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特許7600148周期構造体に、具体的には歯部に歯車形削りする方法およびそのために設計された形削り盤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】周期構造体に、具体的には歯部に歯車形削りする方法およびそのために設計された形削り盤
(51)【国際特許分類】
   B23F 5/16 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
B23F5/16
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021571586
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 EP2020065428
(87)【国際公開番号】W WO2020254114
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】102019004299.9
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500120211
【氏名又は名称】グリーソン - プァウター マシネンファブリク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カート クラインバッハ
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-051472(JP,A)
【文献】特開2012-218128(JP,A)
【文献】特開2004-154921(JP,A)
【文献】特開平10-015732(JP,A)
【文献】特開昭59-024915(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0081163(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1820895(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00-23/12
B23Q 15/00-15/28
G05B 19/18-19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期構造体である加工対象物上の歯部(2)に歯車形削りする方法であって、前記方法において、その回転軸(C2)を中心に連続的に回転する前記加工対象物が、その回転軸(C8)を中心に回転する歯付き形削り工具(8)との材料除去機械加工係合状態に入り、前記加工対象物が前記歯付き形削り工具(8)と転がり接触し、加工ストローク(工具経路A-B)後、前記形削り工具が、持ち上げ方向(A2)に前記加工対象物から上げ外され(工具経路B-C)、続く戻りストローク(工具経路C-D)後、前記持ち上がり状態の前記形削り工具が、次の加工ストロークに向けて、再び前記加工対象物に戻され(工具経路D-A)、
前記加工対象物の入って来る逃げ面を背にして、前記持ち上げ方向(A2)にわたって走る前記形削り工具の撓み動(δC8/δAZ)が、前記戻りストローク(工具経路C-D)時に前記転がり接触に併発することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記撓み動が、前記形削り工具の追加回転によってもたらされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記撓み動が、前記戻りストローク(工具経路C-D)の大部分にわたって行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記撓み動が、ずれ、具体的には、前記転がり接触に対する前記歯付き形削り工具(8)の歯部の基準の回転角の前記ずれ(ΔC8)に対して制御され、前記ずれが、前記戻りストロークにおいて着実に増大する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
最大限のずれが、前記戻りストロークの開始時(C)よりも終了時(D)にある、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記撓み動が、前記加工対象物上の前記歯部(2)と前記形削り工具(8)との最短距離の比で制御され、前記比が、反対側の加工対象物逃げ面における比に対する前記加工対象物の入って来る逃げ面における区間[1/8;8]である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
持ち上げ量が、第1の持ち上げ基準よりも低く設定され、前記設定時に、前記歯付き形削り工具(8)が、前記撓み動を伴わずに戻りストロークストリップに対して安全距離の外側にある、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記持ち上げ方向(A2)を最小限に抑えることに関して、前記持ち上げ方向(A2)と前記撓み動(δC8/δAZ)とが互いに協調する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工具経路の軸方向成分への前記持ち上げ方向(A2)の切り替わりが曲げ圧力を伴わずに起こる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
複数回のストロークが、前記加工対象物上の前記歯部(2)の区分ごとに行われる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記戻りストロークが、前記加工ストロークよりも加速される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
戻り動が遅らされる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
衝突リスクがある場合に、持ち上げを引き起こす機械軸方向にわたって走る併発動によって、かつ/または芯ずれ機械加工によって、持ち上げ時には有効な持ち上げ方向がすでに変わっている、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
クランクドライブ付きの形削りヘッドの場合、前記工具経路(A-B-C-D)も持ち上げカム(24)によって決定される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
歯車形削り盤(100)のコントローラ(99)において実装されると、前記歯車形削り盤を、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を行うように制御する、制御プログラム。
【請求項16】
歯車形削り盤(100)であって、クランクドライブ付きの形削りヘッドに持ち上げカム(24)を備え、請求項14に記載の方法を行うために、少なくとも1つの作動モードにおいて前記歯車形削り盤を制御するコントローラ(99)を備える、歯車形削り盤(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周期構造体に、具体的には加工対象物上の歯部に歯車形削りする方法に関し、この方法では、その回転軸を中心に連続的に回転する加工対象物が、加工対象物回転との転がり接触時にその回転軸を中心に回転する歯付き形削り工具との材料除去機械加工係合状態に入り、加工ストローク後、形削り工具が持ち上げ方向に加工対象物から上げ外され、続く戻りストローク後に、持ち上がり状態の形削り工具が、次の加工ストロークに向けてまた加工対象物に戻されるとともに、この目的に合わせて制御された歯車形削り盤に戻される。
【背景技術】
【0002】
歯車形削りは、歯部を作り出す技術であり、この技術は、長きにわたって知られている。これは、この工具の線形振動により主要な切削動が実装される、切削方法である。加工対象材の機械加工除去は、いわゆる加工ストロークでしか行われず、戻りストロークは、戻りストロークストリップを避けるために持ち上がり状態で起こる。歯車形削りの方法原理は、例えば、Thomas Bauschら、「Innovative Zahnradproduktion」、第3版、281頁の図7.1-1に記載されており、この文献は、それ以外では、その基本技術に関して参照される。例えば、転がり接触は、転がり係合に向けて互いに協調する工具と加工対象物との回転動に過ぎず、螺旋歯部の機械加工の場合、いわゆるネジ誘導が必要になり、この誘導は、軸方向動(電子ネジ誘導または単に電子傾斜)の間、転がり機械加工係合を維持するために、ストローク動に適合された工具の追加回転を介してCNC制御方式で実装され得る。本出願の目的として、螺旋歯部に機械加工するのに必要とされるネジ誘導は、転がり接触の一環である。
【0003】
歯車ホブ加工などの他の方法に優る歯車形削りの重要な利点は、歯車形削りが、内歯部などの特定の加工対象物形状に対しても、その歯車ホブ加工がほとんどまたは全く適していない歯車に肩部が接続された加工対象物に対しても、より広く使用され得ることである。
【0004】
加工ストロークと戻りストロークとの間で、工具は、通常、工具歯が工具の歯の隙間から半径方向に完全に外れる程度までは上げ外されないが、戻りストローク(戻りストロークストリップ)時に衝突を回避するのに十分な半径方向持ち上げ距離で上げ外される。
【0005】
典型的な歯車形削り盤では、持ち上げ方向は、例えば、持ち上げカムによってもたらされる持ち上げ方向に相当し、通常、歯車形削り盤の半径方向のインフィード軸にも相当する。衝突のリスクに関して決定的である歯車、特に内歯部の場合、有効な持ち上げ方向(ストローク方向に直交する平面における持ち上げ角度に相当する)は、工具経路が設定接線方向ずれを伴う戻りストロークで起こるように、半径方向機械軸のカラム側ずれまたは回転による接線方向持ち上げ成分を用いて持ち上げを引き起こし、新たな持ち上げベクトル(持ち上げ方向)を生み出すことによって、変えることもできる。これは、EP2368660(A1)に開示されている。
【0006】
US2010/0290852(A1)も歯車形削りに関しており、連続工具スピンドル回転を加工対象物での干渉問題の原因とし、非連続(時間刻み式)工具回転を提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特にこの方法の全体的な概念への衝突のない工具経路の統合に関して、冒頭で述べた類の方法をさらに改善するという目的に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
プロセスエンジニアリングの観点から、この目的は、冒頭で述べた類の方法の展開によって達成され、この方法は、加工対象物の入って来る逃げ面を背にして持ち上げ方向にわたって走る形削り工具の撓み動が、戻りストローク時に転がり接触に併発することを実質的に特徴としている。本発明によれば、特に、衝突の最大リスクが、未切削の材料が相対的に見て、最大量でまだ存在する、戻りストロークの終了時の移行の領域で起こるという知識を活かすことによって、形削り工具の戻りストローク動が修正される。撓み動は、必然的に、他の反対側の逃げ面に対する接近動であり、したがって、加工ストローク時に形削りホイール歯が侵入する歯間の他の逃げ面の破壊的な影響がそれほどない、戻りストロークに一致するように起こる。
【0009】
好ましい実施形態において、撓み動が形削り工具の追加回転によってもたらされることを条件とする。これは、別途設けられる如何なる追加機械軸も不要にすることができ、加工対象物回転も不変のままにすることができることを意味する。工具回転では、併発転がり接触(場合によっては、螺旋歯部を切削する際の電子傾斜を含む)と、追加回転によって引き起こされる撓み動とが組み合わされる。場合によっては電子傾斜を伴う転がり接触しか回転させない基準システムに関して、工具回転位置基準(例えば、加工形削りホイール歯の最低点)は、ストローク方向にわたって、また持ち上げ方向にわたって回転移動する。
【0010】
この方法のさらに好ましい実施形態では、撓み動は、戻りストロークの大部分にわたって行われる。このように、使用可能な期間が長くなり、反対側の逃げ面への破壊的な接近がより高い戻りストロークレベルに、適宜、移行され得る。
【0011】
この絡みでは、撓み動が、ずれ、具体的には、戻りストローク時に着実に増大する回転角のずれに対して、転がり接触に関して制御されることを条件とすることが特に好ましい。したがって、このようなずれは、戻りストロークの開始時にはまだ最大限に使用可能ではなく、戻りストロークでしか増大しない。
【0012】
この絡みでは、最大限のずれが戻りストロークの開始時よりも終了時にあり、好ましくはストロークの中間よりも終わり近くにあり、特に、最大限のずれが、戻りストロークの終了時にあるとすることができるか、または、線形振動と持ち上げとの任意選択の位相シフトに応じて、加工形削り歯の工具最下点が上歯部縁の真上のストローク方向において軸方向に位置する移行時にあるとすることができることを条件とすることが特に好ましい。
【0013】
この方法のさらに好ましい実施形態において、撓み動が加工対象物と形削り工具との最短距離の比で制御され、この比は、反対側の逃げ面における比に対する入って来る逃げ面における区間[1/8;8]、好ましくは[1/5;5]、特に区間[1/3;3]である。簡単に言えば、両方の逃げ面での衝突リスクは、このように一定の対称性の下に保たれる。
【0014】
本発明による方法によって提供される設計選択肢のさらなる利点は、そうでなければ必要とされる持ち上げ動の持ち上げ量の減少、具体的には、機械軸によって事前決定されるその半径方向成分の減少にある。したがって、持ち上げ量が第1の持ち上げ基準よりも低く設定され、その設定時に、形削り工具が、撓み動を伴わずに戻りストロークストリップに対して安全距離の外側にあることを条件とすることが好ましい。ここでは、0.05程度の標準値が安全マージンとして適用される。このようにして、形削り盤は低振動設計となり得る。
【0015】
さらに、持ち上げ量を最小限に抑えるには、持ち上げ動と撓み動とが互いに協調することを条件とするのが好ましい場合がある。これは、例えば、戻りストローク時の動きの衝突を示す侵入曲線の事前のシミュレーションを通して、具体的には繰り返しの確認を通して、見ることができ、最適化することができる。このために、慣例の安全マージンが守られる。
【0016】
例えば、持ち上げ量は、R2+p(R1ーR2)より広い範囲、またR2+q(R1ーR2)より狭い範囲にある可能性があり、ここで、R1は、第1の持ち上げ基準であり、R2は、第2の持ち上げ基準であり、この基準では、撓み動にも関わらず、戻りストロークストリップが生じるだけであり、pは、≧0.1、好ましくは≧0.2であり、qは、<0.9、好ましくは<0.8、特に<0.7である。
【0017】
本発明による方法のさらなる利点は、工具経路で起こる加速度に関しても、本発明による衝突リスク低減による、より広い設計選択肢である。したがって、工具経路の軸方向成分への持ち上げ成分の切り替わりが、曲率の揺れを伴わずに起こることを条件とするのが好ましい。
【0018】
クランクドライブの電子CNC制御を使用して、ストロークサイクルの合計時間を短縮するために、戻りストロークを加工ストロークよりも加速させることもでき、転がり接触は、加速された戻りストロークに応じて適合される。
【0019】
加工対象物歯部の区分ごとに複数回のストロークが起こされ、すなわち、加工対象物回転が、ストローク動よりも比較的ゆっくりと起こるのが好ましい。加工対象物回転が合計で1区分だけさらに回転する前に、少なくとも4回、より好ましくは少なくとも6回、特に少なくとも8回のストロークが行われるのが好ましい。
【0020】
さらに好ましい実施形態において、戻り動が、持ち上げ動または最小限のリセットより遅れて、例えば、必要な上部オーバーフローよりも広いオーバーフローによって起こる。これにより、次の加工ストロークの前に回復させるのに必要である撓み動の反転に、または上死点を通過することによって、すでに高加速度に晒されている戻り動の増大したずれの低減に、より多くの時間が残り、それにより、正しいつながり状態がよりスムーズに、満足のいく精度で達成される。
【0021】
持ち上げ動時にすでに衝突リスクがある場合は、持ち上げを引き起こす機械軸方向にわたって走る併発動を用いて、かつ/または芯ずれ機械加工(カラム側ずれ)を用いて、好ましくは追加工具回転も用いて、持ち上げ時の有効な持ち上げ方向を変えるために条件を設けることもできる。ただし、この場合、増大した総ずれのうち大部分の成分が戻りストロークまで増大しないのが好ましい。
【0022】
原則として、本発明は、周期的工具経路の様々な機械側実装形態に適しているが、持ち上げカムがクランクドライブ付きの形削りヘッドに使用される変形形態で使用されるのが好ましい。
【0023】
これまで述べた態様のうちの1つによる方法の実行をもたらす制御プログラムもまた、この歯車形削り盤を、これまで述べた態様のうちの1つによる方法を実行する際に制御するコントローラを備えた歯車形削り盤と同様に、本発明による保護下に置かれる。本発明による歯車形削り盤の利点は、本発明による方法の利点に起因する。
【0024】
形削り工具としてディスク切削ホイールが使用されるのが好ましいが、加工対象物の構成に応じて、ベル切削ホイール、シャンク切削ホイール、または中空ベル切削ホイールも使用され得る。
【0025】
インフィード戦略に関して、本発明は、何ら特定の制約を受けるものではなく、例えば、ローラー送りによるラジアルインフィード、またはデグレッシブラジアルインフィードによるスパイラル方式、または他の類のインフィードが選択されてもよい。機械技術の観点から、電子傾斜誘導、また好ましくは撓み動は、CNC制御式ダイレクトドライブを用いて実装される。
【0026】
本発明のさらなる特徴、細目、および利点は、添付の図面を参照しながら以下の説明に見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】歯車形削り時の工具経路を示す。
図2】持ち上げカムプロファイルを概略的に示す。
図3】クランクドライブおよび持ち上げカムを備えた形削りヘッドの部分的に切れた断面図である。
図4】(a)は、時間関数としてのストローク位置を示し、(b)は、時間関数としての回転位置を示し、(c)は、回転位置とストローク位置との関係を示す。
図5】回転位置/ストローク位置図において撓み動を大きく誇張した表現を示す。
図6】歯車形削り盤とそのNC機械軸の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、クランクドライブ付きの形削りヘッドが使用され、持ち上げカムによって持ち上げ動が引き起こされ、持ち上げカムの動きがストロークスピンドルの動きにつながっている、本発明の実施形態における形削りストローク時の工具経路を示す。工具経路は、ストローク方向と持ち上げ方向とにまたがる平面への投影で示され、より正確には、形削りホイール8の加工歯の先端4がストローク全体にわたって移動する経路を表す。
【0029】
工具経路は、A-B、B-C、C-D、およびD-Aの4つの区画を通って走り、工具は、加工ストロークA-Bのローラー接合歯部2に当接するように位置付けられている。下部持ち上げの領域(B-C)では、工具は、持ち上げ位置に引き戻され、上部持ち上げ(D-A)では、当接状態になるように戻されるか位置付けられる。戻りストローク(C-D)は、工具の持ち上がり状態で起こる。
【0030】
カムの持ち上げ領域によって引き起こされる、歯部の上下の形削りストロークのオーバーフロー経路を、図1にOUBおよびOLBで示し、研磨工程時に、切削ホイールが接地した状態で螺旋歯部を形削る際に機械加工逃げ角により生じる、形削り工具によって決まる追加オーバーフロー経路を、図1にOLCおよびOLBで示す。このように、いわゆる切削長SCutは、加工対象物歯部2の歯部幅b2と形削りホイール8の上下のオーバーフローとの和であるが、図1から分かるように、持ち上げ動B-Cの軸方向長は、下の持ち上げのオーバーフローに起因して与えられ、戻り動の軸方向延びは、上の持ち上げのオーバーフローに起因して与えられる。図1から分かるように、全体のストローク長SstKは、持ち上の上下オーバーフローと切削長Scutとの和である。
【0031】
図2には、図1の工具経路に関連している持ち上げカムのプロファイルを概略的に示す(実際には、A、B、C、およびDの移行は、滑らかな動きになるように設計されている)。持ち上げカムの一定の半径rcamは、切削領域でも一定領域でも認めることができるが、戻りストローク領域では半径が小さくなる。ただし、戻りストロークは、直線動に限定されるものではない。
【0032】
図1の戻りストローク領域C-Dの工具経路は、この実施形態では、クランクドライブ付き形削りヘッドの場合の持ち上げが、スピンドルガイドの傾斜動によって起こるので、加工ストロークと平行に走るのではなく、斜めに走る。これは、形削りヘッドを示す図3で良く分かる。図3では、形削りヘッドの架台を20、接続ロッドを23、枢動点を21、スピンドルガイドを22で示す。スピンドルガイドは、切削時に、加圧ローラー26と接触している持ち上げカム24によって前方に押され、戻りストローク時に取り残される。この傾きの結果として、工具の持ち上げ量がストローク位置によって決まり、カムにおける持ち上げに対する切削ホイールにおける持ち上げ量の比は、上死点OTと下死点UTとの間のストロークの中心Mからストロークの中心に対するストローク位置までの距離と、持ち上げカムの回転中心から枢動点21までの軸方向距離の差からの比に等しい。このように、持ち上げ量は、形削りヘッドの選択された設計によって影響を受ける可能性がある。
【0033】
これまでに説明した例は、主に外歯部の機械加工に使用されるが、本発明は、内歯部の機械加工にも関するものである。このため、当業者には分かっているように、主カラムに面する側の内歯部を機械加工する場合、上記の持ち上げカムとは反対方向に持ち上げが起こる内部カムが使用される。ただし、代わりに、内歯部を主カラムと反対の側で機械加工することもでき、外歯部と同じ条件を適用可能である。また、主カラムに面する側の外部持ち上げカムで内歯部を押すと、ストロークスピンドルと持ち上げカム回転軸とのつながりを逆にすることにより、持ち上げカムの戻りストローク領域で切削が起こるようにすることも可能である。
【0034】
持ち上げカムは、以前はクランクドライブ付き形削りヘッドに使用されていたが、本発明は、油圧形削りヘッドなどの様々な類の形削りヘッドにも使用することができ、この場合、主カラム全体が、持ち上げ時に半径方向に引っ込められ、それにより、持ち上げ量を自由に選択することができる。
【0035】
以下では、併発撓み動を、図4および図5を参照しながら実施形態で示し、この撓み動は、この実施形態では、戻りストロークCーD時のストローク位置δAZの変化の関数として、形削り工具8の追加回転δC8によって実装される。
【0036】
この目的で、図1の連続的に通過される工具経路の軸方向投影に相当する、ストローク動AZを時間関数として、図4aに単独で示す。周期的に繰り返す形削りストロークを確認することができる。下の図4bでは、形削りホイールの回転位置C8が記録され、この回転位置C8は、例えば、ロータリエンコーダによって決定され、記録は、転がり接触時に取られる。図4bに示す曲線は、線形上がりの併発の結果であり、この曲線は、想定の真っ直ぐな歯部との転がり接触の併発を再現し、それにより、冒頭で説明したような、形削りストロークの周波数(区分当たり複数回ストローク)よりも遅く、電子傾斜によって併発する、加工対象物回転への工具回転のつながりを再現する。これは、ストローク軸の周波数に適合されている、図4bにおける振動成分に表れている。加工ストロークA-Bでは、工具回転を追跡することで傾斜が補正され、戻りストロークC-Dでは、次の加工ストロークで再び正しい転がり接触になるように、傾斜を再び元に戻す必要がある。
【0037】
図4cでは、ストローク動と回転位置とを互いにプロットする。図4bの転がり接触の線形成分がないと、戻りストロークと戻りストロークとで反対方向にわたっている線は1本だけになり、図4bの転がり接触の線形成分に起因して、図4cに示す関係が生じ、この関係では、軌道が歪んでおり、連続するストローク時にC8位置を変えることによる歪みに起因して、軌道がアコーディオンのように分岐する。
【0038】
この図示の動きに併発する追加量ΔC8は、図4では分からないために図5で一回の戻りストロークに対して大幅に誇張して示される電子傾斜よりもかなり小さい(実際には、通常の用途では、工具8のピッチ円上での30μm程度の変化は、C8軸の0.02°の回転位置差に相当する)。図5において、直線UT-OTは、戻りストローク時のストロークと工具回転との関係を示し、直線から外れた大きく誇張された曲線経路は、ストローク動の関数δC8/δAZとして、追加回転に起因して、回転位置が直線に対して変化することを示す。戻りストロークの領域では、同じストローク動位置の場合、回転位置が、上部加工対象物縁の近くで最大限に達するまで、直線経路に対して着実に増加し、上部オーバーフローの領域では、追加回転によりそれまで生じたずれが、追加回転の反転によりゼロにリセットされる、ことが分かる。
【0039】
特に図5から分かるように、この追加回転角ずれは、戻りストロークでゆっくりと増大するに過ぎないので、いずれの場合も、上部加工対象物縁の領域よりも下部加工対象物縁の領域で、生じるずれは小さくなる。このように、加工対象物歯部の入って来る逃げ面の戻りストロークで撓みが起こるが、突然最大限の撓み位置に達することはないため、特に加工対象物歯部2の下部歯縁に近い領域で、反対側の逃げ面への衝突距離は、短いままである。すでに上で説明したように、これにより、全体的に低い(半径方向)持ち上げ量に合わせた設計が可能になり、すなわち、図1の加工ストローク経路と戻りストローク経路との間の距離が短くなり、これにより歯車形削り盤の低振動設計時の設計選択肢が可能になる。
【0040】
この目的で使用され得る歯車形削り盤の機械軸を、歯車形削り盤100の機械軸のCNC制御用のコントローラ99を備えた例示的な歯車形削り盤100について、図6を参照しながら再び示す。
【0041】
図6に示す歯車形削り盤100の標準NC軸は、持ち上げカム付きの歯車形削り盤100の好ましい実施形態の場合、インフィードに使用される半径方向軸X、ストローク位置用の軸Z、加工対象物回転用の軸C、工具回転用の軸C2、形削りスピンドルのストローク動用の軸AZ、およびカム回転/持ち上げ用の軸A2である。また、ストローク長調整用の軸Z2、調整式カラム傾斜用の軸B、およびカラム側ずれ用の接線方向軸YなどのさらなるNC軸が、芯ずれ歯車形削りを行うことができるように、個別でも組合せでも設けられ得る。回転軸C8のダイレクトドライブ70も、形削りヘッド上に示す。
【0042】
また、本発明は、図に基づいて示す実施形態に限定されるものではない。そうではなく、上記の説明および以下の特許請求の範囲の個々の特徴は、その様々な実施形態において本発明を実装するのに、個別にまた組み合わせで不可欠であり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6