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特許7600152電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20241209BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241209BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
H01M10/48 A
H01M10/48 P
H01M10/44 P
H02J7/00 P
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021572961
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2020034801
(87)【国際公開番号】W WO2021149298
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2020009517
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 淳
(72)【発明者】
【氏名】矢野 準也
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/120745(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/024477(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/113455(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/114116(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H01M 10/44
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを備える複数の電池モジュールをパワーラインで接続してなる電源装置であって、
前記電池モジュールが電池情報を検出するセルモニター回路を備え、
前記電池モジュールに設けてなる複数の前記セルモニター回路が、通信ラインを介してカスケード接続されると共に、
前記セルモニター回路が、前記通信ラインを接続してなる接続部を備える通信インターフェースを備え、
前記通信インターフェースが、前記接続部に印加される耐電圧を、前記電池モジュールの出力電圧よりも高電圧としており、
前記複数の電池モジュールは、前記複数の電池セルを積層した積層方向と交差する方向において、隣接する電池モジュール同士の間を、前記通信ライン及び前記パワーラインの配線されない非配線スペースとしてなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
複数の電池セルを備える複数の電池モジュールをパワーラインで接続してなる電源装置であって、
前記電池モジュールが電池情報を検出するセルモニター回路を備え、
前記電池モジュールに設けてなる複数の前記セルモニター回路が、通信ラインを介してカスケード接続されると共に、
前記セルモニター回路が、前記通信ラインを接続してなる接続部を備える通信インターフェースを備え、
前記通信インターフェースが、前記接続部に印加される耐電圧を、前記電池モジュールの出力電圧よりも高電圧としており、
前記複数の電池モジュールの一が、前記パワーラインを直列接続している、隣接する電池モジュールと異なる電池モジュールの前記セルモニター回路に、前記通信ラインを接続可能としてなることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電源装置であって、
前記通信インターフェースが、
直流を遮断して交流を通過させるカップリング素子を出力側に備え、
前記カップリング素子の耐圧が、
電源装置の出力電圧よりも高耐圧であることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電源装置であって、
前記カップリング素子が、
カップリングコンデンサと、
信号伝送用のトランスと、
光伝送素子のいずれかであることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の電源装置であって、
複数の前記電池モジュールが多段多列に配置されて、
隣接する前記電池モジュールの間に、
縦区画領域と横区画領域を碁盤格子状に設けており、
前記縦区画領域と前記横区画領域のいずれか一方が前記通信ラインを配線してなる配線スペースであって、
他方が前記通信ラインの配線されない非配線スペースであることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電源装置であって、
前記非配線スペースの横幅が、
前記配線スペースの横幅よりも狭いことを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の電源装置であって、
前記電池モジュールが、
前記接続部を、前記配線スペースに対向する端部に配置してなることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の電源装置であって、
前記電池モジュールが、
前記電池セルの積層方向に伸びる直方体で、
前記電池セルの積層方向の両端部をモジュール端部として、
積層方向の両側をモジュール側面として、
前記接続部を前記モジュール端部に配置してなることを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電源装置であって、
隣接する前記電池モジュールのモジュール端部が対向するスペースを配線スペースとして、
前記配線スペースに前記通信ラインが配線され、
隣接する前記電池モジュールのモジュール側面が対向する隙間を、
前記通信ラインが配線されない非配線スペースとしてなることを特徴とする電源装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の電源装置であって、
前記電池モジュールが、
前記複数の電池セルを積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の両端部に配置してなるエンドプレートと、
前記電池積層体の両側面に配置されて前記エンドプレートを連結してなるバインドバーとを備え、
前記電池モジュールが、
前記電池セルの積層方向に細長い直方体として、
長手方向の端部を前記モジュール端部としてなることを特徴とする電源装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電源装置であって、
前記電池モジュールが、
前記エンドプレートに前記セルモニター回路を配置してなることを特徴とする電源装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の電源装置であって、
前記電池モジュールが、
一方の端部に前記接続部を配置してなることを特徴とする電源装置。
【請求項13】
請求項12に記載の電源装置であって、
前記電池モジュールが、
一方の端部に一対の前記接続部を配置して、
一対の前記接続部に前記通信ラインを接続してなることを特徴とする電源装置。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の電源装置を備える電動車両であって、
前記電源装置と、
該電源装置から電力供給される走行用のモータと、
前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、
前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪と、
を備えることを特徴とする電動車両。
【請求項15】
請求項1ないし13のいずれかに記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、
該電源装置への充放電を制御する電源コントローラと
を備え、
前記電源コントローラでもって、
外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、
該電池セルに対し充電を行うよう制御することを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池モジュールからなる電源装置と、この電源装置を備える電動車両及び蓄電装置に関し、特にハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車、電動オートバイ等の電動車両に搭載されて車両を走行させるモータの電源装置、あるいは家庭用、工場用の蓄電用途等に使用される大電流用の電源装置、さらにこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置は、複数の電池モジュールを直列や並列に接続して、充放電の容量と出力電流を大きくできる。この電源装置は、ハイブリッド自動車や電気自動車など車両用の電源や、工場用、家庭用などの蓄電システムの電源などに利用される。この電源装置に使用する電池モジュールは開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この電池モジュールは、図14の分解斜視図に示すように、複数の電池セル901を積層して電池積層体902とし、この電池積層体902に接続されて、電池セル901の電圧などの電池情報を検出するセルモニター回路906を備えている。この電池モジュール910は、互いに直列や並列に接続されて大出力の電源装置に使用されている。この電源装置は、複数の電池モジュールの電池情報を検出するセルモニター回路をカスケード接続して、外部のバッテリコントロールユニット(BCU)などに電池情報を伝送している。複数のセルモニター回路をカスケード接続する電源装置は、複数の電池モジュールを装備しながら、1回線の通信ラインで電池情報を外部に伝送できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/024452号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の電池モジュールのセルモニター回路を通信ラインでカスケード接続する電源装置は、1回線の通信ラインで電池情報などを外部に伝送できるが、この電源装置は、図15の概略構成図に示すように、パワーライン842で直列に接続している電池モジュール810を通信ライン844でカスケード接続している。この電源装置800は、パワーライン842と通信ライン844を並列に配線して、電池モジュール810を直列に接続し、セルモニター回路806をカスケード接続している。この電源装置800は、複数のセルモニター回路806をカスケード接続するために、電池モジュール810の間に通信ライン844を配線するので、電池モジュール810の間に通信ライン844の配線スペース845を設ける必要がある。配線スペース845は、電源装置全体を大きくする弊害となるので、この配線スペース845を狭くして電源装置をコンパクトにできるが、狭い配線スペースに配線された通信ラインは、両側の電池モジュールに挟まれて損傷されやすい等の弊害を受ける。通信ラインは電池セルの情報を伝送する重要な通信線であることから、通信ラインの損傷は電源装置の信頼性や安全性を阻害する要因となる。このため、通信ラインが損傷を受ける環境にある電源装置は、長期間にわたって安定して電池情報の信号を外部のバッテリコントロールユニット等に伝送できず、信頼性と安全性が低下する欠点がある。とくに車両等に搭載される電源装置は、振動や衝撃を受け、さらに温度や湿度などの外的条件の厳しい環境で使用されることから、長期間にわたって通信ラインの損傷を確実に阻止して、電池の重要な情報を外部に伝送することが難しくなり、電源装置としての信頼性を長期間にわたって維持するのを阻害する原因となる。
【0006】
本発明は、さらに以上の弊害を防止することを目的に開発されたもので、本発明の目的は、複数の電池モジュールのセルモニター回路をカスケード接続しながら、長期間にわたって高い信頼性を維持しながら全体をコンパクトにできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る電源装置は、複数の電池セルを備える複数の電池モジュールをパワーラインで接続してなる電源装置であって、電池モジュールが電池情報を検出するセルモニター回路を備え、各々の電池モジュールに設けてなる複数のセルモニター回路が、通信ラインを介してカスケード接続されている。セルモニター回路は、通信ラインを接続してなる接続部を備える通信インターフェースを備え、通信インターフェースは、接続部に印加される耐電圧を、電源装置の出力電圧よりも高電圧としている。
【0008】
本発明のある態様に係る電動車両は、上記電源装置と、電源装置から電力供給される走行用のモータと、電源装置及びモータを搭載してなる車両本体と、モータで駆動されて車両本体を走行させる車輪とを備えている。
【0009】
本発明のある態様に係る蓄電装置は、上記電源装置と、電源装置への充放電を制御する電源コントローラとを備えて、電源コントローラでもって、外部からの電力により電源装置への充電を可能とすると共に、電源装置に対し充電を行うよう制御している。
【発明の効果】
【0010】
以上の電源装置は、複数の電池モジュールを通信ラインでカスケード接続しながら、長期間に渡って高い信頼性を維持しながら全体をコンパクトにできる特長がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかる電源装置の概略構成図である。
図2】セルモニター回路の一例を示すブロック図である。
図3】セルモニター回路の他の一例を示すブロック図である。
図4】セルモニター回路の他の一例を示すブロック図である。
図5】電池モジュールを示す概略斜視図である。
図6】電池モジュールの斜視図である。
図7図6に示す電池モジュールの分解斜視図である。
図8図6に示す電池モジュールのVIII-VIII線断面図である。
図9図6に示す電池モジュールの端部を示す平面図である。
図10】本発明の他の実施形態にかかる電源装置の概略構成図である。
図11】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電池モジュールを搭載する例を示すブロック図である。
図12】モータのみで走行する電気自動車に電池モジュールを搭載する例を示すブロック図である。
図13】蓄電装置に電池モジュールを使用する例を示すブロック図である。
図14】従来の電池モジュールの分解斜視図である。
図15】従来の電源装置の概略構成図である。
図16図15に示す電源装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0013】
本発明の第1の実施態様の電源装置は、複数の電池モジュールを備え、各々の電池モジュールはセル電圧などの電池情報を検出するセルモニター回路を備え、複数のセルモニター回路を通信ラインでカスケード接続している。セルモニター回路は、通信インターフェースを備え、通信インターフェースは通信ラインを接続する接続部を設けている。通信インターフェースは、接続部に印加される耐電圧を、電源装置の出力電圧よりも高電圧としている。
【0014】
以上の電源装置は、セルモニター回路をカスケード接続する通信ラインを接続する電池モジュールが特定されず、通信ラインをいずれの電池モジュールのセルモニター回路に接続してもカスケード接続できるので、従来の装置が隣接する電池モジュール間に配線していた通信ラインを別のスペースに配置してセルモニター回路をカスケード接続できる。従来の電源装置は、パワーラインと通信ラインとを並列に配線して、言い換えると、パワーラインで接続している電池モジュールのセルモニター回路に通信ラインを接続する必要があったので、通信ラインを接続する電池モジュールが特定されて、通信ラインを最適配線できる電池モジュールに接続できず、通信ラインを配線するスペースを電池モジュールの間に設ける必要があった。
【0015】
以上の電源装置は、通信ラインを接続する電池モジュールが特定されず、通信ラインを最適配線できる電池モジュールに接続してセルモニター回路をカスケード接続できるので、従来の電池モジュールが電池モジュールの間に設けていた配線スペースを省略して、複数のセルモニター回路を通信ラインでカスケード接続できる。このため、電池モジュール間の配線スペースを省略して全体をコンパクトにできる特長がある。
【0016】
ここで、図16は従来の電源装置800のブロック図を示している。この電源装置800は、複数の電池モジュール810をパワーライン842で直列に接続して、セルモニター回路806を通信ライン844でカスケード接続している。この電源装置800は、ブロック図に示すように、通信ライン844を接続するグランドライン859を共通とするセルモニター回路806を通信ライン844で接続して、全てのセルモニター回路806をカスケード接続している。電池モジュール810は、プラス側出力とマイナス側出力をグランドライン859とする2組のセルモニター回路806を設けている。図において、プラス側出力をグランドライン859とするセルモニター回路806は、上段に接続しているマイナス側出力をグランドライン859とするセルモニター回路806とグランドライン859を共通として、上下のセルモニター回路806を通信ライン844で接続している。グランドラインを共通とするセルモニター回路は、通信ラインで接続して電池情報などの信号を伝送できるが、グランドラインを共通としないセルモニター回路は、グランドラインに電位差があるので通信ラインで接続できない。図16の電源装置は、電位差のないグランドラインのセルモニター回路に限って通信ラインで接続できるので、通信ラインを接続するセルモニター回路が特定される。接続できる電池モジュールが特定される電源装置は、通信ラインを配線に最適な位置には配置できず、不都合な位置に配線する必要があり、また、配線が長くなる等の弊害が発生する。
【0017】
本発明の第1の実施態様の電源装置は、通信ラインを接続する電池モジュールが特定されず、通信ラインを理想的な位置に配置できる。それは、セルモニター回路の通信インターフェースの耐圧が、電池モジュールの出力電圧より高電圧の高耐圧とするので、グランドラインに電位差のあるセルモニター回路を接続できるからである。通信ラインを接続する電池モジュールが制限されず、電池モジュールの間等には、通信ラインを配線する必要がないので、電池モジュールの間の通信ラインの配線スペースを省略して全体をコンパクトにできる特長を実現する。また、通信ラインが損傷されやすい領域に配置する必要がないので、電池モジュールの電池情報を長期間にわたって確実に外部のバッテリコントロールユニット等に伝送して、電源装置としての信頼性を高く維持できる。とくに、厳しい使用環境において、通信ラインの損傷等を防止して、高い信頼性を確保できる。
【0018】
本発明の第2の実施態様の電源装置は、通信ラインが、パワーラインを接続してなる電池モジュールと異なる電池モジュールのセルモニター回路に接続されてなる非並列の通信ラインを含んでいる。
【0019】
以上の電源装置は、パワーラインと異なる電池モジュールに接続することで、非並列の通信ラインを自由なスペースに配線して、複数のセルモニター回路をカスケード接続できる。この電源装置は、通信ラインを安全で損傷され難いスペースに配置することで、通信ラインの損傷を防止して、装置としての信頼性と安全性を確保できる特長がある。
【0020】
本発明の第3の実施態様の電源装置は、通信インターフェースが、直流を遮断して交流を通過させるカップリング素子を出力側に備え、カップリング素子の耐圧を、電源装置の出力電圧よりも高耐圧としている。
【0021】
以上の電源装置は、カップリング素子を設けて通信インターフェースを高耐圧とするので、簡単な回路構成で高耐圧を実現できる特長がある。
【0022】
本発明の第4の実施態様の電源装置は、カップリング素子を、カップリングコンデンサ、信号伝送用のトランス、光伝送素子のいずれかとしている。
【0023】
カップリング素子をカップリングコンデンサとして通信インターフェースを高耐圧とする電源装置は、極めて安価な部品で高耐圧を実現できる特長がある。
カップリング素子を信号伝送用のトランスとして通信インターフェースを高耐圧とする電源装置は、安価で長期間にわたって高い信頼性と安定性で電池情報を確実に伝送できる通信インターフェースを実現できる特長がある。
カップリング素子を光伝送素子として通信インターフェースを高耐圧とする電源装置は、雑音などの影響を受けることなく、長期間にわたって安定して電池情報を確実に伝送できる通信インターフェースを実現できる特長がある。
【0024】
本発明の第5の実施態様の電源装置は、複数の電池モジュールを多段多列に配置して、隣接する電池モジュールの間に、縦区画領域と横区画領域を碁盤格子状に設けており、縦区画領域と横区画領域のいずれか一方を通信ラインを配線してなる配線スペースとして、他方を通信ラインの配線されない非配線スペースとしている。
【0025】
本発明の第6の実施態様の電源装置は、非配線スペースの横幅を、配線スペースの横幅よりも狭くしている。
【0026】
本発明の第7の実施態様の電源装置は、電池モジュールが、接続部を、配線スペースに対向する端部に配置している。
【0027】
以上の電源装置は、接続部に接続している通信ラインを配線スペースに配線して、通信ラインを能率よく簡単に配線して、高いスペース効率で通信ラインを配線できる特長がある。
【0028】
本発明の第8の実施態様の電源装置は、電池モジュールが、電池セルの積層方向に伸びる直方体で、電池セルの積層方向の両端部をモジュール端部として、積層方向の両側をモジュール側面として、接続部をモジュール端部に配置している。
【0029】
本発明の第9の実施態様の電源装置は、隣接する電池モジュールのモジュール端部が対向するスペースを配線スペースとして、配線スペースに通信ラインを配線し、隣接する電池モジュールのモジュール側面が対向する隙間を、通信ラインが配線されない非配線スペースとしている。
【0030】
本発明の第10の実施態様の電源装置は、電池モジュールが、複数の電池セルを積層してなる電池積層体と、電池積層体の両端部に配置してなるエンドプレートと、電池積層体の両側面に配置されてエンドプレートを連結してなるバインドバーとを備え、電池モジュールを、電池セルの積層方向に細長い直方体として、長手方向の端部をモジュール端部としている。
【0031】
本発明の第11の実施態様の電源装置は、電池モジュールが、エンドプレートにセルモニター回路を配置している。
【0032】
以上の電源装置は、エンドプレートに配置するセルモニター回路に通信ラインを接続しているので、通信ラインがセルモニター回路を介してエンドプレートに連結されて確実に安定して接続できる特長がある。
【0033】
本発明の第12の実施態様の電源装置は、電池モジュールが、一方の端部に接続部を配置している。
【0034】
本発明の第13の実施態様の電源装置は、電池モジュールが、一方の端部に一対の接続部を配置して、一対の接続部に通信ラインを接続している。
【0035】
(実施の形態1)
図1の概略構成図に示す電源装置100は、複数の電池モジュール10のセルモニター回路6を通信ライン44でカスケード接続している。さらに、この電源装置100は、隣接する電池モジュール10をパワーライン42で直列に接続している。パワーライン42は、電池モジュール10の電池組立7を直列に接続し、通信ライン44は電池モジュール10のセルモニター回路6をカスケード接続している。
【0036】
図2はセルモニター回路6のブロック図である。この図のセルモニター回路6は通信インターフェース48を備える。通信インターフェース48は、通信ライン44を接続する接続部43を備える。通信インターフェース48は、接続部43に印加される耐電圧を、電源装置100の出力電圧よりも高電圧とするカップリング素子46を出力側に設けている。接続部43はカップリング素子46を介して通信インターフェース48の送受信回路49に接続している。カップリング素子46は、好ましくは直流を遮断して交流を通過させる素子が適している。カップリング素子46は、電源装置100の出力電圧よりも高耐圧の素子である。図の通信インターフェース48は、カップリング素子46をカップリングコンデンサ46Aで構成する。カップリングコンデンサ46Aは、電源装置の出力電圧よりも高耐圧のコンデンサである。カップリングコンデンサ46Aには、耐久性に優れるセラミックコンデンサが適しているが、フィルムコンデンサ等の他のコンデンサも使用できる。カップリング素子46をカップリングコンデンサ46Aとする通信インターフェース48は、部品コストを安く、小さくできる特長がある。図2の通信インターフェース48は、セルモニター回路6をカスケード接続するために2組の接続部43を設けている。接続部43は一対の端子を有し、各々の端子をカップリングコンデンサ46Aを介して送受信回路49に接続している。
【0037】
図3の通信インターフェース48は、カップリング素子46を信号伝送用のトランス46Bとしている。この通信インターフェース48は、送受信回路49と接続部43との間に信号伝送用のトランス46Bを接続している。この通信インターフェース48も2組の接続部43を備えるので、各々の接続部43をトランス46Bを介して送受信回路49に接続している。カップリング素子46のトランス46Bは、一次側の巻き線を送受信回路49に接続して、二次側の巻き線を接続部43に接続している。
【0038】
図4の通信インターフェース48は、カップリング素子46を光伝送素子46Cとする。この通信インターフェース48は、送受信回路49と接続部43との間に光伝送素子46Cを接続している。この通信インターフェース48も2組の接続部43を備えるので、各々の接続部43を光伝送素子46Cを介して送受信回路49に接続している。光伝送素子46Cは、送受信回路49の信号で点滅する光源46cと、光源46cの点滅を検出して電気信号に変換する光電気変換器46dとを備える。光伝送素子46Cは、光源46cと光電気変換器46dを送受信回路49と接続部43とにそれぞれ接続している。
【0039】
接続部43と送受信回路49との間に、直流をカットして交流の信号成分を通過するカップリング素子46を接続している通信インターフェース48は、電位差のあるグランドラインの通信インターフェース48を通信ライン44で接続できる。グランドラインの直流がカップリング素子46でカットされて、電池情報などの信号成分のみが伝送されるからである。グランドラインに電位差のある通信インターフェース48が接続されると、カップリング素子46の両端には、直流電圧が印加されるので、カップリング素子46には、電源装置100の出力電圧よりも高耐圧の素子を使用する。高耐圧のカップリング素子46を使用する通信インターフェース48は、カップリング素子46で直流成分を遮断するので、通信ライン44を接続する通信インターフェース48は特定されない。
【0040】
図5の概略斜視図に示す電池モジュール10は、電池組立7の一方のエンドプレート3の端部にセルモニター回路6を配置している。電池組立7は、複数の電池セル1を積層している電池積層体2の両端部に配置している一対のエンドプレート3をバインドバー4で連結している。バインドバー4に連結された一対のエンドプレート3は、電池積層体2を加圧状態に固定している。セルモニター回路6は、図2に示すように、電池セル1の電圧を検出する電圧検出回路22と、この電圧検出回路22で検出する各々の電池セル1のセル電圧等の電池情報を外部のバッテリコントロールユニット(BCU)に出力する通信インターフェース48を備えている。
【0041】
図2のブロック図に示すセルモニター回路6は、電池セル1の過充電や過放電を防止するために、電池セル1の電圧を検出する電圧検出回路22と、電池セル1のセルバランスを調整するセルバランス回路23と、電池セル1の温度を検出する温度検出回路29と、これ等の回路で検出する電池情報を通信する通信インターフェース48とを備える。電圧検出回路22は、電圧検出ライン19を介して電池セル1の電極端子に接続されて各々の電池セル1の電圧を検出する。セルバランス回路23は、電池セル1の電圧差を均等化してセルバランスする。温度検出回路29は電池セル1の温度を検出する。図5の電池モジュール10は、エンドプレート3の外側表面にセルモニター回路6を配置している。この電池モジュール10は、異常時に電池セル1が噴射する高温・高圧の排出ガスからセルモニター回路6の損傷を防止できる。
【0042】
図1のセルモニター回路6は、通信ライン44を接続するために2組の接続部43を設けている。図1の電池モジュールは、接続部43をセルモニター回路6に設けているが、接続部43はエンドプレート3に配置することもできる。図1の電源装置100は、各々の電池モジュール10に設けているセルモニター回路6を通信ライン44を介してカスケード接続して、1回線で電池情報等を外部に設けているバッテリコントロールユニット(BCU)35などに伝送している。
【0043】
(電池組立7)
電池組立7は、複数の電池セル1を厚さ方向に積層している電池積層体2と、電池積層体2の電池セル1の積層方向の両端部に配置された一対のエンドプレート3と、電池積層体2の両端部のエンドプレート3に連結されたバインドバー4とを備える。図6図7に示す電池モジュール10は、一方のエンドプレート3にセルモニター回路6を配置して、セルモニター回路6を電池積層体2の電池セル1に電圧検出ライン19を介して接続している。さらに、図に示す電池モジュール10は、各々の電池セル1の排気弁1aに連結されて排気弁1aから噴出される排出ガスを外部に排気するガスダクト5と、電池積層体2の上方であって、ガスダクト5の上に配置されたカバーケース8と、電池積層体の下方に配置されて、エンドプレート3を固定しているベースプレート9とを備えている。
【0044】
(電池セル1)
電池セル1は、図7に示すように、厚さに比べて幅が広い、言い換えると幅よりも薄い角形の二次電池で、厚さ方向に積層されて電池積層体2としている。電池セル1はリチウムイオン二次電池である。ただし、電池セルは、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等、充電できる他の全ての二次電池とすることもできる。電池セル1は、密閉構造の外装缶に正負の電極板を電解液と共に収容している。外装缶は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属板を角形にプレス成形され、開口部を封口板で気密に密閉している。封口板は、外装缶と同じアルミニウムやアルミニウム合金で、正負の電極端子11を固定して、電極端子11の間に排気弁を設けている。なお、正負の電極端子11は、少なくとも一方の電極端子11が封口板と絶縁された状態とされている。この電池セル1は、封口板を端子面1Xとして正負の電極端子11を設けている。さらに、電池セル1は、外装缶の底面及び側面が絶縁フィルムにより被覆されている。
【0045】
複数の電池セル1は、各電池セル1の厚み方向が積層方向となるように積層されて電池積層体2を構成している。電池セル1は、四角形のひとつの外周面を、正負の電極端子11を設けている端子面1Xとして、端子面1Xを同一平面上に配置して、複数の電池セル1を積層して電池積層体2としている。
【0046】
(電池積層体2)
電池積層体2は、図7に示すように、積層している電池セル1の間に絶縁スペーサ12を挟着している。図の絶縁スペーサ12は、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状またはシート状に製作されている。図に示す絶縁スペーサ12は、電池セル1の対向面とほぼ等しい大きさのプレート状としており、この絶縁スペーサ12を互いに隣接する電池セル1の間に積層して、隣接する電池セル1同士を絶縁している。なお、隣接する電池セル1間に配置されるスペーサとしては、電池セルとスペーサの間に冷却気体の流路が形成される形状のスペーサを用いることもできる。
【0047】
電池積層体2は、隣接する電池セル1の正負の電極端子11に金属製のバスバー14を接続して、バスバー14でもって複数の電池セル1を直列又は並列に、あるいは直列と並列に接続している。電池積層体2は、積層する電池セル1の個数で出力電圧と、充放電できる容量を設定値としている。電池積層体2は、直列に接続する電池セル1の個数で出力電圧を高くでき、電池セル1の個数で充放電の容量を大きくできる。電池モジュール10は、電池積層体2を構成する電池セル1の個数とその並列と直列に接続する接続状態で、出力電圧と容量を設定値とするので、電池セル1の個数と接続状態は用途を考慮して最適な状態とされる。
【0048】
バスバー14は、電極端子11に接続するための接続部(図示せず)を設けている。バスバー14は、この接続部と電極端子11とを接続する境界にレーザービームを照射して電極端子11に溶接して接続される。ただ、バスバーは、電極端子に雄ネジを設けて、この電極端子を挿通するための貫通孔を開口すると共に、この貫通孔に挿通された電極端子の雄ネジにナットをねじ込んで電極端子に連結することも、電極端子に雌ネジ孔を設け、この雌ネジ孔にバスバーを貫通する止ネジをねじ込んで電極端子に連結することもできる。電池モジュール10は、電池積層体2の上面に樹脂製の絶縁カバー(図示せず)を設けることができる。絶縁カバーは、開口部を設けて、この開口部から電極端子11を表出し、絶縁カバーの上面側で、絶縁カバーの開口部から表出する電極端子11に金属板のバスバー14を接続して、複数の電池セル1を所定の配列で接続することができる。
【0049】
(端面スペーサ13)
電池積層体2は、金属製のエンドプレート3と絶縁するために、両端面には端面スペーサ13を挟んでエンドプレート3を配置することができる。端面スペーサ13は、電池積層体2とエンドプレート3との間に配置されてエンドプレート3を電池積層体2から絶縁する。端面スペーサ13は、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状またはシート状に製作されている。端面スペーサ13は、電池セル1の対向面全体をカバーできる大きさのプレート部を設けて、このプレート部を電池積層体2の両端に配置された電池セル1とエンドプレート3との間に積層している。
【0050】
(エンドプレート3)
エンドプレート3は、電池積層体2の電池セル1の積層方向における両端面にあって、電池積層体2を固定している。エンドプレート3は金属製の板材で、外形が電池セル1の外形にほぼ等しく、あるいは電池セル1よりも僅かに大きい四角形の板材である。エンドプレート3は、高張力綱で製作して強靭な構造にできる。エンドプレート3は、1枚の金属板とし、あるいは複数の金属板を積層する構造とし、あるいは金属板とプラスチックとの積層体とすることができる。1枚の金属板からなるエンドプレート3は熱容量が大きく、セルモニター回路6の熱エネルギーを効率よく吸収できる。また、複数の板材を積層するエンドプレート3は、セルモニター回路6を固定する表面側を少なくとも金属製の板材とする。セルモニター回路6が熱結合状態に固定されて、放熱特性を向上するためである。さらに、エンドプレートは、アルミニウム板と高張力綱板の積層構造とすることができる。このエンドプレートは、表面側をアルミニウム板としてセルモニター回路6を固定し、アルミニウム板と高張力綱板とを面接触状態に積層して、アルミニウム板から高張力綱板に効率よく熱伝導できる構造とすることもできる。ただし、エンドプレートは必ずしも金属製とすることなく、たとえばエンジニアリングプラスチック等の優れた強度のプラスチック製とすることもできる。
【0051】
(バインドバー4)
バインドバー4は、電池セル1の積層方向に伸びて両端部をエンドプレート3に固定して、一対のエンドプレート3で電池積層体2を固定している。図6図7に示すバインドバー4は、電池積層体2の側面に沿う所定の上下幅と所定の厚さを有する金属板で、電池積層体2の両側面に対向して配置されている。バインドバー4は、電池積層体2の両端面を強い圧力で加圧して、充放電して膨張しようとする電池セル1を定位置に配置する。バインドバー4の金属板は、好ましくは高張力綱を使用する。金属板のバインドバー4は、プレス成形して所定の形状に形成される。
【0052】
バインドバー4は、図7の分解斜視図に示すように、両端を一対のエンドプレート3に固定するために、電池積層体2の積層方向の両端において、その両端部をエンドプレート3の外側面に沿うように折曲加工して固定部4Aを設けている。バインドバー4は、この固定部4Aをエンドプレート3に螺合するなどして、一対のエンドプレート3を締結している。
【0053】
さらに、バインドバー4は、図7及び図8に示すように、下端部をL字状に折曲して、下側連結片4Bを形成している。この下側連結片4Bは、ベースプレート9の両側部の下面側に積層されて、ベースプレート9に連結される。さらに、バインドバー4は、上端部を折曲して、電池積層体2の上面の端部を押圧する押圧片4Cを形成している。この押圧片4Cは、電池積層体2の電池セル1の上面を個別に押圧できるように、電池セル1毎に分離されている。これにより、各押圧片4Cは隣接する押圧片4Cから独立して電池セル1をベースプレート9側に押圧することができる。このようにして、各電池セル1がベースプレート9から浮き上がることを阻止して高さ方向に保持し、振動や衝撃等が電池積層体2に印加されても、各電池セル1が上下方向に位置ずれしないように維持できる。このようにバインドバー4は、電池積層体2の左右の両側部において、電池積層体2の上下面の隅部を覆って保持している。
【0054】
なお、バインドバー4の形状や、エンドプレート3との締結構造は、既知の構造を適宜利用できる。例えばバインドバーの両端部をL字状に折曲させることなく平板状とし、エンドプレートの側面と螺合するよう構成してもよい。あるいはバインドバーがエンドプレートの側面と対向する部分を、段差状に係合する係合構造として、バインドバーをエンドプレートの側面に係止構造でもって係止した状態で、さらに螺合させる構造としてもよい。
【0055】
また、バインドバー4と電池積層体2の間には、絶縁シートを介在させてもよい。絶縁シートは絶縁性を備える材質、例えば樹脂などで構成され、金属製のバインドバー4と電池セル1との間を絶縁する。
【0056】
(ベースプレート9)
ベースプレート9は、図7及び図8に示すように、電池積層体2とエンドプレート3の底面に配置される。ベースプレート9は、エンドプレート3が固定され、さらに好ましくはバインドバー4の下端部も固定される。エンドプレート3やバインドバー4は、固定ネジ15、16を介してベースプレート9に固定される。エンドプレート3を固定する固定ネジ15は、エンドプレート3を上下方向に貫通して、エンドプレート3をベースプレート9に固定する。また、バインドバー4を固定する固定ネジ16も、バインドバー4の下端部である下側連結片4Bを貫通して、ベースプレート9に固定される。
【0057】
電池積層体2は、各々の電池セル1をベースプレート9に接触させて、ベースプレート9と熱結合状態に配置する。ベースプレート9に熱結合する電池セル1は、熱エネルギーをベースプレート9に放熱する。さらに、ベースプレート9を強制冷却して、電池セル1の熱エネルギーをさらに効率よく放熱することもできる。強制冷却されるベースプレート9は、図示しないが、内部に冷媒や冷却液を循環して強制冷却することができる。また、ベースプレートは、下面に放熱フィンを設けて強制冷却することもできる。さらに、ベースプレートの下面に面接触状態に冷却プレートを積層して、冷却プレートで強制冷却することもできる。冷却プレートは、内部に冷媒や冷却液を循環して強制冷却することができる。
【0058】
(ガスダクト5)
ガスダクト5は、図5図8に示すように、電池セル1の上面、すなわち電池セル1の端子面1Xに対向する位置に配置される。ガスダクト5は、排気弁1aの開口部から排出される吐き出し物をスムーズに排出する内容積の筒状で、下面を開口して、各々の電池セル1の排気弁1aの開口部に連結している。図8のガスダクト5は、横断面形状を横幅の広い長方形とする四角筒状としている。ガスダクト5は、電池積層体2の上面に、排気弁1aから排出される排出ガスを外部に排気するように、電池セル1の端子面1Xとの間に隙間ができないように電池積層体2の上面に密着して配置されて、下面に開口する開口部5aを各々の電池セル1の排気弁1aに連結している。ガスダクト5は、端子面1Xとの間にパッキンやシール材等を配置して、排出ガスを漏れないように配置することもできる。
【0059】
さらに、図示しないが、ガスダクトは、電池積層体の上面に電池セルの積層方向に伸びる姿勢で配置している集合ダクトと、集合ダクトに連結されて、先端を排気弁に連結している分岐ダクトとで構成することもできる。このガスダクトは、集合ダクトを端子面から離して配置して、分岐ダクトの先端を排気弁の開口部に連結することができる。
【0060】
(セルモニター回路6)
セルモニター回路6は、電池積層体2を構成している電池セル1の電池情報を検出する電池情報の検出回路50と、この検出回路50で検出する電池情報を示す信号の通信インターフェース48とを備える。図2のブロック図に示すセルモニター回路6は、検出回路50を電池セル1の電圧を検出する電圧検出回路22と、セルバランス回路23と、温度検出回路29とで構成する。セルモニター回路6の電圧検出回路22は、各々の電池セル1に電圧検出ライン19を介して接続されて、電池セル1の電圧を検出する。
【0061】
電圧検出回路22は、好ましくは、全ての電池セル1の電圧を検出する。ただ、電圧検出回路22は、必ずしも全ての電池セル1の電圧を検出することなく、たとえば、電池積層体2を構成する電池セル1を複数の電池ユニットに分割して、各々の電池ユニットの電圧を検出することもできる。複数の電池セル1を並列に接続している電池ユニットは、電池ユニットの電圧を検出して、全ての電池セルの電圧を検出できる。複数の電池セルを直列に接続している電池ユニットは、電池ユニットの電圧を検出して、カスケード接続している電池セルのトータル電圧を検出する。複数の電池セルをカスケード接続している電池ユニットは、2~5個の電池セルで構成される。この電池ユニットは、電池ユニットの電圧を検出して、2~5個の電池セル1のトータル電圧を検出するので、電池セルの電圧は検出するトータル電圧の1/2~1/5となる。電池セル1の電圧は残容量で変化する。電池セル1の電圧は、過充電されるとあらかじめ設定している最高電圧よりも高くなり、過放電されると最低電圧よりも低くなる。電池セル1は、過充電され、あるいは過放電されると電気特性が低下して劣化し、安全性も低下する。電圧検出回路22は、電池セル1の電圧を検出して、制御回路(図示せず)に伝送し、制御回路は電池セル1の電圧を設定範囲となるように充放電の電流をコントロールする。
【0062】
電池モジュール10は、充放電を繰り返すにしたがって、各々の電池セル1の残容量や電圧がアンバランスとなる。直列に接続された電池セル1は、同一電流で充放電される。同一電流で充放電されるが、各々の電池セル1の電気特性は完全に同一でない。したがって、複数の電池セル1を直列に接続している電池モジュール10は、充放電を繰り返すに従って各々の電池セル1の電圧や残容量がアンバランスになる。電池セル1のアンバランスは、特定の電池セル1を過充電し、あるいは過放電する原因となる。電池モジュール10は、全ての電池セル1を同時に充放電するので、電池セル1のアンバランスは、特定の電池セル1を過充電し、あるいは過放電する原因となる。電池セル1の過充電と過放電は、電池セル1の電気特性を低下して、劣化させる原因となり、また電池モジュール10の安全性を低下する。電源装置100は、電池セル1の電圧のアンバランスを解消するセルバランス回路23を設けて、電池セルを均等化できる。
【0063】
図2のセルモニター回路6はセルバランス回路23を備える。このセルモニター回路6は、電圧検出回路22の電圧検出ライン19を利用して、電圧の高い電池を放電し、電圧の低い電池を充電して、電池セル1の電圧を均等化してアンバランスを解消できる。セルバランス回路23は、残容量の大きい高電圧の電池セルを放電して残容量を均等化できる。
【0064】
セルモニター回路6は、好ましくは、エンドプレート3に絶縁して固定される。このセルモニター回路6は、図9に示すように、エンドプレート3との間に絶縁シート18を配置して固定される。絶縁シート18はゴム状弾性体からなる弾性シートとして、湾曲するエンドプレート3とセルモニター回路6とを常に熱結合状態に保持できる。エンドプレート3に絶縁して固定されるセルモニター回路6は、金属製の放熱器21などを表面に露出して効率よく放熱できる構造としながら、エンドプレート3の内側に配置している電池積層体2に対して絶縁特性を向上して信頼性を高くできる。電池積層体2の両端面にエンドプレート3を配置している電池モジュール10は、エンドプレート3をグランドラインから絶縁することで、感電や漏電を防止できる。グランドラインから絶縁されたエンドプレート3は、内側には高電圧の電池積層体2を配置している。電池積層体2から絶縁されたエンドプレート3は、電池積層体2との漏電抵抗が高く保持されるが、漏電抵抗は種々の要因で低下することがある。たとえば、エンドプレート3と電池積層体2との間の結露水は漏電抵抗を低下させる原因となる。エンドプレート3から絶縁して配置されるセルモニター回路6は、エンドプレート3と電池積層体2との接触抵抗が低下しても、エンドプレート3から絶縁して、漏電や感電などの弊害を防止して高い安全性と信頼性を確保する。ただし、エンドプレートは電池積層体から絶縁しているので、エンドプレートをグランドラインに接続することもできる。
【0065】
以上の電池モジュール10は、セルモニター回路6のセルバランス回路23の発熱部品をエンドプレート3で効率よく放熱できるので、セルバランス回路23で速やかに電池セル1を均等化できる特長がある。それは、セルバランス回路23の消費電力を大きくして、電池セル1を大電流で放電して、高電圧の電池セル1の電圧を速やかに低下できるからである。セルバランス回路23は、高電圧の電池セル1を放電して電圧のアンバランスを解消し、あるいは高電圧の電池セル1で低電圧の電池セル1を充電して均等化する。高電圧の電池セル1を放電して均等化する回路は高電圧の電池セル1を放電抵抗で放電し、高電圧の電池セル1で低電圧の電池セル1を充電するセルバランス回路23は、高電圧の電池セル1から低電圧の電池セル1に電力を供給して均等化する。放電抵抗で電池セル1を放電して均等化する回路は、電池セル1を放電する放電抵抗と、この放電抵抗の放電電流をコントロールするスイッチング素子である半導体素子が発熱する。この回路は、放電抵抗と半導体素子の熱エネルギーを効率よく放電する構造として、放電抵抗と半導体素子の放電電流を大きくして均等化する時間を短縮できる。放電電流を大きくすると発熱量も大きくなるので、効率よく放電して放電電流は大きくできる。また、高電圧の電池セルで低電圧の電池セルを充電するセルバランス回路23は、高電圧の電池セルから低電圧の電池セルへの充電する電流をコントロールする半導体素子が発熱するので、この半導体素子の電流を大きくして、均等化する時間を短縮できる。
【0066】
(パワーライン42)
パワーライン42は、複数の電池モジュール10を直列に接続して出力電圧を高くして、ハイブリッドカーや電気自動車などの電動車両の電源として、さらに蓄電装置として有効に使用できようにしている。図1の電源装置100は、隣接する電池モジュール10をパワーライン42で直列に接続して、各々の電池モジュール10のセルモニター回路6を通信ライン44でカスケード接続している。
【0067】
図1の電源装置100は、パワーライン42と通信ライン44とを平行には接続することなく、パワーライン42で接続している電池モジュール10とは異なる電池モジュール10のセルモニター回路6に非並列の通信ライン44を接続している。非並列の通信ライン44は、グランドラインに電位差のある電池モジュール10のセルモニター回路6をカスケード接続している。
【0068】
図1の電源装置100は、複数の電池モジュール10を多段多列に配置して、隣接する電池モジュール10の間に、縦区画領域51と横区画領域52を碁盤格子状に設けている。この図の電源装置100は、縦区画領域51を通信ライン44を配線する配線スペース53として、横区画領域52を通信ライン44を配線しない非配線スペース54として、非配線スペース54の横区画領域52を縦区画領域51よりも狭くして、電池モジュール10間の隙間を狭くしている。この電源装置100は、セルモニター回路6を配線スペース53に対向する端部に配置して、セルモニター回路6の接続部43に接続している通信ライン44を配線スペース53に配置している。さらに、図1の電源装置100は、電池モジュール10を電池セル1の積層方向に伸びる直方体として、電池セル1の積層方向の両端部をモジュール端部として、積層方向の両側をモジュール側面とし、セルモニター回路6をエンドプレート3に設けてセルモニター回路6の接続部43をモジュール端部に配置している。この電源装置100は、隣接する電池モジュール10のモジュール端部が対向するスペースを配線スペース53として、配線スペース53に通信ライン44を配線して、隣接する電池モジュール10のモジュール側面が対向する隙間を、通信ライン44を配線しない非配線スペース54としている。
【0069】
図10の電源装置200は、縦区画領域51を通信ライン44を配線する配線スペースとして、全ての通信ライン44をこの縦区画領域51にのみ配線して、横区画領域52を通信ライン44を配線しない非配線スペース54として、非配線スペース54の横区画領域52を縦区画領域51よりも狭くして、電池モジュール10間の隙間を狭くしている。この電源装置200は、全てのセルモニター回路6を配線スペース53に対向する端部に配置して、セルモニター回路6の接続部43に接続している通信ライン44を配線スペースに配置している。
【0070】
この電源装置200は、電池組立7に設けた正負の出力端子41のうち、マイナスの出力端子41を設けた側のモジュール端部にセルモニター回路6を配置してなる電池モジュール10Aと、プラスの出力端子41を設けた側のモジュール端部にセルモニター回路6を配置してなる電池モジュール10Bとを互いに平行な姿勢で交互に並べると共に、セルモニター回路6を配置してなるモジュール端部を縦区画領域51側に配置することで実現している。この電源装置200は、通信ライン44を中央部の縦区画領域51に集中して配置できるので、通信ライン44をさらに省スペースに配線して、通信ライン44が損傷されるのを有効に防止できると共に、通信ライン44の全長を短くしてノイズ等の弊害を低減できる。
【0071】
以上の電源装置は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源として利用できる。電源装置を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、車両を駆動する電力を得るために、上述した電池モジュールを直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置を構築して搭載することが好ましい。
【0072】
(ハイブリッド自動車用電池装置)
図11は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。なお、車両HVは、図に示すように、電源装置100を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電源装置100を充電できる。
【0073】
(電気自動車用電源装置)
また、図12は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電源装置100を充電できる。
【0074】
(蓄電装置用の電源装置)
さらに、本発明は、電源装置の用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電源装置は、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。図13は、電源装置100の電池を太陽電池82で充電して蓄電する蓄電装置を示す。
【0075】
図13に示す蓄電装置は、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で電源装置100の電池を充電する。この蓄電装置は、太陽電池82を充電用電源として充電回路83で電源装置100の電池を充電した後、DC/ACインバータ85を介して負荷86に電力を供給する。このため、この蓄電装置は、充電モードと放電モードを備えている。図に示す蓄電装置は、DC/ACインバータ85と充電回路83を、それぞれ放電スイッチ87と充電スイッチ84を介して電源装置100と接続している。放電スイッチ87と充電スイッチ84のON/OFFは、蓄電装置の電源コントローラ88によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ88は充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をOFFに切り替えて、充電回路83から電源装置100への充電を許可する。また、充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で、電源コントローラ88は充電スイッチ84をOFFに、放電スイッチ87をONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷86への放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をONにして、負荷86への電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0076】
さらに、電源装置は、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電源装置は、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電源装置は、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電源装置は、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0077】
以上のような蓄電装置は、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る電源装置は、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源として好適に利用できる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0079】
100、200…電源装置
1…電池セル
1a…排気弁
1X…端子面
2…電池積層体
3…エンドプレート
4…バインドバー
4A…固定部
4B…下側連結片
4C…押圧片
5…ガスダクト
5a…開口部
6…セルモニター回路
7…電池組立
8…カバーケース
9…ベースプレート
10、10A、10B…電池モジュール
11…電極端子
12…絶縁スペーサ
13…端面スペーサ
14…バスバー
15…固定ネジ
16…固定ネジ
18…絶縁シート
19…電圧検出ライン
21…放熱器
22…電圧検出回路
23…セルバランス回路
29…温度検出回路
35…バッテリコントロールユニット
41…出力端子
42…パワーライン
43…接続部
44…通信ライン
46…カップリング素子
46A…カップリングコンデンサ
46B…トランス
46C…光伝送素子
46c…光源
46d…光電気変換器
48…通信インターフェース
49…送受信回路
50…検出回路
51…縦区画領域
52…横区画領域
53…配線スペース
54…非配線スペース
81…建物
82…太陽電池
83…充電回路
84…充電スイッチ
85…DC/ACインバータ
86…負荷
87…放電スイッチ
88…電源コントローラ
91…車両本体
93…モータ
94…発電機
95…DC/ACインバータ
96…エンジン
97…車輪
98…充電プラグ
800…電源装置
806…セルモニター回路
810…電池モジュール
842…パワーライン
844…通信ライン
845…配線スペース
859…グランドライン
901…電池セル
902…電池積層体
906…セルモニター回路
910…電池モジュール
HV、EV…車両
図1
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図3
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