(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/293 20210101AFI20241209BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20241209BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20241209BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20241209BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20241209BHJP
H01M 50/202 20210101ALI20241209BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
H01M50/293
H01M50/249
H01M50/291
H01M50/209
H01M50/262 E
H01M50/202 401H
H01M10/44 P
(21)【出願番号】P 2021527412
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2020016992
(87)【国際公開番号】W WO2020261729
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2019122218
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古上 奈央
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏行
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-212120(JP,A)
【文献】特開2014-002907(JP,A)
【文献】国際公開第2019/123903(WO,A1)
【文献】特許第6395247(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0252063(US,A1)
【文献】特開2019-099984(JP,A)
【文献】特開2015-138753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルをセパレータを挟んで厚さ方向に積層してなる電池ブロックと、
前記電池ブロックの両端面に配置してなる一対のエンドプレートと、
前記一対のエンドプレートに連結されて、前記エンドプレートを介して前記電池ブロックを加圧状態に固定してなるバインドバーとを備える電源装置であって、
前記電池セルは、
底を閉塞している電池ケースの開口縁に封口板を気密に固定しており、
前記セパレータは、
前記電池ケースの対向平面に面接触状態に積層してなる積層平面を有し、
該積層平面は前記電池セルの内圧上昇による膨張を変形して吸収する弾性を有し、
前記積層平面の外周縁部であって、前記電池ケースの開口部に沿う上縁部のヤング率と、
前記積層平面の外周縁部の内側に位置する内部領域のヤング率とが異なり、
前記上縁部のヤング率が前記内部領域よりも高く、
前記セパレータが、
高剛性シートと、高剛性シートよりもヤング率の小さい低剛性シートからなり、
前記高剛性シートと前記低剛性シートの両方が、シリカエアロゲルと繊維強化材とのハイブリッド素材で、
前記高剛性シートが前記上縁部に配置されて、
前記低剛性シートが前記内部領域に配置されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項
1に記載される電源装置であって、
前記低剛性シートが、
前記ハイブリッド素材と弾性シートとの積層シートであることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項
2に記載される電源装置であって、
前記弾性シートが、ゴム状弾性シートであることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項
3に記載される電源装置であって、
前記ゴム状弾性シートが、
合成ゴムシートであることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし
4のいずれかに記載される電源装置であって、
前記セパレータの厚さが、
0.5mm以上であって3mm以下であることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれかに記載の電源装置を備える電動車両であって、
前記電源装置と、
該電源装置から電力供給される走行用のモータと、
前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、
前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪と
を備えることを特徴とする電動車両。
【請求項7】
請求項1ないし
5のいずれかに記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、
該電源装置への充放電を制御する電源コントローラと
を備え、
前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御することを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の電池セルを積層している電源装置と、この電源装置を備える電動車両及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の電池セルを積層している電源装置は、電動車両に搭載されて車両を走行させるモータに電力を供給する電源、太陽電池等の自然エネルギーや深夜電力で充電される電源、停電のバックアップ電源に適している。この構造の電源装置は、積層している電池セルの間にセパレータを挟着している。セパレータは、電池セル間の熱伝導を断熱して、電池セルの熱暴走の誘発を抑制する。電池セルの熱暴走は、正極と負極が内部で短絡して発生する内部ショートや誤った取り扱い等で発生する。電池セルが熱暴走すると大量の熱を発生するので、セパレータの断熱性が充分でないと、隣接する電池セルに熱暴走を誘発する。電池セルの熱暴走が誘発されると、電源装置全体は極めて大きな熱エネルギーを放出して装置としての安全性を阻害する。この弊害を防止するために断熱特性の優れたセパレータを電池セルの間に挟着している電源装置が開発されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セパレータを挟んで多数の電池を積層している電源装置は、セパレータで電池セル間を絶縁することに加えて、セパレータを介して積層している各々の電池セルを定位置に配置して位置ずれを防止することも大切である。電源装置は、電池セルの膨張や収縮、さらに振動や衝撃も位置ずれの原因となる。使用状態において電池セルの相対的な位置ずれは、隣接する電池セルの電極端子に固定している金属板のバスバーとの接続部が損傷し、あるいはバスバー自体が損傷し、あるいは又振動による誤動作などの弊害となる。
【0005】
電池セルの位置ずれを阻止するために、電源装置は積層した電池セルを加圧状態に固定している。この電源装置は、多数の電池セルを積層している電池ブロックの両端面に一対のエンドプレートを配置して、一対のエンドプレートをバインドバーで固定している。バインドバーとエンドプレートは、電池セルを相当に強い圧力で加圧状態に保持して、電池セルの相対移動や振動による誤動作を防止している。この電源装置は、たとえば、電池セルに挟着されるセパレータの面積を約100平方センチとする装置において、エンドプレートを数トンもの強い力で押圧してバインドバーで固定している。この構造の電源装置は、内圧が上昇して電池セルが膨張すると、エンドプレートが押圧されてバインドバーとエンドプレートの内部応力を増加させる。バインドバーは、強い引張力が作用する状態でエンドプレートに固定されて、電池セルを加圧状態に固定しているので、内圧上昇で電池セルが膨張するとさらに強い引張力が作用する。この状態でバインドバーが伸びると、電池セルが位置ずれするので、バインドバーには極めて強い引張力に耐える強靱な金属板などを使用する必要があって、厚くて重くなる。
【0006】
以上の弊害は、電池セルの膨張を吸収する弾力性のあるセパレータを使用して抑制できる。しかしながら、この電源装置は、電池セルの膨張でバインドバーの引張力が増加するのは抑制できるが、電池セルの経時的な疲労によるダメージが大きくなる。電池セルのダメージは、電池ケースの開口部を気密に閉塞している封口板の領域で甚だしい。
【0007】
本発明は、さらに以上の欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の目的のひとつは、電池セルの膨張をセパレータで吸収しなから、電池セルの開口部の損傷を防止できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様に係る電源装置は、複数の電池セル1をセパレータ2を挟んで厚さ方向に積層してなる電池ブロック10と、電池ブロック10の両端面に配置してなる一対のエンドプレート3と、一対のエンドプレート3に連結されて、エンドプレート3を介して電池ブロック10を加圧状態に固定してなるバインドバー4とを備えている。電池セル1は、底を閉塞している電池ケース11の開口縁に封口板12を気密に固定している。セパレータ2は、電池ケース11の対向平面11Aに面接触状態に積層してなる積層平面2Aを有している。積層平面2Aは、電池セル1の内圧上昇による膨張を変形して吸収する弾性を有し、積層平面2Aの外周縁部であって電池ケース11の開口部に沿う上縁部2aのヤング率と、外周縁部の内側に位置する内部領域2bのヤング率とが異なり、上縁部2aのヤング率を内部領域2bよりも高くしている。またセパレータ2が、高剛性シートと、高剛性シートよりもヤング率の小さい低剛性シートからなり、高剛性シートと低剛性シートの両方が、シリカエアロゲルと繊維強化材とのハイブリッド素材で、高剛性シートを上縁部に配置して、低剛性シートを内部領域に配置している。
【0009】
本明細書において、セパレータの「上縁部」は図において特定する。
図1と
図2に示す電源装置は、封口板を上に配置する姿勢で電池セルを積層しているので、セパレータの「上縁部」は電池セルの封口板に沿う外周縁となる。したがって、本明細書において、セパレータの上縁部は、電池セルの封口板に沿う外周縁を意味するものとする。
【0010】
本発明のある態様に係る電動車両は、上記電源装置100と、電源装置100から電力供給される走行用のモータ93と、電源装置100及びモータ93を搭載してなる車両本体91と、モータ93で駆動されて車両本体91を走行させる車輪97とを備えている。
【0011】
本発明のある態様に係る蓄電装置は、上記電源装置100と、電源装置100への充放電を制御する電源コントローラ88と備えて、電源コントローラ88でもって、外部からの電力により電池セル1への充電を可能とすると共に、電池セル1に対し充電を行うよう制御している。
【発明の効果】
【0012】
以上の電源装置は、電池セルの膨張をセパレータで吸収しなから、電池セルの開口部の損傷を有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電源装置の斜視図である。
【
図5】セパレータの他の一例を示す拡大断面図である。
【
図6】セパレータの他の一例を示す拡大断面図である。
【
図8】
図7に示すセパレータのVIII-VIII線断面図である。
【
図9】セパレータの他の一例を示す垂直断面図である。
【
図10】セパレータの他の一例を示す垂直断面図である。
【
図11】セパレータの他の一例を示す一部拡大斜視図である。
【
図12】セパレータの他の一例を示す一部拡大斜視図である。
【
図13】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【
図14】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【
図15】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0015】
本発明の第1の実施形態の電源装置は、複数の電池セルをセパレータを挟んで厚さ方向に積層している電池ブロックと、電池ブロックの両端面に配置している一対のエンドプレートと、一対のエンドプレートに連結されて、エンドプレートを介して電池ブロックを加圧状態に固定しているバインドバーとを備えている。電池セルは、底を閉塞している電池ケースの開口縁に気密に封口板を固定している。セパレータは、電池ケースの対向平面に面接触状態に積層してなる積層平面が変形して電池セルの内圧上昇による膨張を吸収する弾性を有し、積層平面の外周縁部であって上縁部のヤング率と、外周縁部の内側に位置する内部領域のヤング率とが異なり、上縁部のヤング率を内部領域よりも高くしている。
【0016】
以上の電源装置は、セパレータの積層平面の外周縁部であって、電池セルの封口板の外周縁に沿う上縁部のヤング率を高くして高剛性とし、積層平面の内部領域のヤング率を、上縁部よりも小さくして低剛性とするので、電池セルの内圧が上昇して膨張する状態では、上縁部の変形を抑制しながら、積層平面の内部領域の膨張は、低剛性のセパレータを薄く変形させて吸収する。セパレータの積層平面の上縁部は、電池セルの封口板の外周縁に沿う領域に位置する。電池セルは、底を閉塞している筒状の開口部に封口板をレーザー溶接などの方法で気密に固定している。この構造の電池セルは、筒体状の電池ケースの開口縁の封口板を固定している部分が内圧上昇で変形すると、疲労が大きくなって故障の原因となる。積層平面の内部領域は、電池セルの中央部分が突出するように湾曲しても変形を吸収できるので、電池セルの内圧が上昇して膨張する状態で変形しても、疲労のダメージは極めて少ない。したがって、以上の電源装置は、内圧上昇による電池セルの膨張をセパレータが効率よく吸収しながら、電池セルの上縁部の疲労による損傷を防止できる特徴がある。
【0017】
さらに、以上の特徴に加えて、電源装置は、セパレータでもって電池セルの膨張を吸収するので、内圧が上昇して電池セルが膨張する状態で、エンドプレートやバインドバーに作用する応力が増加するのを抑制して、最大応力を減少できる。このことは、エンドプレートとバインドバーを薄く、軽量化することに効果がある。また、以上の電源装置は、電池セルの膨張をセパレータで吸収するので、電池セルの内圧が上昇して膨張する状態での、各々の電池セルの相対位置のずれも抑制できる。隣接する電池セルの相対的な位置ずれは、電池セルの電極端子に固定している金属板のバスバーと電極端子とを損傷させる原因となる。セパレータが内圧上昇で膨張する電池セルの相対的な位置ずれを阻止できる電源装置は、電池セルの膨張で電極端子とバスバーとの接続部の故障を防止できる。
【0018】
さらにまた、以上の電源装置は、セパレータの全面を同じヤング率とすることなく、上縁部のヤング率を高くして、内部領域のヤング率を小さくするので、電池セルが積層平面の内部領域で膨張しても、電池セルとセパレータとの圧力上昇を抑制する。電池セルを積層している電池ブロックは、積層平面全面に作用する押圧力がエンドプレートに作用するが、電池セルが膨張する状態で、積層平面の内部領域の圧力を減少できる電源装置は、電池セルが内圧上昇して膨張する状態で、電池ブロックがエンドプレートを押圧する加圧力を低くして、エンドプレートとバスバーに作用する最大応力を減少できる。さらに電池セルがセパレータを応力する全面の押圧力も小さくなって、押圧力の増加で電池セルが位置ずれするのを抑制できる特徴もある。
【0019】
本発明の第2の実施形態の電源装置は、セパレータを、無機粉末と繊維強化材とのハイブリッド素材としている。また、本発明の第3の実施形態の電源装置は、無機粉末をシリカエアロゲルとしている。
【0020】
以上のセパレータは、隣接する電池セル間に挟まれて、隣接する電池セルを断熱する。ハイブリッド素材は、熱暴走して高温に発熱した電池セルが隣の電池セルを加熱して熱暴走が誘発されるのを抑制する。さらに、セパレータは、積層される電池セルを絶縁する絶縁シートとしても機能する。
【0021】
本発明の第4の実施形態の電源装置は、セパレータを、1枚のハイブリッド素材としている。また、本発明の第5の実施形態の電源装置は、ハイブリッド素材が、上縁部のシリカエアロゲルの充填密度を、内部領域よりも高くしている。
【0023】
本発明の第7の実施形態の電源装置は、低剛性シートよりも高剛性シートのシリカエアロゲルの充填密度を高くしている。
【0024】
本発明の第8の実施形態の電源装置は、低剛性シートを、ハイブリッド素材と弾性シートとの積層シートとしている。また、本発明の第9の実施形態の電源装置は、弾性シートを、ゴム状弾性シートとしている。さらにまた、本発明の第10の実施形態の電源装置は、ゴム状弾性シートを、合成ゴムシートとしている。
【0025】
本発明の第11の実施形態の電源装置は、セパレータの厚さを、0.5mm以上であって3mm以下としている。
【0026】
(実施の形態1)
以下、さらに具体的な電源装置を詳述する。
図1の斜視図と
図2の垂直断面図と
図3の水平断面図に示す電源装置100は、複数の電池セル1をセパレータ2を挟んで厚さ方向に積層している電池ブロック10と、電池ブロック10の両端面に配置している一対のエンドプレート3と、一対のエンドプレート3を連結してエンドプレート3を介して電池ブロック10を加圧状態に固定しているバインドバー4とを備える。
【0027】
(電池ブロック10)
電池ブロック10の電池セル1は、
図4に示すように、外形を四角形とする角形電池セルで、底を閉塞している電池ケース11の開口部に封口板12をレーザー溶接して気密に固定して、内部を密閉構造としている。封口板12は、両端部に正負一対の電極端子13を突出して設けている。電極端子13の間には安全弁14の開口部15を設けている。安全弁14は、電池セル1の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出する。安全弁14は、電池セル1の内圧上昇を防止する。
【0028】
(電池セル1)
電池セル1は、リチウムイオン二次電池である。電池セル1をリチウムイオン二次電池とする電源装置100は、容量と重量に対する充電容量を大きくできる特長がある。ただし、電池セル1は、リチウムイオン二次電池以外の非水系電解液二次電池等、他の充電できる全ての電池とすることができる。
【0029】
(エンドプレート3、バインドバー4)
エンドプレート3は、電池ブロック10に押圧されて変形しない、電池セル1の外形にほぼ等しい外形の金属板で、両側縁にバインドバー4を連結している。バインドバー4は、エンドプレート3が積層している電池セル1を加圧状態で連結して、電池ブロック10を所定の圧力で加圧状態に固定している。
【0030】
(セパレータ2)
セパレータ2は、積層している電池セル1の間に挟まれて、電池ケース11の対向平面11Aに面接触状態に積層されて、電池セル1の内圧上昇による膨張を吸収し、さらに隣接する電池セル1を絶縁し、さらにまた電池セル1間の熱の伝導を断熱する。電池ブロック10は、隣接する電池セル1の電極端子13に金属板のバスバー(図示せず)を固定して、電池セル1を直列又は並列に接続している。直列に接続される電池セル1は、電池ケース11に電位差が発生するので、セパレータ2で絶縁して積層する。並列に接続される電池セル1は、電池ケース11に電位差は発生しないが、熱暴走の誘発を防止するために、セパレータ2で断熱して積層する。
【0031】
セパレータ2は、全体を無機粉末と繊維強化材とのハイブリッド素材20とし、あるいはハイブリッド素材20に弾性シートを積層している。無機粉末は好ましくはシリカエアロゲルである。このハイブリッド素材20は、繊維の微細な隙間に、熱伝導率の低い微細なシリカエアロゲルを充填している。シリカエアロゲルは担持されて繊維強化材の隙間に配置される。このハイブリッド素材20は、繊維強化材の繊維シートと、ナノサイズの多孔質構造を有するシリカエアロゲルとからなり、シリカエアロゲルのゲル原料を、繊維に含浸して製造される。シリカエアロゲルを繊維シートに含浸した後、繊維を積層し、ゲル原料を反応させて湿潤ゲルを形成し、さらに湿潤ゲル表面を疎水化、熱風乾燥して製造される。繊維シートの繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。ただ、繊維シートの繊維は、難燃処理を施した酸化アクリル繊維やグラスウールなどの無機繊維も使用できる。
【0032】
繊維強化材は、好ましくは繊維径を0.1~30μmとする。繊維強化材は、繊維径を30μmより細くし、繊維による熱伝導を小さくして、ハイブリッド素材20の断熱特性を向上できる。シリカエアロゲルは、90%~98%を空気で構成している無機質の微粒子で、ナノオーダの球状体が結合したクラスタで形成される骨格間に微細孔があって、三次元的な微細な多孔性構造をしている。
【0033】
シリカエアロゲルと繊維強化材とのハイブリッド素材20は、薄くて優れた断熱特性を示す。このハイブリッド素材20からなるセパレータ2は、電池セル1が熱暴走して発熱するエネルギーを考慮して、電池セル1の熱暴走の誘発を阻止できる厚さに設定する。電池セル1が熱暴走して発熱するエネルギーは、電池セル1の充電容量が大きくなると大きくなる。したがって、セパレータ2の厚さは、電池セル1の充電容量を考慮して最適値に設定される。たとえば、充電容量を5Ah~20Ahとするリチウムイオン二次電池を電池セル1とする電源装置は、ハイブリッド素材20の厚さを0.5mm~3mm、最適には約1mm~2.5mmとする。ただし、本発明はハイブリッド素材20の厚さを以上の範囲に特定するものでなく、ハイブリッド素材20の厚さは、繊維シートとシリカエアロゲルからなる熱暴走の断熱特性と、電池セルの熱暴走の誘発を防止するために要求される断熱特性を考慮して最適値に設定される。
【0034】
セパレータ2のハイブリッド素材20は、内圧上昇で膨張する電池セル1に加圧されて薄く変形するシートである。セパレータ2は、膨張する電池セル1の加圧力で薄くなり、また膨張していた電池セル1が元の状態に復元する状態では押し潰された状態がもとの状態に復元して、電池セル1の膨張と収縮を吸収する。
【0035】
1枚のハイブリッド素材20からなるセパレータ2は、全面が均一に変形する弾性を有するハイブリッド素材ではない。ハイブリッド素材20のセパレータ2は、隣接する電池セル1の電池ケース11の開口部に挟着されている上縁部2aと、電池セル1の積層平面2Aの内部領域2bとはヤング率が異なる。封口板12に沿う上縁部2aのヤング率は、電池セル1の上縁部の変形を抑制するために、積層平面2Aの内部領域2bよりも高くしている。セパレータ2は、上縁部2aを内部領域2bよりも高剛性として、内圧が上昇して電池セル1が膨張する状態で、上縁部2aの変形を内部領域2bよりも少なく抑制する。
【0036】
図4の斜視図は、上縁部2aを高剛性として、内部領域2bを低剛性とするセパレータ2を示している。この図のセパレータ2は、ヤング率の高い高剛性シート21に複数の貫通穴23を設けて、貫通穴23にはヤング率の低い低剛性シート22を配置している。セパレータ2は、貫通穴23に配置する低剛性シート22の外形を、高剛性シート21の貫通穴23の内形に等しくしている。このセパレータ2は、高剛性シート21と低剛性シート22とを隙間なく配置して、全面を優れた断熱特性にできる。
【0037】
高剛性シート21は、内圧が上昇する電池セル1に加圧される状態において、上縁部2aの変形を抑制できるように、低剛性シート22よりもヤング率を高くしているが、高剛性シート21のヤング率は、たとえば、低剛性シート22の1.5倍以上、好ましくは2倍以上とする。
【0038】
セパレータ2は、貫通穴23を設けた領域をヤング率の小さい低剛性領域とするために、セパレータ2の外周縁部を除く領域に貫通穴23を設けている。外周縁部を除く領域に設けられた貫通穴23には、低剛性シート22が配置されるので、セパレータ2は外周縁部を除く領域が、ヤング率の小さい低剛性領域となる。
図4のセパレータ2は、外周縁部を除く領域、すなわち外周縁部の内側には、複数の貫通穴23があって、隣接する貫通穴23の間や貫通穴23の周囲には、高剛性シート21が配置される。したがって、内部領域2bを含む外周縁部の内側は、高剛性シート21と低剛性シート22とが交互に混在される状態となる。このセパレータ2は、高剛性シート21と低剛性シート22とを配置する面積比率を変更して、内部領域2bのヤング率を調整できる。セパレータ2は、低剛性シート22の面積を高剛性シート21よりも大きくして、外周縁部を除く内部領域2bを含む領域の実質的なヤング率を小さくでき、反対に低剛性シート22の面積を高剛性シート21よりも小さくして、外周縁部を除く内部領域2bを含む領域の実質的なヤング率を高くできる。
【0039】
図4のセパレータ2は、外周縁部を除く領域に複数の貫通穴23を設けて、内部領域2bのヤング率を上縁部2aを含む外周縁部よりも低くしているが、セパレータ2は内部領域2bにひとつの貫通穴23を設け、この貫通穴23に低剛性シート22を配置する等して、上縁部2aのヤング率を高く、内部領域2bのヤング率を低くすることもできる。
【0040】
高剛性シート21に貫通穴23を設けて、ここに低剛性シート22を配置するセパレータ2は、高剛性シート21と低剛性シート22とを別々に製造できるので、高剛性シート21と低剛性シート22のヤング率を大幅に変更しながら、高剛性シート21と低剛性シート22を能率よく多量生産できる特徴がある。
【0041】
シリカエアロゲルと繊維強化材とのハイブリッド素材20であるセパレータ2は、たとえば、シリカエアロゲルの充填密度でヤング率を調整できるので、高剛性シート21は低剛性シート22よりもシリカエアロゲルの充填密度を高くして、ヤング率を高くできる。
【0042】
以上のセパレータ2は、高剛性シート21の貫通穴23に低剛性シート22を配置して、上縁部2aを高剛性として内部領域2bを低剛性とするが、セパレータ2は、
図5に示すように、1枚のハイブリッド素材20の上縁部2aを高剛性として、内部領域2bを低剛性とすることもできる。この構造を、シリカエアロゲルと繊維強化材とのハイブリッド素材20で実現するセパレータ2は、上縁部2aと内部領域2bとで、シリカエアロゲルの充填密度を変更して実現できる。上縁部2aはシリカエアロゲルの充填密度を高くして高剛性とし、内部領域2bはシリカエアロゲルの充填密度を低くして低剛性とする。このセパレータ2は、全体を1枚のハイブリッド素材20とするので、電池セル1の間に積層されて積層平面11Aの全面を均一に絶縁して断熱できる。
【0043】
図6の断面図に示すセパレータ2は、内部領域2bの低剛性シート22を、ハイブリッド素材20と弾性シート24との積層シートとしている。弾性シート24は高剛性シート21よりもヤング率が小さく、膨張する電池セル1に加圧されて変形しやすいシートである。弾性シート24は、ゴム状弾性シート24A又は熱可塑性エラストマーが使用できる。このセパレータ2は、両側の表面層をハイブリッド素材20の高剛性シート21として、中間層の外周縁部には、枠状の高剛性シート21を積層して、枠状の高剛性シート21の内側には、枠状の高剛性シート21と同じ厚さの弾性シート24を積層して、全体を同じ厚さとしている。
【0044】
電源装置100は、電池ブロック10を小形化して充電容量を大きくするために、セパレータ2を薄くして、電池セル1の熱暴走の誘発を阻止することが大切である。このことから、高剛性シート21に積層される弾性シート24は、たとえば0.1mm以上であって1mm以下、さらに好ましくは0.2mm以上であって0.5mm以下として、電池セル1の内部領域2bの膨張を吸収する。ゴム状弾性シート24Aは、好ましくはハイブリッド素材20よりも薄くしながら、電池セル1の内部領域2bの膨張を吸収して圧縮応力を低下させる。
【0045】
図7の斜視図と
図8の断面図に示すセパレータ2は、上縁部2aを含む外周縁部を高剛性として、外周縁部の内側の領域である内部領域2bを低剛性としている。これらの図のセパレータ2は、ハイブリッド素材20である高剛性シート21の中央部であって、外周縁部を除く領域に貫通穴23を設けており、この貫通穴23に弾性シート24を配置して低剛性領域としている。セパレータ2は、貫通穴23に配置する弾性シート24の外形を、高剛性シート21の貫通穴23の内形に等しくすると共に、高剛性シート21と弾性シート24の厚さをほぼ等しくして、高剛性シート21と弾性シート24とを隙間なく配置している。
【0046】
さらに、
図9と
図10の断面図に示すセパレータ2も、
図7の斜視図に示すセパレータ2と同様に、上縁部2aを含む外周縁部を高剛性として、外周縁部の内側の領域である内部領域2bを低剛性とするが、これらのセパレータ2は、内部領域2bを、ハイブリッド素材20と弾性シート24との積層シートとしている。図に示すセパレータ2は、ハイブリッド素材20である高剛性シート21の中央部であって、外周縁部を除く内部領域2bに凹部25を設けており、この凹部25に弾性シート24を配置して、高剛性シート21と弾性シート24の積層シートからなる低剛性シート22としている。
【0047】
図9に示すセパレータ2は、高剛性シート21の一方の面に凹部25を設けて、この凹部25に弾性シート24を配置して2層構造の低剛性シート22としている。
図10に示すセパレータ2は、高剛性シート21の両面に凹部25を設けて、この凹部25に弾性シート24を配置して3層構造の低剛性シート22としている。これらの図に示すセパレータ2は、凹部25に配置する弾性シート24の外形を、高剛性シート21の凹部25の内形に等しくすると共に、この凹部25に配置される弾性シート24の厚さを凹部25の深さとほぼ等しくして、高剛性シート21と弾性シート24とを隙間なく配置している。
【0048】
さらに、
図11の斜視図と
図12の斜視図に示すセパレータ2は、上縁部2aを高剛性とする共に、上縁部2a以外の領域であって、上縁部よりも下方の領域を内部領域2bとして、この内部領域2bを低剛性としている。図に示すセパレータは、上縁部2aにハイブリッド素材20である高剛性シート21を配置すると共に、上縁部2aよりも下方の内部領域2bをハイブリッド素材20と弾性シート24との積層シートとしている。
【0049】
図11に示すセパレータ2は、ハイブリッド素材20である高剛性シート21の一方の面において、上縁部よりも下方を段差形状に切除して段差凹部26を設けており、この段差凹部26に弾性シート24を配置して2層構造の低剛性シート22としている。反対側の面は、高剛性シート21の平滑面として、対応する電池セルに当接する面としている。また、
図12に示すセパレータ2は、高剛性シート21の両面において、上縁部2aよりも下方を段差形状に切除して段差凹部26を設けており、この段差凹部25に弾性シート24を配置して3層構造の低剛性シート22としている。
【0050】
以上の構造のセパレータ2も、内部領域2bを低剛性として、対向する電池セルの膨張による変形を吸収できる構造としながら、上縁部2aを高剛性として電池セルの上縁部の変形を抑制する構造としている。
【0051】
弾性シート24は、非発泡のゴム状弾性体、発泡ゴム、又は熱可塑性エラストマーである。この弾性シート24は、圧縮されて体積がほとんど変化しない非圧縮性によって、積層領域で圧縮されたゴムが非積層領域に押し出されて、積層領域と非積層領域との境界部において、形状と圧力の変化を緩和する。弾性シート24は合成ゴムシートが適している。合成ゴムシートは、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプロンゴム、ニトリルゴム、ホリイソブチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、熱可塑性オレフィンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ブチルゴム、ポリエーテルゴムの何れかが、単独であるいは複数の合成ゴムシートを積層したものが使用できる。とくに、エチレンプロピレンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムは、優れた断熱特性があるので、熱暴走して熱溶融するまでの時間を長くしてより高い安全性を実現できる。また、ウレタンゴムでゴム状弾性シート6を構成する場合は、特に、熱可塑性ポリウレタンゴム、発泡ポリウレタンゴムを用いることが好ましい。
さらに、熱可塑性エラストマーとしては、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリエーテルなどが適している。
【0052】
図6のセパレータ2は、高剛性シート21の全面にはゴム状弾性シート24Aを積層していない。セパレータ2は、電池セル1の外周縁部を除く領域にゴム状弾性シート24Aを積層して、電池セル1の内部領域2bの膨張を吸収する。セパレータ2は、電池セル1の内部領域2bに広い面積でゴム状弾性シート24Aを積層して、電池セル1の膨張を効率よく吸収できる。
【0053】
セパレータは、外周縁部にゴム状弾性シートに代わって、ヤング率の高い高剛性の枠状のゴム状弾性シートを積層して、枠状のゴム状弾性シートの内側に、ヤング率の低いゴム状弾性シートを積層することもできる。ここで、ヤング率の高い高剛性の枠状弾性シート以外にヤング率の高い樹脂として、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレートなどを使用することもできる。高剛性のゴム状弾性シートは低剛性のゴム状弾性シートよりもヤング率が高く、電池セルの上縁部の変形を抑制する。枠状のゴム状弾性シートは、好ましくは電池セルの内圧上昇ではほとんど変形しないヤング率の高いシートを使用する。
また、高剛性の弾性シートと、低剛性の弾性シートを組み合わせてセパレータとする場合、接着剤、テープなどを用いて貼り合わせる方法、あるいは二色成型により2つのシートを組み合わせる方法がある。
【0054】
セパレータは、接着層や粘着層を介して電池セルの定位置に積層される。ただ、セパレータ2は、電池セル1を嵌合構造で定位置に配置する電池ホルダー(図示せず)の定位置に配置することもできる。
【0055】
以上の電源装置100は、電池セル1の充電容量を6Ah~80Ahとする角形電池セルとし、セパレータ2のハイブリッド素材20を、シリカエアロゲルと繊維強化材とのハイブリッド素材である「パナソニック製のNASBIS(登録商標)」として、特定の電池セル1を強制的に熱暴走させて、隣接する電池セル1への熱暴走の誘発を防止できる。
【0056】
以上の電源装置は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源として利用できる。電源装置を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、車両を駆動する電力を得るために、上述した電源装置を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置100を構築した例として説明する。
【0057】
(ハイブリッド車用電源装置)
図13は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。なお、車両HVは、
図13に示すように、電源装置100を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電源装置100を充電できる。
【0058】
(電気自動車用電源装置)
また、
図14は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電源装置100を充電できる。
【0059】
(蓄電装置用の電源装置)
さらに、本発明は、電源装置の用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電源装置は、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。
図15は、電源装置100の電池を太陽電池82で充電して蓄電する蓄電装置を示す。
【0060】
図15に示す蓄電装置は、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で電源装置100の電池を充電する。この蓄電装置は、太陽電池82を充電用電源として充電回路83で電源装置100の電池を充電した後、DC/ACインバータ85を介して負荷86に電力を供給する。このため、この蓄電装置は、充電モードと放電モードを備えている。図に示す蓄電装置は、DC/ACインバータ85と充電回路83を、それぞれ放電スイッチ87と充電スイッチ84を介して電源装置100と接続している。放電スイッチ87と充電スイッチ84のON/OFFは、蓄電装置の電源コントローラ88によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ88は充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をOFFに切り替えて、充電回路83から電源装置100への充電を許可する。また、充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で、電源コントローラ88は充電スイッチ84をOFFに、放電スイッチ87をONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷86への放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をONにして、負荷86への電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0061】
さらに、電源装置は、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電源装置は、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電源装置は、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電源装置は、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0062】
以上のような蓄電装置は、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る電源装置は、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の電源として好適に利用できる。例えばEV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置が挙げられる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0064】
100…電源装置、1…電池セル、2…セパレータ、2A…積層平面、2a…上縁部、2b…内側領域、3…エンドプレート、4…バインドバー、10…電池ブロック、11…電池ケース、11A…対向平面、12…封口板、13…電極端子、14…安全弁、15…開口部、20…ハイブリッド素材、21…高剛性シート、22…低剛性シート、23…貫通穴、24…弾性シート、24A…ゴム状弾性シート、25…凹部、26…段差凹部、81…建物、82…太陽電池、83…充電回路、84…充電スイッチ、85…DC/ACインバータ、86…負荷、87…放電スイッチ、88…電源コントローラ、91…車両本体、93…モータ、94…発電機、95…DC/ACインバータ、96…エンジン、97…車輪、98…充電プラグ、HV、EV…車両