(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】湿式化学によるSi3N4選択的除去の必要性
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
H01L21/306 E
(21)【出願番号】P 2021549173
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 US2020019097
(87)【国際公開番号】W WO2020172454
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-12-06
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522029073
【氏名又は名称】シャンハイ インスティテュート オブ インテグレーテッド サーキット マテリアルズ
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Institute of IC Materials
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウェイミン
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-134780(JP,A)
【文献】特開2008-098444(JP,A)
【文献】特開2017-118092(JP,A)
【文献】特開平07-086260(JP,A)
【文献】特開平10-050682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306-21/308
H01L 21/311
H01L 21/3213
H01L 21/465-21/467
H01L 21/4757
H01L 21/4763
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイス構造から材料を除去するためのシステムであって、
前記半導体デバイス構造を受け容れるように構成された処理チャンバであって、前記半導体デバイス構造が前記処理チャンバ内でエッチング液に曝露されることにより、前記構造の一部分が除去されるとともに、副生成物が生成して前記エッチング液に入る、処理チャンバと、
前記副生成物を沈殿物に変換し、該沈殿物を除去することにより、前記副生成物を連続的に除去するように構成された、副生成物除去部と、
前記副生成物が除去された後の前記エッチング液を前記処理チャンバ内に再導入する、循環ラインと
を備え、
前記副生成物除去部が、前記エッチング液に沈殿促進剤を供給する沈殿促進剤供給部を備え、
前記沈殿促進剤が、フッ化水
素を含
み、
前記エッチング液がリン酸含有溶液を含み、
前記一部が窒化ケイ素を含むことを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記副生成物除去部がフィルタを備え、
前記フィルタは、前記沈殿物を除去するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記副生成物除去部が、前記フィルタの上流側に設けられた沈殿チャンバをさらに備え、
前記沈殿促進剤供給部は、前記沈殿チャンバに前記沈殿促進剤を供給するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
エッチング液処理部をさらに含み、
前記エッチング液処理部は、前記エッチング液を調製するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記エッチング液処理部が、前記エッチング液を貯留するように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記エッチング液処理部が、化学薬剤を供給する化学薬剤供給部を備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記エッチング液処理部が、前記化学薬剤を混合して貯留するための空洞を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
半導体デバイス構造から材料を除去するための方法であって、該方法は、
エッチング液を処理チャンバ内に導入することにより、前記半導体デバイス構造の一部を除去し、副生成物を生成することと、
前記副生成物を沈殿物に変換することと、
前記沈殿物を除去することにより、前記副生成物を連続的に除去することと、
を含み、
前記副生成物を前記沈殿物に変換することが、前記エッチング液に沈殿促進剤を供給することを含み、
前記沈殿促進剤が、フッ化水
素を含
み、
前記エッチング液がリン酸含有溶液を含み、
前記一部が窒化ケイ素を含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記沈殿物を除去することが、前記沈殿物を濾別することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
半導体デバイス構造から材料を除去するための方法であって、該方法は、
半導体デバイス構造を、前記材料に対して正のエッチング選択性を示す溶液に曝露することと、
前記溶液が酸化ケイ素に対して負のエッチング選択性を示すやり方で、半導体デバイス構造から前記材料を化学的に除去することと、
前記材料を副生成物に変換することと、
前記副生成物を沈殿物に変換することと、
を含み、
前記副生成物を前記沈殿物に変換することが、前記溶液に沈殿促進剤を供給することを含み、
前記沈殿促進剤が、フッ化水
素を含
み、
前記正のエッチング選択性を示す溶液がリン酸含有溶液を含み、
前記材料が窒化ケイ素を含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記溶液から前記沈殿物を除去することをさらに含む、請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2020年2月20日に出願されたPCT/US2020/019097の国内段階移行出願であり、2019年2月20日に出願された米国仮出願第62/808,646号に基づく優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示は、一般に、半導体の設計および製造に関する。具体的には、本発明は、集積回路デバイスから電気絶縁体層を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
集積回路は情報産業の基盤である。5G、人工知能、Internet of Things、自動運転および他の技術の開発および応用は、すべて、プロセッサおよびメモリ等の集積回路に依存する。集積回路の高性能化および低コスト化の追求により、集積回路の高密度化が進んでいる。このことは、湿式エッチング装置等の各種半導体製造装置にとって難題を生じさせている。
【0004】
集積回路(IC)装置の製造中、電気絶縁体層は、しばしば、製造プロセスを補助するために使用される。製造プロセスを補助した後、窒化ケイ素層は除去されなければならない。
【0005】
IC素子から窒化ケイ素層を除去するための、ケイ素酸化物に対して選択的な、すなわち、ケイ素酸化物を顕著に攻撃することなく、窒化ケイ素を除去するいくつかのプロセスが知られている。一つの除去プロセスでは、窒化ケイ素層を含む基板が高温(100℃)の水に浸漬される。他の除去処理では、リン酸(H3PO4)が用いられる。低温では、リン酸は、窒化ケイ素に対して十分な攻撃性を発揮できないため、窒化ケイ素を十分にエッチングすることができない。温度が高くなると、窒化ケイ素のエッチング速度だけでなく、酸化ケイ素に対する攻撃も速くなる。そのため、リン酸を用いて窒化ケイ素構造をエッチングすることは困難であった。
【0006】
以上のことを考慮すると、窒化ケイ素を選択的に除去する効率的または費用対効果の高い方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、半導体デバイス構造から電気絶縁性材料を除去する方法は、処理チャンバと副生成物除去部とを含み得る。処理チャンバは、半導体デバイス構造を受け容れるように構成され得る。半導体デバイス構造は、処理チャンバ内でエッチング液に曝されることにより、構造の一部分が除去されるとともに、副生成物が生成してエッチング液に入り得る。副生成物除去部は、副生成物を沈殿物に変換し、沈殿物を除去することによって、副生成物を連続的に除去するように構成され得る。
【0008】
ある態様において、副生成物除去部は、沈殿促進剤供給部を含む。
【0009】
ある態様において、沈殿促進剤供給部は、フィルタを含み、フィルタは、沈殿物を除去するように構成される。
【0010】
ある態様において、副生成物除去部は、フィルタの上流側に設けられた沈殿チャンバをさらに含む。沈殿促進剤供給部は、沈殿促進剤を沈殿チャンバに供給するように構成される。
【0011】
ある態様において、システムは、エッチング液処理部を含む。エッチング液処理部は、エッチング液を調製するように構成される。
【0012】
ある態様において、エッチング液処理部は、エッチング液を貯留するように構成される。
【0013】
ある態様において、エッチング液処理部は、化学薬剤を供給する化学薬剤供給部を含む。
【0014】
ある態様において、エッチング液処理部は、化学薬剤を混合し、貯留するための空洞を含む。
【0015】
ある態様において、フィルタは、例えば、約0.22μm以下の直径を有する。
【0016】
第2の態様によれば、半導体デバイス構造から電気絶縁性材料を除去する方法は、エッチング液を処理チャンバ内に導入して、半導体デバイス構造の一部を除去するとともに副生成物を生成する工程と、副生成物を沈殿物に変換する工程と、沈殿物を除去することによって副生成物を連続的に除去する工程とを含む。
【0017】
ある態様において、副生成物を沈殿物に変換する工程は、沈殿促進剤をエッチング液に供給する工程を含む。
【0018】
ある態様において、沈殿物を除去することは、沈殿物を濾別することを含む。
【0019】
ある態様において、エッチング液は、リン酸含有溶液を含む。
【0020】
ある態様において、基板の一部は、窒化ケイ素を含む。
【0021】
ある態様において、副生成物はケイ酸を含む。
【0022】
ある態様において、沈殿促進剤は、以下の1種以上を含む:フッ化水素、水、アミノ酸、アミン、またはCa、Mg等を含有する無機塩。
【0023】
ある態様において、沈殿促進剤は、副生成物を沈殿促進剤表面に析出させる。沈殿促進剤は、以下の1種以上を含む:モレキュラーシーブ、ケイ酸塩粉末、石英、またはシロキサン。
【0024】
ある態様において、副生成物濃度は、リアルタイムで監視される。
【0025】
ある態様において、沈殿促進剤は、割合に基づいて導入される。
【0026】
ある態様において、沈殿促進剤は、割合以外に基づく量で導入される。
【0027】
ある態様において、沈殿促進剤は、より高くするにせよより低くするにせよ、副生成物の温度の変化を引き起こす。
【0028】
第3の態様によれば、半導体デバイス構造から電気絶縁性材料を除去するための方法は、半導体デバイス構造を、窒化ケイ素等の電気絶縁性材料に対して正のエッチング選択性を示す溶液に曝露する工程と、溶液が酸化ケイ素に対して負のエッチング選択性を示すやり方で、電気絶縁性材料を半導体デバイス構造から化学的に除去する工程とを含む。
【0029】
ある態様において、当該方法は、窒化ケイ素を副生成物に変換することをさらに含む。
【0030】
ある態様において、当該方法は、副生成物を沈殿物に変換することをさらに含む。
【0031】
ある態様において、当該方法は、溶液から沈殿物を除去することをさらに含む。
【0032】
ある態様において、当該方法は、溶液の組成をリアルタイムで監視することをさらに含む。
【0033】
本発明のこれらの及び他の利点は、以下の詳細および添付の図面を参照することによって容易に理解され得る:
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本開示の一実施形態に係る、基板を処理するためのシステムを示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る被処理基板の断面図を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る、基板を処理するためのシステムを示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る副生成物除去部を示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る、基板を処理するためのシステムを示す図である。
【
図6】(A)本発明の一実施形態に係る、エッチング液処理部、および、第一の循環ラインとの接続方法を示す図である。(B)本発明の他の実施形態に係る、エッチング液処理部、および、第一の循環ラインとの接続方法を示す図である。(C)本発明のさらに別の実施形態に係る、エッチング液処理部、および、第1の循環ラインとの接続方法を示す図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る、基板を処理するためのシステムを示す図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る、基板を処理するための方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[詳細な説明]
本開示の好ましい実施形態は、添付図面を参照して以下に記載され得る。以下の説明では、周知の機能または構成は、不必要な詳細で開示を不明瞭にする可能性があるため、詳細には記載されていない。本開示に関して、以下の用語および定義が適用されるものとする。
【0036】
本明細書全体を通して、「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、または特性が、特許請求される発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所における「一の実施形態において」または「実施形態」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態で組み合わせることができる。
【0037】
以下に説明する工程は、IC素子を製造するための完全な処理フローを形成しない場合がある。本発明を理解するために必要な処理工程のみが開示される。
【0038】
湿式エッチング技術は半導体製造技術のキーテクノロジーの一つである。基板をエッチングするとき、エッチング速度を精密に制御し、特定の材料に対するエッチング選択性を得るためには、温度などの反応プロセス条件を満たすことに加えて、通常、エッチング剤またはエッチング液中の各種成分の含有量または濃度を誤差の範囲内に維持する必要がある。例えば、一方では、エッチング反応が進行するにつれて、エッチング溶液中の活性成分が徐々に消費され得る。従って、エッチング溶液の組成をリアルタイムで監視し、消費された活性成分を適時に補充することが必要である。他方、エッチング反応は種々のエッチング副生成物を生じるであろう。これらの副生成物を遅滞なく除去できない場合、これらの副生成物はエッチングプロセスに潜在的な悪影響を及ぼす可能性がある。残念なことに、湿式エッチング装置のための現在の設計努力は、主に前者に焦点が当てられており、後者は十分な注目を受けていない。これにより、関連するエッチング装置は、一般に、エッチング副生成物を除去する能力に欠けている。しかしながら、集積回路の高集積化と複雑化に伴い、この能力の欠如は、エッチング溶液のリサイクル率を低下させるばかりでなく、非常に微細な半導体デバイス構造を形成することを困難にするであろう。
【0039】
特に、現在のNANDメモリは、一般に、3次元構造で構成される。3次元構造を形成するための鍵となるステップは、シリコン等の半導体基板上に交互に積層された窒化ケイ素層及び二酸化ケイ素層からなる積層体を形成するステップを含む。基板に到達するために、乾式エッチング技術によって積層を通してトレンチが形成される。3次元NANDの構成は、2019年7月21日に出願された米国特許出願第16/517,600号に言及されており、これは、2018年1月19日に出願されたPCT出願第PCT/US18/14408号に対する優先権を主張し、その優先権の利益を受け、これは2017年1月20日に出願された米国仮出願第62/448,677号に基づく優先権を主張し、その優先権の利益を受ける。3次元強誘電酸化物メモリ素子の構成は、米国特許出願第16/517,598号に言及されており、これは2018年1月19日に出願されたPCT出願第PCT/US18/14416号に基づく優先権を主張し、その優先権の利益を受け、これは2017年1月20日に出願された米国仮出願第62/448,677号に基づく優先権を主張し、その優先権の利益を受ける。前述の出願は、本出願と共通して所有され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
窒化ケイ素材料層は、リン酸を主エッチング剤とするエッチング液によって選択的に除去される。具体的には、積層体中の窒化ケイ素層は、積層体中に形成されたトレンチを通してエッチング液に露出され、窒化ケイ素がそれによって除去される。3次元NANDメモリの場合、記憶密度を増加させる主な方法は、3次元構造の層数、すなわち窒化ケイ素層および二酸化ケイ素層の数を増加させることである。しかし、窒化ケイ素層および二酸化ケイ素層の数の増加は、除去されるべき窒化ケイ素の量の増加を意味するだけでなく、増加したアスペクト比が原因でエッチング深さが増加することをも意味する。この場合、エッチング副生成物の影響を無視することはできない。窒化ケイ素をリン酸溶液でエッチングすることにより形成される主なエッチング副生成物はケイ酸であり、これはオルトケイ酸(Si(OH)4)およびリン酸溶液の形態で存在する。本発明者らは、実際には、3次元構造の層の数が増加するにつれて、リン酸溶液中に入る(例えば、溶解する)オルトケイ酸が、重合して最終的にはエッチングプロセス中にその溶解限界を超えて沈殿する可能性がより高くなることを見出した。この現象は、さらなる窒化ケイ素のエッチングを妨げ、さらには構造の表面に粒子汚染を引き起こし、所望の高アスペクト比構造を形成することを困難にし得る。現在、関連技術のエッチング装置は、上記の問題を解決または軽減することができない。
【0041】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0042】
図1は、本開示の一実施形態に係る、基板を処理するためのシステム1を示す。
図1に示すように、基板を処理するシステム1は、処理チャンバ10と、副生成物除去部20とを備えている。処理チャンバ10は、基板100を受け容れるように構成されており、処理チャンバ10内で基板100がエッチング液に曝されることにより、基板100の一部が除去されるとともに、副生成物が生成してエッチング液中に入る(例えば、溶解等する)。副生成物除去部20は、生成した副生成物を沈殿物に変換して該沈殿物を除去することにより、副生成物を除去するように構成されている。
【0043】
上記システムにより、エッチング液に潜在的に悪影響を及ぼす可能性のあるエッチング副生成物をエッチング処理中に適時に除去又は低減することができ、これによりエッチング処理を良好に行うことができることが保証される。上述のように、これは、3次元NANDメモリの製造中に窒化ケイ素を選択的に除去することにとって特に重要である。本開示の一実施形態によれば、エッチング液は、リン酸溶液を含み得る。基板100の除去された部分は、窒化ケイ素を含む。
【0044】
図2は、本開示の一実施形態による、処理される基板100の断面図を示す。基板100は、3次元NANDメモリを製造するのに特に適している。
図2に示すように、基板100は、基板101(例えばシリコン基板等。)と、基板101上の積層体102とを含み得る。積層体102は、基板101上に交互に積層された、二酸化ケイ素層1021および窒化ケイ素層1022を含む。基板100はまた、積層体102を貫通して延在する孔103を含む。エッチング処理の間、基板100は、処理チャンバ10内に配置され、エッチング剤またはエッチング溶液に曝される。該エッチング剤またはエッチング溶液は、孔103に入り、それによって積層体102内の各窒化ケイ素層1022を除去する。
【0045】
図3は、本開示の一実施形態に係る、基板を処理するためのシステムを示す。
図3に示すように、処理チャンバ10及び副生成物除去部20は、エッチング液を第1の循環方向Aに循環させる第1の循環ライン50中に設けられている。第1の循環ライン50は、第1のライン51及び第2のライン52を有している。第1のライン51は、エッチング液を処理チャンバ10から副生成物除去部20に導くように構成され得る。第2のライン52は、エッチング液を副生成物除去部20から処理チャンバ10に戻すように構成されている。このシステム構成により、処理チャンバ10と副生成物除去部20との間でエッチング液を循環させてリサイクルすることができるので、処理能力及び材料利用率を高めることができる。さらに、
図3に示すように、エッチング液の流れ及び流量を制御する実際のニーズに応じて、ポンプPとバルブVとが新たな循環回路50内に設けられる。加熱ガス、種々のセンサ、圧力ゲージなどの他の追加的な装置(不図示)もまた、第1の循環ライン50内に設けられてもよく、それらは本開示の実施形態において限定されないことが理解されるべきである。
【0046】
図4は、本発明の一実施形態に係る副生成物除去部を示す。
図4に示すように、副生成物除去部20は、沈殿促進剤供給部21と、フィルタ22とを備えている。沈殿促進剤供給部21は、フィルタ22の上流側に、例えば第1の循環方向Aに、エッチング副生成物を沈殿に変換する沈殿促進剤を供給するように構成されている。フィルタ22は、生成された沈殿物を除去するように構成されている。
【0047】
エッチング液がリン酸溶液であり、エッチングされる材料層が窒化ケイ素層である場合には、上記のように、沈殿物を形成しやすいエッチング副生成物は、ケイ酸であり、これは、リン酸溶液中でオルトケイ酸の形態で存在する。したがって、沈殿促進剤は、フッ化水素、H2O、アミノ酸、アミン、及び、Mg、Ca等を含む無機塩、のうちの1種以上を含み得る。例えば、沈殿促進剤がフッ化水素である場合には、沈殿を生成する反応は、次の式で表される:
【0048】
【0049】
沈殿促進剤は、当該固体構造の表面にケイ酸を沈殿させる固体構造体を含み得る。そのような固体構造体は、粉末もしくはブロック、またはモレキュラーシーブ等のいずれかの形態のSiO2を含み得るが、これらに限定されない。
【0050】
沈殿促進剤は、沈殿を促進するために、副生成物を加熱または冷却し得る。
【0051】
図5は、本開示の一実施形態に係る、基板を処理するためのシステムを示す。
図5に示されるように、基板を処理するためのシステムは、第1の循環ライン50に接続されたエッチング液処理部30をさらに含む。エッチング液処理部30は、1)エッチング液を調製して貯留すること、2)調製したエッチング液を第1の循環ラインに供給すること、3)第1の循環ラインに化学薬剤を供給してエッチング液を調整すること、の少なくとも1つの機能を達成するように構成されている。なお、エッチング液処理部30は、実際のニーズに応じて、第1の循環ライン50内の任意の適切な位置に接続され得ることが理解されるべきである。エッチング液処理部30は、
図5において第2のライン52(すなわち副生成物除去部20の下流側)に接続されているように示されているが、エッチング液処理部30は、第1のライン51(すなわち副生成物除去部の上流側)に接続されていてもよい。しかしながら、エッチング副生成物や沈殿促進剤がエッチング液処理部30からの薬剤に潜在的な影響を及ぼす可能性があることを考慮すれば、エッチング処理部30を第2のライン52に接続することが有利である。
【0052】
図6(A)~(C)は、本発明の種々の実施形態に係る、エッチング液処理ユニット、および、第1の循環回路との接続方法を示す図である。
図6(A)~(C)に示すように、エッチング液処理部30は、化学薬剤を供給する化学薬剤供給部31と、化学薬剤を混合して貯留する空洞32とを備えている。なお、エッチング液処理部30の空洞32は必要ではないことが理解されるべきである。空洞32がない場合には、化学薬剤供給部30は、化学薬剤を循環経路50に直接供給し得る。本開示の一実施形態によれば、窒化ケイ素をエッチングするために、化学薬剤供給部31によって提供される化学薬剤は、リン酸、水、および種々の添加剤を含み得るが、これらに限定されない。添加剤は、例えば、二酸化ケイ素エッチング抑制剤(H
2SiO
3等のケイ素化合物)、窒化ケイ素エッチング促進剤(NH
4F、NH
4HF
2等のフッ素化合物)を含み得る。室温では、種々の添加剤は、液体、固体、または気体であり得る。
【0053】
本開示の一実施形態によれば、
図6(A)に示されるように、空洞32は、第1の循環ライン50に設けられた(特に、第2のライン52に設けられた)空洞を含み得る。本開示の一実施形態によれば、
図6(B)に示されるように、空洞32は、第1の空洞32aおよび第2の空洞32bを含み、第1の空洞32aは第1の循環ライン50(特に、第2のライン52)に設けられる。第2の空洞32bは、第1の空洞32aに接続され得て、第1の循環ライン50を構成しない供給ライン60に設けられ得る。化学薬剤供給部31は、第1の空洞32aおよび第2の空洞32bまで伸びるように構成され、第1の空洞32aまたは第2の空洞32bの少なくとも一方に化学薬剤を提供する。本開示の一実施形態によれば、空洞32は、第1の循環ライン50を構成しない供給ライン60内に設けられ得る。
図6(C)に示すように、空洞32は、供給ライン60内に設けられた第1の空洞32aおよび第2の空洞32bを含む。第1の空洞32aは第2のライン52に接続され、第2の空洞32bは第1の空洞32aに接続されている。また、
図6(C)において、化学薬剤供給部31は、第1の空洞32a及び第2の空洞32bの少なくとも一方に化学薬剤を供給するように構成されている。さらに、
図6(B)および
図6(C)に示されるように、空洞32は、空洞32内に供給される化学薬剤を十分に撹拌および混合できるように、別個の循環ライン70を有し得る。加えて、空洞32は、ヒータおよび種々のセンサ(不図示)を有していてもよい。
【0054】
図7は、本開示の一実施形態に係る、基板を処理するためのシステムを示す。
図7に示されるように、基板を処理するためのシステム1は、第3のライン81をさらに含む。第3のライン81の一方の端部は、第1のライン51に接続され、第3のライン81の他方の端部は、第2のラインのエッチング液処理部30の下流に位置する部分に接続されている。第3のライン81は、第2のラインからエッチング液を除去するように構成されている。第2のライン52は、第1のライン51に戻る。第3のライン81が導入されると、第3のライン81、副生成物除去部20、及びエッチング溶液処理部30は、第2の循環方向Bに循環する第2の循環ライン80を形成することができる。これにより、副生成物除去部20及びエッチング溶液処理部30によって、エッチング溶液が処理チャンバ10に入る前にエッチング溶液を周期的に処理することができる。この構成により、エッチング液が処理チャンバ10に導入される前に、エッチング液を十分に処理し安定化させることができる。
【0055】
本開示の別の態様では、基板を処理するための方法が提供される。
図8は、本開示の一実施形態に係る、基板を処理するための方法のフローチャートを示す。基板の処理方法は、処理チャンバ内にエッチング液を導入して基板の一部を除去し、副生成物を生成して、該副生成物がエッチング液に入る工程(ステップS101)と、副生成物を沈殿物に変換して該沈殿物を除去することにより、副生成物が除去される工程(ステップS102)と、を含む。本開示の一実施形態によれば、副生成物を沈殿物に変換することは、使用後のエッチング溶液に沈殿促進剤を供給して沈殿物を生成することを含む。本開示の一実施形態によれば、エッチング溶液は、リン酸含有溶液を含み、基板の一部は、窒化ケイ素(例えば
図2の窒化ケイ素層1022等)を含み、副生成物は、ケイ酸を含み、沈殿促進剤は、フッ化水素を含む。任意的に、基板を処理するための方法は、副生成物の除去後に、エッチング液を処理チャンバに再び導入する工程をさらに含み得る。
【0056】
本開示のさらなる別の態様では、半導体デバイス構造から電気絶縁性材料を除去するための方法は、窒化ケイ素に対して正のエッチング選択性を示す溶液に半導体デバイス構造を曝露する工程と、溶液が酸化ケイ素に対して負のエッチング選択性を示すやり方で、窒化ケイ素を半導体デバイス構造から化学的に除去する工程とを含み得る。
【0057】
この方法は、第2の材料(すなわち酸化ケイ素)よりも速く1つの材料(すなわち窒化ケイ素)をエッチングする、正のエッチング選択性または能力を示す酸溶液等のエッチング剤を使用する。
【0058】
正のエッチング選択性は、酸溶液が、酸化ケイ素よりも速い速度で電気絶縁体層(例えば窒化ケイ素)をエッチングすることを意味する。好ましくは、使用される酸溶液はリン酸を含有する。酸溶液は、該酸溶液が正のエッチング選択性を示す限りにおいて、水中の任意の濃度のリン酸を含有し得る。好ましくは、リン酸濃度は、約50%~約100%の範囲であり、より好ましくは85%である。リン酸溶液は、任意的に、緩衝剤、および/または、フルオロホウ酸および硫酸等の他の酸等の、追加の薬剤を含有してもよい。
【0059】
負のエッチング選択性は、酸溶液が窒化ケイ素よりも遅い速度で酸化ケイ素をエッチングすることを意味する。
【0060】
この方法は、先に議論したように、窒化ケイ素を副生成物に変換する工程と、副生成物を沈殿物に変換する工程と、溶液から沈殿物を除去する工程と、溶液の組成をリアルタイムで監視する工程と、をさらに含み得る。
【0061】
様々な実施形態が、部品、特徴等の特定の配置を参照して説明されたが、これらは、すべての可能な配置または特徴を尽くすことを意図するものではなく、実際に、多くの他の実施形態、修正、および変形が、当業者に確かめられ得る。したがって、本発明は、上記に具体的に記載された以外の方法で実施されてもよいことが理解されるべきである。
【0062】
プロセスは、半導体デバイスの一部を可溶性の副生成物に変換すること、処理チャンバから副生成物を除去すること、および処理チャンバのためのエッチング剤をリアルタイムで調製することを含み、液体溶液の使用を伴う任意の適切な半導体処理において広く適用することができ、NAND等の半導体または窒化ケイ素などの電気絶縁性材料、純粋に例として本発明に記載される除去実施形態によって限定されないことが理解されるべきである。