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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】連結体、及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/14 20060101AFI20241209BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
H02K1/14 Z
H02K1/18 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021518321
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2020015419
(87)【国際公開番号】W WO2020226011
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-10-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2019089192
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593016411
【氏名又は名称】住友電工焼結合金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】上野 友之
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠一
【合議体】
【審判長】小宮 慎司
【審判官】松永 稔
【審判官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-44941(JP,A)
【文献】特開2005-39969(JP,A)
【文献】特開2006-280052(JP,A)
【文献】特開2008-92674(JP,A)
【文献】特開2004-71861(JP,A)
【文献】特開平5-168208(JP,A)
【文献】実開昭53-78508(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/00-1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機のコアの少なくとも一部を構成する第一部材と、
前記第一部材とは別体の第二部材と、
前記第二部材を貫通して前記第一部材に至り、前記第一部材と前記第二部材とを連結するタッピングネジと、を備え、
前記第一部材が、前記コアであり、
前記第二部材が、前記コアを収納するハウジングであり、
前記第一部材は、軟磁性粉末の圧粉成形体によって構成されており、
前記第一部材の相対密度が90%以上であり、
前記タッピングネジは磁性体であり、
前記第一部材と前記第二部材のうち、少なくとも前記第一部材は、前記タッピングネジの山部が食い込む下穴を備え、
前記下穴の内径が、前記タッピングネジの山の径の83%以上95%以下で、かつ前記タッピングネジの谷の径よりも大きく、
前記タッピングネジの外周面と前記下穴の内周面とで囲まれる螺旋状の隙間を備え、
前記タッピングネジの軸線を含む平面で切断した断面において、所定領域に占める前記隙間の面積が45%以上65%以下であり、
前記所定領域は、
前記軸線の方向に隣接する一方の山部の頂点と他方の山部の頂点とを結ぶ第一直線と、
前記タッピングネジの谷底を含み、前記谷底に沿って延びる第二直線と、
前記一方の山部の頂点から前記軸線に直交する方向に延びる第三直線と、
前記他方の山部の頂点から前記軸線に直交する方向に延びる第四直線とで囲まれる領域であり、
前記下穴の底部と、前記タッピングネジの先端との距離が0.5mm以上5mm以下である、
連結体。
【請求項2】
回転電機のコアの少なくとも一部を構成する第一部材と、
前記第一部材とは別体の第二部材と、
前記第二部材を貫通して前記第一部材に至り、前記第一部材と前記第二部材とを連結するタッピングネジと、を備え、
前記第一部材が、前記コアに用いられるティースであり、
前記第二部材が、前記コアに用いられるヨーク、または前記ティースの端部に設けられる鍔部であり、
前記第一部材および前記第二部材がいずれも、軟磁性粉末の圧粉成形体によって構成されており、
前記第一部材および前記第二部材の相対密度がいずれも90%以上であり、
前記タッピングネジは磁性体であり、
前記第一部材と前記第二部材のうち、少なくとも前記第一部材は、前記タッピングネジの山部が食い込む下穴を備え、
前記下穴が、前記第一部材から前記第二部材にわたって設けられており、
前記下穴の内径が、前記タッピングネジの山の径の83%以上95%以下で、かつ前記タッピングネジの谷の径よりも大きく、
前記タッピングネジの外周面と前記下穴の内周面とで囲まれる螺旋状の隙間を備え、
前記タッピングネジの軸線を含む平面で切断した断面において、所定領域に占める前記隙間の面積が45%以上65%以下であり、
前記所定領域は、
前記軸線の方向に隣接する一方の山部の頂点と他方の山部の頂点とを結ぶ第一直線と、
前記タッピングネジの谷底を含み、前記谷底に沿って延びる第二直線と、
前記一方の山部の頂点から前記軸線に直交する方向に延びる第三直線と、
前記他方の山部の頂点から前記軸線に直交する方向に延びる第四直線とで囲まれる領域であり、
前記下穴の底部と、前記タッピングネジの先端との距離が0.5mm以上5mm以下である、
連結体。
【請求項3】
前記軟磁性粉末は、表面に絶縁被膜を有する軟磁性粒子の集合体であり、
前記軟磁性粒子は、純鉄、Fe-Si-Al系合金、Fe-Si系合金、Fe-Al系合金、およびFe-Ni系合金から選択される少なくとも一種である請求項1または請求項2に記載の連結体。
【請求項4】
前記タッピングネジが、B-0タイプ又はB-1タイプである請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の連結体。
【請求項5】
前記タッピングネジの先端側の山部の角度が、根元側の山部の角度よりも小さい請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の連結体。
【請求項6】
前記磁性体は、鋼又は磁性ステンレスである請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の連結体。
【請求項7】
前記第一部材における前記下穴に、前記山部が5山以上食い込んでいる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の連結体。
【請求項8】
前記下穴の内周面が、前記下穴の軸線に対して1°以上10°以下の傾きを有するテーパー形状を備える請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の連結体。
【請求項9】
前記タッピングネジの軸線を含む平面で切断した断面において、前記下穴の内周面から前記下穴の軸線に直交する方向に向う前記第一部材の厚み、及び前記第二部材の厚みが2mm以上である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の連結体。
【請求項10】
前記螺旋状の隙間に配置される充填材を備える請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の連結体。
【請求項11】
前記タッピングネジの頭部が、皿型、トラス型、又はバインド型である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の連結体。
【請求項12】
ロータとステータとが、前記ロータの回転軸の軸方向に並ぶアキシャルギャップ型の回転電機であって、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の連結体を含む、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、連結体、及び回転電機に関する。
本出願は、2019年5月9日付の日本国出願の特願2019-089192に基づく優先権を主張し、前記日本国出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機及び発電機などの回転電機として、特許文献1には、ロータとステータとが、ロータの回転軸に沿った方向に対向して配置されるアキシャルギャップ型の回転電機が開示されている。この回転電機に用いられるステータは、バックヨーク及び複数のティースを有する電機子コアと、各ティースに配置されるコイルとを備える。
【0003】
特許文献1のコアは、別々に作製されたティースとヨークとが連結された連結体である。より具体的には、ティースに備わる柱状の凸部と、ヨークに備わる凹部とが嵌め合わされて、コアが作製されている。また、特許文献1では、ヨークが積層鋼板によって構成され、ティースが圧粉成形体である圧粉磁心で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2007/114079号
【発明の概要】
【0005】
本開示の連結体は、
軟磁性粉末の圧粉成形体によって構成される第一部材と、
前記第一部材とは別体の第二部材と、
前記第二部材を貫通して前記第一部材に至り、前記第一部材と前記第二部材とを連結するタッピングネジと、を備え、
前記第一部材と前記第二部材のうち、少なくとも前記第一部材は、前記タッピングネジの山部が食い込む下穴を備え、
前記下穴の内径が、前記タッピングネジの山の径の83%以上95%以下で、かつ前記タッピングネジの谷の径よりも大きく、
前記タッピングネジの外周面と前記下穴の内周面とで囲まれる螺旋状の隙間を備える。
【0006】
本開示の回転電機は、
ロータとステータとが、前記ロータの回転軸の軸方向に並ぶアキシャルギャップ型の回転電機であって、
本開示の連結体を含む。
ここで、本開示の連結体は、以下のいずれかである。
(1)前記第一部材が、回転電機のコアに用いられるティースであり、前記第二部材が、前記コアに用いられるヨークである本開示の連結体。
(2)前記第一部材が、回転電機のコアに用いられるティースであり、前記第二部材が、前記ティースの端部に設けられる鍔部である本開示の連結体。
(3)前記第一部材が、ティースとヨークとを備え、回転電機に用いられるコアであり、前記第二部材が、前記コアを収納するハウジングである本開示の連結体。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態1に示されるアキシャルギャップ型の回転電機の部分縦断面図である。
図2図2は、実施形態1に示されるアキシャルギャップ型の回転電機に備わるステータのコアの概略斜視図である。
図3図3は、図2のコアの一部を、ティースが設けられる側と反対側から見た概略斜視図である。
図4図4は、図2のコアにおけるタッピングネジの軸方向に沿った部分断面図である。
図5図5は、図4の一部を拡大した部分拡大図である。
図6図6は、実施形態1のコアにおけるタッピングネジの軸方向に沿った断面の写真を示す図である。
図7図7は、実施形態2に示されるアキシャルギャップ型の回転電機の部分縦断面図である。
図8図8は、実施形態3に示されるアキシャルギャップ型の回転電機の部分縦断面図である。
図9図9は、実施形態4に示されるアキシャルギャップ型の回転電機の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1の構成では、ティースがヨークの凹部に圧入される、あるいはティースがヨークの凹部に接着剤で固定される。しかし、圧入によるティースの固定、及び接着剤によるティースの固定は煩雑である。従って、より簡便な構成で連結される連結体が求められている。
【0009】
本開示は、簡便な構成で連結された生産性に優れる連結体を提供することを目的の一つとする。また、本開示は、上記連結体を備える回転電機を提供することを別の目的の一つとする。
【0010】
[本開示の効果]
本開示の連結体は、生産性に優れる。また、本開示の回転電機は、生産性に優れる。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
本発明者らは、圧粉成形体のティースと、ヨークとをネジで固定することを検討した。圧粉成形体は脆いため、通常、圧粉成形体が別の部材に固定されるときにネジが用いられることはない。なぜなら、圧粉成形体にネジ穴を加工する際、及びネジ穴にネジを取り付ける際に圧粉成形体に亀裂などが生じるためである。本発明者らは、検討の結果、上記問題点を解決できる構成を見い出した。具体的には、第一部材と第二部材とをタッピングネジによって連結すると共に、タッピングネジの寸法に対してタッピングネジが取り付けられる下穴の寸法を最適化することで、上記問題点が解決される。
【0012】
以下、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0013】
<1>実施形態に係る連結体は、
軟磁性粉末の圧粉成形体によって構成される第一部材と、
前記第一部材とは別体の第二部材と、
前記第二部材を貫通して前記第一部材に至り、前記第一部材と前記第二部材とを連結するタッピングネジと、を備え、
前記第一部材と前記第二部材のうち、少なくとも前記第一部材は、前記タッピングネジの山部が食い込む下穴を備え、
前記下穴の内径が、前記タッピングネジの山の径の83%以上95%以下で、かつ前記タッピングネジの谷の径よりも大きく、
前記タッピングネジの外周面と前記下穴の内周面とで囲まれる螺旋状の隙間を備える。
【0014】
上記連結体は、第一部材と第二部材とをタッピングネジ(tapping screw)によって固定するだけで作製される。圧入による固定および接着剤による固定に比べて、タッピングネジによる固定は容易である。従って、上記連結体は生産性に優れる。
【0015】
上記連結体では、タッピングネジが取り付けられる下穴の内径が、タッピングネジの山の径の83%以上で、タッピングネジの谷の径よりも大きい。下穴の内径がタッピングネジの山の径の83%以上であれば、タッピングネジの山部によって下穴に過剰な応力が作用することが抑制される。また、下穴の内径がタッピングネジの谷の径よりも大きければ、タッピングネジの軸部によって下穴が径方向の外方に押し広げられることが無い。従って、実施形態に係る連結体には、亀裂などの不具合が生じ難い。また、下穴の内径がタッピングネジの山の径の95%以下であれば、タッピングネジが緩み難く、第一部材と第二部材とをしっかりと固定できる。
【0016】
<2>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記第二部材が、軟磁性粉末の圧粉成形体によって構成され、
前記下穴が、前記第一部材から前記第二部材にわたって設けられている形態が挙げられる。
【0017】
上記構成では、第一部材と第二部材が共に、軟磁性粉末の圧粉成形体である。このような構成においても、下穴の内径が、タッピングネジの寸法に応じて最適に選択されていることで、第一部材と第二部材とに亀裂などが生じ難い。
【0018】
<3>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記タッピングネジの軸線を含む平面で切断した断面において、所定領域に占める前記隙間の面積が45%以上65%以下であり、
前記所定領域は、
前記軸線の方向に隣接する一方の山部の頂点と他方の山部の頂点とを結ぶ第一直線と、
前記タッピングネジの谷底を含み、前記谷底に沿って延びる第二直線と、
前記一方の山部の頂点から前記軸線に直交する方向に延びる第三直線と、
前記他方の山部の頂点から前記軸線に直交する方向に延びる第四直線とで囲まれる領域である形態が挙げられる。
【0019】
上記所定領域に占める上記隙間の面積が45%以上65%以下であれば、下穴に対するタッピングネジの食い込み量が適切であると言える。従って、上記所定領域に占める上記隙間の面積が45%以上65%以下である連結体は、タッピングネジによる第一部材と第二部材との固定が強固な連結体であると言える。また、圧粉成形体に亀裂などが生じ難い連結体であるとも言える。
【0020】
<4>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記タッピングネジが、B-0タイプ又はB-1タイプである形態が挙げられる。
【0021】
B-0タイプのタッピングネジは、主として樹脂材を固定することに利用される。また、B-1タイプのタッピングネジは、樹脂材を固定することに利用されるタッピングネジであって、その先端に切り刃となる溝が形成されたタッピングネジである。これらのタッピングネジは、圧粉成形体の固定に好適である。
【0022】
<5>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記タッピングネジの先端側の山部の角度が、根元側の山部の角度よりも小さい形態が挙げられる。
【0023】
山部の角度、即ちネジ山の角度とは、タッピングネジをその軸方向に切断したとき、山部の頂点を挟む二つの面のなす角である。つまり、山部の角度が小さいということは、山部の厚みが薄く、山部が鋭利といえる。このようなタッピングネジは、下穴にねじ込み易い。
【0024】
<6>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記タッピングネジが非磁性体である形態が挙げられる。
【0025】
連結体が回転電機のコアに利用される場合、タッピングネジが非磁性体であれば、タッピングネジによるコアロスが低減される。
【0026】
<7>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記非磁性体は、樹脂、チタン合金、黄銅、アルミニウム合金、マグネシウム合金、又は非磁性ステンレスである形態が挙げられる。
【0027】
上述される材料は、タッピングネジに求められる強度を備える。
【0028】
<8>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記タッピングネジが磁性体である形態が挙げられる。
【0029】
連結体が回転電機のコアに利用される場合、タッピングネジが磁性体であれば、タッピングネジによる回転電機のトルクの低下が抑制される。
【0030】
<9>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記磁性体は、鋼又は磁性ステンレスである形態が挙げられる。
【0031】
上述される材料は、タッピングネジに求められる強度を備える。
【0032】
<10>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記第一部材における前記下穴に、前記山部が5山以上食い込んでいる形態が挙げられる。
【0033】
本明細書において、1山の山部とは1ピッチ分の山部を意味する。下穴に対して5山以上の山部が食い込んでいることで、第一部材と第二部材との固定が強固になる。
【0034】
<11>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記下穴の底部と、前記タッピングネジの先端との距離が0.5mm以上5mm以下である形態が挙げられる。
【0035】
上記距離が0.5mm以上であれば、タッピングネジの先端が下穴の底部を押圧することが無い。従って、タッピングネジの先端による第一部材の損傷が抑制される。また、上記距離が5mm以下であれば、第一部材の実体部分が十分に確保される。従って、第一部材の磁気特性の低下が抑制される。
【0036】
<12>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記下穴の内周面が、前記下穴の軸線に対して1°以上10°以下の傾きを有するテーパー形状を備える形態が挙げられる。
【0037】
所定のテーパー形状を有する下穴は、成形によって設けられ得る。例えば、下穴を設けるための中子を備える金型を用いて圧粉成形体を作製することが挙げられる。この場合、下穴がテーパー形状を有していれば、圧粉成形体から中子が抜け易くなる。成形によって圧粉成形体に下穴を作製する場合、圧粉成形体に機械加工を施す必要が無くなる。従って、圧粉成形体に亀裂などが生じ難い。
【0038】
<13>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記タッピングネジの軸線を含む平面で切断した断面において、前記下穴の内周面から前記軸線に直交する方向に向う前記第一部材の厚み、及び前記第二部材の厚みが2mm以上である形態が挙げられる。
【0039】
上記構成では、下穴の径方向外方における第一部材と第二部材の肉厚が十分に確保される。従って、タッピングネジによって第一部材と第二部材とが固定される際、第一部材と第二部材に亀裂などが生じ難い。
【0040】
<14>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記螺旋状の隙間に配置される充填材を備える形態が挙げられる。
【0041】
充填材は、タッピングネジによる固定の前に下穴に充填されていることが好ましい。下穴に充填材が配置されることで、下穴に対してタッピングネジが取り付けられる際に、圧粉成形体に亀裂などが生じ難くなる。タッピングネジと下穴との摩擦が減少するからである。また、下穴の内周面とタッピングネジの外周面との隙間に充填材が充填されることで、圧粉成形体の強度が向上する。
【0042】
<15>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記タッピングネジの頭部が、皿型、トラス型、又はバインド型である形態が挙げられる。
【0043】
上記形状の頭部を有するタッピングネジは、第一部材と第二部材との連結に好適である。
【0044】
<16>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記第一部材の相対密度が90%以上であり、
前記第二部材が軟磁性粉末の圧粉成形体であり、前記第二部材の相対密度も90%以上である形態が挙げられる。
【0045】
第一部材及び第二部材の相対密度は、後述する実施形態に示されるように、画像解析などによって求められる。
【0046】
相対密度が90%以上の圧粉成形体は磁気特性に優れる。また、相対密度が90%以上の圧粉成形体は強度に優れる。従って、タッピングネジによる第一部材と第二部材との固定時に、圧粉成形体に割れ、又は欠けなどが生じ難い。
【0047】
<17>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記第一部材が、回転電機のコアに用いられるティースであり、
前記第二部材が、前記コアに用いられるヨークである形態が挙げられる。
【0048】
上記構成では、ヨークに対するティースの固定が容易である。
【0049】
<18>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記第一部材が、回転電機のコアに用いられるティースであり、
前記第二部材が、前記ティースの端部に設けられる鍔部である形態が挙げられる。
【0050】
上記構成では、ティースに対する鍔部の固定が容易である。
【0051】
<19>実施形態に係る連結体の一形態として、
前記第一部材が、ティースとヨークとを備え、回転電機に用いられるコアであり、
前記第二部材が、前記コアを収納するハウジングである形態が挙げられる。
【0052】
上記構成では、ハウジングに対するコアの固定が容易である。
【0053】
<20>実施形態に係る回転電機は、
ロータとステータとが、前記ロータの回転軸の軸方向に並ぶアキシャルギャップ型の回転電機であって、
上記<17>から<19>のいずれかの連結体を含む。
【0054】
上記回転電機は生産性に優れる。回転電機を構成する一部の部品が、生産性に優れる本開示の連結体であるからである。
【0055】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る連結体、及び連結体を用いた回転電機の具体例を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一又は相当部分を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0056】
<実施形態1>
実施形態1では、本開示の連結体1として、図1に示される回転電機100に備わるコア30が説明される。
【0057】
≪回転電機≫
回転電機100は、発電機でも良いし、モータなどの電動機でも良い。回転電機100は、ハウジング9内に配置されるロータ2とステータ3とを備える。本例の回転電機100は、ロータ2とステータ3とが、ロータ2の回転軸方向に並ぶアキシャルギャップ型の回転電機100である。
【0058】
・ロータ
ロータ2は、平板状の複数の磁石22と、これら磁石22を支持する円環形状の保持板21とを備える。保持板21は、シャフト20に固定され、シャフト20と共に回転する。磁石22は保持板21に埋め込まれている。磁石22は、シャフト20の周方向に間隔をあけて配置されている。また、磁石22は、ロータ2の回転軸方向、即ちシャフト20の軸方向に着磁されている。シャフト20の周方向に隣り合う磁石22の磁化方向は互いに逆になっている。
【0059】
・ステータ
ステータ3は、コア30と、コア30のティース4に配置されるコイル31とを備える。本例の回転電機100は、二つのステータ3を備える。一方のステータ3のティース4の端面と、他方のステータ3のティース4の端面とが対向されている。両ステータ3,3は、シャフト20の軸方向にロータ2に対向して配置され、ハウジング9に固定されている。そのため、ロータ2は、二つのステータ3,3に挟まれる。ステータ3とシャフト20との間には軸受33が配置されており、ステータ3は回転しない。本例のステータ3に備わるコア30は、本開示の連結体1である。
【0060】
≪コア≫
図1から図3に示されるように、本例の連結体1であるコア30は、ティース4とヨーク5とを備える。本例のコア30は、6個のティース4を備える(図2)。ティース4の数は特に限定されない。回転電機100が3相交流で使用される場合、ティース4の数は3n個とする。nは自然数である。本例では、ティース4が第一部材11(図4)であり、ヨーク5が第二部材12(図4)である。ティース4とヨーク5とは別個に作製される。
【0061】
・ティース
本例のティース4は、概略台形柱状の部材である。ティース4の形状は特に限定されない。例えば、ティース4は概略三角柱状であっても構わない。その他、ティース4の形状は、円柱状や四角柱状などでも良い。ティース4におけるヨーク5と反対側の端部に鍔部が設けられていても良い。鍔部は、ティース4の突出方向に直交する方向に張り出す部材であって、ティース4に一体に設けられる。
【0062】
ティース4は、軟磁性粉末が圧縮成形されてなる圧粉成形体である。軟磁性粉末は、軟磁性粒子の集合体である。軟磁性粉末としては、例えば、純度99質量%以上の純鉄、及び、Fe-Si-Al系合金、Fe-Si系合金、Fe-Al系合金、Fe-Ni系合金などの鉄基合金から選択される少なくとも一種の粉末が挙げられる。Feは鉄、Siはシリコン、Alはアルミニウム、Niはニッケルである。Fe-Si-Al系合金としてはセンダスト、Fe-Si系合金としてはケイ素鋼、Fe-Ni系合金としてはパーマロイが挙げられる。軟磁性粒子は、その表面に絶縁被覆を有することが好ましい。軟磁性粒子の表面に絶縁被覆が形成されていることで、軟磁性粒子同士の電気的絶縁を確保できる。そのため、渦電流損に起因するティース4の鉄損が低減される。絶縁被覆としては、例えば、リン酸塩被覆やシリカ被覆などが挙げられる。
【0063】
軟磁性粒子の平均粒径は、10μm以上300μm以下であることが好ましい。軟磁性粒子の平均粒径が10μm以上であれば、圧粉成形体の保磁力およびヒステリシス損の増加が抑制される。軟磁性粒子の平均粒径が300μm以下であれば、高周波域において発生する圧粉成形体の渦電流損が低減される。より好ましい軟磁性粒子の平均粒径は、40μm以上260μm以下である。ここで、平均粒径とは、粒径のヒストグラム中、粒径の小さい粒子からの質量の和が総質量の50%に達する粒子の粒径、つまり50%粒径をいう。
【0064】
圧粉成形体の相対密度は90%以上であることが好ましい。圧粉成形体が高密度化することで、圧粉成形体の磁気特性が向上する。圧粉成形体の相対密度は、好ましくは93%以上、より好ましくは94%以上、さらに好ましくは95%以上である。上記相対密度は、圧粉成形体の実際の密度を真密度で除した値である。実際の密度は、アルキメデス法によって圧粉成形体の体積を測定し、圧粉成形体の質量を測定した体積で除することで求める。真密度は、ピクノメータなどの測定装置を用いることで得られる。
【0065】
・ヨーク
ヨーク5は円環形状の部材である。本例のヨーク5は一つの部材で構成されている。ヨーク5は複数の分割片を組み合わせて構成されていても良い。例えば、扇状の分割片が繋ぎ合わされることで、円環形状のヨーク5が作製されていても良い。
【0066】
ヨーク5は、ティース4と同様に圧粉成形体によって構成されている。ヨーク5を構成する圧粉成形体の組成は、ティース4を構成する圧粉成形体の組成と同じでも良いし、異なっていても良い。また、ヨーク5の相対密度も、ティース4の相対密度と同じでも良いし、異なっていても良い。但し、ヨーク5の相対密度は、90%以上であることが好ましい。
【0067】
・ティースとヨークとの連結構造
コア30を構成するティース4とヨーク5とは、タッピングネジ6によって固定される。タッピングネジ6は、ヨーク5におけるティース4とは反対側の面からティース4に向って取り付けられている。コア30、ティース4、及びヨーク5はそれぞれ、連結体1、第一部材11、及び第二部材12である。
【0068】
図4,5に示されるように、本例の連結体1には、第二部材12を貫通して第一部材11に至る下穴7が設けられている。つまり、下穴7は、第一部材11から第二部材12にわたって設けられている。下穴7は、第二部材12に設けられる貫通穴と、第一部材11に設けられる止まり穴とで構成される。貫通穴と止まり穴は同軸になっている。また、貫通穴の内径は止まり穴の内径と同一、もしくは止まり穴の内径よりも大きい。この下穴7は、第一部材11と第二部材12に予め設けられる。この下穴7の内周面にタッピングネジ6の山部65(図5)が食い込んでいる。
【0069】
下穴7には、5山以上の山部65が食い込んでいることが好ましい。具体的には、下穴7のうち、第一部材11に対応する部分に、5山以上の山部65が食い込んでいることが好ましい。下穴7に対して5山以上の山部65が食い込んでいることで、第一部材11と第二部材12との固定が強固になる。
【0070】
図5に示されるように、下穴7の内径hは、タッピングネジ6の山の径dの83%以上95%以下で、かつタッピングネジ6の谷の径d1よりも大きい。山の径dは、タッピングネジ6における山部65の頂点65tに対応する部分の径である。谷の径d1は、谷部66の底部である谷底に対応する部分の径である。下穴7の内径hがタッピングネジ6の山の径dの83%以上であれば、タッピングネジ6の山部65によって下穴7に過剰な応力が作用することが抑制される。下穴7の内径hがタッピングネジ6の山の径dの95%以下であれば、山部65が十分に下穴7に食い込む。また、下穴7の内径hがタッピングネジ6の谷の径d1よりも大きければ、タッピングネジ6の軸部60によって下穴7が径方向の外方に押し広げられることが無い。従って、圧粉成形体によって構成される第一部材11及び第二部材12には、亀裂などの不具合が生じ難い。
【0071】
下穴7の内径hの好ましい値は、タッピングネジ6の山の径dの84%以上94%以下である。下穴7の内径hの更に好ましい値は、タッピングネジ6の山の径dの85%以上93%以下である。
【0072】
タッピングネジ6の谷部66は、下穴7に接触しない(図6の実物の写真も合わせて参照)。従って、本例の連結体1には、タッピングネジ6の外周面と、下穴7の内周面とで囲まれる螺旋状の隙間8が形成される。タッピングネジ6の外周面とは、具体的には山部65の外周面、及び谷部66の外周面である。
【0073】
図5に示されるタッピングネジ6の軸線を含む平面で切断した断面において、所定領域80に占める隙間8の面積は45%以上65%以下であることが好ましい。所定領域80は、上記断面における第一直線L1と第二直線L2と第三直線L3と第四直線L4とで囲まれる領域である。第一直線L1は、軸線の方向に隣接する一方の山部65の頂点65tと、他方の山部65の頂点65tとを結ぶ直線である。第二直線L2は、タッピングネジ6の谷部66の底部である谷底を含み、上記谷底に沿って延びる直線である。第三直線L3は、一方の山部65の頂点65tから上記軸線に直交する方向に延びる直線である。第四直線L4は、他方の山部65の頂点65tから上記軸線に直交する方向に延びる直線である。
【0074】
所定領域80に占める隙間8の面積が45%以上65%であれば、下穴7に対するタッピングネジ6の食い込み量が適切であると言える。従って、所定領域80に占める隙間8の面積が45%以上65%である連結体1は、タッピングネジ6による第一部材11と第二部材12との固定が強固な連結体1であると言える。また、圧粉成形体によって構成される第一部材11及び第二部材12に亀裂などが生じ難い連結体1であるとも言える。より好ましい面積割合は、47%以上63%以下である。更に好ましい面積割合は、49%以上61%以下である。
【0075】
図4に示されるように、下穴7の底部7bと、タッピングネジ6の先端6pとの間には隙間が形成されていることが好ましい。下穴7の底部7bと、タッピングネジ6の先端6pとの距離は0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。上記距離が0.5mm以上であれば、タッピングネジ6の先端6pが下穴7の底部7bを押圧することが無い。従って、タッピングネジ6の先端による第一部材11の損傷が抑制される。また、上記距離が5mm以下であれば、第一部材11の実体部分が十分に確保される。従って、第一部材11の磁気特性の低下が抑制される。当該距離は、1mm以上4mm以下であることがより好ましい。
【0076】
本例のタッピングネジ6は、B-0タイプのタッピングネジ6である。B-0タイプのタッピングネジ6は、主として樹脂材を固定することに利用される。また、タッピングネジ6を下穴7にねじ込み易くするために、タッピングネジ6の先端側の山部の角度を、根元側の山部の角度よりも小さくしても良い。
【0077】
タッピングネジ6は、山部65を有する軸部60と、軸部60の一端に設けられる頭部61とを備える。本例の頭部61は、なべ型(pan head)であるが、特に限定されない。例えば、頭部61は、皿型(countersunk head)でも良いし、トラス型(truss head)でも良いし、バインド型(binding head)でも良い。また、本例のタッピングネジ6は更に、頭部61に一体化したワッシャ部62を備える。ワッシャ部62は無くても良い。
【0078】
タッピングネジ6のピッチPは、呼び径の25%以上43%以下であることが好ましい。ピッチPは、軸方向に隣接する二つの山部65の間隔である。ピッチPが呼び径の25%以上であれば、下穴7に過剰な応力が作用し難い。また、上記ピッチPが呼び径の43%以下であれば、タッピングネジ6の山部65がしっかりと下穴7に食い込む。従って、タッピングネジ6による第一部材11と第二部材12との固定が強固になる。より好ましいピッチPは呼び径の28%以上40%以下である。
【0079】
タッピングネジ6は、非磁性体であっても良いし、磁性体であっても良い。非磁性体としては、例えば、樹脂、チタン合金、黄銅、アルミニウム合金、マグネシウム合金、又は非磁性ステンレスなどが挙げられる。樹脂としては、ナイロン(登録商標)、ポリカーボネート(polycarbonate)、PEEK(polyetheretherketone)などが挙げられる。これらの非磁性体は、強度に優れるため、タッピングネジ6の材料として好適である。タッピングネジ6が非磁性体であれば、タッピングネジ6における渦電流の生成が抑制される。従って、コア30におけるエネルギー損失であるコアロスが低減される。特にステンレスは耐食性に優れるため、腐食に伴うタッピングネジ6の弛みを抑制できる。
【0080】
タッピングネジ6を構成する磁性体としては、例えば鋼、又は強磁性ステンレスなどが挙げられる。これらの磁性体は、強度に優れるため、タッピングネジ6の材料として好適である。タッピングネジ6が磁性体であれば、タッピングネジ6がコア30の一部として機能する。従って、タッピングネジ6を使用したことによる回転電機100(図1)のトルクの低下が抑制される。特にステンレスは耐食性に優れるため、腐食に伴うタッピングネジ6の弛みを抑制できる。
【0081】
第一部材11及び第二部材12に設けられる下穴7の内周面は、その軸線に対して1°以上10°以下の傾きを有するテーパー形状を備えることが好ましい。下穴7がテーパ形状を有する場合、下穴7におけるタッピングネジ6の山部65が接触する箇所のうち、下穴7の内径hが最も小さい箇所において、下穴7の内径hが本開示の規定を満たす必要がある。所定のテーパー形状を有する下穴7は、成形によって設けられ得る。例えば、下穴7を設けるための中子を備える金型を用いて第一部材11及び第二部材12を作製することが挙げられる。この場合、下穴7がテーパー形状を有していれば、第一部材11及び第二部材12から中子が抜け易くなる。成形によって第一部材11及び第二部材12に下穴7を作製する場合、第一部材11及び第二部材12に機械加工を施す必要が無くなる。従って、第一部材11及び第二部材12に亀裂などが生じ難い。
【0082】
図4に示されるタッピングネジ6の軸線を含む平面で切断した断面において、下穴7の内周面から上記軸線に直交する方向に向う第一部材11の厚み、及び第二部材12の厚みは2mm以上であることが好ましい。軸線に直交する方向は、図4では紙面左右方向である。このような構成では、下穴7の径方向外方における第一部材11と第二部材12の肉厚が十分に確保される。従って、タッピングネジ6によって第一部材11と第二部材12とが固定される際、第一部材11と第二部材12に亀裂などが生じ難い。
【0083】
図5に示されるように、隙間8に充填材8rが配置されていても良い。充填材8rは、タッピングネジ6による固定の前に下穴7に充填されていることが好ましい。下穴7に充填材8rが配置されることで、下穴7に対してタッピングネジ6が取り付けられる際に、第一部材11及び第二部材12に亀裂などが生じ難くなる。タッピングネジ6と下穴7との摩擦が減少するからである。また、隙間8に充填材8rが充填されることで、第一部材11及び第二部材12の強度が向上する。充填材8rとしては、例えばエポキシ系接着剤などが挙げられる。
【0084】
≪本実施形態の効果≫
上記実施形態では、コア30が連結体1、ティース4が第一部材11、ヨーク5が第二部材12である。上記実施形態のコア30は、ティース4とヨーク5とをタッピングネジ6によって固定するだけで作製される。圧入による固定および接着剤による固定に比べて、タッピングネジ6による固定は容易である。従って、実施形態1のコア30は生産性に優れる。
【0085】
上記実施形態のコア30を備えるステータ3(図1)は生産性に優れる。ステータ3に備わるコア30の生産性が高いからである。
【0086】
上記実施形態のステータ3を備える回転電機100は生産性に優れる。回転電機100に備わるステータ3の生産性が高いからである。
【0087】
<実施形態2>
実施形態2では、図7に基づいて、タッピングネジ6によってコア30がハウジング9に固定される回転電機100が説明される。
【0088】
実施形態2のコア30は、ティース4とヨーク5とが一体になった圧粉成形体である。つまり本例では、コア30が第一部材11である。このコア30は、タッピングネジ6によってハウジング9に固定される。つまり本例では、ハウジング9が第二部材12である。ハウジング9の材質としては、アルミニウム合金などの非磁性体が挙げられる。
【0089】
下穴7の内径が実施形態1と同様であれば、圧粉成形体のコア30に亀裂及び割れが生じることなく、コア30がハウジング9に固定される。この本例の構成では、回転電機100の作製が容易になる。作業者が、ハウジング9にコア30をネジ止めするだけで、ハウジング9に対してコア30が固定されるからである。
【0090】
<実施形態3>
実施形態3では、図8に基づいて、ティース4の端部に鍔部45が設けられた回転電機100が説明される。
【0091】
本例のティース4におけるヨーク5と反対側の端部には、ティース4の突出方向に直交する方向に張り出す鍔部45が設けられている。鍔部45は、ティース4に配置されるコイル31がティース4から外れることを抑制する。また、鍔部45は、アキシャルギャップ型の回転電機100の性能を向上させる。
【0092】
本例では、ティース4とヨーク5との一体物が圧粉成形体の第一部材11である。一方、鍔部45は、ティース4とは別体の第二部材12である。鍔部45は、圧粉成形体でも良いし、積層鋼板でも良い。
【0093】
下穴7の内径が実施形態1と同様であれば、鍔部45が圧粉成形体であっても、鍔部45に亀裂及び割れが生じることが無い。この本例の構成では、鍔部45の形成が容易になる。作業者がティース4の端部に鍔部45をネジ止めするだけで、ティース4に鍔部45が固定されるからである。従って、回転電機100の生産性が向上する。また、本例の構成によれば、接着剤による固定を用いた従来の構成に比べて、ティース4と鍔部45との間のギャップを小さくでき、モータ性能の低下を抑制できる。
【0094】
≪変形例3-1≫
実施形態3の変形例として、実施形態3の構成に実施形態1の構成が適用された形態が挙げられる。つまり、ティース4とヨーク5と鍔部45とが別々に作製され、ティース4とヨーク5とがネジ止めされると共に、ティース4と鍔部45とがネジ止めされる形態が挙げられる。ティース4とヨーク5との連結においては、ティース4が第一部材11、ヨーク5が第二部材12である。また、ティース4と鍔部45との連結においては、ティース4が第一部材11、鍔部45が第二部材12である。
【0095】
≪変形例3-2≫
実施形態3の変形例として、実施形態3の構成に実施形態2の構成が適用された形態が挙げられる。つまり、コア30のティース4と鍔部45とがネジ止めされると共に、コア30とハウジング9とがネジ止めされる。ティース4と鍔部45との連結においては、コア30が第一部材11、鍔部45が第二部材12である。また、コア30とハウジング9との連結においては、コア30が第一部材11、ハウジング9が第二部材12である。
【0096】
<実施形態4>
実施形態1から実施形態3において使用されるタッピングネジ6は、図9に示されるB-1タイプのタッピングネジ6でも良い。B-1タイプのタッピングネジ6は、その先端に溝69を備える。B-1タイプのタッピングネジ6では、溝69の縁部が切れ刃の役割を果たす。
【0097】
<試験例>
試験例では、以下に示される試料No.1からNo.5のコアを作製した。そして、各コアにおける作製時の亀裂の有無を調べた。また、試料No.1からNo.5のコアを用いた回転電機におけるコアロスを調べた。
【0098】
≪試料の情報≫
・試料No.1
試料No.1のコアは、別個に作製されたティースとヨークとを接着剤で固定することで得られたコアである。ティースとヨークの相対密度は共に95%であった。
【0099】
・試料No.2
試料No.2のコアは、ティースとヨークとをタッピングネジで固定することで得られたコアである。タッピングネジは、日東精工株式会社製のエンプラタイト(商品名)である。ティースとヨークの寸法及び相対密度は、実施形態1と同様である。タッピングネジはB-0タイプ、山の径は3mm、谷の径は2.3mmであった。一方、下穴の内径は、2.4mmであった。下穴7の内径は、タッピングネジを取り付ける前の径である。下穴の内径/タッピングネジの山の径は0.8である。即ち、下穴の内径は、タッピングネジの山の径の80%であった。タッピングネジは、電動ネジ回しで取り付けた。タッピングネジの回転数は300rpm、タッピングネジを回す力は49N・mであった。
【0100】
・試料No.3
試料No.3のコアは、下穴の内径が2.5mmである以外は、試料No.2のコアと同じである。この試料No.3における下穴の内径は、タッピングネジの山の径の83%であった。
【0101】
・試料No.4
試料No.4のコアは、下穴の内径が2.8mmである以外は、試料No.2のコアと同じである。この試料No.4における下穴の内径は、タッピングネジ6の山の径の93%であった。
【0102】
試料No.5
試料No.5のコアは、下穴の内径が2.9mmである以外は、試料No.2のコアと同じである。この試料No.5における下穴の内径は、タッピングネジ6の山の径の97%であった。
【0103】
・試料No.6
試料No.6のコアは、タッピングネジ6の山の径が4mm、谷の径が3.0mmで、下穴の内径が3.6mmである以外は、試料No.2のコアと同じである。この試料No.5における下穴の内径は、タッピングネジの山の径の90%であった。
【0104】
≪試験結果≫
各試料における亀裂の有無と、コアロス(W/kg)を調べた。亀裂の有無は目視にて行った。また、コアロスの測定条件は1.0T/1kHzであった。各試料の結果は下記表1に示される。表1では、『下穴の内径/タッピングネジの山の径』は、『下穴径/山の径』と示されている。表1における『亀裂の有無』は、ヨーク又はティースのいずれかにヘアライン状の亀裂が生じていたか否かを示している。
【0105】
各試料について、始動トルク(N・m)、破断トルク(N・m)、適正締付トルク範囲(N・m)、緩み率(%)、及びネジ抜出力(kN)を測定した。始動トルクは、下穴にネジ山が形成され始めるトルクである。破断トルクは、タッピングネジの雄ネジ、又は下穴に形成される雌ネジの少なくとも一方が破断するトルクである。始動トルクと破断トルクは、市販のトルク測定器によって測定されたものである。タッピングネジのサイズが大きくなるほど、始動トルクと破断トルクは大きくなる。
【0106】
適正締付トルク範囲は、1.5×(始動トルク)から0.65×(破断トルク)までのトルク幅である。この範囲が広いほど、タッピングネジを締め付け易く、タッピングネジを対象に固定し易い。
【0107】
緩み率は、タッピングネジを1N・mの力で締め付けた後、タッピングネジを逆回転させて緩めるために要するトルクをTとしたとき、(T/1)×100で表される。緩み率が50%以上であれば、タッピングネジが下穴に食い込んでいると判断できる。
【0108】
ネジ抜出力は、コアとは別に用意した測定用試料を用いて調べた。測定用試料は、コアと同じ材質で同じ相対密度を有する圧粉成形体である。また、測定用試料には下穴として貫通穴が形成されている。この測定用試料の下穴にタッピングネジを締め付けた後、タッピングネジの軸部の先端、即ち頭部と反対側の端部を押してタッピングネジを下穴から押し出すために要する最大荷重がネジ抜出力である。ネジ抜出力が大きいほど、タッピングネジが下穴から抜け難い。
【0109】
【表1】
【0110】
表1に示されるように、試料No.1のコアロスは25W/kgであった。また、ティースとヨークとを接着剤で連結した試料No.1にはそもそも亀裂が生じない。
【0111】
下穴の内径がタッピングネジの山の径の83%未満である試料No.2のコアにおいては、ティースとヨークに亀裂が生じていた。一方、下穴の内径がタッピングネジの山の径の83%以上である試料No.3から試料No.6のコアにおいては、ティースとヨークに亀裂が生じていなかった。従って、圧粉成形体で構成されるティースとヨークとをタッピングネジで固定するには、下穴の内径がタッピングネジの山の径の83%以上である必要があることが分かった。
【0112】
試料No.2のコアロスは、試料No.3及びNo.6のコアロスよりも大きかった。試料No.2のコアロスが大きかったのは、コアに亀裂が生じているからであると推察される。
【0113】
下穴の内径がタッピングネジの山の径の95%超である試料No.5のコアでは、タッピングネジの適正締付トルク範囲が狭く、タッピングネジが締め付け難かった。また、試料No.5のコアでは、ネジ抜出力が小さく、タッピングネジが下穴から抜け易かった。一方、下穴の内径がタッピングネジの山の径の95%以下である試料No.3,4,6のコアでは、タッピングネジの適正締付トルク範囲が広く、タッピングネジが締め付け易かった。また、試料No.3,4,6のコアでは、ネジ抜出力が大きく、タッピングネジが下穴から抜け難かった。
【符号の説明】
【0114】
100 回転電機
1 連結体
11 第一部材、12 第二部材
2 ロータ
20 シャフト、21 保持板、22 磁石
3 ステータ
30 コア、31 コイル、33 軸受
4 ティース
5 ヨーク
6 タッピングネジ
60 軸部、61 頭部、62 ワッシャ部、65 山部、65t 頂点
66 谷部、69 溝
7 下穴
8 隙間
8r 充填材
80 所定領域
L1 第一直線、L2 第二直線、L3 第三直線、L4 第四直線
9 ハウジング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9