(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】ローター軸受ハウジング、及びローター軸受ハウジングを備える風力タービン
(51)【国際特許分類】
F03D 80/50 20160101AFI20241209BHJP
F03D 80/70 20160101ALI20241209BHJP
F16C 19/36 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
F03D80/50
F03D80/70
F16C19/36
(21)【出願番号】P 2021514470
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 DE2019100474
(87)【国際公開番号】W WO2019233522
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-11-13
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】102018113760.5
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520446274
【氏名又は名称】エアロバイディ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】リース,マルクス
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】尾崎 和寛
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-519511(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0274074(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0148119(US,A1)
【文献】特開2015-68243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/50
F03D 80/70
F16C 19/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(100)のローター(120)を収納するローター軸受ハウジング(10)であって、該ローター軸受ハウジング(10)は、円形タワー接続部(20)と、ローターシャフト(130)に取り付けられるように互いに離隔した2つのリング軸受(30、40)を備えるローター軸受とを備え、
前記リング軸受(30、40)は、テーパー付きころ軸受として設計され、上から平面的に見て、前記タワー接続部(20)内に配置され、前記リング軸受(30、40)の有効軸受中心は、上から平面的に見て、前記タワー接続部(20)の外部に配置されることを特徴とする、ローター軸受ハウジング。
【請求項2】
請求項1に記載のローター軸受ハウジング(10)であって、下面に前記円形タワー接続部(20)が形成されるとともに、前記ローター軸受を収納す
る水平方向に延在するセクション(14)と一体化される
、鉛直方向に延在するセクション(12)を特徴とする、ローター軸受ハウジング。
【請求項3】
請求項2に記載のローター軸受ハウジング(10)であって、前記鉛直方向に延在するセクション(12)は、円錐形に設計されることを特徴とする、ローター軸受ハウジング。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のローター軸受ハウジング(10)であって、該ローター軸受ハウジング(10)は、
前記鉛直方向に延在するセクション(12)が
前記水平方向に延在するセクション(14)に交わることで形成され
、前記鉛直方向に延在するセクション(12)は中空円錐体であり、前記水平方向に延在するセクション(14)は中空円筒体であることを特徴とする、ローター軸受ハウジング。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載のローター軸受ハウジング(10)であって、前記鉛直方向に延在するセクション(12)において、前記タワー接続部(20)を通って該ローター軸受ハウジング(10)の前記鉛直方向に延在するセクション(12)内に入るために、第1のマンホールが配置され、該ローター軸受ハウジング(10)の前記鉛直方向に延在するセクション(12)から該ローター軸受ハウジング(10)の外側の領域に移動するために、前記鉛直方向に延在するセクション(12)の壁に第2のマンホール(50)が設けられることを特徴とする、ローター軸受ハウジング。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のローター軸受ハウジング(10)であって、前記タワー接続部(20)に対し
て90度の角度で延在し、発電機ハウジングを締結する接続フランジを特徴とする、ローター軸受ハウジング。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のローター軸受ハウジング(10)であって、
上から平面的に見て、前記リング軸受(30、40)の有効軸受中心を通る仮想軸は、前記タワー接続部(20)の中心点を通らないことを特徴とする、ローター軸受ハウジング。
【請求項8】
風力タービン(100)であって、タワー(110)と、該タワー(110)上に配置される、請求項1~7のいずれか1項に記載のローター軸受ハウジング(10)と、該ローター軸受ハウジング(10)内に取り付けられ、ローターシャフト(130)を備えるローター(120)と、ローターフランジを介して前記ローターシャフト(130)に接続されるローターハブ(140)と、該ローターハブ(140)に接続される少なくとも1つのローターブレード(150)と、前記ローターシャフト(130)に接続される発電機とを備える、風力タービン。
【請求項9】
請求項8に記載の風力タービン(100)であって、方位システムが、前記タワー(110)の上端部に配置され、互いに対して回転可能な2つの軸受部材を備え、前記ローター軸受ハウジング(10)は、前記方位システムの上側軸受部材を形成することを特徴とする、風力タービン。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の風力タービン(100)であって、前記リング軸受(30、40)間の距離は、方位システムの領域における前記タワー(110)の上側セクションの直径
に対応することを特徴とする、風力タービン。
【請求項11】
請求項10に記載の風力タービン(100)であって、前記方位システムの領域における前記タワー(110)の前記上側セクションの直径は、前記リング軸受(30、40)間の距離よりも最大で15%大きいことを特徴とする、風力タービン。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の風力タービン(100)であって、前記方位システムの領域における前記タワー(110)の前記上側セクションの直径は、前記リング軸受(30、40)間の距離よりも最大で10%大きいことを特徴とする、風力タービン。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか1項に記載の風力タービン(100)であって、前記ローターフランジの直径は、前記リング軸受(30、40)間の距離
に対応し、及び/又は方位システムの領域における前記タワー(110)の上側セクションの直径
に対応することを特徴とする、風力タービン。
【請求項14】
請求項8~13のいずれか1項に記載の風力タービンであって、前記ローターフランジの直径と、方位システムの領域における前記タワー(110)の上側セクションの直径とは、前記リング軸受(30、40)間の距離に対して最大で15%大きい又は小さいことを特徴とする、風力タービン。
【請求項15】
請求項8~14のいずれか1項に記載の風力タービンであって、前記ローターフランジの直径と、方位システムの領域における前記タワー(110)の上側セクションの直径とは、前記リング軸受(30、40)間の距離に対して最大で10%大きい又は小さいことを特徴とする、風力タービン。
【請求項16】
請求項8~15のいずれか1項に記載の風力タービン(100)であって、
上から平面的に見て、ローター軸は、前記タワーの中心の外側を通ることを特徴とする、風力タービン。
【請求項17】
請求項8~16のいずれか1項に記載の風力タービン(100)であって、前記ローター軸受ハウジング(10)の接続フランジは、前記発電機を収納する発電機ハウジング(160)に接続されることを特徴とする、風力タービン。
【請求項18】
請求項8~17のいずれか1項に記載の風力タービン(100)であって、前記ローターシャフト(130)は、ギアボックスを介して前記発電機に接続されることを特徴とする、風力タービン。
【請求項19】
請求項18に記載の風力タービン(100)であって、前記ギアボックス及び前記発電機は、ハイブリッドドライブとして設計されることを特徴とする、風力タービン。
【請求項20】
請求項8~19のいずれか1項に記載の風力タービン(100)であって、前記ローター軸受ハウジング(10)上に配置される方位ブレーキ(170)を特徴とする、風力タービン。
【請求項21】
請求項8~20のいずれか1項に記載の風力タービン(100)であって、前記風力タービン(100)は、ダウンウィンドランナーとして設計されることを特徴とする、風力タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形タワー接続部と、ローターを収納するように互いに離隔した2つのリング軸受を備えるローター軸受とを備える、風力タービンのローターを収納するローター軸受ハウジングに関する。本発明はまた、タワーと、タワー上に配置されるローター軸受ハウジングと、ローター軸受ハウジング内に取り付けられ、ローターシャフトを備えるローターと、ローターフランジを介してローターシャフトに接続されるローターハブと、ローターハブに接続される少なくとも1つのローターブレードと、ローターに接続される発電機とを備える風力タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギー、特に風力エネルギーに対する要求が世界的に高まっており、それに伴って、十分な風速を有する好適な風力タービン用地が急速に減少していることにより、より一層大型で強力な風力タービンが開発されるようになっている。タービン性能の増大により、ますます大きな質量及び寸法のコンポーネントを輸送し、組み立てることとなり、多くの場所で物流上の大きな課題を呈している。これに関して、そのような風力タービンのナセルの幅及び高さ並びに総重量は、道路輸送の許容可能な制限値を超えることがますます多くなっている。また、洋上区域におけるタービン性能を着実に増すには、風力タービン、基礎構造の構築、及び組立てのためのコストを更に低減するために、タワー頭部の質量及び寸法を低減する必要がある。
【0003】
したがって、新規の風力タービンの開発の1つの目的は、風力タービンのコスト効果性を増すために、ナセルの測定値及び寸法を常に可能な限り小さく維持し、製造コストを更に低減することである。ギアボックス変速比が小さい小型のギアボックス発電機ユニット及び中速の発電機(ハイブリッドドライブ)の使用は、特に大型の風力タービンの寸法、質量信頼性、コストの面で、ダイレクトドライブ式発電機と、高変速比のギアボックスを備える高速発電機とに伴う従来の2つのドライブトレイン構想間の最良の折衷点を呈する。
【0004】
特許文献1は、既に非常に小型の設計を示しているが、この場合、ローター軸受、ギアボックス、及び発電機が、風力タービンの力の流れにおいて、ローターハブとタワー頭部との間に配置され、これらのコンポーネントは、損傷の際に、ローター及びドライブトレイン全体を完全に分解することによってのみ交換することができるため、そのようなタービンのメンテナンスコストに悪影響を与えると同時に、これらのコンポーネントのハウジングが全てのローター荷重を伝達する必要があり、それにより、上述したコンポーネントの望ましくない変形につながり、さらに、コンポーネントの機能及び耐用寿命に悪影響を及ぼす可能性があり、したがって、ハウジングは、特に頑丈に設計しなければならない。
【0005】
特許文献2は、ギアボックス発電機ユニットに接続されており、したがって、ローター荷重がギアボックス及び発電機のハウジングを通して伝達されない、軸受ユニットを示している。しかしながら、当該の解決策の不都合点は、依然として、軸受ユニットを、複数の非円形フランジ螺合面によって、下方に位置する機械キャリアに接続する必要があり、したがって、軸受ユニット及び機械キャリアの好ましくない形状がもたらされ、それにより、フランジ面における応力ピークにつながり、フランジ面の更なる機械加工及び更なるねじ接続を必要とし、それにより、寸法、重量、及び製造コストの増大をもたらすことである。
【0006】
特許文献3は、管状支持構造体を示しているが、この管状支持構造体には、ローターの全ての力を吸収するように、ギアボックス支持構造体及び発電機支持構造体の一部が統合され、ローター軸受は、管状支持構造体の正面の別個のハウジング内に配置される。これにより、ローター荷重の力が円筒形支持構造体に不都合に導入され、追加で必要となるフランジ接続に起因して製造コストが増大し、ギアボックスの損傷の際に必要とされるナセルの完全な分解の問題が生じる。
【0007】
最後に、特許文献4は、例として、特に一部品として設計される、冒頭に記載のローター軸受ハウジングを示している。このローター軸受ハウジングは、円形タワー接続部を有し、その上に、水平方向に延在するセクションが配置され、このセクションにおいて、互いに離隔した2つのリング軸受がローターのローターシャフトを収納するように適応される。この設計の不都合点は、小型の風力タービンの形成を妨げる、設計に関連した、スペースをとる構造にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102007012408号
【文献】米国特許第8,907,517号
【文献】米国特許第4,527,072号
【文献】中国実用新案第201386629号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が対処する課題は、可能な限り最も小型かつ軽量の設計を有すると同時に、ナセル全体をタワーから持ち上げて分解する必要なく、重要なドライブトレインコンポーネントを現場で交換することが可能である、ナセルを創出することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記課題は、請求項1の特徴を有するローター軸受ハウジングによって解決される。この課題はまた、請求項8の特徴を有する風力タービンによって解決される。従属請求項のそれぞれは、本発明の有利な実施形態を記載する。
【0011】
本発明の基本構想は、ローター軸受ハウジングを、既知のように、ローター軸受ユニットとして機能すると同時に、ナセルの全てのコンポーネントを互いに接続する中央ユニットとして設計することである。その結果、いずれも他の設計ではナセルのコンポーネントを収納するのに用いられる、コンポーネントの機械キャリア、第2の軸受ハウジング、及び発電機キャリアは、不要となる。
【0012】
本発明によれば、1つのローター軸受ユニットのみを使用することにより、特に、風力タービンの機械部品の製造及び加工コストが著しく低減され、既知の風力タービンと比較した場合、ローターとともにドライブトレイン全体を分解することなく、ギアボックス発電機ユニットのモジュール性及び交換性を維持しながら、非常に小型の設計がもたらされる。
【0013】
特に、フランジ接続面上の2つのリング軸受を方位軸受に配置することにより、軸受に伝達される横断方向の力が、ローター軸受ユニットの下方構造に最適に伝動されることが確実になる。したがって、軸受間距離は、ローター軸受ハウジングの下側フランジ接続面の直径と本質的に同じである。
【0014】
ローター軸受ハウジングにおける力の流れにとって非常に有利である、交差する円筒体及び円錐体から本質的になる形状に伴って、ローター軸受ハウジングにおける応力及び変形は特に小さくなり、それにより、既知の従来の解決策と比較した場合、重量の著しい低減がもたらされる。
【0015】
また、本発明に従って非常に小型に設計されたローター軸受ハウジングにより、円形のローター表面と風力タービンのタワー壁との間の距離が小さくなる。好ましくはハイブリッドドライブとして設計される自己支持型の別個のギアボックス発電機ユニットのハウジングは、ローター軸受ハウジングに堅固に螺合され、すなわち、2つのコンポーネントの重量負荷を受ける更なる機械キャリア又は発電機キャリアも、ドライブトレインのトルクを吸収するためにギアボックスハウジングの両側に配置されるトルク支持部も省くことができる。
【0016】
ローターシャフト及びギアボックス入力シャフトは、補償カップリングによって、又は2つの部品間の固定されたフランジ接続部を介して接続される。別個の機械キャリア及びトルク支持部を省くことで、他の設計と比較した場合、ドライブトレインの全幅及び全長が著しく低減される。
【0017】
ローター軸受ハウジングは、下側フランジ接続部において方位軸受に螺合され、方位軸受を介してタワーの最上部分に直接回転可能な様式で接続される。ナセルの輸送幅を最小限にするために、方位軸受の直径は、可能な限り低減すべきである。非常に小型のローター軸受ハウジングによってもたらされる円形のローター表面とタワー軸との間の小さな距離と、方位軸受の可能な限り小さな直径とは、特に、ダウンウィンドランナー(lee-runner)としてのローターのダウンウィンド構成と、アクティブヨーシステムがないこと(自由ヨー又はパッシブヨーシステム)とによって実現することができる。
【0018】
ダウンウィンド構成では、通常動作中、発生する風力負荷に起因して、ローターブレードがタワーから離れる方に曲がることから、ダウンウィンド構成は、円形のローター表面とタワー壁との間に、アップウィンドランナーとしてのローターの通常のアップウィンド構成の場合よりもはるかに小さな距離を実現することが可能である。
【0019】
アクティブヨーシステムを備えるアップウィンド構成は、ナセルが風向をアクティブ方式で追跡することが可能であるように、タワーの鉛直軸の周りに特定のトルクを印加することが必要である。発生する風力は、通常、移動方向に反作用し、すなわち、移動方向を支持しない。アクティブヨーシステムの場合、上記所要トルクは、好適な数のヨードライブ及び十分に大径の方位軸受によって実現しなければならない。したがって、アクティブヨーシステムは、方位軸受の直径の所望の最小化を阻止する。
【0020】
しかしながら、パッシブヨーシステムを備える特に好ましいダウンウィンド構成では、風向計の原理に従って、ローター上に発生する風力負荷によってナセルがパッシブ方式で追跡されるため、ナセルのヨーシステムのために、タワーの鉛直軸の周りにトルクを発生させる必要がない。したがって、ヨードライブは必要とされず、方位軸受の直径は、伝達される曲げモーメントに基づき、専ら所望のとおりに寸法決め及び最小化することができる。
【0021】
それにもかかわらず、方位ブレーキは、ローター軸受ハウジング上に配置され、それにより、タワーに堅固に接続されたブレーキディスクに制動トルクを印加することができる。このために、方位ブレーキは、制動トルクをゼロから最大値の間で調整することができるように設計される。その結果、ナセルの方位運動は、或る特定の動作状態又はエラーの場合に、方位ブレーキの作動により、回転速度又は回転加速度の許容値に制限することができる。この制限は、特に、コンポーネントの過負荷及び損傷につながり得る、過剰なヨー速度又はヨー加速度に起因したタービンの許容不能な動作条件を回避するのに必要である。
【0022】
スリップリングユニットは、電力及び必要な制御信号を、回転するナセルから静止しているタワーに伝達する。したがって、アクティブヨーシステムを伴う構想では特定の最大限許容可能な回数だけナセルが回転した後に必要となる電源ケーブルの繰出しは、上述したようなスリップリングユニットを用いる場合、不要となる。
【0023】
パッシブヨーシステムは、平均風速及び他の風力パラメーターに応じた、平均風向からのナセル位置の特定の偏差をもたらす。この偏差は、パッシブヨーシステムでは、アクティブヨーシステムの場合に一般的であるようにアクティブ方式で補償することはできない。本発明によると好ましいように、ローター軸とタワーの鉛直軸との間の横方向オフセットを狙いどおり用いることによって、この風向偏差は、エネルギー収率の最大のパーセンテージで予想される風速に対して最小化することができる。
【0024】
したがって、本発明によれば、風力タービンのローターを収納するローター軸受ハウジングであって、ローター軸受ハウジングは、円形タワー接続部と、ローターシャフトに取り付けられるように互いに離隔した2つのリング軸受を備えるローター軸受とを備え、リング軸受は、上から見ると、タワー接続部内、すなわち、タワー接続部の円周内に配置される、ローター軸受ハウジングが提案される。このために、リング軸受は、リング軸受の有効軸受中心が、上から見るとタワー接続部の外部に配置されるように設計される。これは、特に、リング軸受がテーパー付きころ軸受として設計されることにより、容易に達成することができる。
【0025】
ローター軸受ハウジングは、下面に円形タワー接続部が形成されるとともに、ローター軸受を収納する本質的に水平方向に延在するセクションと一体化される、本質的に鉛直方向に延在するセクションを有することが更に好ましい。鉛直セクションは、特に円錐形に設計され、ローター軸受ハウジングは、中空円錐体が中空円筒体に交わることで形成されることが特に好ましい。
【0026】
鉛直方向に延在するセクションにおいて、タワー接続部を通ってローター軸受ハウジングの鉛直セクション内に入るための第1のマンホールと、ローター軸受ハウジングの鉛直セクションからローター軸受ハウジングの外部の領域に移動するための第2のマンホールとが設けられる。これにより、小型の構成が可能になると同時に、風力タービンタワーからローター軸受ハウジングを通って、ナセルの外装によって形成されるナセル内に至る通路がもたらされる。
【0027】
さらに、タワー接続部に対して本質的に90度の角度で延在する接続フランジを、発電機ハウジングを締結するために設けることが好ましい。
【0028】
更に好ましい実施形態によれば、仮想軸は、リング軸受の有効軸受中心を通り、タワー接続部の中心点を通らない。
【0029】
これに対応して、タワーと、タワー上に配置される、上述したような設計のローター軸受ハウジングと、ローター軸受ハウジング内に取り付けられ、ローターシャフトを備えるローターと、ローターフランジを介してローターシャフトに接続されるローターハブと、ローターハブに接続される少なくとも1つのローターブレードと、ローターシャフトに接続される発電機とを備える風力タービンも特許請求される。
【0030】
風力タービンは、タワーの上端部に配置され、互いに対して回転可能な2つの軸受部材を備える方位システムを備えることが好ましく、ローター軸受ハウジングは、方位システムの上側軸受部材を形成する。
【0031】
リング軸受間の距離は、方位システムの領域におけるタワーの上側セクションの直径に本質的に対応する。特に、方位システムの領域におけるタワーの上側セクションの直径は、リング軸受間の距離よりも最大で15%大きい。具体的には、方位システムの領域におけるタワーの上側セクションの直径は、リング軸受間の距離よりも最大で10%大きい。
【0032】
更に好ましい実施形態によれば、ローターフランジの直径はまた、リング軸受間の距離に本質的に対応し、及び/又は方位システムの領域におけるタワーの上側セクションの直径に本質的に対応する。ローターフランジの直径と、方位システムの領域におけるタワーの上側セクションの直径とは、リング軸受間の距離に対して最大で15%大きい又は小さいことが好ましい。ローターフランジの直径と、方位システムの領域におけるタワーの上側セクションの直径とは、リング軸受間の距離に対して最大で10%大きい又は小さいことが好ましい。
【0033】
この好ましい実施形態は、ローターからタワーへの最適な力の流れを達成する。
【0034】
ローター軸は、選択された幾何形状によってパッシブヨーシステムから生じる風向に対するナセルの傾きを相殺するために、タワーの中心の外側を通ることが好ましい。
【0035】
ローター軸受ハウジングの接続フランジは、発電機を収納する発電機ハウジングに接続されることが好ましい。ローターシャフトは、ギアボックスを介して発電機に接続されることが好ましい。ギアボックス及び発電機は、ハイブリッドドライブとして設計されることが好ましい。
【0036】
また、方位ブレーキが、ローター軸受ハウジング上に配置されることが好ましい。
【0037】
最後に、本発明に従って設計された風力タービンは、ダウンウィンドランナーとして設計されることが好ましい。
【0038】
本発明は、非常に小型の設計を達成し、風力タービンの信頼性を増し、同時に、ナセルを完全に分解することなく、故障のリスクが最も高いコンポーネントの交換を確実にする。これにより、他のドライブトレイン構想と比較して、本発明に従って設計された風力タービンの投資コスト及び耐用寿命コストに関する明確な利点が得られる。
【0039】
以下、本発明を、添付図面に示されている特定の好ましい構成の実施形態を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】ナセルの領域における特に好ましい構成の風力タービンの概略断面図である。
【
図2】ナセルの外装を伴わない、
図1の風力タービンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、ナセルの領域における、特に好ましくはダウンウィンドランナーとして構成された、本発明に係る風力タービンの概略断面図を示している。
【0042】
特に好ましい構成の風力タービン100は、タワー110と、本発明に従って構成され、タワー110上に配置されるローター軸受ハウジング10と、ローター軸受ハウジング10内に取り付けられたローターシャフト130を備えるローター120と、ローターフランジを介してローターシャフト130に接続されるローターハブ140と、ローターハブ140に接続される複数のローターブレード150と、発電機ハウジング160によって収納され、ローターシャフト130に接続される発電機とを備える。
【0043】
ローター軸受ハウジング10は、方位システムの上側軸受部材を形成する円形タワー接続部20を有して設計されていることを明らかに見て取ることができる。ローター軸受ハウジング10は、互いに離隔した、テーパー付きころ軸受として設計される2つのリング軸受30、40も収容する。断面図に示されているように、リング軸受30、40は、タワー接続部20の円周内に配置され、リング軸受30、40は、リング軸受30、40の有効軸受中心がタワー円周の外部にあるように設計される。
【0044】
リング軸受30、40間の距離は、方位システムの領域におけるタワー110の上側セクションの直径におおよそ対応する。この場合、方位システムの領域におけるタワー110の上側セクションの直径と、リング軸受30、40間の距離との差は、リング軸受30、40間の距離に対して(relative to)10%未満である。
【0045】
また、ローターフランジの直径は、本質的にリング軸受30、40間の距離に対応し、方位システムの領域におけるタワー110の上側セクションの直径にも本質的に対応する。図示の例では、リング軸受30、40間の距離に対する、ローターフランジの直径と、方位システムの領域におけるタワー110の上側セクションの直径との差は、リング軸受間の距離に対して±10%未満である。
【0046】
最後に、
図2は、ナセルの外装を伴わない、
図1の風力タービンの斜視図を示している。
【0047】
ダウンウィンドランナーとして設計された風力タービン100のタワー110上に回転可能に配置されるローター軸受ハウジング10は、下面に円形タワー接続部20が形成される本質的に鉛直方向に延在するセクション12と、ローター軸受を収納する本質的に水平方向に延在するセクション14とを形成することを明らかに見て取ることができる。この場合、2つのセクション12、14は、一部品として設計され、鉛直セクション12は、円錐形に設計され、水平セクションは、円筒形に設計される。特に、ローター軸受ハウジング10は、中空円錐体12が中空円筒体14に交わることで形成される。
【0048】
鉛直方向に延在するセクション12において、タワー接続部20を通ってローター軸受ハウジング10の鉛直セクション12内に入るために、第1のマンホールが配置され、ローター軸受ハウジング10の鉛直セクション12からローター軸受ハウジング10の外部の領域に移動するために、鉛直セクション12の鉛直方向に延在する壁に配置された第2のマンホール50が設けられる。
【0049】
最後に、
図2において、風力タービン100は、ローター軸受ハウジング10に配置された方位ブレーキ170を備えることも見て取ることができる。
【符号の説明】
【0050】
10:ローター軸受ハウジング
12:セクション
14:セクション
14:中空円筒体
12:中空円錐体
20:円形タワー接続部
30、40:リング軸受
50:第2のマンホール
100:風力タービン
110:タワー
120:ローター
130:ローターシャフト
140:ローターハブ
150:ローターブレード
160:発電機ハウジング
170:方位ブレーキ