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特許7600118流れ切替装置を備えた水圧式送達システム及び関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】流れ切替装置を備えた水圧式送達システム及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20241209BHJP
   A61F 2/95 20130101ALI20241209BHJP
【FI】
A61F2/24
A61F2/95
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021540806
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 US2020018716
(87)【国際公開番号】W WO2020172205
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】62/807,681
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513157121
【氏名又は名称】トゥエルヴ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(72)【発明者】
【氏名】デュエリ ジャン-ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ケニー ギャヴィン
(72)【発明者】
【氏名】フォックス ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】マクリーン マット
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0296325(US,A1)
【文献】特表2007-510471(JP,A)
【文献】特表2006-519053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00-2/97
A61M 25/00-99/00
F16K 5/00-5/22
F16K 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心臓弁装置を展開するために送達システム内の流体流を制御するための流れ切替装置であって、
前記流れ切替装置は、筐体を有し、この筐体は、
接合部で交差する複数のチャネルと、
前記接合部と流体連通している前記複数のチャネルの複数の開口部であって、第1の開口部及び第2の開口部を含む前記複数の開口部と、を含み、
前記流れ切替装置は、さらに、前記接合部に配設された単一の流れ制御構成要素を有し、この流れ制御構成要素は、その位置に基づいて、前記複数の開口部間の前記複数のチャネルを介して流体連通させるために、第1の経路及び第2の経路を含む複数の経路を選択的に形成するように単一のアクションによって移動可能であり、
前記流れ制御構成要素が第1の位置にあるとき、前記第1の経路が形成されて、少なくとも前記第1の開口部を通って前記送達システムの第1のチャンバに向かう流体流を許容し、前記人工心臓弁装置の展開を引き起こし、
前記流れ制御構成要素が第2の位置にあるとき、前記第2の経路が形成されて、少なくとも前記第2の開口部を通って前記送達システムの第2のチャンバに向かう流体流を許容し、前記人工心臓弁装置の再捕捉を引き起こし、
前記流れ切替装置は、さらに、前記流れ制御構成要素に動作可能に結合されたハンドルを有し、このハンドルは、前記流れ制御構成要素を前記第1の位置及び前記第2の位置の少なくともいずれかに配置して、前記送達システムの前記第1のチャンバ又は前記第2のチャンバの少なくともいずれかに向かう流体流を選択的に許容するように移動可能であり、
前記流れ制御構成要素が、前記接合部に配設されたシャフトを備え、このシャフトは、前記シャフトの回転角に基づいて前記経路のいずれかを選択的に形成するように回転可能であり、
前記流れ制御構成要素が第3の位置にあるとき、第3の経路が形成されて、前記複数の開口部の第3の開口部を通ってインフレータに向かう流体流を許容する、流れ切替装置。
【請求項2】
前記流れ制御構成要素が前記第1の位置にあるとき、第3の経路が、前記第2のチャンバから流体を排出するために形成される一方、前記第1の経路が、前記送達システムの前記第1のチャンバに向かう流体流を許容して、前記人工心臓弁装置の展開を集合的に引き起こす、請求項1に記載の流れ切替装置。
【請求項3】
前記流れ制御構成要素が前記第2の位置にあるとき、第4の経路が、前記第1のチャンバから流体を排出するために形成される一方、前記第2の経路が、前記送達システムの前記第2のチャンバに向かう流体流を許容して、前記人工心臓弁装置の再捕捉を集合的に引き起こす、請求項2に記載の流れ切替装置。
【請求項4】
前記筐体が、
前記流れ制御構成要素が前記第1の位置にあるときに前記第1の経路の入口を形成し、前記流れ制御構成要素が前記第2の位置にあるときに前記第2の経路への入口を形成する、前記複数の開口部の第3の開口部と、
前記流れ制御構成要素が前記第1の位置にあるときに前記第1の経路の出口を形成し、前記流れ制御構成要素が前記第2の位置にあるときに前記第2の経路の出口を形成する、前記複数の開口部の第4の開口部と、をさらに備える、請求項3に記載の流れ切替装置。
【請求項5】
インフレータ装置を受容して前記流れ切替装置の前記筐体に保持するように構成されたブラケット構造をさらに含む、請求項1に記載の流れ切替装置。
【請求項6】
前記流れ制御構成要素が、
前記筐体のボア内に配設されたシャフトを備え、このシャフトは、前記ボアに対する前記シャフトの長手方向位置に基づいて前記複数の経路のいずれかを選択的に形成するように長手方向に移動可能である、請求項1に記載の流れ切替装置。
【請求項7】
前記複数の経路を選択的に形成するように移動可能な密封された区画を形成するために、前記シャフトの異なる場所に配設された複数の密封部材をさらに備える、請求項6に記載の流れ切替装置。
【請求項8】
前記複数の密封部材の各々が、前記シャフトの周りに配設されたOリングである、請求項7に記載の流れ切替装置。
【請求項9】
前記ハンドルが、前記第1の位置と前記第2の位置との間で前記シャフトを切り替えるように動作可能である、請求項6に記載の流れ切替装置。
【請求項10】
前記シャフトが、前記シャフトの回転角に基づいて前記複数の経路のうちのいずれかを選択的に形成する少なくとも1つの回転可能なチャネルを備える、請求項に記載の流れ切替装置。
【請求項11】
前記流れ切替装置が、流体流を転換するための4方向活栓を備える、請求項に記載の流れ切替装置。
【請求項12】
前記人工心臓弁装置の移植処置中は、前記流れ切替装置が患者の外部にあるように構成されている、請求項に記載の流れ切替装置。
【請求項13】
人工心臓弁装置を患者の心臓に送達するためのシステムであって、
前記システムは、水圧で駆動され、前記患者の前記心臓に対して前記人工心臓弁装置を展開及び再捕捉する送達制御構成要素を含む長尺のカテーテル本体を有し、
前記システムは、流れ切替装置を有し、この流れ切替装置は、
接合部で交差する複数のチャネルの複数の開口部を含む筐体と、
前記接合部に配設された単一の流れ制御構成要素であって、この流れ制御構成要素の位置に基づいて、前記複数のチャネルを介して前記複数の開口部間の流体連通のための複数の経路を選択的に形成するように単一のアクションによって移動可能な前記流れ制御構成要素と、を含み、
前記流れ制御構成要素が第1の位置にあるとき、第1の経路が形成されて、前記複数の開口部の第1の開口部を通る流体流を許容し、前記システムの第1のチャンバを充填することによって前記人工心臓弁装置を前記患者の前記心臓に展開させ、
前記流れ制御構成要素が第2の位置にあるとき、第2の経路が形成されて、前記複数の開口部の第2の開口部を通る流体流を許容し、前記システムの前記第1のチャンバを空にすることによって、前記患者の前記心臓から前記人工心臓弁装置を再捕捉させ、
前記システムは、さらに、前記第1のチャンバとの流体連通のための前記複数の経路の中から選択するために、前記第1の位置と前記第2の位置との間で前記流れ制御構成要素の位置を変更するために移動可能なハンドルを有し、
前記流れ制御構成要素が、前記接合部に配設されたシャフトを備え、このシャフトは、前記シャフトの回転角に基づいて前記経路のいずれかを選択的に形成するように回転可能であり、
前記流れ制御構成要素が第3の位置にあるとき、第3の経路が形成されて、前記複数の開口部の第3の開口部を通ってインフレータに向かう流体流を許容する、システム。
【請求項14】
前記流れ制御構成要素が第1の位置にあるとき、第3の経路が形成されて、前記複数の開口部の第3の開口部を通る流体流を許容し、前記システムの第2のチャンバを空にすることによって、前記人工心臓弁装置を前記患者の前記心臓に展開させる、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記流れ制御構成要素が第2の位置にあるとき、第4の経路が形成されて、前記複数の開口部の第3の開口部を通る流体流を許容し、前記システムの第2のチャンバを充填することによって、前記人工心臓弁装置を前記患者の前記心臓内に再捕捉させる、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記第2のチャンバを含む前記長尺のカテーテル本体のハンドルをさらに備える、請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記送達制御構成要素は、前記第2のチャンバを含む、請求項15記載のシステム。
【請求項18】
患者に医療機器を移植するように構成されたシステム内の流体流を制御する流れ切替装置であって、
前記流れ切替装置は、接合部で交差する複数のチャネルの複数の開口部を含む筐体を有し、
前記流れ切替装置は、さらに、前記接合部に配設された単一の流れ制御構成要素を有し、この流れ制御構成要素は、その位置に基づいて、前記複数の開口部間の流体連通のための1つ以上の経路を形成するように単一のアクションによって移動可能であり、
前記流れ制御構成要素が第1の位置にあるとき、第1の経路が形成されて、前記複数の開口部の第1の開口部を通って送達制御構成要素の第1のチャンバに向かう流体流を許容し、前記医療機器の展開を引き起こし、
前記流れ制御構成要素が第2の位置にあるとき、第2の経路が形成されて、前記複数の開口部の第2の開口部を通って第2のチャンバに向かう流体流を許容し、前記医療機器の再捕捉を引き起こし、
前記流れ切替装置は、さらに、前記流れ制御構成要素に動作可能に結合されたハンドルを有し、このハンドルは、前記流れ制御構成要素の前記位置を少なくとも前記第1の位置と前記第2の位置との間で変更して、前記送達制御構成要素の少なくとも前記第1及び第2のチャンバと流体連通させるための前記複数の経路のいずれかを選択的に形成するように移動可能であり、
前記流れ制御構成要素が、前記接合部に配設されたシャフトを備え、このシャフトは、前記シャフトの回転角に基づいて前記経路のいずれかを選択的に形成するように回転可能であり、
前記流れ制御構成要素が第3の位置にあるとき、第3の経路が形成されて、前記複数の開口部の第3の開口部を通ってインフレータに向かう流体流を許容する、流れ切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療機器を患者に送達するための装置及びシステムに関する。特に、本発明のいくつかの実施形態は、人工心臓弁装置を展開するための流れ切替装置を備えた水圧式送達システム、及び関連する方法に関する。
【0002】
本出願は、2019年2月19日に出願された米国特許仮出願第62/807,681号の利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に援用されている。
【背景技術】
【0003】
心臓弁はいくつかの条件に影響され得る。例えば、僧帽弁は、僧帽弁逆流、僧帽弁逸脱症、及び僧帽弁狭窄症に影響され得る。僧帽弁逆流とは、僧帽弁の弁尖が最大収縮圧で並置結合できない心臓の疾患によって引き起こされる、左心室から左心房への血液の異常な漏出である。心臓病はしばしば心筋の拡張を引き起こすため、僧帽弁弁尖は十分に結合しない可能性があり、これにより、収縮期に弁尖が結合しない程度まで、生来の僧帽弁輪が拡大する。異常な逆流は、虚血又は他の状態のために乳頭筋が機能的に損なわれた場合にも発生し得る。より具体的には、収縮期に左心室が収縮するため、影響を受けた乳頭筋は、十分に収縮しないので、弁尖を適切に閉じることができない。
【0004】
僧帽弁逸脱症とは、僧帽弁弁尖が左心房内に異常に膨らむ状態である。これは僧帽弁の不規則な挙動を引き起こして、僧帽弁逆流につながり得る。乳頭筋を僧帽弁弁尖の下側に接続している腱(腱索)が裂ける、又は伸びる場合があるため、弁尖が逸脱してしまい、結合できない場合がある。僧帽弁狭窄症とは、拡張期の左心室の充満を妨げる、僧帽弁口の狭窄である。
【0005】
僧帽弁逆流は、多くの場合、左心房に逆流する血液の量を低減するために、利尿薬及び/又は血管拡張薬を使用して治療される。僧帽弁逆流を治療するために、弁の修復又は置換のいずれかのための外科的アプローチ(例えば、切開及び血管内)も使用されてきた。例えば、典型的な修復技術としては、拡張した弁輪の部分を締め付ける又は切除することを含む。例えば、締め付けは、一般に弁輪又は周囲の組織に固定されている環状又は略環状のリングを移植することを含む。他の修復処置では、弁の弁尖を縫合又はクリップして、互いに部分的に並置する。
【0006】
代替的に、より侵襲的な処置では、生来の僧帽弁の代わりに機械的弁又は生体組織を心臓に移植することによって、弁全体自体を交換する。これらの侵襲的な処置は、従来、大きな開胸術を必要とし、したがって非常に痛みを伴い、有意な罹患率を有し、長い回復期間を必要とする。さらに、多くの修復及び置換処置では、装置の耐久性又は弁輪形成リング又は交換弁の不適切なサイズ設定が、患者にさらなる問題を引き起こす可能性がある。縫合糸の配置がよくない、又は不正確であると、手技の成功に影響を与える可能性があるため、修復処置には高度なスキルを持つ心臓外科医も必要である。
【0007】
最近、大動脈弁置換術への侵襲性の低いアプローチが実装されている。事前に組み立てられた経皮的人工弁の例として、例えば、Medtronic/Corevalve Inc.(米国カリフォルニア州アーバイン)のCoreValve Revalving(登録商標)システム及びEdwards Lifesciences(米国カリフォルニア州アーバイン)のEdwards-Sapien(登録商標)弁が挙げられる。両方の弁システムには、拡張可能なフレームと、拡張可能なフレームに取り付けられた三尖バイオプロテーゼバルブとが含まれている。大動脈弁は実質的に対称で円形であり、筋肉輪を有する。大動脈用途の拡張可能なフレームは、生来の解剖学的構造と一致させるために大動脈弁輪で対称的な円形の形状をしているが、三尖人工弁は、人工弁尖の適切な結合のために円対称を必要とするためでもある。したがって、大動脈弁の解剖学的構造は実質的に均一で対称的であり、かなり筋肉質であるため、大動脈弁の解剖学的構造は、置換弁を収容する拡張可能なフレームに適している。ただし、他の心臓弁の解剖学的構造は、均一、対称、又は十分に筋肉質ではないため、経血管大動脈弁置換装置は、他のタイプの心臓弁にはあまり適していない可能性がある。
【0008】
したがって、僧帽弁置換処置中は、心臓の解剖学的構造が複雑であるため、適時に、標的位置にインプラントを展開することが重要であるが、困難である。したがって、送達システムは、置換処置中に送達システムを操作する臨床医の身体的及び認知的負担を軽減することにより、最小限の時間及び処置ステップでインプラントの標的送達を容易にするために、柔軟な方法で複雑な操作を可能にすることが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
いくつかの例では、本開示は、人工心臓弁装置を展開するために、送達システム内の流体流を制御するための流れ切替装置に関する。流れ切替装置は、接合部で交差する複数のチャネルと、接合部と流体連通している複数のチャネルの複数の開口部であって、第1の開口部及び第2の開口部を含む、複数の開口部と、を含む筐体を備える。流れ切替装置は、接合部に配設された流れ制御構成要素であって、流れ制御構成要素の位置に基づいて、複数の開口部間の複数のチャネルを介して流体連通させるために、第1の経路及び第2の経路を含む複数の経路を選択的に形成するように移動可能な流れ制御構成要素をさらに含み、流れ制御構成要素が第1の位置にあるとき、第1の経路が形成されて、少なくとも第1の開口部を通って送達システムの第1のチャンバに向かう流体流を許容し、人工心臓弁装置の展開を引き起こし、流れ制御構成要素が第2の位置にあるとき、第2の経路が形成されて、少なくとも第2の開口部を通って送達システムの第2のチャンバに向かう流体流を許容し、人工心臓弁装置の再捕捉を引き起こす。流れ切替装置は、流れ制御構成要素に動作可能に結合され、流れ制御構成要素を第1の位置及び第2の位置の少なくともいずれかに位置決めして、送達システムの第1のチャンバ又は第2のチャンバの少なくともいずれかに向かう流体流を選択的に許容するように移動可能なハンドルをさらに備えている。
【0010】
いくつかの例では、本開示は、人工心臓弁装置を患者の心臓に送達するためのシステムに関する。このシステムは、水圧で駆動され、患者の心臓に対して人工心臓弁装置を展開及び再捕捉する送達制御構成要素を含む長尺のカテーテル本体と、流れ切替装置であって、接合部で交差する複数のチャネルの複数の開口部を含む筐体、接合部に配設され、流れ制御構成要素の位置に基づいて、複数のチャネルを介して複数の開口部間の流体連通のための複数の経路を選択的に形成するように移動可能な流れ制御構成要素、を含み、流れ制御構成要素が第1の位置にあるとき、第1の経路が形成されて、複数の開口部の第1の開口部を通る流体流を許容し、システムの第1のチャンバを充填することによって人工心臓弁装置を患者の心臓に展開させ、流れ制御構成要素が第2の位置にあるとき、第2の経路が形成されて、複数の開口部の第2の開口部を通る流体流を許容し、システムの第1のチャンバを空にすることによって、患者の心臓から人工心臓弁装置を再捕捉させる、流れ切替装置と、を備えている。このシステムは、第1のチャンバとの流体連通のための複数の経路の中から選択するために、第1の位置と第2の位置との間で流れ制御構成要素の位置を変更するために移動可能なハンドルをさらに備えている。
【0011】
いくつかの例では、本開示は、患者に医療機器を移植するように構成されたシステム内の流体流を制御する流れ切替装置に関する。流れ切替装置は、接合部で交差する複数のチャネルの複数の開口部を含む筐体と、接合部に配設され、流れ制御構成要素の位置に基づいて、複数の開口部間の流体連通のための1つ以上の経路を形成するように移動可能な流れ制御構成要素であって、流れ制御構成要素が第1の位置にあるとき、第1の経路が形成されて、複数の開口部の第1の開口部を通って送達制御構成要素の第1のチャンバに向かう流体流を許容し、医療機器の展開を引き起こし、流れ制御構成要素が第2の位置にあるとき、第2の経路が形成されて、複数の開口部の第2の開口部を通って第2のチャンバに向かう流体流を許容し、医療機器の再捕捉を引き起こす、流れ制御構成要素と、流れ制御構成要素に動作可能に結合され、流れ制御構成要素の位置を少なくとも第1の位置と第2の位置との間で変更して、送達制御構成要素の少なくとも第1及び第2のチャンバと流体連通させるための複数の経路のうちのいずれかを選択的に形成するように移動可能なハンドルと、を備えている。
【0012】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照してよりよく理解することができる。図面の構成要素は、必ずしも縮尺どおりではない。代わりに、本開示の原理を明確に説明することに重点が置かれている。さらに、構成要素は、説明を明確にするために特定のビューで透明で表示する場合があるが、図解された構成要素が必ずしも透明であることを示すものではない。ここに記載されている見出しは、便宜上のものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の様々な実施形態による、静脈血管系から生来の僧帽弁への順行性アプローチを示す心臓の概略断面図である。
図2】本発明の様々な実施形態による、ガイドワイヤ上にガイドカテーテルを配置することによって維持される心房間中隔(IAS)を介したアクセスを示す心臓の概略断面図である。
図3】本発明の様々な実施形態による、大動脈弁及び動脈血管系を介した生来の僧帽弁への逆行性アプローチの態様を示す心臓の概略断面図である。
図4】本発明の様々な実施形態による、大動脈弁及び動脈血管系を介した生来の僧帽弁への逆行性アプローチの別の態様を示す心臓の概略断面図である。
図5】本発明の様々な実施形態による、経心尖穿刺を使用する生来の僧帽弁へのアプローチを示す心臓の概略断面図である。
図6】本発明の実施形態に従って構成された人工心臓弁装置を送達するための送達システムの等角図である。
図7A】本発明の実施形態による格納形態における図6の送達システムの部分断面図である。
図7B】本発明の実施形態による展開形態における図6の送達システムの部分断面図である。
図8A】本発明の実施形態に従って構成された流れ切替装置の上面図である。
図8B図8Aの流れ切替装置の底面図である。
図9A】本発明の実施形態による第1の構成における図8A及び図8Bの流れ切替装置の部分断面図である。
図9B】本発明の実施形態による第2の構成における図8A及び図8Bの流れ切替装置の部分断面図である。
図10A】本発明の実施形態による第1の構成における図8A及び図8Bの流れ切替装置の部分的に概略的な機能図である。
図10B】本発明の実施形態による第2の構成における図8A及び図8Bの流れ切替装置の部分的に概略的な機能図である。
図11】本発明の実施形態によるインフレータ装置に接続可能な流れ切替装置の側面図である。
図12A】本発明の実施形態による第1の構成における流れ切替装置の上面図である。
図12B】本発明の実施形態による第2の構成における図12Aの流れ切替装置の上面図である。
図12C】本発明の実施形態による第3の構成における図12A及び図12Bの流れ切替装置の上面図である。
図13図12A図12Cの流れ切替装置の部分分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、一般に、医療機器を送達するための流れ切替装置を備えた水圧式送達システム、及び関連する方法に向けられている。本発明のいくつかの実施形態の特定の詳細は、図1図13を参照して、本明細書に説明される。実施形態の多くは、人工心臓弁装置を生来の僧帽弁に送達するための装置、システム、及び方法に関して説明するが、本明細書に説明されるものに加えて、他の用途及び他の実施形態は、本発明の範囲内である。例えば、本発明の少なくともいくつかの実施形態は、三尖弁又は大動脈弁などの他の弁に補綴物を送達するために有用であり得る。本明細書に開示されているものに加えて、他の実施形態も本発明の範囲内であることに留意されたい。さらに、当業者であれば、本発明の実施形態は、本明細書に図示又は説明されたものに加えて、構成、構成要素、及び/又は処置を有することがあり、かつこれら及び他の実施形態は、本明細書に図示又は説明された構成、構成要素、及び/又は処置のいくつかを、本発明から逸脱することなく有さないことがあることは理解できるであろう。
【0015】
この説明内の「遠位」及び「近位」という用語に関して、特に明記しない限り、これらの用語は、操作者及び/又は血管系又は心臓内の場所を参照して、人工弁装置及び/又は関連する送達装置の部分の相対位置を参照することができる。例えば、本明細書に記載の様々な人工弁装置を送達及び位置決めするのに好適な送達カテーテルを指す場合、「近位」は、装置の操作者又は血管系への切開に近い位置を指すことができ、「遠位」は、装置の操作者から、又は血管系に沿った切開からさらに離れた位置(例えば、カテーテルの端)を指すことができる。人工心臓弁装置に関して、「近位」及び「遠位」という用語は、血流の方向に関する装置の部分の場所を指すことができる。例えば、近位は、血液が装置に流入する上流の位置又は場所(例えば、流入領域)を指すことができ、遠位は、血液が装置から流出する下流の位置又は場所(例えば、流出領域)を指すことができる。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態は、生来の僧帽弁を経皮的に置換するという独特の課題に対処し、装置の再位置決め又は取り外しのために部分的に展開された後、経皮的送達装置に再捕捉されるのに非常に適した僧帽弁置換装置用の流れ切替装置を備えた送達システムを対象とする。大動脈弁の置換と比較して、経皮的僧帽弁置換術は、経皮的僧帽弁置換術を大動脈弁置換術よりも著しく困難にする独特の解剖学的障害に直面している。第一に、比較的対称で均一な大動脈弁とは異なり、僧帽弁輪は非円形のD字型又は腎臓のような形状をしており、非平面のサドルのような形状はしばしば対称性を欠いている。僧帽弁の複雑で非常に変化しやすい解剖学的構造は、特定の患者の生来の僧帽弁輪によく適合する僧帽弁プロテーゼを設計することを困難にする。結果として、プロテーゼは、生来の弁尖及び/又は弁輪にうまく適合しない可能性があり、それは、血液の逆流が発生することを許容する隙間を残す可能性がある。例えば、生来の僧帽弁に円筒形の弁プロテーゼを配置すると、弁周囲の漏出が発生する可能性がある生来の弁の交連領域に隙間が残る可能性がある。
【0017】
経皮的大動脈弁置換術のために開発された現在の人工弁は、僧帽弁での使用には好適ではない。第一に、これらの装置の多くは、弁輪及び/又は弁尖と接触するステント様構造と人工弁との間に直接の構造的接続を必要とする。いくつかの装置では、人工弁を支持するステントポストは、弁輪又は他の周囲の組織にも接触する。これらのタイプの装置は、心臓が収縮するときに組織及び血液によって加えられる力を弁支持体及び人工弁尖に直接伝達し、これにより、弁支持体が目的の円筒形から歪曲する。ほとんどの心臓置換装置は、長年にわたって3つの弁尖を適切に開閉するために、人工弁の周囲に実質的に対称な円筒形の支持体を必要とする三尖弁を使用するため、これは懸念事項である。結果として、これらの装置が弁輪及び他の周囲の組織からの動き及び力にさらされると、プロテーゼが圧縮及び/又は歪曲され、人工弁尖が誤動作する可能性がある。さらに、罹患した僧帽弁輪は、利用可能な人工大動脈弁よりもはるかに大きい。弁のサイズが大きくなると、弁尖にかかる力が劇的に増加するため、大動脈プロテーゼのサイズを拡張した僧帽弁輪のサイズに単純に大きくすると、劇的に厚く、背の高い弁尖が必要になり、実現が不可能な場合がある。
【0018】
各心拍の過程でサイズが変化する不規則で複雑な形状に加えて、僧帽弁輪は周囲の組織からの有意な量の放射状の支持を欠いている。人工弁を固定するのに十分な支持を提供する線維弾性組織によって完全に囲まれている大動脈弁と比較して、僧帽弁は外壁のみの筋肉組織によって結合されている。僧帽弁の解剖学的構造の内壁は、僧帽弁輪を大動脈流出路の下部から分離する薄い血管壁によって結合されている。結果として、拡張ステントプロテーゼによって与えられるような僧帽弁輪への有意な半径方向の力は、大動脈管の下部の崩壊につながる可能性がある。さらに、より大きなプロテーゼはより大きな力を発揮し、より大きな寸法に拡張するため、僧帽弁置換術の用途ではこの問題が悪化する。
【0019】
左心室の腱索も僧帽弁プロテーゼの展開に障害をもたらす可能性がある。大動脈弁とは異なり、僧帽弁は左心室の弁尖の下に迷路状の索状突起があり、移植中の展開カテーテル及び置換装置の動き及び位置を制限する。結果として、生来の僧帽弁輪の心室側での弁置換装置の展開、位置決め、及び固定は複雑である。
【0020】
経カテーテル僧帽弁置換術(例えば、経大腿又は経心尖アプローチを介して送達される)の間、弁置換装置を適時に、生来の弁輪、弁尖、左心房、及び左心室流出路に対して正しい位置に展開することが重要である。したがって、送達システムは、最小限の時間及び処置のステップで弁置換装置の柔軟な展開及び/又は再捕捉を可能にすることが望ましい。しかしながら、従来の送達システムは、送達の方向を展開から再捕捉に、又はその逆に変更するために所望の位置に別々に調整されなければならない複数の相互接続された三方活栓の配置などの厄介な流れ切替装置を含む。この配置は混乱を招き、従来の流れ切替装置の使用が臨床医に身体的及び認知的負担をかけ、置換処置に伴うリスクを増大させるような、過度の追加時間を必要とする可能性がある。
【0021】
本発明の実施形態は、僧帽弁の解剖学的構造に関連する課題に対処し、弁置換装置の再位置決め及び除去を提供する、僧帽弁などの身体の心臓弁を治療するためのシステム、方法、及び器具を提供する。開示された実施形態は、流れ切替装置を操作するための臨床医の身体的及び認知的負担を低減することによって、弁置換装置を適時に標的位置に柔軟に配置するための複雑な操作を実施することができる流れ切替装置を含む。
【0022】
開示された実施形態は、弁置換装置を容易かつ確実に展開及び/又は再捕捉することができる二重水圧式送達システムの流れ切替装置で前述の欠点を克服する。例えば、開示された実施形態の流れ切替装置は、展開形態と再捕捉形態とを切り替えるために単一のアクションのみを必要とする切替機構を実装することができる。したがって、開示された実施形態は、複数の相互接続された三方活栓の配置の必要性を排除するので、送達装置を展開から再捕捉形態に、又はその逆に変更するための操作を単純化することによって臨床医の時間が節約できる。
【0023】
開示されたシステム及び方法は、静脈又は動脈を通って心臓に、又は心臓壁を通して挿入されたカニューレを通して血管内に送達されるカテーテルを使用する経皮的アプローチを可能にする。例えば、システム及び方法は、経中隔及び経心尖アプローチに特によく適しているが、心臓の標的場所への人工置換弁の経心房及び直接大動脈送達であり得る。追加的に、本明細書に記載のシステム及び方法の実施形態は、順行性又は逆行性アプローチ及びそれらの組み合わせで心臓の弁(例えば、僧帽弁又は三尖弁)にアクセスする既知の方法など、多くの既知の手術及び処置と組み合わせることができる。
【0024】
開示された流れ切替装置は、経心尖又は経中隔送達アプローチを使用する人工心臓弁装置の制御された送達を容易にし、装置の部分的な展開の後に人工心臓弁装置の再着鞘を許容して、装置を再位置決め及び/又は除去する。開示された流れ切替装置は、交換可能に流体で満たされ、流体が排出される2つの流体チャンバに結合されて、人工装具の展開及び再着鞘を開始する。これにより、人工心臓弁装置の制御された送達を提供する送達カプセル筐体の近位及び遠位の両方の動きに対する水圧制御及び動力供給が容易になり、人工心臓弁装置の拡張に伴う力に起因する送達システムの制御されない動き(例えば、軸方向のジャンピング、自己排出)が抑制される。開示された水圧式送達システムは、遠位端と近位端との間の機械的連結のために摩擦損失を経験する機械的送達システムと比較して、より効率的に力を伝達する。加えて、開示された水圧式送達システムは、人工心臓弁装置が格納形態(すなわち、完全に再捕捉された)と展開形態との間を移動する間、治療部位に対する人工心臓弁装置の長手方向の並進を阻害することができる。これにより、臨床医は、着鞘された人工心臓弁装置を展開のために所望の標的部位に正確に位置決めし、次に、展開によって引き起こされる軸方向の動きを補償する必要なしに、その標的部位に装置を展開することができるようになる。
【0025】
本発明による弁置換装置の構造及び操作をより良好に理解するために、最初に装置を移植するためのアプローチを理解することが有用である。僧帽弁又は他のタイプの房室弁は、経皮的に患者の血管系を介してアクセスすることができる。経皮的とは、心臓から離れた血管系の場所が、典型的には、外科的切断処置、又は例えば、セルディンガー法による針アクセスを使用するなどの低侵襲処置を使用して、皮膚を介してアクセスすることを意味する。遠隔血管系に経皮的にアクセスする能力は周知であり、特許及び医学文献に記載されている。血管アクセスのポイントに応じて、僧帽弁へのアクセスは順行性である可能性があり、心房間中隔を通過することによる左心房への侵入に依存する場合もある(例えば、経中隔アプローチ)。代替的に、僧帽弁へのアクセスは、左心室に大動脈弁を通って入る逆行性の場合もある。僧帽弁へのアクセスは、経心尖アプローチを介してカニューレを使用して達成することもできる。アプローチに応じて、介入ツール及び支持カテーテル(複数可)は、血管内で心臓に進められ、本明細書に記載されるように、様々な方法で標的心臓弁に隣接して位置決めされ得る。
【0026】
図1は、弁置換装置を移植するための経中隔アプローチの段階を示している。経中隔アプローチでは、アクセスは下大静脈IVC又は上大静脈SVCを介して、右心房RAを介して、心房間中隔IASを通過し、僧帽弁MVの上の左心房LAに到達する。図1に示すように、針2を有するカテーテル1は、下大静脈IVCから右心房RAに移動する。カテーテル1が心房間中隔IASの前側に到達すると、針2が前進して、例えば卵円窩FO又は卵円孔で中隔を貫通して左心房LAに入る。この時点で、ガイドワイヤが針2に置換され、カテーテル1が引き抜かれる。
【0027】
図2は、ガイドワイヤ6及びガイドカテーテル4が心房間中隔IASを通過する経中隔アプローチの次の段階を示している。ガイドカテーテル4は、この技術に従って弁置換装置を移植するための僧帽弁へのアクセスを提供する。
【0028】
代替の順行性アプローチ(図示せず)では、肋間切開を通して、好ましくは肋骨を除去せずに外科的アクセスを得ることができ、左心房壁に小さな穿刺又は切開を行うことができる。ガイドカテーテルは、この穿刺又は切開を通過して左心房に直接入り、巾着縫合で密封される。
【0029】
上記のように、僧帽弁への順行性又は経中隔アプローチは、多くの点で有利である可能性がある。例えば、順行性アプローチは、通常、ガイドカテーテル及び/又は人工弁装置のより正確で効果的なセンタリング及び安定化を可能にするであろう。順行性アプローチはまた、カテーテル又は他の介入ツールで腱索又は他の弁下構造を損傷するリスクを低減する可能性がある。追加的に、順行性アプローチは、逆行性アプローチの場合のような、大動脈弁を横切ることに関連するリスクを減少させる可能性がある。これは、人工大動脈弁を持っている患者に特に関係がある場合があり、人工大動脈弁は、全く又は実質的な損傷のリスクがないと交差することができない。
【0030】
図3及び図4は、僧帽弁にアクセスするための逆行性アプローチの例を示している。僧帽弁MVへのアクセスは、大動脈弓AAから、大動脈弁AVを横切って、僧帽弁MVの下の左心室LV内に至って達成することができる。大動脈弓AAには、従来の大腿動脈アクセスルートを介して、又は上腕動脈、腋窩動脈、橈骨動脈、もしくは頸動脈を介したより直接的なアプローチを介してアクセスすることができる。このようなアクセスは、ガイドワイヤ6を使用して達成してもよい。所定の位置に配置されると、ガイドカテーテル4は、ガイドワイヤ6上で追跡され得る。代替的に、外科的アプローチは、胸部の切開を通して、好ましくは肋骨を除去せずに肋間で行われ、大動脈自体の穿刺を通してガイドカテーテルを配置することができる。ガイドカテーテル4は、本明細書でより詳細に説明されるように、人工弁装置の配置を可能にするためのその後のアクセスを提供する。逆行性アプローチは、有利には、経中隔穿刺を必要としない。心臓病専門医はまた、より一般的に逆行性アプローチを使用するため、逆行性アプローチがよりよく知られている。
【0031】
図5は、経心尖穿刺による経心尖アプローチを示している。このアプローチでは、心臓へのアクセスは、従来の開胸術もしくは胸骨切開術、又はより小さな肋間もしくは剣状突起下の切開もしくは穿刺である可能性がある胸腔切開を介して行われる。次に、アクセスカニューレは、心尖又はその近くの左心室の壁の穿刺を通して配置される。次に、本開示のカテーテル及び人工装具は、このアクセスカニューレを介して左心室に導入され得る。経心尖アプローチは、僧帽弁又は大動脈弁へのより短く、より真っ直ぐで、より直接的な経路を提供する。さらに、血管内アクセスを伴わないため、経心尖アプローチは、他の経皮的アプローチで必要とされるカテーテル挿入を実施するための介入心臓学のトレーニングを必要としない。
【0032】
経カテーテル心臓弁置換術(例えば、経大腿又は経心尖アプローチを介して送達される)の間、人工心臓弁装置を、制御された効率的な方法で、生来の弁輪、弁尖、左心房、及び左心室流出路(LVOT)に対して標的位置に展開することが重要である。例えば、送達システムは、送達カプセルの動きを水圧で制御して、拡張する心臓弁装置に伴う力によって引き起こされる人工心臓弁装置の制御されない展開(「ジャンピング」とも呼ばれる)を低減、制限、又は実質的に排除することができる。送達システムはまた、水圧制御された動きを使用して、部分的又は完全に拡張された心臓弁装置を再着鞘して、生来の解剖学的構造に対する心臓弁装置の再位置決め及び/又は身体からの除去のための装置の再捕捉を許容することができる。
【0033】
本明細書に記載の水圧式送達システムは、送達構成要素の双方向の動きを提供するために、展開形態と再捕捉形態との間の変更を容易にする流れ切替装置を含む。例えば、開示された流れ切替装置は、送達カプセルの移動方向を変更するために別個の操作を必要とする複数の独立した活栓を含まない。代わりに、開示された流れ切替装置は、流体を少なくとも2つの異なる方向に向けるために操作することができる単一のアクチュエータを有し、その結果、送達カプセルの方向の逆転を提供する。いくつかの実施形態では、流れ切替装置は、2つの位置を切り替えて送達カプセルを反対方向に移動させることができるハンドルを有し、それにより、人工心臓弁装置の展開又は再捕捉のいずれかを引き起こす。結果として、開示された流れ切替装置は、展開及び再捕捉形態を切り替えるための複雑な操作を実施するためのプロセスを単純化し、送達処置の効率及び使いやすさを向上させる。
【0034】
図6は、本発明の実施形態に従って構成された人工心臓弁装置を送達するための水圧式送達システム100(「システム100」)の等角図である。システム100は、長尺のカテーテル本体108及び送達カプセル106を備えたカテーテル102を含む。カテーテル本体108は、ハンドヘルド制御ユニット104に結合された近位部分108aと、送達カプセル106を運ぶ遠位部分108bとを含むことができる。送達カプセル106は、人工心臓弁装置110(破線で概略的に示されている)を含むように構成することができる。制御ユニット104は、送達カプセル106を以下に送達するために使用されるステアリング機能(例えば、送達カプセル106の360度回転、送達カプセル106の180度回転、3軸ステアリング、2軸ステアリング)を提供し、標的部位(例えば、生来の僧帽弁へ)及び標的部位に人工心臓弁装置110を展開することができる。カテーテル102は、送達カプセル106を生来の心臓弁に案内するために使用することができるガイドワイヤ120上を移動するように構成することができる。システム100はまた、流動性物質(すなわち、水又は生理食塩水などの水圧流体)をカテーテル102に供給し、カテーテル102から流体を受容し、送達カプセル106を水圧で移動させて人工心臓弁装置110を展開するように構成された流れ切替装置112を含む。
【0035】
制御ユニット104は、制御アセンブリ122及び操舵機構124を含むことができる。例えば、制御アセンブリ122は、その長手方向軸107の周りで送達カプセル106を回転させるために回転することができるハンドルなどの回転要素を含むことができる。制御アセンブリ122はまた、臨床医が送達カプセル106及び/又は流れ切替装置112の水圧展開メカニズムを制御することを許容する特徴部を含むことができる。例えば、制御アセンブリ122は、人工心臓弁装置110の脱鞘及び/又は再着鞘を開始するボタン、レバー、及び/又は他のアクチュエータを含むことができる。操舵機構124を使用して、カテーテル本体108の遠位部分108bを横軸の周りに曲げることによって、解剖学的構造を通してカテーテル102を操舵することができる。他の実施形態では、制御ユニット104は、人工心臓弁装置110を標的部位に送達することを容易にする追加の及び/又は異なる特徴部を含んでいてもよい。
【0036】
送達カプセル106は、格納形態で人工心臓弁装置110を運ぶように構成された筐体126と、任意選択で、筐体126の端部から延在し、筐体126内に人工心臓弁装置110を封入するエンドキャップ128とを含む。送達カプセル106は、その遠位端に開口部130を有することができ、それを通してガイドワイヤ120をねじ込み、標的部位へのガイドワイヤ送達を許容することができる。図6に示されるように、送達カプセル106の遠位部分はまた、傷をつけない形状(例えば、部分的に球形、円錐台形、鋭利でない構成、丸みを帯びた構成)を有して、送達カプセル106の標的部位への傷をつけない送達を容易にすることができる。筐体126、エンドキャップ128、及び/又は送達カプセル106の他の部分は、金属、ポリマー、プラスチック、複合材料、それらの組み合わせ、又は人工心臓弁装置110を保持することができる他の材料で作製ことができる。
【0037】
以下でさらに詳細に説明するように、送達カプセル106は、制御ユニット104及び/又は流れ切替装置112を介して、格納形態又は送達カプセル106内に人工心臓弁装置110を保持するための状態と、展開形態又は標的部位の送達カプセル106から人工心臓弁装置110を少なくとも部分的に展開するための状態との間で、水圧で駆動される。制御ユニット及び/又は流れ切替装置112はまた、部分的に展開された後、人工心臓弁装置110の再着鞘(例えば、再捕捉)を許容する。例えば、送達カプセル106は、流動性液体を送達カプセル106のチャンバに供給する一方で、任意選択で、流動性液体を送達カプセル106の別個のチャンバからも除去することによって、格納形態から展開形態に向かって水圧で駆動することができる。送達カプセル106の水圧制御された動きは、ジャンピング、自己排出、及び/又は他のタイプの制御されていない動きなどの人工心臓弁装置110の拡張に伴う力によって引き起こされる人工心臓弁装置110の制御されない展開を低減、制限、又は実質的に排除することが期待される。例えば、送達カプセル106は、人工心臓弁装置110の少なくとも一部が拡張する間、カテーテル本体108に対する人工心臓弁装置110の並進を阻害又は防止すると予想される。送達カプセル106からの部分的な展開後、送達カプセル106は、流体を送達カプセル106の1つのチャンバに移送し、任意選択で、展開に使用されるのとは反対の方法で送達カプセル106の別のチャンバから流体を除去することによって、格納形態(例えば、装置110の再捕捉)に向かって水圧で駆動して戻すことができる。再着鞘(本明細書では再捕捉とも呼ばれる)能力により、臨床医は、僧帽弁MV内に再展開するために、インビボで人工心臓弁装置110を再位置決めするか、又は部分的な展開後に患者から人工心臓弁装置110を取り外すことができるようになる。人工心臓弁装置110の完全な展開後、エンドキャップ128を、展開された人工心臓弁装置110を通して引き抜いて、送達カプセル106を再び閉じ、ガイドカテーテルを通してカテーテル102を近位に引き抜いて患者から除去することができる。カテーテル102を取り外した後は、それを消毒して、追加の人工装具を送達するために使用することができるか、又はそれを廃棄することができる。
【0038】
図6にさらに示されるように、流れ切替装置112は、1つ以上の流体ライン116を介してカテーテル102に流体的に結合されている。流れ切替装置112はまた、送達カプセル106の動きを水圧で駆動するために流動性物質(例えば、水、生理食塩水)を含むことができる1つ以上のリザーバ114(それぞれ、第1及び第2のリザーバ114a及び114bとして個別に識別される)に流体結合される。リザーバ114の各々は、加圧流体を備えたインフレータ装置及び/又は排出された流体を受容するように構成されたドレンなどの1つ以上の流体源を含んでいてもよい。流れ切替装置112及び/又は流体リザーバ114はまた、流体がリザーバ(複数可)114からカテーテル102に通過することができる、及び/又は流体がカテーテル102からリザーバ(複数可)114に排出されることができる、1つ以上のホース、チューブ、又は他の構成要素(例えば、継手、コネクタ、弁、ポンプ)を含むことができる。使用中、流れ切替装置112を操作して、流体を1つ以上のリザーバ114から流体ライン116を介してカテーテル102に移動させ、及び/又は流体をカテーテル102から1つ以上のリザーバ114に流体ライン116を介して排出することができる。
【0039】
図6に示される実施形態にさらに示されるように、流れ切替装置112は、カテーテル102とリザーバ114との間の流体流を制御するための流れ制御機構を少なくとも部分的に囲む外側筐体180を含む。流れ制御機構は、筐体180内の長尺の開口(例えば、ボア)によって受け取られ、開口に対して長手方向に移動可能であり、筐体180内の密封された区画の配置によって部分的に形成されたチャネルを通る流体流の方向を切り替える円筒形部材などの機械的要素を含むことができる。いくつかの実施形態では、流れ制御機構は、人工心臓弁装置110の展開又は再着鞘を制御するためのレバー、及び/又は他のアクチュエータを含む。例えば、流れ制御機構は、回転又は他の方法で操作されてシリンダを長手方向に移動させ、それによって流体ライン116に沿った流体流の方向を変えることができるハンドル118などの回転要素を含むことができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、流れ切替装置112及び/又はシステム100の他の部分は、1つ以上のコンピュータ、中央処理装置、処理装置、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、及び/又は特定用途向け集積回路(ASIC)を含み得るがこれらに限定されないコントローラ(図示せず)に結合される。例えば、情報を格納するために、コントローラは、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、及び/又はランダムアクセスメモリ(RAM)などの1つ以上の記憶要素を含むことができる。保存される情報には、ポンププログラム、患者情報、及び/又は他の実行可能プログラムを含むことができる。コントローラは、手動入力装置(例えば、キーボード、タッチスクリーン)及び/又は自動入力装置(例えば、コンピュータ、データ記憶装置、サーバー、ネットワーク)をさらに含むことができる。他の実施形態では、コントローラは、リザーバ114に出入りする流体流を制御するための異なる特徴を含み、及び/又は異なる配置を有していてもよい。さらに他の実施形態では、1つ以上の構成要素又は流れ切替装置112の少なくとも一部分が、システム100のハンドルに統合されている。
【0041】
図7A及び図7Bは、本発明の実施形態による、格納形態(図7A)及び展開形態(図7B)における図6の送達システム100の部分断面図である。図7A及び図7Bに示されるように、長尺のカテーテル本体108の遠位部分108bは、送達カプセル106を運ぶ。送達カプセル106は、少なくとも部分的に、第1のチャンバ144a及び第2のチャンバ144b(集合的に「チャンバ144」と呼ばれる)を一緒に画定する筐体126及びプラットフォーム142を含む。第1のチャンバ144a及び第2のチャンバ144bは、互いに、及び人工心臓弁装置110の少なくとも一部分を含むように構成された筐体126内の区画146から流体的に互いから密封されている。チャンバ144は、人工心臓弁装置110を保持するための格納形態(図7A)と、人工心臓弁装置110を少なくとも部分的に展開するための展開形態(図7B)との間で送達カプセル106を水圧で駆動するために充填及び排出することができる。いくつかの実施形態では、チャンバ144の一方又は両方は、カテーテル本体108、制御ユニット104(図6)、異なるハンドル、及び/又はシステム100の別の部分に含まれる。
【0042】
図7Aに示されるように、送達カプセル106の筐体126は、流体が(矢印159によって示されるように)第1のチャンバ144aから少なくとも部分的に排出されるときに、展開形態に向かって近位方向に(矢印153の方向に)促される一方、流体は、(矢印157によって示されるように)第2のチャンバ144bに送達されている。筐体126の近位方向の並進は、人工心臓弁装置110が筐体126から少なくとも部分的に展開し、それが生来の僧帽弁の周囲の組織と係合するように拡張することを許容する。図7Bに示されるように、筐体126は、流体が第1のチャンバ144aに送達されている間に(矢印163によって示されるように)流体が第2のチャンバ144bから少なくとも部分的に排出されるときに、格納形態に向かって遠位方向に付勢されて戻され(矢印161によって示される)人工心臓弁装置110の少なくとも一部分を再着鞘する。
【0043】
プラットフォーム142は、筐体126の内壁の間に少なくとも部分的に延在して、筐体126を第1のチャンバ144aと第2のチャンバ144bとに分割する。プラットフォーム142は、内側に延在するフランジなど、筐体126の一部として一体的に形成することができる。したがって、プラットフォーム142は、筐体126と同じ材料(例えば、金属、ポリマー、プラスチック、複合材料、それらの組み合わせ)から作製することができる。他の実施形態では、プラットフォーム142は、2つのチャンバ144を互いに少なくとも部分的に分離する別個の構成要素でもよい。
【0044】
図7A及び図7Bに示されるように、流体送達シャフト148は、カテーテル本体108を通って、送達カプセル106の筐体126内に、及びプラットフォーム142を通って延在する。近位端(図示せず)で、シャフト148は、流れ切替装置112に結合され、流体をチャンバ144へ及び/又はチャンバ144から送達及び/又は排出することができる1つ以上の流体ライン152(第1のライン152a及び第2のライン152bとして個別に識別される)を含む。流体ライン152は、シャフト自体を通るチャネルなど、シャフト148内に一体的に形成された流体通路又は管腔であり得るか、又は流体ライン152は、シャフト148の1つ以上の中空領域内に位置決めされたチューブ又はホースであり得る。第1のライン152aは、第1の流体ライン152aの第1の開口部166aを介して第1のチャンバ144aと流体連通しており、第2のライン152bは、第2の流体ライン152bの第2の開口部166bを介して第2のチャンバ144bと流体連通している。他の実施形態では、第1及び第2のチャンバ144a及び144bは、2つ以上の流体ラインと流体連通することができる。例えば、各チャンバ144は、専用の流体供給ライン及び専用の流体ドレンラインを有し得る。
【0045】
シャフト148はまた、それぞれ第1及び第2のチャンバ144a、144bの近位端及び遠位端を画定するためにシャフト148から外向きに延在する第1のフランジ又はペデスタル154a及び第2のフランジ又はペデスタル154b(まとめて「フランジ154」と呼ばれる)を含むことができる。したがって、第1のチャンバ144aは、遠位端においては、プラットフォーム142の近位に面する表面によって、近位端においては、第1のフランジ154aの遠位に面する表面によって、及びそれらの間に延在する筐体126の内壁によって画定される。第2のチャンバ144bは、近位端においては、プラットフォーム142の遠位に面する表面によって、遠位端においては、第2のフランジ154bの近位に面する表面によって、及びそれらの間に延在する筐体126の内壁によって画定される。人工心臓弁装置110を含む区画146は、第2のフランジ154bの遠位に面する表面、筐体126の遠位端、及びそれらの間に延在する筐体126の内壁によって画定することができる。シャフト148及びフランジ154は、一体的に形成されるか、又は別個の構成要素であり得、金属、ポリマー、プラスチック、複合材料、それらの組み合わせ、及び/又は流体を収容するための他の好適な材料から作製することができる。フランジ154は、シャフト148に対して固定されている。Oリングなどの密封部材156(それぞれ第1~第3の密封部材156a~156cとして個別に識別される)は、フランジ154及び/又はプラットフォーム142の周囲又は内部に位置決めして、送達カプセル106の他の部分からチャンバ144を流体的に密封することができる。例えば、第1及び第2の密封部材156a及び156bは、対応する第1及び第2のフランジ154a及び154bのくぼみに位置決めされて、フランジ154を筐体126の内壁に対して流体的に密封することができ、第3の密封部材156cは、プラットフォーム142をシャフト148に流体的に密封するために、プラットフォーム142のくぼみ内に位置決めされる。他の実施形態では、システム100は、チャンバ144を流体的に密封するために、追加の及び/又は異なって配置された密封部材を含むことができる。
【0046】
流体ライン152は、システム100の近位部分で(例えば、図6に示される流体ライン116を介して)流れ切替装置112と流体連通している。流れ切替装置112は、相互接続されたチャネル212の配置を封入又は画定する筐体180を含む(その例は、図9A及び図9Bにさらに詳細に示されている)接合部構造184(例えば、管状構造又は開口)で交差する。接合部構造184及びチャネル212は、筐体180の外部にあるか、又は筐体180の外部を介してアクセス可能な開口又は開口部203と流体連通している。複数の継手186(それぞれ第1~第4の継手186a~186dとして個別に識別される)が筐体180に取り付けられ、筐体180の開口部185(それぞれ第1~第4の開口部185a~185dとして個別に識別される)と整列されて、流れ切替装置をカテーテル102(図6)及び/又はリザーバ114(図6)に結合する流体ラインへの流体アクセス(例えば、図6に示される流体ライン116を介した)を提供する。流れ切替装置112はまた、接合部構造184に沿って又はその内部に配設された流れ制御構成要素188(例えば、シャフト)及び流れ制御構成要素188に動作可能に結合されたハンドル190も含む。流れ制御構成要素188は、接合部構造184に沿って長手方向及び/又は回転可能に移動可能であり、チャネル212のサブセットに沿って1つ以上の流体経路182(図7A及び図7Bでは第1~第4の経路182a~182dとして個別に識別される)を選択的に形成して、継手186とそれに流体的に結合された構成要素(例えば、流体ライン、リザーバ、送達カプセル)との間の流体連通を提供する。ハンドル190を操作することにより、流れ制御構成要素188を接合部構造184に沿った異なる位置に移動させて、送達システム100のチャンバ144に出入りする流体流を調節する。例えば、2つの異なる位置の間でハンドル190を切り替えることにより、流れ制御構成要素184を第1の位置(例えば、拘束又は再捕捉形態)及び第2の位置(例えば、展開形態)に移動して、第1のチャンバ144aに向かう流体流を選択的に許容し、第2のチャンバ144bから流体を除去するか、又はその逆が可能である。
【0047】
図7Aに示されるように、流れ制御構成要素188が第1の位置に(例えば、ハンドル190を介して)配置されるとき、流体制御構成要素188は、流体を除去し、異なる送達システム100のチャンバ144へ送達する第1と第2の流体経路182a及び182bを画定する。図示の実施形態では、例えば、第2の経路182bは、第4の継手186dから第1の継手186aへの第1のチャンバ144aに向かう流体流を許容し、第1の流体経路182aは、流体が第2のチャンバ144bから排出されることを許容する。2つの経路182を介したこの同時(simultaneou)又は同時(concurrent)の流体送達及び除去は、集合的に、送達システム100を格納形態から展開形態に移動させ、人工心臓弁装置110の展開を可能にする。
【0048】
図7Bに示されるように、流れ制御構成要素188が第2の位置に位置決めされるとき、流体制御構成要素188は、流体を除去して異なるチャンバ144に送達するための第3及び第4の流体経路182c及び182dを画定する。図示の実施形態では、例えば、第3の経路182cは、流体が第2のチャンバ144bから排出されることを許容し、第4の経路182dは、第1のチャンバ144aに向かって流れる流体流を許容する。チャンバ144への、及びチャンバ144からの流体のこの同時移動は、送達システム100を展開又は部分的に展開された構成から格納形態に移動し、それにより、人工心臓弁装置110の再捕捉を可能にする。
【0049】
したがって、第1の位置と第2の位置との間の流体制御構成要素188の動きにより、開口部185及び関連する継手186は、送達システムが人工心臓弁装置110を脱鞘するための展開形態に向かって、又は人工心臓弁装置110もしくは全体的な送達システム100の除去を再着鞘するための格納形態に向かって移動しているかどうかに応じて、出口及び入口として交互に機能する。図示の実施形態では、例えば、第1の開口部185a及び関連する第1の継手186aは、流れ制御構成要素188が装置展開のための第1の位置にあるときに出口として機能し、流れ制御構成要素188が装置の再捕捉又はシステムの取り外しの第2の位置にあるときに入口として機能する。一方、第2の開口部185b及び第2の継手186bは、流れ制御構成要素188が第1の位置にあるときに入口として機能し、流れ制御構成要素188が第2の位置にあるときに出口として機能する。第3の開口部185c及び関連する第3の継手186cは、流れ制御構成要素188が一貫した流体排出部位を提供するために第1又は第2の位置にあるかどうかに関係なく出口として機能することができ、第4の開口部185d及びそれに関連する継手186dは、流れ制御構成要素188の位置に関係なく、一方又は両方のチャンバ144に流体を供給するための入口として機能することができる。これにより、第3及び第4の継手186c及び186dは、送達プロセス全体を通して、それぞれ、流体保持又は排出リザーバ及び流体供給リザーバへの接続を維持することができるようになる。他の実施形態では、流れ切替装置112は、流体制御構成要素188の位置変化に基づいて、第3及び第4の継手186c及び186dを通る流体の方向を逆にすることができるように構成することができる。
【0050】
使用中、システム100は、送達カプセル106が(例えば、経心尖又は経中隔送達アプローチを介して)生来の心臓弁の標的部位に送達されるとき、格納形態(図7A)に配置される。人工心臓弁装置110を完全に又は部分的に脱鞘するために、ハンドル190は、流体制御構成要素188を第1の位置に移動するように操作される。これにより、流体は、第1の流体経路182bに沿って、第1の継手186a(矢印157によって示される)を通って、第2の流体ライン152bに、及び第2のチャンバ144bに流れることが許容される。流体が第2のチャンバ144bに送達されると、流体はまた、第1の流体ライン152aを通って第1のチャンバ144aから第2の継手186bに向かって(矢印159によって示されるように)、及び第2の流体経路182bを通って排出される。いくつかの実施形態では、流体は、第2のチャンバ144bに、及び第1のチャンバ144aから同時に、任意選択で、第1のチャンバ144aから移送された同じ量の流体が第2のチャンバ144bに移送されるように等量で移送される。いくつかの実施形態では、異なる量の流体がチャンバ144から排出され、チャンバ144に移送される。チャンバ144間の流体のこの同時移送は、筐体126を矢印153の方向に近位方向に駆動して、人工心臓弁装置110を展開する。
【0051】
図7Bに示される展開形態では、送達カプセル106は、人工心臓弁装置110の流入部分が送達カプセル106から展開される間、人工心臓弁装置110の流出部分を軸方向に拘束する。少なくとも部分的な展開後、流体チャンバ144は、逆の方法で加圧及び排出されて、筐体126を遠位に(矢印155の方向に)格納形態に向かって戻し、人工心臓弁装置110を少なくとも部分的に再着鞘することができる。再着鞘のために、ハンドル190は、流れ制御構成要素188を第2の位置に移動するように操作される。これにより、流体は、第2のチャンバ144bから、第2の流体ライン152bを通って、継手186a(矢印161によって示される)内に、及び第3の流体経路182cに沿って排出されるようになる。流体が第2のチャンバ144bを出るとき、流体はまた、第1のチャンバ144aに送達される。すなわち、流体は、第4の流体経路182dを通って、第2の継手186bを通って、第1の流体ライン152aに移動する(矢印163によって示されるように)。この場合も、流体は、2つのチャンバ144から同時に及び/又は等しい割合で移送することができる。流体の第1のチャンバ144aへの、及び第2のチャンバ144bからのこの移送は、筐体126を矢印155の方向に遠位方向に駆動して、人工心臓弁装置110の少なくとも一部分が再び区画146内に位置決めされるように、人工心臓弁装置110を制御可能に再着鞘する。人工心臓弁装置110のこの部分的又は完全な再着鞘により、臨床医は、部分的な展開後に人工心臓弁装置110を再位置決め又は除去することができるようになる。筐体126の水圧動作により、人工心臓弁装置110の制御された展開及び再着鞘を提供することができる。
【0052】
送達カプセル106が格納形態と展開形態との間を移動するとき、筐体126は、シャフト148の長手方向軸に対してスライド可能に移動し、一方、人工心臓弁装置110は、カテーテル本体108に対して少なくとも実質的にその長手方向位置を維持する。すなわち、送達カプセル106は、人工心臓弁装置110が格納形態(図7A)と展開形態(図7B)との間を移動する間、人工心臓弁装置110のカテーテル本体108に対する長手方向の並進を実質的に防止することができる。これにより、臨床医は、着鞘された人工心臓弁装置110を展開するために所望の標的部位に位置決めし、次いで、装置110が完全に拡張したときの装置110の軸方向の動きを補償する必要なしに(例えば、装置110が筐体126から遠位に押されたかどうかを考慮する必要があるなど)、その標的部位に装置110を展開することができるようになる。
【0053】
図7A及び図7Bにさらに示されるように、システム100はまた、筐体126に作用して筐体126を格納形態に向けて付勢する付勢装置168を含んでいてもよい。付勢装置168は、筐体126が展開形態(図7B)に移動するときに圧縮して、筐体126に対して、格納形態に向かって遠位方向にさらに力を加える。ある特定の実施形態では、付勢装置168は、筐体126に連続的に作用し、それを格納形態に向けて付勢し、他の実施形態では、付勢装置168は、展開中に圧縮されるときに、筐体126にのみ作用する。図示の実施形態では、付勢装置168は、カテーテル本体108の遠位部分108b内に位置決めされるが、他の実施形態では、付勢装置168は、ハンドル又は制御ユニット104(図6)などのシステム100の他の部分に位置決めすることができる。付勢装置は、筐体126及び/又は送達カプセル106の他の部分を格納形態に向けて付勢するばね又は他の特徴部であってもよい。付勢装置168は、拡張する人工心臓弁装置110によって生成される力に起因する送達カプセル106の開放を制限するか、又は実質的に防止する。例えば、人工心臓弁装置110の着鞘されていない部分は、部分的に開かれた送達カプセル106から外向きに拡張することができる一方で、付勢装置168は、送達カプセル106のさらなる開放を阻害する。
【0054】
図8A及び図8Bは、それぞれ、本発明の実施形態による、流体流を制御して人工心臓弁装置などの埋め込み型装置の展開及び再捕捉をするように構成された流れ切替装置200の上面図及び底面図を示す。例えば、流れ切替装置200は、図6図7Bに関して上記のシステム100とともに使用して、標的部位(例えば、生来の僧帽弁、生来の三尖弁、生来の大動脈弁)での人工心臓弁装置110の展開を容易にすることができる。流れ切替装置200は、図6図7Bに関して上記で説明した流れ切替装置112の特徴と概ね同様の様々な特徴を含むことができる。例えば、流れ切替装置200は、アクチュエータ又はハンドル204に結合された筐体202を含み、ハンドル204は、少なくとも2つの位置の間で切り替えて流れ切替装置200を通る流体流の経路及び/又は方向を変更することができる。いくつかの実施形態では、例えば、ハンドル位置を変更することにより、流れ切替装置200は、流体的に結合された複数の送達システムチャンバ(例えば、図7A及び図7Bのチャンバ144)に流体を交互に送達する、及び/又は流体を除去して、人工心臓弁装置の展開及び/又は再捕捉を可能にするための流れ切替装置200ことができる。流れ切替装置200及びその部分は、様々な材料で作製することができる。例えば、筐体202及び/又はハンドル204は、剛性又は半剛性のポリマー、プラスチック、金属、及び/又は他の機械的に頑丈な材料で作製することができる。
【0055】
流れ切替装置200は、筐体202内に複数の開口又は開口部203(それぞれ第1~第4の開口部203a~203dとして個別に識別される)、及び開口部203と少なくとも部分的に整列している対応する複数のコネクタ又は継手206(それぞれ第1~第4の継手206a~206dとして個別に識別される)を含む。図示の実施形態では、筐体202は4つの開口部203を含み、4つの継手206は、対応する開口部203で筐体202に結合されている。他の実施形態では、流れ切替装置200は、4つ未満又は4つを超える開口部203及び/又は継手206を含んでいてもよい。継手206は、リザーバ(例えば、図6のリザーバ114)、送達カテーテル組立体の流体チャンバ(例えば、図7A及び図7Bのチャンバ144)、及び/又は送達システムの他の構成要素に流体を並行して送達及び/又は除去することができる1つ以上のホース、チューブ、流体ライン、及び/又は他の構成要素(例えば、コネクタ、弁、ポンプ)を受容するか、又は他の方法で流体的に結合することができる。例えば、図示の実施形態では、第1及び第2の継手206a及び206bは、カテーテル108のそれぞれのチャンバ144と流体連通するチューブに結合することができる(図6図7B)。第3の継手206cは、流れ切替装置200を介して1つ以上のチャンバ144に渡すことができる加圧流体で満たされたインフレータ装置(例えば、インデフレータのリザーバ)と流体連通するチューブに結合することができる。第4の継手206dは、カテーテル108の1つ以上のチャンバ144から排出された流体を受容することができるドレンライン(例えば、リザーバ)と流体連通しているチューブに結合することができる。
【0056】
図8Bに示されるように、流れ切替装置200は、分流カテーテル108(図6図7B)の部分への流体送達を提供する膨張機構に流れ切替装置200を固定する接続装置208、及び/又は送達システムの他の部分(例えば、図6のシステム100)を含むことができる。接続装置208は、ブラケット209と、ブラケット209のサイズ設定を調整して送達システムの一部分に固定する圧縮部材211(例えば、ねじ)に動作可能に結合されたノブ210とを含むことができる。図11を参照すると、例えば、接続装置208は、ブラケット209がインフレータ装置228の一部分の周りに延在し、ノブ210を回転させて、接続装置208がインフレータ装置228に圧力を加えて、インフレータ装置228と流れ切替装置200を一緒に固定するようにしてブラケット209のサイズ設定を調整する(例えば、ねじの位置を調整する)ことができるように位置決めすることができる。図11に示される実施形態では、接続装置208は、インフレータ装置228の流体リザーバ230に結合する。しかしながら、この実施形態及び他の実施形態では、接続装置208は、インフレータ装置228の他の部分又は送達システムの他の部分に結合することができる。他の実施形態では、接続装置208は、自動的に調整可能なバネ式係合アーム、レバークランプ機構、接着剤、及び/又は他の好適な取り付け手段によって、流れ切替装置200をインフレータ装置及び/又は他の構成要素に取り外し可能に固定することができる。
【0057】
図9A及び図9Bは、本発明の実施形態による2つの異なる構成における図8A及び図8Bの流れ切替装置200の部分断面図を示す。具体的には、図9Aは、流体を水圧式送達システムの第1のチャンバに、及び送達システムの第2のチャンバ(例えば、図7A及び7Bの送達システム100のチャンバ144)に通過し易くする第1の配置を示す。図9Bは、流体流を、流体が第1のチャンバから、及び第2のチャンバに流れるように、第1の配置とは逆方向へ流れやすくする第2の配置を示す。流れ切替装置200は、送達システムの流体流の方向及び/又は経路を変化させて、人工心臓弁装置を展開及び/又は再捕捉する。
【0058】
図9A及び図9Bに示されるように、筐体202は、接合部構造214で交差するチャネル212のネットワークを画定するか、又はそれを含み、開口部203及び関連する継手206は、チャネル212のネットワークの入口及び/又は出口を画定する。接合部構造214は、穴(例えば、ボアホール)を作成する筐体202、及び/又は筐体202の一部分を通って延在する別個の開放チューブ又は構造の内面又は壁によって画定することができる。流れ制御構成要素216は、接合部構造214に配設され、接合部構造214内で長手方向及び/又は回転方式で移動可能であり、流れ制御構成要素216の向きに基づいて、チャネル212への複数の異なる流体経路218(破線で示される;それぞれ第1~第4の経路218a~218dとして個別に識別される)を選択的に形成する。流れ制御構成要素216は、接合部構造214内の流れ制御構成要素216の相対運動が1つ、2つ、又はそれ以上の選択された流れ制御構成要素216の流体チャネル212を、開口部203と流体連通している筐体202の選択されたチャネル212と整列させることができるように、複数の開口部及びそれを通って延在する流体チャネル212を有するシャフト又は他の構造でもよい。様々な実施形態では、流れ制御構成要素216は、流れ切替装置200を通る流体経路218の選択的活性化を許容する、異なる又は追加の構造又は特徴物を含むことができる。いくつかの実施形態では、接合部構造214に対する流れ制御構成要素216の直径は、流体制御構成要素216(例えば、シャフト)と接合部構造214の内壁(例えば、送達カテーテルへの流体送達に悪影響を与える可能性があるボアホールを画定する内面)との間の過度な流体流を回避するように選択される。流体制御構成要素216及び接合部構造214は、機械的に頑丈でありながら摩擦を低減する様々な材料で作製することができる。例えば、流体制御構成要素216は、ポリカーボネート材料で作製することができ、接合部構造214は、金属(例えば、鋼)で作製することができ、2つの特徴物は、それらの間の摩擦を低減する物質でコーティングすることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、接合部構造214は、流れ制御構成要素216に沿った様々な場所に配設された、複数の密封部材226(それぞれ第1~第4の密封部材226a~226dとして個別に識別される)を含み、密封された区画(すなわち、密閉部材226a間)-dを形成する。図示の実施形態では、密封部材226は、流体制御構成要素216(例えば、シャフト)の外面の周りに配設され、接合部構造214(例えば、ボアホールを画定する内面)の内壁と接触しているOリング(例えば、コーティングされたゴムOリング)である。いくつかの実施形態では、密封部材226の少なくともいくつかは、流れ制御構成要素216の部分と接合部構造214との間を密封するが、それでもなお流れ制御構成要素216が接合部構造214に対して移動することを許容する異なる構造であってもよい。接合部構造214に対する流れ制御構成要素216の動きは、複数の密封部材226の間の区画をチャネル212と整列するように、又は整列から外して移動させて、経路218を選択的に形成する。
【0060】
図9Aでは、流れ制御構成要素216は、開口部203間のチャネル218のネットワークを介して流体連通を提供する第1及び第2の経路218a~218bを画定するために第1の位置に配置される。図示の実施形態では、流れ制御構成要素216は、接合部構造214に沿って矢印220の方向に長手方向に移動することによって第1の位置に配置される。
【0061】
図9Bでは、流れ制御構成要素216は、チャネル218のネットワークを介して流体連通を提供する経路第3及び第4の218c~218dを画定するために第2の位置に配置されている。流れ制御構成要素216は、図9Aに示される流れ制御構成要素216の第1の位置に対して矢印222の方向に長手方向に移動することによって第2の位置に配置される。
【0062】
図9A及び図9Bに示されるように、第3の継手206cに関連する開口部203cは、流れ制御構成要素216が第1の位置にあるとき(図9A)、第1の経路218aの入口を、同様に、流体制御構成要素216が第2の位置にあるとき(図9B)、第3の経路218cを画定する。したがって、第3の継手218cは、加圧流体を流れ切替装置200に供給することができる流体貯蔵器(例えば、図6の第1の貯蔵器114a)と連絡する流体送達装置(例えば、インフレータ)に結合することができ、そこから、流体制御構成要素216の位置に応じて、送達システムの第1のチャンバ又は第2のチャンバ(例えば、図6図7Bのシステム100のチャンバ144)のいずれかに送られる。したがって、第3の継手206c及び関連する開口部203cは、送達システムが展開モードであるか再捕捉モードであるかに関係なく、入口を画定することができる。加えて、第4の継手206dの開口部203dは、流体制御構成要素216が第1の位置にあるとき(図9A)、第2の経路218bの出口を画定することができ、また、流体送達構成要素216が、第2の位置にあるとき(図9B)、第4の経路218dの出口を画定することができる。したがって、第4の継手206d、関連する開口部203dは、流体制御構成要素216の配置に関係なく、流れ切替装置200を介して送達カテーテルの任意のチャンバから流体を受容するドレンライン又は流体レセプタクルに結合することができる。したがって、流体制御装置200は、流体送達構成要素又は流体排出構成要素の位置を移動する必要なしに、送達システムの異なるチャンバへの、及び異なるチャンバからの流体送達の間の交換を可能にする。さらに、流体制御装置200は、単一の構成要素(すなわち、ハンドル204)の単純な操作で、移植可能な装置の送達と再捕捉との間の変更を実装する臨床医の側では必要以上の力を加えることなく、この流体交換を可能にする。
【0063】
流れ制御構成要素216の位置に応じて特定の方向に流体を通過させるように構成された流れ切替装置200の特定の入口又は出口に関して説明しているが、当業者は、これは、異なる配置の相互接続で実現できる、相互接続の相対的配置であることを理解するであろう。例えば、流れ切替装置200間の相対的な流体流の記述は、2つのチャンバ間の接続を交換することによって変更することができ、例えば、流れ制御構成要素200が第1の位置にあるとき、第2のチャンバが充填され、第1のチャンバが空にされる。
【0064】
流れ制御構成要素216は、ハンドル204及び/又は他の制御構造に動作可能に結合されてもよいので、ハンドル204の操作(例えば、切り替え、回転、押し込み)により、接合部構造214内の流れ制御構成要素216の向きを、事前に画定された第1及び第2の位置に移動させる。いくつかの実施形態では、ハンドル204は、ピン及び/又は他の接続構造を介して流れ制御構成要素216に動作可能に結合され、位置決めするために軸224の周りで回転可能である。ハンドル204を軸224周りに所定の位置(例えば、第1及び第2のハンドル位置)へ回転させることにより、流れ制御構成要素216を第1の位置(例えば、図9A)及び第2の位置(例えば、図9B)に移動させることができる。図示の実施形態では、第1のハンドル位置(図9A)は、中立位置からのハンドル204の90度回転させた位置であり、第2のハンドル位置(図9B)は、第1のハンドル位置からハンドル204の90度回転させた位置である。いくつかの実施形態では、ハンドル204は、軸224を中心に異なる角度で回転して、流れ制御構成要素216の異なる位置を実装することができ、ハンドル204は、流れ制御構成要素216の追加の位置に相関する追加の位置を有することができ、及び/又はハンドル204は、異なる方法又は追加の方法で操作して、流れ制御構成要素216への動きを実現することができる。
【0065】
図10A及び図10Bは、図8A図9Bの流れ切替装置200の部分的に概略的な機能図であり、ネットワークチャネル212(図9A及び図9B)を介して様々な流体経路218を作成するための、流体制御構成要素216と接合部構造214との相互作用をさらに示す。図10Aは、第1の構成又は展開形態における流れ切替装置200を示し、図10Bは、第2の構成又は再捕捉形態における流れ切替装置200を示している。
【0066】
図10Aに示されるように、流れ切替装置200が展開形態にあるとき、流れ制御構成要素216は第1の位置にある。流れ制御構成要素216は、ハンドル204(図8A図9B)を所定の位置に操作することによってこの位置に移動することができ、これにより、流れ制御構成要素216は矢印220の方向に移動する。第1の位置では、流れ制御構成要素216は、第1及び第2の経路218a及び218bを形成する。第1の経路218aは、流体リザーバ(例えば、図6の第1のリザーバ114a)を備えたインフレータ装置を、送達カテーテルの一部分(例えば、図7A図7Bのチャンバ144のうちの1つ)内の展開チャンバと流体連通するように配置することができる。第2の経路218bは、ドレン又はレセプタクルリザーバ(例えば、図6の第2のリザーバ114b)を備えた送達カテーテルの再着鞘チャンバ(例えば、図7A図7Bのチャンバ144の他方)を配置することができる。したがって、展開形態では、流れ切替装置200は、第1の経路218aを介したインフレータ装置を介した展開チャンバの充填、及び第2の経路218bを介した再着鞘チャンバからドレンラインへの流体の除去を許容する。いくつかの実施形態では、流れ切替装置200は、送達カテーテルへの流体送達及び送達カテーテルからの流体除去を同時に行うことを許容し、他の実施形態では、これらの工程は連続して実施される。送達システムにおける、1つのチャンバへのこの流体送達及び送達システムの別のチャンバからの流体除去により、移植可能な装置(例えば、人工心臓弁)からの送達カプセルの脱鞘を開始して、体内での装置内の拡張及び/又は展開を許容することができる。
【0067】
図10Bに示されるように、流れ切替装置200が再捕捉形態にあるとき、流れ制御構成要素216は第2の位置にある。流れ制御構成要素216は、ハンドル204(図8A図9B)を所定の位置に操作することによって、中立位置又は第1の位置(図10A)から第2の位置に移動することができ、これにより、流れ制御構成要素216は、矢印222の方向に移動する。第2の位置では、流れ制御構成要素216は、展開形態と同じチャネル212(図9A図9B)の少なくともいくつかを使用して第3及び第4の経路218c及び218dを画定するが、それらの間の接続を再画定する。第3の経路218cは、インフレータ装置を送達カテーテルの再着鞘チャンバと連通して配置して、再着鞘チャンバへの流体送達を許容することができる。第4の経路218dは、送達カテーテルの展開チャンバをドレンラインと流体連通するように配置して、展開チャンバからの流体の除去を許容することができる。送達システムの1つのチャンバへのこの流体送達、及び送達システムの別のチャンバからの流体除去は、展開形態とは逆の方法で実施され、体から送達システムを取り外す前に、少なくとも部分的に展開された装置(例えば、人工心臓弁)の再着鞘又は再捕捉及び/又は送達カプセルの閉鎖を開始することができる。
【0068】
図12A図12Cは、本発明の他の実施形態による様々な異なる流れ配置における流れ切替装置250の上面図であり、図13は、図12A図12Cの流れ切替装置250の分解図である。図9A図11の流れ切替装置200と同様に、図12A図13の流れ切替装置250は、水圧式送達システム(例えば、図6のシステム100)内の流体流の経路及び方向を制御して人工心臓弁及び/又は他の埋め込み型装置を展開及び/又は再捕捉するように構成される。流れ切替装置250は、制御機構又はハンドル254に結合された筐体252を含む。筐体252は、外部を介してアクセス可能で筐体252の接合部構造262で交差する複数の開口部256(それぞれ第1~第4の開口部256a~256dとして個別に識別される)で終端する複数のチャネル260(それぞれ第1~第4のチャネル260a~260dとして個別に識別される)を含むことができる。ハンドル254は、回転又は他の方法で少なくとも2つの異なる位置に移動することでチャネル260に沿って画定された流体経路を選択的に変更することができ、それにより、送達システムの2つのチャンバへの及びからの流体送達が可能になり、それにより、送達システムの送達カプセルから移植可能な装置の展開及び再捕捉が可能になる。
【0069】
流れ切替装置250は、様々な異なる剛性、半剛性、又は可撓性の材料から作製することができる。例えば、筐体252は、射出成形されたプラスチック又は機械的に頑丈な別の剛性材料で作製することができる。流れ切替装置250のハンドル254及び他の構成要素は、同様に、ポリマー、金属、及び/又は他の機械的に頑丈な材料で作製することができる。
【0070】
図示の実施形態では、筐体252は、接合部構造262から延在する4つのチャネル260に対応する4つの開口部256を画定する。他の実施形態では、筐体252は、4つ未満又は4つを超える開口部256を含むことができる。この実施形態及び他の実施形態では、筐体252は、接合部構造262と交差する4つ未満又は4つを超えるチャネル260を含むことができる。各開口部256は、送達カプセル内、カテーテルに沿って、カテーテルのハンドル内、及び/又は水圧式送達システムの他の部分内に位置する流体リザーバ、ドレンライン、及び位置するチャンバの間で流動性物質(例えば、液体、食塩水、水)を輸送するための1つ以上のホース、チューブ、又は他の構成要素(例えば、コネクタ、弁、ポンプ)を受容することができる。例えば、第1及び第2の開口部256a及び256bは、流れ切替装置250を送達カテーテルのそれぞれのチャンバに流体的に接続するチューブを受容することができる。第3の開口部256cは、流れ切替装置250を、送達カテーテルの1つ以上のチャンバから除去された流体を受容するように構成されたドレン又はリザーバに流体的に接続するチューブを受容することができる。第4の開口部256dは、流れ切替装置250を、送達カテーテルのチャンバに送達することができるインフレータ装置(例えば、図11のインフレータ装置228)の流体リザーバなどの流体リザーバに流体的に接続するチューブを受容することができる。したがって、開口部256は、流れ切替装置250の外部の構成要素から/へのチャネル260のネットワークの入口及び/又は出口を画定することができる。
【0071】
図13の部分分解図に示されるように、流れ切替装置250は、接合部構造262内に少なくとも部分的に配設され、ハンドル254に動作可能に結合された流れ制御構成要素266をさらに含むことができる。図示の実施形態では、接合部構造262は、中央管状構造268、対応する複数のチャネル260と整列して中央管状構造268から半径方向外向きに延在する複数の管状アーム269、及び流れ制御構成要素266を受容するように構成された接合部開口271を含む。中央管状構造268及び管状アーム269は、上側筐体部分252a及び下側筐体部分252bを結合するときに、流れ切替装置250の筐体252にしっかりと収容することができる。他の実施形態では、接合部構造262は、筐体252と一体的に形成(例えば、成形)し、及び/又は他の方法で筐体252内に固定することができる。この実施形態及び他の実施形態では、接合部構造262は、管状アームのない単一の管状シャフト、示されているものとは異なる構成で間隔を置いて配置されたアームを備えたチューブ、及び/又は流れ制御構成要素266支持し、チャネル260とのインターフェースをとる好適な接合機構などのような異なる構成を有していてもよい。
【0072】
流れ制御構成要素266は、接合部構造268の開口271内で回転可能に受け取られる、シャフト又は他の構造などの本体部分273を含む。本体部分273は、本体部分273を横断する1つ以上の切替チャネル270(例えば、2つの迂回チャネル、3つの切替チャネル、4つの切替チャネル、4つ以上の切替チャネル)を含む。切替チャネル270の直径は、それらがカテーテルへの流体送達の好適な圧力及び速度を容易に得ることができるようなものである。
【0073】
使用中、ハンドル254の回転により、流れ制御構成要素266が接合部構造262に対して回転する。この回転により、流れ制御構成要素266の切替チャネル270は、筐体252内の主チャネル260と整列し、それによって、複数の流体経路264(それぞれ第1~第5の流体経路264a~264eとして個別に識別される、図12A図12C)を選択的に画定する。例えば、ハンドル262の回転は、切替チャネル270が選択的にメインチャネル260と位置合わせされ、装置の送達及び再捕捉のための流体流が可能となるように、流れ制御構成要素266の本体部分273を少なくとも第1の位置(例えば、展開形態)と第2の位置(例えば、再捕捉形態)との間で回転させることができる。
【0074】
使用中、流れ切替装置250は、送達システムの異なる構成要素との間で流体を送達するための2つ以上の機能的構成を有していてもよい。図12A図13に示される実施形態では、流れ切替装置250は、図12Aに示す展開形態、図12Bに示す再捕捉形態、及び図12Cに示す中間充填形態は、送達処置中のインフレータ装置のオプションの補充の、3つの機能構成を有する。流れ切替装置250はまた、すべてのチャネル260が遮断される第4の構成を有していてもよい。
【0075】
図12Aを参照すると、流れ切替装置250が展開形態にあるとき、流体は、第2の経路262bに沿って、インフレータ装置(例えば、図11のインフレータ装置228)又は他の流体リザーバから第4の開口部256dに、接合部構造262及びその中の流れ制御構成要素266(図13)を通り、第2の開口部256bから出て、送達カテーテルのチャンバ(例えば、展開チャンバ)に入るように流れることができる。いくつかの実施形態では、展開形態により、流体が、送達カテーテルの再着鞘チャンバから、接合部構造262及び流れ制御構成要素266を通って、第1の開口部256aに入り、第3の開口部256cを通って、ドレンライン及び/又はリザーバに入るように流れることができる第1の経路262aに沿って、流体を同時に又は並行して排出することができる。
【0076】
図12Bに示されるように、流れ切替装置250が再捕捉形態にあるとき、流体は、第4の経路262dに沿って、インフレータ装置から第4の開口部256dに入り、接合部構造262及びその中の流れ制御構成要素266を通り、第1の開口部256aを通って、送達カテーテルの再着鞘チャンバに入るように流れることができる。いくつかの実施形態では、再捕捉形態はまた、流体が、第3の経路262cを介して送達カテーテルの展開チャンバから除去されることを許容する。この配置では、流体は、展開チャンバから第2の開口部256bに、接合部構造262及びその中の流れ制御構成要素266を通り、第3の開口部256cを通って、ドレンリザーバ又はラインに流れることができる。したがって、図12Bに示す流れ切替装置250の再捕捉状態は、図12Aに示す流れ切替装置の展開状態と対をなしており、ハンドル254(及びそれに結合された流れ制御構成要素266)を図12Aに示す第1の位置から図12Bに示す第2の位置に回転させることによって、流体が送出カテーテルのそれぞれのチャンバから反対方向に移動することを可能にしている。
【0077】
流れ切替装置250の展開及び再捕捉形態の両方において、第4の開口部256dは、それが展開形態中に使用される第2の経路262b又は再捕捉中に使用される第4の流体経路262dのいずれであろうと、流れ切替装置250への入口を画定する。したがって、第4の開口部256dは、流れ制御構成要素250の構成に応じて、流れ切替装置250及び送達カテーテルの第1のチャンバ又は第2のチャンバのいずれかに送達するための加圧流体を含む装置などのインフレータ装置に結合することができる。同様に、第3の開口部256cは、流れ切替装置250が、それぞれ、展開形態(図12A)又は再捕捉形態(図12B)のいずれかにあるとき、第1及び第3の経路262a及び262cの各々について流れ切替装置250の出口を画定する。したがって、第3の開口部256cは、流れ切替装置250の構成に応じて、第2のチャンバの第1のチャンバのいずれかからの流体を受容することができるリザーバ、レセプタクル、及び/又はドレンに結合することができる。
【0078】
図12Cに示されるように、流れ切替装置250が任意の充填形態にある場合、流れ切替装置250は、流体が第3の開口部256cから第4の開口部256dまで第5の経路262eに沿って流れて、インフレータ装置又は流体リザーバと連絡しているリザーバ(例えば、排水リザーバ)を配置することを許容してインフレータ装置の補充を許容する。様々な実施形態では、この中間形態は、装置の展開又は再捕捉の前に、送達システム(例えば、図6のシステム100)を開始するときに使用することができる。例えば、初期設定中に、インフレータ装置は、送達システムをフラッシュしてエアポケットを除去するために使用される第5の経路262eを介して充填することができる。これは、インフレータ装置に含まれる流体供給を使い果たすので、展開及び/又は回復処置には不十分になる可能性がある。したがって、図12Cの充填形態は、流れ切替装置250からインフレータ装置を取り外す必要なしに、インフレータ装置又は流体リザーバの迅速な補充を可能にする。様々な実施形態では、この充填形態はまた、装置の送達、フラッシング、及び/又は再捕捉のために追加の流体が必要とされる場合、送達処置中に使用され得る。
【0079】
流れ制御構成要素の位置に応じて特定の方向に流体を通過させるように構成された流れ切替装置250の特定の開口部に関して説明されているが、当業者は、これが相互接続の他の配置で達成され得る相互接続の相対的配置であることを理解するであろう。例えば、流れ切替装置250間の相対的な流体流の記述は、2つのチャンバ間の接続を交換することによって変更することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、流れ切替装置250はまた、流れ切替装置250を送達システムの一部分(例えば、図11のインフレータ装置228)に解放可能に固定することができる接続アセンブリ258(部品258a及び258bを含む)を含むことができる。接続アセンブリ258は、接続アセンブリ258内に保持された構成要素に抵抗力を加えるブラケット構造でもよい。図13に示されるように、例えば、筐体252の反対側で第1のブラケット表面部分275a及び第2のブラケット表面部分275bを結合することによって形成された接続アセンブリ258。示されるように、ブラケット表面部分275は、インフレータ装置のグリップを強化するために大きな表面積を有することができる。他の実施形態では、接続アセンブリ258は、流れ切替装置250を送達システムの他の構成要素に解放可能に固定するための異なる取り付け機構を含むことができる。
【0081】
人工弁装置の移植を含む用途を参照して説明しているが、開示された実施形態はそのように限定されない。例えば、図6図13を参照して上記で開示された流れ切替装置の実施形態は、僧帽弁及び/又は患者の心臓にある他の弁の置換のための人工弁装置に加えて、又は代替として、様々な他の医療機器を送達させるように構成することができる。本明細書に記載の特定の要素、下部構造、利点、用途、及び/又は他の特徴は、互いに好適に交換、置換、又は他の方法で構成することができる。さらに、記載された実施形態の好適な要素は、スタンドアロン及び/又は自己完結型装置として使用することができる。
【0082】
また、本開示の特定の実施形態が例示の目的で本明細書に説明されたが、様々な修正が本開示の範囲から逸脱することなく行われてもよいことが理解されるであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲による場合を除いて限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図12C
図13