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特許7600133農業用組成物および農薬を含む農業用組成物のためのプロピレンオキシドでキャップされた液体ポリマー界面活性剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】農業用組成物および農薬を含む農業用組成物のためのプロピレンオキシドでキャップされた液体ポリマー界面活性剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/30 20060101AFI20241209BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20241209BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241209BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
A01N25/30
A01N25/04 101
A01P3/00
A01P13/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021553862
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 US2020023317
(87)【国際公開番号】W WO2020191025
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】62/821,655
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】マルセラ ヴァスケス グティエレス、ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】アレンカー マルケス、ユリ
(72)【発明者】
【氏名】ユー、ウォンリン
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04317940(US,A)
【文献】米国特許第03956401(US,A)
【文献】特表2017-536434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P,C07C,C11D
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)鉱油、ダイズ油、植物油、落花生油、キャノーラ油、綿実油および合成油からなる群より選ばれた農業用油と、
(b)以下の構造
【化1】
(式中、mは3~7の整数であり、nは5~20の整数であり、oは3~30の整数であり、Rは直鎖または分岐C4~C18アルキル鎖である)を有する農業用油相溶性のプロピレンオキシド(PO)でキャップされた液体ポリマー界面活性剤と、を含む農業用組成物。
【請求項2】
(a)が、前記農業用組成物の体積あたり少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%であり、
(b)が、前記農業用組成物の体積あたり0.5~40.0重量%、1.0~20.0重量%、10.0~20.0重量%、または15.0~20.0重量%である、請求項1に記載の農業用組成物。
【請求項3】
水をさらに含み、前記農業用組成物が(b)を含まない農業用組成物と比較して、より低い発泡および改善されたエマルジョン安定性を示す、請求項1に記載の農業用組成物。
【請求項4】
農薬をさらに含む、請求項1に記載の農業用組成物。
【請求項5】
mが3~6の整数または3~5の整数である、請求項1に記載の農業用組成物。
【請求項6】
mが5である、請求項1に記載の農業用組成物。
【請求項7】
nは、6~15までの整数、または9~14の整数である、請求項1に記載の農業用組成物。
【請求項8】
oが10~25の整数である、請求項1に記載の農業用組成物。
【請求項9】
Rが分岐C4~C18アルキル鎖である、請求項1に記載の農業用組成物。
【請求項10】
(a)鉱油、ダイズ油、植物油、落花生油、キャノーラ油、綿実油および合成油からなる群より選ばれた農業用油と、
(b)以下の構造
【化2】
(式中、mは3~10の整数であり、nは5~20の整数であり、oは3~30の整数であり、Rは分岐C4~C18アルキル鎖である)を有する農業用油相溶性のプロピレンオキシド(PO)でキャップされた液体ポリマー界面活性剤と、
(c)農薬と、を含む、農薬を含む農業用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、農業用組成物および農薬を含む農業用組成物に関する。限定するものではないが、より具体的には、本開示は、農業用油相溶性のプロピレンオキシド(PO)でキャップされた液体ポリマー界面活性剤を含む農業用組成物および農薬を含む農業用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、除草剤、殺虫剤および/または殺菌剤などの活性成分の性能を高めるために、農薬を含む組成物に様々な補助剤を使用することができる。補助剤の例には、湿潤剤、作物油濃縮物(COC)、展着剤(spreader)、展着剤(sticker)、緩衝剤、発泡剤および消泡剤、分散剤およびドリフト制御剤が含まれる。
【0003】
COCは一般的に使用される補助剤である。COCを農業用配合物に含めることにより、農業用配合物の活性成分の有効性を高めることができる。例えば、COCは、活性成分の動きを促進し、スプレー溶液の表面張力を低下させ、および/または濡れを改善することができる。
【0004】
COCは、石油/植物由来の油などの農業用油と界面活性剤の組み合わせであり得る。COCで使用できる界面活性剤の例には、アルキルフェノールエトキシレート(APEO)、アルコールエトキシレート、ヒマシ油エトキシレート、ソルビタンエステルおよびそれらのエチレンオキシド(EO)との反応生成物、およびEOとプロピレンオキシド(PO)のブロックコポリマーなどの非イオン性界面活性剤が含まれる。界面活性剤は、COC配合物への水の添加に応答して農業用油を乳化させ、それによって油/水エマルジョン(O/W)の形成を可能にする。さらに、界面活性剤は、スプレー溶液の表面張力を低下させる、および/または葉の表面などの表面の濡れを改善するなどの追加の利点を提供し得る。
【0005】
ただし、COCに界面活性剤を含めると、不要な発泡が増加する可能性がある。さらに、ある界面活性剤は、農業用油に不溶性であり得、および/または水を含む農業用組成物を乳化できない場合がある。発泡の増加、農業用油への不溶性、および/または乳化の欠如は、送達の困難および/または農薬などの活性成分の効力の低下をもたらす可能性がある。したがって、界面活性剤は、油溶性、低泡発生、および増強された乳化性を示すことが望ましい場合がある。
【0006】
さらに、加工性/性能を改善するために、界面活性剤が液体状態であることが望ましい場合がある。ただし、すべての界面活性剤が液体であるとは限らない。例えば、米国特許第3,955,401号および米国特許第4,317,940号はそれぞれ、室温で半固体(スラッシュから固体)であるPO-EO-POトリブロック付加物について記述している。
【0007】
さらに、界面活性剤が容易に生分解可能であることが望ましい場合がある。ただし、すべての界面活性剤が容易に生分解可能なわけではない。米国特許第4,925,587号はまた、直鎖脂肪族炭化水素末端を有するジブロックコポリマーを開示している。米国特許第3,955,401号および米国特許第4,317,940号はそれぞれ、コポリマーのPO末端に直鎖脂肪族炭化水素を有するように直鎖開始剤で調製されたPO-EO-POトリブロックコポリマーを記載している。特に、上記の参考文献(米国特許第4,925,587号;米国特許第3,955,401号および米国特許第4,317,940号)中の各界面活性剤は、最終的に界面活性剤上に直鎖炭化水素基を達成するために直鎖開始剤で開始される。直鎖炭化水素基が非常に重要であると認識されている理由は、界面活性剤の分岐が界面活性剤の生分解性に決定的に影響を与えると長い間考えられてきたためである。例えば、米国特許第3,955,401号および米国特許第4,317,940号はそれぞれ、「生成物の生分解性は分岐によって悪影響を受ける」と教示する。したがって、生分解性を達成するために、界面活性剤は、開始剤として直鎖アルコールを使用して調製される。生分解性における分岐の有害な影響は、単一または複数分岐アルコールで開始されたポリマーは有意な分解を示さなかったが、直鎖アルコールおよびイソアルコールを含むエトキシレートでは有意な分解が観察されたと結論付けたエトキシレートポリマーの研究でさらに確認された。(第4回世界界面活性剤会議で発表された、M.T.Muller,M.Siegfried、およびUrs Bauman、“Anaerobic Degradation and Toxicity of Alcohol Ethoxylates in Anaerobic Screening Test Systems”、1996を参照)。参考文献のいずれも、油溶解性、低泡発生、および強化された乳化性を示しながらも容易に生分解性である液体界面活性剤を記載していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
油溶性、低泡発生、および強化された乳化性を示す液体界面活性剤に対する市場の明確なニーズがある。また、油溶性、低泡発生、および強化された乳化性を示しながらも容易に生分解性である液体界面活性剤に対する市場の明確なニーズがある。
【0009】
様々な実施形態において、本開示は、
(a)農業用油と、
(b)以下の構造
【化1】
(式中、mは約3~約7の整数であり、nは約5~約20の整数であり、oは約3~約30の整数であり、Rは直鎖または分岐C4~C18アルキル鎖である)を有する、農業用油相溶性のプロピレンオキシド(PO)でキャップされた液体ポリマー界面活性剤と、を含む農業用組成物を含む。
【0010】
様々な実施形態において、本開示は、
(a)農業用油と、
(b)以下の構造
【化2】
(式中、mは約3~約10の整数であり、nは約5~約20の整数であり、oは約3~約30の整数であり、Rは直鎖または分岐C4~C18アルキル鎖である)を有する、農業用油相溶性のPOでキャップされた液体ポリマー界面活性剤と、
(c)農薬と、を含む、農薬を含む農業用組成物を含む。
【0011】
本明細書に詳述されるように、本開示の農業用油相溶性のPOでキャップされた液体ポリマー界面活性剤は、驚くべきことに、改善された油溶解度、低い泡性能、および増強された乳化性を提供する。すなわち、他の界面活性剤に対する本開示の農業用油相溶性のPOでキャップされた液体ポリマー界面活性剤の利点には、(1)油溶解度の改善、(2)改善された(低い)泡性能、(3)強化された乳化性、(4)液体であることおよび/または(5)容易に生分解されること、が含まれ得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
様々な実施形態において、本開示は、(a)農業用油と、(b)以下の構造
【化3】
(式中、mは約3~約10の整数であり、nは約5~約20の整数であり、oは約3~約30の整数であり、Rは直鎖または分岐C4~C18アルキル鎖である)を有する農業用油相溶性のPOでキャップされた液体ポリマー界面活性剤と、を含む農業用組成物を含む。
【0013】
本明細書で使用される場合、「プロピレンオキシド(PO)でキャップされた」は、PO成分を欠く、または末端ブロックにEOを有するR-PO-EOジブロックコポリマーなどのようにブロックコポリマーの末端ブロックにPOを有さない他のアプローチの他の界面活性剤とは対照的に、R-PO-EO-POトリブロックコポリマーの末端ブロックにおけるプロピレンオキシド成分が存在することを指す。
【0014】
本発明で使用する場合、「1つ(a)」、「1つ(an)」、「その(the)」、「at least one(少なくとも1つ)」、および「one or more(1つ以上)」という用語は、互換的に使用される。「含む(comprise)」および「含む(include)」という用語、ならびにそれらの変形は、これらの用語が明細書および特許請求の範囲に現れる場合に、限定的な意味を有しない。したがって、例えば、「1つ(a)」の物質は、「1つ以上」の物質を意味すると解釈され得、物質を「含む(include)」または「含む(comprise)」組成物は、組成物が、当該物質に加えて、ある物を含むことを意味すると解釈され得る。
【0015】
端点による数値範囲の列挙には、その範囲内に包含されるすべての数値が含まれ、例えば、1~5には1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などが含まれる。
【0016】
本明細書における「粒子径」とは、例えば光散乱技術によって測定された数平均粒子直径を意味する。
【0017】
本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、オリゴマーを含む。
【0018】
本明細書で使用される用語「約」は、量、サイズ、配合、パラメータ、および他の数量および特徴が正確ではなく、正確である必要がないことを意味し、概略値、ならびに/または必要に応じて公差、変換係数、四捨五入、測定誤差など、および当業者に既知の他の要因を反映してより大きいまたはより小さくてもよい。「約」という用語が、値または範囲の端点を説明する際に使用される場合、本開示は、言及される特定の値または端点を含むと理解されるべきである。明細書中の数値または範囲の終点が「約」を記載しているかどうかにかかわらず、数値または範囲の終点は、「約」で修飾されるものと、「約」で修飾されないものと、の2つの実施形態を含むことを意図している。さらに、各範囲の端点は、他の端点に関連して、および他の端点とは独立して、両方重要であることが理解されよう。
【0019】
反対の記載がないか、文脈から示唆されないか、または当該技術分野で慣習的でない限り、すべての部および%は、重量に基づく。
【0020】
この発明の農業用組成物および農薬を含む農業用組成物に使用される農業用油は、農薬用途に好適な、典型的には高純度の水非混和性化合物であり、一般に、単一の脂肪族または芳香族化学構造からなる。農業用油は、本質的に、C~C26またはC20~C26の典型的な炭素鎖長を伴う分岐状または直鎖であってもよい。農業用油は、低臭気、有機および有機金属化合物に対する低い溶解性、生物種に対する低い植物毒性、および低い揮発性を特徴とする。農業用油の市販品の例としては、Aromatic 200、Aromatic 150、メチル化シードオイル(MSO)、Orchex 796、Orchex 692、Sunspray 7N、Sunspray llN、Oleo Branco、Isopar M、Isopar V、100 Neutral、およびExxsol D-130が挙げられる。鉱油などの他の油、例えば植物油、落花生油、キャノーラ油、および綿実油などの作物油、または合成油が許容され得る。
【0021】
様々な実施形態において、以下の構造を有する農業用油相溶性の、POでキャップされた液体ポリマー界面活性剤
【0022】
【化4】
【0023】
(他の可能性の中でもとりわけ、式中、mは約0~約10の整数であり、nは約5~約20の整数であり、oは約3~約30の整数であり、Rは直鎖または分岐C4~C18アルキル鎖である、または、
【0024】
mは約3~約7の整数であり、nは約5~約20の整数であり、oは約3~約30の整数であり、Rは直鎖または分岐C4~C18アルキル鎖である、または、
【0025】
mは約3~約10の整数であり、nは約5~約20の整数であり、oは約3~約30の整数であり、Rは分岐C4~C18アルキル鎖である)。すなわち、m、n、および/またはoの値は、本明細書に詳述されるように変更することができる。
【0026】
例えば、いくつかの実施形態では、mは約0~約10の整数である。約0~約10のすべての個々の値と部分範囲が含まれ、例えば、mは、約1、2、3、4、または5の下限から約10、9、8、7、6、または5の上限までであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、mは、約3~約7の整数、約3~約6の整数、または約3~約5の整数であり得る。いくつかの実施形態では、mは約5に等しくなり得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、nは約5~約20の整数である。約5~約20のすべての個々の値と部分範囲が含まれ、例えば、nは約5、6、9、10、または11の下限から約20、15、14、または10の上限までであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、nは、約3から約9、約6から約9、約9から約14の整数、または約9から約15の整数であり得る。いくつかの実施形態では、nは、約6または9に等しいか、または約14に等しくてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、oは約3~約30の整数である。約3~約30のすべての個々の値と部分範囲が含まれ、例えば、oは、約3、5、10または15の下限から約30、25、20、15、14、または10の上限までであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、oは、約5~約20の整数、約5~約30の整数、約5~約25の整数、約10~約25の整数、または約15~約25の整数である。いくつかの実施形態では、oは、約5、約10、約15、約20、または約25に等しくなり得る。
【0029】
様々な実施形態において、Rは、分岐したC4~C18アルキル鎖または直鎖のC4~C18アルキル鎖であり得る。すなわち、いくつかの実施形態では、Rは分岐したC4~C18アルキル鎖である。しかしながら、いくつかの実施形態において、Rは、直鎖のC4~C18アルキル鎖であり得る。いくつかの実施形態では、Rは、各分岐が2つ以上の炭素の長さを有する分岐アルキルから形成することができる。
【0030】
様々な実施形態において、農業用組成物は、農業用組成物の体積あたり少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%存在する農業用油(a)を有することができる。すなわち、農業用油(a)は、農業用組成物の体積あたり約60重量%から約99重量%の量で存在することができる。同様に、農業用油は、本明細書に記載の農薬を含む農業用組成物の体積あたり約60重量%から約99重量%、少なくとも60%、少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%であり得る。
【0031】
様々な実施形態において、農業用油相溶性の、POでキャップされた液体ポリマー界面活性剤(b)は、農業用組成物の体積あたり約0.5~40.0重量%、約1.0~約20.0重量%、約10.0~約20.0重量%、または15.0~約20.0重量%の量で存在する。すなわち、農業用油相溶性の、POでキャップされた液体ポリマー界面活性剤は、農業用組成物の体積あたり約0.5重量%~約40重量%の量で存在することができる。同様に、農業用油相溶性の、POでキャップされた液体ポリマー界面活性剤は、本明細書に記載の農薬を含む農業用組成物の体積あたり約0.5~40.0重量%、1.0~約20.0重量%、約10.0~約20.0重量%、または約15.0~約20.0重量%であり得る。
【0032】
様々な実施形態において、農業用組成物は農薬を含むことができる。農薬は、他の種類の農薬の中でも、液体農薬または粒子状農薬である可能性がある。例えば、農薬は、工業グレードの粒子状農薬(「technical」)または、例えば、水和剤および分散性顆粒などの配合された粒子状農薬組成物であり得る。工業グレードの粒子状農薬は、活性成分含有量が80~98重量%の範囲であり、室温で固体である。水和剤および分散性顆粒は、活性成分含有量が45重量%~75重量%の範囲であり、典型的な組成は、45~75重量%の農薬、20~50重量%の担体、2~10重量%の分散剤、および2~10重量%の界面活性剤である。水和剤および分散性顆粒は、典型的には、2~10ミクロンの範囲の平均粒径に粉砕されている。
【0033】
農薬の選択は、農薬を含む農業用組成物の品質に関して特に重要ではない。本明細書で使用されてもよい農薬の例には、粒子状の農学的に有効な殺菌剤、除草剤、および殺虫剤、例えば、塩素化ニトリル、トリアゾール、アラルキルトリアゾール、トリアゾールアニリド、ベンズアミド、アルキルベンズアミド、ジフェニルエーテル、ピリジンカルボン酸、クロロアニリン、有機リン酸塩、ホスホン酸グリシン塩、およびそれらの混合物が含まれる。農薬と他の有機または無機の農学的に活性な成分との混合物、例えば、Dithane+Indar、Dithane+クロロタロニル、Dithane+シモキサニル、およびDithane+水酸化銅も含まれる。農薬の追加的な例は、米国特許第6,210,696号に見出すことができる。農薬の混合物が使用されてもよい。
【0034】
本開示の農薬を含む農業用組成物は、
(a)農業用油と、
(b)以下の構造
【化5】
(式中、mは約3~約10の整数であり、nは約5~約20の整数であり、oは約3~約30の整数であり、Rは分岐C4~C18アルキル鎖である)を有する農業用油相溶性のプロピレンオキシド(PO)でキャップされた液体ポリマー界面活性剤と、
(c)農薬と、を含む、農薬を含む農業用組成物である。
【0035】
本開示の農薬を含む農業用組成物は、典型的には、油または油/水/界面活性剤担体の希釈液として圃場に適用される。この開示の農業用組成物および/または農薬を含む農業用組成物は、例えば、消泡剤、安定剤、芳香剤、金属イオン封鎖剤、中和剤、緩衝剤、腐食防止剤、染料、柔軟剤、着臭剤、追加の界面活性剤、および/または界面活性剤補助剤などのその他の配合された農学的添加剤を含有してもよい。濃縮された配合物は、目的の農業用途に応じて、使用時に1~2000倍に希釈されてもよい。適用は、地上または空中散布装置でなされてもよい。
【0036】
典型的な農業用途で使用される本発明の農薬を含む農業用組成物の有効量は、しばしば、例えば、植物の種類、植物の成長段階、環境条件の厳しさ、駆除対象の雑草、昆虫、または真菌病原体、および適用条件に依存する。典型的には、雑草もしくは昆虫からの保護、または病原菌の駆除もしくは排除を必要とする植物は、約1~約40,000ppm、好ましくは約10~約20,000ppmの量の活性成分を提供する、水などの担体で希釈された農薬を含む農業用組成物の量と接触させられる。
【0037】
すなわち、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の農業用組成物および/または農薬を含む農業用組成物は、水を含むことができる。特に、本開示の農業用組成物/農薬を含む農業用組成物は、液体および油溶性であることに加えて、以下の実施例で詳しく説明するように(b)[出願人の農業用油相溶性の、POでキャップされた液体ポリマー界面活性剤]を含まない農業用組成物と比較して、より低い発泡および改善されたエマルジョン安定性も示す。
【0038】
具体的な実施形態
材料
【0039】
2EH/5PO/9EOおよび2EH/5PO/14EOは、一般構造R-(PO)-(EO)で、以下に説明するように得られるアルコールアルコキシル化ブロックコポリマーであり、それぞれ式中、Rは2-エチルヘキサノール、m=5、n=9または14である。
【0040】
TERGITOL(商標)XDは、Sigma-Aldrichから入手可能なブタノール-PO/EOコポリマーである。
【0041】
DOWFAX(商標)100N50は、The DOW Chemical Companyから入手可能なブタノール-PO/EOコポリマーである。
【0042】
ダイズ油はDuwestから入手した。
【0043】
MSOはStepanからSTEPOSOL(登録商標)MEの商品名で入手した。
【0044】
実施例1~7(WE1~7)および比較例1~4(CE1~4)
【0045】
CE1~4の場合、上記の供給源から4つの異なる競合的な界面活性剤を調達し、本明細書に詳述した試験を実施した。具体的には、CE1は式2EH/5PO/9EOの界面活性剤に対応し、CE2は式2EH/5PO/14EOの界面活性剤に対応し、CE3は商品名TERGITOL(商標)XDとして入手可能な界面活性剤に対応し、CE4は、商品名DOWFAX(商標)100N50として入手可能な界面活性剤に対応する。
【0046】
WE1~7の場合、表1に記載されている構造(I)の7つの異なる界面活性剤を、米国特許出願第2017/028,3742A1(その全内容が本明細書に組み込まれる)に記載されている手順に従って、次の手順を使用して以下のように調製した。
【0047】
窒素でパージされた9リットルの反応器に780.0グラムの2-エチルヘキサノールと10.81グラムの85%水酸化カリウムペレットを入れる。100ミリメートル水銀を達成するために、2時間かけて徐々に反応器に真空を適用する。反応器から15.8グラムの混合物を取り出し、カールフィッシャー滴定によって水分含有量を測定する(411重量百万分率(ppm))。反応器を乾燥窒素で7回加圧および排気して大気中の酸素を除去し、窒素で25℃で110~139キロパスカル(kPa)に加圧する。130℃まで攪拌しながら反応器の内容物を加熱する。次に、1660グラムのプロピレンオキシドを4時間かけて計り入れる。プロピレンオキシドの供給が完了した後、さらに2時間反応器の内容物を130℃で攪拌する。その後60℃に冷却する。反応器の内容物142.9グラムを取り除く。反応器の内容物を130℃に加熱する。そして、2070グラムのエチレンオキシドを4時間かけて反応器に計り入れる。エチレンオキシドの供給が完了したら、反応器の内容物を2時間130℃で攪拌し、次いで60℃に冷却する。反応器の内容物142.9グラムを取り除き、酢酸で中和してpHを4~8(10%水溶液中)とし、CE1界面活性剤を得る。反応器の内容物を130℃に加熱する。そして、1475グラムのプロピレンオキシドを4時間かけて計り入れ、130℃でさらに2時間攪拌を続ける。反応器の内容物を60℃に冷却する。
【0048】
反応器の内容物158.2グラムを取り出し、酢酸で中和してpHを4~8(10%水溶液中)として、WE1界面活性剤を得る。
【0049】
反応器の内容物を130℃に加熱して戻し、1170gのプロピレンオキシドを4時間かけて反応器に計り入れる。さらに2時間130℃で攪拌を続け、その後60℃に冷却する。反応器の内容物118.7グラムを取り除き、酢酸の10%水溶液でpH4~8に中和して、WE2界面活性剤を得る。
【0050】
反応器の内容物を130℃に加熱して戻し、970グラムのプロピレンオキシドを4時間かけて計り入れ、130℃でさらに2時間攪拌し続ける。反応器の内容物を60℃に冷却する。反応器の内容物を酢酸の10%水溶液で中和してpHを4~8とし、WE3界面活性剤を得る。
【0051】
POおよびEOの供給量をこれらの特定の界面活性剤の適切なモル比に調整して、同様の方法でCE2およびWE4~7の界面活性剤を調製する。
【0052】
CE1~4およびWE0~7の界面活性剤の試験は、本明細書に詳述されているように実施された。CE1~4およびWE1~7の各界面活性剤の特性を表1、2、および3に示す。WE1~7の各界面活性剤は構造(I)の構造を有し、それぞれの構造は、各界面活性剤のm、n、およびzの値を指定することによって与えられる。
【0053】
曇り点は、ASTMD2024-09に準拠したFP90セントラルプロセッサとFP81測定セルを備えたMettler Toledo FP900 ThermalSystemを使用して、脱イオン水中の界面活性剤の1または10重量%(wt%)溶液(表1に示す)で決定した。
【0054】
ロスマイル(界面活性剤が泡を生成および/または維持する傾向)は、ロスマイルテストプロトコルASTM指定D-1173-53(0.1%、70°F)に従って測定される。
【0055】
流動点は、Instrumentation Scientifique de Laboratoireから入手可能な自動MPP5Gs機器を使用して測定される。この機器で得られた流動点測定値は、ASTMD-97「石油製品の流動点の標準試験方法」と相関関係がある。
【0056】
界面活性剤の表面張力は、0.1重量%の界面活性剤水溶液と、25℃でWilhelmy白金プレートを取り付けたKrussD12張力計を使用して決定する。溶液は、界面活性剤を脱イオン水に溶解することによって作られる。溶液の製造に使用される脱イオン水は、1メートルあたり72~73ミリニュートンである。結果は、標準偏差が0.1mN/m未満の5回の繰り返し試験値の平均として報告される。
【0057】
溶解度は、3.6gの油と0.4gの界面活性剤(WE1-7およびCE1-3から)を20mLのホウケイ酸ガラス容器に加えることによって各界面活性剤について決定された。次に、ガラス容器に蓋をして、1分間手で振とうした。混合物を室温で1日、1週間および2ヶ月後に分析し、相分離または濁りについて各時間間隔で視覚的に観察した。室温で2ヶ月後、試料を-5℃で14日間保存し、試料の相分離を視覚的に観察した。-5℃で14日後、試料を室温で14日間保持し、相分離または濁りについて視覚的に観察した。表2の界面活性剤(不溶性、混和性)の溶解度は、室温で14日後の目視観察に基づいて決定された。一実施形態では、油と界面活性剤を混合した後、活性成分(農薬)ならびに何らかの任意の成分、例えば、柔軟剤、分散剤、および乳化剤を、農薬(油分散液)を含む均一な農業用組成物が形成されるまで剪断条件下で容器に添加することができる。
【0058】
泡の高さ(FH)とエマルジョンの安定性(ES)は、0.2gの農業用油溶液と界面活性剤[90重量%の農業用油+10重量%の界面活性剤]を25mLのガラス容器内で合わせて決定した。25mLのガラス容器に19.8gの水を加え、容器を密閉した。ガラス容器を1分間手で振とうした。エマルジョンの総量は約20mLであった(これはガラス容器の底からの溶液の高さ約4.2センチメートル(cm)に相当する)。エマルジョンの写真は、25℃で時間0(1分間の振とう後)に撮影され、30分後に再度撮影された。泡の高さ(溶液の液面から離れるように直交して伸びる泡の距離)は、1分間の振とう後の目視検査および測定に基づいて決定された。複数の光散乱Turbiscanデバイス(Formulaction、France)を使用して、エマルジョンの安定性を25℃で30分間モニターした。光透過率を使用して、エマルジョンの安定性を分析した。表2の界面活性剤(エマルジョン、半透明)のエマルジョン安定性は、最初は時間(0)で、そして30分の終わりに、複数の光散乱Turbiscanデバイスで決定された。
【0059】
経済協力開発機構(OECD)の試験方法301Fに従って、WE1~7の生分解性を測定した。
【0060】
【表1】
a.脱イオン(D.I.)水中1.0重量%。
b.D.I.水中10.0重量%。
c.D.I.水中1.0重量%
【0061】
【表2】
*NMは、測定しなかったことを意味する。ただし、zのみが変化する実施例(WE2、WE5、およびWE7)の場合、生分解性のNM値は、z値が高い類似の界面活性剤とz値が低い類似の界面活性剤の値の間にあると予想される。
【0062】
【表3】
【0063】
液体界面活性剤:WE1~7の各界面活性剤は、室温および周囲大気圧で液体であり、WE1~7の各界面活性剤は、室温より低い流動点(約23℃未満の流動点)を有することが証明されている。具体的には、表1に示すように、WE1、WE2、WE3、WE4、WE5、WE6、およびWE7の界面活性剤の流動点はそれぞれ-18℃、-15℃、-18℃、-3℃、3℃、3℃、および3℃であった。すなわち、各界面活性剤は、室温より少なくとも20度低い流動温度を有し、WE1~7の界面活性剤が室温で液体状態のままであることを保証する。界面活性剤を液体状態にすることで、室温で半固体状態の界面活性剤などの他の界面活性剤と比較して、加工性を改善し、油溶性などを改善することができる。
【0064】
溶解性、泡の高さ、およびエマルジョンの安定性:
【0065】
CE3およびCE4は、従来のPOEOブロックコポリマーと見なされているブタノール-POEOコポリマーTERGITOL(商標)XDおよびDOWFAX(商標)100N50は、農業用油と相溶性ではない(混和性がない)ことを示している。つまり、表2に示されているように、TERGITOL(商標)XDおよびDOWFAX(商標)100N50は両方ともダイズ油および/またはMSOに不溶性である。同様に、CE1およびCE2は、他のPO/EOコポリマーがダイズ油および/またはMSOの少なくとも1つに不溶性であることを示している。対照的に、また驚くべきことに、WE1~7のそれぞれは農業用油に可溶である。つまり、表2に示すように、WE1~7の界面活性剤はそれぞれダイズ油とMSOの両方に溶解する。
【0066】
さらに、油溶性のWE1~7も発泡が最小限である。たとえば、各WE1~7は、ダイズ油で0.7cm未満の泡を有し、MSOで0.6cm未満の泡を有する。
【0067】
さらに、油溶性であるWE1~7は、エマルジョンの安定性も改善されている。たとえば、WE3、6、および7は、半透明のCE1~3(ダイズ油でエマルジョンを形成しない)と比較して、ダイズ油中で安定した白色エマルジョンを示す。本明細書で使用する場合、表2に「エマルジョン」として記載されているエマルジョン安定性を示すことは、溶液(例えば、ダイズ油の場合はWE3およびWE6~7)が1.0%以下のΔ透過(0.4cmで30分後)を有することを示し(表3に示す)、「半透明」であると示された溶液(例えば、ダイズ油の場合はCE1~1およびWE1~2、4~5)は、1.0秒を超えるΔ透過を示した(表3に示す)。
【0068】
生分解性:WE1~7の各界面活性剤は、80%以上の生分解性値を示す。60%の値は、試験方法では「容易に生分解性」と見なされる。したがって、WE1~7の各界面活性剤は容易に生分解性であると見なされる。