(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】封止用多層樹脂シート
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20241209BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20241209BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20241209BHJP
C08G 59/18 20060101ALI20241209BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241209BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241209BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20241209BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20241209BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20241209BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
H01L23/30 B
H01L21/56 R
C08G59/18
C08L101/00
C08K3/013
C08K3/34
C09K3/10 L
C09K3/10 Q
C09K3/10 E
B32B27/20 Z
B32B27/18 Z
(21)【出願番号】P 2021532796
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2020026420
(87)【国際公開番号】W WO2021010208
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2019130201
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019130159
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019130145
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019130202
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019228204
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼名 大樹
(72)【発明者】
【氏名】土生 剛志
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐作
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-202517(JP,A)
【文献】特開2015-086359(JP,A)
【文献】特開2014-210880(JP,A)
【文献】特開2009-088303(JP,A)
【文献】特開2008-302677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 21/56
C08G 59/18
C08L 101/00
C08K 3/013
C08K 3/34
C09K 3/10
B32B 27/20
B32B 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1封止用樹脂シートと、第2封止用樹脂シートとを厚み方向一方に向かって順に備え、
前記第1封止用樹脂シートは、層状ケイ酸塩化合物および第1無機充填材を含み、
前記第2封止用樹脂シートは、
層状ケイ酸塩化合物を含まず、第2無機充填材を含み、
前記第1封止用樹脂シートに対する前記第1無機充填材の含有割合(B)は、50質量%以上であり、
前記第2封止用樹脂シートに対する前記第2無機充填材の含有割合(A)は、60質量%以上であり、
前記第1封止用樹脂シートに対する前記第1無機充填材の含有割合(B)と、前記第2封止用樹脂シートに対する前記第2無機充填材の含有割合(A)とが、下記式(1)を満足することを特徴とする、封止用多層樹脂シート。
0.4A+1.7B<160 (1)
【請求項2】
前記第1封止用樹脂シートの厚みが、30μm以上100μm以下であり、
前記第2封止用樹脂シートの厚みが、50μm以上500μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の封止用多層樹脂シート。
【請求項3】
前記第1封止用樹脂シートの線膨張係数が、80ppm/℃以下であり、
前記第2封止用樹脂シートの線膨張係数が、50ppm/℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載の封止用多層樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用多層樹脂シート、詳しくは、素子を封止するための封止用多層樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱硬化性樹脂を含む封止用シートを用いて、基板に実装された半導体素子や電子部品を、プレスにより封止し、その後、熱硬化性樹脂を熱硬化させて、封止用シートから硬化体を形成することが知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器の高機能化に伴い、それに備えられる半導体素子や電子部品にも小型化が要求されている。それに伴い、半導体素子や電子部品を保護する樹脂(硬化体)に対しても、硬化時の寸法精度の向上が要求されている。具体的には、半導体素子や電子部品の側端縁から、半導体素子や電子部品、および、基板間に侵入する硬化体の侵入量をより低減したい要求がある。
【0005】
本発明は、半導体素子や電子部品に代表される素子および基板間への硬化体の侵入を低減できる封止用多層樹脂シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明[1]は、第1封止用樹脂シートと、第2封止用樹脂シートとを厚み方向一方に向かって順に備え、前記第1封止用樹脂シートは、層状ケイ酸塩化合物および第1無機充填材を含み、前記第2封止用樹脂シートは、第2無機充填材を含み、前記第1封止用樹脂シートに対する前記第1無機充填材の含有割合(B)は、50質量%以上であり、前記第2封止用樹脂シートに対する前記第2無機充填材の含有割合(A)は、60質量%以上であり、前記第1封止用樹脂シートに対する前記第1無機充填材の含有割合(B)と、前記第2封止用樹脂シートに対する前記第2無機充填材の含有割合(A)とが、下記式(1)を満足する、封止用多層樹脂シートである。
【0007】
0.4A+1.7B<160 (1)
本発明[2]は、前記第1封止用樹脂シートの厚みが、30μm以上100μm以下であり、前記第2封止用樹脂シートの厚みが、50μm以上500μm以下である、上記[1]に記載の封止用多層樹脂シートを含んでいる。
【0008】
本発明[3]は、前記第1封止用樹脂シートの線膨張係数が、80ppm/℃以下であり、前記第2封止用樹脂シートの線膨張係数が、50ppm/℃以下である、上記[1]または[2]に記載の封止用多層樹脂シートを含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の封止用多層樹脂シートにおいて、第1封止用樹脂シートは、層状ケイ酸塩化合物および第1無機充填材を含み、第2封止用樹脂シートは、第2無機充填材を含む。
【0010】
また、第1封止用樹脂シートに対する第1無機充填材の含有割合(B)と、第2封止用樹脂シートに対する第2無機充填材の含有割合(A)とが、所定の割合である。
【0011】
また、第1封止用樹脂シートに対する第1無機充填材の含有割合(B)と、第2封止用樹脂シートに対する第2無機充填材の含有割合(A)とが、所定の関係である。
【0012】
そのため、この封止用多層樹脂シートを素子に配置し、これを加熱して硬化体を形成するときに、素子および基板間への硬化体の侵入量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1A~
図1Dは、本発明の封止用多層樹脂シートの一実施形態を用いて、複数の電子素子を封止して、電子素子パッケージを製造する工程断面図であり、
図1Aが、封止用多層樹脂シートを準備する工程、
図1Bが、電子素子を準備する工程、
図1Cが、封止用多層樹脂シートをプレスして封止体を形成する工程、
図1Dが、封止体を加熱して、硬化体を形成する工程である。
【
図2】
図2は、第1封止用樹脂シート1に対する第1無機充填材の含有割合(B)と、第2封止用樹脂シート12に対する第2無機充填材の含有割合(A)の関係を示すグラフである。
【
図3】
図3~
図3Dは、実施例における硬化体侵入長さYを測定する方法の工程断面図であり、
図3Aが、封止用多層樹脂シートを準備する工程(ステップA)、
図3Bが、電子素子(ダミー素子)を準備する工程(ステップB)、
図3Cが、封止用多層樹脂シートをプレスして封止体を形成する工程(ステップC)、
図3Dが、封止体を加熱して、硬化体を形成する工程(ステップD)である。
【
図4】
図4は、実施例1~33および比較例1~比較例23における第1材料に対する第1無機充填材の含有割合(B)と、第2材料に対する第2無機充填材の含有割合(A)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の封止用多層樹脂シートは、素子を封止するための樹脂シートであって、厚み方向に直交する面方向に延びる略板形状(フィルム形状)を有する。
【0015】
この封止用多層樹脂シートは、第1封止用樹脂シートと、第2封止用樹脂シートとを厚み方向一方に向かって順に備える。
【0016】
詳しくは、封止用多層樹脂シートは、第1封止用樹脂シートと、第1封止用樹脂シートの厚み方向一方面に形成される第2封止用樹脂シートとを備える。好ましくは、封止用多層樹脂シートは、第1封止用樹脂シートと第2封止用樹脂シートとからなる。
【0017】
第1封止用樹脂シートは、厚み方向に直交する面方向に延びる略板形状(フィルム形状)を有する。
【0018】
第1封止用樹脂シートの材料(以下、第1材料とする。)は、層状ケイ酸塩化合物および第1無機充填材を含む。
【0019】
層状ケイ酸塩化合物は、第1材料が、後述する第1樹脂成分(樹脂マトリクス)を含む場合には、第1樹脂成分に対して分散されている。また、層状ケイ酸塩化合物は、第1封止用樹脂シートから封止体および硬化体(後述)を形成するときの流動調整剤である。具体的には、第1封止用樹脂シートを加熱して硬化体を形成するときに、硬化体の流動性を低減する、硬化時流動低減剤である。
【0020】
層状ケイ酸塩化合物は、例えば、二次元(面方向に)に広がった層が、厚み方向に積み重なった構造(三次元構造)を有するケイ酸塩であって、フィロケイ酸塩と呼称される。
【0021】
具体的には、層状ケイ酸塩化合物としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイトなどのスメクタイト、例えば、カオリナイト、例えば、ハロイサイト、例えば、タルク、例えば、マイカなどが挙げられる。層状ケイ酸塩化合物として、好ましくは、熱硬化性樹脂との混合性を向上させる観点からスメクタイトが挙げられ、より好ましくは、モンモリロナイトが挙げられる。
【0022】
層状ケイ酸塩化合物は、表面が変性されていない未変性物であってもよく、また、表面が有機成分により変性された変性物でもよい。好ましくは、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂との優れた親和性を得る観点から、層状ケイ酸塩化合物は、表面が有機成分により変性されている。具体的には、層状ケイ酸塩化合物として、表面が有機成分で変性された有機化スメクタイト、さらに好ましくは、表面が有機成分で変性された有機化ベントナイトが挙げられる。
【0023】
有機成分として、アンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、フォスフォニウムなどの有機カチオン(オニウムイオン)が挙げられる。
【0024】
アンモニウムとしては、例えば、ジメチルジステアリルアンモニウム、ジステアリルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、オクチルアンモニウム、2-ヘキシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、トリオクチルアンモニウムなどが挙げられる。イミダゾリウムとしては、例えば、メチルステアリルイミダゾリウム、ジステアリルイミダゾリウム、メチルヘキシルイミダゾリウム、ジヘキシルイミダゾリウム、メチルオクチルイミダゾリウム、ジオクチルイミダゾリウム、メチルドデシルイミダゾリウム、ジドデシルイミダゾリウムなどが挙げられる。ピリジニウムとしては、例えば、ステアリルピリジニウム、ヘキシルピリジニウム、オクチルピリジニウム、ドデシルピリジニウムなどが挙げられる。フォスフォニウムとしては、例えば、ジメチルジステアリルフォスフォニウム、ジステアリルフォスフォニウム、オクタデシルフォスフォニウム、ヘキシルフォスフォニウム、オクチルフォスフォニウム、2-ヘキシルフォスフォニウム、ドデシルフォスフォニウム、トリオクチルフォスフォニウムなどが挙げられる。有機カチオンは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、アンモニウム、より好ましくは、ジメチルジステアリルアンモニウムが挙げられる。
【0025】
有機化層状ケイ酸塩化合物として、好ましくは、表面がアンモニウムで変性された有機化スメクタイト、より好ましくは、表面がジメチルジステアリルアンモニウムで変性された有機化ベントナイトが挙げられる。
【0026】
層状ケイ酸塩化合物の平均粒子径の下限は、例えば、1nm、好ましくは、5nm、より好ましくは、10nmである。層状ケイ酸塩化合物の平均粒子径の上限は、例えば、100μm、好ましくは、50μm、より好ましくは、10μmである。なお、層状ケイ酸塩化合物の平均粒子径は、例えば、レーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められた粒度分布に基づいて、D50値(累積50%メジアン径)として求められる。
【0027】
層状ケイ酸塩化合物としては、市販品を用いることができる。例えば、有機化ベントナイトの市販品として、エスベンシリーズ(ホージュン社製)などが用いられる。
【0028】
第1材料における層状ケイ酸塩化合物の含有割合の下限は、例えば、1質量%、好ましくは、3質量%である。第1材料における層状ケイ酸塩化合物の含有割合の上限は、例えば、15質量%、好ましくは、10質量%である。
【0029】
第1無機充填材は、層状ケイ酸塩化合物以外の無機フィラーであって、例えば、オルトケイ酸塩、ソロケイ酸塩、イノケイ酸塩などの層状ケイ酸塩化合物以外のケイ酸塩化合物、例えば、石英(ケイ酸)、シリカ(無水ケイ酸)、窒化ケイ素などのケイ素化合物(層状ケイ酸塩化合物以外のケイ素化合物)などが挙げられる。また、第1無機充填材として、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素なども挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、層状ケイ酸塩化合物以外のケイ素化合物、より好ましくは、シリカが挙げられる。
【0030】
第1無機充填材の形状は、特に限定されず、例えば、略球形状、略板形状、略針形状、不定形状などが挙げられる。好ましくは、略球形状が挙げられる。
【0031】
第1無機充填材の最大長さの平均値(略球形状であれば、平均粒子径と同義。)の上限は、例えば、50μm、好ましくは、20μm、より好ましくは、10μmである。第1無機充填材の最大長さの平均値の下限は、また、例えば、0.1μm、好ましくは、0.5μmである。なお、第1無機充填材の平均粒子径は、例えば、レーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められた粒度分布に基づいて、D50値(累積50%メジアン径)として求められる。
【0032】
また、第1無機充填材は、第1フィラーと、第1フィラーの最大長さの平均値より小さい最大長さの平均値を有する第2フィラーとを含むことができる。
【0033】
第1フィラーの最大長さの平均値の下限は、例えば、1μm、好ましくは、3μmである。第1フィラーの最大長さの平均値の上限は、例えば、50μm、好ましくは、30μmである。
【0034】
第2フィラーの最大長さの平均値の上限は、例えば、0.9μm、好ましくは、0.8μmである。第2フィラーの最大長さの平均値の下限は、例えば、0.01μm、好ましくは、0.1μmである。
【0035】
第1フィラーの最大長さの平均値の、第2フィラーの最大長さの平均値に対する比の下限は、例えば、2、好ましくは、5である。第1フィラーの最大長さの平均値の、第2フィラーの最大長さの平均値に対する比の上限は、例えば、50、好ましくは、20である。
【0036】
上記した比が上記範囲内であれば、素子および基板間への硬化体の侵入量を、より一層、低減することができる。
【0037】
第1フィラーおよび第2フィラーの材料は、ともに同一あるいは相異っていてもよい。
【0038】
さらに、第1無機充填材は、その表面が、部分的あるいは全体的に、シランカップリング剤などで表面処理されていてもよい。
【0039】
第1材料に対する第1無機充填材の含有割合(B)については、後述する。
【0040】
また、詳しくは後述するが、第1材料に対する第1無機充填材の含有割合(B)と、第2材料(後述)に対する第2無機充填材の含有割合(A)とは、所定の関係を有する。
【0041】
層状ケイ酸塩化合物100質量部に対する第1無機充填材の含有部数の下限は、例えば、1000質量部、好ましくは、1050質量部、より好ましくは、1100質量部、さらに好ましくは、1150質量部、とりわけ好ましくは、1200質量部、最も好ましくは、1250質量部である。層状ケイ酸塩化合物100質量部に対する第1無機充填材の含有部数の上限は、例えば、1500質量部、好ましくは、1450質量部、より好ましくは、1400質量部、さらに好ましくは、1350質量部である。
【0042】
上記した第1無機充填材の含有部数が、層状ケイ酸塩化合物100質量部に対して上記範囲内(例えば、1000~1500質量部)であれば、素子および基板間への硬化体の侵入量を、より一層、低減することができる。また、第1無機充填材の含有部数が、層状ケイ酸塩化合物100質量部に対して上記範囲内(例えば、1000~1500質量部)であれば、素子および基板間への硬化体の侵入量を適宜な値に制御することができる。
【0043】
第1無機充填材が第1フィラーと第2フィラーとを含む場合には、第1材料における第1フィラーの含有割合の下限は、例えば、32.5質量%、好ましくは、33質量%、より好ましくは、36質量%、さらに好ましくは、40質量%である。第1材料における第1フィラーの含有割合の上限は、例えば、52質量%、好ましくは、50質量%、より好ましくは、47質量%、さらに好ましくは、43質量%である。第1材料における第2フィラーの含有割合の下限は、例えば、1質量%、好ましくは、18質量%、より好ましくは、20質量%、さらに好ましくは、22質量%である。第1材料における第2フィラーの含有割合の上限は、例えば、26.5質量%、好ましくは、25質量%、より好ましくは、24質量%である。第1フィラー100質量部に対する第2フィラーの含有部数の下限は、例えば、30質量部、好ましくは、40質量部、より好ましくは、50質量部である。第1フィラー100質量部に対する第2フィラーの含有部数の上限は、例えば、70質量部、好ましくは、60質量部、より好ましくは、55質量部である。
【0044】
第1材料は、好ましくは、樹脂マトリクスとしての第1樹脂成分を含む。
【0045】
第1樹脂成分は、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を含む。好ましくは、第1樹脂成分は、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂からなる。
【0046】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0047】
熱硬化性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0048】
熱硬化性樹脂として、好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられる。なお、エポキシ樹脂は、主剤、硬化剤および硬化促進剤を含有するエポキシ樹脂組成物として調製される。
【0049】
主剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などの2官能エポキシ樹脂、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、トリグリシジルアミノフェノール)などの3官能以上の多官能エポキシ樹脂などが挙げられる。これら主剤は、単独使用または2種以上併用することができる。主剤として、好ましくは、2官能エポキシ樹脂、より好ましくは、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0050】
主剤のエポキシ当量の下限は、例えば、10g/eq.、好ましくは、80g/eq.である。主剤のエポキシ当量の上限は、例えば、300g/eq.、好ましくは、250g/eq.である。
【0051】
主剤の軟化点の下限は、例えば、50℃、好ましくは、70℃、より好ましくは、72℃、さらに好ましくは、75℃である。主剤の軟化点の上限は、例えば、130℃、好ましくは、110℃、より好ましくは、90℃である。
【0052】
主剤の軟化点が上記した下限以上であれば、
図1Cに示す工程において、封止用樹脂シート1が流動できる。従って、
図1Cに示す工程における封止用樹脂シート1の厚み方向一方面を平坦にできる。
【0053】
第1材料における主剤の割合の下限は、例えば、1質量%、好ましくは、2質量%である。第1材料における主剤の割合の上限は、例えば、30質量%、好ましくは、15質量%である。エポキシ樹脂組成物における主剤の割合の下限は、例えば、30質量%、好ましくは、50質量%である。エポキシ樹脂組成物における主剤の割合の上限は、例えば、80質量%、好ましくは、70質量%である。
【0054】
硬化剤は、加熱によって、上記した主剤を硬化させる潜在性硬化剤である。硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂などのフェノール樹脂が挙げられる。硬化剤がフェノール樹脂であれば、フェノール樹脂が主剤とともに、それらの硬化体が、高い耐熱性と高い耐薬品性とを有する。従って、硬化体は、封止信頼性に優れる。
【0055】
これら硬化剤は、単独使用または2種以上併用することができる。硬化剤として、好ましくは、フェノールノボラック樹脂およびトリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂を併用する。
【0056】
フェノールノボラック樹脂およびトリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂を併用する場合には、フェノールノボラック樹脂およびトリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂の総量100質量部に対するフェノールノボラック樹脂の含有割合の下限は、例えば、10質量部である。フェノールノボラック樹脂およびトリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂の総量100質量部に対するフェノールノボラック樹脂の含有割合の上限は、例えば、30質量部である。フェノールノボラック樹脂およびトリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂の総量100質量部に対するトリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂の含有割合の下限は、例えば、70質量部である。フェノールノボラック樹脂およびトリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂の総量100質量部に対するトリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂の含有割合の上限は、例えば、90質量部である。
【0057】
硬化剤の割合は、下記の当量比となるように設定される。具体的には、主剤中のエポキシ基1当量に対する、フェノール樹脂中の水酸基の合計の下限が、例えば、0.7当量、好ましくは、0.9当量である。主剤中のエポキシ基1当量に対する、フェノール樹脂中の水酸基の合計の上限が、例えば、1.5当量、好ましくは、1.2当量である。具体的には、主剤100質量部に対する硬化剤の含有部数の下限は、例えば、20質量部、好ましくは、40質量部である。主剤100質量部に対する硬化剤の含有部数の上限は、例えば、80質量部、好ましくは、60質量部である。
【0058】
硬化促進剤は、加熱によって、主剤の硬化を促進する触媒(熱硬化触媒)である。硬化促進剤としては、例えば、有機リン系化合物、例えば、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ-PW)などのイミダゾール化合物などが挙げられる。好ましくは、イミダゾール化合物が挙げられる。主剤100質量部に対する硬化促進剤の含有部数の下限は、例えば、0.05質量部である。主剤100質量部に対する硬化促進剤の含有部数の上限は、例えば、5質量部である。
【0059】
第1材料における熱硬化性樹脂の含有割合の下限は、例えば、10質量%、好ましくは、13質量%、より好ましくは、16質量%、さらに好ましくは、20質量%である。第1材料における熱硬化性樹脂の含有割合の上限は、例えば、37質量%、好ましくは、33質量%、より好ましくは、30質量%、さらに好ましくは、25質量%である。
【0060】
熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂(6-ナイロンや6,6-ナイロンなど)、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、飽和ポリエステル樹脂(PETなど)、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体などが挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0061】
熱可塑性樹脂として、好ましくは、熱硬化性樹脂との分散性を向上させる観点から、アクリル樹脂が挙げられる。
【0062】
アクリル樹脂としては、例えば、直鎖または分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、その他のモノマー(共重合性モノマー)とを含むモノマー成分を重合してなる(メタ)アクリル酸エステルコポリマー(好ましくは、カルボキシル基含有アクリル酸エステルコポリマー)などが挙げられる。
【0063】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシルなどの炭素数1~6のアルキル基などが挙げられる。
【0064】
その他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのグリシジル基含有モノマー、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリルまたは(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなど燐酸基含有モノマー、例えば、スチレンモノマー、例えば、アクリロニトリルなどが挙げられる。これらは単独使用または2種以上を併用することができる。
好ましくは、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーが挙げられ、より好ましくは、カルボキシル基含有モノマーが挙げられる。
【0065】
その他のモノマーは単独使用または2種以上を併用することができる。
【0066】
熱可塑性樹脂として、より好ましくは、カルボキシル基を含有するアクリル樹脂が挙げられ、さらに好ましくは、熱可塑性樹脂は、カルボキシル基を含有するアクリル樹脂からなる。
【0067】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgの下限は、例えば、-70℃、好ましくは、-50℃、より好ましくは、-30℃である。熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgの上限は、例えば、0℃、好ましくは、5℃、より好ましくは、-5℃である。ガラス転移温度Tgは、例えば、Fox式により求められる理論値であって、その具体的な算出手法は、例えば、特開2016-1976号公報などに記載される。
【0068】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量の下限は、例えば、100,000、好ましくは、300,000、より好ましくは、1,000,000、さらに好ましくは、1,100,000である。熱可塑性樹脂の重量平均分子量の上限は、例えば、1,400,000である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトフラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値に基づいて測定される。
【0069】
第1材料における熱可塑性樹脂の割合の下限は、例えば、1質量%、好ましくは、2質量%、より好ましくは、3質量%である。第1材料における熱可塑性樹脂の割合の上限は、例えば、7質量%、好ましくは、6質量%、より好ましくは、5質量%である。
【0070】
また、第1封止用樹脂シートにおいて、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の総量に対する、熱可塑性樹脂の割合の下限は、例えば、5質量%、好ましくは、10質量%である。
第1封止用樹脂シートにおいて、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の総量に対する、熱可塑性樹脂の割合の上限は、例えば、30質量%、好ましくは、20質量%である。
【0071】
第1材料には、さらに、顔料、シランカップリング剤、その他の添加剤を添加することができる。
【0072】
顔料としては、例えば、カーボンブラックなどの黒色顔料が挙げられる。顔料の粒子径の下限は、例えば、0.001μmである。顔料の粒子径の上限は、例えば、1μmである。顔料の粒子径は、顔料を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径である。第1材料に対する顔料の割合の下限は、例えば、0.1質量%である。第1材料に対する顔料の割合の上限は、例えば、2質量%である。
【0073】
シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基を含有するシランカップリング剤が挙げられる。エポキシ基を含有するシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどの3-グリシドキシジアルキルジアルコキシシラン、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどの3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。好ましくは、3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。第1材料におけるシランカップリング剤の含有割合の下限は、例えば、0.1質量%、好ましくは、0.5質量%である。第1材料におけるシランカップリング剤の含有割合の上限は、例えば、10質量%、好ましくは、5質量%、より好ましくは、2質量%である。
【0074】
第1材料のガラス転移温度の下限は、例えば、100℃、好ましくは、120℃、より好ましくは、145℃、さらに好ましくは、150℃である。第1材料のガラス転移温度の上限は、例えば、180℃、好ましくは、160℃である。
【0075】
第2封止用樹脂シートは、厚み方向に直交する面方向に延びる略板形状(フィルム形状)を有する。
【0076】
第2封止用樹脂シートは、第1封止用樹脂シートの厚み方向一方面全面に、第2封止用樹脂シートの厚み方向他方面全面が接触するように、第1封止用樹脂シートに接着されている。
【0077】
第2封止用樹脂シートの材料(以下、第2材料とする。)は、層状ケイ酸塩化合物を含まず、第2無機充填材を含む。
【0078】
第2無機充填材としては、上記した第1無機充填材と同様のものが挙げられ、好ましくは、シリカが挙げられる。
【0079】
第2無機充填材の最大長さの平均値(略球形状であれば、平均粒子径。同様。)は、上記した第1無機充填材の最大長さの平均値と同じである。
【0080】
また、第2無機充填材は、第1無機充填材と同様に、第1フィラーと、第1フィラーの最大長さの平均値より小さい最大長さの平均値を有する第2フィラーとを含むことができる。
【0081】
第2無機充填材において。第1フィラーの最大長さの平均値および第2フィラーの最大長さの平均値は、第1無機充填材における第1フィラーの最大長さの平均値および第2フィラーの最大長さの平均値と同じである。
【0082】
さらに、第2無機充填材は、その表面が、部分的あるいは全体的に、シランカップリング剤などで表面処理されていてもよい。
【0083】
第2材料に対する第2無機充填材の含有割合(A)については、後述する。
【0084】
また、詳しくは後述するが、第1材料に対する第1無機充填材の含有割合(B)と、第2材料に対する第2無機充填材の含有割合(A)とは、所定の関係を有する。
【0085】
第2無機充填材が第1フィラーと第2フィラーとを含む場合には、第2材料における第1フィラーの含有割合の下限は、例えば、38質量%、好ましくは、40質量%、より好ましくは、50質量%、さらに好ましくは、52質量%、とりわけ好ましくは、54質量%である。第2材料における第1フィラーの含有割合の上限は、例えば、60質量%、好ましくは、56質量%である。第2材料における第2フィラーの含有割合の下限は、例えば、20質量%、好ましくは、22質量%、より好ましくは、25質量%、さらに好ましくは、28質量%である。第2材料における第2フィラーの含有割合の上限は、例えば、35質量%、好ましくは、30質量%である。第1フィラー100質量部に対する第2フィラーの含有部数の下限は、例えば、30質量部、好ましくは、40質量部、より好ましくは、50質量部である。第1フィラー100質量部に対する第2フィラーの含有部数の上限は、例えば、70質量部、好ましくは、60質量部、より好ましくは、55質量部である。
【0086】
第2材料は、好ましくは、樹脂マトリクスとしての第2樹脂成分を含む。
【0087】
第2樹脂成分は、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を含む。好ましくは、第2樹脂成分は、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂からなる。
【0088】
熱硬化性樹脂としては、上記した第1樹脂成分において例示した熱硬化性樹脂が挙げられ、好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられる。なお、エポキシ樹脂は、主剤、硬化剤および硬化促進剤を含有するエポキシ樹脂組成物として調製される。熱硬化性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0089】
主剤としては、上記した第1樹脂成分において例示した主剤が挙げられる。
【0090】
主剤は、単独使用または2種以上併用することができ、好ましくは、2官能エポキシ樹脂および3官能以上の多官能エポキシ樹脂を併用、より好ましくは、2官能エポキシ樹脂および3官能エポキシ樹脂を併用、さらに好ましくは、ビスフェノールF型エポキシ樹脂およびグリシジルアミン型エポキシ樹脂を併用する。
【0091】
主剤として、2官能エポキシ樹脂および3官能エポキシ樹脂を併用する場合には、2官能エポキシ樹脂および3官能エポキシ樹脂の総量100質量部に対する2官能エポキシ樹脂の割合の下限は、例えば、40質量部である。2官能エポキシ樹脂および3官能エポキシ樹脂の総量100質量部に対する2官能エポキシ樹脂の割合の上限は、例えば、60質量部である。また、2官能エポキシ樹脂および3官能エポキシ樹脂の総量100質量部に対する3官能エポキシ樹脂の割合の下限は、例えば、40質量部である。2官能エポキシ樹脂および3官能エポキシ樹脂の総量100質量部に対する3官能エポキシ樹脂の割合の上限は、例えば、60質量部である。
【0092】
主剤のエポキシ当量および軟化点は、上記した第1樹脂成分において例示した範囲と同じである。
【0093】
第2材料における主剤の割合の下限は、例えば、4質量%、好ましくは、6質量%である。第2材料における主剤の割合の上限は、例えば、20質量%、好ましくは、15質量%、より好ましくは、10質量%、さらに好ましくは、8質量%である。エポキシ樹脂組成物における主剤の割合の下限は、例えば、30質量%、好ましくは、50質量%である。エポキシ樹脂組成物における主剤の割合の上限は、例えば、80質量%、好ましくは、70質量%である。
【0094】
硬化剤としては、上記した第1樹脂成分において例示した硬化剤が挙げられ、好ましくは、フェノールノボラック樹脂が挙げられる。
【0095】
硬化剤の割合は、下記の当量比となるように設定される。具体的には、主剤中のエポキシ基1当量に対する、フェノール樹脂中の水酸基の合計の下限が、例えば、0.7当量、好ましくは、0.9当量である。主剤中のエポキシ基1当量に対する、フェノール樹脂中の水酸基の合計の上限が、例えば、1.5当量、好ましくは、1.2当量である。具体的には、主剤100質量部に対する硬化剤の含有部数の下限は、例えば、20質量部、好ましくは、40質量部、より好ましくは、60質量部である。主剤100質量部に対する硬化剤の含有部数の上限は、例えば、85質量部である。
【0096】
熱可塑性樹脂としては、上記した第1樹脂成分において例示した熱可塑性樹脂が挙げられ、好ましくは、アクリル樹脂、より好ましくは、カルボキシル基を含有するアクリル樹脂が挙げられる。
【0097】
第2材料における熱可塑性樹脂の割合の下限は、例えば、0.1質量%、好ましくは、0.6質量%である。第2材料における熱可塑性樹脂の割合の上限は、例えば、1.5質量%、好ましくは、5質量%である。
【0098】
また、第2封止用樹脂シートにおいて、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の総量に対する、熱可塑性樹脂の割合の下限は、例えば、1質量%、好ましくは、5質量%である。第2封止用樹脂シートにおいて、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の総量に対する、熱可塑性樹脂の割合の上限は、例えば、20質量%、好ましくは、10質量%である。
【0099】
第2材料には、さらに、顔料、シランカップリング剤、その他の添加剤を添加することができる。
【0100】
顔料としては、上記した第1材料において例示した顔料が挙げられる。
【0101】
顔料の粒子径は、上記した第1材料において例示した範囲と同じである。
【0102】
第2材料に対する顔料の割合の下限は、例えば、0.1質量%である。第2材料に対する顔料の割合の上限は、例えば、2質量%である。
【0103】
シランカップリング剤としては、上記した第1材料において例示したシランカップリング剤が挙げられ、好ましくは、好ましくは、3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。第2材料におけるシランカップリング剤の含有割合の下限は、例えば、0.1質量%、好ましくは、0.5質量%である。第2材料におけるシランカップリング剤の含有割合の上限は、例えば、10質量%、好ましくは、5質量%、より好ましくは、2質量%である。
【0104】
第2材料のガラス転移温度は、第1材料のガラス転移温度より低く、第2材料のガラス転移温度の下限は、例えば、100℃、好ましくは、130℃である。第2材料のガラス転移温度の上限は、例えば、160℃、好ましくは、150℃である。
【0105】
そして、封止用多層樹脂シートを得るには、第1封止用樹脂シートおよび第2封止用樹脂シートをそれぞれ製造する。
【0106】
第1封止用樹脂シートを製造するには、上記した各成分を上記した割合で配合して、第1材料を調製する。好ましくは、上記した成分を十分に攪拌して、層状ケイ酸塩化合物を第1樹脂成分(熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂)に対して均一に分散させる。
【0107】
また、必要により、溶媒(メチルエチルケトンなどのケトン系など)をさらに配合して、ワニスを調製する。その後、ワニスを、図示しない剥離シートに塗布し、その後、加熱により乾燥させて、シート形状を有する第1封止用樹脂シートを製造する。一方、ワニスを調製せず、混練押出によって、第1材料から第1封止用樹脂シートを形成することもできる。
【0108】
なお、形成される第1封止用樹脂シートは、Bステージ(半硬化状態)であって、具体的には、Cステージ前の状態である。つまり、完全硬化前の状態である。第1封止用樹脂シートは、上記した乾燥における加熱や、押出混練における加熱によって、Aステージの第1材料から、Bステージシートに形成される。
【0109】
第2封止用樹脂シートを製造するには、上記した各成分を上記した割合で配合して、第2材料を調製する。
【0110】
また、必要により、溶媒(メチルエチルケトンなどのケトン系など)をさらに配合して、ワニスを調製する。その後、ワニスを、図示しない剥離シートに塗布し、その後、加熱により乾燥させて、シート形状を有する第2封止用樹脂シートを製造する。一方、ワニスを調製せず、混練押出によって、第2材料から第2封止用樹脂シートを形成することもできる。
【0111】
なお、形成される第2封止用樹脂シートは、Bステージ(半硬化状態)であって、具体的には、Cステージ前の状態である。つまり、完全硬化前の状態である。第2封止用樹脂シートは、上記した乾燥における加熱や、押出混練における加熱によって、Aステージの第1材料から、Bステージシートに形成される。
【0112】
次いで、封止用多層樹脂シートを得るには、第1封止用樹脂シートの厚み方向一方側に、第2封止用樹脂シートを配置(転写)する。
【0113】
これにより、封止用多層樹脂シートが得られる。
【0114】
このような封止用多層樹脂シートにおいて、第1封止用樹脂シートの厚みの下限は、例えば、10μm、好ましくは、25μm、より好ましくは、30μmである。第1封止用樹脂シートの厚みの上限は、例えば、3000μm、好ましくは、1000μm、より好ましくは、500μm、さらに好ましくは、300μm、とりわけ好ましくは、100μmである。
【0115】
また、第2封止用樹脂シートの厚みの下限は、例えば、10μm、好ましくは、30μm、より好ましくは、50μmである。第2封止用樹脂シートの厚みの上限は、例えば、3000μm、好ましくは、1000μm、より好ましくは、500μmである。
【0116】
また、第1封止用樹脂シートの厚みに対する第2封止用樹脂シートの厚みの割合の下限は、例えば、0.5、好ましくは、1、より好ましくは、1超過である。第1封止用樹脂シートの厚みに対する第2封止用樹脂シートの厚みの割合の上限は、例えば、20、好ましくは、10、より好ましくは、5である。
【0117】
また、このような封止用多層樹脂シートの厚みの下限は、例えば、20μm、好ましくは、30μm、より好ましくは、50μmである。封止用多層樹脂シートの厚みの上限は、例えば、6000μm、好ましくは、3000μm、より好ましくは、1500μm、さらに好ましくは、1000μm、とりわけ好ましくは、500μm、最も好ましくは、300μmである。
【0118】
好ましくは、第1封止用樹脂シートの厚みは、上記した範囲のうち、特定範囲であり、かつ、第2封止用樹脂シートの厚みは、上記した範囲のうち、特定範囲である。
【0119】
具体的には、第2封止用樹脂シートの厚みは、第1封止用樹脂シートの厚みよりも、大きく、詳しくは、第1封止用樹脂シートの厚みの下限が、例えば、30μm、好ましくは、40μmであり、第1封止用樹脂シートの厚みの上限が、例えば、100μm、好ましくは、70μmである場合に、第2封止用樹脂シートの厚みの下限が、例えば、50μmであり、第2封止用樹脂シートの厚みの上限が、500μm、好ましくは、300μmである。封止用多層樹脂シートの厚みの下限は、例えば、80μm、好ましくは、100μm、より好ましくは、200μmである。封止用多層樹脂シートの厚みの上限は、例えば、600μm、好ましくは、300μmである。
【0120】
このような場合には、封止用多層樹脂シートの反りを抑制することができる。また、第1封止用樹脂シートから、第1無機充填材が排出されることを抑制できる。
【0121】
また、第1封止用樹脂シートの線膨張係数の上限は、90ppm/℃、好ましくは、80ppm/℃、より好ましくは、75ppm/℃、さらに好ましくは、70ppm/℃、とりわけ好ましくは、60ppm/℃である。第1封止用樹脂シートの線膨張係数の上限は、低い方が好ましい。なお、第1封止用樹脂シートの線膨張係数の上限が低すぎると第1無機充填材の量が多くなりすぎるためシートの成形性が低下する。第1封止用樹脂シートの線膨張係数の下限は、例えば、20ppm/℃であっても良い。
【0122】
また、第2封止用樹脂シートの線膨張係数の上限は、例えば、50ppm/℃、好ましくは、40ppm/℃、より好ましくは、20ppm/℃である。第2封止用樹脂シートの線膨張係数の上限は、低い方が好ましい。なお、第2封止用樹脂シートの線膨張係数の上限が低すぎると第2無機充填材の量が多くなりすぎるためシートの成形性が低下する。
第2封止用樹脂シートの線膨張係数の下限は、例えば、5ppm/℃であっても良い。
【0123】
第1封止用樹脂シートの線膨張係数が、上記上限以下であり、かつ、第2封止用樹脂シートの線膨張係数が、上記上限以下であれば、封止用多層樹脂シートの反りを抑制することができる。
【0124】
なお、上記の線膨張係数の測定方法は、後述する実施例において、詳述する。
【0125】
次いで、封止用多層樹脂シートによって、素子の一例としての電子素子を封止して、電子素子パッケージ50を製造する方法を、
図1A~
図1Dを参照して説明する。
【0126】
この方法では、
図1Aに示すように、まず、第1封止用樹脂シート1と、第2封止用樹脂シート12とを厚み方向一方に向かって順に備える封止用多層樹脂シート11を準備する(準備工程)。封止用多層樹脂シート11は、厚み方向に互いに対向する厚み方向一方面および他方面を有する。
【0127】
別途、
図1Bに示すように、電子素子21を準備する。
【0128】
電子素子21は、電子部品を含んでおり、例えば、基板22に複数実装されている。複数の電子素子21と、基板22とは、素子実装基板24に、バンプ23とともに、備えられる。つまり、この素子実装基板24は、複数の電子素子21と、基板22と、バンプ23とを備える。
【0129】
基板22は、面方向に延びる略平板形状を有する。基板22の厚み方向一方面25には、電子素子21の電極(図示せず)と電気的に接続される端子(図示せず)が設けられている。
【0130】
複数の電子素子21のそれぞれは、面方向に延びる略平板形状(チップ形状)を有する。複数の電子素子21は、互いに面方向に間隔を隔てて配置されている。複数の電子素子21の厚み方向他方面28は、基板22の厚み方向一方面25に平行する。複数の電子素子21のそれぞれの厚み方向他方面28には、電極(図示せず)が設けられている。電子素子21の電極は、次に説明するバンプ23を介して、基板22の端子と電気的に接続されている。なお、電子素子21の厚み方向他方面28は、基板22の厚み方向一方面25との間の隙間(空間)26が隔てられる。
【0131】
隣接する電子素子21の間隔の下限は、例えば、50μm、好ましくは、100μm、より好ましくは、200μmである。隣接する電子素子21の間隔の上限は、例えば、10mm、好ましくは、5mm、より好ましくは、1mmである。隣接する電子素子21の間隔が上記上限以下であれば、基板22により多くの電子素子21を実装でき、省スペース化できる。
【0132】
バンプ23は、複数の電子素子21のそれぞれの電極(図示せず)と、基板22のそれぞれの端子とを電気的に接続する。バンプ23は、電子素子21の電極と、基板22の端子の間に配置される。バンプ23の材料としては、例えば、半田、金などの金属などが挙げられる。バンプ23の厚みは、隙間26の厚み(高さ)に相当する。バンプ23の厚みは、素子実装基板24の用途および目的に応じて適宜設定される。
【0133】
次いで、
図1Bに示すように、封止用多層樹脂シート11を、複数の電子素子21に配置する(配置工程)。具体的には、封止用多層樹脂シート11の厚み方向他方面(第1封止用樹脂シート1側)を、複数の電子素子21の厚み方向一方面に接触させる。
【0134】
次いで、
図1Cに示すように、封止用多層樹脂シート11および素子実装基板24を、プレスする(封止工程)。好ましくは、封止用多層樹脂シート11および素子実装基板24を、熱プレスする。
【0135】
例えば、2つの平板を備えるプレス27により、封止用多層樹脂シート11および素子実装基板24を厚み方向に挟みながら、それらをプレスする。なお、プレス27の平板には、例えば、図示しない熱源が備えられる。
【0136】
封止用多層樹脂シート11のプレスよって、第1封止用樹脂シート1は、電子素子21の外形に対応して塑性変形する。第1封止用樹脂シート1の厚み方向他方面は、複数の電子素子21の厚み方向一方面および周側面に対応する形状に変形する。
【0137】
なお、第1封止用樹脂シート1は、Bステージを維持しながら、塑性変形する。
【0138】
これによって、第1封止用樹脂シート1は、複数の電子素子21のそれぞれの周側面を被覆しつつ、平面視において、電子素子21と重複しない基板22の厚み方向一方面25に接触する。
【0139】
一方、第2封止用樹脂シート12は、層状ケイ酸塩化合物を含有しないことから、プレスされても、流動性が向上せず、低いままであって、隣接する電子素子21間に侵入することが抑制される。
【0140】
プレス条件(圧力、時間、さらには、温度など)は、特に限定されず、複数の電子素子21間に第1封止用樹脂シート1が侵入できる一方、素子実装基板24が損傷しない条件が選択される。より具体的には、プレス条件は、第1封止用樹脂シート1が流動して、隣接する電子素子21間に侵入し、複数の電子素子21のそれぞれの周側面を被覆しつつ、電子素子21と平面視で重複しない基板22の厚み方向一方面25に接触できるように、設定される。
【0141】
具体的には、プレス圧の下限は、例えば、0.01MPa、好ましくは、0.05MPaである。プレス圧の上限は、例えば、10MPa、好ましくは、5MPaである。プレス時間の下限は、例えば、0.3分、好ましくは、0.5分である。プレス時間の上限は、例えば、10分、好ましくは、5分である。
【0142】
具体的には、加熱温度の下限は、例えば、40℃、好ましくは、60℃である。加熱温度の上限は、例えば、100℃、好ましくは、95℃である。
【0143】
これにより、封止用多層樹脂シート11から、複数の電子素子21を封止する封止体31が形成(作製)される。封止体31の厚み方向一方面は、平坦面になる。
【0144】
このとき、封止体31は、隙間(電子素子21および基板22間の隙間)26にわずかに侵入することが許容される。具体的には、封止体31は、電子素子21の側端縁を基準として、封止体31が隙間26に侵入する封止体侵入長さX(
図3C参照)を有することが許容される。
【0145】
具体的には、封止体侵入長さXの上限は、硬化体侵入長さYの目的とする上限値に応じて適宜設定することができる。具体的には、例えば、封止体侵入長さXの上限は、50μm、好ましくは、30μmであっても良い。なお、封止体侵入長さXの下限は、例えば、-15μmであることが重要である。
【0146】
その後、
図1Dに示すように、封止体31を加熱して、封止体31から硬化体41を形成する(硬化工程)。
【0147】
具体的には、封止体31および素子実装基板24をプレス27から取り出し、続いて、封止体31および素子実装基板24を乾燥機で、大気圧下で、加熱する。
【0148】
加熱温度(キュア温度)の下限は、例えば、100℃、好ましくは、120℃である。加熱温度(キュア温度)の上限は、例えば、200℃、好ましくは、180℃である。加熱時間の下限は、例えば、10分、好ましくは、30分である。加熱時間の上限は、例えば、180分、好ましくは、120分である。
【0149】
上記した封止体31の加熱によって、封止体31から、Cステージ化(完全硬化)した硬化体41が形成される。硬化体41の厚み方向一方面は、露出面である。
【0150】
なお、隙間へのわずかな侵入が許容された封止体31の端縁が、隙間26の内部にさらにわずかに侵入して、硬化体41となることが許容されるが、詳しくは後述するが、第1封止用樹脂シート1に対する第1無機充填材の含有割合(B)と、第2封止用樹脂シート12に対する第2無機充填材の含有割合(A)とが、所定の割合および所定の関係であるため、その程度は、可及的に小さく抑制される。具体的には、硬化体41は、電子素子21の側端縁を基準として、硬化体41が隙間26に侵入する硬化体侵入長さY(
図3D参照)から、封止体侵入長さXを差し引いた値(Y-X)(以下、封止体侵入量(Y-X)とする。)を小さくすることができる。
【0151】
硬化体侵入長さYの上限は、チップがSAWフィルター用途で用いられる場合はチップ裏面の配線に触れない範囲で適宜設定することができる。具体的には、硬化体侵入長さYの上限は、例えば、30μm、好ましくは、25μmであっても良い。なお、硬化体侵入長さYの下限は、例えば、-10μmであることが重要である。
【0152】
そして、この封止用多層樹脂シート11では、第1封止用樹脂シート1に対する第1無機充填材の含有割合(B)と、第2封止用樹脂シート12に対する第2無機充填材の含有割合(A)とが、所定の割合および所定の関係である。そのため、この封止用多層樹脂シート11を電子素子21に配置し、この封止用多層樹脂シート11(封止体31)を加熱して、
図1Dに示すように、硬化体41を形成するときに、電子素子21および基板22間である隙間26への硬化体41の侵入量を低減することができる。
【0153】
詳しくは、第1材料に対する第1無機充填材の含有割合(B)の下限は、50質量%、好ましくは、52質量%、より好ましくは、55質量%、さらに好ましくは、57質量%、とりわけ好ましくは、60質量%、最も好ましくは、62質量%である。第1材料に対する第1無機充填材の含有割合(B)の上限は、例えば、80質量%、好ましくは、75質量%、より好ましくは、72質量%、さらに好ましくは、70質量%、とりわけ好ましくは、68質量%である。
【0154】
第1材料に対する第1無機充填材の含有割合(B)が、上記下限以上であれば、
図1Cに示す工程における封止用樹脂シート1が流動できる。
【0155】
また、第2材料に対する第2無機充填材の含有割合(A)の下限は、60質量%、好ましくは、65質量%、より好ましくは、70質量%、さらに好ましくは、質量%、とりわけ好ましくは、82質量%である。第2材料に対する第2無機充填材の含有割合(A)の上限は、例えば、95質量%、好ましくは90質量%、より好ましくは、87質量%、さらに好ましくは、86質量%である。
【0156】
第2材料に対する第2無機充填材の含有割合(A)が、上記下限以上であれば、
図1Cに示す工程における第2封止用樹脂シート12が流動できる。
【0157】
また、第1封止用樹脂シート1に対する第1無機充填材の含有割合(B)と、第2封止用樹脂シート12に対する第2無機充填材の含有割合(A)とが、下記式(1)を満足する。
【0158】
0.4A+1.7B<160 (1)
以上より、第1封止用樹脂シート1に対する第1無機充填材の含有割合(B)と、第2封止用樹脂シート12に対する第2無機充填材の含有割合(A)とが、所定の割合および所定の関係であるとは、上記第1無機充填材の含有割合(B)の下限が、上記下限以上であり、かつ、上記第2無機充填材の含有割合(A)の下限が、上記下限以上であり、かつ、上記第1無機充填材の含有割合(B)と、上記第2無機充填材の含有割合(A)とが、上記式(1)を満足することを意味し、具体的には、第1封止用樹脂シート1に対する第1無機充填材の含有割合(B)と、第2封止用樹脂シート12に対する第2無機充填材の含有割合(A)とが、
図2の斜線部分の範囲であることを意味する。
【0159】
第1封止用樹脂シート1に対する第1無機充填材の含有割合(B)と、第2封止用樹脂シート12に対する第2無機充填材の含有割合(A)とが、このような範囲内であれば、硬化体41を形成するときに、電子素子21および基板22間である隙間26への硬化体41の侵入量を低減することができる。さらに、電子素子21および基板22間への硬化体の侵入量を適宜な値に制御することができる。
【0160】
一方、第1材料に対する第1無機充填材の含有割合(B)が、上記下限未満であれば(詳しくは、
図2における領域A)、信頼性が低下する。
【0161】
また、第2材料に対する第2無機充填材の含有割合(A)の下限が、上記下限未満であれば(詳しくは、
図2における領域B)、信頼性が低下する。
【0162】
また、第1封止用樹脂シート1に対する第1無機充填材の含有割合(B)と、第2封止用樹脂シート12に対する第2無機充填材12の含有割合(A)とが、下記式(2)を満足する場合には(詳しくは、
図2における領域C)、第1封止用樹脂シート1および第2封止用樹脂シート12の成型性が低下する。
【0163】
0.4A+1.7B≧160 (2)
とりわけ、封止用樹脂シート1および第2封止用樹脂シート12が、50℃以上、130℃以下の軟化点を有するエポキシ樹脂の主剤を含有すれば、
図1Cに示す工程において、封止用樹脂シート1および第2封止用樹脂シート12が流動できる。従って、
図1Cに示す工程の時間短縮、および、
図1Cに示す工程における第2封止用樹脂シート12の厚み方向一方面を平坦にできる。
【0164】
さらに、封止用樹脂シート1および第2封止用樹脂シート12が、エポキシ樹脂の主剤とともにフェノール樹脂を硬化剤として含有すれば、硬化体41が、高い耐熱性と高い耐薬品性とを有する。従って、硬化体41は、封止信頼性に優れる。
【0165】
なお、
図1Cに示す工程において、第2封止用樹脂シート12は、押圧力を受けて流動化し、厚み方向一方面が平坦になる。また、
図1Cに示す工程において、封止用多層樹脂シート11では、上述のように、第2封止用樹脂シート12とともに封止用樹脂シート1が、押圧力を受けて軟化流動して、電子素子21の外形に追従して変形する。
図1Cに示す工程では、封止用樹脂シート1が、隙間26にわずかに進入することが許容される。
【0166】
変形例
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態、その変形例を適宜組み合わせることができる。
【0167】
封止用多層樹脂シート11における第1封止用樹脂シート1および/または第2封止用樹脂シート12は、多層であってもよい。
【0168】
素子の一例として、基板22の厚み方向一方面25に対して隙間26を隔てて配置される電子素子21を挙げ、これを封止用多層樹脂シート11で封止したが、例えば、図示しないが、基板22の厚み方向一方面25に接触する電子素子21を挙げることができ、これを封止用多層樹脂シート11で封止することができる。
【0169】
また、素子の一例として、電子素子21を挙げたが、半導体素子を挙げることもできる。なお、電子素子としては、具体的には表面弾性波フィルター(SAWフィルター)などが挙げられる。
【実施例】
【0170】
以下に調製例、比較調製例、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら調製例、比較調製例、実施例および比較例に限定されない。
また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0171】
調製例および比較調製例で使用した各成分を以下に示す。
【0172】
層状ケイ酸塩化合物:ホージュン社製のエスベンNX(表面がジメチルジステアリルアンモニウムで変性された有機化ベントナイト)
エポキシ樹脂1:新日鐵化学社製のYSLV-80XY(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、高分子量エポキシ樹脂、エポキシ当量200g/eq.、固体、軟化点80℃) エポキシ樹脂2:三菱ケミカル社製のJER630(トリグリシジルアミノフェノール(グリシジルアミン型エポキシ樹脂))、エポキシ当量90g/eq.~105g/eq.、液状
フェノール樹脂1:群栄化学社製のLVR-8210DL(ノボラック型フェノール樹脂、潜在性硬化剤、水酸基当量:104g/eq.、固体、軟化点:60℃)
フェノール樹脂2:群栄化学社製のTPM-100(トリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂)、水酸基当量:98g/eq.
アクリル樹脂1:根上工業社製のHME-2006M、カルボキシル基含有のアクリル酸エステルコポリマー(アクリル樹脂)、酸価:32、官能基数:736、重量平均分子量:1290000、ガラス転移温度(Tg):-13.9℃、固形分濃度20質量%のメチルエチルケトン溶液
シランカップリング剤:信越化学社製のKBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
第1フィラー:FB-8SM(球状溶融シリカ粉末)、平均粒子径7.0μm)
第2フィラー:アドマテックス社製のSC220G-SMJ(平均粒径0.5μm)を3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製の製品名:KBM-503)で表面処理した無機フィラー(非晶質シリカおよび表面処理された非晶質シリカ)、無機フィラーの100質量部に対して1質量部のシランカップリング剤で表面処理した無機粒子
硬化促進剤:四国化成工業社製の2PHZ-PW(2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール)
溶媒:メチルエチルケトン(MEK)
カーボンブラック:三菱化学社製の#20、粒子径50nm
<第1封止用樹脂シートの調製>
調製例1~調製例10
表1に記載の配合処方に従って、材料のワニスを調製した。ワニスを剥離シートの表面に塗布した後、120℃で、2分間乾燥させて、厚み50μmの封止用樹脂シート1を作製した。第1封止用樹脂シート1は、Bステージであった。
<第2封止用樹脂シートの調製>
調製例11~調製例17
表2に記載の配合処方に従って、材料のワニスを調製した。ワニスを剥離シートの表面に塗布した後、120℃で、2分間乾燥させて、厚み52.5μmの第2封止用樹脂シート12用前駆体を作製し、この第2封止用樹脂シート12用前駆体を4枚積層させて、厚み210μmの第2封止用樹脂シート12を作製した。第2封止用樹脂シート12は、Bステージであった。
【0173】
実施例1~33および比較例1~比較例23
表3に示すような調製例の組合せで、第1封止用樹脂シート1の厚み方向一方側に、第2封止用樹脂シート12を配置し、厚み260μmの封止用多層樹脂シート11を作製した。
【0174】
なお、比較例22および比較例23は、信頼性が低く、侵入量以外の特性の観点から、使用が不可であった。
【0175】
評価
<硬化体侵入長さの測定>
下記のステップA~ステップEを実施して、硬化体侵入長さYを測定した。
【0176】
ステップA:
図3Aに示すように、各実施例および各比較例の封止用多層樹脂シート11から、縦10mm、横10mm、厚み260μmのサンプルシート61を準備する。
【0177】
ステップB:
図3Bに示すように、縦3mm、横3mm、厚み200μmのダミー素子71が、厚み20μmのバンプ23を介してガラス基板72に実装されたダミー素子実装基板74を準備する。
【0178】
ステップC:
図3Cに示すように、サンプルシート61によって、ダミー素子実装基板74におけるダミー素子71を、真空平板プレスにより、温度65℃、圧力0.1MPa、真空度1.6kPa、プレス時間1分で封止して、サンプルシート61から封止体31を形成する。
【0179】
ステップD:
図3Dに示すように、封止体31を、150℃、大気圧下、1時間加熱により熱硬化させて、封止体31から硬化体41を形成する。
【0180】
ステップE:
図3Dの拡大図に示すように、ダミー素子71の側端縁を基準として、側端縁からダミー素子71とガラス基板72との隙間26に硬化体41が侵入する硬化体侵入長さYを測定する。
【0181】
得られた硬化体侵入長さYを表3に示す。
【0182】
なお、評価中、「マイナス」は、ダミー素子71の側端縁より外側に突出する空間(
図1Dの太い破線参照)が形成されることを意味する。「マイナス」の絶対値が、その空間の突出長さに相当する。
【0183】
<ガラス転移温度の測定>
各実施例および各比較例の第1封止用樹脂シート1および第2封止用樹脂シート12のガラス転移温度を、動的粘弾性測定装置(DMA、周波数1Hz、引張モード、昇温速度10℃/min)を用いて測定される損失正接(tanδ)の極大値により、測定した。
その結果を表3に示す。
【0184】
<線膨張係数の測定>
各実施例および各比較例の第1封止用樹脂シート1および第2封止用樹脂シート12の線膨張係数を、熱機械測定装置(TMA)により、以下の条件に基づき測定した。その結果を表3に示す。
(測定条件)
熱機械測定装置(TMA):TMA(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製
サンプルサイズ:4.5mm×20mm
モード:引張モード
昇温速度:5℃/分
測定温度範囲:25℃から260℃
考察
実施例1~33および比較例1~比較例23における第1材料に対する第1無機充填材の含有割合(B)と、第2材料に対する第2無機充填材の含有割合(A)との関係を示すグラフを
図4に示す。
【0185】
このとき、硬化体侵入長さを低くできる第1無機充填材の含有割合(B)と、第2材料に対する第2無機充填材の含有割合(A)との範囲(
図4の斜線部分)は、
図4の関係式(B≧50、A≧60、0.4A+1.7B<160)により定められることがわかった。
【0186】
詳しくは、上記の範囲に含まれる実施例1~33では、上記範囲に含まれない比較例1~比較例23に比べて、得られた電子素子パッケージは、適度な硬化体侵入長さで成型されている。
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0191】
封止用多層樹脂シートは、素子の封止に用いられる。
【符号の説明】
【0192】
1 第1封止用樹脂シート
11 封止用多層樹脂シート
12 第2封止用樹脂シート