(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】身体に装着可能な電子機器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0245 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
A61B5/0245 A
A61B5/0245 B
A61B5/0245 100B
(21)【出願番号】P 2021523766
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2019080124
(87)【国際公開番号】W WO2020094582
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】102018127619.2
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ヘットラー
(72)【発明者】
【氏名】ウィー キアト チャイ
(72)【発明者】
【氏名】ライナー グラフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘレナ ブリューメル
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0014781(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0282713(US,A1)
【文献】国際公開第2011/016384(WO,A1)
【文献】特開昭60-082658(JP,A)
【文献】実開昭57-085911(JP,U)
【文献】特開昭51-040324(JP,A)
【文献】特開昭50-003662(JP,A)
【文献】特表2013-535639(JP,A)
【文献】特開2009-096715(JP,A)
【文献】国際公開第2016/071754(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 - 5/03
A61B 5/1455
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体から生体情報を取得するために身体に装着可能な電子機器であって、
前記電子機器は、上面および下面を備えたハウジングを含んでおり、
前記ハウジング内に送信ダイオードおよび受信ダイオードが設けられており、
前記下面には、ガラスおよび/またはガラスセラミック製の少なくとも2つのウィンドウが配置されており、
第1のウィンドウの下に前記送信ダイオードが配置されており、第2のウィンドウの下に前記受信ダイオードが配置されており、
前記第1のウィンドウは、前記送信ダイオードからの出射光を透過し、前記出射光は、身体組織において後方散乱され、後方散乱された光は、前記第2のウィンドウを通り前記受信ダイオードへ向かい、
前記ハウジングは、ハウジング背面(6)および前記ハウジング背面(6)に結合された無機担体(7)を含んでおり、前記無機担体(7)には、ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記ウィンドウ(9,9a,9b,9d)が固定されており、かつ、前記無機担体(7)内の開口部は、前記ウィンドウ(9)によって閉じられており、ここで前記無機担体(7)は、複数のコンポーネント(70,71,72)から合成されており、
(i)前記無機担体(7)は、セラミックまたは不透明のガラスで構成されている内側のコンポーネント(71)を有し、前記内側のコンポーネント(71)に前記無機担体(7)内の開口部が配置されており、前記内側のコンポーネント(71)は、
金属製のさらなるコンポーネント(70)によって包囲されており、
前記ハウジングの背面(6)において、前記内側のコンポーネント(71)は、前記さらなるコンポーネント(70)および前記ウィンドウ(9)と同一平面にある、
身体に装着可能な電子機器。
【請求項2】
2つのコンポーネント(70,71)を備える無機担体(7)が設けられており、前記さらなるコンポーネント(70)は、前記内側のコンポーネント(71)を環状に包囲している、
請求項1記載の、身体に装着可能な電子機器。
【請求項3】
2つのコンポーネント(70,71)を備える無機担体(7)が設けられており、外側の金属製のコンポーネント(70)は、セラミックまたは不透明のガラスで構成されている内側のコンポーネント(71)を環状に包囲しており、前記内側のコンポーネント(71)には、前記開口部(27)が配置されている、
請求項1または2記載の、身体に装着可能な電子機器。
【請求項4】
前記ウィンドウ(9,9a,9b,9d)は、前記無機担体(7)に融合されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の、身体に装着可能な電子機器。
【請求項5】
ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記ウィンドウは、ガラス圧縮封止部分として構成されている、または、
・ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記ウィンドウは、ガラスを用いたはんだ付けによって前記無機担体と結合されている、
請求項4記載の、身体に装着可能な電子機器。
【請求項6】
前記無機担体(7)または前記無機担体(7)の前記コンポーネント(70,71,72)のうちの少なくとも1つのコンポーネントは、前記送信ダイオードによって放出される放射線に対して非透過性に構成されている、
請求項5記載の、身体に装着可能な電子機器。
【請求項7】
前記電子機器は、以下の特徴、すなわち、
・前記無機担体は、材料である金属、セラミック、ガラスセラミック、不透明のガラスの1つまたは複数を含んでいる、
・前記無機担体(7)の前記コンポーネントのうちの少なくとも2つのコンポーネント(70,71)は、異なる熱膨張係数を有している、
のうちの少なくとも1つを有している、
請求項1から6までのいずれか1項記載の、身体に装着可能な電子機器。
【請求項8】
前記無機担体は、少なくとも1つの電気的な導入端子を備えたさらなるウィンドウを有している、
請求項1から7までのいずれか1項記載の、身体に装着可能な電子機器。
【請求項9】
前記無機担体は、ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記少なくとも2つのウィンドウの領域に突起(8)を有している、
請求項1から8までのいずれか1項記載の、身体に装着可能な電子機器。
【請求項10】
ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記ウィンドウは、光ファイバプレートとして構成されている、
請求項1から9までのいずれか1項記載の、身体に装着可能な電子機器。
【請求項11】
ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記ウィンドウは、ガラス圧縮封止部分であり、前記ガラス圧縮封止部分は、ボール落下試験における損傷の際にクレータが発生するように構成されている、
請求項1から10までのいずれか1項記載の、身体に装着可能な電子機器。
【請求項12】
ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記ウィンドウは、ガラス圧縮封止部分であり、前記ガラス圧縮封止部分は、ボール落下試験における損傷の際にウィンドウから分離されるガラス材料および/またはガラスセラミック材料が粉末状であるように構成されている、
請求項1から11までのいずれか1項記載の、身体に装着可能な電子機器。
【請求項13】
前記電子機器は、以下の特徴、すなわち、
・ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記ウィンドウは、ガラス圧縮封止部分であり、2nm以上の二乗平均平方根粗さRqを有しており、ここでガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記ウィンドウは、前記ハウジングとは反対側の面に真っ直ぐな表面を有している、
・ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記ウィンドウは、ガラス圧縮封止部分であり、前記ガラス圧縮封止部分は、所定数の微小欠陥を有しており、ここでガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記ウィンドウは、前記ハウジングとは反対側の面に真っ直ぐな表面を有している、
・ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記ウィンドウは、ガラス圧縮封止部分であり、前記ハウジングとは反対側の面にファイアポリッシュされた表面を有しており、そのうねりは100nm超5μm未満の値を有している、
・ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記ウィンドウは、前記ハウジングとは反対側の面に凹状または凸状の表面を有している、
のうちの少なくとも1つを有している、
請求項1から12までのいずれか1項記載の、身体に装着可能な電子機器。
【請求項14】
前記電子機器は、以下の特徴、すなわち、
・ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記第1のウィンドウは、縁部で、ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記第2のウィンドウから距離sだけ離れており、前記第1のウィンドウおよび/または前記第2のウィンドウは、直径dを有しており、ここでs/d=2~7が当てはまる、
・ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記第1のウィンドウは、縁部で、ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記第2のウィンドウから距離sだけ離れており、前記第1のウィンドウおよび/または前記第2のウィンドウは、高さhを有しており、ここでs/h=1~3が当てはまる、
・ガラスおよび/またはガラスセラミック製の前記少なくとも2つのウィンドウは、前記受信ダイオードおよび/または前記送信ダイオード用のフィルタとして構成されている、
のうちの少なくとも1つを有している、
請求項1から13までのいずれか1項記載の、身体に装着可能な電子機器。
【請求項15】
前記電気的な導入端子は、測定電極として用いられる、または、測定電極と接続されている、
請求項8記載の、身体に装着可能な電子機器。
【請求項16】
身体に装着可能な前記電子機器は、フォトプレチスモグラフィ測定原理に従って機能する測定装置を有する脈拍計付き腕時計である、
請求項1から15までのいずれか1項記載の、身体に装着可能な電子機器。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項記載の、身体に装着可能な電子機器のハウジングの下面用の、ガラスおよび/またはガラスセラミック製のウィンドウを有する担体。
【請求項18】
請求項1から16までのいずれか1項記載の、身体に装着可能な電子機器の製造方法であって、
ガラスおよび/またはガラスセラミック製の少なくとも2つのウィンドウを複数のコンポーネント(70,71,72)を備える無機担体に融合し、前記無機担体を、身体に装着可能な前記電子機器のハウジングと結合する、
身体に装着可能な電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体に装着可能なまたは身体に導入可能な電子機器およびその製造方法に関する。特に、本発明は、フォトプレチスモグラフィ(光電式容積脈波記録法)測定装置を備える脈拍計付き腕時計および/またはスマートウォッチおよび/またはプローブおよび/または体内埋込物に関する。
【背景技術】
【0002】
機器の背面がユーザの皮膚に載置されている、身体に装着可能な電子機器が知られている。
【0003】
特に、いわゆる脈拍計付き腕時計、すなわち、脈拍用の測定装置を有する電子機器が知られている。最新の脈拍計付き腕時計は通常、多機能であり、脈拍測定装置だけではなく、他の多くの機能のためのコンポーネントも有している。特に、そのような腕時計は、ディスプレイ、GPSモジュール等を含むことができる。このような腕時計は「スマートウォッチ」とも称される。
【0004】
市場で入手可能な脈拍計付き腕時計として構成された最初の測定装置は、心電計測定原理に従って機能するものであった。このような測定原理には、非常に正確な測定が可能になるという利点がある。
【0005】
しかし、心電計測定原理の欠点は、全般的に、エネルギ消費量が多いことである。スマートウォッチ内に心電計測定装置を設置するのにもコストがかかる。
【0006】
したがって、特にスマートウォッチにおいて、フォトプレチスモグラフィ測定法は、流布している測定原理としての地位を確立している。
【0007】
このような測定原理に従って機能する脈拍計付き腕時計は、例えば、公開文献である国際公開第2015/102589号に示されている。
【0008】
フォトプレチスモグラフィ測定原理は、安価に、かつ僅かな構造空間を使用して、例えば脈拍計付き腕時計の背面に統合することができる。
【0009】
この測定原理は、光の吸収、特に特定の波長の吸収が血中のヘモグロビン濃度に関連しているという事実を利用している。
【0010】
この吸収はヘモグロビン濃度の増加とともに増加する。したがって、光の吸収の経過に基づいて、脈拍を決定することができる。
【0011】
このために、フォトプレチスモグラフィ測定装置は、送信ダイオード、特にLEDならびに受信ダイオード、すなわち特にフォトダイオードを使用し、これらを介して、反射された光が測定される。通常、510nm~920nmの波長が使用される。特に、緑色光がフォトプレチスモグラフィ測定システムに適している。相当数のシステムは、IR波長範囲の光も利用する、または赤外線と可視光の両方で測定を行う。
【0012】
問題なのは、送信ダイオードによって放出された光のごく一部が後方散乱されることである。
【0013】
さらに、ヘモグロビン濃度が絶えず変化することによって、吸収の変動も僅かである。
【0014】
さらに、実際に知られている測定装置では、周辺光、ユーザが動いた際のアーチファクトならびに皮膚と測定装置との間の変化する距離によって、強い光学ノイズが生成され、これはフォトプレチスモグラフィ測定法を介した脈拍の測定を困難にしてしまう。
【0015】
これに関連して、それを通じて、光が、脈拍計付き腕時計および/またはスマートウォッチを離れ、それを通じて、受信ダイオードが反射光の強度を測定するウィンドウの光学的品質が重要な役割を果たす。
【0016】
高い光学的品質に加えて、同時に、ウィンドウを可能な限り堅牢に、かつ流体を通さないように設計する必要がある。
【0017】
同時に、ウィンドウが損傷または破壊された場合にユーザが怪我をするリスクができるだけ低く抑えられるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、上述した要件を可能な限り最良の方法で満たすことである。
【0019】
脈拍計付き腕時計および/またはスマートウォッチに適用可能な要件は、有利には、人体または動物の体に導入可能なプローブおよび/または体内埋込物、特に一時的に導入されて、身体を貫通するプローブにも転用可能である。特に、送信ダイオードおよび/または受信ダイオード用のウィンドウが密閉されており、ウィンドウによって引き起こされる光学ノイズが、従来技術から知られている測定装置と比較して低減されており、ウィンドウが壊れた場合に、ユーザが怪我をするリスクが低減される脈拍計付き腕時計および/またはスマートウォッチおよび/または体内埋込物が提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の課題はすでに、独立請求項の1つに記載された、身体に装着可能なまたは身体に導入可能な電子機器によって解決される。
【0021】
本発明の有利な実施形態および発展形態を、従属請求項、明細書ならびに図面の対象に見出すことができる。
【0022】
本発明は、身体に装着可能なまたは身体に導入可能な電子機器に関する。この電子機器は、特に脈拍計付き腕時計および/またはスマートウォッチおよび/またはプローブおよび/または体内埋込物として構成されている。
【0023】
そのような電子機器は、上面および下面を備えたハウジングを含んでいる。
【0024】
下面は、装着状態において、ユーザの皮膚に載置されるように構成されている。
【0025】
特に、特に脈拍計付き腕時計および/またはスマートウォッチおよび/またはプローブおよび/または体内埋込物の形態の、身体に装着可能なまたは身体に導入可能な電子機器が設けられており、これは上面および下面を備えたハウジングを含んでおり、ここで下面には、ガラスおよび/またはガラスセラミック製の少なくとも1つのウィンドウが配置されており、ここでこのハウジングは無機担体を含んでおり、この無機担体内には、ガラスおよび/またはガラスセラミック製のウィンドウが固定されており、かつ無機担体内の開口部は閉じられており、ここで無機担体は複数のコンポーネントから合成されている。
【0026】
実施形態では、ガラスおよび/またはガラスセラミック製のウィンドウは、無機担体に融合されている。
【0027】
本発明は、担体の材料とガラスとの間に直接的に材料結合が存在している融合されたガラスウィンドウが、ウィンドウの高い光学的品質を同時に備える、堅牢で密閉された結合を提供することができるという知識に基づいている。
【0028】
有利には、ウィンドウは、ガラス圧縮封止部分(Druckeinglasung)としてガラスおよび/またはガラスセラミックで構成されている。
【0029】
そのようなガラス圧縮封止部分は、ウィンドウのガラスよりも高い、線膨張係数αを有する担体が使用されることによって提供される。
【0030】
ガラス圧縮封止部分を構成するために、開口部に挿入されたウィンドウは、担体とともにガラスの軟化温度を超える温度に加熱される。担体の材料は、冷却時にウィンドウの材料よりも収縮するため、ガラスは圧縮応力下に置かれる。
【0031】
このように存在するプレテンションのために、特に緊密な結合が生じる。同時に、ウィンドウ自体もより安定する。
【0032】
さらに、ガラス圧縮封止部分を提供することによって、特にボール落下試験における損傷の際にクレータが発生するように構成されているウィンドウを提供することができることが見出された。損傷した領域でクレータ状の剥離が発生する。材料は粒子状、特に粉末状に剥がれ落ち、ウィンドウから分離する。
【0033】
特に、重力の作用下で、定められた高さから、定められた質量を有する鋼球をウィンドウ上に落下させることによってボール落下試験を実施することができる。真っ直ぐな表面もしくは平らな表面を備えるウィンドウの場合には特に、7gの質量を有するボールが使用可能であり、凸状表面または凹状表面の場合には特に、12gの質量を有するボールが使用可能である。ウィンドウの破壊挙動を試験するための落下高さは50cmである。
【0034】
より堅牢な設計、すなわち、ウィンドウの損傷が完全に最初に発生する力作用をより高くすることに加えて、これによって同時にユーザが怪我をするリスクが最小限に抑えられる。
【0035】
発明者らは、ウィンドウが、最小限の、粗さ、微小欠陥および/または形状偏差等の表面の不正確さを有することによって、粉末状でウィンドウから分離される材料の形態での、ユーザに有利な破壊挙動を特に有利に達成できることを認識した。ガラス圧縮封止部分と、平均粗さRqおよび/または測定区間内の微小欠陥の数および/または形状偏差として現れる表面構造の存在と、の相互作用が存在する。このような形状偏差は、特にマイクロ構造またはナノ構造である。このような表面構造が、ウィンドウの最大耐荷重を超えた場合に、破壊挙動の開始点として機能することが推測されている。指定された値によって、怪我のリスクを低減する、粉末状の分離されるウィンドウ材料を実現するために十分な表面構造が得られる。
【0036】
二乗平均平方根粗さRqは、有利な表面構造の尺度である。これは当業者に知られており、測定区間内のすべての縦座標値の二乗平均平方根から計算される。測定および値については、DIN EN ISO 4287(バージョン2010-07)に記載されている。
【0037】
2nm以上、特に有利には12nm以上、特に60nm以上のRq値が有利である。これらの値はすべて、上限または下限として互いに組み合わせることが可能である。このようなRq値は、ガラス質化されたウィンドウを機械的に研磨することで得られる。これは特に、真っ直ぐな表面または平らな表面、特に、ユーザに面する側で、ハウジングの表面に対して平行平面または凸状に形成されている表面を有しているウィンドウの場合に有利である。
【0038】
粗さおよびRq値の代わりに、測定区間内の微小欠陥の数が、表面構造に対する尺度として指定されてよい。長さ10mmの測定区間において3個から16個未満の微小欠陥を有するガラスおよび/またはガラスセラミック、有利には、このような測定区間において16個から80個未満の微小欠陥、または80個から400個未満の微小欠陥を有するガラスおよび/またはガラスセラミックで構成されるウィンドウが有利である。このような指定は、表面が真っ直ぐまたは平らな、上述のウィンドウの場合に特に実用的であるが、表面が湾曲しているウィンドウの場合にも使用可能である。
【0039】
ウィンドウを加工し、指定された表面構造を設けるための別の手段は、ウィンドウのファイアポリッシュである。これらは有利には、ファイアポリッシュされた表面を有する。しかし、ファイアポリッシュは局所的に、特にウィンドウの表面のみで行われるため、ガラス圧縮封止部分は保持されたままである。特に、これによって、ウィンドウが、有利には100nm~5μmの範囲にあるうねりの形態の表面構造を有することが可能になる。
【0040】
ファイアポリッシュは有利には、ウィンドウの湾曲した表面の場合に、例えば凹状または凸状のウィンドウの場合に有利である。
【0041】
有利に存在しているそのような表面構造を有するウィンドウは、それらの光学特性に関して、電子機器の光学測定機能に必要な光学要件を実行することができるが、ガラス圧縮封止部分との協働においては、ユーザの怪我のリスクの低減に寄与する。
【0042】
有利には、(20℃での)その線膨張係数αが、ガラスもしくはガラスセラミックの線膨張係数より少なくとも2ppm/K、有利には少なくとも5ppm/K大きい担体材料が使用される。
【0043】
本発明の別の実施形態では、ガラスおよび/またはガラスセラミック製のウィンドウは、ガラスを用いたはんだ付け(Glaslot)によって担体と結合される。本発明のこのような実施形態を介して、用途に応じて、膨張係数に関して適合されたウィンドウも提供される。特に、このようにして、熱に対する耐性が高い、担体とウィンドウとの複合体を提供することができる。
【0044】
本発明の有利な実施形態では、ガラスおよび/またはガラスセラミック製の少なくとも2つのウィンドウが担体に融合されている。
【0045】
ここでは、ガラスおよび/またはガラスセラミック製の第1のウィンドウの下に送信ダイオードが配置され、ガラスおよび/またはガラスセラミック製の第2のウィンドウの下に受信ダイオードが配置される。
【0046】
有利には無機担体またはその少なくとも1つのコンポーネントは、少なくとも、送信ダイオードによって放出される放射線に対して非透過性である。
【0047】
無機担体に関連して2つのウィンドウを使用することによって、送信ダイオードから受信ダイオードへの直接的なクロストークが最小限に抑えられる。
【0048】
無機担体は有利には材料である金属、セラミック、ガラスセラミックおよび/または(少なくとも、送信ダイオードによって放出される光の波長に対して)非透過性のガラスの1つまたは複数を含んでいる。
【0049】
担体用の金属として、特に、(20℃で)3ppm/K~25ppm/Kの線膨張係数αを有する金属が可能である。
【0050】
使用される金属は有利には実質的にニッケルを含んでおらず、特に、この材料は、DIN EN 1811(バージョン2015-10)および/またはDIN EN 12472(バージョン2009-9)の要件を満たしている。
【0051】
適切な材料は、特にステンレス鋼、チタン、アルミニウムおよび貴金属ならびにそれらの合金である。さらに、ニッケルの拡散を防ぐコーティング、例えば金のコーティングを備えたニッケル含有材料を使用することもできる。
【0052】
さらに、担体のハウジング材料としてステンレス鋼、特にオーステナイト系ニッケル含有ステンレス鋼を使用することができる。このような材料は、ニッケルの拡散を防ぐ酸化クロム層を形成する。
【0053】
さらに、セラミックを使用することができ、これらは通常、すでに光学的に非透過性である。融合されたガラスはセラミックと結合し、この結合は機械的に安定しており、かつ緊密である。
【0054】
特に、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウムまたは磁器をセラミックとして使用することができる。
【0055】
さらに、担体を、ガラス、特に、少なくとも、送信ダイオードによって放出される放射線の波長範囲において非透過性であるように着色されたガラスで構成することができる。特に、酸化物、例えば酸化コバルト、酸化マグネシウムまたは酸化鉄がドープされたガラスを使用することができる。
【0056】
例えばホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスまたはケイ酸ナトリウムガラスを、ウィンドウガラスとして使用することができる。
【0057】
ウィンドウは、有利には、少なくとも、送信ダイオードによって放出される放射線に対して、80%を上回る、特に有利には90%を上回る透過率を有している。ウィンドウは、反射防止コーティングを含んでいてよい。これによって、透過率をさらに改善することができる。
【0058】
高い透過率によって、光クロストークが減少する。
【0059】
さらに、ガラスに反射防止層を設けることができる。
【0060】
特定の用途に対して、特に、例えば赤外光が使用される、グルコース濃度または酸素飽和度を監視する測定装置に対して、赤外透過性ガラスを使用することもできる。このために、特にサファイアガラス、または特にウィンドウがガラス圧縮封止部分として設計される場合にはホウケイ酸ガラスまたはソーダ石灰ガラスを使用することもできる。特に、生体適合性かつ/または生物活性であるガラス材料および/またはガラスセラミック材料、特に有利には細胞に負担をかけず、特に有利にはむしろウィンドウ上部での細胞の癒着を抑制するガラス材料および/またはガラスセラミック材料を使用することができる。
【0061】
本発明の発展形態では、担体は、ガラスまたはガラスセラミック製の少なくとも1つのウィンドウの領域に突起を含んでいる。
【0062】
突起とは特に、接している下面から突出するプラトーである。このような突起によって、ユーザの皮膚とのウィンドウの接触を改善することができる。これは同様に、測定精度を改善する。
【0063】
本発明はさらに、特に、上述した1つまたは複数の特徴を有する、身体に装着可能な電子機器に関する。
【0064】
身体に装着可能な電子機器は、上面と下面とを有するハウジングを含んでいる。下面は、装着時に、ユーザの皮膚と接触するように構成されている。
【0065】
下面には、本発明に相応に光ファイバを含んでいる、ガラスまたはガラスセラミック製のウィンドウ、特に光ファイバプレートとして構成されているウィンドウが配置されている。
【0066】
光ファイバプレートは、上面もしくは下面に対して横方向、特に直角に延在し、被覆材(「クラッド」とも称される)によって包囲されている多数の個別のファイバで構成されている。
【0067】
ファイバの材料と比較して被覆材の屈折率が低いので、全反射が発生し、これによって個々のライトガイドが構成される。
【0068】
このようにして、光は光ファイバプレートの一方の側でファイバに入力され、光ファイバプレートの他方の側でそれぞれ同じファイバから再び出てくる。
【0069】
したがって、ウィンドウ内の体積体散乱による光クロストークを大幅に回避することができる。
【0070】
さらに、光ファイバプレートの使用は、ファイバプレート内で光クロストークが全くと言っていいほど生じないので、ウィンドウの厚さが増しても光学ノイズが増加しない、またはほとんど増加しないという利点を有している。
【0071】
したがって、光ファイバプレートを、従来技術よりも厚くすることができ、したがってより安定させることができる。
【0072】
有利には、光ファイバプレートで構成されているウィンドウは、上述のように、ガラス圧縮封止部分として構成されている。
【0073】
本発明の発展形態において、ガラスまたはガラスセラミック製の少なくとも1つのウィンドウは、受信ダイオードおよび/または送信ダイオード用のフィルタとして構成されている。
【0074】
特に、1つまたは複数のウィンドウを、これ/これらが他の波長の場合よりも高い透過率を送信ダイオードの波長に対して有するように着色することが設定されている。
【0075】
このようにして、周辺光によって引き起こされる光学ノイズを容易に減らすことができる。
【0076】
本発明はさらに、少なくとも2つのウィンドウを備える機器背面を含んでいる脈拍計付き腕時計および/またはスマートウォッチの寸法の改善に関する。
【0077】
その下に送信ダイオードが配置されている、ガラスおよび/またはガラスセラミック製の第1のウィンドウは、縁部で、その下に受信ダイオードが配置されている、ガラスおよび/またはガラスセラミック製の第2のウィンドウから距離sだけ離れている。
【0078】
第1のウィンドウおよび/または第2のウィンドウは、直径dを有している。
【0079】
2~7の間、有利には3~5の間の比s/hにわたって、受信ダイオード上の光信号が最適化されていることが見出された。
【0080】
さらに、第1のウィンドウおよび/または第2のウィンドウには、ウィンドウの厚さに対応する高さhが割り当てられている。
【0081】
有利にはs/dは1~3であり、極めて有利には1.5~2.5である。
【0082】
本発明の発展形態では、少なくとも1つの電気的な導入端子がガラス製のウィンドウに埋め込まれている。
【0083】
有利には、少なくとも1つの電気的な導入端子は、ガラスまたはガラスセラミック製の別個のウィンドウに埋め込まれている。
【0084】
特に、ガラス圧縮封止部分によって、ウィンドウを介して電気的な導入端子を提供することができる。
【0085】
電気的な導入端子を、例えば、再充電用の電流供給に用いることができる。
【0086】
さらに、電気的な導入端子を介してセンサ面が提供されてよい、またはセンサ面が接触接続されてよい。
【0087】
心電計測定方法に従って機能する測定装置、皮膚および/または媒体の温度測定または湿度測定のためのセンサ面が設けられていることが特に設定されている。この媒体は、プローブおよび/または体内埋込物を包囲しており、例えば血液および/または胃液等である。
【0088】
皮膚および/または体内埋込物を包囲している媒体の伝導率測定も、電気的な導入端子を介して行うことができる。このようにして、特に、装着者の体調を推測することができる。
【0089】
さらに、電気的な導入端子を介して、電子的なインターフェースが提供されてよい。
【0090】
本発明の実施形態では、脈拍計付き腕時計がフォトプレチスモグラフィ測定装置も、心電計測定装置も含んでいることが設定されている。
【0091】
本発明はさらに、上述した、身体に装着可能な機器のハウジングの下面に対する、ガラスおよび/またはガラスセラミック製のウィンドウを備える担体に関する。
【0092】
本発明はさらに、上述のように、身体に装着可能な電子機器を製造する方法に関する。
【0093】
ここで、ガラスおよび/またはガラスセラミック製のウィンドウは、無機担体に融合される。さらに、無機担体は、身体に装着可能な電子機器のハウジングと結合される。
【0094】
特に、ウィンドウ用のガラスよりも高い線膨張係数を備えた担体を使用することによって、ガラス圧縮封止部分を提供することができる。
【0095】
さらなる実施形態では、ウィンドウは多大な圧縮圧力を用いることなく結合される。
【0096】
本発明の主題は、
図1~
図19の図面に基づいて概略的に例示された実施例を参照して、以下でより詳細に説明されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【
図1】身体に装着される、脈拍計付き腕時計として構成された電子機器の正面の概略図である。
【
図2】身体に装着される、脈拍計付き腕時計として構成された電子機器の背面の概略図である。
【
図3】脈拍計付き腕時計の下面の少なくとも一部を構成する、少なくとも1つのウィンドウを備えた担体の実施形態を説明する図である。
【
図3a】脈拍計付き腕時計の下面の少なくとも一部を構成する、少なくとも1つのウィンドウを備えた担体の実施形態を説明する図である。
【
図4】脈拍計付き腕時計の下面の少なくとも一部を構成する、少なくとも1つのウィンドウを備えた担体の実施形態を説明する図である。
【
図5】脈拍計付き腕時計の下面の少なくとも一部を構成する、少なくとも1つのウィンドウを備えた担体の実施形態を説明する図である。
【
図6】脈拍計付き腕時計の下面の少なくとも一部を構成する、少なくとも1つのウィンドウを備えた担体の実施形態を説明する図である。
【
図7】ウィンドウが光ファイバプレートとして構成されているウィンドウの実施例を示す図である。
【
図8】ファイバプレートとしてのウィンドウの設計を説明する図である。
【
図9】ファイバプレートとしてのウィンドウの設計を説明する図である。
【
図10】ファイバプレートとしてのウィンドウの設計を説明する図である。
【
図11】ウィンドウを担体と結合する手法を示す図である。
【
図12】ウィンドウを担体と結合する手法を示す図である。
【
図13】ガラス圧縮封止部分として構成されたウィンドウを1つ含んでいる、フォトプレチスモグラフィ測定装置を概略的に示す図である。
【
図14】ウィンドウとしてファイバプレートを備えるフォトプレチスモグラフィ測定装置を示す図である。
【
図15】ウィンドウの厚さならびにウィンドウの距離の寸法をより詳細に説明する概略的な断面図である。
【
図16】ウィンドウの厚さならびにウィンドウの距離の寸法をより詳細に説明する図であり、センサ信号が厚さおよびウィンドウの距離に関連してプロットされている、シミュレーションに基づく等高線図である。
【
図17】ボール落下試験によって引き起こされた、ガラス圧縮封止部分として構成されたウィンドウの損傷の写真である。
【
図18】担体の構成部分としてのセラミック要素とウィンドウとしてのファイバプレートとを備える実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
図1および
図2は、脈拍計付き腕時計1として構成されている、身体に装着可能な電子機器の概略図を示している。
【0099】
図1に示されているように、脈拍計付き腕時計1は、アームバンド2を備えたハウジング3を含んでおり、アームバンド2によって、脈拍計付き腕時計1をユーザの腕に固定することが可能である。
【0100】
ハウジング3の正面に配置されているディスプレイ5を介して、ユーザは脈拍を読み取ることができる。脈拍計付き腕時計1はさらに、例えば、ボタンの形態の操作装置4を含んでいる。ディスプレイ5は、操作のために、タッチディスプレイとして構成されていてもよい。
【0101】
有利には脈拍計付き腕時計1は、いわゆる「スマートウォッチ」として構成されており、したがって、多くの他の機能を提供することができる。
【0102】
図2は、脈拍計付き腕時計1のハウジング背面6を示している。この背面でもって、脈拍計付き腕時計のハウジング3は、装着時にユーザの皮膚に載置される。
【0103】
このような実施例では、金属、例えばステンレス鋼で構成された担体7が、プラスチック製のハウジング背面6にはめ込まれる。
【0104】
金属製の担体7は、ガラスで構成されているウィンドウ9a、9bが互いに間隔をあけてはめ込まれている、プラトー形状の突起8を含んでいる。
【0105】
ウィンドウ9a、9bは、ガラス圧縮封止部分として構成されている。受信ダイオード11はウィンドウ9aの下に配置され、送信ダイオード10、特にLEDはウィンドウ9bの下に配置されている。
【0106】
送信ダイオード10と受信ダイオード11とはフォトプレチスモグラフィ測定装置の一部であり、これらを介してユーザの脈拍が測定される。
【0107】
ユーザの組織内での体積体散乱によって戻ってきた、送信ダイオード10の光の強度経過が受信ダイオード11を介して測定される。
【0108】
脈拍とともに周期的に変動するヘモグロビン濃度に基づいて脈拍を計算することができる。担体7の突起8は、ウィンドウ9a、9bとユーザの皮膚表面との接触を改善するのに寄与する。
【0109】
担体7は、このような実施例において、ガラスおよび/またはガラスセラミック製のさらなるウィンドウ9dを含んでおり、このさらなるウィンドウ9dは、複数の電気的な導入端子13を含んでいる。このような実施例では、電気的な導入端子13を使用して、電子的なインターフェースのためのコンタクトが形成され、これらのコンタクトを介して、脈拍計付き腕時計1を充電することができ、さらに、特にソフトウェアをインストールするためにデータを交換することができる。
【0110】
金属製の担体7は、例えば、ハウジングの残りの部分、特にハウジング背面6と結合されていてよい。
【0111】
有利には、脈拍計付き腕時計1のハウジングは金属製である。担体7が、特に、後部のハウジング半部として設計されていてもよい。
【0112】
図3~
図6を参照して、本発明の電子機器に使用することができる、少なくとも1つのウィンドウを備えた担体のさまざまな実施形態を説明する。
【0113】
図3による実施例では、例えば金属、セラミックまたは非透過性のガラスを含んでいる担体7が設けられている。
【0114】
ウィンドウ9aおよび9bは、送信ダイオードによって放出される光の透過率が高い材料から構成されている。
【0115】
これに対して、担体7は光バリアとして機能することができ、これによって、ウィンドウ9a、9bを介した、送信ダイオードから受信ダイオードへの光の直接的な移行が阻止される。
【0116】
光学的品質を高めるために、ウィンドウ9a、9bを研磨することが考えられる。
【0117】
ウィンドウ9aおよび9bは、有利には、ガラス圧縮封止部分として構成されている。
【0118】
ガラス圧縮封止部分として設計された結果、ヘリウム漏れ率が10-8mbar・l/s以下のハウジングを提供することが可能になる。
【0119】
本明細書に示される有利な実施形態では、少なくとも2つのウィンドウ9bが設けられており、これらの下にそれぞれ1つの送信ダイオードが配置されている。
【0120】
有利には、送信ダイオード用のウィンドウ9bは、受信ダイオード用のウィンドウ9aの隣に、両側に配置される。
【0121】
このような実施例では、受信ダイオード用のウィンドウ9aは、送信ダイオード用のウィンドウ9bよりも大きく作られている。
【0122】
担体7は有利には、ウィンドウに接して、0.3mm~2mm、特に有利には0.5mm~1mmの厚さを有している。
【0123】
ウィンドウ9a、9bは、有利には、ウィンドウ9a、9bの領域において、担体7の全高を占める。
【0124】
特に担体7は、ウィンドウ9がガラス圧縮封止部分として構成されているか否かにかかわらずに、複数のコンポーネント70、71から合成されていてよい。これらのコンポーネントは、特に有利には材料結合によって相互に結合されており、例えば溶融されている。
【0125】
実施形態では、全般的に、コンポーネントのうちの1つに、ウィンドウを伴う開口部が配置されており、かつ少なくとも1つのさらなるコンポーネントが開口部27を有するコンポーネントを包囲している。図示の例では、担体7は、ウィンドウ9a、9bによって閉じられている開口部27を有しているコンポーネント71ならびにこのようなコンポーネント71を包囲しているさらなるコンポーネント70を含んでいる。すなわち、全般的に、図示の例に制限されることなく、2つのコンポーネント70、71を有する担体7が設けられており、ここで外側のコンポーネント70は、内側のコンポーネントを環状に包囲している。内側のコンポーネント71は、ここで有利には、実施形態にも図示されているように、ウィンドウ9a、9bによって閉じられている1つまたは複数の開口部27を有している。用語「環状に」とは、本開示では、決して、円環状の形態を意味しているのではない。むしろ、2つのコンポーネントの間の境界線の経過は円環状だけではなく、任意であってよく、例えば楕円形または多角形であってよい。
【0126】
全般的に、複数のコンポーネントによる担体7の構築は、異なる熱膨張係数によって、合成後に、1つまたは複数のウィンドウ9に圧力を作用させるために用いられる。例えば、異なる熱膨張係数は、ガラス圧縮封止時の圧力形成をサポートするまたは補強する。したがって、この実施例に制限されることなく、実施形態では、担体7のコンポーネントのうちの少なくとも2つのコンポーネント70、71が異なる熱膨張係数を有していることが設定されている。
【0127】
図3aによる実施例では、担体7は、縁部で、ガラスおよび/またはガラスセラミック製の少なくとも1つのウィンドウ9a、9bから突出している。
【0128】
これによって、ガラス圧縮封止部分として設計されたときの製造が容易になる。担体7の縁部でのこの突出と、これに伴う、残されたウィンドウ9a、9bと、によって特に、ウィンドウ9a、9bのガラス材料の体積変動を補償することが可能になる。
【0129】
有利には突出している側が担体7の内側を形成していることを理解されたい。
【0130】
図3aは、複数のコンポーネントで構成されている担体7のさらなるコンフィグレーションの例も示している。このような実施形態では、担体が多層構造を有していることが設定されており、ここで少なくとも2つのコンポーネント70、71が、担体7の層を形成している。図示の例では、担体7によって形成されるハウジングに関して、コンポーネント71は担体7の内側の層を形成し、コンポーネント72は担体7の外側の層を形成する。
【0131】
図4は、(
図1および
図2にも示されているように)担体7が突起8を有している代替的な実施形態を示している。ウィンドウ9a、9bは突起8の領域内にある。
【0132】
ウィンドウ9a、9bとユーザの皮膚との接触は、この突起によって改善される。
【0133】
このような例においても、
図3aと類似して、例示的に、担体7の多層構造が設定されている。ここで
図4は、サンドウィッチ構造を有する実施形態の例であり、ここでは、層状のコンポーネント71が、さらなるコンポーネント70内に埋設されている。
【0134】
図5は、ガラスまたはガラスセラミックで構成された1つのウィンドウ9が担体7にはめ込まれており、その下に送信ダイオードと受信ダイオードとの両方が配置されている本発明の代替的な実施形態を示している。
【0135】
このような実施例では、ウィンドウ9は、ガラス圧縮封止部分として構成されておらず、むしろガラスを用いたはんだ付け部分12によって担体7と結合されている。
【0136】
ガラスを用いたはんだ付け部分12は、担体7の内部溝に配置されている。
【0137】
このような実施例では、ウィンドウ9自体が突起8を形成している。
【0138】
図3の例と類似して、担体7は2つのコンポーネント70、71から合成されており、ここで外側のコンポーネント70は内側のコンポーネント71を環状に包囲している。しかし、
図3の例とは異なり、ここでは、内側のコンポーネント71は、環状に包囲しているコンポーネント70よりも薄い。
【0139】
図6は、例えばピンの形態の電気的な導入端子13がウィンドウ9a内に配置されているさらなる実施例を示している。
【0140】
その他の部分では、ウィンドウ9a、9bを備えた担体7は、
図3の実施例に相応している。
【0141】
電気的な導入端子13を介して、さらなる機能が提供されてよい。
【0142】
例えば、電気的な導入端子13が、脈拍計付き腕時計の、付加的に存在する心電計測定装置のためのセンサ表面として用いられてよい。
【0143】
図6の例ではさらに、3つの異なるコンポーネント70、71、72を備える担体7が設けられている。
【0144】
図7には、ウィンドウ9が光ファイバプレートとして構成されている、ウィンドウ9の実施例が示されている。
【0145】
均質なガラス材料の代わりに、右側の詳細な図から見て取れるように、光ファイバプレートがファイバ14、特にガラスファイバで構成されており、これらは、有利には同様にガラスで構成されている被覆材15に埋め込まれている。
【0146】
被覆材15は、光伝導性のファイバ14の材料よりも低い屈折率を有している。
【0147】
したがって、境界面で全反射が生じ、光は、光伝導性のファイバ14内で一方の側から他方の側へ伝送される。
【0148】
光ファイバプレートの使用は、このように形成されたウィンドウ9内で、それを通して光が受信ダイオードに直接的に伝送される体積体散乱が生じない、またはほとんど生じないという利点を有している。
【0149】
むしろ、光は個々のファイバ14内に留まる。
【0150】
光ファイバプレートの厚さは、光学ノイズにほとんど影響を与えない。
【0151】
光学ノイズをさらに減らすために、特にモアレ作用を減らすために、光ファイバプレートが、着色されたファイバ、特に統計的に配分されている、着色されたファイバを含んでいてよい。
【0152】
光ファイバプレートはまた、有利にはガラス圧縮封止部分として構成されている。
【0153】
図8は、担体にはめ込まれた光ファイバプレート16が使用される、さらなる実施例を示している。
【0154】
図8の断面図では、光ファイバプレート16が仕切り壁19と結合されていることが見て取れる。
【0155】
壁19によって、組み立てられた状態において内側に形成されたチャンバ17が形成され、この中には例えば、送信ダイオードおよび/またはフォトダイオードが配置されている。
【0156】
図10の平面図に示されているように、ファイバプレート16に、このように形成された透過性の領域18を中心に、少なくとも送信ダイオードの波長に対して非透過性であるマスキング20が設けられていてよい。
【0157】
図9の領域Aの詳細な図では、光ファイバプレート16が、被覆材15に埋め込まれている多数の光伝導性のファイバ14で構成されていることが見て取れる。
【0158】
図11は、光ファイバプレート16が、有利には金属で構成されている担体7とどのように結合されているかを表す実施例を示している。
【0159】
このような実施例では、光ファイバプレート16は、ガラス圧縮封止部分として構成されている。すなわち、光ファイバプレート16は、担体7よりも低い線膨張係数αを有している。
【0160】
製造時に、光ファイバプレート16は、少なくとも、被覆材15の軟化温度に達するように加熱される。冷却時に、担体7は光ファイバプレート16よりも収縮するため、光ファイバプレート16内に圧縮応力が発生する。
【0161】
図12は、光ファイバプレート16が担体7の片側に取り付けられている代替的な実施形態を示している。
【0162】
例えば、ガラスを用いたはんだ付けまたは陰イオン結合によって結合を行うことができる。
【0163】
このような実施例では、仕切り壁19は担体7によって形成され、すなわち、仕切り壁19は担体と同じ高さにある。仕切り壁19を、例えば、金属製の担体7を打ち抜くことによって形成することができる。
【0164】
図13を参照して、フォトプレチスモグラフィ測定装置がどのように機能するのかを説明する。
【0165】
このような実施例では、脈拍計付き腕時計は、ガラスまたはガラスセラミック製のウィンドウ9がはめ込まれている、担体7を備えたハウジング背面を含んでいる。
【0166】
ハウジング内部に配置されているプリント回路基板21上に配置されている送信ダイオード10を介して、光が、ウィンドウ9を通じて、装着者の皮膚表面22に照射される。
【0167】
皮膚表面22を包囲している組織内で体積体散乱が発生し、皮膚表面22に入射する光の僅かな割合部分が受信ダイオード11へ後方散乱される。
【0168】
ヘモグロビン濃度に関連した強度の変化に基づいて、脈拍を推測することができる。
【0169】
このような測定装置では、受信ダイオード11に加わる信号の大部分が光学ノイズから成る。
【0170】
例えば、光学ノイズを減らすために、ウィンドウ9を、有利には送信ダイオード10の波長範囲の光が通過するカラーフィルタとして構成することができる。
【0171】
しかし、例えば、ガラスの不均一性のために、ウィンドウ9内でも、光学ノイズを増幅する体積体散乱が発生する可能性があることを理解されたい。これらはとりわけ、ウィンドウ9の光学的品質ならびにウィンドウ9の厚さに関連する。
【0172】
図14は、従来のウィンドウの代わりに光ファイバプレート16をウィンドウとして使用できることを示している。
【0173】
光ファイバプレート16を使用する場合、光は、光ファイバに入力した後、個々の光伝導性のファイバ内に留まるので、光ファイバプレート16内の光の受信ダイオード11への後方散乱は生じないことがある、または少なくとも格段に少なくなり得る。
【0174】
ファイバならびにクラッドの屈折率を適切に選択することによって、許容角度を最適化することができ、これによって、光学ノイズを減らすことができる。
【0175】
図15を参照して、ウィンドウおよび担体の幾何学的形状の影響を説明する。
【0176】
このような実施例でも、プリント回路基板21上に配置されている送信ダイオード10ならびに受信ダイオード11を含んでいるフォトプレチスモグラフィ測定装置が示されている。
【0177】
脈拍計付き腕時計の担体7には、送信ダイオード用のウィンドウ9bおよび受信ダイオード11用のウィンドウ9aがはめ込まれている。
【0178】
右に示されている送信ダイオードでは、ウィンドウ9bに入射する例示的な光ビームが記入されている。
【0179】
ウィンドウ9bを通して放出された光の一部は、脈拍計付き腕時計の装着者の組織内の体積体散乱によって後方散乱され、ウィンドウ9aを通して受信ダイオード11に入射する。
【0180】
受信ダイオード11のウィンドウ9aは直径dEを有しており、送信ダイオードのウィンドウ9bは直径dSを有している。
【0181】
非円形の断面を有するウィンドウの場合、本発明の文脈において、直径は、別のウィンドウの方向におけるウィンドウの幅のことである(これに関しては
図10における「d」を参照されたい)。
【0182】
送信ダイオードの1つまたは複数のウィンドウ9bは、縁部で、受信ダイオードのウィンドウ9aから、距離sぶんの間隔を有している。
【0183】
ウィンドウは、各ウィンドウの厚さに相当する高さhを有している。
【0184】
図16は、受信ダイオードに加わる光信号のシミュレーションの等高線図である。領域が暗いほど、光信号は良好である。
【0185】
縦軸には、LEDまたはフォトダイオードの距離sをウィンドウの直径d(dEまたはdS)で割ったものがプロットされている。
【0186】
横軸には、LEDまたはフォトダイオードの距離sをウィンドウの厚さhで割ったものがプロットされている。
【0187】
以下の条件下の際に最適な信号が得られることが判明している。
・sをdEまたはdSで割った値が3~5の間にある。
・sをhで割った値が1.5~2.5の間にある。
【0188】
図17は、本発明の脈拍計付き腕時計用のガラス圧縮封止部分のボール落下試験の写真を示している。
【0189】
4枚の写真すべてで、ウィンドウの損傷の際に、クレータ状の剥離が発生していることが見て取れる。ガラス圧縮封止部分に基づいて、材料は実質的に粉末状に破裂する。すなわち、ウィンドウから分離されるガラス材料および/またはガラスセラミック材料は粉末状である。これによって、ユーザが怪我をするリスクが低減される。同時に、ガラス圧縮封止部分によって、ウィンドウのひび割れおよび完全な破損のリスクが低減される。これは特に、ウィンドウの機械的安定性が改善されるという利点を本発明が有していることを意味し、これによって、比較的大きな負荷の際にはじめて完全に損傷が発生し、そのような損傷の場合に、ユーザが怪我をするリスクが最小限に抑えられる。
【0190】
本発明は、フォトプレチスモグラフィ測定装置の光学ノイズを改善することと、脈拍計付き腕時計の安定性を高めることと、の両方を可能にした。
【0191】
図18は、実施形態の例を示しており、ここでは、担体7はコンポーネントとしてセラミック要素を含んでおり、これと、光ファイバプレート16の形態のウィンドウ9が結合されている。実施形態では、全般的に、有利には光ファイバプレートの形態のウィンドウが、担体70のセラミック製のコンポーネントと結合されることが設定されている。さらなるコンポーネント70は、例えば、金属製のコンポーネントであってよい。セラミック製のコンポーネントとウィンドウとの間の結合は、ガラス圧縮封止部分であり得る、または示されているように、ガラスを用いたはんだ付け部分12を介した結合であり得る。
【0192】
図19は、2つのコンポーネント70、71を有している担体7の例の平面図を示しており、ここで一方のコンポーネント71には、ウィンドウ9を伴う開口部27が配置されており、少なくとも1つのさらなるコンポーネント70は、開口部27を有しているコンポーネント71を包囲している。特に、ここでは、コンポーネント70が、内側のコンポーネント71を環状に包囲している。
図18の例のように、内側のコンポーネント71はセラミック製のコンポーネントであり得る。別の実施形態によれば、内側のコンポーネント71は非透過性のガラスである。外側の、環状に包囲しているコンポーネント70は、有利には金属製である。特定の例に限定されることなく、これに対して、実施形態では、2つのコンポーネント70、71を備える担体7が設けられていることが設定されており、ここで外側の金属製のコンポーネント70は、セラミックまたは非透過性のガラスで構成されている内側のコンポーネント71を環状に包囲しており、内側のコンポーネント71には、ウィンドウ9によって閉じられた開口部27が配置されている。
【0193】
本特許出願は、番号102018127619.2を有するドイツ連邦共和国特許出願の優先権を主張し、その内容は完全に、本開示の対象でもある。
【符号の説明】
【0194】
1 脈拍計付き腕時計
2 アームバンド
3 ハウジング
4 操作装置
5 ディスプレイ
6 ハウジング背面
7 担体
8 突起
9,9a,9b,9d ガラスまたはガラスセラミック製のウィンドウ
10 送信ダイオード
11 受信ダイオード
12 ガラスを用いたはんだ付け部分
13 電気的な導入端子
14 光伝導性のファイバ
15 被覆材
16 光ファイバプレート
17 チャンバ
18 透過性の領域
19 仕切り壁
20 マスキング
21 プリント回路基板
22 皮膚表面
27 7内の開口部
70,71,72 7のコンポーネント