(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】インサート適合器、及び、インサート適合器を備える旋削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/16 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
B23B27/16 A
(21)【出願番号】P 2021572676
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 IL2020050811
(87)【国際公開番号】W WO2021019528
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-06-29
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ラボウ,ラフィ
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第201419271(CN,Y)
【文献】欧州特許出願公開第01529612(EP,A1)
【文献】特開2001-347404(JP,A)
【文献】特開2001-157902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00 - 27/24
B23C 5/00 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート・ポケットのためのインサート適合器であって、
前記インサート適合器は、
対向する適合器上面及び適合器
底面と、
対向するインサート当接面及びポケット当接面を備える適合器外周面であって、前記適合器外周面は、前記上面及び前記底面を接続する、適合器外周面と、
前記上面と前記底面とを二等分する仮想中央平面と、を備え、
前記インサート当接面、前記ポケット当接面及び前記適合器底面の1つは、磁力を加えるように構成した第1の磁気面を備え、
前記第1の磁気面は、第1の磁石用凹部と共に形成されることによって前記磁力をもたらすように構成され、
前記インサート適合器は、前記第1の磁石用凹部を占有する第1の磁石を更に備え、
前記インサート当接面は、少なくとも1つの当接副面突出部を備え、
前記インサート適合器は、第1の脚部を備え、
前記インサート適合器の上面図において、前記第1の脚部は、まっすぐであり、
前記少なくとも1つの当接副面突出部は、当接逃げ凹部によって離間する少なくとも2つの当接副面突出部である、インサート適合器。
【請求項2】
第2の脚部を更に備え、
前記インサート適合器の上面図において、前記第2の脚部は、まっすぐであり、前記第1の脚部と非平行であり、
前記第2の脚部は、当接逃げ凹部によって離間する少なくとも2つの当接副面突出部を備える、請求項1に記載のインサート適合器。
【請求項3】
前記第1の磁気面は、第2の磁石用凹部と共に更に形成され、
前記インサート適合器は、前記第2の磁石用凹部を占有する第2の磁石を更に備える、請求項1に記載のインサート適合器。
【請求項4】
前記インサート適合器は、第1の脚部を備え、
前記インサート適合器の上面図において、前記第1の脚部はまっすぐであり、
前記第1の磁石凹部及び前記第2の磁石凹部の両方は、前記第1の脚部内に位置する、請求項3に記載のインサート適合器。
【請求項5】
前記第1の磁石は、前記第1の磁石の最外面が前記第1の磁気面と面一であるか又は前記第1の磁気面から前記適合器の内側に後退するように、前記インサート適合器内に完全に埋め込まれる、請求項1~
4の何れか一項に記載のインサート適合器。
【請求項6】
前記第1の磁石用凹部は、前記上面よりも前記底面に近い、請求項1~
5の何れか一項に記載のインサート適合器。
【請求項7】
前記第1の磁気面を備える面とは異なる、前記インサート当接面、前記ポケット当接面及び適合器底面の1つは、磁力を加えるように構成した第2の磁気面を備える、請求項1~
6の何れか一項に記載のインサート適合器。
【請求項8】
前記インサート適合器は、金属製である、請求項1~
7の何れか一項に記載のインサート適合器。
【請求項9】
前記インサート適合器は、弾性であるが、塑性変形可能ではないように構成される、請求項1~
8の何れか一項に記載のインサート適合器。
【請求項10】
前記インサート適合器は、更に、細長い形状を有する横インサート適合器であり、
前記中央平面に直交して測定される高さ寸法は、前記横インサート適合器の前記高さ寸法に直交して長さ方向に沿って測定される幅寸法よりも大きい、請求項1~
9の何れか一項に記載のインサート適合器。
【請求項11】
工具であって、前記工具は、
シャンク部分と、前記シャンク部分から延在する切削部分と、を備えるインサート・ホルダを備え、
前記切削部分は、インサート・ポケットと共に形成され、
前記インサート・ポケットは、ポケット基部面と、前記ポケット基部面から延在する少なくとも1つのポケット
側面支持面と、を備え、
前記工具は、請求項1~
10の何れか一項に記載のインサート適合器と、前記インサート・ポケット内に据え付けられるインサートと、を更に備え、
前記インサートは、前記インサート適合器の前記インサート当接面に当接し、
前記インサート適合器の前記ポケット当接面は、前記インサート・ポケットに当接する、工具。
【請求項12】
前記ポケット当接面は、前記第1の磁気面を備え、
前記インサート適合器は、前記第1の磁気面によって前記インサート・ポケットに自己固着するように構成される、請求項
11に記載の工具。
【請求項13】
前記インサート当接面又は前記適合器底面は、第2の磁気面を備え、
前記第2の磁気面は、磁力を加えるように構成され
、前記インサート適合器が前記インサート・ポケットに自己固着するように構成する、請求項
11又は12に記載の工具。
【請求項14】
前記インサートと前記ポケット基部面との間に位置するシムを更に備え、
前記第1の磁気面は、前記シムに隣接する前記インサート当接面であり
、前記インサート適合器が前記シムに自己固着するように構成する、請求項
11に記載の工具。
【請求項15】
前記第1の磁気面は、前記適合器底面であり、
前記インサート適合器が、前記ポケット基部面又はシムの何れかに固着するように構成し、
前記シムは、前記工具が備え、
前記インサート適合器が、前記シムに固着する場合、前記シムは、前記インサート適合器と前記ポケット基部面との間に位置する、
請求項11に記載の工具。
【請求項16】
前記ポケット基部面を通って延在するレバーを更に備え、
前記レバーは、前記インサートを前記インサート・ポケットに固着するように構成される、請求項
11~15の何れか一項に記載の工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の主題は、切削工具のインサート・ポケット内に挿入するように構成したインサート適合器に関する。詳細には、本出願の主題は、規格切削工具のポケットを、より小型のインサートを保持するように構成したポケットに適合するように構成したインサート適合器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の技術及び規格によれば、インサート・ポケットは、典型的には、単一形状及びサイズの切削インサートを固着するように設計されている。特に、本明細書及び特許請求の範囲における語「インサート」は、機械加工のための、典型的には超硬合金製の切削インサートの短縮名である。同様に、名称「インサート適合器」は、切削インサート・ポケット内で切削インサートと共に使用するように構成した適合器である。
【0003】
基準のインサート・ポケットが、単一形状及びサイズのインサートに向けて設計されているにもかかわらず、当然、少なくともUS8,807,884では例外がある。例えば、US8,807,884は、2つの異なるインサート形状に適応するように設計したインサート・ポケットを開示している。
【0004】
本発明は、本発明が、工具のインサート・ホルダ自体と一体に形成されるインサート・ポケットではなく、インサート・ポケット内でインサートと前記インサート・ポケットとの間に挿入されるように設計したインサート適合器を対象とするという点で、US8,807,884とは実質的に異なる。
【0005】
US4,722,642は、旋削工具のインサート・ポケットの壁からインサートを隔てるように構成した離間適合器を開示している。ポケット壁からインサートを隔てる離間適合器の部分は、切れ目であっても、寸法の低減であってもよい脆弱部分によって接続される。製造される適合器は、脆弱部分と面一であり、脆弱部分は、凹壁からインサートを隔てるように適合した部分を接続し、凹壁は、適合器が様々なインサート構成に適合可能であるように設けられる。凹壁からインサート面を隔てる適合器の部分は、1つ又は複数の再研削作業においてインサート面から取り除いた材料の量に等しい厚さを有する。
【0006】
本発明は、本発明が、再研削作業によって極小サイズの差をもたらすように設計した極薄インサート適合器を対象としないという点で、US4,722,642とは実質的に異なる。特に、旋削インサートの再研削は、現代の高精度機械加工産業ではもはや一般的ではなく、おそらく時代遅れでさえある。本発明は、高精度産業の構成要素に関し、US4,722,642で開示される種類の基本屈曲可能金属スペーサと呼び得るものに関するものではない。
【0007】
US4,600,341は、規格(A.N.S.I.)インサート・ホルダのためのインサート適合器を開示している。インサート適合器は、規格インサート・ポケットが、同じ又は異なる形状のより小型のインサートに適応可能であるように構成される。US4,600,341は、様々なサイズのインサートのための特殊締付け組立体を更に開示している。
【0008】
本発明は、改善されたインサート適合器に関し、このインサート適合器は、当初、US4,600,341で説明した目的と同様の目的、即ち、規格インサート・ホルダ(A.N.S.I.、ISO等)の規格インサート・ポケットに、より小型のインサートを固着可能にする目的で開発されている。しかし、有利な設計特徴の一部は、この当初の設計目的とは無関係に有利であることは、明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0009】
新規で、改善されたインサート適合器を提供することは、本出願の一目的である。
【0010】
(典型的には鉄鋼よりもはるかに高価な材料、例えば超硬合金製の)インサートよりも小型、したがって、より安価なインサートは、当然、所望の機械加工用途を達成し得ると考えられる場合に購入される。典型的には、選択した最適なインサートのための適切なサイズのインサート・ホルダ(即ち、適切なサイズのインサート・ポケットを伴う)は、様々な理由で購入される。
【0011】
第1の理由は、現代の大量生産製造において、特に、全ての製造業者が生成し得る規格インサート及び規格工具に対する国際的な金属機械加工競争が熾烈であることである。特定のインサートのために最適化したインサート・ホルダが、多目的に設計されたインサート・ホルダよりも良好に機能することを期待されるのは、自明である。
【0012】
第2の理由は、インサート適合器等の更なる構成要素が著しい追加費用であることである。
【0013】
第3の理由は、機械加工が、典型的には、空間の制限された環境内で実行されることであり、このことは、多くのタレットが、特定サイズよりも大きいインサート・ホルダを収容できないことを意味する。
【0014】
第4の理由は、工具の構成要素の数が増大するにつれて、工具に対するユーザの使いやすさが減少することである。というのは、組立て又は分解の間、小型構成要素が落下する可能性が大いにあるためである(当技術分野では「落下部品」として公知である)。
【0015】
最後に、一般原則として、更なる構成要素は、典型的には、インサートをインサート・ホルダに固着する厳密さを低減させ、機械加工の安定性を低減させ、したがって、機械加工物の仕上げの質を低減させる。
【0016】
近年、付加製造技術は著しく進歩しており、これまで製造が困難又は高価であった構成要素の実用的な製造を可能にしている。
【0017】
付加製造構成要素の価格は、依然として標準的な除去加工の精度には到達しておらず、比較的高価であるが、そのような費用は、構成要素をかなり小型にすると低減する。
【0018】
ここで、インサート適合器により、規格旋削工具が(所与の機械加工用途に適する場合、より経済的に効率的である)より小型のインサートを適応可能にする場合、規格製品の選択を相殺する費用で製造できるという仮説が立てられた。規格製品の選択とは、適切なサイズのインサートのため、更なるインサート・ホルダを単に購入することである。
【0019】
とはいえ、上述の「落下部品」の問題は、依然として克服する必要があり、インサートがポケット内に固着されていない場合でさえ構成要素がポケット内に留まることを保証するため、インサート適合器を磁気化することが決定された。このことは、既存のインサート・ホルダを修正する問題も克服した。
【0020】
構成要素を一緒に保持するために磁石を使用することは公知であるが、従来、金属工作物に典型的に使用される切削インサートに隣接して使用することは公知ではない。というのは、金属チップが、磁気を帯びたインサート又は工具に磁気的にくっつき、チップが構成要素の間に食い込むと、不都合又は更には損傷を生じさせ得るという問題があるためである。
【0021】
したがって、本発明の第1の態様によれば、インサート・ポケットのためのインサート適合器が提供され、インサート適合器は、対向する適合器上面及び適合器底面と、対向するインサート当接面及びポケット当接面を備える適合器外周面であって、適合器外周面は、上面及び底面を接続する、適合器外周面と、上面及び底面を二等分する仮想中央平面と、を備え、インサート当接面、ポケット当接面及び適合器底面の1つは、磁力を加えるように構成した第1の磁気面を備える。
【0022】
例えば、「第1の磁気面」を挙げた上記段落にあるような語「第1の」は、明示的に紹介しない限り、「第2の磁気面」が同様になければならない必要はないことを理解されたい。そのような文言は、以下、(例えば従属請求項内で)要素を区別するため、便宜的に使用される。
【0023】
好ましくは、インサート当接面は、少なくとも1つの当接副面突出部を備える。このことは、現代の機械加工要件が一般に必要とする高レベルのインサート安定性を可能にし得る。なお一層好ましくは、同じ理由で、インサート適合器は、第1の脚部を備え、インサート適合器の上面図において、第1の脚部はまっすぐであり、前記少なくとも1つの当接副面突出部は、当接逃げ凹部によって離間する少なくとも2つの当接副面突出部である。
【0024】
好ましくは、上記した第1の脚部を備えるインサート適合器は、第2の脚部を備えることができ、インサート適合器の上面図において、第2の脚部はまっすぐであり、第1の脚部と非平行であり、前記第2の脚部は、当接逃げ凹部によって離間する少なくとも2つの当接副面突出部を備える。特に、このことにより、インサートに、4つの異なる場所(即ち、第1の脚部上の2つの当接副面突出部及び第2の脚部上の2つの当接副面突出部)でインサート適合器との接触をもたらす。この設計は、インサート適合器を右インサート適合器又は左インサート適合器のために交換可能であることを意図した。しかし、この設計は、従来の3つの接触点ではなく、4つの意図的な接触点という一般的には不要な現象(「過拘束」とも呼ばれる)ももたらした。実際、試験中、硬質の高精度インサートは、4つの点に接触し得ることが発見された。というのは、比較的小型のインサート適合器は、弾性であるが、US4,722,642の屈曲可能インサート適合器のように塑性変形可能ではなく、外見上、更なる接触を可能にするためである。この接触は、理論上、上締付け具又はレバーを介してインサートをインサート適合器に引っ張るインサート締付け方法によって支援し得る。
【0025】
適合器上面の平面図において、前記第1のまっすぐな脚部及び前記第2のまっすぐな脚部は、インサート適合器のコーナで接合し得る。このコーナは、所望のインサートに向けて構成することができる。例えば、コーナは、直角コーナとし得る。
【0026】
好ましくは、少なくとも1つの当接副面突出部は、中間平面の両側に延在する。このことにより、インサート適合器が交換可能であり、したがって、場合によっては右インサート・ホルダ又は左インサート・ホルダに適している。
【0027】
好ましくは、第1の磁気面は、第1の磁石凹部と共に形成することによって前記磁力をもたらすように構成され、インサート適合器は、凹部を占有する第1の磁石を更に備える。
【0028】
第1の磁気面は、インサート適合器自体を磁気化する、外部磁石をインサート適合器の所望の部分に取り付ける等、他の方法で達成し得ることは理解されよう。上述の凹部特徴は、(インサート適合器、及び第1の磁気面が接触する面、例えば、シム又はインサート・ポケット面によって)囲繞された磁石は、チップが第1の磁気面に引き寄せられないようにするのを支援するため、好ましい。
【0029】
同様の理由のため、第1の磁石は、第1の磁石の最外面が第1の磁気面と面一であるか又は第1の磁気面から適合器の内側に後退するように、インサート適合器内に完全に埋め込まれていることが好ましい。磁石がインサート・ホルダから突出していると、インサート適合器の適切な当接を妨げる、又はチップが留まり得る空間を生成する可能性があることは理解されよう。
【0030】
好ましくは、磁石は、磁石凹部内にしっかりと固着される。
【0031】
好ましくは、磁石は、基本円筒形状を有する。
【0032】
好ましくは、インサート適合器は、第2の磁石凹部と、第2の磁石凹部を占有する第2の磁石と、を更に備える。インサート適合器を所望の隣接シム又はインサート・ポケットに保持するのに、単一磁石で十分な磁気強度とし得るが、インサート適合器の他の機能部分(当接面等、磁石は概して壊れやすいことを記す)のために十分な空間を保つため、及び適切な向きの目的で、単一磁石よりも、2つの離間する磁石が好ましいと考えられることは理解されよう。
【0033】
更に、従来技術のインサート適合器は、インサート締付け機構を使用してインサート適合器をインサート・ホルダに同時に保持するため、磁気面が全くないことを指摘すべきである。インサート・ホルダをインサート・ポケットに保持するには1つの極小磁石で十分であるが、複数の磁石を使用することにより、インサートを取り外してある場合、及び加圧空気を使用してインサート・ポケットを掃除する間でさえ、インサート適合器をインサート・ポケットに保持するのに十分な強度を更に可能にする。現時点で、前記加圧空気を加えている間でさえ規格インサート・ポケット内に保持されるように構成した(即ち、機械的固着のために修正しない、例えば、インサート適合器のためのねじ穴を備えない)インサート適合器は、公知ではない。
【0034】
同様の理由で、インサート適合器が、第1の脚部を備え、インサート適合器の上面図において、第1の脚部がまっすぐであり、第1の磁石凹部及び第2の磁石凹部の両方は、第1の脚部内に位置し得ることが好ましい。言い換えれば、このことにより、例えば前記加圧空気を加える間に更なる強度をもたらす。
【0035】
好ましくは、第1の磁石凹部は、上面よりも底面の近くに位置することができる。このことにより、壊れやすい磁石を、比較的高い力によりインサート適合器をインサート・ポケットに対して圧縮する領域の外に保つことができる、及び/又はインサート適合器の当接部分から磁石を離間することによって、より薄い/より小型のインサート適合器を可能にすることを支援し得る。
【0036】
好ましくは、第1の磁気面を備える面とは異なる、前記インサート当接面、ポケット当接面及び適合器底面の1つは、磁力を加えるように構成した第2の磁気面を備える。例えば、第1の磁気面は、インサート適合器をインサート・ポケットに保持するためのものであってよく、第2の磁気面は、インサート適合器をシムに保持するためのものであってよい。1つの好ましいオプションは、適合器底面が、インサート適合器をポケット基部面又はシムのいずれかに保持する第2の磁気面を備えることである。
【0037】
第2の磁気面は、磁石凹部と共に形成することによって前記磁力をもたらすように構成することができ、インサート適合器は、凹部を占有する磁石を更に備える。
【0038】
インサート適合器は、好ましくは金属製である。他の材料を使用し得るが、金属は、インサート・ポケット付近で磁力が金属チップに到達しないことの保証を支援し得る。
【0039】
インサート適合器は、好ましくは、弾性であるが塑性変形可能ではないように構成することができる。特に、US4,722,642の従来技術のインサートは、塑性変形可能である。しかし、高精度製造のため、剛性で所定の形状が好ましい。とはいえ、そのような薄い構成要素は、ある程度まで弾性変形可能であることは理解されよう。
【0040】
別の態様によれば、工具は、インサートと、インサート・ホルダと、インサート適合器と、を備える。インサート適合器は、上記の特徴のいずれかを有し得る。
【0041】
より正確には、工具は、インサート・ホルダを備えることができ、インサート・ホルダは、シャンク部分と、シャンク部分から延在する切削部分と、を備える。切削部分は、インサート・ポケットと共に形成される。インサート・ポケットは、ポケット基部面と、ポケット基部面から延在する少なくとも1つのポケット支持面と、を備える。器具は、請求項1に記載のインサート適合器と、インサート・ポケット内に据え付けられるインサートと、を更に備える。インサートは、インサート適合器のインサート当接面に当接し、インサート適合器のポケット当接面は、インサート・ポケットに当接する。
【0042】
1つの好ましい実施形態は、ポケット当接面が、第1の磁気面を備え、インサート適合器が、第1の磁気面により、インサート・ポケットに自己固着するように構成されることである。
【0043】
特に、主に想定される使用法は、図示のように、インサート適合器をポケット支持面に固着するためのものである。したがって、第1の磁気面は、好ましくは、インサート・ポケットのポケット支持面、又はより好ましくは、2つ以上のポケット面に固着されるように構成される。しかし、同じ利益は、「シム」と従来呼ばれるもの、即ち、インサートとポケット基部面との間に挿入される構成要素のために考慮してもよい。明細書及び特許請求の範囲の目的で、更なる特徴(例えば、請求されるインサート適合器が「シム」と「ポケット当接面」との間に位置する)で規定しない限り、「インサート適合器」は、従来「シム」と呼ばれるもの、即ちインサートとポケット基部面との間に介挿されるものも指すことができる。しかし、請求する特徴又は実施形態のあらゆる組合せによれば、本発明は、シムの機能を除外するように規定し得ることを理解されよう。例えば、インサート適合器は、いわゆる横インサート適合器として更に規定することができ、横インサート適合器は、インサートと少なくとも1つのポケット支持面との間のみに位置するように構成される。言い換えれば、横インサート適合器には、インサートとポケット基部面との間に位置するように構成した部分又はこれらの間に位置する部分がない。代替的に、本発明は、シムを、インサートとポケット基部面との間に少なくとも位置するように構成したシム-インサート適合器と規定することによって、シムの機能を明示的に含むように規定することができる。
【0044】
更に、別の方法では、インサート適合器は、細長い形状を有することによって、いわゆる横インサート適合器として更に規定することができ、中央平面に直交して測定される高さ寸法は、横インサート適合器の高さ寸法に直交し長さ方向に沿って測定される幅寸法よりも大きい。そのような寸法は、規定方向における平均寸法である。
【0045】
第1の磁気面は、ポケット当接面とすることができ、これにより、インサート適合器をインサート・ポケット自己固着であるように構成する。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、工具は、インサートとポケット基部面との間に位置するシムを更に備えることができる。
【0047】
第1の磁気面は、シムに隣接するインサート当接面とすることができ、これにより、インサート適合器をシムに自己固着であるように構成する。
【0048】
第1の磁気面は、適合器底面とすることができ、これにより、インサート適合器をインサート・ポケット又はシムのいずれかに自己固着であるように構成する。適合器底面がポケットに隣接する場合、適合器底面はポケットに固着され、シムが適合器底面とポケットとの間に介挿される場合、第1の磁気面は、シムに固着されることを理解されよう。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、工具は、レバーを備え、レバーは、インサートをインサート・ポケットに保持するように、ポケット基部面を通じて延在する。インサート適合器がポケット内にない場合に使用するには、完全に異なるレバーが必要であるが、そのようなシステムの利点は、US4,600,341に示す上締付け具を使用するよりも、チップの流れを良好にし得る。更に、そのようなレバーは、US4,600,341の好ましい実施形態に従った、様々な位置のために設計された複雑な構成の上締付け具よりも好ましい。また、従来の単純なねじは、チップの流れを妨げずにインサートを締め付けることができるが、規格ポケット内でインサート適合器を使用することは、(インサートの穴が中心に位置すると仮定して)より小型のインサートのための新たなねじ穴を(異なる位置で)必要とすることを意味することが指摘される。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、工具は、インサート適合器に加えて、シムを更に備える。シムは、インサートとポケット基部面との間に位置する。好ましくは、インサート適合器は、金属製であり、シムは、超硬合金製である。このことにより、上で説明した磁力を含むことができるインサート適合器を可能にし、シムは、工具を機械加工の損傷から保護するのに好ましい材料から作製することができる。好ましくは、金属は鉄鋼である。
【0051】
本出願の主題をより良好に理解し、実際にどのように主題を実行し得るかを示すため、次に、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】規格旋削工具の等角図であり、規格旋削工具は、インサート・ホルダと、規格ネガティブ当接形状を有する規格インサートと、シムと、ねじと、規格レバーと、を有する。
【
図3】工具の等角図であり、工具は、
図1の工具と同じインサート・ホルダ及びねじと、特殊インサートと、特殊レバーと、を備え、工具は、単一屈曲部を有する(即ち、2つのまっすぐな脚部を有する)インサート適合器を更に含む。
【
図5】旋削工具の等角図であり、旋削工具は、インサート・ホルダと、単一屈曲部を有するインサート適合器と、特殊上締付け具と、規格ネガティブ当接形状を有するネガティブ特殊インサートと、を有する。
【
図8】
図5のインサート適合器の等角分解図である。
【
図9】隠れ線を示す
図5のインサート適合器の上面図である。
【
図10】ポケット当接面を示す
図5のインサート適合器の背面図である。
【
図11】
図9の線XI-XIに沿って取った断面図である。
【
図12】インサート当接面を示す
図5のインサート適合器の正面図である。
【
図13】旋削工具の等角図であり、旋削工具は、インサート・ホルダと、単一屈曲部を有するインサート適合器と、特殊レバーと、特殊インサートと、を有し、特殊インサートは、ポジティブ切削形状、及び非規格ポジティブ逃げ当接形状を有する。
【
図17】隠れ線を示す
図13のインサート適合器の上面図である。
【
図18】
図17の線XVIII-XVIIIに沿って取った断面図である。
【
図19】
図17の線XIX-XIXに沿って取った断面図である。
【
図20】旋削工具の等角図であり、旋削工具は、インサート・ホルダと、屈曲部のないインサート適合器と、特殊レバーと、規格ネガティブ当接形状を有するネガティブ特殊インサートと、を有する。
【
図24】隠れ線を示す
図20のインサート適合器の上面図である。
【
図25】適合器当接面を示す
図20のインサート適合器の背面図である。
【
図26】
図24の線XXVI-XXVIに沿って取った断面図である。
【
図27】適合器内面を示す
図20のインサート適合器の正面図である。
【
図28】旋削工具の等角図であり、旋削工具は、インサート・ホルダと、単一屈曲部を有するインサート適合器と、特殊レバーと、規格ネガティブ当接形状を有するネガティブ特殊インサートと、を有する。
【
図32】隠れ線を示す
図28のインサート適合器の上面図である。
【
図33】適合器外面を示す
図28のインサート適合器の背面図である。
【
図34】
図32の線XXXIV-XXXIVに沿って取った断面図である。
【
図35】
図32の線XXXV-XXXVに沿って取った断面図である。
【
図36】適合器内面を示す
図28のインサート適合器の正面図である。
【
図37】旋削工具の等角図であり、旋削工具は、インサート・ホルダと、2つの屈曲部を有するインサート適合器と、特殊レバーと、規格ネガティブ当接形状を有するネガティブ特殊インサートとを有する。
【
図41】隠れ線を示す
図37のインサート適合器の上面図である。
【
図42】
図41の線XLII-XLIIに沿って取った断面図である。
【
図43】
図41の線XLIII-XLIIIに沿って取った断面図である。
【
図44】適合器外面を示す
図28のインサート適合器の背面図である。
【
図45】適合器内面を示す
図37のインサート適合器の正面図である。
【
図46】旋削工具の等角図であり、旋削工具は、インサート・ホルダと、単一屈曲部を有するインサート適合器と、特殊レバーと、外側に先細の非規格当接形状を有するネガティブ特殊インサートと、を有する。
【
図52】適合器外面を示す
図46のインサート適合器の背面図である。
【
図53】
図52の線LIII-LIIIに沿って取った断面図である。
【
図54】隠れ線を示す
図46のインサート適合器の上面図である。
【
図56】適合器内面及びシム当接面を示す
図46のインサート適合器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
参照符号は、対応又は類似する要素を示すため図面の中で繰り返すことがある。
【0054】
図1及び
図2に注意を向けられたい。旋削工具10は、ポケット14を有するインサート・ホルダ12を含み、ポケット14は、特殊形状及びサイズの単一インサート16を固着するように構成される。図示するインサート16は、規格インサート16a(即ち、規格インサート16aのサイズは、ポケット14のサイズに一致する)であり、インサート上面17aと、インサート底面17bと、インサート上面17aとインサート底面17bとの間に延在するインサート外周面17cと、を備える。インサート外周面17cは、4つの横当接面17dを含む。
【0055】
本出願は、概して、「16」と指定されるインサート全体に言及する。理解を助けるため、特定のインサート・ホルダ12のためにサイズ決定したインサートは、「規格インサート」と呼び、「16a」と指定する。代替的に、本発明のインサート適合器32と共に使用されるより小型のインサート(以下で説明する)は、「特殊インサート」と呼び、「16b」と指定する。規格インサート及び特殊インサートの両方は、概して、「インサート16」という名称及び指定番号で呼び、この接尾文字付加法は、便宜上にすぎず、文脈から明らかであるように、全ての構成要素ではないが、レバー、上締付け具、シム等、一部の以下で説明する構成要素にも当てはまることを理解されたい(任意の接尾文字は、一般名称ではなく、「a」の接尾文字を追加したものは、従来技術通りの構成要素を指し、「b」の接尾文字を追加したものは、本発明の特殊構成要素を指す)。
【0056】
本明細書では、語「規格」は、インサートの形状、ポケット又は当接形状が、ISO又はANSI規格等の一般に認められた規格に従って設計されていることを示すように使用される。
【0057】
代替的に、本明細書では、語「特殊」は、修正された、即ち、規格構成要素とは異なる構成要素を示すように使用される。
【0058】
インサート・ホルダ12は、シャンク部分20から延在する切削部分18を有する。シャンク部分20は、コンピュータ数値制御(CNC)機械に装着され、コンピュータ数値制御(CNC)機械によって固着されるように構成される。
【0059】
インサート・ホルダ12、より正確には切削部分18は、前記インサート・ポケット14と、締付け機構22(本例では規格締付け機構22aである)と、を備え、規格インサート16aは、規格締付け機構22、22aを介してポケット14内に固着される。
【0060】
この例示的実施形態による規格締付け機構22は、本ケースではレバー24(本例では規格レバー24a)である締付け部材23と、対応するレバーねじ26(
図1~2を参照)と、を備え、レバーねじ26は、インサート・ホルダの切削部分18に螺着される。本発明の他の実施形態によれば、規格締付け機構22は、代替的に、対応する締付けねじ30と共に、特殊上締付け具28b(
図6)である締付け部材23を備えることができる。
【0061】
図3~
図4に注意を向けられたい。工具10は、インサート適合器32を更に含むことができ、インサート適合器32は、以下で更に説明するように、様々なインサートを同じインサート・ポケット14内に固着可能にするように構成される。
【0062】
図2に示すもの等の規格締付け機構22は、第1の形状及びサイズの規格インサート16aを固着するように構成される。様々なシナリオにおいて、オペレータは、規格インサート16aを、より小さいサイズ、場合によっては異なる形状(本例では形状は同じである)の特殊インサート16bと取り替えることがある。したがって、上述の規格締付け機構22aは、同じインサート・ポケット14内での特殊インサート16bの固着にもはや適していない。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、規格インサート16aは、ネガティブ横当接面17dを有するネガティブ・インサートである。本発明の文脈において、ネガティブ・インサートという用語は、横当接面17dがインサート上面17a及びインサート底面17bの両方に直交することを意味する。
【0064】
特殊インサート16bが、より小型サイズであることを除き、規格インサート16aと同一であり得る一方で、インサート適合器32は、規格インサート16aと同じ形状のより小型のインサート、又は異なる形状(図示せず)を有するより小型のインサートに当接するように構成し得ることを理解されよう。より正確には、インサート適合器32は、インサート当接面(
図9)と呼ばれるものを備え、インサート当接面は、その名称が示すように、インサートに当接するように構成され、インサート当接面38は、所望される場合、異なるインサート形状のために構成することができる。
【0065】
図3及び
図4で例示するように、図示する特殊インサート16bは、より大型の規格インサート16aのように、同じ形状であり、したがって、例えば
図1~
図6、
図20~
図21、
図28~
図29及び
図37~
図38等に示すような、ネガティブ横当接面17dを有するネガティブ・インサートでもある。
【0066】
代替的に、
図13及び
図14で例示するように、
図1及び
図2に示す同じインサート・ホルダ12を対象とする異なる特殊インサート16bは、より小型のサイズを有するだけでなく、異なる当接形状も有することができ、異なる当接形状は、この場合、ポジティブ切削当接形状である。また別の例、即ち、
図46~
図47に示す特殊インサート16bは、ネガティブ切削形状を有するが、外側に先細の横当接面17dを有する凸形当接突出部を有する。この当接形状は、「ダブテール」当接形状と呼ばれることがある。
【0067】
インサート適合器32、より正確には、インサート適合器32のインサート当接面38は、必要に応じて当接形状に適合するように設計し得ることを理解されよう。
【0068】
図3及び
図4を参照すると、上述のように、今度は、異なるインサート16bがインサート・ポケット14に固着されるため、規格締付け機構22aはもはや適していない。特殊インサートは、規格インサートよりも小さく、インサートの締付け穴68の中心は、規格インサート締付け穴の中心に対して異なる場所に位置し、したがって、異なるレバーが必要であることを理解されよう。したがって、工具10は、特殊レバー24bに嵌合される。
【0069】
図5及び
図6を参照すると、ホルダの切削部分18は、代替的に、上締付け具を使用する種類のものとし得る。図示するのは、インサート適合器32と共に使用されるようにサイズ決定した特殊上締付け具28b(
図5~
図6)である。
【0070】
以前の接尾文字体系ではなく、各インサート適合器32は、異なる接尾文字が付加される(即ち、全てのインサート適合器は、規格構成要素ではない)。
【0071】
図4~
図12を参照して、インサート適合器32aは、本発明による全てのインサート適合器32の基本特徴と共に説明し、任意の差異は、異なる実施形態に対して以下で示す。
【0072】
インサート適合器32aは、剛体を有する。言い方を変えれば、インサート適合器32aは、金属製であるが塑性変形可能ではないため、弾性である。言い方を変えれば、インサート適合器32aは、他の形状に屈曲するように設計されていない。
【0073】
インサート適合器32aは、適合器外周面37によって接続される、対向する適合器上面42と適合器底面44とを備える。
【0074】
仮想中央平面M(
図12)は、上面42と底面44とを二等分する。インサート適合器32aは、好ましくは、ここで例示するように、中央平面Mの両側で対称とし得る。
図56で例示する実施形態等の他の実施形態では、以下で説明するように、インサート適合器が中央平面Mの両側で対称ではないという選好があってよい。
【0075】
適合器外周面37は、インサートに当接するように構成したインサート当接面38と、インサート・ポケット14に当接するように構成したポケット当接面40と、を備える。
【0076】
インサート適合器32aは、細長い形状を有する横インサート適合器であり、中央平面に直交して測定される高さ寸法HD(
図12)は、横インサート適合器の高さ寸法に直交し長さ方向に沿って測定される幅寸法WD(
図9)よりも大きい。
【0077】
インサート当接面38は、好ましくは、少なくとも1つの当接副面突出部43を備えることができ、当接副面突出部43は、特殊インサート16bと係合するように構成される。より好ましくは、インサート当接面38は、当接逃げ凹部47(
図7)によって離間する2つの当接副面突出部43を備え得る。
【0078】
図示の例では、インサート適合器32aは、2つの脚部(即ち、第1の脚部36a、第2の脚部36b)を備え、2つの脚部は共に、同じ特徴(即ち、当接逃げ凹部47によって離間する2つの当接副面突出部43)を有する。
【0079】
インサート適合器32、又はより正確には、インサート適合器32の適合器本体36は、好ましくは、鉄鋼製であり、単一の一体構成を有する。適合器本体36は、好ましくは、付加製造によって作製される。
【0080】
適合器本体36は、インサート当接面38とポケット当接面40との間の中間を通過する仮想中央平面構成P(
図9、
図17、
図26、
図35及び
図41)を有することができる。
図24等のいくつかの実施形態によれば、上面図において、中央平面構成Pは、直線で延在する。
図9に示す例等の他の実施形態によれば、中央平面構成Pは、単一屈曲部46のみを含む。この屈曲部46は、中央平面構成Pを2つのまっすぐな部分(又はまっすぐな脚部)に分割し、適合器鋭角a1を間に形成する。
図41に示すもの等の更なる実施形態によれば、中央平面構成Pは、2つ以上の屈曲部、特に図示のように2つの屈曲部を含む。
【0081】
インサート適合器32aは、第1の磁気面48を有する。
図9に示す例では、ポケット当接面40は、第1の磁気面48を備える。
【0082】
第1の磁気面48は、第1の磁石凹部52により形成される磁力をもたらすように構成することができ、インサート適合器32は、第1の磁石凹部52を占有する第1の磁石54を更に備える。
【0083】
代替的に、インサート適合器32全体、又はインサート適合器32の一部が磁石であってよいことは理解されよう。実際の磁石が使用される実施形態では、インサート適合器32は、適合器本体36と、適合器本体36に固着される磁石54と、の両方を備える。図示するこの例及び他の例において、前記固着は、磁石凹部52を介する。
【0084】
第1の磁石54を図示のように使用する場合、磁石の露出面(本例では
図10で指定される磁石端部55)によってより正確にもたらされる磁力方向は、したがって、第1の磁石54が適合器本体36によって包囲されない方向に制御することができる。
【0085】
第1の磁石54は、磁石端部55の間に延在する磁石外周面56を有することができる。好ましくは、使用される磁石54は、基本的に円筒形状を有することができる。第1の磁石54は、適合器本体36の磁石凹部52内に、好ましくは接着剤を介してしっかりと固着し得る。
【0086】
例えば
図9及び
図11で示すように、第1の磁石54は、インサート適合器内に完全に埋め込まれ、これにより、第1の磁石54の最外面(この場合は磁石端部55)が、第1の磁気面48と基本的に面一であるか、又は
図9からより良好に理解されるように、第1の磁気面48から適合器の内側にわずかに後退するようにする。磁力は、分離距離がわずかである限り、接触しない場合であっても、隣接面にも加えられることは理解されよう。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、インサート当接面38は、第1の磁気面48を備え得る。
【0088】
例えば
図46~
図56で示される一代替形態は、インサート適合器32fが2つ以上の磁気面を備えるようなものとし得る。したがって、図示のように、ポケット当接面40は、第1の磁気面48(図示される凹部52内の1つ又は複数の磁石54とし得る)を備えることができ、インサート当接面38は、第2の磁気面48s(図示される凹部52内の1つ又は複数の磁石54sとし得る)を備えることができる。
【0089】
本例では、第2の磁気面48sは、インサート適合器32fをシム50(本例では特殊シム50bである)に固着するように構成される。
【0090】
図4に戻ると、ある一般的なポケット14の特徴は、典型的には、ポケット基部面58、ポケット支持面60、締付け穴62であり、締付け穴62は、ポケット基部面58に開口し、本例では、規格レバー24及び特殊レバー24a、24bの両方に対応する。ポケット支持面60は、ポケット基部面58から離れて延在する。各ポケット支持面60は、1つ又は2つの個別の当接領域64を有することができ、当接領域64は、インサート16bに当接するか、又はインサート適合器32がポケット14内に挿入されるとインサート適合器32に当接するように構成される。当接領域64は、平坦で、典型的には、ポケット基部面58に直交する、又は(例えば最大1度の許容差で)実質的に直交する。
【0091】
レバーねじ26は、締結されると、規格レバー24a又は特殊レバー24bを強制的に押し進め、それぞれの規格インサート16a又は特殊インサート16bをそれぞれの当接領域64又はインサート適合器の当接面38に対して固着させるように構成される。
【0092】
図5~
図6に注意を向けられたい。特殊上締付け具28bは、レバーではなく、インサート締付け穴68に対して押圧するように構成した当接突出部66を備えることができる。
【0093】
多くの場合、ポケット14は、シム50を含むことができ、シム50は、ポケット基部面58上で切削インサート16の下に位置し、ポケット基部面58及び切削インサート162の2つを隔てる。シム50は、通常、少なくともポケット基部面58を、インサート破損の可能性によって生じる摩耗から保護することを目的とするが、工作物を保護することも目的とする。場合によっては、特殊シム50bは、特殊インサート16bを同じポケット14内に据え付ける又は収容するように構成することができる。特殊シム50bは、インサート適合器32に対応するように構成し得る。
【0094】
特殊シム50bは、通常、超硬合金製であり、鉄鋼よりも硬く、特殊シム50bが溶融し、インサートが破損した際に工作物又はポケット14に損害を与えないようにし得る。
【0095】
図3~
図12に戻る。第1の実施形態によれば、インサート適合器32aは、厳密に2つの適合器支持面45と、厳密に4つの当接副面突出部43と、を有する。適合器当接副面突出部43及び支持面45は、平行又は(最大1度の許容差で)実質的に平行である。この形状は、元来ネガティブ規格インサート16aを固着するように構成したネガティブ・ポケット14内にネガティブ特殊インサート16bを固着するのに適している。インサート適合器32aは、厳密に2つの磁石54を有する。各ポケット引付け部材54は、適合器支持面45上に位置する。中央平面構成Pは、厳密に1つの屈曲部46を有し、このため、適合器32aは、2つの脚部36a、36bを有するとみなされる。適合器角度a1は、好ましくは鋭角である。
【0096】
図13~
図19に注意を向けられたい。第2の実施形態によれば、インサート適合器32aは、やはり、2つの脚部36a、36bと、厳密に2つの適合器支持面45と、4つの当接副面突出部43と、を有する。所与の脚部(
図18の脚部36a)上の当接副面突出部43及び適合器支持面45(
図18)は、平行ではなく、(
図18の断面で見えるように)適合器底面44に向かって収束することができる。この形状は、ネガティブ規格インサート16aを固着するのに適しているネガティブ・ポケット14内に先細横当接面17dを有する特殊インサート16bを固着するのに適している。インサート適合器32bは、厳密に4つの磁石(
図16)、即ち、第1の脚部36a上に2つの第1の磁石54と、第2の脚部36b上に2つの第2の磁石54bと、を有する。中央平面構成Pは、単一屈曲部46のみを有し、単一屈曲部46は、2つの脚部36a、36bが互いに接合する領域内に位置する。適合器は、内部に位置する適合器角度a1を有し、適合器角度a1は、屈曲部46の両側で測定される。適合器角度a1は鋭角である。
【0097】
図20~
図27に注意を向けられたい。第3の実施形態によれば、インサート適合器32cは、唯一の適合器支持面45と、厳密に2つの当接副面突出部43と、を有する。当接副面突出部43及び支持面45は、平行又は(最大1度の許容差で)実質的に平行である。この形状は、ネガティブ規格インサート16aを固着するのに適しているネガティブ・ポケット14内にネガティブ特殊インサート16bを固着するのに適している。中央平面構成Pには、屈曲部がない、即ち、単一のまっすぐな脚部を有し、適合器32cは、適合器32cの上面図(
図24)でまっすぐ又は実質的にまっすぐに出現する。適合器角度a1は、180度に等しい。更に、ポケット当接面40は平坦である。
【0098】
図28~
図36に注意を向けられたい。第4の実施形態によれば、インサート適合器32dは、2つの脚部36a、36bと、厳密に2つの適合器支持面45と、4つの当接副面突出部43と、を有する。所与の脚部(
図34に示す脚部36a)上の当接副面突出部43及び適合器支持面45(
図34)は、平行又は(最大1度の許容差で)実質的に平行である。この形状は、ネガティブ規格インサート16aを固着するのに適しているネガティブ・ポケット14内にネガティブ特殊インサート16bを固着するのに適している。インサート適合器32dは、厳密に2つの磁石(即ち、第1の磁石54及び第2の磁石54b)を有する。即ち、各脚部36a、36b上に1つの磁石のみを有する。中央平面構成Pは、厳密に1つの屈曲部46を有する。適合器角度a1は、鋭角であり、好ましくは、65度未満に等しい。
【0099】
図37~
図45に注意を向けられたい。第5の実施形態によれば、インサート適合器32eは、3つの脚部36a、36b、36cと、厳密に2つの適合器支持面45と、厳密に3つの当接副面突出部43と、を有する。第1の脚部36aは、第2の脚部36bと第3の脚部36cとの間にある。第1の脚部36aは、第2の脚部36bと共に第1の角度を形成し、第3の脚部36cと共に第2の角度を形成する。第3の脚部36cは、少なくとも第1の脚部36aよりも短い。所与の脚部36a、36b上の当接副面突出部43及び適合器支持面45(
図43)は、互いに対してある角度を形成する。この形状は、ネガティブ規格インサート16aを固着するのに適しているネガティブ・ポケット14内に、例えば(
図37~
図38に示す)三角形ネガティブ特殊インサート16bを固着するのに適している。中央平面構成Pは、厳密に2つの屈曲部46を有する。本例では、第1の適合器角度a1は鈍角であり、第2の適合器角度a2も鈍角である(
図41)。
【0100】
図46~
図56に注意を向けられたい。第6の実施形態によれば、インサート適合器32fは、適合器上面42に隣接し適合器上面42を備える上本体部分36dと、適合器底面44に隣接し適合器底面44を備える下本体部分36eと、を有する。適合器32fは、2つの脚部36a、36bと、(各脚部上に1つの)厳密に2つの適合器支持面45と、(各脚部上に2つの)厳密に4つの当接副面突出部43と、を有する。当接副面突出部43及び適合器支持面45は、平行ではなく、適合器底面44に向かって収束することができる。この形状は、横当接面17dが外側に収束する特殊インサート16bを固着するのに適している。適合器32eの第6の実施形態は、ネガティブ規格インサート16aを固着するのに適しているネガティブ・ポケット14内に据え付けられるように構成される。適合器内面38は、その下部分36e上に、特殊シム50bに当接するように構成した2つのシム当接面70を有する。
【0101】
第6の実施形態によれば、適合器は、適合器の下本体部分36e上でインサート当接面38に位置する6つの磁石54sを更に有する。磁石54sは、シム50bを他の手段を介してポケット内に係合しないケースでは、シム50bを保持する/引き付けるように構成される。
【0102】
図3、
図5、
図13、
図20、
図28及び
図37に注意を向けられたい。インサート適合器32及び特殊インサート16bの締付け位置又は作用位置において、特殊上締付け具28b又は特殊レバー24bは、特殊インサート16bのインサート締付け穴68に当接し、インサート締付け穴68をシム50に強制的に押し付け、シム50は、ポケット基部面58に当接する。特殊インサート16bは、インサート適合器32にも強制的に押し付けられる。特に、横当接面17dは、それぞれの当接副面突出部43に当接する。今度は、適合器支持面45は、ポケット14のポケット支持面60上に位置するそれぞれの当接領域64に当接する。
【0103】
更に、第6の実施形態によれば、
図46に示すように、シム50bの外周面は、インサート適合器32のシム当接面70を係合する。
【0104】
強度を追加するため、磁石54を上下に列で配置し得ることも示される。