2の感度パラメータのそれぞれは、対象によって知覚され得る前記第1及び第2の屈折光学的特徴の最小の変化にそれぞれ関連する。
【0041】
第1及び第2の感度パラメータのそれぞれは、
- レンズの光学的特徴の1つの変化に対する前記対象の特定の感度に関連し、前記変化は、対象の一方の眼で知覚されているか、又は
- 2つのレンズの光学的特徴の1つの変化に対する前記対象の特定の感度に関連し、前記変化は、対象の両方の眼で知覚されている。
【0042】
より正確には、ステップa)及びb)で決定された前記少なくとも第1及び第2の感度パラメータは、
- 前記対象の少なくとも一方の眼に関する、前記少なくとも第1又は第2の眼科用レンズの球面の変化に対する球面感度、
- 対象の少なくとも一方の眼に関する、前記少なくとも第1又は第2の眼科用レンズの円柱度数及び/又は軸の変化に対する円柱及び/又は軸感度、
- 第1及び第2の眼科用レンズの球面の両眼変化に対する前記対象の球面両眼感度、
- 第1及び第2の眼科用レンズ間の両眼バランスの変化に対する対象の両眼バランス感度、
- 対象の少なくとも一方の眼に関する、前記少なくとも第1又は第2の眼科用レンズの加入度の変化に対する加入度感度
の少なくとも1つをそれぞれ含む。
【0043】
更に、任意選択的に、ステップa)及びb)で決定された前記少なくとも第1及び第2の感度パラメータは、それぞれ異なる測定方法で決定されるか、又はそれぞれ類似した若しくは異なる測定条件で決定される。
【0044】
対象の一方の眼に対する特定の感度パラメータの単一値を決定する方法は、既知であり、特許文献1に記載されている。
【0045】
屈折の完全プロセス中、特定の感度パラメータの各単一値は、この文献に記載されているように、各眼に対して測定される。
【0046】
より正確には、対象の一方の眼に対するそれぞれの特定の感度パラメータは、この対象の主観的評価に基づいて、対象によって知覚される、対象のこの眼の前に配置されたレンズの対応する特定の光学的特徴の最小の変化を表す。
【0047】
実際には、対象の視力は、前記特定の光学的特徴の値が異なるレンズを対象の眼の前に連続して配置することができるフォロプタを使用して、テストプロトコル中にテストされる。
【0048】
このテストプロトコルは、古典的なフォロプタ又は可変度数の2つの複合レンズを有するフォロプタを使用して達成することができる。
【0049】
古典的なフォロプタでは、固定された所定の度数を有する異なるレンズが対象の各眼の前に連続して配置され得る。例えば、異なる球面のレンズが対象の一方の眼の前に連続して配置される。球面は、1つのレンズから次のレンズへと所定のステップで増大する。このステップは、通常、0.25ジオプタ(D)又は0.125Dである。
【0050】
前記テストプロトコルは、可変度数のレンズを含む改良されたフォロプタも使用し得る。そのようなフォロプタ/可変レンズは、例えば、特許文献2、特許文献3又は特許文献4に記載されている。
【0051】
対象の眼の前に配置されたそれぞれの現在のレンズに対して、対象は、以前のレンズと比較して、現在のレンズを通した自らの視力の品質を評価するように求められ、提示された2つの視覚状態の中から、好ましい視覚状態の表示に対応するか、又は2つの視覚状態のいずれかを決定できない場合の視覚評価を表現するように求められる。
【0052】
実際には、このステップは、例えば、デュオクロームテスト中、対象が与える評価に対応する。このテスト中、対象には、一方で赤色の背景に表示された視標及び他方で緑色の背景に表示された視標を含む画像が表示される。対象が赤色の背景の指標が良く見える場合、球面を減少するべきであり、緑色の背景に示されている指標が良く見える場合、球面を増大すべきである。
【0053】
変形形態として、対象の眼の前に配置されたそれぞれの現在のレンズに対して、対象は、以前のレンズと比較して、現在のレンズを通して自らの視力の品質を評価するように求められ、現在のレンズが以前のレンズよりも良く見えるか若しくは悪く見えるかどうか又は2つの間で決定できないかどうかを尋ねられる。この最後の場合、2つのレンズは、対象に同様の視力品質を提供する。
【0054】
対象の回答は、マウス、ボールマウス、トラックパッド、連続ポテンショメータなどにより、異なる手段、例えば触知手段、口頭手段によって収集することができる。これらの手段は、対象自身又はアイケア専門家によって実行され得る。
【0055】
レンズのこの光学的特徴に対応する特定の感度パラメータの値は、特定の光学的特徴が異なる値のレンズを通して前記眼で見ている間、対象が見ている画像の品質の違いを知覚し得る、前記特定の光学的特徴の最小の差異を表している。
【0056】
図2に示されるように、特定の感度パラメータSRxの単一値は、例えば、対象が自らの眼の前に配置されたレンズの光学的特徴の値の変化に無反応である、光学的特徴の変化のゾーンの半分の幅として決定され得る。このゾーンは、対象が許容できるか、又は対象がどのレンズがより良い視力を提供するかを決定できない光学的特徴の値の範囲に対応する。
【0057】
それぞれの特定の感度パラメータの値は、例えば、対象の回答の確実性の確率関数で評価される。
【0058】
対象の確実性確率関数又は確実性関数の例は、眼の前に配置されたレンズの光学的特徴値の関数としての対象によって行われた選択の確実性のグラフとして、
図2に示されている(
図2を参照されたい)。
【0059】
確実性確率関数は、2つの視覚状態(例えば、赤色又は緑色の背景に対する視力)間又は眼の前に連続して配置された2つの異なるレンズ間で選択を行うときの対象の確実性を反映している。
【0060】
0%の確実性の値は、対象が2つの視覚状態又は2つのレンズのいずれかを選択できないとき、すなわち対象がそれぞれの視覚状態(例えば、赤色又は緑色の背景)で見た画像又は2つのレンズのそれぞれを通して見た画像の品質のいかなる差異も知覚できないときに得られる値である。-100%の確実性の値は、2つの視覚状態の第1の状態(例えば、赤色の背景上の視標)が見ている画像の品質を向上させるか、又は第1のレンズが見ている画像の品質を向上させることを対象が確信しているときに得られる値であり、100%の確実性の値は、第2の視覚状態(例えば、緑色の背景上の視標)又は第2のレンズが見ている画像の品質を向上させることを対象が確信しているときに得られる値である。
【0061】
図2の実施例は、対象の一方の眼の前に配置されたレンズのジオプタ、例えば球面の光学的特徴の関数として決定された確実性確率関数を示している。
【0062】
確実性確率関数を決定する方法は、文献国際公開第2018/015381号パンフレットから既知である。
【0063】
実際には、画像のより良い品質は、
- 球面、円柱又は軸が異なるレンズを評価する場合、例えばジャクソンクロスシリンダ手順で視標がより鮮明に見えるか、
- デュオクロームテストの場合、赤色と緑色との間で色がよく見えるか、
- 固定されたジャクソンクロスシリンダを用いたジャクソンクロステストの場合、画像の垂直方向又は水平方向がより鮮明であるか、
- 両眼バランスに対する上部又は下部の位置
に基づいて対象よって評価され得る。
【0064】
この最後の場合、偏光子若しくはプリズム又は任意の他の既知の手段により、一方の眼が画像の上部(例えば、一番上のラインの文字)を見て、他方の眼が画像の下部を見るように、それぞれの眼の視力が分離される。次いで、着用者は、画像の両方の部分(上部及び下部)を比較して、2つの眼間の球面の値の差異である、2つの眼間の最良のバランスを見つけることが可能になる。
【0065】
値-1及び+1の回答、「わからない」及び「同じ」のゼロとなる回答と共に、対象の特定の選択が考慮される。任意の不確実な回答は、推定又は測定された確実性に応じて0~1の値で表され得る。確実性関数は、特定の光学的特徴値に対して推定された全ての回答を平均化することによって計算される。その後、確実性関数は、任意の非推定値に補間される。
【0066】
確実性の確率が不確実性の所定の範囲に含まれるレンズの光学的特徴の値に対応して、無反応なゾーンが定義される。不確実性のこの所定の範囲の極値は、一方の側で20%~80%、他方の側で-20~-80%で構成され得る。
【0067】
不確実性の範囲の例は、範囲[-20%、20%]、[-30%、30%]、[-40%、40%]、[-50%、50%]、[-60%、60%]、[-70%、70%]又は[-80%、80%]である。
【0068】
次いで、対象の特定の感度パラメータの値は、無反応のゾーンサイズの半分に等しくなるように定義される。対象に適合した光学的特徴の理論値Rxは、不確実性の範囲に含まれる光学的特徴の任意の値、特に確実性0%の値に対応する値であり得る。
【0069】
前述の方法で特定の感度を評価され得る光学的特徴は、例えば、
- 球面度数とも称される球面、
- 円柱、別名は円柱度数及び/若しくは軸又はそれらの組み合わせ、
- 円柱及び軸の組み合わせとして定義される非点収差、
- 例えば、累進焦点レンズ、遠近両用レンズ又は近方視力のための単焦点レンズに使用される加入度、
- 両眼球面、
- 両眼バランス
である。
【0070】
これらの光学的特徴の全ては、ジオプタで与えられ得る。これらの光学的特徴を決定するための従来の方法は、当業者に周知である。これらの従来の方法及び以下に記載される本発明による改良された方法を使用することができる。
【0071】
球面は、レンズの前面及び背面の形状の球面成分により、ジオプタで与えられるレンズの屈折度数に対応する。
【0072】
円柱は、レンズの前面及び背面の形状の円柱成分により、ジオプタで与えられるレンズの屈折度数に対応する。
【0073】
軸は、レンズの形状の円柱成分の向きに対応する。
【0074】
円柱度数及び軸は、対象の眼の非点収差を補償するために決定された眼科用レンズの円柱成分を表す。本発明は、本出願人の特許文献5に記載されているように、大きさ及び配向分解を伴う標準極形式で決定される代わりに、円柱成分のベクトル分解を使用する。
【0075】
円柱成分のベクトル分解は、例えば、
図15に示すように、2つの直交する方向J0、J45に従って実行される。
【0076】
例えば、2つのJ0、J45方向に沿った分解は、古典的な球面円柱表記(球面S、円柱C、軸)を、極形の非点収差(C、軸)の非点収差分解として、度数Sの球面レンズ並びに一方が軸0°で度数J0=(-C/2)*cos(2*axis)及び他方が軸45°で度数J45=(-C/2)*sin(2*axis)の2つのジャクソンクロスシリンダレンズとして定義された直交値(S、J0、J45)のトリプレットによって置き換えることに対応する。
【0077】
図15では、最初の円柱成分は、標準Cylinit及び軸2xAxeInitの2倍に等しい角度の極座標におけるベクトルV1で表されている。
【0078】
ベクトルV2は、テストされた最終矯正の例である。
【0079】
標準のジャクソンクロスシリンダ手順により近づけるために、2つの直交する方向は、
図15に示すように、初期の非点収差方向及びその垂直方向に対応し得る。分解の各成分は、ジオプタで表されるため、2つの対応する感度を定義及び測定することが可能になる。初期の非点収差方向に沿って決定された成分Jx0は、円柱度数成分に関連付けられ、垂直成分Jx45は、軸成分に関連付けられている。以下では、円柱及び軸がこの定義を参照することになる。
【0080】
加入度は、遠方視力と近方視力との間、例えば累進焦点レンズの遠方視力ゾーンと近方視力ゾーンとの間の球面の差異として定義することができる。
【0081】
対象が必要とする矯正の球面及び円柱の成分を決定した後、眼の両眼バランスを調整する必要があり得ることが知られている。対象の眼の快適な矯正を達成するために、決定された適合された球面で適合されたレンズを通して見える画像の品質が同様であることを保証することは、確かに有用である。
【0082】
対象の各眼に適合したレンズの球面の値の決定は、実際には、両眼に対して正確に実行されない場合がある。次いで、これらの偏光子の1つがそれぞれの眼の前に配置されている、90°に配向された2つの偏光子を使用するなど、それぞれの眼で見える画像の分離を可能にする既知の方法により、それぞれの眼で見える画像の品質を、適合された球面を有する対応する適合レンズと比較することは、有用である。決定された適合レンズの一方が他方よりも良好な画像を提供する場合、対象が見える画像の品質を同様にするために、このレンズの球面を修正することができる。
【0083】
そうして、対応する光学的特徴は、両方のレンズの球面間の差に等しくなり得る。
【0084】
対応する光学的特徴は、両眼バランステスト前に最初に決定された両方のレンズの球面間の間隔と、両眼バランステスト後の両方のレンズの球面間の間隔との間の差異に等しいこともできる。
【0085】
確実性関数は、これらの光学的特徴のいずれか一方の関数として決定し得る。無反応ゾーンが特定され得、両眼バランス調整に対する対象の特定の感度パラメータの値を、前述したものと同様の方法で決定し得る。
【0086】
両眼バランスを調整した後、両眼球面が調整され得る。以前に決定された球面の値に基づいて、例えば両眼バランステスト後、両方のレンズの球面を同じ増分で同時に変化させて、両眼視力の品質が対象によって評価される。次いで、対象は、両方の球面を変化させたときに見える画像の品質を比較するように求められる。
【0087】
その後、各レンズ又は2つのレンズの対応する光学的特徴は、両眼球面テストの前に最初に決定された球面と、両眼球面テストの後に決定された球面との間の差異に等しくなり得る。対応する感度パラメータは、この調整に対する対象の感度に関連する。
【0088】
確実性関数は、この光学的特徴の関数として決定することができる。無反応ゾーンが特定され得、両眼球面調整に対する対象の特定の感度パラメータの値を、前述したものと同様の方法で決定し得る。
【0089】
前記少なくとも第1及び第2の感度パラメータの異なる単一値は、異なる測定方法を用いて、ステップa)及びb)で決定され得る。
【0090】
前記少なくとも第1及び第2の感度パラメータの異なる単一値は、同様の又は異なる測定条件でもステップa)及びb)で決定され得る。
【0091】
例えば、第1及び/又は第2の感度パラメータの単一値は、異なる視覚的距離において又は同じ視覚的距離に対して決定され得る。
【0092】
したがって、特定の感度パラメータの単一値は、遠方視力、中間視力又は近方視力の条件における1つのレンズ又は2つのレンズの前記第1及び/又は第2の光学的特徴に対する対象の感度に関連し得る。また、フォロプタの人間工学:パントスコピック角度、フォロプタのラップ角度などの特定の測定条件に関連し得る。
【0093】
第1及び/又は第2の感度パラメータの単一値は、異なる光条件で決定され得る。
【0094】
したがって、特定の感度パラメータの単一値は、昼光視力、弱光視力又は夜間視力の条件における1つのレンズ又は2つのレンズの前記第1及び/又は第2の光学的特徴に対する対象の感度に関連し得る。
【0095】
対象の視覚的能力に影響を与える他の環境条件も考慮することができる。
【0096】
ステップc)
ステップc)では、第1及び第2の感度パラメータの前記単一値の前記組み合わせは、一般に、第1及び第2の感度パラメータの単一値の一部又は全ての線形結合又は非線形結合、例えば二次結合を含む。
【0097】
グローバル感度パラメータは、例えば、特定の感度パラメータのいくつかの単一値の平均値である。グローバル感度パラメータは、特定の感度パラメータのいくつかの単一値の加重平均値であり得る。
【0098】
一実施形態では、ステップc)において、第1及び第2の感度パラメータの前記単一値の前記組み合わせは、ステップa)及びb)中に決定された第1及び第2の感度パラメータの単一値の平均値を含む。
【0099】
例えば、同じ特定の感度パラメータのいくつかの単一値は、すなわち、同じ眼又は2つの眼及びレンズ又は2つのレンズの同じ光学的特徴に対して、同じ環境条件で決定され、これらの単一値の平均が決定される。
【0100】
一実施形態では、そのようなグローバル感度パラメータは、例えば、
- 右眼又は左眼の球面感度パラメータのいくつかの単一値SphOD、SphOGを平均化することによって得られた右眼又は左眼の平均球面感度SmphOD、SmsphOG、
- 右眼又は左眼の球面感度パラメータのいくつかの単一値ScylOD、ScylOGを平均化することによって得られた平均両眼球面感度Smsphbino、右眼又は左眼の平均円柱感度SmcylOD、SmcylOG、
- 右眼又は左眼の球面感度パラメータのいくつかの単一値SaxisOD、SaxisOGを平均化することによって得られた右眼又は左眼の平均軸感度SmaxisOD、SmaxisOG、又は
- 両眼バランスSmeqbinoに対する眼の平均感度
である。
【0101】
これらの平均値は、単一値よりも信頼性を高めるために平均化されている。
【0102】
別の実施形態では、ステップa)及びb)中に決定された第1及び第2の感度パラメータの単一値は、
- 左眼及び右眼のそれぞれの円柱感度ScylOD、ScylOGの単一値、又は
- 左眼及び右眼のそれぞれの軸感度SaxisOD、SaxisOGの単一値、又は
- 左眼及び右眼の一方の球面、円柱、軸及び両眼バランス感度SsphOD、ScylOD、SaxisOD、SsphOG、ScylOg、SaxisOG、Seqbinoの単一値
のいずれかであり、及び
ステップc)において、決定されたグローバル感度パラメータの値は、それぞれ、
- 左眼及び右眼の円柱感度の単一値の平均値に等しいグローバル円柱感度パラメータ(Sgcyl)の値:Sgcyl=(ScylOD+ScylOG)/2、又は
- 左眼及び右眼の軸感度の単一値の平均値に等しいグローバル軸感度パラメータ(Sgaxis)の値:Sgaxis=(SaxisOD+SaxisOG)/2、又は
- 左眼のみ又は右眼のみの球面、円柱、軸及び両眼バランス感度の単一値の平均値に等しい、左眼又は右眼のグローバル感度パラメータ(SgOG、SgOD)の値:
SgOG=SsphOG+ScylOG+SaxisOG+Seqbino)/4
SgOD=SsphOD+ScylOD+SaxisOD+Seqbino)/4
である。
【0103】
これらのグローバル感度パラメータは、特に、対象の一方の眼に関連する。それらは、例えば、各眼の感度が非常に異なる場合、例えば各眼に必要となる矯正又は視覚的能力(視力)が非常に異なる場合又は一方の眼の優位性が重大である場合に特に役立つ。
【0104】
代わりに、ステップa)及びb)中、対象の左眼及び右眼のそれぞれの球面感度SsphOG、SsphODの単一値及び前記対象の球面両眼感度(Sphbino)の単一値が決定され、及び
- ステップc)において、決定されたグローバル感度パラメータの値は、左眼及び右眼の球面感度SsphOG、SsphOD並びに両眼球面感度Ssphbinoの単一値の平均値に等しいグローバル球面感度パラメータSgsphの値:Sgsph=(SsphOG+SsphOG+Ssphbino)/3である。
【0105】
球面は、通常、対象が最も敏感なパラメータである。一方で、調節変動により変動が大きくなり得る。したがって、このようなグローバル球面感度パラメータの値の決定は、球面に対する対象の感度を評価するのに有利であり得る。
【0106】
上述の全ての感度及び両眼バランスに対する眼の平均感度Sgeqbinoを考慮した全体的な感度は、グローバル球面感度Sgsph、グローバル円柱感度Sgcyl、グローバル軸感度Sgaxis及び両眼バランスに対する眼の平均感度Sgeqbinoの平均値に等しいものとして定義でき、Soverall=(Sgsph+Sgcyl+Sgaxis+Sgeqbio)/4である。
【0107】
右眼及び左眼並びにレンズの主な光学的特徴について得られた値は、平均化される。
【0108】
各眼の感度を考慮した他の同様のグローバル感度パラメータは、
- 右眼又は左眼の平均球面感度SmsphOD、SmsphOG及び平均両眼球面感度Smsphbinoの平均値に等しい別のグローバル球面感度、
- 右眼又は左眼の平均円柱感度の平均値に等しい別のグローバル円柱感度SmcylOD、SmcylOG、
- 右眼又は左眼の平均軸感度の平均値に等しい別のグローバル軸感度SmaxisOD
として決定することができる。
【0109】
当然のことながら、全体的な感度は、中間の平均値を計算することなく、特定のパラメータの単一値に基づいて又は単一値の平均値に基づいて直接計算することができ、
Soverall=[(SsphOD+SsphOG+Ssphbino)/3+(ScylOD+ScylOG)/2+(SaxisOD+SaxisOG)/2+Seqbino]/4、又は
Smoverall=[(SmsphOD+SmsphOG+Smsphbino)/3+(SmcylOD+SmcylOG)/2+(SmaxisOD+SmaxisOG)/2+Smeqbino]/4
である。
【0110】
円柱及び軸を考慮した非点収差Sgasrに対する別のグローバル感度パラメータは、Sgasr=(Sgcyl+Sgaxe)/2として定義できる。
【0111】
ジオプタでの円柱及び軸の定義により、これらの光学的特徴は、J0又はJx0及びJ45又はJx45と示すことができ、Sgasrは、円柱の成分J0又はJx0及びJ45又はJx45に対する感度の単一値の平均値又はJ0又はJx0及びJ45又はJx45に対する平均感度の平均値:Sgasr=(SJ0+SJ45)/2又はSgasr=(SJx0+SJx45)/2又はSgasr=(SmJ0+SmJ45)/2として表すことができる。
【0112】
左眼及び右眼の円柱成分J0及びJ45又はJx0及びJx45感度の単一値の平均値に等しい、グローバル円柱成分J0及びJ45又はJx0及びJx45、感度パラメータSgJ0、SgJ45又はSgJx0、SgJx45の値は、SgJ0=(SJ0OD+SJ0OG)/2及びSgJ45=(SJ45OD+SJ45OG)/2又はSgJx0=(SJx0OD+SJx0OG)/2及びSgJx45=(SJx45OD+SJx45OG)/2として定義することもできる。
【0113】
当然のことながら、対応するグローバル感度は、任意のベースベクトルJ0、J45、前述のJx0、Jx45を用いて決定され得る。
【0114】
全体的な感度は、右眼のSgOD又は左眼のSgOGのみに対しても定義され得、
SgOD=(SgsphOD+SgcylOD+SgaxisOD+SgeqbioOD)/4、
SgOG=(SgsphOG+SgcylOG+SgaxisOG+SgeqbioOG)/4
である。
【0115】
全体的な感度パラメータの値に基づくテストでは、感度のより高い対象が、全ての母集団よりも正確なレンズを選択することがより多く、利点及び差異がよくわかることが示された。
【0116】
テストでは、対象の感度がより高いほど、「選択の余地がない」ことが少なくなり、より正確なレンズを選択することが多くなることも示され、すなわち対象が精度の利点をより高く知覚し、したがって全体的な感度パラメータの信頼性が検証された。
【0117】
グローバル感度パラメータ、特に全体的な感度パラメータは、不等像視に対する感度、すなわち網膜画像サイズの差異も表し得る。
【0118】
グローバル感度パラメータの値の決定には、
- 不等像視に対する感度の推定、
- 例えば、調節を考慮した、球面、及び/又は円柱、及び/又は軸、及び/又は加入度、及び/又は両眼球面、及び/又は両眼バランスに対する感度の主観的及び/又は客観的決定、
- 現実的なシーンに基づく比較
も含まれ得る。
【0119】
別の実施形態では、ステップc)において、第1及び第2の感度パラメータの前記単一値の前記組み合わせは、ステップa)及びb)中に決定された第1及び第2の感度パラメータの単一値の加重平均値を含む。
【0120】
第1及び第2の感度パラメータの単一値に関連付けられた重みは、例えば、
- 対象の通常の視覚的行動、及び/又は
- 対象によって着用されているレンズのタイプ、及び/又は
- 対象がレンズを用いて有することを望む活動、及び/又は
- 眼優位性データ、及び/又は
- 対象によって着用されている現在/以前のレンズの快適さの評価、及び/又は
- 光学矯正機器について以前の処方で示されたデータ
に依存し得る。
【0121】
これは、
図1では、ブロック130、140及び150によって概略的に表されている。
【0122】
考慮される重みは、例えば、対象の非利き眼に関連する特定の感度パラメータの単一値に関連付けられた重みよりも、対象の利き眼に関連する特定の感度パラメータの単一値についてより高い。
【0123】
考慮すべき対象の他の通常の行動には、例えば、眼及び頭部の協調、眼及び手又は眼及び足の協調、手又は足の優位性(好み)、歩行行動、眼を動かす/頭を動かす行動を含み得る。
【0124】
変形形態では又は加えて、対象が累進焦点レンズの対象である場合、前記重みは、各眼の球面感度の単一値に関連付けられた重みよりも、各眼の円柱感度の単一値についてより高い。
【0125】
重みは、対象によって通常行われる活動に関連付けることもでき、例えばスマートフォン、又はタブレット、又はコンピュータを使用した読書、テレビの視聴、運転、静的な活動、動的な活動又は移動を伴うスポーツの練習などである。
【0126】
スマートフォン又はタブレットを使用して読書することは、近方視力で決定された感度パラメータに対してより高い重みを使用することを意味し、コンピュータを使用するか又はテレビを見ることは、中間視力で決定された感度パラメータに対してより高い重みを使用することを意味する。
【0127】
グローバル感度パラメータを決定するために考慮される重みは、例えば、対象が以前の眼科機器で適合の問題を有していたと報告しているレンズの光学的特徴に対してもより高くなり得る。例えば、歪みについての又は視野が十分に広くないという不平が考慮され得る。
【0128】
例えば、対象が近方視力について不平を言う場合、より高い重みが加入度又は近方視力感度に使用され得、対象が歪みについて不平を言う場合、より高い重みが円柱感度に使用され得、対象が以前の機器への適合について不平を言う場合、より高い重みが新しい機器で変化が最も大きい屈折パラメータに使用され得る。
【0129】
代わりに、組み合わせの重みは、視力モデルに基づいて決定することができる。
【0130】
例えば、Le Grandの視力モデルによれば、Le Grand Y.による「Sur le calcul des verres de lunetterie」,Revue d’Optique,Paris,(1966)」で公開されているように、眼の非点収差に関連する屈折誤差と球面に関連する屈折誤差との間の比率は、√2/2に等しい。
【0131】
したがって、グローバル感度パラメータは、以前に定義された表記を用いて、Swoverall_1=(Sgsph+√2/2Sgcyl)/2又はSwoverall_2=(Sgsph+√2/2Sgasr)/2として定義できる。
【0132】
別の例によれば、Sloanによって取得され、SloanL.L.によって公開された視力の測定におけるデータ、Arch.Ophtalmol.45、(6)、704-725、(1951)は、眼の非点収差に関連する屈折誤差と、球面に関連する屈折誤差との間の比率が、20/28を超える視力に対して0.8に等しいことを示している。
【0133】
したがって、グローバル感度パラメータは、以前に定義された表記Sgsph及びSgasr用いて、Swoverall_3=(Sgsph+0,8Sgcyl)/2又はSwoverall_4=(Sgsph+0,8Sgasr)/2として定義できる。
【0134】
更に別の例によれば、相対視力VA%の減少、すなわち完全に矯正された眼を有する対象の視力と比較した、球面誤差DPPO及び非点収差残余誤差ASRを有する対象の視力の減少は、老眼でない対象では、VA%=100-63.DPPO-44,3.ASR+7,2.DPPO2+19,5.DPPO.ASR+ASR2として決定できる。
【0135】
この式は、DPPOが正又はゼロに等しい場合に使用できる。
【0136】
この式では、大きさDPPO及びASRは、対象の眼と完全な眼との間の差異の光学的効果を定量化する。したがって、大きさDPPO及びASRは、対象に適合した矯正レンズの球面、円柱、軸の値に対応する。
【0137】
この式は、非特許文献1に記載されているように、年齢及びエルゴラムの関数として残りの主観的調節を決定することにより、老眼患者に拡張することができる。
【0138】
対応するグローバル感度パラメータは、Swoverall_5=63*Sgsph+44.3*Sgasr-7.2*Sgsph2-19.5*Sgsph*Sgasr-Sgasr2として計算できる。
【0139】
一般的な方法では、単眼の視覚的能力を評価するための基準Pが、P=m.DPPOa+n.ASRb(ここで、m、n>=0であり、a及びbが0~2に含まれる)のように計算される場合、グローバル感度パラメータSwoverall_iは、前述のSgsph及びSgasrグローバル感度パラメータを用いて、Swoverall_i=m.Sgspha+n.Sgasrbとして評価され得る。
【0140】
視力モデルは、様々なドキュメントから、例えば非特許文献2から既知である。
【0141】
より具体的には、ここで、本出願人によって開発された特定の視力モデルを考慮することが提案されている。このモデルによれば、視力は、誤差DPPO及び/又はASRの非常に小さい値、例えば0.5D未満のDPPO又はASRに対してはSwaineの法則に従い、例えば0.5~1.75DからなるDPPO及び/又はASRの小さい誤差に対してGomezの法則に従い、より高いレベルの誤差に対してBlendoswkeの法則に従う。
【0142】
本発明は、対象のグローバル感度パラメータSgsph、Sgcyl、Sgaxis、Sgasr、SgJ0、SgJ45、Soverallの前記値を決定するためのシステムにも関し、システムは、
- 少なくとも第1の眼科用レンズの第1の光学的特徴の変化に対する対象の感度に対して、前記対象の少なくとも第1の感度パラメータの単一値を決定するための手段、
- 少なくとも第2の眼科用レンズの第2の光学的特徴の変化に対する対象の感度に対して、前記対象の少なくとも第2の感度パラメータの単一値を決定するための手段、
- 第1及び第2の感度パラメータの前記単一値の組み合わせを考慮して、グローバル感度パラメータの前記値を決定するようにプログラムされた計算手段
を含む。
【0143】
第1及び第2の感度パラメータの前記単一値を決定するための手段は、同じ又は異なる手段であり得る。これらの手段は、例えば、前述のテストプロトコルに対する対象の回答を分析するようにプログラムされた分析手段に結合された前述のフォロプタを含む。この分析手段は、フォロプタに統合され得るか又は独立した分析手段であり得る。この最後の場合、分析手段は、フォロプタからデータを受信するように適合された通信モジュールを含む。
【0144】
前記対象の少なくとも第1の感度パラメータの単一値を決定するための手段は、以前のテストから検索された単一値を入力するための入力手段も含み得る。それは、前記値を受信するように適合された通信手段も含み得る。
【0145】
このシステムは、
- 計算手段によって決定されたグローバル感度パラメータの前記値を記憶するための手段、及び/又は
- 計算手段によって決定されたグローバル感度パラメータの前記値を表示するための手段
を更に含む。
【0146】
前記値を記憶するための手段は、メモリ又はローカル若しくは遠隔サーバを含み得る。表示するための手段は、フォロプタに統合されているか否かにかかわらず、スクリーン又は任意のタイプのディスプレイを含み得る。
【0147】
このように決定された対象のグローバル感度パラメータの値は、前述の可能な式及び方法のいずれかを用いて、対象の視力を改善するように適合された矯正機器を提供するプロセスの多くの異なるステップにおいて考慮され得る。
【0148】
決定されたグローバル感度パラメータの値は、2つの異なる機器間の差異に対する対象の知覚に関する実際に信頼できる情報を提供する。こうして、対象及びアイケア施術者が、より良いコストで対象に最も適合した矯正機器の特徴を決定するのを補助することができる。
【0149】
屈折を決定するか、又は対象のグローバル感度よりも高い精度のレンズを提供することは、実際には役に立たず、それは、対象が、グローバル感度パラメータの値よりも小さい屈折差を有するレンズ間のいかなる差も区別できないからである。
【0150】
したがって、本発明は、対象のグローバル感度パラメータの値をアイケア施術者に通知する方法にも関し、前記グローバル感度パラメータは、前記対象の少なくとも一方の眼の前に配置された少なくとも眼科用レンズの少なくとも光学的特徴の変化に対する前記対象の感度に関連し、方法は、以下のステップ:
- 上述の方法にいずれかに従って、対象の少なくともグローバル感度パラメータの値を決定するステップ、
- 前記アイケア施術者に通知するためにグローバル感度パラメータのこの値を表示するステップ
を含む。
【0151】
そのような方法は、アイケア施術者が、他の眼の屈折を決定するためのテストプロトコルを最適化することも支援し得る。
【0152】
それは、アイケア施術者が、パントスコピック及びラップ角度などの値に基づいてフレームを推奨することも支援し得る。
【0153】
次いで、アイケア施術者は、以下で説明するように、屈折を決定するため及び/又は適切なレンズを処方するためにグローバル感度パラメータの値を考慮することができる。
【0154】
グローバル感度パラメータに対して、異なるタイプのディスプレイが考慮され得る。
【0155】
グローバル感度は、ターゲット上の視野サイズとして表示され、対象の正確な屈折と対象に提供されるレンズの最終矯正との間のマッチングを評価するために使用され得る。
【0156】
そのようなターゲット10、20の例を
図3に示す。より大きいターゲット10は、第1の対象のグローバル感度の値を表し、より小さいターゲット20は、第1の対象よりも感度が高い第2の対象のグローバル感度の値を表す。この表示例では、横座標は、球面であり、縦座標は、円柱であり、ターゲットの中心は、対象の一方の眼に対して決定された屈折の値(S1、C1)、(S2、C2)に配置され、ターゲット10、20の内輪11、21は、対象のグローバル感度パラメータの値によってターゲットの中心12、22から離間するように配置される。
【0157】
変形形態として、横座標及び縦座標は、対象の感度が決定され得る任意の光学的特徴の値を与えることができる。
【0158】
ターゲットの内輪の形状も異なる場合がある。示されている例では、グローバル感度パラメータの値は、球面及び円柱の両方を考慮しているため、横座標及び縦座標で同じである。
【0159】
ターゲットは、2つの異なるグローバル感度パラメータの値、例えば球面のグローバル感度及び円柱のグローバル感度も考慮し得る。この場合、対象が球面及び円柱に対して異なる感度を有する場合、円形リングの代わりに楕円リングを使用することができる。
【0160】
したがって、内輪の内側に位置するターゲットのゾーンは、対象が完全な視覚的矯正を知覚する、横座標及び縦座標にプロットされたレンズの光学的特徴の可能な値の範囲を与えている。
【0161】
この表示を使用して、対象のグローバル感度を表すターゲットを、通常の屈折法で決定された屈折に基づいて対象に実際に提供されるレンズの対応する光学的特徴の値及び精度を表す符号30、40、50、60と重ね合わせることが可能である。
【0162】
符号30、40、50、60は、横座標及び縦座標に対して同じ規則でディスプレイに配置される。符号30、40、50、60の中央領域31、41、51、61は、レンズの光学的特徴に対応する座標において中心にあり、この中央領域31、41、51、61のサイズは、レンズの光学的特徴の値の精度に対応する。
【0163】
これにより、対象に提供されたレンズが、ターゲット10、20の内輪11、21の内側のゾーンに位置する光学的特徴を有する確率に関連する、したがって対象が完全な視覚矯正を知覚することになる機器を提供する確率に関連するマッチングスコアを計算することが可能になる。
【0164】
これは、例えば、前記符号の中央領域によって覆われるターゲットの内輪の面積を計算することによって行われる。
【0165】
図4及び
図5の例では、符号30、40、50、60は、半径方向の分岐32、42、52、62を有する中央ディスク31、41、51、61である。マッチングスコアは、符号30、40、50、60の中央ディスク31、41、51、61によって覆われるターゲット10、20の内輪11、21の内側のゾーンの面積の関数として計算される。
【0166】
図4の例は、対象の屈折が低精度で決定される場合を示しているため、この決定に基づいて提供されるレンズも低精度である。これは、例えば、0.25ジオプタの精度で決定された屈折の場合である。
【0167】
この場合、符号30の中央ディスク31の95%がターゲット10の内輪11の内側に位置し、これは、より大きいターゲット10に対応する低いグローバル感度を有する第1の対象に対して、屈折の値、したがってこの第1の対象の完全な視覚的矯正を提供できるレンズを取得する確率が95%であることを意味する。それどころか、符号40の中央ディスク41の15%のみが、より小さいターゲット20の内輪21の内側に位置し、これは、より小さいターゲット20に対応する高いグローバル感度を有する第2の対象に対して、屈折の値、したがってこの第1の対象の完全な視覚的矯正を提供できるレンズを取得する確率が15%であることを意味する。
【0168】
図5の例は、対象の屈折が高精度で決定される場合を示しているため、この決定に基づいて提供されるレンズも高精度である。これは、例えば、0.01ジオプタの精度で決定された屈折の場合である。
【0169】
この場合、符号50、60の中央ディスク51、61の100%は、ターゲット10、20の内輪11、21の内側に位置し、これは、第1及び第2の対象の両方に対して、屈折の値、したがってこれらの第1及び第2の対象に完全な視覚矯正を提供できるレンズを取得する確率が100%であることを意味する。
【0170】
当然のことながら、多くの他の形状を使用して、ターゲット及び/又は符号を概略的に表すことができる。
【0171】
現在、主に視力が考慮されて、レンズが対象の視力を改善するのに有効な効果があるかどうかを評価し、対象がその処方に満足できるかどうかを予測している。アイケア施術者が処方時に眼を支持するかペナルティを科すかを決定することになるとき、その決定は、主に視力に基づいている。
【0172】
ここで、対象のグローバル感度パラメータの値の計算により、アイケア施術者はこの値を知らされ、それによってアイケア施術者がレンズを決定及び処方するときにいずれの眼を優先するべきかを決定するのを支援し得る。利き眼又は最も感度の高い眼のグローバル感度パラメータの値を特に考慮することができる。
【0173】
ここまで、視力の測定のみが、アイケア施術者がいずれの眼を優先するべきかについて決定するのを支援するために使用されていた。ときに視力が両眼で類似している場合があり、例えば処方の変化がほとんどなく、対象を新しい機器に適合させることが困難で時間がかかる場合がある。
【0174】
ここで、アイケア施術者は、特に利き眼に対応する場合又はそうでなければ適応により長い期間の可能性があるのを患者に明確に警告する場合、最も敏感な眼の処方に限定された変更を処方するように配慮し得る。
【0175】
対象のグローバル感度パラメータの値(を考慮に入れて、測定すべき屈折及び/又はこの対象に処方すべきレンズの適切な精度を決定することができる。
【0176】
対象の視力を改善するためのレンズを処方する方法は、実際には、前述のようにグローバル感度パラメータの値を決定するステップと、この値を考慮しながら対象に適合したレンズを処方するステップとを含み得る。
【0177】
第2のステップでは、レンズは、グローバル感度パラメータの値と同様の精度で値が処方され得る。
【0178】
グローバル感度パラメータの値よりも高い精度で値を処方することは、実際には役に立たない。グローバル感度パラメータの値よりも低い精度で値を処方することにより、満足のいく結果がもたらされない場合がある。
【0179】
以前の処方の変更は、グローバル感度パラメータの値よりも小さい場合に行うべきではない。それどころか、グローバル感度パラメータの値を上回る変更は、全て行う必要がある。
【0180】
しかしながら、適応が困難である可能性により感度が高い場合、アイケア施術者は、非常に高い(通常、感度の3~5倍を上回る)変化を避けるべきである。
【0181】
したがって、グローバル感度パラメータの値に関連する情報は、アイケア施術者が処方するのを支援し得る。
【0182】
後に説明するように、グローバル感度パラメータの値を屈折中に使用して、それに応じてリアルタイムで屈折プロセスを調整することもできる。
【0183】
異なるグローバル感度パラメータの値の表示に関して、それらは、感度マップに表示することができる。
【0184】
対象の感度マップは、レンズを処方するための支援を提供するため及び/又はレンズ光学設計を提案若しくは修正するために考慮されるように適合されている。
【0185】
対象の感度マップは、基準感度マップと簡単に比較することができる。
【0186】
例えば、
図6では、対象の感度マップ2が基準感度マップ1と比較されている。基準感度マップ1は、例えば、所与の母集団の各個人に対して決定されたグローバル感度パラメータの値を平均化することによって得られる感度マップである。
【0187】
すでに述べたように、対象の眼の屈折を決定する間、対象のグローバル感度パラメータの値を考慮することができる。
【0188】
前述したように、グローバル感度パラメータの値は、対象の眼の屈折を決定するために通常実行されるステップ中に決定される。次いで、この決定中にリアルタイムで又は屈折後の決定中に考慮に入れることができる。
【0189】
したがって、本発明は、対象の視力を改善するように適合された眼科用レンズの適合された光学的特徴を決定する方法にも関し、方法は、以下のステップ:
- テストプロトコルであって、
- 対象の眼の前にテストレンズを配置する繰り返しステップ、
- 前記テストレンズを通して見ている対象の視力の品質を評価する繰り返しステップであって、レンズの光学的特徴の値は、前記ステップの各繰り返し間で増分値によって増大される、繰り返しステップ、
- テストプロトコルの前記ステップの2つの連続する繰り返し中、対象の眼の前に配置された少なくとも2つの連続するレンズを通して見ている対象の視力の品質を比較し、且つこの比較に基づいて、前記適合された光学的特徴を決定する繰り返しステップ、
- 上述の方法に従って対象の少なくともグローバル感度パラメータの値を決定する繰り返しステップ、
- グローバル感度パラメータのこの値を考慮して、前記増分値を決定する繰り返しステップ
を含むテストプロトコルを実行するステップ
を含む。
【0190】
前記テストプロトコルは、当業者から周知の標準的な手順であり、例えばフォロプタを使用することによって実行される。
【0191】
異なるタイプのフォロプタを使用し得る。特に特許文献2及び特許文献3に記載されているように、可変球面度数を有するレンズなど、可変光学的特徴を有するレンズを使用するフォロプタである。異なる度数の複数のレンズを使用する古典的なフォロプタも使用できる。
【0192】
テストプロトコルは、通常、光学的特徴の所定の値、例えば以前の視覚矯正機器の光学的特徴又は自動屈折計で決定された客観的な値で開始される。
【0193】
グローバル感度パラメータの値を決定する前記ステップは、同じテストプロトコル中又は以前に実行されたテストプロトコル中に実行され得る。
【0194】
第1の場合、グローバル感度パラメータの値が決定されている間、テストプロトコルが最初に標準の増分値を用いて実行され、対象の眼の屈折を決定するために決定された増分値を用いて、テストプロトコルのステップがもう一度繰り返され得る。その後、増分値がリアルタイムで調整される。
【0195】
第2の場合、グローバル感度パラメータの値が対象のデータに関連付けられてメモリに記憶され、その後、テストプロトコルを実行する前に増分値を決定するために使用される。
【0196】
より正確には、前記増分値は、この増分値とグローバル感度パラメータの値との間の差異を最小化するように決定される。
【0197】
これにより、屈折の正確な値を決定することができ、これは、完全な視力に近い、対象に可能な限り良好な矯正を提供するレンズを決定することを確実にするのに十分な精度である。また、グローバル感度パラメータの値よりも高い精度が視力のそれ以上の改善につながらないため、無駄に高い精度で屈折を決定することを回避するが、対象に対して決定に時間がかかるなどの実際的な欠点があり得る。
【0198】
精度は、ここで、方法によって決定された屈折の値と、対象の眼の実際の現在の屈折との間の差異として定義される。
【0199】
対象の眼の視覚的欠陥を矯正するように適合されたレンズの屈折特徴を決定するための通常のテストプロトコル中、テストレンズの屈折特徴の1つが段階的に減少又は増大する。開始点は、多くの場合、対象の以前の機器の屈折特性(存在する場合)又は自動屈折計の客観的測定値である。
【0200】
グローバル感度パラメータの値の決定に関連して前述したように、現在の光学的特徴を有するレンズが対象の眼の前に配置されている場合、対象は、以前のレンズと比較して、現在のレンズを通しての視力の品質を評価するように求められ、提示された2つの視覚状態の中から、好ましい視覚状態の指標に対応するか、又は2つの視覚状態のいずれかを決定できない場合の視覚評価を表すように求められる。
【0201】
実際には、このステップは、デュオクロームテスト中又は2つの異なるレンズを比較するときに対象が与える評価に対応する。
【0202】
次いで、対象は自らの回答、例えば「赤色の背景の方が良く見える」、「緑色の背景の方が良く見える」又は「第1のレンズ又は第2レンズの方が良く見える」などを示す。
【0203】
「わからない」という回答の場合、すなわち対象が2つの視覚状態又は2つのレンズのいずれかを選択できない回答の場合、通常のプロトコルは、このステップをスキップして、レンズの別の光学的特徴を用いた別のデュオクロームテスト又は別のレンズを用いた別の視標読み取りを提示することにより、テストプロトコルを続行する。
【0204】
通常、球面、円柱又は軸は、前と同じ方法で次のステップに進むとき、すなわちレンズの球面、円柱又は軸が、前に増大したときに増大するか、又はレンズの球面、円柱又は軸が、前に減少したときに減少することによって変更される。
【0205】
しかしながら、対象の調節を制御するために、両側から新しい値をテストすること及び/又は現在テストされているものの所定の側から開始することが有用であり得る。
【0206】
遠方視力をテストするときは、テスト中の対象の調節を最小化するように試みることが実際には重要である。
【0207】
対象の眼によって必要となる球面をテストするとき、次いで「わからない」という回答をもたらす値よりも正の球面の新しい値をテストすることが有用であり、これは、この回答が、球面の現在値が適切な値に近いこと又は対象が調節されていることを示し得るためである。
【0208】
球面のこのより正の値で視力が悪化すると対象が信じている場合、球面の適切な値は、それらの中間にある(したがって、球面の次の値は、減少する)。対象が更に「わからない」と答えた場合又は視力が良くなっていると信じている場合、球面を増大することによってテストプロトコルを続行する。
【0209】
円柱及び軸などの他の光学的特徴をテストする場合、「わからない」という回答をもたらす値を構成する光学的特徴の新しい値がテストされる。これは、特に、「わからない」という回答が、テスト開始時に最初に与えられる回答である場合に当てはまる。
【0210】
対象の近方視力をテストするとき、調節は、最大化される。このプロセスは、遠方視力のプロセスから反映されている。球面をテストする場合、「わからない」という回答後、より負の値がテストされる。次いで、テストすべき球面は、回答に「わからない」がなくなるまで減少される。その後、球面の値が最終的に増大される。
【0211】
同様のプロセスは、特に最初の回答が「わからない」である場合に円柱又は軸に適用される。
【0212】
対象に適合したレンズの光学的特徴を決定するためのテストプロトコルは、対象に応じて且つ/又はそれを実施するアイケア専門家の習慣又は希望に従ってもカスタマイズされ得る。
【0213】
例えば、テストプロトコルは、対象が利用可能な履歴データの関数として、例えば対象のグローバル感度パラメータの値の関数として、対象の視覚障害(近視など)、対象の現在の機器の光学的特徴の関数として又は対象の年齢の関数としてカスタマイズされる。子供の場合、例えば、近方視力の状態でのテストは、実行されない。
【0214】
本発明は、所定の光学設計のリストの中から、対象の視力を改善するように適合された眼科用レンズの適切な光学設計を選択する方法にも関し、前記光学設計は、少なくとも1つのグローバル感度パラメータの値を考慮することにより、レンズが前記対象によって着用されるときの対象の複数の視線方向に関連付けられている、対応するレンズの少なくとも1つの光学的特徴の現在値を含む。
【0215】
所定の光学設計の前記リストは、異なる光学設計、例えば着用状態における対象の視線方向の関数としての異なる度数レイアウト又は非点収差レイアウト又は視力レイアウトを含み、これら全ては、対象に必要となる視覚的矯正に適合しており、例えば対象の屈折に適合している。
【0216】
この選択された所定の光学設計を有するレンズの少なくとも1つの光学的特徴と、この光学的特徴又は異なる光学的特徴に対する対象の感度を考慮して決定された目標光学的特徴との間のギャップを最小化するために、所定の光学設計の前記リストの中から、所定の光学設計が選択される。
【0217】
ここで、この方法は、以下のステップ:
- 上述の方法に従って対象の少なくともグローバル感度パラメータの値を決定するステップ、
- 対象の視力を改善するように適合された少なくとも前記光学的特徴の適合値を決定するステップ、
- 前記所定の光学設計を有する前記レンズのいくつかの視線方向について、前記各視線方向におけるレンズの光学的特徴の現在値と、前記光学的特徴の適合値との間の差異を決定するステップ、
- この差異を対象のグローバル感度パラメータの値と比較するステップ、
- 所定の光学設計の前記リストの中から、この比較を考慮して適切な光学設計を選択するステップ
を含む。
【0218】
レンズの光学設計は、レンズの光学機能を定義することを可能にするパラメータのセットを指定する。したがって、それは、レンズを通じた対象の視線方向と、この視線方向とレンズとの間の交点におけるレンズの光学的特徴の値とを関連付けるデータのセットを含む。光学設計は、特に、各視線方向をレンズの屈折特徴の値に関連付けるデータのセットを含む。次いで、各視線方向に対してレンズを通過する光線に対するレンズの効果を提供する。
【0219】
対象の視線方向は、レンズの特定の基準点、例えばレンズの光学中心(単焦点レンズの場合)又はレンズのフィッティングクロス(累進焦点レンズの場合)を通過する対象の視線方向に対応する基準視線方向と比較して測定される。それは、基準視線方向と比較した視線方向の少なくとも1つ、好ましくは2つの角度によって決定される。
【0220】
所定の光学設計は、対象の視線方向の関数として、レンズの光学的特徴のマップに対応する。
【0221】
実際には、前記差異が対象のグローバル感度パラメータの値よりも小さい光学設計の領域が決定される。この領域は、視線方向のサブセットに対応する。
【0222】
光学設計のこの領域は、対応するレンズの完全な視力のゾーンに対応するが、これは、この領域で発生する光学的特徴の誤差が、対象に知覚されないためである。
【0223】
実際には、適切な所定の光学設計を選択する方法は、
- 前記差異が対象のグローバル感度パラメータの値よりも小さい、前記所定の光学設計の前記領域を決定すること、
- レンズの少なくとも1つの所定の方向でより大きいサイズの領域を有し、且つ/又は所定の形状により近い形状を有する光学設計を選択することにより、適切な光学設計を選択すること
を含む。
【0224】
例えば、これは、領域の面積を計算することによって実行することができる。
【0225】
好ましくは、考慮されるグローバル感度パラメータは、観察される光学的特徴に関連する。
【0226】
この選択には、リストされている所定の光学設計の任意の修正は含まれない。光学設計を選択する方法は、対象に最も適切であろう所定の光学設計を特定することのみを可能にする。
【0227】
例えば、光学設計のリストの全ての光学設計の中から、前記差異が対象のグローバル感度パラメータの値よりも小さい、最大領域を有する光学設計が選択される。代わりに、所定のサイズ閾値よりも大きいサイズを呈する前記領域を有する光学設計が選択される。
【0228】
図7は、レンズの所定の光学設計のリストの例を示している。これらの光学設計は、所与の光学的特徴が同じ値を示す線によって表される。これらの線は、2D表現のために平面に投影された、視線方向の、レンズの平均表面との交点に対応する。
【0229】
この所与の光学的特徴は、例えば、レンズの球面、円柱若しくは軸又は例えば対象の視力を表す球面、円柱及び軸の組み合わせであり得る。例えば、レンズの球面が同じになる線は、
図7の3つの異なる設計で表されている。
【0230】
対応する各レンズの完全な視力のゾーンに対応する、前記差異が対象のグローバル感度パラメータの値よりも小さい領域は、この図ではハッチングされたゾーンによって示されている。対応するレンズに完全な視力を提供するレンズ及びレンズの領域を表す、このグラフィック表現を対象に示すことが可能である。
【0231】
所定の光学設計3A、3Bの場合、ハッチングされたゾーン31A、31Bは、完全な視力のゾーンに対応する。それは、光学設計3A、3Bの遠方視力視線方向FVA、FVBを中心とした周辺である。
【0232】
光学設計3Bの場合、ハッチングされたゾーン31Bは、光学設計3Aのハッチングされたゾーンよりも大きい。これは、パントスコープパラメータ、ラップ角度、レンズの非球面化などの多くの要因の違いに起因し得る。したがって、この光学設計3Bが他の光学設計3Aに対して選択される。
【0233】
光学設計3Cの場合、完全な視力の領域は、遠方視力ゾーンをカバーしていない。これは、この光学設計の重要な欠点である。場合により、完全な視力が存在しない場合があるが、これは、全ての視線方向が、対象のグローバル感度パラメータの値よりも高い屈折率で差異を示すためである。
【0234】
所定の形状は、例えば、ターゲット寸法を有するターゲット形状、例えば一方向に所定の角度寸法を有する形状又は例えば1つの所定の方向に細長い形状であり得る。
【0235】
代わりに又は加えて、完全な視力ゾーンのサイズのスコアを提供することも可能であり、例えば平方度で完全な視力を提供する対応するレンズの角度面積に等しい。
【0236】
関心のあるゾーンの異なるグラフィック表現を提供し、且つ前に定義された差異がグローバル感度パラメータの値よりも小さい完全な視力の前記ゾーン、対象及び/又は前に定義された差異が対象のグローバル感度パラメータの値の半分よりも小さい「究極の」視力を有するゾーン、及び/又は前に定義された差異が対象のグローバル感度パラメータの値の1.5倍よりも小さい許容可能な視力を持つゾーンを決定することも可能である。
【0237】
重み付けを使用することも可能であり、例えば、平方度の角度ゾーンは、レンズ度数及び対象の屈折の差と、対象のグローバル感度パラメータの値との間の比率から決定される重み係数を用いて計算される。
【0238】
例えば、前記差異が0である場合、適用される重みは、1であり、前記差異が対象のグローバル感度パラメータの値を上回っている場合、重みは、0であり、それ以外の場合にはその中間である。
【0239】
本発明によれば、光学設計の性能マップを提供することも可能である。
【0240】
性能スコアは、例えば、レンズの表面の各点におけるレンズのグローバル誤差Wを決定することによって決定することができる。この性能スコアは、以下の式で計算することができ、a+b+c=1であり、及びa、b、cは、正であり、W=a.(Sphlens-Sphsubject)2/Ssph2+b.(Cyllens-Cylsubject)2/Scyl2+c.(Axislens-Axisubject)2/Saxis2、ここで、Sphlens-Sphsubject、Cyllens-Cylsubject及びAxislens-Axisubjectは、実際のレンズと対象が必要とする矯正との間の球面、円柱、軸の誤差である。
【0241】
グローバルスコアは、このスコアWをレンズの領域又はレンズ全体に統合することによって取得することができる。
【0242】
そのような性能マップは、摂動に対する各光学設計のトレランスを表示する。
【0243】
所定の光学設計の光学的特徴と、対象に対して決定された適合された光学的特徴との間に差異を有する確率は、摂動の大きさの関数として推定され得る。この確率の決定を調整するために、対象のグローバル感度パラメータの値が考慮され得、次いで、光学設計の光学的特徴と、対象に対して決定された適合された光学的特徴との間で対象によって知覚される差異を有する確率が決定されて使用される。
【0244】
その後、誤差トレランス値は、誤差に対する対象の感度の関数として調整することができる。
【0245】
異なる光学的特徴の誤差トレランス値を調整するために、異なるグローバルパラメータ:例えば、球面上の誤差に対する誤差トレランスの球面に対する球面のグローバル感度又はこれら2つの光学的特徴が考慮されている場合、球面及び円柱に対する全体的なグローバル感度が考慮され得る。
【0246】
累進焦点レンズの場合、球面度数及び非点収差の変化がより速く、中央の視力がクリアなゾーンがより大きくなるが、周辺部の不要な残留誤差がより高くなる設計は、グローバル感度パラメータの値が閾値よりも小さい(高感度の)対象に提案でき、球面度数と非点収差の変化がより遅く、中央の視力がクリアなゾーンが減少するが、周辺の不要な残余誤差がより低くなる設計は、グローバル感度パラメータの値が閾値よりも高い(低感度の)対象に提案することができる。
【0247】
更に、対象の視覚的行動に関連するパラメータなどのグローバル感度パラメータの値に応じて、レンズの光学設計を選択するために、対象の異なる他のパラメータが考慮され得る。
【0248】
そのようなパラメータは、例えば、視覚的タスクを実行している間に自らの眼又は頭部を動かせる対象の傾向に関連され得る。
【0249】
対象の視覚的行動に関連するこのパラメータは、閾値未満のグローバル感度パラメータを有する対象に対してのみ考慮することができるか、又はグローバル感度パラメータの値の関数として決定された重みを用いて考慮することができる。
【0250】
本発明は、少なくとも1つのグローバル感度パラメータの値を考慮することにより、対象に対してカスタマイズされた光学設計を決定する方法にも関する。
【0251】
このカスタマイズされた光学設計は、グローバル感度パラメータの値に基づく基準に従って、所定の光学設計を修正することによって取得される。
【0252】
光学設計は、例えば、対応するレンズの光学的特徴の目標値に到達するように最適化され、これらの目標値は、対象のグローバル感度パラメータの値を考慮して設定される。
【0253】
本発明によれば、眼科用レンズの所定の光学設計を、それを対象の視力に適合させるために修正する方法において、前記光学設計は、レンズが前記対象によって着用されるときの対象の複数の視線方向に関連付けられている、対応するレンズの少なくとも1つの光学的特徴の現在値を含む。このように、この方法は、以下のステップ:
- 上述の方法に従って対象のグローバル感度パラメータの値を決定するステップ、
- 対象の視力を改善するように適合された前記光学的特徴の適合値を決定するステップ、
- いくつかの視線方向について、レンズの光学的特徴の現在値と前記光学的特徴の適合値との間の差異を決定するステップ、
- この差異を対象のグローバル感度パラメータの値と比較するステップ、
- この比較を考慮して、レンズの前記所定の光学設計を修正することにより、修正されたレンズのための修正された光学設計を決定するステップ
を含む。
【0254】
実際には、これは、例えば、
- 前記差異が対象のグローバル感度パラメータの値よりも小さい、前記所定の光学設計の領域を決定すること、
- 前記差異が対象のグローバル感度パラメータの値よりも小さい修正された光学設計の修正された領域が、所定の光学設計の対応する領域よりも大きくなるように、且つ/又は所定の形状により近い形状を有するように、前記修正された光学設計を決定すること
によって実行される。修正された光学設計は、例えば、所定の設計で製造されたレンズの追加の処理を考慮することによって取得することができ、その場合、修正された光学設計は、追加の処理、例えば非球面化又はアトリゼーションが適用される、所定の設計で製造されたレンズの光学設計である。
【0255】
最大サイズの完全な視力のゾーンを得るために、非球面化又はアトリゼーション処理の適用は、少なくとも1つのグローバル感度パラメータの値に従って適合され得る。
【0256】
例えば、所定の光学設計は、レンズの球面の1つの、対象に対して決定された適合された球面との不十分なマッチングを示し得る。その場合、この光学設計で製造されたレンズの完全な視力のゾーンは小さくなり得る。レンズを非球面化すると、完全な視力のゾーンが拡大する。
【0257】
したがって、レンズを非球面化するか否かの選択は、対象のグローバル感度パラメータの少なくとも1つの値に依存し得る。例えば、球面又は全体的な感度パラメータSgsph又はSoverallの値が所定の閾値を下回る場合、非球面化が推奨及び/又は実行される。
【0258】
非球面化のレベルは、感度に応じても適合され得、すなわち低感度の対象に対して非球面化せず、中感度の対象に対して標準の着用パラメータを用いて非球面化し、且つ高感度の対象に対して傾斜、ラップ角度、アイレンズ距離などのフィッティングパラメータを含む非球面化を行う。
【0259】
レンズをアトライズするか否かの選択は、対象のグローバル感度パラメータの少なくとも1つの値にも依存し得る。例えば、グローバル円柱又は全体的な感度パラメータSgcyl、SgJ0、SgJx0、Sgasr又はSoverallの値が所定の閾値を下回る場合、アトリゼーションが推奨及び/又は実行される。
【0260】
球面及び円柱のグローバル感度パラメータの値に応じて所定の光学設計を修正できる可能性のある例を
図9~
図11に示す。
【0261】
図8は、対象の視力の異なる角度(縦座標)に対して所定の光学設計を有する単焦点眼科用レンズの各側の平均度数(実線曲線200)、サジタル度数及びタンジェンシャル度数(実線の両側の破線曲線210、220)を示すグラフである。この所定の光学設計が標準である。
【0262】
図8の例では、対象は、-4Dの球面度数を有するレンズの処方を有する。レンズは、屈折率が1.665、中心厚が1.4mm、ベースカーブ(1.53で)の球面前面が2.75D、光学中心で-4Dになるように計算された球面背面を有する標準的な単焦点レンズである。レンズの着用条件は、角膜レンズ距離が12mm、パントスコピック傾斜が0°及びラップ角度が0°である。レンズの中心におけるレンズの2つの表面間のプリズムは、0である。ここで、レンズの中心は、単焦点レンズに対して角度0°の視線方向に対応している。
【0263】
レンズの光学中心は、視力角度又はゼロに等しい視線方向角度に配置される。ここで、視線方向は、レンズの垂直正中面に沿って測定される。縦座標にプロットされた視線方向の角度は、対象の眼の垂直方向の動きに対応する。横座標は、対象に適合した光学的特徴、ここでは屈折度数と比較した誤差を与える。したがって、横座標のゼロは、対象の適合された光学的特徴に等しい光学的特徴に対応する。
【0264】
レンズのサジタル度数及びタンジェンシャル度数は、レンズの収差を考慮して、それぞれの視線方向に対するレンズの最大及び最小度数を与えられる。この2つの曲線の水平方向の差異により、所与の視線方向におけるレンズの非点収差が与えられる。
【0265】
図8のグラフからわかり得るように、所定の光学設計により、所定の光学設計を有するレンズが、光学中心を中心とする小さい領域において対象に完全な視力を提供することになる。対象のグローバル感度Soverallが0.1である場合、この領域は、角度範囲[-17、+17度]である。この範囲を超えると、曲線は、縦座標の軸から離れ、レンズの度数が対象に適合された度数と異なることを示す。光学中心から30°離れた離心率において、度数誤差は、-0.17ジオプタ(D)であり、不要な非点収差は、0.39Dである。
【0266】
本発明によれば、このレンズの所定の光学設計は、対象がレンズで完全な視界を有する光学中心の周りにより大きいゾーンを有するように修正され得、すなわち最適化され得る。
【0267】
球面に対する感度が高く、円柱に対する感度が低い、すなわち球面のグローバル感度Sgsphの値が第1の球面の感度閾値を下回り、且つ円柱のグローバル感度Sgcyl、又はSgJ0、又はSJx0の値が第1の円柱の感度閾値を上回る対象の場合、所定の光学設計の修正は、光学中心の周りの所定の半径、例えば半径35°の円の内側のゾーンでの度数誤差を低減することを目的としている。
【0268】
高感度のための閾値は、例えば、0.06D~0.15D、優先的には0.125Dである。低感度のための閾値は、例えば、0.125~0.375D、優先的には0.15Dである。
【0269】
最適化のため、これらの条件を用いて第1の変更された設計が取得される。
【0270】
第1の修正された光学設計のレンズは、標準レンズと同じ屈折率、中心厚さ、前面、摩耗条件及びその2つの表面間のプリズムを有するが、複合背面は、2.75Dではなく、4Dのフロントベースカーブを有する単焦点レンズと同じ光学特性(視線方向の関数での度数及び非点収差誤差)に到達するように修正される。30°の離心率において、第1の修正された設計を有するレンズの度数誤差は、-0.02Dに減少し、不要な非点収差は、0.23Dに減少する。
【0271】
図9のグラフは、
図8と同様の規則で修正された光学設計を有するこのレンズの平均度数300、サジタル及びタンジェンシャル度数310、320を示している。
【0272】
図9からわかり得るように、平均度数曲線300、サジタル及びタンジェンシャル曲線310、320と縦座標軸との間の差異は、[-30、+30度]までの範囲でグローバル感度パラメータSoverall(0.1D)の値を下回ったままである。対象の完全な視力を有するゾーンは、確かにより大きい。
【0273】
円柱に対する感度が高く、球面に対する感度が低い、すなわち円柱のグローバル感度Sgcyl、又はSgJ0、又はSgJx0の値が第2の円柱の感度閾値を下回り、且つ球面のグローバル感度Sgsphの値が第2の球面の感度閾値を上回る対象の場合、修正は、光学中心の周りの所定の半径、例えば半径35°の円の内側のゾーンでの不要な非点収差を最小値に低減することを目的としている。
【0274】
最適化のため、これらの条件を用いて第2の変更された設計が取得される。
【0275】
第2の修正された光学設計のレンズは、所定の設計のレンズと同じ屈折率、中心厚さ、前面、摩耗条件及びその2つの表面間のプリズムを有するが、複合背面は、2.75Dではなく、6Dのフロントベースカーブを有する単焦点レンズと同じ光学特性(視線方向の関数での度数及び非点収差誤差)に到達するように最適化される。30°の離心率において、ここで、度数誤差が0.17Dに減少し、不要な非点収差も0.03Dに減少する。
【0276】
図10からわかり得るように、平均度数曲線400、サジタル及びタンジェンシャル曲線410、420と縦座標との間の差異は、[-22、+22度]までの範囲でグローバル感度パラメータSoverall(0.1D)の値を下回ったままである。対象の完全な視界を有するゾーンは、所定の光学設計を有するレンズよりも確かにより大きい。
【0277】
円柱及び球面に対して他の感度を有する対象の場合、所定の設計の修正は、光学中心の周りの所定の半径、例えば35°の半径の円の内側のゾーンでの度数誤差及び不要な非点収差値の両方の組み合わせを低減することを目的としている。
【0278】
最適化のため、これらの条件を用いて第3の変更された設計が取得される。
【0279】
第3の修正された光学設計のレンズは、標準レンズと同じ屈折率、中心厚さ、前面、摩耗条件及びその2つの表面間のプリズムを有するが、複合背面は、2.75Dではなく、5Dのフロントベースカーブを有する単焦点レンズと同じ光学特性(視線方向の関数での度数及び非点収差誤差)に到達するように最適化される。30°の離心率において、ここで、度数誤差が0.09Dに減少し、不要な非点収差も0.12Dに減少する。
【0280】
図11からわかり得るように、平均度数曲線500、サジタル及びタンジェンシャル曲線510、520と縦座標との間の差異は、[-30、+30度]までの範囲でグローバル感度パラメータSoverall(0.1D)の値を下回ったままである。対象の完全な視力を有するゾーンは、所定の光学設計を有するレンズよりも確かにより大きい。
【0281】
上記の例に示されているように、レンズの光学設計を最適化するために、異なるグローバル感度パラメータのいくつかの値を考慮することができる。
【0282】
通常、単焦点レンズは、対象の処方に従って計算され、処方を考慮して最適化することができる。この最適化は、度数誤差の低減と、レンズ全体の不要な非点収差の低減との間の妥協点を表す。球面(Sgsph)及び円柱(Sgcyl)に対する対象の感度を測定することにより、対象の感度に応じて最適化を調整することが可能である。
【0283】
累進焦点レンズの光学設計は、少なくとも1つのグローバル感度パラメータの値に従って最適化するために変更され得る。
【0284】
累進焦点レンズでは、設計の修正は、レンズの遠方視点と近方視点を中心とした完全な視力のゾーンを拡大することを目的とすることになる。
【0285】
対象の感度が高いほど、すなわちグローバル感度パラメータの値が低いほど、収差レベルの低いレンズを通じた視力のゾーンが大きくなる。
【0286】
低レベルの度数誤差と不要な非点収差を有する視力ゾーンのサイズは、グローバル感度のスコアに応じて変更することができる。
図12~
図14の例では、対象は、-4Dの遠方視力処方及び+2Dの加入度処方を有する。累進焦点レンズは、屈折率が1.665、中心の厚さが1.4mm、ベースカーブ(1.53で)の球面前面が2.75Dである。
【0287】
レンズの着用条件は、角膜レンズ距離が12mm、パントスコピック傾斜が-8°、ラップ角度が0°である。加入度の2/3に対応するプリズム基準点におけるレンズの2つの表面間のプリズムである。プリズム基準点は、累進焦点レンズ上にマークされた2つの微小円間に配置されている。これは、対象の眼の瞳孔の前に配置され、視線角度0°にあるフィッティングクロスの4mm下方に位置するポイントに対応する。
【0288】
例えば、このレンズの所定の光学設計を変更して、レンズの遠方視力ゾーンを最適化することが可能であり、すなわち対象のグローバル感度パラメータの値を考慮して、遠方視点を中心とする完全な視力ゾーンのサイズを増大させる。ここで、グローバル感度パラメータSoverallが考慮される。
【0289】
図12では、破線及び細い実線600、610、620は、低感度の対象に最適化されたレンズの光学的特徴(サジタル及びタンジェンシャル度数、平均度数)、すなわち第4の閾値を上回るグローバル感度パラメータの値並びに700、710、720の点線及び太い実線は、同じ処方であるが、非常に高感度の対象に最適化されたレンズの光学的特徴(サジタル及びタンジェンシャル度数、平均度数)、すなわち第5の閾値を下回るグローバル感度パラメータの値を表す。グローバル感度パラメータの高い値は、低い感度を示し、グローバル感度パラメータの低い値は、高い感度を示す。
【0290】
図12~
図14の交点FVに位置する遠方視力ゾーンでは、平均度数がわずかに広いゾーンで安定し、高感度の対象に最適化された光学設計のために、低い不要な非点収差ゾーンが拡大されている。
【0291】
光学中心は、
図13及び
図14でOCに参照されている。これらの
図13及び
図14では、アルファ及びベータは、垂直及び水平の視線方向角度である。
【0292】
感度は、製造及び/又は縁取り/取り付けプロセス中のトレランスとしても考慮され得る。
【0293】
特に、上述のように、本発明の方法に従って決定されたグローバルパラメータの値を使用して、対象の眼の屈折特徴及びこの対象が必要な矯正レンズの屈折特徴を決定するために実施されるテストプロトコルを適合させることができる。
【0294】
アイケア専門家は、屈折を決定するために使用されるデバイスの画面上に表示されるメッセージによってこの値を通知される。この情報に対してアイケア専門家の注意を引くために、視覚的又はサウンド警告信号が発出され得る。決定された値に応じて、アラート信号も発出され得る。例えば、感度が所定の閾値を超える対象に対して、例えば0.05D未満のグローバル感度パラメータの値に対してアラート信号が発出される。
【0295】
グローバル感度パラメータのこの値に基づいて、対象の屈折特徴を決定するためのテストプロトコルに関して、アイケア専門家に推奨が行われ得る。例えば、特定の機器、例えば高感度の対象に対して、カラム上に配置された屈折器などの精密な測定を提供する機器の使用が推奨され得る。
【0296】
対象に対して決定されたグローバル感度の値は、対象に推奨を行うためにアイケア施術者によっても使用され得る。これらの推奨は、例えば、処方を対象に渡す際に行われる。推奨は、グローバル感度パラメータの値の閾値との比較を考慮して適合され得る。
【0297】
グローバル感度パラメータの値には、処方を示すこともでき、所定の値の範囲内にある場合に下線を引くことができる。
【0298】
グローバル感度パラメータの値に関連する可能な推奨事項のうち、レンズのタイプの推奨を検討することが可能であり、例えば対象に正確な屈折特徴を提供するために、グローバル感度の高い対象に正確なレンズを推奨する必要がある。
【0299】
更に、所与のタイプのレンズを用いる対象の視覚的能力を、着用者及び着用者のグローバル感度に適合された屈折特徴の関数として推定することが可能である。そのような推定された視覚的能力は、レンズの光学収差に関連する予測された度数誤差及び結果として生じる非点収差を考慮し得る。視覚的能力をシミュレートして、対象に示すことができる。
【0300】
グローバル感度パラメータの値に基づいてフレームのタイプを推奨することもでき、グローバル感度が高い対象は、自らの顔に正確にフィットすることができ、フィットすると所定の位置に留まるフレームの恩恵を受け得る。それは、例えば、ノーズパッドを有するフレームの場合である。
【0301】
すでに上述したように、レンズの光学設計は、グローバル感度パラメータの値並びに視覚矯正機器を提供するプロセスの製造、カット、取り付け及びチェックのステップに基づいても変更され得る。レンズの製造を担当するラボが、対象のグローバル感度パラメータの値を含む注文を受け取ると、ラボは、注文されたレンズの実現可能性をチェックして注文を確認するか、又は代わりに対象に対する追加のパラメータ測定のリクエスト若しくはグローバル感度パラメータの値及びレンズの製造に必要となる精度のレベルに基づく、注文を達成するために必要な追加の遅延の表示を送信する場合がある。
【0302】
眼鏡店での配送時における機器の最終調整も適合でき、グローバル感度パラメータの値に応じて、対象の顔に眼鏡をフィッティングするために特別な注意が払われ得、高感度の対象には、正確なフィッティングが必要となる。
【0303】
最終的な推奨事項には、高感度の対象に、眼鏡のフィッティングをチェック及び調整するために定期的に来店して、且つまた感度パラメータの値に適合したテストプロトコルを用いて、対象の眼の現在の屈折をチェックするように推奨することが含まれ得る。
【0304】
高感度の対象には、フレーム調整の正確な制御又はフィッティングパラメータの再測定が必要であり得るが、低感度の対象は、その恩恵を受けない。
【0305】
対象に対してなされる商用オファーも、グローバル感度パラメータの値の関数として適合され得る。例えば、低感度の対象よりも新しい機器をより頻繁に入手する必要がある高感度の対象は、特定の商用オファーを得ることができる。
【0306】
正確な視覚矯正機器を提供するためのプロセス全体にわたってグローバル感度パラメータの値を考慮するために、この値を、このプロセスに関与する全ての当事者に送信する必要がある。
【0307】
この目的のために、グローバル感度パラメータの値は、対象の識別タグに関連付けられている。2つのデータの関連付けは、例えば、安全な方法によりオンラインでアクセス可能なサーバに記憶される。それは、本出願人が提供するサービスであるEyecloud(商標)に記憶され得る。
【0308】
データのセキュリティを提供するために、既知の暗号化方法が使用され得る。
【0309】
本明細書で説明するグローバル感度パラメータの値を考慮する方法は、画質、快適さ及び/又は対象のレンズへの適合を改善することができる。
【0310】
代わりに、グローバル感度パラメータを用いて本明細書で説明する任意の方法を、特定の感度パラメータの単一値と共に、簡略化されたモードで実施することができる。しかしながら、特定の感度パラメータの単一値は、精度及び信頼性が低いため、グローバル感度パラメータ値を使用して行われた改善と比較して改善度が劣ることになる。