(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】エアロゾル生成物品用のチップラッパー
(51)【国際特許分類】
A24D 1/02 20060101AFI20241209BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
A24D1/02
D21H27/00 D
(21)【出願番号】P 2021574877
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2020071512
(87)【国際公開番号】W WO2021019016
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-26
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日出島 拓
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-219599(JP,A)
【文献】特表2014-513170(JP,A)
【文献】国際公開第2015/108078(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0180088(US,A1)
【文献】特表2006-517391(JP,A)
【文献】特表2014-519994(JP,A)
【文献】国際公開第2011/042353(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/175097(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/130446(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/00-3/18
D21H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル生成物品用のチップラッパーであって、前記チップラッパーは、1.5C.U.未満の多孔度を有するベース層を有し、前記ベース層は少なくとも1つのフィラー材料を含み、前記チップラッパーは、CaCO
3を含む色素成分と、不燃性フィラーとして機能する少なくとも第2の成分とで着色された面を更に備え、前記色素成分は少なくとも2.0gsmの坪量を有し、前記着色された面は少なくとも400秒の表面平滑度を有する、チップラッパー。
【請求項2】
前記ベース層及び前記着色された面は二重層構造を構築することを特徴とする、請求項1に記載のチップラッパー。
【請求項3】
前記ベース層の前記フィラー材料は、カオリン、CaCO
3、タルク、及びAl(OH)
3を含む材料のグループから選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のチップラッパー。
【請求項4】
前記チップラッパーの坪量は40gsmより大きく
、及び/又は前記チップラッパーの坪量は60gsmより小さ
いことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のチップラッパー。
【請求項5】
前記チップラッパーの厚さが30マイクロメートルより大きく
、及び/又は前記チップラッパーの厚さが55マイクロメートル未満
であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のチップラッパー。
【請求項6】
前記チップラッパーの紙密度が1.1g/cm
3より大きく
、及び/又は前記チップラッパーの紙密度が1.3g/cm
3より小さ
いことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のチップラッパー。
【請求項7】
前記チップラッパーの平滑度が500秒より大き
いことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のチップラッパー。
【請求項8】
前記チップラッパーの平滑度が2500秒より小さ
いことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のチップラッパー。
【請求項9】
前記チップラッパーの光沢度が10%より大き
いことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のチップラッパー。
【請求項10】
前記チップラッパーの光沢度が35%より小さ
いことを特徴とする、請求項9に記載のチップラッパー。
【請求項11】
前記色素成分は、CaCO
3とカオリン
を3:7~7:3
の比率で含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のチップラッパー。
【請求項12】
前記色素成分の量は5gsmより大きいことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のチップラッパー。
【請求項13】
前記チップラッパーは二酸化チタン(TiO
2)を含まないことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のチップラッパー。
【請求項14】
前記着色された面は、水、結合剤成分、及び前記色素成分を含むコーティング溶液に基づくことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載のチップラッパー。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のチップラッパーを備える、紙巻きタバコ。
【請求項16】
紙巻きタバコ用のチップラッパーを製造する方法であって、前記方法は、
前記チップラッパーのベース層を提供するステップと、
前記ベース層を、CaCO
3を含む色素成分と、不燃性フィラーとして機能する少なくとも第2の成分とを含む溶液でコーティングするステップと、
コーティングされた前記ベース層をプレス及び加熱して、少なくとも400秒の表面平滑度を有する着色された面を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
コーティングされた前記ベース層は所定温度にてプレス及び加熱され、前記所定温度は100℃より高く
、及び/又は前記
所定温度は300℃より低
いことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙巻きタバコのようなエアロゾル生成物品を対象とする。本出願は、特に、例えば紙巻きタバコなどのエアロゾル生成物品用のチップラッパーを対象とする。現状技術から公知の紙巻きタバコは通常、例えばフィルタ、紙巻きタバコ本体、及び通常、少なくとも部分的にフィルタの周りに巻き付けられた、いわゆるチップラッパー、などのいくつかの構成要素を含む。
【背景技術】
【0002】
現状技術では、当技術分野において多くの場合に「チップペーパー」とも呼ばれるチップラッパーは、マウスピースロッドとタバコロッドとを接続する機能を有するが、更に、このチップラッパーに、印刷、箔押し、又はエンボス加工などの装飾が追加されることが現状技術から公知である。チップラッパーの装飾のうちの1つは光沢のある外観(特に光沢度が高い)であるため、チップラッパーは製品の魅力を高めることが期待されている。
【0003】
この分野で公知の技術は、銀インク印刷をしてそのような光沢のある外観を得ることであるが、この場合、追加の印刷プロセスが必要である。
【0004】
その上、カオリンを10%以上含む紙をカレンダ加工することにより、光沢のある外観を得ることができる。この場合、印刷後に紙表面からインク剥離が発生する場合があるという問題が発生する。
【0005】
これに対して、チップラッパーは、マウスピースとタバコロッドとの接続部分であるため、不燃である必要がある(くすぶり抵抗を備える必要がある)。十分な不燃性を保証するために、一定量の不燃性フィラーである、いくつかの不燃性チップラッパーが開発された。
【0006】
そのようなフィラーとして、二酸化チタンが広く使用されてきた。この材料は、高い不透明度(紙に高い不透明度をもたらす)及び不燃性という利点を有する。しかしながら、一部の国では、この材料は健康上の懸念ゆえに禁止されている。
【0007】
加えて、チップラッパーは、喫煙中に唇の感触が良くなければならない。消費者は一般的に、より良好なリップリリース感触を好む。このことは、紙巻きタバコを吸った後に、タバコが唇に付着してはならないということである。この理由から、チップラッパーが消費者の口に付着しないように、チップラッパーの表面にリップリリースワニスを追加することが一般的である。
【0008】
しかしながら、リップリリースワニスを追加しても、特に乾燥した雰囲気において現れる。したがって、本発明の目的の1つは、チップラッパーにより、改善されたリップリリース感触を提供することである。本発明の別の目的は、特に追加の印刷工程なしに、又は更に二酸化チタン(TiO2)を使用せずに、光沢のある外観を提供するチップラッパーを提供することである。また、改善されたリップリリース感触が提供されるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、独立請求項の目的により満たされる。有利な実施形態が、従属請求項の目的である。
【0010】
エアロゾル生成物品用の、例えば紙巻きタバコ用の、本発明によるチップラッパーは、1.5C.U.未満の多孔度を有するベース層を有し、ベース層は少なくとも1つのフィラー材料を含み、チップラッパーは着色された面を更に備え、着色された面は、特に、CaCO3を含む色素成分と、不燃性ファィラーとして機能する少なくとも第2の成分とで着色され、色素成分は少なくとも2.0gsmの坪量を有し、着色面は少なくとも400秒の表面平滑度を有する。
【0011】
好ましくは、チップラッパーはチップペーパーである。好ましくは、チップラッパーの材料は紙である。本明細書に記載されるチップラッパーは、例えば、十分なインク固定性、不燃性、及び機械運転性など、一般的なチップラッパーの要件を満たす。更に、本発明によるチップラッパーは、光沢のある外観及び改善された唇の感触を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
非常に好ましい実施形態では、フィラー材料は、カオリン、CaCO3、タルク、及びAl(OH)3(水酸化アルミニウム)を含む材料の群から選択される。
【0013】
したがって、これらの材料のうちの1つ、2つ、いくつか、又は全ての材料がフィラー材料に含有され得る。また、例えばカオリンとタルク、又はCaCO3とAl(OH)3のように、材料の任意の組み合わせが含まれ得る。
【0014】
上記の平滑度は、好ましくはベック法で測定される。ベック平滑度試験は、試料の平滑度を判断するための有益な技術である。平滑度又は粗さは、紙、カートン又はボール紙、コーティングされたシートなどの実質的な表面特性である。表面構造の品質は、印刷性及びあらゆる形態のコーティングに大きな影響を及ぼす。
【0015】
ベック平滑度測定は、空気流に基づく、製紙業界で確立された方法である。紙表面と理想的な平面との間の空気流が遅いほど、ベックの平滑度の秒数で表される平滑度は高くなる。好ましい方法では、約10cm2の代表的な紙をベック法で試験できる。
【0016】
上述した光沢度は、紙の鏡面光沢度を指す。鏡面光沢試験は、試料の光沢度を判断する有益な手法である。光沢度は、紙、カートン又はボール紙、コーティング又はラミネートされたシートなどの実質的な表面特性である。表面光沢度の質は外観に大きな影響を与える。
【0017】
光沢度測定は、鏡面反射に基づく、製紙業界において確立されている方法である。鏡面光沢度は、同じ条件下において、鏡面反射角にて試料表面により反射されて特定のアパーチャへと至る光束の、標準的な鏡面反射面により反射される光束を基準にした、パーセンテージで表現される。好ましい方法では、試験片の表面に60度の角度で入射する光。
【0018】
別の好ましい実施形態、第2の成分は、カオリン、タルク、又は水酸化アルミニウムAl(OH)3を含む成分の群から選択される。また、第2の成分は、これらの成分のうちの2つ以上を含んでもよい。また、第2の成分は、カオリンとタルク、又はタルクとカオリンと水酸化アルミニウムAl(OH)3など、これら成分の特定の選択を含み得る。
【0019】
別の非常に好ましい実施形態では、ベース層はベース紙である。上記の着色された面はまた、印刷面と呼ばれる場合もある。好ましい実施形態では、着色された面は、ベース層に接合されている。
【0020】
単位C.U.は、1kPaの圧力差を印加したときに、1cm2の基材試料を通過する空気の体積流量(cm3/分の単位で)により定義される、いわゆるコレスタ単位として理解される。
【0021】
別の好ましい実施形態では、上記の成分のうちの2つ以上が含まれる。別の好ましい実施形態では、着色された層は印刷を含み得る。別の好ましい実施形態では、着色された層は、チップラッパーの明度を改善する役割を担う。
【0022】
着色された面の平滑度は少なくとも500秒である(Bekk法で測定)。
【0023】
別の好ましい実施形態では、ベース層及び着色された面は、二重層構造を構築する。本明細書では、例えば、これら2つの層が互いに接合され得る。
【0024】
本発明の別の好ましい実施形態では、ベース層のフィラー材料は、カオリン、CaCO3、タルク、及び水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を含む材料の群から選択される材料から選択されるか、又はそれらの材料を含む。好ましくは、これらの材料の大部分が、ベース層のフィラー材料に含まれる。
【0025】
別の好ましい実施形態では、チップラッパーの坪量は40gsmより大きく、好ましくは45gsmより大きい。別の好ましい実施形態では、チップラッパーの坪量は60gsmより小さく、好ましくは55gsmより小さい。これらの坪量は、特に製造機械での機械稼働能力にとって好ましい範囲にあることが立証されている。
【0026】
別の好ましい実施形態では、チップラッパーの厚さは30マイクロメートルより大きく、好ましくは35マイクロメートルより大きい。
【0027】
別の好ましい実施形態では、チップラッパーの厚さは55マイクロメートルより小さく、好ましくは50マイクロメートルより小さい。
【0028】
好ましくは、チップラッパー表面に沿った厚さは、20%より小さい、好ましくは10%より小さい偏差を有する。別の好ましい実施形態では、チップラッパーの紙密度は1.1g/cm3より大きく、好ましくは1.15g/cm3より大きい。別の好ましい実施形態では、チップラッパーの紙密度は、1.3g/cm3より小さく、好ましくは1.25g/cm3より小さい。
【0029】
また、この機能は、紙巻きタバコ製造機での機械稼働能力を向上させる。
【0030】
別の好ましい実施形態では、チップラッパーの平滑度は、500秒より大きく、好ましくは600秒より大きく、好ましくは700秒より大きい。好ましくは、チップラッパーの平滑度は2500秒より小さく、好ましくは2000秒より小さい。
【0031】
別の好ましい実施形態では、チップラッパーの光沢度は、10%よりも大きく、好ましくは15%よりも大きく、好ましくは20%よりも大きい。好ましくは、チップラッパーの光沢度は、35%よりも小さく、好ましくは30%よりも小さい。
【0032】
別の好ましい実施形態では、色素成分は、CaCO3(炭酸カルシウム)とカオリンを、3:7~7:3、好ましくは4:6~7:3、最も好ましくは5:5~6:4の比率で含む。
【0033】
別の好ましい実施形態では、着色の量は2gsmよりも大きく、好ましくは3gsmよりも大きく、好ましくは4gsmよりも大きく、好ましくは5gsmよりも大きい。
【0034】
別の好ましい実施形態では、チップラッパーは二酸化チタン(TiO2)を含まない。この場合、一部の国で考慮されているような、予想される健康リスクが回避される。
【0035】
別の好ましい実施形態では、着色された面は、水、結合剤成分、及び着色成分を含むコーティング溶液に基づく。しかしながら、他の成分も含んでよい。
【0036】
本発明は更に、上記説明によるチップラッパーを備える紙巻きタバコを対象とする。好ましくは、紙巻きタバコは、マウスピースロッド、タバコロッド、及びこれらの2つの要素を接続するコネクタを備える。好ましくは、チップラッパー、特に上述したチップラッパーは、マウスピースロッドとタバコロッドとを接続する役割を担う。
【0037】
本発明は更に、エアロゾル生成物品用の、特に紙巻きタバコ用の、チップラッパーを製造する方法を対象とし、方法は、特に以下のステップを含む。
【0038】
第1のステップでは、チップラッパーのベース層が提供される。第2のステップでは、このベース層は、CaCO3を含む色素成分と、不燃性フィラーとして機能する少なくとも第2の成分とを含む溶液でコーティングされる。
【0039】
本発明によれば、コーティングされたベースの層は、所定温度でプレス及び加熱されて、少なくとも400秒の表面平滑度を有する着色された面を形成する。
【0040】
好ましくは、ベース層は、先に定義されたような少なくとも1つのフィラー材料を含む。
【0041】
本方法の好ましい実施形態では、所定温度は100℃より高く、好ましくは140℃より高く、好ましくは150℃より高く、好ましくは170℃より高く、及び/又は温度は300℃より低く、好ましくは250℃より低く、好ましくは200℃より低い。
【0042】
この方法の好ましい実施形態では、パルプ又はフィラー混合物をプレスして平線にすることができる。このステップでは、この混合物が少なくとも片面から、好ましくは上面と下面の両方から水を失う可能性がある。これにより、水を吸い出すことができる。
【0043】
後続の方法ステップでは、シートは、要素間で、特にシリンダ間でプレスされ得る。このようにして、より多くの水分が紙から除去される。
【0044】
別の好ましい実施形態では、紙は乾燥される。このとき、特に、紙が蒸気加熱シリンダと接触して乾燥される。したがって、好ましくは、紙を乾燥させるためにシリンダ装置又はシリンダが使用される。特に加熱シリンダが、最も好ましくは蒸気加熱シリンダが使用される。
【0045】
別の好ましい実施形態では、表面コーティング、特に着色ユニットが使用される。別の好ましいステップでは、(好ましくはフィラー及び結合剤を含む)溶液のコーティングが、紙の少なくとも1つの面に供給される。好ましくは、コーティングが使用され、特に、CaCO3を含む色素成分と、不燃性フィラーとして機能する少なくとも第2の成分とが使用される。好ましくは、色素成分は、少なくとも2.0gsmの坪量で供給される。
【0046】
別の好ましい実施形態では、紙の更なる乾燥が、好ましくは再び加熱シリンダにより、最も好ましくは蒸気加熱シリンダにより行われる。
【0047】
別の好ましい実施形態では、上述したカレンダ工程が追加される。好ましくは、紙は、特により高い温度及び圧力にてカレンダローラ間を通過する。したがって、紙の表面は平滑であり光沢を有する。これは、紙の表面上のフィラーの量が十分な場合に特に可能である。
【0048】
別の好ましい実施形態では、紙は、好ましくはリールを使用して巻かれる。別の好ましい実施形態では、紙の物理的特性、例えば、坪量、不透明度などが測定される。
【0049】
製品は、改善された光沢のある外観、及びより高い表面又は平滑度を提供する。